JP2004006944A - 配線基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メタライズ層4上のニッケルメッキ層5の厚さTを2.5〜8μmとしたから、ニッケルメッキが緻密に析出するのでメタライズ層4の露出がなくなりハンダ不濡れ面がなくなる。これにより、ハンダ中のボイドの発生を低減できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配線基板に関し、詳しくはフリップチップ接続方式の半導体集積回路チップ(素子)をハンダ付けにより接続するための電極用パッド群(多数の電極用パッド)を有する配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路チップの実装方式のうち、フリップチップ接続方式は、一主面の全面に電極(入出力接続端子)用パッドを配置した半導体集積回路チップ(以下、集積回路チップ若しくは単にチップともいう)をフェイスダウンで配線基板の各電極用パッドにハンダ付けにより直接接続するものであり、高密度で接続できるものとして、ボールグリッドアレイ(BGA)、ピングリッドアレイ(PGA)、ランドグリッドアレイ(LGA)などといったタイプの配線基板(以下、単に基板ともいう)に広く採用されている。
【0003】
このような配線基板及びその電極用パッド(以下、単にパッドともいう)は、例えば、アルミナセラミックからなるセラミック製の配線基板にあっては、次のようにして製造される。すなわち、積層された所定のアルミナグリーンシートに、電極用パッド等のパターン(円形や正方形など)に応じてタングステンやモリブデン等の高融点金属粉末を主体としてなるメタライズペーストを印刷し、同時焼成することによりその表面にチップやプリント基板(マザーボード)との接続用のパッドをなすメタライズ層を形成し、その後、それらの表面に例えば無電解メッキ法によりニッケルほう素(Ni−B)メッキをし、その上に金(Au)メッキして酸化防止が図られている。
【0004】
そして、このようなフリップチップ接続方式によるアッセンブリーにおいては、図7及び図8に示されるように、配線基板1の各電極用パッド11と集積回路チップ31の各電極用パッド32が一致するようにして重ね、加熱によってあらかじめ集積回路チップ31のパッド32や基板1のパッド11に形成しておいた比較的高融点のハンダ(バンプ)33をリフローしてハンダ付けすることによりパッド11,32間の電気的接続を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近時においては配線基板1のパッド11に形成されたハンダバンプ中、或いは、図8に示されるように、配線基板1に集積回路チップ31がフリップチップ接続された半導体装置では、両パッド11,32間を接続するハンダ33中に原因不明のポア(微小気孔)やボイド(微小空隙)などの空所(以下、単にボイドという)Vが発生していることが多く、電気的接続の信頼性に問題があるといった指摘が浮上してきた。
【0006】
このようなボイドVは、図9に示したように、配線基板1と集積回路チップ31との接合面に垂直方向に引張り荷重Pをかけ、配線基板1から集積回路チップ31を引き離す(ちぎる)ようにしてパッド11,32間のハンダ33を切断し、そのハンダの切断面を観察することなどで確認される。すなわち、このようなボイドが存在しない場合には、図10に示したように引っ張りによりハンダが伸びてくびれる際、細くくびれるためにその切断先端面が鋭くなるのに対し、ボイドVが存在していた場合には図11に示したように、ハンダ33の切断先端面が鋭くならず、その切断面(切り口)にボイドVの存在を裏付ける微小なクレータ(凹部)Kが観察される。因みに、このようなクレータKは従来、パッド数1000に対して150〜350程度発生していた。
【0007】
ところで、この種の配線基板1のパッド11をなすメタライズ層には上記したようにニッケルメッキがかけられるが、そのメッキ層の厚さは、従来、1μm程度が耐蝕性において必要十分な厚さとされていた。また、厚すぎればメッキ後に発生する内部応力によりメタライズ層が剥離する危険性が高くなるなどかえって問題が発生しやすく、さらに、メッキ工数(メッキ処理時間)などの生産効率上ないしコスト上からして一般には厚くても1.5μmまでとするのが適切とされ、したがってその標準的な厚さは、1〜1.5μmの範囲とされていた。
【0008】
こうした中、本願発明者らは配線基板1のパッド11のニッケルメッキ層の厚さが従来適切とされていた1〜1.5μmの範囲では下地メタライズ層の表面がニッケルメッキ層で十分被覆されず部分的な露出を生じ、この下地メタライズ層の露出やその部位へのメッキ液の残留などがボイドの発生原因になっている可能性があると考え、ニッケルメッキ後のパッド11の表面を確認したところ、図12に示されるようにタングステン(W)、モリブデン(Mo)等下地メタライズ層4や、この下地メタライズ層4をなすメタライズペーストに含まれるAl2O3微粒子などのセラミック粒子やガラスフリットがニッケルメッキ層5の表面に僅かながら露出し、ニッケルメッキ層5にピンホールが存在することが確認できた。そこで、本願発明者らは、このようなメタライズ層4の露出が解消されるようにニッケルメッキ層5の厚さを種々変えたサンプルを作り、これに集積回路チップをフリップチップ接続し、上記の引張り試験を繰返し実施してハンダの切断面の状態を確認するなど各種の試験を繰返したところ、ニッケルメッキ層の厚さを所定範囲に設定した場合には、そのボイドの発生数(率)を格段と低減できることを知った。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、その目的とするところは、フリップチップ接続方式のセラミック製の配線基板であって、その電極用パッドをなすメタライズ層がタングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属からなり、これがニッケルメッキされてなるものにおいて、そのメッキ厚さを適切に設定することで、フリップチップ接続におけるハンダ中のボイドの発生を低減し、もって電気的接続の信頼性を高めることのできる配線基板を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明は、フリップチップ接続方式の集積回路チップをハンダ付けにより接続するための電極用パッド群を備え、該各電極用パッドをなすメタライズ層上にニッケルメッキ層を有してなるセラミック製の配線基板において、該ニッケルメッキ層の厚さを2.5〜8μmとしたことにある。
【0011】
従来の配線基板のパッドをなすメタライズ層上のニッケルメッキ層の厚さは、1〜1.5μmであったのに対し、本発明においては2.5〜8μmあり、従来の略2〜3倍以上の厚さがある。このため、ニッケルメッキ層はメタライズ層の露出が防止される程度にその表面に緻密に析出したものとなる。したがって、メッキ液の残留もなく、Auメッキが全面に被着され、或いはその後のハンダバンプの形成時やハンダ付け時においてハンダ不濡れ面がなくなるため、集積回路チップのパッド間でハンダ付けした後において、ハンダ中に発生するボイドは著しく低減される。
【0012】
本発明において、ニッケルメッキ層の厚さを2.5μm以上としたのは、これより薄いと、下地メタライズ層が部分的に露出し、メッキ層にピンホールができハンダが濡れない部分が残存し、その部分に起因してボイドが形成されるためである。一方、ニッケルメッキ層の厚さが8μmを超えるようだと、メッキ析出時にメッキ層に発生する内部応力やセラミックや下地メタライズ層とメッキ層との熱膨張係数の違いに起因して、そのメッキ後において下地メタライズ層の密着性の低下や密着不良(剥離や基板との間のクラックの発生)を招いてしまい、この面において接続信頼性を低下させる危険性が増大する。本発明において、ニッケルメッキ層の厚さは2.5〜8μmとすればよいが、好ましくは、3〜7μmの範囲とするとよい。この範囲では、ボイドの発生率も低く、しかも内部応力による下地メタライズ層の剥離の危険性も一層低減できるからである。
【0013】
なお、ニッケルメッキは、電気的に独立したパッドには無電解メッキやバレルメッキによることになるが、相互に電気的導通が確保されているようなパッドでは電解メッキとすることができる。ただし、その厚さはいずれにおいても、2.5〜8μmの範囲であればよく、好ましくは3〜7μmの範囲である。また、ここにニッケルメッキには、Ni−Bメッキ、Ni−Pメッキ、Ni−Coメッキ等のNi合金メッキも含む。
【0014】
ここで無電解メッキによってニッケルメッキ層を形成する場合には、少なくともNi−Bメッキによってニッケルメッキ層の最表面を形成するのが好ましい。具体的にはニッケルメッキ層全体をNi−Bメッキによって形成するのが好ましく、その他、ニッケルメッキ層のうち下層をNi−Pメッキなどによって形成し、その後、Ni−Bメッキにより最表層を形成してもよい。Ni−Bメッキによって形成されたNi−Bメッキ層はハンダ濡れ性に優れるからである。
【0015】
また、ニッケルメッキ層の上には、何も設けないようにしてもよいが、厚さ0.01〜1μm、さらに好ましくは0.03〜0.1μmの金(Au)メッキ層を形成するのが好ましい。金メッキ層により下層(下地)となるニッケルメッキ層(以下、下地ニッケルメッキ層若しくは下地ニッケル(層)ともいう)の酸化防止ができ、ハンダ濡れ性を向上及び安定化させ得るからである。十分な酸化防止を図るためには金メッキ層の厚さを0.01μm以上必要とする。一方、パッド上にPb−Sn系などのハンダ或いはハンダバンプ(端子)を形成、接合すると、金メッキはすみやかにハンダ中に拡散し、脆い金属間化合物(Au−Sn合金)を生成するが、金メッキが1μmより厚い場合にはパッド上に設けるハンダ中に多くの金(Au)が拡散して金属間化合物が多くなりすぎ、ハンダバンプ自身の強度やハンダバンプとパッドとの接合強度を低下させる。したがって、金メッキ層の厚さは0.01〜1μmとするのが適切であるが、より好ましくは0.03〜0.1μmの範囲である。この範囲では酸化防止にも十分であり、かつハンダとの金属間化合物の生成量も少なくなるためである。
【0016】
さらに、このような金メッキ層には、ハンダバンプの形成前に下地ニッケル層をなすニッケルが拡散されているのが好ましい。すなわち、前記ニッケルメッキ層の上には、厚さが0.01〜1.0μmで、金にニッケルを含んでなる金ニッケル層が形成されているとよい。このような金ニッケル層が形成されていると、結果としてさらにボイド発生が低減できるし、ハンダ(或いはハンダバンプ)の密着(接合)強度及びハンダ自体の強度も高められるためである。
【0017】
ボイドの発生が低減できる理由は次のように考えられる。ニッケルメッキ層の上に単に金メッキをして金メッキ層を形成してなるパッドでは、金メッキ直後では、金はニッケル上に置換反応で析出するため、両者が密着(反応)しているのは僅かと考えられる。したがって、このような金メッキの上にPb−Sn系のハンダが溶融接合されると、ハンダへの金の拡散速度が速いのに対し、ニッケルへのハンダの拡散速度は遅いため、この拡散速度のアンバランスにもハンダ中にボイドが発生しやすい原因があると考えられる。これに対して、金ニッケル層では、含まれるニッケルが、金がハンダに拡散するのを抑制ないし防止する作用があるためその速度が遅く、したがって拡散速度のアンバランスが解消され、結果としてハンダ中にボイドができにくくなると考えられる。
【0018】
また、前記したようにニッケルメッキ層上に単に金メッキをしてなる場合には、ハンダ形成時にその金がハンダに極めて容易に溶解して拡散するため、ハンダと下地ニッケル層とが直接接触してハンダ付けされてしまう。これに対し、パッドをなすニッケルメッキ層上に、金ニッケル層を形成したものでは、金ニッケル層中のニッケルが、その金をハンダに拡散するのを制限(抑制)ないし防止する作用があるため、ハンダは下地ニッケル層と直接接触することなく、金ニッケル層と接触する。ハンダは下地ニッケル層と接触する場合に比べ、金ニッケル層と接触する場合の方が密着強度が高く、しかも金属間化合物の生成も抑制されるから、その分ハンダの密着強度及びハンダ自体の強度も高められる。すなわち、金ニッケル層中のニッケルは、金ニッケル層中の金のハンダ中への溶解を制限する作用が高く、したがって高い密着強度を確保できる。したがって、フリップチップ接続後、両パッド間に発生する剪断力によって接合しているハンダが破断するのを防止するためにも有効である。
【0019】
なお、このように単に金層の形成に代えて金ニッケル層を形成する場合でも、その厚さは0.01〜1.0μmの範囲とするのが好ましい。そして、金ニッケル層中のニッケル含有量は、10〜80原子%の範囲が適切である。この範囲のニッケルの含有があると、ボイドの発生数の低減に効果的だからである。
【0020】
なお、各電極用パッドをなすメタライズ層上のニッケルメッキ層の上に金ニッケル層を形成するのは、下地ニッケルメッキ層の形成後に金メッキをかけ、その後、所定温度で熱処理することによって、ニッケルメッキ層中のニッケルを金メッキ層中に拡散させる手法によるのがよい。このような熱処理によって拡散させる場合には、その処理自体が容易である上に、温度条件、時間条件で拡散量(ニッケル含有量)の制御が容易にできるからである。しかも、熱処理によって、メッキ被膜中に取込まれたメッキ液をガス化して除去できるので、ハンダ中のボイドの発生の低減にも一層寄与できる。
【0021】
なお、拡散によって金ニッケル層を形成するための熱処理(最高)温度は、150℃〜750℃の範囲が適切である。150℃未満では温度が低いためにニッケルの十分な拡散が得られないので、十分な効果つまりハンダ中のボイドの発生を低減できないためである。一方、750℃を超える場合には拡散し過ぎで金ニッケル層中のニッケル含有量が多くなり過ぎるためである。つまり、パッド表面の金含有量が余りに少なくなり、その酸化防止の効果が得られないためである。なお、このような問題を一層効果的に回避するためには、熱処理温度を350〜550℃とするとよい。
【0022】
そして、本発明に係る配線基板の製造に当たっては、ニッケルメッキ層に金メッキ層若しくは金ニッケル層を形成する場合も含め、ニッケルメッキ層の厚さが2.5〜8μm好ましくは3〜7μmとなるように、そのニッケルメッキを複数回に分けてかけるのが好ましい。すなわち、こうしたニッケルメッキ層の厚さは1回のメッキでも得ることができるが、複数回でその厚さとなるようにメッキをかけ、複数のニッケルメッキ層とするのがより好ましい。複数回に分けてメッキをかけた場合には同じ厚さを1回でかけた場合に比べ、下地メタライズ層の被覆がより具合良くなされ、その露出を略皆無とし得る結果、ボイドの発生数を一層低減できるからである。
【0023】
なお、このように複数回に分けてニッケルメッキをかける際には、各回のニッケルメッキ層の厚さをなるべく一定に設定するのがメッキ作業上から好ましい。またメッキの密着安定化のためやメッキ層の内部応力の緩和のため、複数回に分けたニッケルメッキ工程の間に、少くとも1回の加熱処理工程を含めるとよく、好ましくはその加熱処理は、各回のメッキ後(次回のメッキの前)ごとにするとよい。このようにすることで、メッキのブリスター(フクレ)や下地メタライズ層の剥離(ハガレ)の防止に有効だからである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図1中1は、フリップチップ接続方式の集積回路チップ接続用の配線基板(パッド部分の断面の一部のみ図示)であり、詳しくは図示しないがアルミナセラミック製のセラミック基板2の一主面2aには、ビア3に接続されてパッド11をなすところの多数のメタライズ層4が基板2と共に同時焼成により形成されている。そして、各メタライズ層4には、例えば、無電解メッキ法により、Ni−Bメッキ層からなるニッケルメッキ層5が厚さ(T)2.5〜8μmで被着され、その上に、例えば0.03〜0.1μm程度の厚さの金メッキ層6が被着され、パッド11をなすように形成されている。
【0025】
このような配線基板1ではパッド11の下地メタライズ層4はニッケルメッキ層5でほぼ完全に被覆されている。したがって、図2に示したように、この配線基板1のパッド11に、フリップチップ接続方式の集積回路チップ31をそのパッド32を位置決めして搭載され、例えば集積回路チップ31側の多数の各パッド32に予め形成された高融点ハンダバンプ33をリフローすることにより、図3に示したように、パッド11,32間がハンダ付けされる。しかして、そのハンダ33a中にはボイドはほとんど存在せず、したがって電気的接続信頼性の高いフリップチップ接続方式の半導体装置と成すことができる。
【0026】
以下、次記したようにしてニッケルメッキ層5の厚さ(T)の異なる配線基板(試料)1を多数つくり、各々に集積回路チップ31をフリップチップ接続し、図9に示したようにして基板1とチップ31との間を面に垂直方向に引張って配線基板1から集積回路チップ31を引き離し(取り外し)、その際のハンダ33aの切断面(切り口)を20倍に拡大してニッケルメッキ層5の厚さ(T)とボイドの発生状況(クレータの発生したパッドの数)を確認し、さらにニッケルメッキ層5の厚さ(T)によるそのメッキ後における下地メタライズ層4の剥離(メタライズ層4と基板2との間にクラックの発生したパッドの数)を確認した。ただし、試料は、100パッドのフリップチップ接続用のBGA配線基板であり、これの各パッド11に高融点ハンダ(97Pb−3Sn)でチップ31の各パッド32をハンダ付けした。試料は各10個であり、したがって、全パッド数は1000である。結果は表1に示した通りである。
【0027】
なお、セラミック基板(試料各10個)2はアルミナ製で、平面寸法25×25mm,厚さ1.0mmのものとし、パッド11をなすメタライズ層4は、径0.14mm(円形)、ピッチ0.3mm、数(縦横)10×10=100のものとし、これに無電解メッキ法によりNi−Bメッキ5をその厚さが1〜8.2μmの範囲となるように1回のメッキでかけ、密着安定化のためH2雰囲気下で550〜650℃で熱処理し、さらに、無電解メッキ法により金メッキ層(厚さ0.05μm)6を被着形成してなるものである。ただし、金メッキ後は熱処理などによる金メッキ層へのニッケルの拡散はしていない。そして、このようにして形成された配線基板1のパッドにフラックスを塗布し、集積回路チップ(5.0×5.0mm、厚さ0.75mm、ハンダバンプ径0.16mm、ハンダバンプの高さ0.1mm(ハンダ:97Pb−3Sn))31を位置決め搭載し、N2雰囲気中で最高370℃の下でハンダをリフローしてフリップチップ接続した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より明らかなように、ニッケルメッキの厚さ(T)1μm、2μmのものでは、ボイドの発生状況(クレータの発生したパッド数)は約15〜30%であったのに対して、本発明範囲(2.5μm〜8μm)内のものでは、ボイドは発生状況は10%以下に抑えることができた。とりわけ3μm以上の場合には7.4%以下に低減されている。図4は、ニッケルメッキ層の厚さ(T)とボイドの発生状況(全パッドのうちボイド(クレータ)の発生したパッドの率(%))との関係を示したグラフである。このグラフからも理解されるが、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)が厚いほど、ボイドの発生防止に効果的であることがわかる。しかし、前記したように、ニッケルメッキ層5が厚すぎると、そのメッキ後の下地メタライズ層4の剥離やクラックの発生の危険性が増大する。
【0030】
表1中のニッケルメッキ層5の厚さ(T)による下地メタライズ層4の剥離の発生状況(剥離の発生したパッド数)からすると、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)は、好ましくは7μm以下とすると良いことが分かる。なお、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)が7μmの場合と7.7μmの場合におけるボイドの発生状況は、メタライズ層4の剥離のないもののうちの数である。なお、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)が8.2μmの場合、メタライズ層4が剥離したパッド数が半数以上となったため、ボイドの発生数は測定しなかった。これらのことからすると、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)は、3.2〜3.5μmを設計値とし、3〜7μmの範囲に収まるようにするのが適切である。
【0031】
さて次に、前記の試料において無電解メッキ法によって金メッキを厚さ0.05μmかけた後、H2雰囲気下、所定温度(最高温度150〜850℃)で熱処理することで金メッキ層6中に下地ニッケル層中のニッケルを拡散させた。こうして下地ニッケル層5の上に金ニッケル層を形成した試料をつくり、金ニッケル層中のニッケル含有量(拡散量)をオージェ電子分析によって確認し、さらに前記したのと同一条件で集積回路チップ31をフリップチップ接続し、同一の試験(チップの引き離し試験)、確認法によってボイドの発生数を確認した。結果は表2に示した通りである。
【0032】
なお、オージェ電子分析によるニッケル(Ni)含有量の分析・測定条件は、オージェ分析装置が日本電子(JEOL)製のJAMP−30で、加速電圧10kV、照射電流3×10−7mA、スポット径(分析面積)φ50μmである。この条件では、測定試料の表面から約50オングストローム(0.005μm)の深さまでの物質の情報が得られる。なお、Ni含有量(原子%)は、熱処理温度条件ごと3つの試料(配線基板)の各々について、適宜選択したパッド11中央の金ニッケル層の表面の3点(箇所)を測定し、表2にはその9つの測定値の平均値を記してある。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示したように、加熱処理をした試料のうち、試料番号2〜8のものは、加熱処理していない試料(試料番号1)に比べ、さらにボイドの発生数を低減できることが分かる。一方、加熱処理温度が850℃の試料(試料番号9)では、原因不明であるがボイドの発生数が多くなっている。この結果から、ボイド発生数の低減のためには、熱処理温度は150〜750℃が好ましい範囲といえる。また、熱処理していない場合のNi含有量が0であるのに対し、熱処理温度150〜750℃でのニッケル含有量が10〜80原子%である。このことから、金ニッケル層を蒸着など熱処理によらないで形成する場合には、ニッケル含有量が10〜80原子%の範囲となるように金ニッケル層を形成すればよい。なお、試料番号1のボイド発生数は表1のそれより若干(約12%)多かった。
【0035】
さて、次に前記の配線基板の製造において、ニッケルメッキを複数回に分けてかけたものにおけるボイドの発生状況などについて説明する。ただし、こうして製造された配線基板及びその製法は、ニッケルメッキをかけてブリスターや下地メタライズ層の剥離の防止のための加熱処理をし、これを複数回行い、その後、無電解メッキ法によって金メッキ(厚さ0.05μm)をかけ(図5参照)、複数のメッキ層とした点を除き基本的には前記したのと同じである。またボイドの発生状況などの確認法も同じである。なお、ブリスターや下地メタライズ層の剥離の防止のための加熱処理は各回のニッケルメッキ後に行い、その条件はH2雰囲気中、最高570℃とした。以下の実施形態例でも同じである。
【0036】
まず、無電解メッキ法によりNi−Bメッキを2回に分けてかけ、合計で所定厚さ(T)のニッケルメッキ層5とした場合で説明する。ただし、金メッキ後の熱処理(ニッケルの拡散)はしていない。結果は、表3に示した通りである。なお、試料をなす配線基板及びその試料数も前同様であり、したがって全パッド数は1000である。以下、同じである。
【0037】
【表3】
【0038】
表3及び図6より明らかなように、本発明範囲のものも含め、前記(表1参照)の1回で所望とするニッケルメッキ層厚さとした場合に比べ、ボイドの発生したパッド数はさらに低減している。このことは、1回でメッキをかけるより2回でメッキをかける方が下地メタライズ層4の被覆がより具合良くなされていることを示すものと考えられる。そして、2回に分けても、比較例では厚さが2μm以下の場合にはボイドの発生したパッド数は依然として多い。また、8.4μmでは、メタライズ層の剥離の発生が約13%と、まだ多くみられたのでボイドの発生数は測定しなかった。
【0039】
次に、無電解メッキ法によりNi−Bメッキ5を3回に分けて所定厚さのニッケルメッキ層とした場合におけるボイドの発生状況について説明する。ただし、金メッキ後の熱処理(ニッケルの拡散)はしていない。結果は、表4に示した通りである。
【0040】
【表4】
【0041】
表4及び図6より明らかなように、3回で所望とするニッケルメッキ層5の合計厚さ(T)とした場合のボイドの発生数は、2回で同メッキをかけた場合と同様ないしそれより少なめである。そして、この場合にも、比較例では厚さが1.9μm以下の場合にはボイドの発生したパッド数は依然として多い。また、3回に分けても、ニッケルメッキ層5の厚さ(T)が8.7μmの場合には、メタライズ層の剥離の発生が約10%と、まだ多くみられたのでボイドの発生数は測定しなかった。このような結果から複数回でメッキをかけ、複数層のニッケルメッキ層とする場合でもその合計厚さ(T)は、2.5〜8μmとするのが適切といえるが、安全性を考慮すると、前記したのと同様、3〜7μmの範囲とするのがより好ましいといえる。
【0042】
さて次に、ニッケルメッキ層を、メッキを3回に分けてかけた場合において、その後無電解メッキ法によって金メッキを厚さ0.05μmかけた後、H2雰囲気下、所定温度(最高温度150〜850℃)で熱処理することで金メッキ層中に下地ニッケル層中のニッケルを拡散させ、下地ニッケル層の上に金ニッケル層を形成した試料をつくり、前記と全く同様にして、金ニッケル層中のニッケル含有量とボイドの発生数を確認した。ただし、ニッケルメッキの厚さTは、1回目が1.4μm、2回目が1.2μm、3回目が1.2μmの合計3.8μmとした。結果は表5に示した通りである。
【0043】
【表5】
【0044】
表5に示したように、3回のニッケルメッキの後、金メッキし、その後、加熱処理をして金ニッケル層を形成した試料についても、1回のニッケルメッキの後、金メッキし、その後、加熱処理をして金ニッケル層を形成した試料とほぼ同様の結果であった。すなわち、加熱処理をした試料のうち、試料番号2〜8のものは加熱処理していない試料(試料番号1)に比べ、さらにボイドの発生数を低減することができる。一方、加熱処理温度が850℃の試料(試料番号9)では、ボイドの発生数が多くなっている。この結果からしても、ニッケルメッキ層の上に金ニッケル層を形成するのがボイド発生数の低減に有効であることがわかる。そしてその熱処理温度はやはり150〜750℃が好ましい範囲といえる。また、熱処理していない場合のNi含有量が0であるのに対し、好ましい熱処理温度150〜750℃に対応するニッケル含有量は前とほぼ同様の範囲(10〜80原子%)であった。さらに、試料番号1のボイド発生数は表4のそれより約22%多かった。
【0045】
表6は、ニッケルメッキの回数(及び同メッキ層の厚さ)と、ボイドの発生したパッド数、剥離の発生したパッド(下地メタライズ層)数との関係を示したものである。なお、金メッキ後の熱処理(ニッケルの拡散)はしていない。
【表6】
【0046】
表6より本発明範囲のニッケルメッキ層5の厚さ(T)においては、そのメッキの回数にかかわらず、ボイドの発生数は少なく良好な結果が得られた。これに対して比較例(厚さが1.8μm)では、ボイドの発生したパッド数は依然として多い。またニッケルメッキ層5の合計厚さ(T)が9.4μm以上では剥離が問題となる。この結果からも本発明の効果が実証されるが、複数回でメッキをかける場合には、その作業効率ないし生産性から、3回以下とするのが適切である。また、1回のメッキ厚さは同じとするのがメッキ作業も容易であり好ましい。なお、1回のメッキ厚さは3.0μmを超えないようにするのが、ブリスターを発生させないためにも好ましい。
【0047】
なお、上記においては無電解メッキによってニッケル純度の高いNi−Bメッキとした場合を例示したが、本発明においては前記したようにこれに限定されるものではなく、Ni−PメッキなどひろくNi合金メッキを適用する場合でも同様の効果があり、また、電解ニッケルメッキによる場合でも本発明範囲内の厚さとすることで同様の効果がある。さらに上記例ではニッケルメッキ層上に金(Au)メッキをした場合を例示したが、単に金メッキをしただけでは主として酸化防止の作用しかなく、ハンダ付時にハンダ中に容易に溶解、拡散してハンダとニッケルメッキ層が直接接するようになる。
【0048】
これに対して、金メッキ後に下地ニッケル層のニッケルを金メッキ層中に拡散させることで金ニッケル層としたときには、酸化防止作用がある上にボイドの発生数の低減のために一層有効である。したがって、本発明においてニッケルメッキ層にかける金メッキ層は、熱処理して金ニッケル層としておくのが好ましい。因みに、金ニッケル層の形成は、金メッキのあと、前記したように配線基板全体を熱処理して下地ニッケル層のニッケルを金層に拡散させる方法に限定されるものではない。すなわち、金メッキ後にレーザー光線の照射や電子ビームの照射によってパッドの部分のみ加熱してニッケルを金メッキ層の中に拡散させることでも形成できる。その場合には、ハンダ付けしない部分の金層はニッケルが拡散していないので、その分、耐酸化性が高く保持される。さらに、前記では、金メッキ後にニッケルを拡散させて金ニッケル層としたが、金ニッケル層の形成はこれに限定されるものではなく、例えば金とニッケルを蒸着やスパッタリング等の気相成長によって同時にパッド上に形成して金ニッケル層とすることもできる。
【0049】
なお、本発明は、フリップチップ接続方式の集積回路チップのように全面に多数の電極用パッドを備えたチップを実装する配線基板であればよく、ボールグリッドアレイ(BGA)のほか、ピングリッドアレイ(PGA)、ランドグリッドアレイ(LGA)などといったタイプの配線基板など、プリント基板(外部回路基板)との接続方式にかかわらず適用できる。さらに、上記においては配線基板はアルミナセラミック製としたが、これ以外にガラスセラミック、AlN、ムライト等からなるものでもその電極用パッド用のメタライズ層が、タングステン、モリブデン、マンガンなどを主成分とする高融点金属からなるものである場合において同様に適用できる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る配線基板によれば、電極用パッドをなすメタライズ層上のニッケルメッキ層の厚さを2.5〜8μmとしたことから、メタライズ層の剥離や基板との間のクラックの発生を殆ど発生させることなく、集積回路チップのフリップチップ接続後において、パッド間を接続するハンダ中のボイドの発生を極めて効果的に低減できる。この結果、フリップチップ接続方式の半導体装置として、その電気的接続の信頼性を飛躍的に高めることができる。とりわけ、ニッケルメッキ層の厚さを3〜7μmとしたものでは、メタライズ層の剥離も略皆無とし得、したがってその電気的接続の信頼性を一層飛躍的に高めることができる。
【0051】
また、パッドをなすニッケルメッキ層上に、金にニッケルを含んでなる金ニッケル層を形成したものでは、さらにボイド発生を低減できるし、ハンダの密着強度を高めることができる。
【0052】
そして、本発明の配線基板の製造において、ニッケルメッキを複数回に分けてかける場合には、1回でかける場合に比べて、下地メタライズ層の被覆がより具合良くなされ、その露出がより効果的に防止される。その結果、フリップチップ接続方式による集積回路チップの接続後におけるパッド間のハンダ中のボイドの発生をさらに効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る配線基板の実施形態を説明するパッド部分の拡大断面図。
【図2】図1の配線基板のパッドに、フリップチップ接続方式の集積回路チップをそのパッドを位置決めして搭載したハンダリフロー前の状態を説明する拡大断面図。
【図3】図2においてハンダをリフローして基板に集積回路チップをフリップチップ接続した際のパッド間のハンダ接合状態を説明する拡大断面図。
【図4】ニッケルメッキ層の厚さとボイドの発生状況との関係を示す表1の内容をグラフ化した図。
【図5】Ni−Bメッキを複数回かける場合のメッキ工程例図。
【図6】Ni−Bメッキの回数・厚さとボイドの発生状況との関係を示す、表1、表3、表4の内容を比較グラフ化した図。
【図7】配線基板に集積回路チップをフリップチップ接続してなる半導体装置の模式的正面図。
【図8】図7におけるパッド間のハンダ接合状態を説明する模式的拡大断面図。
【図9】配線基板から集積回路チップを引き剥がす状態の説明用正面図。
【図10】ハンダ中にボイドがない場合、配線基板から集積回路チップを引き離した際のハンダの切断状態説明図。
【図11】ハンダ中にボイドがある場合、配線基板から集積回路チップを引き剥がした際のハンダの切断状態説明図。
【図12】従来の配線基板における電極用パッド用をなすメタライズ層にニッケルメッキを1〜1.5μmかけたときのメタライズ層の露出状態を説明する断面概念図。
【符号の説明】
1 配線基板
2 セラミック基板
4 電極用パッド用のメタライズ層
5 ニッケルメッキ層
6 金メッキ層
11 配線基板の電極用パッド
31 フリップチップ接続方式の集積回路チップ
32 集積回路チップの電極用パッド
33 ハンダ
T ニッケルメッキ層の厚さ
Claims (12)
- フリップチップ接続方式の集積回路チップをハンダ付けにより接続するための電極用パッド群を備え、該各電極用パッドをなすメタライズ層上にニッケルメッキ層を有してなるセラミック製の配線基板において、該ニッケルメッキ層の厚さを2.5〜8μmとしたことを特徴とする配線基板。
- フリップチップ接続方式の集積回路チップをハンダ付けにより接続するための電極用パッド群を備え、該各電極用パッドをなすメタライズ層上にニッケルメッキ層を有してなるセラミック製の配線基板において、該ニッケルメッキ層の厚さを3〜7μmとしたことを特徴とする配線基板。
- 前記ニッケルメッキ層の少くとも最表面はNi−Bメッキによって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の配線基板。
- 前記ニッケルメッキ層の上には、金メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の配線基板。
- 前記金メッキ層は、厚さが0.01〜1.0μmであることを特徴とする請求項4記載の配線基板。
- 前記ニッケルメッキ層の上には、厚さが0.01〜1.0μmで、金にニッケルを含んでなる金ニッケル層が形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の配線基板。
- 請求項6記載の配線基板において、金ニッケル層中のニッケル含有量が10〜80原子%であることを特徴とする配線基板。
- 各電極用パッドをなすメタライズ層上にニッケルメッキをかけ、そのニッケルメッキ層の上に金メッキをかけ、その後150℃〜750℃で熱処理することによって、金メッキ層中にニッケルメッキ層中のニッケルを拡散させ、金にニッケルを含んでなる金ニッケル層を形成することを特徴とする、請求項6又は7記載の記載の配線基板の製造方法。
- 前記ニッケルメッキ層を、メッキを複数回に分けてかけることによって形成することを特徴とする請求項1〜7記載の配線基板の製造方法。
- 複数回に分けたニッケルメッキ工程の間に、少くとも1回の加熱処理工程を含むことを特徴とする請求項9記載の配線基板の製造方法。
- 請求項8記載の配線基板の製造方法において、ニッケルメッキ層を、メッキを複数回に分けてかけることによって形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
- 請求項11記載の配線基板の製造方法において、複数回に分けたニッケルメッキ工程の間に、少くとも1回の加熱処理工程を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
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CN113130336A (zh) * | 2021-04-16 | 2021-07-16 | 中国电子科技集团公司第二十四研究所 | 一种基板预植Au凸点的倒装焊工艺方法 |
-
2003
- 2003-08-01 JP JP2003205596A patent/JP2004006944A/ja active Pending
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