JP2004010460A - 種子結晶 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶を提供する。
【解決手段】チョクラルスキー法に用いられる種子結晶であって、この種子結晶は、断面形状が円形をなし、かつ、直径方向に貫通し種子結晶を吊り治具に吊るすための保持ピンが挿入されるピン孔を有し、このピン孔は長辺端部に設けられ保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔である。
【選択図】 図1
【解決手段】チョクラルスキー法に用いられる種子結晶であって、この種子結晶は、断面形状が円形をなし、かつ、直径方向に貫通し種子結晶を吊り治具に吊るすための保持ピンが挿入されるピン孔を有し、このピン孔は長辺端部に設けられ保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は種子結晶に係わり、特にピン孔は保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔とした種子結晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)により引上げられたシリコン単結晶をスライスして製造される。図10に示すように、このCZ法に用いられる従来の種子結晶21は、シリコン単結晶が用いられ、機械加工により直径30〜40mm、長さ150mmの円柱状に成形され、かつ、その円柱軸と垂直方向に、上端部近傍に直径8〜12mm程度のピン孔22が超音波加工等により穿設される。従来の種子結晶21は使用前に、表面に付着した不純物除去、機械加工歪み除去のために、表面をフッ酸と硝酸の混合液で処理され、その後、図11に示すように、ピン孔23が穿設された吊り治具24の下端部に、保持ピン25により止められて保持される。吊り治具24及び保持ピン25は、1300℃(荷重50〜100N)〜500℃(荷重>2000〜3000N)という高温での使用を余儀なくされており、鉄に比して線膨張係数が数分の1程度で、かつ、高温での機械的強度も保持できるモリブデン、あるいは、タングステン合金等が使用される。
【0003】
上記のように、種子結晶21には円柱軸と垂直方向になるよう、直径8〜12mm程度のピン孔22が超音波加工等によって穿設され、図12に示すように、縦方向に半割にしたピン孔22の断面で示すように、このピン孔22にモリブデン、あるいはタングステン合金等の保持ピン25が挿入されて、育成結晶の全荷重を支えることになる。保持ピン25は、ピン孔22への挿入時のクリアランスや熱膨張によるマージンを考慮して、その直径をピン孔22よりも500〜800μm程度小さくするため、図12中の三角形で示す円周方向の幅にして数百μm〜2mm程度の円筒部分の狭い面積で、種子結晶は育成結晶の全荷重を受けることになる。
【0004】
このため、従来の種子結晶21では、育成結晶の荷重によって生じる応力が、ピン孔22の周囲で偏在的に分布するため、ピン孔22のピン接触端部にチッピングが生じたり、ピン孔22の内面で種子結晶21の肉厚が薄い部分に亀裂が生じ、最悪の場合には、種子結晶21がその部分から破断して、育成した結晶が落下する事態も生じることがあった。
【0005】
特に、近年の傾向として、直径300mmにも及ぶ大直径の単結晶が量産されるようになってきており、種子結晶に2000〜3000Nの大きな荷重が掛かる傾向になっている。そこで、種子結晶が破断してしまうと、折角育成した育成結晶が損なわれるばかりか、石英ガラスルツボ等の高価な部材まで破損することになり、大きな損害が発生する。
【0006】
このような問題を解決するために、特開平10−291893号公報、特開平11−139896公報記載のように、種子結晶に切り欠き部を設け、種子結晶を筒状の吊り治具の内部に挿入して、保持ピンに切り欠き部を接触させて保持する方法が提案されている。これらの方法では、温度が高温になっていくに連れて、保持ピンと種子結晶の熱膨張係数の違いから、保持ピンと種子結晶の接触界面に面荷重の変動が起き、強い摩擦が生じるという問題があった。
【0007】
さらに、他の従来の吊り治具の構造として、吊り治具の内部を柔軟質部材にする等の改善がなされているが、これにより、保持ピンと種子結晶の摩擦が緩和できても、これとは反対に、種子結晶を吊り治具内に保持する確実性を犠牲にするので、これら切り欠きによる保持方法は、必ずしも完全な方法とは言えなかった。
【0008】
このように、従来の種子結晶では、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、また、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じて育成結晶が落下して、単結晶引上コストを上昇させ、さらに、事故を発生させるおそれがあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶が要望されていた。
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、チョクラルスキー法に用いられる種子結晶であって、この種子結晶は断面形状が円形をなし、かつ、直径方向に貫通し種子結晶を吊り治具に吊るすための保持ピンが挿入されるピン孔を有し、このピン孔は長辺端部に設けられ保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔であることを特徴とする種子結晶が提供される。
【0012】
これにより、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶が実現される。
【0013】
好適な一例では、上記長孔は、係止部の弧状が円弧状に形成された長円である。これにより、ピン孔の周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散できる。
【0014】
また、他の好適な一例では、上記長孔は、楕円である。
【0015】
また、他の好適な一例では、上記長孔は、閉曲線により形成された長孔である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる種子結晶の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明に係わる種子結晶の第1実施形態の概念図であり、図2はその吊り治具への取付け状態を示す概念図である。
【0018】
図1に示すような種子結晶1は、単結晶シリコンで形成され、シリコン融液に接触させた後、ルツボ及び種結晶を回転させながらシリコン単結晶を引上げるチョクラルスキー法(CZ法)に用いられるものである。
【0019】
種子結晶1は、断面形状が円形をなす円柱体であり、上端部近傍には直径方向に貫通するピン孔2が設けられており、図2に示すように、このピン孔2は、種子結晶1を吊り治具11に吊るすための保持ピン12が挿入されるためのものである。また、図1に示すように、ピン孔2は、長辺端部、例えば、直線部2b端部に設けられ、真円断面形状の保持ピン12が接触する係止部2aが弧状、例えば、円弧状に形成された長孔からなり、この長孔は、円弧状係止部2aを形成する円弧部と直線部2bからなる長円をなしている。なお、長辺とは長孔の長手方向の外郭線をいい、長円では上記直線部をいう。
【0020】
次に本発明に係わる種子結晶を用いたCZ法について説明する。
【0021】
図3に示すように、種子結晶1は、吊り治具11に取付けることにより、CZ法単結晶引上装置13に組み込んで用いられる。このCZ法単結晶引上装置13の上部には単結晶引上用のワイヤ14が昇降自在に設けられ、上記吊り治具11が取り付けられている。
【0022】
一方、単結晶引上装置13の下方には、ヒータ15により加熱される石英ルツボ16が設けられ、この石英ルツボ16で原料シリコン17が加熱され溶融状態になる。この溶融シリコン17に種子結晶1を接触させて、種子結晶1の下部に種子結晶1と同じ結晶方位を有する単結晶18を育成させる。
【0023】
上記のような単結晶引上工程において、単結晶18は育成されて重量を増し、この全重量は真円断面形状の保持ピン12が接触する係止部2aの数百μm〜2mm程度の円弧部分にかかるが、係止部2aは円弧状に形成されているので、ピン孔2の周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2の周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2のピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。従って、単結晶引上げ中に単結晶が落下することなく、安全かつ安価に単結晶を引上ることができる。
【0024】
また、本発明に係わる種子結晶の第2実施形態について説明する。
【0025】
本第2実施形態は、上記第1実施形態のピン孔が長円であるのに対して、ピン孔が楕円である。
【0026】
例えば、図4及び図5に示すように、種子結晶1Aは、楕円形状のピン孔2Aが長辺、楕円にあってはその長径と種子結晶1Aの長手方向とが一致するように配設され、係止部2Aaが長辺(長径)端部、すなわち、曲率半径が小さい円弧部に設けられている。
【0027】
従って、単結晶引上工程において、単結晶の全重量は真円断面形状の保持ピン12Aが接触する係止部2Aaの数百μm〜2mm程度の円弧状部分にかかるが、係止部2Aaは円弧状に形成されているので、ピン孔2Aの周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2Aの周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2Aのピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。
【0028】
なお、他の構成は図2に示す吊り治具と異ならないので、同一符号を付して説明は省略する。
【0029】
また、本発明に係わる種子結晶の第3実施形態について説明する。
【0030】
本第3実施形態は、上記第1実施形態のピン孔が長円であるのに対して、ピン孔が閉曲線により形成された長孔である。
【0031】
例えば、図6及び図7に示すように、種子結晶1Bには、楕円形状のピン孔2Bが設けられ、このピン孔2Bは、曲線、例えば、曲率半径の小さな外側へ凸形状の円弧と、長辺2Bbが曲線、例えば、曲率半径の大きな内側へ凸形状の円弧からなる閉曲線の長孔であり、係止部2Baが長辺端部の小さな円弧部に設けられている。
【0032】
従って、単結晶引上工程において、単結晶の全重量は真円断面形状の保持ピン12Bが接触する係止部2Baの数百μm〜2mm程度の円弧部分にかかるが、係止部2Baは円弧状に形成されているので、ピン孔2Bの周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2Bの周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2Bのピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。
【0033】
なお、上記各実施形態において、係止部はいずれも、円弧状の例で説明したが、円弧状に限らず、弧状であっても、本発明の目的は達せられる。
【0034】
【実施例】
本発明に係わる種子結晶を用い、直径が30mmで、長孔を長円形状ピン孔(ピン孔直径9mm×18mm)(実施例1)、あるいは、長孔を楕円形状ピン孔(ピン孔直径9mm×18mm)(実施例2)とし、2940N(300kg)の荷重を種子結晶下端に均一に掛けた場合の応力分布を数値解析によってシミュレーションを行ない、従来の真円形状のピン孔(ピン孔直径9mm)を有する種子結晶(比較例)と比較した。
【0035】
なお、荷重を支える部分(保持ピンとの接触部分)は、ピン孔の上端の円周方向の幅にして2mmの円筒部分とした。ただし、演算を簡単にするために、荷重は下端面に均一に分布して作用すると仮定し、また、熱膨張による変形や、種子結晶の自重を無視した。これらによるモデルの単純化は、あくまでも3種のモデルに共通した条件であり、かつ、応力の大小に大きな影響を与えないものと考えられる。
【0036】
結果: 図12(従来例)、図8(実施例1)及び図9(実施例2)に示す。解析結果は、縦方向に半割にしたモデルで、ポイントごとの応力の大きさを、3N/mm2刻みでの階層コンター(等高表示)で表示した。
【0037】
図12(従来例)に示すように、従来例の場合、ピン孔側方部分の最も水平断面積が小さくなる部分付近での表面応力が18〜21N/mm2になっているのに対して、図8(実施例1)、図9(実施例2)に示すように、実施例1及び実施例2の場合には、応力は12〜15N/mm2であり、従来例に比べて約30%減少していることがわかる。また、最大応力は、従来例では26.3N/mm2であるのに対して、実施例1では19.1N/mm2、実施例2では24.9N/mm2と、いずれも従来例よりも小さい値になっている。
【0038】
【発明の効果】
本発明に係わる種子結晶によれば、表面応力が分散され、面積が小さくなる部分付近での応力が減少したことにより、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態の概念図。
【図2】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図3】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態を用いたCZ法による引上装置の概念図。
【図4】本発明に係わる種子結晶の第2実施形態の概念図。
【図5】本発明に係わる種子結晶の第2実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図6】本発明に係わる種子結晶の第3実施形態の概念図。
【図7】本発明に係わる種子結晶の第3実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図8】実施例における第1実施形態のシミュレーション解析図。
【図9】実施例における第2実施形態のシミュレーション解析図。
【図10】従来の種子及び吊り治具を示す概念図。
【図11】従来の種子結晶を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図12】従来例のシミュレーション解析図。
【符号の説明】
1 種子結晶
2 ピン孔
2a 係止部
2b 直線部
【発明の属する技術分野】
本発明は種子結晶に係わり、特にピン孔は保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔とした種子結晶に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)により引上げられたシリコン単結晶をスライスして製造される。図10に示すように、このCZ法に用いられる従来の種子結晶21は、シリコン単結晶が用いられ、機械加工により直径30〜40mm、長さ150mmの円柱状に成形され、かつ、その円柱軸と垂直方向に、上端部近傍に直径8〜12mm程度のピン孔22が超音波加工等により穿設される。従来の種子結晶21は使用前に、表面に付着した不純物除去、機械加工歪み除去のために、表面をフッ酸と硝酸の混合液で処理され、その後、図11に示すように、ピン孔23が穿設された吊り治具24の下端部に、保持ピン25により止められて保持される。吊り治具24及び保持ピン25は、1300℃(荷重50〜100N)〜500℃(荷重>2000〜3000N)という高温での使用を余儀なくされており、鉄に比して線膨張係数が数分の1程度で、かつ、高温での機械的強度も保持できるモリブデン、あるいは、タングステン合金等が使用される。
【0003】
上記のように、種子結晶21には円柱軸と垂直方向になるよう、直径8〜12mm程度のピン孔22が超音波加工等によって穿設され、図12に示すように、縦方向に半割にしたピン孔22の断面で示すように、このピン孔22にモリブデン、あるいはタングステン合金等の保持ピン25が挿入されて、育成結晶の全荷重を支えることになる。保持ピン25は、ピン孔22への挿入時のクリアランスや熱膨張によるマージンを考慮して、その直径をピン孔22よりも500〜800μm程度小さくするため、図12中の三角形で示す円周方向の幅にして数百μm〜2mm程度の円筒部分の狭い面積で、種子結晶は育成結晶の全荷重を受けることになる。
【0004】
このため、従来の種子結晶21では、育成結晶の荷重によって生じる応力が、ピン孔22の周囲で偏在的に分布するため、ピン孔22のピン接触端部にチッピングが生じたり、ピン孔22の内面で種子結晶21の肉厚が薄い部分に亀裂が生じ、最悪の場合には、種子結晶21がその部分から破断して、育成した結晶が落下する事態も生じることがあった。
【0005】
特に、近年の傾向として、直径300mmにも及ぶ大直径の単結晶が量産されるようになってきており、種子結晶に2000〜3000Nの大きな荷重が掛かる傾向になっている。そこで、種子結晶が破断してしまうと、折角育成した育成結晶が損なわれるばかりか、石英ガラスルツボ等の高価な部材まで破損することになり、大きな損害が発生する。
【0006】
このような問題を解決するために、特開平10−291893号公報、特開平11−139896公報記載のように、種子結晶に切り欠き部を設け、種子結晶を筒状の吊り治具の内部に挿入して、保持ピンに切り欠き部を接触させて保持する方法が提案されている。これらの方法では、温度が高温になっていくに連れて、保持ピンと種子結晶の熱膨張係数の違いから、保持ピンと種子結晶の接触界面に面荷重の変動が起き、強い摩擦が生じるという問題があった。
【0007】
さらに、他の従来の吊り治具の構造として、吊り治具の内部を柔軟質部材にする等の改善がなされているが、これにより、保持ピンと種子結晶の摩擦が緩和できても、これとは反対に、種子結晶を吊り治具内に保持する確実性を犠牲にするので、これら切り欠きによる保持方法は、必ずしも完全な方法とは言えなかった。
【0008】
このように、従来の種子結晶では、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、また、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じて育成結晶が落下して、単結晶引上コストを上昇させ、さらに、事故を発生させるおそれがあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶が要望されていた。
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、チョクラルスキー法に用いられる種子結晶であって、この種子結晶は断面形状が円形をなし、かつ、直径方向に貫通し種子結晶を吊り治具に吊るすための保持ピンが挿入されるピン孔を有し、このピン孔は長辺端部に設けられ保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔であることを特徴とする種子結晶が提供される。
【0012】
これにより、保持ピンと種子結晶の接触界面に摩擦が生じたり、あるいは、ピン孔の周囲にチッピングや亀裂が生じることがなく、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶が実現される。
【0013】
好適な一例では、上記長孔は、係止部の弧状が円弧状に形成された長円である。これにより、ピン孔の周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散できる。
【0014】
また、他の好適な一例では、上記長孔は、楕円である。
【0015】
また、他の好適な一例では、上記長孔は、閉曲線により形成された長孔である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる種子結晶の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明に係わる種子結晶の第1実施形態の概念図であり、図2はその吊り治具への取付け状態を示す概念図である。
【0018】
図1に示すような種子結晶1は、単結晶シリコンで形成され、シリコン融液に接触させた後、ルツボ及び種結晶を回転させながらシリコン単結晶を引上げるチョクラルスキー法(CZ法)に用いられるものである。
【0019】
種子結晶1は、断面形状が円形をなす円柱体であり、上端部近傍には直径方向に貫通するピン孔2が設けられており、図2に示すように、このピン孔2は、種子結晶1を吊り治具11に吊るすための保持ピン12が挿入されるためのものである。また、図1に示すように、ピン孔2は、長辺端部、例えば、直線部2b端部に設けられ、真円断面形状の保持ピン12が接触する係止部2aが弧状、例えば、円弧状に形成された長孔からなり、この長孔は、円弧状係止部2aを形成する円弧部と直線部2bからなる長円をなしている。なお、長辺とは長孔の長手方向の外郭線をいい、長円では上記直線部をいう。
【0020】
次に本発明に係わる種子結晶を用いたCZ法について説明する。
【0021】
図3に示すように、種子結晶1は、吊り治具11に取付けることにより、CZ法単結晶引上装置13に組み込んで用いられる。このCZ法単結晶引上装置13の上部には単結晶引上用のワイヤ14が昇降自在に設けられ、上記吊り治具11が取り付けられている。
【0022】
一方、単結晶引上装置13の下方には、ヒータ15により加熱される石英ルツボ16が設けられ、この石英ルツボ16で原料シリコン17が加熱され溶融状態になる。この溶融シリコン17に種子結晶1を接触させて、種子結晶1の下部に種子結晶1と同じ結晶方位を有する単結晶18を育成させる。
【0023】
上記のような単結晶引上工程において、単結晶18は育成されて重量を増し、この全重量は真円断面形状の保持ピン12が接触する係止部2aの数百μm〜2mm程度の円弧部分にかかるが、係止部2aは円弧状に形成されているので、ピン孔2の周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2の周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2のピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。従って、単結晶引上げ中に単結晶が落下することなく、安全かつ安価に単結晶を引上ることができる。
【0024】
また、本発明に係わる種子結晶の第2実施形態について説明する。
【0025】
本第2実施形態は、上記第1実施形態のピン孔が長円であるのに対して、ピン孔が楕円である。
【0026】
例えば、図4及び図5に示すように、種子結晶1Aは、楕円形状のピン孔2Aが長辺、楕円にあってはその長径と種子結晶1Aの長手方向とが一致するように配設され、係止部2Aaが長辺(長径)端部、すなわち、曲率半径が小さい円弧部に設けられている。
【0027】
従って、単結晶引上工程において、単結晶の全重量は真円断面形状の保持ピン12Aが接触する係止部2Aaの数百μm〜2mm程度の円弧状部分にかかるが、係止部2Aaは円弧状に形成されているので、ピン孔2Aの周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2Aの周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2Aのピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。
【0028】
なお、他の構成は図2に示す吊り治具と異ならないので、同一符号を付して説明は省略する。
【0029】
また、本発明に係わる種子結晶の第3実施形態について説明する。
【0030】
本第3実施形態は、上記第1実施形態のピン孔が長円であるのに対して、ピン孔が閉曲線により形成された長孔である。
【0031】
例えば、図6及び図7に示すように、種子結晶1Bには、楕円形状のピン孔2Bが設けられ、このピン孔2Bは、曲線、例えば、曲率半径の小さな外側へ凸形状の円弧と、長辺2Bbが曲線、例えば、曲率半径の大きな内側へ凸形状の円弧からなる閉曲線の長孔であり、係止部2Baが長辺端部の小さな円弧部に設けられている。
【0032】
従って、単結晶引上工程において、単結晶の全重量は真円断面形状の保持ピン12Bが接触する係止部2Baの数百μm〜2mm程度の円弧部分にかかるが、係止部2Baは円弧状に形成されているので、ピン孔2Bの周囲の応力を分散させることができる。これにより、ピン孔2Bの周囲の応力を偏在させず、比較的広い面積で均一になるよう分散でき、ピン孔2Bのピン接触端部にチッピングが生じたり、肉厚が薄い部分に亀裂が生じたりすることがない。
【0033】
なお、上記各実施形態において、係止部はいずれも、円弧状の例で説明したが、円弧状に限らず、弧状であっても、本発明の目的は達せられる。
【0034】
【実施例】
本発明に係わる種子結晶を用い、直径が30mmで、長孔を長円形状ピン孔(ピン孔直径9mm×18mm)(実施例1)、あるいは、長孔を楕円形状ピン孔(ピン孔直径9mm×18mm)(実施例2)とし、2940N(300kg)の荷重を種子結晶下端に均一に掛けた場合の応力分布を数値解析によってシミュレーションを行ない、従来の真円形状のピン孔(ピン孔直径9mm)を有する種子結晶(比較例)と比較した。
【0035】
なお、荷重を支える部分(保持ピンとの接触部分)は、ピン孔の上端の円周方向の幅にして2mmの円筒部分とした。ただし、演算を簡単にするために、荷重は下端面に均一に分布して作用すると仮定し、また、熱膨張による変形や、種子結晶の自重を無視した。これらによるモデルの単純化は、あくまでも3種のモデルに共通した条件であり、かつ、応力の大小に大きな影響を与えないものと考えられる。
【0036】
結果: 図12(従来例)、図8(実施例1)及び図9(実施例2)に示す。解析結果は、縦方向に半割にしたモデルで、ポイントごとの応力の大きさを、3N/mm2刻みでの階層コンター(等高表示)で表示した。
【0037】
図12(従来例)に示すように、従来例の場合、ピン孔側方部分の最も水平断面積が小さくなる部分付近での表面応力が18〜21N/mm2になっているのに対して、図8(実施例1)、図9(実施例2)に示すように、実施例1及び実施例2の場合には、応力は12〜15N/mm2であり、従来例に比べて約30%減少していることがわかる。また、最大応力は、従来例では26.3N/mm2であるのに対して、実施例1では19.1N/mm2、実施例2では24.9N/mm2と、いずれも従来例よりも小さい値になっている。
【0038】
【発明の効果】
本発明に係わる種子結晶によれば、表面応力が分散され、面積が小さくなる部分付近での応力が減少したことにより、安全かつ安価に単結晶を引上げることができる種子結晶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態の概念図。
【図2】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図3】本発明に係わる種子結晶の第1実施形態を用いたCZ法による引上装置の概念図。
【図4】本発明に係わる種子結晶の第2実施形態の概念図。
【図5】本発明に係わる種子結晶の第2実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図6】本発明に係わる種子結晶の第3実施形態の概念図。
【図7】本発明に係わる種子結晶の第3実施形態を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図8】実施例における第1実施形態のシミュレーション解析図。
【図9】実施例における第2実施形態のシミュレーション解析図。
【図10】従来の種子及び吊り治具を示す概念図。
【図11】従来の種子結晶を吊り治具に取付けた状態を示す概念図。
【図12】従来例のシミュレーション解析図。
【符号の説明】
1 種子結晶
2 ピン孔
2a 係止部
2b 直線部
Claims (4)
- チョクラルスキー法に用いられる種子結晶であって、この種子結晶は断面形状が円形をなし、かつ、直径方向に貫通し種子結晶を吊り治具に吊るすための保持ピンが挿入されるピン孔を有し、このピン孔は長辺端部に設けられ保持ピンの係止部が弧状に形成された長孔であることを特徴とする種子結晶。
- 上記長孔は、係止部の弧状が円弧状に形成された長円であることを特徴とする請求項1に記載の種子結晶。
- 上記長孔は、楕円であることを特徴とする請求項1に記載の種子結晶。
- 上記長孔は、閉曲線により形成された長孔であることを特徴とする請求項1に記載の種子結晶。
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---|---|---|---|---|
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