JP2004009615A - 蒸着フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルムの非ラミネート面に酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着してなる蒸着フィルムおよびラミネート面に熱融着層を積層してなる積層蒸着フィルムならびにラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に、真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成する際に、特定の条件下で蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの製造方法に関する。
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性に優れた透明性を有し、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有し、かつ熱融着性フィルムとのボイル処理後のラミネート強度に優れた包装材料に好適な蒸着フィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。そして、かかる透明ガスバリア性フィルムは、一般には透明性、剛性に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであるので、そのままではヒートシール性がなく、包装用フィルムとしてはもち得ないので、低密度ポリエチレンフィルム、プロピレンランダム共重合体フィルム等の熱融着性(ヒートシール性)を有するフィルムを透明ガスバリア性フィルムの無機酸化物蒸着面あるいは非蒸着面にラミネートして用いられている。
【0003】
他方、かかる透明ガスバリアフィルムが包装材料として認知されるに伴ない接着強度の更なる改良が要求され、その方法の一つとして、特定の二軸延伸ポリエステルフィルムの片面にポリウレタン系樹脂層を形成し、かかる層上に酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着する方法が提案されている(特開平11−300917号公報)。しかしながら、かかる方法で得られる二軸延伸ポリエステルフィルムのウレタン系樹脂層上に蒸着された無機酸化物面に熱融着性フィルムを積層して、包装材料として用いた場合は酸素や水蒸気のバリア性が不安定になる虞があることが分かった。一方、非蒸着面に単にウレタン系樹脂等のアンカー材を塗布して熱融着性フィルムを積層したフィルムをボイル・レトルト等の加熱殺菌処理用の包装材料として用いた場合は、ボイル等の処理を行うとラミネート強度が低下することが分かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、高水分下での剥離強度に優れ、且つボイル等の処理を行ってもラミネート強度が低下しない、熱融着性フィルムとのラミネート特性に優れた無機酸化物蒸着フィルムを開発すべく種々検討した結果、蒸着用フィルム基材としてラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材を用い、非ラミネート面に特定の条件下で無機酸化物を蒸着することにより、耐水性、特に水分の存在下における無機酸化物層とフィルム基材との接着強度、酸素、水蒸気のバリア性を同時に有し、熱融着性フィルムとのラミネート強度が強い蒸着フィルムを得られることが分かり本発明に到達した。
【0005】
【発明を解決するための手段】
【発明の概要】
本発明は、ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム、好ましくは二軸延伸ポリエステルフィルム基材の非ラミネート面に、無機酸化物、好ましくは酸化アルミニウムを蒸着してなり、好ましくは無機酸化物層と二軸延伸フィルム基材層の非ラミネート面との高水分下における剥離強度が少なくとも0.3N/15mmであることを特徴とする蒸着フィルム及びラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に、真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成する際に、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcps(アルミニウムKα線)と酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcps(アルミニウムKα線)との比(A/B)を
(A/B)≦0.85
の範囲で蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの製造方法に関する。
【0006】
【発明の具体的説明】
二軸延伸フィルム
本発明に係る二軸延伸フィルムは、通常、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のフィルムを二軸延伸してなるフィルムであり、かかる熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性、剛性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。本発明に係る二軸延伸フィルムはこれら熱可塑性樹脂を用いて種々公知の方法で二軸延伸して得られるフィルムであり、具体的にはニ軸延伸ポリエステルフィルム、ニ軸延伸ポリプロピレンフィルム、ニ軸延伸ポリアミドフィルムが挙げられ、中でもニ軸延伸ポリエステルフィルムが剛性、透明性等に優れているのでよい。
なお、本発明における二軸延伸フィルムには、本発明の効果を損ねない範囲で紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等、さらにシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル、スチレン等を構成成分とする有機粒子を必要に応じて適宜含有してもよい。
【0007】
ポリウレタン系樹脂
本発明に係わる二軸延伸フィルムの片面(ラミネート面)にプレーコートされるポリウレタン系樹脂は、一般にフィルムの接着剤として公知のポリウレタン系からなるドライラミネート、水性ドライラミネート、無溶剤ラミネート、電子線硬化型ラミネート接着剤として製造されているポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタンあるいはポリウレタンポリ尿素樹脂等が挙げられるである。かかるポリウレタン系樹脂は、水分散型、溶剤型いずれでもよいが、ポリウレタン系樹脂皮膜の架橋度の調節が容易であり、また生産現場の環境の問題から水分散型ポリウレタン系樹脂が望ましい。水分散型ポリウレタン系樹脂としては、ポリウレタン系樹脂の主鎖または側鎖にカルボン酸塩(―COONaなど)、スルホン酸塩(―SO3Naなど)等の親水基を導入した自己乳化性ポリウレタン系樹脂が望ましい。溶剤型の場合にはイソシアネート系樹脂を架橋剤に使用し、三次元構造を有したポリウレタンを形成するが、水分散型はリニアーなポリウレタンあるいはポリウレタンポリ尿素樹脂になっている場合が多いため、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミン系樹脂等の架橋剤をポリウレタン系樹脂に対して3〜10重量%程度添加してもよいし、酸触媒を0.5〜1重量%添加して硬化反応をより促進させることもできる。かかる架橋剤は、易接着性皮膜の耐水性、耐溶剤性を向上させるだけでなく、接着性にも寄与する。
【0008】
さらに、溶剤型の場合は問題ないが、水分散型樹脂の場合には消泡剤、乳化剤等の界面活性剤が問題となる虞があり、これらが存在しないほうが好ましい。消泡剤が存在すると、消泡剤による外観不良を発生させる場合がある。また界面活性剤が存在すると、それらが原因となり、二軸延伸フィルム表面の白化の外観不良や蒸着後のバリア性不良等を起こす場合がある。また、場合によっては、無機微粒子や、有機微粒子等を添加しても良い。又、ブロッキングを防止するため無機や、有機の粒子を添加しておいてもよい。
【0009】
ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材
本発明に係わるラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材(以下、「二軸延伸フィルム基材」と略する場合がある)とは、上記熱可塑性樹脂から二軸延伸フィルムを製造するに際し、得られた二軸延伸フィルムの片面にポリウレタン系樹脂をラミネートしてなるものとは異なり、フィルムの延伸前に前記ポリウレタン系樹脂をコーティングしてから延伸、熱セットを行うプレコート延伸法により得られる二軸延伸フィルムである。ポリウレタン系樹脂をコーティングする時点は、逐次二軸延伸フィルムであれば、押出シートを縦方向に延伸をする前にコーティングしてもよいし、縦方向に延伸したフィルムにコーティングし、その後横方向に延伸してもよい。ポリウレタン系樹脂のコーティング方法としては、エアーナイフ方式、コートバー方式などの各種の方法を採用することができる。
【0010】
かかる本発明に係わる二軸延伸フィルム基材の製造方法の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂のペレット、粉末あるいはチップ等を押出機に投入し、加熱溶融した後、T−ダイからシート状に押出し、必要に応じて静電印加キャスト法等により冷却ドラムに密着させて急冷し製膜する。続いて得られた未延伸シートに前記ポリウレタン系樹脂液を、延伸後の塗布量が通常0.01〜0.5g/m2となるように塗布した後、逐次二軸延伸法又は同時二軸延伸法により延伸して二軸延伸フィルムとする。二軸延伸フィルムの延伸条件としては、用いる熱可塑性樹脂に好適な延伸温度及び延伸倍率で延伸され得るが、ポリエチレンテレフタレートであれば、延伸温度90〜145℃で、縦横にそれぞれ3.0〜5.0倍の倍率で延伸し、さらに210〜245℃で熱処理するのが望ましい。この方法によれば、予熱、延伸、熱セット工程で多くの熱が加わることにより、二軸延伸フィルムとポリウレタン系樹脂層とが強固に密着する。
ポリウレタン系樹脂層の厚みは、熱融着層(熱融着フィルム)との密着性やフィルムの生産性から0.01〜0.5g/m2の範囲、より好ましくは0.03〜0.1g/m2である。ポリウレタン系樹脂層の厚みが0.01g/m2より薄いと密着性が不十分となる虞があり、また、0.5g/m2より厚いとフィルムがブロッキングを起こす場合があり好ましくない。
【0011】
本発明に係わる二軸延伸フィルム基材は、ラミネート面にポリウレタン系樹脂層がプレコートされてなる二軸延伸フィルム基材であり、無機酸化物を蒸着してなる他の面、即ち非ラミネート面にはかかるポリウレタン系樹脂はプレコートされてはいない。無機酸化物をポリウレタン系樹脂層がプレコートされてなる面に蒸着してなるフィルムは、プレコートされてない面に蒸着してなるフィルムに比べ、酸素バリア性が左程改善されない場合があるので、無機酸化物を蒸着する非ラミネート面は、寧ろポリウレタン系樹脂はプレコートされてはいない方が好ましい。なお、二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面は、無機酸化物との接着性を改良するために例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。二軸延伸フィルム基材の厚さは、通常5〜50μm、好ましくは9〜30μmの範囲にある。
【0012】
本発明に係わる二軸延伸フィルム基材のポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなるラミネート面には、熱融着層との接着強度を低下させない範囲で、印刷インキ層を設けることができ、印刷インキとしては、特に限定されないが、従来知られている熱硬化型のグラビアインキ、フレキソインキ、紫外線硬化型インキ、電子線硬化型インキ、感熱記録型インキ等を用いることができる。またこれらは溶剤型、ノントルエン型、水性型、非溶剤型のいずれのタイプでも用いることができる。
【0013】
無機酸化物
本発明に係る無機酸化物としては、クロム、亜鉛、コバルト、アルミニウム、錫及び珪素等の無機酸化物等が挙げられる。中でも、酸化アルミニウム、シリカ(酸化珪素)が透明性に優れるので好ましい。
【0014】
熱融着層
本発明のラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に無機酸化物を蒸着してなる蒸着フィルムのラミネート面にラミネートする熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)あるいはEVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
【0015】
蒸着フィルム
本発明の蒸着フィルムは、前記ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に無機酸化物を蒸着してなる蒸着フィルムである。本発明の蒸着フィルムは二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成することにより得られる。無機酸化物としては、特に酸化アルミニウムが好適であり、かかる酸化アルミニウムを蒸着するには、真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成して蒸着し得る。
【0016】
酸化アルミニウム蒸着フィルム(A)
本発明の蒸着フィルムは、更には無機酸化物として酸化アルミニウムが二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に蒸着されており、かつ、高水分下における酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度が少なくとも0.3N/15mm、好ましくは0.3〜10N/15mm、さらに好ましくは0.5〜10N、最も好ましくは1〜10N/15mmの範囲にある酸化アルミニウム蒸着フィルム(A−1)である。
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルム(A−2)は、さらに酸素透過度が40ml/m2・day・MPa以下、好ましくは30ml/m2・day・MPa以下でかつ透湿度が4.0g/m2・day以下、好ましくは3.0g/m2・day以下のバリア性を有する。
【0017】
酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度を測定しようとしても、酸化アルミニウム層が極めて薄いため、そのままでは剥離試験を行うことはできない。したがって、酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度を測定するには、酸化アルミニウム層上に接着剤を塗布して他のフィルムを積層し、二軸延伸フィルム基材と他のフィルムとを剥離して測定する必要がある。しかしながら、かかる測定方法では、必然的に積層に用いた接着剤及び他のフィルムの種類に酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度が影響を受ける。
したがって、本発明における高水分下における酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度は、酸化アルミニウム蒸着膜を内側にして、その表面にポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:1で混合 塗布量:3g/m2)を塗布し、厚さ20μmのニ軸延伸ポリプロピレンフィルム:OPPフィルム(東セロ社製 商品名ME−1)を積層した。さらに、二軸延伸フィルム基材のラミネート面に、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:2で混合 3g/m2塗布)を用い、厚さ50μmのLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm3、MFR3.8g/10分)と貼り合せた。
次いで、この積層フィルムを、非ラミネート面とOPPフィルムとを剥離し、15mm幅にサンプリングした後、その剥離面に水滴を滴下して、300mm/分の速度で180度剥離強度を測定した。なお、酸化アルミニウム層と非ラミネート面とが剥離しているか否かは、剥離試験を行った後、二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面の表面を蛍光X線測定することにより酸化アルミニウムの有無を確認することができる。即ち、非ラミネート面に酸化アルミニウムが検出されなければ、酸化アルミニウム層と非ラミネート面との界面で剥離しており、かかる剥離強度が酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度であり、全ての酸化アルミニウムが非ラミネート面に残っておれば、酸化アルミニウム層と接着剤層との剥離強度を測定したことになり、酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度を測定したことにはならない。又、酸化アルミニウムの一部が非ラミネート面に残っておれば、剥離時に、酸化アルミニウム層が破壊したことを示しており、酸化アルミニウム層と非ラミネート面との剥離強度は、その強度以上を有していることと言える。
【0018】
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルム(A−1)は、好ましくは酸化アルミニウム層が、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcps(アルミニウムKα線)と酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcps(アルミニウムKα線)との比(A/B)が(A/B)≦0.85、さらに好ましくは(A/B)≦0.80、より好ましくは(A/B)≦0.75の範囲で蒸着して得られうる上記記載の剥離強度を有する酸化アルミニウム蒸着フィルムである。この範囲で製造すれば高水分下における酸化アルミニウム層と二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面との剥離強度が強い酸化アルミニウム蒸着フィルムとなる。
【0019】
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルムの他の態様(A−2)は、好ましくは酸化アルミニウム層が、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcps(アルミニウムKα線)と酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcps(アルミニウムKα線)との比(A/B)が0.35≦(A/B)≦0.85、さらに好ましくは0.45≦(A/B)≦0.80、より好ましくは0.60≦(A/B)≦0.75の範囲で蒸着して得られうる上記記載の剥離強度を有する酸化アルミニウム蒸着フィルムである。この範囲で製造すれば高水分下における酸化アルミニウム層と二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面との剥離強度が強く、酸素透過度及び透湿度が低い酸化アルミニウム蒸着フィルムとなる。
【0020】
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルム(A)における酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcpsは以下の方法により得られる。すなわち、蒸着機内に所定量の酸素を導入し、加工時の光線透過率が所定の数値になるように、アルミニウムの蒸発量を制御して得られる、又は、所定のアルミニウムが蒸着されるよう制御した条件に所定量の酸素を導入して反応させて得られる、酸化アルミニウムフィルムをサンプリングし、蛍光X線分析装置ZSX100s(理学電気工業社製)を用いてアルミニウムのKα線について測定し、この蛍光X線強度を(A)kcpsとする。
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルム(A)における酸素導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcpsは、酸化アルミニウムの製造時、上記酸化アルミニウムフィルムのサンプリングするのと同じ条件下で酸素の導入を止め、得られるアルミ蒸着フィルムをサンプリングし、蛍光X線分析装置ZSX100s(理学電気工業社製)を用いてアルミニウムのKα線について測定し、この蛍光X線強度を(B)kcpsとする。
本発明の酸化アルミニウムを蒸着してなる蒸着フィルム(A)は、好ましくは酸化アルミニウム(1)の蛍光X線強度(A)kcpsが、0.5〜10kcps、より好ましくは0.5〜8kcps、さらに好ましくは0.5〜5kcpsの範囲にある。この範囲にすることにより、耐水接着強度、透明性及びバリア性に優れた酸化アルミニウム蒸着フィルム(A)となる。
【0021】
酸化アルミニウムを含む無機酸化物の膜厚は、特に限定はされないが、通常15Å〜500Å、好ましくは20Å〜450Åである。15Å未満ではガスバリア性に優れたフィルムが得られない虞があり、一方、500Å以上では可撓性に欠けたフィルムとなる虞がある。
【0022】
酸化アルミニウム蒸着フィルム(A)の製造方法
本発明の上記記載の剥離強度を有する酸化アルミニウム蒸着フィルム(A−1)は、上記二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成する際に、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcpsと酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcpsとの比(A/B)を(A/B)≦0.85、さらに好ましくは(A/B)≦0.80、より好ましくは(A/B)≦0.75の範囲で蒸着した後、酸化アルミニウム蒸着膜を酸素に触れさせることにより得られる。付着率が0.85を越えると高水分下における接着強度(剥離強度)が改良されない虞がある。
【0023】
本発明の上記記載の剥離強度を有しかつ酸素透過度及び透湿度が低い酸化アルミニウム蒸着フィルム(A−2)は、上記二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成する際に、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcpsと酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcpsとの比(A/B)を0.35≦(A/B)≦0.85、さらに好ましくは0.45≦(A/B)≦0.80、より好ましくは0.60≦(A/B)≦0.75の範囲で蒸着した後、酸化アルミニウム蒸着膜を酸素に触れさせることにより得られる。付着率が0.85を越えると高水分下における接着強度(剥離強度)が改良されない虞があり、一方、付着率が0.35未満では、酸素透過度及び透湿度が改良されない虞がある。付着率を0.60≦(A/B)≦0.75の範囲にすることにより、高水分下における剥離強度、耐酸素透過度及び耐透湿度に優れた酸化アルミニウム蒸着フィルムが得られる。
【0024】
得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcpsは、酸素との反応量に依存し、酸素の導入量(酸化度)が大きくなると金属アルミニウムとしての蒸着量が減少するので、(A)は小さくなり、酸素の導入量が少ないと金属アルミニウムとしての蒸着量が増すので(A)は大きくなる。そして、酸素を全く導入しない場合の金属アルミニウムの蒸着量を表すのが蛍光X線強度(B)kcpsである。
更に、酸化アルミニウム(金属アルミニウム)の蒸着量は、蒸着されるフィルム基材の加工速度(処理速度)、蒸発したアルミニウムが二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に付着する効率(蒸着効率)、アルミニウムの蒸発速度等に依存し、又、酸化アルミニウム(金属アルミニウム)の蒸着量と蒸着フィルムの光線透過率とは相関があり、付着率が同じならば、酸化アルミニウム(アルミニウム)の蒸着量が増すと加工時の蒸着フィルムの光線透過率は低下する。
尚、蛍光X線測定装置を蒸着槽内に装備することにより、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルムの蛍光X線強度(B)を測定れば直接条件を管理できるため、より好ましい。
【0025】
又、蛍光X線測定装置を蒸着槽内に装備しない場合は、予め、使用する蒸着装置で、加工速度、金属アルミニウムの蒸発量、酸素導入量等を変えて蒸着フィルムを得、(A)及び(B)を測定し、加工速度、金属アルミニウムの蒸発量、酸素導入量、光線透過率等と(A)及び(B)との検量線を求めておくことが好ましい。
そして、(A/B)をかかる範囲にするには、具体的には、例えば反応させる導入酸素量とアルミニウムの蒸発量を制御することによって行い得る。導入酸素量はマスフローコントローラーを用い、一定にコントロールできる。導入酸素の量は、加工速度、膜厚等により大きく変動するが、たとえば蒸着速度600m/分、酸化アルミニウム蒸着膜の蛍光X線強度(A)が1.0kcpsの場合で巾1mあたり、好ましくは、2〜5.5L/分、より好ましくは、3〜5L/分にすればよい。アルミニウムの蒸発量は、アルミニウム蒸着膜の350nmでの光線透過率もしくは、導入酸素を一定とした酸化アルミニウム蒸着膜の光線透過率を基準に制御できる。光線透過率の測定装置(光線透過率計)を蒸着槽内に組込めば、蒸着中に常に酸化アルミニウムの光線透過率を監視できる。その場合、酸化アルミニウム蒸着膜の光線透過率を、好ましくは65%〜99%、より好ましくは70%〜95%にすれば、(A/B)を所望の範囲にすることができる。
【0026】
本発明の酸化アルミニウム蒸着フィルム(A)は、好ましくは、酸素とアルミニウム蒸気との反応を、酸素を、二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した導入口から冷却ロールの回転方向に導入して行う。酸素の導入をフィルム基材の巻き取り側から行うと高水分下における接着強度が改良されない虞がある。
又、さらに好ましくは、真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に酸化アルミニウムを形成する際に、酸素の導入をフィルム基材からの距離が1〜150mm、特に好ましくは1〜120mmの位置から行う。酸素の導入位置が1mm未満では、酸素導入管の関係から設計が難しく、一方、150mmを越える位置から酸素を導入すると、高水分下における接着強度が改良されない虞がある。
【0027】
アルミニウムの加熱方法は種々公知の方法、例えば電子ビーム(EB)方式、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式等を用いることができる。中でも、熱効率がよく、高速で蒸着可能であり、膜厚分布の均一性がとりやすい電子ビーム方式の真空蒸着方がより好ましい。
蒸着速度は、製造上、装置が可能な範囲で速いほどよいが、好ましくは、10〜1000m/分、好ましくは、50〜1000m/分であり、この範囲であれば安定的に製造可能である。
二軸延伸フィルム基材の静電気除去や表面処理という観点から、蒸着槽内のフィルム基材の巻出し直後に、プラズマ処理を行ってもよい。プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等があげられる。また、放電にはガスの導入が必要であり、ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素等、放電で一般に用いられるさまざまなガスが挙げられる。
【0028】
積層蒸着フィルム積層蒸着フィルム
本発明の積層蒸着フィルムは、ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に無機酸化物を蒸着してなる蒸着フィルムのラミネート面に熱融着層をラミネートしてなる積層フィルムである。ラミネート面に熱融着層をラミネートする方法は種々公知の方法を採用し得る。例えば、二軸延伸フィルム基材のラミネート面上に熱融着層となる前記熱可塑性樹脂を押出しコーティング(押出しラミネート)する方法、二軸延伸フィルム基材のラミネート面と予め得られた熱融着性フィルムとを貼り合せる方法等が挙げられる。なお、積層蒸着フィルムをボイル・レトルト等の処理を行った後も二軸延伸フィルム基材のラミネート面と熱融着層とのラミネート強度が十分であるよう、特にデラミネーションが発生しないよう、接着剤の種類及び塗布厚みなどを選定するのが望ましい。接着強度が弱いと開封するときにデラミネーションが発現したりするだけでなく、耐圧強度や落袋強度が不足するため破袋の原因となりうる。
この場合耐熱性、接着性の観点からポリウレタン系接着剤を0.5〜10g/m2(ドライ)、好ましくは1〜5g/m2(ドライ)の塗布量で用いることにより接着性が安定する。したがって、ドライラミネートが好ましく、各層間の接着をボイル・レトルト等に適したウレタン系接着剤により行うことが望ましい。本発明の蒸着フィルム及び積層蒸着フィルムの無機酸化物を蒸着した面には、外層フィルムを積層することが好ましい。外層フィルムを積層することにより、酸化アルミニウム蒸着層の耐屈曲性の向上や剛性を付与することができる。このような外層フィルムとしては、印刷適性、可撓性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の二軸延伸フィルムが好ましい。また外層フィルムの厚みは特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に無機酸化物を蒸着してなる蒸着フィルム及びかかる蒸着フィルムのラミネート面に熱融着層を積層してなる積層蒸着フィルムは、従来の酸化アルミニウム蒸着フィルムに比べ、バリア性、耐水性、特に高水分下での耐水性、に優れるので、包装材料として使用する際にも、無機酸化物層、特には酸化アルミニウム層が二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に十分接着し、また、熱融着層と二軸延伸フィルム基材のラミネート面との接着強度が強いことから、食品包装における、水物、ボイル、レトルトでの使用においても、使用可能である。またボイル、レトルトの処理中においても、張り合わせフィルムとの剥離が生ずることなく好適に使用し得る。
さらに、本発明の蒸着フィルム及び積層蒸着フィルムは、食品の包装材料としてばかりでなく、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【0031】
実施例1
非ラミネート面をコロナ処理、ラミネート面にポリウレタン樹脂をプレコートしてなる12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの非ラミネート面に二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口(二軸延伸フィルム基材から20mm離れたところ)から冷却ロールの回転方向に酸素3.2SLM/1mを導入し、光線透過率が79%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成した。この時の付着率は0.7であった。
得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムの酸化アルミニウム蒸着膜を内側にして、その表面にポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:1で混合 塗布量:3g/m2)を塗布し、厚さ20μmのニ軸延伸ポリプロピレンフィルム:OPPフィルム(東セロ社製 商品名ME−1)を積層した。さらに、酸化アルミニウム蒸着フィルムのラミネート面に、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:2で混合 3g/m2塗布)を介して、50μmLLDPEフィルム(東セロ社製商品名TUX FCS 密度0.920g/cm3、MFR3.8g/10分)からなる熱融着層を積層して積層蒸着フィルムを得た。
かかる積層蒸着フィルムの物性を以下の方法で測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0032】
(1)酸素透過度の測定
温度20℃、湿度90%RHの条件で、酸素透過率測定機(MOCON社製:OXTRAN2/20)を使用して測定した。
(2)水蒸気透過度の測定
酸化アルミニウム蒸着フィルム積層体を、表面積が0.01m2になるように、製袋し、内容物として塩化カルシウムを入れ、温度40℃、湿度90%RHの条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
(3)蛍光X線強度
蛍光X線分析装置(理学電機工業製:ZSX100s)を用いてアルミニウムのKα線について測定した。
(4)剥離強度の測定
◎OPPフィルム/酸化アルミニウム蒸着フィルムの非ラミネート面
・乾燥状態での測定
積層蒸着フィルムのOPPフィルムと酸化アルミニウム蒸着フィルムの非ラミネート面を剥離し、15mm幅にサンプリングした後、300mm/分の剥離速度で、180度ラミネート剥離強度を測定した。
・高水分下での測定
積層蒸着フィルムのOPPフィルムと酸化アルミニウム蒸着フィルムの非ラミネート面を剥離し、15mm幅にサンプリングした後、300mm/分の剥離速度で、剥離界面に水滴を滴下しながら、180度ラミネート剥離強度を測定した。
◎酸化アルミニウム蒸着フィルムのラミネート面/LLDPEフィルム
・乾燥状態での測定
積層蒸着フィルムの酸化アルミニウム蒸着フィルムのラミネート面とLLDPEフィルムとを剥離し、15mm幅にサンプリングした後、300mm/分の剥離速度で、180度ラミネート剥離強度を測定した。
・高水分下での測定
積層蒸着フィルムの酸化アルミニウム蒸着フィルムのラミネート面とLLDPEフィルム間を剥離し、15mm幅にサンプリングした後、300mm/分の剥離速度で、剥離界面に水滴を滴下しながら、180度ラミネート剥離強度を測定した。
(5)高水分下での剥離強度測定後の酸化スミニウムの残存率の測定
酸化アルミニウム蒸着フィルムのアルミニウムKα線の蛍光X線強度(A)kcpsを前もって測定する。その後高水分下での剥離強度を測定したときの、基材フィルム側剥離界面(非ラミネート面)における残存酸化アルミニウムのアルミニウムKα線の蛍光X線強度(C)kcpsを測定する。(C)/(A)×100を残存率とする。
(6)ヒートシール強度
・乾燥状態のヒートシール強度
積層蒸着フィルムのLLDPEフィルム面同士を、130℃、1秒、2kg/cm2でヒートシールした後、15mm幅にサンプリングし、速度300mm/分でヒートシール強度を測定した。
・ボイル後のヒートシール強度
積層蒸着フィルムのLLDPEフィルム面同士を、130℃、1秒、2kg/cm2でヒートシールした後、15mm幅にサンプリングし、沸騰水に漬けて1時間ボイルした後、濡れた状態で、速度300mm/分でヒートシール強度を測定した。
【0033】
実施例2
実施例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口から冷却ロールの回転方向に酸素4SLM/1mを導入し、光線透過率が85%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成する以外は実施例1と同様に行った。得られた蒸着フィルムの付着率は0.6であった。測定結果を表1および表2に示す。
【0034】
実施例3
実施例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口から冷却ロールの回転方向に酸素4.5SLM/1mを導入し、光線透過率が90%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成する以外は実施例1と同様に行った。得られた蒸着フィルムの付着率は0.5であった。測定結果を表1および表2に示す。
【0035】
実施例4
実施例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口から冷却ロールの回転方向に酸素5.3SLM/1mを導入し、光線透過率が97%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成する以外は実施例1と同様に行った。得られた蒸着フィルムの付着率は0.3であった。測定結果を表1および表2に示す。
【0036】
比較例1
実施例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、非ラミネート面がコロナ処理され、ラミネート面にポリウレタン樹脂がプレコートされていない12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、非ラミネート面に二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口から冷却ロールの回転方向に酸素4SLM/1mを導入し、光線透過率が85%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成する以外は実施例1と同様に行った。得られた蒸着フィルムの付着率は0.6であった。測定結果を表1および表2に示す。
【0037】
比較例2
比較例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの非ラミネート面に二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口から冷却ロールの回転方向に酸素1SLM/1mを導入し、光線透過率が60%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成する以外は実施例1と同様に行った。得られた蒸着フィルムの付着率は0.95であった。測定結果を表1および表2に示す。
【0038】
参考例1
比較例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの非ラミネート面に、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:2で混合 3g/m2塗布)を介して、50μmのLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS密度0.920g/cm3、MFR3.8g/10分)を積層した。得られた積層フィルムを実施例1に記載した剥離強度の測定方法およびヒートシール強度の測定方法にしたがい、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとLLDPEフィルム間の剥離強度およびヒートシール強度を測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0039】
参考例2
実施例1で用いた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのポリウレタンがプレコートされたラミネート面に二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した酸素導入口(二軸延伸フィルム基材から20mm離れたところ)から冷却ロールの回転方向に酸素4SLM/1mを導入し、光線透過率が85%になるようアルミニウムの蒸発量を制御しながら、酸化アルミニウム蒸着フィルムを作成した。この時の付着率は0.6であった。得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムの蒸着面に、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名タケラックA310:タケネートA3 12:1で混合3g/m2塗布)を介して、50μmのLLDPEフィルム(東セロ社製 商品名TUX FCS 密度0.920g/cm3、MFR3.8g/10分)を積層し、実施例1に記載の方法で酸素透過度および透湿度を測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1および表2から明らかなように、付着率を0.7〜0.5にして得られた酸化アルミニウム蒸着フィルム(実施例1〜3)は、酸素透過度が15.0ml/m2・day・MPa以下及び透湿度が1.5g/m2・day以下と何れも耐酸素透過性及び耐透湿性に極めて優れており、かつ高水分下における二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面と酸化アルミニウム蒸着膜との剥離強度も0.7N/15mm以上有し、耐水接着強度にも優れている。また二軸延伸フィルム基材のラミネート面と熱融着層(熱融着フィルム)との乾燥状態および高水分下でのラミネート剥離強度ならびに乾燥状態およびボイル後のヒートシール強度も優れていることが明らかである。
【0043】
又、付着率を0.3にして得られた酸化アルミニウム蒸着フィルム(実施例4)は、酸素透過度および透湿度は実施例1〜3で得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムに比べて幾分低下しているが、高水分下における二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面と酸化アルミニウム蒸着膜との剥離強度は3.5N/15mmを有し、耐水接着強度は寧ろ優れており、二軸延伸フィルム基材のラミネート面と熱融着層(熱融着フィルム)とのラミネート剥離強度ならびにヒートシール強度は実施例1〜3で得られた酸化アルミニウム蒸着フィルムと同じく優れていることが明らかである。
一方、ラミネート面にポリウレタン系樹脂がプレコートされていない二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて得られた酸化アルミニウム蒸着フィルム(比較例1)は、耐酸素透過性および耐透湿性ならびに酸化アルミニウム蒸着層と二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面との高水分下の剥離強度は優れているが、二軸延伸フィルム基材のラミネート面と熱融着層のラミネート剥離強度やヒートシール強度に劣ることが明らかである。
又、付着率を0.95とした酸化アルミニウム蒸着フィルム(比較例2)は、高水分下におけるフィルム基材との剥離強度が0.1N/15mmと不充分であり、耐透湿性もあまり良くないことが明らかである。
なお、参考例2に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのポリウレタンがプレコートされたラミネート面に酸化アルミニウムを蒸着して得られた蒸着フィルム(酸化アルミニウムの付着率は0.6と実施例1と合せた)は、実施例1〜3で得られた蒸着フィルムに比べ、酸素透過度および透湿度が劣っていた。
Claims (10)
- ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に、無機酸化物を蒸着してなることを特徴とする蒸着フィルム。
- 二軸延伸フィルム基材が二軸延伸ポリエステルフィルム基材である請求項1記載の蒸着フィルム。
- 無機酸化物層と二軸延伸フィルム基材層の非ラミネート面との高水分下における剥離強度が少なくとも0.3N/15mmである請求項1記載の蒸着フィルム。
- 無機酸化物が酸化アルミニウムである請求項1または3記載の蒸着フィルム。
- ラミネート面にポリウレタン系樹脂層をプレコートしてなる二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に、真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて酸化アルミニウムを形成する際に、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcps(アルミニウムKα線)と酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcps(アルミニウムKα線)との比(A/B)を
(A/B)≦0.85
の範囲で蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの製造方法。 - 真空中で酸素とアルミニウム蒸気とを反応させて二軸延伸フィルム基材の非ラミネート面に酸化アルミニウムを形成する際に、得られる酸化アルミニウム蒸着フィルム(1)の蛍光X線強度(A)kcps(アルミニウムKα線)と酸素を導入しないで得られるアルミニウム蒸着フィルム(2)の蛍光X線強度(B)kcps(アルミニウムKα線)との比(A/B)を
0.35≦(A/B)≦0.85
の範囲で蒸着することを特徴とする請求項5記載の蒸着フィルムの製造方法。 - 酸素とアルミニウム蒸気との反応を、酸素を、二軸延伸フィルム基材の巻き出し側で且つ防着板内に設置した導入口から冷却ロールの回転方向に導入して行う請求項5または6記載の蒸着フィルムの製造方法。
- 酸素の導入を二軸延伸フィルム基材からの距離が1〜150mmの位置から行う請求項7記載の蒸着フィルムの製造方法。
- 請求項1〜4の何れかの蒸着フィルムのラミネート面に熱融着層を積層してなる積層蒸着フィルム。
- 請求項5〜8の何れかの方法で得られる蒸着フィルムのラミネート面に、接着層を介して、又は介せずに熱融着層を積層することを特徴とする積層蒸着フィルムの製造方法。
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