JP2004010761A - オレフィン共重合用触媒及びそれを用いたオレフィン共重合体の製造方法、並びに芳香族ビニル化合物末端を有するオレフィン共重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合体であって、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出されるスチレン末端の平均比率より大きいオレフィン共重合体を用いる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合反応用の触媒、及びそれを用いたオレフィンの共重合体の製造方法、並びに芳香族ビニル化合物末端を高頻度に有するオレフィン共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
異なる2つ以上の単量体を共重合させることにより得られる共重合体は、各々の単量体の単独重合体とは異なる性質を有する場合が多く、各種用途への重合体材料として有用である。
【0003】
共重合体の構造は、複数種の単量体がランダムに配列して共重合したランダム共重合体と、一種又は二種以上の単量体が重合又は共重合した複数のブロックからなるブロック共重合体とに大別される。複数種の単量体を配位重合により反応させると、通常はランダム共重合体が生成してしまい、ブロック共重合体を一段の共重合反応で製造することは極めて困難である。従って、ブロック重合体を製造するためには、単独重合体又は共重合体に対して、後から何らかの手法で別の重合反応を起こさせる方法がある。
【0004】
こうした方法の一種として、(A)グラフト共重合反応としてよく知られている、ポリオレフィン等の重合体に対してラジカル反応によりラジカル重合活性を有する別の単量体を重合させる反応が挙げられる。しかし、このグラフト共重合反応では、ラジカル反応であるために高温・高圧等の過酷な条件が必要であり、また、重合体のポリマー鎖の切断が起こり得るという課題がある。
【0005】
一方、別の方法として、(B)単独重合体又は共重合体のポリマー鎖末端に反応性の置換基を導入しておき、その反応性基を足掛りにして更に別の重合反応を行なう方法もある。この方法によれば、導入する反応性基の種類や用いる重合反応の様式を適切に選択することにより、上述のグラフト共重合反応と比べてより穏和な条件で重合反応が行なえるため、ブロック共重合体を容易に合成することが可能となる。
【0006】
この様な、重合体のポリマー鎖末端に反応性置換基を導入する技術としては、(b−1)触媒的脱水素ホウ素化により重合体のポリマー鎖末端に反応性ホウ素基を導入する手法が報告されている(J. Am. Chem. Soc. 2002, 124(7), 1164−5等)。しかし、この手法は、高温で反応を行なう必要がある上に、高価なホウ素化合物をポリマー鎖に対して等モル量以上使用しなければならず、工業的に実施するには安全面、設備面、コスト面で課題がある。
【0007】
一方、別の技術として、(b−2)ポリマー鎖末端に二重結合を多く有するポリオレフィンを製造した後、これに対してヒドロホウ素化を行ない、反応起点とする方法が報告されている(特開2002−053632号公報等)。しかし、この技術も、高価な有機ホウ素化合物をポリマー鎖に対して等モル量以上用いる必要があり、工業的に実施するにはコスト面で課題がある。
【0008】
更には、(b−3)ポリマー鎖末端に二重結合を多く有するポリオレフィンを製造した後、これに対してヒドロアルミ化を行ない、更にこれをヨウ素化して、反応起点として用いる方法も報告されている(特開2001−348431号公報等)。しかし、この技術も、高価なアルミ化合物やヨウ素化合物をポリマー鎖に対して等モル量以上用いる必要があり、工業的な実施にはコスト面での課題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、ブロック共重合体を製造するための足掛りとして、高価な原料や試薬を用いることなく穏和な条件下で効率的に、重合体のポリマー鎖末端に反応性置換基を導入する技術が望まれていた。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高価な原料や試薬を用いることなく、穏和な条件下で効率的に、重合体のポリマー鎖末端に反応性置換基を導入する技術を提供することに存する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、種々の官能基を有する芳香族ビニル化合物が工業的に入手容易であることに着目し、この官能基を有する芳香族ビニル化合物を他のオレフィンと共重合させるとともに、ポリマー鎖末端に選択的に導入できれば、この末端の芳香族ビニル化合物上の官能基を更なる反応の起点として活用することで、高価な原料や試薬を用いず穏和な条件で効率的にブロック共重合体を製造できると考えた。そして、このような選択性の共重合を行なう手法を探索したところ、特定の触媒を用いて芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとを共重合させることによって、ポリマー鎖末端に高頻度に芳香族ビニル化合物単位を有する共重合体を得ることが可能となり、上記課題が効果的に解決されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合反応に使用される触媒であって、周期律表第10族に属する金属元素の単体及び/又はその化合物を含有することを特徴とするオレフィン共重合用触媒、更には、該触媒を用いて芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとを共重合させることを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法に存する。
【0013】
また、本発明の別の要旨は、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合体であって、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出される芳香族ビニル化合物末端の平均比率より大きいことを特徴とするオレフィン共重合体、並びに、重合度が40以上80以下であり、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が0.01モル%以上30モル%以下であり、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が30モル%より大きいことを特徴とするオレフィン共重合体に存する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るオレフィン共重合用触媒(以下、必要に応じて「本発明の触媒」と略記する。)は、周期律表第10族に属する金属元素を含有することを特徴としている。
【0015】
周期律表第10族に属する金属元素としては、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)が挙げられるが、特にパラジウム(Pd)が好ましい。本発明の触媒は、これらの金属元素のうち一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせで含有していても良い。
【0016】
前記金属元素は、本発明の触媒に単体の原子として含まれていても良いが、各種のイオンや化合物等の状態で含まれていても良い。イオンとしては、主に二価の金属イオンが挙げられる。また、化合物としては、前記金属イオンの有機又は無機の塩、或いは同じく前記二価の陽イオンの錯体が挙げられる。具体的には、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、臭化パラジウム、(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(メチル)クロリド、塩化ニッケル、臭化ニッケル、及びニッケルアセチルアセトナート、酢酸ニッケル等が例示される。これらの中でも、特に酢酸パラジウムが好ましい。なお、これらの金属元素の原子,イオン及び/又は化合物は、何れか一種が単独で含まれていても良く、二種以上が任意の組み合わせで含まれていても良い。
【0017】
本発明の触媒は、上記の金属元素の原子,イオン及び/又は化合物に加えて、その他の各種成分を含んでいることが好ましい。その他の成分としては、ホスフィン、アミン等の配位性化合物、カルボン酸、スルホン酸等の有機アニオンなどが挙げられる。これらの成分は、上記の金属元素に対して通常一等量以上使用する。なお、これらの成分も、何れか一種が単独で含まれていても良く、二種以上が任意の組み合わせで含まれていても良い。
【0018】
本発明の触媒の具体例としては、WO00/06615号公報に記載された触媒や、WO00/56785号公報に記載された触媒、WO96/23010号公報に記載された触媒など、他の各種用途において公知である種々の触媒が挙げられる。金属元素の種類や状態(原子,イオン及び/又は化合物)、その他の成分の要否やその種類、調製条件や使用時の条件などは、選択した触媒の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
例えば、WO00/06615号公報に記載された触媒を本発明の触媒として使用する場合、以下の成分a)及び成分b)を組み合わせて用いる。
【0020】
成分a)は、周期律表の第10族に属する金属元素の原子,イオン及び/又は化合物である。この成分a)は、反応活性点となる金属原子を提供するものであって、下記の成分b)と反応することで安定な錯体を形成し、重合触媒となる。これらの金属は反応系中ではイオンとして存在する。これらの金属イオンは通常2価であり、金属の有機または無機の塩、あるいは錯体の形で反応系に供給される。中でも、パラジウムの塩が特に好ましく、具体的には、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、臭化パラジウム、(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(メチル)クロリド、塩化ニッケル、臭化ニッケル、およびニッケルアセチルアセトナートなどがあげられる。
【0021】
一方、成分b)は、分子内に酸性置換基を有する、周期律表第15族の元素の化合物である。上記成分a)に対する配位子として、成分a)と反応して安定でかつ重合活性を有する錯体を形成するものである。成分b)として用いられる配位子は、分子内に酸性置換基と周期律表第5族の元素を有する化合物であり、通常、以下の一般式で表される。
(R1)(R2)Q−(R3)−XH
【0022】
上記一般式中、Q−は周期律表第15族の元素であり、R1及びR2は、Qに対して酸素原子・窒素原子・または炭素原子で結合する置換基である。−XHは、酸性を示す官能基であり、−(R3)−は、置換基(R1)(R2)Q−と置換基−XHとを互いに結合させる連結基である。成分b)の好ましい例としては、o−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}ベンゼンスルホン酸{(Ph)2P−(o−C6H4)−SO3H},o−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}安息香酸{(Ph)2P−(o−C6H4)−CO2H}等が挙げられる。
【0023】
以上の成分a)及び成分b)は、予め適当な溶媒中で予備攪拌してから使用する。攪拌の際の温度は室温付近〜50℃程度、時間は0.2〜10時間程度である。溶媒としては、成分a)及び成分b)を溶解する溶媒、例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類などが好ましく用いられる。また、この際に原料単量体を多少存在させると、安定な触媒溶液が得られるのでより好ましい。成分a)と成分b)の比率は、通常モル比で1:10〜1:1、好ましくは1:5〜1:1の範囲である。成分b)が少ないと、成分a)の金属の安定化効果が不十分な傾向にあり、一方、成分b)が多すぎると、成分a)の金属中心の反応点を配位子が塞いてしまうため、活性が低くなる傾向にある。また、成分a)の濃度は、およそ0.1〜100mMの範囲である。なお、この予備混合の際、更に有機又は無機の化合物を添加してもよい。例えば、オレフィン類や単座配位子などの、金属中心に配位して活性種を安定化する化合物や、酸、塩基類等が挙げられる。
【0024】
本発明の触媒を、スチレンを含む二種以上のオレフィンの共重合反応に使用することによって、後述する様に、ポリマー鎖の重合開始末端及び重合終了末端の何れにおいても、スチレン単位が高頻度に存在する共重合体を得ることができる。その理由は明らかでないが、重合開始末端については、本発明の触媒の前駆体を含む反応系中で生成した金属ヒドリドにスチレンが挿入されて安定なπ−ベンジル中間体を形成し、これが重合反応の起点となってそれ以降の単量体の重合反応を誘導することにより、結果としてスチレンの存在比率が高くなる、という理由が推測される。また、重合終了末端については、重合反応中にポリマー鎖末端にスチレンが挿入されると、本発明の触媒に含有される金属元素がこれと結合してπ−ベンジル金属を形成し、これが他のオレフィンの更なる挿入よりも早くβ−脱離を起こして重合反応の終点を形成するため、結果としてスチレンの存在比率が高くなるという理由が推測される。
【0025】
次に、本発明に係るオレフィン共重合体の製造方法(以下、必要に応じて「本発明の製造方法」と略記する。)は、上述した本発明の触媒を用いて、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとを共重合させることを特徴としている。
【0026】
芳香族ビニル化合物の種類は特に限定されず、任意のものを使用することができる。その分子量としては、特に限定されないが、通常400以下、好ましくは300以下である。
【0027】
芳香環の数は特に限定されないが、通常2以下である。芳香環の種類として、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環等が例示できる。
ビニル基の数は特に限定されないが、通常1である。ビニル基は1,1−2置換でもよく、芳香族以外の置換基としては、触媒を被毒せず、反応に影響を与えないものであれば特に限定されない。
【0028】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−ビニルナフタレン、β−ビニルナフタレン等が挙げられるが、スチレンが好ましい。
【0029】
スチレンは、単体を使用しても良いが、何らかの置換基を有するものでも良い。置換基の種類は、ポリマー鎖末端に高頻度にスチレン単位を導入するという本発明の趣旨を妨げないものであれば、特に制限されないが、後述する反応性置換基を有するスチレンを単量体として使用することにより、反応性置換基を有するスチレン単位をポリマー鎖末端に高頻度に含むオレフィン共重合体を製造でき、これをブロック共重合体製造のための新たな重合反応の基点とすることができるので好ましい。なお、これらの単体スチレン及び各種置換基を有するスチレンは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせで使用しても良い。
【0030】
芳香族ビニル化合物以外のオレフィンは、その種類は特に制限されないが、エチレン又はα−オレフィンが好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられるが、中でもエチレン、プロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。これらのオレフィンは、何らかの置換基を有するものでも良い。なお、これらのオレフィンのうち一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせで使用しても良い。二種以上を組み合わせて用いる場合の例としては、何れかのオレフィンの単独重合体の物性を改変するため(例えば、重合体の柔軟性を増すため、又は融点を低下させるため、等)に、他のオレフィンを加える場合が考えられる。具体的には、エチレンを主として使用し、これにプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を組み合わせることが好ましい。
【0031】
芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとして、エチレンやα−オレフィン以外に使用できるものとしては、2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン等の鎖状内部オレフィンや、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状オレフィンなどの化合物が挙げられる。これらの化合物は、何らかの置換基を有するものでも良い。その他の単量体を使用する場合、その使用量は、全オレフィンに対する比率で、通常0.01モル%以上、好ましくは0.05モル%以上、更に好ましくは0.1モル%以上であり、また、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。
【0032】
ここで、反応性置換基とは、任意の化合物との間で何らかの反応を起こしうるものであれば、その種類は特に限定されないが、上述のブロック共重合体の原料としての用途に鑑みて、穏和な環境下で他の化合物と何らかの重合反応を生じ得る置換基が好ましい。具体的には、ハロゲン基(Cl,Br,I等)や、活性水素含有官能基(−OH、−CO2H、−NH2等)などが挙げられる。ハロゲン基は、Cu試薬によりラジカル発生でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの重合が可能である。一方、活性水素含有官能基は、酸や塩基を用いて、ラクトンやラクタムの開環重合などが可能である。
【0033】
これらの反応性置換基の存在位置は特に限定されず、芳香族ビニル化合物に直接結合していても良いし、芳香族ビニル化合物に結合する何らかの置換基上に存在していても良いが、反応性置換基が芳香族ビニル化合物の芳香環骨格のパラ位に直接結合したもの、或いはパラ位に結合する何らかの置換基上に存在するものが好ましい。これらの位置に反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物は、パラクロロ芳香族ビニル化合物から誘導されるp−スチリルGrignard試薬が入手容易であることから、容易に合成することが可能である。
【0034】
芳香族ビニル化合物及びその他のオレフィンの使用量は、用いるその他のオレフィンの種類や製造する共重合体の用途に応じて適宜決定すれば良いが、原料となる全単量体(芳香族ビニル化合物を含む全オレフィン)に対する芳香族ビニル化合物の比率が、通常0.01モル%以上、好ましくは0.05モル%以上、更に好ましくは0.1モル%以上、また、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下となるようにする。芳香族ビニル化合物は高価であるため、芳香族ビニル化合物の使用量が多過ぎると原料費が高くなり経済的に好ましくない上、反応性の低下を招く傾向がある。一方、芳香族ビニル化合物の使用量が少な過ぎると、全ポリマー鎖に対する、芳香族ビニル化合物末端を有するポリマー鎖の比率が少なくなるため好ましくない。また、上述の様に、反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物を使用する際には、これを単独で用いても、芳香族ビニル化合物単体と併用しても良いが、後者の場合には、全芳香族ビニル化合物に対する反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物の比率が、通常30モル%以上、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上となるようにする。
【0035】
本発明の製造方法における反応形式は特に制限されず、バッチ反応でも連続反応でも構わない。また、液相反応(溶液反応、スラリー反応)及び気相反応の何れでも良いが、液相反応が好ましい。
【0036】
液相反応の場合には、共重合体反応に使用する単量体の何れかを溶媒として用いても良いが、他の溶媒を使用しても構わない。他の溶媒を使用する場合、その種類は、使用する触媒や原料単量体の種類に応じて、適切なものを適宜選択すればよい。具体的には、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン類等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、トルエン、ヘキサン、ヘプタンが好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0037】
触媒の使用量は、使用する触媒の種類に応じて適宜、好適な範囲を選択すればよい。例えば、WO00/06615号公報に記載された触媒を使用する場合、反応溶液(溶媒及び触媒)中の濃度として、通常0.001mM以上、好ましくは0.005mM以上であり、また、通常10mM以下、好ましくは5mM以下となるようにする。
【0038】
原料等の供給方式についても特に制限は無く、原料単量体,触媒及び溶媒を単一の反応器に仕込めばよい。バッチ反応の場合、原料単量体,触媒及び溶媒を反応器に仕込んで反応させる。仕込みの順序は特に問わない。連続反応の場合、通常、エチレンは反応による消費に応じて連続的に供給される。芳香族ビニル化合物及びその他の単量体、並びに触媒は、予め反応容器に仕込んでおいても、反応時に連続的に供給してもよい。この場合、反応系にエチレンを供給することで重合反応が開始される。
【0039】
以下、共重合反応時における各種反応条件について説明すると、反応温度は、通常は室温以上、好ましくは50℃以上であり、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下である。反応温度が低過ぎると反応速度が不十分となる一方で、反応温度が高過ぎると触媒の失活が顕著になる上に、工業生産時のコスト面及び安全面で不利になる。
【0040】
反応雰囲気は、通常、反応系に原料単量体を充満させるか、又は原料単量体を不活性ガスと混合して充満させる。反応圧力は、原料単量体の圧力又は原料単量体と不活性ガスとの混合圧力が、通常は常圧以上、好ましくは5気圧以上、また、通常は100気圧以下、好ましくは50気圧以下となる様にする。反応圧力が低過ぎると反応速度が不十分となる一方で、反応圧力が高過ぎると触媒の失活が顕著になる上に、工業生産時のコスト面及び安全面で不利になる。
【0041】
反応時間は、通常は数分以上、好ましくは10分以上であり、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下である。なお、反応形式が連続法である場合には、原料単量体の平均滞留時間が前述の範囲内であることが好ましい。反応時間を長くするほど得られる共重合体の収量が多くなる。
【0042】
反応により得られる粗生成物の状態は、用いる溶媒と製造されるポリマーの性状により異なるが、通常は液状又はスラリー状である。この粗生成物からの共重合体の分離・回収は、得られた粗生成物がスラリー状の場合、濾過、(洗浄)、乾燥の手順で行なうか、又は、溶媒留去、(洗浄)、乾燥の手順で行なう。一方、得られた粗生成物が溶液状態の場合には、溶媒留去、(洗浄)、乾燥の手順で行なう。なお、必要がある場合には、使用した触媒の種類に応じて適切な手法を用いて洗浄し、粗生成物に含まれる触媒成分を除去する。
【0043】
なお、原料単量体として、反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物やその他の単量体を使用する場合には、上述の反応条件において、その反応性置換基が反応しない(即ち、その反応性置換基が残存する)様な条件を選択して行なう。
【0044】
上述した本発明の製造方法により得られるオレフィン共重合体(以下、必要に応じて「本発明の共重合体」と略記する。)は、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出される芳香族ビニル化合物末端の平均比率より大きいことを特徴とする。中でも、ポリマー鎖の全末端に対するスチレン末端の比率が、全オレフィンに対するスチレンの共重合比率から算出されるスチレン末端の平均比率の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることが特に好ましい。
【0045】
なお、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率は、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が小さい場合、例えば、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が1〜5%の場合には、2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。更には、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が1%以下の場合には、20倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることが更に好ましい。
【0046】
ここで、「全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出されるスチレン末端の平均比率」とは、芳香族ビニル化合物以外のオレフィン:芳香族ビニル化合物の共重合モル比率をx:yで表わした場合に、芳香族ビニル化合物の存在確率が共重合体のポリマー鎖中のどの位置でも等しくなるとの仮定の下で計算される、ポリマー鎖末端における芳香族ビニル化合物の存在確率、即ちy/(x+y)(モル%表示の場合は左式×100)で表される比率となる。
【0047】
上述した様に、本発明の共重合体では、全単量体(全オレフィン)に対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が通常30モル%以下であることから、芳香族ビニル化合物以外のオレフィン:芳香族ビニル化合物のモル比率はx:y=7:3以上となる。ここから上記の式に基づき計算すると、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出される芳香族ビニル化合物末端の平均比率は、最大でも{y/(x+y)}×100=30モル%となるが、本発明においてはポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が30モル%以上のオレフィン共重合体を得ることができる。
【0048】
中でも、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が、36モル%以上であることが好ましく、45モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることが特に好ましい。なお、本発明の共重合体において、末端以外の芳香族ビニル化合物単位は、ポリマー鎖中にランダムに配置されることになる。
【0049】
ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率は、共重合体を各種の構造解析手法(13C−NMR、1H−NMR、IR等)によって分析することが可能である。具体的には、芳香族ビニル化合物としてスチレンを用いた場合を例にすると、対象となる共重合体について測定した13C−NMRスペクトルについて、ポリマー鎖の末端構造のうちスチレン末端の構造(重合開始末端:CH3CH(Ph)−、重合終了末端:CH(Ph)=CH−)に対応するピークと、それ以外の単量体末端の構造に対応するピークとを同定し、これらのピーク面積を比較することによって分析することが可能である(なお、前記式において、Phはフェニル基を表わす。以下の記載においても同様である)。
【0050】
本発明の共重合体の分子量は、通常1000以上、好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上であり、また、通常1000000以下、好ましくは750000以下、更に好ましくは500000以下である。また、その重合度は、通常20以上、好ましくは40以上、更に好ましくは60以上であり、また、通常20000以下、好ましくは15000以下、更に好ましくは10000以下である。
【0051】
全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率は、反応時における芳香族ビニル化合物とその他のオレフィンとの使用比率に応じて決定されるが、全単量体単位(全オレフィン)に対する芳香族ビニル化合物単位の比率として、通常0.01モル%以上、好ましくは0.05モル%以上、更に好ましくは0.1モル%以上、また、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0052】
本発明の共重合体の用途は特に制限されず、芳香族ビニル化合物末端を高頻度に有することが要求される用途であれば、各種の用途に使用することが可能である。特に、反応性の置換基が結合した芳香族ビニル化合物を原料とすれば、反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物単位をポリマー鎖末端に高頻度に含むオレフィン共重合体となるので、これを新たな重合反応の基点とすることにより、ブロック共重合体製造の原料として好適に使用することが可能となるので好ましい。特に、新たな重合反応により適切な重合体ブロックを付加してやることにより、元の共重合体の性質を大きく変化させることができ、その用途の幅が大きく広がる。本発明の共重合体をブロック共重合体製造の原料として使用する場合、反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物単位がポリマー鎖末端に存在する比率は、通常10%以上、好ましくは30%以上とする。
【0053】
新たなブロックを重合させるための反応は特に制限されず、反応性置換基の種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば、反応性置換基がハロゲン基の場合は、Cuなどの試薬で活性化することにより、更なるラジカル型重合反応を行ない、ブロック共重合体を得ることができる。ラジカル型重合反応としては、ATRP法が挙げられるが、この手法の詳細についてはMatyjaszewski、Chem. Rev. 2001,101, 2921−2990の総説に詳しく述べられている。これらの手法によって、ポリエチレン−ポリアクリレート共重合体、ポリエチレン−ポリ(メチルメタクリレート)共重合体などを製造できる。
【0054】
一方、反応性置換基が−OH又は−CO2Hである場合は、アルカリと反応させて−OM又は−CO2M(M=Li,Na,Ka)とし、これにラクトンを反応させることで、ラクトンの開環重合によりブロック共重合体(ポリエチレン−ポリエステル共重合体)を製造できる。ラクトンとしては、β−プロピオラクトンγ−ブチロラクトン、イプシロン−カプロラクトン及びその置換体などが挙げられる。特に−OHの場合には、環状エーテル(エチレンオキシド、テトラヒドロフラン及びその置換体)を反応させることで、ポリエチレン−ポリエーテル共重合体が、また、環状カーボネート(エチレンカーボネートなど)と反応させることで、ポリエチレン−ポリカーボネート共重合体が製造できる。
【0055】
また、反応性置換基が−NH2である場合は、環状ラクタム(β−ラクタム、イプシロン−カプロラクタムなど)と反応させることで、エチレン−ポリアミド共重合体が得られる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に制約されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。
【0057】
[実施例1]
酢酸パラジウム(2.2mg)及びo−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}ベンゼンスルホン酸(8.0mg)を10mLフラスコに取り、系内を窒素置換した後に1,2−ジクロロエタン(1.8mL)及びスチレン(0.2mL)を加え、室温で1時間攪拌した。こうして得られた溶液を1.4mL採取し、トルエン10mLとともに、内容積70mLのオートクレーブに導入した。オートクレーブを90℃に加熱した後、8barのエチレンを導入し、反応温度90℃を保ったまま1時間加熱攪拌した。この間、反応器の内圧が8barに保たれるように、エチレンを連続的に供給した。反応生成物から溶媒を除去した後、塩化メチレンで洗浄、濾別して液体部分の触媒成分を除去した。固体部分を真空乾燥機で乾燥することにより、エチレン/スチレン共重合体206mgを得た。
【0058】
得られた共重合体を、2.7mLのオルトジクロロベンゼンと0.3mLのベンゼン−d6の混合溶媒に溶解し、均一溶液とした後、Bruker製Avance DRX 500を用いて120℃における13C−NMRスペクトル及びDEPT135スペクトルの測定を行なった。化学シフトの基準は、エチレン主鎖を30.0ppmとした。得られた13C−NMRスペクトルの拡大図を図1及び図2に示す。得られた13C−NMRスペクトルについて、エチレン/スチレン共重合体の標準の文献値(Makromol. Chem. 1990, 191, 2387−2396.)との比較により、各々のピークに相当する構造の同定を行なった。その同定結果を図3に示す。共重合体のポリマー鎖内部のスチレン部位(−CH2CH(Ph)−)に対応するピークの他に、もう一組のスチレン部位に対応するピークが観測されたが、DEPT135スペクトルの結果との比較及び他の文献値(Macromolecules 1996, 29, 1158−1162)との比較から、これは重合開始スチレン末端(CH3CH(Ph)−)に帰属されるシグナルであること同定された。なお、この他に重合終了スチレン末端(CH(Ph)=CH−)に帰属されるシグナルも得られた可能性があるが、本実施例においては特定を行なわなかった。
【0059】
各々のピークに対応する構造について、ポリマー鎖の内部に存在するエチレン単位(−CH2CH2−)のシグナルとのピーク強度比から、その相対量を分析した。その分析結果を図4に示す。共重合体における重合開始末端スチレン単位の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たり約1.5個と算出される。また、その他のポリマー鎖の末端構造としては、ポリマー鎖のエチレン末端のうち、重合開始末端(CH3CH2−)に帰属されるピークのみが観測され、その他の末端構造に対応するピークは観測されなかった。共重合体におけるこの重合開始末端単位エチレンの含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たり1.5個であった。また、内部スチレン(−CH2CH(Ph)CH2−)及びポリマー鎖内のメチル分岐(−CH2CH(CH3)CH2−)は、エチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ1.9個及び2.0個であった。その他の分岐鎖に対応するピークは観測されなかった。
【0060】
これらの結果から、ポリマー鎖の全末端に対する重合開始スチレン末端の比率は、{1.5/(1.5+1.5)}×100=約50モル%と算出される。重合終了末端に存在するスチレン単位を考慮すると、ポリマー鎖の全末端に対するスチレン末端の比率はこれより大きくなるものと推測される。上記13C−NMRスペクトルから計算されるエチレンとスチレンとの共重合比率は(1000+1.5+2.0):(1.5+1.9)=1003.5:3.4であり、ここから算出されるスチレン末端の平均比率は{3.4/(1003.5+3.4)}×100=約0.34モル%であることから、実際のスチレン末端の比率はこれよりも極めて大きいことが判る。
【0061】
[実施例2]
酢酸パラジウム(56mg)、o−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}ベンゼンスルホン酸(201mg)を50mLフラスコに取り、系内を窒素置換した後に1,2−ジクロロエタン(20mL)、スチレン(6mL)を加え、室温で1時間攪拌した。こうして得られた触媒溶液全量を、トルエン500mLとともに、内容積2.0Lのオートクレーブに導入した。オートクレーブを70℃に加熱したあと10barのエチレンを導入し、反応温度70℃を保ったまま2時間加熱攪拌した。この間、反応器の内圧が10barに保たれるように、エチレンを連続的に供給した。反応生成物から溶媒を除去したのち、触媒成分を除去するために塩化メチレンで洗浄、濾別した。固体部分を真空乾燥機で乾燥することにより、エチレン/スチレン共重合体11.63gを得た。
【0062】
この共重合体約200mgを、2.7mLのオルトジクロロベンゼンと0.3mLのベンゼン−d6の混合溶媒に溶解し、均一溶液とした後、Bruker製AvanceDRX 500を用いて120℃における13C−NMRスペクトル及びDEPT135スペクトルの測定を行なった。得られた13C−NMRスペクトルについて、実施例1と同様の手法により、各々のピークに相当する構造の同定と、各々のピークに対応する構造の相対量の分析を行なった。その分析結果を図4に示す。ポリマー鎖末端のスチレン単位(重合開始末端:CH3CH(Ph)−、重合終了末端:CH(Ph)=CH−)にそれぞれ帰属される2種類のシグナルが観測された。ポリマー鎖の内部に存在するエチレン単位(−CH2CH2−)のシグナルとのピーク強度比から、共重合体におけるこれらの末端スチレン単位の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ約0.3個及び約0.2個と算出される。また、その他のポリマー鎖の末端構造としては、ポリマー鎖のエチレン末端のうち、重合開始末端(CH3CH2−)に帰属されるピークのみが観測され、その他の末端構造に対応するピークは観測されなかった。ポリマー鎖の重合開始エチレン末端の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たり約1.1個であった。また、内部スチレン(−CH2CH(Ph)CH2−)及びポリマー鎖内のメチル分岐(−CH2CH(CH3)CH2−)は、エチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ0.2個及び0.5個であった。その他の分岐鎖に対応するピークは観測されなかった。
【0063】
これらの結果から、ポリマー鎖の全末端に対するスチレン末端の比率は、{(0.3+0.2)/(0.3+0.2+1.1)}=約32モル%と算出される。上記13C−NMRスペクトルから計算されるエチレンとスチレンとの共重合比率は(1000+1.1+0.5):(0.3+0.2+0.2)=1001.6:0.7であり、ここから算出されるスチレン末端の平均比率は{0.7/(1001.6+0.7)}×100=約0.07モル%であることから、実際のスチレン末端の比率はこれよりも極めて大きいことが判る。
【0064】
[実施例3]
酢酸パラジウム(4.4mg)、o−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}ベンゼンスルホン酸(16mg)を20mLフラスコに取り、系内を窒素置換した後に1,2−ジクロロエタン(3.6mL)、p−(4−クロロブチル)スチレン(0.4mL)を加え、室温で1時間攪拌した。こうして得られた触媒溶液1.4mLを、トルエン7mLとともに、内容積70mLのオートクレーブに導入した。オートクレーブを70℃に加熱したあと8barのエチレンを導入し、反応温度70℃を保ったまま1時間加熱攪拌した。この間、反応器の内圧が8barに保たれるように、エチレンを連続的に供給した。反応生成物から溶媒を除去したのち、触媒成分を除去するために塩化メチレンで洗浄、濾別した。固体部分を真空乾燥機で乾燥することにより、エチレン/スチレン共重合体約200mgを得た。
【0065】
この共重合体約10mgを、0.54mLのオルトジクロロベンゼンと0.3mLのベンゼン−d6の混合溶媒に溶解し、均一溶液とした後、Varian製Unity INOVA 500を用いて120℃における1H−NMRスペクトルを測定した。オルトジクロロベンゼンの低周波側シグナルを6.90ppmとした。一方、共重合体約60mgをテトラクロロエタン2.3mLとテトラクロロエタン−d20.7mLに溶解し、均一溶液とした後、Bruker製Avance DRX 500を用いて120℃における13C−NMRスペクトル及びDEPT135スペクトルの測定を行なった。化学シフトの基準は、エチレン主鎖を30.0ppmとした。得られた13C−NMRスペクトルについて、実施例1と同様の手法により、各々のピークに相当する構造の同定と、各々のピークに対応する構造の相対量の分析を行なった。
【0066】
得られた13C−NMRスペクトルを図5及び図6に、1H−NMRスペクトルを図7に、それらの分析結果を図4に示す。ポリマー鎖末端のスチレン単位(重合開始末端:CH3CH(Ph)−、重合終了末端:CH(Ph)=CH−)にそれぞれ帰属される2種類のシグナルが観測された。ポリマー鎖の内部に存在するエチレン単位(−CH2CH2−)のシグナルとのピーク強度比から、共重合体におけるこれらの末端スチレン単位の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ約0.8個及び約0.7個と算出される。また、その他のポリマー鎖の末端構造としては、ポリマー鎖のエチレン末端のうち、重合開始末端(CH3CH2−)に帰属されるピークのみが観測され、その他の末端構造に対応するピークは観測されなかった。ポリマー鎖の重合開始エチレン末端の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たり約1.6個であった。また、内部スチレン(−CH2CH(Ph)CH2−)及びポリマー鎖内のメチル分岐(−CH2CH(CH3)CH2−)は、エチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ0.4個及び4.5個であった。その他の分岐鎖に対応するピークは観測されなかった。
【0067】
これらの結果から、ポリマー鎖の全末端に対するスチレン末端の比率は、{(0.8+0.7)/(0.8+0.7+1.6)}=約48モル%と算出される。上記13C−NMRスペクトルから計算されるエチレンとスチレンとの共重合比率は(1000+1.6+4.5):(0.8+0.7+0.4)=1006.1:1.9であり、ここから算出されるスチレン末端の平均比率は{1.9/(1006.1+1.9)}×100=約0.19モル%であることから、実際のスチレン末端の比率はこれよりも極めて大きいことが判る。
【0068】
[実施例4]
酢酸パラジウム(22mg)、o−{ビス(o−メトキシフェニル)ホスフィノ}ベンゼンスルホン酸(80mg)を50mLフラスコに取り、系内を窒素置換した後に1,2−ジクロロエタン(20mL)、p−(4−ブロモブチル)スチレン(2.0mL)を加え、室温で1時間攪拌した。こうして得られた触媒溶液全量を、トルエン300mLとともに、内容積1.0Lのオートクレーブに導入した。オートクレーブを70℃に加熱したあと10barのエチレンを導入し、反応温度70℃を保ったまま1時間加熱攪拌した。この間、反応器の内圧が10barに保たれるように、エチレンを連続的に供給した。反応生成物から溶媒を除去したのち、触媒成分を除去するために塩化メチレンで洗浄、濾別した。固体部分を真空乾燥機で乾燥することにより、エチレン/スチレン共重合体約1.2gを得た。
【0069】
この共重合体約40mgを、0.54mLのオルトジクロロベンゼンと0.3mLのベンゼン−d6の混合溶媒に溶解し、均一溶液とした後、Varian製Unity INOVA 500を用いて120℃における1H−NMRスペクトルを測定した。オルトジクロロベンゼンの低周波側シグナルを6.90ppmとした。一方、共重合体約353mgをテトラクロロエタン2.3mLとテトラクロロエタン−d20.7mLに溶解し、均一溶液とした後、Bruker製Avance DRX 500を用いて120℃における13C−NMRスペクトル及びDEPT135スペクトルの測定を行なった。化学シフトの基準は、エチレン主鎖を30.0ppmとした。得られた13C−NMRスペクトルについて、実施例1と同様の手法により、各々のピークに相当する構造の同定と、各々のピークに対応する構造の相対量の分析を行なった。
【0070】
得られた13C−NMRスペクトル及び1H−NMRスペクトルの分析結果を図4に示す。ポリマー鎖末端のスチレン単位(重合開始末端:CH3CH(Ph)−、重合終了末端:CH(Ph)=CH−)にそれぞれ帰属される2種類のシグナルが観測された。ポリマー鎖の内部に存在するエチレン単位(−CH2CH2−)のシグナルとのピーク強度比から、共重合体におけるこれらの末端スチレン単位の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たりそれぞれ約0.2個及び約0.5個と算出される。また、その他のポリマー鎖の末端構造としては、ポリマー鎖のエチレン末端のうち、重合開始末端(CH3CH2−)に帰属されるピークのみが観測され、その他の末端構造に対応するピークは観測されなかった。ポリマー鎖の重合開始エチレン末端の含有数は、ポリマー鎖中のエチレン単位の炭素数1000当たり約1.3個であった。また、内部スチレン(−CH2CH(Ph)CH2−)は、エチレン単位の炭素数1000当たり0.2個であった。ポリマー鎖内のメチル分岐(−CH2CH(CH3)CH2−)及びその他の分岐鎖に対応するピークは観測されなかった。
【0071】
これらの結果から、ポリマー鎖の全末端に対するスチレン末端の比率は、{(0.2+0.5)/(0.2+0.5+1.3)}=約35モル%と算出される。上記13C−NMRスペクトルから計算されるエチレンとスチレンとの共重合比率は(1000+1.3):(0.2+0.5+0.2)=1001.3:0.9であり、ここから算出されるスチレン末端の平均比率は{0.9/(1001.3+0.9)}×100=約0.09モル%であることから、実際のスチレン末端の比率はこれよりも極めて大きいことが判る。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、周期律表第10族に属する金属元素を含有する触媒を用いて芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとを共重合させることによって、ポリマー鎖末端に高頻度に芳香族ビニル化合物単位を有する共重合体を得ることができる。従って、所望の反応性置換基を有する芳香族ビニル化合物を用いてこれを他のオレフィンと共重合させることにより、高価な原料や試薬を用いることなく穏和な条件下で、重合体のポリマー鎖末端に反応性置換基を導入することが可能となり、ひいてはブロック共重合体の効率的な製造に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルの拡大図である。
【図2】実施例1において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルの拡大図である。
【図3】実施例1〜4において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルにおけるピークの同定結果である。
【図4】実施例1〜4において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルの分析結果である。
【図5】実施例3において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルの拡大図である。
【図6】実施例3において製造された共重合体の13C−NMRスペクトルの拡大図である。
【図7】実施例3において製造された共重合体の1H−NMRスペクトルの拡大図である。
Claims (10)
- 芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合反応に使用される触媒であって、周期律表第10族に属する金属元素を含有することを特徴とする、オレフィン共重合用触媒。
- 前記金属元素がパラジウムであることを特徴とする、請求項1記載のオレフィン共重合用触媒。
- 請求項1又は請求項2に記載のオレフィン共重合用触媒を用いて、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとを共重合させることを特徴とする、オレフィン共重合体の製造方法。
- 芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとしてエチレンを用いることを特徴とする、請求項3記載のオレフィン共重合体の製造方法。
- 全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が、0.01モル%以上30モル%以下であることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
- 芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合体であって、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率から算出されるスチレン末端の平均比率より大きいことを特徴とする、オレフィン共重合体。
- 芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとの共重合体であって、重合度が20以上20000以下であり、全オレフィンに対する芳香族ビニル化合物の共重合比率が0.01モル%以上30モル%以下であり、ポリマー鎖の全末端に対する芳香族ビニル化合物末端の比率が30モル%より大きいことを特徴とする、オレフィン共重合体。
- 芳香族ビニル化合物以外のオレフィンとしてエチレンを含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載のオレフィン共重合体。
- 芳香族ビニル化合物末端の少なくとも一部に官能基が結合していることを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載のオレフィン共重合体。
- 前記官能基がハロゲン基及び活性水素含有官能基のうち少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項9記載のオレフィン共重合体。
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