JP2004008957A - リン、窒素の回収方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】下水、廃水、し尿等のリン、窒素を含有する有機性廃水の処理工程において、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)回収量の増加、スケールトラブルを低減するリン、窒素の回収方法及び装置を提供する。
【解決手段】嫌気性消化した汚泥を固液分離した消化脱離液からMAP結晶を生成させる方法において、生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液と消化脱離液を混合し、混合液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加しMAPを生成させることを特徴とするリン、窒素の回収方法。生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加した後、消化脱離液と混合し、混合液からMAPを生成させる方法。及びその装置。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水、廃水、し尿等のリン、窒素を含有する有機性廃水の処理工程において、リン、窒素を回収する方法及び装置に係わり、特に、該処理工程から発生する汚泥を嫌気性消化処理した後、リン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」ともいう)を効率的に回収し、更に消化槽におけるスケールトラブルを低減する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水、廃水、し尿等のリン、窒素を含む有機性廃水の処理施設では、まず、最初沈殿池において生汚泥を固液分離し、該分離された上澄み液を活性汚泥処理して有機物を除去していた。活性汚泥処理で増殖した活性汚泥は余剰汚泥として排出される。その過程で、排水中のリンは、生汚泥、及び余剰汚泥中に濃縮される。生汚泥と余剰汚泥は、汚泥の処理工程に送られ、嫌気性消化槽で、汚泥の減量化、メタンガスの回収が行われる。
【0003】
しかし、汚泥の消化工程では、濃縮されたリン及びアンモニウムが汚泥の消化により液側へ放出され、リン濃度は100〜600mg/リットル、アンモニウム濃度は500〜3000mg/リットルにまで上昇する。液中には、マグネシウムも数〜数十mg/リットル含有しており、pHが上昇することで、嫌気槽内でMAPが自然発生的に生成する。これらは、配管内でスケールとなって堆積し、配管の詰まりなどの問題が生じていた。
また、消化汚泥中にも、多量のMAPが含まれ、それらは回収されることなく焼却等の処分がされていた。その量は、下水の場合、処理場流入リンに対し5〜20%にもなる。
さらに、食品廃棄物、畜産廃棄物を嫌気性消化する過程においても、液中にリン、アンモニウム、マグネシウムが多量に溶出し、pHが上昇することでMAPが自然発生的に生成していた。
【0004】
消化槽から抜き出された消化汚泥は、脱水工程にて含水率の下がった汚泥と、高濃度のリンとアンモニウムを含有した脱離液に分離される。脱水工程でも、局所的な濃度分布によりMAPが析出し、脱水機の駆動部分等に固着して、脱水機の性能が落ちるトラブルも生じていた。
通常、脱離液は、最初沈殿池に返送する。しかし、高濃度のリン、アンモニウムを含む脱離液が返送されると、水処理系のリン負荷が増加する。リンの返送量は、処理場流入リンの10〜40%にも及ぶ。
過剰なリンが水処理系に流入すると、生汚泥、余剰汚泥として排出されないリンが多くなり、それらは処理水と共に放流される。リンの放流は、赤潮等の富栄養化問題の原因となっている。生汚泥、余剰汚泥中に濃縮されたリンは、再び消化槽へ流入する。MAPスケールをできるだけ発生させないようにするには、消化槽に流入するリン負荷を低減させる必要がある。
以上、説明したように、固形物中のリン、アンモニウムが液側へ溶出することで、水処理系のリン負荷の増加、結晶物のスケールトラブル、赤潮等の問題があった。
【0005】
そこで、脱離液、或いは、汚泥処理系の返流水からリンを回収し、水処理系のリン負荷を少なくしようとする方法が実用化された。この方法は、脱離液等にマグネシウムと、場合によってはアルカリを添加し、積極的にMAPを析出させ、回収するものである。
MAPを回収する装置としては、流動層方式、完全混合方式、種晶循環方式等があるが、高速処理が可能な流動層方式を用いることが多い。流動層方式は、予め反応槽内に種晶を充填させて、該種晶の表面で生成物を結晶化させる方法である。種晶には、生成物と同一の固形物が好ましいが、砂などの媒体に生成物をコーティングしたものでも良い。
【0006】
ところで、流動層方式でMAPを回収する場合の課題として、微細MAPの生成によるリン回収率の低下がある。微細MAPは、リン濃度、アンモニウム濃度、pHが高いと生成する。微細MAPは充分な沈降速度を持っていないため、反応槽から流出し、リンの回収率が低下する。この課題を解決するために、MAPを生成した処理水を反応槽に循環させることで、原水のリン濃度を低下させていた。
【0007】
通常、嫌気性消化の脱離液中のリン濃度は100〜600mg/リットル、アンモニウム濃度は500〜3000mg/リットルであり、アンモニウム濃度はリンに対し数倍高い。MAPの生成時のリンとアンモニウムの除去比は、リン1kgに対しアンモニウム0.45kgであり、処理水のリン濃度が低くなっても、処理水のアンモニウム濃度は僅かに低下する程度である。そのため、原水のアンモニウム濃度が1000mg/リットル以上と高い場合には、処理水循環を行っても、微細MAPの生成量が多かった。
また、前述したように、除去リン量に対し、除去アンモニウム量は約半分であり、原水のN/P比が高い場合には、極めて高濃度のアンモニウムが残留し、窒素の除去率が低かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、下水、廃水、し尿等のリン、窒素を含有する有機性廃水の処理工程において、該処理工程から発生する汚泥を嫌気性消化処理し、高効率にリン、アンモニウムを回収することで、(1)MAP回収量の増加、(2)スケールトラブルを低減するリン、窒素の回収方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は下記の構成からなる。
(1)嫌気性消化した汚泥を固液分離した消化脱離液からリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶を生成させる方法において、生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液と前記消化脱離液を混合し、該混合液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加しリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させることを特徴とするリン、窒素の回収方法。
(2)嫌気性消化した汚泥を固液分離した消化脱離液からリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶を生成させる方法において、生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加した後、前記消化脱離液と混合し、該混合液からリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させることを特徴とするリン、窒素の回収方法。
(3)前記混合液のアンモニウムイオン濃度が100〜1000mg/リットルとなるように汚泥脱離液と消化脱離液とを混合することを特徴とする前記(1)又は(2)記戴のリン、窒素回収方法。
【0010】
(4)汚泥を濃縮汚泥と汚泥脱離液に分離する固液分離装置と、前記濃縮汚泥を消化・分解する消化槽と、該消化槽からの消化汚泥を濃縮消化汚泥と消化脱離液に分離する固液分離装置と、前記汚泥脱離液と消化脱離液の混合した混合液を導入しマグネシウム及び/又はアルカリを添加して処理水とリン酸マグネシウムアンモニウムを回収する脱リン装置とを備えたことを特徴とするリン、窒素の回収装置。
【0011】
(5)汚泥を濃縮汚泥と汚泥脱離液に分離する固液分離装置と、前記濃縮汚泥を消化・分解する消化槽と、該消化槽からの消化汚泥を濃縮消化汚泥と消化脱離液に分離する固液分離装置と、前記汚泥脱離液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加した液と消化脱離液を導入し処理水とリン酸マグネシウムアンモニウムを回収する脱リン装置とを備えたことを特徴とするリン、窒素の回収装置。
【0012】
本発明の骨子は、アンモニウム濃度が液中リンに対し高い消化脱離液と、アンモニウム濃度が液中リンに対し比較的低い汚泥脱離液を混合し、該混合液中のアンモニウム濃度を100〜1000mg/リットルに調整することで、MAP回収量の増加、スケールトラブルの低減を図ることである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、発明の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明する。
なお、実施の形態および実施例を説明する全図において、同一機能を有する構成要素は同一の符号を付けて説明する。
【0014】
図1は、本発明の処理方式による一例のフローシートを示す。本発明のリン、窒素除去方法に使用する装置は、固液分離装置、消化槽、固液分離装置、脱リン装置からなる。汚泥として生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を用いる場合の例として説明する。
生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥1は、混合汚泥貯留槽2に貯められる。混合汚泥貯留槽2では、嫌気状態であり、汚泥中に含有していたリンが液側に溶出し、液のリン濃度が上昇する。特に、水処理系で嫌気・好気法など生物学的脱リン方法を行っている場合には、顕著にリン濃度が上昇する。およそ、リン濃度は50〜400mg/リットルとなる。一方で、アンモニウムの溶出はリンに比べると少なく、およそ、50〜200mg/リットルとなる。
【0015】
上記混合汚泥1を第1固液分離装置3で汚泥と汚泥脱離液5に分離させる。この場合、生汚泥、余剰汚泥を別々に固液分離しても良い。
濃縮された汚泥は、二次処理水などの希釈水6で、汚泥濃度を調整した後、消化槽7に投入される。
【0016】
消化槽7では、汚泥が分解することにより、液中のリン濃度、アンモニウム濃度が上昇する。従来のように、消化槽7に投入する前の段階ですでに液中のリン濃度、アンモニウム濃度が上昇している場合、消化槽7内は容易にMAPの飽和濃度以上となり、自然発生的にMAPが多量に析出していた。本発明によると、消化槽7の前段で、液中のリン濃度、アンモニウム濃度を低下させることで、自然発生的に発生するMAP量を低減することができる。その結果、MAP等によるスケールトラブルは減少する。また、消化汚泥と共に排出されるMAPが減少する。
【0017】
本発明においても、汚泥の分解によって消化槽7内のリン濃度は200〜500mg/リットル、アンモニウム濃度は500〜2000mg/リットルまで上昇する。
前記消化汚泥8は、第2固液分離槽9に送られる。第2固液分離槽9では、含水率の低下した消化汚泥(脱水消化汚泥)10と、高濃度のリン、アンモニウムを含有した消化脱離液11に分離される。
【0018】
このようにして、アンモニウム濃度の低い汚泥脱離液5とアンモニウム濃度の高い消化脱離液11が得られる。この両者を混合することでリン濃度が50〜400mg/リットル、アンモニウム濃度が100〜1000mg/リットルの混合液13が得られる。本発明によると、リン濃度をあまり変化させることなく、アンモニウム濃度を低下させることが可能である。
【0019】
混合液13は、脱リン装置14に投入される。図2に示すように、汚泥脱離液5にマグネシウム、アルカリを添加したのち、脱リン装置14に投入しても良い。脱リン装置14は、各種の反応装置が用いられるが、高速処理を可能とした流動層式が好ましい。脱リン装置14では、マグネシウム、アルカリを添加することで、MAPを生成する。そのMAPを回収MAP17として取り出す。従来、アンモニウム濃度が1000mg/リットル以上の廃水では、MAPを生成させた後の処理水でも、アンモニウム濃度が1000mg/リットル以上残留しており、処理水循環を行っても、反応槽内のアンモニウム濃度は低下しなかった。アンモニウム濃度が1000mg/リットル以上の環境では、MAP生成時の反応速度及び過飽和度が高すぎて、瞬時に微細なMAPが多数生成した。本発明によると、脱リン装置14流入のアンモニウム濃度を100〜1000mg/リットルとすることで、微細なMAPの生成を抑制している。
脱リン装置14を流出した処理水16は、水処理系に返流する。
【0020】
本発明の一連の操作により、従来、消化槽7で自然発生的に生成していたMAPの生成を抑えることができる。その結果、脱リン装置14での回収MAP17の回収量が増加し、また、スケールトラブルも低減する。更に、アンモニウム濃度を調整したことで、脱リン装置14自体のMAP回収率が上昇し、回収MAP17の回収量は更に増加する。
【0021】
【実施例】
以下において、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0022】
実施例1
この実施例では、図1に示すような処理フローを用いて処理を行った。処理装置は、生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥の固液分離装置、消化槽、消化汚泥の固液分離装置、脱リン装置からなる。第1固液分離装置は重力濃縮、第2固液分離装置は遠心分離機を用いた。MAP分離装置は流動層式のものを用いた。
消化槽は30mのものを用いた。汚泥脱離液と消化脱離液は1:1で混合した。
【0023】
各脱離液の性状と、混合液、脱リン装置流出水の性状を第1表に示す。混合液のT−Pは285mg/リットル、混合液のアンモニア性窒素は700mg/リットル、脱リン処理水のT−Pは15mg/リットルであり、リンの回収率は95%であった。また、MAPの回収量は、4.3kg/dであった。MAPは良好に回収された。
【0024】
【表1】
Figure 2004008957
【0025】
比較例1
図3に示す処理フローでリンの回収を行った。装置は第1固液分離装置がないこと以外、実施例1と同じにした。
消化脱離液、脱リン装置流出水の性状を第2表に示す。消化脱離液のT−Pは305mg/リットル、消化脱離液のアンモニア性窒素は1500mg/リットル、脱リン処理水のT−Pは105mg/リットルであり、リンの回収率は66%であった。アンモニア性窒素が高いことで、微細なMAPが多数析出し、処理水と共に流出しているのが確認された。MAPの回収量は、1.6kg/dであり、実施例1の37%しか回収されなかった。また、消化汚泥中には、消化槽内で析出したMAPが多数確認された。消化槽内での生成量は1mあたり、約1.6kgであった。
【0026】
【表2】
Figure 2004008957
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、アンモニウム濃度が液中リンに対し高い消化脱離液と、アンモニウム濃度が液中リンに対し比較的低い汚泥脱離液を混合し、該混合液中からMAPを生成させることで、従来、消化槽内で自然発生的に生成していたMAPの生成量を抑えることができた。その結果、別途設けた脱リン装置でのMAP回収量の増加、及びスケールトラブルの低減を図ることができた。更に、前記混合液中のアンモニウム濃度が消化脱離液よりも低下していることから、脱リン装置における微細なMAPの生成量が抑えられ、MAP回収率が上昇した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様の工程系統図である。
【図2】本発明の別の実施態様の工程系統図である。
【図3】従来のリン、窒素の回収工程のフローシートである。
【符号の説明】
1 混合汚泥
2 混合汚泥貯留槽
3 第1固液分離装置
4 濃縮汚泥
5 汚泥脱離液
6 希釈水
7 消化槽
8 消化汚泥
9 第2固液分離装置
10 脱水消化汚泥
11 消化脱離液
12 混合液貯留槽
13 混合液
14 脱リン装置
15 Mg、OH
16 処理水
17 回収MAP

Claims (5)

  1. 嫌気性消化した汚泥を固液分離した消化脱離液からリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶を生成させる方法において、生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液と前記消化脱離液を混合し、該混合液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加しリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させることを特徴とするリン、窒素の回収方法。
  2. 嫌気性消化した汚泥を固液分離した消化脱離液からリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶を生成させる方法において、生汚泥、又は余剰汚泥、又は生汚泥と余剰汚泥を混合した混合汚泥を固液分離した汚泥脱離液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加した後、前記消化脱離液と混合し、該混合液からリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させることを特徴とするリン、窒素の回収方法。
  3. 前記混合液のアンモニウムイオン濃度が100〜1000mg/リットルとなるように汚泥脱離液と消化脱離液とを混合することを特徴とする請求項1又は請求項2記戴のリン、窒素回収方法。
  4. 汚泥を濃縮汚泥と汚泥脱離液に分離する固液分離装置と、前記濃縮汚泥を消化・分解する消化槽と、該消化槽からの消化汚泥を濃縮消化汚泥と消化脱離液に分離する固液分離装置と、前記汚泥脱離液と消化脱離液の混合した混合液を導入しマグネシウム及び/又はアルカリを添加して処理水とリン酸マグネシウムアンモニウムを回収する脱リン装置とを備えたことを特徴とするリン、窒素の回収装置。
  5. 汚泥を濃縮汚泥と汚泥脱離液に分離する固液分離装置と、前記濃縮汚泥を消化・分解する消化槽と、該消化槽からの消化汚泥を濃縮消化汚泥と消化脱離液に分離する固液分離装置と、前記汚泥脱離液にマグネシウム及び/又はアルカリを添加した液と消化脱離液を導入し処理水とリン酸マグネシウムアンモニウムを回収する脱リン装置とを備えたことを特徴とするリン、窒素の回収装置。
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