JP4245119B2 - 積層体及びそれからなる包装材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性インキ印刷層との接着性に優れた無機化合物層を含む積層体に関する。更に詳しくは、透明性、ガスバリア性、防湿性に優れた食品、医薬品等の包装用材料に好適な積層体及びそれからなる包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や薬品などの包装分野では、外気からの酸素などの侵入による内容物の変質を防ぐために、ガスバリア性をもった包装材の開発が広く行われている。かかるガスバリア性を有する包装材としては、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコールなどの極性高分子が知られている。しかし、ポリ塩化ビニリデンは塩素原子、ポリアクリロニトリルは−CN基を含有しているため、廃棄の際に環境に対する問題が近年持ち上がっている。また、ポリビニルアルコールは−OH基を含有しているため、ガスバリア性の湿度依存性が大きく、高湿度ではガスバリア性が著しく低下してしまうという欠点を有している。ガスバリア性の湿度依存性がないバリア材としては、アルミニウム及び亜鉛等の金属、あるいは酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物が知られている。
【0003】
一方、包装材料は内容物の表示、宣伝効果等を高めるために包装材料には印刷が施されている。そしてかかる印刷インキとして水溶性インキが着目されている。しかしながら、水溶性インキは従来の油性インキに比べるとポリオレフィン系フィルムのような表面の濡れ張力の低いフィルムへの接着性が不安定であることや、無機化合物層との接着性に劣ることから、印刷するフィルム表面に、水溶性インキ印刷層が接着しやすい表面処理を行うなど、何らかの改善が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者は、水溶性インキ印刷層との接着性に優れた無機化合物層を含む積層体を開発すべく種々検討した結果、本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【発明の概要】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる基材層(A)の少なくとも片面に形成された無機化合物(B)からなる薄膜上に、イオン基を有するポリエステル樹脂からなるの保護層(C)を介して水溶性インキ印刷層(D)が形成されてなることを特徴とする水溶性インキ印刷層との接着性に優れたガスバリア性を有する積層体である。
【0006】
【発明の具体的説明】
熱可塑性樹脂からなる基材層(A)
本発明に係る熱可塑性樹脂からなる基材層(A)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・ペンテン−1及びポリブテン等のポリオレフィン、ポリエチレンフタレート、ポリブチレンフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66及びポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド並びにポリスチレン等の熱可塑性樹脂フィルムであり、好ましくは少なくと1方向、更に好ましくは縦、横方向に二軸延伸したフィルムである。かかる基材層としては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムが後述の無機化合物(B)の形成加工適性、性能安定性に優れるので好ましい。かかる基材層の厚さは通常5〜50μm、好ましくは9〜30μmの範囲にある。
【0007】
これら基材層の素材となる熱可塑性樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
又、これら基材層の片面あるいは両面に、無機化合物、熱融着層との接着性を改良するためにコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等の表面処理を行っておいてもよい。
【0008】
無機化合物(B)
本発明に係る無機化合物(B)としては、アルミニウム及び亜鉛等の金属、クロム、亜鉛、コバルト、アルミニウム、錫及び珪素等の無機酸化物、窒化物、酸化インジウム錫、チタン酸鉛等が挙げられる。中でも、酸化アルミニウム、シリカ(酸化珪素)が透明性に優れるので好ましい。
無機化合物(B)の薄膜を前記基材層(A)の少なくとも片面に形成させる方法としては、化学蒸着(CVD)、低圧CVD及びプラズマCVD等の化学蒸着法、真空蒸着(反応性真空蒸着)、スパッタリング(反応性スパッタリング)及びイオンプレーティング(反応性イオンプレーティング)等の物理蒸着法(PVD)、低圧プラズマスプレイ及びプラズマスプレイ等のプラズマスプレイ法とが例示できる。
形成される無機化合物(B)の薄膜の厚さは、通常15〜2000Å、好ましくは30〜800Åの範囲である。2000Åを越えると透明性、耐屈曲性が低下する虞があり、又、その結果薄膜が割れることによるガスバリア性が低下する場合がある。一方、15Å未満では充分なガスバリア性が得られない虞がある。
【0009】
保護層(C)
本発明に係るイオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)は、親水基としてイオン基を導入したポリエステル、さらには、スルホン酸基もしくはスルホン酸塩基を導入したポリエステルが好ましい。また、本発明に係る保護層は、好ましくは48mN/m、より好ましくは50mN/m以上である。
【0010】
本発明に係る保護層(C)は、上記接着剤の水分散体を塗布することにより形成される。かかる水分散体としては、好ましくは界面活性剤のない、いわゆるソープフリーであることが好ましい。界面活性剤が存在すると、これらが、塗布する無機化合物との界面や、水溶性インキとの界面に存在し、接着性を阻害することが有る。水分散体の分散している粒径は、0.001〜0.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.3μmの範囲にある。接着剤の分子量は、1000〜30,000なる範囲であることが望ましい。1000未満であると、得られる皮膜の耐水性などが低くなりやすい。一方30,000を超えてあまりに大きい場合は、どうしても水分散体粒子が粗大化してしまい、安定した水分散体を得ることができないという虞がある。
【0011】
水溶性インキ印刷層(D)
本発明に係る水溶性インキ印刷層(D)を形成するインキは種々公知のものが使用し得る。かかる水性インキとしては無機顔料、有機顔料からなる顔料及び染料である色料、樹脂を分散あるいは溶解したビヒクル及び界面活性剤、静電防止剤、消泡剤、可塑剤等の補助剤とから構成され、樹脂として水溶性アクリル共重合系樹脂、水性ポリエステル系樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリアミド樹脂等を例示できる。水性インキは少量、例えば40%以下のアルコールを含んでいても良い。
【0012】
熱融着層(E)
本発明に係る熱融着層(E)は、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)あるいはEVAとポリオレフィンとの組成物等を用い得る。熱融着層の厚さは用途に応じて種々決め得るが、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0013】
積層体
本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂からなる基材層(A)の少なくとも片面に形成された無機化合物(B)からなる薄膜上に、イオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)を介して水溶性インキ印刷層(D)が形成されてなる。本発明の積層体は、種々公知の方法で製造し得る。例えば、コロナ放電処理等を行った熱可塑性樹脂からなる基材層(A)に真空蒸着等により無機化合物(B)からなる薄膜を形成し、当該薄膜上にイオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)を塗布した後、かかる保護層上に水溶性インキ印刷(D)を形成することにより得られる。
【0014】
包装材料
本発明の包装材料は、熱可塑性樹脂からなる基材層(A)の少なくとも片面に形成された無機化合物(B)からなる薄膜上に、イオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)を介して水溶性インキ印刷層(D)が形成されてなる積層体の少なくとも片面に、熱融着層(E)が積層されてなる。かかる熱融着層(E)は、水溶性インキ印刷層(D)上に積層されていてもよいし、基材層(A)の無機化合物層(B)からなる薄膜層が積層されていない面に積層されていてもよい。かかる熱融着層を、基材層(A)の無機化合物層(B)からなる薄膜層が積層されていない面に積層する場合は、予め熱可塑性樹脂からなる基材層(A)に積層しておいてもよい。熱融着層を積層する方法としては、熱融着層を形成する熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂からなる基材層(A)を形成する熱可塑性樹脂を共押出し成形した後一軸若しくは二軸延伸する方法、熱可塑性樹脂からなる基材層(A)を形成する熱可塑性樹脂を押出し一方向に延伸した後、熱融着層を形成する熱可塑性樹脂を押出しラミネートした後他方向に延伸する方法等を用い得る。
【0015】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂からなる基材層(A)の少なくとも片面に形成された無機化合物(B)からなる薄膜上に、イオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)を介して水溶性インキ印刷層(D)が形成されてなる積層体は、水溶性インキ印刷層(D)が表面の濡れ張力が45mN/m以上の保護層(C)上に形成されているので、水溶性インキの接着が良く、また、無機化合物(B)層を傷める虞も少ないことから、積層体のガスバリア性を損なうこと無く美麗な印刷層が得られ、かかる特徴を活かして、食品包装材料、医薬品包装材料をはじめあらゆる包装材料に用いることができる。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【0017】
なお、実施例および比較例における物性の測定方法および評価の基準は下記の通りである。
〈酸素透過度〉
モダンコントロール社製 酸素透過率測定装置(MOCON OX−TRAN2/20)を用い、20℃、80%RHの条件下で測定した。
〈透湿度〉
ガスバリア多層フィルムの熱融着層を内面として表面積100cm2の袋を作製し、この中に乾燥した塩化カルシウム約10g入れてヒートシールして密封する。この袋を40℃、90%RHの条件下に3日間放置した後、吸湿量を測定した。なお、透湿度の値は実測値と、構成するフィルムの透湿度を計算により除いて蒸着膜単位の透湿度(蒸着膜値)を換算して求めた。
〈印刷適性〉
着肉性:セルから積層フィルムに転写されたインキ各色の広がりを目視で観察し5段階で評価した。5(良)〜1(劣)
〈インキ接着〉
印刷面にセロファンテープ(ニチバン社製;商品名セロテープ)を貼り付けた後、セロファンテープを手で剥離してインキとフィルムの接着性を評価した。インキ/フィルム間で剥離しないものを○、剥離するものを×とした。
【0018】
実施例1
〈酸化アルミニウム蒸着フィルムの製造〉
真空槽内に酸素を導入しながらアルミニウムをエレクトロンビーム法により加熱蒸発させて12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に厚さ約100Åの酸化アルミニウムの薄膜を形成させて酸化アルミニウム蒸着フィルム(蒸着PETフィルム)を得た。
〈積層体の製造〉
前記蒸着PETフィルムの薄膜面上に、スルホン酸基を有するポリエステル水分散液を用い、乾燥後の厚みが0.3ミクロンになるよう塗布した。
〈印刷〉
前記積層体の塗布膜表面に、水/アルコール:1/1の希釈溶剤で希釈した水溶性インキ(#3ザーンカップ粘度 16秒)を用い5色グラビア印刷を施し積層フィルムを得た。
〈熱融着層の積層〉
前記印刷した積層フィルムの印刷面に、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル社製 タケラックA310:タケネートA3 12:1で混合)を3g/m2塗布し、厚さ50μm、密度0.920g/cm3のLLDPEフィルム(東セロ社製;商品名T.U.X. FCS)を貼り合せガスバリア多層フィルムとした。かかる多層フィルムを用いて前記酸素透過度及び透湿度を測定した。
結果を表1に示す。
【0019】
比較例1
実施例1で得られた蒸着PETフィルムの薄膜上に、溶剤系のポリエステルコート剤(東洋紡積社製 バイロン200)を乾燥した塗膜の厚みが0.3μmになるよう塗布し積層体を得、さらに水溶性インキにて印刷を行い積層フィルムを得た。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1から明らかなように、濡れ張力が56mN/mの保護層を有する酸化アルミニム蒸着フィルムに水溶性インキを印刷した積層フィルムは、インキの着肉性に優れ、インキと酸化アルミニウム蒸着層との接着性も優れるが、濡れ張力が41mN/mの保護層を有する酸化アルミニム蒸着フィルムに水溶性インキを印刷した積層フィルムは、インキの着肉性は優れるものの、インキと酸化アルミニウム蒸着層との接着性は劣ることが分かる。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂からなる基材層(A)の少なくとも片面に形成された無機化合物(B)からなる薄膜上に、表面の濡れ張力が45mN/m以上のイオン基を有するポリエステル樹脂からなる保護層(C)を介して水溶性インキ印刷層(D)が形成されてなることを特徴とする積層体。
- 基材層(A)が、二軸延伸フィルムである請求項1記載の積層体。
- 無機化合物(B)が、無機酸化物である請求項1記載の積層体。
- イオン基がスルホン酸基もしくはスルホン酸塩基である請求項1記載の積層体。
- 請求項1ないし4記載の積層体の少なくとも片面に熱融着層(E)が積層されてなる包装材料。
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