JP3785348B2 - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版に関し、レーザ露光適性に優れ、かつ、平版印刷版としたときに、耐汚れ性(汚れにくさ)と耐刷性とに優れ、オフセット輪転印刷機での印刷等においてベタ画像部の非画像部との隣接部分のくわえ尻側に着肉不良が発生しない平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム板を支持体として用いる平版印刷版原版は、オフセット印刷に幅広く使用されている。この平版印刷版原版は、一般に、シート状またはコイル状のアルミニウム板の表面に粗面化処理を施し、更に陽極酸化処理を施した後、感光液または感熱層を塗布し乾燥することにより画像記録層を設けて得られる。
粗面化処理としては、酸性溶液中での電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)が、画像記録層と支持体との密着性を向上させるうえで有効な手段である。また、陽極酸化処理の後に、画像記録層と支持体との密着性を向上させるために、表面処理や下塗り液の塗布を行うこともある。
その後、ウェブ状の平版印刷版原版は、すぐに、または、ロールに巻かれた状態で保管された後、所望のサイズに裁断されてシート状とされた後、複数枚重ねられて梱包される。梱包出荷された平版印刷版原版は、ユーザによって、画像焼き付け、現像処理を施されて平版印刷版とされた後、印刷機に取り付けるための端部を折り曲げる処理を経て、印刷機に取り付けられて印刷に供される。
【0003】
特に、近年、実用化が進んでいる直描型平版印刷版原版では、画像焼き付けがレーザ露光装置を用いて行われる。中には、直描型平版印刷版原版を印刷機の版胴に取り付けた後、印刷機上で画像焼き付けを行い現像処理なしで印刷する方式や、印刷機上でまたは別の露光装置で画像焼き付けを行った後、印刷機に取り付け、印刷機上で現像処理を行う方式も知られている。
直描型平版印刷版原版においては、レーザ光照射の有無によって画像部と非画像部とに分けられる。この画像部と非画像部とに分ける仕組みとしては、主に二つ挙げられる。一つは、フォトンモードと呼ばれる方式であり、レーザ光の光エネルギーそのものを利用して、画像記録層表面の物性を変化させる方法である。もう一つは、サーマルモードと呼ばれる方式であり、レーザ光を吸収して熱を発生させ、その熱を利用して、画像記録層表面の物性を変化させ、または、その熱によって蒸発や体積膨張によるはく離、飛散等を生じさせ、画像記録層表面の物質の一部を除去する方法である。
【0004】
直描型平版印刷版原版に関する提案は、種々なされている。例えば、特公昭61−48418号公報に、少なくとも3g/m2 の酸化物層を有する陽極酸化処理を行ったアルミニウム支持体と記録層とを有する記録材料が記載されている。また、特開昭63−260491号公報に、銀錯体を金属銀に還元する核を含有するゾルを被着した粗面化処理および陽極酸化処理を行った平版印刷版前駆物質が記載されている。更に、米国特許第4,555,475号明細書には、陽極酸化皮膜を有する表面にシリケート処理し、2〜8mg/m2 のアルミニウムのシリケートを形成させた支持体が記載されている。更に、欧州特許公開第164128号公報には、アルミニウム板の表面に粗面化処理および陽極酸化処理を施した後、シリケート処理し、カーボンブラックを塗布して感材を形成させ、画像を形成させる方法が記載されている。更に、特願平10−228992号明細書(特開2000−62333号公報)には、レーザ光のハレーションを抑制するアルミニウム支持体を用いた平版印刷版原版が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術よりも、感度に優れ、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性に優れる平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体が求められている。
また、従来の直描型平版印刷版原版を用いた場合、印刷時、特に、オフセット輪転印刷機での印刷時において、ベタ画像部の非画像部との隣接部分のくわえ尻側に着肉不良が発生することがあり、この着肉不良の改善も求められている。
【0006】
したがって、本発明は、感度に優れ、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性に優れ、更に、印刷時、特に、オフセット輪転印刷機での印刷時におけるベタ画像部の着肉不良が発生しない直描型の平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した。以下に詳細に説明する。
直描型平版印刷版原版においては、現像ラチチュードの領域を実用範囲分だけ確保するために、画像記録層と支持体との界面に親水性層やアルカリ可溶化層を設けることが多い。このため、汚れにくさを向上させようとして支持体表面の形状を平滑化すると、耐刷性が大幅に低下する。
ここで、耐刷性は画像記録層と支持体との密着性に大きく依存し、密着性は画像記録層と支持体との間の接触面積にほぼ相関して変化するため、耐刷性を向上させるためには、支持体の表面積を大きくして、画像記録層と支持体との間の接触面積を大きくすればよい。
【0008】
一方、汚れにくさを向上させるには、印刷時にインキのミストが版面の非画像部に保持されにくくなればよいが、本発明者は、そのためには支持体表面の先鋭な部分を少なくすればよいと考えた。
本発明者は、この先鋭な部分の形状を定量化したところ、支持体上の傾斜角が30°以上の部分の面積率に汚れにくさが対応することが分かった。
【0009】
更に、本発明者らの鋭意検討の結果、支持体表面のピットが大きく深いと、印刷中にブランケット胴に付着した紙粉等の微細異物を版面上に捕捉しやすくなり、場合によっては、紙粉等の微細異物が蓄積して、ベタ画像部の非画像部との隣接部分のくわえ尻側において、インキの着肉性が不十分になる不具合が発生することも新たに判明した。
【0010】
本発明者は、上記知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、アルミニウム板に少なくともアルカリエッチング処理、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理、0.05g/m2以上のアルカリエッチング処理および塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を順次施して得られる平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けた平版印刷版原版であって、支持体表面について、
原子間力顕微鏡を用いて求められる実面積と見掛け面積との差を見掛け面積で除して得られる表面積差が10〜90%であり、
原子間力顕微鏡を用いて求められる傾斜度30゜以上の部分の面積率が75%以下であり、かつ、
原子間力顕微鏡を用いて求められる測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後の算術平均粗さが0.25μm以下であり、
前記画像記録層がレーザ直描型である平版印刷版原版を提供する。
【0011】
前記硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理に用いられる陽極時総電気量と前記塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理に用いられる陽極時総電気量との比が1以上であるのが好ましい。
【0013】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤と、熱によって酸を発生させる化合物と、酸によって架橋する化合物とを含有するのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0014】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤と、熱によって酸を発生させる化合物と、酸によって分解する結合部を有する化合物とを含有するのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0015】
前記画像記録層が、レーザ光照射によってラジカルを発生させる化合物と、アルカリ可溶のバインダーと、多官能性のモノマーまたはプレポリマーとを含有する層と、酸素遮断層との2層を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0016】
前記画像記録層が、物理現像核層と、ハロゲン化銀乳剤層との2層を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0017】
前記画像記録層が、多官能性モノマーと多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤とを含有する層と、酸素遮断層との3層を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0018】
前記画像記録層が、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0019】
前記画像記録層が、有機光導電体を含有するのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0020】
前記画像記録層が、レーザ光照射によって除去されるレーザ光吸収層と、親油性層および/または親水性層との2層または3層を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0021】
前記画像記録層が、エネルギーを吸収して酸を発生させる化合物と、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生させる官能基を側鎖に有する高分子化合物と、可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物とを含有するのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体(以下、「本発明の平版印刷版用支持体」という。)に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0023】
以下の説明において、上記に挙げたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
中でも、本発明に用いられるアルミニウム板は、Cu含有量が0.005質量%以下であるアルミニウムからなるのが好ましく、Si含有量が0.1質量%以下、Cu含有量が0.005質量%以下、Fe含有量が0.5質量%以下であるアルミニウムからなるのがより好ましい。これらは、JIS1050材または1070材に分類される合金であって、電解粗面化処理で生成するピット径が小さくなるため、耐汚れ性が向上する。また、非シリケート現像液との組み合わせにおいて、耐汚れ性と耐刷性のバランスを両立することができる。
【0024】
本発明においては、純アルミニウム板を用いるのが好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材もの、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A3005、JIS A3004、国際登録合金 3103A等のアルミニウム合金板を適宜利用することができる。
中でも、電解粗面化処理で生成するピットの形状を小さく深くできるという点で、JIS A1050材が好ましい。
【0025】
また、本発明に用いられるアルミニウム板は、アルミニウムの平均結晶粒径の短径が2〜200μm、長径が50〜1500μmであるのが好ましい。結晶粒が大きすぎると、結晶方位によってエッチング特性が異なるため、均一な粗面化処理が困難になり、また、小さすぎると強度が増してハンドリング適性が低下してしまう。
【0026】
アルミニウム板の製造方法は、連続鋳造方式およびDC鋳造方式のいずれでもよく、DC鋳造方式の中間焼鈍や、均熱処理を省略したアルミニウム板も用いることができる。最終圧延においては、積層圧延や転写等により凹凸を付けたアルミニウム板を用いることもできる。また、本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。
【0027】
本発明の平版印刷版用支持体は、上記アルミニウム板に少なくともアルカリエッチング処理、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理、0.05g/m2 以上のアルカリエッチング処理および塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を順次施して、特定の表面形状を設けて得られる。本発明の平版印刷版用支持体の製造においては、上記の各処理以外の表面処理を含んでいてもよい。
以下、アルミニウム板に施される各種の表面処理について説明する。
【0028】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0029】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、本発明の平版印刷版用支持体の製造において、必要に応じて行われる。機械的粗面化処理を行う場合は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0030】
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2 、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2 であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
【0031】
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
【0032】
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
【0033】
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。本発明においては、まず、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を行い、ついで、塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を行うことで、本発明に特徴的な表面形状を形成させることができる。
電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094号の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0034】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0035】
電解液である酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0036】
硝酸水溶液は、濃度1〜100g/Lの硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。塩酸水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸の水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。
また、硝酸水溶液および塩酸水溶液には、それぞれ鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、硝酸または塩酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0037】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜90℃が好ましく、30〜60℃がより好ましい。
【0038】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
【0039】
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0040】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0041】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0042】
(硝酸電解)
硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2 であるのが好ましく、50〜300C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2 であるのが好ましい。
また、高濃度または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0043】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜70C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2 であるのが好ましい。
このような塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dm2 と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
【0044】
上記の硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理および塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理の間に、アルミニウム板に陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2 、より好ましくは5〜30C/dm2 で行われる。陰極電気量が3C/dm2 未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2 を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記各電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0046】
硝酸水溶液中での電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0047】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2 であるのが好ましく、1〜5g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2 未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2 であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0048】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2 であるのが好ましく、5〜15g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2 未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2 を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0049】
硝酸水溶液中での電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。塩酸水溶液中での電解粗面化処理の直後にアルカリエッチング処理を行う場合、その目的は同様である。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なる。硝酸水溶液中での電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.05g/m2 以上とする。エッチング量を0.05g/m2 以上とすることにより、その後、塩酸水溶液中で電解粗面化処理を施したときにピットが均一に形成される。エッチング量は、0.1g/m2 以上であるのが好ましく、また、10g/m2 以下であるのが好ましい。また、塩酸水溶液中での電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、特に限定されないが、0.02g/m2 以上であるのが好ましく、また、1g/m2 以下であるのが好ましい。
【0050】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0051】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0052】
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0053】
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われるのが好ましい。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸水溶液もしくは塩酸水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0054】
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施されるのが好ましい。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0056】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0057】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0058】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0059】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2 であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2 またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2 程度である。
【0060】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2 を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2 以下になるように行うのが好ましい。
【0061】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0062】
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することがあできる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0063】
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0064】
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
【0065】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0066】
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0067】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0068】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0069】
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
【0070】
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0071】
上記のようにして得られる本発明の平版印刷版用支持体は、支持体表面について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて求められる実面積と見掛け面積との差を見掛け面積で除して得られる表面積差が10〜90%であり、原子間力顕微鏡を用いて求められる傾斜度30゜以上の部分の面積率(a30)が75%以下であり、かつ、原子間力顕微鏡を用いて求められる測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後の算術平均粗さが0.25μm以下であることを特徴とする。以下、これらの表面形状の特性値について説明する。
【0072】
(1)表面積差
「表面積差」とは、ピットの表面積を含み、かつ、ピット内部の微細凹凸構造の表面積を含まない、平版印刷版用支持体の表面の実面積と、平版印刷版用支持体の表面を支持体に平行な面へ投影した図の面積で表される見掛け面積との差を、該見掛け面積で除した値をいう。
具体的には、平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲50μm角という条件でAFMによる測定を行って、近似三点法により求めた表面積を実面積a1 とし、上部投影面積を見掛け面積a0 として、下記式から表面積差を求めることができる。
表面積差(%)=(a1 −a0 )/a0 ×100(%)
【0073】
本発明の平版印刷版用支持体は、表面積差が10%以上であるので、平版印刷版としたときの耐刷性に優れ、また、表面積差が90%以下であり、かつ、後述するa30が所定の範囲にあるので、平版印刷版としたときの耐汚れ性に優れる。表面積差は、30%以上であるのが好ましく、また、80%以下であるのが好ましい。
【0074】
(2)傾斜度30゜以上の部分の面積率(a30)
平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能1.9μm、測定範囲240μm角という条件でAFMによる測定を行って、三次元データより隣り合う3点を抽出し、その3点で形成する微小三角形と基準面とのなす角を全データについて算出し、傾斜度分布曲線を求め、この傾斜度分布曲線から傾斜度30゜以上の部分の面積率(a30)を算出することができる。
【0075】
本発明の平版印刷版用支持体は、a30が75%以下であり、支持体表面の先鋭な部分が少なく、かつ、上述したように表面積差が90%以下であるので、平版印刷版としたときの耐汚れ性に優れる。a30は、70%以下であるのが好ましく、また、10%以上であるのが好ましい。
【0076】
(3)波長0.2〜2μmの成分の算術平均粗さ(Ra
「波長0.2〜2μmの成分の算術平均粗さ(Ra )」は、支持体表面の凹凸構造のうち波長0.2μm未満の成分(極小波)および波長2μmを超える成分(大波)の影響を取り除いて得られるRa である。
具体的には、平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲50μm角という条件でAFMによる測定を行って測定断面曲線を求め、この測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後、例えば、JIS B0601−1994の規定に準拠して、算術平均粗さ(Ra )を求めることができる。
【0077】
本発明者の研究により、この波長0.2〜2μmの成分のRa が、ベタ画像部の非画像部との隣接部分のくわえ尻側におけるインキの着肉不良と相関を有することが判明した。即ち、本発明の平版印刷版用支持体は、波長0.2〜2μmの成分のRa が0.25μm以下であるので、上記着肉不良が起こりにくい。波長0.2〜2μmの成分のRa は、0.2μm以下であるのが好ましく、また、0.05μm以上であるのが好ましい。
【0078】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等のレーザ直描型の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版用原版とすることができる。レーザ直描型の画像記録層は、特に限定されないが、以下の(1)〜(9)が好適に挙げられる。
【0079】
(1)赤外線吸収剤と、熱によって酸を発生させる化合物と、酸によって架橋する化合物とを含有する画像記録層。
(2)赤外線吸収剤と、熱によって酸を発生させる化合物と、酸によって分解する結合部を有する化合物とを含有する。
(3)レーザ光照射によってラジカルを発生させる化合物と、アルカリ可溶のバインダーと、多官能性のモノマーまたはプレポリマーとを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む画像記録層。
(4)物理現像核層と、ハロゲン化銀乳剤層との2層を含む画像記録層。
(5)多官能性モノマーと多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤とを含有する層と、酸素遮断層との3層を含む画像記録層。
(6)ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む画像記録層。
(7)有機光導電体を含有する画像記録層。
(8)レーザ光照射によって除去されるレーザ光吸収層と、親油性層および/または親水性層との2層または3層を含む画像記録層。
(9)エネルギーを吸収して酸を発生させる化合物と、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生させる官能基を側鎖に有する高分子化合物と、可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物とを含有する画像記録層。
【0080】
[露光および現像処理]
本発明の平版印刷版原版は、レーザ直描型の画像記録層の種類に応じて、従来公知の露光および現像処理を行って平版印刷版とすることができるが、デジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射して所望の画像様に露光し、アルカリ現像液を用いる方法で現像処理を行うのが好ましい。
【0081】
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ケミカルランプが挙げられる。放射線としては、例えば、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザビーム)が挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム・ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム・カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザが挙げられる。
【0082】
現像処理に用いられるアルカリ現像液はアルカリ性水溶液であり、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択して用いることができるが、ケイ酸アルカリまたは非還元糖と、塩基とを含有するアルカリ水溶液が好適に挙げられる。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の製造
ルミニウム板(JIS A1050材)に、以下に示す表面処理を連続的に施し、各平版印刷版用支持体を得た。なお、各処理の後には、スプレーによる水洗を行い、また、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0084】
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。研磨剤の平均粒径は20μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.5mm(8号)であった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は250rpmであった。
【0085】
(b)アルカリエッチング処理
カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度60℃の条件でスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2 溶解した。
【0086】
(c)デスマット処理
硝酸濃度1質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度35℃、処理時間10秒の条件でスプレーによるデスマット処理を行った。
【0087】
(d)硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理
60Hzの矩形波の交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸濃度1質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度50℃であった。
電流密度は電流のピーク値で15A/dm2 とし、電気量はアルミニウム板が陽極時の総電気量で35〜200C/dm2 の間で変更した。
【0088】
(e)アルカリエッチング処理
カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度60℃の条件でスプレーによるエッチング処理を行った。この際、処理時間を変更してアルミニウム板の溶解量を変更した。
【0089】
(f)デスマット処理
硝酸濃度30質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度35℃、処理時間10秒の条件でスプレーによるデスマット処理を行った。
【0090】
(g)塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理
60Hzの矩形波の交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸濃度1質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度35℃であった。
電流密度は電流のピーク値で15A/dm2 とし、電気量はアルミニウム板が陽極時の総電気量で50C/dm2 とした。
【0091】
(h)アルカリエッチング処理
カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度60℃の条件でスプレーによるエッチング処理を行った。この際、処理時間を変更してアルミニウム板の溶解量を変更した。
【0092】
(i)デスマット処理
硫酸濃度15質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度35℃、処理時間10秒の条件でスプレーによるデスマット処理を行った。
【0093】
(j)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度15質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%、温度35℃であった。最終的な酸化皮膜量は2g/m2 であった。
【0094】
2.平版印刷版用支持体の表面形状の測定
上記で得られた各平版印刷版用支持体について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、以下のようにして表面形状の各特性値を測定した。結果を第1表に示す。
【0095】
各特性値の測定に共通の測定条件を以下に示す。
<共通の測定条件>
原子間力顕微鏡(AFM):AFM3800N/SPA300(S II)、セイコーインスツルメンツ社製
スキャンモード:タッピングモード AFM(DFM)
スキャンスピード:0.5Hz(25μm/sec)
カンチレバー:AC−160TS、セイコーインスツルメンツ社製、シリコン製、長さ160μm
【0096】
(1)表面積差
平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲50μm角という条件でAFMによる測定を行って、近似三点法により求めた表面積を実面積a1 とし、上部投影面積を見掛け面積a0 として、下記式から表面積差を求めた。
表面積差(%)=(a1 −a0 )/a0 ×100(%)
【0097】
(2)傾斜度30゜以上の部分の面積率(a30)
平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能1.9μm、測定範囲240μm角という条件でAFMによる測定を行って、三次元データより隣り合う3点を抽出し、その3点で形成する微小三角形と基準面とのなす角を全データについて算出し、傾斜度分布曲線を求め、この傾斜度分布曲線から傾斜度30゜以上の部分の面積率(a30)を算出した。
【0098】
(3)波長0.2〜2μmの成分の算術平均粗さ(Ra
平版印刷版用支持体の表面について、水平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲50μm角という条件でAFMによる測定を行って測定断面曲線を求め、この測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後、JIS B0601−1994に規定されている算術平均粗さ(Ra )を求めた。
【0099】
3.平版印刷版原版の製造
(実施例1〜16および比較例1〜4)
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、下記画像記録層(a)〜(j)を設け、各平版印刷版原版を得た。各画像記録層の形成は、以下のようにして行った。
【0100】
<画像記録層(a)の形成>
下記組成の画像記録層(a)用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に塗布し乾燥させて画像記録層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<画像記録層(a)用塗布液の組成>
・カーボンブラック分散液 10質量部
・4−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒド縮合物六フッ化リン酸塩
0.5質量部
・メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ベンジルメタクリレートおよびアクリロニトリルのラジカル共重合体(モル比15:30:40:15、重量平均分子量10万) 5質量部
・リンゴ酸 0.05質量部
・フッ素系界面活性剤(FC−430、米国3M社製) 0.05質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 80質量部
・乳酸エチル 15質量部
・水 5質量部
【0101】
<画像記録層(b)の形成>
下記組成の画像記録層(b)用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に塗布し乾燥させて画像記録層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<画像記録層(b)用塗布液の組成>
・カプリン酸 0.03質量部
・後述する特定の共重合体1 0.75質量部
・m,p−クレゾールノボラック樹脂(m/p比=6/4) 0.25質量部
・p−トルエンスルホン酸 0.003質量部
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03質量部
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.017質量部
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.017質量部
・界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05質量部
・γ−ブチロラクトン 10質量部
・メチルエチルケトン 10質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 1質量部
【0102】
【化1】
Figure 0003785348
【0103】
<特定の共重合体1>
かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた500mL容の三つ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36mol)、クロロギ酸エチル39.lg(0.36mol)およびアセトニトリル200mLを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物をかくはんした。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36mol)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物をかくはんした。
【0104】
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30mol)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間かくはんした。反応終了後、この混合物を水1Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分間得られた混合物をかくはんした。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mLでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0105】
つぎに、かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた20mL容の三つ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g(0.0192mol)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258mol)、アクリロニトリル0.80g(0.015mol)およびN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物をかくはんした。この混合物に「V−65」(和光純薬社製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下で、混合物を2時間かくはんした。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミドおよび「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、更に、得られた混合物を65℃で2時間かくはんした。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分混合物をかくはんした後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体の特定の共重合体1を得た。
得られた特定の共重合体1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、53,000(ポリスチレン標準)であった。
【0106】
<画像記録層(c)の形成>
下記組成の画像記録層(c)用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に塗布し乾燥させて画像記録層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<画像記録層(c)用塗布液の組成>
・カプリン酸 0.03質量部
・m,p−クレゾールノボラック樹脂(m/p比=6/4) 1質量部
・p−トルエンスルホン酸 0.003質量部
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03質量部
・上記構造式で表されるシアニン染料A 0.017質量部
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.017質量部
・界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05質量部
・γ−ブチロラクトン 10質量部
・メチルエチルケトン 10質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 1質量部
【0107】
<画像記録層(d)の形成>
下記組成の光重合層用感光性塗布液および酸素遮断層用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に光重合層用感光性塗布液を塗布し乾燥させて光重合層を形成させ、ついで、酸素遮断層用塗布液を塗布し乾燥させて酸素遮断層を形成させ、光重合層と酸素遮断層の2層からなる画像記録層(d)を有する平版印刷版原版を得た。
【0108】
<光重合層用感光性塗布液の組成>
・テトラメチロールメタンテトラアクリレート 1.5質量部
・下記式(B1 )で表される線状有機高分子重合体 2.0質量部
・下記式(C1 )で表される増感剤(λmax (THF溶液)479nm、ε=6.9×104 ) 0.15質量部
・下記式(D1 )で表される光開始剤 0.2質量部
・下記式(E1 )で表されるIRGACURE 907(Ciba−Geigy社製) 0.4質量部
・ε−フタロシアニン/下記式(B1 )で表される線状有機高分子重合体分散物 0.2質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤(メガファックF177、大日本インキ化学工業社製) 0.03質量部
・メチルエチルケトン 9質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5質量部
・トルエン 11質量部
【0109】
【化2】
Figure 0003785348
【0110】
<酸素遮断層用塗布液の組成>
・ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3質量%の水溶液
【0111】
<画像記録層(e)の形成>
下記組成の重合層用塗布液、感光層用塗布液および酸素遮断層用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に、重合層用塗布液を塗布し乾燥させて重合層を形成させ、ついで、感光層用塗布液を塗布し乾燥させて感光層を形成させ、更に、酸素遮断層用塗布液を塗布し乾燥させて酸素遮断層を形成させ、重合層と感光層と酸素遮断層の3層からなる画像記録層(e)を有する平版印刷版原版を得た。
【0112】
<重合層用塗布液の組成>
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 2.5質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合比=80/20)の20質量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 37.5質量部
・顔料分散液 13.0質量部
・メチルエチルケトン 74.0質量部
【0113】
<感光層用塗布液の組成>
・ケン化度79.5%のポリビニルアルコール(PVA−405、クラレ社製)の10質量%水溶液 10.5質量部
・添加剤(下記式(1)で表される化合物の0.11質量%メタノール溶液)0.41質量部
・添加剤(下記式(2)で表される化合物の0.11質量%メタノール溶液)0.41質量部
【0114】
【化3】
Figure 0003785348
【0115】
・下記のようにして得られるハロゲン化銀乳剤 0.50質量部
ゼラチンと臭化カリウムと水が入り、水酸化ナトリウムを加えて常温でのpHを9.5に設定した液を55℃に加温し、更に下記式(3)で表されるチオエーテル化合物を硝酸銀全添加量に対して2.0×10-3モル相当の量で添加した後、反応容器のpAgを9.0に保ちつつ、硝酸銀水溶液とヨウ化カリウムおよび硝酸銀の全添加量に対するロジウムのモル比で2×10-7モルになるようロジウムアンモニウムクロライドを含有した臭化カリウム水溶液とをpAgコントロールダブルジェット法で添加してヨウ臭化銀粒子を形成した。ついで、硫酸を加えて、pHを6.0に設定し、引き続いて、55℃、pAg=9.3にて、硝酸銀水溶液と、銀に対するイリジウムのモル比で5×10-7モルになるように、ヘキサクロロイリジウム(III)酸塩を添加した臭化カリウム水溶液をダブルジェット法で二段添加して、下記の組成のコア/シェル型ヨウ臭化銀乳剤粒子を作った。
【0116】
【化4】
Figure 0003785348
【0117】
コア:ヨウ臭化銀(ヨウ化銀含有率8.5モル%)
シェル:純臭化銀
コア/シェル:3/7(銀モル比)
平均ヨウ臭化銀含有率:2.55モル%
平均粒子サイズ:0.30μm
【0118】
これらの乳剤粒子は単分散で、平均粒子サイズ±40%以内に全粒子数の98%が存在していた。ついで、この乳剤を脱塩処理した後、40℃で保温かくはんしながら、2種の分光増感色素A(下記式(4))およびB(下記式(5))の混合メタノール溶液(モル比A/B=2/1)を、8×10-4mol/molAg相当量で、添加して15分間保持し、更に、下記式(6)で表されるチオールのナトリウム塩を6×10-4mol/molAg相当量添加して5分間かくはん保持し、ついで乳剤のpHを6.5、pAgを8.8に調節してハロゲン化銀乳剤とした。
【0119】
【化5】
Figure 0003785348
【0120】
・界面活性剤(下記式(7)で表される化合物の5質量%水溶液) 0.40質量部
・水 7.80質量部
・還元剤分散液 1.20質量部
【0121】
【化6】
Figure 0003785348
【0122】
<酸素遮断層用塗布液の組成>
・ケン化度98.5%のポリビニルアルコール(PVA−105、クラレ社製)の10質量%水溶液 200.0質量部
・塩基プレカーサー分散液(下記式(8)で表される化合物の分散液)
・界面活性剤水溶液 4.0質量部
【0123】
【化7】
Figure 0003785348
【0124】
<画像記録層(f)の形成>
下記組成の樹脂層用塗布液および感光層用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に、樹脂層用塗布液を塗布し乾燥させて樹脂層を形成させ、ついで、感光層用塗布液を塗布し乾燥させて感光層を形成させ、樹脂層と感光層の2層からなる画像記録層(f)を有する平版印刷版原版を得た。
<樹脂層用塗布液の組成>
・アセトン−ピロガロール液樹脂のナフトキノン−1,2−ジアジド−(2)−5−スルホン酸エステル 5.0質量部
・クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂 10.0質量部
・メチルエチルケトン 150質量部
・シクロヘキサノン 122質量部
【0125】
<感光層用塗布液の組成>
・塩臭化銀ゼラチン乳剤(Cl:70モル%、Br:30モル%、平均粒子径:0.28μm、乳剤1000質量部あたりのゼラチン量:55質量部、乳剤1000gあたりのハロゲン化銀含有量:0.85モル) 1000質量部
・1,3−ジエチル−5−[2−(3−(3−スルホプロピル)べンズオキサゾール−2−イリデン)エチリデン]チオヒダントインナトリウム塩の0.1質量%メタノール溶液 前記塩臭化銀ゼラチン乳剤1000gあたり50mL
・4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンの0.5質量%アルカリ水溶液 前記塩臭化銀ゼラチン乳剤1000gあたり100mL
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンの2質量%水溶液
前記塩臭化銀ゼラチン乳剤1000gあたり35mL
【0126】
<画像記録層(g)の形成>
カレイ・レー(Carey Lea)法により調製した銀ゾルを、乾燥質量が銀量で5mg/m2 になるように塗布し乾燥させて物理現像核層を形成させ、ついで、40モル%の塩化物および60モル%の臭化物からなる平均粒子サイズが0.3μmの塩臭化銀乳剤(銀塩:ゼラチン(質量比)=1:1)を、2.0g/m2 塗布し乾燥させてハロゲン化銀層を形成させ、物理現像核層とハロゲン化銀層の2層からなる画像記録層(g)を有する平版印刷版原版を得た。
【0127】
<画像記録層(h)の形成>
下記組成の光導電層用塗布液および保護層用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に、光導電層用塗布液を塗布し乾燥させて光導電層を形成させ、ついで、保護層用塗布液を塗布し乾燥させて保護層を形成させ、光導電層と保護層の2層からなる画像記録層(h)を有する平版印刷版原版を得た。
<光導電層用塗布液の組成>
・Fastogen Blue 8120(大日本インキ化学工業社製、無金属フタロシアニン) 1.0質量部
・メチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体(メタクリル酸20モル%) 10.0質量部
・テトラヒドロフラン 60質量部
・シクロヘキサノン 40質量部
<保護層用塗布液の組成>
・ポリビニルブチラール(2000−L、電気化学工業社製) 2.0質量部
・ステアリン酸 0.5質量部
・エタノール 97.5質量部
【0128】
<画像記録層(i)の形成>
下記組成の画像記録層(i)用塗布液を調製し、上記で得られた平版印刷版用支持体に塗布し乾燥させて画像記録層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<画像記録層(i)用塗布液の組成>
・下記式(9)で表されるスルホン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物 1.0質量部
・o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド 0.1質量部
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.05質量部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176PF、大日本インキ化学工業社製) 0.06質量部
・メチルエチルケトン 10質量部
・γ−ブチロラクトン 10質量部
【0129】
【化8】
Figure 0003785348
【0130】
<画像記録層(j)の形成>
以下の方法で、上記で得られた平版印刷版用支持体の上に、物理現像核層と乳剤層の2層からなり、銀薄膜が露出した画像記録層(j)を形成させた。
平版印刷版用支持体の上に、特開昭53−21602号公報の「実施例−2」に記載の核塗布液(親水性ポリマーとして、前記公報の「実施例−1」の表中の「No.3」のアクリルアミドとイミダゾールとの共重合体を4mg/m2 の割合で含む。)を塗布し乾燥させて物理現像核層を形成させた。
【0131】
不活性ゼラチンの水溶液を60℃に保ち、強くかくはんしながら、塩化ナトリウムと臭化カリウムの混合水溶液(臭化カリウム29.5モル%)および硝酸銀水溶液を同時に加えることにより、平均粒子サイズ0.28μmの塩臭化銀乳剤を調製し、0.5モル%/1モルAgに相当するヨウ化カリウムを添加し、表面置換させた。これらのハロゲン化銀乳剤粒子を含む乳剤層を上記の物理現像核層上に塗布し乾燥させた。ハロゲン化銀乳剤は、塩化銀70%、臭化銀29.5%およびヨウ化銀0.5%からなる、全粒子の90質量%が平均粒子サイズの±30%以内にある、単分散の塩ヨウ臭化銀乳剤であった。
【0132】
この後、未露光で、下記拡散転写現像液Aで、23℃で20秒間現像を行なった後、直ちに流水でゼラチン層を洗い流し(ウォッシュオフ)して、その後、下記中和液Aにて、室温15秒間処理して、銀薄膜を露出させ、画像記録層(j)を形成させた。
<拡散転写現像液A>
水700mL、水酸化ナトリウム25g、無水亜硫酸ナトリウム120g、ハイドロキノン25g、4−ヒドロキシメチル−4′−メチル−3−ピラゾリドン4g、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド5g、チオ硫酸ナトリウム・5水化物10g、N−メチルエタノールアミン40g、グリセリン20gに、水を加えて1Lとしたもの。
<中和液A>
水600mL、クエン酸20g、クエン酸ナトリウム25g、モノエタノールアミン10mL、3−n−オクチル−5−メルカプトオキサジアゾール0.6g、エチレングリコール5mLに、水を加えて1Lとしたもの。
【0133】
4.平版印刷版原版の感度の評価
上記で得られた各平版印刷版原版をCREO社製のTrendSetter3244を用いて版面エネルギー量を変更して全面露光した後、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液である富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用いて、自動現像機900NPにより現像した。感熱層が完全に除去されたと目視で観察されたときの版面エネルギー量により感度を評価した。
画像記録層(b)を有する平版印刷版原版についての結果を第1表に示す。
版面エネルギー量が少なかったものから多かったものまでを順に、◎、○、○△、△、△×として表した。
【0134】
5.平版印刷版の耐汚れ性の評価
上記で得られた各平版印刷版原版をCREO社製TrenndSetter3244を用いて版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光し、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液である富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用いて、自動現像機900NPにより現像した。得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
画像記録層(b)を有する平版印刷版原版についての結果を第1表に示す。ブランケットの汚れが少なかったものから多かったものまでを順に、◎、○、○△、△、×として表した。
【0135】
6.平版印刷版の耐刷性の評価
上記耐汚れ性の評価と同様の方法により平版印刷版を得た。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
画像記録層(b)を有する平版印刷版原版についての結果を第1表に示す。印刷枚数が多かったものから少なかったものまでを順に、◎、○、○△、△、×として表した。
【0136】
7.平版印刷版のベタ画像部の着肉性
上記耐汚れ性の評価と同様の方法により平版印刷版を得た。得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、非画像部中に設けた20mm×10mmのベタ画像部のくわえ尻側にある非画像部との境界領域において、画像の欠損、即ち、インキ着肉不良が発生した枚数により、ベタ画像部の着肉性を評価した。
結果を第1表に示す。ベタ画像部のインキ着肉不良が発生した枚数が多かったものから少なかったものまでを順に、◎、○、○△、△、×として表した。
【0137】
第1表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版は、感度、耐汚れ性、耐刷性およびベタ画像部の着肉性のいずれにも優れ、バランスがよい(実施例1〜16)。
これに対し、AFMを用いて求められる表面積差が小さすぎる場合(比較例1)は、耐刷性に劣り、AFMを用いて求められる表面積差が大きすぎる場合(比較例2)は、感度および耐汚れ性に劣る。また、AFMを用いて求められるa30が大きすぎる場合(比較例3)は、耐汚れ性に劣る。更に、AFMを用いて求められる測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後の算術平均粗さが大きすぎる場合(比較例4)は、ベタ画像部の着肉性に劣る。
なお、第1表には示さないが、他の画像記録層を有する平版印刷版原版についても、同様の傾向が見られた。
【0138】
【表1】
Figure 0003785348
【0139】
【発明の効果】
以上に説明したように、表面形状に特徴を有する本発明の平版印刷版用支持体を用いれば、感度、耐汚れ性、耐刷性およびベタ画像部の着肉性のバランスに優れる平版印刷版原版が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【図4】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (2)

  1. アルミニウム板に少なくともアルカリエッチング処理、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理、0.05g/m2以上のアルカリエッチング処理および塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を順次施して得られる平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けた平版印刷版原版であって、支持体表面について、
    原子間力顕微鏡を用いて求められる実面積と見掛け面積との差を見掛け面積で除して得られる表面積差が10〜90%であり、
    原子間力顕微鏡を用いて求められる傾斜度30゜以上の部分の面積率が75%以下であり、かつ、
    原子間力顕微鏡を用いて求められる測定断面曲線から波長0.2〜2μmの成分を抽出した後の算術平均粗さが0.25μm以下であり、
    前記画像記録層がレーザ直描型である平版印刷版原版
  2. 前記硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理に用いられる陽極時総電気量が前記塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理に用いられる陽極時総電気量以上である請求項1に記載の平版印刷版原版
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