JP2004006611A - プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】銅張積層板の外層銅箔に黒化処理、異種金属層及び有機材被膜の無い状態で、炭酸ガスレーザーによる銅箔の直接穴明けが可能なエッチングプロセスを提供する。
【解決手段】基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板2にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板2は、その外層に位置する銅箔表面5に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層6を形成したものを用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法等による。
【選択図】 図1
【解決手段】基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板2にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板2は、その外層に位置する銅箔表面5に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層6を形成したものを用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法等による。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。特に、炭酸ガスレーザーによる穴明け加工を行うものであるプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板のスルーホール(PTH)の形成には、精密ドリルによる加工が行われてきたが、今日のプリント配線板の高密度回路形成及び高密度実装化に対する要求の高まりより、3層以上の多層プリント配線板の領域ではIVH、BVH、マーカー穴等の貫通孔又は穴部の微細加工が要求されるようになってきた。
【0003】
これらのプリント配線板に対する市場の要求の変化を受けて、ドリル加工技術に替わるものとして、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等を用いたレーザー光を用いての加工技術が発達してきた。
【0004】
ところが、プリント配線板の製造に用いる銅張積層板の表面には、導電回路を形成する銅箔が位置しており、その銅箔表面は光沢面と呼ばれ、平均粗さ(Ra)0.01〜0.3μm程度のものであり、研磨されたと同程度の鏡面となっている。従って、炭酸ガスレーザーを用いて、この銅箔表面にレーザー光を照射しても、レーザー光の反射率が高く、銅張積層板の表面に銅箔が存在する状態では、短時間に銅張積層板への所望の形状加工は出来ず、実操業で用いることは困難であった。
【0005】
従って、銅張積層板にレーザー加工を施す場合は、予めIVH、BVH、マーカー穴等の貫通孔又は穴部を形成する部位の銅箔のみをエッチングにて除去してレーザー照射を行い加工するコンフォーマルマスク法が、炭酸ガスレーザーを用いる場合には採用されてきた。
【0006】
【特許文献1】
特許第3258308号公報
【特許文献2】
特開2001−347599公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンフォーマルマスク法は、レーザー加工前に、加工位置の銅箔をエッチング除去するため、エッチングレジスト形成、露光、現像、銅エッチング、エッチングレジスト除去の工程等余分に必要な工程が多くなると言う欠点を有しているため、プリント配線板の製造コストを引き上げる要因と成っていた。
【0008】
炭酸ガスレーザーを用いる場合、このコンフォーマルマスク法の欠点を解決しようとして、その他銅張積層板の銅箔表面でのレーザー光の吸収効率を高めるため、銅張積層板の表面にいわゆる黒化処理を施したり、銅箔表面にレーザー光の吸収効率の高い樹脂層又はニッケル等の異種金属層を設ける等の対策が採られ、照射したレーザー光の吸収効率を高め、短時間で銅箔と基材樹脂とを同時に穴明け加工しようとする技術が検討されてきた。
【0009】
ところが、銅張積層板の表面にいわゆる黒化処理を行った場合を考えると、本来の黒化処理とは、IVH、BVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通銅メッキを行い、エッチングで回路形成を行った後に行うものであり、多層基板の内層基材に用いられるものである。従って、プリント配線板の外層銅箔を適用対象とすることは困難である。
【0010】
一方、銅箔表面にレーザー光の吸収効率の高い樹脂層を設ける方法は、樹脂層を形成するフィルムを銅張積層板表面にラミネートするか、液体の状態で塗布し硬化させることで形成されるものである。ラミネート法を採用しようとすると、安定したラミネートを行うためには高価な装置を導入しなければならず、製造コストを上昇させる要因となり好ましくない。液体の状態で塗布し硬化させる場合にも硬化炉等の設備が必要となり、かなり大がかりな設備投資を必要とすることになり、結果として製品価格を押し上げることになる。
【0011】
更に、ニッケル等の異種金属層を備えた場合には、レーザー穴明け加工後に異種金属層をエッチング除去することが求められるのであるから、エッチング廃液又は洗浄水中にニッケル等の異種金属成分が溶出しており、廃液処理が複雑化しプリント配線板の製造ランニングコストを上昇させる要因ともなっていた。一方、有機材被膜を設けた場合にも、レーザー穴明け加工後に有機材被膜を除去することが求められるのであるから、エッチング廃液又は洗浄水中に有機材被膜成分が含まれることになり、同様に廃液処理が複雑化しプリント配線板の製造ランニングコストを上昇させる要因になる。
【0012】
以上のことを考えるに、理想的には、黒化処理、異種金属層及び有機材被膜の無い状態で、炭酸ガスレーザーによる穴明け加工が可能なエッチングプロセスが求められることになるのである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は鋭意研究の結果、従来のエッチングラインを僅かに改良するだけで、炭酸ガスレーザーを用いて、銅張積層板の銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工できるようにし、一貫したプリント配線板製造を可能としたのである。以下、本件発明について説明する。
【0014】
本件発明の、請求項には、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。
【0015】
図1〜図3に、請求項に係るプリント配線板の製造方法の一連のフロー概略を示している。ここでは、図1(a)に示す4層銅張積層板2の模式断面を基本的に用いて説明することとする。なお、以上及び以下において、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板」とは、片面板を除く、両面板、3層以上の多層銅張積層板を含む概念として用いており、3層以上の多層板の場合、内層コア材を含んでいるものとして用いている。
【0016】
最初に、図1(a)に示す4層銅張積層板2の表面に、図1(b)に示すように外層に位置する銅箔の表面に所定厚の高炭素含有銅層6として炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の銅層を形成することになる。この高炭素含有銅層6の形成には、湿式である電解法、乾式である蒸着法、スパッタリング法等を用いることが可能である。但し、生産性と管理の煩雑さを考慮すれば、以下で述べる電解法を用いることが有利であると考えられる。
【0017】
即ち、この4層銅張積層板2は、外層の所定厚さ分のみを高炭素含有銅層6として、その下層部を純銅層とした構成を持つことになる。このような層構成を採用することで、銅張積層板の状態でのレーザー穴明け加工による銅箔層の直接穴明けが可能となるのである。
【0018】
ここで、銅箔表面に所定厚の高炭素含有銅層を設けた場合のレーザー加工理論を考える。ここで銅と高炭素含有銅との熱伝導性能は、純銅の熱伝導率が700℃において354W・m−1・K−1、高炭素含有銅は700℃において100〜180W・m−1・K−1程度になると考えられ、高炭素含有銅は純銅の熱伝導率の約1/3〜1/2であり、純銅と比べ熱の伝導性が極めて遅いものである。従って、レーザー光が銅張積層板の銅箔の上に形成した高炭素含有銅層の表面に照射されると、高炭素含有銅層の照射部位のみに熱エネルギーが集中し、熱の拡散速度に比べ、レーザー光による熱エネルギーの供給速度の方が速く、レーザーの照射部位が容易に高炭素含有銅の融点に達するものと考えられる。
【0019】
その結果、高炭素含有銅は純銅に比べ、レーザー光照射による温度上昇が素早く起こり、容易に溶解し、蒸発することになるものと考えられる。そして、レーザー光の照射により、高炭素含有銅層が一旦溶解を始め沸点に達すると、高炭素含有銅の沸点温度の熱量が熱の良導体である純銅層に伝達され、その純銅層に伝達された熱エネルギーは、銅箔表面が熱伝導性の低い高炭素含有銅で被覆されていることもあり散逸しにくく、連続したレーザー光照射による熱エネルギーの供給と併せて容易に純銅の溶解温度を越えた温度上昇が連続的に起こり、レーザー光による銅箔層の除去が容易に行えるものとなると考えられるのである。
【0020】
表1には、公称厚さ3μmの銅箔を厚さ100μmのFR−4プリプレグの両面にプレス加工することにより張り付け、両面銅張積層板を製造し、この両面銅張積層板の両面に電解法で2μm厚さの高炭素含有銅層を形成した銅張積層板とした。そして、この銅張積層板を用いてサイクル法でのレーザー穴明け加工試験を行った結果を示している。なお、レーザー穴明け加工試験は、1ショット目が11.2mJで2ショット目が0.9mJのパルスエネルギー(トータル加工エネルギー20mJ)を用いて行った。その他、レーザー照射条件は、周波数2000Hz、マスク径5.5mm、1ショット目が14μsec.で2ショット目が2μsec.のパルス幅、オフセット0.0、レーザー光径120μmとし、銅張積層板に100μmの加工径の穴を400穴形成することを予定して行ったものである。従って、本件発明者等は判断基準として、加工後の穴径が90〜110μmとなった範囲で、加工が良好に行われたものと判断した。
【0021】
【表1】
【0022】
この表1から分かるように、炭素含有量は0.003wt%の純銅層のみでバルク銅層を形成した公称厚さ6μmの通常銅箔を用いた銅張積層板(表中の試料番号1)と、炭素含有量が0.015wt%〜0.40wt%の2μmの高炭素含有銅層と3μmの純銅層を外層に備える銅張積層板(表中の試料番号2〜8)とを対比して掲載している。これらのレーザー穴明け加工性を対比すると、高炭素含有銅層中の炭素含有量が0.08wt%を越えたところから、レーザー穴明け加工性が著しく改善していると考えられるのである。即ち、400穴中の全てが良好に穴明け加工されているのである。従って、高炭素含有銅中の炭素含有量が0.08wt%を下限値としているのである。そして、ここで上限値を0.40wt%としているのは、以下の製造方法の中で説明するが、この炭素含有量を越えて炭素を含有させることは非常に困難となるのである。
【0023】
そして、ここで用いる高炭素含有層の厚さは0.1〜5μmとすることが好ましい。この範囲を定めた意味合いについては、後により詳しく説明するが、ここで簡単に述べると、現実の製品製造を考慮して、以下に述べる高炭素含有銅層のレーザー穴明け加工性能を改善する役割が十分に発揮できる範囲として定めたものである。上限値である5μmを越える厚さの高炭素含有銅層を形成しても、レーザー穴明け加工性がそれ以上に増加するものでもなく、経済性を損なうものとなるからである。
【0024】
また、下限値である0.1μmを下回る厚さの場合は、レーザー穴明け加工性能にバラツキを生じるのである。例えば、0.03μmの厚さの場合でも、高炭素含有銅層を全く備えていない銅張積層板を用いた場合と比較して、レーザー穴明け加工性能が向上しないわけではない。遙かに優れたレーザー穴明け加工性能が得られるが、ロット間によるバラツキが大きくなるのである。なお、ここで形成する高炭素含有銅層の表面は、光沢を有する平滑な金属面であっても、艶消し状の面であっても全く支障はない。この点が、光沢を有する純銅で構成した銅箔表面を直接穴明けする場合と根本的に異なるのである。
【0025】
以上に述べたように、銅張積層板に高炭素含有銅層が存在することで、非常に優れたレーザー穴明け加工性能を示すことを説明してきた。ところが、更に研究を続けると、同じ炭素量を含んだ高炭素含有銅層であっても、その結晶組織の違いによって、レーザー穴明け性能が異なってくることが判明したのである。
【0026】
電解で製造した場合の高炭素含有銅層の結晶組織は、次の2種類に分類することができる。即ち、タイプ▲1▼は「図4に示すような、析出開始位置DSから析出終了位置DFまで、ほぼ連続的に成長した針状組織であり且つ微細な結晶組織であるもの。」、タイプ▲2▼は「図5に示すように、極めて微細な結晶組織であると思われるが、析出開始位置DSから析出終了位置DFまで、不連続に成長した結晶組織であるもの。」、このどちらの組織であっても、高濃度に炭素を含有しない場合と比べれば、レーザー穴明け性能を改善することは可能であるが、これらの結晶組織の内でも特に、タイプ▲1▼の連続的に成長した針状組織であり且つ微細な結晶組織である場合に、最も優れたレーザー穴明け性能を示すのである。
【0027】
タイプ▲1▼とタイプ▲2▼とのレーザー穴明け性能を端的に表すためには、低エネルギーでのレーザー穴明け結果を見れば明らかとなる。この低エネルギーレーザー穴明け加工試験は、1ショット目が8.3mJで2ショット目が1.7mJのパルスエネルギー(トータル加工エネルギー10mJ)を用いて行った。その他、レーザー照射条件は、周波数2000Hz、マスク径7.0mm、1ショット目が21μsec.で2ショット目が2μsec.のパルス幅、オフセット0.0、レーザー光径140μmとし、銅張積層板に100μmの加工径の穴を400穴形成することを予定して行ったものである。この結果、2μm厚さの高炭素含有銅層がタイプ▲1▼の結晶組織である公称厚さ9μm銅箔の場合には400穴/400穴で100%の開口率であるが、高炭素含有銅層がタイプ▲2▼の結晶組織を有する場合には0穴/400穴で0%の開口率となるのである。
【0028】
タイプ▲1▼の針状組織の微細というレベルがどの程度のものであるかは、数値的に表すことが困難であるが、図4の純銅層側の電解銅箔の結晶組織と対比すれば明瞭に把握できると考える。この純銅層も電解法により作られた通常の電解銅箔組織である。この純銅層の結晶組織と比べて、タイプ▲1▼の針状組織の結晶粒の幅が非常に小さなものとなっていることが明確に理解できる。このような形状の結晶組織が、レーザー穴明け加工において、非常に有用となるのである。本件発明者等が思うに、結晶粒レベルで考えた場合、熱伝導は結晶粒界よりも結晶粒内における方が速いものと考えられる。従って、結晶粒の形状が連続的に成長した針状結晶組織は、不連続に成長した針状結晶組織に比べて、熱伝導が結晶粒の形状に沿って縦方向に伝導しやすくなり、銅箔の厚さ方向への穴明け加工が容易になるものと考えられるのである。
【0029】
以上に説明した銅張積層板のレーザー穴明け加工を行った後に、IVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部の内壁面に銅メッキを行なうか、銅ペーストを充填する等の手法で層間導通形成処理をし、回路パターンを露光し、現像して、回路エッチングを行い、最終的にエッチングレジスト除去を行い回路形成を行うことでプリント配線板が製造できるのである。このとき、レーザー穴明け加工の終了後、層間導通形成処理を行う前に、必要に応じてデスミア処理を施し、レーザー穴明け加工を行った後のIVH若しくはBVH等となる貫通孔又は穴部の底面や内壁面に残留した樹脂成分の除去を行うことになる。
【0030】
上述してきた製造方法では、高炭素含有銅層を銅張積層板の表面に残留させたままで最終的なプリント配線板としているが、このままでも通常の用途では何ら問題はない。しかしながら、有機物含有銅は、熱伝導性が純銅に比べて低くなると同時に、電気的抵抗値が上昇することが考えられるための、欠点が想定できる。即ち、回路設計によっては、使用可能な場面が限定されてくる可能性がある。特に、現段階に置いて問題がないとしても、コンピュータのクロック周波数がGHzレベルで高速化するようになっており、シグナルの周波数が高くなればなるほど、シグナル電流が回路の表層を流れるようになると考えられ、高周波用途での発熱問題、信号伝達の遅延等を引き起こす事も考えられるのである。
【0031】
そこで、他の請求項に記載した「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、レーザー加工の終了後、エッチング法又は物理研磨法のいずれか若しくは双方を組み合わせて銅張積層板の表層の高炭素含有銅層を除去する整面工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」を用いることで上述の問題を解決することが可能となる。即ち、図6〜図8に記載した製造プロセスを採用するのである。
【0032】
図1〜図3に示した製造方法と基本的な製造手順においては共通する。但し、銅張積層板の状態でのレーザー穴明け加工が終了する迄、高炭素含有銅層6を残し、その後のメッキ処理を行う前の、図6(d)に示した銅張積層板の表面の整面処理の段階で、高炭素含有銅層6のみを完全に除去するのである。即ち、化学的エッチング処理又はバフ研磨処理等の物理処理若しくはこれらの処理を組みあわせて用いることで、高炭素含有銅層6のみを容易に除去することが出来るのである。この高炭素含有銅層を除去することが出来れば、純銅層5のみが銅張積層板に残ることになり、最終的に形成する導電回路の電気抵抗の阻害要因となるものは存在しないことになるのである。
【0033】
そして、以上に述べてきたプリント配線板の製造方法を用いれば、レーザー光の吸収効率等を高めるためのニッケル補助金属層のような異種金属層又は有機材層等を設けることなく、銅張積層板の銅箔層の直接レーザー穴明け加工が容易に行えるものとなるのである。
【0034】
次に、請求項に記載した他のプリント配線板の製造方法は、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、当該高炭素含有銅層を銅張積層板表面より引き剥がして除去し、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理をし、層間導通形成処理後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。
【0035】
このプリント配線板の製造方法は、図9〜図11に示す一連の製造フローである。この製造方法と前述した製造方法との違いは、高炭素含有銅層6の形成前に、銅張積層板の表面に有機層10を形成することにある。即ち、有機層10を形成し、その上に高炭素含有銅層6を形成することで、レーザー加工後に、その高炭素含有銅層6は作業者の手作業で容易に引き剥がせるものとなるのである。
【0036】
ここでいう有機層10は、請求項に記載したように、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いて形成することが好ましい。
【0037】
窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物には、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的には、窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール(以下、「BTA」と称する。)、カルボキシベンゾトリアゾール(以下、「CBTA」と称する。)、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(以下、「BTD−U」と称する。)、1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「TA」と称する。)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「ATA」と称する。)等を用いることが好ましい。
【0038】
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール(以下、「MBT」と称する。)、チオシアヌル酸(以下、「TCA」と称する。)及び2−ベンズイミダゾールチオール(以下、「BIT」と称する)等を用いることが好ましい。
【0039】
カルボン酸は、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
【0040】
以上に述べた有機剤の使用方法について、銅張積層板の銅箔表面への有機層の形成方法について述べつつ、説明することとする。銅張積層板の銅箔表面への有機層の形成は、上述した有機剤を溶媒に溶解させ、その溶媒中に銅張積層板を浸漬させるか、銅張積層板に対しシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機剤の濃度は、上述した有機剤の全てにおいて、濃度0.01g/l〜10g/l、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機剤の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。
【0041】
また、有機層の形成は、前述の有機剤を適宜組み合わせて行うことも可能で、有機層は窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択された1種の有機剤若しくは2種以上を混合した有機剤を複数回繰り返し塗布することにより形成するものであっても、更に、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される2種以上の有機剤を交互に繰り返し塗布することにより形成したものであっても本件発明に係る製造方法でプリント配線板を効率よく製造することが可能である。これらの方法により、より精度の高い有機層の厚さ制御が可能となる。
【0042】
有機層の形成原理からすると、銅箔の表層に形成されている金属酸化被膜である酸化金属層に対し、有機剤が吸着することになる。そして、その酸化金属層に吸着した状態から、表層に存在する酸素等の結合子と結びつき、有機層を形成する有機剤が安定するものと推測している。従って、有機剤の濃度が高いほど有機剤が銅箔表面に吸着する速度が速くなると言え、基本的に有機剤の濃度は製造ラインの速度に応じて定められるものである。銅箔と溶媒に溶解させた有機剤とを接触させる時間も製造ラインの速度から決まり、実用的には5〜60秒の接触時間となる。
【0043】
これらのことを考慮した結果、有機剤の濃度0.01g/lよりも低い濃度となると、短時間での銅箔表面への吸着は困難であり、しかも形成される有機層の厚さにバラツキが生じ、製品品質の安定化が不可能となるのである。一方、10g/lを越える濃度としても、特に有機剤の銅箔表面への吸着速度が添加量に応じて増加するものでもなく、生産コスト面から見て好ましいものとは言えないのである。上述した有機剤を使用することにより、有機層を形成する際の量的制御を容易にすることが可能となる。
【0044】
このようにして形成した有機層の上に高炭素含有銅層を形成するとその高炭素含有銅層が容易に引き剥がせるものとなるのである。このときの高炭素含有銅層の引き剥がし強さは1〜300gf/cmの範囲に収まり、人間の手作業で簡単に除去できるものとなるのである。この引き剥がし作業を考慮したときの、高炭素含有銅層の適正な厚さは、次のように考えられる。製造コストを考慮し、可能な限り高炭素含有銅層を薄く、使用金属量を少なくしたいことは当然であるが、人間の手作業で引き剥がして除去する際の高炭素含有銅層の破断等を回避することを考えると、本来1μm以上の厚さがあれば円滑な引き剥がし作業を達成できると考えられ、上述した加工穴径の問題も加味して上限値が定まることになる。そして、下限値は、上述したように円滑なレーザー穴明け加工を行うための最低限の厚みを採用すればよい。薄い高炭素含有銅層の場合には、テープで貼り付けて剥離除去する等の手法を用いなければならない場合もある。しかしながら、このようにテープを用いて剥離することは、高炭素含有銅層の確実な除去を可能とするものとなる。また、この場合の高炭素含有銅層は、箔状態で引き剥がされるため、銅スクラップとしての回収再利用が可能となるのである。
【0045】
図10(e)に示すように、高炭素含有銅層6を引き剥がすと、有機層10のほとんどは高炭素含有銅層の剥離と同時に除去される。そして、一部の有機剤が銅箔層の表層に有機被膜として残留する場合もあるが、この残留した有機剤は、後の銅メッキ工程等に影響を及ぼすレベルのものではない。但し、確実に有機剤を除去するためには、希硫酸、希塩酸等の溶液で酸洗する事で容易に除去することが可能なものである。
【0046】
有機層10の形成に用いる有機剤は、本来一般に、導電性材料ではなく、絶縁性を有する材料である。従って、本件発明に係るプリント配線板の製造方法では、銅張積層板の銅箔自体を陰極として分極し、有機層を形成した銅箔上に直接的に高炭素含有銅を電解析出させるものであり、有機層を通しての通電可能な状態とする必要がある。即ち、有機剤からなる有機層の厚さは自ずと限界が生じ、適正な引き剥がし強度の確保を可能とし、しかも高炭素含有銅層の安定した電解析出が可能な厚さとする必要がある。
【0047】
従って、有機剤をどのような濃度の溶媒を用いて、いかなる処理時間で有機層を形成するかが重要なのではなく、結果として形成された有機層の厚さ、言い換えると、有機層を構成する有機剤の量が重要となるのである。本件発明者等の研究によれば、有機層の厚さが、好ましくは1nm〜1μmの範囲であることが判明している。
【0048】
ここに明記した厚さ範囲で、適正な高炭素含有銅層の剥離強度の確保が可能で、しかも高炭素含有銅層の安定した電解析出が可能となるのである。即ち、有機層の厚さが、下限値である1nmを下回る厚さでは、有機層の厚みにバラツキが生じ、均一な有機層が形成できない。その結果として、高炭素含有銅層を引き剥がせない事態が発生する。
【0049】
上限値である1μmを越えると、通電状態が不安定になり、高炭素含有銅層の析出状況が不安定で、均一な厚さの高炭素含有銅層の形成が困難となる。また、長時間掛けて高炭素含有銅層を析出させても、安全にエッチング工程で用いることのできる程度の、最低必要とされる引き剥がし強度を満足しないものとなる。そして、有機層の厚さが更に大きくなると、完全に通電不能な状態となる。このときの有機層の厚さはnm〜μmレベルと、非常に薄いものであるため、その測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いる必要がある。
【0050】
以上のようにして、図9(b)に示すように有機層の形成が終了すると、図10(e)の高炭素含有銅層6の剥離を除けば、上述してきたプリント配線板の製造方法と同様であり、重複した記載となるため省略する。
【0051】
更に、請求項に記載の他のプリント配線板の製造方法は、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理として銅メッキをし、当該銅メッキ層と高炭素含有銅層とを銅張積層板の表面より引き剥がして除去し、その後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。この一連の製造フローを図12〜図14に示している。以下、この図を参照しつつ説明する。
【0052】
これは、前述のプリント配線板の製造方法が、レーザー穴明け加工を行った直後に、高炭素含有銅層を引き剥がすのに対し、このプリント配線板の製造方法は、図12(d)〜図13(f)に示したフローから分かるように、レーザー穴明け加工を行った後に、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理を行い、その後高炭素含有銅層を引き剥がす点で異なっている。
【0053】
このような製造方法を採用したのは、レーザー穴明け加工を行った後に、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理を、無電解銅メッキと電解銅メッキを用いて行うと考える。すると、無電解銅メッキと電解銅メッキとで形成された銅層は、図13(e)に示したように、高炭素含有銅層の上にもメッキ銅層として形成される。この状態で、高炭素含有銅層を引き剥がすと、図13(f)に示すようにレーザー加工にて形成したBVH等の凹部の内壁面にのみメッキ銅層を残し、高炭素含有銅層の除去と同時に高炭素含有銅層上のメッキ銅層も同時に除去されることになる。このようにして、外層のプリント回路形成時のエッチング対象となる銅箔厚さを薄く維持することで、ファインピッチ回路の形成が容易となるのである。
【0054】
その他、有機層の形成、及び以降のエッチングプロセスに関しては、前述のプリント配線板の製造方法と何ら変わるところがないため、重複した説明は省略する。
【0055】
続いて、上述してきた銅張積層板の高炭素含有銅層の形成方法に関して説明する。まず、請求項には、「高炭素含有銅層は、膠、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれか1種又は2種以上を30ppm〜1000ppm含有する銅電解液を用いてパネルメッキ法で銅張積層板の表面に形成するものである本件発明に係るプリント配線板の製造方法で用いる高炭素含有銅層を備えた銅張積層板の製造方法。」としている。
【0056】
通常の電解銅箔のバルク銅層も、同じく硫酸銅溶液であって、電解銅箔の伸び率の改善のためなどに膠を添加する手法が採用されている。しかしながら、このときの膠等の添加量は20ppm以下である。これに対して、本件発明に係る製造方法では、30ppm以上の膠等の濃度範囲を採用するのである。30ppmの濃度とすることで、有機物含有銅中の炭素含有濃度を0.03wt%とすることが出来るのである。
【0057】
硫酸銅溶液中の膠濃度と、その硫酸銅溶液を電解することにより得られた有機物含有銅中の炭素量との関係を調べた結果を図15に示している。この図15から分かるように、縦軸に有機物含有銅中の炭素含有量、横軸に製造に用いた硫酸銅溶液中の膠濃度と採ると、対数関数的関係と成っていることが分かる。即ち、硫酸銅液中の膠濃度が1000ppm付近、炭素含有量0.4wt%付近で、ほぼ飽和して、それ以上に有機物含有銅中の炭素量は増加しないようになるのである。そして、レーザー穴明け加工試験の実証結果から、硫酸銅液中の膠濃度が30ppmを越えるあたりから、レーザー穴明け加工性が飛躍的に上昇し出すのである。この傾向は、ゼラチン、コラーゲンペプチドを用いた場合も同様である。
【0058】
更に、電解で製造する高炭素含有銅層の結晶組織は、電流密度を制御することにより、上述したタイプ▲1▼、タイプ▲2▼の結晶組織の造り分けが可能となるのである。厳密に言えば、電解液中の膠等の濃度との関係もあるため、明確な電流値として記載することは困難であるが、例えば、タイプ▲1▼の結晶組織を得ようとすると10A/dm2以下の低電流密度を採用し、タイプ▲2▼の結晶組織を得ようとすると20A/dm2以上の高電流密度を採用する等である。従って、このタイプ別結晶組織の造り分けを行おうとすると、生産ラインの特質、電解液の構成成分の濃度等を考慮し、工程毎に電流密度を決定すべきである。以下、本件発明の実施形態について説明する。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るプリント配線板の製造方法の実施の形態について説明する。以下の全ての実施形態で採用するレーザー穴明け加工の条件は、炭酸ガスレーザーを用い、照射条件は上述した表1の説明で示したトータル加工エネルギー20mJの条件及び結晶粒の構造説明に用いたトータル加工エネルギー10mJの条件をそのまま採用している。そして、銅張積層板に100μmの加工径の穴を形成することを予定して行ったものである。なお、各実施形態において、可能な限り、共通の符号を用いて説明することとする。
【0060】
第1実施形態: 本実施形態は、図1〜図3に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない樹脂層のみの状態とした。
【0061】
最初に、図1(a)に示す4層銅張積層板2の外層銅箔5の表面に、図1(b)に示すように高炭素含有銅層6を形成した。この高炭素含有銅層6の形成は、銅電解液として硫酸銅溶液であって、銅濃度40g/l、フリー硫酸濃度150g/l、膠濃度800ppm、液温48℃の溶液を用いて、電流密度8A/dm2で電解することで約2μm厚の高炭素含有銅層6を4層銅張積層板2の外層に形成した。なお、この高炭素含有銅層6の炭素含有量は0.37wt%であり、タイプ▲1▼の結晶組織を有していた。
【0062】
高炭素含有銅層6の形成が終了すると、水洗し、高炭素含有銅層6の表面を乾燥させ、図1(c)に示すようにレーザー穴明け加工を行った。その結果、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は98〜111μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.96であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は90〜101μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.86であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0063】
その後、高炭素含有銅層6を残したまま、図2(d)に示すように層間導通形成処理を行った。層間導通形成処理は、無電解銅メッキで1〜2μmの銅層を形成し、電解銅メッキで10μmの銅メッキ層7に成長させた。このときの無電解銅メッキ液としては、一般的に使用される硫酸銅・5水和物 0.06mol/l、EDTA・4Na0. 12mol/l、HCHO 0.5mol/l、2,2’−ジピリジル 10mg/l、PEG1000 250mg/l、pH=12.5、液温70℃の溶液を用いて短時間の間に行った。そして、無電解銅メッキが終了すると、硫酸銅溶液であって、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃、電流密度15A/dm2の平滑メッキ条件で電解し、15μm厚の銅メッキ層7を得た。
【0064】
その後、水洗、乾燥し、図2(e)に示すように銅メッキ層7の形成された外層銅箔5の表面に紫外線硬化型のドライフィルムをロールラミネートし、エッチングレジスト層8を形成した。そして、パターンフィルムを当該エッチングレジスト層8の上に重ね露光し、現像することで、図2(f)に示すように外層回路9として残す部位にのみエッチングレジスト層8を残留させた。そして、図3(g)のように塩化銅溶液でエッチングし外層回路9を形成した。最終的な、エッチングレジスト層8の除去には、水酸化ナトリウム溶液を用いて、硬化したエッチングレジスト層8の膨潤除去を行った。以上のようにして、図3(h)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0065】
第2実施形態: 本実施形態は、図6〜図8に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この実施形態は、第1実施形態のレーザー穴明け加工後の、層間導通形成処理を行う前に、高炭素含有銅層6の除去処理を行った点が異なるのみである。従って、重複した説明は省略することとして、図6(d)に示す高炭素含有銅層6の除去処理のみを説明する。
【0066】
レーザー穴明け加工が終了すると、高炭素含有銅層6を剥離した。ここでは、#1000のロール状バフを用いて物理研磨し、その後、濃度150g/l、液温30℃の希硫酸溶液に浸漬し、浸漬時間20秒として、4層銅張積層板2の外層銅箔5に付いた研磨残渣を除去した。このようにして、高炭素含有銅層6を除去したのである。
【0067】
高炭素含有銅層6の剥離後に、図7(e)に示すように層間導通形成処理として銅メッキ層7を形成し、その後、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図8(i)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0068】
第3実施形態: 本実施形態は、図9〜図11に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない状態のものとした。
【0069】
最初に、4層銅張積層板2の酸洗処理を行った。この酸洗処理は、必要に応じて行われるもので、ここでは有機層10の密着性を向上させるため、酸洗処理として濃度150g/l、液温30℃の希硫酸溶液に浸漬し、浸漬時間20秒として、4層銅張積層板2の外層銅箔5に付いた油脂成分を除去し、表面酸化被膜の除去を行った。
【0070】
酸洗処理が終了すると、図9(b)に示すように4層銅張積層板2の外層銅箔5の表面に有機層10を形成した。有機層10の形成は、4層銅張積層板2を濃度5g/lのCBTAを含む、液温40℃、pH5の水溶液に30秒間浸漬することで行った。
【0071】
有機層10を形成し、水洗した後に、有機層10の表面に、図9(c)に示すように高炭素含有銅層6を形成した。この高炭素含有銅層6の形成には、電解法を用い、銅電解液として第1実施形態で用いたと同様の溶液及び条件を用いて、約2μm厚でタイプ▲1▼の結晶組織を有する高炭素含有銅層6とした。
【0072】
高炭素含有銅層6の形成が終了すると、水洗し、図9(d)に示すように高炭素含有銅層6の表面を乾燥させ、レーザー穴明け加工を行った。その結果、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は97〜108μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.93であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は89〜98μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.85であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0073】
レーザー穴明け加工が終了すると、図10(e)に示す高炭素含有銅層6を剥離する工程に入る。ここでは、作業者が銅張積層板の隅部から、高炭素含有銅層6を手作業で引きはがした。このときの高炭素含有銅層6は、極めて容易に引き剥がしが可能であり、銅張積層板表面に高炭素含有銅成分が残留することもなかった。
【0074】
高炭素含有銅層6の剥離後に行う、層間導通形成処理として図10(f)のように銅メッキ層7を形成し、その後、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図11(j)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0075】
第4実施形態: 本実施形態は、図12〜図14に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない状態のものとした。
【0076】
最初に、4層銅張積層板2を酸洗処理し、図12(b)に示すように有機層10の形成を行った。そして、図12(c)に示すように有機層10の表面に高炭素含有銅層6を形成し、図12(d)に示すレーザー穴明け加工を行うまでの工程は、第3実施形態と同様である。従って、ここでの重複した説明は省略する。ここで、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は101〜115μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.92であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は93〜105μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.88であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0077】
レーザー穴明け加工が終了すると、この段階で、図13(e)に示すように層間導通形成処理として銅メッキを行った。まず、無電解銅メッキで1〜2μmの銅層を形成し、電解銅メッキで15μmの銅メッキ層7に成長させた。このときの無電解銅メッキ液としては、一般的に使用される硫酸銅・5水和物 0.06mol/l、EDTA・4Na0. 12mol/l、HCHO 0.5mol/l、2,2’−ジピリジル 10mg/l、PEG1000 250mg/l、pH=12.5、液温70℃の溶液を用いて短時間の間に行った。そして、無電解銅メッキが終了すると、硫酸銅溶液であって、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃、電流密度15A/dm2の平滑メッキ条件で電解し、15μm厚の銅メッキ層7を得た。
【0078】
そして、層間導通形成処理としての銅メッキが終了すると、ここで高炭素含有銅層6を剥離した。ここでは、作業者が銅張積層板の隅部から、高炭素含有銅層6を手作業で引きはがし、高炭素含有銅層6とその表面に形成した銅メッキ層7とを同時に引きはがし、図13(f)に示すようにBVHの内壁面にのみ銅メッキ層7を残すものとした。このときの高炭素含有銅層の引きはがし強さは、銅メッキ層7の曲げ応力分の負荷が加わるため、80.6g/cmで、容易に引き剥がしが可能であり、銅張積層板表面に高炭素含有銅成分が残留することもなかった。
【0079】
そして、高炭素含有銅層6の剥離後に、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図14(j)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0080】
【発明の効果】
本発明に係るプリント配線板の製造方法を用いることで、従来から困難と言われてきた炭酸ガスレーザーを用いて、異種金属層又は有機剤層を設けることなく銅箔と基材樹脂とを同時に除去し、レーザー穴明け加工を行うことが可能となった。異種金属が含まれないことから、廃水処理の複雑化を防止することが可能であり、従来のエッチング工程をそのまま応用することが可能で、設備投資費用を大幅に低減し、プリント配線板のトータル製造コストの低減が可能となり、安価な製品の市場供給が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図2】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図3】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図4】高炭素含有銅層の断面結晶組織観察像。
【図5】高炭素含有銅層の断面結晶組織観察像。
【図6】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図7】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図8】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図9】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図10】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図11】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図12】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図13】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図14】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図15】硫酸銅溶液中の膠濃度とその硫酸銅溶液を電解することにより得られた有機物含有銅中の炭素量との関係を表す図。
【符号の説明】
1 プリント配線板
2 4層銅張積層板
3 内層コア材
4 内層回路
5 外層銅箔
6 高炭素含有銅層
7 メッキ銅層
8 エッチングレジスト層
9 外層回路
10 有機層
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。特に、炭酸ガスレーザーによる穴明け加工を行うものであるプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板のスルーホール(PTH)の形成には、精密ドリルによる加工が行われてきたが、今日のプリント配線板の高密度回路形成及び高密度実装化に対する要求の高まりより、3層以上の多層プリント配線板の領域ではIVH、BVH、マーカー穴等の貫通孔又は穴部の微細加工が要求されるようになってきた。
【0003】
これらのプリント配線板に対する市場の要求の変化を受けて、ドリル加工技術に替わるものとして、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等を用いたレーザー光を用いての加工技術が発達してきた。
【0004】
ところが、プリント配線板の製造に用いる銅張積層板の表面には、導電回路を形成する銅箔が位置しており、その銅箔表面は光沢面と呼ばれ、平均粗さ(Ra)0.01〜0.3μm程度のものであり、研磨されたと同程度の鏡面となっている。従って、炭酸ガスレーザーを用いて、この銅箔表面にレーザー光を照射しても、レーザー光の反射率が高く、銅張積層板の表面に銅箔が存在する状態では、短時間に銅張積層板への所望の形状加工は出来ず、実操業で用いることは困難であった。
【0005】
従って、銅張積層板にレーザー加工を施す場合は、予めIVH、BVH、マーカー穴等の貫通孔又は穴部を形成する部位の銅箔のみをエッチングにて除去してレーザー照射を行い加工するコンフォーマルマスク法が、炭酸ガスレーザーを用いる場合には採用されてきた。
【0006】
【特許文献1】
特許第3258308号公報
【特許文献2】
特開2001−347599公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンフォーマルマスク法は、レーザー加工前に、加工位置の銅箔をエッチング除去するため、エッチングレジスト形成、露光、現像、銅エッチング、エッチングレジスト除去の工程等余分に必要な工程が多くなると言う欠点を有しているため、プリント配線板の製造コストを引き上げる要因と成っていた。
【0008】
炭酸ガスレーザーを用いる場合、このコンフォーマルマスク法の欠点を解決しようとして、その他銅張積層板の銅箔表面でのレーザー光の吸収効率を高めるため、銅張積層板の表面にいわゆる黒化処理を施したり、銅箔表面にレーザー光の吸収効率の高い樹脂層又はニッケル等の異種金属層を設ける等の対策が採られ、照射したレーザー光の吸収効率を高め、短時間で銅箔と基材樹脂とを同時に穴明け加工しようとする技術が検討されてきた。
【0009】
ところが、銅張積層板の表面にいわゆる黒化処理を行った場合を考えると、本来の黒化処理とは、IVH、BVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通銅メッキを行い、エッチングで回路形成を行った後に行うものであり、多層基板の内層基材に用いられるものである。従って、プリント配線板の外層銅箔を適用対象とすることは困難である。
【0010】
一方、銅箔表面にレーザー光の吸収効率の高い樹脂層を設ける方法は、樹脂層を形成するフィルムを銅張積層板表面にラミネートするか、液体の状態で塗布し硬化させることで形成されるものである。ラミネート法を採用しようとすると、安定したラミネートを行うためには高価な装置を導入しなければならず、製造コストを上昇させる要因となり好ましくない。液体の状態で塗布し硬化させる場合にも硬化炉等の設備が必要となり、かなり大がかりな設備投資を必要とすることになり、結果として製品価格を押し上げることになる。
【0011】
更に、ニッケル等の異種金属層を備えた場合には、レーザー穴明け加工後に異種金属層をエッチング除去することが求められるのであるから、エッチング廃液又は洗浄水中にニッケル等の異種金属成分が溶出しており、廃液処理が複雑化しプリント配線板の製造ランニングコストを上昇させる要因ともなっていた。一方、有機材被膜を設けた場合にも、レーザー穴明け加工後に有機材被膜を除去することが求められるのであるから、エッチング廃液又は洗浄水中に有機材被膜成分が含まれることになり、同様に廃液処理が複雑化しプリント配線板の製造ランニングコストを上昇させる要因になる。
【0012】
以上のことを考えるに、理想的には、黒化処理、異種金属層及び有機材被膜の無い状態で、炭酸ガスレーザーによる穴明け加工が可能なエッチングプロセスが求められることになるのである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は鋭意研究の結果、従来のエッチングラインを僅かに改良するだけで、炭酸ガスレーザーを用いて、銅張積層板の銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工できるようにし、一貫したプリント配線板製造を可能としたのである。以下、本件発明について説明する。
【0014】
本件発明の、請求項には、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。
【0015】
図1〜図3に、請求項に係るプリント配線板の製造方法の一連のフロー概略を示している。ここでは、図1(a)に示す4層銅張積層板2の模式断面を基本的に用いて説明することとする。なお、以上及び以下において、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板」とは、片面板を除く、両面板、3層以上の多層銅張積層板を含む概念として用いており、3層以上の多層板の場合、内層コア材を含んでいるものとして用いている。
【0016】
最初に、図1(a)に示す4層銅張積層板2の表面に、図1(b)に示すように外層に位置する銅箔の表面に所定厚の高炭素含有銅層6として炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の銅層を形成することになる。この高炭素含有銅層6の形成には、湿式である電解法、乾式である蒸着法、スパッタリング法等を用いることが可能である。但し、生産性と管理の煩雑さを考慮すれば、以下で述べる電解法を用いることが有利であると考えられる。
【0017】
即ち、この4層銅張積層板2は、外層の所定厚さ分のみを高炭素含有銅層6として、その下層部を純銅層とした構成を持つことになる。このような層構成を採用することで、銅張積層板の状態でのレーザー穴明け加工による銅箔層の直接穴明けが可能となるのである。
【0018】
ここで、銅箔表面に所定厚の高炭素含有銅層を設けた場合のレーザー加工理論を考える。ここで銅と高炭素含有銅との熱伝導性能は、純銅の熱伝導率が700℃において354W・m−1・K−1、高炭素含有銅は700℃において100〜180W・m−1・K−1程度になると考えられ、高炭素含有銅は純銅の熱伝導率の約1/3〜1/2であり、純銅と比べ熱の伝導性が極めて遅いものである。従って、レーザー光が銅張積層板の銅箔の上に形成した高炭素含有銅層の表面に照射されると、高炭素含有銅層の照射部位のみに熱エネルギーが集中し、熱の拡散速度に比べ、レーザー光による熱エネルギーの供給速度の方が速く、レーザーの照射部位が容易に高炭素含有銅の融点に達するものと考えられる。
【0019】
その結果、高炭素含有銅は純銅に比べ、レーザー光照射による温度上昇が素早く起こり、容易に溶解し、蒸発することになるものと考えられる。そして、レーザー光の照射により、高炭素含有銅層が一旦溶解を始め沸点に達すると、高炭素含有銅の沸点温度の熱量が熱の良導体である純銅層に伝達され、その純銅層に伝達された熱エネルギーは、銅箔表面が熱伝導性の低い高炭素含有銅で被覆されていることもあり散逸しにくく、連続したレーザー光照射による熱エネルギーの供給と併せて容易に純銅の溶解温度を越えた温度上昇が連続的に起こり、レーザー光による銅箔層の除去が容易に行えるものとなると考えられるのである。
【0020】
表1には、公称厚さ3μmの銅箔を厚さ100μmのFR−4プリプレグの両面にプレス加工することにより張り付け、両面銅張積層板を製造し、この両面銅張積層板の両面に電解法で2μm厚さの高炭素含有銅層を形成した銅張積層板とした。そして、この銅張積層板を用いてサイクル法でのレーザー穴明け加工試験を行った結果を示している。なお、レーザー穴明け加工試験は、1ショット目が11.2mJで2ショット目が0.9mJのパルスエネルギー(トータル加工エネルギー20mJ)を用いて行った。その他、レーザー照射条件は、周波数2000Hz、マスク径5.5mm、1ショット目が14μsec.で2ショット目が2μsec.のパルス幅、オフセット0.0、レーザー光径120μmとし、銅張積層板に100μmの加工径の穴を400穴形成することを予定して行ったものである。従って、本件発明者等は判断基準として、加工後の穴径が90〜110μmとなった範囲で、加工が良好に行われたものと判断した。
【0021】
【表1】
【0022】
この表1から分かるように、炭素含有量は0.003wt%の純銅層のみでバルク銅層を形成した公称厚さ6μmの通常銅箔を用いた銅張積層板(表中の試料番号1)と、炭素含有量が0.015wt%〜0.40wt%の2μmの高炭素含有銅層と3μmの純銅層を外層に備える銅張積層板(表中の試料番号2〜8)とを対比して掲載している。これらのレーザー穴明け加工性を対比すると、高炭素含有銅層中の炭素含有量が0.08wt%を越えたところから、レーザー穴明け加工性が著しく改善していると考えられるのである。即ち、400穴中の全てが良好に穴明け加工されているのである。従って、高炭素含有銅中の炭素含有量が0.08wt%を下限値としているのである。そして、ここで上限値を0.40wt%としているのは、以下の製造方法の中で説明するが、この炭素含有量を越えて炭素を含有させることは非常に困難となるのである。
【0023】
そして、ここで用いる高炭素含有層の厚さは0.1〜5μmとすることが好ましい。この範囲を定めた意味合いについては、後により詳しく説明するが、ここで簡単に述べると、現実の製品製造を考慮して、以下に述べる高炭素含有銅層のレーザー穴明け加工性能を改善する役割が十分に発揮できる範囲として定めたものである。上限値である5μmを越える厚さの高炭素含有銅層を形成しても、レーザー穴明け加工性がそれ以上に増加するものでもなく、経済性を損なうものとなるからである。
【0024】
また、下限値である0.1μmを下回る厚さの場合は、レーザー穴明け加工性能にバラツキを生じるのである。例えば、0.03μmの厚さの場合でも、高炭素含有銅層を全く備えていない銅張積層板を用いた場合と比較して、レーザー穴明け加工性能が向上しないわけではない。遙かに優れたレーザー穴明け加工性能が得られるが、ロット間によるバラツキが大きくなるのである。なお、ここで形成する高炭素含有銅層の表面は、光沢を有する平滑な金属面であっても、艶消し状の面であっても全く支障はない。この点が、光沢を有する純銅で構成した銅箔表面を直接穴明けする場合と根本的に異なるのである。
【0025】
以上に述べたように、銅張積層板に高炭素含有銅層が存在することで、非常に優れたレーザー穴明け加工性能を示すことを説明してきた。ところが、更に研究を続けると、同じ炭素量を含んだ高炭素含有銅層であっても、その結晶組織の違いによって、レーザー穴明け性能が異なってくることが判明したのである。
【0026】
電解で製造した場合の高炭素含有銅層の結晶組織は、次の2種類に分類することができる。即ち、タイプ▲1▼は「図4に示すような、析出開始位置DSから析出終了位置DFまで、ほぼ連続的に成長した針状組織であり且つ微細な結晶組織であるもの。」、タイプ▲2▼は「図5に示すように、極めて微細な結晶組織であると思われるが、析出開始位置DSから析出終了位置DFまで、不連続に成長した結晶組織であるもの。」、このどちらの組織であっても、高濃度に炭素を含有しない場合と比べれば、レーザー穴明け性能を改善することは可能であるが、これらの結晶組織の内でも特に、タイプ▲1▼の連続的に成長した針状組織であり且つ微細な結晶組織である場合に、最も優れたレーザー穴明け性能を示すのである。
【0027】
タイプ▲1▼とタイプ▲2▼とのレーザー穴明け性能を端的に表すためには、低エネルギーでのレーザー穴明け結果を見れば明らかとなる。この低エネルギーレーザー穴明け加工試験は、1ショット目が8.3mJで2ショット目が1.7mJのパルスエネルギー(トータル加工エネルギー10mJ)を用いて行った。その他、レーザー照射条件は、周波数2000Hz、マスク径7.0mm、1ショット目が21μsec.で2ショット目が2μsec.のパルス幅、オフセット0.0、レーザー光径140μmとし、銅張積層板に100μmの加工径の穴を400穴形成することを予定して行ったものである。この結果、2μm厚さの高炭素含有銅層がタイプ▲1▼の結晶組織である公称厚さ9μm銅箔の場合には400穴/400穴で100%の開口率であるが、高炭素含有銅層がタイプ▲2▼の結晶組織を有する場合には0穴/400穴で0%の開口率となるのである。
【0028】
タイプ▲1▼の針状組織の微細というレベルがどの程度のものであるかは、数値的に表すことが困難であるが、図4の純銅層側の電解銅箔の結晶組織と対比すれば明瞭に把握できると考える。この純銅層も電解法により作られた通常の電解銅箔組織である。この純銅層の結晶組織と比べて、タイプ▲1▼の針状組織の結晶粒の幅が非常に小さなものとなっていることが明確に理解できる。このような形状の結晶組織が、レーザー穴明け加工において、非常に有用となるのである。本件発明者等が思うに、結晶粒レベルで考えた場合、熱伝導は結晶粒界よりも結晶粒内における方が速いものと考えられる。従って、結晶粒の形状が連続的に成長した針状結晶組織は、不連続に成長した針状結晶組織に比べて、熱伝導が結晶粒の形状に沿って縦方向に伝導しやすくなり、銅箔の厚さ方向への穴明け加工が容易になるものと考えられるのである。
【0029】
以上に説明した銅張積層板のレーザー穴明け加工を行った後に、IVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部の内壁面に銅メッキを行なうか、銅ペーストを充填する等の手法で層間導通形成処理をし、回路パターンを露光し、現像して、回路エッチングを行い、最終的にエッチングレジスト除去を行い回路形成を行うことでプリント配線板が製造できるのである。このとき、レーザー穴明け加工の終了後、層間導通形成処理を行う前に、必要に応じてデスミア処理を施し、レーザー穴明け加工を行った後のIVH若しくはBVH等となる貫通孔又は穴部の底面や内壁面に残留した樹脂成分の除去を行うことになる。
【0030】
上述してきた製造方法では、高炭素含有銅層を銅張積層板の表面に残留させたままで最終的なプリント配線板としているが、このままでも通常の用途では何ら問題はない。しかしながら、有機物含有銅は、熱伝導性が純銅に比べて低くなると同時に、電気的抵抗値が上昇することが考えられるための、欠点が想定できる。即ち、回路設計によっては、使用可能な場面が限定されてくる可能性がある。特に、現段階に置いて問題がないとしても、コンピュータのクロック周波数がGHzレベルで高速化するようになっており、シグナルの周波数が高くなればなるほど、シグナル電流が回路の表層を流れるようになると考えられ、高周波用途での発熱問題、信号伝達の遅延等を引き起こす事も考えられるのである。
【0031】
そこで、他の請求項に記載した「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、レーザー加工の終了後、エッチング法又は物理研磨法のいずれか若しくは双方を組み合わせて銅張積層板の表層の高炭素含有銅層を除去する整面工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」を用いることで上述の問題を解決することが可能となる。即ち、図6〜図8に記載した製造プロセスを採用するのである。
【0032】
図1〜図3に示した製造方法と基本的な製造手順においては共通する。但し、銅張積層板の状態でのレーザー穴明け加工が終了する迄、高炭素含有銅層6を残し、その後のメッキ処理を行う前の、図6(d)に示した銅張積層板の表面の整面処理の段階で、高炭素含有銅層6のみを完全に除去するのである。即ち、化学的エッチング処理又はバフ研磨処理等の物理処理若しくはこれらの処理を組みあわせて用いることで、高炭素含有銅層6のみを容易に除去することが出来るのである。この高炭素含有銅層を除去することが出来れば、純銅層5のみが銅張積層板に残ることになり、最終的に形成する導電回路の電気抵抗の阻害要因となるものは存在しないことになるのである。
【0033】
そして、以上に述べてきたプリント配線板の製造方法を用いれば、レーザー光の吸収効率等を高めるためのニッケル補助金属層のような異種金属層又は有機材層等を設けることなく、銅張積層板の銅箔層の直接レーザー穴明け加工が容易に行えるものとなるのである。
【0034】
次に、請求項に記載した他のプリント配線板の製造方法は、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、当該高炭素含有銅層を銅張積層板表面より引き剥がして除去し、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理をし、層間導通形成処理後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。
【0035】
このプリント配線板の製造方法は、図9〜図11に示す一連の製造フローである。この製造方法と前述した製造方法との違いは、高炭素含有銅層6の形成前に、銅張積層板の表面に有機層10を形成することにある。即ち、有機層10を形成し、その上に高炭素含有銅層6を形成することで、レーザー加工後に、その高炭素含有銅層6は作業者の手作業で容易に引き剥がせるものとなるのである。
【0036】
ここでいう有機層10は、請求項に記載したように、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いて形成することが好ましい。
【0037】
窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物には、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的には、窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール(以下、「BTA」と称する。)、カルボキシベンゾトリアゾール(以下、「CBTA」と称する。)、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(以下、「BTD−U」と称する。)、1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「TA」と称する。)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「ATA」と称する。)等を用いることが好ましい。
【0038】
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール(以下、「MBT」と称する。)、チオシアヌル酸(以下、「TCA」と称する。)及び2−ベンズイミダゾールチオール(以下、「BIT」と称する)等を用いることが好ましい。
【0039】
カルボン酸は、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
【0040】
以上に述べた有機剤の使用方法について、銅張積層板の銅箔表面への有機層の形成方法について述べつつ、説明することとする。銅張積層板の銅箔表面への有機層の形成は、上述した有機剤を溶媒に溶解させ、その溶媒中に銅張積層板を浸漬させるか、銅張積層板に対しシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機剤の濃度は、上述した有機剤の全てにおいて、濃度0.01g/l〜10g/l、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機剤の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。
【0041】
また、有機層の形成は、前述の有機剤を適宜組み合わせて行うことも可能で、有機層は窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択された1種の有機剤若しくは2種以上を混合した有機剤を複数回繰り返し塗布することにより形成するものであっても、更に、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される2種以上の有機剤を交互に繰り返し塗布することにより形成したものであっても本件発明に係る製造方法でプリント配線板を効率よく製造することが可能である。これらの方法により、より精度の高い有機層の厚さ制御が可能となる。
【0042】
有機層の形成原理からすると、銅箔の表層に形成されている金属酸化被膜である酸化金属層に対し、有機剤が吸着することになる。そして、その酸化金属層に吸着した状態から、表層に存在する酸素等の結合子と結びつき、有機層を形成する有機剤が安定するものと推測している。従って、有機剤の濃度が高いほど有機剤が銅箔表面に吸着する速度が速くなると言え、基本的に有機剤の濃度は製造ラインの速度に応じて定められるものである。銅箔と溶媒に溶解させた有機剤とを接触させる時間も製造ラインの速度から決まり、実用的には5〜60秒の接触時間となる。
【0043】
これらのことを考慮した結果、有機剤の濃度0.01g/lよりも低い濃度となると、短時間での銅箔表面への吸着は困難であり、しかも形成される有機層の厚さにバラツキが生じ、製品品質の安定化が不可能となるのである。一方、10g/lを越える濃度としても、特に有機剤の銅箔表面への吸着速度が添加量に応じて増加するものでもなく、生産コスト面から見て好ましいものとは言えないのである。上述した有機剤を使用することにより、有機層を形成する際の量的制御を容易にすることが可能となる。
【0044】
このようにして形成した有機層の上に高炭素含有銅層を形成するとその高炭素含有銅層が容易に引き剥がせるものとなるのである。このときの高炭素含有銅層の引き剥がし強さは1〜300gf/cmの範囲に収まり、人間の手作業で簡単に除去できるものとなるのである。この引き剥がし作業を考慮したときの、高炭素含有銅層の適正な厚さは、次のように考えられる。製造コストを考慮し、可能な限り高炭素含有銅層を薄く、使用金属量を少なくしたいことは当然であるが、人間の手作業で引き剥がして除去する際の高炭素含有銅層の破断等を回避することを考えると、本来1μm以上の厚さがあれば円滑な引き剥がし作業を達成できると考えられ、上述した加工穴径の問題も加味して上限値が定まることになる。そして、下限値は、上述したように円滑なレーザー穴明け加工を行うための最低限の厚みを採用すればよい。薄い高炭素含有銅層の場合には、テープで貼り付けて剥離除去する等の手法を用いなければならない場合もある。しかしながら、このようにテープを用いて剥離することは、高炭素含有銅層の確実な除去を可能とするものとなる。また、この場合の高炭素含有銅層は、箔状態で引き剥がされるため、銅スクラップとしての回収再利用が可能となるのである。
【0045】
図10(e)に示すように、高炭素含有銅層6を引き剥がすと、有機層10のほとんどは高炭素含有銅層の剥離と同時に除去される。そして、一部の有機剤が銅箔層の表層に有機被膜として残留する場合もあるが、この残留した有機剤は、後の銅メッキ工程等に影響を及ぼすレベルのものではない。但し、確実に有機剤を除去するためには、希硫酸、希塩酸等の溶液で酸洗する事で容易に除去することが可能なものである。
【0046】
有機層10の形成に用いる有機剤は、本来一般に、導電性材料ではなく、絶縁性を有する材料である。従って、本件発明に係るプリント配線板の製造方法では、銅張積層板の銅箔自体を陰極として分極し、有機層を形成した銅箔上に直接的に高炭素含有銅を電解析出させるものであり、有機層を通しての通電可能な状態とする必要がある。即ち、有機剤からなる有機層の厚さは自ずと限界が生じ、適正な引き剥がし強度の確保を可能とし、しかも高炭素含有銅層の安定した電解析出が可能な厚さとする必要がある。
【0047】
従って、有機剤をどのような濃度の溶媒を用いて、いかなる処理時間で有機層を形成するかが重要なのではなく、結果として形成された有機層の厚さ、言い換えると、有機層を構成する有機剤の量が重要となるのである。本件発明者等の研究によれば、有機層の厚さが、好ましくは1nm〜1μmの範囲であることが判明している。
【0048】
ここに明記した厚さ範囲で、適正な高炭素含有銅層の剥離強度の確保が可能で、しかも高炭素含有銅層の安定した電解析出が可能となるのである。即ち、有機層の厚さが、下限値である1nmを下回る厚さでは、有機層の厚みにバラツキが生じ、均一な有機層が形成できない。その結果として、高炭素含有銅層を引き剥がせない事態が発生する。
【0049】
上限値である1μmを越えると、通電状態が不安定になり、高炭素含有銅層の析出状況が不安定で、均一な厚さの高炭素含有銅層の形成が困難となる。また、長時間掛けて高炭素含有銅層を析出させても、安全にエッチング工程で用いることのできる程度の、最低必要とされる引き剥がし強度を満足しないものとなる。そして、有機層の厚さが更に大きくなると、完全に通電不能な状態となる。このときの有機層の厚さはnm〜μmレベルと、非常に薄いものであるため、その測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いる必要がある。
【0050】
以上のようにして、図9(b)に示すように有機層の形成が終了すると、図10(e)の高炭素含有銅層6の剥離を除けば、上述してきたプリント配線板の製造方法と同様であり、重複した記載となるため省略する。
【0051】
更に、請求項に記載の他のプリント配線板の製造方法は、「基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理として銅メッキをし、当該銅メッキ層と高炭素含有銅層とを銅張積層板の表面より引き剥がして除去し、その後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。」としている。この一連の製造フローを図12〜図14に示している。以下、この図を参照しつつ説明する。
【0052】
これは、前述のプリント配線板の製造方法が、レーザー穴明け加工を行った直後に、高炭素含有銅層を引き剥がすのに対し、このプリント配線板の製造方法は、図12(d)〜図13(f)に示したフローから分かるように、レーザー穴明け加工を行った後に、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理を行い、その後高炭素含有銅層を引き剥がす点で異なっている。
【0053】
このような製造方法を採用したのは、レーザー穴明け加工を行った後に、銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理を、無電解銅メッキと電解銅メッキを用いて行うと考える。すると、無電解銅メッキと電解銅メッキとで形成された銅層は、図13(e)に示したように、高炭素含有銅層の上にもメッキ銅層として形成される。この状態で、高炭素含有銅層を引き剥がすと、図13(f)に示すようにレーザー加工にて形成したBVH等の凹部の内壁面にのみメッキ銅層を残し、高炭素含有銅層の除去と同時に高炭素含有銅層上のメッキ銅層も同時に除去されることになる。このようにして、外層のプリント回路形成時のエッチング対象となる銅箔厚さを薄く維持することで、ファインピッチ回路の形成が容易となるのである。
【0054】
その他、有機層の形成、及び以降のエッチングプロセスに関しては、前述のプリント配線板の製造方法と何ら変わるところがないため、重複した説明は省略する。
【0055】
続いて、上述してきた銅張積層板の高炭素含有銅層の形成方法に関して説明する。まず、請求項には、「高炭素含有銅層は、膠、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれか1種又は2種以上を30ppm〜1000ppm含有する銅電解液を用いてパネルメッキ法で銅張積層板の表面に形成するものである本件発明に係るプリント配線板の製造方法で用いる高炭素含有銅層を備えた銅張積層板の製造方法。」としている。
【0056】
通常の電解銅箔のバルク銅層も、同じく硫酸銅溶液であって、電解銅箔の伸び率の改善のためなどに膠を添加する手法が採用されている。しかしながら、このときの膠等の添加量は20ppm以下である。これに対して、本件発明に係る製造方法では、30ppm以上の膠等の濃度範囲を採用するのである。30ppmの濃度とすることで、有機物含有銅中の炭素含有濃度を0.03wt%とすることが出来るのである。
【0057】
硫酸銅溶液中の膠濃度と、その硫酸銅溶液を電解することにより得られた有機物含有銅中の炭素量との関係を調べた結果を図15に示している。この図15から分かるように、縦軸に有機物含有銅中の炭素含有量、横軸に製造に用いた硫酸銅溶液中の膠濃度と採ると、対数関数的関係と成っていることが分かる。即ち、硫酸銅液中の膠濃度が1000ppm付近、炭素含有量0.4wt%付近で、ほぼ飽和して、それ以上に有機物含有銅中の炭素量は増加しないようになるのである。そして、レーザー穴明け加工試験の実証結果から、硫酸銅液中の膠濃度が30ppmを越えるあたりから、レーザー穴明け加工性が飛躍的に上昇し出すのである。この傾向は、ゼラチン、コラーゲンペプチドを用いた場合も同様である。
【0058】
更に、電解で製造する高炭素含有銅層の結晶組織は、電流密度を制御することにより、上述したタイプ▲1▼、タイプ▲2▼の結晶組織の造り分けが可能となるのである。厳密に言えば、電解液中の膠等の濃度との関係もあるため、明確な電流値として記載することは困難であるが、例えば、タイプ▲1▼の結晶組織を得ようとすると10A/dm2以下の低電流密度を採用し、タイプ▲2▼の結晶組織を得ようとすると20A/dm2以上の高電流密度を採用する等である。従って、このタイプ別結晶組織の造り分けを行おうとすると、生産ラインの特質、電解液の構成成分の濃度等を考慮し、工程毎に電流密度を決定すべきである。以下、本件発明の実施形態について説明する。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るプリント配線板の製造方法の実施の形態について説明する。以下の全ての実施形態で採用するレーザー穴明け加工の条件は、炭酸ガスレーザーを用い、照射条件は上述した表1の説明で示したトータル加工エネルギー20mJの条件及び結晶粒の構造説明に用いたトータル加工エネルギー10mJの条件をそのまま採用している。そして、銅張積層板に100μmの加工径の穴を形成することを予定して行ったものである。なお、各実施形態において、可能な限り、共通の符号を用いて説明することとする。
【0060】
第1実施形態: 本実施形態は、図1〜図3に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない樹脂層のみの状態とした。
【0061】
最初に、図1(a)に示す4層銅張積層板2の外層銅箔5の表面に、図1(b)に示すように高炭素含有銅層6を形成した。この高炭素含有銅層6の形成は、銅電解液として硫酸銅溶液であって、銅濃度40g/l、フリー硫酸濃度150g/l、膠濃度800ppm、液温48℃の溶液を用いて、電流密度8A/dm2で電解することで約2μm厚の高炭素含有銅層6を4層銅張積層板2の外層に形成した。なお、この高炭素含有銅層6の炭素含有量は0.37wt%であり、タイプ▲1▼の結晶組織を有していた。
【0062】
高炭素含有銅層6の形成が終了すると、水洗し、高炭素含有銅層6の表面を乾燥させ、図1(c)に示すようにレーザー穴明け加工を行った。その結果、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は98〜111μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.96であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は90〜101μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.86であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0063】
その後、高炭素含有銅層6を残したまま、図2(d)に示すように層間導通形成処理を行った。層間導通形成処理は、無電解銅メッキで1〜2μmの銅層を形成し、電解銅メッキで10μmの銅メッキ層7に成長させた。このときの無電解銅メッキ液としては、一般的に使用される硫酸銅・5水和物 0.06mol/l、EDTA・4Na0. 12mol/l、HCHO 0.5mol/l、2,2’−ジピリジル 10mg/l、PEG1000 250mg/l、pH=12.5、液温70℃の溶液を用いて短時間の間に行った。そして、無電解銅メッキが終了すると、硫酸銅溶液であって、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃、電流密度15A/dm2の平滑メッキ条件で電解し、15μm厚の銅メッキ層7を得た。
【0064】
その後、水洗、乾燥し、図2(e)に示すように銅メッキ層7の形成された外層銅箔5の表面に紫外線硬化型のドライフィルムをロールラミネートし、エッチングレジスト層8を形成した。そして、パターンフィルムを当該エッチングレジスト層8の上に重ね露光し、現像することで、図2(f)に示すように外層回路9として残す部位にのみエッチングレジスト層8を残留させた。そして、図3(g)のように塩化銅溶液でエッチングし外層回路9を形成した。最終的な、エッチングレジスト層8の除去には、水酸化ナトリウム溶液を用いて、硬化したエッチングレジスト層8の膨潤除去を行った。以上のようにして、図3(h)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0065】
第2実施形態: 本実施形態は、図6〜図8に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この実施形態は、第1実施形態のレーザー穴明け加工後の、層間導通形成処理を行う前に、高炭素含有銅層6の除去処理を行った点が異なるのみである。従って、重複した説明は省略することとして、図6(d)に示す高炭素含有銅層6の除去処理のみを説明する。
【0066】
レーザー穴明け加工が終了すると、高炭素含有銅層6を剥離した。ここでは、#1000のロール状バフを用いて物理研磨し、その後、濃度150g/l、液温30℃の希硫酸溶液に浸漬し、浸漬時間20秒として、4層銅張積層板2の外層銅箔5に付いた研磨残渣を除去した。このようにして、高炭素含有銅層6を除去したのである。
【0067】
高炭素含有銅層6の剥離後に、図7(e)に示すように層間導通形成処理として銅メッキ層7を形成し、その後、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図8(i)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0068】
第3実施形態: 本実施形態は、図9〜図11に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない状態のものとした。
【0069】
最初に、4層銅張積層板2の酸洗処理を行った。この酸洗処理は、必要に応じて行われるもので、ここでは有機層10の密着性を向上させるため、酸洗処理として濃度150g/l、液温30℃の希硫酸溶液に浸漬し、浸漬時間20秒として、4層銅張積層板2の外層銅箔5に付いた油脂成分を除去し、表面酸化被膜の除去を行った。
【0070】
酸洗処理が終了すると、図9(b)に示すように4層銅張積層板2の外層銅箔5の表面に有機層10を形成した。有機層10の形成は、4層銅張積層板2を濃度5g/lのCBTAを含む、液温40℃、pH5の水溶液に30秒間浸漬することで行った。
【0071】
有機層10を形成し、水洗した後に、有機層10の表面に、図9(c)に示すように高炭素含有銅層6を形成した。この高炭素含有銅層6の形成には、電解法を用い、銅電解液として第1実施形態で用いたと同様の溶液及び条件を用いて、約2μm厚でタイプ▲1▼の結晶組織を有する高炭素含有銅層6とした。
【0072】
高炭素含有銅層6の形成が終了すると、水洗し、図9(d)に示すように高炭素含有銅層6の表面を乾燥させ、レーザー穴明け加工を行った。その結果、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は97〜108μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.93であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は89〜98μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.85であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0073】
レーザー穴明け加工が終了すると、図10(e)に示す高炭素含有銅層6を剥離する工程に入る。ここでは、作業者が銅張積層板の隅部から、高炭素含有銅層6を手作業で引きはがした。このときの高炭素含有銅層6は、極めて容易に引き剥がしが可能であり、銅張積層板表面に高炭素含有銅成分が残留することもなかった。
【0074】
高炭素含有銅層6の剥離後に行う、層間導通形成処理として図10(f)のように銅メッキ層7を形成し、その後、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図11(j)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0075】
第4実施形態: 本実施形態は、図12〜図14に示した製造フローを用いたものである。本実施形態では、4層銅張積層板2のレーザー穴明け加工を行い、プリント配線板1を製造した。この4層銅張積層板2の内層コア材3としては、内層回路4形成後の両面基板を用い、その内層コア材3の両面に樹脂付銅箔Rを配して、熱間プレス加工することで、内層コア材と外層銅箔5との間には、ガラスクロスの存在しない状態のものとした。
【0076】
最初に、4層銅張積層板2を酸洗処理し、図12(b)に示すように有機層10の形成を行った。そして、図12(c)に示すように有機層10の表面に高炭素含有銅層6を形成し、図12(d)に示すレーザー穴明け加工を行うまでの工程は、第3実施形態と同様である。従って、ここでの重複した説明は省略する。ここで、トータル加工エネルギー20mJの場合には、BVHの加工穴径は101〜115μm径の分布を持ち、穴明け加工した400穴中、全ての穴が良好に穴明け加工でき、加工された穴の真円度が平均で0.92であった。また、上述したトータル加工エネルギー10mJの場合には、BVHの加工穴径は93〜105μm径の分布を持ち400穴の穴明け加工を行った。その結果、加工された穴の真円度は0.88であるが、400穴全ての穴に穴明け加工が可能であった。この結果を見るに、十分に実操業上使用可能なレベルのものとして仕上がった。
【0077】
レーザー穴明け加工が終了すると、この段階で、図13(e)に示すように層間導通形成処理として銅メッキを行った。まず、無電解銅メッキで1〜2μmの銅層を形成し、電解銅メッキで15μmの銅メッキ層7に成長させた。このときの無電解銅メッキ液としては、一般的に使用される硫酸銅・5水和物 0.06mol/l、EDTA・4Na0. 12mol/l、HCHO 0.5mol/l、2,2’−ジピリジル 10mg/l、PEG1000 250mg/l、pH=12.5、液温70℃の溶液を用いて短時間の間に行った。そして、無電解銅メッキが終了すると、硫酸銅溶液であって、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃、電流密度15A/dm2の平滑メッキ条件で電解し、15μm厚の銅メッキ層7を得た。
【0078】
そして、層間導通形成処理としての銅メッキが終了すると、ここで高炭素含有銅層6を剥離した。ここでは、作業者が銅張積層板の隅部から、高炭素含有銅層6を手作業で引きはがし、高炭素含有銅層6とその表面に形成した銅メッキ層7とを同時に引きはがし、図13(f)に示すようにBVHの内壁面にのみ銅メッキ層7を残すものとした。このときの高炭素含有銅層の引きはがし強さは、銅メッキ層7の曲げ応力分の負荷が加わるため、80.6g/cmで、容易に引き剥がしが可能であり、銅張積層板表面に高炭素含有銅成分が残留することもなかった。
【0079】
そして、高炭素含有銅層6の剥離後に、水洗、乾燥し行う紫外線硬化型のドライフィルムラミネート、露光、現像、回路エッチング等に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでの記載は省略する。以上のようにして、図14(j)に示すプリント配線板1の製造が可能であった。
【0080】
【発明の効果】
本発明に係るプリント配線板の製造方法を用いることで、従来から困難と言われてきた炭酸ガスレーザーを用いて、異種金属層又は有機剤層を設けることなく銅箔と基材樹脂とを同時に除去し、レーザー穴明け加工を行うことが可能となった。異種金属が含まれないことから、廃水処理の複雑化を防止することが可能であり、従来のエッチング工程をそのまま応用することが可能で、設備投資費用を大幅に低減し、プリント配線板のトータル製造コストの低減が可能となり、安価な製品の市場供給が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図2】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図3】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図4】高炭素含有銅層の断面結晶組織観察像。
【図5】高炭素含有銅層の断面結晶組織観察像。
【図6】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図7】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図8】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図9】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図10】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図11】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図12】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図13】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図14】プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図15】硫酸銅溶液中の膠濃度とその硫酸銅溶液を電解することにより得られた有機物含有銅中の炭素量との関係を表す図。
【符号の説明】
1 プリント配線板
2 4層銅張積層板
3 内層コア材
4 内層回路
5 外層銅箔
6 高炭素含有銅層
7 メッキ銅層
8 エッチングレジスト層
9 外層回路
10 有機層
Claims (7)
- 基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、
銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。 - 基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行い回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、
銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に炭素含有量が0.08wt%〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、
レーザー加工の終了後、エッチング法又は物理研磨法のいずれか若しくは双方を組み合わせて銅張積層板の表層の高炭素含有銅層を除去する整面工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。 - 基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、
銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、
銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、
当該高炭素含有銅層を銅張積層板表面より引き剥がして除去し、
銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理をし、
層間導通形成処理後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。 - 基材樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にレーザーを用いてIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成し、層間導通形成処理をし、回路形成を行うものであるプリント配線板の製造方法において、
銅張積層板は、その外層に位置する銅箔表面に有機層を形成し、当該有機層の表面に炭素含有量が0.08〜0.40wt%の高炭素含有銅層を形成したものを用い、
銅張積層板のIVH若しくはBVH等の貫通孔又は穴部を形成する所定の位置の当該高炭素含有銅層の表面にレーザー光を照射することで高炭素含有銅層、有機層、銅箔層及び基材樹脂層を同時に除去し所望の形状に加工し、
銅張積層板の層間の導通を得るための層間導通形成処理として銅メッキをし、
当該銅メッキ層と高炭素含有銅層とを銅張積層板の表面より引き剥がして除去し、
その後の銅張積層板の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光し、現像し、回路エッチングし、エッチングレジスト除去を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。 - 有機層は、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるもので形成したものである請求項3又は請求項4のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
- 高炭素含有銅層は、膠、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれか1種又は2種以上を30ppm〜1000ppm含有する銅電解液を用いてパネルメッキ法で銅張積層板の表面に形成するものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
- 高炭素含有銅層の断面観察結晶組織は、微細で且つ連続的な針状結晶である請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
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