JP2004009631A - 平版印刷版用支持体 - Google Patents

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上杉 彰男
Hirokazu Sawada
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Abstract

【課題】平版印刷版としたときに、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現できる平版印刷版用支持体の提供。
【解決手段】Al板に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して得られる、中心線平均粗さRa が0.35μm以上、最大高さRmax が8.0μm以下の表面を有する平版印刷版用支持体であって、前記Al板が、特定量のFe、Si、Cu、Ti及びSnを含有し、残部がAlと不可避不純物とからなり、前記Al板の表面に存在する、これらの金属元素の2種以上からなる金属間化合物について、円相当直径が1μm以上である金属間化合物が7000個/mm2 以下であり、かつ、円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合が85%以上であり、Al板中に存在する単体Siが0.01質量%以下であるAl板である平版印刷版用支持体。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用支持体に関し、特に、平版印刷版としたときに、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現できる平版印刷版用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム板を支持体とする感光性平版印刷版原版はオフセット印刷に幅広く使用されている。
この平版印刷版原版の製造方法としては、一般に、シート状又はコイル状のアルミニウム板の表面に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して、平版印刷版用支持体を得た後、この支持体上に感光液を塗布し乾操させて画像記録層を形成させ、必要に応じて所望のサイズに切りそろえる方法が知られている。この平版印刷版原版は、画像焼付け後、現像処理を施されて、平版印刷版とされる。
この方法において、画像記録層と支持体との密着性を向上させるためには、酸性溶液中で電気化学的に行う粗面化処理が有効であり、また、陽極酸化処理後に表面処理や下塗液の塗布を行うことも有効である。
所望のサイズへの切りそろえ工程は、通常、感光液の塗布乾燥後に連続して行われるが、アルミニウム板にコイル状のものを用いる場合には、感光液の塗布乾燥後に一旦コイル状に巻き取って保管し、必要に応じて切りそろえることもできる。
そして、所定のサイズに切りそろえられた平版印刷版原版は、複数枚重ねて梱包され、ユーザにおいて、画像焼付け、現像処理、印刷機へ取り付けるための端部折り曲げ処理等が行われる。
【0003】
画像焼付け処理は、昨今実用化が進んでいる直描型平版印刷版原版では、レーザ露光装置を用いて行われる。直描型平版印刷版原版の中には、平版印刷版原版を印刷機の版胴に取り付け、印刷機上で画像焼付け処理をするだけで印刷可能となるものや、印刷機上で、又は印刷機に取り付ける前に、画像焼付け処理し、現像処理して印刷可能となるもの等が知られている。
【0004】
これらの平版印刷版原版において、粗面化処理によりアルミニウム板表面に形成されるピットが不均一で一部に大きく深いピットがあると、アルミニウム板上に設けられる画像記録層がその中により多く入り込んでしまう。そのため画像記録層の層厚(膜厚)も不均一となり、大きく深いピットの部分では膜厚が厚く、露光不足が起こったりハレーションによる光の不均一散乱が起こったりすることがある。即ち、露光安定性の悪い平版印刷版原版となってしまう。
【0005】
粗面化処理による粗面化が不均一(ピットの直径及び深さが不均一)の場合の不具合を、従来のポジ型の平版印刷版原版10の断面構造を示す模式図(図3及び図4)を用いて説明する。平版印刷版原版10は、ピット(凹凸)Pが形成されている平版印刷版用支持体12とその上に積層した画像記録層14とを有する積層体である。ピットPの露光方向の深さが不均一である場合(図3(a))、例えば、深いピットP’部分が露光されると、ハレーション(光の不均一散乱)が発生し(図3(b))、非露光部分も露光部分と同様に物性変化し、現像処理により除去される(図3(c))。その結果、印刷された画像に「かぶり」が生じることがある。また、現像処理が行われず、画像記録層が除去されない場合も、同様に非露光部分に悪影響を与える。これらの非露光部分への悪影響は、フォトンモードの画像記録層(感光層)及びサーマルモードの画像記録層(感熱層)のいずれのタイプの画像記録層を有する平版印刷版原版においても発生しうる。
【0006】
また、図4に示すように、ピットP及びピットP’を含む広い範囲の領域を露光した場合、光源からより遠いピットP’の底部では露光が不十分となり(図4(b))、露光部分の中に非露光部分が生じることがある(図4(c))。その結果、本来感光層除去部分は非画像になるにもかかわらず、部分的に画像部の特徴を示し、印刷時の汚れ発生起点になりやすい。即ち、露光のばらつきが生じ、露光安定性に劣る場合がある。
特に、サーマルモードの平版印刷版原版の場合は、レーザ光を一旦熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーによって物性変化を起こして画像を焼き付けるため、表層からの距離、即ち、画像記録層の膜厚が熱エネルギーの熱伝導に与える影響が大きくなり、大きく深いピットの底の部分は熱エネルギーが十分に伝導しにくく、画像焼付けが十分に行われない場合がある。
【0007】
また、支持体に用いられるアルミニウム板はそれ自身が非常に熱伝導性が高いため、ピットの底部に熱エネルギーが届いても、支持体に熱エネルギーが奪われやすくなり、物性変化を起こすためのエネルギーが不足する傾向がある。このような支持体への熱拡散現象を抑制するため、画像記録層と支持体との間に断熱層を設ける技術が特開平11−65105号公報等で提案されているが、ピットの不均一に起因する部分的な熱エネルギー不足には十分対応できていない。
【0008】
更に、直描型平版印刷版に用いられる画像記録層は、従来の平版印刷版原版に用いられる画像記録層に比して支持体との密着性を確保することが難しいため、直描型平版印刷版に用いられる支持体を従来の平版印刷版原版に用いられる支持体に比して画像記録層との密着力に優れた支持体にすることが必要である。
しかしながら、従来の電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理により粗面化処理された支持体は、直描型平版印刷版に用いられる支持体に求められるレベルの密着力が十分に得られず、平版印刷版としたときに十分な耐刷性が得られないという問題がある。
【0009】
上記諸問題を有する技術として、具体的には以下のものを挙げることができる。
例えば、米国特許第4,555,475号明細書には、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板表面をシリケート処理してアルミノシリケートを形成させ、YAG等のレーザを照射することで疎水性を付与し、その部分にエポキシ樹脂等を付着させて感脂性を増大させる方法が記載されている。この方法では、平版印刷版の露光安定性が劣ることに加えて、感脂成分を後から付着させるため、密着性が不十分で、高い耐刷性が得られないという問題がある。
また、欧州特許第164,128号明細書には、アルミニウム板を表面処理、陽極酸化処理及びシリケート処理して、その上にジアゾ樹脂とカーボンブラックを塗布して感材を作り、YAGレーザで画像露光した後ラッカリングして新聞印刷用の版を作成する技術が記載されている。この技術では、露光安定性が劣ることに加えて、画像部のラッカとジアゾ樹脂との密着性が不十分なため、高い耐刷力が得られないという問題がある。
【0010】
また、特開平7−306528号公報には、アルミニウム板に順に、ナイロンブラシとパミストンの水懸濁液を用いる機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、中和洗浄処理、1%硝酸液中での電気化学的粗面化処理、デスマット処理、陽極酸化処理、更にケイ酸ソーダ溶液処理を行って得られた基板に、光熱変換物質と分子内に2個以上のジアゾニオ基を持つジアゾニウム化合物とを含む画像記録層を設ける平版印刷版が記載されている。
特開平9−236911号公報には、材質1Sのアルミニウム板に順に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、水洗浄処理、中和洗浄処理、1%硝酸液中での電気化学的粗面化処理、デスマット処理、陽極酸化処理、ケイ酸ソーダ溶液処理、水洗浄及び乾燥処理を行い、更にラジカルによる付加反応を起こし得る官能基を有するシリコーン化合物を含む層を塗設して得られた基板に、活性光線により重合可能な少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する化合物と線状有機高分子重合体と光重合開始剤とを含有する光重合性組成物からなる光重合性画像記録層及び酸素遮断層を順次設ける平版印刷版が記載されている。
【0011】
特開平9−114043号公報には、アルミニウム板に順に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、中和洗浄処理、0.5%硝酸アルミニウムを含有する1%硝酸液中での電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理、デスマット処理、及び陽極酸化処理を行って得られた基板に、ハロゲン化銀を含む画像記録層を設ける平版印刷版が記載されている。
該公報には、また、アルミニウム板(材質1050)に順に、トリクロロエチレン洗浄する脱脂処理、機械的粗面化処理、水洗浄処理、アルカリエッチング処理、水洗浄処理、デスマット処理、及び陽極酸化処理を行って得られた基板に、所定の官能基から選択される、酸の作用によりスルホン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物と光酸発生剤とを含む画像記録層を設ける平版印刷版が記載されている。
該公報には、更に、アルミニウム板(材質1050)に順に、トリクロロエチレン洗浄する脱脂処理、機械的粗面化処理、水洗浄処理、アルカリエッチング処理、水洗浄処理、デスマット処理、陽極酸化処理、及び水洗浄乾燥処理を行い、更に下塗液を塗布乾燥して得られた基板、又は、アルミニウム板に順に、機械的粗面化処理、水洗浄処理、アルカリエッチング処理、水洗浄処理、デスマット処理、水洗浄処理、1%硝酸液中での電気化学的粗面化処理、デスマット処理、及び陽極酸化処理して得られた基板に、結着剤と光を吸収し熱を発生する物質と熱分解性でありかつ分解しない状態では該結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質とを含む画像記録層を設ける平版印刷版が記載されている。
これらの平版印刷版は、電気化学的粗面化処理で生成するピット形状がアルミニウム板の影響を受けやすく均一とならない場合もあり露光安定性に劣る場合もある。また、同様の理由により画像記録層と基板の密着性が不十分で、優れた耐刷性が得られない場合もある。
【0012】
また、特開平11−167204号公報には、粗面化された支持体表面のピット形状を特定する技術が記載されている。この技術は電気化学的粗面化処理で生成するピット形状がアルミニウム板の影響を受けやすく均一とならないため、露光安定性に劣り、画像記録層と基板の密着性が不十分で耐刷性にも劣るという問題がある。
特開平11−65105号公報には、1050材で調質H16のアルミニウム板に電気化学的粗面化処理と皮膜量を特定した陽極酸化処理を行って得られた基板に断熱層を設ける技術及び皮膜量を特定した断熱層を設ける技術が、特開平11−139023号公報には、1050材アルミニウム板に電気化学的粗面化処理と皮膜量を特定した陽極酸化処理を行って得られた基板に関する技術が記載されている。これらの技術では、電気化学的粗面化処理で生成するピット形状がアルミニウム板の影響を受けやすく均一とならないため、平版印刷版の露光安定性に劣る。また同様に理由により画像記録層と基板又は基板と断熱層との密着性が不十分で耐刷性にも劣るという問題がある。
【0013】
更に、アルミニウム板上に、光導電層からなる電子写真感光体を画像記録層として設ける平版印刷版、極性変換型の画像記録層を設ける平版印刷版、光熱変換材料を有しアブレージョンによって表面の親水性、親油性が切り替わる画像記録層を設ける平版印刷版等が知られているが、いずれも画像記録層と基板の密着性を確保するには、同様に粗面化処理で生成するピット形状が均一であることが必要である。
このように、アルミニウム板表面に形成されるピット形状が均一で、平版印刷版としたときの耐刷性及び耐汚れ性に優れ、かつ、露光のばらつきが防止され、露光安定性に優れる平版印刷版用支持体は提供されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、平版印刷版としたときに、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる平版印刷版原版及びそれに好適に用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、アルミニウム板に含有される金属元素、その含有量、これらを含む金属間化合物の物性、及びアルミニウム板中の単体Siの含有量を特定したアルミニウム板を用い、粗面化処理後の中心線平均粗さRa と最大高さRmax とを特定の範囲にした表面を有する平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版が、平版印刷版としたときに、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現しうることを知見し、本発明を完成した。
本発明により、電気化学的粗面化処理で生成するピットの形状の均一性を高めることができるため、耐刷性及び耐汚れ性が優れたものとなる。また、均一なピット中に入り込んでいる画像記録層の体積(アルミニウム板上に設けられる画像記録層の膜厚)も均一にすることができるため、露光安定性が優れたものとなる。
なお、本発明においては、「耐汚れ性」は、例えば、耐通常汚れ性、耐苛酷インキ汚れ性、水幅及びインキ絡みにより評価することができる。
【0016】
即ち、本発明は、上記知見に基づいて以下の(I)〜(IV)を提供する。
(I)アルミニウム板に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して得られる、中心線平均粗さRa が0.35μm以上、最大高さRmax が8.0μm以下である表面を有する平版印刷版用支持体であって、
前記アルミニウム板が、
Fe含有量が0.15〜0.5質量%、Si含有量が0.03〜0.15質量%、Cu含有量が0.0001〜0.030質量%、Ti含有量が0.0010〜0.04質量%、Sn含有量が0.003未満であり、残部がAlと不可避不純物とからなり、
前記アルミニウム板の表面に存在する、これらの金属元素の2種以上からなる金属間化合物について、円相当直径が1μm以上である金属間化合物が7000個/mm2 以下であり、かつ、円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合が85%以上であり、
アルミニウム板中に存在する単体Siが0.010質量%以下であるアルミニウム板である平版印刷版用支持体。
【0017】
(II)前記アルミニウム板が、更に、Inを含み、その含有量が0.002質量%未満である、(I)に記載の平版印刷版用支持体。
(III)前記アルミニウム板が、更に、Bを含み、その含有量が0.008質量%未満である、(I)又は(II)に記載の平版印刷版用支持体。
【0018】
(IV)上記(I)〜(III)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
【0019】
また、本発明者は、アルミニウム板に特定条件における電気化学的粗面化処理を施すこと、好ましくは、更に、上記電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理でのアルミニウム溶解量を特定することにより、上記(I)〜(III)の平版印刷版用支持体を容易に作製することができることを知見した。
更に、本発明者は、アルミニウム板に施す特定条件下の粗面化処理の処理順を特定することにより、上記(I)〜(III)の平版印刷版用支持体を容易に作製することができ、得られる平版印刷版用支持体の表面のピットの形状の均一性をより高めることができるため、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性が特に優れることを知見した。
本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成した。
即ち、本発明はまた、以下の(V)〜(VII)を提供する。
【0020】
(V)上記(I)に記載のアルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して上記(I)〜(III)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記粗面化処理が、硝酸または塩酸を含有する電解液中、電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下で行われる電気化学的粗面化処理を含む、平版印刷版用支持体の製造方法。
【0021】
(VI)前記粗面化処理が、前記電気化学的粗面化処理の後に、アルミニウム溶解量0.01〜7g/m2 のアルカリエッチング処理を含む、上記(V)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【0022】
(VII)前記粗面化処理が、順に、
(1)平均粒子径1〜60μmの研磨材を用いる、ブラシによる機械的粗面化処理(a)、
(2)水酸化ナトリウムを含有する溶液中でのアルミニウム溶解量2〜15g/m2 のアルカリエッチング処理(b)、
(3)酸性溶液中でのデスマット処理(c)、
(4)濃度0.2〜2質量%の硝酸を含有する電解液中、交流波形を用いて電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下で行われる電気化学的粗面化処理(d)、
(5)水酸化ナトリウムを含有する溶液中でのアルミニウム溶解量0.01〜7g/m2 のアルカリエッチング処理(e)、
(6)酸性溶液中でのデスマット処理(f)、
(7)濃度0.1〜2質量%の塩酸を含有する電解液中、交流波形を用いて電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下における、電気化学的粗面化処理(g)、
(8)水酸化ナトリウムを含有する溶液中での、アルミニウムの溶解量0.001〜6g/m2 のアルカリエッチング処理(h)、及び
(9)酸性溶液中でのデスマット処理(i)
を含み、
前記陽極酸化処理が、濃度5質量%以上の硫酸とアルミニウムイオンとを含有する酸性溶液中で行われる酸化皮膜量1〜5g/m2 の陽極酸化処理(j)である、上記(VI)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<平版印刷版用支持体の表面形状>
本発明の平版印刷版用支持体は、中心線平均粗さRa が0.35μm以上、最大高さRmax が8.0μm以下である表面を有することを特徴の一つとする。
このような表面を有すると、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる。
【0024】
支持体表面の中心線平均粗さRa は、支持体表面の凹凸の状態を表す。
a が0.35μm以上であると、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる。
a が0.35μm未満であると、ピットの深さが浅く表面積が小さくなるため、耐刷性に劣る場合がある。
また、ピットの深さが浅いと、支持体の親水性が低くなり、印刷時に非画像部にインキが付着し、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する場合がある。
更に、ピットの深さが浅いと支持体の保水性が低くなり、印刷時に湿し水を多くしなければシャドー部のつまりが発生する。即ち、いわゆる水幅が狭くなる。更に、非画像部の表面にインキ成分や紙粉等の付着物が付いた場合、保水量が急激に減少するため、また、インキが付着物を伝って移動するため、画像部(網点)のインキが隣接する非画像部に移動しやすくなる。その結果、インキの絡みが発生しやすくなる。
【0025】
本発明においては、Ra は、これらの優れた性能をよりバランスよく実現することができる点で、0.35μm以上であり、0.40μm以上であるのが好ましく、0.45μm以上であるのがより好ましい。
また、Ra は、ブランケット胴の汚れが良好となる点で、0.8μm以下であるのが好ましい。
【0026】
max が8.0μm以下であると、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる。
最大高さRmax が8.0μmを超えると、ピットの大きさ及び深さが不均一となるため耐汚れ性に劣る場合がり、また、感度低下の原因と考えられる深い凹部が形成されるため、耐刷性及び耐汚れ性に劣る場合がある。また、最大高さRmax が8.0μmを超えると、支持体上に設ける画像記録層の膜厚が不均一となるため、深いピットにおいて残膜が生じやすくなる。即ち、耐ポツ状汚れ性(露光安定性)が悪くなる場合がある。
max は、これらの優れた性能をよりバランスよく実現できる点で、8.0μm以下であり、7.0μm以下であるのが好ましく、6.0μm以下であるのがより好ましい。
【0027】
本発明の平版印刷版用支持体においては、上記表面形状が、平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造を有する構造であるのが好ましい。
平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。このような小波構造を有すると、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm未満であると、水膜形成に大きな効果が得られない場合がある。また、小波構造のピットの平均開口径が0.2μmを超えると、耐刷性向上の効果が低下する場合がある。
【0028】
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。即ち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
【0029】
また、本発明の平版印刷版用支持体においては、上記表面形状が、更に、平均開口径0.5〜5μmの中波構造が重畳された構造であるのが好ましい。
平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって画像記録層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm未満であると、上層に設けられる画像記録層との密着性が低下し、平版印刷版の耐刷性が低下する場合がある。また、中波構造のピットの平均開口径が5μmを超えると、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数が減るため、やはり耐刷性が低下する場合がある。
【0030】
また、本発明においては、上記表面形状が、更に、平均波長5〜100μmの大波構造が重畳された構造であるのが好ましい。平均波長100μm以下の大波構造が重畳されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、検版性が優れたものとなる。大波構造の平均波長は、10〜80μmであるのが好ましい。
【0031】
本発明の平版印刷版用支持体において、その表面の中心線平均粗さRa 、最大高さRmax 、小波構造の平均開口径及び開口径に対する深さの平均、中波構造の平均開口径、ならびに、大波の平均波長の測定方法は、以下の通りである。
【0032】
(1)中心線平均粗さRa 
触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さを5回測定し、その平均値を中心線平均粗さとする。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
【0033】
(2)最大高さRmax 
触針式粗さ計(例えば、Surfcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、JIS B0601−1994に準拠して測定する。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
カットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm、基準長さ3.0mm、走査速度0.3mm/sec、触針径2μm
【0034】
(3)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0035】
(4)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
【0036】
(5)中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。大波構造を重畳した構造の場合も同じ方法で測定する。また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。大波構造を重畳した構造の場合も同様であった。
【0037】
(6)大波構造の平均波長
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Sm を5回測定し、その平均値を平均波長とする。
【0038】
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体は、例えば、アルミニウム合金からなるウェブ状のアルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理及び陽極酸化処理を施すことにより製造される。
【0039】
本明細書においては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。一般に、アルミニウム板に含まれてもよい異元素には、例えば、ケイ素、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、ホウ素、ガリウム、バナジウム、亜鉛、クロム、ジルコニウム、バリウム、コバルトなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
本発明の平版印刷版用支持体には、Fe含有量が0.15〜0.5質量%、Si含有量が0.03〜0.15質量%、Cu含有量が0.0001〜0.030質量%、Ti含有量が0.0010〜0.04質量%、Sn含有量が0.003未満であり残部がAlと不可避不純物とからなる組成を有するアルミニウム板が用いられる。
該アルミニウム板が、更に含有量が0.002質量%未満のInを含むのは、本発明の好ましい態様の一つであり、アルミニウム板が、更に含有量が0.008質量%未満のBを含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0040】
アルミニウム板中の異元素は、電気化学的粗面化処理において生成するピットの均一性に大きく依存し、異元素の種類、添加量等の調整により均一なピットが生成し、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる。
また、平版印刷版は、平版印刷版用支持体に画像記録層を設けて平版印刷版原版とした後、画像露光し、現像処理を施され製造されるが、その際、現像液の条件によっては、非画像部の表面の一部が局所的に現像液によって浸食を受け、耐苛酷インキ汚れ性が低下することが知られている。本発明のように特定の合金成分を極微量添加することで、画像記録層や現像液の条件によらず、平版印刷版の耐苛酷インキ汚れ性を改善することができる。ここで、「苛酷インキ汚れ」とは、印刷を何度も中断しつつ行った場合に、平版印刷版の非画像部表面部分にインキが付着しやすくなった結果、印刷された紙等に表れる点状又は円環状の汚れをいう。
【0041】
Feは、新地金においても0.1〜0.2質量%前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。Feは、アルミニウム板の機械的強度を高める作用があるが、1質量%より多いと圧延途中に割れが発生しやすくなり、0.5質量%より多いと金属間化合物が増加し電解性、陽極酸化皮膜の形成に影響する場合がある。また、Fe含有量が0.15質量%未満では、機械的強度が保てなくなり、これにより圧延途中で得率低下等の問題が生じる場合がある。
本発明においては、Fe含有量は、0.15〜0.5質量%であり、好ましくは、0.2〜0.3質量%である。
【0042】
Siは、新地金においても0.02〜0.1質量%前後含有される元素である。Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、又は、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。また、平版印刷版用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。本発明者らの知見によれば、単体Siが過剰の場合、固溶していたSiが単体Siとして析出しやすく、耐汚れ性、特に耐苛酷インキ汚れ性が低下する場合がある。
また、Si含有量は、アルミニウム板の電気化学的粗面化に影響を及ぼし、0.03質量%未満では、電気化学的粗面化処理においてピットが溶解し均一な表面構造とならない場合がある。
本発明においては、Si含有量は、0.03〜0.15質量%であり、好ましくは、0.05〜0.10質量%である。
【0043】
CuはJIS2000系、4000系材料のスクラップに多く含まれる元素であり、比較的Al中に固溶しやすい。
Cuの含有量は、電気化学的粗面化処理に大きく影響する。特に、硝酸を含有する電解液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(以下、単に「硝酸交流電解」という。)では、Cuの含有量が0.0001質量%より少ないと電解の温度変動に対してラチチュードが狭くなる場合があるとともに、0.030質量%より多いと最大高さRmax が8.0μmを超える不均一なピットが生成する場合がある。
Cuの含有量は、0.0001〜0.030質量%であり、好ましくは、0.0008〜0.02質量%である。
【0044】
Tiは通常結晶微細化材として0.005〜0.04質量%添加される元素である。JIS5000系、6000系、7000系のスクラップには不純物金属として比較的多めに含まれる。Tiの含有量は、結晶微細化の程度(アルミニウム板の結晶粒の大きさの程度)及び電気化学的粗面化に影響する。Tiの含有量が0.001質量%より少ないと結晶微細化の効果がみられない場合があり、0.04質量%より多いと硝酸交流電解及び塩酸を含有する電解液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(以下、単に「塩酸交流電解」という。)において不均一なピットが生成する場合がある。
Tiの含有量は0.0010〜0.04質量%であり、好ましくは、0.01〜0.03質量%である。
【0045】
Snの含有量は、電気化学的粗面化処理に大きく影響する。
Snの含有量が0.003質量%未満であれば、塩酸交流電解及び硝酸交流電解において生成するピットの径及び深さにはあまり影響せず、均一なピットの生成が可能となる。
Snの含有量が0.003質量%以上であると、塩酸交流電解及び硝酸交流電解において生成するピットの径が小さくなり深さが浅くなる場合があり、特に硝酸交流電解において温度、濃度などの条件によってはピットが溶解する場合がある。
Snの含有量は0.003質量%未満であり、好ましくは、0.002質量%以下である。
【0046】
Inは、極微量の添加で、耐苛酷インキ汚れ性を向上させる効果を示し、Inの含有量は、電気化学的粗面化処理に大きく影響する。
Inの含有量が0.002質量%未満であれば、塩酸交流電解及び硝酸交流電解において生成するピットの径及び深さにはあまり影響せず均一なピットの生成が可能となる。
Inの含有量が0.002質量%以上であると、塩酸交流電解及び硝酸交流電解において生成するピットの径が小さくなり深さが浅くなる場合があり、特に硝酸交流電解において温度、濃度などの条件によってはピットが溶解する場合がある。
In含有量は、好ましくは0.002質量%未満である。
【0047】
Bは結晶微細化材としてTiと共に添加されることがあり、Bの含有量は、電気化学的粗面化に大きく影響する。Bの含有量が0.008質量%以上であると、TiB2 系の金属間化合物が析出しやすくなり該析出部又はある領域で電解性が悪化し又は未エッチ部が生じる場合がある。
B含有率は、好ましくは0.008質量%未満であり、より好ましくは0.006質量%以下である。
【0048】
アルミニウム板の残部は、Alと不可避不純物からなる。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)などに記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
アルミニウム合金に含有される不可避不純物としては、例えば、マグネシウム、マンガン、鉛、ニッケル、ガリウム、バナジウム、亜鉛、クロム、ジルコニウム、バリウム、コバルトなどが挙げられる。
【0049】
本発明に用いられるアルミニウム板は、上記組成を有し、アルミニウム板の表面に存在する、上記の金属元素の2種以上からなる金属間化合物について、円相当直径が1μm以上である金属間化合物が7000個/mm2 以下であり、かつ、円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合が85%以上であり、
アルミニウム板中に存在する単体Siが0.010質量%以下であるアルミニウム板であることを特徴とする。
金属間化合物は、電気化学的粗面化処理におけるピット形成の起点として重要であるが、ピットが大きすぎると又はピットが多く存在すると陽極酸化皮膜の欠陥形成に影響する場合があり、耐苛酷インキ汚れ性が悪くなる傾向がある。本発明者の知見によれば、表面に存在する円相当直径が1μm以上の金属間化合物が7000個/mm2 より多いと、陽極酸化皮膜の欠陥が増加する。
【0050】
上記金属元素の2種以上からなる金属間化合物として、例えば、Al3 Fe、Al6 Fe、TiAl3 、CuAl2 などの2種の元素からなる金属間化合物、α−AlFeSi、β−AlFeSiなどの3種の元素からなる金属間化合物が挙げられる。
【0051】
アルミニウム板に含まれる元素やアルミ溶湯に添加された元素は、鋳造工程で凝固する際、一部はアルミニウム板中にとけ込み(固溶)、残りは金属間化合物、又は単独の晶出物もしくは析出物として存在する。上記元素が金属間化合物又は単独の晶出物もしくは析出物として残る割合は、凝固速度の影響を大きく受ける。例えば、上記元素は、ローラ式連続鋳造を採った場合のように急速凝固する場合には大部分が固溶し、DC鋳造法のように疑固速度が遅い鋳造法を採った場合には、比較的金属間化合物又は単独の晶出物もしくは析出物として残りやすい。
【0052】
その後、均熱、焼純等の熱処理工程や熱間圧延工程中に、上記元素の多くは、アルミニウム板に再固溶したり、より安定な金属間化合物に変化したりするが、厚さ0. 1〜0. 7mm程度の平版印刷版用のアルミニウム板になった時点で、上記アルミニウム板の表面や内部に、金属間化合物又は単独の晶出物もしくは析出物として存在することが多い。
【0053】
この金属間化合物は、平版印刷版用支持体と画像記録層との間で、スパイクのような役割を果たしアンカー効果を示すので、両者の密着性が向上し、平版印刷版としたときに優れた耐刷性が得られる。密着性及び耐刷性を向上させるには、特に、複数種の金属間化合物、形態の異なる金属間化合物が混在していることが好ましい。
【0054】
本発明に用いられるアルミニウム板の特徴の一つは、その表面に存在する金属間化合物のうち、1μm以上の円相当直径を持つ金属間化合物が7000個/mm2 以下であるところにある。その個数は、7000個/mm2 以下であり、6500個/mm2 以下であるのが好ましい。金属間化合物の単位面積あたりの個数が上記範囲であると、耐刷性及び露光安定性(耐ポツ状汚れ性)に優れる。
【0055】
本発明で用いるアルミニウム板の特徴の一つは、その表面に存在する金属間化合物の全量に対する、円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合(存在率)が85%以上であるところにある。
金属間化合物は、電気化学的粗面化処理におけるピット形成の起点として重要であるが、その円相当直径にばらつきがあると又は円相当直径が10μmを超えるものが多く存在すると、電気化学的粗面化処理により生成するピットが不均一となり、耐刷性に劣る場合がある。また陽極酸化皮膜の欠陥生成量に影響し、耐苛酷インキ汚れ性に劣る場合がある。
円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合は、耐苛酷インキ汚れ性に優れる点で、90%以上が好ましい。
【0056】
更に、本発明で用いるアルミニウム板の特徴の一つは、アルミニウム板中に存在する単体Siが0.010質量%以下であるところにある。
単体Siの含有量が多すぎると、上述したように、固溶していたSiが単体Siとして析出しやすく、耐汚れ性、特に、耐苛酷インキ汚れ性が低下する場合がある。
【0057】
金属間化合物の種類、円相当直径及び存在率は、それぞれ不純物を含む原料、例えば、UBC材等低純度のスクラップ材、2次地金の添加量を変えることで制御することができる。また、平版印刷版用支持体の製造条件を適宜変更することでも若干調整することができる。例えば、デスマット処理工程の酸処理工程における処理温度や硫酸の酸濃度等を低くして、酸による金属間化合物の除去能を低減させたりして、所定の範囲内に適宜変更すればよい。存在率を下げたい場合は、塩酸を用いた化学エッチングで適宜除去する方法を用いることができる。
【0058】
金属間化合物の種類及びその含有量は、SEM(走査型電子顕微鏡)等により、粗面化処理された表面を観察し、例えば、5箇所(n=5)について、60μm×50μmの範囲で、金属間化合物をカウントし、1mm2 あたりに換算することで容易に算出することができる。その径の測定も同様の方法を使用することができる。
【0059】
また、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ)を用いて、例えば、以下の方法で算出することもできる。
金属間化合物の円相当直径及びその存在率の測定においては、アルミニウム板の表面の油分をアセトンでふき取り、測定試料とするのが好ましい。
EPMAを用い、加速電圧20.0kV、照射電流9.5×10−9Aの条件で高感度反射電子検出器を用いた組成像を倍率500倍で撮影し、インスタント写真を得る。
つぎに、該反射電子写真(インスタント写真)を画像処理ソフトにてbmf(ビットマップファイル)形式に変換し、このファイルを画像解析ソフトに読み込んで画像解析を行う。画像の静的二値化処理を行い、白く抜けた金属間化合物に対応する部分をカウントし、特徴量として円相当直径(等価円直径)を指定して円相当直径分布を得る。
【0060】
アルミニウム板中の単体Siの含有量の測定は、例えば、以下の方法により行うことができる。
まず塩酸に投入しアルミニウム板試料を分解させる。試料のほとんどが分解したら過酸化水素水を加え、液量を調整して煮沸し試料を完全に分解させる。
流水中で冷却した後、不溶解残渣をろ過し、ビーカー、ろ過筒、フィルタ及び残渣を蒸留水でよく洗浄した後、フィルタと残渣を5種Aろ紙1枚で包んで白金るつぼに入れ、加熱し灰化させる。
約1000℃で強熱した後、シリカゲルデシケータ中で室温まで冷却し質量を測定する。この処理を恒量となるまで繰り返し、フッ化水素酸処理前の質量とする。
恒量となった後、硫酸数滴を加えてるつぼ中の酸化物を湿らせ、フッ化水素酸を加え、加熱して乾固させた後、約1000℃で強熱する。シリカゲルデシケータ中で室温まで冷却し、質量を測定する。このフッ化水素酸処理を恒量となるまで繰り返し、フッ化水素酸処理後の質量とする。
この全減量が二酸化ケイ素(SiO2 )量にあたる。
一方、アルミニウム板試料を用いずに、上記と同量の試薬を用いた空試験(ブランク)を行い、空試験値として、二酸化ケイ素(SiO2 )量を求める。
アルミニウム板中の単体Siの含有量(質量%)は、次式[1]により算出する。
【0061】
単体Si含有量(質量%)=(W1 −W2 −W3 )×(0.4674/W0 
×100  [1]
【0062】
ここで、W0 は試料秤取り量(g)、W1 はフッ化水素酸処理前の質量(g)、W2 はフッ化水素酸処理後の質量(g)、W3 は空試験値(g)である。
【0063】
本発明に用いられるアルミニウム板は、DC鋳造法、連続鋳造法、DC鋳造法から中間焼鈍処理及び灼熱処理のいずれか、又は両方を省略した製造方法、及び連続鋳造法から中間焼鈍処理を省略した製造方法のいずれかにより製造できる。また、上記の常法で鋳造したものに、適宜圧延処理や熱処理を施し、厚さを例えば、0.1〜0.7mmとし、必要に応じて平面性矯正処理を施して製造してもよい。この厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザの希望により、適宜変更することができる。
【0064】
所定の厚さ、例えば、0.1〜0.7mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。
【0065】
<粗面化処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、上記アルミニウム板に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して得られる、上記表面を有する平版印刷版用支持体である。
上記粗面化処理は、前記粗面化処理が、硝酸又は塩酸を含有する電解液中、電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下で行われる電気化学的粗面化処理を含むのが好ましく、更に、前記電気化学的粗面化処理の後に、アルミニウム溶解量0.01〜7g/m2 のアルカリエッチング処理を含むのがより好ましい。
【0066】
粗面化処理は、順に、
(1)平均粒子径1〜60μmの研磨材を用いる、ブラシによる機械的粗面化処理(a)、
(2)水酸化ナトリウムを含有する溶液中でのアルミニウム溶解量2〜15g/m2 のアルカリエッチング処理(b)、
(3)酸性溶液中でのデスマット処理(c)、
(4)濃度0.2〜2質量%の硝酸を含有する電解液中、交流波形を用いて電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下で行われる電気化学的粗面化処理(d)、
(5)水酸化ナトリウムを含有する溶液中でのアルミニウム溶解量0.01〜7g/m2 のアルカリエッチング処理(e)、
(6)酸性溶液中でのデスマット処理(f)、
(7)濃度0.1〜2質量%の塩酸を含有する電解液中、交流波形を用いて電流密度5〜70A/dm2 、アノード反応時における電気量10〜800C/dm2 の条件下における、電気化学的粗面化処理(g)、
(8)水酸化ナトリウムを含有する溶液中での、アルミニウムの溶解量0.001〜6g/m2 のアルカリエッチング処理(h)、及び
(9)酸性溶液中でのデスマット処理(i)
を含むのが特に好ましい。
【0067】
このような粗面化処理を施すことにより、上述した特定のRa 、Rmax 、金属間化合物及び単体Siを有する本発明の平版印刷版用支持体を容易に作製することができる。また、特に好ましい粗面化処理を施すことにより、上記の開口径を持つ大波、中波及び小波を含む3重の波状構造を形成でき、ピット形状の均一性をより高めることができるため、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性が特に優れる。
【0068】
以下、上述した(a)〜(i)の各工程を有する粗面化処理について説明するが、本発明においては粗面化処理はこれに限定されるものではない。
【0069】
<機械的粗面化処理(a)>
機械的粗面化処理(a)においては、上記アルミニウム板の少なくとも一方の面に、ローラ状ブラシで擦って粗面化するブラシグレイニングを施す。
【0070】
機械的粗面化処理は、処理後の粗面化面の中心線平均粗さが0. 3〜0.8μmになるように行うのが好ましい。より好ましくは0. 35〜0. 7μmである。この範囲であれば、得られる平版印刷版用支持体の中心線平均粗さRa の調整が容易である。
【0071】
ブラシグレイニングを行うに先立ち、必要に応じて、上記アルミニウム板の表面に付着した圧延油を除去するための脱脂処理を行うことができる。脱脂処理としては、例えば、界面活性剤による処理、有機溶剤による処理、アルカリ性水溶液による処理等を行うことができる。ただし、圧延油の付着が少ない場合等は、上記脱脂処理を省略することができる。
【0072】
引き続いて、研磨材スラリーを上記アルミニウム板表面に供給しながら、1種、又は毛径が異なる2種以上のローラ状ブラシを用いてブラシグレイニングを行う。
ブラシグレイニングは、特開平6−135175号公報及び特公昭50−40047号公報に詳しく記載されているように、粗面化しようとするアルミニウム板を挟んで上方にローラ状ブラシを配置して下方に支持ローラを配置し、上記アルミニウム板を一定速度で搬送しつつ、上記ローラ状ブラシと上記アルミニウム板との間に研磨材スラリーを供給しながら上記ローラ状ブラシを回転させることにより行うことができる。
【0073】
上記支持ローラは、上記ローラ状ブラシ1本につき、2本づつ配置することができる。上記ローラ状ブラシの下方に位置する1対の支持ローラは、外面の最短距離がローラ状ブラシの外径より小さくなるように配置することが好ましい。
上記ブラシグレイニング時においては、上記アルミニウム板を、上記ローラ状ブラシにより、上記2本の支持ローラの間に押し入れるように加圧することが好ましい。
【0074】
本発明に用いられるローラ状ブラシは、ナイロン、ポリプロピレン、動物毛、又はスチールワイヤ等から形成したブラシ毛を均一な毛長及び植毛分布で円筒状の胴の側面全体に植設したもの、上記胴の表面全体に多数の小穴を開け、上記ブラシ毛の束であるブラシ毛束を上記小穴のそれぞれに植設したもの、チャンネルローラ型のもの等が好ましく用いられる。
【0075】
上記ブラシ毛の毛径は0. 05〜0. 8mmであるのが好ましく、0. 15〜0. 5mmであるのがより好ましい。ブラシ毛の断面形状は円形であるのが好ましい。毛径が0. 05mm以上であれば、シャドー部での耐汚れ性に優れる平版印刷版が得られ、0. 8mm以下であれば、ブランケット汚れの生じ難い平版印刷版が得られる。
【0076】
上記ブラシ毛の植毛後の毛長は、10〜200mmであるのが好ましく、25〜100mmであるのがより好ましい。ローラ状ブラシに植え込む際の植毛密度は1cm2 あたり30〜1000本であるのが好ましく、50〜300本であるのがより好ましい。
上記ブラシ毛の材質は、上記したもののうち、ナイロンが好ましく、特にナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10等がより好ましく、引っ張り強さ、耐摩耗性、吸水による寸法安定性、曲げ強さ、耐熱性、回復性等に優れている点から、ナイロン6・10が特に好ましい。
【0077】
ローラ状ブラシの本数は、好ましくは1〜10本であり、より好ましくは1〜6本であり、特に好ましくは3〜4本である。特開平6―135175号公報に記載されているように、ブラシ毛の毛径が異なる2以上のローラ状ブラシを組み合わせてもよい。
ローラ状ブラシの回転数は、100〜500rpmが好ましい。ローラ状ブラシは、アルミニウム板の搬送方向と同じ方向に回転(順転)させることが好ましいが、ローラ状ブラシが多数本の場合には、一部のローラ状ブラシを、アルミニウム板の搬送方向と逆の方向に回転(逆転)させてもよい。上記ローラ状ブラシを3本用いるときは、アルミニウム板の搬送方向に対して最も上流側に位置するローラ状ブラシを順転させ、中央のローラ状ブラシを逆転させ、アルミニウム板の搬送方向に対して最も下流側に位置するローラ状ブラシを順転させることが特に好ましい。ローラ状ブラシを4本用いるときには、上記4本のローラ状ブラシの回転方向は、アルミニウム板の搬送方向に対して上流側(以下、単に「上流側」という。)からアルミニウム板の搬送方向に対して下流側(以下、単に「下流側」という。)に向かって、順転、逆転、順転、順転とするのが好ましい。
【0078】
また、上記ローラ状ブラシを、例えば、アルミニウム板の搬送方向に対して直角の方向に沿って、0. 0001〜1Hzの周期及び10〜200mmの振幅でオシレートさせることにより、処理ムラのない表面を有する平版印刷版用支持体が得られる。
ローラ状ブラシの押し込み量は、上記モータの消費電力が好ましくは1. 0〜15kW、更に好ましくは2〜10kWになるように、上記ローラ状ブラシを回転させるモーターの負荷に基づいて管理することが好ましい。
【0079】
上記ブラシグレイニングは、太いブラシ毛を植毛したローラ状ブラシで粗面化した後、細いブラシ毛を植毛したローラ状ブラシで処理することにより、湿し水が少ない場合でもシャドー部のつぶれが生じにくくなるため、水幅が広く、地汚れが発生しにくく、また画像記録層との密着劣化がなく、親水性、保水性及び密着性を兼ね備えた平版印刷版が得られるので好ましい。
【0080】
本発明に用いられる研磨材スラリーとしては、例えば、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、火山灰、パミス粉末、カーボランダム、金剛砂等の研磨材を、比重1. 05〜1. 3となるような範囲で水に分散させたものが好ましい。上記研磨材の平均粒子径は1〜60μmであり、好ましくは5〜55μmであり、特に好ましくは15〜50μmである。この範囲であれば、中心線平均粗さRa 及び最大高さRmax を上記範囲に容易に調整できるため、平版印刷版としたときに、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現できる。ここで平均粒子径とは、スラリー液中に含まれる全研磨材の体積に対し、各径の粒子の占める割合の累積度数をとったとき、上記累積割合が50%となる粒子径である。
【0081】
上記研磨材の平均粒径は、例えば、上記研磨材スラリーをサイクロン等の分級手段に通し、上記研磨材スラリー中の研磨材を、粒径の大きなものと小さなものとに分級し、粒径の大きな方の研磨材を主に含む研磨材スラリーを回収し、粒径の小さな方の研磨材を主に含む研磨材スラリーを捨てることにより制御することができる。
【0082】
上記研磨材スラリー中の研磨材濃度は、上記研磨材スラリーの比重に基づいて管理する。上記比重は、変動幅が±10%以内になるように制御することが好ましい。
上記研磨材スラリーの比重は、例えば、上記研磨材スラリーの比重を断続的又は連続的に測定し、比重が上記範囲よりも小さい場合には上記研磨材スラリーに新鮮な研磨材を補充して比重を増加させ、比重が上記範囲よりも大きな場合には上記研磨材スラリーに水を補充して比重を低下させることにより制御できる。
【0083】
ブラシグレイニングにおいては、上記したブラシグレイン後の中心線平均粗さ(0.3〜0.8μm)が得られるように、ローラ状ブラシの押し込み量、回転数、回転方向の組み合わせ、ローラ状ブラシの本数、それぞれのローラ状ブラシの直径、ブラシ毛の密度、アルミニウム板に加える張力、上記研磨材スラリーに配合する研磨材の種類、平均粒子径、粒度分布、及び上記研磨材スラリーをアルミニウム板に吹きつける流量・方向・角度等を選択することが好ましい。
【0084】
<アルカリエッチング処理(b)>
上記機械的粗面化処理(a)の後にアルカリエッチング処理(b)を行うことにより、上記アルミニウム板の表面に食い込んだ研磨材やアルミニウム屑等が除去され、その後に施される電気化学的粗面化処理(d)を、より均一に、しかも効果的に行うことができる。
【0085】
アルカリエッチング処理においては、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより行う。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルカリ溶液を収容する槽中に連続的にアルミニウム板を通過させる方法、アルカリ溶液を収容する槽中にアルミニウム板を浸せきさせる方法、及びアルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴霧する方法等が挙げられる。
【0086】
上記アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量、換言すればエッチング量は、2〜15g/m2 であり、3〜10g/m2 が好ましい。
この範囲であれば、保水量を維持しつつ、機械的粗面化処理により生じたピットの急峻な部分を効率よく溶解することができる。
【0087】
アルカリ溶液は、主要なアルカリ成分として水酸化ナトリウムを含有する。アルカリ溶液に含有させてもよいその他のアルカリ成分としては、水酸化カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0088】
アルカリ溶液としては、アルミニウムイオンを所定量含有する水酸化ナトリウム溶液が好ましい。
アルカリエッチング処理を安定に行うには、アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム濃度を所定の範囲に制御する必要があり、アルカリ溶液がアルミニウムイオンを含有する場合には、所定の範囲になるように制御することが好ましい。アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム及びアルミニウムイオンの濃度は、それぞれ20〜30質量%及び5〜9質量%が好ましい。水酸化ナトリウム濃度及びアルミニウムイオン濃度は、アルカリ溶液の比重と電導度とに基づいて制御される。比重及び電導度は、変動幅が±10%以内になるように制御することが好ましい。
アルカリ溶液の液温は、40〜80℃が好ましい。
【0089】
アルカリエッチング処理は、アルミニウム板のエッチング処理に通常使用されるエッチング装置を用いて行うことができる。エッチング装置としては、例えば、アルカリ溶液を貯留する槽を有し、この槽中に上記アルミニウム板を浸せきさせる形態のもの、及びスプレーノズルを有し、スプレーノズルから上記アルミニウム板に向ってアルカリ溶液を噴き付ける形態のものが挙げられる。エッチング装置は、バッチ式であっても連続式であってもよい。
【0090】
アルカリエッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないようにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
【0091】
<デスマット処理(c)>
上記アルカリエッチング処理(b)は、アルミニウム板をアルカリ溶液でエッチング処理するので、表面にスマットが生成する。
そこで、上記アルカリエッチング処理(b)の終了後、上記アルミニウム板を酸性溶液に接触させてデスマット処理し、表面のスマットを除去するのが好ましい。
【0092】
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を酸性溶液中に浸せきさせる方法、酸性溶液中を通過させる方法、酸性溶液をスプレーノズルを用いて吹付ける方法等により行うことができる。これらの中でもスプレーノズルを用いて吹付ける方法が好ましい。
【0093】
酸性溶液の主要な酸成分として、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、及びクロム酸から選択される1種又は2種以上の酸が挙げられる。酸成分の濃度は0. 5〜60質量%が好ましい。上記酸性溶液には、アルミニウムイオン、及びアルミニウム板を形成するアルミニウム合金中に含まれる上記微量元素のイオンが0〜5質量%溶解していてもよい。具体的には、酸性溶液としては、硝酸を5〜15g/L含有する硝酸電解液又は硫酸を80〜300g/L含有する硫酸溶液が好ましい。
【0094】
また、酸性溶液として、後述する電気化学的粗面化処理(d)又は後述する陽極酸化処理(j)で排出される廃液を使用すれば、電気化学的粗面化処理(d)及び陽極酸化処理(j)において排出される廃液の量を削減できるため好ましい。
酸性溶液の液温は、常温〜95℃が好ましく、25〜80℃が特に好ましい。
処理時間は1〜30秒が好ましく、1〜5秒が特に好ましい。
【0095】
デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないようにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましいが、酸性溶液として、次の工程で用いる液と同じ種類・組成の液、又は次の工程で排出される廃液を使用する場合には、廃液量を少なくするため、液切り及び水洗を省略することもできる。
【0096】
<電気化学的粗面化処理(d)及び(g)>
電気化学的粗面化処理が、硝酸又は塩酸を含有する電解液中で特定条件下で行う電気化学的粗面化処理であれば、特定の特定のRa 、Rmax 、金属間化合物及び単体Siを有する本発明の平版印刷版用支持体を容易に作製できる点で好ましい。最初の電気化学的粗面化処理(d)は、硝酸電解液中で行う電気化学的粗面化処理であり、第2回目の電気化学的粗面化処理(g)は塩酸電解液中で行う電気化学的粗面化処理であれば、上記の開口径を持つ大波、中波及び小波を含む3重の波状構造を形成でき、ピット形状の均一性をより高めることができるため、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性が特に優れる点で特に好ましい。
【0097】
(1)硝酸電解液
電気化学的粗面化処理(d)で使用される硝酸電解液の硝酸濃度は、0.2〜2質量%である。この範囲であれば、機械的粗面化処理により生じたピット(うねり)に重畳して均一なピットを形成できるため、印刷性能に優れる。
硝酸電解液には、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩、及び塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸塩から選択される1種以上の塩を、1g/Lから飽和濃度までの範囲で添加することができる。硝酸電解液には、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの濃度になるように添加することもできる。硝酸電解液には、更に、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム板を形成するアルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していてもよい。加えて、次亜塩素酸又は過酸化水素を1〜100g/Lの濃度で含有していてもよい。
【0098】
硝酸電解液としては、硝酸を5〜15g/L含有する希硝酸に、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩を添加してアルミニウムイオンの濃度を2〜7g/Lに調整した水溶液が特に好ましい。
【0099】
また、硝酸電解液中で電気化学的粗面化処理を行っていると、還元反応により、硝酸電解液中にアンモニウムイオンが生成するので、硝酸電解液中に、アンモニウムイオン濃度が50〜150ppmになるように、あらかじめ硝酸アンモニウムを添加することが特に好ましい。
硝酸電解液の液温は、30〜80℃が好ましく、35〜60℃が特に好ましい。
【0100】
硝酸電解液の硝酸濃度は、硝酸電解液の音速及び電導度に基づいて制御される。具体的には、まず、硝酸濃度の異なる複数の硝酸電解液について音速及び電導度を測定して硝酸濃度と音速及び電導度との関係を示す検量線を求める。つぎに、電気化学的粗面化処理(d)で実際に使用される硝酸電解液について音速及び電導度を測定し、音速及び電導度の測定値と上記検量線とから、硝酸電解液の硝酸濃度を求める。
【0101】
硝酸濃度は、音速及び電導度の変動幅が±10%の範囲内になるように制御することが好ましい。この制御は、硝酸電解液に濃硝酸を添加したり水を添加して希釈したりすることにより行うことができる。
【0102】
(2)塩酸電解液
電気化学的粗面化処理(g)で使用される塩酸電解液の塩酸濃度は、0.1〜2質量%、言い替えれば塩酸を1〜20g/L含有する塩酸電解液である。この範囲であれば、均一な微小ピットを重畳して形成でき、アルミニウム板の表面積が増大し、特に印刷性能に優れる。
塩酸電解液には、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸塩、及び硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩から選択された1種以上の塩を、1g/Lから飽和濃度までの範囲で添加することができる。
塩酸電解液には、また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの濃度になるように添加することもできる。塩酸電解液には、更に、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム板を形成するアルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していてもよい。加えて、次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/Lの濃度で含有していてもよい。
【0103】
塩酸電解液としては、塩酸を2〜15g/L含有する希塩酸に塩化アルミニウム等のアルミニウム塩を添加してアルミニウムイオンの濃度を2〜15g/Lに調整した溶液が特に好ましい。
塩酸電解液の液温は、20〜50℃が好ましい。
【0104】
塩酸電解液の塩酸濃度は、上記硝酸電解液と同様、塩酸電解液の音速及び電導度に基づいて制御される。具体的には、上記硝酸電解液と同様、塩酸電解液の塩酸濃度と音速及び電導度との関係を示す検量線を求め、上記電気化学的粗面化処理(g)で使用された塩酸電解液の音速及び電導度の測定値と上記検量線とから、塩酸電解液の塩酸濃度を求める。
【0105】
塩酸電解液の塩酸濃度もまた、音速及び電導度の変動幅が±10%の範囲内になるように制御することが好ましい。この制御は、塩酸電解液に濃塩酸を添加したり水を添加して希釈したりすることにより行うことができる。
【0106】
(3)電気化学的粗面化処理の条件
電気化学的粗面化処理(d)及び(g)のいずれにおいても、交流を印加する。
電気化学的粗面化処理(d)においては、上記アルミニウム板がアノード反応にあずかるときの電気量、即ち、アノード時の電気量が10〜800C/dm2 、好ましくは30〜300C/dm2 、特に好ましくは100〜250C/dm2 になるように上記交流を印加する。
電気化学的粗面化処理(g)においては同様にアノード時の電気量が10〜800C/dm2 、好ましくは10〜150C/dm2 、特に好ましくは15〜50C/dm2 になるように上記交流を印加する。
一方、機械的粗面化処理(a)を電気化学的粗面化処理(d)、(g)の前に行っていない場合は、同様に電気化学的粗面化処理(d)及び(g)においてアノード時の電気量が共に200〜700C/dm2 が好ましく、特に好ましくは350〜600C/dm2 である。
電気化学的粗面化処理(d)及び(g)において、電気量がこの範囲であれば、ピットが均一に生成し、良好な印刷性能が得られる。
【0107】
上記交流としては、正弦(サイン)波電流、矩形波電流、台形波電流、三角波電流等、各種の波形を有する交流電流を用いることができるが、矩形波電流及び台形波電流が好ましく、台形波電流が特に好ましい。
上記交流の周波数は、0. 1〜500Hzが好ましい。
【0108】
上記台形波の一例を図1に示す。図1に示す台形波を用いる場合は、電流が0からピークに達するまでの立上り時間tp’及びtpは0.1〜10msecが好ましく、0. 5〜2msecが特に好ましい。立上り時間tp’及びtpが0. 1msec以上であれば、電源回路のインピーダンスの影響が小さいので、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が不要であるから、電源回路が安価に構成できる。また、立上り時間tp’及びtpが10msec以下であれば、電気化学的粗面化処理(d)及び(g)のいずれにおいても、硝酸電解液又は塩酸電解液中の微量成分の影響を受け難いから、均一な粗面化ができる。
【0109】
電気化学的粗面化処理に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taが交流の周期Tに占める割合ta/T(duty)は、0.33〜0.66が好ましく、0. 45〜0. 55がより好ましく、0.5が特に好ましい。
【0110】
主極に対向するアルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板がカソード反応時の電気量Qcとアノード反応時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.9〜1にあることが好ましい。Qc/Qaがこの範囲であると、粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに耐刷性及び耐汚れ性を両立できる。また、Qc/Qaが1.0を超えると、電極が溶解する場合がある。この電気量比のコントロールは電源が発生する電圧を制御して行うことができる。
図2に示す電解槽を用いるときは、サイリスタThの点弧角を制御して上記電気量比を調整することができる。
【0111】
電気化学的粗面化処理(d)及び(g)においては、電流密度は台形波のピ−ク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに5〜70A/dm2 であり、好ましくは15〜35A/dm2 である。
電気化学的粗面化処理(d)及び(g)において、電気密度がこの範囲であれば、クロスストリークが生じる等の面質劣化を防止することができる。
【0112】
電気化学的粗面化処理(d)及び(g)のいずれにおいても、電解槽としては、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の電解槽が使用できる。
【0113】
図2に、上記ラジアル型電解槽の一例を示す。
図2において、40は電解槽、42は電解槽本体、44は送りローラ、46A及び46Bは主極、48A及び48Bは給液ノズル、54は補助電解槽、56は補助電極、Th1及びTh2はサイリスタ、104はラジアル型電解槽、Wはアルミニウムウェブである。
【0114】
上記ラジアル型電解槽104は、図2に示すように、硝酸電解液又は塩酸電解液が貯留される電解槽42と、電解槽42内部に、水平方向に伸びる軸線の周りに回転可能に配設され、帯状に連続した薄板であるアルミニウムウェブWを矢印aの方向、即ち、図2における左方から右方に向かって送る送りローラ44とを備えている。
【0115】
電解槽42の内壁面は、送りローラ44を囲むように略円筒状に形成され上記内壁面上には、半円筒状の主極46A及び46Bが送りローラ44を挟んで設けられている。主極46A及び46Bは、複数の電極に分割されそれぞれの電極の間には、絶縁性のスペーサーが介装されている。上記電極は、例えば、グラファイトや金属等を用いて形成でき、上記スペーサーは、例えば塩化ビニル樹脂等により形成できる。上記スペーサーの厚さは、1〜10mmが好ましい。また、図2では省略されているが、主極46A及び46Bのいずれにおいても、上記スペーサーにより分割された上記電極のそれぞれが交流電源ACに接続されている。
【0116】
電解槽42の上部には、交流での電気化学的粗面化処理時において、アルミニウムウェブWが導入・導出される開口部42Aが形成されている。電解槽42における開口部42Aの近傍及び主極46Aと主極46Bとの間には、それぞれ電解槽42に硝酸電解液又は塩酸電解液を補充する酸性電解液補充流路48A及び48Bが設けらている。
【0117】
電解槽42の上方における開口部42A近傍には、アルミニウムウェブWを電解槽42内部に案内する上流側案内ローラ50Aと、電解槽42内で電解処理されたアルミニウム板Wを電解槽42の外部に案内する一群の下流側案内ローラ50Bとが配設されている。
【0118】
ラジアル型電解槽104には、電解槽42の下流側に隣接して溢流槽52が設けられている。溢流槽52は、電解槽42から溢流した硝酸電解液又は塩酸電解液を一時貯留し、電解槽42における硝酸電解液の液面高さを一定に保持する機能を有する。
ラジアル型電解槽104においては、更に、電解槽42の下流側に隣接して補助電解槽54が設けられている。
【0119】
補助電解槽54は、電解槽42よりも浅く、底面54Aが平面状に形成され、底面54A上には、棒状の補助電極56が複数本設けられている。
【0120】
補助電極56は、白金等の高耐食性の金属又はフェライト等から形成されたものが好ましく、また、板状であってもよい。
補助電極56は、交流電源ACにおける主極46Bが接続される側に、主極46Bに対して並列に接続され、中間には、サイリスタTh1が、点弧時において、交流電源ACにおける上記側から補助電極56に向う方向に電流が流れるように接続されている。
【0121】
また、交流電源ACにおける主極46Aが接続された側も、サイリスタTh2を介して補助電極56に接続されている。サイリスタTh2は、点弧時に交流電源ACにおける上記側から補助電極56に向う方向に電流が流れるように接続されている。
【0122】
サイリスタTh1及びTh2のいずれを点弧したときも、補助電極56にはアノード電流が流れる。したがって、サイリスタTh1及びTh2を位相制御することにより、補助電極56に流れるアノード電流の電流値を制御でき、したがつて、Qc/Qaも制御できる。
【0123】
図2に示すラジアル型電解槽104の作用について以下に説明する。
図2における左方から矢印aに沿ってラジアル型電解槽104に案内されたアルミニウム板Wは、まず、電解槽42に導入され、次いで、下流側案内ローラ50Bによって補助電解槽54に案内される。
【0124】
電解層42及び補助電解槽54の内部において、アルミニウム板Wは、主極46A及び46Bに印加された交流電流、及び補助電極56に印加されたアノード電流により、主極46A及び46Bに向いた側の面が粗面化される。
【0125】
電解槽は、1槽のみ使用してもよく、2槽以上を直列に使用してもよいが、電気化学的粗面化処理(d)においては、1〜3槽を時期列に使用することが特に好ましく、電気化学的粗面化処理(g)においては、1槽で行うことが特に好ましい。電気化学的粗面化処理(d)において電解槽を2槽使用するときは、第1槽日の電解槽における電流密度及び電気量を第2槽目の電解槽における電流密度及び電気量よりも高くすることが特に好ましい。また、すべての電解槽に同一の波形の交流を印加してもよく、電解槽毎に異なる波形の交流を印加してもよい。どの電解槽にどのような波形の交流を印加するかは、所望のピット形状に応じて決定できる。
【0126】
上記電解槽の内部には、上記アルミニウム板に交流を印加する主極が設けられる。
上記電解槽においては、内部を搬送されるアルミニウム板と上記主極との距離が5〜100mm、好ましくは8〜15mmになるように上記アルミニウム板の走路及び主極を配置することが好ましい。上記主極はカーボンで形成することが好ましい。
【0127】
上記電解槽内を搬送されるアルミニウム板と上記電解槽の内部を流通する硝酸電解液又は塩酸電解液との平均相対流速は、1〜1000m/minが好ましく、15〜300m/minが特に好ましい。上記平均相対流速が上記範囲内である限り、上記硝酸電解液又は塩酸電解液の流通方向は、上記アルミニウム板の搬送方向と同方向及び逆方向のいずれの方向であってもよい。
【0128】
また、上記アルミニウム板の走賂と上記主極との距離、及び上記硝酸電解液及び塩酸電解液の流速は一定に保持されていることが、均一な電気化学的粗面化を行う上で好ましい。
【0129】
フラット型及び縦型の電解槽においては、特公昭61−30036号公報に記載されているように、走行するアルミニウム板が摺動できるように形成された面を内部に設け、静圧を利用して上記アルミニウム板を圧接させつつ走行させることにより、上記距離を一定に保つことができる。また、ラジアル型の電解槽においては、特開平8−300843号公報に記載されているように、内部に、上記アルミニウム板を搬送する直径の大きなローラを設け、上記ローラを取り囲むように、複数の主極を円周上に配設することにより、上記主極とアルミニウム板の距離を一定に保つことができる。
【0130】
また、硝酸電解液及び塩酸電解液の流速を一定にするには、電解槽の内部に液溜り室を設け、内部を走行するアルミニウム板の幅方向に沿って幅1〜5mmの液吹き出し用のスリットを設けた給液ノズルを用いて上記硝酸電解液及び塩酸電解液を供給すればよい。また、複数の液溜り室を設け、それぞれの液溜り室を、バルブと流量計とを備える管路で接続し、上記給液ノズルのそれぞれのスリットから吹き出す液量を調整してもよい。
【0131】
上記電解槽内部を走行するアルミニウム板への給電方式としては、例えばコンダクタローラを用いる直接給電方式と、上記コンダクタローラを用いない液給電方式、換言すれば間接給電方式とが挙げられる。
上記電解槽において、間接給電方式を用いる場合は、変圧器及び可変式誘導電圧調整器等を用いて電流値を制御できる。
【0132】
また、上記電解槽の内部に上記主極のほかに、直流を印加する補助電極を設け、上記補助電極に流れる直流電流の強さを制御することにより、アルミニウム板に加わる陽極時の電気量と陰極時の電気量の比を調整することができる。上記補助電極は、フェライト等により形成できる。
【0133】
補助電極に流れる電流を制御する方法としては、特公平6−37716号公報及び特公平5−42520号公報に記載されているように、サイリスタ及びGTO等の制御整流器による位相制御、及びダイオードと可変抵抗器とによる制御等が挙げられる。上記方法により、上記補助電極に流れる電流を制御すれば、変圧器の偏磁の影響を小さくすることができ、また、電源装置を安価に製作できるから、コスト的に非常に有利である。
【0134】
直接給電方式を用いる場合は、コンダクタローラとしては、特開昭58−177441号公報に記載されているように、工業用アルミニウムを用いて鋳造し、高温均質化処理を施して表面部分のAlFe系昌出物をAl3 Feの単一相に変化させて耐食性を向上させたコンダクタローラを用いることができる。また、特開昭56−123400号公報に記載されているように、フラット型又は縦型の電解槽におけるアルミニウム板の導入部、又は上記導入部と上記アルミニウム板の導出部との両方にコンダクタローラを配設した電解槽を使用することができる。
【0135】
上記電解槽においては、コンダクタローラは、アルミニウム板の上面又は下面に接触するように設けることが可能であるが、アルミニウム板の上面に接触するように設け、ニップ装置にてアルミニウム板に押しつけるようにするのが特に好ましい。アルミニウム板がコンダクタローラに接する長さは、アルミ進行方向に対して1〜300mmが好ましい。アルミニウム板を挟んでコンダクタローラに対向するパスローラはゴム製の胴を有するゴムローラが好ましい。コンダクタローラの押しつけ圧、及びゴムローラの胴の硬度は、コンダクタローラとアルミニウム板との接する箇所においてアークスポットが発生しない条件で任意に設定できる。コンダクタローラがアルミニウム板の上面に接触するように設置することで、コンダクタローラの交換作業・点検作業が簡単になる。コンダクタローラに通電するには、コンダクタローラの端部に同心に回転体を設け、給電ブラシを上記回転体に摺動させながら通電するのが好ましい。
【0136】
上記コンダクタローラは、アークスポットの発生を防止するために、上記硝酸電解液又は塩酸電解液により常に冷却することが好ましい。
【0137】
<アルカリエッチング処理(e)>
電気化学的粗面化処理(d)の後にアルカリエッチング処理(e)を行うことにより、上記電気化学的粗面化処理においてアルミニウム板の表面に生じた水酸化アルミニウムの皮膜を除去することができる。
アルカリエッチング処理(e)はアルカリエッチング処理(b)と基本的に同様であり、相違点のみ以下に説明する。
アルカリエッチング処理(e)におけるアルミニウムの溶解量は、0. 01〜7g/m2 であり、0. 01〜5g/m2 が好ましく、0.01〜3g/m2 が特に好ましい。
この範囲であれば、アルミニウム板の表面積を減らすことなく、ピットの急峻な部分を効率よく溶解することができる。
アルカリ溶液の液温は、30〜80℃が好ましい。
【0138】
<デスマット処理(f)>
上記アルカリエッチング処理(e)においては、アルミニウム板をアルカリ溶液でエッチング処理するので、表面にスマットが生成する。
そこで、上記アルカリエッチング処理(e)の終了後、上記アルミニウム板を酸性溶液に接触させてデスマット処理し、表面のスマットを除去するのが好ましい。
【0139】
デスマット処理(f)はデスマット処理(c)と基本的に同様であり、硫酸を80〜500g/L含有する硫酸溶液が酸性溶液として好適に用いられる点のみが相違する。
【0140】
<アルカリエッチング処理(h)>
電気化学的粗面化処理(g)の後にアルカリエッチング処理(h)を行うことにより、上記電気化学的粗面化処理においてアルミニウム板の表面に生じた水酸化アルミニウムの皮膜を除去できる。
アルカリエッチング処理(h)はアルカリエッチング処理(b)と基本的に同様であり、相違点のみ以下に説明する。
アルカリエッチング処理(h)におけるアルミニウムの溶解量は、0. 001〜6g/m2 であり、0. 01〜5g/m2 が好ましく、0.005〜0.8g/m2 が特に好ましい。
この範囲であれば、アルミニウム板の表面積を減らすことなく、ピットの急峻な部分を効率よく溶解することができる。
アルカリ溶液の水酸化ナトリウム及びアルミニウムイオンの濃度は、それぞれ4〜6質量%及び0.3〜0.7質量%が好ましい。
アルカリ溶液の液温は、25〜80℃が好ましい。
【0141】
<デスマット処理(i)>
上記アルカリエッチング処理(h)は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液でエッチング処理するので、表面にスマットが生成する。
そこで、上記アルカリエッチング処理(h)の終了後、上記アルミニウム板を酸性溶液に接触させてデスマット処理し、表面のスマットを除去するのが好ましい。
【0142】
デスマット処理(i)はデスマット処理(c)と基本的に同様であり、硫酸を80〜500g/L含有する硫酸溶液が酸性溶液として好適に用いられる点が相違する。
また、酸性溶液として、陽極酸化処理(j)で排出される廃液を使用すれば、廃液の量を大幅に削減できるだけでなく、デスマット処理(i)後にアルミニウム板を洗浄することなく、直ちに陽極酸化処理に移行できるため、デスマット処理装置と陽極酸化処理装置との間の洗浄設備を省略できる点でも好ましい。
【0143】
<陽極酸化処理(j)>
本発明においては、陽極酸化処理が、濃度5質量%以上の硫酸とアルミニウムイオンとを含有する酸性溶液中で行われ、酸化皮膜量が1〜5g/m2 以上であるのが好ましい。また、陽極酸化処理の後に、親水化処理及び/又は封孔処理を行うのも好ましい。
アルミニウム板の陽極酸化処理には、硫酸を含有する硫酸溶液が使用される。陽極酸化皮膜の量は、1〜5g/m2 が好適である。陽極酸化皮膜の量が1g/m2 以上であれば、十分な耐刷性が得られるから、平版印刷版の非画像部に傷が付きにくく、したがって、傷の部分にインキが付着するいわゆるきず汚れが生じ難い。陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウム板のエッジ部分に酸化皮膜が集中しやすくなるが、陽極酸化皮膜の量が5g/m2 以下であれば、このような問題が生じることはない。ただし、アルミニウム板のエッジ部分と中心部分の酸化皮膜量の差は1g/m2 以下であることが好ましい。
【0144】
上記硫酸水溶液の組成は、特開昭54−128453号公報及び特開昭48−45303号公報に詳しく記載されているように、硫酸濃度が10〜300g/Lであり、アルミニウムイオンの濃度が1〜25g/Lの硫酸水溶液が好ましく、硫酸濃度が80〜200g/Lであり、アルミニウムイオンの濃度が2〜10g/Lが特に好ましい。
この範囲であれば、デスマット能力を維持しつつ、硫酸溶液によるアルミニウム板の溶解を防止することができる。
液温は30〜60℃が好ましく、特に30〜55℃が好ましい。
【0145】
上記硫酸濃度及びアルミニウムイオン濃度は、比重と電導度とによって制御される。具体的には、上記硫酸溶液の比重及び電導度を連続的又は一定時間毎に測定しつつ、上記硫酸溶液に水を補充したり濃硫酸を補充したりすることにより制御できる。この制御は、上記比重及び電導度の変動幅が±10%以内になるように行うことが好ましい。
【0146】
陽極酸化処理は、通常は、上記アルミニウム板に直流電流を印加して陽極酸化処理を行うが、交流を印加してもよい。
【0147】
直流を用いて陽極酸化処理を行うときは、電流密度は、1〜60A/dm2 が好ましく、5〜40A/dm2 が特に好ましい。アルミニウム板を連続的に陽極酸化する場合は、アルミニウム板の焼けと呼ばれる電流集中を防ぐために、最上流側においては5〜10A/dm2 の低電流密度で陽極酸化処理を行い、下流側に向かって徐々に電流密度を高め、30〜50A/dm2 又はそれよりも高い値にまで電流密度を高くすることが好ましい。電流密度は、5〜15ステップで徐々に上げることが好ましく、各ステップごとに独立した電源装置を設けて上記電源装置のそれぞれにおいて電流密度を制御することにより、下流側に向かって徐々に電流密度を高めることができる。上記アルミニウム板への給電方法は、コンダクタローラを用いない後述する間接給電方式(液給電方式)が好ましい。特開2001−11698号公報にはその一例が示されている。
【0148】
アルミニウム板への給電方式としては、上記電気化学的粗面化処理のときと同様に、直接給電方式と間接給電方式とが挙げられる。
直接給電方式は、高速・高電流密度になるとコンダクタローラとアルミニウムウェブ間のスパーク発生の問題が発生して不利なので、ライン速度が30m/min以下の比較的低速・低電流密度の陽極酸化装置で用いられることが多く、間接給電方式は、ライン速度が30m/minを超える高速・高電流密度の陽極酸化装置で用いられることが多い。
間接給電方式を使用する場合には、連続表面処理技術(総合技術センター、昭和61年9月30日発行)の289頁にあるように、山越型又はストレート型の槽レイアウトを用いることができる。
直接給電方式、間接給電方式ともに、アルミニウムウェブ内の電圧ドロップによるエネルギーロスを少なくする目的で、陽極酸化処理は2つ以上に分離し、それぞれの電解装置の給電槽と酸化槽、又はコンダクタローラと酸化槽の間に直流電源を接続して用いることが特に好ましい。
直接給電方式を用いる場合は、コンダクタローラとしては、上記<電気化学的粗面化処理>で述べたコンダクタローラと同様のものを使用できる。
【0149】
陽極酸化処理においては大電流を流すため、ブスバーに流れる電流により発生する磁界により、アルミニウム板にローレンツ力が働く。その結果ウェブが蛇行する問題が生じるため、特開昭57−51290号公報に記載のような方法を用いることが特に好ましい。
【0150】
また、アルミニウム板には大電流が流れるため、アルミニウム板自身を流れる電流による磁界により、アルミニウム板の幅方向において中央に向かってローレンツ力が働く。その結果アルミニウム板に折れが発生しやすくなるため、陽極酸化処理槽内に直径100〜200mmのパスローラを100〜3000mmピッチで複数設け、1〜15度の角度でラップさせてローレンツ力による折れを防止する方法をとることが特に好ましい。
【0151】
また、陽極酸化皮膜は、アルミニウム板のエッジに近づくほど生成量が多くなり、厚さが厚くなるから、巻き取り装置においてアルミニウム板をうまく巻きとれないという問題が生じることがある。上記問題は、特公昭62−30275公報及び特公昭55−21840号公報に記載されているように、酸性電解液をかくはんすることにより解決できる。酸性電解液をかくはんしても上記問題が十分に解決できない場合には、巻き取り装置を0. 1〜10Hzの周期で5〜50mmの振幅でアルミニウム板の幅方向にオシレートさせれば、上記アルミニウム板の巻取りの問題を解決できる。
【0152】
アルミニウム板に電流を通電するための陽極としては、例えば、鉛、酸化イリジウム、白金、フェライト等を用いることができるが、酸化イリジウムを主体とするものが特に好ましい。酸化イリジウムは熱処理により基材に皮膜できる。基材としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等のいわゆるバルブ金属が用いられるが、チタン又はニオブが特に好ましい。上記バルブ金属は比較的電気抵抗が大きいため、芯材に銅を用い、その周囲にバルブ金属をクラッドすることが特に好ましい。銅の芯材にバルブ金属をクラッドする場合は、あまり複雑な形状のものは作れないので、各パーツに分割して作製した電極部品を、酸化イリジウムを皮膜した後にボルト・ナット等で希望の構造となるように組み立てるのが一般的である。
【0153】
<親水化処理>
陽極酸化処理を施したアルミニウム板には、現像液への陽極酸化皮膜の溶解、非画像部における画像記録層の残膜の抑制、陽極酸化皮膜の強度、親水性、画像記録層と支持体との密着性の向上等を目的として、水洗処理した後、親水化処理を施すことができる。
【0154】
上記親水化処理としては、陽極酸化皮膜をアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と接触させて処理するシリケート処理が挙げられる。
シリケート処理は、アルカリ金属ケイ酸塩濃度が、通常、0.1〜30質量%であり、好ましくは0.5〜15質量%であり、25℃でのpHが10〜13.5であるアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に、上記アルミニウム板を、通常、5〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜50℃で0.5〜120秒間接触させることにより行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等が使用される。
【0155】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、pHが10より低いとゲル化し、13.5より高いと陽極酸化皮膜が溶解するため、上記ゲル化及び陽極酸化皮膜の溶解の問題が生じないpH10〜13.5が好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液のpH調整には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が使用される。
【0156】
上記水溶液には、アルカリ土類金属塩又は第IVA族(4族)金属塩を配合してもよい。
アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸酸塩、ホウ酸塩等の水溶性塩が挙げられる。
第IVA族(4族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属及び第IVA族(4族)金属塩は、単独でも、2種以上の組み合わせでも使用できる。上記アルカリ土類金属及び第IVA族(4族)金属塩の好ましい配合量は、0.01〜10質量%であり、特に好ましくは0.05〜5質量%である。
【0157】
アルミニウム板を上記アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に接触させる方法としては、浸せきさせる方法及びスプレーにより噴き付ける方法等が挙げられるが、これらの方法には限定されない。
【0158】
<封孔処理>
上記アルミニウム板には、上記親水化処理に加え、封孔処理を施すこともできる。
【0159】
封孔処理としては、例えば、水蒸気封孔、沸騰水(熱水)封孔、金属塩封孔(クロム酸塩/重クロム酸塩封孔、酢酸ニッケル封孔等)、油脂含浸封孔、合成樹脂封孔、低温封孔(赤血塩やアルカリ士顛塩等による)等、陽極酸化皮膜の封孔処理として公知の処理が挙げられるが、印刷版用支持体としての性能(画像記録層との密着性や親水性)、高速処理、低コスト、低公害性等の面から、水蒸気封孔が好ましい。
【0160】
水蒸気封孔としては、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続又は非連続的に、相対湿度70%以上、蒸気温度95℃以上で2〜180秒程度陽極酸化皮膜に接触させる特開平4−176690号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0161】
他の封孔処理法としては、例えば、熱水又はアルカリ水溶液への浸せき処理、熱水又はアルカリ水溶液の噴き付け処理、亜硝酸塩水溶液への浸せき処理、及び亜硝酸塩水溶液の噴き付け処理等が挙げられる。上記亜硝酸塩水溶液への浸せき処理及び噴き付け処理は、上記熱水又はアルカリ水溶液への浸せき処理及び噴き付け処理に代えて行ってもよく、上記処理に引き続いて行ってもよい。
【0162】
上記亜硝酸塩としては、周期律表のIA族(1族)、IIA族(2族)、IIB族(12族)、IIIB族(13族)、IVB族(14族)、IVA族(4族)、VIA族(6族)、VIIA族(7族)、VIII族(8〜10族)の金属の亜硝酸塩である金属亜硝酸塩、及び亜硝酸アンモニウムが挙げられる。
【0163】
上記金属亜硝酸塩としては、例えばLiNO2 、NaNO2 、KNO2 、Mg(NO2 2 、Ca(NO2 2 、Zn(NO2 2 、Al(NO2 3 、Zr(NO2 4 、Cr(NO2 3 、Co(NO2 2 、Mn(NO2 2 、Ni(NO2 2 等が好ましく、特にアルカリ金属硝酸塩が好ましい。亜硝酸塩は2種以上を併用することもできる。
【0164】
処理条件は、上記アルミニウム板の状態及び亜硝酸塩の種類により異なり一義的には決定できないが、例えば亜硝酸ナトリウムを用いた場合には、濃度は一般的には0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜2質量%である。浴温度は一般的には室温から約100℃前後までが好ましく、より好ましくは60〜90℃である。処理時間は一般的には15〜300秒が好ましく、より好ましくは10〜180秒である。
【0165】
亜硝酸塩水溶液のpHは8.0〜11.0に調整されていることが好ましく、8.5〜9.5に調整されていることが特に好ましい。亜硝酸塩水溶液のpHを上記の範囲に調整するには、例えばアルカリ緩衝液等を用いることにより好適に調整することができる。該アルカリ緩衝液としては、例えば炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液、塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、塩酸と炭酸ナトリウムの混合水溶液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液等を好適に用いることができるが、これらには限定されない。また、上記アルカリ緩衝液はナトリウム塩以外のアルカリ金属塩、例えばカリウム塩等も用いることができる。
【0166】
上記親水化処理及び封孔処理の少なくとも一方を施した後、画像記録層との密着性を更に向上させるために、特開平5−278362号公報に記載されている酸性水溶液処理と親水性下塗を行ってもよく、特開平4−282637号公報や特願平6−108678号明細書(特開平07−314937号公報)に記載されている有機層を設けてもよい。
【0167】
<水洗処理>
上記処理のそれぞれにおいて使用された薬液や研磨材をアルミニウム板表面から除去すべく、上記各処理の間に、アルミニウム板を水洗処理する水洗工程を設けてもよい。
【0168】
上記水洗工程においては、水洗処理は、種類及び組成の異なる薬液を使用する処理槽の間において行うのが普通である。上記アルミニウム板が一の処理槽から出て洗浄工程に入る時間、及び上記洗浄工程が終了してから上記一の洗浄槽に隣接する次の処理槽に入るまでの時間は、10秒以下が好ましく、0.1〜10秒が特に好ましい。上記時間が10秒以下であれば、上記アルミニウム板の表面の化学的な変性がそれほど進まないから、処理ムラが発生し難い。また、上記一の処理槽を出てから次の処理槽までのアルミニウム板の通過時間は、15秒以下が好ましく、特に5秒以下が好ましい。上記通過時間が15秒以下であれば、上記アルミニウム板の表面の化学的な変性が進むことがほとんどなく、次工程で均一な粗面化処理を行うことができる。
【0169】
上記アルミニウム板の水洗工程においては、ニップローラにて液切りした表面を、水洗槽において、スプレーチップから水を噴射して洗浄するのが一般的である。水は下流に向かって45〜90度の角度で噴射することが好ましい。
水の噴射圧力は、噴射ノズル直前の圧力で0.5〜5kg/cm2 が好ましく、水温は10〜80℃が好ましい。
上記アルミニウム板の搬送速度は20〜200m/minが好ましい。
アルミニウム板に噴き付ける洗浄水の量は、洗浄工程1回あたり0.1〜10L/m2 が好ましい。
【0170】
上記水洗槽においては、アルミニウム板の表面及び裏面に、最低2本以上のスプレー管から洗浄水を噴射することが好ましい。一つのスプレー管にはピッチ50〜200mmの間隔でスプレーチップを5〜30本設置することが好ましい。スプレーチップの噴霧角度は10〜150度が好ましく、アルミニウム板とスプレーチップ噴射面の間隔は10〜250mmが好ましい。スプレーチップの噴霧の断面形状(スプレーパターン)は環状、円形、楕円形、正方形、長方形等があるが、円形・惰円形又は正方形・長方形が好ましい。流量分布(アルミニウム板の表面における噴霧の水量分配状態)は環状分布、均等分布、山型分布等があるが、スプレーチップをスプレー管に複数並べて使用するときは、幅全域での均一な流量分布を容易にする山型分布が好ましい。流量分布は噴霧圧力とスプレーチップとアルミニウム板の距離により変化する。噴霧の粒子径はスプレーチップの構造、噴霧圧力、噴霧量によって変わるが、10〜10000μmが好ましく、特に100〜1000μmが好ましい。スプレーノズルの材質は高速で流れる液体に対して耐摩耗性があることが好ましく、真鍮、ステンレス、セラミック等が用いられるが、セラミックが特に好ましい。
【0171】
スプレーチップを設置したスプレーノズルは、アルミニウム板の進行方向に対して45〜90度の角度で配置することができるが、スプレーパターンの中心線のうち長さが長い方の中心線がアルミニウム板の進行方向と直角になるようにすることが好ましい。
【0172】
水洗処理の時間は、1回の水洗工程あたり10秒以下が工業的に好ましく、特に0. 5〜5秒が好ましい。
【0173】
<パスローラの材質>
上記各処理を行う処理槽及び水洗槽においては、アルミニウム板を搬送又は支持するパスローラを設けることができる。
上記パスローラとしては、鉄鋼ライン、メッキライン、電解コンデンサ製造ライン、PS版製造ライン等の連続生産ラインに用いる表面にメッキ処理又はライニング処理された金属ローラ、樹脂ローラ、ゴムローラ、不織布ローラ等を用いることができる。
【0174】
パスローラの材質、表面の物性値は、上記処理に使用される薬液やアルミニウム板の表面の状態に応じて、要求される耐食性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等を考慮して選定する。
金属ローラとしては、ハードクロムメッキローラが一般的に用いられる。
ゴムローラとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロブレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム等のゴム類、及び上記ゴム類に微量の添加物を添加したものから作製した胴を有するローラを用いることができる。ゴムローラの胴の硬度は60〜90が特に好ましい。
【0175】
また、アルミニウム板が濡れて滑りやすい箇所において、アルミニウムウェブの搬送速度を制御するときには、アルミニウムウェブが濡れた状態でもスリップし難い不織布ローラを用いることが特に好ましい。上記箇所においてゴムローラを用いるときは、ローラに補助駆動用のモータを設けることが特に好ましい。
【0176】
上記した粗面化処理、特に、特定条件下の電気化学的粗面化処理によりで生成するピット形状の均一性を高めることができるため平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性に優れる。また均一なピット中に入り込んでいる画像記録層の体積(アルミニウム板上に設けられる画像記録層の膜厚)も均一にできるため、平版印刷版としたときの露光安定性に優れる。
【0177】
[平版印刷版原版]
つぎに、本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版は、本発明の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる。
【0178】
<下塗層>
本発明の平版印刷版原版においては、上記のようにして得られた本発明の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設ける前に、必要に応じて、例えば、ホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層や、有機下塗層を設けてもよい。
【0179】
有機下塗層に用いられる有機化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体;ポリアクリル酸;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩;黄色染料が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0180】
有機下塗層は、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶媒、又はそれらの混合溶剤に、上記有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布し乾燥することにより設けられる。上記有機化合物を溶解させた溶液の濃度は、0.005〜10質量%であるのが好ましい。塗布の方法は、特に限定されず、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等のいずれの方法も用いることができる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが好ましく、5〜100mg/m2 であるのがより好ましい。上記範囲であると、耐刷性がより良好になる。
【0181】
<画像記録層>
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて平版印刷版原版とすることができる。画像記録層は、例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、機上現像可能な無処理タイプが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像記録層について説明する。
【0182】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光層に好適に用いられる感光性樹脂組成物としては、例えば、o−キノンジアジド化合物と水不溶性かつアルカリ可溶性の高分子化合物(以下、「アルカリ可溶性高分子化合物」という。)とを含有する組成物が挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂又はクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系樹脂が挙げられる。
更に感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報の[0031]に記載されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0183】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光層に好適に用いられる感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性又は膨潤性の高分子化合物(以下、「結合剤」という。)とを含有する組成物が挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩又はテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
好適な結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸又はマレイン酸を必須成分として含む共重合体、具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、及び、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
更に感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物や、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型感光層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることが好ましい。
【0184】
<フォトポリマータイプ>
フォトポリマータイプの感光層に好適に用いられる光重合型感光性組成物(以下、「光重合性組成物」という。)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という。)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0185】
光重合性組成物に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤又は2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好ましい。
光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子結合剤としては同公報の[0036]〜[0063]に記載されている物が有用である。
光重合性組成物には、同公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることが好ましい。また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコール及びその共重合体が挙げられる。
更に上記の感光層の下層として、特開2001−228608号公報の[0131]〜[0165]に記載されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。
【0186】
<サーマルポジタイプ>
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。
アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、及びこれらの混合物を包含し、特に、(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましい。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−及びm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。更に詳しくは特開2001−305722号公報の[0023]〜[0042]に記載されている高分子が好ましく用いられる。
【0187】
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料又は染料が好ましい。染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、例えば、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料が挙げられる。
サーマルポジタイプの感熱層に用いられる組成物には、上記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。詳しくは特開2001−305722号公報の[0053]〜[0059]に記載されている化合物が好ましい。
サーマルポジタイプの感熱層は単層であってもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造であってもよい。
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が挙げられる。
【0188】
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される上記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されたものが挙げられ、(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いられるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されたものが挙げられ、(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましく、水又は弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基又はアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度及び現像性のバランスに優れており、好適である。(C)ラジカル重合性化合物及び(D)バインダーポリマーに関しては同公報の[0036]〜[0060]に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤) を加えることも好ましい。
【0189】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋型の層(酸架橋層)が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、「架橋剤」という。)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤としては、(i)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物、(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
【0190】
<無処理タイプ>
無処理タイプの感熱層は、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、、スルホン酸発生ポリマー含有型等のタイプがあり、本発明は特に印刷機上で現像する無処理タイプに好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型は、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子が(J)親水性高分子マトリックス中に分散され、露光部の熱により疎水性のポリマーが溶融し、互いに融着してポリマーによる疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子(以下、「微粒子ポリマー」という。)は、微粒子ポリマー同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散する、親水性表面を有する微粒子ポリマーが好ましい。微粒子ポリマーとしては、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号、同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等のモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。中でも、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを用いるのが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーは、微粒子を構成するポリマー自体が親水性であるもの、ポリマーの主鎖又は側鎖に親水性基を導入して親水性を付与したもの等のポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマー、親水性オリゴマー又は親水性低分子化合物を、微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものを包含する。微粒子ポリマーとしては、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーがより好ましい。上記したような微粒子ポリマーは、(J)親水性高分子マトリックス中に分散させることで、機上現像する場合には機上現像性が良好となり、更に感熱層自体の皮膜強度も向上する。
【0191】
マイクロカプセル型としては、特開2000−118160号公報に記載されているタイプや、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好ましく挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基又はsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマー等が挙げられる。
無処理タイプの感熱層に親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強度も向上する。また、親水性樹脂を架橋硬化させて、現像処理不要の平版印刷版原版を得ることができる。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものや、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。親水性樹脂の具体例としては、上記した(J)親水性高分子マトリックスとして用いられる親水性樹脂として列挙したものが挙げられる。
中でも、ゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの感熱層には、光熱変換物質を添加することが必要である。光熱変換物質は、波長700nm以上の光を吸収する物質であればよく、上記したサーマルポジタイプに用いられる染料と同様の染料が特に好ましい。
【0192】
<バックコート層>
このようにして、平版印刷版用支持体上に、各種の画像記録層を設けて得られた平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、平版印刷版を重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなるバックコート層を設けることができる。
<塗布方法>
上記感光性樹脂溶液、ネガ型レーザ画像記録層形成液、ボジ型レーザ画像記録層形成液、及び光重合型レーザ画像記録層形成液を上記平版印刷版用支持体の粗面化面に塗布する方法としては、コーティングロッドを用いる方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、スライドビードコーターを用いる方法等、従来公知の方法が使用でき、また公知の条件に従って行うことができる。
【0193】
上記感光性樹脂溶液、ネガ型レーザ画像記録層形成液、ボジ型レーザ画像記録層形成液、及び光重合型レーザ画像記録層形成液を塗布後のアルミニウム板を乾燥する装置としては、特開平6−63487号公報に記載の、乾燥装置内にパスロールを配置し、上記パスロールで搬送しつつ乾燥するアーチ型ドライヤー、上下からノズルによりエアーを供給し、ウェブを浮上させながら乾燥するエアードライヤー、高温に加熱された媒体からの輻射熱で乾燥する輻射熱ドライヤー、及びローラを加熱し、上記ローラとの接触による伝導伝熱により乾燥するローラドライヤー等がある。
【0194】
[平版印刷版]
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
一般には、像露光を行う。像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム・ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム・カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルタイプ、コンベンショナルタイプ及びフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。平版印刷版原版に用いられる好ましい現像液は、アルカリ現像液であれば特に限定されないが、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液が好ましい。また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像することもできる。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、該公報に記載されている内容を用いることができる。また、平版印刷版原版をアルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像することもできる。
【0195】
このようにして得られる平版印刷版は、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現できる。
【0196】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.アルミニウム板の調製
第1表及び第2表に示す組成の合金成分の鋳塊を面削した後、均質化処理を行い、その後、順に熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延を行い、板厚0.24mmのアルミニウム板1〜26を得た。このアルミニウム板1〜26について、アルミニウム板の表面に存在する円相当直径が1μm以上である金属間化合物の単位面積あたりの個数、アルミニウム板の表面に存在する金属間化合物の個数に対する円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の個数の割合(存在率)、及び、アルミニウム板中に存在する単体Siの含有量を以下のようにして測定した。
結果を第1表及び第2表に示す。表中、「−」は該当する成分を含有しないことを表す。
【0197】
(1)金属間化合物の単位面積あたりの個数及び円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の存在率
アルミニウム板の表面の油分をアセトンでふき取ったものを測定試料として用いた。
EPMA(日本電子社製、JEOL SUPERPROBE JXA−8800M)を用い、加速電圧20.0kV、照射電流9.5×10−9Aの条件で高感度反射電子検出器を用いた組成像を倍率500倍で撮影し、インスタント写真を得た。
つぎに、得られた反射電子写真(インスタント写真)をスキャンした後、付属のScanGear CS−Uにてグレースケール(14ビット)、出力解像度75dpiでPhotoshop 5.0に出力してTIF形式で保存し、MS−Paint(マイクロソフト社製)を用いてbmf(ビットマップファイル)形式に変換した。
このbmf形式ファイルを画像解析ソフトImageFactory Ver.3.2日本語版(旭ハイテック社製)に読み込んで画像解析を行った後、画像の静的二値化処理を行い、白く抜けた金属間化合物に対応する部分をカウントし、特徴量として円相当直径(等価円直径)を指定して粒度分布を得た。
この結果から、金属間化合物の単位面積あたりの個数及び円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の存在率を算出した。
【0198】
(2)アルミニウム板中の単体Siの含有量
容量1000mLのコニカルビーカーに塩酸(塩化水素:水=1:1)250mLを採り、アルミニウム板試料10gを秤量し約1g程度ずつ塩酸中に投入し、加熱して分解させた。試料のほとんどが分解した後、過酸化水素水(30質量部)1mLを加え、更に水を投入して液量を約500mLとした後、約1分間煮沸して試料を完全に分解させた。
流水中で冷却した後、ポリカーボネート製メンブランフィルタ(ポアサイズ0.1μm、フィルタサイズ47mm)を用いて不溶解残渣を吸引ろ過し、ビーカー、ろ過筒、フィルタ及び残渣を蒸留水でよく洗浄した後、フィルタと残渣を5種Aろ紙1枚で包んで白金るつぼに入れ、該白金るつぼをバーナで加熱し灰化させた。
約1000℃で30分間強熱した後、シリカゲルデシケータ中で室温まで冷却し質量を測定した。この操作を恒量となるまで繰り返し、フッ化水素酸処理前の質量とした。
恒量となった後、硫酸(1+5)数滴を加えてるつぼ中の酸化物を湿らせ、フッ化水素酸(40質量%)約20mLを加え、熱板状で徐々に加熱して乾固させた後、約1000℃で30分間強熱した。シリカゲルデシケータ中で室温まで冷却し、質量を測定した。この操作を恒量となるまで繰り返し、フッ化水素酸処理後の質量とした。
この全減量が二酸化ケイ素(SiO2 )量にあたる。
一方、アルミニウム板試料を用いずに、上記と同量の試薬を用いた空試験(ブランク)を行い、空試験値として、二酸化ケイ素(SiO2 )量を求めた。
アルミニウム板中の単体Siの含有量(質量%)は、次式[1]により算出した。
【0199】
単体Si含有量(質量%)=(W1 −W2 −W3 )×(0.4674/W0 )×100  [1]
【0200】
ここで、W0 は試料秤取り量(g)、W1 はフッ化水素酸処理前の質量(g)、W2 はフッ化水素酸処理後の質量(g)、W3 は空試験値(g)である。
【0201】
第1表及び第2表から明らかなように、アルミニウム板1〜13は、いずれも、それらに含まれる異元素の含有量、金属間化合物の単位面積あたりの個数及び円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の存在率ならびに単体Siの含有量がすべて本発明の範囲内であったが、アルミニウム板14〜26は、これらの物性値のうち少なくとも一つは本発明の範囲外であった。
【0202】
【表1】
Figure 2004009631
【0203】
【表2】
Figure 2004009631
【0204】
2.平版印刷版用支持体の製造
第1表及び第2表に示す組成の各アルミニウム板(1〜13及び14〜26)に、下記の表面処理A〜Eのいずれかを施し、各平版印刷版用支持体を得た。
第1表及び第2表に示す組成の各アルミニウム板(1〜13及び14〜26)に、下記の表面処理Aを施して得た平版印刷版用支持体を実施例1−1〜1−13及び比較例1−1〜1−13、各アルミニウム板(1〜13)に同様に表面処理Bを施して得た支持体を実施例2−1〜2−13とし、各アルミニウム板(1〜13)に同様に表面処理Cを施して得た支持体を比較例2−1〜2−13、同様に表面処理Dを施して得た支持体を比較例3−1〜3−13、同様に表面処理Eを施して得た支持体を比較例4−1〜4−13、同様に表面処理Fを施して得た支持体を比較例5−1〜5−13とする。
【0205】
(1)表面処理A
表面処理Aは、下記(a)〜(l)の各処理を連続的に行うことにより行った。なお、各工程の粗面化処理の後には水洗処理を行った。粗面化処理及び水洗処理の後にはニップローラによる液切りを行った。また、同じ種類の液を使った処理が連続して行われるケースでは、その工程の間での水洗は省略した。
<機械的粗面化処理(a)>
平均粒径12μmのパミスを研磨材として含有する研磨材スラリーを、スプレー管にてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。
ローラ状ブラシにおけるブラシ毛の材質は6・10ナイロンであった。上記ブラシ毛は、直経300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。ローラ状ブラシは3本使用した。上記ローラ状ブラシのそれぞれに2本の支持ローラを設けた。上記支持ローラの直径は200mmであり、距離は300mmであった。ブラシ毛の直径は0.5mmであり、毛長は300mmであった。
【0206】
上記ローラ状ブラシの押し込み量は、上記ローラ状ブラシを回転させる駆動モータの負荷の、上記ローラ状ブラシを押し付ける前の前期駆動モータの負荷に対する増大量が一定になり、かつ、粗面化処理後のアルミニウム板の平均表面粗さが0.4〜0.5μmになるように制御した。オシレートの振幅は100mmであった。
【0207】
上記機械的粗面化処理においては、上記研磨材スラリーを一定の時間間隔で採取して比重を測定し、上記比重の変動幅が±10%以内になるように研磨材を補充して研磨材濃度を制御した。
【0208】
<アルカリエッチング処理(b)>
機械的粗面化処理後のアルミニウム板に、スプレー管から、NaOH18質量%及びアルミニウムイオン7.5質量%を含有するアルカリ溶液(60℃)を噴き付けて、粗面化面におけるアルミニウム溶解量が8g/m2 になるようにアルカリエッチング処理を行った。
なお、上記アルカリ溶液の濃度の制御については、上記スプレー管に供給されるアルカリ溶液を一定の時間間隔で採取して比重と導電度とを測定し、上記比重及び導電度の変動幅が±10%以内になるように上記アルカリ溶液に水又は水酸化ナトリウムを補充することにより行った。
【0209】
<デスマット処理(c)>
液温30℃、硝酸濃度1質量%の酸性溶液を用いて行った。デスマット液はスプレーにて噴き付けて2秒間デスマット処理を行った。
【0210】
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
液温40℃、硝酸濃度1質量%の硝酸水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を0.5質量%に調整した硝酸電解液中で、図2に示す電解槽を使用し、図1に示す波形の台形波電流を印加して電気化学的粗面化処理を行った。上記台形波電流の周波数は60Hzであり、上記アルミニウム板のアノード反応時の電気量220C/dm2 、及び電流密度は交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時25A/dm2 であった。交流のduty(ta/T)は0.5であり、立上り時間tp’及びtpは0.3msecであった。カーボンの主極に対向する部分でのアルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和Qaとカソード反応時の電気量総和Qcとの比Qc/Qaは0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板が電解槽を通過する間にアルミニウム板に加わった電気量であって上記アルミニウム板がアノード反応した電気量の総和である。
【0211】
上記硝酸電解液の硝酸濃度は、一定の時間間隔で上記硝酸電解液の音速と電導度とを測定し、上記音速と電導度との変動幅が±10%以内になるように濃硝酸又は水を補充して制御した。
【0212】
<アルカリエッチング処理(e)>
機械的粗面化処理後のアルミニウム板に、スプレー管から、NaOH20質量%及びアルミニウムイオン7.5質量%を含有するアルカリ溶液(35℃)を噴き付けて、粗面化面におけるアルミニウム溶解量が0.9g/m2 になるようにアルカリエッチング処理を行った。
【0213】
アルカリエッチング処理(b)と同様の方法で上記アルカリ溶液の水酸化ナトリウムの濃度を制御した。
【0214】
<デスマット処理(f)>
液温40℃、硫酸濃度15質量%の酸性溶液を用いてスプレーにて噴き付けて2秒間デスマット処理を行った。
【0215】
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
液温30℃、塩酸濃度0.2質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量の塩酸水溶液中で、図2に示す電解槽を使用し、図1に示す波形の台形波電流を印加して電気化学的粗面化処理を行った。上記台形波電流の周波数は60Hzであり、上記アルミニウム板のアノード反応時の電気量30C/dm2 、及び電流密度は交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時25A/dm2 であった。交流のduty(ta/T)は0.5であり、立上り時間tp’及びtpは0.5msecであった。カーボンの主極に対向する部分でのアルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和Qaとカソード反応時の電気量総和Qcとの比Qc/Qaは0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板が電解槽を通過する間にアルミニウム板に加わった電気量であって上記アルミニウム板がアノード反応した電気量の総和である。
【0216】
上記塩酸電解液の塩酸濃度は、一定の時間間隔で上記塩酸電解液の音速と電導度とを測定し、上記音速と電導度との変動幅が±10%以内になるように濃塩酸又は水を補充して制御した。
【0217】
<アルカリエッチング処理(h)>
機械的粗面化処理後のアルミニウム板に、スプレー管からNaOH濃度4質量%のアルカリ溶液(45℃)を噴き付けて、粗面化面におけるアルミニウム溶解量が0.1g/m2 になるようにアルカリエッチング処理を行った。
なお、アルカリエッチング処理(b)と同様の方法で上記アルカリ溶液の水酸化ナトリウムの濃度を制御した。
【0218】
<デスマット処理(i)>
液温30℃、硫酸濃度10質量%の酸性溶液を用いて、スプレーにて噴き付けて4秒間デスマット処理を行った。
【0219】
<陽極酸化処理(j)>
硫酸濃度10質量%、液温30℃の硫酸溶液中で直流を印加して陽極酸化処理し、表面の皮膜量が2.6g/m2 になるように陽極酸化皮膜を形成した。
なお、陽極酸化処理に使用した硫酸溶液を一定時間毎に採取して比重と電導度とを測定し、上記比重及び電導度の変動幅が±10%以内になるように濃硫酸又は水を補充して上記硫酸溶液の硫酸濃度を制御した。
【0220】
<封孔処理(k)>
100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間蒸気封孔処理した。
【0221】
<親水化処理(l)>
ケイ酸ナトリウム1質量%水溶液で40℃で7秒間浸せき処理し、親水化処理を行った。その後、乾燥させた。
【0222】
(2)表面処理B
各処理において以下のように条件を変更した以外は、表面処理Aと同様にして表面処理Bを行った。
【0223】
<アルカリエッチング処理(b)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を23質量%とし、アルミニウム板の溶解量を9g/m2 とした。
<デスマット処理(c)>
酸性溶液の硝酸濃度を0.8質量%とした。
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
硝酸電解液の液温を45℃とし、電流密度を30A/dm2 とし、アルミニウム板に加わる電気量を195C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(e)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を24質量%とし、アルミニウム板の溶解量を7.8g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
塩酸水溶液の液温を35℃とし、塩酸濃度を0.4質量%とし、電流密度を20A/dm2 とし、電気量の総和を26C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(h)>
アルミニウム板の溶解量を0.001g/m2 とした。
【0224】
(3)表面処理C
各処理において以下のように条件を変更した以外は、表面処理Aと同様にして表面処理Cを行った。
【0225】
<機械的粗面化処理(a)>
パミスの粒子の平均粒径を0.8μmとした。
<アルカリエッチング処理(b)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を25質量%とした。
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
電流密度を4A/dm2 とし、アルミニウム板に加わる電気量を170C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(e)>
アルミニウム板の溶解量を0.2g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
塩酸水溶液の塩酸濃度を0.8質量%とし、電流密度を3A/dm2 とし、電気量の総和を50C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(h)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を9質量%とし、アルミニウム板の溶解量を0.01g/m2 とした。
<デスマット処理(i)>
酸性溶液の硫酸濃度を30質量%とし、液温を60℃とした。
【0226】
(4)表面処理D
各処理において以下のように条件を変更した以外は、表面処理Aと同様にして表面処理Dを行った。
【0227】
<機械的粗面化処理(a)>
パミスの粒子の平均粒径を0.8μmとした。
<アルカリエッチング処理(b)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を27質量%とし、アルミニウム板の溶解量を9g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
硝酸水溶液の硝酸濃度を1.5質量%とし、電流密度を45A/dm2 とし、アルミニウム板に加わる電気量を200C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(e)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を15質量%とし、アルミニウム板の溶解量を2g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
塩酸水溶液の塩酸濃度を1.5質量%とし、アルミニウムイオン濃度を0.3質量%とし、電流密度を35A/dm2 とし、電気量の総和を5C/dm2 とした。
<デスマット処理(i)>
酸性溶液の硫酸濃度を15質量%とした。
【0228】
(5)表面処理E
各処理において以下のように条件を変更した以外は、表面処理Aと同様にして表面処理Eを行った。
【0229】
<機械的粗面化処理(a)>
パミスの粒子の平均粒径を75μmとした。
<アルカリエッチング処理(b)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を20質量%とし、アルミニウム板の溶解量を9g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
硝酸水溶液の硝酸濃度を1.8質量%とし、アルミニウム板に加わる電気量を900C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(e)>
アルミニウム板の溶解量を2.5g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
電気量の総和を15C/dm2 とした。
<デスマット処理(i)>
酸性溶液の硫酸濃度を15質量%とし、液温を50℃とした。
【0230】
(6)表面処理F
各処理において以下のように条件を変更した以外は、表面処理Aと同様にして表面処理Fを行った。
【0231】
<機械的粗面化処理(a)>
パミスの粒子の平均粒径を75μmとした。
<アルカリエッチング処理(b)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を20質量%とし、アルミニウム板の溶解量を810g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)>
アルミニウム板に加わる電気量を200C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(e)>
アルミニウム板の溶解量を2g/m2 とした。
<電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)>
塩酸水溶液の塩酸濃度を0.9質量%とし、アルミニウムイオン濃度を0.7質量%とし、電気量の総和を60C/dm2 とした。
<アルカリエッチング処理(h)>
アルカリ溶液のNaOH濃度を5質量%とし、アルミニウム板の溶解量を0.9g/m2 とした。
<デスマット処理(i)>
酸性溶液の硫酸濃度を15質量%とし、液温を60℃とした。
【0232】
3.平版印刷版用支持体の表面形状
得られた平版印刷版用支持体の中心線平均粗さRa 及び最大高さRmax を以下のようにして測定した。実施例1−1〜1−13及び比較例1−1〜1−13についての結果を第3表及び第4表に示す。
【0233】
(1)中心線平均粗さRa 
触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さを5回測定し、その平均値を中心線平均粗さRa とした。
2次元粗さ測定の条件は、カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μmとした。
【0234】
(2)最大高さRmax 
触針式粗さ計(例えば、Surfcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、JIS B0601−1994に準拠して測定した。
2次元粗さ測定の条件は、カットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm、基準長さ3.0mm、走査速度0.3mm/sec、触針径2μmとした。
【0235】
得られた平版印刷版用支持体の製造過程(硝酸電解処理後及び塩酸電解処理後)におけるピットの均一性を下記の方法で評価した。結果を第3表及び第4表に示す。
【0236】
(3)硝酸電解処理(d)で生成するピットの均一性
上記電気化学的粗面化処理(硝酸電解処理)(d)の後、硫酸溶液でデスマット処理して、EMPA(日本電子社製、JEOL SUPERPROBE JXA−8800M)を用いて、加速電圧20.0kV、照射電流9.5×10−9Aの条件で高感度反射電子検出器を用いて、組成像を倍率1500倍で撮影した。得られたインスタント写真から目視によりピットの均一性を評価した。
ピットが均一であったものを「均一」、不均一であったものを「不均一」とし、その中間を「やや不均一」とし、生成したピットが溶解していたものを「ピット溶解」とし、ピットが生成していないものを「未エッチ」とした。
【0237】
(4)塩酸電解処理(g)で生成するピットの均一性
上記電気化学的粗面化処理(塩酸電解処理)(g)の後、上記(3)と同様の方法により、ピットの均一性を評価した。
【0238】
4.平版印刷版原版の調製
上記各平版印刷版用支持体に、画像記録層1〜8を別々に設けて平版印刷版原版とした。なお、得られた各平版印刷版原版には、各画像記録層の説明の箇所に併記する画像形成処理及び現像処理を施して、平版印刷版とした。
【0239】
[画像記録層1]
平版印刷版用支持体に、下記組成の下塗液を塗布し80℃、30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は30mg/m2 であった。
<下塗液>
・アミノエチルホスホン酸                    0.10g
・フェニルホスホン酸                        0.15g
・β−アラニン                              0.10g
・メタノール                                  40g
・純  水                                       60g
ついで、下記組成の感光層塗布液を調製し、下塗りした平版印刷版用支持体に、この感光層塗布液を塗布し、110℃で1分間乾燥させて感光層を形成させた。
【0240】
Figure 2004009631
Figure 2004009631
【0241】
このようにして塗布された感光層の上に特公昭61−28986号公報実施例1に記載の方法に基づいて、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸ソーダ(=68/20/12)の共重合体水溶液を静電スプレーすることによりマット層を設けた。
得られた感光性平版印刷版原版を、真空焼枠中で、透明ポジティブフィルムを通して1mの距離から3kWのメタルハライドランプにより、50秒間露光を行ったのち、現像液としてSiO2 /Na2 Oのモル比が1.74のケイ酸ナトリウムの5.26質量%水溶液(pH12.7)を、リンス液として富士写真フイルム(株)製FR−3(1:7)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Dに通して処理して平版印刷版を得た。
このポジ型感光性平版印刷版について、印刷評価した。印刷機はハイデルベルグ社製SOR−Mを、湿し水は富士写真フイルム(株)製EU−3(1:100)にイソプロパノールを10%添加したものを、インキは東洋インキ(株)製マークファイブニュー墨を用いた。
【0242】
[画像記録層2]
平版印刷版用支持体に、下記の塗布液を2g/m2 となるように塗布して乾燥し、下地層を形成した。
Figure 2004009631
【0243】
アクリルポリマーIは、以下の方法で合成した。
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド60.3g、アクリロニトリル10.0g及びエチルアクリレート46.0gをジメチルホルムアミド232.6gに溶解し、窒素気流下、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.224gを重合開始剤として用い、65℃で7時間攪拌した。反応液を放冷した後、水5L中に再沈した。析出したポリマーを濾取し、乾燥することでアクリルポリマーIを110.4g(収率95%、重量平均分子量52,000)を得た。
【0244】
更に以下のマット形成樹脂液を噴き付けてマット層を形成した。マット層形成用樹脂液としてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸(仕込質量比65:20:15)共重合体の一部をナトリウム塩とした12%水溶液を調整し、回転霧化静電塗布機で霧化頭回転数25,000rpm、樹脂液の送液量は40mL/分、霧化頭への印加電圧は−90kV、塗布時の周囲温度は25℃、相対湿度は50%とし、塗布後2.5秒で塗布面に蒸気を噴き付けて湿潤させ、ついで湿潤した3秒後に温度60℃、湿度10%で5秒間噴き付けて乾燥させた。
【0245】
このようにした作製した平版印刷版原版に原稿フィルムを通して1mの距離から3kWのメタルハライドランプを用いて、60秒間露光した。
【0246】
<現像液及び現像処理>以下の組成を有する各液を調整して用いた。
Figure 2004009631
Figure 2004009631
【0247】次に浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機PS−900D(富士写真フイルム(株)製)の現像槽に、上記各現像液を20L仕込み、30℃に保温した。PS−900Dの第二浴目には水道水を8L、第三浴目にはフィニッシング液:水=1:1希釈したフィニッシング液を8L仕込んだ。この様に調整したPS−900Dに前述の露光済みの平版印刷版を通し、現像処理した。
この平版印刷版について、印刷評価を行った。
【0248】
5.平版印刷版の評価
上記各平版印刷版原版から得られた各平版印刷版について、以下の評価を行った。実施例1−1〜1−13及び比較例1−1〜1−13についての結果を第3表及び第4表に示す。なお、第3表及び第4表においては、同一の支持体について、画像記録層1〜8のそれぞれを有する平版印刷版を用いて、総合的に評価を行った。
(1)耐刷性
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業(株)製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
評価は印刷枚数の相対評価により行い、多い方から順に「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0249】
(2)耐通常汚れ性
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
汚れのない方から順に、「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0250】
(3)耐苛酷インキ汚れ性
Clイオンを添加した湿し水を用いて印刷を行い、印刷機上放置を1回以上行なった際に生じる非画像部の汚れを目視観察して、評価した。
汚れの少ない方から順に、「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0251】
(4)耐ポツ状汚れ性
各平版印刷版用支持体の平版印刷版原版を現像した後の非画像部を光学顕微鏡で倍率100倍で観察し、1mm四方の面積におけるポツの有無を調べた。ポツ状残膜の発生の度合いを、優れている(残膜の発生がない)方から順に「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0252】
(5)水幅
湿し水の量を段階的に減らして、上記(5)耐刷性と同様の印刷を行い、面積率50%の網点部に関し、網点と網点との間にインキが付着し始めた湿し水の量で評価した。インキが付着し始めた湿し水の量が少ない方から順に「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0253】
(6)インキの絡み難さ
小森コーポレーション社製のSOR−M印刷機で、大日本インキ化学工業(株)製のDIC−GEOS(H)墨を用いて、湿し水を少なくすることで、網部におけるインキの絡みを評価した。インキの絡みが認められない順に「良好」、「やや悪」、「悪」とした。
【0254】
【表3】
Figure 2004009631
【0255】
【表4】
Figure 2004009631
【0256】
実施例1−1〜1−13及び実施例2−1〜2−13の平版印刷版用支持体は、中心線平均粗さRa が0.35μm以上であり最大高さRmax が8.0μm以下の表面を有しており、平版印刷版としたときの、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性が高い水準でバランスよく実現できた。特に実施例1−1〜1−13の平版印刷版用支持体は、ピットの均一性がより高く耐刷性に極めて優れる。
これに対して、比較例1−1〜1−13の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板の物性を満足していないため、第4表に示すようにピットの均一性、耐刷性、耐汚れ性をバランスよく実現できなかった。比較例2−1〜2−13及び3−1〜3−13は、すべて中心線平均粗さRa が0.34μm以下であり、耐刷性、水幅及びインキ絡み難さに劣っていた。比較例4−1〜4−13及び5−1〜5−13は、すべて中心線平均粗さRa が0.35μm以上であったが、最大高さRmax が8.0μm超であり、耐刷性、耐ポツ状汚れ性に劣っていた。
【0257】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版は、平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる。
また、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、上記本発明の平版印刷版用支持体を製造する方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において電気化学的粗面化処理(d)及び(g)で印加した台形波電流の波形を示す波形図である。
【図2】実施例において電気化学的粗面化処理(d)及び(g)で使用した電解槽の構成の概略を示す断面図である。
【図3】従来の平版印刷版原版の支持体と画像記録層との界面の一例を模式的に示す断面図である。(a)は露光前、(b)は露光中、(c)は露光後を示す。
【図4】従来の平版印刷版原版の支持体と画像記録層との界面の他の一例を模式的に示す断面図である。(a)は露光前、(b)は露光中、(c)は露光後を示す。
【符号の説明】
10 平版印刷版原版
12 平版印刷版用支持体
14 画像記録層
40 電解槽
42 電解槽本体
42A 開口部
44 送りローラ
46A、46B 主極
48A、48B 給液ノズル
50A 下流側案内ローラ
50B 上流側案内ローラ
52 溢流槽
54 補助電解槽
54A 底面
56 補助電極
104 ラジアル型電解槽
AC 交流電源
Th1、Th2  サイリスタ
W アルミニウムウェブ

Claims (1)

  1. アルミニウム板に粗面化処理及び陽極酸化処理を施して得られる、中心線平均粗さRa が0.35μm以上、最大高さRmax が8.0μm以下である表面を有する平版印刷版用支持体であって、
    前記アルミニウム板が、
    Fe含有量が0.15〜0.5質量%、Si含有量が0.03〜0.15質量%、Cu含有量が0.0001〜0.030質量%、Ti含有量が0.0010〜0.04質量%、Sn含有量が0.003未満であり、残部がAlと不可避不純物とからなり、
    前記アルミニウム板の表面に存在する、これらの金属元素の2種以上からなる金属間化合物について、円相当直径が1μm以上である金属間化合物が7000個/mm2 以下であり、かつ、円相当直径が1〜10μmである金属間化合物の割合が85%以上であり、
    アルミニウム板中に存在する単体Siが0.010質量%以下であるアルミニウム板である平版印刷版用支持体。
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