JP2004005872A - 光ディスク原盤作製方法および光ディスクとその製造方法 - Google Patents

光ディスク原盤作製方法および光ディスクとその製造方法 Download PDF

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佃 雅彦
Shinya Abe
阿部 伸也
Hidekazu Ito
伊藤 英一
Morihisa Tomiyama
富山 盛央
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Abstract

【課題】電子線記録装置で化学増幅型レジストを使用してPWM信号ピットを記録する場合において、ピットエッジ形状を改善するPEB条件を設定すると、露光部に発生した酸の拡散量の違いから長短ピットの形状にずれが生じるという課題があった。
【解決手段】マルチパルス信号で露光記録することによって、ピットエッジ形状を改善するPEB条件で、かつピット形状を所定の形状に調整する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学増幅型レジストを使用し記録する光ディスク原盤作製方法、およびその光ディスク原盤を使用し作製した光ディスクとその製造方法に関し、特に高密度光ディスク原盤作製方法、および光ディスクとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、光ディスクは、レーザや電子線などを光源とした光ディスク原盤記録装置を使用し、フォトレジストが塗布された原盤を露光し、現像することによって表面に情報ピットや溝などの凹凸パターンが形成された光ディスク原盤を作製する工程と、光ディスク原盤から凹凸パターンを転写したスタンパと呼ばれる金属金型を作製する工程と、スタンパを使用して樹脂製の成形基板を作製する工程と、成形基板に記録膜や反射膜などを成膜し、貼りあわせる工程からなる。
【0003】
近年、光ディスクの高密度化が進み、光ディスク原盤記録装置に使われる光源の短波長化が著しい。現在開発が行われている高密度ディスクでは、電子線による記録の必要性も高まってきている。本発明では、電子線記録についての一例を用いて説明を行う。
【0004】
電子線を用いて、光ディスク原盤を作製するとき、露光に使用する電子線記録装置は、一般的に次のような構成からなっている。図2に電子線記録装置の装置構成を示す。電子線記録装置は、電子線を発生させる電子線源と、放出された電子線をレジスト原盤に収束させ、入力される情報信号に応じてレジスト原盤上に情報パターンを記録するための電子光学系からなる。
【0005】
電子線源は、電流を流すことで電子を放出させるフィラメント201、放出された電子を閉じ込めるサプレッサ電極202、サプレッサ202に設けられたピンホールから電子線を引き出し、加速するエクストラクタ電極203から構成されている。
【0006】
電子光学系は、次の構成からなる。電子線を収束させるレンズ204、電子線のビーム径を決定するアパーチャ205、情報信号に応じて電子線の方向を任意の方向に曲げる電極206、遮蔽板207、レジスト原盤210表面に電子線を収束させるレンズ208、電子線の収差成分を補正する収差補正電極209からなっている。また、レジスト原盤210は回転ステージ211上に固定されており、スライダ212によって、回転ステージ211ごと移動できるようになっている。電極206では、供給される情報信号213に応じて、露光するときは、電子線をレジスト原盤に向かって照射するように、そして露光しないときは、電子線の進行方向を遮蔽板207側に曲げ、電子線を遮蔽させるように動作させている。
【0007】
電子線はレンズ204で、電極206の中心に向かって収束され、レンズ208でレジスト原盤210に向かって収束される。電極206に電圧を供給し、電子線の進行方向を変化させたとしても、レジスト原盤210上では、電子線の照射位置が変化しないようにしている。
【0008】
情報信号213として、図3に示すような信号が電極206に入力される。所望の長さのピット304を記録するため、回転するレジスト原盤の線速にあわせて長さが決定されたパルス301を情報信号として用いる。電極206には信号302が入力される。この信号は、スレッショルド電圧303以上のとき、電子線は電極206で曲げられることなく、レジスト原盤に照射される。また、スレッショルド電圧303以下の電圧が電極206に入力されると、電子線は遮蔽板207側に曲げられ、遮蔽板207で遮蔽される。
【0009】
また、電子線記録で使用されるフォトレジストとしては、遠紫外線レーザなどで使用されるレジストも用いることができるが、一般的に電子線露光用の感光材料からなるレジストが用いられることが多い。そして、シリコンウェハなどの原盤の上に、電子線用レジストを所望の厚みに塗布し、図2に示すような電子線記録装置内に投入され、露光記録される。
【0010】
露光された原盤は、現像され、情報ピットや溝などの凹凸形状が形成される。凹凸形状が形成されたレジスト原盤にスパッタなどによってニッケルなどの導電材料薄膜を形成し、これを電極としてメッキされ、スタンパと呼ばれる樹脂成形用の金型が作製される。このスタンパを金型として、射出成形などによって、凹凸パターンが転写された樹脂基板を作製し、これに成膜や貼り合わせなどをすることによってディスクが完成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子線記録で用いられている一般的な電子線用フォトレジストは、照射された電子線のビーム形状を良く再現し得るが、一般的に露光感度が弱く、例えば記録容量20GB以上の再生専用次世代DVDなどで用いられる所望のピットパターンを作製するためには、単位面積あたりにかなりの量の電子線がレジスト面に照射される必要がある。電子顕微鏡などに比べ10倍以上の電子線量が一般的には必要となる。電子線記録装置では、単位面積あたりのレジスト面に照射する電子線量を増やすためには、電子線を引き出すエクストラクタ電極に加える電圧を高めるなど、発生した電子をできるだけ多く引き出し、レジスト面に照射する電子線量を高める方法や、または引き出される電子線量は同じ、すなわち、レジスト面に照射される電子線量は同じにした状態で、レジスト原盤の回転速度をおとすことによって、記録線速を遅くし、相対的に単位面積あたりに照射される電子線量を増やすなどの方法がある。しかし、エクストラクタ電極に加える電圧を高める方法は、電子線源において異常放電などのトラブルを誘発する確率を高め、装置の安定動作の妨げとなる。また、レジスト原盤の回転速度を落とし、記録線速を遅くすることは、露光記録時間を長くすることにつながり、生産性を著しく低下させるため、光ディスクの量産を考慮すると好ましくない。また、露光時間が長くなると1枚の原盤の中で、最初に露光された部分と最後に露光された部分とで、レジスト材料の変質などにより状態が変化する可能性も考えられ、記録の再現性も低下する可能性がある。また、一般的な電子線用レジストは、現像液として、特殊な溶剤を用いるものも有り、従来のレーザ記録装置などで使用されるノボラック系レジストの現像に用いられる現像装置などを使用できないことも多い。
【0012】
電子線用に用いられるフォトレジストとして、一般的な電子線用レジストを用いたもの以外に化学増幅型レジストと呼ばれるレジスト材料が用いられることもある。この材料は、電子線や遠紫外線レーザなどの短波長レーザなどで用いることができるもので、従来のレジストに比べ、露光感度が高く、単位面積あたりの電子線の照射量は少なくてすむ特徴を有している。そのため、電子線記録装置への負担も小さく、また、記録線速を高めることができ、生産性を高めることができる。
【0013】
化学増幅型レジストは、電子線が照射された部分に酸が発生し、露光後の熱処理(PEB:Post Exposure Bake)によって、発生した酸を触媒として、レジスト反応が進行する特徴をもつ。露光部に発生した酸はPEB時に露光部から周辺部に拡散していき、レジスト反応を行う。そのため、現像後に現れるパターンは、露光した部分の形状そのものではなく、酸の拡散運動にともなって露光部の周辺へ広がった形状となる。
【0014】
従来の図3に示すような、1つのピットを1つのパルスで露光記録する情報パターンを使用し、レジスト原盤上に電子線を照射した場合、短ピットを形成するために照射される短いパルスパターンと、長ピットを形成するために照射される長いパルスパターンとでは、レジスト原盤の露光部に発生する酸の総量が大きく異なってしまう。露光後のPEB処理時に発生した酸が露光部から周辺部へ拡散していくが、短ピットと長ピットでは露光部に発生した総量が異なることから、PEB処理による酸の拡散量が異なり、短ピット露光部の酸の拡散量に比べ、長ピット露光部の酸の拡散量が大きくなる。したがって、PEB処理後、現像によって凹凸形状を形成すると、短ピットに対して長ピットが結果的に大きくなり、ピットの長さも、幅も、目的のものからずれてしまうという課題がある。ピットの長さが情報として認識されるPWM信号の場合、目的のピットの長さからのずれは、信号ジッタの悪化につながる。そのため、化学増幅型レジストを使用する場合、通常、PEB時に使用する温度は、酸の拡散量があまり大きくならないレベルに設定される。ここでは、この温度を標準仕様温度と名付けることにする。しかし、標準仕様温度では、酸の拡散が均一性を失い、形成されるピット形状がばらつく、またはエッジにがたつきが残る傾向があり、同じパターンのピットを形成するとき、再現性が取りづらいという課題があった。
【0015】
また、UV硬化樹脂によって、転写を繰り返し多層ディスクを作製する場合、再生光から見て一番奥となる第1情報層は、射出成形によって形成された第1基板上のピットに対して、反射膜がスパッタリングされて構成されるため、元の基板のピット形状に対して、反射膜が形成される分だけピットが小さくなる。
【0016】
また、転写して構成される転写ピットは、UV樹脂の転写性などによって、転写スタンパのピット形状に対して、小さくなる傾向にある。特に短いピットなどは顕著に小さくなってしまうため、短いピットと長いピットの間でピット幅などのバランスが大きくくずれてしまうこともある。
【0017】
本発明は従来の課題に鑑み、生産性の向上と電子線記録装置への負担を小さくするため、レジスト材料として、化学増幅型レジストを用い、かつピット形状の再現性を確保しつつ、所望のピットパターンを記録することを目的とする。
【0018】
また、多層ディスクを作製する場合に、転写ピットの形状が最適となるように、転写スタンパ上の転写用情報面のピット形状を最適化する、または、各層のピット形状がほぼ同じとなるように、基板上のピット形状を最適化し合わせ込むことを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の光ディスク原盤作製方法は、化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0020】
次に本発明の光ディスクは、化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製し、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換し、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録し、露光された前記レジスト原盤を加熱処理し、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成して作製された光ディスク原盤を用いて作製された光ディスクであって、転写した情報面の各ピット幅が略同じであることを特徴とする。
【0021】
次に本発明の光ディスクの製造方法は、少なくとも片面に少なくとも凹形状のピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された転写スタンパを作成する工程と、前記転写用情報面に光硬化樹脂が接した状態で、ベース基板と前記転写スタンパを、前記転写用情報面とベース基板が向かい合うように貼り合せる工程と、前記転写スタンパを前記光硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記光硬化樹脂に転写する工程を含む光ディスクの製造方法であって、前記転写スタンパにより、転写した情報面の各ピット幅が略同じとなるように形成することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、ピット形状の再現性を確保するため、またはエッジ形状の改善を図るため、PEB時の温度設定を標準仕様温度以上に設定し、酸の拡散量が十分大きくなるようにした。また、酸の拡散量が大きくなることによって、長さの異なるピットの長さ、および幅が目的の形状からずれてしまう課題については、従来長さの異なる各ピットをそれぞれ所定の長さの1つのパルスで露光するのに対して、それぞれを複数のパルスに分割、つまりマルチパルス信号で露光することによって、露光面積を調整し、目的のピット形状が形成できるようにした。特に、時間的に対称なマルチパルス信号パターンを採用することによって、所望のピット形状が得られるようにした。
【0023】
また、多層ディスクを作製する場合に、UV硬化樹脂によって転写された転写ピットがピットの長さによって、バランスが崩れることに対して、転写スタンパを作製するときにマルチパルス信号によって、転写後のピットのバランスが取れるように記録を最適化した。
【0024】
また、第1基板上のピットが反射膜が構成されることによって小さくなることと、転写ピットがUV樹脂の転写性などによって転写スタンパ上のピットから大きさが変化することに対して、各層のピット形状が同じになるように転写スタンパのピット形状をマルチパルス信号によって最適化した。
【0025】
具体的には、以下のとおりである。
【0026】
光ディスク原盤製造方法は、化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を少なくとも含む工程からなる。これにより上記目的が達成される。
【0027】
前記マルチパルス信号は、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなっていてもよい。
前記第1ピットが、2Tピットであってもよい。
【0028】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、130%以下であってもよい。
前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、130%以下であってもよい。
【0029】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、130%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、130%以下であってもよい。
【0030】
前記第1ピットが、3Tピットであってもよい。
【0031】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であってもよい。
前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下であってもよい。
【0032】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下であってもよい。
【0033】
前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなっていてもよい。
【0034】
前記第1ピットが、3Tピットであってもよい。
【0035】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であってもよい。
【0036】
前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上、110%以下であってもよい。
【0037】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上、110%以下であってもよい。
【0038】
前記中間パルスのデューティ比が、45%以上、65%以下であってもよい。
【0039】
前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下であってもよい。
【0040】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0041】
前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0042】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0043】
露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下であってもよい。また、電子線記録装置で露光記録してもよい。
【0044】
また、次のように作製された光ディスク原盤を用いて、作製された光ディスクであって、化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を少なくとも含む工程で作製された光ディスク原盤を用いてもよい。
【0045】
前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなっている光ディスク原盤を用いてもよい。
【0046】
前記第1ピットが、2Tピットである光ディスク原盤を用いてもよい。
【0047】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、130%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、130%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0048】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、130%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、130%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0049】
前記第1ピットが、3Tピットである光ディスク原盤を用いてもよい。
【0050】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0051】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0052】
前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる光ディスク原盤を用いてもよい。
【0053】
前記第1ピットが、3Tピットである光ディスク原盤を用いてもよい。
【0054】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上、110%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0055】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上、110%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0056】
前記中間パルスのデューティ比が、45%以上、65%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0057】
前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0058】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらした光ディスク原盤を用いてもよい。
【0059】
前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらした光ディスク原盤を用いてもよい。
【0060】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらした光ディスク原盤を用いてもよい。
【0061】
露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下である光ディスク原盤を用いてもよい。
【0062】
電子線記録装置で露光記録する光ディスク原盤を用いてもよい。
また、少なくとも片面に少なくとも凹形状のピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された転写スタンパを作成する工程と、前記転写用情報面にUV硬化樹脂が接した状態で、ベース基板と前記転写スタンパを、前記転写用情報面とベース基板が向かい合うように貼り合せる工程と、前記転写スタンパを前記UV硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記UV硬化樹脂に転写する工程を、少なくとも含む光ディスク製造方法であって、転写した情報面の各ピット幅が略同じとなるように前記転写スタンパを作製する。これにより上記目的が達成される。
【0063】
片面に少なくともピットを含む第1信号層と第1反射膜によって第1情報面が形成された第1基板上に、再生光に対して略透明な樹脂からなる信号層を転写スタンパによって形成された多層光ディスクの製造方法であって、少なくとも片面にピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された、少なくとも1種類の転写スタンパを作製する工程と、前記転写用情報面にUV硬化樹脂が接した状態で、前記第1基板と前記転写スタンパとの情報面が向かい合うように貼り合せる工程と、前記転写スタンパを前記UV硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記UV硬化樹脂に転写する工程と、からなり少なくとも1種類の転写スタンパを用いて、前記転写を前記第1基板上に少なくとも1回以上行う方法であって、前記第1情報面の信号ピット形状と、転写した情報面のピット形状が略同じになるように、前記転写スタンパを作製する。これにより上記目的が達成される。
【0064】
片面に少なくともピットを含む第1信号層と第1反射膜によって第1情報面が形成された第1基板上に、再生光に対して略透明な樹脂からなる信号層を転写スタンパによって形成された多層光ディスクの製造方法であって、少なくとも片面にピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された、少なくとも1種類の転写スタンパを作製する工程と、再生光に対して略透明な樹脂からなる第2基板上に、前記転写用情報面にUV硬化樹脂が接した状態で、前記転写スタンパの情報面が向かい合うように貼り合せる工程と、前記転写スタンパを前記UV硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記UV硬化樹脂に転写する工程と、前記第2基板上に少なくとも1種類の転写スタンパを用いて、前記転写を少なくとも1回以上行った後に前記第2基板の転写情報面と前記第1基板の前記第1情報面とが対向するように再生光に対して略透明な樹脂によって貼り合わせる工程と、からなり前記第1情報面の信号ピット形状と、転写した情報面のピット形状が略同じになるように、前記転写スタンパを作製する。これにより上記目的が達成される。
【0065】
前記UV硬化樹脂の粘度が40mPa・sから500mPa・sであってもよい。前記第1反射膜の膜厚が、40nmから100nmであってもよい。
【0066】
前記第1基板に形成された前記第1信号ピットのうち、最短ピットを除く、その他のピット幅に対して、前記UV硬化樹脂で転写した情報面のピットのうち、最短ピットを除く、その他のピット幅が、70%から95%であってもよい。
【0067】
化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を少なくとも含む工程で作製された光ディスク原盤を用いて前記転写スタンパを作製してもよい。
【0068】
前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなっていてもよい。
前記第1ピットが、2Tピットであってもよい。
【0069】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、100%以下であってもよい。
前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、110%以下であってもよい。
【0070】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、100%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、110%以下であってもよい。
【0071】
前記第1ピットが、3Tピットであってもよい。
【0072】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、80%以下であってもよい。
【0073】
前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下であってもよい。
【0074】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上、100%以下であってもよい。
【0075】
前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなっていてもよい。
【0076】
前記第1ピットが、3Tピットであってもよい。
【0077】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、80%以下であってもよい。
【0078】
前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、70%以上、110%以下であってもよい。
【0079】
前記前パルス、および前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上、80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、70%以上、110%以下であってもよい。
【0080】
前記中間パルスのデューティ比が、45%以上、65%以下であってもよい。前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下であってもよい。
【0081】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0082】
前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0083】
前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらしてもよい。
【0084】
露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下であってもよい。
【0085】
前記第1情報面の信号ピット、および前記転写した情報面のピットのうち、最短ピット長が0.3μm以下、0.1μm以上であってもよい。
電子線記録装置で露光記録していてもよい。
【0086】
前記第1信号層と前記転写した情報面の密度が略同じであってもよい。
【0087】
以下に、本発明の具体的実施の形態について説明する。
【0088】
(実施の形態1)
本実施の形態1で使用される電子線記録装置の模式図を図4に示す。
【0089】
電子線記録装置は、電子線を発生させる電子線源と、放出された電子線をレジスト原盤に収束させ、情報信号に応じてレジスト原盤上に情報パターンを記録するための電子光学系からなる。
【0090】
電子線源は、電流を流すことで電子を放出させるフィラメント401、放出された電子を閉じ込めるサプレッサ電極402、サプレッサ402に設けられたピンホールから電子線を引き出し、加速するエクストラクタ電極403から構成されている。サプレッサ電極402には、電子を閉じ込めるために負の電圧が加えられ、対してエクストラクタ電極403には、正電圧が加えられる。サプレッサ電極402とエクストラクタ電極403によって生成される電場によって、フィラメント401から放出された電子は、電子線源から電子光学系に向かって電子線となって放出される。
【0091】
電子線源から放出された電子線は、電子光学系に入力される。電子光学系は、次の構成からなる。電子線を収束させるレンズ404、電子線のビーム径を決定するアパーチャ405、情報信号に応じて電子線の方向を任意の方向に曲げる電極406、遮蔽板407、レジスト原盤410表面に電子線を収束させるレンズ408、電子線の収差成分を補正する補正電極409からなっている。またレジスト原盤410は回転テーブル411とスライダ412上に固定されており、任意の回転速度で回転しながら、一定方向に移動し、スパイラルに情報ピットや溝を記録できるようになっている。また、遮蔽板407は、電子線がまっすぐレジスト原盤410に照射されているときの電子線にエッジ部分が接するように配置されている。そして、電極406に供給される信号に応じて、露光するときは電子線をレジスト原盤に向かって照射し、露光しないときは電子線の進行方向を遮蔽板407側に曲げ、電子線を遮蔽させる。これによって、電極406に入力される信号パターンに応じて、レジスト原盤410に電子線を断続的に照射できることになる。また、電子線はレンズ404で、電極406の中心に向かって収束され、レンズ408でレジスト原盤410に向かって収束されるようになっており、電極406に電圧を供給し、電子線の進行方向を変化させたとしても、レジスト原盤410上では、電子線の照射位置が変化しないようにしている。
【0092】
光ディスクの信号ピットは、信号クロックの周期Tの整数倍の長さのさまざまなピット列から構成されている。従来、電極406に入力される信号は、図3に示すように、記録線速に応じて計算される、それぞれのピットの長さに対応した長さの信号パルス列が用いられる。例えば、クロックの周期Tの2倍の長さに相当する2Tピットを露光記録する場合、所望のピット長PL(2T)(nm)と記録線速LV(m/s)から計算される信号パルス幅L(2T)は、L(2T)=PL(2T)/LV(ns)となり、この時間L(2T)だけ、線速LVで回転するレジスト原盤に電子線が照射されるようにする。それは、長ピットも同じで、それぞれのピット長と記録線速から計算される長さのパルスが1つのピットに対して、1つのパルスが電極406に入力される。しかし、本実施の形態1では、情報信号414は、マルチパルス変換装置413を通して信号変換され、元々1つのピットに対して1つのパルスであった情報信号は複数の時間的に対称なパルスに分割されたマルチパルス信号として電極406に入力される。
【0093】
化学増幅型レジストは、露光記録後の熱処理(PEB)によって、露光部に発生した酸を触媒として露光部の周辺に拡散させながら、レジスト反応を進行させる材料である。通常、化学増幅型レジスト材料にはそれぞれ特有のPEB温度が設定されており、ここでは標準仕様温度と呼ぶことにする。例えば、SHIPLEY社製化学増幅レジストUV3の場合、レジストを塗布する基板としてシリコンウェハを使用したとき、標準仕様温度として130度という値が設定されている。
【0094】
化学増幅型レジストは、一般的に半導体プロセス用途に作製されているレジスト材料である。半導体プロセスでは、光ディスク用途で使用する場合に対して、約10倍程度厚く塗布した原盤を露光記録し、レジストの厚み方向に均一にパターンが形成されれば良く、レジスト材料はそのようなパターンが形成されるように調合されていることが多い。また、標準仕様温度もその用途を考慮し、設定されている。しかし、光ディスク用途で使用した場合、半導体用途に対して、要求される形状仕様が異なってくる。標準仕様温度では、露光部に発生した酸は大きく拡散せず、露光部の形状が再現されるかわりに、ピット形状はエッジ部にがたつきが残ることが多い。これは、酸の拡散量が小さくなり、酸の拡散の均一性にばらつきが生じるためと考えられる。このエッジ部のがたつきは半導体用途では容認されても、光ディスク用途では、信号品質の悪化につながるため、容認できなくなってくる。
【0095】
本発明では、標準仕様温度以上にPEB温度を設定してみた。図10に標準仕様温度におけるピット形状と、標準仕様温度から約20℃温度を高くした場合のピット形状の様子を示す模式図を示す。符号1001は、露光に使用するパルスパターン、符号1002はPEB温度として、標準仕様温度を使用した場合のピット形状を示す模式図、符号1003は、PEB温度として標準仕様温度から約20℃温度を高く設定した場合のピット形状の模式図である。PEB温度を標準仕様温度から上げていくと、露光部に発生する酸の拡散量が大きくなり、それに伴い、拡散の均一性が高まるため、露光部に対して大きなピット形状となってしまうが、ピットエッジのがたつきは解消される。また、PEB温度を標準仕様温度以上に高く設定するのと同様に、PEB時間を長く設定することによっても同じ効果が得られることがある。しかし、設定温度は、標準仕様温度、またはそれ以上の温度に設定する必要がある。
【0096】
また、PEB温度は上げすぎると、レジスト材料の変質が生じ、レジスト材料としての性能を失ってしまう。この温度をここでは変質温度と呼ぶことにする。図5にPEB温度と酸の拡散量の関係を簡単に表したグラフを示す。PEB温度の条件を、図5に示す、標準仕様温度以上で、変質温度以下に設定することによって、ピットエッジ形状を良化することが可能である。
【0097】
図6のように、1つの信号ピットに対して、符号601に示す通り1つのパルスで露光記録した場合、短いピットの露光部と、長いピットの露光部の露光面積の違いから、露光部に発生する酸の総量が異なり、PEB温度を標準仕様温度以上、変質温度以下に設定すると、十分酸が拡散された結果、符号602に示す露光部に対して、符号603に示すように形成されるピットは、短ピットと長ピットのピット幅およびピット長の差違が顕著となり、所定のピット長、ピット幅からずれが生じてしまう。
【0098】
図4に示した電子線記録装置と化学増幅型レジストを用い、本実施の形態1では、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される容量20GB以上の再生専用DVDディスクの作製を試みた。変調方式は1−7PP変調、トラックピッチは0.32μm、最短ピットである2Tピット長は0.149μmとした。なお、Tはクロックの周期を示す。ここでは、最短ピットである2Tピットを第1ピット、3Tピットを第2ピット、それ以降ピット長が短い側から順に、第3ピット、第4ピットと呼ぶことにする。
【0099】
化学増幅レジストは約100nmの厚みで、シリコンウェハ原盤の上に塗布した。また、記録線速は3m/sとして、光ディスク原盤の作製を試みた。露光記録されたレジスト原盤はPEB処理の後、現像され、凹凸形状が表面に形成されたレジスト原盤が作製される。作製されたレジストパターンにニッケル薄膜をスパッタ処理し、ニッケル薄膜を電極として、ニッケルメッキを約0.3mmの厚みに行った。メッキされた金属板をレジスト原盤から剥離し、表面に付着したレジスト材料を除去した後、内外径加工を施した後、射出成形機によって、樹脂成形を行った。それによって作製された樹脂基板に反射膜を成膜し、保護層を形成することによって光ディスクを作成した。
【0100】
図6のように、1つの信号ピットに対して信号602のように1つのパルスで露光すると、最短ピット(第1ピット)である2Tを記録するためには、実際に露光する時間は2Tの半分以下の0.6T程度に設定する必要がある。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、2Tピット長が露光部の長さの約2倍以上に膨れあがるためである。この条件において、ディスクを作製し、再生評価した結果、再生後の2T信号のアシンメトリが、約8%となることが確認された。
【0101】
このとき、2T以外のピットは、2Tピットから、T分だけ、長さが長くなっていき、3Tピットは1.6T長、4Tピットは2.6T長のパルスで露光することになるが、図6のように従来信号で記録し、電子顕微鏡によって形状確認を行うと、3Tピットは2Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、4Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。また、長さの異なるピットごとに酸の拡散量が異なるため、特に長いピットは所定のピット長から長くなる方向に大きくずれてしまい、それぞれ所定のピット長からピットのエッジ位置にずれが生じていることを確認した。
【0102】
本実施の形態1では、図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図1に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号101は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号102はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、103は形成されるピット形状を示している。
【0103】
従来、マルチパルス信号は、記録型DVDなどのように熱記録によってピットを形成する場合においてよく用いられ、ピットの始端の熱が終端側に伝わっていくため、マルチパルス信号は、前半部が広く、後半部にパルス幅が狭くなっていく時間的に非対称なパターンが用いられている。しかし、本発明では、従来の熱記録の場合のパターンとは異なり、露光部を中心に酸が拡散してピットが形成されるため、ピットの始端と終端の露光部が時間的に対称となるパターンで記録する必要がある。そのため、3Tピットは、前パルス104、後パルス105の略同じ長さの2個のパルスに分割され、時間的に対称なパターンとなっている。前パルスの頭のエッジから後パルスの最後のエッジまでの長さは、1.8Tとなるように設定し、前パルスと後パルスの幅の条件を振ったときの、アシンメトリの動きを確認した。図8に、前パルスおよび後パルスのパルス幅と3T信号のアシンメトリの動きを示す。前パルス幅が0.7Tのとき、アシンメトリが、約8%となり、先に説明した2T信号とアシンメトリが一致する。0.78T(2Tピットの露光パルスの約130%)以上に設定するとアシンメトリが15%程度となり、2Tピットとのピット長のずれが顕著になってくる。そのため、再生評価した結果、ジッタも7%以上に悪化していることが確認され、容認することができない信号品質となった。また逆に、0.36T(2T露光パルスの約60%)以下に設定すると、前パルスと後パルス間のスペースが長くなりすぎるため、ピットの中間部が記録できず、ピットが2つに分離していることを電子顕微鏡で確認した。
【0104】
次に、4Tピットは、始端パルス106、終端パルス107の略同じ長さの2個のパルスの間に周期Tの中間パルス108を配置したパターンとした。始端パルスと終端パルスの幅は、3Tピットと同様にアシンメトリの動きから決定した。始端パルスおよび終端パルス幅を2T露光パルスの130%に当たる0.78T以上とすると、アシンメトリが15%以上になってしまい、2Tまたは3T信号とのピットエッジの位置ずれが顕著となってしまう。そのため、ジッタ値も7%以上となり、実際に使用するのは難しい。また、始端パルスおよび終端パルス幅を0.24T(2T露光パルスの約40%)以下とすると、ピットエッジが先細りし、ジッタ値も7%以上となってしまった。
【0105】
また、中間パルスのデューティ比を変化させ、ピット形状の確認を行った。ここで説明するデューティ比は、中間パルス部分における、パルスのハイレベルとローレベルの比を示している。デューティ比を65%以上としたとき、2Tピットのピット幅に対して4Tピット幅は約1.5倍の幅となり、マルチパルス記録とした効果がなくなることを確認した。また、デューティ比を45%以下としたとき、長ピットの中間部が十分露光されず、途中で分離しているピットが確認できた。
【0106】
また、図9に示すようにマルチパルス間のスペース部を完全にローレベルとしないようなパターンにおいても、マルチパルス記録の効果が得られる。例えば、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルのとき、中間パルスのデューティ比は約50%程度に設定すると、良好な形状が得られたのは上記に説明した通りだが、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルではなく、符号902に示すように、ハイレベルの約50%以下の信号の場合は、同様のピット形状が得られていることを確認した。しかし、50%以上のレベルの場合、長ピットと短ピットのピット幅の差が顕著となり、マルチパルス記録の効果が得られていないことを確認した。
【0107】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0108】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態1の場合、3Tピットの前パルス、後パルスを0.68Tとした時に、前パルスを約0.02T分前側に、また後パルスを約0.02T分後側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0109】
また、4T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0110】
本実施の形態1で作製したピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、2Tピット幅に対して、3T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0111】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を4.9m/sとし、リミットイコライザによるランダムパターンの評価を行ったところ、アシンメトリは約8%近傍で、各Tがそろっており、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。これは同じPEB条件で作製した従来信号での作製サンプルに対して、約3%のジッタ改善に相当している。
【0112】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、ピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなった。特に標準仕様温度以下となると、1つ1つのピットが持つジッタ値が悪化してしまい、実際に使用するのは難しい。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで、マルチパルス信号パターンの最適化を行うことによって、問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0113】
また、ここではピット列のみによって構成されているディスクを作製し、評価を行ったが、ピットおよび溝などが混在しているディスクにおいても同様のプロセスを用いることができる。
【0114】
本実施の形態1では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも同様の効果がある。
【0115】
(実施の形態2)
化学増幅型レジストと電子線記録装置を使用して、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される容量20GB以上の再生専用DVDディスクの作製を試みた。変調方式は最短ピットが、信号クロックTの3倍の長さに相当する3Tピットである8−15変調を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである3Tピット長は0.185μmとした。ここでは、最短ピットである3Tピットを第1ピット、4Tピットを第2ピット、それ以降ピット長が短い側から順に、第3ピット、第4ピットと呼ぶことにする。
【0116】
化学増幅レジストは約100nmの厚みで、シリコンウェハ原盤の上に塗布した。
【0117】
図12のように、1つの信号ピットに対して信号1202のように1つのパルスで露光すると、最短ピット(第1ピット)である3Tを記録するためには、実際に露光する時間は3Tの半分の1.5T程度に設定する必要がある。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、3Tピット長が露光部の長さの約2倍程度に膨れあがるためである。このとき、4Tピットは2.5T長、5Tピットは3.5T長で露光することになるが、このとき4Tピットは3Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、5Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。また、長さの異なるピットごとに酸の拡散量が異なるため、特に長いピットは所定のピット長から長くなる方向に大きくずれてしまい、それぞれ所定のピット長からピットのエッジ位置にずれが生じていることを確認した。
【0118】
そのため、本実施の形態2では、図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図7に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号701は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号702はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、703は形成されるピット形状を示している。ピット列は、3Tから14Tまでの長さのパルスによって構成される。また、露光記録線速として約4m/sを設定し記録を行った。
【0119】
実施の形態1で説明したものと同様の方法を用いて、各パルスの条件を設定した。
【0120】
最短ピットである3Tピットは、元の信号パルスと同じ1個のパルスで出力される。PEB温度を標準仕様温度に対して約20℃高く設定したため、3Tピットは、約1.5Tだけ、露光するようにパルスの長さを設定した。
【0121】
3Tピットを1.5T長で露光したディスクを作製し、アシンメトリを確認したところ、約8%という値が得られた。
【0122】
第2に短いピットである4Tは、パルスを中央で分割し、前パルス704と後パルス705の2個のパルスに変換した。前パルス704と後パルス705は略同じ長さのパルスで、時間的に対称なパルスとすることで、ピット形状が始端、終端で歪まないようにしている。
【0123】
4Tピットに対して、前パルス、後パルスの幅を変化させたときのアシンメトリの動きを確認した。3Tピットを記録した1.5Tパルスの約80%にあたる1.2T以上とするとピットの長さズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットとのアシンメトリのズレによる、ジッタ値の悪化を確認した。また、パルス幅を3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの60%以下とすると、ピットの始端、終端部分の露光強度が小さくなることにより、ピットの中心部分が露光不足となり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0124】
ここでは、前パルス、後パルス幅を1.5Tの約70%となる約1.1T程度とすることで、3Tピットに対して、ほぼ同じアシンメトリとなることを確認した。
【0125】
また、5Tピットは、始端パルス706、終端パルス707と、その中央部に周期がTとなる中間パルス708を配置した3個のパルスに変換した。6T以上のピットに関しては、中央部の中間パルスの個数を1つずつ増やしていく構成とした。なお、始端パルス706と終端パルス707は略同じ長さに設定し、中間パルス708は、始端パルス706と終端パルス707の略中央に配置している。こうすることで、ピット形状が歪まないようにしている。始端パルス、および終端パルス幅は、PEB後に形成されるピットエッジの位置に大きく影響を与え、始端パルス、終端パルスを、3Tピット記録時に用いた1.5Tパルスに対して、100%の幅にすると、ピット長さは、大きく拡大し、長ピットのエッジ位置が、3Tピットに対してずれてしまった。アシンメトリも15%以上と大きくずれていることを確認した。また、40%以下の幅とするとピットの先細りが確認され、ジッタ値も7%以上と悪化が確認された。
【0126】
また、中間パルスの幅を変化させたときのピット形状の動きを確認すると、デューティ比が45%以下となると、ピットの中央部がつながらず、形成できていないピットが確認された。また、デューティ比が65%以上となると、長ピットが、3Tピットに対して、大きく拡大するのが確認され、ジッタも7%以上と悪化した。
【0127】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0128】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態2の場合、4Tピットの前パルス、後パルスを1.0Tとした時に、前パルスを約0.1T分前側に、また後パルスを約0.1T分後側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0129】
また、5T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0130】
本実施の形態1で作製したピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0131】
本実施の形態2で作製した成形基板上に形成されたピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0132】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を4.6m/sとし、リミットイコライザによるランダムパターンの評価を行ったところ、アシンメトリは約8%近傍で各Tがそろい、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。これは同じPEB条件で作製した従来信号での作製サンプルに対して、約3%のジッタ改善に相当している。
【0133】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、ピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなり、結果として各ピット自身がもつジッタが悪化した。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで、マルチパルス信号パターンの最適化を行うことによって、問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0134】
本実施の形態2では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも効果がある。
【0135】
(実施の形態3)
化学増幅型レジストと電子線記録装置を使用して、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される容量20GB以上の再生専用DVDディスクの作製を試みた。変調方式は最短ピットが、信号クロックの3倍の3Tピットである8−15変調を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである3Tピット長は0.185μmとした。ここでは、最短ピットである3Tピットを第1ピット、4Tピットを第2ピット、それ以降ピット長が短い側から順に、第3ピット、第4ピットと呼ぶことにする。なお、Tはディスクの再生クロックの周期を意味している。
【0136】
化学増幅レジストは約100nmの厚みで、シリコンウェハ原盤の上に塗布した。
【0137】
図12のように、1つの信号ピットに対して信号1202のように1つのパルスで露光すると、最短ピット(第1ピット)である3Tを記録するためには、実際に露光する時間は3Tの半分の1.5T程度に設定する必要がある。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、3Tピット長が露光部の長さの約2倍に膨れあがるためである。このとき、4Tピットは2.5T長、5Tピットは3.5T長で露光することになるが、このとき4Tピットは3Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、5Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。また、長さの異なるピットごとに酸の拡散量が異なるため、特に長いピットは所定のピット長から長くなる方向に大きくずれてしまい、それぞれ所定のピット長からピットのエッジ位置にずれが生じていることを確認した。
【0138】
そのため、本実施の形態3では、図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図11に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号1101は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号1102はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、1103は形成されるピット形状を示している。また、露光記録線速として約4m/sを設定し記録を行った。
【0139】
実施の形態1で説明したものと同様の方法を用いて、各パルスの条件を設定した。
【0140】
最短ピットである3Tピットは、元の信号パルスと同じ1個のパルスで出力される。PEB温度を標準仕様温度に対して約20℃高く設定したため、3Tピットは、約1.5Tだけ、露光するようにパルスの長さを設定した。
3Tピットを1.5T長で露光したディスクを作製し、アシンメトリを確認したところ、約8%という値が得られた。
【0141】
第2に短いピットである4Tは、パルスを中央で分割し、前パルス1104と後パルス1105の2個のパルスに変換した。前パルス1104と後パルス1105は略同じ長さのパルスで、ピット形状が始端、終端で歪まないようにしている。
【0142】
4Tピットに対して、前パルス、後パルスの幅を変化させたときのアシンメトリの動きを確認した。3Tピットを記録した1.5Tパルスの約80%にあたる1.2T以上とするとピットの長さズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットとのアシンメトリのズレによる、ジッタ値の悪化を確認した。また、パルス幅を3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの60%以下とすると、ピットの始端、終端部分の露光強度が小さくなることにより、ピットの中心部分が露光不足となり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0143】
ここでは、前パルス、後パルス幅を1.5Tの約70%となる約1.1T程度とすることで、3Tピットに対して、ほぼ同じアシンメトリとなることを確認した。
【0144】
また、5Tピットも同様に中央で始端パルス1106と終端パルス1107の2つのパルスに分割したパターンを採用した。始端パルス1106、終端パルス1107の幅を変化させたときの動きを確認すると、始端パルス幅、および終端パルス幅を、3Tピット露光時に使用した1.5Tパルスの110%に相当する1.65T以上に設定すると、ピット長さのズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの90%に相当する1.35T以下に設定すると、ピット中央部が記録できなくなり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0145】
6Tピットは始端パルス、終端パルスと、その中央部に周期がTとなる中間パルス1108を配置した3個のパルスに変換した。7T以上のピットに関しては、中央部の中間パルスの個数を1つずつ増やしていく構成とした。なお、始端パルス1106と終端パルス1107は略同じ長さに設定し、中間パルス1108は、始端パルス1106と終端パルス1107の略中央に配置している。こうすることで、ピット形状が歪まないようにしている。
【0146】
始端パルス、および終端パルス幅は、PEB後に形成されるピットエッジの位置に大きく影響を与え、始端パルス、終端パルスを、3Tピット記録時に用いた1.5Tパルスに対して、110%の幅にすると、ピット長さは、大きく拡大し、長ピットのエッジ位置が、3Tピットに対してずれてしまった。アシンメトリも15%以上と大きくずれていることを確認した。また、40%以下の幅とするとピットの先細りが確認され、ジッタ値も7%以上と悪化が確認された。
【0147】
また、中間パルスの幅を変化させたときのピット形状の動きを確認すると、デューティ比が45%以下となると、ピットの中央部がつながらず、形成できていないピットが確認された。また、デューティ比が65%以上となると、長ピットが、3Tピットに対して、大きく拡大するのが確認され、ジッタ悪化の要因となった。
【0148】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0149】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態2の場合、4Tピットの前パルス、後パルスを1.0Tとした時に、前パルスを約0.1T分前側に、また後パルスを約0.1T分後側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0150】
また、5T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0151】
本実施の形態3で作製したピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0152】
成形基板上に形成されたピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0153】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を4.6m/sとし、ランダムパターンの評価を行ったところ、約7%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。
【0154】
(実施の形態4)
化学増幅型レジストと電子線記録装置を使用して、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される1層の容量が20GB以上となる多層再生専用ディスクの作製を試みた。
【0155】
本実施の形態4における光ディスク作製方法について説明を行う。図23A−Dに作製方法を示す。
【0156】
まず、化学増幅型レジストを、シリコンウェハ原盤の上に塗布を行った。塗布されたシリコンウェハは、ベーキングされた後、電子線記録装置内に投入される。電子線記録装置での記録方法は、実施の形態1で説明したものと同様の方法でマルチパルス信号による記録を実施した。露光記録されたレジスト原盤はPEB処理の後、現像され、凹凸形状が表面に形成されたレジスト原盤が作製される。次に、作製されたレジストパターンにニッケルなどの金属薄膜をスパッタ処理し、形成された金属薄膜を電極として、約0.3mmの厚みまでメッキ処理を行った。メッキされた金属板をレジスト原盤から剥離し、表面に付着したレジスト材料を除去した後、内外径加工を施され、射出成形用の金属スタンパが作製される。その金属スタンパを使用して、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの第1基板2301が作製される。ただし、樹脂の厚みは、ここでは約1.1mmとしたが、それ以外の厚みであっても問題はない。
また、これとは別に化学増幅型レジストを塗布したシリコンウェハを準備し、電子線記録装置によって露光記録を行い、レジスト原盤を作製した。電子線記録装置での記録条件については、本実施の形態4で、後程詳細に説明を行う。
【0157】
このレジスト原盤を元に、上記で述べた方法により金属スタンパが作製され、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの樹脂基板2302が作製される。この基板をここでは、転写スタンパと呼ぶことにする。また、転写スタンパ上に形成された信号ピット層をここでは転写用情報面2304と呼ぶ。
【0158】
上記第1基板のピットが形成された面に、第1反射膜2303をスパッタリング法によって形成し、第1反射膜によって構成された第1情報面2305が作成される(図23A)。
【0159】
この第1基板の第1情報面2305と、上記転写スタンパの転写用情報面2304とを向かい合わせにして、UV硬化樹脂2306によって、貼り合0せる(図23B)。ここでは、UV硬化樹脂でそのまま貼り合せたが、転写用情報面2304にUV硬化樹脂をコーティングした後に、第1基板と別の接着材で貼り合わせることもある。
【0160】
次に、転写スタンパをUV硬化樹脂との接着界面で剥離する。UV硬化樹脂は、樹脂基板との剥離性能に優れた材料を用いており、転写スタンパとUV硬化樹脂との界面で剥離できる。転写スタンパを剥離することによって、第1基板の第1情報面2305上に、UV硬化樹脂によって、転写用情報面の形状が転写された転写ピット2307が形成される(図23C)。
【0161】
次に、転写ピット上に、再生光に対して半透明な第2反射膜2308をスパッタリング法によって形成し、第2反射膜によって形成された第2情報面2309が作成される(図23D)。
【0162】
その後、第2情報面上に、厚み約0.1mmのシート基板2310を、UV硬化樹脂で、スピン工法によって、貼り合せる。これによって、シート基板側から片面読み取り可能な2層ディスクが作製される(図23D)。また、シート基板の厚みはここでは約0.1mmとしたが、それ以外の厚みであっても問題はない。
【0163】
この方法によって、作製された2層ディスクの断面形状を示す模式図を図13に示す。符号1301は第1基板、1302は第1信号ピット、1303は第1反射膜、1304は第1情報面、1305は転写ピット、1306は第2反射膜、1307は第2情報面、1308はシート基板、1309a,1309bはUV硬化樹脂、1310は再生レーザ光である。
【0164】
図13に示すように、再生光から見て検出される第1情報面のピット形状は、第1反射膜表面でのピット形状であるため、射出成形によって形成された第1ピットの大きさに対して、第1反射膜によって覆われる分小さくなる。
【0165】
また、第2情報面は、転写ピット上に形成された第2反射膜によってなるため、第2情報面のピット形状は、転写ピットの大きさに比べ、大きくなる。しかし、第2反射膜は、半透明であって、第1情報面からの反射光量と、第2情報面からの反射光量がほぼ同じになるように厚みが調整されているため、第2反射膜の膜厚は薄く構成され、第2反射膜によって形成されるピット形状は、転写ピットの形状とほぼ同じ大きさとなる。ここでは、第2反射膜の膜厚は約20nm程度に設定した。そのため、第1基板上の第1ピットの形状が、第1反射膜によって小さくなったときに、転写ピット形状がほぼ同じ形状となるように転写スタンパ上の転写用情報面が記録されなければならない。
【0166】
次に、第1反射膜の膜厚変化に対する影響について説明を行う。第1基板を作製する際、記録条件として、変調方式は最短ピットが信号クロックの2倍の2Tピットである1−7PP変調を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである2Tピット長は0.149μmとした。これは25GB容量相当の記録条件である。なお、Tはディスクの再生クロックの周期を意味している。この基板を用いて、上記で説明した2層ディスクを作製し、波長405nmの青紫レーザを光源とし、開口数(NA)0.85の対物レンズを持った光学ヘッドを使用した評価機で、再生線速を4.9m/sとし、信号の再生評価を行うことで、評価した。
【0167】
図14に、第1反射膜の膜厚変化と再生信号のジッタ値との関係を示す。ディスク性能としては、ディスクチルトなどのマージンなどを考えると、ボトムジッタとして、約7%以下のジッタが必要となる。測定結果によると、第1反射膜の膜厚を40nm未満とすると、ジッタが7%以下に悪化し、また逆に第1反射膜の膜厚が100nmを超えると、ジッタが7%以上に悪化するという結果となった。したがって、第1反射膜の膜厚を40nm以上100nm以下が好ましかった。
【0168】
次に、第1反射膜が形成されることによる第1基板上のピット形状変化について説明する。図15に第1反射膜の膜厚変化に対する第1基板上のピット幅と第1反射膜が成膜された後のピット幅の変化率との関係を示す。上記、第1反射膜の膜厚を変化させたとき、ピット幅の大きさは図の通り変化し、第1反射膜の膜厚が40nmのとき、ピット幅の大きさは約95%となり、膜厚が100nmのとき、ピット幅の大きさは約70%となった。
【0169】
次に、転写した情報面について記録条件の説明を行う。転写した情報面のピット形状は、第1情報面のピット形状とほぼ同じになるように形成されなければならないため、次のようにして転写スタンパの記録条件を設定した。
【0170】
転写用情報面2304の信号パターンのなかで、凹形状のピットを含んでいる転写スタンパを用いて、UV硬化樹脂によって、形状を転写し、転写ピット2307(1305)を作製し、情報面を形成する工程が含まれる光ディスクの場合、樹脂の転写の状態によって、長さ、または幅の異なるピットの形状が、転写用情報面での形状から、転写後の転写ピットでの形状で大きく変化することが有り得る。そのため、転写性を考慮しての形状設定が必要である。
【0171】
まず、UV樹脂の粘度を変化させたときの、転写ピットの形状の確認を行った。粘度が500mPa・sより大きくなると、この大きさの2Tピットは十分転写されず、ほとんど2Tピットが形成されていない状態になった。また、樹脂粘度が40mPa・sより小さくなると、転写性は向上するが、転写スタンパを剥離する際、ピット形状の変形がみられ、必要なピット形状が得られていないことが確認された。ここでは、粘度約200mPa・sのUV硬化樹脂を使用して、2層ディスクの作製を試みた。
【0172】
次に、転写スタンパの記録条件について説明を行う。
【0173】
図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図17に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号1701は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号1702はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、1703は形成されるピット形状を示している。
【0174】
従来、マルチパルス信号は、記録型DVDなどのように熱記録によってピットを形成する場合において用いられ、ピットの始端の熱が終端側に伝わっていくため、マルチパルス信号は、前半部が広く、後半部にパルス幅が狭くなっていく時間的に非対称なパターンが用いられる。しかし、本発明では、従来のパターンとは異なり、露光部を中心に酸が拡散してピットが形成されるため、ピットの始端と終端の露光部が時間的に対称となるパターンで記録する必要がある。
【0175】
まず、最短ピットである2Tピットの記録条件を調整した。第1基板と同じ記録条件で、2Tピットを形成し、UV硬化樹脂による転写を行うと、転写率に応じて転写ピットが小さくなる。第1基板を作製したときに採用した記録パワーに対する、記録パワーを比べると、約10%程度強いパワーを用いることによって、転写後の2Tピットが、第1基板上の2Tピットに対して、ほぼ同じ形状となることを確認した。
【0176】
この条件での再生信号を確認すると2T信号のアシンメトリは約8%となっていることを確認した。
【0177】
次に3T以上の長さをもつピットの記録条件を調整した。3T以上のピットは、2Tピットとほぼ同じ幅を持つように調整して、転写後に各ピットが同じ幅を持つように調整される。そして、各ピットの長さ方向のずれは、マルチパルス信号の調整によってなされる。
【0178】
3Tピットは、前パルス1704、後パルス1705の略同じ長さの2個のパルスに分割され、時間的に対称なパターンを採用した。前パルスの頭から後パルスの最後のエッジまでの長さは、2.0Tとなるように設定し、前パルスと後パルスの幅の条件を振ったときの、転写ピットを再生したときのアシンメトリの動きを確認した。図18に、前パルスおよび後パルスのパルス幅と3T信号のアシンメトリの動きを示す。前パルス幅が0.8Tのとき、アシンメトリが、約8%となり、2T信号とアシンメトリが一致する。1.0T(2Tピットの露光パルスの約100%)以上に設定するとアシンメトリが15%程度となり、2Tピットとのピット長のずれが顕著になってくる。そのため、ジッタが7%以上に悪化してしまい、使用することができなくなった。また、0.5T(2T露光パルスの約50%)以下に設定すると、前パルスと後パルス間のスペースが長くなりすぎるため、形状を確認したところ、ピットの中間部が記録できず、ピットが2つに分離してしまった。
【0179】
4Tピットは、始端パルス1706、終端パルス1707の略同じ長さの2個のパルスの間に周期Tの中間パルス1708を配置したパターンとした。始端パルスと終端パルスの幅は、3Tピットと同様に転写ピットを再生したときのアシンメトリの動きから決定される。始端パルスおよび終端パルス幅を2T露光パルスの約110%に当たる1.0T以上とすると、アシンメトリが15%以上になってしまい、2Tまたは3T信号とのピットエッジの位置ずれが顕著となってしまう。そのため、ジッタ値は7%以上となり、実際に使用するのは難しい。また、始端パルスおよび終端パルス幅を0.35T(2T露光パルスの約40%)以下とすると、ピットエッジが先細りし、ジッタが7%以上となってしまった。
【0180】
また、中間パルスのデューティ比を変化させ、ピット形状の確認を行った。デューティ比を65%以上としたとき、転写ピットにおける2Tピットのピット幅に対してする4Tピット幅は約1.4倍の幅となり、マルチパルス記録とした効果がなくなることを確認した。また、デューティ比を45%以下としたとき、長ピットの中間部が十分露光されず、途中で分離しているピットが確認できた。
【0181】
また、図19に示すようにマルチパルス間のスペース部を完全にローレベルとしないようなパターンにおいても、マルチパルス記録の効果が得られる。例えば、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルのとき、中間パルスのデューティ比は約50%程度に設定すると、良好な形状が得られたのは上記に説明した通りだが、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルではなく、符号1902に示すように、ハイレベルの約50%以下の信号の場合は、同様のピット形状が得られていることを確認した。しかし、50%以上のレベルの場合、長ピットと短ピットのピット幅の差が顕著となり、マルチパルス記録の効果が得られていないことを確認した。
【0182】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0183】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態4の場合、3Tピットの前パルス、後パルスを0.85Tとした時に、前パルスを約0.02T分後側に、また後パルスを約0.02T分前側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0184】
また、4T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0185】
また、転写性が最も困難なピットは最短ピットである。ここでは、最短ピット長を0.149μmとしているが、最短ピットが0.1μmより短くなると極端にUV硬化樹脂の転写性が悪化し、ほとんど転写できなくなる。また、逆に0.3μm以上となると、長ピットと短ピットの転写性の差は小さくなるため、本発明の効果が小さくなる。
【0186】
本実施の形態4で作製した転写ピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、2Tピット幅に対して、3T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。また、第1情報面のピット形状とほぼ同じ形状が得られていることを確認した。
【0187】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を4.9m/sとし、ランダムパターンの評価を行ったところ、各層とも、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。
【0188】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、転写スタンパのピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなった。これは転写後も同様にがたつきが見られた。特に標準仕様温度以下となると、ジッタ値の悪化が大きくなり、実際に使用するのは難しい。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで使用することによって問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0189】
また、ここではピット列のみによって構成されているディスクを作製し、評価を行ったが、ピットおよび溝などが混在しているディスクにおいても同様のプロセスを用いることができる。
【0190】
また、ここでは、2層ディスクに関しての実験結果を説明したが、転写スタンパを用いて順にUV硬化樹脂によって転写ピットを積層して作られる多層ディスクにおいても、同じ効果が得られ、同様の方法で各層のピット形状の最適化が可能である。
【0191】
また、再生信号からみて、樹脂で形成されたピットに対して、反射膜が奥側につくか、手前につくかによって、各層のピットの大きさに差が出るが、その場合に対しても、この発明は有効であり、各層のピットの大きさがほぼ同じになるように、ピット形状を調整することが可能である。
【0192】
本実施の形態4では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも効果がある。
【0193】
(実施の形態5)
実施の形態4で説明した2層ディスクの構造において、3T系のランダムピットパターンを記録したときの場合について説明を行う。転写スタンパの形状の最適化は、実施の形態4で説明したものと同じ手順を用いた。
【0194】
転写した情報面の作製方法、および転写スタンパの記録条件について説明する。転写スタンパの記録密度は、第1基板と同じ密度である25GB容量を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである3Tピット長は0.185μmとした。
【0195】
最短ピット(第1ピット)である3Tを記録するためには、実際に露光する時間は3Tの約半分の1.5T程度に設定する必要がある。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、3Tピット長が露光部の長さの約2倍に膨れあがるためである。このとき、4Tピットは2.5T長、5Tピットは3.5T長のパルスで露光することになるが、マルチパルスを使用せずに記録すると、成形基板でピット形状を確認すると、4Tピットは3Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、5Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。この転写スタンパを使用し、粘度約200mPa・sのUV硬化樹脂によって転写を行い、転写ピットの形状を確認した。最短ピットである3Tピット幅は、それ以外の長ピット幅に対して、約60%程度のピット幅となっており、3Tピットと長ピットとの形状の差が顕著になっていることが確認された。
【0196】
そのため、マルチパルス信号によってピット形状の最適化を行った。
【0197】
次に、転写スタンパの記録条件について説明を行う。
【0198】
図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図20に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号2001は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号2002はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、2003は形成されるピット形状を示している。
【0199】
まず、最短ピットである3Tピットの記録条件を調整した。第1基板と同じ記録条件で、3Tピットを形成し、UV硬化樹脂による転写を行うと、転写率に応じて転写ピットが小さくなる。第1基板を作製したときに採用した記録パワーに対する、記録パワーを比べると、約10%程度強いパワーを用いることによって、転写後の3Tピットが、第1基板上の3Tピットに対して、ほぼ同じ形状となることを確認した。
【0200】
次に4T以上の長さをもつピットの記録条件を調整した。4T以上のピットは、3Tピットとほぼ同じ幅を持つように調整して、転写後に各ピットが同じ幅を持つように調整される。そして、各ピットの長さ方向のずれは、マルチパルス信号の調整によってなされる。
【0201】
第2に短いピットである4Tは、パルスを中央で分割し、前パルス2004と後パルス2005の2個のパルスに変換した。前パルス2004と後パルス2005は略同じ長さのパルスで、時間的に対称なパルスとすることで、ピット形状が始端、終端で歪まないようにしている。
【0202】
4Tピットに対して、前パルス、後パルスの幅を変化させたときのアシンメトリの動きを確認した。3Tピットを記録した1.5Tパルスの約80%にあたる1.2T以上とするとピットの長さズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットとのアシンメトリのズレによる、ジッタ値の悪化を確認した。また、パルス幅を3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの50%以下とすると、ピットの始端、終端部分の露光強度が小さくなることにより、ピットの中心部分が露光不足となり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0203】
ここでは、前パルス、後パルス幅を1.5Tの約70%となる約1.1T程度とすることで、3Tピットに対して、ほぼ同じアシンメトリとなることを確認した。
【0204】
また、5Tピットは、始端パルス2006、終端パルス2007と、その中央部に周期がTとなる中間パルス2008を配置した3個のパルスに変換した。6T以上のピットに関しては、中央部の中間パルスの個数を1つずつ増やしていく構成とした。なお、始端パルス2006と終端パルス2007は略同じ長さに設定し、中間パルス2008は、始端パルス706と終端パルス707の略中央に配置している。こうすることで、ピット形状が歪まないようにしている。始端パルス、および終端パルス幅は、PEB後に形成されるピットエッジの位置に大きく影響を与え、始端パルス、終端パルスを、3Tピット記録時に用いた1.5Tパルスに対して、100%の幅にすると、ピット長さは、大きく拡大し、長ピットのエッジ位置が、3Tピットに対してずれてしまった。アシンメトリも15%以上と大きくずれていることを確認した。また、40%以下の幅とするとピットの先細りが確認され、ジッタ値も7%以上と悪化が確認された。
【0205】
また、中間パルスの幅を変化させたときのピット形状の動きを確認すると、デューティ比が45%以下となると、ピットの中央部がつながらず、形成できていないピットが確認された。また、デューティ比が65%以上となると、長ピットが、3Tピットに対して、大きく拡大するのが確認され、ジッタ悪化の要因となった。
【0206】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0207】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態5の場合、4Tピットの前パルス、後パルスを1.0Tとした時に、前パルスを約0.1T分前側に、また後パルスを約0.1T分後側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0208】
また、5T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0209】
本実施の形態5で作製した転写ピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。また、第1情報面のピット形状とほぼ同じ形状が得られていることを確認した。
【0210】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を5.1m/sとし、ランダムパターンの評価を行ったところ、各層とも、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。
【0211】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、転写スタンパのピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなった。これは転写後も同様にがたつきが見られた。特に標準仕様温度以下となると、ジッタ値の悪化が大きくなり、実際に使用するのは難しい。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで使用することによって問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0212】
また、ここではピット列のみによって構成されているディスクを作製し、評価を行ったが、ピットおよび溝などが混在しているディスクにおいても同様のプロセスを用いることができる。
【0213】
また、ここでは、2層ディスクに関しての実験結果を説明したが、転写スタンパを用いて順にUV硬化樹脂によって転写ピットを積層して作られる多層ディスクにおいても、同じ効果が得られ、同様の方法で各層のピット形状の最適化が可能である。
【0214】
また、再生信号からみて、樹脂で形成されたピットに対して、反射膜が奥側につくか、手前につくかによって、各層のピットの大きさに差が出るが、その場合に対しても、この発明は有効であり、各層のピットの大きさがほぼ同じになるように、ピット形状を調整することが可能である。
【0215】
本実施の形態5では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも効果がある。
【0216】
(実施の形態6)
実施の形態4で説明した2層ディスクの構造において、3T系のランダムピットパターンを記録したときの場合について説明を行う。転写スタンパの形状の最適化は、実施の形態4で説明したものと同じ手順を用いた。
【0217】
転写した情報面の作製方法、および転写スタンパの記録条件について説明する。転写スタンパの記録密度は、第1基板と同じ密度である25GB容量を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである3Tピット長は0.185μmとした。
【0218】
最短ピット(第1ピット)である3Tを記録するためには、実際に露光する時間は3Tの約半分の1.5T程度に設定する必要がある。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、3Tピット長が露光部の長さの約2倍に膨れあがるためである。このとき、4Tピットは2.5T長、5Tピットは3.5T長のパルスで露光することになるが、マルチパルスを使用せずに記録すると、成形基板でピット形状を確認すると、4Tピットは3Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、5Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。この転写スタンパを使用し、粘度約200mPa・sのUV硬化樹脂によって転写を行い、転写ピットの形状を確認した。最短ピットである3Tピット幅は、それ以外の長ピット幅に対して、約60%程度のピット幅となっており、3Tピットと長ピットとの形状の差が顕著になっていることが確認された。
【0219】
そのため、マルチパルス信号によってピット形状の最適化を行った。
【0220】
次に、転写スタンパの記録条件について説明を行う。
【0221】
図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図21に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号2101は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号2102はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、2103は形成されるピット形状を示している。
【0222】
まず、最短ピットである3Tピットの記録条件を調整した。第1基板と同じ記録条件で、3Tピットを形成し、UV硬化樹脂による転写を行うと、転写率に応じて転写ピットが小さくなる。第1基板を作製したときに採用した記録パワーに対する、記録パワーを比べると、約10%程度強いパワーを用いることによって、転写後の3Tピットが、第1基板上の3Tピットに対して、ほぼ同じ形状となることを確認した。
【0223】
次に4T以上の長さをもつピットの記録条件を調整した。4T以上のピットは、3Tピットとほぼ同じ幅を持つように調整して、転写後に各ピットが同じ幅を持つように調整される。そして、各ピットの長さ方向のずれは、マルチパルス信号の調整によってなされる。
【0224】
第2に短いピットである4Tは、パルスを中央で分割し、前パルス2104と後パルス2105の2個のパルスに変換した。前パルス2104と後パルス2105は略同じ長さのパルスで、時間的に対称なパルスとすることで、ピット形状が始端、終端で歪まないようにしている。
【0225】
4Tピットに対して、前パルス、後パルスの幅を変化させたときのアシンメトリの動きを確認した。3Tピットを記録した1.5Tパルスの約80%にあたる1.2T以上とするとピットの長さズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットとのアシンメトリのズレによる、ジッタ値の悪化を確認した。また、パルス幅を3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの50%以下とすると、ピットの始端、終端部分の露光強度が小さくなることにより、ピットの中心部分が露光不足となり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0226】
ここでは、前パルス、後パルス幅を1.5Tの約70%となる約1.1T程度とすることで、3Tピットに対して、ほぼ同じアシンメトリとなることを確認した。
【0227】
また、5Tピットも同様に中央で始端パルス2106と終端パルス2107の2つのパルスに分割したパターンを採用した。始端パルス2106、終端パルス2107の幅を変化させたときの動きを確認すると、始端パルス幅、および終端パルス幅を、3Tピット露光時に使用した1.5Tパルスの110%に相当する1.65T以上に設定すると、ピット長さのズレが大きくなり、アシンメトリが15%以上となることを確認した。また、3Tピットの記録に用いた1.5Tパルスの70%に相当する1.05T以下に設定すると、ピット中央部が記録できなくなり、ピットが2つに分離していることを確認した。
【0228】
6Tピットは始端パルス、終端パルスと、その中央部に周期がTとなる中間パルス2108を配置した3個のパルスに変換した。7T以上のピットに関しては、中央部の中間パルスの個数を1つずつ増やしていく構成とした。なお、始端パルス2106と終端パルス2107は略同じ長さに設定し、中間パルス2108は、始端パルス2106と終端パルス2107の略中央に配置している。こうすることで、ピット形状が歪まないようにしている。
【0229】
始端パルス、および終端パルス幅は、PEB後に形成されるピットエッジの位置に大きく影響を与え、始端パルス、終端パルスを、3Tピット記録時に用いた1.5Tパルスに対して、110%の幅にすると、ピット長さは、大きく拡大し、長ピットのエッジ位置が、3Tピットに対してずれてしまった。アシンメトリも15%以上と大きくずれていることを確認した。また、70%以下の幅とするとピットの先細りが確認され、ジッタ値も7%以上と悪化が確認された。
【0230】
また、中間パルスの幅を変化させたときのピット形状の動きを確認すると、デューティ比が45%以下となると、ピットの中央部がつながらず、形成できていないピットが確認された。また、デューティ比が65%以上となると、長ピットが、3Tピットに対して、大きく拡大するのが確認され、ジッタ悪化の要因となった。
【0231】
また、次のような方法でも、ジッタ良化の条件を設定できる。
4Tピットの前パルスを1.2Tとした場合、所定のピット長に対してピットが長くなってしまい、アシンメトリが約15%となってしまったが、前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態6の場合、4Tピットの前パルス、後パルスを1.0Tとした時に、前パルスを約0.1T分後側に、また後パルスを約0.1T分前側に、パルス位置を移動させると、アシンメトリを約8%程度まで抑えることができた。このとき、アシンメトリはほかの各Tのピットとほぼそろえることができ、また、前パルス、後パルスをしっかりと露光記録することができ、転写後のピット形状も良好なことを確認した。4T以上のピットに対しても同様に始端パルスを後ろ側に、終端パルスを前側に同じだけ位置を移動させることで、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。
【0232】
本実施の形態6で作製した転写ピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、3Tピット幅に対して、4T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。また、第1情報面のピット形状とほぼ同じ形状が得られていることを確認した。
【0233】
また、作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を5.1m/sとし、ランダムパターンの評価を行ったところ、各層とも、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。
【0234】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、転写スタンパのピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなった。これは転写後も同様にがたつきが見られた。特に標準仕様温度以下となると、ジッタ値の悪化が大きくなり、実際に使用するのは難しい。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで使用することによって問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0235】
また、ここではピット列のみによって構成されているディスクを作製し、評価を行ったが、ピットおよび溝などが混在しているディスクにおいても同様のプロセスを用いることができる。
【0236】
また、ここでは、2層ディスクに関しての実験結果を説明したが、転写スタンパを用いて順にUV硬化樹脂によって転写ピットを積層して作られる多層ディスクにおいても、同じ効果が得られ、同様の方法で各層のピット形状の最適化が可能である。
【0237】
本実施の形態6では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも効果がある。
【0238】
(実施の形態7)
化学増幅型レジストと電子線記録装置を使用して、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される1層の容量が20GB以上となる多層再生専用ディスクの作製を試みた。
【0239】
本実施の形態7における光ディスク作製方法について説明を行う。
【0240】
まず、化学増幅型レジストを、シリコンウェハ原盤の上に塗布を行った。塗布されたシリコンウェハは、ベーキングされた後、電子線記録装置内に投入される。電子線記録装置での記録方法は、実施の形態1で説明したものと同様の方法でマルチパルス信号による記録を実施した。露光記録されたレジスト原盤はPEB処理の後、現像され、凹凸形状が表面に形成されたレジスト原盤が作製される。
【0241】
次に、作製されたレジストパターンにニッケルなどの金属薄膜をスパッタ処理し、形成された金属薄膜を電極として、約0.3mmの厚みまでメッキ処理を行った。メッキされた金属板をレジスト原盤から剥離し、表面に付着したレジスト材料を除去した後、内外径加工を施され、射出成形用の金属スタンパが作製される。その金属スタンパを使用して、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの第1基板が作製される。ただし、樹脂の厚みは、ここでは約1.1mmとしたが、それ以外の厚みであっても問題はない。
【0242】
また、これとは別に化学増幅型レジストを塗布したシリコンウェハを準備し、電子線記録装置によって露光記録を行い、レジスト原盤を作製した。電子線記録装置での記録条件については、本実施の形態7で、後程詳細に説明を行う。
【0243】
このレジスト原盤を元に、上記で述べた方法により金属スタンパが作製され、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの樹脂基板が作製される。この基板をここでは、転写スタンパと呼ぶことにする。また、転写スタンパ上に形成された信号ピット層をここでは転写用情報面と呼ぶ。
【0244】
上記第1基板のピットが形成された面に、第1反射膜をスパッタリング法によって形成し、第1反射膜によって構成された第1情報面が作成される。
【0245】
厚み約0.1mmの再生光に対して略透明なシート基板と、上記転写スタンパの転写用情報面とを、UV硬化樹脂によって貼り合せる。ここでは、厚み0.1mmと規定したがそれ以外の厚みであっても問題は無い。
【0246】
次に、転写スタンパをUV硬化樹脂との接着界面で剥離する。UV硬化樹脂は、樹脂基板との剥離性能に優れた材料を用いており、転写スタンパとUV硬化樹脂との界面で剥離できる。転写スタンパを剥離することによって、シート基板上に、UV硬化樹脂によって、転写用情報面の形状が転写された転写ピットが形成される。転写ピット上に、再生光に対して半透明な第2反射膜をスパッタリング法によって形成し、シート基板上に第2情報面が作成される。
【0247】
次に、上記第1基板の第1情報面と、上記シート基板の第2情報面とを向かい合わせにUV硬化樹脂によって貼り合せる。これによって、シート基板側から片面読み取り可能な2層ディスクが作製される。
【0248】
この方法によって、作製された2層ディスクの断面形状を示す模式図を図22に示す。符号2201は第1基板、2202は第1信号ピット、2203は第1反射膜、2204は第1情報面、2205は転写ピット、2206は第2反射膜、2207は第2情報面、2208はシート基板、2209a,2209bはUV硬化樹脂、2210は再生レーザ光である。
【0249】
図22に示すように、再生光から見て検出される第1情報面のピット形状は、第1反射膜表面でのピット形状であるため、射出成形によって形成された第1ピットの大きさに対して、第1反射膜によって覆われる分小さくなる。第2反射膜は、半透明であって、第1情報面からの反射光量と、第2情報面からの反射光量がほぼ同じになるように厚みが調整されている。ここでは、第2反射膜の膜厚は約20nm程度に設定した。第2情報面のピット形状は、転写ピット形状そのものとなる。そのため、第1基板上の第1ピットの形状が、第1反射膜によって小さくなったときに、転写ピット形状がほぼ同じ形状となるように転写スタンパ上の転写用情報面が記録されなければならない。
【0250】
また、このディスクの場合、転写ピットが実施の形態4から7に説明した各条件とは、再生光からみて凹凸が逆になっているが、第1反射膜の形成条件、樹脂粘度の設定、および転写スタンパの記録条件に関しては、実施の形態4から6に示すものと同じである。
【0251】
また、ここでは、2層ディスクに関して説明を行っているが、シート基板に対する1種類以上の転写スタンパの転写用情報面の転写を繰り返し行うことによって、情報面を積層した後、第1基板と貼り合せることによって、作成される多層ディスクにおいても、本発明の実施の形態7に示す各層のピット形状の最適化が可能である。
【0252】
(実施の形態8)
化学増幅型レジストと電子線記録装置を使用して、再生波長400nm程度の青紫レーザで再生される1層の容量が20GB以上となる多層再生専用ディスクの作製を試みた。
【0253】
本実施の形態8における光ディスク作製方法について説明を行う。図23に作製方法を示す。
【0254】
まず、化学増幅型レジストを、シリコンウェハ原盤の上に塗布を行った。塗布されたシリコンウェハは、ベーキングされた後、電子線記録装置内に投入される。電子線記録装置での記録方法は、実施の形態1で説明したものと同様の方法でマルチパルス信号による記録を実施した。露光記録されたレジスト原盤はPEB処理の後、現像され、凹凸形状が表面に形成されたレジスト原盤が作製される。
【0255】
次に、作製されたレジストパターンにニッケルなどの金属薄膜をスパッタ処理し、形成された金属薄膜を電極として、約0.3mmの厚みまでメッキ処理を行った。メッキされた金属板をレジスト原盤から剥離し、表面に付着したレジスト材料を除去した後、内外径加工を施され、射出成形用の金属スタンパが作製される。その金属スタンパを使用して、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの第1基板2301が作製される。ただし、樹脂の厚みは、ここでは約1.1mmとしたが、それ以外の厚みであっても問題はない。
【0256】
また、これとは別に化学増幅型レジストを塗布したシリコンウェハを準備し、電子線記録装置によって露光記録を行い、レジスト原盤を作製した。電子線記録装置での記録条件については、本実施の形態8で、後程詳細に説明を行う。
【0257】
このレジスト原盤を元に、上記で述べた方法により金属スタンパが作製され、射出成形機によって、樹脂成形を行った。これによって、厚みが約1.1mmの樹脂基板2302が作製される。この基板をここでは、転写スタンパと呼ぶことにする。また、転写スタンパ上に形成された信号ピット層をここでは転写用情報面2304と呼ぶ。
【0258】
上記第1基板のピットが形成された面に、第1反射膜2303をスパッタリング法によって形成し、第1反射膜によって構成された第1情報面2305が作成される。
【0259】
この第1基板の第1情報面2305と、上記転写スタンパの転写用情報面2304とを向かい合わせにして、UV硬化樹脂2306によって、貼り合せる。ここでは、UV硬化樹脂でそのまま貼り合せたが、転写用情報面2304にUV硬化樹脂をコーティングした後に、第1基板と別の接着材で貼り合せることもある。
【0260】
次に、転写スタンパをUV硬化樹脂との接着界面で剥離する。UV硬化樹脂は、樹脂基板との剥離性能に優れた材料を用いており、転写スタンパとUV硬化樹脂との界面で剥離できる。転写スタンパを剥離することによって、第1基板の第1情報面2305上に、UV硬化樹脂によって、転写用情報面の形状が転写された転写ピット2307が形成される。
【0261】
次に、転写ピット上に、再生光に対して半透明な第2反射膜2308をスパッタリング法によって形成し、第2反射膜によって形成された第2情報面2309が作成される。
【0262】
その後、第2情報面上に、厚み約0.1mmのシート基板2310を、UV硬化樹脂で、スピン工法によって、貼り合せる。これによって、シート基板側から片面読み取り可能な2層ディスクが作製される。また、シート基板の厚みはここでは約0.1mmとしたが、それ以外の厚みであっても問題はない。
【0263】
この方法によって、作製された2層ディスクの断面形状を示す模式図を図13に示す。符号1301は第1基板、1302は第1信号ピット、1303は第1反射膜、1304は第1情報面、1305は転写ピット、1306は第2反射膜、1307は第2情報面、1308はシート基板、1309はUV硬化樹脂、1310は再生レーザ光である。
【0264】
このように作製されたディスクには、次のような課題が考えられる。
【0265】
転写用情報面2304の信号パターンのなかで、凹形状のピットを含んでいる転写スタンパを用いて、UV硬化樹脂によって、形状を転写し、転写ピット2307(1305)を作製し、情報面を形成する工程が含まれる光ディスクの場合、樹脂の転写の状態によって、長さ、または幅の異なるピットの形状が、転写用情報面での形状から、転写後の転写ピットでの形状で大きく変化することが有り得る。
【0266】
これは、図13に示すような2層ディスクに限らず、図24に示すような、単層ディスクであっても、情報面が、凹形状のピットを含む転写用情報面をもった転写スタンパからのUV樹脂転写によって構成されたディスクにおいても同様のことが言える。
【0267】
図24のディスクは、ディスクのベースとなるベース基板2401と、凹形状のピットを含む転写用情報面をもつ転写スタンパとを、UV樹脂2402で貼り合せた後に、転写スタンパを剥離して、情報面2408を構成しているディスクである。
【0268】
また、図25に示すような、多層ディスクであって、情報面が、凹形状の転写スタンパからのUV樹脂転写によって構成されているディスクにおいても同様のことが言える。
【0269】
図25のディスクは、図23で説明した方法で作製された第1基板2501に対して、凹形状のピットを含む転写用情報面をもつ転写スタンパをUV硬化樹脂2504で貼り合せた後、剥離して形成した転写ピット2505と、もう一度、別の転写スタンパをUV硬化樹脂2506で貼り合せた後、剥離して形成した転写ピット2507を含むディスクである。2502は第1転写ピットである。
【0270】
また、図26に示すような多層ディスクであっても、同様である。
【0271】
図26のディスクは、第1基板2601に対して、凹形状のピットを含む転写用情報面をもつ転写スタンパをUV硬化樹脂2604で貼り合せた後、剥離して形成した転写ピット2605と、逆にシート基板2609に対して、別の転写スタンパをUV硬化樹脂2608で貼り合せた後、剥離して形成した転写ピット2607を向かい合わせに、シート基板と第1基板をUV硬化樹脂2606で貼り合せて作製したディスクである。
【0272】
少なくとも1つの情報面が、凹形状をもつ転写用情報面をもつ転写スタンパから、UV硬化樹脂によって、転写された転写ピットを含んでいるこれらのようなディスクは、樹脂の転写に合わせて、転写スタンパの転写用情報面のピット形状を最適化しなければならない。
【0273】
次に、転写ピット形状の最適化と、転写スタンパの記録条件について説明する。
転写スタンパの記録密度は、25GB容量を採用した。トラックピッチは0.32μm、最短ピットである2Tピット長は0.149μmとした。
【0274】
まず、UV樹脂の粘度を変化させたときの、転写ピットの形状の確認を行った。粘度が500mPa・sより大きくなると、この大きさの2Tピットは十分転写されず、ほとんど2Tピットが形成されていない状態になった。また、樹脂粘度が40mPa・sより小さくなると、転写性は向上するが、転写スタンパを剥離する際、ピット形状の変形がみられ、必要なピット形状が得られていないことが確認された。ここでは、粘度約200mPa・sのUV硬化樹脂を使用して、2層ディスクの作製を試みた。
【0275】
次に転写スタンパの記録条件について説明を行う。
【0276】
化学増幅レジストを約100nmの厚みで、シリコンウェハ原盤の上に塗布し、電子線記録装置で記録を行った。
【0277】
図16のように、1つの信号ピットに対して信号1602のように1つのパルスで露光した場合、UV樹脂転写した後の転写ピットのうち、最短ピット(第1ピット)である2Tを記録するためには、実際に露光する時間は2Tの約半分の1.0T程度に設定すればよい。これは、ピットエッジ形状良化のため、今回使用した化学増幅型レジストの標準仕様温度である130℃に対して、PEB温度を約20℃高く設定したとき、酸の拡散によって、2Tピット長が露光部の長さの約2倍に膨れあがり、かつUV転写によって、ピットが小さくなることからきている。このとき、3Tピットは2.0T長、4Tピットは3.0T長のパルスで露光することになるが、図16のように1つのピットに対して1つのパルスとなる従来信号で記録すると、成形基板でピット形状を確認したところ、3Tピットは2Tピットに対して約1.2倍のピット幅となり、4Tピットは約1.5倍程度のピット幅となっていることを確認した。この転写スタンパを使用し、粘度約200mPa・sのUV硬化樹脂によって転写を行い、転写ピットの形状を確認すると、さらにピット形状の差が大きくなり、最短ピットである2Tピット幅は、それ以外の長ピット幅に対して、約60%以下のピット幅となっていることが確認された。
【0278】
そのため、転写スタンパ上のピット形状は、UV樹脂による転写後の2Tピットと長ピットとの形状差を補正するように記録されなければならない。
次に、転写スタンパの記録条件について説明を行う。
【0279】
図4に示すようにマルチパルス変換装置413を設け、入力される情報信号をマルチパルス信号に変換し、電極406に電圧を加える。マルチパルス変換装置路413では、元の情報信号パルスを次のように変換を行っている。図17に変換前後の信号パターンと形成されるピット形状の関係を示す。信号1701は、従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン、信号1702はマルチパルス変換装置413によって、変換されたマルチパルス信号パターン、1703は形成されるピット形状を示している。
【0280】
従来、マルチパルス信号は、記録型DVDなどのように熱記録によってピットを形成する場合において用いられ、ピットの始端の熱が終端側に伝わっていくため、マルチパルス信号は、前半部が広く、後半部にパルス幅が狭くなっていく時間的に非対称なパターンが用いられる。しかし、本発明では、従来のパターンとは異なり、露光部を中心に酸が拡散してピットが形成されるため、ピットの始端と終端の露光部が時間的に対称となるパターンで記録する必要がある。
【0281】
最短ピットである2Tピットの記録条件は、先に説明した通り、1.0Tの1パルスで記録を行った。このとき、UV転写後の転写ピットを作製し、ディスク化したのち、アシンメトリを測定すると、2T信号は、アシンメトリ約8%程度となっていることを確認した。
【0282】
次に3T以上の長さをもつピットの記録条件を調整した。3T以上のピットは、2Tピットとほぼ同じ幅を持つように調整して、転写後に各ピットが同じ幅を持つように調整される。そして、各ピットの長さ方向のずれは、マルチパルス信号の調整によってなされる。
【0283】
3Tピットは、前パルス1704、後パルス1705の略同じ長さの2個のパルスに分割され、時間的に対称なパターンを採用した。前パルスの頭から後パルスの最後のエッジまでの長さは、2.0Tとなるように設定し、前パルスと後パルスの幅の条件を振ったときの、転写ピットを再生したときのアシンメトリの動きを確認した。図18に、前パルスおよび後パルスのパルス幅と3T信号のアシンメトリの動きを示す。前パルス幅が0.8Tのとき、アシンメトリが、約8%となり、2T信号とアシンメトリが一致する。1.0T(2Tピットの露光パルスの約100%)以上に設定するとアシンメトリが15%程度となり、2Tピットとのピット長のずれが顕著になってくる。そのため、ジッタが7%以上に悪化してしまい、使用することが困難となった。また、0.5T(2T露光パルスの約50%)以下に設定すると、前パルスと後パルス間のスペースが長くなりすぎるため、形状を確認したところ、転写用情報面上のピットで、すでにピットの中間部が記録できず、ピットが2つに分離していた。
【0284】
4Tピットは、始端パルス1706、終端パルス1707の略同じ長さの2個のパルスの間に周期Tの中間パルス1708を配置したパターンとした。始端パルスと終端パルスの幅は、3Tピットと同様に転写ピットを再生したときのアシンメトリの動きから決定される。始端パルスおよび終端パルス幅を2T露光パルスの約110%に当たる1.0T以上とすると、アシンメトリが15%以上になってしまい、2Tまたは3T信号とのピットエッジの位置ずれが顕著となってしまう。そのため、ジッタ値は7%以上となり、実際に使用するのは難しい。また、始端パルスおよび終端パルス幅を0.35T(2T露光パルスの約40%)以下とすると、ピットエッジが先細りし、ジッタが7%以上となってしまった。
【0285】
また、中間パルスのデューティ比を変化させ、ピット形状の確認を行った。デューティ比を65%以上としたとき、転写ピットにおける2Tピットのピット幅に対して4Tピット幅は約1.4倍の幅となり、マルチパルス記録とした効果がなくなることを確認した。また、デューティ比を45%以下としたとき、長ピットの中間部が十分露光されず、途中で分離しているピットが確認できた。
【0286】
また、図19に示すようにマルチパルス間のスペース部を完全にローレベルとしないようなパターンにおいても、マルチパルス記録の効果が得られる。例えば、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルのとき、中間パルスのデューティ比は約50%程度に設定すると、良好な形状が得られたのは上記に説明した通りだが、マルチパルス間のスペース部が完全にローレベルではなく、符号1902に示すように、ハイレベルの約50%以下の信号の場合は、同様のピット形状が得られていることを確認した。しかし、50%以上のレベルの場合、長ピットと短ピットのピット幅の差が顕著となり、マルチパルス記録の効果が得られていないことを確認した。
【0287】
また、さらに次のような方法を用いて、さらなるジッタ良化の条件を設定できる。
【0288】
前パルスと後パルスの位置を、中心方向に同じだけずらすことによって、ピット長の長さを調整することができる。本実施の形態8の場合、3Tピットの前パルス、後パルスを0.85Tとした時に、前パルスを約0.02T分後側に、また後パルスを約0.02T分前側に、パルス位置を移動させても、アシンメトリを約8%程度にすることができた。また、前パルス、後ろパルスが別の長さの場合でも同様の動作によって補正できる。また、ここでは前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしたが、逆に、前パルスを前側に、後パルスを後側にずらしても問題はない。
【0289】
また、4T以上のピットに関しても同様で、始端パルスを前側に、終端パルス後側に同じだけ移動させることによって、再生時のジッタも約1%程度良化することを確認した。これに関しても、始端パルスを後側に、終端パルスを前側にずらしてもよい。
【0290】
本実施の形態8で作製した転写ピット形状を走査電子顕微鏡(SEM)で、確認したところ、2Tピット幅に対して、3T以上のピット幅がほぼ同じ幅に形成されていることを確認できた。
【0291】
また、転写性が最も困難なピットは最短ピットである。ここでは、最短ピット長を0.149μmとしているが、最短ピットが0.1μmより短くなると極端にUV硬化樹脂の転写性が悪化し、ほとんど転写できなくなる。また、逆に0.3μm以上となると、長ピットと短ピットの転写性の差は小さくなるため、本発明の効果が小さくなる。
【0292】
作製したディスクの再生評価を行った。再生波長は405nm、再生線速を4.9m/sとし、ランダムパターンの評価を行ったところ、約5%のジッタが得られ、良好な再生特性が確認された。
【0293】
また、露光後のPEB条件を検討した。レジスト本来のPEB温度に対して、上下に温度設定を変化させ、転写スタンパのピット形状の確認を行った。温度を低下させていくと、酸の拡散量は少なくなり、短ピットと長ピットの幅や長さの変化量は少なくなるが、ピットエッジのがたつき成分が大きくなった。これは転写後も同様にがたつきが見られた。特に標準仕様温度以下となると、ジッタ値の悪化が大きくなり、実際に使用するのは難しい。また、高温にすると一定の温度までは、エッジのがたつきが改善するように動作するが、ある温度を超えるとレジスト材料の変質が生じ、ピット形状に乱れが生じた。化学増幅型レジストUV3を使用した場合、標準仕様温度130℃から、変質温度250℃までで使用することによって問題無く原盤作製が出来ていることを確認した。
【0294】
また、ここではピット列のみによって構成されているディスクを作製し、評価を行ったが、ピットおよび溝などが混在しているディスクにおいても同様のプロセスを用いることができる。
【0295】
また、ここでは、2層ディスクに関しての実験結果を説明したが、転写スタンパを用いて順にUV硬化樹脂によって転写ピットを積層して作られる多層ディスクにおいても、同じ効果が得られ、同様の方法で各層のピット形状の最適化が可能である。
【0296】
本実施の形態8では、電子線記録装置を用いて記録を行っているが、本発明は化学増幅型レジストを用いて記録する装置に対しては同様の効果を有し、遠紫外線レーザを用いたLBR(Laser Beam Recorder)などで、化学増幅型レジストを用いて記録をした場合などにも効果がある。
【0297】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、レジスト材料として化学増幅型レジストを用い、ピット形状の再現性を確保するため、またはエッジ形状の改善を図るため、PEB時の温度設定を標準仕様温度以上に設定し、酸の拡散量が十分大きくなるようにし、また、酸の拡散量が大きくなることによって、長さの異なるピットの長さ、および幅が目的の形状からずれてしまうものを、従来長さの異なる各ピットをそれぞれ所定の長さの1つのパルスで露光するのに対して、それぞれ時間的に対称な複数のパルスに分割、つまりマルチパルス信号で露光することによって、露光面積を調整し、所望のピット形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマルチパルス信号パターンとピット形状を示す図
【図2】従来の電子線記録装置の一例を示す模式図
【図3】従来の情報信号パターンとピット形状を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態1〜6における電子線記録装置を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態1におけるPEB温度と酸の拡散量の関係を示す図
【図6】従来の情報信号パターンで、標準仕様温度以上のPEBの場合を示す図
【図7】本発明の実施の形態2における3T系信号のマルチパルス信号パターンとピット形状を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における前(後)パルス幅とアシンメトリの動きを示す図
【図9】同、マルチパルス信号パターンとピット形状を示す図
【図10】同、標準仕様温度と高温PEBでのピット形状の差を示す図
【図11】本発明の実施の形態3で使用する信号パターンとピット形状を示す図
【図12】従来の情報信号パターンで、標準仕様温度以上のPEBの場合を示す図
【図13】本発明の実施の形態4における2層ディスクの模式的断面図
【図14】同、第1反射膜の膜厚変化と再生信号のジッタ値との関係
【図15】同、第1反射膜の膜厚変化に対する第1基板上のピット幅の成膜前後の変化率との関係
【図16】従来の情報信号パターンで、標準仕様温度以上のPEBの場合を示す図
【図17】本発明の実施の形態4におけるマルチパルス信号パターンと転写スタンパのピット形状を示す図
【図18】本発明の実施の形態4における前パルスおよび後パルスのパルス幅と3T信号のアシンメトリの動きを示す図
【図19】本発明の実施の形態4におけるマルチパルス信号パターンとピット形状を示す図
【図20】本発明の実施の形態5におけるマルチパルス信号パターンと転写スタンパのピット形状を示す図
【図21】本発明の実施の形態6で使用する信号パターンとピット形状を示す図
【図22】本発明の実施の形態7における2層ディスクの模式的断面図
【図23】本発明の実施の形態4および8における多層ディスクの製造方法の一例を示す図
【図24】本発明の実施の形態8における転写ピットを含む光ディスクの一例を示す図
【図25】本発明の実施の形態8における転写ピットを含む光ディスクの一例を示す図
【図26】本発明の実施の形態8における転写ピットを含む光ディスクの一例を示す図
【符号の説明】
101 従来の記録に用る変換前の情報信号パターン
102 マルチパルス信号パターン
103 形成されるピット形状
104 3T前パルス
105 3T後パルス
106 4T以上の始端パルス
107 4T以上の終端パルス
108 中間パルス
201 フィラメント
202 サプレッサ電極
203 エクストラクタ電極
204 レンズ
205 アパーチャ
206 情報信号に応じて電子線を曲げる電極
207 遮蔽板
208 レンズ
209 収差補正電極
210 レジスト原盤
211 回転テーブル
212 スライダ
213 情報信号
301 情報信号
302 電極に加えられる信号
303 スレッショルド電圧
304 形成されるピット形状
401 フィラメント
402 サプレッサ電極
403 エクストラクタ電極
404 レンズ
405 アパーチャ
406 情報信号に応じて電子線を曲げる電極
407 遮蔽板
408 レンズ
409 収差補正電極
410 レジスト原盤
411 回転テーブル
412 スライダ
413 マルチパルス変換装置
414 情報信号
601 情報信号
602 電子線照射部
603 形成されるピット形状
701 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
702 マルチパルス信号パターン
703 形成されるピット形状
704 4T前パルス
705 4T後パルス
706 5T以上の始端パルス
707 5T以上の終端パルス
708 中間パルス
901 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
902 マルチパルス信号パターン
903 形成されるピット形状
904 3T前パルス
905 3T後パルス
906 4T以上の始端パルス
907 4T以上の終端パルス
908 中間パルス
1001 露光パルスパターン
1002 標準仕様温度におけるピット形状
1003 標準仕様温度以上の温度におけるピット形状
1101 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
1102 マルチパルス信号パターン
1103 形成されるピット形状
1104 4T前パルス
1105 4T後パルス
1106 5T以上の始端パルス
1107 5T以上の終端パルス
1108 中間パルス
1201 情報信号
1202 電子線照射部
1203 形成されるピット形状
1301 第1基板
1302 第1信号ピット
1303 第1反射膜
1304 第1情報面
1305 転写ピット
1306 第2反射膜
1307 第2情報面
1308 シート基板
1309a,1309b UV硬化樹脂
1310 再生レーザ光
1601 情報信号
1602 電子線照射部
1603 形成されるピット形状
1701 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
1702 マルチパルス信号パターン
1703 形成されるピット形状
1704 3T前パルス
1705 3T後パルス
1706 4T以上の始端パルス
1707 4T以上の終端パルス
1708 中間パルス
1901 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
1902 マルチパルス信号パターン
1903 形成されるピット形状
1904 3T前パルス
1905 3T後パルス
1906 4T以上の始端パルス
1907 4T以上の終端パルス
1908 中間パルス
2001 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
2002 マルチパルス信号パターン
2003 形成されるピット形状
2004 4T前パルス
2005 4T後パルス
2006 5T以上の始端パルス
2007 5T以上の終端パルス
2008 中間パルス
2101 従来記録に用いていた変換前の情報信号パターン
2102 マルチパルス信号パターン
2103 形成されるピット形状
2104 4T前パルス
2105 4T後パルス
2106 5T以上の始端パルス
2107 5T以上の終端パルス
2108 中間パルス
2201 第1基板
2202 第1信号ピット
2203 第1反射膜
2204 第1情報面
2205 転写ピット
2206 第2反射膜
2207 第2情報面
2208 シート基板
2209a,2209b UV硬化樹脂
2210 再生レーザ光
2301 第1基板
2302 転写スタンパ
2303 第1反射膜
2304 転写用情報面
2305 第1情報面
2306 UV硬化樹脂
2307 転写ピット
2308 第2反射膜
2309 第2情報面
2310 シート基板
2311 UV硬化樹脂
2401 ベース基板
2402 UV硬化樹脂
2403 転写ピット
2404 反射膜
2405 UV硬化樹脂
2406 シート基板
2407 再生レーザ光
2408 情報面
2501 第1基板
2502 第1信号ピット
2503 第1反射膜
2504 UV硬化樹脂
2505 転写ピット
2506 UV硬化樹脂
2507 転写ピット
2508 UV硬化樹脂
2509 シート基板
2510 再生レーザ光
2601 第1基板
2602 第1ピット
2603 第1反射膜
2604 UV硬化樹脂
2605 転写ピット
2606 UV硬化樹脂
2607 転写ピット
2608 UV硬化樹脂
2609 シート基板
2610 再生レーザ光

Claims (74)

  1. 化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、
    情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、
    前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、
    露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、
    前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を含む光ディスク原盤作製方法。
  2. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項1に記載の光ディスク原盤作製方法。
  3. 前記第1ピットが2Tピットである請求項2に記載の光ディスク原盤作製方法。
  4. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上130%以下である請求項3に記載の光ディスク原盤作製方法。
  5. 前記始端パルスおよび前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上130%以下である請求項3に記載の光ディスク原盤作製方法。
  6. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上130%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上130%以下である請求項3に記載の光ディスク原盤作製方法。
  7. 前記第1ピットが3Tピットである請求項2に記載の光ディスク原盤作製方法。
  8. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上、80%以下である請求項7に記載の光ディスク原盤作製方法。
  9. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項7に記載の光ディスク原盤作製方法。
  10. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項7に記載の光ディスク原盤作製方法。
  11. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項1に記載の光ディスク原盤作製方法。
  12. 前記第1ピットが3Tピットである請求項11に記載の光ディスク原盤作製方法。
  13. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下である請求項12に記載の光ディスク原盤作製方法。
  14. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上110%以下である請求項12に記載の光ディスク原盤作製方法。
  15. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上、110%以下である請求項12に記載の光ディスク原盤作製方法。
  16. 前記中間パルスのデューティ比が、45%以上65%以下である請求項2から15のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  17. 前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下である請求項2から16のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  18. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項2から17のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  19. 前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項2から17のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  20. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項2から17のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  21. 露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下である請求項1から20のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  22. 電子線記録装置で露光記録する請求項1から21のいずれかに記載の光ディスク原盤作製方法。
  23. 化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製し、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換し、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録し、露光された前記レジスト原盤を加熱処理し、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成して作製された光ディスク原盤を用いて作製された光ディスクであって、
    転写した情報面の各ピット幅が略同じであることを特徴とする光ディスク。
  24. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項23に記載の光ディスク。
  25. 前記第1ピットが2Tピットである請求項24に記載の光ディスク。
  26. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上130%以下である請求項25に記載の光ディスク。
  27. 前記始端パルスおよび前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上130%以下である請求項25に記載の光ディスク。
  28. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上130%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上130%以下である請求項25に記載の光ディスク。
  29. 前記第1ピットが3Tピットである請求項24に記載の光ディスク。
  30. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下である請求項29に記載の光ディスク。
  31. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項29に記載の光ディスク。
  32. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項29に記載の光ディスク。
  33. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項23に記載の光ディスク。
  34. 前記第1ピットが3Tピットである請求項33に記載の光ディスク。
  35. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下である請求項34に記載の光ディスク。
  36. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上110%以下である請求項34に記載の光ディスク。
  37. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、60%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、90%以上110%以下である請求項34に記載の光ディスク。
  38. 前記中間パルスのデューティ比が、45%以上65%以下である請求項24から37のいずれかに記載の光ディスク。
  39. 前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下である請求項24から38のいずれかに記載の光ディスク。
  40. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項24から39のいずれかに記載の光ディスク。
  41. 前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらす、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項24から39のいずれかに記載の光ディスク。
  42. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項24から39のいずれかに記載の光ディスク。
  43. 露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下である請求項23から42のいずれかに記載の光ディスク。
  44. 電子線記録装置で露光記録する請求項23から43のいずれかに記載の光ディスク。
  45. 少なくとも片面に少なくとも凹形状のピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された転写スタンパを作成する工程と、
    前記転写用情報面に光硬化樹脂が接した状態で、
    ベース基板と前記転写スタンパを、前記転写用情報面とベース基板が向かい合うように貼り合せる工程と、
    前記転写スタンパを前記光硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記光硬化樹脂に転写する工程を含む光ディスクの製造方法であって、
    前記転写スタンパにより、転写した情報面の各ピット幅が略同じとなるように形成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
  46. 片面に少なくともピットを含む第1信号層と第1反射膜によって第1情報面が形成された第1基板上に、再生光に対して略透明な樹脂からなる信号層を転写スタンパによって形成された多層光ディスクの製造方法であって、
    少なくとも片面にピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された、少なくとも1種類の転写スタンパを作製する工程と、
    前記転写用情報面に光硬化樹脂が接した状態で、前記第1基板と前記転写スタンパとの情報面が向かい合うように貼り合せる工程と、
    前記転写スタンパを前記光硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記光硬化樹脂に転写する工程とを含み、
    少なくとも1種類の転写スタンパを用いて、前記転写を前記第1基板上に少なくとも1回以上行う際、前記第1情報面の信号ピット形状と、転写した情報面のピット形状が略同じになるように形成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
  47. 片面に少なくともピットを含む第1信号層と第1反射膜によって第1情報面が形成された第1基板上に、再生光に対して略透明な樹脂からなる信号層を転写スタンパによって形成された多層光ディスクの製造方法であって、
    少なくとも片面にピットを含む信号層からなる転写用情報面が形成された、少なくとも1種類の転写スタンパを作製する工程と、
    再生光に対して略透明な樹脂からなる第2基板上に、前記転写用情報面に光硬化樹脂が接した状態で、前記転写スタンパの情報面が向かい合うように貼り合せる工程と、
    前記転写スタンパを前記光硬化樹脂との界面で剥離して前記転写スタンパの前記転写用情報面を前記光硬化樹脂に転写する工程と、
    前記第2基板上に少なくとも1種類の転写スタンパを用いて、前記転写を少なくとも1回以上行った後に前記第2基板の転写情報面と前記第1基板の前記第1情報面とが対向するように再生光に対して略透明な樹脂によって貼り合わせる工程とを含み、
    前記転写スタンパにより、前記第1情報面の信号ピット形状と、転写した情報面のピット形状が略同じになるように形成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
  48. 前記光硬化樹脂の粘度が、40mPa・s以上500mPa・s以下の範囲である請求項45から47のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  49. 前記第1反射膜の膜厚が、40nm以上100nm以下の範囲である請求項46から48のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  50. 前記第1基板に形成された前記第1信号ピットのうち、最短ピットを除く、その他のピット幅に対して、前記光硬化樹脂で転写した情報面のピットのうち、最短ピットを除く、その他のピット幅が、70%以上95%以下の範囲である請求項46から49のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  51. 化学増幅型レジストを塗布し、レジスト原盤を作製する工程と、情報信号を時間的に対称なマルチパルス信号に変換する工程と、前記マルチパルス信号に応じて前記レジスト原盤を露光記録する工程と、露光された前記レジスト原盤を加熱処理する工程と、前記レジスト原盤を現像することによって信号ピットを形成する工程を少なくとも含む工程で作製された光ディスク原盤を用いて前記転写スタンパを作製する請求項45から50のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  52. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの2個のパルスを始端パルス、終端パルスにし、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から4番目の第4ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項51に記載の光ディスクの製造方法。
  53. 前記第1ピットが2Tピットである請求項52に記載の光ディスクの製造方法。
  54. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上100%以下である請求項53に記載の光ディスクの製造方法。
  55. 前記始端パルスおよび前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上110%以下である請求項53に記載の光ディスクの製造方法。
  56. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上100%以下であり、かつ、前記始端パルス、および前記終端パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上110%以下である請求項53に記載の光ディスクの製造方法。
  57. 前記第1ピットが3Tピットである請求項52に記載の光ディスクの製造方法。
  58. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上80%以下である請求項57に記載の光ディスクの製造方法。
  59. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項57に記載の光ディスクの製造方法。
  60. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、40%以上100%以下である請求項57に記載の光ディスクの製造方法。
  61. 前記マルチパルス信号が、前記信号ピットのうち最短長の第1ピットに対しては1個のパルスからなり、短い方から2番目の第2ピットに対しては略同じ長さの前パルス、後パルスの2個のパルスからなり、短い方から3番目の第3ピットに対しては略同じ長さの始端パルス、終端パルスの2個のパルスからなり、短い方から4番目の第4ピットに対しては、略同じ長さの前記始端パルスと前記終端パルスと、前記始端パルスと前記終端パルスの間に、前記情報信号のクロック信号と同じ周期の1個の中間パルスを配置したパルスからなり、短い方から5番目の第5ピット以降に対しては、前記中間パルスを1個ずつ追加したパルスからなる請求項51に記載の光ディスクの製造方法。
  62. 前記第1ピットが3Tピットである請求項61に記載の光ディスクの製造方法。
  63. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上80%以下である請求項62に記載の光ディスクの製造方法。
  64. 前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、70%以上110%以下である請求項62に記載の光ディスクの製造方法。
  65. 前記前パルスおよび前記後パルスのパルス幅が、前記第1ピットに対するパルスに対して、50%以上80%以下であり、かつ、前記始端パルスおよび前記終端パルスが、前記第1ピットに対するパルスに対して、70%以上110%以下である請求項62に記載の光ディスクの製造方法。
  66. 前記中間パルスのデューティ比が、45%以上65%以下である請求項52から65のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  67. 前記前パルスと前記後パルスの間のスペース部、または前記始端パルスと前記終端パルスの間のスペース部の出力レベルが、各パルスの最大出力の50%以下である請求項52から66のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  68. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項52から67のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  69. 前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項52から67のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  70. 前記第2ピットの長さが最適な長さとなるように、前記前パルスの位置を後に、かつ前記後パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記前パルスの位置を前に、かつ前記後パルスの位置を後に略同じだけずらし、同時に、前記第3ピット以降の長い前記信号ピットの長さが最適となるように、前記始端パルスの位置を後に、かつ前記終端パルスの位置を前に略同じだけずらすか、または前記始端パルスの位置を前に、かつ前記終端パルスの位置を後に略同じだけずらす請求項52から67のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  71. 露光された前記レジスト原盤を加熱する温度が、標準仕様温度以上、かつ変質温度以下である請求項51から70のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  72. 前記第1情報面の信号ピットおよび前記転写した情報面のピットのうち、最短ピット長が0.3μm以下0.1μm以上である請求項45から71のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  73. 電子線記録装置で露光記録する請求項51から72のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
  74. 前記第1信号層と前記転写した情報面の密度が略同じである請求項45から73のいずれかに記載の光ディスクの製造方法。
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