JP2004009180A - ビルトインモータ主軸 - Google Patents

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清水 明
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Abstract

【課題】簡単でコンパクトな構成のもとに、油性クーラントを用いる工作機械の主軸として、高速回転が可能で、回転時における振動の発生を可及的に少なくすることのできるビルトインモータ主軸を提供する。
【解決手段】ハウジング1内に回転軸2の両端部を滑り軸受3,4および5によって支持し、これらの間にモータロータ6並びにモータステータ7を設け、各滑り軸受3,4および5には、当該主軸が搭載される工作機械で用いる油性クーラントを潤滑油として供給する。ビルトインモータタイプとすることによりベルト走行による振動をなくすとともに、滑り軸受を用いることによって転がり振動の発生もなくし、また、その滑り軸受の潤滑に油性クーラントを用いることにより、専用の潤滑装置を不要とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はビルトインモータ主軸に関し、更に詳しくは、超仕上げ盤等の油性クーラントを用いる工作機械の主軸に使用されるビルトインモータ主軸に関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受の内輪または外輪(以下、軌道輪と称する)の起動面を超仕上げ加工する超仕上げ盤においては、一般に、被加工物である軌道輪の端面ををバッキングプレートに押圧するとともに、外周面をシューで受けた状態で、バッキングプレートを回転させることによって軌道輪に回転を与え、その状態でクーラントをかけながら超仕上げ砥石を揺動させて軌道面に押し付ける。
【0003】
このような超仕上げ盤においては、従来、バッキングプレートに回転を与える主軸とその駆動機構は、図6に例示するような構造が一般的に採用されている。
【0004】
すなわち、バッキングプレート61が装着される主軸62は、ハウジング621内に転がり軸受(図示せず)を介して回転軸622を回転自在に支承した構造を有し、主軸台63上に固定されている。回転軸622には、その一端側にバッキングプレート61が装着されるとともに、他端側には主軸プーリ64が装着されている。主軸台63の上には、モータ架台65を介して駆動モータ66が配置されており、この駆動モータ66に出力軸に取り付けられたモータプーリ67と上記した主軸プーリ64とにベルト68が掛け回されることにより、駆動モータ66の回転が主軸62に伝達される。
【0005】
この図6は内輪用のセッティングをした例を示しており、被加工物である内輪Wは、その内径面においてシュー(図示せず)で支持された状態で、ローラRによってバッキングプレート61に端面が押し付けられ、その状態でバッキングプレート61が回転することによって回転が与えられる。その内輪Wの回転状態において、油性クーラントをかけながら超仕上げ砥石Sを揺動させつつ軌道面に押し付けることによって、軌道面の超仕上げを行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のようなベルト駆動方式の主軸を採用した超仕上げ盤においては、駆動モータ66の振動が主軸62に伝わる問題のほか、主軸62の回転速度を上げるとベルト68の振動が大きくなり、加工精度に影響を与えるという問題がある。特に、ハードディスク等に用いられる小径型番やミネチュアの転がり軸受においては、軌道輪の超仕上げ加工時における回転の静粛性を得ることが、NRRO(非同期振れ)を低減させるための重要な対策の一つとなっている。
【0007】
しかしながら、このような小径型番やミネチュアの転がり軸受の軌道輪の超仕上げ加工においては、軌道輪を20000rpmにも及ぶ高速で回転させる必要があり、上記したベルト駆動方式の主軸を用いる場合、振動を抑制することは容易ではない。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、比較的簡単でコンパクトな構成のもとに、高速回転が可能で、しかも回転時における振動の発生を可及的に少なくすることができ、例えば転がり軸受の軌道輪用の超仕上げ盤の主軸に用いることによりNRROの低減を達成することのできるビルトインモータ主軸の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のビルトインモータ主軸は、ハウジングに対して回転自在に支承された軸にモータのロータが固着され、かつ、そのロータに対向して上記ハウジング内にモータのステータが配置された構造を有するとともに、油性クーラントを用いる工作機械に使用されるビルトインモータ主軸であって、上記軸がその両端部において滑り軸受によって支持され、その間に上記ロータが固着されているとともに、上記各滑り軸受に、上記油性クーラントが潤滑油として供給されるように構成されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0010】
ここで、本発明においては、上記モータのロータと、上記軸を両端部で支持する各滑り軸受の間に、それぞれエアパージ機構を設けた構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0011】
本発明の構成によれば、主軸内にモータを内蔵させてなるビルトインモータ主軸とすることによって、ベルトの走行による振動を抑えるとともに、軸を両端部において支える軸受として滑り軸受を採用することによって転がり振動をもなくし、更にその滑り軸受の潤滑油として、当該主軸が搭載される工作機械において加工時に用いられる油性クーラントを利用することによって、専用の潤滑油剤とその供給装置を不要とすることができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明のように、軸に固着されたモータのロータと、その軸を両端部において支持する滑り軸受との間にエアパージ機構を設けることにより、簡単な構成のもとに滑り軸受の潤滑用の油性クーラントがロータ並びにステータからなるビルトインモータにまで及ぶことを確実に防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明を玉軸受の内輪用の超仕上げ盤の主軸に適用した実施の形態の軸平行断面図である。
【0014】
ハウジング1内に回転軸2が回転自在に支承された状態で収容されている。この回転軸2は、図中右側(以下、前側と称する)においてラジアル・アキシャル滑り軸受3およびアキシャル滑り軸受4により支持されている一方、図中左側(以下、後側と称する)においてはラジアル滑り軸受5によって支持されており、これらの中間部分にモータロータ6が固定されている。また、そのモータロータ6の外周面に対向するように、略筒型をしたモータステータ7がハウジング1の内周面に取り付けられており、これらでビルトインモータを構成している。
【0015】
回転軸2の前端には、フランジ部8aが形成されたアダプタ部材8がインロー付きねじによって固着されており、このアダプタ部材8の前端面にバッキングプレート9が取り付けられている。このバッキングプレート9に、被加工物Wである玉軸受の内輪が前記した従来の超仕上げ盤と同様にローラRによって押し付けられた状態で、回転軸2の駆動によってに回転が与えられ、油性クーラントをかけながら超仕上げ砥石Sを揺動させつつ押圧することで、その軌道面に超仕上げ加工が施される。
【0016】
以上のアダプタ部材8のフランジ部8aの後側にラジアル・アキシャル滑り軸受3が、前側にアキシャル滑り軸受4がそれぞれ隣接して配置されている。ラジアル・アキシャル滑り軸受3は、図2に軸平行断面図を、図3にはその右側面図を示すように、中央部を貫通する孔3aを備えた略円筒形をした部材であって、その孔3aの表面(内周面)の軸方向中央部分に周方向に沿った油溜まり3bが形成されているとともに、その両側に軸方向に沿った複数の溝3cが形成されており、この孔3aに回転軸2が挿入され、この部分でラジアル滑り軸受を構成している。また、その前端面3dには、孔3aの周囲に沿った円形の油溜まり3eが形成されているとともに、その油溜まり3eから外周に向けて放射状に複数の溝3fが形成されており、この前端面3dにアダプタ部材8のフランジ部8aの後端面が当接し、この部分でアキシャル滑り軸受を構成している。また、以上の各油溜まり3bおよび3eには、それぞれ当該ラジアル・アキシャル滑り軸受3の外周側に連通する複数の潤滑油通路3gおよび3hが形成されている。
【0017】
アキシャル滑り軸受4は、アダプタ部材8のフランジ部8aの前端面に当接するように配置されている。なお、このアキシャル滑り軸受4のフランジ部8aの前端面への当接面は、図3に示すラジアル・アキシャル滑り軸受3のアキシャル軸受構成面に準じた形状とされており、その油溜まり4aにもこのアキシャル滑り軸受4の外周側に連通する複数の潤滑油通路4bが形成されている。
【0018】
以上の前側の各滑り軸受3,4のうちラジアル・アキシャル滑り軸受3は、ハウジング1の前端部に形成されているブッシュ収容孔1a内に圧入固定されており、アキシャル滑り軸受4は、ハウジング1の前端面にねじ(図示せず)により固定された前蓋10内に圧入固定されている。そして、これらの各滑り軸受3,4の各潤滑油通路3g,3hおよび4bには、ハウジング1ないしは前蓋10に形成されている潤滑油供給路1bないしは10aを介して、当該超仕上げ盤で用いられる油性クーラントが適当なフィルタを介して供給される。この油性クーラントは、各滑り軸受3,4を経た後、排出路1cを介して外部に排出される。
【0019】
一方、回転軸2を後側で支持するラジアル滑り軸受5は、回転軸2を貫通させる孔5aを備え、その孔5aの内周面は図2に示すラジアル・アキシャル滑り軸受3のラジアル軸受構成面に準じた形状とされるものであって、その孔5aの内周面の油溜まり5bには、複数の潤滑油通路5cが形成されている。
【0020】
このラジアル滑り軸受5はブッシュケース11内に挿入された状態でハウジング1内に収容されている。ブッシュケース11は、ラジアル滑り軸受5を挿入するための孔11aが形成された略円筒体で、後端に外フランジ部11bが、前端には内フランジ部11cが形成され、外周面11dがハウジング1の後端部に形成されたケース収容孔1dに嵌め込まれた状態で、外フランジ部11bにおいてハウジング1の後端面にねじ(図示略)で固定されている。ハウジング1のブッシュ収容孔1dの内径寸法は、モータステータ7の外径寸法よりも大きく、前記したブッシュ収容孔1aと同軸に形成されている。また、ブッシュケース11の後端面には後蓋12が取り付けれている。
【0021】
そして、この後側のラジアル滑り軸受5の潤滑油通路5cにも、後蓋12並びにブッシュケース11を通じて形成されている潤滑油供給路12a,11eを介して、当該超仕上げ盤で用いられる油性クーラントが適当なフィルタを介して供給される。この油性クーラントは、ラジアル滑り軸受5を経た後、排出路11fを介して外部に排出される。
【0022】
前記したラジアル・アキシャル滑り軸受3の後側と、ラジアル滑り軸受5の前側には、それぞれエアパージ用ノズル体13および14が配置されている。前側のエアパージ用ノズル体13はハウジング1に嵌め込まれ、後側のエアパージ用ノズル体14はブッシュケース11の内フランジ部11cの内周面に嵌め込まれている。
【0023】
これらの各エアパージ用ノズル体13,14は、互いに同等の形状・構造をしており、一方のエアパージ用ノズル体13を代表させてその構造を図4に軸平行断面図、図5にその右側面図を示して説明すると、全体としてリング状をなし、その外周面および内周面には周方向に沿った溝13aおよび13bを備えるとともに、その内外の溝13a,13bを繋ぐように複数の貫通孔13cが形成された構造を有し、各貫通孔13cがエアパージ用のノズルを形成している。
【0024】
そして、これらの各エアパージ用ノズル体13,14には、ハウジング1またはブッシュケース11ないしは後蓋12に形成されたオイルミスト供給路1eまたは11gないしは12bを通じてオイルミストが供給される。なお、これらの各オイルミストは、ミスト排出路1fまたは11hを介して外部に排出される。なお、ミスト排出路1fは紙面に直交する方向にオイルミストを排出する。
【0025】
以上の本発明の実施の形態においては、各滑り軸受3,4および5に油性クーラントを潤滑油として供給し、かつ、各エアパージ用ノズル体13,14にオイルミストを供給しつつ、ビルトインモータを駆動する。これにより回転軸2はその両端部においてラジアル方向に、アダプタ部材8のフランジ部8aの両端部においてアキシャル方向に滑り支持された状態で回転し、高い剛性のもとに転がり振動の発生もなく静粛に回転する。また、各滑り軸受3,4および5に潤滑油として供給されている油性クーラントは、エアパージ用ノズル体13,14に供給されるオイルミストによってパージされてビルトインモータにまで至ることがない。
【0026】
また、後側のラジアル滑り軸受5をブッシュケース11に挿入した状態でハウジング1内に配置し、ブッシュケース11の外径寸法をモータステータ7の外径寸法よりも大きくしているので、ブッシュケース11をハウジング1内に挿入する前にモータステータ7をビルトインすることにより、その作業が容易となる。
【0027】
おな、以上の実施の形態においては、転がり軸受の内輪用の超仕上げ盤に本発明を適用した例を示したが、本発明は、他の任意の部材を対象とする超仕上げ盤に適用することができるとともに、油性クーラントを用いる他の工作機械にも適用することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、主軸内にモータをビルトインしてベルトの走行による振動をなくするとともに、回転軸を滑り軸受によって支持することによって転がり振動の発生をもなくし、高速で回転させても振動の発生を抑制することができ、転がり軸受の軌道輪用の超仕上げ盤の主軸に適用した場合、NRROの低減に寄与することができる。FFTによる振動測定の結果、図6に示したベルト駆動方式の従来の主軸に比して振動を1/10にすることができ、また、ビルトインモータ主軸で転がり軸受を用いた場合に比して振動を1/2にすることができ、軸成分の振動を極めて低く抑え得ることが確かめられた。
【0029】
しかも、回転軸を支持する各滑り軸受の潤滑油として油性クーラントを用いているため、専用の潤滑装置が不要となってコストを低減させることができる。
【0030】
また、請求項2に係る発明のように、前後の滑り軸受とビルトインモータの間に、それぞれエアパージ機構を設けることにより、簡単な構成のもとに各滑り軸受に潤滑油として供給される油性クーラントがビルトインモータに及ぶことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明本発明を玉軸受の内輪用の超仕上げ盤の主軸に適用した実施の形態の軸平行断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるラジアル・アキシャル滑り軸受3の軸平行断面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるエアパージ用ノズル体13の軸平行断面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】従来の転がり軸受の軌道輪の超仕上げ盤の主軸およびその駆動機構の構成例の説明図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 回転軸
3 ラジアル・アキシャル滑り軸受
4 アキシャル滑り軸受
5 ラジアル滑り軸受
6 モータロータ
7 モータステータ
8 アダプタ部材
8a フランジ部
9 バッキングプレート
10 前蓋
11 ブッシュケース
12 後蓋

Claims (2)

  1. ハウジングに対して回転自在に支承された軸にモータのロータが固着され、かつ、そのロータに対向して上記ハウジング内にモータのステータが配置された構造を有するとともに、油性クーラントを用いる工作機械に使用されるビルトインモータ主軸であって、
    上記軸がその両端部において滑り軸受によって支持され、その間に上記ロータが固着されているとともに、上記各滑り軸受に、上記油性クーラントが潤滑油として供給されるように構成されていることを特徴とするビルトインモータ主軸。
  2. 上記モータのロータと、上記軸を両端部で支持する各滑り軸受の間に、それぞれエアパージ機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のビルトインモータ主軸。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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