JP2004010001A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ワンダリング性能を向上できる。
【解決手段】カーカス6のプライ折返し部11は、サイドウォール部3を経て半径方向最外側に位置するベルトプライ7Bの外面BSに沿って延在することによりこの外面BSに重なる重複部14を有する。
【選択図】 図2
【解決手段】カーカス6のプライ折返し部11は、サイドウォール部3を経て半径方向最外側に位置するベルトプライ7Bの外面BSに沿って延在することによりこの外面BSに重なる重複部14を有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型トラック用タイヤとして好適であり、ワンダリング性能を向上した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤ、特にライトトラックおよびバン等に用いる小型トラック用タイヤでは、乗用車用タイヤに比べてトレッド部の剛性が高いため、轍を走行する際に轍斜面から受ける横力によってハンドルが取られるなどワンダリング性能に劣る傾向が強い。特に近年、耐摩耗性能および操縦安定性能等の観点から、この種のタイヤにおいても、トレッド接地巾の巾広化が図られており、そのためワンダリング性能の不足がより顕著となっている。
【0003】
なお従来、ワンダリング性能を向上する手段として、図4に示すように、トレッド面aとバットレス面bとの交差部分を、例えば曲率半径srが30mm以上の大きな円弧状曲面cで形成したり、又タイヤ赤道側のトレッド厚さtを相対的に高めてトレッド曲率半径trを減じるなどトレッドプロファイルを丸くすることが採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前者のものは、トレッド接地巾の巾広化に不利となり、耐摩耗性能および操縦安定性能等の向上の妨げとなる。又後者のものは、トレッドショルダー側の接地長さが過小となるため、トレッドショルダー部に路面との引きずりが生じて肩落ち摩耗やヒール&トゥ摩耗等の偏摩耗を発生させるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、カーカスのプライ折返し部を、サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在せしめ、この外面との重複部を形成することを基本として、トレッド接地巾の巾広化を阻害することなく、かつ偏摩耗を発生させることなくワンダリング性能を向上でき、とりわけ小型トラック用として好適に採用しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けたカーカスプライを有するカーカスと、トレッド部の内方かつ前記カーカスの外側に半径方向に重なって配される複数枚のベルトプライを有するベルト層とを具えるとともに、
前記プライ折返し部は、前記サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在することにより、この外面に重なる重複部を有することを特徴としている。
【0007】
又請求項2の発明では、前記トレッド部は、トレッド面と前記最外側のベルトプライの外面との間の厚さTである、タイヤ赤道の位置におけるトレッド厚さTaと、前記最外側のベルトプライのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向内方に5mmの距離を隔てる位置におけるトレッド厚さThとの差Ta−Thを0〜2.0mmとしたことを特徴としている。
【0008】
又請求項3の発明では、前記トレッド部のトレッド面と、サイドウォール部上方のバットレス面とをタイヤ子午線断面において滑らかな曲面によって連続させるとともに、その曲面の曲率半径Rsを10〜25mmとしたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤが、タイヤ偏平率を75%〜60%とした小型トラック用タイヤである場合の子午断面を示している。
図1において、空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の半径方向外側に重なって配されるベルト層7とを具える。
【0010】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70゜〜90゜の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のカーカスプライ6A、6Bから形成される。カーカスコードとしては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維コードを用いうるが、本例の如き小型トラック用タイヤにおいては、よりモジュラスの高いポリエチレンテレフタレート繊維(PET)コード、およびポリエチレン2,6ナフタレート繊維(PEN)コードが好適に採用しうる。
【0011】
又前記カーカスプライ6A、6Bは、前記ビードコア5、5間を跨るプライ本体部10の両側に、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部11を一連に設けている。このプライ本体部10とプライ折返し部11との間には、ビードコア5から半径方向外側に先細状にのびる硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4からサイドウォール部3にかけて補強している。
【0012】
次に、前記ベルト層7は、複数枚のベルトプライ、小型トラック用タイヤにおいては通常2〜3枚、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、タイヤ周方向に対して例えば10゜〜35゜の角度で傾斜配列したスチールコード等の高強力のベルトコードを具える。このベルトコードは、プライ間相互で交差することによりベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強している。
【0013】
なお半径方向最外側に位置するベルトプライ7Bのプライ巾WBは、その内側に隣接するベルトプライ7Aに比べてやや巾狭に形成され、これによってプライ端での応力集中を緩和している。このプライ巾WBは、少なくとも2枚のベルトプライが重置することにより補強効果を有効に発揮するベルト有効巾でもあり、このプライ巾WBを、トレッド接地巾WTの85〜98%に設定するのが好ましい。
【0014】
なお前記「トレッド接地巾WT」とは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧状態のタイヤに正規荷重を負荷した時に接地するトレッド接地面の巾を意味する。
【0015】
又前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim” 、或いはETRTOであれば ”Measuring Rim” を意味する。また前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”INFLATION PRESSURE” であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”LOAD CAPACITY”であり、タイヤが乗用車用の場合にはその88%の荷重である。
【0016】
そして本実施形態では、前記カーカスプライ6A、6Bのうちの少なくとも一方、本例では、外のカーカスプライ6Bのプライ折返し部11Bは、図2に拡大して示すように、前記サイドウォール部3を経て前記最外側のベルトプライ7Bの外面BSに沿って延在し、これによって前記外面BSに重なる重複部14を形成している。
【0017】
なお前記プライ折返し部11Bは、バットレス部分3Uにおいてプライ本体部10と離間した後、プライ本体部10との離間距離を漸増しながら重複部14まで滑らかにのびる。そして、その離間部分Qには軟質のクッションゴム15が介在し、ベルトプライ7A、7Bの各プライ端を保護しプライ端剥離を防止している。
【0018】
ここで、前記重複部14を有するプライ折返し部11Bは、以下の如く機能し、ワンダリング性能を向上させる。
【0019】
即ち、図3(A)に示すように、タイヤに使用内圧が充填されとき、トレッド部2はベルト層7により拘束されるため膨張は少なく、サイドウォール部3がタイヤ軸方向外方F1に大きく膨張する。この膨張の過程で、前記プライ折返し部11Bが矢印F2方向に引っ張られるため、前記ベルト層7の外端部7Eを半径方向内方F3に押さえ込むことができる。その結果、トレッドショルダー部TSにおける轍面との引っ掛かりが減じられ、ワンダリング性能が向上する。
【0020】
又轍内を走行する際には、図3(B)に示すように、轍面から横力Kを受けた時点で、サイドウォール部3上方のバットレス部分3Uに変形が生じ、その変形分、プライ折返し部11Bが矢印F2方向に引っ張られる。その結果、前記外端部7Eがさらに押さえ込まれ、轍面との引っ掛かりがより低減される。
【0021】
なお前記外端部7Eへの押さえ込み効果を有効に発揮せしめ、ワンダリング性能を向上させるためには、前記重複部14のタイヤ軸方向の重なり巾W1を、前記プライ巾WBの5%〜25%とするのが好ましい。前記重なり巾W1が5%未満では、外端部7Eの動きが局部的となり過ぎ、ワンダリング性能への向上効果が少なく、又ベルト端剥離が発生し易い傾向となる。逆に25%を越えると、ベルト剛性が強くなって外端部7Eの動きが悪くなり、ワンダリング性能の向上効果を減少させるとともに、重量および材料コストの不必要な増加を招く。このような観点から、前記重なり巾W1は、前記プライ巾WBの7.5%〜25%がさらに好ましい。
【0022】
又前記外端部7Eへの押さえ込み効果のためには、カーカス6において、カーカスコードの伸度が低いことも望ましく、そのために前述のPENコードは、特に好適に採用しうる。又前記カーカスのコード角度を70〜80°とし、サイドウォール部3の剛性を高めることも、轍面からの横力Kを外端部7Eに強く伝えるために好ましい。
【0023】
又ベルト端とビードエーペックス8との間のフレキシブル領域Y(図1に示す)が狭いことも、前記外端部7Eへの押さえ込み効果のために望ましく、従って、前記ビードエーペックス8のビードベースラインBLからの高さh1を、タイヤ断面高さHの25〜45%と相対的に高く設定するのが好ましい。なお前記「ビードベースラインBL」とは、タイヤが基づく規格で定められるビード径位置を通るタイヤ軸方向線として定義している。
【0024】
次に本例では、図2に示すように、トレッド面2Sと前記最外側のベルトプライ7Bの外面BSとの間のトレッド厚さTにおいて、タイヤ赤道の位置Paにおけるトレッド厚さTaと、前記最外側のベルトプライ7Bのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向内方に5mmの距離を隔てる位置Phにおけるトレッド厚さThとの差Ta−Thを0〜2.0mmの範囲、好ましくは0〜1.5mmの範囲に減じ、前記トレッド厚さTの均一化を図っている。
【0025】
これにより、トレッドプロファイルが平坦(フラット)化し接地圧が適正化されるため、トレッドショルダー部TSでの偏摩耗を抑制することができる。又接地/非接地の際のベルト層7の動きも減じられるため、ベルト端での剪断力が低減されるなど、ベルト端剥離の発生を抑えることも可能となる。
【0026】
又本例では、トレッド接地巾WTをより広く確保し、耐摩耗性能および操縦安定性能を向上させるため、タイヤ子午線断面において、前記トレッド面2Sとバットレス面3Sとを滑らかな円弧状の曲面13によって連続させるとともに、この曲面13の曲率半径Rsを10〜25mmの範囲、好ましくは10〜20mmの範囲、さらに好ましくは10〜15mmの範囲に減じている。これによって、限られたトレッド巾の中でトレッド接地巾WTをより広く確保できる。なお前記曲率半径Rsが10mm未満では、ベルト層外端部7Eへの押さえ込み効果が有効に作用した場合にも、轍面との引っ掛かりが依然強く、ワンダリング性能が不十分なものとなってしまう。
【0027】
なおプライ折返し部11によるベルト層外端部7Eへの押さえ込み効果は、使用内圧が例えば300〜600kPaと高圧な小型トラック用タイヤにおいて、最も有効に発揮することができる。乗用車用タイヤでは使用内圧が低く、サイドウォール部3のタイヤ軸方向外方への膨張が少なくなるため、前記効果が有効に発揮されない傾向となる。また重荷重用タイヤでは、カーカスコードとしてスチールコードが使用されるため、サイドウォール部3の膨張が少なく、同様に前記効果が有効に発揮されない傾向となる。しかし要求により、乗用車用タイヤおよび重荷重用タイヤにおいても、本願の構造を採用することができる。
【0028】
又本願では、少なくとも1枚のカーカスプライが、プライ折返し部11を有しかつこのプライ折返し部11が重複部14を形成していれば良い。従って、他のカーカスプライがプライ本体部10のみから形成されプライ折返し部を排除した巻き下ろしのプライであっても良く、又複数のカーカスプライが、プライ折返し部11を有しかつ各プライ折返し部11が重複部14を形成していても良い。
【0029】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0030】
【実施例】
図1に示す構造を有するタイヤサイズ205/60R17.5の小型トラック用タイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの空積時、および積載時のワンダリング性能をテストし、その結果を表1に示す。なお表1以外の仕様は、各タイヤとも実質的に同一である。カーカスおよびベルト層の共通の仕様は表2に示す。
【0031】
(1)ワンダリング性能;
試供タイヤを、内圧(600kPa)、リム(6.00)の下で、積載量3トンの小型トラックの全輪に装着し、ワンダリングテスト用の轍路面を、空積状態、および積載状態(3トン積み)において走行し、ワンダリング性能をドライバーの官能評価により、従来例を6.0とする10点法で評価した。数値が大きいほどワンダリング性能にすぐれている。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
叙上のごとく本発明の空気入りタイヤは、カーカスのプライ折返し部を、サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在せしめ、この外面との重複部を形成しているため、トレッド接地巾の巾広化を阻害することなく、かつ偏摩耗を発生させることなくワンダリング性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【図2】そのトレッド部を拡大して示す断面図である。
【図3】(A)、(B)は、本願の作用効果を説明する線図である。
【図4】従来技術を説明するトレッド部の断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3S バットレス面
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A、6B カーカスプライ
7 ベルト層
7A、7B ベルトプライ
10 プライ本体部
11 プライ折返し部
13 曲面
14 重複部
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型トラック用タイヤとして好適であり、ワンダリング性能を向上した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤ、特にライトトラックおよびバン等に用いる小型トラック用タイヤでは、乗用車用タイヤに比べてトレッド部の剛性が高いため、轍を走行する際に轍斜面から受ける横力によってハンドルが取られるなどワンダリング性能に劣る傾向が強い。特に近年、耐摩耗性能および操縦安定性能等の観点から、この種のタイヤにおいても、トレッド接地巾の巾広化が図られており、そのためワンダリング性能の不足がより顕著となっている。
【0003】
なお従来、ワンダリング性能を向上する手段として、図4に示すように、トレッド面aとバットレス面bとの交差部分を、例えば曲率半径srが30mm以上の大きな円弧状曲面cで形成したり、又タイヤ赤道側のトレッド厚さtを相対的に高めてトレッド曲率半径trを減じるなどトレッドプロファイルを丸くすることが採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前者のものは、トレッド接地巾の巾広化に不利となり、耐摩耗性能および操縦安定性能等の向上の妨げとなる。又後者のものは、トレッドショルダー側の接地長さが過小となるため、トレッドショルダー部に路面との引きずりが生じて肩落ち摩耗やヒール&トゥ摩耗等の偏摩耗を発生させるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、カーカスのプライ折返し部を、サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在せしめ、この外面との重複部を形成することを基本として、トレッド接地巾の巾広化を阻害することなく、かつ偏摩耗を発生させることなくワンダリング性能を向上でき、とりわけ小型トラック用として好適に採用しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けたカーカスプライを有するカーカスと、トレッド部の内方かつ前記カーカスの外側に半径方向に重なって配される複数枚のベルトプライを有するベルト層とを具えるとともに、
前記プライ折返し部は、前記サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在することにより、この外面に重なる重複部を有することを特徴としている。
【0007】
又請求項2の発明では、前記トレッド部は、トレッド面と前記最外側のベルトプライの外面との間の厚さTである、タイヤ赤道の位置におけるトレッド厚さTaと、前記最外側のベルトプライのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向内方に5mmの距離を隔てる位置におけるトレッド厚さThとの差Ta−Thを0〜2.0mmとしたことを特徴としている。
【0008】
又請求項3の発明では、前記トレッド部のトレッド面と、サイドウォール部上方のバットレス面とをタイヤ子午線断面において滑らかな曲面によって連続させるとともに、その曲面の曲率半径Rsを10〜25mmとしたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤが、タイヤ偏平率を75%〜60%とした小型トラック用タイヤである場合の子午断面を示している。
図1において、空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の半径方向外側に重なって配されるベルト層7とを具える。
【0010】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70゜〜90゜の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のカーカスプライ6A、6Bから形成される。カーカスコードとしては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維コードを用いうるが、本例の如き小型トラック用タイヤにおいては、よりモジュラスの高いポリエチレンテレフタレート繊維(PET)コード、およびポリエチレン2,6ナフタレート繊維(PEN)コードが好適に採用しうる。
【0011】
又前記カーカスプライ6A、6Bは、前記ビードコア5、5間を跨るプライ本体部10の両側に、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部11を一連に設けている。このプライ本体部10とプライ折返し部11との間には、ビードコア5から半径方向外側に先細状にのびる硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4からサイドウォール部3にかけて補強している。
【0012】
次に、前記ベルト層7は、複数枚のベルトプライ、小型トラック用タイヤにおいては通常2〜3枚、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、タイヤ周方向に対して例えば10゜〜35゜の角度で傾斜配列したスチールコード等の高強力のベルトコードを具える。このベルトコードは、プライ間相互で交差することによりベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強している。
【0013】
なお半径方向最外側に位置するベルトプライ7Bのプライ巾WBは、その内側に隣接するベルトプライ7Aに比べてやや巾狭に形成され、これによってプライ端での応力集中を緩和している。このプライ巾WBは、少なくとも2枚のベルトプライが重置することにより補強効果を有効に発揮するベルト有効巾でもあり、このプライ巾WBを、トレッド接地巾WTの85〜98%に設定するのが好ましい。
【0014】
なお前記「トレッド接地巾WT」とは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧状態のタイヤに正規荷重を負荷した時に接地するトレッド接地面の巾を意味する。
【0015】
又前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim” 、或いはETRTOであれば ”Measuring Rim” を意味する。また前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”INFLATION PRESSURE” であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”LOAD CAPACITY”であり、タイヤが乗用車用の場合にはその88%の荷重である。
【0016】
そして本実施形態では、前記カーカスプライ6A、6Bのうちの少なくとも一方、本例では、外のカーカスプライ6Bのプライ折返し部11Bは、図2に拡大して示すように、前記サイドウォール部3を経て前記最外側のベルトプライ7Bの外面BSに沿って延在し、これによって前記外面BSに重なる重複部14を形成している。
【0017】
なお前記プライ折返し部11Bは、バットレス部分3Uにおいてプライ本体部10と離間した後、プライ本体部10との離間距離を漸増しながら重複部14まで滑らかにのびる。そして、その離間部分Qには軟質のクッションゴム15が介在し、ベルトプライ7A、7Bの各プライ端を保護しプライ端剥離を防止している。
【0018】
ここで、前記重複部14を有するプライ折返し部11Bは、以下の如く機能し、ワンダリング性能を向上させる。
【0019】
即ち、図3(A)に示すように、タイヤに使用内圧が充填されとき、トレッド部2はベルト層7により拘束されるため膨張は少なく、サイドウォール部3がタイヤ軸方向外方F1に大きく膨張する。この膨張の過程で、前記プライ折返し部11Bが矢印F2方向に引っ張られるため、前記ベルト層7の外端部7Eを半径方向内方F3に押さえ込むことができる。その結果、トレッドショルダー部TSにおける轍面との引っ掛かりが減じられ、ワンダリング性能が向上する。
【0020】
又轍内を走行する際には、図3(B)に示すように、轍面から横力Kを受けた時点で、サイドウォール部3上方のバットレス部分3Uに変形が生じ、その変形分、プライ折返し部11Bが矢印F2方向に引っ張られる。その結果、前記外端部7Eがさらに押さえ込まれ、轍面との引っ掛かりがより低減される。
【0021】
なお前記外端部7Eへの押さえ込み効果を有効に発揮せしめ、ワンダリング性能を向上させるためには、前記重複部14のタイヤ軸方向の重なり巾W1を、前記プライ巾WBの5%〜25%とするのが好ましい。前記重なり巾W1が5%未満では、外端部7Eの動きが局部的となり過ぎ、ワンダリング性能への向上効果が少なく、又ベルト端剥離が発生し易い傾向となる。逆に25%を越えると、ベルト剛性が強くなって外端部7Eの動きが悪くなり、ワンダリング性能の向上効果を減少させるとともに、重量および材料コストの不必要な増加を招く。このような観点から、前記重なり巾W1は、前記プライ巾WBの7.5%〜25%がさらに好ましい。
【0022】
又前記外端部7Eへの押さえ込み効果のためには、カーカス6において、カーカスコードの伸度が低いことも望ましく、そのために前述のPENコードは、特に好適に採用しうる。又前記カーカスのコード角度を70〜80°とし、サイドウォール部3の剛性を高めることも、轍面からの横力Kを外端部7Eに強く伝えるために好ましい。
【0023】
又ベルト端とビードエーペックス8との間のフレキシブル領域Y(図1に示す)が狭いことも、前記外端部7Eへの押さえ込み効果のために望ましく、従って、前記ビードエーペックス8のビードベースラインBLからの高さh1を、タイヤ断面高さHの25〜45%と相対的に高く設定するのが好ましい。なお前記「ビードベースラインBL」とは、タイヤが基づく規格で定められるビード径位置を通るタイヤ軸方向線として定義している。
【0024】
次に本例では、図2に示すように、トレッド面2Sと前記最外側のベルトプライ7Bの外面BSとの間のトレッド厚さTにおいて、タイヤ赤道の位置Paにおけるトレッド厚さTaと、前記最外側のベルトプライ7Bのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向内方に5mmの距離を隔てる位置Phにおけるトレッド厚さThとの差Ta−Thを0〜2.0mmの範囲、好ましくは0〜1.5mmの範囲に減じ、前記トレッド厚さTの均一化を図っている。
【0025】
これにより、トレッドプロファイルが平坦(フラット)化し接地圧が適正化されるため、トレッドショルダー部TSでの偏摩耗を抑制することができる。又接地/非接地の際のベルト層7の動きも減じられるため、ベルト端での剪断力が低減されるなど、ベルト端剥離の発生を抑えることも可能となる。
【0026】
又本例では、トレッド接地巾WTをより広く確保し、耐摩耗性能および操縦安定性能を向上させるため、タイヤ子午線断面において、前記トレッド面2Sとバットレス面3Sとを滑らかな円弧状の曲面13によって連続させるとともに、この曲面13の曲率半径Rsを10〜25mmの範囲、好ましくは10〜20mmの範囲、さらに好ましくは10〜15mmの範囲に減じている。これによって、限られたトレッド巾の中でトレッド接地巾WTをより広く確保できる。なお前記曲率半径Rsが10mm未満では、ベルト層外端部7Eへの押さえ込み効果が有効に作用した場合にも、轍面との引っ掛かりが依然強く、ワンダリング性能が不十分なものとなってしまう。
【0027】
なおプライ折返し部11によるベルト層外端部7Eへの押さえ込み効果は、使用内圧が例えば300〜600kPaと高圧な小型トラック用タイヤにおいて、最も有効に発揮することができる。乗用車用タイヤでは使用内圧が低く、サイドウォール部3のタイヤ軸方向外方への膨張が少なくなるため、前記効果が有効に発揮されない傾向となる。また重荷重用タイヤでは、カーカスコードとしてスチールコードが使用されるため、サイドウォール部3の膨張が少なく、同様に前記効果が有効に発揮されない傾向となる。しかし要求により、乗用車用タイヤおよび重荷重用タイヤにおいても、本願の構造を採用することができる。
【0028】
又本願では、少なくとも1枚のカーカスプライが、プライ折返し部11を有しかつこのプライ折返し部11が重複部14を形成していれば良い。従って、他のカーカスプライがプライ本体部10のみから形成されプライ折返し部を排除した巻き下ろしのプライであっても良く、又複数のカーカスプライが、プライ折返し部11を有しかつ各プライ折返し部11が重複部14を形成していても良い。
【0029】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0030】
【実施例】
図1に示す構造を有するタイヤサイズ205/60R17.5の小型トラック用タイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの空積時、および積載時のワンダリング性能をテストし、その結果を表1に示す。なお表1以外の仕様は、各タイヤとも実質的に同一である。カーカスおよびベルト層の共通の仕様は表2に示す。
【0031】
(1)ワンダリング性能;
試供タイヤを、内圧(600kPa)、リム(6.00)の下で、積載量3トンの小型トラックの全輪に装着し、ワンダリングテスト用の轍路面を、空積状態、および積載状態(3トン積み)において走行し、ワンダリング性能をドライバーの官能評価により、従来例を6.0とする10点法で評価した。数値が大きいほどワンダリング性能にすぐれている。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
叙上のごとく本発明の空気入りタイヤは、カーカスのプライ折返し部を、サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在せしめ、この外面との重複部を形成しているため、トレッド接地巾の巾広化を阻害することなく、かつ偏摩耗を発生させることなくワンダリング性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【図2】そのトレッド部を拡大して示す断面図である。
【図3】(A)、(B)は、本願の作用効果を説明する線図である。
【図4】従来技術を説明するトレッド部の断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3S バットレス面
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A、6B カーカスプライ
7 ベルト層
7A、7B ベルトプライ
10 プライ本体部
11 プライ折返し部
13 曲面
14 重複部
Claims (3)
- トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部に前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部を一連に設けたカーカスプライを有するカーカスと、トレッド部の内方かつ前記カーカスの外側に半径方向に重なって配される複数枚のベルトプライを有するベルト層とを具えるとともに、
前記プライ折返し部は、前記サイドウォール部を経て半径方向最外側に位置するベルトプライの外面に沿って延在することにより、この外面に重なる重複部を有することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記トレッド部は、トレッド面と前記最外側のベルトプライの外面との間の厚さTである、タイヤ赤道の位置におけるトレッド厚さTaと、前記最外側のベルトプライのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向内方に5mmの距離を隔てる位置におけるトレッド厚さThとの差Ta−Thを0〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド部のトレッド面と、サイドウォール部上方のバットレス面とをタイヤ子午線断面において滑らかな曲面によって連続させるとともに、その曲面の曲率半径Rsを10〜25mmとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
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- 2002-06-11 JP JP2002170339A patent/JP2004010001A/ja active Pending
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