JP2004010742A - 改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボトルなどの中空成形容器を効率良く製造することができるような適切な結晶化速度を提供すること
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートのペレットと結晶性樹脂とを接触させることにより、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する方法であって、当該結晶性樹脂とポリエチレンテレフタレートのペレットとを接触させる方法において、ペレット移送管内の移送気体とペレットの流量比を変えることによってポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する。当該法において結晶化速度を制御することにより、ボトルなどの中空成形容器を選択するのに好適な結晶化速度を有する改質ポリエチレンテレフタレートとする。尚、結晶性樹脂の添加量は0.1〜10000ppbである。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートのペレットと結晶性樹脂とを接触させることにより、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する方法であって、当該結晶性樹脂とポリエチレンテレフタレートのペレットとを接触させる方法において、ペレット移送管内の移送気体とペレットの流量比を変えることによってポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する。当該法において結晶化速度を制御することにより、ボトルなどの中空成形容器を選択するのに好適な結晶化速度を有する改質ポリエチレンテレフタレートとする。尚、結晶性樹脂の添加量は0.1〜10000ppbである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、炭酸飲料、ジュース、天然水、酒、各種飲用茶、食用油、液体調味料などの液体を充填する容器の素材として、種々のプラスチック素材が用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明性、ガスバリア性、耐熱性および機械的強度に優れているため、飲料用中空成形容器の形成素材として多用されている。
【0003】
このような中空成形容器へ飲料などを充填する際には、加熱滅菌処理された飲料などが高温の状態で充填されることが多い。このときに高温の充填物によって中空成形容器が白濁したり、収縮、膨張するなどの変形を起こしたり、変形により自立性を損なったりするなどの問題を生じないよう、中空成形容器には充分な耐熱性が要求される。
【0004】
また、飲料用中空成形容器を形成するプラスチック素材は、耐熱性とともに透明性を兼ね備えることが強く要求される。またさらに、中空成形容器の製造にあたっては、高速で製造することが望まれており、生産性良く製造することのできるプラスチック素材が求められている。高速で中空成形容器を製造するためにプラスチック素材には、加熱結晶化速度が高く、結晶化速度などの品質のバラツキが少ないものが求められている。
【0005】
すなわち結晶化速度が高すぎると好適な成形条件幅が狭くなったり、原料プラスチックの品質のバラツキが多いと成形体製造時の歩留りが低くなる。したがって、上記のような中空成形体の製造に用いられるプラスチック素材は、成形効率、成形条件などに合った結晶化速度を有しかつ品質が一定であることが望ましい。こうした要請から、ポリエチレンテレフタレートに種々の配合剤を加えて、結晶化速度を調整する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば特開平9−71639号公報にはポリエチレンテレフタレートのチップをポリエチレンからなる配管または棒状または網状の部材が内部に設置された気力輸送配管に通して、ポリエチレンテレフタレート表面にポリエチレンを添加しポリエチレンテレフタレートの結晶化速度をコントロールする方法が提案されている。しかしこの公報にはポリエチレンテレフタレートをポリエチレン部材に接触させる際の条件については詳述されていない。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、結晶性樹脂の含有量の制御が容易で、かつ結晶性樹脂の含有量のばらつきが少ない改質ポリエチレンテレフタレートが得られる改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造方法は、ポリエチレンテレフタレートペレットと結晶性樹脂を接触させることにより結晶性樹脂を添加し、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する方法であって、結晶性樹脂との接触面積及びペレットの衝突速度の少なくとも一方を変えることにより結晶化速度を制御することを特徴としている。
【0009】
また本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造方法は、上記結晶性樹脂の添加設備として、円筒状または断面形状が四角以上の多角であるほぼ角筒形の本体と、該本体の側面上方に開口部を有し該本体の内部に流動体を本体の周方向に導入可能に設けられた導入管とを有し、上記本体は直径がほぼ250〜1000mm、高さがほぼ250〜1000mmの範囲にあり、本体内壁の面積の1〜100%が結晶性樹脂により被覆されている設備を用いることを特徴としている。
【0010】
本発明では、上記結晶性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法は、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に対して5〜40m/sの速度で該結晶性樹脂に接触させて結晶性樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートを得ることを特徴としている。
【0011】
本発明では上記結晶性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法の態様には、上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用い、該製造装置の導入管からポリエチレンテレフタレートのペレットを風力輸送にて導入して、ポリエチレンテレフタレートのペレットが本体内壁を被覆する結晶性樹脂に連続的または断続的に接触しながら旋回しつつ落下させることによって、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂を付着させる方法がある。
【0012】
本発明では上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に導入されるポリエチレンテレフタレートのペレットの重量(kg)と風力輸送に用いられる気体の体積(Nm3)との比率が0.1〜15(kg/Nm3)の範囲であることが好ましい。
本発明では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させる際の速度および結晶性樹脂の種類の少なくとも1つを変更することによっても、改
質ポリエチレンテレフタレート中の結晶性樹脂の含有量を0.1〜10,000ppbの範囲で制御することができる。
本発明では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させて改質ポリエチレンテレフタレートを製造する際、装置内に貼付された結晶性樹脂製シートの面積および/または枚数を変更することにより、改質ポリエチレンテレフタレートに付着する結晶性樹脂の量を0.1〜10000ppbの範囲で制御することが可能である。
【0013】
このような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の昇温時の結晶化温度が132℃〜160℃の範囲にある改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
またこのような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の180℃における半結晶化時間が50秒〜100秒の範囲にある改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
さらにこのような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の昇温時の結晶化温度Tccと、180℃における半結晶化時間t1/2が、下記の式(1)を満足する改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
【式2】
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置および改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法について具体的に説明する。
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置
まず、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1(A)は、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の一例を示す上面図であり、(B)は同側面図である。図2(A)は本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の一例を示す概略斜視図であり、(B)は他の例を示す概略斜視図である。
図1に示すように本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、ほぼ円筒形の本体1と、該本体の側面上方に開口部を有し該本体の内部に流動体を本体の周方向に導入可能に設けられた導入管3とを有している。図1では改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体1下部に下方に向かって直径が減少するように形作られている円錐部2を有しているが、該円錐部2はなくてもよい。また図1では本体1の上部は解放されているが、本発明では本体1の上部は少なくとも一部が板状部材、網状部材などにより覆われていてもよく、全体が板状部材、網状部材などにより覆われていてもよい。
【0016】
また図1では本体1はほぼ円筒状であるが、断面形状が四角以上の多角である角筒形であってもよく、例えば図2(B)に示すように断面が六角形であってもよい。本体1が円筒状である場合、断面形状は楕円であってもよいが、ほぼ真円であることが好ましく、本体1が角筒形である場合、断面形状は各辺の長さが互いに異なる多角形であってもよいが、ほぼ正多角形であることが好ましい。
【0017】
本体1は断面が円形である場合は直径(D)、断面が多角形である場合は対角線の最大値がほぼ250〜1000mm、好ましくはほぼ250〜400mmの範囲にあり、高さ(H)がほぼ250〜1000mm、好ましくはほぼ400〜700mmの範囲にあることが望ましい。本体1の直径および高さが上記の範囲内であると、改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、比較的小さな設備となる。
【0018】
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体1の内壁の面積の1〜100%、好ましくは5〜40%が結晶性樹脂により被覆されている。
本発明で用いられる結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、ポリアミドなどが挙げられる。
【0019】
本体1内壁の被覆は、例えば結晶性樹脂からなる単数または複数のシートを図2(A)、(B)の斜線を付した本体1の内壁に貼付することにより行うことができる。複数のシートを貼付する場合は、本体1の内壁に連続するようにまたは不連続に貼付することができる。なお図2(A)および(B)中斜線を付した部分は、本体1の内壁の結晶性樹脂により被覆されてもよい部分を示す。
【0020】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体の高さ、直径、本体内壁を被覆する結晶性樹脂の種類、被覆面積などを適宜変更することによりポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の割合を調整することができる。
また本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体内部をポリエチレンテレフタレートのペレットが旋回するので、本体内壁を被覆する結晶性樹脂に接触する確率が高くなるため装置が小型になり取り扱いやすい。
【0021】
改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法
本発明係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に対して5〜40m/sの速度で該結晶性樹脂に接触させて結晶性樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートを得ている。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させる方法としては、例えばポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材が存在する空間内で、結晶性樹脂からなる部材と衝突接触させる方法がある。
ここでいう空間とは、例えばポリエチレンテレフタレートのペレットを風力輸送する配管、ポリエチレンテレフタレートのペレットを貯蔵するサイロなどいう。この空間内にシート状、棒状、網状などの成形体からなる部材を設置し、空間内にポリエチレンテレフタレートのチップを導入することによりポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材と接触させるか、または風力輸送の配管の内壁の少なくとも一部を結晶性樹脂で形成し、この配管にポリエチレンテレフタレートのチップを通過させることにより、ポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材と接触させる。より具体的には、風力輸送の配管または重力落下配管の一部、振動篩のパンチング板などの一部を結晶性樹脂としたり結晶性樹脂でライニングするかまたはマグネットキャッチャーのマグネット部の少なくとも一部を結晶性樹脂でライニングすることが挙げられる。
【0023】
本発明では、上述したような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いることが好ましい。
上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用た方法では、ポリエチレンテレフタレートのペレットは導入管から本体内部に周方向に輸送気体と共に導入され、ポリエチレンテレフタレートのペレットが本体の内壁を被覆する結晶性樹脂に連続的または断続的に接触しながら旋回しつつ落下することにより、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂が付着して改質ポリエチレンテレフタレートが製造される。
【0024】
このような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用たポリエチレンテレフタレートのペレットと結晶性樹脂との接触方法における、ペレットの軌跡の一例を図3に示す。図3(A)は装置内のペレットの軌跡の一例を上部から見た図であり、(B)は装置内のペレットの軌跡の一例を斜め上から見た図である。S1ないしS3は本体内壁に貼付された結晶性樹脂製シートを示し、破線はペレットの軌跡を示す。なお図3(B)では結晶性樹脂製シートは省略してある。
【0025】
本体内部に導入されたペレットは、例えば図3に示すように本体内壁に貼付された結晶性樹脂製シートS1ないしS3に断続的接触しながら旋回しつつ落下する。これにより、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂が付着して改質ポリエチレンテレフタレートが製造される。
このような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いて改質ポリエチレンテレフタレートを製造する際、装置内に貼付された結晶性樹脂製シートの面積および/または枚数を変更することにより、改質ポリエチレンテレフタレートに付着する結晶性樹脂の量を制御することが可能である。
またポリエチレンテレフタレートのペレットは結晶性樹脂に対して通常5〜40m
/s、好ましくは10〜35m/s、より好ましくは15〜30m/sの速度で接触することが望ましい。ポリエチレンテレフタレートのペレットが結晶性樹脂に接触する速度が上記範囲にあると、結晶性樹脂がペレットに充分付着し、かつ結晶性樹脂からなる部材およびペレットが破損するおそれがない。また特殊なブロアなどを用いる必要がなく経済的である。
【0026】
また改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に導入されるポリエチレンテレフタレートのペレットの重量(kg)と、風力輸送に用いられる気体の体積(Nm2)との比率は0.1〜15、好ましくは1〜10の範囲であることが望ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法では、本体の高さ、直径、本体内壁を被覆する結晶性樹脂の種類、被覆面積、ポリエチレンテレフタレートのペレットを本体に導入する際の流速、ペレットと風力輸送に用いられる気体の体積との比率などを適宜変更することによりポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の割合を調整することができる。
【0027】
この方法により小さな装置で結晶化速度のばらつきが少ないポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
改質ポリエチレンテレフタレート
上記のようにして製造される改質ポリエチレンテレフタレート(ペレット)は、ポリエチレンテレフタレートと結晶性樹脂からなり、結晶性樹脂を改質ポリエチレンテレフタレート中に通常0.1〜10,000ppb、好ましくは0.5〜5,000ppb、さらに好ましくは0.8〜2,000ppbの量で含有している。
【0028】
この結晶性樹脂の含有量が上記範囲であれば、延伸成形体、特に高い透明性を有するボトルを効率よく成形することができる。また、上記の範囲内の量で結晶性樹脂を含有すると、得られる成形体の結晶化速度がポリエチレンテレフタレートを単独で用いて製造されたボトルよりも速くなり、ボトルを効率よく、かつ一定の品質で生産することが可能になる。
【0029】
改質ポリエチレンテレフタレート中のポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、通常0.52〜0.90dl/g、好ましくは0.65〜0.85dl/g、特に好ましくは0.70〜0.82dl/gの範囲にあることが好ましく、このような固有粘度(IV)を有するポリエチレンテレフタレートから形成された成形体は、ガスバリア性、耐圧性、耐熱性に優れている。
【0030】
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、成形した際に透明性が高いことが好ましく、図5に示すような段付き角板を成形して測定するヘイズ値が、通常0.5〜30%、特に1〜20%の範囲にあることが好ましい。
さらにまた、改質ポリエチレンテレフタレートは、成形した際に密度が高い方が耐圧性が高くなるので好ましい。密度は成形時で通常1.34〜1.40g/cm3、特に1.35〜1.39g/cm3の範囲にあることが好ましい。
【0031】
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、ボトルなどの中空成形容器を効率よく製造することができるような適切な結晶化温度を有している。具体的には、昇温時の結晶化温度(Tcc)が通常、132〜160℃、好ましくは140〜155℃である。
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、180℃で測定した半結晶化時間(t1/2)が通常、30〜100秒、好ましくは40〜100秒である。
さらに、この改質ポリエチレンテレフタレートは、昇温時の結晶化温度Tccと、180℃で測定した半結晶化時間t1/2が、下記の式(1)を満足する。
【式3】
ポリエチレンテレフタレートに少量の結晶性樹脂が含まれた改質ポリエチレン
テレフタレートでは、ブロー成形時にポリエチレンテレフタレートが加熱昇温結晶化する際に結晶性樹脂が結晶化の核として作用するものと推定され、結晶化速度を速めているものと考えられる。
【0032】
次に本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートおよび結晶性樹脂について説明する。
ポリエチレンテレフタレート
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル誘導体(例えば低級アルキルエステル、フェニルエステルなど)から導かれる単位と、エチレングリコールまたはそのエステル誘導体(例えばモノカルボン酸エステルエチレンオキサイドなど)から導かれる単位とから形成されている。
【0033】
このポリエチレンテレフタレートは、必要に応じてテレフタル酸以外のジカルボン酸類から導かれる単位および/またはジオール類から導かれる単位を20モル%以下の量で含有していてもよい。
このようなテレフタル酸以外のジカルボン酸類として具体的には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸類から導かれる単位は1種または2種以上含まれていてもよい。
【0034】
また、エチレングリコール以外のジオール類として具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族類;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール類;ビスフェノール類;ハイドロキノンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。これらのジオール類から導かれる単位は1種または2種以上含まれていてもよい。
【0035】
また本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から導かれる単位を少量例えばジカルボン酸成分100モル%に対して2モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0036】
このようなポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコール(DEG)単位の割合は、ポリエチレンテレフタレート中、通常0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.6重量%である。
DEG単位の含有割合が0.5重量%以上であると、成形後のボトル胴部の透明性が良好となる傾向がある。また、2.0重量%以下であると、耐熱性、結晶化促進効果が良好である。
【0037】
ポリエチレンテレフタレート中のDEG単位の割合を上記範囲に調整する方法としては、ジエチレングリコールを重合原料として使用する方法の他、反応条件、添加剤を適宜選択することによって主原料であるエチレングリコールから副生するジエチレングリコールの副生量を調整する方法が挙げられる。
DEGの生成を抑制する添加剤としては、塩基性化合物、例えばトリエチルアミンなどの3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物が挙げられる。
【0038】
また、DEGの生成を促進させる化合物としては、硫酸などの無機酸、安息香酸などの有機酸が挙げられる。
上記のような本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒中で25℃で測定)は、通常0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.5〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.7〜1.2dl/gであり、融点は通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃であり、ガラス転移温度は通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃である。
【0039】
また、上記のポリエチレンテレフタレート中の環状三量体の含有量、即ちオキシエチレンオキシテレフタロイル単位の環状三量体の含有量は、通常0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下であることが望ましい。
環状三量体の含量が0.5重量%以下のポリエチレンテレフタレートを用いると、樹脂組成物を成形する際に、金型等が汚染されにくく、しかも成形体の胴部が白化しにくいので好ましい。ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体の含有量の含有量は、たとえば固相重合温度を高くし、さらに重合時間を長くすることにより低減することが可能である。
【0040】
また熱水または水蒸気により固相重合後のペレットに後処理を行うと、射出成形時の生産性を低下させる原因となる環状三量体の増加を抑制するために好ましい。後処理は、通常40〜120℃、好ましくは50〜110℃で、通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間の間行う。
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、上記のようなジカルボン酸とジオールとから従来公知の方法により製造される。本発明では、このようなポリエチレンテレフタレートとしては、通常ペレット状で市販されている「原料ポリエチレンテレフタレート」が用いられるが、必要に応じて、原料ポリエチレンテレフタレートとともに「リプロポリエチレンテレフタレート」(再生ポリエチレンテレフタレート)が用いられてもよい。具体的に、ポリエチレンテレフタレート中には、「リプロポリエチレンテレフタレート」が1〜50重量%の量で含有されていてもよい。
【0041】
なお、本明細書中において、「原料ポリエチレンテレフタレート」とは、ジカルボン酸と、ジオールとからペレット状で製造され、加熱溶融状態で、成形機を通過させて中空成形容器またはプリフォームなどに成形された熱履歴を有しないポリエチレンテレフタレートである。また、「リプロポリエチレンテレフタレート」は、このような原料ポリエチレンテレフタレートを少なくとも1回加熱溶融状態で成形機を通過させたポリエチレンテレフタレートに再び熱を加えてペレタイズした熱履歴を有するポリエチレンテレフタレート(再生ポリエチレンテレフタレート)である。このように原料ポリエチレンテレフタレートを「加熱溶融状態で成形機を通過させる」処理は、原料ポリエチレンテレフタレートからなるペレット(チップ)を加熱溶融し、プリフォーム、中空成形容器などの所望形状に成形することによって行われる。
【0042】
本発明でではポリエチレンテレフタレートはペレット状で用いられる。ポリエチレンテレフタレートのペレットの粒径は特に限定されないが、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲である。
結晶性樹脂
本発明で用いられる結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、ポリアミドなどから選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
(ポリエチレン)
ポリエチレンとして具体的には、エチレンの単独重合体、またはエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体などが挙げられる。またこのポリエチレンの密度は、0.88〜0.96g/cm3であることが望ましい。
【0043】
エチレン以外のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、ジエチル−1−ブテン、トリメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどが挙げられる。
【0044】
エチレンとこれらのα−オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。このようなポリエチレンは、どのような方法によって製造されたものでもよく、たとえばチタン系触媒、クロム系触媒、バナジウム系触媒などの従来周知のチーグラー型触媒を用いて製造されたものであってもよく、またいわゆるメタロセン系触媒(例えばジルコノセン化合物とアルミノオキサンとからなる触媒)などを用いて製造されたものであってもよい。
【0045】
また本発明で用いられるポリエチレンの製造は、気相で行うこともできるし(気相法)、また液相で行うこともできる(液相法)。
本発明のポリエチレンは、ASTMD1238によるMFR(190℃、2160g荷重)が0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
(ポリプロピレン)
ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと少量のオレフィン類あるいはジエン類との共重合体であってもよい。
【0046】
オレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、1−デセン、1−ヘキサデセン、シクロペンテンおよびノルボルネンなどのオレフィン類などが挙げられ;ジエン類としては、ヘキサジエン、オクタジエン、デカジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノボノルネンなどが挙げられる。これらは2種以上がプロピレンと共重合していてもよい。
【0047】
ポリプロピレンは、ASTMD1238によるMFR(230℃、2160g荷重)が0.05〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体)
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体として具体的には、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレンとアクリル酸とメタクリル酸の三元共重合体などが挙げられる。
【0048】
また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、エチレンと(メタ)アクリル酸以外の成分を少量共重合したものも含まれる。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
【0049】
このエチレン・不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単位含量は、0.5〜20重量%の範囲にあることが好ましく、1〜15重量%の範囲にあることがさらに好ましく、5〜10重量%の範囲にあることが特に好ましい。不飽和カルボン酸含量がこの範囲内にあると、ポリエチレンテレフタレートの透明性を保持しながら、改質ポリエチレンテレフタレート昇温時の結晶化速度をばらつきが少なく向上させ得るという点で好ましい。またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体中の不飽和カルボン酸単位含量により結晶化速度を制御することもできる。
【0050】
このエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、ASTMD1238によるMFR(190℃、2160g荷重)が通常0.05〜100g/10分、特に0.1〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該共重合体が側鎖に有するカルボキシル基が金属と結合していないものであってもよく、また少なくとも一部がカルボン酸の金属塩の状態で存在するもの(アイオノマー)であってもよい。
【0051】
このような金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、亜鉛塩、コバルト塩、ニッケル塩、マンガン塩、鉛塩、銅塩などの2価の遷移金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が好ましく、特に亜鉛塩が、組成物の透明性を保持するという点で好ましい。金属塩の種類は1種類でも複数でもよい。
【0052】
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体がアイオノマーである場合には、全カルボキシル基に対する金属と結合しているカルボキシル基の割合は特に限定されるものではないが、通常3〜100%程度である。
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の製法としては、例えばエチレンと(メタ)アクリル酸、必要に応じ他のコモノマーを高圧ラジカル重合法により共重合させ、所望により、前記金属陽イオンで中和処理する方法が挙げられる。
【0053】
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロンおよびこれらの共重合物や混合物が挙げられる。
これらの結晶性樹脂は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、特にエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマーが好ましい。
【0054】
一般に、付加機能を与えるなどの目的でポリエチレンテレフタレートにそれ以外のものを添加すると、成形時の透明性に関しては、元のポリエチレンテレフタレートよりも劣り、成形時のヘイズ値が高くなる。ポリエチレンテレフタレートにポリプロピレンやポリエチレンを添加した場合においても、使用に差し支えない透明性を保持しながらも、ポリエチレンテレフタレートのみを成形した場合と比較すると、透明性が劣るものであった。
【0055】
しかしながら、結晶性樹脂としてエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を特定の量で用いることにより、ポリエチレンテレフタレートの結晶化温度が成形に好適な範囲に制御されるとともに、成形物の透明性をポリエチレンテレフタレートを単独で用いた場合と同等に保持できるという効果が奏される。
これは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がポリエチレンテレフタレートとの相溶性に優れるため、溶融状態から非晶状態に急冷固化される際には、ポリエチレンテレフタレートに対する核剤効果を示し得ないためであろうと考えられる。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法は、ポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の量の調整が容易であり、かつ均一に配合することができるため、結晶化速度の調整が容易であり、かつ結晶化速度を均一化することができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔測定方法〕
下記実施例において各種物性は以下のようにして測定した。
【0058】
ジエチレングリコール含量
試料を1g秤量し、モノエタノールアミン3ml中にて280℃で加熱し加水分解した。放冷後、高純度テレフタル酸で中和し、溶液をNo.5C濾紙にて濾過した。得られた濾液1μlを、ヒューレットパッカード社製ガスクロマトグラフ(HP5890)に注入し、ジエチレングリコール含量を定量した。
【0059】
環状三量体含量
所定量のポリエチレンテレフタレートをo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過して線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC7A)に供給してポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体の量を求め、この値を測定に用いたポリエチレンテレフタレートの量で割って、ポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体含量(重量%)とした。
【0060】
固有粘度(IV)
フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(50/50重量比)を用いて0.5g/dlの試料溶液を調製し、25℃で測定した溶液粘度から固有粘度(IV)を算出した。
透明性(ヘイズ値)
乾燥試料をシリンダー温度275℃の射出成形機を用いて金型温度10℃の条件で図5に示すような段付角板を成形し、5mm厚部分の透明性をヘイズ値(白色光の光線乱反射率)で比較した。
【0061】
昇温結晶化温度(Tcc)
乾燥試料をシリンダー温度285℃の名機製作所製M70B−DM射出成形機を用いて金型温度10℃の条件でプリフォームを成形し、口栓部天面を結晶化速度評価用試料としてパーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して測定した。試料
をサンプルパンに10mg秤量し、室温から10℃/分の昇温速度で昇温し、その際に発生する発熱ピークのピーク温度をTccとした。
【0062】
半結晶化時間(t1/2)
乾燥試料をシリンダー温度285℃の名機製作所製M70B−DM射出成形機を用いて金型温度10℃の条件でプリフォームを成形し、口栓部天面を結晶化速度評価用試料としてパーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して測定した。試料をサンプルパンに10mg秤量し、室温から320℃/分の昇温速度で昇温し、180℃に保持する。発熱量が実質的に変動しない時間まで発熱ピークを採取し、横軸を時間、縦軸を発熱量とした発熱曲線の発熱ピークにおいて、全発熱ピーク面積の半分の発熱ピーク面積となるまでの時間を算出して半結晶化時間(t1/2)とする。
【0063】
〔装置〕
図4に示すような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いた。図4(A)は改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を示す上面図であり、(B)は同概略斜視図である。なお図4(A)では装置下部の円錐部に設けられている排出口は図示していない。装置はSUS304製であり、本体の直径が320mm、高さが450mmであり、結晶性樹脂からなるシートは
図4のSの部分に取り付けた。シートの高さ(h)は250mmである。
【0064】
【実施例1〜2】
固有粘度(IV)が0.760dl/g、ジエチレングリコール含量が1.33重量%、環状三量体含有量0.32重量%であるポリエチレンテレフタレートを50kg、表1に示す組成および面積を有するエチレン・メタクリル酸共重合体製シートを内壁に貼付した改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に、表1に示す条件で空気輸送により導入し改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートは装置の下からSUS304製の専用籠に回収した。
【0065】
この改質ポリエチレンテレフタレートを溶融後、射出成形して段付き角板、プリフォームを形成し、透明性、Tccおよびt1/2を測定した
。結果を表1に示す。
【0066】
【比較例1】
実施例1ないし2で用いた固有粘度(IV)が0.760dl/g、ジエチレングリコール含量が1.33重量%、環状三量体含有量0.32重量%であるポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1ないし6と同様にして透明性、
Tccおよびt1/2を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
表1および2に示した結果から実施例1ないし2では、テスト原料(比較例1)に比べ、Tcc、t1/2が低下し、またTcc、t1/2はエチレン・メタクリル酸共重合体のシート面積に相関していることがわかる。このことからエチレン・メタクリル酸共重合体のシート面積を調整することにより改質ポリエチレンテレフタレートのTccおよびt1/2を制御できると考えられる。
【0068】
【比較例2】
実施例1ないし2においてエチレン・メタクリル酸共重合体からなるシートに代えて、SUS304製の板を使用したこと以外は実施例1〜2と同様にして改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートのペレットを用い実施例1ないし2と同様にして透明性、Tccおよびt1/2を測定した。結果を表2に示す。
【0069】
本比較例では、Tcc、t1/2は比較例1よりも低下するが、エチレン・メタクリル酸共重合体を使用した実施例1〜2よりもTcc、t1/2が高く、透明性は同等であった。このことからエチレン・メタクリル酸共重合体を添加することがより効果的であることがわかった。
【0070】
【実施例3〜9】
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の内面に貼付する結晶性樹脂製シートの組成、面積を表1ないし表2に示すように変えたこと以外は、実施例1〜2と同様にして改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1ないし2と同様にして透明性、Tccおよびt1/2を測定した。結果を表1〜2に示す。
【0071】
実施例3ないし9では比較例1(テスト原料)に比べてTcc、t1/2が低下した。また、いずれの結晶性樹脂を用いた場合においてもシート面積を調整することで添加量が変化することから、シート面積を調整することにより結晶化速度をコントロールできると考えられる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造装置の一例を示す上面図であり、(B)は同側面図である。
【図2】(A)は胴部が円筒状である本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の概略斜視図であり、(B)は胴部が角筒状である本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の概略斜視図である。
【図3】(A)は装置内のペレットの軌跡を上部から見た図であり、(B)は装置内のペレットの軌跡を斜め上から見た図である。
【図4】(A)は実施例で用いた改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を示す上面図であり、(B)は同概略斜視図である。
【図5】段付き角板を示す斜視図であり、A部の厚さは、約6.5mmであり、B部の厚さは約5mmであり、C部の厚さは約4mmである。
【発明の技術分野】
本発明は、改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、炭酸飲料、ジュース、天然水、酒、各種飲用茶、食用油、液体調味料などの液体を充填する容器の素材として、種々のプラスチック素材が用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明性、ガスバリア性、耐熱性および機械的強度に優れているため、飲料用中空成形容器の形成素材として多用されている。
【0003】
このような中空成形容器へ飲料などを充填する際には、加熱滅菌処理された飲料などが高温の状態で充填されることが多い。このときに高温の充填物によって中空成形容器が白濁したり、収縮、膨張するなどの変形を起こしたり、変形により自立性を損なったりするなどの問題を生じないよう、中空成形容器には充分な耐熱性が要求される。
【0004】
また、飲料用中空成形容器を形成するプラスチック素材は、耐熱性とともに透明性を兼ね備えることが強く要求される。またさらに、中空成形容器の製造にあたっては、高速で製造することが望まれており、生産性良く製造することのできるプラスチック素材が求められている。高速で中空成形容器を製造するためにプラスチック素材には、加熱結晶化速度が高く、結晶化速度などの品質のバラツキが少ないものが求められている。
【0005】
すなわち結晶化速度が高すぎると好適な成形条件幅が狭くなったり、原料プラスチックの品質のバラツキが多いと成形体製造時の歩留りが低くなる。したがって、上記のような中空成形体の製造に用いられるプラスチック素材は、成形効率、成形条件などに合った結晶化速度を有しかつ品質が一定であることが望ましい。こうした要請から、ポリエチレンテレフタレートに種々の配合剤を加えて、結晶化速度を調整する方法が種々提案されている。
【0006】
例えば特開平9−71639号公報にはポリエチレンテレフタレートのチップをポリエチレンからなる配管または棒状または網状の部材が内部に設置された気力輸送配管に通して、ポリエチレンテレフタレート表面にポリエチレンを添加しポリエチレンテレフタレートの結晶化速度をコントロールする方法が提案されている。しかしこの公報にはポリエチレンテレフタレートをポリエチレン部材に接触させる際の条件については詳述されていない。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、結晶性樹脂の含有量の制御が容易で、かつ結晶性樹脂の含有量のばらつきが少ない改質ポリエチレンテレフタレートが得られる改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造方法は、ポリエチレンテレフタレートペレットと結晶性樹脂を接触させることにより結晶性樹脂を添加し、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する方法であって、結晶性樹脂との接触面積及びペレットの衝突速度の少なくとも一方を変えることにより結晶化速度を制御することを特徴としている。
【0009】
また本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造方法は、上記結晶性樹脂の添加設備として、円筒状または断面形状が四角以上の多角であるほぼ角筒形の本体と、該本体の側面上方に開口部を有し該本体の内部に流動体を本体の周方向に導入可能に設けられた導入管とを有し、上記本体は直径がほぼ250〜1000mm、高さがほぼ250〜1000mmの範囲にあり、本体内壁の面積の1〜100%が結晶性樹脂により被覆されている設備を用いることを特徴としている。
【0010】
本発明では、上記結晶性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法は、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に対して5〜40m/sの速度で該結晶性樹脂に接触させて結晶性樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートを得ることを特徴としている。
【0011】
本発明では上記結晶性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法の態様には、上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用い、該製造装置の導入管からポリエチレンテレフタレートのペレットを風力輸送にて導入して、ポリエチレンテレフタレートのペレットが本体内壁を被覆する結晶性樹脂に連続的または断続的に接触しながら旋回しつつ落下させることによって、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂を付着させる方法がある。
【0012】
本発明では上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に導入されるポリエチレンテレフタレートのペレットの重量(kg)と風力輸送に用いられる気体の体積(Nm3)との比率が0.1〜15(kg/Nm3)の範囲であることが好ましい。
本発明では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させる際の速度および結晶性樹脂の種類の少なくとも1つを変更することによっても、改
質ポリエチレンテレフタレート中の結晶性樹脂の含有量を0.1〜10,000ppbの範囲で制御することができる。
本発明では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させて改質ポリエチレンテレフタレートを製造する際、装置内に貼付された結晶性樹脂製シートの面積および/または枚数を変更することにより、改質ポリエチレンテレフタレートに付着する結晶性樹脂の量を0.1〜10000ppbの範囲で制御することが可能である。
【0013】
このような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の昇温時の結晶化温度が132℃〜160℃の範囲にある改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
またこのような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の180℃における半結晶化時間が50秒〜100秒の範囲にある改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
さらにこのような改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法により、例えば示差走査熱量計にて測定した際の昇温時の結晶化温度Tccと、180℃における半結晶化時間t1/2が、下記の式(1)を満足する改質ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
【式2】
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置および改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法について具体的に説明する。
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置
まず、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1(A)は、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の一例を示す上面図であり、(B)は同側面図である。図2(A)は本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の一例を示す概略斜視図であり、(B)は他の例を示す概略斜視図である。
図1に示すように本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、ほぼ円筒形の本体1と、該本体の側面上方に開口部を有し該本体の内部に流動体を本体の周方向に導入可能に設けられた導入管3とを有している。図1では改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体1下部に下方に向かって直径が減少するように形作られている円錐部2を有しているが、該円錐部2はなくてもよい。また図1では本体1の上部は解放されているが、本発明では本体1の上部は少なくとも一部が板状部材、網状部材などにより覆われていてもよく、全体が板状部材、網状部材などにより覆われていてもよい。
【0016】
また図1では本体1はほぼ円筒状であるが、断面形状が四角以上の多角である角筒形であってもよく、例えば図2(B)に示すように断面が六角形であってもよい。本体1が円筒状である場合、断面形状は楕円であってもよいが、ほぼ真円であることが好ましく、本体1が角筒形である場合、断面形状は各辺の長さが互いに異なる多角形であってもよいが、ほぼ正多角形であることが好ましい。
【0017】
本体1は断面が円形である場合は直径(D)、断面が多角形である場合は対角線の最大値がほぼ250〜1000mm、好ましくはほぼ250〜400mmの範囲にあり、高さ(H)がほぼ250〜1000mm、好ましくはほぼ400〜700mmの範囲にあることが望ましい。本体1の直径および高さが上記の範囲内であると、改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、比較的小さな設備となる。
【0018】
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体1の内壁の面積の1〜100%、好ましくは5〜40%が結晶性樹脂により被覆されている。
本発明で用いられる結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、ポリアミドなどが挙げられる。
【0019】
本体1内壁の被覆は、例えば結晶性樹脂からなる単数または複数のシートを図2(A)、(B)の斜線を付した本体1の内壁に貼付することにより行うことができる。複数のシートを貼付する場合は、本体1の内壁に連続するようにまたは不連続に貼付することができる。なお図2(A)および(B)中斜線を付した部分は、本体1の内壁の結晶性樹脂により被覆されてもよい部分を示す。
【0020】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体の高さ、直径、本体内壁を被覆する結晶性樹脂の種類、被覆面積などを適宜変更することによりポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の割合を調整することができる。
また本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置は、本体内部をポリエチレンテレフタレートのペレットが旋回するので、本体内壁を被覆する結晶性樹脂に接触する確率が高くなるため装置が小型になり取り扱いやすい。
【0021】
改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法
本発明係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法では、ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に対して5〜40m/sの速度で該結晶性樹脂に接触させて結晶性樹脂を含有するポリエチレンテレフタレートを得ている。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートのペレットを結晶性樹脂に接触させる方法としては、例えばポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材が存在する空間内で、結晶性樹脂からなる部材と衝突接触させる方法がある。
ここでいう空間とは、例えばポリエチレンテレフタレートのペレットを風力輸送する配管、ポリエチレンテレフタレートのペレットを貯蔵するサイロなどいう。この空間内にシート状、棒状、網状などの成形体からなる部材を設置し、空間内にポリエチレンテレフタレートのチップを導入することによりポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材と接触させるか、または風力輸送の配管の内壁の少なくとも一部を結晶性樹脂で形成し、この配管にポリエチレンテレフタレートのチップを通過させることにより、ポリエチレンテレフタレートのチップを結晶性樹脂からなる部材と接触させる。より具体的には、風力輸送の配管または重力落下配管の一部、振動篩のパンチング板などの一部を結晶性樹脂としたり結晶性樹脂でライニングするかまたはマグネットキャッチャーのマグネット部の少なくとも一部を結晶性樹脂でライニングすることが挙げられる。
【0023】
本発明では、上述したような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いることが好ましい。
上記改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用た方法では、ポリエチレンテレフタレートのペレットは導入管から本体内部に周方向に輸送気体と共に導入され、ポリエチレンテレフタレートのペレットが本体の内壁を被覆する結晶性樹脂に連続的または断続的に接触しながら旋回しつつ落下することにより、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂が付着して改質ポリエチレンテレフタレートが製造される。
【0024】
このような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用たポリエチレンテレフタレートのペレットと結晶性樹脂との接触方法における、ペレットの軌跡の一例を図3に示す。図3(A)は装置内のペレットの軌跡の一例を上部から見た図であり、(B)は装置内のペレットの軌跡の一例を斜め上から見た図である。S1ないしS3は本体内壁に貼付された結晶性樹脂製シートを示し、破線はペレットの軌跡を示す。なお図3(B)では結晶性樹脂製シートは省略してある。
【0025】
本体内部に導入されたペレットは、例えば図3に示すように本体内壁に貼付された結晶性樹脂製シートS1ないしS3に断続的接触しながら旋回しつつ落下する。これにより、ポリエチレンテレフタレートのペレットの表面に結晶性樹脂が付着して改質ポリエチレンテレフタレートが製造される。
このような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いて改質ポリエチレンテレフタレートを製造する際、装置内に貼付された結晶性樹脂製シートの面積および/または枚数を変更することにより、改質ポリエチレンテレフタレートに付着する結晶性樹脂の量を制御することが可能である。
またポリエチレンテレフタレートのペレットは結晶性樹脂に対して通常5〜40m
/s、好ましくは10〜35m/s、より好ましくは15〜30m/sの速度で接触することが望ましい。ポリエチレンテレフタレートのペレットが結晶性樹脂に接触する速度が上記範囲にあると、結晶性樹脂がペレットに充分付着し、かつ結晶性樹脂からなる部材およびペレットが破損するおそれがない。また特殊なブロアなどを用いる必要がなく経済的である。
【0026】
また改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に導入されるポリエチレンテレフタレートのペレットの重量(kg)と、風力輸送に用いられる気体の体積(Nm2)との比率は0.1〜15、好ましくは1〜10の範囲であることが望ましい。
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法では、本体の高さ、直径、本体内壁を被覆する結晶性樹脂の種類、被覆面積、ポリエチレンテレフタレートのペレットを本体に導入する際の流速、ペレットと風力輸送に用いられる気体の体積との比率などを適宜変更することによりポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の割合を調整することができる。
【0027】
この方法により小さな装置で結晶化速度のばらつきが少ないポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
改質ポリエチレンテレフタレート
上記のようにして製造される改質ポリエチレンテレフタレート(ペレット)は、ポリエチレンテレフタレートと結晶性樹脂からなり、結晶性樹脂を改質ポリエチレンテレフタレート中に通常0.1〜10,000ppb、好ましくは0.5〜5,000ppb、さらに好ましくは0.8〜2,000ppbの量で含有している。
【0028】
この結晶性樹脂の含有量が上記範囲であれば、延伸成形体、特に高い透明性を有するボトルを効率よく成形することができる。また、上記の範囲内の量で結晶性樹脂を含有すると、得られる成形体の結晶化速度がポリエチレンテレフタレートを単独で用いて製造されたボトルよりも速くなり、ボトルを効率よく、かつ一定の品質で生産することが可能になる。
【0029】
改質ポリエチレンテレフタレート中のポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、通常0.52〜0.90dl/g、好ましくは0.65〜0.85dl/g、特に好ましくは0.70〜0.82dl/gの範囲にあることが好ましく、このような固有粘度(IV)を有するポリエチレンテレフタレートから形成された成形体は、ガスバリア性、耐圧性、耐熱性に優れている。
【0030】
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、成形した際に透明性が高いことが好ましく、図5に示すような段付き角板を成形して測定するヘイズ値が、通常0.5〜30%、特に1〜20%の範囲にあることが好ましい。
さらにまた、改質ポリエチレンテレフタレートは、成形した際に密度が高い方が耐圧性が高くなるので好ましい。密度は成形時で通常1.34〜1.40g/cm3、特に1.35〜1.39g/cm3の範囲にあることが好ましい。
【0031】
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、ボトルなどの中空成形容器を効率よく製造することができるような適切な結晶化温度を有している。具体的には、昇温時の結晶化温度(Tcc)が通常、132〜160℃、好ましくは140〜155℃である。
また、改質ポリエチレンテレフタレートは、180℃で測定した半結晶化時間(t1/2)が通常、30〜100秒、好ましくは40〜100秒である。
さらに、この改質ポリエチレンテレフタレートは、昇温時の結晶化温度Tccと、180℃で測定した半結晶化時間t1/2が、下記の式(1)を満足する。
【式3】
ポリエチレンテレフタレートに少量の結晶性樹脂が含まれた改質ポリエチレン
テレフタレートでは、ブロー成形時にポリエチレンテレフタレートが加熱昇温結晶化する際に結晶性樹脂が結晶化の核として作用するものと推定され、結晶化速度を速めているものと考えられる。
【0032】
次に本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートおよび結晶性樹脂について説明する。
ポリエチレンテレフタレート
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル誘導体(例えば低級アルキルエステル、フェニルエステルなど)から導かれる単位と、エチレングリコールまたはそのエステル誘導体(例えばモノカルボン酸エステルエチレンオキサイドなど)から導かれる単位とから形成されている。
【0033】
このポリエチレンテレフタレートは、必要に応じてテレフタル酸以外のジカルボン酸類から導かれる単位および/またはジオール類から導かれる単位を20モル%以下の量で含有していてもよい。
このようなテレフタル酸以外のジカルボン酸類として具体的には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸類から導かれる単位は1種または2種以上含まれていてもよい。
【0034】
また、エチレングリコール以外のジオール類として具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族類;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール類;ビスフェノール類;ハイドロキノンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。これらのジオール類から導かれる単位は1種または2種以上含まれていてもよい。
【0035】
また本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から導かれる単位を少量例えばジカルボン酸成分100モル%に対して2モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0036】
このようなポリエチレンテレフタレート中のジエチレングリコール(DEG)単位の割合は、ポリエチレンテレフタレート中、通常0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.6重量%である。
DEG単位の含有割合が0.5重量%以上であると、成形後のボトル胴部の透明性が良好となる傾向がある。また、2.0重量%以下であると、耐熱性、結晶化促進効果が良好である。
【0037】
ポリエチレンテレフタレート中のDEG単位の割合を上記範囲に調整する方法としては、ジエチレングリコールを重合原料として使用する方法の他、反応条件、添加剤を適宜選択することによって主原料であるエチレングリコールから副生するジエチレングリコールの副生量を調整する方法が挙げられる。
DEGの生成を抑制する添加剤としては、塩基性化合物、例えばトリエチルアミンなどの3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物が挙げられる。
【0038】
また、DEGの生成を促進させる化合物としては、硫酸などの無機酸、安息香酸などの有機酸が挙げられる。
上記のような本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒中で25℃で測定)は、通常0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.5〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.7〜1.2dl/gであり、融点は通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃であり、ガラス転移温度は通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃である。
【0039】
また、上記のポリエチレンテレフタレート中の環状三量体の含有量、即ちオキシエチレンオキシテレフタロイル単位の環状三量体の含有量は、通常0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下であることが望ましい。
環状三量体の含量が0.5重量%以下のポリエチレンテレフタレートを用いると、樹脂組成物を成形する際に、金型等が汚染されにくく、しかも成形体の胴部が白化しにくいので好ましい。ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体の含有量の含有量は、たとえば固相重合温度を高くし、さらに重合時間を長くすることにより低減することが可能である。
【0040】
また熱水または水蒸気により固相重合後のペレットに後処理を行うと、射出成形時の生産性を低下させる原因となる環状三量体の増加を抑制するために好ましい。後処理は、通常40〜120℃、好ましくは50〜110℃で、通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間の間行う。
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、上記のようなジカルボン酸とジオールとから従来公知の方法により製造される。本発明では、このようなポリエチレンテレフタレートとしては、通常ペレット状で市販されている「原料ポリエチレンテレフタレート」が用いられるが、必要に応じて、原料ポリエチレンテレフタレートとともに「リプロポリエチレンテレフタレート」(再生ポリエチレンテレフタレート)が用いられてもよい。具体的に、ポリエチレンテレフタレート中には、「リプロポリエチレンテレフタレート」が1〜50重量%の量で含有されていてもよい。
【0041】
なお、本明細書中において、「原料ポリエチレンテレフタレート」とは、ジカルボン酸と、ジオールとからペレット状で製造され、加熱溶融状態で、成形機を通過させて中空成形容器またはプリフォームなどに成形された熱履歴を有しないポリエチレンテレフタレートである。また、「リプロポリエチレンテレフタレート」は、このような原料ポリエチレンテレフタレートを少なくとも1回加熱溶融状態で成形機を通過させたポリエチレンテレフタレートに再び熱を加えてペレタイズした熱履歴を有するポリエチレンテレフタレート(再生ポリエチレンテレフタレート)である。このように原料ポリエチレンテレフタレートを「加熱溶融状態で成形機を通過させる」処理は、原料ポリエチレンテレフタレートからなるペレット(チップ)を加熱溶融し、プリフォーム、中空成形容器などの所望形状に成形することによって行われる。
【0042】
本発明でではポリエチレンテレフタレートはペレット状で用いられる。ポリエチレンテレフタレートのペレットの粒径は特に限定されないが、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲である。
結晶性樹脂
本発明で用いられる結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、ポリアミドなどから選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
(ポリエチレン)
ポリエチレンとして具体的には、エチレンの単独重合体、またはエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体などが挙げられる。またこのポリエチレンの密度は、0.88〜0.96g/cm3であることが望ましい。
【0043】
エチレン以外のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、ジエチル−1−ブテン、トリメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどが挙げられる。
【0044】
エチレンとこれらのα−オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。このようなポリエチレンは、どのような方法によって製造されたものでもよく、たとえばチタン系触媒、クロム系触媒、バナジウム系触媒などの従来周知のチーグラー型触媒を用いて製造されたものであってもよく、またいわゆるメタロセン系触媒(例えばジルコノセン化合物とアルミノオキサンとからなる触媒)などを用いて製造されたものであってもよい。
【0045】
また本発明で用いられるポリエチレンの製造は、気相で行うこともできるし(気相法)、また液相で行うこともできる(液相法)。
本発明のポリエチレンは、ASTMD1238によるMFR(190℃、2160g荷重)が0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
(ポリプロピレン)
ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと少量のオレフィン類あるいはジエン類との共重合体であってもよい。
【0046】
オレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、1−デセン、1−ヘキサデセン、シクロペンテンおよびノルボルネンなどのオレフィン類などが挙げられ;ジエン類としては、ヘキサジエン、オクタジエン、デカジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノボノルネンなどが挙げられる。これらは2種以上がプロピレンと共重合していてもよい。
【0047】
ポリプロピレンは、ASTMD1238によるMFR(230℃、2160g荷重)が0.05〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体)
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体として具体的には、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレンとアクリル酸とメタクリル酸の三元共重合体などが挙げられる。
【0048】
また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、エチレンと(メタ)アクリル酸以外の成分を少量共重合したものも含まれる。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
【0049】
このエチレン・不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単位含量は、0.5〜20重量%の範囲にあることが好ましく、1〜15重量%の範囲にあることがさらに好ましく、5〜10重量%の範囲にあることが特に好ましい。不飽和カルボン酸含量がこの範囲内にあると、ポリエチレンテレフタレートの透明性を保持しながら、改質ポリエチレンテレフタレート昇温時の結晶化速度をばらつきが少なく向上させ得るという点で好ましい。またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体中の不飽和カルボン酸単位含量により結晶化速度を制御することもできる。
【0050】
このエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、ASTMD1238によるMFR(190℃、2160g荷重)が通常0.05〜100g/10分、特に0.1〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該共重合体が側鎖に有するカルボキシル基が金属と結合していないものであってもよく、また少なくとも一部がカルボン酸の金属塩の状態で存在するもの(アイオノマー)であってもよい。
【0051】
このような金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、亜鉛塩、コバルト塩、ニッケル塩、マンガン塩、鉛塩、銅塩などの2価の遷移金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が好ましく、特に亜鉛塩が、組成物の透明性を保持するという点で好ましい。金属塩の種類は1種類でも複数でもよい。
【0052】
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体がアイオノマーである場合には、全カルボキシル基に対する金属と結合しているカルボキシル基の割合は特に限定されるものではないが、通常3〜100%程度である。
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の製法としては、例えばエチレンと(メタ)アクリル酸、必要に応じ他のコモノマーを高圧ラジカル重合法により共重合させ、所望により、前記金属陽イオンで中和処理する方法が挙げられる。
【0053】
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロンおよびこれらの共重合物や混合物が挙げられる。
これらの結晶性樹脂は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、特にエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマーが好ましい。
【0054】
一般に、付加機能を与えるなどの目的でポリエチレンテレフタレートにそれ以外のものを添加すると、成形時の透明性に関しては、元のポリエチレンテレフタレートよりも劣り、成形時のヘイズ値が高くなる。ポリエチレンテレフタレートにポリプロピレンやポリエチレンを添加した場合においても、使用に差し支えない透明性を保持しながらも、ポリエチレンテレフタレートのみを成形した場合と比較すると、透明性が劣るものであった。
【0055】
しかしながら、結晶性樹脂としてエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を特定の量で用いることにより、ポリエチレンテレフタレートの結晶化温度が成形に好適な範囲に制御されるとともに、成形物の透明性をポリエチレンテレフタレートを単独で用いた場合と同等に保持できるという効果が奏される。
これは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がポリエチレンテレフタレートとの相溶性に優れるため、溶融状態から非晶状態に急冷固化される際には、ポリエチレンテレフタレートに対する核剤効果を示し得ないためであろうと考えられる。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法は、ポリエチレンテレフタレートに添加する結晶性樹脂の量の調整が容易であり、かつ均一に配合することができるため、結晶化速度の調整が容易であり、かつ結晶化速度を均一化することができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔測定方法〕
下記実施例において各種物性は以下のようにして測定した。
【0058】
ジエチレングリコール含量
試料を1g秤量し、モノエタノールアミン3ml中にて280℃で加熱し加水分解した。放冷後、高純度テレフタル酸で中和し、溶液をNo.5C濾紙にて濾過した。得られた濾液1μlを、ヒューレットパッカード社製ガスクロマトグラフ(HP5890)に注入し、ジエチレングリコール含量を定量した。
【0059】
環状三量体含量
所定量のポリエチレンテレフタレートをo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過して線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC7A)に供給してポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体の量を求め、この値を測定に用いたポリエチレンテレフタレートの量で割って、ポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体含量(重量%)とした。
【0060】
固有粘度(IV)
フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(50/50重量比)を用いて0.5g/dlの試料溶液を調製し、25℃で測定した溶液粘度から固有粘度(IV)を算出した。
透明性(ヘイズ値)
乾燥試料をシリンダー温度275℃の射出成形機を用いて金型温度10℃の条件で図5に示すような段付角板を成形し、5mm厚部分の透明性をヘイズ値(白色光の光線乱反射率)で比較した。
【0061】
昇温結晶化温度(Tcc)
乾燥試料をシリンダー温度285℃の名機製作所製M70B−DM射出成形機を用いて金型温度10℃の条件でプリフォームを成形し、口栓部天面を結晶化速度評価用試料としてパーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して測定した。試料
をサンプルパンに10mg秤量し、室温から10℃/分の昇温速度で昇温し、その際に発生する発熱ピークのピーク温度をTccとした。
【0062】
半結晶化時間(t1/2)
乾燥試料をシリンダー温度285℃の名機製作所製M70B−DM射出成形機を用いて金型温度10℃の条件でプリフォームを成形し、口栓部天面を結晶化速度評価用試料としてパーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC)を使用して測定した。試料をサンプルパンに10mg秤量し、室温から320℃/分の昇温速度で昇温し、180℃に保持する。発熱量が実質的に変動しない時間まで発熱ピークを採取し、横軸を時間、縦軸を発熱量とした発熱曲線の発熱ピークにおいて、全発熱ピーク面積の半分の発熱ピーク面積となるまでの時間を算出して半結晶化時間(t1/2)とする。
【0063】
〔装置〕
図4に示すような改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を用いた。図4(A)は改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を示す上面図であり、(B)は同概略斜視図である。なお図4(A)では装置下部の円錐部に設けられている排出口は図示していない。装置はSUS304製であり、本体の直径が320mm、高さが450mmであり、結晶性樹脂からなるシートは
図4のSの部分に取り付けた。シートの高さ(h)は250mmである。
【0064】
【実施例1〜2】
固有粘度(IV)が0.760dl/g、ジエチレングリコール含量が1.33重量%、環状三量体含有量0.32重量%であるポリエチレンテレフタレートを50kg、表1に示す組成および面積を有するエチレン・メタクリル酸共重合体製シートを内壁に貼付した改質ポリエチレンテレフタレート製造装置に、表1に示す条件で空気輸送により導入し改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートは装置の下からSUS304製の専用籠に回収した。
【0065】
この改質ポリエチレンテレフタレートを溶融後、射出成形して段付き角板、プリフォームを形成し、透明性、Tccおよびt1/2を測定した
。結果を表1に示す。
【0066】
【比較例1】
実施例1ないし2で用いた固有粘度(IV)が0.760dl/g、ジエチレングリコール含量が1.33重量%、環状三量体含有量0.32重量%であるポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1ないし6と同様にして透明性、
Tccおよびt1/2を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
表1および2に示した結果から実施例1ないし2では、テスト原料(比較例1)に比べ、Tcc、t1/2が低下し、またTcc、t1/2はエチレン・メタクリル酸共重合体のシート面積に相関していることがわかる。このことからエチレン・メタクリル酸共重合体のシート面積を調整することにより改質ポリエチレンテレフタレートのTccおよびt1/2を制御できると考えられる。
【0068】
【比較例2】
実施例1ないし2においてエチレン・メタクリル酸共重合体からなるシートに代えて、SUS304製の板を使用したこと以外は実施例1〜2と同様にして改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートのペレットを用い実施例1ないし2と同様にして透明性、Tccおよびt1/2を測定した。結果を表2に示す。
【0069】
本比較例では、Tcc、t1/2は比較例1よりも低下するが、エチレン・メタクリル酸共重合体を使用した実施例1〜2よりもTcc、t1/2が高く、透明性は同等であった。このことからエチレン・メタクリル酸共重合体を添加することがより効果的であることがわかった。
【0070】
【実施例3〜9】
改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の内面に貼付する結晶性樹脂製シートの組成、面積を表1ないし表2に示すように変えたこと以外は、実施例1〜2と同様にして改質ポリエチレンテレフタレートを製造した。得られた改質ポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1ないし2と同様にして透明性、Tccおよびt1/2を測定した。結果を表1〜2に示す。
【0071】
実施例3ないし9では比較例1(テスト原料)に比べてTcc、t1/2が低下した。また、いずれの結晶性樹脂を用いた場合においてもシート面積を調整することで添加量が変化することから、シート面積を調整することにより結晶化速度をコントロールできると考えられる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートの製造装置の一例を示す上面図であり、(B)は同側面図である。
【図2】(A)は胴部が円筒状である本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の概略斜視図であり、(B)は胴部が角筒状である本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレート製造装置の概略斜視図である。
【図3】(A)は装置内のペレットの軌跡を上部から見た図であり、(B)は装置内のペレットの軌跡を斜め上から見た図である。
【図4】(A)は実施例で用いた改質ポリエチレンテレフタレート製造装置を示す上面図であり、(B)は同概略斜視図である。
【図5】段付き角板を示す斜視図であり、A部の厚さは、約6.5mmであり、B部の厚さは約5mmであり、C部の厚さは約4mmである。
Claims (7)
- ポリエチレンテレフタレートペレットと結晶性樹脂を接触させることにより結晶性樹脂を添加し、ポリエチレンテレフタレートの結晶化速度を制御する方法であって、結晶性樹脂との接触面積及びペレットの衝突速度の少なくとも一方を変えることにより結晶化速度を制御することを特徴とする、改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 上記結晶性樹脂の添加設備として、円筒状または断面形状が四角以上の多角であるほぼ角筒形の本体と、該本体の側面上方に開口部を有し該本体の内部に流動体を本体の周方向に導入可能に設けられた導入管とを有し、上記本体は直径がほぼ250〜1000mm、高さがほぼ250〜1000mmの範囲にあり、本体内壁の面積の1〜100%が結晶性樹脂により被覆されている設備を用いることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 上記結晶性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1または2に記載の改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- ポリエチレンテレフタレート中の上記結晶性樹脂の含量が0.1〜10000ppbの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 示差走査熱量計にて測定した際の昇温時の結晶化温度が132℃〜160℃の範囲にある請求項1乃至4に記載の改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
- 示差走査熱量計にて測定した際の180℃における半結晶化時間が50秒〜100秒の範囲にある請求項1乃至4に記載の改質ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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