JP2004012671A - 液晶表示素子用スペーサーおよびそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルギャップ精度が高く微細加工が可能で、かつ耐熱性に優れる液晶表示素子用スペーサーを提供し、さらに、当該スペーサーを使用し、電圧保持率が低下しない液晶表示素子を提供する。
【解決手段】室温では安定であり、高温では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と反応し架橋構造を形成する、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基を有する重合体、及び、光開始能を有し、液晶にブリードするような残存物が生じない、マレイミド基を有する化合物を含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成される液晶表示素子用スペーサー、及びそれを用いた液晶表示素子。
【選択図】 なし
【解決手段】室温では安定であり、高温では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と反応し架橋構造を形成する、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基を有する重合体、及び、光開始能を有し、液晶にブリードするような残存物が生じない、マレイミド基を有する化合物を含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成される液晶表示素子用スペーサー、及びそれを用いた液晶表示素子。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置やタッチパネルなど、表示素子を構成する2枚の基板間に介在して両基板を支持し、両基板の間隔を保持する液晶表示素子用スペーサー、ならびに、当該液晶表示素子用スペーサーが配置された液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、液晶表示素子は、薄膜トランジスタ(以下、TFTと略す。)、画素電極、配向膜等を備える背面基板と、カラーフィルター、電極、配向膜等を備える前面基板とを対向させ、両基板間に液晶を封入して構成されている。そして、2枚の基板の間隔(以下、セルギャップと略す。)を一定に保つために、所定の粒径を有するガラスビーズ、プラスチックビーズ等のスペーサー粒子が使用されている。
【0003】
しかしながら、このようなビーズスペーサーを使用した場合、背面基板の凸部上に散布された少数のスペーサーのみが前面基板に接触するため、この少数のスペーサーにより支持される部分に荷重が集中し、TFT素子や電極などに損傷を与えることがあった。また、スペーサー粒子は、ガラス基板上にランダムに散布されるため、有効画素部内に前記スペーサーが存在すると、入射光が散乱を受け、液晶表示素子のコントラストが低下してしまうことがあった。
【0004】
特開平3−89320号公報および特開平4−318816号公報には、液晶表示素子を形成する基板上にアクリレート系紫外線硬化性樹脂を塗布し、これにフォトマスクを介して紫外線を照射して硬化させ、その後未硬化部分を溶剤で除去する、フォトレジスト材料を用いたスペーサーの形成方法が開示されている。これらの方法によれば、任意の場所にスペーサーを形成できるため、TFT素子や電極などの損傷が防止できる。この場合、セルギャップはフォトレジスト材料の塗布膜厚によってコントロールされる。しかしながら、この方法では、近年のスペーサーパターンの高精細化や、高精度のセルギャップの要求を満足することはできない。
【0005】
これに対し、特開平11−133600号公報には、カルボキシ基およびエポキシ基を有するアクリル共重合体からなるアルカリ可溶成分と、アクリレート系紫外線硬化性樹脂からなる感光性成分とを含有する、スペーサーパターンの微細加工が可能なアルカリ可溶型フォトレジスト材料を使用したスペーサーが開示されている。該フォトレジスト材料は微細加工が可能であり、更にエポキシ基とカルボキシ基とを有しているため、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程で熱架橋し、耐溶剤性、耐熱性および安定性の高いスペーサーパターンを得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−133600号公報に記載のアルカリ可溶型フォトレジスト材料では、得られるスペーサーパターンの塗膜物性は良好ではあるが、該レジスト材料を調製中又は保存中に、増粘や一部ゲル化が生じてしまうことがある。塗膜の紫外線未照射部分にゲル化物が混在すると、パターン形成の際にアルカリ現像で完全に未照射部分を除去することができないといった問題があり、増粘した場合には、得られるスペーサーのセルギャップ幅が過大となる問題があった。
【0007】
さらに前記アルカリ可溶型フォトレジスト材料は、汎用の光重合開始剤を使用しているので、硬化後、光重合開始剤の分解物あるいは未反応の光重合開始剤がスペーサーパターン中に残存し、液晶にブリードしてしまい、これが原因で液晶表示素子の電圧保持率の低下を引き起こすといった問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、セルギャップ精度が高く微細加工が可能で、かつ耐熱性に優れる液晶表示素子用スペーサーを提供することであり、さらに、当該スペーサーを使用し、電圧保持率が低下しない液晶表示素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、室温では安定であり、高温では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と反応し架橋構造を形成する、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基を有する重合体、及び、光開始能を有し、液晶にブリードするような残存物が生じない、マレイミド基を有する化合物を含有する光重合性組成物を使用することで、上記課題を解決した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の液晶表示素子用スペーサーは、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物とを含有する光重合性組成物の塗膜を光硬化させたものである。
【0011】
本発明で使用する光重合性組成物の1成分である、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体において、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とは、一般式(1)で表される基を表す。(以下、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基をシクロカーボネート基と略す。)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1、R2およびR3は、各々同一であっても異なっていても良い、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
前記重合体は、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と1個以上のシクロカーボネート基とを有する単量体(以下、シクロカーボネート単量体と略す。)と、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体とを共重合させることで得られる。
【0014】
本発明で使用するシクロカーボネート単量体としては、例えば、2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、6,7−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、メチル−2,3−カーボネートプロピルマレート、またはメチル−2,3−カーボネートプロピルクロトネート等が挙げられる。該シクロカーボネート単量体は、それぞれ単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0015】
前記シクロカーボネート単量体は、全単量体量に対し1〜50質量%となるよう調製することが好ましい。1質量%未満では、得られる重合体の耐熱性が低下する傾向にあり、一方、50質量%を超えると、得られる重合体の現像液に対する溶解性が十分ではない。
【0016】
本発明で使用する、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の炭素−炭素二重結合を有するモノ−およびジ−カルボン酸類、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。該単量体は、単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0017】
前記1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体の使用量は、得られる重合体の酸価(試料1g中に存在する酸基を中和するのに要した水酸化カリウムのミリグラム数)が20〜250mgKOH/gの範囲となるようにすることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満では、得られる重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が十分ではなく、また、酸価が250mgを超える量では、得られる重合体の現像液に対する溶解性が高くなりすぎる結果、光硬化後の塗膜までもが現像液に溶解してしまう傾向にある。
具体的には、該単量体が全単量体量に対し2〜89質量%となるよう調製することが好ましく、中でも2〜69質量%が好ましい。
【0018】
また、必要に応じてその他の共重合用単量体を併用してもよい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の脂環式飽和炭化水素から誘導される1価の基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸化合物、フマル酸ジメチル等のフマル酸化合物、スチレン化合物、N−メチルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。該共重合用単量体は、単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。該単量体の使用量は、多すぎると得られる重合体の現像液に対する溶解性が落ちる傾向にあるので、全単量体量に対し97質量%を超えない量とすることが好ましい。
【0019】
本発明で使用するカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体は、前記単量体組成物を重合開始剤存在下、塊状重合法、溶液重合法等の公知手法により重合することで得られ、なかでも簡便な溶液重合法により重合することが好ましい。重合に使用する溶媒は、前記単量体や得られる重合体を溶解できるものであれば特に限定されることはないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、もしくはシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、などが挙げられる。これらの有機溶媒は、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0020】
溶液重合の際に使用する重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキサノエート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
【0021】
本発明で使用するカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体は、カルボキシ基又はフェノール性ヒドロキシ基と反応しうる基として、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
【0022】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物としては、2官能以上のマレイミド化合物が好ましく、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、米国特許第6034150号公報に開示されているトリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、特開平11−124403号公報に開示されている、脂肪族マレイミドカルボン酸と脂肪族ポリオールとのエステル化反応、または、脂肪族マレイミドカルボン酸エステルと脂肪族ポリオールとのエステル交換反応により得られる脂肪族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されている、脂肪族マレイミドアルコールと脂肪族ポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られる脂肪族ポリマレイミドウレタン化合物類等の脂肪族マレイミド化合物;1,4−ビス(マレイミド)シクロヘキサン、特開平11−292874号公報に開示されている、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートとマレイミドカルボン酸とのエステル化反応により得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、特開平11−124403号公報に開示されている、脂肪族マレイミドカルボン酸と脂環式ポリオールとのエステル化反応、または、脂肪族マレイミドカルボン酸エステルと脂環式ポリオールとのエステル交換反応により得られる脂環式ポリマレイミドエステル化合物類等の脂環式マレイミド化合物;1,4−フェニレンビスマレイミド等の芳香族マレイミド化合物が挙げられる。
【0023】
本発明において、マレイミド基を有する化合物は、光重合開始剤として機能するが、マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が硬化後のスペーサーパターン部に残存することがない。なかでも、芳香環を持たない、脂肪族マレイミド化合物または脂環式マレイミド化合物は、光に対する感度が高く、得られるスペーサーパターン部の耐溶剤性および耐熱性が優れるため好ましい。
【0024】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物としては、2官能以上のマレイミド化合物が好ましく使用でき、例えば、飽和炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、脂肪族マレイミド化合物と略す)、脂環式飽和炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、脂環式マレイミド化合物と略す)、芳香環を有するマレイミド化合物等が挙げられる。中でも、光に対する感度が高く、得られるスペーサーパターン部の耐溶剤性および耐熱性が優れることから、芳香環を有しない、脂肪族マレイミド化合物や脂環式マレイミド化合物が好ましい。
【0025】
具体的には、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ビス(マレイミド)シクロヘキサン等が挙げられる。その他、特開平11−292874号公報に開示されている、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートとマレイミドカルボン酸とのエステル化反応により得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、米国特許第6034150号公報に開示されているトリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、特開平11−124403号公報に開示されている、マレイミドカルボン酸とポリオールとのエステル化反応、または、マレイミドカルボン酸エステルとポリオールとのエステル交換反応により得られるポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されている、マレイミドアルコールとポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られるポリマレイミドウレタン化合物類等の、脂肪族飽和炭化水素基や脂環式飽和炭化水素基を有し、且つエーテル結合、ウレタン結合やエステル結合を有するマレイミド化合物も好適に使用することができる。該化合物は、単独で用いることも、2種類以上を混合して使用することもできる。
本発明において、マレイミド基を有する化合物は、光重合開始剤として機能するが、マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が硬化後のスペーサーパターン部に残存することがない。
【0026】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物は、前記重合体に対して25〜150質量%の範囲で使用することが好ましい。25質量%未満では、紫外線に対する感度が低い上、所望する塗膜物性を有する硬化塗膜が得られ難く、また、パターン形成が困難になる傾向にある。一方、150質量%を越えると、得られる硬化塗膜の現像性が低下する傾向にある。
【0027】
また、本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する光重合性組成物には、塗布性、現像性を改良するために、界面活性剤を配合することもできる。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのノニオン系界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社製「メガファックF172」などのフッ素系界面活性剤、(メタ)アクリル酸重合体系界面活性剤などが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する光重合性組成物には、基板との密着性を改良するための接着助剤、保存安定剤、消泡剤、カップリング剤などを添加することもできる。
【0029】
本発明で使用する光重合性組成物は、前記諸成分を混合することにより得られる。このとき、該組成物の粘度や、得られるスペーサーの膜厚を調製するために、前記各成分と反応しないような、公知慣用の溶剤を使用することができる。中でも、沸点が80℃〜220℃の範囲にある溶剤は、塗布性に優れ、塗膜の乾燥が簡単であることから好ましく、100℃〜210℃の沸点を有する溶剤が最も好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、エトキシエチルプロピオネート、エタノール、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、カルバミン酸エステル、水、などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用することも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。不揮発性分濃度が10〜50質量%になるよう添加することが好ましい。
【0030】
次に、本発明の液晶表示素子用スペーサーの作製方法と、それを使用した液晶表示素子の作製方法について述べる。
本発明のスペーサーは、カラーフィルター等を備えた前面基板、または、TFT等を備えた背面基板に作製することができる。
前面基板は、一般に、ガラス板等の透明基板上に、カラーフィルター、保護膜、電極、ポリイミド配向膜を順に積層した構造を有しており、前面基板にスペーサーを作製する場合は、電極上、ポリイミド配向膜上、または、カラーフィルターの一部を構成するブラックマトリックス上に作製することができる。
一方、背面基板にスペーサーを作製する場合、TFT、画素電極、ポリイミド配向膜の順に積層された背面基板のTFT上、画素電極上、または、ポリイミド配向膜上に作製することができる。
ここでは、透明基板上にカラーフィルター、保護膜、電極を順に積層した前面基板の、電極上にスペーサーを作製する場合を一例に説明する。
【0031】
基板上に設けるカラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作製することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作製方法を一例に説明すると、赤、緑、青の顔料をそれぞれ分散したカラーフィルター用の熱硬化性着色組成物や光硬化性着色組成物を、ガラス板等の透明基板表面に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させることで、カラーフィルター用の画素部を作製することができる。
【0032】
基板上に設ける保護膜は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサンポリマー等の樹脂溶液を、ロールコーター法、スピンコート法等により塗布し、加熱硬化や光照射により重合することで得ることができる。
【0033】
基板上に設ける電極は、通常インジウムチンオキシド(以下、ITOと略す)の透明電極が用いられ、ITOを保護膜上にスパッタリングすることにより得ることができる。
【0034】
基板の電極上にスペーサーを設けるには、本発明で使用する光重合性組成物を電極表面に塗布後、必要に応じプリベークすることで溶剤を揮発させる。塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法等各種方法があげられる。プリベーク条件は50〜150℃で60〜900秒程度であることが好ましい。
膜厚は、プリベーク後の塗膜厚が1〜30μmとなるように、より好ましくは3〜20μmとなるようにする。
【0035】
次に、得られた塗膜面にスペーサーを形成するための所定のパターン形状を有するマスクを介して光を照射する。照射する光は紫外線から可視光線が好ましく、例えば、高圧水銀灯やメタルハライドランプなどから得られる250nm〜410nmの波長光、KrFレーザーから得られる248nmの波長光、ArFレーザーから得られる193nmの波長光があげられる。照射光量は、概ね0.03〜5J/cm2の範囲であればよい。照射光量が0.03J/cm2に満たないと、硬化性に劣る傾向にあり、一方、5J/cm2を越える光量を照射するには、出力の高いランプを使用するか、あるいは照射ラインの速度を低く設定する必要があり、経済性および生産性が劣ることになる。中でも、0.05〜3J/cm2の範囲が特に好ましい。
【0036】
光照射後、現像液により光重合性組成物の塗膜の未露光部分を除去する。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリの水溶液、などが挙げられる。また、前記アルカリ水溶液に水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を、現像液として使用することもできる。
【0037】
現像方法は、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等のいずれでもよい。現像後、水洗を行い、さらに、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させ、未露光部分を除去することによって、スペーサーパターンを形成することができる。さらに、得られたスペーサーパターンをホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、150〜250℃でポストベークし、本発明で使用する重合体のシクロカーボネート基と、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを架橋させることにより、本発明の液晶表示素子用スペーサーを得ることができる。
【0038】
本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成した基板を使用して、液晶表示素子を作製することができる。
一般に、液晶表示素子は、前面基板と背面基板とを対向させ、両基板を貼り合わせ、その間に液晶を封入することにより得ることができる。
【0039】
例えば、前面基板の電極上に本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する場合は、カラーフィルター、保護膜、電極を順に積層したガラス等の透明基板上に、前記方法に従いスペーサーを形成する。さらに、スペーサーを形成した上に配向膜を形成する。
配向膜としては、ポリイミド配向膜、光配向膜等公知慣用のものを使用することができる。形成方法としては、例えば、ポリイミド配向膜の場合、ポリイミド配向剤を塗布し、180℃以上の温度で熱硬化してポリイミド膜を得、該膜をラビング処理することで得ることができる。
【0040】
該前面基板と背面基板とを貼り合わせる方法としては、例えば、基板外縁に額縁状に公知慣用のシール剤を塗布し、貼り合わせる方法が挙げられる。例えば、シール剤としてエポキシ系シール剤を使用する場合は、背面基板の外縁に、液晶注入口を設けた形でシール剤を塗布し、その後前面基板と背面基板を位置合わせし、両基板間に圧力をかけつつ加熱しシール剤を熱硬化させる。加熱条件は、使用するシール剤の種類により異なるが、100℃〜170℃で5分間〜2時間行うのが一般的である。
【0041】
得られた液晶セルに液晶を注入し、液晶注入口を紫外線硬化樹脂で封止し、紫外線を照射して硬化させる。最後に、ラビング方向に合わせて、基板外側に偏光フィルムを貼り付けて、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0042】
本発明の液晶表示素子用スペーサーに使用する光重合性組成物は、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体を含有している。該重合体は、カルボキシ基又はフェノール性ヒドロキシ基と反応しうる基として、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
また、前記光重合性組成物は、マレイミド基を有する化合物も含有している。該化合物は、光重合開始剤として機能し、且つ該マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が生じることがなく、電圧保持率の低下を引き起こすことがない液晶表示素子を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の例において、「部」および「%」は、特に断りのない限りは質量基準のものである。
【0044】
<製造例1>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
温度計、環流冷却管、撹拌機および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後PGMAcと略す)の425.0部を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温したのち、2,3−カーボネートプロピルメタクリレート82.5部、メタクリル酸(以下MAAと略す)38.0部、ベンジルメタクリレート(以下BzMAと略す)209.5部、PGMAc97.0部およびt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート(以下P−Oと略す)16.5部からなる混合溶解物を1時間かけて滴下した。滴下終了後90℃にて2時間保持したのち、P−O1.7部を加え、さらに同温度で7時間反応させ、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−1)の溶液を得た。得られた樹脂溶液を107.5℃で1時間乾燥させた後の残留樹脂質量%(以下、不揮発成分と略す)は39.4%、ガードナー粘度はT〜Uで、ポリスチレン換算の数平均分子量は5100、分散度Mw/Mnは2.49であった。
【0045】
<製造例2>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
製造例1において、MAA38.0部を49.5部に、BzMA209.5部をブチルメタクリレートの150.8部とスチレン49.5部とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下HEMAと略す)4.3部に、P−Oの16.5部を8.5部に変更した以外は、製造例−1と同様にして、樹脂固形分の酸価が85mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は39.2%、ガードナー粘度がZ2〜Z3、そして数平均分子量が12000、分散度Mw/Mnは2.73であった。
【0046】
<製造例3>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
製造例1において、MAA38.0部を76.0部に、BzMA209.5部をBzMA122.0部、HEMA16.5部、スチレン33.0部に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂固形分の酸価が150mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−3)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は41.8%、ガードナー粘度がX〜Y、そして数平均分子量が5300、分散度Mw/Mnは2.36であった。
【0047】
<製造例4>
〔マレイミド化合物B−1の調製〕
滴下ロート、冷却管及び攪拌機を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、グリシン31.9g及び酢酸510mlを仕込み、室温にて攪拌しながら、無水マレイン酸41.7g及び酢酸175mlからなる溶液を滴下した。滴下終了後、室温で3時間攪拌を続けた後、反応を終了させた。生じた沈殿をろ取し、冷水50mlで洗浄した後、水から再結晶させてマレアミド酸71gを得た。
さらに、ディーンスターク型分留器及び攪拌機を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、前記マレアミド酸5.8g、トリエチルアミン7.1g及び無水トルエン500mlを仕込み、生成する水を除去しながら1時間、還流温度で反応した。反応混合物からトルエンを留去して得た残留物に、0.1N塩酸を加えてpH2に調製した後、酢酸エチル100mlで3回抽出した。有機相を分離し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、酢酸エチルを減圧留去して得た粗生成物をクロロホルムから再結晶させてマレイミド酢酸の淡黄色結晶2.4gを得た。
次に、ディーンスターク型分留器を備えた容量200mlのナス型フラスコに、前記のように得たマレイミド酢酸6.8g、日本乳化剤株式会社製のペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物3.1g、p−トルエンスルホン酸0.4g、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.02g、およびトルエン15mlを仕込み、40kPa、80℃の条件で生成する水を除去しながら4時間攪拌しながら反応を続けた。反応混合物をトルエン200mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム100mlで1回、水100mlで3回洗浄した。有機相を濃縮してペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物のマレイミド酢酸エステルB−1を得た。
【0048】
<製造例5>
〔マレイミド化合物B−2の調製〕
製造例4において、ペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物の代わりにアルドリッチ社製のトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用した以外は製造例4と同様の操作を行い、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートのマレイミド酢酸エステルB−2を得た。
【0049】
<製造例6>
〔マレイミド化合物B−3の調製〕
製造例4において、ペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物の代わりにヘキストジャパン株式会社製のジシクロペンタニルジメタノールを使用した以外は製造例4と同様の操作を行い、ジシクロペンタニルジメタノールのマレイミド酢酸エステルB−3を得た。
【0050】
<比較製造例1>
〔比較例用重合体の調製〕
製造例1において、滴下する混合溶解物中の2,3−カーボネートプロピルメタクリレートを使用せず、BzMAの209.5部を292.0部に変更した以外は、製造例−1と同様にして、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gの比較参考用重合体(H−1)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は40.7%、ガードナー粘度がH、そして数平均分子量が4900、分散度Mw/Mnは2.37であった。
【0051】
<比較製造例2>
〔比較例用重合体の調製〕
製造例1において、滴下する混合溶解物中の2,3−カーボネートプロピルメタクリレートをダイセル化学工業社製のエポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート「サイクロマーM−100」に、重合時のゲル化反応を防ぐために反応温度を90℃から80℃へ変更した以外は、製造例1と同様にして反応を行った。P−Oを追加して2時間後のガードナー粘度はすでにZ1−Z2であり、この時点での分子量は数平均分子量が11700、分散度Mw/Mnは6.86であり、すでに分子量分布が広がっていた。さらにその後も反応溶液が徐々に増粘したためP−Oを追加して5時間で反応を停止し、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gの比較参考用重合体(H−2)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は40.7%、ガードナー粘度がZ4−Z5、そして数平均分子量が12700、分散度Mw/Mnは25.59であり、さらに分子量分布が広がった重合体となった。
【0052】
前記製造例1〜6、比較製造例1、2で得た重合体又はマレイミド化合物を使用し、光重合性組成物を調製し、保存安定性を評価した。調製例は実施例中に記載した。次に得られた光重合性組成物を使用してスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。スペーサーパターンと液晶表示素子の形成方法、及び各評価方法については、下記に記載した。
【0053】
(光重合性組成物の保存安定性)
調製した光重合性組成物の40℃で24時間放置後の粘度を測定し、試験前粘度に対する増粘率が10%未満であれば○、10%以上であれば×とした。尚、粘度測定は、東機産業社製E型粘度計「RE−500L型粘度計」を使用した。
【0054】
(スペーサーの形成方法)
調製した光重合性組成物をガラス基板上に滴下し、スピンコーターを使用して1000回転/分で3秒間回転塗布した後、80℃で5分間ホットプレート上でプリベークして厚さ7μmの塗膜を形成した。この塗膜に所定のパターンマスクを介し、高圧水銀灯を使用して波長365nmでの照射量が0.1J/cm2の光を照射した。次いで、30℃に保持したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%水溶液で30秒間現像し、純水で1分間リンスした後、150℃で5分間ホットプレート上で乾燥させて、スペーサーパターンを得た。
【0055】
(スペーサー断面形状の評価)
得られたスペーサーパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察した。断面形状が長方形または台形であれば「○」、半円または断面に凹凸が生じていれば「×」と評価し、その結果を表1に示した。
【0056】
(加熱変形の評価)
得られたスペーサーパターンをオーブン中、280℃で60分間加熱した。スペーサーの厚さの寸法変化率が加熱前後で5%以内であり、且つ、断面形状に変化がない時を○、スペーサーの厚さの寸法変化率が加熱前後で5%を越える時、または、断面形状が長方形または台形から変形した時を×と評価し、その結果を表1に示した。
【0057】
(電圧保持率の評価)
調製した光重合性組成物をITO膜からなる透明電極付きガラス板の透明電極側に滴下し、スピンコーターを使用して1000回転/分で3秒間回転塗布した後、80℃で5分間ホットプレート上でプリベークして厚さ7μmの塗膜を形成した。この塗膜に所定のパターンマスクを介し、高圧水銀灯を使用して波長365nmでの照射量が0.1J/cm2の光を照射した。次いで、30℃に保持したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.4%水溶液で30秒間現像し、純水で1分間リンスした後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥させてスペーサー付き基板を作製した。触針型膜厚計を使用して、スペーサーの厚みをランダムに測定したところ6μm±0.03μmであった。
【0058】
前記のスペーサー付き基板および透明電極付きガラス板それぞれの外縁に、直径5μmのガラスファイバー入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、電極面が相対するように重ね合わせ圧着し、接着剤を150℃で硬化させて、液晶セルを得た。
【0059】
次いで、前記の液晶セルの液晶注入口より基板間に大日本インキ化学工業社製のネマティック型液晶組成物「ELS−001」を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止して評価用液晶表示素子を得た。この評価用液晶表示素子に5Vの電圧を印加した後、回路をオープンし、16.7m秒後の保持電圧を測定し、電圧保持率(保持電圧/印加電圧)を評価した結果を表1に示した。
【0060】
<実施例1>
(光重合性組成物の調製)
製造例1で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−1)50.0部、製造例4で調製したマレイミド化合物(B−1)14.0部、PGMAc35.4部、大日本インキ化学工業社製の界面活性剤「メガファック172」(以下、M−172と略す。)0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0061】
<実施例2>
製造例2で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)45.0部、製造例4で調製した一般式(1)で表されるマレイミド化合物(B−1)5.3部、日本化薬株式会社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHAと略す)12.3部、PGMAc25.2部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ7μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0062】
<実施例3>
製造例2で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)45.0部、製造例5で調製した一般式(2)で表されるマレイミド化合物(B−2)4.0部、DPHA9.0部、PGMAc41.5部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0063】
<実施例4>
製造例3で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−3)48.0部、製造例6で調製した一般式(3)で表されるマレイミド化合物(B−3)4.8部、DPHA11.2部、PGMAc35.3部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0064】
<比較例1>
比較製造例1で調製した比較参考用重合体(H−1)55.0部、DPHA17.0部、光重合開始剤としてイルガキュアー369を0.7部、PGMAc27.3部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.05μmのスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0065】
<比較例2>
比較製造例2で調製した比較参考用重合体(H−2)47.0部、DPHA14.0部、イルガキュアー369を0.6部、PGMAc38.4部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.3μmのスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。得られたスペーサーパターンには、断面に凹凸がみられた。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
<表1>
【0067】
【発明の効果】
本発明の液晶表示用スペーサーは、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物とを含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成される。
使用する光重合性組成物は、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入した重合体を含有しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
また、前記光重合性組成物は、マレイミド基を有する化合物も含有している。該化合物は、光重合開始剤として機能し、且つ該マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が生じることがなく、電圧保持率の低下を引き起こすことがない液晶表示素子を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置やタッチパネルなど、表示素子を構成する2枚の基板間に介在して両基板を支持し、両基板の間隔を保持する液晶表示素子用スペーサー、ならびに、当該液晶表示素子用スペーサーが配置された液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、液晶表示素子は、薄膜トランジスタ(以下、TFTと略す。)、画素電極、配向膜等を備える背面基板と、カラーフィルター、電極、配向膜等を備える前面基板とを対向させ、両基板間に液晶を封入して構成されている。そして、2枚の基板の間隔(以下、セルギャップと略す。)を一定に保つために、所定の粒径を有するガラスビーズ、プラスチックビーズ等のスペーサー粒子が使用されている。
【0003】
しかしながら、このようなビーズスペーサーを使用した場合、背面基板の凸部上に散布された少数のスペーサーのみが前面基板に接触するため、この少数のスペーサーにより支持される部分に荷重が集中し、TFT素子や電極などに損傷を与えることがあった。また、スペーサー粒子は、ガラス基板上にランダムに散布されるため、有効画素部内に前記スペーサーが存在すると、入射光が散乱を受け、液晶表示素子のコントラストが低下してしまうことがあった。
【0004】
特開平3−89320号公報および特開平4−318816号公報には、液晶表示素子を形成する基板上にアクリレート系紫外線硬化性樹脂を塗布し、これにフォトマスクを介して紫外線を照射して硬化させ、その後未硬化部分を溶剤で除去する、フォトレジスト材料を用いたスペーサーの形成方法が開示されている。これらの方法によれば、任意の場所にスペーサーを形成できるため、TFT素子や電極などの損傷が防止できる。この場合、セルギャップはフォトレジスト材料の塗布膜厚によってコントロールされる。しかしながら、この方法では、近年のスペーサーパターンの高精細化や、高精度のセルギャップの要求を満足することはできない。
【0005】
これに対し、特開平11−133600号公報には、カルボキシ基およびエポキシ基を有するアクリル共重合体からなるアルカリ可溶成分と、アクリレート系紫外線硬化性樹脂からなる感光性成分とを含有する、スペーサーパターンの微細加工が可能なアルカリ可溶型フォトレジスト材料を使用したスペーサーが開示されている。該フォトレジスト材料は微細加工が可能であり、更にエポキシ基とカルボキシ基とを有しているため、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程で熱架橋し、耐溶剤性、耐熱性および安定性の高いスペーサーパターンを得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−133600号公報に記載のアルカリ可溶型フォトレジスト材料では、得られるスペーサーパターンの塗膜物性は良好ではあるが、該レジスト材料を調製中又は保存中に、増粘や一部ゲル化が生じてしまうことがある。塗膜の紫外線未照射部分にゲル化物が混在すると、パターン形成の際にアルカリ現像で完全に未照射部分を除去することができないといった問題があり、増粘した場合には、得られるスペーサーのセルギャップ幅が過大となる問題があった。
【0007】
さらに前記アルカリ可溶型フォトレジスト材料は、汎用の光重合開始剤を使用しているので、硬化後、光重合開始剤の分解物あるいは未反応の光重合開始剤がスペーサーパターン中に残存し、液晶にブリードしてしまい、これが原因で液晶表示素子の電圧保持率の低下を引き起こすといった問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、セルギャップ精度が高く微細加工が可能で、かつ耐熱性に優れる液晶表示素子用スペーサーを提供することであり、さらに、当該スペーサーを使用し、電圧保持率が低下しない液晶表示素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、室温では安定であり、高温では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と反応し架橋構造を形成する、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基を有する重合体、及び、光開始能を有し、液晶にブリードするような残存物が生じない、マレイミド基を有する化合物を含有する光重合性組成物を使用することで、上記課題を解決した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の液晶表示素子用スペーサーは、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物とを含有する光重合性組成物の塗膜を光硬化させたものである。
【0011】
本発明で使用する光重合性組成物の1成分である、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体において、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とは、一般式(1)で表される基を表す。(以下、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基をシクロカーボネート基と略す。)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1、R2およびR3は、各々同一であっても異なっていても良い、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
前記重合体は、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と1個以上のシクロカーボネート基とを有する単量体(以下、シクロカーボネート単量体と略す。)と、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体とを共重合させることで得られる。
【0014】
本発明で使用するシクロカーボネート単量体としては、例えば、2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、6,7−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、メチル−2,3−カーボネートプロピルマレート、またはメチル−2,3−カーボネートプロピルクロトネート等が挙げられる。該シクロカーボネート単量体は、それぞれ単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0015】
前記シクロカーボネート単量体は、全単量体量に対し1〜50質量%となるよう調製することが好ましい。1質量%未満では、得られる重合体の耐熱性が低下する傾向にあり、一方、50質量%を超えると、得られる重合体の現像液に対する溶解性が十分ではない。
【0016】
本発明で使用する、1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の炭素−炭素二重結合を有するモノ−およびジ−カルボン酸類、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。該単量体は、単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0017】
前記1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合と、1個以上のカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを有する単量体の使用量は、得られる重合体の酸価(試料1g中に存在する酸基を中和するのに要した水酸化カリウムのミリグラム数)が20〜250mgKOH/gの範囲となるようにすることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満では、得られる重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が十分ではなく、また、酸価が250mgを超える量では、得られる重合体の現像液に対する溶解性が高くなりすぎる結果、光硬化後の塗膜までもが現像液に溶解してしまう傾向にある。
具体的には、該単量体が全単量体量に対し2〜89質量%となるよう調製することが好ましく、中でも2〜69質量%が好ましい。
【0018】
また、必要に応じてその他の共重合用単量体を併用してもよい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の脂環式飽和炭化水素から誘導される1価の基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸化合物、フマル酸ジメチル等のフマル酸化合物、スチレン化合物、N−メチルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。該共重合用単量体は、単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することもできる。該単量体の使用量は、多すぎると得られる重合体の現像液に対する溶解性が落ちる傾向にあるので、全単量体量に対し97質量%を超えない量とすることが好ましい。
【0019】
本発明で使用するカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体は、前記単量体組成物を重合開始剤存在下、塊状重合法、溶液重合法等の公知手法により重合することで得られ、なかでも簡便な溶液重合法により重合することが好ましい。重合に使用する溶媒は、前記単量体や得られる重合体を溶解できるものであれば特に限定されることはないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、もしくはシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、などが挙げられる。これらの有機溶媒は、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0020】
溶液重合の際に使用する重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキサノエート等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
【0021】
本発明で使用するカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体は、カルボキシ基又はフェノール性ヒドロキシ基と反応しうる基として、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
【0022】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物としては、2官能以上のマレイミド化合物が好ましく、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、米国特許第6034150号公報に開示されているトリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、特開平11−124403号公報に開示されている、脂肪族マレイミドカルボン酸と脂肪族ポリオールとのエステル化反応、または、脂肪族マレイミドカルボン酸エステルと脂肪族ポリオールとのエステル交換反応により得られる脂肪族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されている、脂肪族マレイミドアルコールと脂肪族ポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られる脂肪族ポリマレイミドウレタン化合物類等の脂肪族マレイミド化合物;1,4−ビス(マレイミド)シクロヘキサン、特開平11−292874号公報に開示されている、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートとマレイミドカルボン酸とのエステル化反応により得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、特開平11−124403号公報に開示されている、脂肪族マレイミドカルボン酸と脂環式ポリオールとのエステル化反応、または、脂肪族マレイミドカルボン酸エステルと脂環式ポリオールとのエステル交換反応により得られる脂環式ポリマレイミドエステル化合物類等の脂環式マレイミド化合物;1,4−フェニレンビスマレイミド等の芳香族マレイミド化合物が挙げられる。
【0023】
本発明において、マレイミド基を有する化合物は、光重合開始剤として機能するが、マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が硬化後のスペーサーパターン部に残存することがない。なかでも、芳香環を持たない、脂肪族マレイミド化合物または脂環式マレイミド化合物は、光に対する感度が高く、得られるスペーサーパターン部の耐溶剤性および耐熱性が優れるため好ましい。
【0024】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物としては、2官能以上のマレイミド化合物が好ましく使用でき、例えば、飽和炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、脂肪族マレイミド化合物と略す)、脂環式飽和炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、脂環式マレイミド化合物と略す)、芳香環を有するマレイミド化合物等が挙げられる。中でも、光に対する感度が高く、得られるスペーサーパターン部の耐溶剤性および耐熱性が優れることから、芳香環を有しない、脂肪族マレイミド化合物や脂環式マレイミド化合物が好ましい。
【0025】
具体的には、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ビス(マレイミド)シクロヘキサン等が挙げられる。その他、特開平11−292874号公報に開示されている、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートとマレイミドカルボン酸とのエステル化反応により得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、米国特許第6034150号公報に開示されているトリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、特開平11−124403号公報に開示されている、マレイミドカルボン酸とポリオールとのエステル化反応、または、マレイミドカルボン酸エステルとポリオールとのエステル交換反応により得られるポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されている、マレイミドアルコールとポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られるポリマレイミドウレタン化合物類等の、脂肪族飽和炭化水素基や脂環式飽和炭化水素基を有し、且つエーテル結合、ウレタン結合やエステル結合を有するマレイミド化合物も好適に使用することができる。該化合物は、単独で用いることも、2種類以上を混合して使用することもできる。
本発明において、マレイミド基を有する化合物は、光重合開始剤として機能するが、マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が硬化後のスペーサーパターン部に残存することがない。
【0026】
本発明で使用するマレイミド基を有する化合物は、前記重合体に対して25〜150質量%の範囲で使用することが好ましい。25質量%未満では、紫外線に対する感度が低い上、所望する塗膜物性を有する硬化塗膜が得られ難く、また、パターン形成が困難になる傾向にある。一方、150質量%を越えると、得られる硬化塗膜の現像性が低下する傾向にある。
【0027】
また、本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する光重合性組成物には、塗布性、現像性を改良するために、界面活性剤を配合することもできる。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのノニオン系界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社製「メガファックF172」などのフッ素系界面活性剤、(メタ)アクリル酸重合体系界面活性剤などが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する光重合性組成物には、基板との密着性を改良するための接着助剤、保存安定剤、消泡剤、カップリング剤などを添加することもできる。
【0029】
本発明で使用する光重合性組成物は、前記諸成分を混合することにより得られる。このとき、該組成物の粘度や、得られるスペーサーの膜厚を調製するために、前記各成分と反応しないような、公知慣用の溶剤を使用することができる。中でも、沸点が80℃〜220℃の範囲にある溶剤は、塗布性に優れ、塗膜の乾燥が簡単であることから好ましく、100℃〜210℃の沸点を有する溶剤が最も好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、エトキシエチルプロピオネート、エタノール、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、カルバミン酸エステル、水、などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用することも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。不揮発性分濃度が10〜50質量%になるよう添加することが好ましい。
【0030】
次に、本発明の液晶表示素子用スペーサーの作製方法と、それを使用した液晶表示素子の作製方法について述べる。
本発明のスペーサーは、カラーフィルター等を備えた前面基板、または、TFT等を備えた背面基板に作製することができる。
前面基板は、一般に、ガラス板等の透明基板上に、カラーフィルター、保護膜、電極、ポリイミド配向膜を順に積層した構造を有しており、前面基板にスペーサーを作製する場合は、電極上、ポリイミド配向膜上、または、カラーフィルターの一部を構成するブラックマトリックス上に作製することができる。
一方、背面基板にスペーサーを作製する場合、TFT、画素電極、ポリイミド配向膜の順に積層された背面基板のTFT上、画素電極上、または、ポリイミド配向膜上に作製することができる。
ここでは、透明基板上にカラーフィルター、保護膜、電極を順に積層した前面基板の、電極上にスペーサーを作製する場合を一例に説明する。
【0031】
基板上に設けるカラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作製することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作製方法を一例に説明すると、赤、緑、青の顔料をそれぞれ分散したカラーフィルター用の熱硬化性着色組成物や光硬化性着色組成物を、ガラス板等の透明基板表面に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させることで、カラーフィルター用の画素部を作製することができる。
【0032】
基板上に設ける保護膜は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサンポリマー等の樹脂溶液を、ロールコーター法、スピンコート法等により塗布し、加熱硬化や光照射により重合することで得ることができる。
【0033】
基板上に設ける電極は、通常インジウムチンオキシド(以下、ITOと略す)の透明電極が用いられ、ITOを保護膜上にスパッタリングすることにより得ることができる。
【0034】
基板の電極上にスペーサーを設けるには、本発明で使用する光重合性組成物を電極表面に塗布後、必要に応じプリベークすることで溶剤を揮発させる。塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法等各種方法があげられる。プリベーク条件は50〜150℃で60〜900秒程度であることが好ましい。
膜厚は、プリベーク後の塗膜厚が1〜30μmとなるように、より好ましくは3〜20μmとなるようにする。
【0035】
次に、得られた塗膜面にスペーサーを形成するための所定のパターン形状を有するマスクを介して光を照射する。照射する光は紫外線から可視光線が好ましく、例えば、高圧水銀灯やメタルハライドランプなどから得られる250nm〜410nmの波長光、KrFレーザーから得られる248nmの波長光、ArFレーザーから得られる193nmの波長光があげられる。照射光量は、概ね0.03〜5J/cm2の範囲であればよい。照射光量が0.03J/cm2に満たないと、硬化性に劣る傾向にあり、一方、5J/cm2を越える光量を照射するには、出力の高いランプを使用するか、あるいは照射ラインの速度を低く設定する必要があり、経済性および生産性が劣ることになる。中でも、0.05〜3J/cm2の範囲が特に好ましい。
【0036】
光照射後、現像液により光重合性組成物の塗膜の未露光部分を除去する。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリの水溶液、などが挙げられる。また、前記アルカリ水溶液に水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を、現像液として使用することもできる。
【0037】
現像方法は、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等のいずれでもよい。現像後、水洗を行い、さらに、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させ、未露光部分を除去することによって、スペーサーパターンを形成することができる。さらに、得られたスペーサーパターンをホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、150〜250℃でポストベークし、本発明で使用する重合体のシクロカーボネート基と、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とを架橋させることにより、本発明の液晶表示素子用スペーサーを得ることができる。
【0038】
本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成した基板を使用して、液晶表示素子を作製することができる。
一般に、液晶表示素子は、前面基板と背面基板とを対向させ、両基板を貼り合わせ、その間に液晶を封入することにより得ることができる。
【0039】
例えば、前面基板の電極上に本発明の液晶表示素子用スペーサーを形成する場合は、カラーフィルター、保護膜、電極を順に積層したガラス等の透明基板上に、前記方法に従いスペーサーを形成する。さらに、スペーサーを形成した上に配向膜を形成する。
配向膜としては、ポリイミド配向膜、光配向膜等公知慣用のものを使用することができる。形成方法としては、例えば、ポリイミド配向膜の場合、ポリイミド配向剤を塗布し、180℃以上の温度で熱硬化してポリイミド膜を得、該膜をラビング処理することで得ることができる。
【0040】
該前面基板と背面基板とを貼り合わせる方法としては、例えば、基板外縁に額縁状に公知慣用のシール剤を塗布し、貼り合わせる方法が挙げられる。例えば、シール剤としてエポキシ系シール剤を使用する場合は、背面基板の外縁に、液晶注入口を設けた形でシール剤を塗布し、その後前面基板と背面基板を位置合わせし、両基板間に圧力をかけつつ加熱しシール剤を熱硬化させる。加熱条件は、使用するシール剤の種類により異なるが、100℃〜170℃で5分間〜2時間行うのが一般的である。
【0041】
得られた液晶セルに液晶を注入し、液晶注入口を紫外線硬化樹脂で封止し、紫外線を照射して硬化させる。最後に、ラビング方向に合わせて、基板外側に偏光フィルムを貼り付けて、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0042】
本発明の液晶表示素子用スペーサーに使用する光重合性組成物は、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とを有する重合体を含有している。該重合体は、カルボキシ基又はフェノール性ヒドロキシ基と反応しうる基として、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
また、前記光重合性組成物は、マレイミド基を有する化合物も含有している。該化合物は、光重合開始剤として機能し、且つ該マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が生じることがなく、電圧保持率の低下を引き起こすことがない液晶表示素子を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の例において、「部」および「%」は、特に断りのない限りは質量基準のものである。
【0044】
<製造例1>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
温度計、環流冷却管、撹拌機および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後PGMAcと略す)の425.0部を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温したのち、2,3−カーボネートプロピルメタクリレート82.5部、メタクリル酸(以下MAAと略す)38.0部、ベンジルメタクリレート(以下BzMAと略す)209.5部、PGMAc97.0部およびt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート(以下P−Oと略す)16.5部からなる混合溶解物を1時間かけて滴下した。滴下終了後90℃にて2時間保持したのち、P−O1.7部を加え、さらに同温度で7時間反応させ、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−1)の溶液を得た。得られた樹脂溶液を107.5℃で1時間乾燥させた後の残留樹脂質量%(以下、不揮発成分と略す)は39.4%、ガードナー粘度はT〜Uで、ポリスチレン換算の数平均分子量は5100、分散度Mw/Mnは2.49であった。
【0045】
<製造例2>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
製造例1において、MAA38.0部を49.5部に、BzMA209.5部をブチルメタクリレートの150.8部とスチレン49.5部とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下HEMAと略す)4.3部に、P−Oの16.5部を8.5部に変更した以外は、製造例−1と同様にして、樹脂固形分の酸価が85mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は39.2%、ガードナー粘度がZ2〜Z3、そして数平均分子量が12000、分散度Mw/Mnは2.73であった。
【0046】
<製造例3>
〔カルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体の調製〕
製造例1において、MAA38.0部を76.0部に、BzMA209.5部をBzMA122.0部、HEMA16.5部、スチレン33.0部に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂固形分の酸価が150mgKOH/gのカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−3)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は41.8%、ガードナー粘度がX〜Y、そして数平均分子量が5300、分散度Mw/Mnは2.36であった。
【0047】
<製造例4>
〔マレイミド化合物B−1の調製〕
滴下ロート、冷却管及び攪拌機を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、グリシン31.9g及び酢酸510mlを仕込み、室温にて攪拌しながら、無水マレイン酸41.7g及び酢酸175mlからなる溶液を滴下した。滴下終了後、室温で3時間攪拌を続けた後、反応を終了させた。生じた沈殿をろ取し、冷水50mlで洗浄した後、水から再結晶させてマレアミド酸71gを得た。
さらに、ディーンスターク型分留器及び攪拌機を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、前記マレアミド酸5.8g、トリエチルアミン7.1g及び無水トルエン500mlを仕込み、生成する水を除去しながら1時間、還流温度で反応した。反応混合物からトルエンを留去して得た残留物に、0.1N塩酸を加えてpH2に調製した後、酢酸エチル100mlで3回抽出した。有機相を分離し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、酢酸エチルを減圧留去して得た粗生成物をクロロホルムから再結晶させてマレイミド酢酸の淡黄色結晶2.4gを得た。
次に、ディーンスターク型分留器を備えた容量200mlのナス型フラスコに、前記のように得たマレイミド酢酸6.8g、日本乳化剤株式会社製のペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物3.1g、p−トルエンスルホン酸0.4g、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.02g、およびトルエン15mlを仕込み、40kPa、80℃の条件で生成する水を除去しながら4時間攪拌しながら反応を続けた。反応混合物をトルエン200mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム100mlで1回、水100mlで3回洗浄した。有機相を濃縮してペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物のマレイミド酢酸エステルB−1を得た。
【0048】
<製造例5>
〔マレイミド化合物B−2の調製〕
製造例4において、ペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物の代わりにアルドリッチ社製のトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用した以外は製造例4と同様の操作を行い、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートのマレイミド酢酸エステルB−2を得た。
【0049】
<製造例6>
〔マレイミド化合物B−3の調製〕
製造例4において、ペンタエリスリトールのテトラエチレンオキシド付加物の代わりにヘキストジャパン株式会社製のジシクロペンタニルジメタノールを使用した以外は製造例4と同様の操作を行い、ジシクロペンタニルジメタノールのマレイミド酢酸エステルB−3を得た。
【0050】
<比較製造例1>
〔比較例用重合体の調製〕
製造例1において、滴下する混合溶解物中の2,3−カーボネートプロピルメタクリレートを使用せず、BzMAの209.5部を292.0部に変更した以外は、製造例−1と同様にして、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gの比較参考用重合体(H−1)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は40.7%、ガードナー粘度がH、そして数平均分子量が4900、分散度Mw/Mnは2.37であった。
【0051】
<比較製造例2>
〔比較例用重合体の調製〕
製造例1において、滴下する混合溶解物中の2,3−カーボネートプロピルメタクリレートをダイセル化学工業社製のエポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート「サイクロマーM−100」に、重合時のゲル化反応を防ぐために反応温度を90℃から80℃へ変更した以外は、製造例1と同様にして反応を行った。P−Oを追加して2時間後のガードナー粘度はすでにZ1−Z2であり、この時点での分子量は数平均分子量が11700、分散度Mw/Mnは6.86であり、すでに分子量分布が広がっていた。さらにその後も反応溶液が徐々に増粘したためP−Oを追加して5時間で反応を停止し、樹脂固形分の酸価が75mgKOH/gの比較参考用重合体(H−2)を得た。得られた樹脂溶液の不揮発成分は40.7%、ガードナー粘度がZ4−Z5、そして数平均分子量が12700、分散度Mw/Mnは25.59であり、さらに分子量分布が広がった重合体となった。
【0052】
前記製造例1〜6、比較製造例1、2で得た重合体又はマレイミド化合物を使用し、光重合性組成物を調製し、保存安定性を評価した。調製例は実施例中に記載した。次に得られた光重合性組成物を使用してスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。スペーサーパターンと液晶表示素子の形成方法、及び各評価方法については、下記に記載した。
【0053】
(光重合性組成物の保存安定性)
調製した光重合性組成物の40℃で24時間放置後の粘度を測定し、試験前粘度に対する増粘率が10%未満であれば○、10%以上であれば×とした。尚、粘度測定は、東機産業社製E型粘度計「RE−500L型粘度計」を使用した。
【0054】
(スペーサーの形成方法)
調製した光重合性組成物をガラス基板上に滴下し、スピンコーターを使用して1000回転/分で3秒間回転塗布した後、80℃で5分間ホットプレート上でプリベークして厚さ7μmの塗膜を形成した。この塗膜に所定のパターンマスクを介し、高圧水銀灯を使用して波長365nmでの照射量が0.1J/cm2の光を照射した。次いで、30℃に保持したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%水溶液で30秒間現像し、純水で1分間リンスした後、150℃で5分間ホットプレート上で乾燥させて、スペーサーパターンを得た。
【0055】
(スペーサー断面形状の評価)
得られたスペーサーパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察した。断面形状が長方形または台形であれば「○」、半円または断面に凹凸が生じていれば「×」と評価し、その結果を表1に示した。
【0056】
(加熱変形の評価)
得られたスペーサーパターンをオーブン中、280℃で60分間加熱した。スペーサーの厚さの寸法変化率が加熱前後で5%以内であり、且つ、断面形状に変化がない時を○、スペーサーの厚さの寸法変化率が加熱前後で5%を越える時、または、断面形状が長方形または台形から変形した時を×と評価し、その結果を表1に示した。
【0057】
(電圧保持率の評価)
調製した光重合性組成物をITO膜からなる透明電極付きガラス板の透明電極側に滴下し、スピンコーターを使用して1000回転/分で3秒間回転塗布した後、80℃で5分間ホットプレート上でプリベークして厚さ7μmの塗膜を形成した。この塗膜に所定のパターンマスクを介し、高圧水銀灯を使用して波長365nmでの照射量が0.1J/cm2の光を照射した。次いで、30℃に保持したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.4%水溶液で30秒間現像し、純水で1分間リンスした後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥させてスペーサー付き基板を作製した。触針型膜厚計を使用して、スペーサーの厚みをランダムに測定したところ6μm±0.03μmであった。
【0058】
前記のスペーサー付き基板および透明電極付きガラス板それぞれの外縁に、直径5μmのガラスファイバー入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、電極面が相対するように重ね合わせ圧着し、接着剤を150℃で硬化させて、液晶セルを得た。
【0059】
次いで、前記の液晶セルの液晶注入口より基板間に大日本インキ化学工業社製のネマティック型液晶組成物「ELS−001」を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止して評価用液晶表示素子を得た。この評価用液晶表示素子に5Vの電圧を印加した後、回路をオープンし、16.7m秒後の保持電圧を測定し、電圧保持率(保持電圧/印加電圧)を評価した結果を表1に示した。
【0060】
<実施例1>
(光重合性組成物の調製)
製造例1で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−1)50.0部、製造例4で調製したマレイミド化合物(B−1)14.0部、PGMAc35.4部、大日本インキ化学工業社製の界面活性剤「メガファック172」(以下、M−172と略す。)0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0061】
<実施例2>
製造例2で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)45.0部、製造例4で調製した一般式(1)で表されるマレイミド化合物(B−1)5.3部、日本化薬株式会社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHAと略す)12.3部、PGMAc25.2部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ7μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0062】
<実施例3>
製造例2で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−2)45.0部、製造例5で調製した一般式(2)で表されるマレイミド化合物(B−2)4.0部、DPHA9.0部、PGMAc41.5部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0063】
<実施例4>
製造例3で調製したカルボキシ基およびシクロカーボネート基を有する重合体(A−3)48.0部、製造例6で調製した一般式(3)で表されるマレイミド化合物(B−3)4.8部、DPHA11.2部、PGMAc35.3部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.03μmの、厚みむらがないスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0064】
<比較例1>
比較製造例1で調製した比較参考用重合体(H−1)55.0部、DPHA17.0部、光重合開始剤としてイルガキュアー369を0.7部、PGMAc27.3部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.05μmのスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0065】
<比較例2>
比較製造例2で調製した比較参考用重合体(H−2)47.0部、DPHA14.0部、イルガキュアー369を0.6部、PGMAc38.4部、M−172を0.03部を加え混合した後、孔径1.0μmのフィルターでろ過し、光重合性組成物を得た。該光重合性組成物を使用して、厚さ6μm±0.3μmのスペーサーパターンを作製し、断面形状と加熱変形を評価した。得られたスペーサーパターンには、断面に凹凸がみられた。また得られた光重合性組成物を使用したスペーサーパターンを有する液晶表示素子を作製し、電圧保持率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
<表1>
【0067】
【発明の効果】
本発明の液晶表示用スペーサーは、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物とを含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成される。
使用する光重合性組成物は、エポキシ基の代わりに、常温において安定なシクロカーボネート基を導入した重合体を含有しているので、保存安定性に優れる。その結果、ゲル化等が生じないので、セルギャップ精度に優れたスペーサーパターンを得ることができる。更に、スペーサーパターン形成工程後のプリベーク工程では、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基とシクロカーボネート基とが反応し架橋構造を形成するので、耐熱性に優れ、熱変形を起こすことのないスペーサーパターンを得ることができる。
また、前記光重合性組成物は、マレイミド基を有する化合物も含有している。該化合物は、光重合開始剤として機能し、且つ該マレイミド基は重合性を有するので、重合性モノマーとして硬化物に組み込まれる。そのため、液晶にブリードするような光分解物が生じることがなく、電圧保持率の低下を引き起こすことがない液晶表示素子を得ることができる。
Claims (3)
- カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物を含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成されることを特徴とする液晶表示素子用スペーサー。
- マレイミド基を有する化合物が、脂肪族マレイミド化合物または脂環式マレイミド化合物である請求項1記載の液晶表示素子用スペーサー。
- 2枚の基板の間に液晶を挟持した液晶表示素子において、基板間隔を保持するスペーサーが、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基と2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル基とを有する重合体、およびマレイミド基を有する化合物とを含有する光重合性組成物の光硬化塗膜により形成されることを特徴とする液晶表示素子。
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