JP2004012405A - 時計文字板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透光性プラスチック基板に金属膜をパターニングして形成し、高級感を感じさせる時計用文字板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透光性プラスチック基板を50〜110℃に加熱し、クロム膜及び金膜を所定量形成、裏面に保護膜を形成後、レジスト塗布し80〜100℃の温度で1度の熱処理を行い、フォトリソグラフィー技術を用いて、レジスト膜・クロム膜・金膜をエッチングし、最後にレジスト膜をアルカリ溶液で剥離することを特徴とする時計文字板。
【選択図】       図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は時計文字板とその製造方法に関し、とくに太陽電池の上面に設けられた時計文字板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池を有する時計においては、太陽電池は光を効率よく吸収して発電を行うために、外から見えるような構造で使用するのが一般的な手段となっている。このような手段では、太陽電池が独特の濃紫の色を有するために、時計としての外観的な文字板の色やデザインは大きな制約を受けてしまう。
【0003】
したがって、これらを改善するために、例えば、特公平5−38464号公報には、太陽電池と、この太陽電池の前面に設けられて太陽電池の発電に寄与する波長域の光を透過するカラーフィルタと、太陽電池とカラーフィルタとの間に設けられてカラーフィルタにより透過した光の一部を透過し、残りを四方に散乱する散乱層とからなるカラー拡散層とを有する色つき太陽電池が開示されている。
【0004】
さらに近年、エコロジーの点からも太陽電池時計は更にそのニーズが高まりつつあり、時計文字板の色調バリエーションも非常に多く求められており、特に高級感が演出できる金色系や白系の金属色や金属光沢を有する太陽電池用の時計文字板が、非常に強く望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術にあたっては、着色および白色化はできても高級感を付与できる金属色調を得ることはできない。前記金色系および白系の金属色や金属光沢を得るためには時計文字板上に金属膜を形成する必要があるが、金属膜はその性質上、光を透過させず全て反射するために、太陽電池用の時計文字板用の材料としては全く不向きであり、使用するこことが不可能であった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するべく成されたもので、その目的とするところは時計文字板として特に廉価で加工性の良好な透光性プラスチック基板を用い、前記透光性プラスチック基板上に金膜や金合金膜、あるいはアルミニウム膜からなる金属膜を形成することを可能にするとともに、太陽電池の発電に必要な光量は透光性プラスチック基板上に形成した金属膜に装飾模様や文字あるいはマークなどのパターン化を行うことにより光を透過させるもので、さらに前記パターンによる文字板の光透過率を工夫することで、太陽電池を見えなくすると同時に、目視上はほぼ完全な金色や白色の金属色や光沢を有する高級感に優れた太陽電池用の時計文字板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の時計文字板は、太陽電池の上面に設けられた透光過性基板上に装飾模様や文字およびマークなどのパターンが形成されている時計文字板であって、前記透光性基板が透光性プラスチック基板からなり、前記装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンが金属膜で形成されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記透光性プラスチック基板にポリカーボネイト基板(以下、ポリカ基板と記す)あるいはアクリル基板を用いることが好ましい。
【0009】
さらに、前記金属膜からなる装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンが形成されている時計文字板であって、該時計文字板の光透過率が0%より大きく50%以下であることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記光透過率が30%以下であることが好ましい。
【0011】
さらに、前記金属膜がクロム膜と金膜あるいは金合金膜との2層膜であることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記金属膜がアルミニウム(Al)膜であることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記クロム膜の膜厚が100Åから1,000Åの範囲にあることが好ましい。
【0014】
さらに、前記金膜あるいは金合金膜の膜厚が500Åから3,000Åの範囲にあることが好ましい。
【0015】
さらに、前記アルミニウム膜の膜厚が500Åから3,000Åであることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法としては、透光性プラスチック基板を50℃から110℃の範囲で基板加熱する工程と、前記透光性プラスチック基板の全面にクロム膜を100Åから1,000Åの膜厚範囲に形成する工程と、つづけて全面に金膜または金合金膜の膜厚を500Åから3,000Åの膜厚範囲に形成する工程と、前記透光性プラスチックの裏面に感光性レジストにたいする保護膜を形成する工程と、前記金膜または金合金膜の全面に前記感光性レジストを塗布しレジスト膜を形成するする工程と、前記保護膜を剥離する工程と、前記レジスト膜を80℃から100℃の温度で熱硬化処理を行う工程と、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法により装飾模様や文字およびマークなどのパターンを前記レジスト膜に露光する行程と、現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程と、前記レジスト膜をエッチングマスクとして用い前記金膜または金合金膜とクロム膜を連続してエッチングする工程と、つづけて前記レジスト膜をアルカリ溶液で剥離することを特徴とする。
【0017】
さらに、透光性プラスチック基板を50℃から110℃の範囲で基板加熱する工程と、前記透光性プラスチック基板の全面にアルミニウム膜を500Åから3,000Åの膜厚範囲に形成する工程と、前記透光性プラスチック基板の裏面に感光性レジストにたいする保護膜を形成する工程と、前記アルミニウム膜の全面に前記感光性レジスト膜を塗布しレジスト膜を形成する工程と、前記保護膜を剥離する工程と、前記レジスト膜を80℃から100℃の温度で熱硬化処理を行う工程と、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法により装飾模様や文字およびマークなどのパターンを前記レジスト膜に露光する工程と、現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程と、つづけて前記レジスト膜をエッチングマスクとして前記現像液により前記アルミニウム膜をエッチングする工程と、前記レジスト膜をイソプロピルアルコール(以下、IPAと記す。)で剥離することを特徴とする。
【0018】
さらに、前記クロム膜および金膜あるいは金合金膜がスパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法(物理気相法)により形成されていることが好ましい。
【0019】
さらに、前記アルミニウム膜がスパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法(物理気相法)により形成されていることが好ましい。
【0020】
【作用】
上記した本発明によれば、光を透過する透光性プラスチック基板を用い、前記透光性プラスチック基板の全面に、太陽電池の発電に必要な光量を透過する金属膜の装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンを形成することで、太陽電池を見えなくすると同時に、目視上はほぼ完全な金色や白色の金属色や光沢を有する高級感に優れた太陽電池用の時計文字板を達成することが可能である。
【0021】
さらに、前記透光性プラスチック基板にポリカ基板あるいはアクリル基板を用いることで、高い透光性が得られうえに、加工性が非常に良好であるために高い基板歩留まりが可能となり、さらに非常に廉価な基板であり時計文字板の低コスト化が達成できる。
【0022】
また、光透過率を50%以下にすることで非常に美しい金属色を表現でき、最近では太陽電池の発電効率が向上しているので、特に前記光透過率を30%以下にすることも可能であり、この場合では外観上ほぼ完全に太陽電池を遮蔽し、前記パターンのデザインを工夫すれば従来にないほどの高級感に溢れた時計文字板が得られる。
【0023】
さらに、クロム膜と金膜あるいは金合金膜との2層膜からなる金属膜を用いることで金色系の時計文字板が可能となり、アルミニウム膜を用いることで白系の時計文字板が達成でき、多くの金属色のバリエーションを得ることが可能となる。
【0024】
そして、金の膜厚が500Åから3,000Åの膜厚範囲に、またアルミニウム膜の膜厚が500Åから3,000Åの範囲にあれば、それぞれ完全な金属色を得ることが可能であるうえに、膜厚が薄いために膜応力も十分に少なく、前記透光性プラスチック基板の成膜時の反りが防止できるとともに、さらに成膜の短時間化が可能となり工程コストの低減も実現できる。
【0025】
また、本発明の製造法によれば、フォトリソグラフィー法により金属膜のパターン化を行うために、非常に微細で、高級感に溢れる太陽電池用の時計文字板が可能であり、さらに前記パターンの設計の自由度はほとんど無限である。
【0026】
さらに通常、前記透光性プラスチック基板上にはフォトリソグラフィー法に耐えるほどの密着力ある金属膜を形成するのは困難であるが、透光性プラスチック基板の耐熱性の低い点を考慮し、成膜時に50℃から110℃の範囲で基板加熱することで、また金色系の金属膜の場合には、密着を向上させるために100Åから1,000Åの膜厚のクロム膜を密着層として導入し、白系のアルミニウム膜の場合には膜厚を500Åから3000Åの範囲にすることで密着性を得ることが可能となる。
【0027】
また、前記透光性プラスチック基板は耐溶剤性がなく、フォトリソグラフィー法で多用される溶剤(感光性レジストやレジスト膜の剥離工程には多量の溶剤が含まれる)に容易に溶解し、基板表面が非常に白濁し透光性が失われてしまう。従って本製造方法では前記感光性レジストを塗布する工程では、透光性プラスチック基板の裏面に感光性レジストが回り込みにより白濁を防ぐために保護膜を形成し、さらにレジスト膜の剥離には金膜あるいは金合金膜の場合はアルカリ溶液を、アルミニウム膜にはIPAを用いることで透光性プラスチック基板の白濁を防止できる。
【0028】
さらに、前記レジスト膜の剥離に専用の剥離液を用いず、前記アルカリ溶液やIPAで容易に行うためには、レジスト膜の熱硬化処理はレジスト膜の形成後に80℃から100℃の熱硬化処理を一回のみにし、レジスト膜中に含まれる溶媒量を適度に保つことで達成できる。
【0029】
さらに、前記アルミニウム膜は酸やアルカリ溶液に容易にエッチングされやすく、前記現像液(アルカリ系溶液)にもエッチングされるために、レジスト膜の現像とアルミニウム膜のエッチングとを現像液を用いた連続した工程で行えることが可能となり、エッチングに必要な薬液や工程が不要になり、高歩留まりが期待でき、工程の大幅な短縮により低コスト化が実現される。
【0030】
また、前記した透光性プラスチック基板の耐熱性が低いので、熱による基板の反りなどを発生させないためには、前記金属膜の成膜方法も、基板温度が低温で成膜可能な真空蒸着法やスパッタリング法などPVD法で達成される。
【0031】
以上、本発明とその効果によって、従来にない透光性プラスチック上に金色や白系の金属色の装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンにより高級感の溢れた太陽電池用の時計文字板を、高い歩留まりと低コストでの提供が可能となる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1(A)は本発明による実施形態の一例の平面図で、時計文字板11は透光性プラスチック基板13上に装飾模様や文字あるいはマークなどのパターン15が金属膜17により形成されている。前記パターン15は装飾模様のみを記しているが文字またはマークなどのパターンも可能なことは明らかである。(B)は(A)のBB断面図で、前記金属膜17が500Åから1,000Åの膜厚範囲にあるクロム膜19と500Åから3,000Åの膜厚範囲にある金膜または金合金膜21の2層膜で構成され、金色系の金属色や光沢を有する太陽電池用の時計文字板を可能としている。
【0033】
図2(C)も本発明による実施形態の他の一例を示す平面図で、時計文字板11は透光性プラスチック基板13上に装飾模様や文字あるいはマークなどのパターン15が金属膜17により形成されている。(D)は(C)のDD断面図で、前記金属膜17が500Åから3,000Åの膜厚範囲にあるアルミニウム膜23の単層からなり、白系の金属色や光沢を有する太陽電池用の時計文字板を可能としている。
【0034】
前記図1および図2で述べた前記透光性プラスチック基板13には、可視光の透明率が高く太陽電池用の時計文字板11の基板に適し、さらに加工性にも非常に優れ、屈曲することもできるポリカ基板やアクリル基板を用いた。基板厚さはそれぞれ0.4〜0.8mmとした。前記基板厚さでの機械加工性は非常に良好で、さらにガラスやセラミックス基板などと異なり破損することが無く、また材料としても廉価であるため、時計文字板の高い歩留まりと低コスト化が可能である。
【0035】
また、前記時計文字板に入射する全光量をIとし、時計文字板を透過後の全光量をIsとし、Is/I×100(%)を光透過率と定義すると、太陽電池の発電に必要な光量はパターン15によって得られる光透過率によって決まるが、太陽電池を見えなくすると同時に、目視上はほぼ完全な金色や白色の金属色や光沢を有する時計文字板に見えるべく、前記光透過率を50%以下とした。これ以上に透過率を大きくすると、太陽電池の濃紫の色が見え始めるとともに、金属膜17からの反射量が減少するので時計文字板の金属感が失われてしまう。
【0036】
さらに、最近は、太陽電池の発電効率の向上は著しく、室内光下(数百ルクス程度)においても前記光透過率が30%以下であっても発電容量としては十分実用化が可能であることが分かった。したがって、前記光透過率が30%以下の場合はより一層効果的に太陽電池を遮蔽するだけではなく、金属膜17からの光反射量が多くなるので、目視上ではほぼ完全な金色や白色の金属色や光沢を得ることが可能となり、パターン15に種々のデザインを施すことによって従来にないほどの精密感や高級感に溢れる時計文字板が達成できる。
【0037】
以上は、太陽電池を時計文字板の下面に配設した場合の記述であるが、太陽電池の変わりにEL板を配設することにより従来にない輝きを有する時計文字板が達成できる。
【0038】
つづいて、図1で説明した金色系の金属膜17を有する時計文字板11の製造方法を、図3を用いて説明する。図3(1)から(6)は本発明による製造方法の工程の断面図である。
【0039】
まず、図3(1)に示すように、時計文字板11の基板となる透光性プラスチック基板13の一方の面全面に、DC(直流)スパッタリング法(以下、DCスパッタ法と記す)を用い、クロム膜19を100Åから1,000Åの膜厚で成膜し、続いて全面にDCスパッタ法を用い金膜21を500Åから3,000Åの膜厚で成膜し、金属膜17を2層膜として形成した。金色のバリエーションを得るため金膜21の代わりに金合金膜などを用いることも可能である。本発明の実施形態では前記透光性プラスチック基板13にはポリカ基板とアクリル基板を用いた。
【0040】
上記クロム膜19および金膜21の成膜法には、透光性プラスチック13が溶融しない低温度での膜形成が出来る手法が必須であり、基板温度が低温で成膜可能なスパッタリング法や真空蒸着法などのPVD法が好ましい。
【0041】
また、金膜21は化学的に安定な貴金属であるため、前記PVD法などでポリカ基板やアクリル基板を用いた透光性プラスチック基板13上に成膜しても、密着力が全く得られず剥離してしまう。したがって透光性プラスチック基板13と金膜21との密着力を高める目的として、前記クロム膜19を密着層として導入した。ここで重要な点は前記クロム膜19の膜厚で、厚すぎると膜の内部応力によりポリカ基板が反ったり、また薄すぎると密着力不足が生じたりするので、密着層として必要最小限の範囲に設定することである。クロム膜19の膜厚は300Åから750Åがより好ましい。
【0042】
さらに、前記金膜21の膜応力も剥離の大きな要因となるために、膜厚は必要最小限に設定するほうがより好ましい。ただし、金膜21が薄すぎると透過光が増えクロム膜19が見え始めるために、金膜21の金色の美観が失われる。より好ましい条件としては金膜21の膜厚が750Åから2,000Åの範囲である。
【0043】
さらに前記密着性を高めるための手段として、クロム膜19及び金膜21のDCスパッタ成膜時のプラスチック基板温度を50〜110℃に設定した。本発明者の実験では25℃の室温で成膜したところ、マイクロクラックが発生し、簡単に基板から剥離してしまった。前記基板温度も密着性向上に大きな役割を果たしているために、ポリカ基板やアクリル基板など透光性プラスチック基板13の耐熱性の限界内で、より高い基板温度に設定することがより望ましい。上記した手段により、透光プラスチック基板13と金膜21との高い密着性を得ることが可能となった。
【0044】
次に、図3(2)に示すように、金膜21の上にレジスト膜を形成するのであるが、それに先立って透光プラスチック基板13の裏面に、粘着性のビニールテープをレジストに対する保護膜25として貼り付け形成した。前記保護膜25は次に述べるフォトリソグラフィー法で用いる感光性レジストを塗布するときに、透光性プラスチック基板13の裏面に回り込んだ前記感光性レジスト中に含まれる溶媒により、ポリカ基板13の裏面が溶け白濁することを防ぐためである。前記保護膜25を用いることによりポリカ基板13の裏面の美観を保つことが可能となった。尚側面は最終的にポリカ基板13より文字板の大きさに裁断するのでこの時点では美観を問題とはしない。
【0045】
次に感光性レジスト(以下、レジストと記す)をスピン・コート法などで約1μmの膜厚で塗布しレジスト膜27を形成する。今回のパターン開口部の最小幅は数十μmあり、その幅に対してレジストの厚みは十分薄い。本実施の形態ではポジ型のレジスト(例えば、東京応化(株)のOFPR−800など)を用いた。尚、感光性フィルムを用いても同様のことができることは明白である。その後、前記保護膜25を剥離する。保護膜25としてはポリカ基板の保護が可能なら何を用いても良いが、前記粘着性のビニールテープが作業性、コストなどの点で最も利便性が良好であった。
【0046】
つづいてレジスト膜27中の溶媒を飛ばし硬化させるために、熱硬化処理(以下、プリベークと記す)を、熱処理炉により透光性プラスチック基板13の耐熱温度を考慮し、80〜100℃の範囲で約20分間行った。レジスト膜27塗布後は前記プリベークのみを行い、以降の熱硬化処理は行わないことも本願の特徴点である。
【0047】
次に図3(3)に示すようなフォトマスク51を用い、レジスト膜27上に露光装置などにより光(紫外線)を照射し、必要なパターン15を露光する。本実施の形態ではコンタクト露光法を用いたが、プロキシミティー露光法やプロジェクション露光法などを用いることでも可能である。
【0048】
この後通常は、図3(4)に示すような露光されたレジスト膜27を現像液(例えば東京応化(株)のNMD−Wなど)により20℃、1分間(60秒)の現像を行い、レジスト膜27によるパターン15の形成を行う。前記パターン15の形成は上記したレジスト膜27を用いたフォトリソグラフィー法により行われるため、ミクロンレベルの非常に微細で高級感のあるパターンが自由に設計および形成することが可能である。
【0049】
この後、通常のフォトリソグラフィー法では、レジスト膜27の現像後に基板とレジスト膜との密着性を高めるためと、現像後のレジスト膜27中の溶媒を更に飛ばし現像パターンを固着することを目的として、120℃〜150℃程度で20分ほど熱硬化処理(以下、ポストベークと記す。)を行うのが一般的である。
【0050】
しかしながら、前記120℃〜150℃の温度では透光性プラスチック基板13の耐熱温度に近いかあるいは越えてしまうため、透光性プラスチック基板13が反ったり、変形したり、また溶融するなどの危険があり、ポストベーク処理が困難である。
【0051】
そこで本発明者らはレジスト膜27の熱硬化処理の温度条件について見直しを行い、ポストベークを行わずに前記プリベークのみの熱硬化処理であっても、80℃から110℃の範囲であれば、金膜21及びクロム膜19の2〜5μm程度のラインアンドスペース・パターンが十分にエッチング出来ることを突き止めた。上記によりポストベーク工程を省くことが可能となり、透光性プラスチック基板13の変形や溶融もない上に、ベーク工程の短縮化およびその事によりコストの低下が可能となった。
【0052】
また、本発明のパターンは目視で模様と見える程度で良く、そのパーニング精度は、プラスマイナス1μm程度で十分であるため、レジストのポストベークを行わなくても金属の微細なパターニングができた。尚、LSI等で使用されるサブミクロン以下の超精密なパターニングの場合にはポストベークは必須工程である。
【0053】
つぎに、図3(5)に示すようにパターン15が形成されたレジスト膜27を、前記ポストベークを行わずにエッチングマスクとして用い、金膜21とクロム膜19の順でエッチングを行い不要な部分を除去する。本実施の形態では金膜21のエッチャントには王水(硝酸=1、塩酸=3)、またクロム膜19のエッチングには硝酸セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合液を用いた。エッチング時の温度はいずれも室温(20℃)とした。
【0054】
つづいて、図3(6)に示すようにレジスト膜27をアルカリ溶液、本実施の形態ではKOH溶液(KOH:40g/純水:1リットル)を用い剥離除去した。通常、ポストベーク処理を行ったレジスト膜27は、専用のレジスト剥離液やアセトンなどを用いた剥離工程を必要とするが、前記レジスト剥離液は石油類や溶剤などを含んでおりアセトンなどと共に、透光プラスチック基板13を溶解し表面を白濁してしまう。
【0055】
しかし、前記プリベークのみの場合は、レジスト膜27の熱硬化が十分に進んでいない点を利用し、ポリカ基板やアクリル基板を用いた透光プラスチック基板13に対して全く安定で、前記表面の白濁が全く発生しないKOHなどのアルカリ溶液のみで、容易に剥離できることも判明した。したがって、前記KOHなどの容易に入手でき廉価であるアルカリ溶液を用いることにより、透光プラスチック基板13の透過性を全く損なわずにレジスト膜27の剥離が可能となった。上記剥離処理はKOH溶液を用いたが、NaOHなどの他のアルカリ溶液でも可能である。
【0056】
その後、純水による置換洗浄を行い乾燥させた後、外形・中心穴等の文字板として必要な形状に切断・加工すると、図1に示した本発明による金色を有する太陽電池に適した時計文字板11が完成する。前記切断加工は、時計文字板11の基板としてポリカ基板やアクリル基板を用いた透光プラスチック基板13を用いているために、ガラス基板や透光性セラミックに比較し極めて良好であり、さらにその加工形状の制約もほとんど無いうえに、カケや割れなどの破損も無い。したがって、製造工程での高い歩留まりが得られ、時計文字板11の低コスト化が可能である。
【0057】
つづいて、図2で説明した白系の金属膜17を有する時計文字板11の製造方法の一例を、図4を用いて説明する。図4(1)から(5)は本発明の時計文字板11の製造工程を示す断面図である。
【0058】
まず、図4(1)に示すように、透光性プラスチック基板13の表面全面に、DCスパッタ法を用い、アルミニウム膜23を500Åから3,000Åの膜厚で成膜する。この膜厚の範囲であればアルミニウム膜23の場合には、図4で説明したクロム膜19のような中間層を必要とせず適度な密着性が得られた。しかし、アルミニウム膜23の膜厚が厚いほど膜の内部応力は大きくなり、剥離発生の原因となるので、膜厚は750Åから2000Åがより好ましい。
【0059】
また上記アルミニウム膜23の成膜法においても、前記透光性プラスチック基板13が溶融しない低温度での膜形成が出来る手法が必須であり、基板温度が低温で成膜可能なスパッタリング法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相法)が適している。
【0060】
さらに前記密着性を得るための手段として、アルミニウム膜23のDCスパッタ成膜時の基板温度も60〜110℃に設定した。アルミニウム膜23の成膜においても基板温度が密着性向上に大きな役割を果たしているために、ポリカ基板やアクリル基板を用いた透光性プラスチック基板13の耐熱性の限界内で、より高い基板温度がより好ましい。上記した手段により、透光プラスチック基板13とアルミニウム膜23との高い密着性を得ることが可能となった。
【0061】
次に、図4(2)に示すように透光性プラスチック基板13の裏面に、粘着性のビニールテープを保護膜25として貼り付け形成した。前記保護膜25も前述したようにフォトリソグラフィー法で用いる感光性レジストを塗布するとき、透光性プラスチック基板13の裏面に回り込んだ前記感光性レジスト中に含まれる溶媒により裏面が溶け白濁することを防ぐためである。前記レジスト保護膜25を用いることにより透光性プラスチック基板13の裏面の美観を保つことが可能となった。
【0062】
次にレジストをスピン・コート法などで約1μmの膜厚で塗布しレジスト膜27を形成する。今回のパターン開口部の最小幅も数十μmあり、その幅に対してレジストの厚みは十分薄い。本実施の形態においてもレジストにはポジ型のレジスト(例えば、東京応化(株)のOFPR−800など)を用いた。その後、ビニールテープを用いた保護膜25を剥離する。
【0063】
つづいてレジスト膜27中の溶媒を飛ばし硬化させるために、プリベークを、熱処理炉によりポリカ基板13aの耐熱温度を考慮し、80〜100℃の範囲で約20分間行った。実施の形態2においてもレジスト膜27塗布後は前記プリベークのみ一回行い、以降の熱硬化処理は行わない。前記プリベークのみ一回しか行わない理由は、前記したように透光性プラスチック基板13が低耐熱性のためポストベーク不可能なこと、更にレジスト膜27の剥離を容易にするためである。
【0064】
また、本発明のパターンは目視で模様と見える程度で良く、そのパターニング精度は、プラスマイナス1μm程度で十分であるため、レジストのポストベークを行わなくても金属の微細なパターニングができた。LSI等で使用されるサブミクロン以下の超精密なパターニングの場合にはポストベークは必須工程である。
【0065】
次に図4(3)に示すようにフォトマスク51を用いレジスト膜27上に露光装置などにより光(紫外線)を照射し、必要なパターン15を露光する。本実施の形態においてもコンタクト露光法を用いたが、プロキシミティー露光法やプロジェクション露光法などを用いることでも可能である。
【0066】
前記露光後に、通常は図3(4)に示すようにレジスト膜27の現像を行う。しかしアルミニウム膜23は多くのアルカリや酸の溶液で容易エッチングされる性質がある。本実施の形態においても、レジスト膜27を現像液(例えば東京応化(株)のNMD−Wなどの有機アルカリ系の溶液)により20℃、1分間(60秒)の現像を行うと、アルミニウム膜21の表面も前記現像液によりエッチングされること確認された。他のアルカリ系の溶液を用いても同様の結果が得られた。
【0067】
そこで本発明者らは、以下の新しい手法を採用した。図4(4)に示すように、前記現像液によりレジスト膜27の現像と、アルミニウム膜23のエッチングを同時に連続して行い、必要なパターン15を形成する手法である。したがって、上記手法によればアルミニウム膜23の専用エッチング液や工程が不要になるため、工程の短縮化と製造コスト低減も可能となった。
【0068】
また、前記パターン15の形成はレジスト膜27を用いたフォトリソグラフィー法により行われるため、ミクロンレベルの非常に微細で高級感のあるパターンが自由に設計及び形成可能である。
【0069】
つづいて図4(5)に示すように、レジスト膜27をイソプロピルアルコールを用いて剥離する。図3で述べた金膜21の場合にはレジスト膜27の剥離液にはKOH溶液などのアルカリ溶液を用いることが可能であったが、前述したようにアルミニウム膜23はアルカリ溶液にも容易にエッチングされためKOH溶液を剥離液として用いることが出来ない。
【0070】
そこで、本発明者らはアルミニウム膜23をエッチングしてしまう酸やアルカリ以外の溶液を剥離液として検討した結果、最も弱い無極性溶剤の一つである前記IPAにより、透光性プラスチック基板13を溶かし基板表面を白濁することなく、前記レジスト膜27の剥離が可能であることを見いだした。したがってIPAを用いることで、レジスト膜27の剥離が容易に行えるようになった。
【0071】
その後、純水による置換洗浄を行い乾燥させ、外形・中心穴等の文字板として必要な形状に切断・加工すると、図2に示した本発明による白系の金属色を有する太陽電池に適した時計文字板11が完成する。
【0072】
上記した実施の形態1および2においては透光プラスチック基板13を用いているので、ガラス基板や透光性セラミックス基板で発生する割れや欠けが皆無であり、製造工程の作業性は非常に高く、高い歩留まりが可能である。
【0073】
また、本発明の実施の形態1および2における太陽電池用の時計文字板が、通常の時計文字板に適用できることも明らかである。更に本発明の時計文字板の下に、太陽電池に変えて発光素子であるEL板を配置することによって表示部の照明として使用することもできる。
【0074】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によってポリカ基板やアクリル基板を用いた耐熱性の低い透光性プラスチック基板上に、金膜あるいは金合金膜とアルミニウム膜からなる金属膜を従来不可能であった低温で微細なパターニングの形成が可能なほど密着良く形成することが可能となる。
【0075】
さらに、溶剤を含む感光性レジストや多くの溶剤を用いるフォトリソグラフィー法の製造工程を改善および短縮化することにより、耐溶剤性の低い透光プラスチック基板の使用および工程の低コスト化を可能とし、フォトリソグラフィー法による金色や白色系の金属色を有する非常に微細で高精度な装飾模様あるいはマークなどのパターン形成を出来る。
【0076】
また、透光プラスチック基板を用いることで、従来のガラス基板や透光性セラミックス基板で発生する割れや欠けが皆無であり、製造工程の作業性は非常に高く、高い歩留まりが可能である。
【0077】
したがって、透光プラスチック基板を用いた従来にない美観と装飾感を有する金色や白系の金属色の装飾模様や文字あるいはマークなどパターンを有する太陽電池用の時計文字板を提供することが出来る。特に装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンの透過率を30%以下にした場合、太陽電池はほぼ見えなくなり完全な金属色を有する太陽電池用の時計文字板が提供できる。よって本発明の工業的価値は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の時計文字板で、(A)は平面図、(B)はその一部を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の時計文字板で、(C)は平面図、(D)はその一部を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態の時計文字板の製造工程で、(1)から(6)まではその工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態の時計文字板の製造工程で、(1)から(5)まではその工程断面図である。
【符号の説明】
11 時計文字板
13 透光性プラスチック基板
15 パターン
17 金属膜
19 クロム膜
21 金膜
23 アルミニウム膜
25 保護膜
27 レジスト膜

Claims (21)

  1. 透光性基板上に装飾模様や文字およびマークなどのパターンが形成されている時計文字板であって、前記透光性基板が透光性プラスチック基板からなり、前記装飾模様や文字およびマークなどのパターンが金属膜で形成されていることを特徴とする時計文字板。
  2. 前記透光性プラスチック基板がポリカーボネイト基板あるいはアクリル基板であることを特徴とする請求項1に記載の時計文字板。
  3. 前記透光性プラスチック基板の下面には太陽電池、あるいはEL板のうち少なくとも1つが配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の時計文字板。
  4. 前記金属膜からなる装飾模様や文字及びマークなどのパターンが形成されている時計文字板であって、前記光透過率が0%より大きく50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の時計文字板。
  5. さらに望ましくは前記光透過率が0%より大きく30%以下であることを特徴とする請求項4に記載の時計文字板。
  6. 前記時計文字板上に形成された金属膜は、前記透光性プラスチック基板を加熱しながら成膜されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項4乃至5のいずれかに記載の時計文字板。
  7. 前記金属膜がクロム(Cr)膜と、金(Au)膜または金合金膜との2層膜であることを特徴とする請求項1又は請求項4乃至6のいずれかに記載の時計文字板。
  8. 前記金属膜がアルミニウム(Al)膜であることを特徴とする請求項1又は請求項4乃至6のいずれかに記載の時計文字板。
  9. 前記クロム膜の膜厚が100Åから1,000Åの範囲にあり、且つ前記金膜または金合金膜の膜厚が500Åから3,000Åの範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の時計文字板。
  10. 前記アルミニウム膜の膜厚が500Åから3,000Åであることを特徴とする請求項8に記載の時計文字板。
  11. 透光性プラスチック基板を加熱する工程と、前記透光性プラスチック基板の少なくとも一方の面に金属膜を形成する工程と、前記金属膜の上面に感光性レジストを塗布しレジスト膜を形成する工程と、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法により装飾模様や文字あるいはマークなどのパターンを前記レジスト膜に露光する工程と、現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程と、前記レジスト膜をエッチングマスクとして用い前記金属膜をエッチングする工程と、つづけて前記レジスト膜を剥離する工程と、を備えたことを特徴とする時計文字板の製造方法。
  12. 透光性プラスチック基板の加熱温度は50℃から110℃の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の時計文字板の製造方法。
  13. 前記金属膜がクロム(Cr)膜と、金(Au)膜または金合金膜との2層膜であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の時計文字板の製造方法。
  14. 前記クロム膜の膜厚が100Åから1,000Åの範囲にあり、且つ前記金膜または金合金膜の膜厚が500Åから3,000Åの範囲にあることを特徴とする請求項13に記載の時計文字板の製造方法。
  15. 前記金属膜がアルミニウム(Al)膜であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の時計文字板の製造方法。
  16. 前記アルミニウム膜の膜厚が500Åから3,000Åであることを特徴とする請求項15に記載の時計文字板の製造方法。
  17. 前記透光性プラスチック基板の裏面に感光性レジストにたいする保護膜を形成することを特徴とする請求項11乃至16のいずれかに記載の時計文字板の製造方法。
  18. 前記レジスト膜を80℃から100℃の温度で熱硬化処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の時計文字板の製造方法。
  19. 前記レジスト膜をアルカリ溶液で剥離することを特徴とする請求項11又は請求項13乃至14のいずれかに記載の時計文字板の製造方法。
  20. 前記レジスト膜をイソプロピルアルコールで剥離することを特徴とする請求項11又は請求項15乃至16のいずれかに記載の時計文字板の製造方法。
  21. 前記金属膜はスパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法(物理気相法)により形成されていることを特徴とする請求項11又は請求項13乃至16のいずれかに記載の時計文字板の製造方法。
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