JP3919636B2 - 平版印刷版用支持体およびそれを用いる平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体およびそれを用いる平版印刷版原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用支持体および平版印刷版原版に関し、特に、平版印刷版としたときに、耐汚れ性と耐刷性とを両立することができ、かつ、ポツ状残膜の発生がなく、印刷時に版面の湿し水の量が見やすい最適な表面形状を有する平版印刷版用支持体およびそれを用いた平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷法は水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方式であり、これに使用される平版印刷版の印刷版面には、水を受容して油性インキを反撥する領域(以下、この領域を「非画像部」という。)と、水を反撥して油性インキを受容する領域(以下、この領域を「画像部」という。)とが形成される。
【0003】
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)は、その表面が非画像部を担うように使用されるため、親水性および保水性が優れていること、更にはその上に設けられる画像記録層との密着性が優れていること等の相反する種々の性能が要求される。
支持体の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。また、支持体の保水性が低すぎると、印刷時に湿し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生する。よって、いわゆる水幅が狭くなる。
【0004】
また、一般に平版印刷版を用いた印刷では、印刷中に湿し水の量(水量)を調整する作業が必要であるが、その際に版面の光の反射が多すぎると、適切な水量の調節が困難となるため、汚れが発生する場合が生じてしまう。そこで、平版印刷版の非画像部となる平版印刷版用支持体の表面において、光の反射をある程度以下に抑えることが必要である。
ここで、平版印刷版用支持体の表面に大きく深い凹凸がなかったり、凹凸が十分に深くなかったりすると、光の反射量が増加し、少ない水量でも印刷機上に取り付けた際に版面が光ってしまう。このような現象は、シャイニーと呼ばれており、水量の調節の点で、好ましくない現象である。
したがって、支持体が優れた親水性および保水性を有し、水量の調節がしやすい観点から、大きく、かつ、十分に深い凹凸を支持体表面に設けることが行われている。
【0005】
また、一方で、粗面化処理を施された支持体の表面に深い凹部が存在すると、その部分の画像記録層の厚みが厚くなるため、形状的に現像が抑制される場合がある。そして、現像が抑制された結果、画像記録層が深い凹部の中に残ってしまい、非画像部に局部的な残膜(以下「ポツ状残膜」ともいう。)が発生し、印刷時の非画像部の汚れの原因となってしまうという問題がある。例えば、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化するいわゆるサーマルタイプの画像記録層を設けた平版印刷版原版においては、凹部の底部で画像形成反応が不十分となり、ポツ状残膜が発生する。
このようなポツ状残膜は、露光および現像の条件が厳しい場合に発生しやすい。例えば、サーマルタイプの画像記録層を設けた平版印刷版原版において、生産性の向上のために露光時間を短くしたり、レーザの長寿命化のためにレーザ光エネルギーを低くしたりするなど、レーザの露光量を低くする場合である。また、感度の高い高活性な現像液に対して、本来、画像部となるべき部分に画像抜けが発生しやすい画像記録層を用いるために、感度の低い現像液を用いて現像する場合などもある。
【0006】
これらの性能の良好な平版印刷版用支持体を得るためには、アルミニウム板の表面を砂目立て(粗面化処理)して凹凸を付与するのが一般的である。この凹凸については下記に示すように、様々な形状(構造)が提案されている。
例えば、中波と小波の開口径を規定した大波、中波および小波を有する3重構造(特許文献1参照。)、大小の2重構造において小波の径を規定する構造(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)、大小の2重の凹部(ピット)に加えて更に微小な突起を付与する技術(特許文献4参照。)、開口径を規定した2重構造(特許文献5参照。)、表面の滑らかさを示す因子a30を規定した2重構造(特許文献6参照。)、および、複数の電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)に際して重畳されるピット径の比を規定した構造(特許文献7参照。)等が提案されている。
【0007】
この砂目立てには、ボールグレイニング、ブラシグレイニング、ワイヤーグレイニング、ブラストグレイニング等の機械的粗面化方法、塩酸および/または硝酸を含む電解液中でアルミニウム板を電解エッチングする電解粗面化方法、および、機械的粗面化方法と電解粗面化方法を組み合わせた複合粗面化方法(特許文献8参照。)等が用いられている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−300844号公報
【特許文献2】
特開平11−99758号公報
【特許文献3】
特開平11−208138号公報
【特許文献4】
特開平11−167207号公報
【特許文献5】
特許第2023476号明細書
【特許文献6】
特開平8−300843号公報
【特許文献7】
特開平10−35133号公報
【特許文献8】
米国特許第4,476,006号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、耐汚れ性と耐刷性とがトレードオフの関係にあり、耐汚れ性と耐刷性との両立ができなかった。
したがって、本発明は、この問題を解決し、優れた耐汚れ性と高耐刷力とを両立することができ、更に、ポツ状残膜の発生がなく、印刷時に版面の湿し水の量が見やすい平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、平版印刷版用支持体の表面の凹凸構造の大きさ、それらの組み合わせおよびその特性について鋭意検討した結果、特定の大きさの凹凸を組み合わせ、その凹凸の振幅分布曲線を略正規分布に調製し、かつ、求められる3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部が少ない場合に、耐汚れ性と耐刷性とのバランスを高い水準で維持することができ、かつ、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜の発生がなく、また印刷時に版面の湿し水の量が見やすくなることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
【0012】
(1)アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られる平版印刷版用支持体であって、
表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2 以下であり、
3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線(以下、単に「振幅分布曲線」という場合がある。)において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2である、表面形状を有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
【0013】
(2)前記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造とが重畳された構造である、(1)に記載の平版印刷版用支持体。
【0014】
(3)前記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造が重畳された構造である、(1)に記載の平版印刷版用支持体。
【0015】
(4)前記小波構造の開口径に対する深さの比の平均が0.2以上である上記(3)に記載の平版印刷版用支持体。
【0016】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<表面の砂目形状>
本発明の平版印刷版用支持体は、表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2 以下であり、3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2である、表面形状を有することを特徴とする平版印刷版用支持体である。
【0018】
本発明者は、ポツ状残膜とその原因となる支持体表面の深い凹部との関係について鋭意研究した結果、該表面の深さ3μm以上の凹部の数が、ポツ状残膜の発生に関係することを見出した。更に、深い凹部の生成を制御して該表面の3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2の正規分布に近い形にすることで耐汚れ性が向上し、かつ印刷時に版面の湿し水量が非常に見やすくなることを見出した。本発明者は、上記知見を基に本発明を完成したのである。
【0019】
本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、該表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2 以下である。これにより、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜が発生しなくなる。
【0020】
本発明の平版印刷版用支持体において、深さ3μm以上の凹部の数の測定方法は、以下の通りである。
レーザ顕微鏡を用いて表面の400μm□を非接触で0.01μmピッチで走査して3次元データを求め、この3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部の数を数える。
【0021】
本発明者は、後述する粗面化処理により深さ3μm以上の凹部が生成する原因について鋭意研究した結果、原因を以下のように推定した。
第一に、機械的粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子の稜部分がアルミニウム板の表面に深く突き刺さって凹部が形成されること。
第二に、電解粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、電解粗面化処理時に電流が特定の箇所に集中してしまうこと。
【0022】
本発明者は、このように原因を推定し、更に、鋭意研究した結果、以下のような手段により、粗面化処理により生成する深さ3μm以上の凹部を60個/mm2 以下にすることができることを見出した。
即ち、第一の原因である機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子が突き刺さることに対しては、下記(i)〜(v)の手段を見出した。
(i)粒子径の小さい研磨剤を用いる。
例えば、沈降分離を行って、粒子径の大きいものを除去し、小さいもののみを用いたり、再粉砕により研磨剤の粒子同士を接触させて磨耗させたりすることにより、研磨剤の粒子径を小さくすることができる。
(ii)尖りが少ない粒子の研磨剤を用いる。
機械的粗面化処理に通常用いられるパミストン(以下「パミス」ともいう。)は、火山灰を粉砕して得られるものであり、粒子は割れたガラスのような板片状で稜部分が尖っている。これに対し、ケイ砂は12面体や24面体に近い形状であり、尖りが少ない。
【0023】
(iii)機械的粗面化処理に用いられるブラシ毛を柔らかいものにする。
例えば、毛径の細いブラシを用いたり、柔らかい材質のブラシを用いたりすることにより、ブラシ毛を柔らかくすることができる。
(iv)機械的粗面化処理に用いられるブラシの回転数を低くする。
スラリー液中に含有される研磨剤粒子に適度に「逃げ」の時間を与えることにより、突き刺さりが抑制される。
(v)機械的粗面化処理に用いられるブラシの押し圧(負荷)を低くする。
【0024】
また、第二の原因である電解粗面化処理時に電流が特定の箇所に集中してしまうことに対しては、下記(vi)〜(viii)の手段を見出した。
(vi)電解粗面化処理において硝酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解が均一に起こりやすくなるように、アルミニウム板の合金成分中のCu量を低くする。
電解粗面化処理においては、通常、酸性の電解液中で交流電流を通電することで、アルミニウムの溶解反応(ピッティング反応)と、溶解して生じた成分が溶解反応部に再付着するスマット付着反応とが、交流のサイクルに従って交互に起こる。ここで、硝酸電解液を用いる場合には、アルミニウム板に含有される合金成分の種類や量の影響を非常に受けやすく、特にCuの影響が大きい。これはCuの存在により、電解粗面化処理時の表面抵抗が高くなるためと考えられる。そのため、合金成分中のCu量を0.002質量%以下とすることにより、電解粗面化処理時の表面抵抗が小さくなるため、電流集中が抑制され、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
【0025】
(vii)電解粗面化処理において硝酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解粗面化処理を行う前にプレ電解を行う。
プレ電解では、ピット形成の起点を均一に形成させることができる。これにより、その後の電解粗面化処理において、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
【0026】
上述したような手段により、表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数を60個/mm2 以下とすることができる。
【0027】
本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2である、表面形状を有する平版印刷版用支持体である。
【0028】
上記該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)について図5〜図7を用いて説明する。
図7は、支持体表面の3次元表面粗さを測定したイメージを表す3次元表面粗さ測定データの一例を示す図であり、該データから振幅分布曲線を得る。
図5は、表面の粗さ曲線および振幅分布曲線を模式的に表す図であり、(a)は振幅分布曲線において浅い領域側への拡がり(幅)よりも深い領域側の拡がりXbの方が大きい(以下、単に「深い領域側の拡がりが大きい」という場合がある。)表面形状を説明する図であり、図5(b)は浅い領域側の拡がりと深い領域側の拡がりが等しい表面形状を説明する図であり、図5(c)は深い領域側の拡がりXbよりも浅い領域側の拡がりXaの方が大きい(以下、単に「浅い領域側の拡がりが大きい」という場合がある。)表面形状を説明する図である。図6は図5に示した振幅分布曲線の拡大図であり、それぞれXaおよびXbを示した図である。
【0029】
該振幅分布曲線において深い領域側の拡がり(幅)Xbが大きいということは、表面に存在する深い凹部が多いことを意味しており(図5(a))、この点でポツ残膜が発生しやすくなる傾向がある。なお、本発明では3μm以上の深い凹部が少ないことが前提であるのはいうまでもない。
また同時にこのような振幅分布曲線の偏りは凹凸の頂上面(各山頂の高さ)が揃う傾向にあることを示している。このように凹凸の頂上面(各山頂の高さ)が揃っていると印刷時に版面に供給された湿し水表面が平滑になり光りやすく、版面に供給された量を確認するのが難しくなる。つまり、印刷時に版面の湿し水の量が見にくくなる。
なお、ここで、「山」とは、JIS B601−1994に規定されている「山」をいう。
【0030】
一方、該振幅分布曲線において浅い領域側の拡がり(幅)Xaが大きいということは、表面に存在する突起部分が多いことを意味しており(図5(c))、この点で印刷時にインキが付きやすく汚れやすくなる傾向がある。つまり、耐汚れ性に劣る。
【0031】
図5(b)に示すように、該振幅分布曲線において浅い領域側の拡がり(幅)Xaと深い領域側の拡がり(幅)Xbがバランスよく、該振幅分布曲線が略正規分布状であると、表面に存在する深い凹部および突起部分が少なく、また凹凸の頂上面(山頂線)が不均一となり、耐汚れ性と耐刷性とのバランスを高い水準で維持することができ、かつ、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜の発生がなく、また印刷時に版面の湿し水の量が見やすくなる。
つまり、振幅分布曲線が深さ方向(振幅方向)においてバランス良く広がっているのが好ましい。
【0032】
本発明においては、表面の3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2であり、好ましくは0.9〜1.1である。
【0033】
本発明の平版印刷版用支持体において、上記振幅分布曲線の比(Xa/Xb)の測定方法は、以下の通りである。
レーザ顕微鏡を用いて表面の400μm×400μmを非接触で0.01μmピッチで走査して3次元データを求め、この3次元データをコンピュータに取り込み、演算処理を行って振幅分布曲線を得る(例えば、ISO4287参照)。
得られた振幅分布曲線のピーク深さから浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの長さを測定して、Xbに対するXaを算出する。
上記測定を5視野行い、その平均値を振幅分布曲線の比(Xa/Xb)とする。
なお、図6は、図5に示した振幅分布曲線の拡大図であり、それぞれXaおよびXbを示した図である。
なお、上記測定方法では3次元表面粗さ曲線を測定しているが、2次元表面粗さ曲線を測定してもよく、本発明者が確認したところ、2次元データの結果と3次元データの結果とは、ほぼ同じ値を示した。
【0034】
本発明の平版印刷版用支持体においては、上記の特性を有する表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造とが重畳された構造であるのが好ましい。これにより、耐汚れ性と耐刷性とを両立することができる。
また上記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造が重畳された構造であるのがより好ましい。これにより、耐汚れ性および耐刷性の向上を特に図ることができる。
【0035】
本発明において、平均波長5〜100μmの大波構造は、平版印刷版の非画像部の表面の保水量を増加させる効果を有する。この表面に保持された水が多いほど、非画像部の表面は雰囲気中の汚染の影響を受けにくくなり、印刷途中で版を放置した場合にも汚れにくい非画像部を得ることができる。
大波構造が形成されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、平版印刷版の検版性が優れたものとなる。大波構造の平均波長が5μm未満であると、中波構造との差がなくなる場合がある。大波構造の平均波長が100μmを超えると、露光現像後、露出された非画像部がぎらついて見えてしまい、検版性を損なう場合がある。大波構造の平均波長は、10〜80μmであるのが好ましい。
【0036】
上記大波構造に重畳される平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって画像記録層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm未満であると、上層に設けられる画像記録層との密着性が低下し、平版印刷版の耐刷性が低下する場合がある。また、中波構造のピットの平均開口径が5μmを超えると、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数が減るため、やはり耐刷性が低下する場合がある。
【0037】
上記中波構造に重畳される平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。中波構造に小波構造を組み合わせることで、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm未満であると、水膜形成に大きな効果が得られない場合がある。また、小波構造のピットの平均開口径が0.2μmを超えると、中波構造が崩れてしまい、上述した中波構造による耐刷性向上の効果が得られない場合がある。
【0038】
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。即ち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
【0039】
本発明の平版印刷版用支持体において、表面の大波構造の平均波長、中波構造の平均開口径および小波構造の平均開口径、ならびに開口径に対する深さの平均の測定方法は、以下の通りである。
【0040】
(1)大波構造の平均波長
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Sm を5回測定し、その平均値を平均波長とする。
【0041】
(2)中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。大波構造を重畳した構造の場合も同じ方法で測定する。
また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。大波構造を重畳した構造の場合も同様であった。
【0042】
(3)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0043】
(4)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
【0044】
上述したように、本発明の平版印刷版用支持体においては、平版印刷版としたときにポツ状残膜の発生がなく、印刷時に版面の湿し水の量が見やく、かつ、耐汚れ性および耐刷性に優れたものとするために、該平版印刷版用支持体の表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2 以下であり、3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2である表面形状とするのある。
【0045】
好ましくは、上記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造とが重畳された構造であり、より好ましくは、上記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造が重畳された構造である。
【0046】
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものである。本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理および陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法
が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
これらの方法により得られた本発明の平版印刷版用支持体は、2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0047】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−24168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0048】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0049】
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2 、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2 であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
特に、深い凹部を多く形成させないという点で、ブラシ毛の直径は0.5mm以下であるのが好ましい。
【0050】
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点、および、深い凹部を多く形成させにくいという点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。特に、深い凹部を多く形成させないという点で、パミストンでは30μm以下であるのが好ましく、また、ケイ砂では20μm以下であるのが好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
【0051】
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
【0052】
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いることで、本発明に特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0053】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0054】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0055】
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0056】
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0057】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0058】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.2〜3msecであるのが好ましい。0.2msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
【0059】
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0060】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0061】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0062】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2 であるのが好ましく、50〜300C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2 であるのが好ましい。
また、高濃度および/または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0063】
硝酸電解液を用いた電解粗面化処理の前に、下記プレ電解を行うと、該電解粗面化処理において、深い凹部が多く形成されない。
(プレ電解)
プレ電解は、硝酸電解時のピット形成の起点を形成させる工程である。アルミニウム板の材質の影響を受けにくく、非常に腐食性の高い塩酸を用いてわずかに電解を行うことにより、表面に均一に起点となるピットを形成させることができる。
プレ電解において、塩酸濃度は1〜15g/Lであるのが好ましく、また、陽極時の電気量は30〜70C/m2 であるのが好ましい。
プレ電解の後は、スマット除去のためにアルカリエッチングを行うのが好ましい。アルカリエッチングにおけるアルミニウム溶解量は、0.2〜0.6g/m2 であるのが好ましい。
【0064】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜70C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2 であるのが好ましい。
【0065】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dm2 と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜50μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
このように電気量の総和を大きくし、平均開口径10〜50μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸を形成させる場合において、電気量が400C/dm2 未満であると、クレーター(大きな凹部)が不均一に形成され、粗面化されていない平らな部分がアルミニウム板に残るため振幅分布がいびつになり、該振幅分布曲線の比(Xa/Xb)を本発明の範囲内に調整できない。したがって、耐汚れ性と耐刷性とのバランスを高い水準で維持することができず、ポツ状残膜が発生しやすく、また印刷時に版面の湿し水の量が見にくくなる。
【0066】
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2 、より好ましくは5〜30C/dm2 で行われる。陰極電気量が3C/dm2 未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2 を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0068】
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0069】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2 であるのが好ましく、1〜5g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2 未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2 であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0070】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2 であるのが好ましく、5〜15g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2 未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2 を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0071】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2 であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0072】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0073】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0074】
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0075】
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0076】
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0078】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0079】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0080】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0081】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2 であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2 またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2 程度である。
【0082】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2 を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2 以下になるように行うのが好ましい。
【0083】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0084】
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0085】
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0086】
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
【0087】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0088】
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0089】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0090】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0091】
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
【0092】
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0093】
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0094】
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。ここで、硝酸電解液を用いる電解粗面化処理において深い凹部を多く形成させないようにするためには、銅の含有量は、0.002質量%以下であるのが好ましい。
【0095】
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JISA1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JISA3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
【0096】
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
【0097】
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
【0098】
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
【0099】
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
【0100】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
【0101】
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
【0102】
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
【0103】
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0104】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
【0105】
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
【0106】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
【0107】
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
【0108】
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
【0109】
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
【0110】
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
【0111】
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
【0112】
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
【0113】
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
【0114】
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
【0115】
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
【0116】
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
【0117】
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mm程度であり、0.15〜0.4mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0118】
[平版印刷版原版]
つぎに、本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版は、本発明の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる。
【0119】
<下塗層>
本発明の平版印刷版原版においては、上記のようにして得られた本発明の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設ける前に、必要に応じて、例えば、ホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層や、有機下塗層を設けてもよい。
【0120】
有機下塗層に用いられる有機化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体;ポリアクリル酸;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩;黄色染料が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0121】
有機下塗層は、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶媒、またはそれらの混合溶剤に、上記有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布し乾燥することにより設けられる。上記有機化合物を溶解させた溶液の濃度は、0.005〜10質量%であるのが好ましい。塗布の方法は、特に限定されず、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等のいずれの方法も用いることができる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが好ましく、5〜100mg/m2 であるのがより好ましい。上記範囲であると、耐刷性がより良好になる。
【0122】
<画像記録層>
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版用原版とすることができる。画像記録層は、例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、機上現像可能な無処理タイプが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像記録層について説明する。
【0123】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光層に好適に用いられる感光性樹脂組成物としては、例えば、o−キノンジアジド化合物と水不溶性かつアルカリ可溶性の高分子化合物(以下、「アルカリ可溶性高分子化合物」という。)とを含有する組成物が挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系樹脂が挙げられる。
更に感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報の[0031]に記載されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0124】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光層に好適に用いられる感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(以下、「結合剤」という。)とを含有する組成物が挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
好適な結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
更に感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物や、塗布性を向上させるための界面活性剤を加えることが好ましい。
上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型感光層の下塗層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
【0125】
<フォトポリマータイプ>
フォトポリマータイプの感光層に好適に用いられる光重合型感光性組成物(以下、「光重合性組成物」という。)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という。)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0126】
光重合性組成物に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好ましい。
光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子結合剤としては同公報の[0036]〜[0063]に記載されている物が有用である。
光重合性組成物には、同公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることが好ましい。
また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコールおよびその共重合体が挙げられる。
更に、上記の感光層の下塗層として、特開2001−228608号公報の[0131]〜[0165]に記載されているような接着層を設けるのも好ましい。
【0127】
<サーマルポジタイプ>
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。
アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に、(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましい。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。更に詳しくは特開2001−305722号公報の[0023]〜[0042]に記載されている高分子が好ましく用いられる。
【0128】
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、例えば、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料が挙げられる。
サーマルポジタイプの感熱層に用いられる組成物には、上記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。詳しくは特開2001−305722号公報の[0053]〜[0059]に記載されている化合物が好ましい。
サーマルポジタイプの感熱層は単層であってもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造であってもよい。
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が挙げられる。
【0129】
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される上記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されたものが挙げられ、(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いられるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されたものが挙げられ、(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましく、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており、好適である。(C)ラジカル重合性化合物および(D)バインダーポリマーに関しては同公報の[0036]〜[0060]に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤) を加えることも好ましい。
【0130】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋型の層(酸架橋層)が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、「架橋剤」という。)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤としては、(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
【0131】
<無処理タイプ>
無処理タイプの感熱層は、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、、スルホン酸発生ポリマー含有型等のタイプがある。
熱可塑性微粒子ポリマー型は、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子が(J)親水性高分子マトリックス中に分散され、露光部の熱により疎水性のポリマーが溶融し、互いに融着してポリマーによる疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子(以下、「微粒子ポリマー」という。)は、微粒子ポリマー同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散する、親水性表面を有する微粒子ポリマーが好ましい。微粒子ポリマーとしては、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号、同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等のモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物が挙げられる。中でも、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを用いるのが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーは、微粒子を構成するポリマー自体が親水性であるもの、ポリマーの主鎖または側鎖に親水性基を導入して親水性を付与したもの等のポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマー、親水性オリゴマーまたは親水性低分子化合物を、微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものを包含する。微粒子ポリマーとしては、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーがより好ましい。上記したような微粒子ポリマーは、(J)親水性高分子マトリックス中に分散させることで、機上現像する場合には機上現像性が良好となり、更に、感熱層自体の皮膜強度も向上する。
【0132】
マイクロカプセル型としては、特開2000−118160号公報に記載されているタイプや、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好ましく挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマー等が挙げられる。
無処理タイプの感熱層に親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強度も向上する。また、親水性樹脂を架橋硬化させて、現像処理不要の平版印刷版原版を得ることができる。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものや、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。親水性樹脂の具体例としては、上記した(J)親水性高分子マトリックスとして用いられる親水性樹脂として列挙したものが挙げられる。
中でも、ゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの感熱層には、光熱変換物質を添加することが必要である。光熱変換物質は、波長700nm以上の光を吸収する物質であればよく、上記したサーマルポジタイプに用いられる染料と同様の染料が特に好ましい。
【0133】
<バックコート層>
このようにして、平版印刷版用支持体上に、各種の画像記録層を設けて得られた平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、平版印刷版を重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなるバックコート層を設けることができる。
【0134】
<塗布方法>
上記コンベンショナルタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルタイプ、および無処理タイプの画像記録層形成液を上記平版印刷版用支持体の粗面化面に塗布する方法としては、コーティングロッドを用いる方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、スライドビードコーターを用いる方法等、従来公知の方法が使用でき、また公知の条件に従って行うことができる。
【0135】
上記コンベンショナルタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルタイプ、および無処理タイプの画像記録層形成液を塗布後のアルミニウム板を乾燥する装置としては、特開平6−63487号公報に記載の、乾燥装置内にパスロールを配置し、上記パスロールで搬送しつつ乾燥するアーチ型ドライヤー、上下からノズルによりエアーを供給し、ウェブを浮上させながら乾燥するエアードライヤー、高温に加熱された媒体からの輻射熱で乾燥する輻射熱ドライヤー、およびローラを加熱し、上記ローラとの接触による伝導伝熱により乾燥するローラドライヤー等がある。
【0136】
[平版印刷版]
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
一般には、像露光を行う。像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム・ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム・カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルタイプ、コンベンショナルタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。平版印刷版原版に用いられる好ましい現像液は、アルカリ現像液であれば特に限定されないが、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液が好ましい。また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像することもできる。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、該公報に記載されている内容を用いることができる。また、平版印刷版原版をアルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像することもできる。
【0137】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の作成
表面処理に関する説明の便宜上、実施例3を先に説明する。
(実施例3)
<アルミニウム板>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
【0138】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0139】
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、研磨剤(パミス、平均粒径20μm)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は20μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.48mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0140】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0141】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0142】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0143】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0144】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0145】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0146】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0147】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0148】
(j)陽極酸化処理
図4に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、実施例3の平版印刷版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。
【0149】
(実施例1)
上記(a)、(d)、(e)および(f)を行わず、かつ、上記(g)電気化学的粗面化処理において、電気量の総和を800C/dm2 とした以外は、実施例3と同様の方法により、実施例1の平版印刷版用支持体を得た。
【0150】
(実施例2)
上記(g)、(h)および(i)を行わなかった以外は、実施例3と同様の方法により、実施例2の平版印刷版用支持体を得た。
【0151】
(比較例1)
上記(a)機械的粗面化処理において、研磨剤の平均粒径を50μmとした以外は、実施例3と同様の方法により、比較例1の平版印刷版用支持体を得た。
【0152】
(比較例2)
上記(a)機械的粗面化処理において、研磨剤の平均粒径を50μmとした以外は、実施例2と同様の方法により、比較例2の平版印刷版用支持体を得た。
【0153】
(比較例3)
上記(a)、(d)、(e)および(f)を行わず、かつ、上記(g)電気化学的粗面化処理において、電気量の総和を300C/dm2 とした以外は、実施例3と同様の方法により、比較例3の平版印刷版用支持体を得た。
【0154】
(比較例4)
上記(a)、(g)、(h)および(i)を行わなかった以外は、実施例3と同様の方法により、比較例4の平版印刷版用支持体を得た。
【0155】
(比較例5)
上記(a)機械的粗面化処理を行わず、かつ、上記アルミニウム板にエンボス加工を施して実施例3と同様の方法により、比較例5の平版印刷版用支持体を得た。
なお、エンボス加工として、以下の方法を施した。
高さ1μm、直径2μmの半球状の突起を細密充填構造になるように設けた圧延ロールを用いてアルミニウム板を圧延し、上記の構造をアルミニウム板上に転写する加工を行った。
【0156】
2.平版印刷版用支持体の表面形状の測定
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面の凹部について、下記(1)〜(5)の測定を行った。結果を第1表に示す。
なお、第1表中、「−」は、該当する波長の凹部がなかったことを示す。
【0157】
(1)深さ3μm以上の凹部の数
レーザ顕微鏡(Micromap520、(株)菱化システム製)を用いて表面の400μm×400μmを非接触で0.01μmピッチで走査して3次元データを求め、この3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部の数を数え、1mm2 あたりの数を算出した。第1表において、該凹部の1mm2 あたりの数を「凹部の数」と表示する。
なお、レーザ顕微鏡としては、上記で用いたもののほか、例えば、(株)KEYENCE製の超深度形状測定顕微鏡VK5800も同様に用いることができる。
【0158】
(2)振幅分布曲線の比(Xa/Xb)
ISO4287に準拠して行った。即ち、上記と同様のレーザ顕微鏡を用いて、同様の条件により3次元データを求め、この3次元データをコンピュータに取り込み、演算処理を行って振幅分布曲線を得た。
得られた振幅分布曲線のピーク深さから浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの長さを測定して、Xbに対するXaを算出した。
上記測定を5視野行い、その平均値を振幅分布曲線の比(Xa/Xb)とする。
【0159】
(3)大波構造の平均波長
触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Sm を5回測定し、その平均値を平均波長とした。2次元粗さ測定は、以下の条件で行った。
cut off0.8、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
(4)中波構造の平均開口径
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0160】
(5)小波構造の平均開口径
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0161】
3.平版印刷版原版の作成
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、サーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。画像記録層を設ける前には、後述するようにアルカリ金属ケイ酸塩処理による親水化処理を行った。
【0162】
上記で得られた平版印刷版用支持体を、温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽の中に10秒間浸せきさせることで、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後の平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は10mg/m2 であった。
【0163】
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.2g
・メタノール 100g
・水 1g
【0164】
【化1】
Figure 0003919636
【0165】
更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗りした平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.7g/m2 になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0166】
<感熱層塗布液組成>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 1.0g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05g
・メチルエチルケトン 12g
【0167】
【化2】
Figure 0003919636
【0168】
4.露光および現像処理
上記で得られた各平版印刷版原版には、下記の方法で画像露光および現像処理を行い、平版印刷版を得た。
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2 )の半導体レーザーを装備したCREO社製TrenndSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光した。なお、後述するポツ状残膜の評価のためには、版面エネルギー量を20〜140mJ/cm2 まで20mJ/cm2 おきに変えて露光を行ったサンプルを準備した。
その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2 Oよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィンAK−02(日信化学社製)0.015質量%を含有する水溶液1Lに下記化合物aを添加したアルカリ現像液を用いて現像処理を行った。現像処理は、上記アルカリ現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。なお、化合物aの代わりに、下記化合物bまたはcを同じ添加量で添加したアルカリ現像液を用いた場合であっても、同様に現像処理を行うことができた。
<化合物a〜c>
化合物a:C1225N(CH2 CH2 COONa)2
化合物b:C1225O(CH2 CH2 O)7
化合物c:(C6 132 CHO(CH2 CH2 O)20
【0169】
5.平版印刷版の評価
上記で得られた平版印刷版について、ポツ状残膜の発生のしやすさ、シャイニー(検版性)、耐汚れ性(耐放置汚れ性)および耐刷性を下記の方法で評価した。
(1)ポツ状残膜の発生のしやすさ
各版面エネルギー量で露光したサンプルの現像後の非画像部を光学顕微鏡で倍率100倍で観察し、1mm四方の面積におけるポツの有無を調べた。ポツが観察されないサンプルの版面エネルギー量の最小値により、ポツ状残膜発生のしやすさを評価した。版面エネルギー量が小さいほどポツ状残膜が発生しにくいことを意味している。結果を第1表に示す。
なお、第1表において、ポツ状残膜の発生のしやすさを「ポツ状残膜」と表示する。
【0170】
(2)シャイニー(検版性)
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機に得られた平版印刷版を取り付け、湿し水の供給量を増加させながら版面の非画像部の光り具合を目視で観察し、光り始めたときの湿し水の供給量で検版性(水上がりの見やすさ)を評価した。結果を第1表に示す。光り始めたときの湿し水量が多いものから少ないものまでを順に、○、○△、△、×の4段階で評価した。
【0171】
(3)耐汚れ性
耐汚れ性については、以下に示す放置後の汚れ(耐放置汚れ性)で評価した。
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後に、版の表面よりインキを取り除いて一旦印刷機より取り外し、室内に1時間放置した。その後再度印刷機に取り付けて印刷を開始したときの非画像部のインクの払われやすさ(非画像部のインク付着が認められなくなるまでに要したの印刷枚数)により評価した。
結果を第1表に示す。払われやすい方(印刷枚数が少ない方)が耐放置汚れ性に優れ、払われやすい方から順に、○、○△、△、×の4段階で評価した。
なお、耐汚れ性として、他の汚れ(例えば、ブランケット汚れ、網点部におけるインキの絡み難さ、苛酷インキ汚れ等)で評価したが、本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版では、特に問題なかった。
【0172】
(4)耐刷性
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
耐刷性は、比較例2の平版印刷版用支持体に上記画像記録層を設けた平版印刷版の印刷枚数を100としたときの相対値で表した。
【0173】
【表1】
Figure 0003919636
【0174】
第1表から明らかなように、アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られる平版印刷版用支持体であって、表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2 以下であり、3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置(ピーク深さ)に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がり(幅)Xaと深い領域側への拡がり(幅)Xbの比(Xa/Xb)が0.80〜1.2である、表面形状を有する本発明の平版印刷版用支持体(実施例1〜3)を用いた本発明の平版印刷版原版は、シャイニー(検版性)に優れ、露光および現像の条件を厳しくしても、ポツ状残膜の発生が少ない。このことは、通常の条件であれば、ポツ状残膜が発生しないことを意味する。
【0175】
また平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造を重畳した構造の砂目形状を表面に有する本発明の平版印刷版用支持体(実施例2)では耐汚れ性、耐刷性がともに向上する。更に平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造を重畳した構造の砂目形状を表面に有する平版印刷版用支持体(実施例3)ではポツ状残膜の発生が少なく、優れたシャイニーおよび耐汚れ性を維持したまま、耐刷性が著しく向上する。
【0176】
これに対して、深さ3μm以上の凹部の数が多すぎる場合(比較例1、2および5)は、いずれも版面エネルギー量が大きくポツ状残膜が発生しやすい。即ち、通常の条件で露光および現像を行ったときにポツ状残膜の発生するおそれがある。
また振幅分布曲線から得られる比(Xa/Xb)が0.80〜1.2の範囲をはずれる場合(比較例3〜5)は、シャイニーまたは耐汚れ性に劣る。
【0177】
【発明の効果】
以上に説明したように、表面形状に特徴を有する本発明の平版印刷版用支持体を用いれば、従来トレードオフの関係から脱しえなかった耐汚れ性と耐刷性のバランスを高い水準で維持し、更に、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜の発生を抑制でき、印刷時に版面の湿し水の量が見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【図4】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【図5】 表面粗さ曲線および振幅分布曲線を模式的に表す図であり、図5(a)は振幅分布曲線において深い領域側の拡がりが大きい表面形状を説明する図であり、図5(b)は浅い領域側の拡がりと深い領域側の拡がりが等しい表面形状を説明する図であり、図5(c)は浅い領域側の拡がりが大きい表面形状を説明する図である。
【図6】 図6(a)は図5(a)に示した振幅分布曲線の拡大図であり、図6(b)は図5(b)に示した振幅分布曲線の拡大図であり、図6(c)は図5(c)に示した振幅分布曲線の拡大図であり、それぞれXaおよびXbを示した図である。
【図7】 図7は、支持体表面の3次元表面粗さを測定したイメージを表す3次元表面粗さ測定データの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (4)

  1. アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られる平版印刷版用支持体であって、
    表面に存在する深さ3μm以上の凹部の数が60個/mm2以下であり、
    3次元表面粗さ曲線の振幅分布曲線において頻度がピークとなる位置に対する、該振幅分布曲線の浅い領域側への拡がりXaと深い領域側への拡がりXbの比Xa/Xbが0.80〜1.2である、表面形状を有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
  2. 前記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造とが重畳された構造である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  3. 前記表面形状が、平均波長5〜100μmの大波構造と平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造が重畳された構造である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
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