JPH10324594A - シリコン種結晶およびその製造方法、並びにこれらの種結晶を用いてシリコン単結晶を製造する方法 - Google Patents

シリコン種結晶およびその製造方法、並びにこれらの種結晶を用いてシリコン単結晶を製造する方法

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JPH10324594A JP14732097A JP14732097A JPH10324594A JP H10324594 A JPH10324594 A JP H10324594A JP 14732097 A JP14732097 A JP 14732097A JP 14732097 A JP14732097 A JP 14732097A JP H10324594 A JPH10324594 A JP H10324594A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の
製造方法であって、いわゆる種絞り(ネッキング)を行
うことなく、シリコン単結晶を製造する方法において、
その単結晶化の成功率を向上させることができる、シリ
コン種結晶およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 チョクラルスキー法でシリコン単結晶棒
を製造する際に用いるシリコン種結晶において、シリコ
ン融液に接触させる先端部の形状が、尖った形状または
尖った先端を切り取った形状であり、その最大頂角が3
度以上28度以下であるシリコン種結晶。この場合、先
端部をエッチングしたものとするか、チョクラルスキー
法によって形成した丸め部を利用しても良い。そしてこ
のような種結晶を用いて、ネッキングを行うことなく、
所望径のシリコン単結晶棒を育成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チョクラルスキー
法(Czochralski Method=CZ法)によるシリコン単結
晶の製造方法であって、いわゆる種絞り(ネッキング)
を行うことなく、シリコン単結晶を製造する方法におい
て、この方法で使用されるシリコン種結晶およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、チョクラルスキー法によるシリコ
ン単結晶の製造においては、単結晶シリコンを種結晶と
して用い、これをシリコン融液に接触させた後、回転さ
せながらゆっくりと引き上げることで単結晶棒を成長さ
せる。この際、種結晶をシリコン融液に接触させる時
に、熱衝撃により種結晶に高密度で発生する転位を消滅
させるために種絞り(ネッキング)を行い、次いで、所
望の口径になるまで結晶を太らせて、シリコン単結晶を
引き上げている。このような、種絞りはDashNec
king法として広く知られており、チョクラルスキー
法でシリコン単結晶棒を引き上げる場合の常識とされて
いる。
【0003】すなわち、従来用いられてきた種結晶の形
状は、例えば図4(A)、(B)に示すように、直径あ
るいは一辺約8〜20mmの円柱状や角柱状のものに種
ホルダーにセットするための切り欠き部を入れたものと
され、最初にシリコン融液に接触することになる下方の
先端形状は、平坦面となっている。そして、高重量の単
結晶棒の重量に耐え安全に引き上げるためには、種結晶
の太さは上記以下に細くすることは難しい。
【0004】このような形状の種結晶では、融液と接触
する先端の熱容量が大きいために、種結晶が融液に接触
した瞬間に結晶内に急激な温度差を生じ、スリップ転位
を高密度に発生させる。したがって、この転位を消去し
て単結晶を育成するために、前記ネッキングが必要にな
るのである。
【0005】このDash Necking法は、種結
晶をシリコン融液に接触させた後に、直径を3mm程度
に一旦細くし絞り部を形成し、種結晶に導入されたスリ
ップ転位から伝播する転位を消滅させ、無転位の単結晶
を得るものである。
【0006】しかし、このような方法では、ネッキング
条件を種々選択しても、無転位化するためには最低直径
5〜6mmまでは絞り込む必要があり、近年のシリコン
単結晶径の増大にともない高重量化した単結晶棒を吊り
下げ支持するには強度が充分でなく、結晶棒引き上げ中
に、この細い絞り部が破断して単結晶棒が落下する等の
重大な事故を生じる恐れがあった。
【0007】そこで、近年の大直径、高重量単結晶棒の
引き上げにおいては、結晶保持機構を用いる方法の開発
が進められている(例えば、特公平5−65477号参
照)。この方法は、前述のように無転位化のためにネッ
キングは必要不可欠であることから、種絞り部の強度を
強化することができないので、かわりに成長結晶棒を直
接機械的に保持するものである。
【0008】しかし、このような方法は、高温で回転し
ながらゆっくりと成長する単結晶棒を直接保持するもの
であるために、装置が複雑かつ高価なものとなるし、耐
熱性の問題も生じる。その上、実際に成長結晶に振動等
を与えずにつかむのが非常に難しく、成長結晶を多結晶
化させてしまったり、さらには高温のシリコン融液直上
に複雑で回転、摺動等の機構を有する装置を配置するこ
とになるので、結晶を重金属不純物で汚染するといった
種々の問題がある。
【0009】このような問題を解決するために、本出願
人は先に特開平5−139880号、特願平8−871
87号のような発明を提案した。この発明は、種結晶の
先端部の形状を楔状あるいは中空部を有する形状とし、
種結晶がシリコン融液に接触する時に入るスリップ転位
をできるたけ低減することによって、絞り部の直径を比
較的太くしても無転位化を可能とし、もって絞り部の強
度を向上させるものである。
【0010】この方法では絞り部の太さを太くすること
ができるので、ある程度絞り部の強度の向上ができるけ
れども、ネッキングを行い、スリップ転位のある絞り部
を形成することに変わりがなく、近年ますます大直径、
長尺化し、例えば150Kg以上にもおよぶ単結晶棒の
引き上げには、強度が不十分となる場合があり、根本的
な解決にまでは至っていない。
【0011】そこで、このような問題を解決するものと
して、本出願人は強度上一番の問題となるネッキングに
よる絞り部を形成することなく、結晶を単結晶化させる
ことができ、大直径かつ長尺な高重量のシリコン単結晶
を、結晶保持機構のような複雑な装置を使用することな
く、極めて簡単に引上げることができる、シリコン単結
晶の製造方法およびこれに用いられるシリコン種結晶を
開発することに成功し、先に提案した(特願平9−17
687号)。
【0012】この方法は、種結晶としてシリコン融液に
接触させる先端部の形状が、尖った形状または尖った先
端を切り取った形状であるものとし、まず該種結晶の先
端をシリコン融液にしずかに接触させた後、種結晶を低
速度で下降させることによって種結晶の先端部が所望の
太さとなるまで溶融し、その後、種結晶をゆっくりと上
昇させ、ネッキングを行うことなく、所望径のシリコン
単結晶棒を育成させる、というようなシリコン単結晶の
製造方法である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記方法では、ネッキ
ングを行わないので、絞り部を形成することに伴う上記
種々の問題を根本的に解決することができ、きわめて優
れたものであるが、その後のランニングテストの結果、
種結晶の形状、製造方法によっては、種結晶の先端部の
接触、溶融時に種結晶に転位が導入され易く、その後の
単結晶の育成が困難となり、その成功率が低くなること
があることがわかった。
【0014】そこで、本発明はこのような問題点に鑑み
てなされたもので、本発明は、チョクラルスキー法によ
るシリコン単結晶の製造方法であって、いわゆる種絞り
(ネッキング)を行うことなく、シリコン単結晶を製造
する方法において、その単結晶化の成功率を向上させる
ことができる、シリコン種結晶およびその製造方法を提
供することを主目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の請求項1に記載した発明は、チョクラルス
キー法でシリコン単結晶棒を製造する際に用いるシリコ
ン種結晶において、シリコン融液に接触させる先端部の
形状が、尖った形状または尖った先端を切り取った形状
であり、その最大頂角が28度以下であることを特徴と
するシリコン種結晶である。
【0016】このように、種結晶の先端部の形状を、尖
った形状または尖った先端を切り取った形状とするとと
もに、その最大頂角を28度以下とすることによって、
種結晶の先端を最初にシリコン融液に接触させた時、融
液への接触面積が十分に小さく、先端部の熱容量も十分
に小さいために、種結晶に熱衝撃あるいは急激な温度勾
配が形成されないので、スリップ転位が導入されない。
また、その後種結晶を低速度で下降させて種結晶の先端
部が所望の太さとなるまで溶融する時においても、融液
中種結晶と融液の接触面積は徐々に増加していくため、
種結晶内に急激な温度勾配を形成することなく所望太さ
まで種結晶を溶融することができるので、溶融時にもス
リップ転位が種結晶内に導入されない。したがって、ス
リップ転位を発生させることなく、確実に種結晶の融液
への接触、溶融が可能となり、その後ネッキングを行う
ことなく、単結晶棒を育成することができる。
【0017】そしてこの場合、請求項2に記載したよう
に、種結晶の最大頂角を3度以上28度以下とするのが
好ましい。
【0018】このように、種結晶の最大頂角は、3度以
上とすれば、スリップ転位導入防止効果は充分である
し、溶融時間の短縮、種結晶製造の容易性、先端部の強
度等の点から、上記最大頂角の角度範囲とするのが望ま
しい。
【0019】また、本発明の請求項3に記載した発明で
は、シリコン種結晶の少なくともシリコン融液に接触さ
せる先端部をエッチングしたものとした。
【0020】このように、種結晶のシリコン融液に接触
させる先端部をエッチングしたものとすれば、例えば種
結晶を機械的に加工して製造する時に導入された表面の
歪みを除去することができるので、種結晶先端部を接触
あるいは溶融する時に、これが原因でスリップ転位が導
入されることがなく、より確実に無転位で種結晶を接
触、溶融することができる。
【0021】この場合特に、請求項4に記載したよう
に、エッチング除去量を300ミクロン以上とするのが
好ましい。
【0022】300ミクロン以上エッチングすれば、表
面歪みを確実に除去することができ、これが原因で種結
晶にスリップ転位が導入されることはない。
【0023】また、本発明の請求項5に記載した発明で
は、 チョクラルスキー法によって形成した丸め部を種
結晶の尖った先端部として用いたシリコン種結晶とし
た。
【0024】このように、種結晶の先端部としてチョク
ラルスキー法によって形成した丸め部を用いれば、機械
的な加工等は不要であるし、またそのような加工から生
じる表面歪み等が存在することもなく、上記エッチング
をする必要もなくなる。
【0025】次に、本発明の請求項6に記載した発明
は、シリコン融液に接触させる先端部の形状が、尖った
形状または尖った先端を切り取った形状である、チョク
ラルスキー法でシリコン単結晶棒を製造する際に用いる
シリコン種結晶の製造方法において、種結晶の素材とな
るシリコン単結晶インゴットを前記所望種結晶形状に機
械的に加工した後、少なくともシリコン融液に接触させ
る先端部をエッチングすることを特徴とするシリコン種
結晶の製造方法である。
【0026】このように、種結晶の製造をシリコン単結
晶インゴットを所望形状に機械的に加工した後、エッチ
ングするようにすれば、確実に所望先端部形状をもった
種結晶を得ることができると共に、その表面に歪みのな
いものを製造することができる。
【0027】また、本発明の請求項7に記載した発明
は、シリコン融液に接触させる先端部の形状が、尖った
形状または尖った先端を切り取った形状である、チョク
ラルスキー法でシリコン単結晶棒を製造する際に用いる
シリコン種結晶の製造方法において、種結晶の素材とな
るシリコン単結晶インゴットをチョクラルスキー法によ
って形成した丸め部を有するものを選択し、該丸め部を
種結晶の尖った先端部として用いることを特徴とするシ
リコン種結晶の製造方法である。
【0028】種結晶の製造を、シリコン単結晶インゴッ
トをチョクラルスキー法によって形成した丸め部を有す
るものとし、この丸め部を種結晶の尖った先端部として
利用するようにすれば、機械加工によって先端部を形成
しなくてもよいので、簡単であると共に、素材の節約に
なるし、出来た物の表面に歪みがあることもない。
【0029】そして、本発明の請求項8に記載した発明
は、種結晶をシリコン融液に接触させた後、これを回転
させながらゆっくりと引き上げることによって、シリコ
ン単結晶棒を成長させるチョクラルスキー法によるシリ
コン単結晶の製造方法において、該種結晶として請求項
1ないし請求項5のいずれか1項に記載の種結晶を使用
し、まず該種結晶の先端をシリコン融液にしずかに接触
させた後、該種結晶を低速度で下降させることによって
種結晶の先端部が所望の太さとなるまで溶融し、その
後、該種結晶をゆっくりと上昇させ、ネッキングを行う
ことなく、所望径のシリコン単結晶棒を育成させる、こ
とを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0030】また、本発明の請求項9に記載した発明
は、種結晶をシリコン融液に接触させた後、これを回転
させながらゆっくりと引き上げることによって、シリコ
ン単結晶棒を成長させるチョクラルスキー法によるシリ
コン単結晶の製造方法において、該種結晶として請求項
6または請求項7に記載の方法で製造した種結晶を使用
し、まず該種結晶の先端をシリコン融液にしずかに接触
させた後、該種結晶を低速度で下降させることによって
種結晶の先端部が所望の太さとなるまで溶融し、その
後、該種結晶をゆっくりと上昇させ、ネッキングを行う
ことなく、所望径のシリコン単結晶棒を育成させる、こ
とを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。
【0031】このように、本発明の種結晶および種結晶
の製造方法によれば、確実に種結晶接触時、溶融時にス
リップ転位が導入されない尖った先端部形状の種結晶を
得ることが出来るので、これを用いてネッキングを行う
ことなくシリコン単結晶を育成させれば、その成功率が
格段に向上する。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。チ
ョクラルスキー法においてネッキングを行うことなく単
結晶を育成させるためには、種結晶をシリコン融液に接
触させ、その後所望の太さまでゆっくりと溶融する時
に、種結晶にスリップ転位が発生しないことが不可欠で
ある。したがって、ネッキングを行うことなく単結晶を
育成させる方法の成功率は、種結晶の融液への接触、溶
融時に如何にスリップ転位を発生させないかにかかって
いる。
【0033】そこで、本発明者らは、このようなシリコ
ン融液に接触、溶融するときにスリップ転位を確実に発
生することがない、種結晶の形状および製造方法につ
き、種々実験的研究の結果本発明を見出したものであ
る。
【0034】ネッキングを行うことなく単結晶棒を育成
する方法に用いられる種結晶の基本的な形状としては、
種結晶の先端部の形状を、尖った形状または尖った先端
を切り取った形状とする必要がある。このような形状で
あれば、最初に種結晶の先端がシリコン融液に接触した
時、融液への接触面積が小さく、先端部の熱容量が小さ
いために、種結晶に熱衝撃あるいは急激な温度勾配が形
成されないので、スリップ転位が導入されないからであ
る。
【0035】そして、その後種結晶をゆっくりと下降さ
せて種結晶の先端部が、所望の太さとなるまで溶融すれ
ば、融液中種結晶と融液の接触面積は徐々に増加してい
くため、種結晶内に急激な温度勾配を形成することなく
種結晶を溶融することができ、溶融時にもスリップ転位
が種結晶内に導入されない。
【0036】このような種結晶のより具体的な形状とし
て、先の提案では、次の事項までが判明していた。 (1) 尖った形状または尖った先端を切り取った形状の
種結晶先端部の形状としては、円錐または角錐形状とす
るのが好ましい事。 (2) この場合、図3に示す種結晶の円錐部7、角錐部
8の長さtは任意であるが、種結晶の太さの1〜10倍
程度、より好ましくは2〜8倍とすれば良い事。 (3) 先端部の角錐形状も、三角錐、四角錐、あるいは
それ以上の多角錐としてもよい事。また、種結晶の直胴
部の断面形状と、先端部の断面形状を一致させる必要は
なく、角柱形状の種結晶の先端部を円錐上に加工したも
のとしても良く、任意に形状を組み合わすことができる
事。 (4) 図3(A)、(B)のような、種結晶の先端形状
が尖った形状だけでなく、図3(C)のように、尖った
先端を切り取った形状でもよい事。そして、先端の切り
取り方も任意であり、水平に切り取る場合に限られず、
例えば図3(D)のように、斜めに切り取ってもよい。
この場合、種結晶先端の最初にシリコン融液に接触させ
る面の面積は、9π(mm2 )以下とするのが良く、さ
らに好ましくは2.25π(mm2 )以下とするのが良
い事。
【0037】上記種結晶の具体的な形状により、ネッキ
ングを行わない単結晶棒を製造する方法を実施すること
が出来る。したがって、基本的には本発明においても上
記条件は、そのまま適用される条件である。しかし、こ
のような条件だけでは、その成功率にばらつきがあり、
より確実に種結晶を無転位でシリコン融液に接触、溶融
するためには、なお一層の種結晶形状の工夫、特定が必
要である。
【0038】そこで、本発明者らは、種結晶の先端部の
先鋭度とネッキングを行わずに単結晶棒を成長させる方
法の成功率について詳しく調査した。これは、種結晶の
先端部の最大頂角と単結晶棒の無転位化率を調べたもの
である。
【0039】すると、種結晶先端部の最大頂角が、28
度を越えると成功率が急激に下がることがわかった。そ
の理由の詳細は不明であるが、最大頂角が28度を越え
ると、先端部の熱容量が充分には小さくないために、シ
リコン融液に接触した時に熱衝撃によってスリップ転位
が発生してしまうのか、その後の溶融時に、接触面積の
増加率が大きいために急激な温度勾配が形成され、例え
溶融速度を落としてもスリップ転位が発生することがあ
るものと思われる。したがって、本発明にかかる種結晶
においては、先端部の最大頂角を28度以下とするの
が、成功率を上昇させるために望ましい。
【0040】この場合、本発明で言う最大頂角とは、図
1に示すように、シリコン融液に溶融させる先端部の頂
角であって、その断面形状から取り得る最大の頂角αを
言う。したがって、図1(A)のような先端部が円錐の
ような形状の場合は、頂角=最大頂角=一定であるが、
図1(B)のような先端部が角錐のような形状の場合
は、対角断面側の頂角を指す。
【0041】また、本発明にあっても、先端部の形状
は、図1(A)、(B)のような、種結晶の先端形状が
尖った形状だけでなく、図1(C)のように、尖った先
端を切り取った形状でもよい。そして、先端の切り取り
方も任意であり、水平に切り取る場合に限られず、例え
ば図1(D)のように、斜めに切り取ってもよい。この
場合、本発明における前記最大頂角の意味は、このよう
な切り取りの有無にかかわらず、切り取る前の最大頂角
αで示される。
【0042】一方、この最大頂角αは、種結晶にスリッ
プ転位を導入しないとの点からは、小さければ小さいほ
ど良いことになるが、実用上の観点からは3度以上とす
るのが好ましい。
【0043】これは、種結晶の最大頂角を3度まで先鋭
化すれば、スリップ転位導入防止効果は充分であり、余
りに先端を先鋭化するのは、脆くて固いシリコン単結晶
の加工上困難であるし、破損等の取扱上の問題が生じて
しまうからである。しかも、先端部を先鋭化すればする
ほど、溶融すべき先端部の長さtが長くなるため、先端
部の溶融時間が長くなり、単結晶棒の製造上も無駄が多
いものとなってしまうからである。
【0044】次に、このような形状を有する本発明の種
結晶の製造方法については、種結晶の素材となるシリコ
ン単結晶インゴットを機械的に加工して、所望形状すな
わち、シリコン融液に接触させる先端部の形状が、尖っ
た形状または尖った先端を切り取った形状であり、その
最大頂角が28度以下とすれば良い。
【0045】しかしこのように、種結晶の製造をシリコ
ン単結晶インゴットを所望形状に機械的に加工して作製
した場合には、その表面に加工歪みが生じてしまう。こ
のような加工歪みは完全に除去しなければ、例え種結晶
の先端部の形状が上記所望の形状となっていたとして
も、種結晶をシリコン融液に接触、溶融時に、この加工
歪みからスリップ転位が生じてしまい、無転位化率を低
下させてしまう。
【0046】この点、従来のネッキングを行うチョクラ
ルスキー法では、もともと絞り部にスリップ転位が発生
する方法であるために、この加工歪みによるスリップ転
位の発生は、それほど重要ではなかったが、本発明では
種結晶のスリップ転位の発生は完全に抑える必要がある
ため、この加工歪みの除去は重要である。
【0047】そして、表面加工歪みを除去するには、所
望形状に機械的に加工した後、少なくともシリコン融液
に接触させる先端部をエッチングすれば良い。エッチン
グによれば簡単かつ確実に表面の加工歪みを除去するこ
とが出来る。
【0048】この場合、表面歪みは、機械的加工によっ
てのみ発生するものではないが、エッチングによれば、
表面全体をエッチング除去するものであるので、上記加
工歪み以外の歪みが存在しても、合わせて除去すること
が出来る。
【0049】そして、エッチングは種結晶全体をエッチ
ング液に浸せば良いが、少なくともシリコン融液に接
触、溶融することになる先端部はエッチングする必要が
ある。エッチング液としては、シリコンをエッチングす
ることが出来る物であれば特に限定されないが、例えば
フッ酸+硝酸等の混酸を用いることが出来る。
【0050】この場合、エッチング除去量としては、3
00ミクロン以上とするのが好ましい。機械的加工によ
る加工歪みは、深いもので一般に表面約200〜300
ミクロン深さまで達しているからである。したがって、
300ミクロン以上エッチングすれば、表面歪みを確実
に除去することができ、これが原因で種結晶にスリップ
転位が導入されることはない。
【0051】こうして製造される種結晶は、所望先鋭度
をもった先端部形状のものであるとともに、その表面に
歪みのないものとなるので、種結晶先端部を接触あるい
は溶融する時に、スリップ転位が導入される可能性が一
層低くなり、より確実に無転位で種結晶を接触、溶融す
ることができる。
【0052】また、本発明にかかる種結晶の他の製造方
法としては、所望先端部形状を機械的加工によって形成
するのではなく、通常のチョクラルスキー法によって育
成させた丸め部を利用しても良い。これは、種結晶の素
材となるシリコン単結晶インゴットをチョクラルスキー
法によって形成した丸め部を有するものを選択し、該丸
め部を種結晶の尖った先端部として用いるというもので
ある。
【0053】例えば、図2に示すように通常のチョクラ
ルスキー法によって種結晶1を融液に接触させた後、ネ
ッキングを行い絞り部3を形成して無転位化し、その後
直径を大きくして、所望の直径(種結晶径)でしばらく
成長し、その後丸め部6を形成して単結晶の成長を終了
する。出来た小さな結晶の丸め部を、種結晶の先端部と
して利用し、丸め部の反対側には、種結晶を種ホルダー
にセットするための切り欠き部の加工を施せば、本発明
の所望先端部形状を持った種結晶を製造することが出来
る。
【0054】このように、チョクラルスキー法で作製し
た丸め部6を、種結晶の尖った先端部として利用するよ
うにすれば、機械加工によって先端部を形成しなくても
よいので、簡単であるとともに、素材の節約になるし、
出来た種結晶には表面に歪みが存在することもないの
で、上記のようにエッチングをする必要もないという利
点がある。
【0055】この場合、チョクラルスキー法による丸め
部の形成は、上記のように何も、種結晶を作るだけのた
めに行う必要はなく、図2(B)の点線で示すように、
通常製造が行われている半導体ウエーハ用のシリコン単
結晶棒の丸め部を用いて作製しても良いことは言うまで
もない。通常の単結晶シリコン棒の丸め部は、所望直径
に満たないため廃棄されており、その意味でも材料の節
約にもなり、極めて低コストで製造が可能である。
【0056】そして、上記特性を有する本発明の種結晶
または本発明方法で製造した種結晶を使用し、まず種結
晶の先端をシリコン融液にしずかに接触させた後、該種
結晶を低速度で下降させることによって種結晶の先端部
が所望の太さとなるまで溶融し、その後、該種結晶をゆ
っくりと上昇させ、ネッキングを行うことなく、所望径
のシリコン単結晶棒を育成させるようにすれば、種結晶
接触時、溶融時に確実にスリップ転位が導入されないの
で、ネッキングを行うことなくシリコン単結晶を育成で
きる成功率が格段に向上する。
【0057】
【実施例】次に、本発明の実施例および比較例を示す
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例、比較例)種結晶の先端部の最大頂角を変化さ
せ、ネッキングを行うことなく単結晶を育成させた時の
無転位化の成功率を調査した。種結晶としては、方位<
100>で10mm角のものを用い、その先端部は種々
の頂角を有する円錐状に機械的に加工した後、種結晶全
体をフッ酸+硝酸のエッチング液中でエッチングしたも
のを用いた。
【0058】これらの種結晶を用い、まず種結晶をシリ
コン融液直上で20分間保持し、充分に予熱を加えた。
その後、2mm/minの速度で下降させることによっ
て、種結晶の先端をシリコン融液にしずかに接触させた
後、融液中に引き続き同じ速度で下降させ、種結晶の先
端部の直径が約6mmとなるまで溶融した。ここから、
種結晶をゆっくりと上昇させ始め、ネッキングを行うこ
となく、直ちに直径約100mmまで結晶を太らせた
後、直胴部を約10cm成長させた。そして最後に丸め
部を形成して、シリコン単結晶棒の育成を終了させた。
【0059】育成させた単結晶棒の数に対する、出来た
単結晶棒が無転位の単結晶であるか否かの本数比率で、
その成功率を算出した。結果を図5に示す。
【0060】上記結果から明らかなように、種結晶の最
大頂角が28度以下では成功率が高いが、28度を越え
ると急激に成功率が下がることがわかる。
【0061】尚、本発明は、上記実施形態に限定される
ものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の
特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一
な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかな
るものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0062】例えば、本発明は、通常のチョクラルスキ
ー法のみならず、シリコン単結晶の引上げ時に磁場を印
加するMCZ法(Magnetic field applied Czochralski
crystal growth method)にも同様に適用できることは言
うまでもなく、本明細書中で使用したチョクラルスキー
法という用語には、通常のチョクラルスキー法だけでな
く、MCZ法も含まれる。
【0063】
【発明の効果】本発明の種結晶および種結晶の製造方法
によれば、チョクラルスキー法によって、ネッキングを
行うことなく、シリコン単結晶棒を育成させる方法の成
功率を格段に向上させることが出来る種結晶を得ること
が出来る。その結果、大直径かつ長尺な高重量のシリコ
ン単結晶を、極めて簡単に引上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる種結晶の斜視図である。 (A) 円柱形状の先端部を円錐形状としたもの、
(B) 四角柱形状の先端部を四角錐形状としたもの、
(C) 先端を水平に切り取ったもの、(D) 先端を
斜めに切り取ったもの。
【図2】丸め部を利用して種結晶を作製する場合の説明
図である。 (A) 通常のチョクラルスキー法で丸め部を有するイ
ンゴットを作製する場合、(B) 半導体ウエーハ用の
単結晶インゴットの丸め部を利用する場合。
【図3】先に提案した発明にかかる種結晶の斜視図であ
る。 (A) 円柱形状の先端部を円錐形状としたもの、
(B) 四角柱形状の先端部を四角錐形状としたもの、
(C) 先端を水平に切り取ったもの、(D) 先端を
斜めに切り取ったもの。
【図4】従来の種結晶の斜視図である。 (A) 円柱形状のもの、(B) 四角柱形状のもの。
【図5】実施例、比較例の結果を示した結果図である。
【符号の説明】
1…種結晶、 2…スリップ
転位、3…絞り部、5…直胴部、
6…丸め部、7…円錐部、
8…角錐部。t…先端部長さ、
α…最大頂角。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チョクラルスキー法でシリコン単結晶棒
    を製造する際に用いるシリコン種結晶において、シリコ
    ン融液に接触させる先端部の形状が、尖った形状または
    尖った先端を切り取った形状であり、その最大頂角が2
    8度以下であることを特徴とするシリコン種結晶。
  2. 【請求項2】 前記最大頂角が3度以上28度以下であ
    ることを特徴とする請求項1に記載のシリコン種結晶。
  3. 【請求項3】 少なくとも前記シリコン融液に接触させ
    る先端部をエッチングしたものであることを特徴とする
    請求項1または請求項2に記載のシリコン種結晶。
  4. 【請求項4】 エッチング除去量を300ミクロン以上
    とすることを特徴とする請求項3に記載のシリコン種結
    晶。
  5. 【請求項5】 チョクラルスキー法によって形成した丸
    め部を種結晶の尖った先端部として用いたものであるこ
    とを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコ
    ン種結晶。
  6. 【請求項6】 シリコン融液に接触させる先端部の形状
    が、尖った形状または尖った先端を切り取った形状であ
    る、チョクラルスキー法でシリコン単結晶棒を製造する
    際に用いるシリコン種結晶の製造方法において、 種結晶の素材となるシリコン単結晶インゴットを前記所
    望種結晶形状に機械的に加工した後、少なくともシリコ
    ン融液に接触させる先端部をエッチングすることを特徴
    とするシリコン種結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】 シリコン融液に接触させる先端部の形状
    が、尖った形状または尖った先端を切り取った形状であ
    る、チョクラルスキー法でシリコン単結晶棒を製造する
    際に用いるシリコン種結晶の製造方法において、 種結晶の素材となるシリコン単結晶インゴットをチョク
    ラルスキー法によって形成した丸め部を有するものを選
    択し、該丸め部を種結晶の尖った先端部として用いるこ
    とを特徴とするシリコン種結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 種結晶をシリコン融液に接触させた後、
    これを回転させながらゆっくりと引き上げることによっ
    て、シリコン単結晶棒を成長させるチョクラルスキー法
    によるシリコン単結晶の製造方法において、 該種結晶として請求項1ないし請求項5のいずれか1項
    に記載の種結晶を使用し、 まず該種結晶の先端をシリコン融液にしずかに接触させ
    た後、該種結晶を低速度で下降させることによって種結
    晶の先端部が所望の太さとなるまで溶融し、 その後、該種結晶をゆっくりと上昇させ、ネッキングを
    行うことなく、所望径のシリコン単結晶棒を育成させ
    る、ことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  9. 【請求項9】 種結晶をシリコン融液に接触させた後、
    これを回転させながらゆっくりと引き上げることによっ
    て、シリコン単結晶棒を成長させるチョクラルスキー法
    によるシリコン単結晶の製造方法において、 該種結晶として請求項6または請求項7に記載の方法で
    製造した種結晶を使用し、 まず該種結晶の先端をシリコン融液にしずかに接触させ
    た後、該種結晶を低速度で下降させることによって種結
    晶の先端部が所望の太さとなるまで溶融し、 その後、該種結晶をゆっくりと上昇させ、ネッキングを
    行うことなく、所望径のシリコン単結晶棒を育成させ
    る、ことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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