JP2004002438A - 拡大ポルフィリン:大ポルフィリン様トリピロールジメチン誘導マクロ環 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、五座拡大ポルフィリン:大ポルフィリン様トリピロールジメチン誘導マクロ環およびそれを含む組成物、ならびにそれらを生産および使用する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポルフィリンおよび関連テトラピロールマクロ環は、最も多方面に応用可能なテトラデンデートトリガンドである1)(この段落における参考文献については例1参照)。さらに大きなポルフィリン様芳香性マクロ環によってさらに高度な配位形態を安定化する試みは、しかしながら、ほとんど成功していない2−5)。実際、現在までに、「スーパーフタロシアニン」のウラニル錯体が単離され、構造的特性が解明されているのみで2)、また他の数種の大ポルフィリン様芳香性マクロ環、たとえば「サフィリン」3,6),「オキソサフィリン」6,7),「プラチリン」8),「ペンタフィリン」9)および「[26]ポルフィリン」10)が、金属を含まない形態で製造されているにすぎない。
【0003】
ポルフィリンおよび関連テトラピロール化合物はすべての既知マクロ環中で最も広範に研究されてはいるものの1)、さらに大きな共役ピロール含有システムの開発には、どちらかといえばあまり努力は払われてこなかった2−12)(この段落における参考文献については、例2参照)。しかしながら、大もしくは「拡大」ポルフィリン様システムは、いくつかの理由によって興味がある。これらのシステムは、詳細に研究されてきたポルフィリン2−8)の芳香性類縁体として役立つ可能性が考えられ、また、これらのもしくは他の天然産ピロール含有システム13,1 4)に対する生物学的模倣モデルとして役立つ可能性がある。さらに、ピロール含有大システムは、新規な金属結合マクロ環として、きわめて興味ある可能性を提供する2,9−12,15)。たとえば、適当に設計されたシステムであれば、通常のテトラデンテートの約2.0Å径のポルフィリンコア内に収容されている場合17)より、大きな金属陽イオンの結合および/または高度な配位形態の安定化2,16)が可能な、多方面に応用できるリガンドとして作用することが考えられる。得られた錯体は、重金属キレート療法の領域への応用に重要であり、磁気共鳴映像法(MRI)用の造影剤として作用し、放射免疫標識作業のビヒクルとして、また、配位化学の範囲を拡大できる新規なシステムとして役立つ可能性がある。さらに、遊離塩基(金属を含まない)および/または反磁性金属含有物質は、光力学的療法用の有用な増感剤としての作用が考えられる。最近、ペンタデンテートポリピロール芳香性システムとしての可能性が考えられる多数の系、たとえば「サフィリン」3,4),「オキソサフィリン」5),「スマラグジリン」3,4),「プラチリン」6)および「ペンタフィリン」7)が製造され、それらの金属を含まない形態について研究が行われている。しかしながら、その大部分について、相当する金属化型化合物の情報はほとんどまたは全くない。実際、「スパーフタロシアニン」のウテニル錯体が、製造され構造的特性が検討された唯一の金属含有ペンタピロールシステムであった2)。「スパーフタロシアニン」システムは、残念ながら、その遊離型としてもまた他の金属含有型としても存在できないことが明らかにされている2)。したがって、本発明以前には、非芳香性ピリジン誘導ペンタデンテートシステムについては多数報告されているものの19,20)、融通性があり、構造的に特性づけられたペンタデンテート芳香性リガンドはなかったといってよい11 )。
【0004】
強力な結合性を有する陰イオン性リガンド、たとえばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)1,2,3),1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)1,4,5)および1,10−ジアザ−4,7,13,16−テトラオキサシクロオクタデカン−N,N’−ジ酢酸(dacda)1,6)から誘導されるガドリニウム(III)錯体は、磁気共鳴造影法(MRI)用に最近開発された化合物で最も有望な常磁性コントラストを示している1)(この段落における参考文献については例3中に示す)。実際、[Gd・DTPA]−については、現在、腫瘍の検出の増強を調べるプロトコールでのその利用可能性の臨床試験がアメリカ合衆国において実施されている1)。さらに、このようなシステムは、現存のカルボキシレートベースの造影剤に比べて大きな動力学的安定性、優れた緩和性、また良好な生物学的分布特性が期待されることから、他のガドリニウム(III)錯体の合成にも興味がもたれている。このようなアプローチのひとつとして、最近、水溶性ポリフィリン誘導体、たとえばテトラキス(4−スルホネートフェニル)ポルフィリン(TPPS)7,8, 9)の使用を基盤とした追跡がなされている。残念ながら、大きなガドリニウム(III)陽イオンは、比較的小さいポルフィリン結合コア(γ≒2.0Å11))内には完全には収容されず10)、したがって、ガドリニウム−ポルフィリン錯体は、加水分解に対して不安定であることが避けられない7,8,12,13)。しかしながら、大きなポルフィリン様リガンドであれば、この問題を回避する手段を提供できる可能性がある。
【0005】
後天性免疫不全症候群(AIDS)および癌は、今日、人類が直面している最も重大な公衆衛生上の問題である。AIDSは1981年に男性同性愛者中にはじめて報告された1)致命的なヒト疾患であるが、現在では汎発流行病の割合に達している(この段落および以下の4段落における参考文献は例5に示す)。癌は、診断および処置における最近の著しい進歩にもかかわらず、アメリカ合衆国における死因の第三位を維持している。これらの疾患の検出、処置および伝達低減のためのより優れた方法の研究は、したがって、最も重要な課題である。
【0006】
腫瘍の制御および処置への利用が最近検討されている、有望な新しい理学療法のひとつに、光力学的療法(PDT)がある1−5)。この技術は、腫瘍部位またはその周辺に局在し、酸素の存在下に照射すると、そうでなければ無害の前駆体たとえばO2(3Σg−)から一重項酸素[O2(1Δg)]のような細胞毒性物質を産生する働きがある光増感性染料の使用に基づくものである。PDTの導入に伴う最近の反響の多くは、その特性、すなわち、現在の方法(たとえば慣用の化学療法)とは全く対照的に、PDTでは、薬剤は、担当医によって光で「活性化」されるまでは完全に無害である(そして、なければならない)ことによる。すなわち、他の方法では不可能であったレベルの制御と選択性が達成できることである。
【0007】
現時点では、PDT用に第一に選択される染料として、反磁性ポルフィリンおよびその誘導体が考えられている。10年ほど前から、ヘマトポルフィリンのようなポルフィリンが急速に成長する組織、たとえば肉腫や癌に選択的に局在することが知られている6)。しかしながら、その選択性の理論的根拠は明らかではない。最近では、ヘマトポルフィリン二塩酸塩を酢酸−硫酸、ついで希釈塩基で処理して製造された23,26)ポルフィリンのモノマーおよびオリゴマー混合物である、特性は完全には明らかにされていない、いわゆるヘマトポルフィリン誘導体(HPD)2−5,7−21)にとくに注意が集中されている。最良の腫瘍局在能を有すると考えられている23,26)オリゴマー種に富んだ分画がPhotofirin II(登録商標)(PII)の商品名で市販されていて、最近、閉塞性気管支上皮腫瘍および表在性膀胱腫瘍に対する臨床試験が行われている。この場合、作用機構は、すべてではないとしても多くは、一重項酸素O2(1△g)の光産生によると考えられるが、別の作用機構、たとえばスーパーオキシド陰イオンまたはヒドロキシルおよび/もしくはポルフィリンベースのラジカルの光産生による可能性も完全には除外できない28−33)。HPDは有望であるとしても、それおよび他の入手可能な光増感剤(たとえば、フタロシアニンおよびナフタフタロシアニン)には重大な欠点がある。
【0008】
ポルフィリン誘導体は、高い三重項収率と長い三重項寿命を有する(したがって、励起エネルギーは効率的に三重項酸素に伝達する)が3b,3g)、Q−バンド領域におけるそれらの吸収はヘム含有組織のそれと平行することが多い。フタロシアニンおよびナフタロシアニンは、もっと便利なスペクトル範囲で吸収するが、三重項収率は有意に低く4)、しかもそれらは極性のプロトン性溶媒に全く不溶性の傾向があって、機能化は困難である。したがって、現在のところ、さらに有効な光化学療法剤の開発には、生体組織に比較的透過性のスペクトル領域(すなわち、700〜l000nm)に吸収を有し1d、高い三重項量子収率を有し、毒性は最小限の化合物の合成が必要と思われる。本発明者らは最近、新規な一群の芳香性ポルフィリン様マクロ環、すなわち組織透過性の730〜770nm範囲に強力な吸収を有するトリピロールジメチン誘導「テキサフィリン」の合成を報告した5)(例1参照)。メタロテキサフィリンlc〜7cの光物理学的性質は相当するメタラポルフィリンのそれと平行し、反磁性錯体lc〜4cは高い量子収率での1O2の産生を増感する。図19には、本発明の化合物(lc〜7c)の模式的構造、金属錯体および誘導体を示すものである。
【0009】
一重項酸素はまた、実験的光増感血液精製操作において効果を発揮する重要な毒性種と考えられている34−39)。光力学的療法のこのきわめて新しい応用は、きわめて重要な可能性を含んでいる。それは、輸血用全血から、エンベロープを有するウイルス、たとえばHIV−1,単純ヘルペス(HSV),サイトメガロウイルス(CMV)、各種形態の肝炎誘発ウィルス、ならびに他の血液に含まれる日和見病原体(たとえば殺菌およびマラリヤプラスモジウム)を除去する安全かつ有効な手段の提供を約束するものである。AIDSが現在では有効な治療法がなく、通常、致命的な疾患であることを考えれば、このような血液精製操作の利益は測り知れないものであるといえる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
現在では、AIDSの蔓延の主要な理由は性的関係と注射針の共用によるものである1)。しかしながら、輸血の結果としてのAIDS感染の率が増大しつつある1,40−43)。不幸にも、近代医学の実行に必須の製品は血液銀行からの血液成分であり、その結果、この経路による伝達は単純な生活様式の変更では予防できない。どちらかといえば、すべての保存血液サンプルがAIDSウイルスを含まないこと(また理想的には他のすべての血液に含まれる病原体をもたないこと)を保証できる、絶対に間違いのない手段が開発されねばならない。これはある程度までは、供血者の経歴のスクリーニングと血清学的テストの実施によって達成できる。しかしながら、現時点では、HIV−1の血清学的テストはすべての感染血液サンプルの検出には不十分であり、とくにこの疾患の保因者ではあるがまだ検出可能な抗体が産生されていない供血者に由来する血液サンプルには有効でない。さらに、AIDSウイルスの新たな変異株が検出されていて、これらの一部またはすべては、現行の手段では見逃されてしまう1)。したがって、どのような形態のHlV−1でも保存血液から除去できる抗ウイルスシステムが必要とされる。これは、一人の感染供血者からの保存血液サンプルが、たとえば小児科での治療過程で、使いきるまで数例の別の患者に投与される可能性がある点で、とくに重要である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、新規なトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)、このような化合物の合成、それらの類縁体もしくは誘導体、およびそれらの使用に関する。これらの拡大ポルフィリン様マクロ環は、二価および三価の金属イオンの効率的なキレート剤である。これらの化合物の金属錯体は、一重項酸素の産生のための光増感剤として有効であり、したがって、腫瘍の不活性化または崩壊、ならびにヒト免疫不全症ウイルス(HIV−1)および他のウイルスに対する予防的処置および血液からの除去に有用性が考えられる。多様なテキサフィリン誘導体が製造され、しかも多くは容易に得ることができる。本発明のテキサフィリンおよびテキサフィリン誘導体と様々な金属(ランタニド)との錯体は異常な水溶性と安定性を有し、これがそれらをとくに有用なものとしている。これらのメタロテキサフィリン錯体は特殊な光学的性質を有し、この点で、現存のポルフィリン様または他のマクロ環に比べて独特である。たとえば、これらは生理学的に重要な領域(すなわち、690〜880nm)で光を強力に吸収する。ある種の反磁性錯体も、高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する。これらの性質は、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を高めるものである。
【0012】
本発明は、以下の構造
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、RはHまたはCH3である)をもつ基本化合物関連の一群の化合物に関する。この化合物は、以下の構造
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、MはH,Lは存在せず、nは0であるか、またはMはCd,Lはピリジンもしくはベンズイミダゾール、nは1である)を有する化合物として製造された。
【0017】
本発明の好ましい化合物は、以下の構造
【0018】
【化4】
【0019】
を有するカドミウム−テキサフィリン錯体である。
【0020】
多様なテキサフィリン誘導体およびそれらの金属錯体が製造され、以下の構造
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、
MはH,RはH,nは0であるか、
MはCd+2,RはH,nは1であるか、
MはNd+2,RはH,nは2であるか、
MはSm+3,RはH,nは2であるか、
MはEu+3,RはH,nは2であるか、
MはGd+3,RはH,nは2であるか、
MはY+3,RはH,nは2であるか、
MはIn+3,RはH,nは2であるか、
MはZn+2,RはH,nは1であるか、
MはHg+2,RはH,nは1であるか、
MはH,RはCH3,nは0であるか、
MはGd+3,RはCH3,nは2であるか、
MはEu+3,RはCH3,nは2であるか、
MはSm3+,RはCH3,nは2であるか、
MはY+3,RはCH3,nは2であるか、または
MはIn+3,RはCH3,nは2である)
で表すことができる。
【0023】
本発明はまた、以下の構造
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、
MはZn+2,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはZn,RはH,R’はCl,nは1であるか、
MはCd,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはCd,RはH,R’はCl,nは1であるか、
MはMn,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはSm,RおよびR’はCH3,nは2であるか、
MはEu,RおよびR’はCH3,nは2であるか、
または
MはGd,RおよびR’はCH3,nは2である)
で表される化合物を包含する。
【0026】
より広い意味では、本発明は、以下の構造
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、RおよびR’はCH3,RはHでR’はOCH3,RはHでR’はCl,RはHでR’はCOOHもしくはRはHでR’はNO2であり、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物を包含する。
【0029】
他の態様においては、本発明のテキサフィリンおよびその誘導体ならびにそれらの錯体は、以下の構造
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、Mは三価の金属イオンであってnは2である)を有する。
【0032】
とくに興味のある本発明のテキサフィリン類縁体は、以下の構造
【0033】
【化9】
【0034】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する類縁体である。上述の金属錯体において、MはCa+2,Mn+2,Co+2,Ni+2,Zn+2,Cd+2,Hg+2,Sm+2,およびUO2 +2からなる群より選ばれる二価の金属イオンである(nは1)。ある態様においては、MはCd+2,Zn+2またはHg+2であることが好ましい。Mが三価の金属イオンである場合には、それは、Mn+3,Co+3,Mn+3,Ni+3,Y+3,In+3,Pr+3,Nd+3,Sm+3,Eu+3,Gd+3,Tb+3,Dy+3,Er+3,Tm+3,Yb+3,Lu+3およびU+3からなる群より選ばれることが好ましい(nは2である)。最も好ましい三価の金属イオンは、In+3,Y+3,Nd+3,Eu+3,Sn+3およびGd+3である。
【0035】
さらに、本発明の化合物は、以下の構造
【0036】
【化10】
【0037】
(式中、RおよびR’はFであるか、RはHでR’はO(CH2CH2O)2CH3であるか、RはHでR’はSO3 −であるか、またはRはHでR’はCO2 −であり、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)によって表すことができる。
【0038】
とくに好ましいテキサフィリン誘導化合物は、以下の構造
【0039】
【化11】
【0040】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物である。
【0041】
他の態様においては、本発明は、以下の構造
【0042】
【化12】
【0043】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物を包含する。これは本発明のテキサフィリン誘導体の例である。同様に、以下の構造
【0044】
【化13】
【0045】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物も、本発明に包含される。
【0046】
さらに他の態様においては、本発明は、以下の構造
【0047】
【化14】
【0048】
(式中、R1およびR2はHもしくはCH3であり、MはHg+2,Cd+2,Co+2もしくはMn+2であり、nは1であるか、MはLn+3,Gd+3,Y+3もしくは、In+3であり、nは2であるか、またはR1はHであり、R2はCl,Br,NO2,CO2HもしくはOCH3であり、MはZn+2,Hg+2,Sn+2もしくはCd+ 2であり、nは1である)を有する化合物を包含する。
【0049】
金属を含まない場合、本発明の化合物は以下の構造
【0050】
【化115】
【0051】
【化116】
【0052】
たとえば、ペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物の一合成方法は本発明の態様である。この方法は、ジホルミルトリピランを合成し、このトリピランをオルトアリールジアミン1,2−ジアミノアルケンまたは1,2−ジアミノアルカンと縮合し、ついで縮合生成物を酸化してペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物を形成させることからなる。好ましい1,2−ジアミノアルケンはジアミノマレオニトリルである。オルトアリールジアミンは好ましくは、オルトフェニレンジアミンまたは置換オルトフェニレンジアミンである。他の好ましいオルトアリールジアミンは2,3−ジアミノナフタレンである。このようなペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物は金属と錯体を形成させる。この場合、金属錯体はペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物と金属イオンの反応によって製造される。
【0053】
本発明はまた、血液中のレトロウイルスおよびエンベロープを有するウイルスの不活性化方法を包含する。この方法は、上述のようなペンタデンテート拡大ポルフィリン類縁体金属錯体を血液に添加し、この混合物を光に曝露して一重項酸素の形成を促進させることからなる。
【0054】
金属と錯体を形成させたペンタデンテート拡大ポルフィリン類縁体を腫瘍宿主に投与し、腫瘍の近位に存在する類縁体に放射線照射を行うことからなる光力学的腫瘍療法は、本発明の他の態様を構成する。
【0055】
テキサフィリンまたはテキサフィリン類縁体と錯体を形成させた反磁性金属イオン(たとえばガドリニウム等)を投与することからなるMRIの増強方法も、本発明の一態様を構成する。
【0056】
1つの局面において、本発明は、次の構造:
【0057】
【化17】
【0058】
(式中、MはHであり、RはCH3であり、そしてnは0であるか;
MはGd+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはSm+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはY+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;又は
MはIn+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか。)
を有する化合物に関する。
【0059】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0060】
【化18】
【0061】
(式中、MはHであり、RはHであり、R’はClであり、そしてnは0であるか;
MはCd+2であり、RはHであり、R’はClであり、そしてnは1であるか;MはSm3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2であるか;
MはGd3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0062】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0063】
【化19】
【0064】
(式中、R及びR’はCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はOCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はClであるか;RはHであり、そして
R’はCOOHであるか、又はRはHであり、そしてR’はNO2であり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0065】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0066】
【化20】
【0067】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0068】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0069】
【化21】
【0070】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0071】
1つの実施態様において、上記Mは、Ca+2、Mn+2、CO+2、Ni+2、Zn+2、Hg+2、Sm+2及びUO+2より成る群から選択される二価の金属イオンであり、そしてnは1である。1つの実施態様において、上記Mは、Mn+3、Co+3、Mn+3、Ni+3、Y+3、In+3、Pr+3、Nd+3、Sm+3、Eu+3、Gd+3、Tb+3、Dy+3、Er+3、Tm+3、Yb+3、Lu+3及びU+3より成る群から選択される三価の金属イオンであり、そしてnは2である。別の実施態様において、上記Mは、In+3、Y+3、Nd+3、Eu+3、Sn+3又はGd+3である。
【0072】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0073】
【化22】
【0074】
(式中、R及びR’はFであるか;
RはHであり、そしてR’はO(CH2 CH2 O)2CH3であるか;
RはHであり、そしてR’はSO3であるか;又は
RはHであり,そしてR’はCO2Hであり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか;又は
Mは三価の金属イオンであり、そしてnは2である)。
を有する化合物に関する。
【0075】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0076】
【化23】
【0077】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0078】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0079】
【化24】
【0080】
(式中、置換基R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキサミド、エステル、アミド、スルホナト、置換アルキル、置換エステル、置換エーテル又は置換アミドであり、Mは2価又は三価の金属カチオンであり、そしてnは−5乃至+5である。)を有する化合物に関する。好ましくは、MはCd2+、Zn2+、Hg2+、またはNd3+の場合、同時には、R1はメチル、R2およびR3の両方はエチル、R4およびR5の両方は水素ではない。
【0081】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0082】
【化25】
【0083】
(式中、置換基R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキサミド、エステル、アミド、スルホナト、置換アルキル、置換エステル、置換エーテル又は置換アミドであり、Mは2価又は三価の金属カチオンであり、そしてnは−5乃至+5であり;ここで
R1、R2及びR3は全てがメチルであることはなく、又はR4及びR5は両者共にHであることはない。)
を有する化合物に関する。
【0084】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0085】
【化26】
【0086】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは0であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは1である。)
を有する化合物に関する。
【0087】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0088】
【化27】
【0089】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0090】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0091】
【化28】
【0092】
(式中、R1及びR2はH及びCH3であり、MはHg+2、Cd+2、Co+2又はMn+2であり、そしてnは1であるか、又はMはLn+3、Gd+3、Y+3、Sm+3又はIn+3であり、そしてnは2であるか;又はR1はHであり、R2はCl、Br、NO2、CO2H又はOCH3であり)MはZn+2、Hg+2、Sn+2又はCd+2であり、そしてnは1であるか、MはLn+3、Gd+3、Y+3、Sm+3又はIn+3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0093】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0094】
【化29】
【0095】
を有する化合物に関する。
【0096】
別の局面において、本発明は、血液に5座の広がったポルフィリン類縁化合物の金属錯体を加え、その混合物を光に暴露してシングレット(singlet)の酸素の形成を促進することを含む、血液中のレトロウイルス及び外被ウイルスを不活性化する方法に関する。
【0097】
別の実施態様において、上記5座の広がったポルフィリン類縁化合物の金属錯体は、本発明の化合物である。別の実施態様において、5座の広がったポルフィリン類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体である。
【0098】
別の局面において、本発明は、腫瘍宿主への投与およびその腫瘍の近位におけるその類縁化合物の照射のために、金属と錯化された五座拡大ポルフィリンに関する。別の局面において、本発明は、宿主に投与したときにMPIを強化するための、常磁性の金属で錯化された5座の広がったポルフィリン類縁化合物に関する。1つの実施態様において、本発明の類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体であると更に定義される。別の実施態様において、本発明の類縁化合物は、常磁性の金属イオンがガドリニウムである。
【0099】
さらなる局面において、本発明は、光増感剤として5座の広がったポルフィリン類縁化合物の使用を含むシングレットの酸素の生成法に関する。1つの実施態様において、5座の広がったポルフィリンがテキサフィリン又はテキサフィリン誘導体である。
【0100】
さらなる局面において、本発明は、生体分子に対する結合を伴う用途において使用するための、5座の広がったポルフィリン類縁化合物に関する。1つの実施態様において、生体分子は、蛋白質又は抗体である。別の実施態様において、上記類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体と定義される。別の実施態様において、上記類縁化合物は、図27の化合物又は錯体と定義される、あるいは二価又は三価の金属で錯化されたものと定義される。さらなる実施態様において、上記金属は、Y、In、Gd又はSmである。
【0101】
1つの局面において、本発明は、次の構造:
【0102】
【化30】
【0103】
(式中、R1はHであり、R2はCO2Hであり、MはIn+3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。1つの実施態様において、インジウムは111Inである。
【0104】
さらなる局面において、本発明は、次の構造:
【0105】
【化31】
【0106】
に関する。
【0107】
【発明の実施の形態】
本発明は、新規な「拡大ポルフィリン」システム、1B(これには「テキサフィリン」の慣用名を与えた)の合成を包含し、またそのカドミウム(III)錯体のビスピリジン付加物の構造の記述を包含する。ポルフィリンの場合に比べて大凡20%大きい、ほぼ環状のペンタデンテート結合コアがこの構造内に存在することは、6配位Cd2+(γ=0.92Å)およびGd3+(γ=0.94Å)25 )においてほぼ同じイオン半径が保持されていることの認識と相まって、この新規なモノ陰イオン性ポルフィリン様リガンドの一般的にランタニド結合性の検討を促すことになった。元の「拡大ポルフィリン」システムの新しい16,17−ジメチル置換類縁体から型通りに誘導された、水安定性ガドリニウム(III錯体の合成および性状の検討、ならびに相当するユーロピウム(III)およびサマリウム(III)錯体の製造および性状の検討が行われた。
【0108】
本明細書に記載の芳香性「拡大ポルフィリン」システムは、現存の豊かなポルフィリン配位化学に重要な補足を与えるものである。たとえば、報告されている方法と類似の方法を用いて、亜鉛(II)、マンガン(II)、水銀(II)、およびネオジム(III)の錯体が製造され、その性状が検討された。
【0109】
この新しい一連のトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)は、光物理学的性質が明らかにされている。これらの化合物は、690〜880nmスペクトル範囲に強力な低エネルギー光吸収と、同時に高い三重項量子収率を示すこと、そして、たとえばメタノール溶液中で、一重項酸素の産生に効率的な光増感剤として作用することが明らかにされた。
【0110】
本発明は、リガンドの設計および合成の領域に、顕著な進歩をもたらしたものであり、すなわち、はじめて理論的に設計された芳香性ペンタデンテートマクロ環リガンド、トリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」を提供するものである。「テキサフィリン」という慣用名を与えられたこの化合物は遊離塩基型としても、また各種の金属陽イオンたとえばCd2+,Hg2+,In3+,Y3+,Nd3+,Eu3+,Sm3+およびGd3+のような、よく研究されているポルフィリンの20%小さいテトラデンテートコア内に安定に収容されるには大きすぎる金属イオンと加水分解に安定な1:1錯体を形成して存在することも可能である。さらに、テキサフィリンの遊離塩基型はモノ陰イオン性リガンドであることから、二価および三価の金属陽イオンから形成されたテキサフィリン錯体は、中性pHでも陽性に荷電している。その結果、これらの錯体の多くは実際上水溶性であり、少なくとも類縁のポルフィリン錯体よりもはるかに水溶性である。
【0111】
本明細書にその一部をまとめた現在までの結果は、本発明の拡大ポルフィリン様マクロ環が、遊離のHIV−1の崩壊、ならびにin vivoにおける腫瘍および血中の感染単核細胞の処置に効率的な光増感剤であることを強く示している。これらのマクロ環の側鎖基の極性および電荷を変えることによって、遊離のエンベロープを有するウイルスたとえばHIV−1およびウイルスが感染した末梢単核細胞への結合の程度、速度および多分、部位が著しく変化することが予測される。これらの置換基の変化はまた、白血病またはリンパ腫細胞が夾雑する骨髄、ならびに骨髄正常細胞による光増感剤の取り込みおよび光増感を修飾することが期待される。
【0112】
【実施例】
(実施例1)
ポルフィリンおよび関連テトラピロールマクロ環は、最も融通性の高いテトラデンテートリガンドである1)。さらに大きなポルフィリン様芳香牲マクロ環によって、さらに高度を配位形態を安定化する試みは、しかしながら、ほとんど成功していない2−5)。実際、現在までに、「スーパーフタロシアニン」のウイルス錯体が単離され、構造的特性が解明されているのみで2)、また他の数種の大ポルフィリン様芳香性マクロ環、たとえば「サフィリン」3,6),「オキソサフィリン」6,7),「プラチリン」8),「ペンタフィリン」9)および「[26]ポルフィリン」10)が、金属を含まない形で製造されているにすぎない。本例では、多様な金属陽イオンと結合が可能な、新しい種類の「拡大ポルフィリン」の開発の一態様について述べる。ここにはまた、化合物の独特な合成2,11)、全く新しいポルフィリン様芳香性ペンタデンテートリガンドの合成2,12)、およびそのカドミウム(II)ビスピリジン錯体4の構造について記載する(化合物または錯体1〜4については図1参照)。
【0113】
本方法は、2,5−ビス[3−エチル−5−ホルミル−4−メチルピロール−2−イル)メチル]−3,4−ジエチル−ピロールとオルトフェニレンジアミンの直接酸触媒縮合による非芳香性メチレン架橋マクロ環(化合物1)の製造13)を包含する。これはキランドとしては、無効であることが明らかにされている14 )。本発明者らは、還元型マクロ環化合物1をクロロホルム−メタノール(1:2,v/v)中空気の存在下、塩化カドミウムとともに24時間攪拌し、ついでシリカゲル上クロマトグラフィーによって精製し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶すると、カドミウム(II)錯体3・Clが暗緑色の粉末として24%の収率で得られることを見出した。この反応条件下には、リガンドの酸化と金属の錯体化の両者が同時に起こる。
【0114】
化合物3の構造は、それが18π電子系のベンゼン縮合[18]アヌレンまたは全体の22π電子系のいずれかの構造を取り得ることを示唆している。いずれの場合も、芳香族性構造が明確である。概して、錯体3・Clは化合物1に認められたのと質的に類似のリガンド特性を示す。しかしながら、強力な反磁性環電流の存在から期待されるように、アルキル、イミンおよび芳香性のピークはすべて低領域側にシフトしている。しかも、化合物1の架橋メチレンシグナル(δ≒4.0)13)は、架橋メチンプロトンに帰属できる11.3ppmの鋭い単一線に置き換えられている。この「メソ」シグナルの化学シフトは、適当な18π電子芳香性対照システムのCd(OEP)16)で認められる値(δ≒10.0)17)よりも大きく、22π電子ピロール含有マクロ環であるデカメチルサフィリンの遊離塩基型で認められた値(δ≒11.5〜11.7)3)にきわめて類似している。
【0115】
錯体3・Clの光学スペクトルは、他の芳香性ピロール含有マクロ環3,6,7,18 )の場合とある種の類似を有し、提案された芳香性構造はさらにこの点でも支持される。最も大きな遷移は424nm(ε=72,700)におけるSoret様バンドで、これはCd(OEP)(Pyr)16)の場合にみられる値(λmax=421nm,ε=288,000)18)よりかなり強度が低下している。このピークは、高および低エネルギー側で、異例に強力なN−およびQ−様バンドと隣接している。π電子系の大きなことから期待されるように、錯体3・Clの最低エネルギーのQ−様吸収(λmax=767.5nm,ε=41,200)および発光(λmax=792nm)バンドは、典型的なカドミウムポルフィリンの場合1 8,19)に比べてかなりレッドシフトしている(約200nm!)。
【0116】
上述の金属挿入を硝酸カドミウムで繰り返すと、微量分析データ15)に基づいてプロトン化錯体3・NO3・(HNO3)の式が考えられる錯体が約30%の収率で得られた。過剰のピリジンで処理し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶すると、スペクトル特性は3・Clとほぼ一致するビス−ピリジン付加錯体4−NO3が暗緑色の結晶として単離された。X線回析分析によって決定された4−NO3の分子構造は、リガンドの芳香族性を確認するものである(図2)20)。錯体4の中心の5個の窒素ドナー原子はほぼ同一平面上にあって、中心から窒素までの半径が約2.39Åのほぼ円形の空洞部を形成し(図3参照)、これはメタロポルフィリンの場合よりもほぼ20%大きい21)。Cd原子は中央のN5結合コアの面内に存在する。すなわち、「拡大ポルフィリン」4の構造は、カドミウム原子がポルフィリンN4ドナー面の外部に存在したCdTPP16,22)またはCdTPP−(ジオキサン)2 23)の場合(それぞれ0.58および0.32Å)とは劇的に異なっている。しかも、5配位の正方錐体構造が好ましく、ただ1個のピリジン分子が結合する24)カドミウムポルフィリンとは対照的に、錯体4−NO3ではカドミウム原子は7配位で、2個の頂点ピリジンリガンドと錯体を形成する。したがって、Cd原子の周囲のコンフィギュレーションは五方複錐体構造であり、これは稀ではあるが、カドミウム(II)錯体について未知の構造ではない25 )。
【0117】
中性条件下には、錯体3および4はカドミウムポルフィリンよりさらに安定であるようにみえる。CdTPPまたはCdTPP(Pyr)をNa2S水溶液で処理すると、陽イオンが失われてCdSが沈殿するが、錯体3および4の場合には脱金属は起こらない(しかしながら、酸に曝露するとマクロ環の加水分解が生じる)。実際、脱金属によって遊離塩基リガンド2を製造することはできない。トリピロールジメチン誘導遊離塩基リガンド2は、直接1から、N,N,N’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレンを含有する、空気を飽和したクロロホルム−メタノール中で攪拌することによって合成された15)。収率は低い(≦12%)26)が、いったん形成されると、化合物2は全く安定であるようにみえる。それは、化合物1よりはるかに徐々に分解を受ける13)。これは多分、化合物2における芳香族性の安定化を反映するものと思われる。遊離塩基型「拡大ポルフィリン」2の芳香族性を指示するものとして、還元型マクロ環1に存在するピロール性プロトンに比較して10ppm以上も上方にシフトして、内部ピロールNH単一線がδ=0.90に認められることが挙げられる13)。このシフトは、sp3−連結マクロ環、オクタエチルポルフィリノーゲン[δ(NH)=6.9]27)が相当するポルフィリン,H2OEP[δ(NH)=−3.74]17)に酸化された場合に認められるシフトと平行している。これは、化合物2に存在する反磁性環電流の強度がポルフィリンの場合と類似することを示唆している。
【0118】
本明細書に記載した芳香性「拡大ポルフィリン」システムは、現存の豊富なポルフィリン配位化学に重要な補足を与えるものである。たとえば、記載された方法と類似の方法を用いて、化合物2の亜鉛(II),マンガン(II),水銀(II),およびネオジム(III)錯体が製造され、性質が明らかにされた。
【0119】
以下の一覧表における引用文献は、引用された理由により参考として、本明細書に導入される。
【0120】
(参考文献と注)
1.The Porphrins;Dolphin,D.編;Academic Press,New York,1978〜1979,第I〜VII巻
2.「スーパーフタロシアニン」,ペンタアザ芳香性フタロシアニン様システムはニラニル仲介縮合によって製造された。それは、遊離塩基型、または他の金属含有型としては得られない。(a)Day,V.W.;Marks,T.J.;Wachter,W.A.J.Am.Chem.Soc.1975,97,4519−4527。(b)Marks,T.J.;Stojakovic,D.R.J.Am.Chem.Soc.1978,100,1695−1705.(c)Cuellar,E.A.;Marks,T.J.Inorg.Chem.1981,208,3766−3770.
3.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429−6436.
今日まで、これらの可能性のあるペンタデンテートリガンドからは、4配位金属錯体しか製造されていない。
【0121】
4.より小さい中央空洞部を有するポルフィリン様システムの例については(a)Vogel,E.;Kocher,M.;Schmickler,H.;Lex,J.Angew.Chem.1986,98,262−263;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1986,25,257−258.(b)Vogel,E.;Balci,M.;Pramod,K.;Koch,P.;Lex,J.;Ermer,O.Angew.Chem.1987,99,909−912;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1987,26,928−931.参照
5.Mertesらは最近、ジピロメチンから誘導される優れた(しかし非芳香性である)ポルフィリン様「アコーディオン」リガンドの5配位銅錯体の特性を明らかにしている。(a)Acholla,F.V.;Mertes,K.B.Tetra−hedron Lett.1984,3269−3270.(b)Acholla,F.V.;Takusagawa,F.;Mertes,K.B.J.Am.Chem.Soc.1985,6902−6908.他の非芳香性ピロール含有マクロ環の4配位銅錯体も最近製造されている:Adams,H.;Bailey,N.A.;Fenton,D.A.;Moss,S.;Rodriguez de Barbarin,C.O.;Jones,G.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1986,693−699.
6.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1972,2111−2116.
7.(a)Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,23−24.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,1480−1482.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnso,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1970,807−809.
8.(a)Berger,R.A.;LeGoff,E.;Tetra−hedron Lett.1978,4225−4228.(b)LeGoff,E.;Weaver,O.G.J.Org.Chem.1987,710−711.
9.Rexhausen,H.;Gossauer,A.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1983,275.(b)Gossauer,A.Bull.Soc.Chim.Belg.1983,92,793−795.
10.Gosmann,M.;Franck,B.Angew.Chem.1986,98,1107−1108;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1986,25,1100−1101.
11.化合物の系統的名称は、4,5,9,24−テトラエチル−10,23−ジメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.13,6.18,11.014,19]ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンである。
【0122】
12.非芳香性平面状ペンタデンテートピリジン誘導リガンドは知られている。たとえば、(a)Curtis,N.F.In Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds;Melson,G.A.;Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 4.(b)Nelson,S.M.;Pure Appl.Chem.1980,52,2461−2476.(c)Ansell,C.W.G.;Lewis,J.;Raithby,P.R.;Ramsden,J.N.;Schroder,M.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1982,546−547.(d)Lewis,J.;O’Donoghue,T.D.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,DaltonTrans.1980,1383−1389.(e)Constable,E.C.;Chung,L.−Y.;Lewis,J.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1986,1719−1720.(f)Constable,E.C.;Holmes,J.M.;McQueen,R.C.S.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1987,5−8.参照
13.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394−4397.
14.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.;Murai,T.J.Coord.Chem.,印刷中.
15.すべての新しい化合物について、満足できる分光分析、マススペクトルおよび/または分析データが得られた。
【0123】
16.OEP=オクタエチルポルフィリンおよびTPP=テトラフェニルポルフィリン;頭に付したH2およびCdはそれぞれ遊離塩基およびカドミウム(II)型を示す。Pyr=ピリジン。
【0124】
17.(a)Scheer,H.;Katz,J.J.In Porphyrins and Metalloporphyrins;Smith,K.,編;Elsevier:Amsterdam,1975;第10章.(b)Janson,T.R.;Katz,J.J.;参考文献1の第4巻第1章.
18.Gouterman,M.,参考文献1の第3巻,第1章.
19.Becker,R.S.;Allison,J.B.J.Phys.Chem.1963,67,2669.
20.結晶データ:CHCl3−ヘキサンから、三斜晶系空間群,P1(no.1)に結晶化された4・NO3は、a=9.650(3)Å,b=10.217(4)Å,c=11.295(4)Å,α=98.16(3),β=l07.05(2),σ=92.62(3)°,v=1049.3(6)Å3),ρc=1.49g−cm−3(Z=1)を示す。ωスキャンを用いた独特の反射(5654)[4936,F≧6σ(F)]を、MoKα照射(λ=0.71069Å)により50°の2θを目標にNicolet R3m/V上193Kで収集した。慣用方法でR=0.0534に精密化した。すべての非−H原子は異方性に精密化した。H原子の位置を計算し(dC−H0.96Å)、関連C原子上に乗せて等方性に精密化した。非配位硝酸イオンは、O・・・C(CHCl3)およびO・・・H距離がそれぞれ3.00(2)Åおよび2.46(2)ÅのCHCl3溶媒分子のH−結合距離内に存在する。詳細は、補足資料参照。
【0125】
21.Hoard,J.L.,参考文献17a,第8章.
22.Hazell,A.Acta Crystallogr.,Sect.C:Cryst.Struct.Commun.1986,C42,296−299.
23.Rodesiler,P.F.;Griffith,E.H.;Ellis.,P.D.;Amma,E.L.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1980,492−493.
24.(a)Miller,J.R.Dorough,G.D.J.Am.Chem.Soc.1952,74,3977−3981.(b)Kirksey,C.H.;Hambright,P.Inorg.Chem.1970,9,958−960.
25.化合物4は、すべて窒素ドナーから誘導された最初の7配位カドミウム錯体であると思われる。他の五方複錐体カドミウム錯体の例については、(a)Cameron,A.F.;Tayler,D.W.;Nuttall,R.H.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1972,1608−1614.(b)Liles,D.C.;McPartlin,M.;Tasker,P.A.;Lip,H.C.;Lindoy,L.F.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1976,549−551.(c)Nelson,S.M.;McFall,S.G.;Drew,M.G.B.;Othman,A.H.B.;Mason,N.G.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1977,167−168.(d)Drew,M.G.B.;Othman,A.H.B.;McFall,S.G.;Mcllroy,A.D.A.;Nelson,S.M.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1977,1173−1180.(e)Charles,N.G.Griffith,E.A.H.;Rodesiler,P.F.;Amma,E.L.Inorg.Chem.1983,22,2717−2723.
26.DDQ,Ag2O,I2,PtO2,PbO2およびPh3CBF4を含む他の酸化剤では反応しないか、または分解生成物を与えたのみであった。
【0126】
27.Whitlock,H.W.;Jr.;Buchanan,D.H.Tetrahedron Lett.1969,42,3711−3714.
(実施例2)
ポルフィリンおよび関連テトラピロール系化合物は、全ての既知の大環状化合物1の中で最も広く研究されつづけているが、大型の共有結合ピロール含有系の開発に関しては、比較的僅かな研究が行なわれていただけである。2−12しかしながら、大型の、すなわち「拡張された(拡大された、拡大)」ポルフィリン様系は、いくつかの理由で重要なものである。すなわち、これらの化合物は、かなり研究されているポルフィリンの可能な芳香族類縁体として役立ち、2−8あるいはこれらの、またはその他の天然産生ピロール含有系の強力なバイオミメティックモデルとして役立つ。13,14さらに、大型ピロール含有系は、新規な金属結合性大環状化合物として、刺激的可能性を提供する。2,9−12,15たとえば、適当にデザインされた系は、大きい金属カチオンを結合することができ、そして(または)高度配位構造を安定にすることができる、多目的に使用できるリガンドとして役立ち、これらの化合物は、普通の約2.0Å半径の四座配位子ポルフィリン母体の範囲内に通常、入れられる。17生成する錯体は、重金属キレート化治療の分野に、あるいは配位化学の領域および範囲を拡大する新規な媒体として重要な用途を有する。15,18近年に、「サフィリン」3,4(sapphyrins)、「オキソサフィリン」5(oxosapphyrins)、「スマラジリン」3,4(smaragdyrins)、「プラチリン」6(platyrins)および「ペンタフィリン」7(pentaphyrin)を包含する多くの強力な五座配位子ポリピロール芳香族系が製造され、それらの金属を含有していない形態として研究されている。しかしながら、大部分の場合に、相当する金属化形態に関する情報は、ほとんどまたは全く入手することはできない。実際に、「スーパーフタロシアニン」(superphthalocyanine)のウラニル錯体が、製造され、構造確認されている唯一の金属含有ペンタピロール系である。2不幸なことに、この「スーパーフタロシアニン」系は、その遊離塩基またはその他の金属含有系として明らかに存在することはできない。従って、多くの非芳香族系のピリジン誘導五座配位子系が従来報告されているにもかかわらず19,20、本発明の以前において、多目的に使用でき、構造確認されている五座配位子芳香族リガンドは入手することができなかった。本明細書に記載されている本発明の態様はまた、種種の金属カチオンを結合することができ、かつまた或る範囲の普通ではない配位構造を安定化することができる、新規な種類のピロール由来芳香族「拡大ポルフィリン」の開発を示す。本発明者等は、最近に、化合物2A 11の合成を報告した(例1参照)。この化合物は、新規なポルフィリン様モノアニオン性芳香族五座配位子リガンドであり、慣用名として「テキサフィリン」(texaphyrin)(大型テキサス型ポルフィリン)18と命名され、その七配位カドミウム(II)ビスピリジン五角両錐形錯体5aAの構造が報告された。可能なキレート化にもとづく治療用途における、21,22そしてまた天然の金属タンパク質のための強力な構造探索子として(113Cd NMR分光測定法を使用)23、重要であることから、このカドミウム含有「テキサフィリン」系の配位性質がさらに研究された。この例は、正式には5aAの配位的不飽和類縁体に相当するモノ結合六配位カドミウム(II)ベンズイミダゾール五角錐形カチオン性錯体4bAの単結晶X線回折分析によって、その特徴を報告するものである。本例は、ピリジン(pyr)およびベンズイミダゾール(BzIm)の両方に対する溶液塩基結合(Keq.)研究の結果を包含しており、構造に係る初めての報告であり、本例の場合には、同一金属カチオンの支持に、これらの2種の、独特の、しかし未知の19、配位構造体を使用した。本発明の化合物および錯体の図解式構造は、第4図に1A、2A、3A、4aA、4bA、5aAおよび5bAで示されている。
【0127】
大環状化合物の還元sp3形態(1A)14を、空気飽和クロロホルム−メタノール中で塩化カドミウムまたは硝酸カドミウムで処理すると、両方の場合に、緑色溶液が生成される。シリカゲルによるクロマトグラフィ精製およびクロロホルム−ヘキサンからの再結晶の後に、五配位「テキサフィリン」クロライドまたはナイトレート錯体、3A・Clおよび3A・NO3が、ほぼ25%の収率で、分析的に純粋な形態で得られた(デミハイドレートとして)。しかしながら、金属挿入処理を上記と同一の反応条件および精製条件の下に(ただし、クロマトグラフィはSEPHADEXを用いて行なう)、行なうと(硝酸カドミウムを使用)、結晶および非結晶形の緑色固形混合物が得られた。純粋な五配位錯体として分析することには失敗したが、この明らかに不均質のカサ高の物質を過剰のピリジンで処理し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶させると、ビスピリジン錯体5aA−NO3が実質的に定量的収率で、暗緑色結晶として生成された。先に報告されているように11(例1参照)、このビス結合七配位錯体に予想される五角両錐形配位構造を確認し、そしてまた大環状「テキサフィリン」リガンド2Aの平面状五座配位子の特徴(第5図参照)、を確認するために、X線結晶回折分析を行なった。
【0128】
上記中間体生成物の特徴を測定する第一段階として、上記不均質固形混合物から、単結晶を単離し、X線回折分析に付した。このようにして得られた構造(第6図)は全く予想外のものであった。すなわち、六配位五角錐形カドミウム(II)錯体(4bA・NO3)が見出され、この錯体では、2つの可能なアキシャル結合部位の一つが、中央Cd原子に配位されていない、ナイトレートの対アニオンにより結合されているベンズイミダゾール(BzIm)によって占領されている。この五配座「テキサフィリン」大環状化合物の第一配位窒素は次いで、カドミウムの周囲の配位球状圏を完成させる。第六図に示されているように、このリガンドの5個の配位原子はCd原子に結合しており、このCd原子は、ベンズイミダゾールリガンドの配位窒素に対して、N5配位原子面から0.338(4)Å離れて、この大環状化合物の面の外部にある。この面からの突出距離は、CdTPP−(ジオキサン)25に見い出されるものより小さく(0.32Å)26(しかしCdTPP27に見い出されるものより小さい)、相当するビスピリジン五角両錐形付加物5aA−NO3に関して見い出される数値と格別に差違を有する。この初期の構造において、カドミウム(II)カチオンは実質的に、大環状化合物の面内にあることが見い出されていた(第6図参照)。カチオン4bAはまた、5aAと異なっている。すなわち、結晶格子内で、2個の分子は、約3.38Åのバンデルワールス距離で分離されて、面対面の様相で相互に積重されいる。その結果として、いづれか特定の分子中のアルキル基はいずれも、大環状化合物の面のBzIm担持側に置き換えられる。しかしながら、ビスピリジン構造に共通して、11カチオン4bAでは、大環状化合物のsp2原子が、C11に見い出される平面度(planarity)(0.154(13)Å)から最大偏差で実質的に平坦である(第8図)。さらにまた、錯体5aA−NO3に共通して、五個のリガンド窒素は、約2.42Åの中心から窒素までの半径をもって、ほぼ円形の結合空間を定めており、この半径はメタロポルフィリンに見い出されるものよりも、ほぼ20%大きい。
【0129】
上記構造結果は、「テキサフィリン」2Aの元の構造が大きい22π電子(またはベンズアニール化18π−電子)芳香族ポルフィリン様リガンドであることを支持している28。これらの結果はまた、この「拡大ポルフィリン」が、カドミウムの周囲で、1種以上の「異常な」配位構造を支持することができることを明白に証明している。
【0130】
上記構造結果はまた、金属挿入およびセファデックスによる精製の後に得られる不均質カドミウム含有中間体の特徴の洞察手段を提供する。すなわち、この物質の少なくとも或る部分は六配位BzIm結合錯体4bA・NO3からなる。カチオン4bA中の配位したBzImは金属挿入および付随する酸化を含むリガンド分解反応(この反応には多分、トリピランα−炭素の求電子性芳香族脱アシル化および引続く、オルト−フェニレンジアミンとの縮合が含まれる)から誘導されるものとする確かな仮説が考えられるが、この六配位体を検討しても、このようなBzIm配位が化学的に妥当であることは、疑いの余地もないものとして確定することはできない。過剰のピリジンの存在の下では、ビス結合した七配位カチオン性種5aAは固体状態であることを好むことから、この点は特に重要である。化合物3A・NO3の、ベンズイミダゾールおよびピリジンの両方の存在下における溶液結合物性を測定することは重要であると考えた。この目的は、これらの2つのアキシャル塩基の結合差(差がある場合に)を調べることにあるばかりではなく、またCd挿入およびSEPHADEXによる精製の後に生成される中間体の不均質固形物質の特徴を明確にし、特にこの物質が五および六配位カチオン3Aおよび4bAの混合物からなるものであるという妥当な仮説を証明することにあった。
【0131】
厳密に五配位の出発カドミウム錯体たとえば対アニオンも、また偶然のリガンドもアピカル(先端)配位部位を占領していない、構造3Aによって図解式に示されている錯体の場合には、塩基結合は、下記に示す方程式(1)および(2)に従って生じるものと考えることができる。K1≧K2の条件の下に、これらのプロセスでは、先ずモノ結合した、多分五角錐形の六配位体(たとえば、4bA)の生成、引き続く5aAに対して同族の、配位的不飽和のビス結合された五角両錐形生成物の生成が順次生じるものと考えることができる。しかしながら、K2>>K1である場合には、この段階的な概念上の提案は妥当ではない。これらの条件の下では、方程式(3)に示されているように、ビス結合した物質の直接生成という点で、塩基結合を分析する方が容易になる。
L+B LB K1=[LB]/[L][B] (1)
LB+B LB2 K2=[LB2]/[LB][B] (2)
L+2B LB2 K1K2=[LB2]/[L][B]2 (3)
従って、本研究との関係において、この問題はモノ結合およびビス結合と関連する変化を探索することができる、溶液塩基分析法の結果および関連変化を用いる大体のK1,K2またはK1K2の測定の一手段になる。
【0132】
光学分光測定法は、安定な金属錯体の特徴を確認する重要な方法である。吸収変化がリガンド結合に伴なって生じる場合には、光学分光測定法はまた、塩基結合定数を測定するための、都合の良い方法を提供する。29たとえば、カドミウムテトラフェニル ポルフィリン(CdTPP)の場合には、MillerおよびDoroughは30、吸収スペクトルの2つの低エネルギーQ帯に関連する変化を追跡することによって、ベンゼン中の未結合四配位出発金属ポルフィリンに対する、1個のピリジンのアキシャル リガンドの結合に係る数値は、29.9°(K1)でほぼ2700M−1であることが測定された。興味深いことに、これらの30および後続の研究者達31は、ビス結合したCdTPP−(Pyr)2 25の生成の証拠を得ることはできなかった。従って、偽の八座配位子構造はCdTPP−(ジオキサン)2の弱く結合したアキシャル リガンドによって、固体状態で明確にされるが26、このような構造がピリジン含有ベンゼン溶液で得られるという証拠は存在しない。
【0133】
精製錯体3A・NO3の光学スぺクトル(第9図)はカドミウムポルフィリン化合物と共通の若干の要素を示す。30−34たとえば、錯体3A・NO3はCHCl3中で、425nm(ε=82,800)に強力なソレット(Soret)状高エネルギー転移を示し、この数値はカドミウムポルフィリン化合物に見い出される数値[たとえば、CdOEP25:λmax(CHCl3/MeOH v/v 19/1)=406nm(ε=272,000)]35よりも格別に小さい。この錯体はまた、さらに高いエネルギーおよびさらに低いエネルギーにおいて、格別に強力な、側面に位置するN−およびQ−様帯を示す。この最低エネルギーQ−様帯(λmax=770nm、ε=49,800)は、特に注目される。すなわち、これは、約200nm赤側に移動されており、この移動は、典型的カドミウムポルフィリン化合物に見い出される最低エネルギーQ−タイプ転移より、ほとんどさらに4強いファクターである(たとえば、CdOEP:λmax(CHCl3/MeOHv/v 19/1)=571nm、ε=15,400)35。我々は、このような様相が、18π電子ポルフィリン化合物に比較して、総合的に22π電子「テキサフィリン」中に存在する、さらに大きい非局在化芳香族系を反映するものであると考える。重要なことは、3,8,12,13,17,22−ヘキサエチル−2,7,18,23−デカメチルサフィリンのカドミウム錯体がCHCl3中で示す最低エネルギー転移が701nmであるのに対し35、「スーパーフタロシアニン」のウラニル錯体に見られる最低エネルギー転移が914nmであることにある。すなわち3A・NO3の最低エネルギー転移は、これらの2種の非常に異なる22π電子ペンタピロール対照系に見い出されるエネルギーの間の中間にある。
【0134】
不幸なことに、上記の3A・NO3の光学スペクトルと他のピロール含有芳香族大環状化合物の光学スペクトルとの間の総体的な質的類似にもかかわらず、光学分光測定はカチオン3Aのアキシャル結合性の測定手段として、無効であることが証明された。たとえば、3A・NO3のCHCl3溶液に過剰のピリジンを添加しても、ソレット様帯で約1.5nmの赤移動および最低エネルギーQタイプ帯で、3.5nmの青移動が生じるだけであった。(同様の微少の変化がまた、BzImを添加した場合にも見られる)。従って、少なくともカドミウム錯体の場合には、「テキサフィリン」拡大ポルフィリン系の光学物性はほとんど、総合的大環状骨格および結合したカチオンの電子環境の変化に対して比較的鈍感であることによって、決定されるものと見做される。
【0135】
「テキサフィリン」2Aのカドミウム(II)錯体は反磁性であり、従って1HNMR法による研究を容易に受け入れる。第10図に示されているように、3A・NO3の1H NMRは、大型芳香族ピロール含有大環状化合物に予想されるものに典型的である一般的特徴を示す。36たとえば、リガンド(1)14のsp3形態に比較して、そのアルキル、イミンおよび芳香族ピークはいづれも、下方域に移動する。しかしながら、さらに特徴的でさえあることは、遊離塩基「テキサフィリン」2およびその種々のカドミウム含有誘導体3〜5の両方に、架橋sp2混成メチンプロトンに起因する「メソ」シグナルが存在することにある。これらの架橋プロトンは、リガンド(1A)の元のsp3形態の相当する架橋メチレンシグナルよりも約7ppm下方の場で共鳴する。14実際に、3A・NO3の「メソ」シグナルは、代表的β−アルキル置換カドミウムポルフィリンのものから、ほぼ1ppm下流の場に見い出され(たとえば、Cd(OEP)25,36δ≒10.0)、反磁性のサフィリンに見い出される化学シフトの数値に近い、(たとえば、遊離塩基、反磁性サフィリンの場合には、3δ≒ll.5〜11.7)。これらの観察結果は、22π電子「テキサフィリン」系に求められる高度に局在化されたπ特性から見て、予想外のことではない。
【0136】
第11図は、3A・NO3およびカチオン4bAの結晶を得た粗生成物の1H NMRスペクトルの低場領域を比較するものである。これら2つのスペクトル間の最も衝撃的差違は、カサ高の物質のスペクトル(第11図の線B)中の6.81および7.27ppmにおける2つの鋭く、さらにきわ立ったピークおよび約6.4ppmにおける小さく広いシグナルの存在にある。これらの特徴はカチオン4bAに存在する結合したBzImから発生されるシグナルによるものと見做されるが、この結論は必ずしも明白ではない。CDCl3中において、遊離BzImの炭素結合プロトンは、7.25(m,2H)、7.75(m,2H)および8.41(s,1H)ppmで共鳴する。37高い方の場への移動はカチオン3Aへの結合を予想させるが、予想された変化が実際に見い出されたものと同じ位に大きいかは明らかではない。従って、錯体3A・NO3の完全スペクトル測定は、この点を検討し、6.4、6.81および7.27ppmのシグナルが疑いの余地のないものであるとする試みに対して重要である。これらの測定の結果を第12図および第13図に示す。
【0137】
第12図に示されている1H NMR測定の重要な特徴は、カチオン3Aに対する錯体形成においてBzImシグナルに関して生じる化学シフトの劇的変化にある。しかしながら、同様に重要なことは、前記のカサ高のカドミウム含有物質の質的特徴(第11図、スペクトルB参照)が、精製3A・NO3にほぼ3/5当量のBzImを付加した時にも再現されるという発見にある。この劇的な結果は、我我の推定によれば、X線回折分析にもとづいてなされた、カチオン4bAの推定構造を疑いの余地もなく支持する。Cd挿入およびSephadex精製の後に単離される不均質物質が確かに、五配位体と六配位体(すなわち、3A・NO3と4bA・NO3)との混合物を含むことは当初の予想とまた、質的に一致する。
【0138】
定量的Keq.測定の場合には、「メソ」シグナルに関連する変化を追跡するのが最も容易である。この場合には、迅速なリガンド交換29,30を示す鋭いピークおよび化学シフトにおける共鳴上の大きい変化が見い出された(第13図)。さらにまた、この領域には、干渉性のBzImにもとづく共鳴は見い出されない。 第14図では、錯体3A・NO3中「メソ」プロトンに係る化学シフトの変化が添加BzImの関数として示されている。得られる測定曲線は、少なくともこの塩基の場合には、アキシャル結合が2つの実質的に独立した段階状結合プロセスで生じるものと考えることができることを示している。このデータを非常に小さい変換および非常に大きい変換の両点で標準分析38すると、K1=1.8±0.2×104およびK2=13±3の数値が得られる。
【0139】
BzImの場合と真に同様に、五配位錯体3A・NO3へのピリジンの付加は、容易に検出され、充分に明確な、「メソ」シグナルの化学シフトの変化をもたらす(第15図)。しかしながら、BzImにより得られた結果とは全く反対に、この場合の結合は分離した段階的な様相で生じるものと考えることはできない。このことは、第13図を検討すると全く明白である。この第13図には、錯体13A・NO3中の「メソ」プロトンに係る化学シフトの変化がピリジン濃度の増加の関数としてグラフに描かれている。この結合等温式を標準法38によって分析すると、K1≒1.6M−1およびK1K2=315±30M−2の数値が得られる。
【0140】
上記のK1およびK2(またはK1K2)の数値は検討しているカドミウム錯体が、脱金属化に対して安定であり、およびまた方程式1および2(または3)の平衡が塩基結合条件の下に、適切であるという推定は正しいことを示す。これらの事柄の第一の点は、容易に明白にされる。すなわち、脱金属化が生じるならば、誰も塩基結合を研究しないことは明白である!。しかしながら対照実験はいづれも、「テキサフィリン」リガンドから誘導されるカドミウム錯体が格別に小さいポルフィリンのものよりもかなりの大きさの度合で安定であることを示唆した。実際に、この錯体に過剰のスルフィドアニオン(これは、CdTPPを脱金属化させる、25,35)をチャレンジさせた場合でさえも、脱金属化は生じない。39従って、このようなプロセスがピリジンまたはベンズイミダゾールの存在の下に生じることはありえないことは明らかである。第二の点は、定量的研究において特に重要である。すなわち、たとえば、出発錯体3・NO3が厳格な五配位体ではない場合には、K1(および多分、K2もまた)は、上記で暗示されているように、純粋な付加反応であると言うよりは、むしろアキシャル リガンド置換反応を示す。対照実験は、初めの五配位の予想が妥当であることを示す。3A・NO3のNH4NO3およびH2Oによる独立した測定は、「メソ」シグナルの化学シフトにおける適度の、単調な変化が≧50当量のこれらの強力な外来リガンドの付加の間に生じることを示す。40このことは、「完全」結合が1:1化学量論で生じるか(基本的に、分析データにもとづくと、H2Oの場合には、不可能)、またはこれらの錯体がCHCl3中では貧弱な配位性を有し、五配位がカドミウムに関連することを意味し、後者の考え方のほうが妥当であると見做される。
【0141】
前述の推定が妥当である範囲までは、溶液中におけるBzImおよびPyr結合に関して得られるKeq.値は、固体状態で見い出される配位挙動を正確に反映する。たとえば、1H NMR測定実験に使用される濃度(約5×10−3M)において、錯体3A・NO3は0.2モル当量だけのBzImの添加の後にほぼ20%、六配位形態に変換され、1.0モル当量の添加後には90%が変換される。重要なことに、10モル当量の存在の下でさえも、生成するモノ結合体4bAは相当するビス結合七配位形態(5bA)に、35%変換されるだけである。ベンズイミダゾールの場合には、モノ結合カチオン性錯体4bAが主要種である溶液において、大きい濃度範囲が関係を有する。しかしながら、平衡データは、溶液中では、ビス結合種5aAまたは非結合出発錯体3Aが過剰のピリジンの存在の下では独占的であることが常であることを示した。たとえば、1H NMR測定の条件の下では、錯体3A・NO3は、ピリジン3当量の添加後に五角両錐形生成物5aA・NO3にほぼ5%変換され、10当量の添加後には、この種にほぼ35%変換される。
【0142】
立体因子および電子因子の両方がピリジンおよびベンズイミダゾールに対する異なった結合性の説明の助けになりうる。特に、ヘム(heme)モデル化学41の領域において、金属ポルフィリンを用いる相当な研究が、ピリジン型塩基に比較してイミダゾール型リガンドの配位能力が強いことを証明するために用いられた。これは、後者の系の貧しいπ塩基度に一般に帰因することが見い出された。41,42従って、カチオン3Aに対するBzIm結合に見い出された、大きいK1値(ピリジンに比較して)は、少し意外なことになる。しかしながら、さらに問題になることは、この塩基のK2が非常に小さいという発見にある。一目見ただけは、モノ結合はこの強いπ塩基の存在の下に安定であることは妥当ではないように見える。これは、配位的に飽和された七配位種への選択的変換がピリジンの存在の下に生じることによる。しかしながら、第6図に示されている結晶構造を検討してみると、この説明の基礎が判る。すなわち、BzIm残基は4bA中の大環に対しほぼ垂直にあり、ピロール環含有N23上で配向されている。その結果として、BzIm塩基のH8Aはこの環の7個の原子にきわめて接近しており、N23(2.65(2))、C24(2.69(2))、およびC22(2.81(2))とほとんど接触する(Å)。従って、ヘムモデルおよび妨害イミダゾールの場合に関して充分に報告されているように、41b,43立体障害は過剰のBzImの存在の下における六配位を好む基本的因子であるように見える。すなわち、立体効果および電子効果の両方が、本発明の「拡大ポルフィリン」系におけるBzImとPyrとの見掛け上の非常に異なる結合挙動の区別に役立つ。これらの効果はまた、中でも、固体状態での錯体4bA・NO3および5aA・NO3の形成および選択的単離に対して有理であることを示す。
【0143】
五座配位子22π電子ポルフィリン様「テキサフィリン」大環状化合物は、カドミウム(II)のための効果的で、多目的に使用できるリガンドである。このリガンドは、このカチオンの3種の新奇な配位構造、すなわち五角形、五角錐形および五角両錐形、の形成を、支持することができる。これらの形態の第一の形態は、現在、分析的、液相研究にもとづいて推定されているだけであるが、後の2種の構造は、単結晶X線回折分析によって、溶液状態および固体状態の両方で特徴確認されている。従って、我々の知識によるかぎり、「テキサフィリン」系は同一中心金属カチオンに対して五角錐形構造および五角両錐形構造を支持できる、構造的に開示された、最初の系である。この独特のケランド(cheland)はまた、数種の別の重要な性質を有する、そのカドミウム錯体をもたらす。
【0144】
これらの重要な性質には、異常に小さいエネルギーのQタイプ帯を有する光学スペクトルおよび相当するカドミウム(II)ポルフィリンに比較して、はるかに大きい脱金属化に対する安定性が含まれる。この第一の性質は、本発明の「テキサフィリン」(2A)またはその他の「拡大ポルフィリン」系の重要な用途は小さいエネルギー吸収物性が有利である光合成モデル形成の研究または光力学的治療の分野に見い出されるべきであることを示唆している。44上記第二の性質は、現在開示されている系に類似する系が、カドミウム、毒物学的に重要であり、21水銀および鉛の陰にあるだけで、現在も指摘されている金属および、あるとしても治療法22が、現在数少ない金属のための有効なキレート化にもとづく解毒治療の開発の基礎を提供しうることを示唆している。
【0145】
電気スペクトルは、Beckman Du−7分光光度計で記録した。プロトンおよび13C NMRスペクトルは、内部標準としてCHCl3を使用し(1Hの場合にはδ=7.26ppm、13Cの場合には、77.0ppm)、CDCl3中で得た。プロトンNMRスペクトルは、Nicolet NT−360(360MHZ)またはGeneral Electric QE−300(300MHZ)分光計で記録した。炭素スペクトルは、Nicolet NT−500分光計を使用し、125MHZで測定した。高速原子衝撃質量分析(FAB MS)は、Finnigan−MAT TSQ−70装置およびマトリックスとして、3−ニトロベンジルアルコールを使用して行なった。元素分析は、Galbraith Laboratoriesによって行なわれた。X線構造は下記に、および参考文献11および14に記載されているように、解析した。
【0146】
溶剤および反応剤はいづれも、市場から購入した試薬級品質のものであり、これらは、さらに精製することなく使用した。sigma親油性Sephadex(LH−20−100)およびMerckタイプ60(230〜400メッシュ)シリカゲルを、カラムクロマトグラフィで使用した。sp3形態のリガンド(1A)は、先に記載されている酸触媒法14を用いて≧90%の収率で生成した。現在の高い方の収率は、プロセスにおける基本的変更に由来するものではなく、この特別のキイの反応を用いる実験が数多く行なわれたことを単に反映するものである。
【0147】
4,5,9,24−テトラエチル−10,23−ジメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.1.1.3,6.18,11.01 4,19]ヘプタコーサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,,16,18,20,22(25),23−トリデカエン、遊離塩基「テキサフィリン」2Aの製造。
【0148】
大環状化合物1A 14(50mg、0.1ミリモル)をメタノール/クロロホルム(150ml、v/v 2/1)中で、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン(「プロトンスポンジ」)の存在の下に、室温で一日間攪拌した。この反応混合物を次いで、氷水中に注ぎ入れた。有機層を分離し、塩化アンモニウム水溶液で、次いでブラインで洗浄した。回転蒸発器上で濃縮した後に、粗生成物を、SEPHADEX上で、溶出剤として、初めに純粋クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v 10/1)を用いるクロマトグラフィによって精製した。数種の早い方の赤色帯部分は捨て、暗緑色帯部分を採取し、減圧で濃縮し、次いでクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、sp2形態のリガンドを暗緑色粉末として、3〜12%の範囲の収率で得た。この良好な方の収率はまれな場合に得られるだけである。2Aに関して1H NMR(CDCl3):δ=0.90(1H,br.s,NH),1.6−1.8(12H,m,CH2CH3),3.05(6H,s,CH3),3.42−3.58(8H,m,CH2CH3),8.25(2H,m,phen.CH),9.21(2H,s,CH=N,9.45(2H,m,phen.CH),11.25(2H,s,CH=C);C.I.MS(CH4):491(C32H35N5・H+の計算値:490):FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e 512(C32H34N5Na+の計算値:512);
IR(KBr)ν=3420,2960,2920,2860,1600,1560,1540,1370,1350,1255,1210,1080,1050,980,940,905,750cm−1;UV/VIS(CHCl3)λmaxnm(ε)327.0(30,700);422.5(60,500);692.0(10,100);752.0(36,400).
リガンド2Aにカドミウムを結合させる実験を行なった。数ミリグラムの化合物2Aを、前記で概述した直接挿入法に従い、クロロホルム/メタノール中で過剰量の塩化カドミウムとともに攪拌した。しかしながら、二日後でさえも、UV/VIS(751におけるQタイプ帯の追跡)は、金属挿入がほとんど、または全く生じないことを示した。化合物、すなわちリガンド2Aの製造が困難であり、ここに記載した直接挿入法の成功が自明であることから、他の金属化法を検討する実験は行なわなかった。
【0149】
錯体3A・Clを下記のとおりにして製造した。sp3形態のリガンド(1A)1 4(40mg、0.08ミリモル)をクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 2/1)中で塩化カドミウム(21.4mg、0.08ミリモル)とともに、一日間攪拌した。この暗緑色反応混合物を、回転蒸発器上で、減圧の下に濃縮し、次いでシリカゲルに通し、溶出剤として初めに純粋クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v 10/1)を用いてクロマトグラフィ処理した。数種の先行する赤色帯部分を捨てた後に、暗緑色帯部分を採取し、減圧で乾燥させ、化合物3A・Clを得た。この生成物をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、分析的に純粋な化合物3A・Clを暗緑色粉末として、24%の収率で得た。3A・Clに関して:1H NMR(CDCl3):δ=1.55−1.67(12H,m,CH2CH3),3.03(6H,s,CH3),3.04−3.55(8H,m,CH2CH3),8.27(2H,m,phen.CH),9.23(2H,s,CH=N),9.40(2H,m,phen.CH),11.30(2H,s,CH=C);13C NMR(CDCl3):δ=9.8,17.3,18.1,19.1,19.2,117.6,117.8,128.4,132.7,138.2,139.3,145.4,146.7,150.5,153.5,155.0;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e602(112Cd,M+,100),601(113Cd,M+,64),600(112Cd,M+,84);IR(KBr)ν=2950,2910,2855,1635,1605,1380,1255,1210,l090,1010,795cm−1;UV/VISλmaxnm(ε)327.0(32,800);424.0(72,700);704.5(11,000);767.5(41,200);
元素分析:C32H34N5Cd・Cl・(1/2・H2O)について、
計算値:C,59.54;H,5.46;N,10.85.
実測値:C,59.78;H,5.32;N,10.80.
錯体3A・NO3を下記のとおりにして製造した。sp3形態のリガンド(1A)14(40mg、0.08ミリモル)をクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 1/2)中で、硝酸カドミウム四水和物(31mg、0.1ミリモル)とともに一日間攪拌した。この暗緑色の反応混合物を次いで上記のとおりに、濃縮し、次いでシリカゲルに通しクロマトグラフィ処理した。生成する粗製物質を次いで、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、分析的に純粋な3・NO3を27%の収率で得た。453A・NO3に関して:1H NMR(CDCl3):δ=1.55−1.70(12H,m,CH2CH3),3.04(6H,s,CH3),3.42−3.55(8H,m,CH2CH3),8.27(2H,m,phen.CH),9.20(2H,s,CH=N),9.30(2H,m,phen.CH),11.07(2H,s,CH=C);FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e 602(114Cd,M+,100),601(113Cd,M+,100),600(112Cd,M+,87):IR(KBr)ν=2960,2920,2860,1600,1550,1440,1375,1200,1130,1075,l040,975,930,900,740cm−1;UV/Vis λmaxnm(ε)=328.0(39,900),425.0(82,800),706.0(14,400),770(49,800);
元素分析:C32H34N5Cd・NO3・(1/2H2O)について
計算値:C,57.19;H,5.25;N,12.50.
実測値:C,57.12;H,5.19;N,11.80.
錯体3A・NO3の脱金属化の実験を行なった。遊離sp2架橋リガンド2Aを得るための実験において、上記錯体をクロロホルム中で、硫化ナトリウムの存在の下に、次いで独立してチオ硫酸ナトリウムとともに、数時間攪拌した。光学物性における格別の変化は見い出されなかった。このことは、アキシャル結合における変化が生じる可能性を排除しないけれども、これらの観察結果は、この反応条件の下に、脱金属化がほとんどまたは全く生じないことを示す妥当な証拠になる。硫化ナトリウムの場合には、この決定的結論はFAB MSによってさらに支持された。すなわち、質量スペクトルにおいて、高分子量揮発性生成物に相当する証拠は、いづれも得られなかった。水性酸で処理すると、錯体3A・NO3は、加水分解を受ける(イミン残基の部位で)ものと見做れ、従って脱金属化されるように見える。しかしながら、このプロセスの速度は強力にpHに依存し、たとえばその半減期間は、約0.1N HClの存在の下に数時間の程度である。 錯体4bA・NO3の製造および単離。
sp3形態のリガンド(1A)(40mg,0.08ミリモル)を、クロロホルム/メタノール(150ml、v/v=1/2)中で、硝酸カドミウム四水和物(31mg、0.1ミリモル)とともに1日間攪拌した。この暗緑色の反応混合物を回転蒸発器上で濃縮し、次いでSephadetに通し、溶出剤として、初めに真正クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v l0/1)を用いてクロマトグラフィ処理した。数種の先行する赤色帯部分を捨た後に、暗緑色帯部分を採取し、次いで濃縮し、暗緑色固形物を得た。この生成物をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、結晶固体と非結晶固体との混合物を27%の収率で得た。
【0150】
このカサ高の物質に関して:
1H−NMR(CDCl3):δ=1.55−1.72(12H,m,CH2CH3),3.04(6H,s,CH3),3.45−3.58(8H,m,CH2CH3),6.4(ca.3/5H,br.s,BzIm),6.81(ca.6/5H,br.s,BzIm),7.27(ca.6/5H,br.s,BzIm),829(2H,m,phen.CH),9.21(2H,s,CH=N),9.32(2H,m,phen.CH),11.08(2H,s,CH=C):FAB MS(3−ニトロベンジル アルコール マトリックス、8KeV加速):m/e
602(114Cd,M+,l00),601(113Cd,M+,67),600(11 2Cd,M+,78):IR(KBr)ν=2970,2935,2875,1560,1382,1356,1300,1258,1212,1085,1050,985,910,755cm−1;uv/vis λmax nm(ε)325.0(29,000);425.0(64,400);710.5(9,800);767.5(38,500);
元素分析:
実測値: C,42.42;H,4.28;N,10.34
(C32H34N5Cd・NO3・(1/2 H2O)の計算値:C 57.19;H5.25;N 12.50;C32H34N5Cd・NO3・BzIm・CHCl3の計算値:C 53.35;H 4.59;N 12.44;C32H34N5Cd・NO3・CHCl3の計算値:C 41.26;H 3.66;N,8.25)。
【0151】
X線構造測定に使用する4bAの単結晶は、上記粗生成物のCDCl3中の濃縮溶液をn−ヘキサンにより層形成させ、次いで冷蔵庫内で数ヶ月放置することを含む二回目の再結晶の後に、上記残留非結晶物質から単離した。
【0152】
錯体5aA・NO3の製造。
上記粗製カドミウム含有錯体の製造に使用された方法と同様の方法で、とsp3形態のリガンド(1A)を、硝酸カドミウム四水和物で処理し、次いでSephadex上で精製した。この生成物のCDCl3中の0.005M試料約0.7mlに、pyr−D5 25μlを加えた。生成する溶液をn−へキサンにより層形成させ、冷蔵庫内に入れた。数ヶ月後に、緑色結晶を、ほぼ定量的収率で単離した。これらの結晶の分子組成を、先に開示されている11単結晶X線回折分析にもとづいて測定し、5a・NO3・CHCl3であることが判った。
【0153】
1H NMR(CDCl3/pyr−D5)δ=1.55−1.70(12H,m,CH2CH3),3.22(3H,s,CH3),3.45−3.56(8H,m,CH2CH3),8.40(2H,m,phen.CH),9.32(2H,s,CH=N),9.75(2H,m,phen.CH),11.62(2H,s,CH=C);UV/VIS(CHCl3−pyr v/v 10/1)λm axnm(ε)321.5(45,000),426.5(79,000),700.5(13,5000),765.5(51,900).
BzImまたはPyr−D5を有する3A・NO2の1H NMR測定を行なった。厳しく精製した錯体3A・NO3を減圧(lmmHg)の下に80℃で1日間乾燥した。この五配位錯体(3.32mg、0.005ミリモル)をCDCl3 0.7〜0.75ml中に溶解し、次いでNMR管に定量的に移すことによって、測定用出発試料を調製した。この試料に、一定量のBzImまたはPyr−D5を、量を増加しながら加え(CDCl3中の既知濃度の溶液として)、27℃で「メソ」プロトンの化学シフトを記録した。対照実験をまた、既知量のCF3CO2H、D2OおよびNH4NO3を、3・NO3の同様の保存溶液に加えることによって行なった。これらの各種1H NMR測定において、いずれか一定の塩基対リガンド比に関する絶対化学シフトは、δ−δ0の数値によって、独立した実験の間で、0.05ppmより小さく変化することが見い出された。Keq.測定(下記参照)に使用された決定的な目に見える変化は小さくさえある(一般に、≦0.003ppm)ことが見い出された。
【0154】
結合率の測定。
第14図および第15図を検討すると、これらの図面はカチオン3Aに対するBzImの結合が2種の充分に分離している平衡プロセスであると考えることができる。添加されたBzImの関数として「メソ」シグナルに関して得られた化学シフトデータを、非常に小さい変換と非常に大きい変換との両方について分析した。方程式4(これは、参考文献38の方程式5.13に相当する)に従い、(δ−δ0)/[BzIm]対(δ−δ0)をグラフに描くことによって標準Scatchard(シグナル逆数)グラフを作成し、傾斜の絶対値としてKを、そしてまたインターセプトとして(δω−δ0)Kを得た。
(4)(δ−δ0)/[BzIm]=−K(δ−δ0)+(δ∞−δ0)K
この式において、δは検出された化学シフトであり、δ0は純粋な五または六配位出発物質錯体(3A・NO3または4bA・NO3)の初期化学シフトであり、δωは最終モノ−またはビス−結合した錯体4bA・NO3または5aA・NO3に関して計算された化学シフトであり、Kは問題の平衡定数であり、そして[BzIm]は、遊離の、錯体化されていないベンズイミダゾールの濃度である。小さい変換域および大きい変換域の両方において、添加べンズイミダゾール(「BzIm」)に関して、確実に[BzIm]を表わすためには、結合ベンズイミダゾールに係る補正が必要であることが判った。この補正は、方程式5および6に示されている表現法に従い簡単な方法で行なった。
【0155】
低[BzIm]0において、
[BzIm]=[BzIm]0−[lig]0(δ−δ0)/(δ∞−δ0)(5)
高[BzIm]0において、
[BzIm]≒[BzIm]0−[lig]0(6)
上記式において、[lig]0は、出発五配位リガンド3A・NO3の濃度を表わす。
【0156】
[BzIm]に係る、これらの補正値を使用して、低および高[BzIm]0条件について、それぞれR≧0.99および0.98として、直線状Scatchardグラフを得た。これにより、1.80×104M−1および12.9M−1のK1およびK2値が得られる。このK1値は全く信頼できるものと考えられる(推定誤差≦15%)。しかしながら、BzImの溶解性が低く、かつまた5aA・NO3生成に関連して、不完全な測定が生じるので、K2に関して得られる数値は幾分あいまいである(推定誤差≦25%)。49
第16図に示されている、添加「pyr」の関数としての、「メソ」プロトン化学シフトの変化は、2種の区別できる結合性が明確に存在していないことを示している。さらにまた、予想されたように、このデータを、方程式1に従う単純なモノ結合プロセス(6CN物質を生成するために)に当てはめる実験は行なわなかった。従って、2種の相反する平衡プロセスの観点から、これらのデータを分析する必要がある。この分析はConnorsにより概述されている慣用の反復法を用いてなされた。38この場合に、問題の方程式は、NMR分析に適したConnorsの方程式4.31および4.32に相当する38:
上記各式において、δは見い出された化学シフトであり、δ0は純粋五配位出発錯体3・NO3の初期化学シフトであり、Δ11は純粋な推定上のモノ結合六配位種の生成に相当する総化学シフト差違であり、Δ12は初期五配位物質からのビス結合カチオン性種5aの形成に相当する総化学シフトであり、そして「pyr」は、遊離ピリジン濃度である。「pyr」の正確な数値は方程式938により与えられ、この式において、[pyr]0は添加ピリジンの総濃度であり、そして[lig]0は出発五配位リガンド3A・NO3の濃度を表わす。
しかしながら、結合等温式(第16図)を検討すると、大体の[pyr]≒[pyr]0が、測定範囲の多くにわたり、妥当に有効であることが示唆された。従って、方程式7の初期反復解式(1/[pyr]−K1Δ11/(δ−δ0)対[pyr]{Δ12/δ−δ0)−1をプロットし、それぞれ傾斜およびインターセプトとしてK1K2および−K1を得る)および方程式8の初期反復解式((δ−δ)0{1+K1[pyr]+K1K2[pyr]2}/[pyr]対[pyr]をプロットし、それぞれ傾斜およびインターセプトとして、K1K2Δ12およびK1Δ11を得る)を、この極めて簡易化された前提を用いて行なった。これは迅速に集められ、K1=1.5M−1およびK1K2=308M−2の初期未補正値が得られた。これらの数値は、実験条件([3A・NO3]=0.005M)の下に、大体の[pyr]≒[pyr]0が極めて重要な条件で、すなわち3<[ピリジン]/[リガンド]<10および3A・NO3中0.005Mで≦4%内に対し有効であることを確証した。補正がこの小さいパーセンテージでなされた場合には、得られる最終のK1値は≒1.6M−1であり、K1K2値は=315M−2である(補足試料参照)。我々は、K1K2値は充分に決定されているが(推定誤差≦10%)、このデータはK1(およびK2)を正確に定めることができないものである(推定誤差≒50%)ことを強調することは重要であると考える。しかしながら、この不確実性は、本明細に記載されている中心的結論の価値を損うものではない。
【0157】
錯体4bAに関するX線実験。
4bA・NO3・CHCl3:C40H41N8O3Cl3Cdに関して、M=900.57。このデータの結晶は、0.06×0.22×0.44mmの寸法の非常に暗い緑色の板状物であり、CHCl3−ヘキサンからの、おそい拡散によって成長させ、上記したようにして、付随する非結晶物質から分離した。データは、グラファイト モノクロメーターを備え、Mo Kα放射線(λ=0.71069Å)およびNicolet LT−2低温放出系を用いて、Nicolet R3回折計で採取した。格子定数は、19.2°<2θ<24.4°により、26反射の最小自乗法リファインメントから得た。スペース基は、
Z=2,F(000)=920,a=11.276(4),b=12.845(3),c=14.913(4)Å,α=84.82(2),β=69.57(2),λ=85.84(2)°,v=2014(1)Å,ρC=1.48g−cm− 3を有する、三斜晶系P1(No.2)であった。
【0158】
データはオメガ スキャン技法(7191反射、6566ユニーク、Rint=0.064),2θ範囲4.0〜50.0°、3〜6°/分で1.2°ωスキャン(h=0→14、k=−15、1=−18→18)を用いて採取した。4種の回折点(−2,2,0;3,2,3;2,−3,−1;−1,0,4)は、146反射毎に再測定し、装置および結晶の安定性を調べた。
【0159】
Iに対する減衰補正範囲は、09863〜1.076であった。データはまた、Lp効果および吸収(結晶形状にもとづく、透過因子範囲0.8533〜0.9557、μ=7.867cm−1)に関して補正した。F0<6σ(F0)を有する回折点は無視した(3272反射)。構造は重原子およびFourier法によって解析し、253および287のブロックで、非H原子に関する異方性熱パラメーターにより、フル−マトリックス最小二乗法によってリファインした(ただし、1個のピロール環の乱れたNO3基のO3Aおよび乱れたエチル基の末端C原子、C29(部位占有因子0.44(2))、C29A、C31(部位占有因子0.37(2))およびC31Aは除く)。ナイトレートは0.45(2)のマイナー配向(Aの印をつけたO原子)に関する部位占有因子により、N原子は(N 1B)の2つの配向の周囲で乱れていた。H原子は対応するC原子に依存する等方性熱パラメーターを用いて計算し、リファインした。CHCl3溶剤は、0.43(2)のマイナー成分(Aの印をつけたCl原子)に関する部位占有因子により、C−Cl結合軸(C1C〜C11)の範囲で回転することによって、乱される。これらの乱れによって、クロロホルムH原子の位置は計算できなかった。W=1/[(σ(F0))2+.0118(F2)]およびσ(F0)=0.5KI−1/2(σ(I))の場合には、ΣW(1F01−1FC1)2は最少になった。(1ピーク−1バックグラウンド)×(スキャン速度)およびKによって定められる強度Iは、Lp効果、吸収および減衰による補正である。シグマ(I)は、統計学的計算から推定した:σ(I)=(1ピーク+1バックグラウンド)1/2×(スキャン速度)]。3294反射に関する最終R=0.0781、WR=0.114(Rall=0.143、WRall=0.176)および適合良好度=1.00。最終リファインメントサイクルにおける最大[Δ1σ]<0.1および最終ΔFマップにおける最小ピークおよび最高ピークはそれぞれ、−0.97および1.69e−/Å3であった(Cd原子の領域)。データ換算、構造解折および初期リファインメントは、NicoletのSHELXTLPL−US50ソフトウェア パッケージを用いて行なった。最終リファインメントはSHELX7651を用いて行なった。非H原子のニュートラル原子散乱係数は、CromerおよびLiberman53からの変則分散補正により、CromerおよびMann52から得、一方、H原子の散乱係数は、Stewart.DavidsonおよびSimpson54から得、線状吸収係数はInternationalTables For X−ray Crystallography(1974)55から得た。最小二乗プラン プログラムはCordes56によって提供され、他のコンピューター プログラムはCtadolおよびDavis57の参照刊行物11から得た。
【0160】
表1には、4bA・CHCl3の非水素原子の区分配位または同価の等方性熱パラメーター(A2)が示されている。表2には、カチオン4bAの非水素原子の結合長さ(Å)および角度(°)が示されている。
【0161】
【表1】
【0162】
4bA・NO3・CHCl3の非水素原子の区分配意および等方性もしくは同価の等方性a熱パラメータ(Å2)
a 異方性原子の場合には、U値は
Ueq=1/3ΣiΣjUijai*aj*Aijとして計算されたUeqであり、この式において、Aijは、ithおよびjth直接の空間単位格子ベクターのドット積(内積)である。
【0163】
【表2】
【0164】
カチオン4bAの非H原子の結合長さ(Å)および角度(°)。
【0165】
新規芳香族22π−電子五座配位子「拡大ポルフィリン」リガンド(2A)から誘導される六配位五角錐形カドミウム(II)カチオン性錯体4bAのX線回折分析による特徴を説明する。X線構造は、大環状化合物の5個の中心配位原子がカドミウム(II)カチオンに配位しており、このカドミウム(II)カチオンはこの大環状化合物の平均平面上で0.334(2)Åにあり、さらにアピカル ベンズイミダゾール リガンドにより結合されていることを示す。相当する五角両錐形付加物5aAにおいて真実であるように、カチオン4bAのX線構造は、この大環状リガンドが、≒2.42Åの中心−窒素半径を有するほぼ円形の空間を定めている5個の配位窒素原子を有し、ほぼプラナーである(最大偏差、C15に関して0.154(13)Å)ことを示す。このX線回折分析に使用した4bA・NO3の結晶は、sp3形態のリガンド(1A)をCd(NO3)2・(H2O)4で処理し、引続いてセファデックス上で精製した後に得られる結晶物質を非結晶物質との不均質混合物から単離した。このカサ高の物質のCDCl3中におけるプロトンNMRスペクトルは、独立して製造された純粋な五配位錯体3Aのものと実質的に同一であるが、結合したベンズイミダゾール リガンドに帰因する、6.81および7.27ppmにおける2つの鋭いピークならびに約6.4ppmにおける広い特徴の存在を示した。これらの特徴的なリガンド特性は、ほぼ3/5当量のベンズイミダゾールを含有する純粋な五配位錯体3Aの測定においても再現される。この発見は、4bA・NO3結晶を単離した、カサ高の物質が結晶形および非結晶形の、六および五配位種の混合物からなることを示唆しており、カチオン4bAに見い出される結合ベンズイミダゾールが、金属挿入および付随するリガンド酸化にともなう分解的副反応に由来するものであるとする仮説を支持している。これらの測定から、五配位カチオン性錯体3Aに対する第一当量および第二当量のベンズイミダゾールの結合に関する、順次形成定数(K1およびK2)値は、それぞれ1.8×104M−1であることが決定された。3A・NO3にピリジンを錯化する場合には、同様の1H−NMR測定から1.6M−1および315M−2のK1・K2値がそれぞれ決定された。これらの結果は、ベンズイミダゾール含有クロロホルム溶液中で、拡張された濃度範囲が存在し、ここでは五角錐形錯体4bAが主要カドミウム含有種であり、他方で、ピリジンの存在の下では、未結合錯体3Aまたは配位的に飽和されている五角両錐形種5aAが溶液中で優勢であることを示している。
【0166】
下記にあげた参照公開刊行物を、引用理由に対してここに引用して組入れる。
【0167】
(文献(参照刊行物))
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3.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429−6436.現時点まで、これらのポテンシャル五座配位子リガンドの中で、三配位した金属錯体だけが製造されている。
4.Broadhurst,M.J.;Grigg,R.;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,;1972,2111−2116.
5.Broadhurst,M.J.;Grigg,R.;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,23−24;Broadhurst,M.J.;Grigg,R.;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,1480−1482;Broadhurst,M.J.;Grigg,R.;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1970,807−809.
6.(a)Berger,R.A.;LeGoff,E.Tetrahedron Lett.1978,4225−4228.(b)LeGoff,E.;Weaver,O.G.J.Org.Chem.1987,710−711.
7.(a)Rexhausen,H.;Gossauer,A.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1983,275.(b)Gossaur,A.Bull.Soc.Chim.Belg.1983,92,793−795.
8.Gosmann,M.;Franck,B.Angew.Chem.1986,98,1107−1108;Angew.Chem.Int.Ed.Eng.1986,25,1100−1101.
9.さらに小さい中央空間を有するポルフィリン様系の例に関しては、次の刊行物を参照する:
(a)Vogel,E.;Kocher,M.;Schmickler,H.;Lex,J.Anger.Chem.1986 98,262−263;Angew.Chem.Int.Ed.Eng.1986,25,257−258.(b)Vogel,E.;Balci,M.;Pramod,K.;Koch,P.;Lex.J.Ermer,O.Angew.Chem.1987,99,909−912;Angew.Chem.Int.Ed.Eng.1987,26,928−931.
10.大形の非芳香族ピロール含有大環状化合物の例に関しては、次の刊行物を参照する:
(a)Acholla,F.V.;Mertes,K.B.Tetrahedron Lett.1984,3269−3270.(b)Acholla,F.V.;Takusagawa,F.;Mertes,K.B.J.Am.Chem.Soc.1985,6902−6908.(c)Adams,H.;Bailey,N.A.;Fenton,D.A.;Moss,S.;Rodriguez de Barbarin,C.O.;Jones,G.J.Chem.Soc.,Dalton.Trans.1986,693−699.(b)Fenton,D.E.;Moody,R.J.Chem.Soc.,Dalton trans.1987,219−220.
11.Sessler,J.L.;Murai,T.;Lynch,V.;Cyr,M.J.Am.Chem.Soc.1988,110,5586−5588.
12.Sessler,J.L.;Cyr,M.;Murai,T.Comm.Inorg.Chem.,in press.
13.Stark,W.M.;Baker,M.G.;Raithby,P.R.;Leeper,F.J.;Battersby,A.R.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1985,1294.
14.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394−4397.
15.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.;Murai,T.J.Coord.Chem.,in press.
16.Sessler,J.L.;Murai,T.Tetrahedron Lett.,to be submitted.
17.Hoard,J.L.In Porphyrins & Metalloporphyrins;Chapter 8,Smith.K.,Ecl.;Elsevin,Amsterdam,1975.
18.Chemical & Engineering News August 8,1988,26−27.
19.精査のためには、次の刊行物を参照する:
(a)Drew,M.G.B.Prog.Inorg.Chem.1977,23,67−210.(b)Melson,G.A.in 「Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds」,Melson,G.A.,Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 1.(c)N.F.Curtis,in 「Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds」,Melson,G.A.Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 4.(d)Nelson,S.M.Pure and Appl.Chem.1980,52,2461−2476.(e)Lindoy,L.F.in 「Synthesis of Macrocycles」,Izatt,R.M.and Christensen,J.J.,Eds.,J.Wiley:New York,1987,Chapter2.(f)Newkome,G.R.;Gupta,V.K.;Sauer,J.D. 「Heterocyclic Chemistry」,Newkome,G.R.,Ed.;J.Wiley:New York,1984,Vol.14,Chapter 3.(g)De Sousa,M.;Rest,A.J.Adv.Inorg.Chem.Radiochem.1978,21,1−40.(h)参照刊行物12もまた参照できる。
20.ビピリジン−誘導系および関連五座配位子リガンドの最近の例に関しては、次の刊行物を参照する:
(a)Ansell,C.W.G.;Lewis,J.;Raithby,P.R.;Ramsden,J.N.;Schroder,M.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1982,546−547.(b)Lewis,J.;O’Donoghue,T.D.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1980,1383−1389.(c)Constable,E.C.;Chung,L.−Y.;Lewis,J.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1986,1719−1720.(d)Constable,E.C.;Holmes,J.M.;McQueen,R.C.S.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1987,5−8.
21.Ochai,E.−I. 「Bioinorganic Chemistry」,Allyn and Bacon:Boston,1977,pp.475−476.
22.Klaasen,C.D.in 「The Pharmacological Basis of Therapeutics,6th Edition」,Gilman,A.G.;Goodman,L.S.;Gilman,A.,Eds.,Macmillan:New York,1980 Chapter 69,pp.1632−1633.
23.最近の情報を得るためには、下記の刊行物を参照する:
(a)Summers,M.F.Coord.Chem.Rev.1988,86,43−134.(b)Ellis,P.D.Science 1983,221,1141−1146.(c)Ellis,P.D.in 「The Multinuclear Approach to NMR Spectroscopy」,Lambert,J.B.;Riddell,F.G.,Eds.;D.Reidel:Amsterdam,1983,pp.457−523.
24.注目されるべきことに、五角錐形および五角両錐形の構造が、2種の非常に密接に関連する五座配位子大環状シツフ塩基リガンドで見い出されており、このリガンドは環の大きさの点で異なっている(16原子対17原子);この点については下記の刊行物が参照できる:(a)Nelson,S.M.;McFall,S.G.;Drew,M.G.B.;Othman,A.H.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1977,167−168,and(b)Drew,M.G.B.;McFall,S.G.;Nelson,S.M.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1977,575−581.
25.OEP=オクタエチルポルフィリン、TPP=テトラフェニルポルフィリン、およびPPIXDME=遊離塩基およびカドミウム(II)形態にそれぞれ関連する、予め固定されているH2およびCdを有するプロトポルフィリン IX ジメチル エステル;BzIm=ベンズイミダゾール;pyr=ピリジン。
26.Rodesiler,P.F.;Griffith,E.H.;Ellis,P.D.;Amma,E.L.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1980,429−493.
27.Hazell,A.Acta Cryst.1986,C42,296−299.
28.「テキサフィリン」2およびその誘導体は、総合的22π電子芳香族系と同様に、ベンズアネレート化[18]アニュレンとして表わすことができる。予備分子電子軌道画数計算およびジアミノマリオニトリルから誘導される3・NO3の18π電子大環状類縁体に対するスペクトル(692nmの最低エネルギーQタイプ遷移が見い出される)の比較にもとづいて、現時点で我々は22π電子式を好んでいる:
Hemmi,G.;Krull,K.,Cyr,M.,Sessler,J.L.,unpublished results.
29.Drago,R.S. 「Physical Methods in Chemistry」,W.B.Saunders:Philadelphia,1977,Chapter 5.
30.Miller,J.R.;Dorough,G.D.J.Am.Chem.Soc.1952,74,3977−3981.
31.Kirksey,C.H.;Hambright,P.Inorg.Chem.1970,9,958−960.
32.一般的議論に関しては、下記の刊行物を参照する:Gouterman,M.In ref.1,vol.III,Chapter 1.
33.Dorough,G.D.;Miller,J.R.J.Am.Chem.Soc.1951,73,4315−4320.
34.Edwards,L.;Dolphin,D.H.;Gouterman,M.;Adler,A.D.J.Mol.Spectroscopy,1971,38,16−32.
35.Johnson,M.R.;Cyr,M.;Sessler,J.L.,unpublished results.
36.(a)Scheer,H.;Katz,J.J.In ref.17,Chapter 10.(b)Janson,T.R.;Katz,J.J.Inref.1,Vol IV,Chapter 1.
37.「Aldrich Library of NMR Spectroscopy,2nd ed.」,Pouchert,C.J.,Ed.,Aldrich Chemical Co.:Milwaukee,1983;Vol.2,p.558.
38.Connors,K.A. 「Bindihg Constants」,J.Wiley:New York,1987.
39.我々は、この安定性の多くが運動学的因子に帰因するものとする。本明細書に詳述したように、予め形成されている「テキサフィリン」2中へのCd25の挿入は、認識できる速度では生じなかった。このことは、運動学的障害が金属挿入に関して実質的であることを示唆している;同一のことが錯体分解に関してもまた、真実になる。
40.痕跡量の酸の付加は、「メソ」シグナルを高い方の場に劇的に移動させ、たとえば1当量のCF3CO2Hの添加の後に、0.113ppm移動する。このことは、定量的Keq.測定実験が実際に、カドミウムに対する塩基結合を反映し、有利にプロトン付与されている金属錯体の単純な脱プロトン化を反映しないことを示唆している。
41.一般的検討の場合には、下記の刊行物を参照する:
(a)Ellis,P.E.,Jr.;Linard,J.E.;Szymanski,T.;Jones.R.D.;Budge,J.R.;Basolo,F.J.Am.Chem.Soc.1980,l02,1889−1896.(b)Brault,D.;Rougeee,M.Biochemistry,1975,13,4591−4597.(c)Collman,J.P.;Brauman,J.I.;Doxsee,K.M.;Halbert,T.R.;Bunnenberg,E.;Linder,R.E.;LaMar,G.N.;Del Gaudio,J.;Lang,G.;Spartalian,K.J.Am.Chem.Soc.1980,102,4182−4192.(d)Traylor,T.G.Acc.Chem.Res.1981,14,102−109.
42.(a)Collman,J.P.;Brauman,J.I.;Doxsee,K.M.;Sessler,J.L.;Morris,R.M.;Gibson,Q,H.Inorg.Chem.1983,22,1427−1432.
43.一例として、下記の刊行物を参照する。
(a)Collman,J.P.;Reed,C.A.J.Am.Chem.Soc.1973,95,2048−2049.(b)Wagner,G.C.;Kassner,R.J.Biochim.Biophys.Acta 1975,392,319−327.(c)さらにまた、参照刊行物41b−41dを参照できる。
44.初期光学的研究は、350nmにおける光励起の後に、カチオン3の励起トリプルレットがほぼ80%の量子収率で生成されることを示す。酸素の存在していない下では、見い出されたトリプルレットの生涯は54μsである;空気の存在の下では、このトリプルレット状態はシングルレット酸素の生成によって完全に消失する:Mallouk,T.;Sessler,J.L.未公開の結果。
45.この物質の特徴は、固体状態での予備的113Cd NMR実験によってさらに測定されている。(Kennedy,M.A.;Ellis,P.D.;Murai,T.;Sessler,J.L.,未公開の結果)。この錯体(3・NO3)の等方性化学シフト、すなわち固形カドミウム パークロレートに対して_σ=191は、「普通」のカドミウムポルフィリン、たとえばCdTPP25 _(σ=399ppm46)またはCdPPIXDME25 _(σ=480ppm47)に比較して≒200〜300ppm保護される。この差違は「拡大」「テキサフィリン」リガンドの結合芯部内に追加の電子対が存在することによって生じる保護の増大を表わすことがある。MaricqおよびWaughの技術48を用いて、マジック アングル スピニングスペクトルを刺激すると、△σ=207.6の異方性およびη=0.01の非対称性が生じ、これは系が対称の≧3倍軸を有することを示している。さらに、この化学シフトテンソルの固有値は、σ11=120.6ppm、σ22=123ppm、およびσ33=329.6ppmであることが見い出された。
46.Jakobsen,H.J.J.Am.Chem.Soc.1982,104,7442−7542.
47.Keenedy,M.A.;Ellis,P.D.,submittedto J.Boil.Chem.
48.Maricq,M.;Waugh,J.S.J.Chem.Phys.1979,70,3330−3316.
49.このデータはまた、ピリジン錯体形成に使用された反復実験を用いて分析することもできる。この実験を用いて、2.0×104M−1のK1値および1.9×l05M−2のK1K2値が得られた。
50.SHELXTL−PLUS.Nicolet Instrument Corporation,Madison,WI,USA:1987.
51.SHELX76.結晶構造測定に関する問題。
Sheldrick,G.M.;Univ.of Cambridge,England:1976.
52.Cromer,D.T.:Mann,J.B.Acta Cryst.1968,A24,321−324.
53.Cromer,D.T.;Liberman,D.J.Chem.Phys.1970,53,1891−1898.
54.Stewart,R.F.,Davidson,E.R.;Simpson,W.T.J.Phys.Chem.1965,42,3175−3187.
55.International Tables for X−ray crystallography,1974.Vol.IV,p55,Birmingham:Kynoch Press:1974.
56.Cordes,A.W.,personal communication(1983).
57.Gadol,S.M.;Davis,R.E.Organometallics 1982,1,1607−1613.
(実施例3)
ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)1,2,3、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)1,4,5および1,10−ジアザ−4,7,13,16−テトラオキサシクロオクタデカン−N,N’−ジ酢酸(dacda)1,6等の強結合陰イオン性リガンド類から誘導されるカドリニウム(III)錯体は、磁気共鳴造影(MRI)において使用するために近年開発されている常磁性造影剤のうちで最も有望である。実際、[Gd、DTPA]−は、増強された腫瘍検出プロトコールにおける有望な使用について米国において臨床試験にかかっている。しかしながら、他のガドリニウム(III)錯体の合成は、そのような系が、既存のカルボキシレート基剤造影剤に比べてより大きい動力学的安定性、優れた緩和性、より良い生物分布性を有するであろうことからなおも興味あるものである。最近行なわれている一つの手がかりは、テトラキス(4−スルフォネートフェニル)ポルフィリン等の水可溶性ポルフィリン誘導体の使用に基いている7,8,9。残念ながら大きいカドリニウム(III)陽イオンは比較的小さいポルフィリン結合核(γ=2.0Å11)内に完全に収容され得ず、また、その結果としてガドリニウムポルフィリン錯体は常に加水分解的に不安定である7,8,12,13。しかしながら、大型のポルフィリン様リガンドは、この問題を迂回する手段を提供するであろう。
【0168】
前述したように、本発明は、新規「拡大ポルフィリン」系1B(「テキサフィリン」との通称が与えられている)の合成、およびビスピリジン付加物カドミウム(II)錯体2Bの構造に関係する。化合物または錯体1B−11Bの構造については図17参照。ポルフィリンのものより約20%大きく、6座配位子Cd2+(γ=0.92Å)およびGd3+(γ=0.94Å)25に適したものに略同等なイオン半径と実際に結合する略環状のペンタデンテート結合核の構造の存在は、この新規な一価陰イオン性ポルフィリン様リガンドの一般的ランタニド結合性の探究を促進した。対応するユーロピウム(IV)およびサマリウム(III)錯体8Bおよび9B(図17参照)の調製および特徴付けに加え、元来の「拡大ポルフィリン」系の新規な16,17−ジメチル置換類似体(6B)26から形式的に誘導される水に安定なガトリニウム(III)錯体(7B)の合成および特徴付け。
【0169】
電子スペクトルを、Beckman DU−7分光光度計で記録した。IRスペクトルをKBrペレットとしてPerkin−Elmer 1320分光光度計で4000cm−1〜600cm−1にて記録した。低分解能原子衝撃質量分光(FAB MS)をAustinにてFinnigan−MAT TSQ−70装置、および担体としてn−ニトロベンジルアルコールまたはグリセロール/オキサール酸のいずれかを使用して行ない、また高分解能FAB MS分析(HRMS)をMidwest Center for Mass SpectrometryにおいてCsIを標準に用いて行なった。元素分析はGalbraithLaboratoriesにて行なった。
【0170】
材料。 すべての溶媒および試薬は商業的に購入した試薬級の品質のもので、更に精製することなく使用した。カラムクロマトグラフィのために、Sigmaの親油性SEPHADEX(LH−20−100)およびMerckタイプ60(230−400メッシュ)シリカゲルを使用した。
【0171】
Nd錯体3Bの調製。リガンド1027のsp3型(50mg、0.1m mol)を、ネオジムナイトレートペンタハイドレート(63mg、0.15mmol)およびクロロホルム/メタノール(150ml、v/v l/2)中のプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共に1日攪拌した。暗緑色の反応混合物を氷/水/塩化アンモニウム上に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。該錯体をセファデックスを通し、純クロロホルム、クロロホルム/メタノール(10:1)、メタノールおよび水を用いてクロマトグラフィにかけた。暗緑色のバンドをメタノールから回収し、濃縮し、クロロホルム/メタノール/n−ヘキサン(クロロホルム対メタノールの比は1対2である)から再結晶して13mgの3(18%)を得た。3について:UV/VIS(CH3OH)* max(ε):330.5(33,096),432.5(85,762),710.5(10,724),774.5,(38,668);FAB MS(グリセロール担体):m/e(相対強度)631(142Nd,95),633(144Nd,100),635(146Nd,77);IR(KBr)*3360,2965,2930,2870,1610,1560,1450,1400,1350,1250,1205,1135,1080,l050,980,940,905,755cm−1。
【0172】
Sm錯体4Bの調製は、以下のとおりである。マクロサイクル10B 27(40mg、0.08m mol)を酸化白金(18mg、0.2m mol)およびサマリウムアセートハイドレート(69mg、0.2m mol)と共にベンゼン/メタノール(50ml、v/v、1/1中で還流下に攪拌した。2時間後、反応混合物をセライトを通してろ過し、減圧下で濃縮した。該濃縮物を、セファデックスを通してクロロホルムのみを溶離液に用いてクロマトグラフィにより精製した。赤色バンドを廃棄した後、緑色バンドを回収し、真空中にて濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させて0.8mgの4(約1%)を得た。4Bについて、UV/VIS* maxnm438、706.5、765;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール担体):m/e(相対強度)635(147Sm、72)、636(149Sm、72)、637(149Sm、73)、640(152Sm、100)、642(154Sm、55)。
【0173】
Eu錯体5Bの調製は、以下のとおりである。マクロサイクル1027(50mg、0.1m mol)をユーロピウムアセテートハイドレート(34mg、0.1m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v、1/2)中にて1日間攪拌した。該反応混合物を氷/水上に注ぎ、クロロホルムにて抽出した。有機層を塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、次いで濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させた。再結晶固形物を、セファデックスを通して純クロロホルムおよび純メタノールを溶離液として使用してクロマトグラフィにより精製した。メタノール中に回収される暗緑色バンドを濃縮して少量の暗緑色固体(<1%)を得た。5について:UV/VIS* maxnm438、700、765;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール担体):m/e(相対強度)639(151Eu、94)、641(153Eu、100)。
【0174】
4,5,9,24−テトラエチル−10,16,17,23−テトラメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.1.13, 6.18,11.014,19]ヘプタコサ−3,5,8,10,12,14(19),15,17,20,22,24−ウンデセン(11B)。このマクロサイクルは、先に10B 27の調製について報告された酸触媒法を使用し、1,2−ジアミノ−3,4−ジメチルベンゼンおよび2,5−ビス−(3−エチル−5−フォルミル−4−メチルピロール−2−イルメチル)−3,4−ジエチルピロールから収率約90%で調製された。
【0175】
11について:mp200−C dec;lH NMR β 1.06(6H,t,CH2CH3),1.13(6H,t,CH2CH3)2.15(6H,s,フェニル−CH3),2.22(6H,s,ピロール−CH3),2.38(4H,q,CH2CH3),2.50(4H,q,CH2CH3),3.96(4H,s,ピロール2−CH2),7.19(2H,s,芳香族性),8.10(2H,s,CHN),11.12(1H,s,NH),12.48(2H,s,NH);13CNMR δ9.49,15.33,16.47,17.22,17.71,19.52,22.41,117.84,120.40,120.75,125.11,125.57,134.95,135.91,141.63;UV/VIS* max367nm;FAB MS,M+522;HRMS,M+521.35045(計算値C34H43N5 521.35185)。
【0176】
Gd錯体7Bの調製。リガンド11のsp3型(42mg、0.08m mol)をガドリニウムアセテートテトラハイドレート(122mg,0.3m mol)およびプロトンスポンジ(54mg、0.25m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v、1/2)中にて1日間攪拌した。暗緑色の反応混合物を減圧下で濃縮し、クロロホルム/トリエチルアミン(50ml、v/v 25/1)により前処理したシリカゲル(25cm×1.5cm)にてクロマトグラフにかけた。クロロホルム/トリエチルアミン(25/1)およびクロロホルム/メタノール/トリエチルアミン(25/2.5/1 v/v)を溶離液として使用した。暗赤色のバンドを最初に回収し、2本の緑色バンドがそれに続いた。UV/VISによって鮮明な芳香族性を示した最後の緑色バンドを濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶して14mg(22%)のGd錯体7Bを得た。7Bについて:FAB MS(メタノール/オキサール酸/グリセロール担体):m/e(相対値)671(155Gd,58),672(156Gd,78),673(157Gd,94),674(158Gd,100),676(160Gd,64);HRMS,M+674.2366(計算値C34H38N5 158Gd 674.2368):UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(14,850),450.5(36,350),694.5(6,757),758.0(23,767);IR(KBr)*2990,2960,2900,2830,2765,2700,2620,2515,1710,1550,1440,1410,1395,1365,1265,1220,1180,1150,1105,1090,1060,1040,1095,1045,1015,680cm−1;分析、計算値 C34H38N5Gd°(OH)2°2H2O:C.54.89;H,5.96;N,9.41.測定値:C,54.49;H,5.95;N,8.97。
【0177】
Eu錯体8Bの調製を行なった。マクロサイクル11B(53mg、0.1m mol)をユーロピウムアセテートハイドレート(105mg、0.3m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 1/2)中で6時間攪拌した。暗緑色の反応混合物を1つの例外を除いて前述したように減圧下で濃縮した。クロロホルム/トリエチルアミン(25:1)およびクロロホルム/メタノール/トリエチルアミン(25:5:1)を溶離液として使用した。緑色の錯体8をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させて26mgの生成物(33%)を得た。8Bについて:UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(24,570),450.5(63,913),696.0(10,527),759.0(40,907);FAB MS(メタノール/オキサール酸/グリセロール担体):m/e(相対強度)667(151Eu,79),669(153Eu,100);HRMS,M+,669.2336(計算値C34H38N5 153Eu669.2340);IR(KBr)*2970,2930,2870,2740,2680,2600,2500,1700,1535,1430,1350,1255,1205,1165,1135,1095,1075,1050,1030,980,900cm−1;分析、計算値 C34H38N5Eu°(OH)2O:C,56.66;H,5.87;N,9.72.測定値:C,55.92;H,5.47;N,9.95。
【0178】
Sm3+錯体の調製は以下のとおりである。リガンド(11B)のsp3型(52mg、0.1m mol)を、サマリウムアセテートハイドレート(103.5mg、0.3m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v l/2)中にて1日間撹拝した。暗緑色の反応混合物を濃縮し、上述したと同様にシリカゲルクロマトグラフィにより精製した。次いで、得られた粗製物質をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶して29mgの9を収率37%で得た。9について:UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(21,617),451.0(56,350),695.5(9,393),760.0(35,360;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール):m/e(相対強度)663(14 7Sm,74.8),664(148Sm,82.3),665(149Sm,84.58),668(152Sm,100),670(154Sm,78.5);HRMS,M+,668.2300(計算値C34H38N5 152Sm 668.2322);IR(KBr)*2990,2950、2890、2760、2700、2620、2520、1720、1620、1550,1440,1360,1265,1215,1175,1145,1105,1085,1066,995,945,910,680cm−1;分析、計算値 C34H38N5Sm°(OH)2°O:C,54.08;H,6.14;N,9.27.測定値:C,54.30;H,5.66;N,9.06。
【0179】
前述したように23(例1参照)、空気飽和メタノール/クロロホルム中における周囲温度でのタキサフィリンマクロサイクル10Bのメチレン架橋もしくはsp3型とCd(II)塩との処理は、該反応条件下で同時に起こる金属挿入と酸化との両者を伴って、およそ25%の収率をもって緑色のCd(II)錯体2の形成を導く。種々の3価のランタニド塩[すなわち、Ce(OTf)3、Pr(OAc)3、Nd(NO3)3、Sm(OAc)3、Eu(OAc)3、Gd(OAc)3、Dy(OTf)3、TbCl3、Er(OTf)3、Tm(NO3)3、およびYb(NO3)3]を使用して同様な処理を行なった場合、1(または10)の金属錯体は得られなかった(UV/可視スペクトルの変化が無いことから判断される)。しかしながら、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン(「プロトンスポンジ」)を種々の反応混合物に添加した場合には、数時間〜数日間(関連する塩に依存する)の過程を経て* max=365nmにおける10の高エネルギー、低強度のバンドが消失し、435−455nm(Soret)および760−800nm(Q−バンド)領域の2つの強遷移に置き換えられ、リガンド酸化および金属結合が起こることが示唆される。残念ながら、これらの推定される金属含有生成物の単離は問題を有することが示され、一般にシリカゲルまたは親油性セファデックスにおける直接クロマトグラフィは少量の金属非含有酸化リガンド1Bのみを与え、本質的には所望の金属化物質を何ら与えなかった。実際、サマリウム(III)アセテー卜塩の場合にのみ、セファデックス上のクロマトグラフィによって痕跡量(収率約1%)の所望の錯体(4)を単離し得ることが示された。しかしながら、反応混合物を氷水で破砕し、クロロホルムにて反復抽出し、塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、セファデックス上のクロマトグラフィにて精製し、そしてクロロホルム/メタノール/n−ヘキサンから再結晶することにより暗緑色のネオジム(III)錯体3Bを略20%の収率をもって得られることが見出されたことは興味深い。残念ながら、この作り上げ工程は、痕跡量のユーロピウム(III)錯体(5B)がこの工程を用いて得られることが示されたのであるが、他の推定されるランタニド錯体(残念ながら、Gd3+から誘導されるものも含めて)の場合には有効ではないことが示された。
【0180】
分光学的証拠は、sp3マクロサイクル10Bを多くの他のLn3+塩と処理した場合に、金属取込みおよびリガンド酸化が.起きていること示唆していることから、ネオジム(III)錯体(3)のみが妥当な収率をもって単離され得ることは不思議である。注意深い分析は、ある例、特にSm3+、Eu3+、Gd3+の場合において、問題が加水分解的不安定性によるのではないことを示唆している。むしろそれは、最初の水性洗浄に続く有機溶媒への再抽出を妨げるランタニド錯体の極めて高い水への溶解性に起因していた。この観察的な推定は、より疏水性のテキサフィリン類似体が「拡大ポルフィリン」ランタニド錯体の調製および単離において有用性を示すであろうとの考察を導いた。
【0181】
上記推論を試験するために、本来のsp3ハイブリッド化リガンド10Bの単純なジメチル化類似体(11B)を調製した。この新規なより疏水性のsp3ハイブリッド化リガンドは、1027の調製に使用したと同様の酸触媒条件下にて1,2−ジアミノ−4,5−ジメチルベンゼンを2,5−ビス−(3−エチル−5−ホルミル−4−メチルピロール−2−イルメチル)−3,4−ジエチルピロールと縮合することによって、約90%の収率をもって得られた。次いで、このテキサフィリン前駆体とGd(OAc)3、Eu(OAc)3およびSm(OAc)3との、3Bを得るために用いたものと同じ反応および作成条件下における処理は、陽イオン性錯体7B、8Bおよび9Bをそれらのジヒドロキシド付加物として、それぞれ22%、33%および37%の収率をもって与えた。これらの増大した収率は、新規ジメチル置換テキサフィリンリガンド系(6B)の増大した疏水性から直接に導かれたものと思われる。
【0182】
ここに報告する新規ランタニド錯体は、いくつかの面において固有のものである。例えば、高速原子衝撃質量分光(FAB MS)分析により判断されるように、錯体3B−5Bおよび7B−9Bは、単核の1:1種であり、この結論は、化合物7B一9Bの場合において、高分解能FAB MS高精度分子量測定および燃焼分析の両者によって更に支持されている。換言すれば、1:2の金属対リガンド「サンドイッチ」系、またはより研究の進んだランタニドポルフィリン類の場合にしばしば見出されるような高次結合の証拠は見出せなかった。
【0183】
電子スペクトルは、これらの新規物質の第2の顕著な特徴を示す:現在までに単離されている6種のランタニド錯体は、すべてが435−455nm領域に優勢なSoret様遷移を示し、これは対応するメタロポルフィリン類において観察されるものよりかなり低強度であり(図18参照)、また760−800nm領域に顕著な低5エネルギーQ−型バンドを示す。この後者の特徴は、この22π−電子「拡大ポルフィリン」のクラスの特徴であり、また適当な参照ラテンタニドポルフィリン類(例えば[Gd°TPPS]+、* max=575nm)の対応する遷移に比べてかなり高強度、かつ実質的に赤方変位(約200nm)である。これらの一般的観察に関連して、より電子富有リガンド6Bから誘導される錯体のすべてが、元来のタキサフィリン1Bから得られたものに比べて約5−15nmだけ青方変位したQ−型バンドを示す。
【0184】
錯体7B−9Bの第3の顕著な性質は、クロロホルムおよびメタノールの両者に対する高い溶解度である。これら3種の化合物が、1:1(v.v.)メタノール/水混合物に対して中程度の溶解度(およそ10−3Mの濃度)も有する事実は、特に興味深い。更には、上記3−5によって予備的研究に基き先に示唆したように、これらの物質は、これらの溶媒条件に対して安定である。例えば、1:1(v.v.)メタノール/水中のガドリニウム錯体7Bの3.5×10−5M溶液は、周囲温度において2週間にわたって分光学的に監視した場合に、SoretおよびQ−型バンドの10%未満のブリーチング(bleaching)を示した。このことは、この化合物の脱錯合および/または分解についての半減期が、これらの条件下で≧100日であることを示唆している。上述の実験条件で、Q−型バンドの位置に何ら検出可能な変位は観測されなかったが、遊離塩基6BのQ−型遷移は、7Bのものより20nm青色側に落ち、一方この方向の変位は、単純な金属脱離が観測されたスペクトルブリーチングの少量を導く優勢な経路である場合に予期されるものであった。
【0185】
錯体7B−9Bの高い加水分解的安定性は、水性環境に曝露された際に数日間の経過において水誘導金属脱離を起こす[Gd°TPPS]+等の単純な水可溶性ガドリニウムポルフィリン類に対して観察されるものとは極めて対照的である。従って、新規テキサフィリンリガンド6Bまたはその類似体から誘導されるガドリニウム(III)錯体は、MRI応用において使用するための新規常磁性造影剤を開発するための、基礎を提供するものと思われる。更に、錯体7B−9Bの調製の容易さ、および安定した単核的性質は、このような拡大ポルフィリンリガンドが、ランタニドの相対的に未発展の配位化学を更に進展させる基板を提供するであろうことを示唆している。
以下のリスト中の文献の引用を、引用された理由のために、ここに参考として取入れる。
【0186】
(文献)
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13.Srivastava,T.S.Bioinorg.Chem.1978,8,61−76.
14.「サフィリン類(sapphyrins)」、15,16「プラチリン類(platyrins)」、17「ペンタフィリン類(pentaphyrins)」、18および「[26]ポルフィリン」19を含む数種の大ポルフィリン様芳香族マクロサイクルは、それらの金属非含有形態において調製され、またウラニル錯体は、大「スーパーフタロシアニン」20により安定化されたが、我々はこれらの系21から形成されたランタニド錯体は何ら知るところでない。
15.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429−6436.
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21.Sessler,J.L;Cyr,M.;Murai,T.Comm.Inorg.Chem,in press.
22. より慣用的なシッフ塩基マクロサイクルにより安定化されるランタニド陽イオン錯体の例は、例えば:
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25.Cotton,F.A.;Wilkinson,G.「AdvancedInorganic Chemistry,4th ed.,」John Wiley,New,York,1980,pp.589および982.
26.この化合物の系統的名称は、4,5,9,24−テトラエチル−10,16,17,23−テトラメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ−[20.2.1.13,6.18,11.014,19]ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンである。
27.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394−4397.
28.反応直後に観察された光学バンド(nm)と使用した3価ランタニドとの間の関係は、次のとおりである。Ce:453,782;Pr:437,797;Nd:439,786;Sm:438,769;Eu:438,765;Gd:438,765;Tb:439,764;Dy:438,765;Tm:437,765;Yb:437,764.
29. 反応および作出条件下におけるIRおよび微量分析データから判断されるように、ヒドロキシド陰イオンは、最初の金属挿入操作に続いて多分存在するであろうアセテートリガンドを置換する働きをもつ。同様な置換は、1H NMR分析を容易に行ない得る30カドミウム錯体(Cd(OAc)2から調製)の場合にも観察された。
30.Murai,T.;Hemmi,G.;Sessler,J.L.,unpublished results.
31.(a)Buchler,J.W.;Cian,A.D.;Fischer,J.;Kihn−Botulinski,M.;Paulus,H.;Weiss,R.J.Am.Chem.Soc.1986,108,3652−3659.(b)Buchler,J.W.;Cian,A.D.;Fischer,J.;Kihn−Botulinski,M.;Weiss,R.Inorg.Chem.1988,27,339−345.(c)Buchler,J.W.;Scharbert,B.J.Am.Chem.Soc.1988,110,4272−4276.(d)Buchler,J.W.;Kapellmann,H.−G.;Knoff,M.;Lay,K.−L.;Pfeifer,S.Z.Naturforsch.1983,38b,1339−1345.
(実施例4)
トリピロールジメチン−誘導「拡大ポルフィリン類」(「テキサフィリン類」)の新規系列の光物理的性質を報告する。これらの化合物は、高い三重項量子収率に加えて730−770nmの分光領域で高強度の低エネルギー光吸収を示し、メタノール溶液中で一重項酸素生成のための効率的な光感応化剤として作用する。
【0187】
光動力学的治療は、局在化新生物の治療および血中のウイルス性夾雑物の根絶のために最近考慮されているより有望な様式のうちにある。結果として、有効な光化学療法剤の開発にかなりな努力がはらわれてきた。現在までに、ポルフィリン類およびそれらの誘導体、フタロシアニン類、ならびにナフタロシアニン類は、この点に関して最も広く研究されている化合物のうちのものである。残念なことに、これらの染料はいずれも臨界的な不都合を有している。ポルフィリン誘導体類は、高い三重項収率および長い三重項寿命(従って三重項酸素のために充分な遷移励起エネルギー)3b,3gを有し、それらのQ−バンド領域の吸収は、しばしばヘム−含有組織のものと類似する。フタロシアニン類およびナフタロシアニン類は、より都合良いスペクトル範囲に吸収をもつが、しかしながら有意に低い三重項収率を有する;更には、それらは極性のプロトン性溶媒には全く不溶性の傾向を有し、また官能化も困難である。従って、現在においてより有効な光化学治療剤の開発は、生体組織が相対的に透明であるスペクトル領域(すなわち700−1000nm)1dに吸収を有し、高い三重項量子収率を有し、かつ最少限の毒性をもった化合物の合成を必要としているものと思われる。本発明者らは、最近、組織が透明な730−770nmの範囲で強い吸収をもつ芳香族ポルフィリン様マクロサイクルの新規な種類、トリピロールジメチン−誘導「テキサフィリン類」の合成を報告した(例1参照)。メタロテキサフィリン類1c−7cの光物理的性質は、対応するメタロポルフィリンのものに類似し、また反磁性錯体1c−4cは、高い量子収率をもって1O2の生成を官能化している。図19は、本発明の化合物(1c−7c)の模式的構造、金属錯体および誘導体を示している。
【0188】
1c°Clの吸収スペクトルを、図20に示してある。この種の化合物(表3参照)の代表例であるこのスペクトルは、強いSoret−およびQ−型バンドにより特徴付けられ、特に後者は興味深い。最大輻射(約780nm;図20の挿入を参照)において監視されるこの化合物の蛍光励起スペクトルおよび吸収スペクトルは、可視領域(370−800nm)において重ね合せ可能であり、第1励起一重項状態への内部変換が、SoretまたはQ−バンド領域において光励起について定量的であることを示している。1c−4cについて蛍光量子吸収(φf)は、わずかに0−1%であるが、これらの反磁性メタルテキサフィリン類の三重項形成に対する量子収率(φt)は、単一にほぼ等しく、またメタロポルフィリンについて見出されるものに似ている。図21に示した1c°Clの三重項−三重項遷移スペクトルは、基底状態のSoret−およびQ−バンドにおけるブリーチング、および450−600nm領域における正の吸光度変化、さらにはメタロポルフィリン三重項スペクトルの回帰を示す。図21の挿入部は、脱酸素化メタノール中での三重項状態の崩壊を示し、これから67μsの寿命(τt)が計算される。同様な三重項スペクトル、寿命、および量子収率は、メタノール中において他の反磁性メタロテキサフィリン誘導体類について、ならびに混合メタノール/水溶液中において1c°Clについて測定された。興味深いことに、メタノールガラス中において低温度リン光はいずれの化合物についても観測されなかった。最後に常磁性金属イオン(例えばMnIISnIII、およびEuIII、構造5c−7c)を含む数種の錯体を評価した。それらは非−輻射性であることを示し、かつ時間分解能が約10nsである我々のレーザーフラッシュ光分析装置では、それらの三重項励起状態は検出されなかった。
【0189】
メタノール溶液中において、lc−4cの三重項励起状態は、(2.6±0.2)×109dm3mol−1s−1の生物分子速度定数をもって分子状酸素により冷却される。曝気された溶液中において、三重項状態の崩壊プロフィルは、(175±20)nsの平均寿命をもった単一の指数工程によって記述され、従って三重項分子種とO2との間の相互作用は定量的である。曝気メタノール中における該化合物のレーザー励起(355nm、80mJ、10ns)は、何らの酸化還元生成物(例えばタキサフィリン陽イオンおよび過酸化物陰イオン)をも与えなかったが、Geダイオードを使用して1O2の生成がその特徴的な1270nmの光輻射から明確に観察された。この光輻射は、12.5±0.3μsの寿命をもって崩壊し、かつその初期強度は、レーザーパルスの中心まで外挿して、タキサフィリン錯体により吸収される光子数の線形関数であった。該初期強度と、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン(THPP)を光感応剤として使用して得られるものとの同一条件下での比較は、一重項酸素(φ102生成の量子収率の計算を可能とした。誘導された値は、三重項量子収率(表3)の値に類似し、該三重項状態反応は、1O2の生成(74−78%)および振動的に励起したO2の形成(22−26%)の間で分配されるものと思われる。これらのφ102値は、好適にはポルフィリン類を用いて観測された値と比較され、改善された三重項状態収率によってフタロシアニン類およびナフタロシアニン類を用いて得られた値より大きく優れている。しかして、反磁性タキサフィリン錯体は、1O2の形成に対する高度に効率的な光感応剤であるものと思われる。
【0190】
【表3】
【0191】
要約すると、ここで議論した新規メタロテキサフィリン錯体は、3つの重要な光学的特性を有しており、これらは同錯体を存在するポルフィリン様マクロサイクル類の内でも固有なものとしている。それらは生理学的に重要な領域(すなわち730−770nm)において強い吸収を有し、長寿命の三重項状態を高収率で形成し、かつ一重項酸素形成のための効率的な光感応剤として作用する(例えば図21参照)。これらの特性は、それらの高い化学的安定性および極性媒質への好ましい溶解性と組合されて、これらの陽イオン性錯体が現出する光動力学的プロトコールにおける成長し得る光感応剤として使用し得ることを示唆している。10%ヒト血清中の3c°NO3の予備的なインビトロ研究において単純ヘルペス(HSV−1)の感染力の顕著な減少およびリンパ球分裂促進剤活性が767nmの放射により観察され9、この取組み方の可能性が確認された。
【0192】
(文献)
1.概括的には、C.J.Gomer,Photochem,Photbiol.1987,46,561参照(この特別発刊物は全体がこのトピクスに関する)。また:(b)T.J.Dougherty,Photochem.Photobiol.1987,45,879;(c)A.R.Oseroff,D.Ohuoha,G.Ara,D.McAuliffe,J.Foley,and L.Cincotta,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1986,83,9729;(d)S.Wan,J.A.Parrish,R.R.Anderson,and M.Madden,Photochem.Photobiol.,1981,34,679;(e)A.Dahlman,A.G.Wile,R.B.Burns,G.R.Mason,F.M.Johnson,and M.W.Berns,Cancer Res.,1983,43,430.も参照
2.J.L.Matthews,J.T.Newsam,F.Sogandares−Bernal,M.M.Judy,H.Skiles,J.E.Levenson,A.J.Marengo−Rowe,and T.C.Chanh,Transfusion,1988,28,81.
3.(a)M.R.Detty,P.B.Merkel,and S.K.Powers,J.Am.Chem.Soc.,1988,110,5920;(b)R.Bonnett,D.J.McGarvey,A.Harriman,E.J.Land,T.G.Truscott,and U−J.Winfield,Photochem.Photobiol.,1988,48,271;(c)R.Bonnett,S.Ioannou.R.D.White,U−J.Winfield,and M.C.Berenbaum,Photobiochem.Photobiophys.1987,Suppl.,45;(d)P.A.Scourides,R.M.Bohmer,A.H.Kaye,andG.Morstyn,Cancer Res.,1987,47,3439;(e)M.C.Berenbaum,S.L.Akande,R.Bonnett,H.Kaur,S.Ioannou,R.D.White,and U−J.Winfield,Br.J.cancer,1986,54,717;(f)J.D.Spikes,Photochem.Photobiol.,1986,43,691;(g)D.Kessel and C.J.Dutton,Photochem.Photobiol.,1984,40,403.
4.P.A.Firey and M.A.J.Rodgers,Photochem.Photobiol.,1987,45,535.
5.(a)J.L.Sessler,T.Murai,V.Lynch,andM.Cyr,J.Am.Chem.Soc.,1988,110,5586.(b)J.L.Sessler,T.Murai,and G.Hemmi,submitted to Inorg.Chem.
6.「The Porphyrins」;D.Dolphin,Ed.,Academic Press:New York,1978−1979,Vols.I−VII.
7.A.Harriman,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.2,1981,77,1281.
8.M.A.J.Rodgers and P.T.Snowden,J.Am.Chem.Soc.,1982,104,5541.
9.M.H.Judy,J.L.Matthews,G.Hemmi,J.L.Sessler,発刊予定。
【0193】
(実施例5)
後天性免疫不全症候群(AIDS)および癌は、今日我国家が面している最も深刻な公衆衛生問題の内にある。男性同性愛者間に起こるものとして1981年に初めて報告されたAIDSは、1致命的なヒト疾患であって、今日では世界的流行の比率にまで達している。癌は、近年においては診断および治療についていくつかの極めて顕著な進展があるにもかかわらず、この国(米国)において、なお死亡原因の第3位をしめている。従って、これらの疾患の検出、治療、および伝達の低減を図るためのより良い方法を見出すことは、最も重要な研究目的である。腫瘍の制御および治療において使用するために近年探究されたより有望な新たな方法の一つは、光動力学的治療法(PDT)1−5である。この技術は、腫瘍部位またはその近傍に局在化し、酸素の存在下に輻射を受けた際に一重項酸素(O2(1*g))等の細胞毒性物質を、あるいは良性の前駆体(例えば(O2(3Σg −)))から生成する作用をする光感応性染料の使用に基くものである。PDTに伴う最近の興奮の多くは、正にこの特性から導かれる。現在の方法(例えば慣用の化学療法)との顕著な対比において、PDTでは薬剤自体が、治療医により光で「活性化」されるまでは、全く無害であり得る(かつそうでなければならない)。従って、制御および選択性の程度は、他では不可能なものも達成できるであろう。
【0194】
現在、反磁性ポルフィリンおよびそれらの誘導体は、PDTのために選択される染料と考えられている。10年来、ヘマトポルフィリン等のポルフィリン類は、その選択性の理由は難解なものとして残されているが、肉腫および癌を含む急速に成長している組織に選択的に局在化することが知られている。最近、最も注目を集めているものは、ヘマトポルフィリンジヒドロクロライドを、酢酸−硫酸により、次いで希釈塩基により処理して生成される22−27モノマーおよびオリゴマーのポルフィリン類の完全には特徴付けられない混合物であるいわゆるヘマトポルフィリン誘導体2−5,7−21である。最良の腫瘍局在化能23,26を有するものと信じられているオリゴマー種に富んだ分画は、商標Photofirin II(登録商標)(PII)のもとに市場に出されており、かつ最近では閉塞気管支内腫瘍および表層膀胱腫瘍に対して第III相の臨床試験が行なわれている。ここにおいて作用機序は、完全ではないにせよ多くは一重項酸素(O2(1*g))の光生成によるものと考えられ、しかしながら過酸化物陰イオンまたはヒドロキシルおよび/またはポルフィリン−基材ラジカルを含む別の作用機序は、完全には解明できない。28−33
一重項酸素は、実験的な光感応化血液精製方法において操作可能な臨界的毒性種であることも信じられている。この極めて新しい光力学療法の応用は、非常に可能性の高い重要なものである。それは、HIV−1、単純ヘルペス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、肝炎の種々の形態等のエンベロープウイルスならびに輸血全血由来の日和見的血液付随感染(例えば細菌およびマラリアプラスモジウム)の除去のために安全かつ有効な方法を提供する。AIDSが現在効果的に治療されず、通常は致命的疾患であることを考えると、このような血液精製方法の利益は、評価し得ないほど価値がある。
【0195】
現在において、性的関係および注射針の共有がAIDS蔓延の主要な機構である1。AIDS感染のうち割合の増大しているものは、今日では輸血の結果によるものである。1,40−43残念ながら、貯蔵血成分は、現代医学の実施のためには基本的製品であり、結果としてこの伝達方法は単純な生活様式の変更によっては排除出来ない。むしろ、全ての保存血試料がAIDSウイルス非含有(および理想的にはすべての他の血液付随病原非含有)であることを確認する完全な不在証明手段が開発されなければならない。ある限度において、このことは提供者の経歴調査および血清学的試験の実施によって達成され得る。しかしながら、現在においてHIV−1に対する血清学的試験は、すべての感染された血液、特には患者に接したが検出可能な抗体が未だ産生されていない提供者から得たものを検出するには充分なものでない。42,43加うるに、AIDSウイルスの新たな変異株が検出されており、これらのうちの数種または全部が、現行方法では検出から漏れるであろう。従って、いずれの形態のHIV−1をも保存血から除去する抗ウイルス系が必要である。このことは、一人の感染した提供者からの貯蔵血試料が、例えば小児科の治療において数人の異なる患者に提供されるような起こり得る事態を考えると特に重要である。
【0196】
理想的には、AIDSウイルスまたは他の血液付随病原体の除去に使用されるいずれの血液精製方法も、望ましからぬ毒素の導入、正常血液成分の損傷、または有害代謝産物形成の誘導を伴わずに操作されるべきである。一般的には、このことは、加熱、UV放射、または純化学的方法に基く通常の抗ウイルス系の使用を排除する。有望な取組方法は、先に言及した光力学的方法である。ここで、Baylor Research FoundationのDr.Matthewsおよび彼の仲間34−37ならびにその他38,39の共同研究者により行なわれた予備的研究は、HPDおよびPIIが、腫瘍治療のために必要なものより低い投与量で、無細胞HIV−1,HIV,肝炎および他のエンベロープウイルスの光不活性化のための効率的な光感応剤として作用し得ることを示すことに貢献した。利用可能なデータに基いて、この方法の成功は、これらの染料が形態学的に特徴的であり、また生理学的に基本的であるウイルス性膜(「エンベロープ」)もしくはその近傍に選択的に局在化し、光輻射によって一重項酸素を形成するという事実から誘導される。こうして生成された一重項酸素は、次いで基本的膜エンベロープを破壊するものと信じられている。これはウイルスを殺滅し、感染力を除去する。従って、光力的血液精製方法は、より古典的な腫瘍治療が腫瘍部位に優先的に吸着または保持される染料を必要とするのと同様に、ウイルス性膜に選択的に局在化する光感応剤の使用によるものと思われる。これが事実である限りにおいて、HSV−1等の単純なエンベロープDNAウイルスは、より危険なHIV−1レトロウイルスの殺滅において有用に使用するための推定上の光感能剤を試験するための良好なモデルであることが示されるであろう。しかしながら、この対応関係は、(細胞内のものとは異なって)自由に循還しているウイルスに限って保たれることに注意することが重要である。血液生成物からのHIV−1の完全な予防学的除去は、単球およびTリンパ球細胞内からのウイルスの破壊的除去を必要とするであろう。44
有望な抗腫瘍および抗ウイルス的光力学的応用として最近HPDおよびPIIを用いて探究され、臨界的であるように、これらの光感応剤が理想的なものではないことを認識することは重要である。実際、この「第1世代」の染料は、それらの生物医学的応用における最終的使用に対して実際に影響するであろう深刻な多くの欠陥をかかえている。それらはある範囲の化学種を含み、それらは分解または体から急速に排泄されることもなく、また血液および他の体組織が透明であるスペクトルの赤色部分において吸収を有するが貧弱である。5これらの欠陥の各々は、重大な臨床的結果をもたらし得、また正にもたらす。例えば、HPDおよびPIIが充分に特定された単一の化学的成分を含むものではないという事実は、該活性成分が確実性をもって同定されるべきであるという事実と合せて、有効濃度が調製毎に変化し得、またしばしば変化することを意味する。従って、投与量および光の影響は、いずれの特定の応用に対しても必然的に最適化し得ず、またあらかじめ決定され得ない。更には、それらが急速には代謝されないという事実は、これらの染料のかなりの量が、予防的な光誘導HIV−1除去後に保存血液単位中に残留し、また光力学的腫瘍治療後、長く患者の体内に残留することを意味する。後者の残留問題は、特に深刻なものとして知られており、HPDおよびPIIは、皮膚中に局在化し、投与後数週間にわたり患者に光感応性を誘発する。5,45
しかしながら、最も深刻であると考えられるものは、上記欠点の最後のものである。なぜならば、これらの染料の最長の波長の吸収最大は630nmにあり、光療法に使用される初期エネルギーのほとんどが、深部にある腫瘍の中心に達する前に分散または減衰し、結果として、初期光のほとんどが一重項酸素生成および治療に利用できないからである。46−48実際、マウスモデルおよび皮下に埋設された3mmの腫瘍を用いたある研究では、腫瘍基部までに90%のエネルギーが失なわれることが示された。参考文献47から取上げた図22のデータにより例示されるように、>700nm領域に吸収を有する光感応剤が開発された場合に、当然ながらそれらがHPDおよびPIIの望ましい特徴(例えば、標的組織への選択的局在化および低い未知の毒性)を保持するのであれば、深部に位置するか、または大型の腫瘍の更に効果的な治療が可能になるであろう。この面における本発明は、光力学的腫瘍治療および血液精製プロトコールにおいて使用するための、そのような改良光感応剤の開発に関係する。
1.容易に入手可能
2.低い本質的な毒性
3.長波長の吸収
4.一重項酸素生成のための有効な光感応剤
5.水への適当な溶解度
6.腫瘍組織への選択的取込み、および/または
7.エンベロープウイルスヘの高い親和性を示す
8.使用後の早い分解および/または排除
9.化学的に純粋かつ安定
10.合成的修飾を容易に行なえる。
【0197】
該リストは、生物医薬的光感応剤において望ましいであろう特徴をまとめてある。明らかに、応用に応じて要件のある程度の変化があるであろう。例えば、血液精製プロトコールにおいて使用するために設計された光感応剤は、光力学的治療に使用されるものに比べて化学的安定性はより低く設計されるべきである。理想は、輻射に続いて染料は、急速な分解または加水分解を起こして非毒性かつ不活性な代謝産物を生じるものである。腫瘍治療のためには、新生物組織中の選択的局在化を達成するために、明らかにより長い時間を要することから、より大きい安定性が望ましい。当然ながら、両者の場合ともに低毒性および良好な長波長吸収および光感応化特性は絶対に不可欠である。
【0198】
近年、これらの要求に合うであろう新規な有望な光感応剤の合成および研究に、多大な努力がはらわれている。これらのうちの数種は、ローダミンおよびシアニン系の古典的染料からなるものであるが、49−51多くは、拡張π網を有するポルフィリン誘導体であった。56−67後者の分類に含まれるものは(図23参照)、Morganのプルプリン類(purpurins)55(例えばlD)およびベルジン類(verdins)56(例えば2B)、および他のクロロフィル様分子種57−59、Dolphinらのべンズ−隔合ポルフィリン(3D)、ならびにBen−Hur61、Rodgers62およびその他63−67により研究されたスルホン化フタロシアニン類およびナフトナフタロシアニン類(4D)である。これらのうち、ナフトナフタロシアニン類のみが、最も望ましい>700nmスペクトル領域に効率的な吸収を有する。残念なことに、これらの特定の染料は、化学的に純粋かつ水溶性の形態で調製することが困難であり、また一重項酸素生成のための光感応剤としては相対的に不充分なものであり、おそらく他の酸素誘導トキシン(例えば過酸化物)を介して光力学的に作用するであろう。従って、前述の10の臨界的基準により合致するであろう光感応剤の「第3世代」が、なおも継続される。
【0199】
大ピロール含有「拡大ポルフィリン類」を使用して、改良された「第3世代の」光感応剤が得られることは、本発明の重要な局面である。これらの系は、完全に合成的であって、少なくとも原理的には任意の所望の性質を取入れるように調節できる。残念ながら、このような系の化学は、未だ未発達である:ポルフィリン類の文献および関連するテトラピロール系(例えば、フタロシアニン類、クロリン類等)に対する顕著な対比において、大ピロール含有系の報告は、わずかしかなく、またこれらのうちのわずかのものが、長波長吸収および一重項酸素光感応化のために本質的であると思われる芳香族性の基準に合致しない。実際、現在までに、テキサフィリン5Dに関する発明者らの研究69(図23参照)、およびWoodward70とJohonson71のグループにより最初に生成された「サフィリン(sapphyrin)」6Dに加え、光感応剤としての有用性をもつであろうものはわずかに2つの大ポルフィリン様系であると思われる。これらは、LeGoffの「プラチリン類(platyrins)」([22]プラチリン7Dとして例示される)72およびFrankのビニル性(vinylogous)ポルフィリン類([26]ポルフィリン8Dにより表される)73である。残念なことに、最近の合成の報告書中には、その研究が進行中である旨、示唆する解説が含まれているが、これらの材料の光力学的面に関してはほとんど刊行物がない。しかしながら、拡大ポルフィリン5Dおよび6Dの現在の研究は、光力学的治療への拡大ポルフィリンの取組が、実際に極めて有望であることを示している。興味深いことに、新しい種類の「収縮ポルフィリン類」であるポルフィセン(porphycenes)74(例えば9D)も、有望な光感応剤としての実質的な可能性を示した。
【0200】
本発明は、リガンドの設計および合成の領域における主要な突破口に関連し、最初に合理的に設計された芳香族性ペンタデンテートマクロサイクル性リガンドであるトリピロールジメチン−誘導「拡大ポルフィリン」5D 69の合成に関する。慣用名「テキサフィリン」が与えられたこの化合物は、遊離の塩基の形態、ならびに、充分に研究されたポルフィリン類の20%ほど小さいテトラデンテート結合核内に安定な形態で収容されるには大き過ぎるCd2+、Hg2+、In3+、Y3+、Nd3+、Eu3+、Sm3+およびGd3+等の多くを含む種々の金属陽イオンと共に、加水分解的に安定な1:1錯体の形成を支持する形態の両者において存在可能である。加えて、5Dの遊離塩基の形態は一価陰イオン性リガンドであるから、二価または三価金属陽イオンから形成されるテキサフィリン錯体は、中性pHにおいて正に荷電している。この結果、これらの錯体の多くは水に可溶性であり、少なくとも類似するポルフィリン錯体に比べて格段に易溶性である。
【0201】
現在までに、2種類の異なったCd2+付加物の2種類のX−線結晶構造が得られている。一つは、同等に飽和した五角形のビピラミダールビスピリジン錯体69 aであり;他は同等に不飽和の五角形のピラミダールベンズイミダゾール錯体である。重要なことに、両者は、この新規リガンド系の平面的ペンタデンテート構造であることが確認され、またこの標準的「拡大ポルフィリン」の芳香族性としての役割を支持している。
【0202】
芳香族性構造の更に別の支持は、5Dの光学的性質によっている。例えば、5Dの構造的に特徴付けられたビスピリジンカドミウム(II)錯体のCHCl3中における767nm(κ=51,900)での最低エネルギーQ−型バンドは、典型的な対照カドミウム(II)ポルフィリンのものと比べて、かなり高強度(およそ10の因子をもって!)であり、実質的に赤方に変位(ほぼ200nm!)している。更に興味あることは、化合物5Dおよびその亜鉛(II)およびカドミウム(II)錯体の両者は、一重項酸素に対して極めて有効な光感応剤であり、空気飽和メタノール中において354nmにて照射された場合に1O2形成について60と70%との間の量子収率を与えることである。69Cこれらの系を光力学的治療および血液精製プロトコールにおいて使用するための有力な理想的候補としているものは、これらの後者の顕著な性質である。
【0203】
化合物5Dに類似する種々の新規な芳香族性トリピロールジメチン−誘導マクロサイクルリガンドが、現在調製され、また更に計画されている。例えば10D−15D(図25参照)等のこれらの多くが既に合成され、テクサフリン5Dとして金属錯体を形成することが見出され、また多くの他のものが容易に想像され得る。本発明のこの局面は、元のテキサフリンの新規類似体の調製、ならびにそれらの化学的および光生物学的性質の説明に関する。重要なことは、具体的に小さい置換を行なうことによって、最低Q−型バンドのエネルギーを望むように調節し得るという事実である。例えば、14D、5Dおよび16D(既に試験されている)から誘導されるカドミウム(II)錯体の一連において、この遷移は、690から880nmまでの範囲にある。従って、現在においてテキサフィリン−型拡大ポルフィリン類の光学的性質は、任意の所望のレーザー周波数に合せ得るものと思われる。再度であるが、このことは、この種の染料が種々の光力学的応用に良く適合するであろうことを示唆する特徴である。
【0204】
いくつかの予備的インビトロの生物学的研究が、18および22π−電子テキサフィリン類14Dおよび5Dのカドミウム(II)錯体を用いて行なわれた。これらの結果は、範囲は限られるが、奨励となるものである。例えば、両錯体は、最低エネルギー吸収(それぞれ690nmおよび767nm)における光の20J/cm2の照射によってHSV−1非感染性の約2log光殺滅(2 logphoto−killing)の効果を有し、更に重要なことに5Dおよび14Dのいずれもが、感知し得る不明な抗ウイルス活性を示さなかった(幸いにも、それらは光の不在時に全身性細胞毒性の多くの証拠を示さない)。加うるに、該22π−電子カドミウム含有タキサフィリン5Dは、吸収および放射の両者の測定によって、リンパ球上に選択的に局在化することが示された。この後者の結果は、特にこれらの材料の予防的な光力学的抗AIDS血液−処理プログラムにおける可能性ある使用について良く予言している。現在までに研究されたタキサフィリン系により達成されるHSV−1活性の2 log減少は、成長し得るプロトコールを完全に設計するには未だ不充分である:サフィリン(6D)に加え、文献の方法70により調製されたHPDおよびPIIの両者は、適切な最低エネルギー遷移(それぞれ630および690nm)において照射された場合に、同様な光の影響下でウイルス活性の約5 logの減少を与えた。完全には特徴付けられていないヘマトポルフィリン−誘導系による機構的な比較は困難であるが、直接的構造的対応関係が、トリピロールジメチン−誘導カドミウム(II)テキサフィリンと遊離塩基サフィリン系との間に存在する。主な差異は、光感応剤上の全電荷にある。従って、これら2種のマクロサイクル系は、ウイルスエンベロープに対して異なった様式で結合するであろう;多分、サフィリンは脂質層に挿入され、また電荷を帯びたメタロテキサフィリンは膜表面に着座して有害な凝集(これは一重項酸素の生成を低減するであろう)を受けるであろう。2種類の密接に関連する系(テキサフィリン対サフィリン)の間の臨界的な観察上の差異は、わずかな構造的差異が重要な機能上の効果に反映するであろうことを示唆している。加うるに、これらの実験的知見は、1)遊離塩基テキサフィリン系は、これまでカドミウム錯体が研究されてきたインビトロおよびインビボにおける応用のための格段に効率的な光感応剤であること、および2)テキサフィリン周囲上の置換基を調節することは、金属化および金属非含有系の重要な生物学的分配特性の変更をもたらすことを示唆している。テキサフィリンの光力学的抗ウイルス効果を増大するすべての試みが失敗であったとしても(我々はほとんど起こり得ない結果と考える)、この新規光感応剤は、より古典的な腫瘍治療法において応用を見出すことが可能であろう:例えば、18π−電子カドミウム−含有マクロサイクル系14Dは、白血病細胞Daudi−株のおよそ4 log光殺滅効果を有することが、既に示されている。
【0205】
テキサフィリン5Dの合成は、図26に要約されている。それは3つの主要工程を含む。第1は、トリピラン19Dの合成である。この重要な中間体は、ピロール17Dと18Dとの間の単純な酸触媒縮合の結果として直接に得られる。脱保護およびホルミル化に続き、重要なジホルミルトリピラン前駆体21Dが、17D基く80%を越える収率をもって得られる。このトリピランとO−フェニレンジアミンとの縮合は、合成経路中の第2の臨界的工程を構成する。幸運にも、この反応は、実質的に定量的に進行し、「テキサフィリン」骨格22DのSP3ハイブリッド化形態を直接的に与える。76次いで、最後の臨界的工程は、酸化、および特有なものとして同時に起こる金属の結合に関する。Cd2+、Hg2+およびZn2+の場合には、出発SP3ハイブリッド化前駆体(22D)を適切な塩と共に酸素の存在下で単に攪拌することにより、芳香族性のSP2ハイブリッド化形態がおよそ25%の収率で得られる。69しかしながら、このような単純な金属挿入および酸化工程は、ランタニド系の陽イオンについては行えない。ここでは、金属塩、プロトンスポンジ(登録商標)(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン)、および酸素の組合せが、酸化および金属挿入を行うために必要とされる。興味深いことに、プロトンスポンジのみの使用は、リガンドの遊離塩基形態を直接に与えるが、残念ながらわずかに10%の収率である。この後者の収率を最適化する努力は、なおも進行中である。
【0206】
他の種々の置換ジアミンおよび/またはジホルミルトリピランを使用することにより、化合物10D−16D(図25)、1E−7E、8E、9E(図31)、23D、25D、26D(図27)を含む広範な他のトリピロールジメチン−誘導マクロサイクル類を生成することが可能であることは既に示されており、当業者は更に多くを調製し得るであろう。例えば、適切なジアミンおよび/またはジホルミルトリピランを使用することにより、当業者は図27に示された修飾テキサフィリン類24D、27D−30Dを生成させることができるであろう。ここにおいて、一般化構造式29Dおよび30Dの場合に、置換基R1、R2、R3、R4およびR5は、別個に独立してH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボニル、カルボキサミド、エステル、アミド、スルフォナート、または置換アルキル、置換アルコキシ、置換エステル、もしくは置換アミドであってよく、また金属Mは、任意の二価または三価金属陽イオンであってよく、−5と+5との間の整数値として適切に補正された電荷nを伴う。ここで当業者にとっては明らかであるように、電荷nは、金属の選択、考慮されるpHおよび置換基R1−R5を説明するように調節される。例えば、R1=カルボキシルおよびR2−R5=アルキル、ならびに金属M=Gd+3、ならびに溶液のpH=7(R1=CO2 −となるよう)である場合には、電荷nは零であろう。
【0207】
広範囲の種々の可溶化テキサフィリン類の開発の更なる利点は、これらの多くが更に官能化するために好適であることである。例えば、テキサフィリン7E、25D、26D、27D、28Dまたは29Dのチオニルクロライドまたはp−ニトロフェノールアセテートを用いた処理は、モノクローナル抗体類または他の興味ある生物分子種を結合するために好適な活性アシル分子種を生成するであろう。別法として、標準的なその場での(in situ)カップリング法(例えばDCCI)は、ある種の結合を行なうために使用できるであろう。いずれの場合においても、有力な光感応剤または活性な放射性同位体を直接に腫瘍部位に結合または伝達する能力は、新生物疾患の治療および/または検出において計り知れない有力な利益をもたらすであろう。77
現在までに調製された全てのテキサフィリン系、および上記で提案された全ての新規な標準的系は、イミン−含有マクロサイクル核を含む。このような連結基の使用は、利点と不都合との両方を提供する。第1の利点は、このような副単位を含むマクロサイクル系が容易に調製され、一般的に効果的リガンドとして作用することである(このことは、テキサフィリンについては正に真実である)。他方において、少なくともテキサフィリン5Dの場合には、このことは予期されるより小さな問題ではあるが、それらは加水分解に関して熱力学的に不安定である。例えば、最も良く研究されているカドミウム含有錯体5Dおよびガドリニウム錯体2Bおよび7B(図17)のイミン加水分解に関する半減期は、両者ともにpH7において30日以上、またpH2において数時間以上である。それでもやはり、より高い安定性が要求されるであろう場合において応用が考えられる。この理由から、最も弱いCH=N結合が、より強いCH=CH副単位で置換された2種類のメチン−連結テキサフィリン類似体31Dおよび32D(図28参照)の合成は、この発明の目的である。化合物31Dおよび32Dは、大フラン−含有アヌレン類の合成に有用であることが示されている標準的Wittig−塩基閉環78、または最近ポルフィセン合成に有用であることが示されたMcMurry−型カップリング74のいずれかを用いて調製され得ることが期待される。
【0208】
一旦入手すれば、全ての新規テキサフィリン系は、可能な場合にX−線回折法を含めて、通常の分光学的および分析的手段を使用して完全に特徴付けされるであろう。加うるに、光学的性質の完全な分析は、全ての新規系について、インビボに属するであろう条件に近似させるべく設計されたものを含めて実験条件の範囲のもとで行なわれるであろう。光学的吸収および輻射スペクトルの単純な記録等の初期測定は、P.I.の研究所において行なわれるであろう。三重項寿命および一重項酸素の量子収率測定を含むより詳細な分析が行なわれるであろう。提案された研究プログラムのこの部分の目的は、調製された各々およびすべての新規テキサフィリンについて、完全な基底および励起状態の反応性形態を得るためである。かくして、一重項酸素生成が最大となるのは何時か、それの形成の量子収率は、最低エネルギー(Q−型)遷移の位置にどのように影響されるか、集合は、ある種の溶媒中、またはある種の生物学的に重要な成分(例えば、脂質、蛋白質等)の存在下でより一般的なものであるかインビトロにおける光学的性質の有意な差異は、陽イオン性、陰イオン性または中性置換基を持って作出されたテキサフィリン類の使用から誘導されるであろうか、等の質問のすべてに解答されるであろう。
【0209】
一旦、上記錯体が生成されると、選択実験が行なわれる。標準的なインビトロプロトコールが、問題のテキサフィリン誘導体のインビトロ光殺滅能力の評価に使用されるであろう。例えば、選択された染料が、種々異なる濃度をもって種々の癌性細胞に投与され、光の存在および不在下の両者で複製速度が測定される。同様に、選択された染料が標準ウイルス培養物に添加され、光の存在および不在下で成育阻止速度が測定される。適切な場合には、種々の可溶化担体が、テキサフィリン光感応剤の溶解度および/または多量体の性質を増大するために使用され、また、あるのであれば、これらの担体が染料の生物的分布特性を調節する効果が評価される(第1には蛍光分光学を使用する)。当然のことながら、全ての場合において適切な対照実験が正常細胞を用いて行なわれ、テキサフィリンの本質的な暗黒および光毒性が測定されるであろう点は強調されなければならない。
【0210】
インビトロ実験方法の一般化された組合せから、該テキサフィリン系の光力学的能力の明確な様相が明らかになるであろうことが期待される。再び上述したように、構造および反応性に関する重要な質問がなされ、そして(望むらくは)明確な様式で解答されるであろう。加えて、いくつかの予備的な毒性および安定性の情報が、これらのインビトロ実験から明らかと成り始めるであろう。ここで興味ある質問は、該テキサフィリン系が、生理学的条件下でどの程度長く保たれるか、および中心金属の性質がこの安定性に影響を及ぼすかという点を含む。同様に、あるいはより重要な点は、中心陽イオンが細胞毒性に影響するかという質問である。本発明者等により出版された論文中69b,69dで議論したように、大きい結合陽イオン(例えばCd2+またはGd3+)を、単純な化学的方法により除去することは不可能である(しかしながら、Zn2+は容易に脱落すると思われる)。更に、予備的結果は、最もよく研究されたカドミウム(II)−含有テキサフィリン錯体5Dが、感知し得るほどに細胞毒性的ではないことを示唆している。それでもなお、本質的毒性の質問は、最も重要なものの一つであって、全ての新規系の細胞毒性は、インビトロで選別され、適当とみなされた場合に、更にインビボ毒性研究が行なわれるであろう。
【0211】
一旦、インビトロ選択実験が完了した後は、特に有望であると思われる有力な光感応剤の試料が、更に開発のために選択されるであろう。血液処理プロトコールにおいて使用するための安定性と光力学的能力との最良の組合せを有するものは、全血試料を用いた流れの系において更に評価される。腫瘍治療のために有望と思われるものは、更に動物スクリーニングにかけられる。
【0212】
本発明のこの局面は、その第1のものが我々の実験室で最近調製され、特徴付けられた新しい種類の「拡大ポルフィリン類」であるトリピロールジメチン−誘導「テキサフィリン類」の統合および光化学的性質に関連する。これらの基礎研究が、腫瘍の検出および治療に加えて輸血からのHIV−1および他のエンベロープウイルスを除去する成長し得る方法の開発を導くことが期待されている。ここに例示した長距離の目標地点は次のとおりである:
1.血中のヒト免疫不全ウイルス(HlV−1))および他のエンベロープウイルスを殺滅し、血液成分に損傷を与えることなく操作するための安全かつ効率的な光感応剤を、更に合成する。
【0213】
2.インビボにおける腫瘍の光力学的治療に使用する新規な安全かつ効果的な光感応剤を開発する。
【0214】
これらの長距離の目的への取組は、適切に修飾されたトリピロール−ジメチン誘導テキサフィリン型拡大ポルフィリンの調製および使用が中心に置かれる。このことは、上記目標の実現に向けての基本的な第1歩である。本発明の特定の拡大は、以下を含む。
【0215】
1.更に、我々の最初のテキサフィリンおよび存在する類似体の統合および一般的な化学的性質を探究し、生物医学的に最も興味深いと思われるこれらの錯体の完全な溶解性、安定性および反応性の様相を入手する。
【0216】
2.現在入手可能なテキサフィリンの単純な類似体を、陽イオン性、陰イオン性、または中性の置換基を用いて合成し、このような修飾が、これら拡大ポルフィリン類の水溶解性および生物分布特性をどの様に変えるのか研究する。
【0217】
3.モノクローナル抗体または他の興味深い生物分子に結合するために適した、反応性の親核性または親電子性置換基を含むテキサフィリン類似体を作る。
【0218】
4.重要なイミン(CH=N)官能基が、多分より強いメチン(CH=CH)連結基で置換された新規テキサフィリン型芳香族性マクロサイクルを調製する。
【0219】
5.一重項酸素生成を最大にするそれらの因子(例えば*max)を明確に決定するべく新規テキサフィリンすべての完全な光化学的研究を行なう。
【0220】
6.このプロジェクトの合成段階の過程で調製された新規テキサフィリンのインビトロにおける光力学的腫瘍およびウイルス殺滅効率の試験を行なう。
【0221】
7.上記に概説したように合成され、選択された、より有望なテキサフィリンのインビボにおける光力学的抗腫瘍特性の試験を行なう。
【0222】
以下のリスト中の文献引用を、その引用した理由のためにここに参考として取入れる。
【0223】
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77.ポルフィリン−抗体結合の例、および種々のカップリング方法の相対的な利点に関する議論は、例えば次を参照のこと:Mercer−Smith,J.A.;Roberts,J.C.;Figard,S.D.;Lavallee,D.K.in「Antibody−Mediated Delivery Systems,」Rodwell,J.D.;Ed.Marcel Dekker:New York;1988,pp.317−352.
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(実施例6)
本発明の有用性の1局面は本明細書に記載される錯体をウイルス及びウイルス感染された又は潜在的に感染されたエンカリオティック(encaryotic)細胞の光子誘発不活性化に使用することによって実証される。本実施例で使用される一般的な光不活性化法はテキサス州(Texas)、ダラス(Dallas)のベイラー リサーチ ファンデーション社(Baylor Reseach Foundation)のインフェクシアウス ディシーズ アンドアドヴアンスド レーザー アプリケーションズ ラボラトリーズ(Infectious Disease and Advanced Laser Applications)によって開発されたものであり、ミラード モンロー ジュディー(Millard Monroe Judy)、ジェームスレスターマチュウス(James Lester Matthews)、ヨーゼフ トーマス ニューマン(Joseph Thomas Newman)及びフランクリン ソガンダレス−バーナル(Franklin Sogandares−Bernal)により1987年6月25日に出願された米国特許出願(テキサス州ダラスのベイラー リサーチ ファンデーション社に譲渡)の主題である。
【0224】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)並びにヒトリンパ球及び同単核細胞(両者共、HSV−1の末消単核血管細胞(PMC)及び細胞宿主である)の光増感不活性化におけるポルフィリン様大環状化合物のあるものの効率を明らかにした。大環状化合物の光増感剤であるジヘマトポルフィリンエーテル(DHE)又はヘマトポルフィリン誘導体(HPD)を使用するウイルスの不活性化についての従来の研究は外被を有する、即ち膜質のコートを有する、そのような研究されたウイルスだけがポルフィリンにより不活性化されることを示している。研究された、外被ウイルスにHSV−1、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス1及びヒト免疫欠損ウイルスHIV−12がある。
【0225】
単純ヘルペス1型(HSV−1)の光増感不活性化について本発明の各種大環状化合物を用いて培養培地で調べた。結果を第4表に示す。
【0226】
【表4】
【0227】
3種のカドミウム含有大環状化合物[3A、10D(MがCdの場合)及び14D(MがCdの場合)]は濃度20μMにおいて、ウイルスプラーク検定で判定して、ウイルスの不活性化率が≧90%であることを証明した。
【0228】
この大環状化合物の光増感に関する研究では外被HSV−1を細胞培養におけるその増殖の容易さと感染性の評価に基づいてスクリーニング用モデルとして用いた。HSV−1の光不活性化のスクリーニング法は前記の方法と同様であった3。本質的には、選択された大環状化合物をいろいろな濃度で106PFU/mLのHSV−1の細胞不含懸濁液に加えた。これらウイルス懸濁液に選択された染料の最適吸収波長においていろいろな光エネルギー密度で照射した。対照は(1)非照射ウイルス、(2)大環状化合物の不存在下において照射されたウイルス及び(3)選択された濃度の大環状化合物で処理され、暗所に保持されたウイルスより成るものであった。全てのサンプルについて次にヴェロ(Vero)細胞中のPFU/mLの数を定量することによってウイルスの感染性を評価した。
【0229】
これらウイルス懸濁液を連続的に希釈し、続いてヴェロ細胞の単層に37℃において1.5時間吸収させた。重疊層培地を加え、そして細胞を37℃において3〜4日間インキュベートした。次に、その重疊層培地を取り除き、単層をメタノールで固定し、かつギームサ染色液で染色し、そして解剖顕微鏡下で個々の斑点を数えた。非感染細胞培養物も大環状錯体化合物に暴露して直接的な細胞毒の諸影響を除いた。
【0230】
ヒト全血漿中の0.015〜38μMの範囲の濃度の錯体3Aに暴露した後の光の存在下及び不存在下におけるPMCの不活性化を第29図及び第30図に示す。不活性化はミトゲン検定で判定した。光の不存在下における3Aによる毒性開始(第4図を参照されたい)及び1Cによる毒性開始(第17図を参照されたい)は0.15〜1.5μMであった(第29図)。第30図にミトゲン検定によって示されるように、0.15μM及び波長770nmの20ジュール/cm2において3Aに暴露された細胞の有酸素性光増感化はPMCの細胞分裂を著しく抑制した。光増感剤濃度か光線量のどちらかの中度の増加は本質的に完全な細胞の不活性化をもたらすと期待される。
【0231】
今までに得られた結果(その若干を本明細書にまとめて示す)は、本発明の広がったポリフィリン様大環状化合物は遊離のHIV−1に対する、また同様に感染した単核細胞に対しても効率的な光増感剤であることを強く示している。これら大環状化合物の側鎖基の極性及び電荷を変えることはHIV−1のような遊離の外被ウイルスに対する、及びウイルス感染した抹消単核細胞に対する結合の程度、速度、及び多分位置を著しく変えると予想される。これら置換基の変化はまた光増感剤の吸収、及び骨髄を汚染している白血病細胞及びリンパ腫細胞の光増感化、並びに骨髄の正常細胞による光増感化を変調すると期待される。
【0232】
次の文献は説明において挙げた理由から本明細書において引用、参照されるものである。
【0233】
(文献)
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3.Skiles,H.F.,Sogandares−Bernal,F.,Judy,M.M.,Matthews,J.L.及びNewman,J.T.Biomedical Engineering VI:Recent developments.Sixth Southern Biomedical Engineering Conference,1987.
(実施例7)
本実施例は本発明の基本的な(basic)5配位(5座)の広がった(拡大)ポリフィリン化合物及び錯体並びに合成したそれらの誘導体の幾つかを要約して説明するものである。第31図に化合物lE〜7E、14D及び15Dを示す。変種はオルト−フェニレン−ジアミノ置換基、即ちR1及びR2が、及び出発ジアミン自体の性質が変化しているものである。オルト−フェニレン−ジアミノ置換基上のR1及びR2が共に化合物1Eにおけるように水素である場合のテキサフィリンの基本的構造を示す。これらの置換基R1及びR2はまた共にメチルCH3であってもよい(化合物2E)。更に、R1がHであるとき、R2は塩素(化合物3E)、臭素(化合物4E)、ニトロ(化合物5E)、メトキシ(化合物6E)又はカルボキシ(化合物7E)であることができる。Mが水素であるとき、錯体の電荷は0である(M=0)。Mが二価の金属、例えば水銀+2、カドミウム+2、亜鉛+2、コバルト+2又はマンガン+2であるとき、錯体の電荷は+1である(n=1)。Mが三価の金属カチオン、例えばユーロピウム+3、ネオジウム+3、サマリウム+3、ランタン+3、ガドリニウム+3、インジウム+3又はイットリウム+3であるとき、錯体の電荷は+2である(n=2)。1個の星印が付けられた錯体について(1E及び2E)、上記の二価及び三価の金属は総て形成された種々の錯体に含まれている。2重の星印が付けられた錯体(3E〜6E)は亜鉛又はカドミウムのどちらかの誘導体(M=Zn又はCd;n=1)として合成された。本明細書の他に節に使用可能な他の多くの化合物が記載されるか、又は本明細書に示した手引きにより当業者が容易に合成できるが、本実施例に述べられる特定の化合物は多くの目的に、例えばウイルス、特にレトロウイルスの生物学的サンプルを精製することを伴うものに特に有用であると思われる。これらの化合物はまた、本明細書の他の所で述べられる通り、例えば光力学的癌治療、磁気共鳴画像形成(MRI)の強化及び抗体の機能化のような目的に有用であるだろう。
【0234】
(実施例8)
磁気共鳴画像形成の強化
多くの点で、癌コントロールの鍵は、多くはないにしても、それが後続の治療処置にあるのと同じくらい多く早期検出及び診断にある。新形成(neoplastic)組織を発癌の初期段階に観察でき、かつ認識できるようになす新しい技術には従ってこれら疾患に対する戦いに果たす重要な役割がある。1つのそのような有望な技術は磁気共鳴画像形成(MRI)である1−5。全く新しい、この非侵襲性の、明らかに無害の方法は最重要の診断具として確固たるものとはなっていないけれども、補足用又は、場合によっては、交換用コンピュウターは固形腫瘍検出のために選ばれた方法としてX線断層撮影法を助るものであった。
【0235】
現在のMRI法の物理的基礎は、強い磁場では異なる組織における水プロトンの核スピンは、それが短いrfパルスの適用によって静止ボルツマン分布から乱されるとき、緩和されて色々な速度で平衡に戻ると言う事実にその起源を持つ。スピン−エコー画像形成の最も一般的なタイプについては、平衡への復帰は式1に一致して起こり、それぞれ縦(longitudinal)緩和時間と横(transverse)緩和時間である2つの時間定数T1及びT2によって支配される。
SI=[H]H(*){esp(−TE/T2)}{1−exp(−TR/T1)}
(1)
ここで、SIは信号強度を表し、[H]はある任意の容積要素(ボクセルと称される)における水プロトンの濃度であり、H(*)はこの容積要素の内外の運動(もしあれば)に対応する運動因子であり、TE及びTRはそれぞれエコー遅延時間及びパルス反復時間である。MRI画像を得ることと結び付いた種々のパルスシーケンスは従って励起rfパルス及びインテロゲーション(interrogation)rfパルス(第1は系を乱すものであり、第2は平衡への復帰程度を測定するものである)と結び付いた(及び両パルス間の)時岡を設定し、そして上記のとおり有効な特定のT1及びT2の関数であるSIを測定することによってTE及びTRを選択することに相当する。T1及びT2は共に局所的(バルクの)磁場環境の関数であり、また同様に水プロトンが位置する特定の組織の関数であるので、これら値の差(したがってSI)は画像の再構成を可能にする。勿論、これらの局所的な、組織依存性の、緩和の差が大きいときだけ組織の識別を行うのが可能である。
【0236】
生物学的系についての実施においては、T2値は非常に短い(そして、TE及びTRはこの状況を強調するように選ばれる)。しかして、それは緩和効果と信号の相対強度を支配する縦時間定数(T1)における差である:T1の減少は信号強度を増加させることに相当する。従って、特定の組織又は器官についてT1を選択的に減少させるように作用する総ての因子は、かくして、その領域について強度を増加させ、かつ動物のバルクのバックフラウンドに対してより良好な対比(ノイズに対する信号)をもたらす。これは常磁性のMRI対比剤(contrast agent)が作用するようになる場合である4,5。
【0237】
磁気共鳴分光分析の最も初期のころ以来、1個以上の不対スピンを有する常磁性化合物がそれら化合物が溶解されている水プロトンについて緩和速度を高めることは知られている6。この向上の程度は緩和度(relaxivity)と称されるが、これは総合相互作用の不存在下で式2におけるRi(単位:M−1s−1又はmM−1s−1)で与えられる4,5。
(1/Ti)obsd=(1−Ti)d+Ri[M] i=1,2(2)
ここで、(1/Ti)obsdは常磁性種Mの存在下での観察された緩和時間の逆数であり、(1−Ti)dは常磁性種Mの不存在下での観察された緩和時間である。MRIの向上についての、任意の与えられた常磁性種、即ち金属錯体の緩和度は電子のスピン(金属上の)とプロトンのスピン(水上の)との間の双極子−双極子相互作用の大きさに依存する。この相互作用の程度は常磁性錯体と問題の水分子との間の相互作用の本性に強く依存する。「内球(inner sphere)」と「外球(outer sphere)」の両者の全緩和度Riに対する寄与を定義するのが便利であることが旧来から証明されている4,5。前者は金属の配位球(coordination sphere)に直接関与する水分子を説明するものであり、後者は他の総ての緩い相互作用(例えば、第2の配位球中で結合した水の水素結合と並進性拡散)を説明するものである。化学的に実行可能である場合、それは一般にRiを支配する内球緩和である。この相互作用について縦緩和に対する寄与は式3で与えられる4,5。
(1/T1)(内球)=PMq/T1M+tM(3)
ここで、PMは金属イオンのモル分率であり、qは結合した水分子の数であり、tMは結合水の寿命であり、T1Mは結合水のプロトンの緩和時間である。この後者の項の値は双極子−双極子(「空間を介して」)の項と接触(「結合を介して」)の項の両者を説明するソロモン−ブロエムバーゲン(Solomon−Bloembergen)の式(式4−6)で近似される7。
【0238】
【数1】
【0239】
ここで、Y1はプロトンの磁気回転比であり、gは電子g−因子であり、Sは常磁性イオンの全電子スピンであり、βはボアー磁子であり、rは水プロトン−金属イオン間距離であり、[A2π/h]は電子−核の超微細カップリング定数であり、そしてWsとWlはそれぞれ電子ラーマー(Larmor)摂動振動数とプロトンラーマー摂動振動数である。双極子の相関時間及びスカラー相関時間tc及びteは式
1/tc=1/T1e+1/tM+1/tR(5)
1/te=1/T1e+1/tM(6)
で与えられる。ここで、T1eは縦電子スピンの緩和時間であり、tRは全水−錯体の総体としての回転タンブリング時間である。もっと精密な理論的取り扱いは内球の緩和通路における電子サブレベルの静的ゼロ場分裂を乱すと思われる衝突性の緩和効果、その他の因子を説明するのに有効である5。詳細な分析はまた外球機構からの寄与を説明するのにも有効である5。それにもかかわらず、この議論のためには上記の簡単なソロモン−ブロエムバーゲンの式で十分である。即ち、それらの式は良好な常磁性対比剤に必要とされる鍵となる物理的特徴を説明しているのである。
【0240】
物理的観点から、MRI対比剤には、高度に常磁性であり(そのため磁気モーメント項S(S+1)が大きい)、大きなT1eを有し、かつ大きな回転タンブリング時間(tR)を示す種が必要である。加えて、理想的な対比剤は1個以上の水分子を結合させ(そのため内球緩和機構が働く)、かつこれらの水を最適の速度(1/tM)で交換すべきでもある。錯体の選択によるよりも局所環境の有効粘度(即ち、錯体がゆっくり回転している蛋白質にくっつくのか10)によって更にしばしば設定されるtR’を除いて、これら因子は総て塩基性の常磁性カチオンの選択によって、及び続く配位子の設計によって影響されるだろう4,5,9。この配位子の設計−これは現在のMRI研究の主目的をなしている−は勿論非常に厳しい生物学的要求にも依存する。想定上の対比剤は高度に常磁性であり、かつ良好な緩和の向上を達成しなければならないのみならず、それは投与剤量において無毒であり、生体内で安定であり、診断完了後速やかに排出され、そして勿論望ましい組織局在化能を示さなければならない。これらの基準を一緒に満足するのは極めて厳しい。
【0241】
実際は、現在臨床的に使用されている唯一の常磁性MRI対比剤はバーレックス ラボラトリーズ社(Berlex Laboratories)が販売するGd(III)ジエチレントリアミンペンタアセテートのビス(N−メチルグルカミン)塩・(MEG2)[Gd(DTPA)(H2O)]である(構造10を参照されたい)11−18。このジアニオン性錯体は細胞外の領域に選択的に集中し、主として大脳の腫瘍と結び付いた毛細病変部の視覚化に用いられつつある11−13。[Gd(DTPA)(H2O)]−2において、水1分子が第1(内側の)配位球の中で結合されており、そして水中、37℃においてこの錯体は20MHzにおいて3.7mM−1s−1の緩和度を示す4,9,19。EDTAの単なるGd(III)錯体(それについての25℃に似おけるlogKassc.は17.4である20,21)とは著しく違って、上記DTPA錯体は生理的条件下で動力学的に安定なように十分に熱力学的に安定であるように思われ(25℃において、logKassc.=22.520,21)、そして明らかに投与して数日以内にそのまま腎臓を通して分泌される14。これらの望ましい特徴にもかかわらず、優れた動力学的安定性、より良好な緩和度、より少ない正味電荷(投与溶液の重量オスモル濃度、従って痛覚閾値はより低い)及び/又はいろいろな組織限局化容量を持つ他の対比剤が臨床用途に望ましいことは明らかである。実際、ロウファー(Lauffer)はこの主題についての最近の概説において5「動力学的に不活性な錯体、特にGd(III)の錯体に対する新しい合成法の開発が必要である」と記載している。これらは、好ましくは、錯体に対してその性質を変調することができる特定の置換基を可能にすべく十分に使用できなければならない。
【0242】
事実、今日まで、新規な可能性のあるMRI対比剤の開発に相当の努力が向けられて来た21−37。この研究のほとんどはGd(III)の新規な錯体を製造することに集中していた21−29,362,376。Gd(III)塩に力点が置かれたのはこのカチオンが7不対f−電子を有し、その磁気モーメントがFe(III)及びMn(II)のような他の常磁性カチオンより大きいという事実に由来する4, 5。従って、他のすべてのことが同じであれば、Gd(III)の錯体はMn(II)又はFe(III)から誘導されるものよりも優れた緩和剤となると予想される。加えて、鉄及び、程度は鉄よりも低いがマンガンは両者共種々の特殊化された金属結合系によってヒト(及び他の多くの生物)のなかで非常に効率的に金属封鎖され、貯蔵される38。その上、鉄及びマンガンは共に酸化状態の範囲で存在することができ、かつ各種の有害なフェントン(Fenton)型遊離ラジカル反応を触媒することが知られている39。これらの欠陥のいずれも持たないガドリニウム(III)は、従って、明らかに多くの利点を与えると思われる。しかし、残念ながら、Fe(III)及びMn(II)がそうであるように、Gd(III)の水性溶液はこれを有効な向上に必要とされる0.01〜1mM濃度で直接MRI画像形成に用いるには毒性が強すぎる4,5。従って、DTPAがそうであるように、Gd(III)及び/又は他の常磁性カチオンとの加水分解上安定な錯体を生体内で形成する新しい試剤を開発することに力点はある。非常に有望なDOTA系21−27及びEHPG系28,29を含めて多数のそのような配位子が今日知られている(広範な概説については文献5を参照されたい)。ほとんどすべての場合において、よって立つところは、しかしながら、同じ基本的な自然科学的アプローチである。具体的に言うと、Gd(III)の結合について、高い熱力学的安定性が生体内に適用するのに十分である動力学的安定性に変化することを期待して、カルボキシレート、フェノレート及び/又は他のアニオン性のキレート形成性基をそのような高い熱力学的安定性を持つ本来的に変化しやすい(labile)錯体を生成させるのに用いられつつある。実際、錯体自体が高い動力学的安定性を持っている変化しにくいGd(III)錯体の製造には現在努力がほとんど向けられていない。このような系の製造がむづかしいこの問題は極めて単純であるように思われる。例えば、ポルフィリン(容易に変成され、かつ少なくとも〔Mn(II)TPPS〕3−、その他の水溶性の類縁化合物30−34にとっては、良好な緩和度と良好な腫瘍限局性を示す多様に合成し得る配位子)に十分に結合される遷移金属カチオンとは違って、Gd(III)はポルフィリンと弱い及び/又は加水分解上不安定な錯体しか形成しない30c,34,40。ただし、他の単純な大環状アミン−及びイミン−誘導配位子36,37,41はランタニド系列のある特定の元素との安定な錯体を支持し、かつ、今までのところは未だ実現されていないが、Gd(III)に基づくMRI用途の支持用キーランド(supporting cheland)として作用するある徴候を示す。本発明の根拠となる事実は、「広がったポルフィリン」を用いる方法を使用して変化しにくいポルフィリン様Gd(III)錯体を生成させうること、及び一旦形成されるとこれらの錯体はMRI用途のための有用な対比剤となることである。事実、テキサフィリンはCd2+、Hg2+、Y3+In3+及びNd3+を含めて各種の二価及び三価のカチオンとの錯体を安定化することができる。加水分解上安定なNd3+錯体がテキサフィリンによって支持することができるという観察結果は種々のガドリニウム(III)に基づくMRI用途におけるテキサフィリンの使用にとってよい徴候である。しかし、残念ながら、実施例4においてより詳しく説明されたように、テキサフィリンから安定なGd3+錯体を良好な収率で単離すべく今日までなされた努力は総て失敗に終わった。これはその錯体が実際には非常に水溶性であるために標準的な処理法が役に立たないためであると推測される。十分に特徴付けられたSm3+、Eu3+及びGd+3(Y3+も)の錯体が更に疎水性のジメチル−テキサフィリンから製造されているという事実は上記の推定に一致する。これらの錯体は対応する還元された(メチレン架橋された)大環状前駆体化合物から以下において検討され、また実施例1及び2で説明された標準的な金属挿入、酸化条件を用いておおよそ25%の収率で得られる。重大なことには、これら錯体は総て1:1メタノール−水混合物に可溶であり、かつ総てがそのような潜在的に錯体が分解する条件下で極めて安定なことである。例えば、Gd3+錯体の1:1メタノール−水中の室温における半減期は5週間を越える。しかして、加水分解上安定なガドリニウム(III)錯体(単なるポルフィリンを用いては達成することができないなにか)を生成させるのにテキサフィリンタイプの方法を用いることが可能である40。この重要な結果は、改良された水溶性又はより良好なバイオ分布性(biodistribution properties)を持つ安定なGd3+錯体の製造を可能にするテキサフィリン骨格の更なる変成を与えるものであった。加えて、適当なアニオン性側鎖を使用することによって正味の総電荷を持たない中性の錯体を製造することが可能であるべきである。このような錯体は水性溶液中でより低い重量オスモル濃度を示すだろう。これはそれらの投与と結び付いた痛みを低下させ、プラスの臨床結果を有するだろう。かくして、MRIの使用に対する、対比剤開発のテキサフィリンを用いるこの方法は有望であるように見える。
【0243】
次に挙げるリストの文献は上記説明において挙げた理由から本明細書で引用、参照されるものである。
【0244】
(文献)
1.歴史的概説について参照されたい:Budinger,T.F.;Lauterbur,P.C.,Science 1984,226,288.
2.Morris,P.G.,Nuclear Magnetic Resonance Imaging in Medicine and Biology,Claredon Press:Oxford;1986.
3.NMRの生物学的応用の概説について参照されたい:MacKenzie,N.E.;Gooley,P.R.Med.Rev.,1988,8,57.
4.MRI対比剤の入門的議論について参照されたい:Tweedle,M.F.;Brittain,H.G.;Eckelman,W.C.;Gaughan,G.T.;Hagan,J.J.;Wedeking,P.W.;Runge,V.M.,Magnetic Resonance Imaging,第2版において、Partain,C.L.,et al.Eds.;W.B.Saunders:Philadelphia;1988,vol.I,pp.793−809.
5.常磁性MRI対比剤の総説について参照されたい:Lauffer,R.B.,Chem.Rev.,1987,87,901.
6.Bloch,F.Phys.Rev.1946,70.460.
7.(a)Bloembergen,N;Purcell,E.M.;Pound,E.V.Phys.Rev.1948,73,679.(b)Solomon,I.Phys.Rev.1955,99,559.
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9.Tweedle.M.F.;Gaughan,G.T.;Hagan,J;Wedeking,P.W.;Sibley,P.;Wilson,L.J.;Lee,D.W.Nucl.Med.Biol.1988,15,31.
10.Burton,D.R.;Forsen S.;Karlstrom,G.;Dwek,R.A.Prog.NMR Sprectr.1979,13,1.
11.Carr,F.H.;Brown,J.;Bydder,G.M.;etal.Lancet 1984,1,484.
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13.(a)Runge,V.M.;Schoerner,W.;Niendorf,H.P.;等、Mag.Res.Imaging.1985,3,27.(b)Runge,V.M.;Price,A.C.;Alleng,James,A.E.Radiology,1985,157(P),37.
14.Koenig,S.H.;Spiller,M.;Brown,R.D.III;Wolf,G.L.Invest.Radiology 1986,21,697.
15.Johnston,D.L.;Lieu,P.;Lauffer,R.B.;Newell,J.B.;Wedeen,V.J.;Rosen,B.R.;Brady,T.J.;Okada,R.D.J.Nucl.Med.1987,28,871.
16.Schmiedl,U.;Ogan,M.;Paajanen,H.;Marotti,M.Crooks,L.E.;Brito,A.C.;Brasch,R.C.Radiology 1987,162,205.
17.Kornguth,S.E.;Turski.P.A.;Perman,W.H.;Schultz,R.;Kalinke,T.;Reale,R.;Raybaud,F.J.Neurosug,1987,66,898.
18.(a)Lauffer,R.B.;Brady,T.J.;Magn,Reson.Imaging 1985,3,11.(b)Lauffer,R.B.;Brady,T.J.;Brown,R.D.;Baglin,C.;Koenig,S.H.Magn.Reson.Med.1986,3,541.
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21.Cacheris,W.P.;Nickle,S.K.;Sherry,A.D.Inorg.Chem.1987,26,958.
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23.Chu,S.C.;Pike,M.M.,Fossel,E.T.;Smith,T.W.;Balschi,J.A.;Springer,C.S.,Jr.J.Man.Reson.1984,56,33.
24.(a)Spirlet,M.−R.;Rebizant,J.;Desreaux,J.F.;Loncin,M.F.Inorg.Chem.1984,23,359.(b)Spirlet,M.−R.;Rebizant,J.;Loncin,M.F.;Desreux,J.F.Inorg.Chem.1984,23,4278.
25.Loncin,M.F.;Desreaux,J.F.;Merciny,E.;Inorg.Chen.1986,25,2646.
26.(a)Chang,C.A.;Rowland,M.E.;Inorg.Chem.1983,22,3866.(b)Chang,C.A.;Ochaya,V.O.Inorg.Chem.1986,25,355.(c)Chang,C.A.;Sekhar,V.C.Inorg.Chem.1987,26,1981.
27.Geraldes,C.F.G.C.;Sherry,A.D.;Brown,R.D.III;Koenig,S.H.:Magn.Reson.Med.1986,3,242.
28.Lauffer,R.B.;Greif,W.L.;Stark,D.D.;Vincent,A.C.;Saini,S.;Wedeen,V.J.;Brady,T.J.J.Comput.Assist.Tomogr.1985,9,431.
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30.(a)Chen,C.;Cohen,J.S.;Myers,C.E.;Sohn,M.FEBS Lett.1984,168,70.(b)Patronas,N.J.;Cohen,J.S.;Knop,R.H.;Dwyer,A.J.;Colcher,D.;Lundy,J.;Mornex,F.;Hambright,P.Cancer Treat.Rep.1986,70,391.(c)Lyon,R.C.;Faustino,P.J.;Cohen,J.S.;Katz,A.;Mornex,F.;Colcher,D.;Baglin,C.;Koenig,S.H.;Hambright,P.Magn.Reson.Med.1987.4,24.(d)Megnin,F.;Faustino,P.J.;Lyon,R.C.;Lelkes,P.I.;Cohen,J.S.;Biochim.Biophys.Acta 1987,929,173.
31.Jackson,L.S.;Nelson,J.A.;Case,T.A.;Burnham,B.F.Invest.Radiology 1985,20,226.
32.Fiel,R.J.;Button,T.M.;Gilani,S.;等
Magn.Reson.Imaging 1987,5,149.
33.Koenig,S.H.;Brown,R.D.III;Spiller,M.Magn.Reson.Med.1987,4,252.
34.Hambright,P.;Adams,C.;Vernon,K.Inorg.Chem.1988,27,1660.
35.Smith,P.H.;Raymond,K.N.Inorg.Chem.1985,24,3469.
36.ランタニドクリプテート(cryptates)の例について下記を参照:(a)Gansow,O.A.;Kauser,A.R.;Triplett,K.M.;Weaver,M.J.;Yee,E.L.J.Am.Chem.Soc.1977,99,7087.(b)Yee,E.L.;Gansow,O.A.;Weaver,M.J.J.Am.Chem.Soc.1980,102,2278.(c)Sabbatini,N.;Dellonte,S.;Ciano,M.;Bonazzi,A.;Balzani;V.Chem.Phys.Let.1984,107,212.(d)Sabbatini,N.;Dellont,S.;Blasse,G.Chem.Phys.Lett.1986,129,541.(e)Desreux,J.F.;Barthelemy,P.P.Nucl.Med.Biol.1988,15,9.
37,通常のシッフ塩基大環状化合物によって安定化されたランタニド錯体の例について下記を参照されたい:(a)Backer−Dirks,J.D.J.;Gray,C.J.;Hart,F.A.;Hursthouse,M.B.;Schoop,B.C.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1979,774.(b)De Cola,L.;Smailes,D.L.;Vallarino,L.M.Inorg.Chem.1986,25,1729.(c)Sabbatini,N.;De Cola,L.;Vallarino,L.M.;Blasse,G.J.Phys.Chem.1987,91,4681.(d)Abid,K.K.;Fenton,D.E.;Casellato,U.;Vigato,P.;Graziani,R.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1984,351.(e)Abid,K.K.;Fenton,D.E.Inorg.Chim.Acta 1984,95,119−125.(f)Sakamoto,M.Bull Chem.Soc.Jpn.1987,60,1546.
38.Ochai,E.−I Bioinorganic Chemistry,an Introduction,Allyn and Bacon:Boston;1977,p.168(Fe)及びp 436(Mn).
39.概説について下記を参照:(a)Cytochrome P−450:Structure,Mechanism,and Biochemistry,Ortiz de Montellano,P.R.,Ed.;Plenum:New York,1986.(b)Groves,J.T.Adv.Inorg.Biochem.1979,I,119.
40.(a)Buchler,J.W.in The Porphyrins,Dolphin,D.Ed.,Academic Press:New York;1978,Vol.1,Chapter 10.(b)Srivastava,T.S.Bioinorg.Chem.1978,8,61.(c)Horrocks,W.Dew.,Jr.J.Am.Chem.Soc.1978,100,4386.
41.(a)Forsberg,J.H.Coord.Chem.Rev.1973,10,195.(b)Bunzli,J.−C.;Wesner,D.Coord.Chem.Rev.1984,60,191.
(実施例9)
抗体結合体(antibody conjugates)
放射性同位体は長い間新形成性疾患の検出と処置において中心的な役割を果たしてきた。重要な研究は従って医療用途におけるそれらの効能を改良することに継続いて向けられている。研究をそのように行う際のより有望なアプローチの1つは腫瘍に向けられるモノクローナル抗体及びそれらの断片に放射性同位体を結合させることを包含する。そのようなモノクローナル抗体及びそれらの断片は腫瘍の所に選択的に集中する。放射性同位体で標識された抗体は従って「魔法の弾丸」として役立つことができ、かつ放射性同位体の新形成物部位への直接輸送を可能にし、かくして体全体の放射線に対する暴露が最小限に抑えられる1。注目すべき研究がこれらの方向(一般的な概説について文献2−11を参照されたい)に沿って今日行われつつある。総てでないことは確かであるが、多量のものが2官能性の金属キレート化剤の使用に焦点を当てている。それが本発明に最も密接に関係する放射性免疫診断(RID)及び放射性免疫治療(RIT)に対するこのアプローチである。
【0245】
抗体結合体に基づく治療及び診断用途における使用のための2官能性金属キレート化剤は2つの重要な基準を満足しなければならない。即ち、それらキレート化剤は興味を引く放射性同位体を結合することができ、かつ標的抗体に対して結合することができなければならない。かくして、これらの2官能性キレート化剤は(1)抗体に対する結合(conjugation)に適した官能基を持ち、(2)生体内で安定でかつ抗体の免疫学的能力を失わせない共有結合を形成し、(3)比較的無毒であり、そして(4)興味を引く放射性金属を生理的条件下で結合、保持しなければならない11−15。これら条件のうち最後の条件が特に厳しい。低い濃度の錯体分解されたカチオンが多分許容される可能性があるMRI画像形成とは著しく異なって、結合体から放出される「遊離」の放射性同位体に起因する潜在的損傷は非常に重大である可能性がある。しかして、放射性免疫学的研究には、非不安定(nonlability)の条件は厳密に実施されなければならない。他方、ノナモルオーダーのごく低い濃度の同位体、従って配位子がRID及びRIT用途に一般に必要とされ、そのため固有の金属及び/又は遊離の配位子の毒性と結び付いた問題はかなり緩和される。
【0246】
言うまでもなく、上記の条件はRIT及びRIDの研究にとって考えられているどの同位体にも満足されなければならない。しかして、配位子の設計と合成の観点から、問題は医療に有利な同位体を同定し、適当な配位子を設計し、そしてそれを金属の結合前か後に選択した抗体に結合させると言う問題になる。歴史的に見ると、理想的な同位体を選択することと存在している2官能性の結合体と容易に錯体を形成することができるものとの間には妥協(trade−off)があったのである。
【0247】
画像形成の目的には、理想的な同位体は入手できる監視技術で容易に検出でき、かつ最小の、輻射線に基づく毒性応答を誘発すべきである。実際には、これらの及び他の必要な要件は、短い有効半減期(生物学的及び/又は核の半減期)を有し、安定な生成物に崩壊し、そして勿論臨床条件下で容易に入手できる、100〜250KeVの範囲のY−線エミッターの使用を包含する2−4。今日までは従って、注目の焦点はほとんどこれら基準を満足することに最も近い131I(t1 /2=193h)、123I(t1/2=13h)、99mTc(t1/2=6.0h)、67Ga(t1/2=78h)及び111In(t1/2=67.4h)にあった。これらの各々はRIDに対する抗体標識に関して利点と不利点を持っている。例えば、131I及び123Iはチロシン残基の単純な親電子性芳香族置換により抗体(及び他の蛋白質)に容易に結合される17。その結果、これらの同位体に免疫学的適用(RIDのみならずRIT)において広い用途が認められた。しかし、残念ながら、このような結合法は生理学的条件下で特に強力であるという訳ではなく(131I及び123Iで標識された蛋白質の代謝では、例えば遊離の放射性アイオダイドアニオンが生成する)、この結果抗体誘導の「魔法の弾丸」によって標的とされた部位以外の部位の所にかなりの濃度の放射能をもたらす可能性がある17。この問題は131I及び123Iの両者の半減期がそれぞれ長過ぎ、また短過ぎて最適使用には比較的不便であるという事実、及び131Iはβエミッターでもあるという事実によって更に悪化せしめられる16。99mTc、67Ga及び111Inは総て、それらを満足な様式で直接抗体に結合させることができず、2官能性結合体の使用を必要とすると言う不利が避けられない。このような系の化学は99mTcの場合に最も先に進んでおり、そして今では多数の効果的な配位子が99mTc投与の目的のために入手できる2−12,18。この特定の放射性同位体は、しかし、半減期が非常に短く、それを用いて処理するのを技術的に非常に困難にすると言う厳しい不利から避けられない。67Ga及び111Inは共に上記のものより長い半減期を持つ。更に、これら両者は望ましい放射エネルギーを持っている。しかし、残念ながら、これら両者はそれらの最も一般的な三価形態で高電荷密度を持つ「ハード」なカチオンである。RIDにおけるこれら放射性同位体の適用は従って生理学的条件下でこれらカチオンを有する安定な変化しがたい錯体を形成することができる配位子の使用を必要とする。111In3+(及び、おそらくは、67Ga3+も)の結合及び抗体の官能化に適しているだろうDTPA様の系の開発にかなりの努力が払われたけれども19、あらゆる場合において形成された錯体は安全かつ効果的な臨床上の使用には不安定すぎる20。実際、現時点では、安定な変化しがたい錯体を形成し、放射性免疫学的用途に適しているかもしれない111In3+か67Ga3 +には適当な配位子は存在しない。本明細書の他の所で述べたように、テキサフィリンはIn3+と動力学的にかつ加水分解的に安定な錯体を形成する。このような配位子系は111Inに基づくRIDにおける使用のための2官能性結合体の臨界的なコアとして同化し、かつ役立つことが可能であった。
【0248】
放射性同位体に基づく診断に当て嵌まるように、同じ考察の多くが放射性同位体に基づく治療に当て嵌まる。即ち、理想的な同位体も臨床上の条件下で容易に入手でき(即ち、単純な崩壊に基づく発生体から)2、妥当な半減期(即ち、6時間乃至4週間のオーダー)を有し、そして安定な生成物に崩壊しなければならない。更に、この放射性同位体は良好なイオン化性放射線(即ち、300KeV乃至3MeVの範囲の放射線)を与えなければならない。実際には、このことはαエミッター又はメディウム乃至高エネルギーのβエミッターのいずれかを用いることを意味する16。少数のαエミッターが治療用途のために入手できるけれども(211Atは例外である)、131Iを含めて相当数のβエミッターが現在RITに対する可能性のある候補として注目を受けている。更に有望なものに186Re(t1/2=90h)、67Cu(t1/2=58.5h)及び90Y(t1/2=65h)がある。これらのうち、90Yが現在最良と考えられいる16,21。その放射エネルギーは2.28MeVであるが、それは腫瘍に対して186Reか67Cuよりもおおよそ3〜4倍多いナノモル当たりエネルギー(線量)を出すと計算される。現時点ではしかし、残念ながら、良好な免疫適合性のキーランドは186Re及び67Cuだけにしか存在しない。即ち、前者は99mTcについて開発されたものと同じ配位子を用いて結合することができ18、または後者はハンカー カレッジ(Hunter College)のラヴァリー教授(Prof.Lavalee)とロス アラモス(Los Alamos)のINC−11のチームによって開発された、合理的に設計された活性化されたポルフィン類を介して結合させることができる15。これらの新規なポルフィンに基づく系は、特に、真に有望そうで、存在するDTPA−又はDOTA−タイプの系より明らかに遥かに優れているけれども14、90Y3+(これはポルフィン類とは安定な変化しにくい錯体を形成することはできない)と安定な変化しにくい錯体を形成することができる2官能性の結合体から更に多くの利益が導かれる。本発明のテキサフィリン配位子はIn3+と安定な錯体を形成するだけでなく、Y3+を効果的に結合する。テキサフィリンタイプの2官能性結合体が111Inに基づくRIDにおいて使用するために開発されるべきであり、これにはまた90Yに基づくRITに重要な用途を見いだすことができた。この出願はそのような想定上の2官能性結合体を製造することができる方法の概略を述べるものである。
【0249】
Y3+及びIn3+の両者の錯体を製造することができると言う観察結果はテキサフィリンタイプの系の免疫学的用途における結合体としての使用にとってよい前兆をなすものである。即ち、90Yおよび111Inは共に、想像できるように、選択した抗体に官能化されたテキサフィリンを用いて結合させることができた。これに関して、テキサフィリンのY3+及びIn3+の両錯体はメチレン基を介して結合され、還元された前駆体から速やかに形成され(挿入及び酸化時間は3時間未満である)、そして1:1メタノール−水混合物中で加水分解上安定である(錯体分解及び/又は配位子分解の半減期はいずれの場合も3週間を越える)ことに注目することが重要である。
【0250】
第31図及び第27図に示されるもののような広範囲の可溶化されたテキサフィリンを開発したことの、又は開発しつつあることの更に有利な点はこれらの多くが更なる官能化に適しているだろうことである。例えば、テキサフィリン7E又は26Dのチオニルクロライド又はp−ニトロフェノールアセテートによる処理はモノクローナル抗体又は他の興味ある生体分子に対する結合に適した、活性化されたアシル種を生成させる。別法として、標準的な現場カップリング法(例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)26a)は同じ種類の結合を行うのに用いることができる。いずれの場合も、強力な光増感剤を直接腫瘍の場所に送り、結合させる能力は新形成性疾患の治療において途方もなく大きい潜在的な有利さを持つ。更に、それが90Y及び111Inのような種々の有用な放射性同位体をモノクローナル抗体に結合させるようにする正にこの方法である。これはこの重要な方法の開発において腫瘍の検出と治療に対して計り知れないほどの利益があるものであることを証明することができた。
【0251】
次のリストの文献は記載した理由から本明細書において引用、参照されるものとする。
【0252】
(文献)
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17.例えば次を参照:(a)Primus,F.J.;DeLand,F.H.;Goldenberg,D.M.Monoclonal Antibodies and Cancerにおいて、「Wright,G.L.Ed.,Marcel Dekker:New York;1984,pp.305−323.(b)Weinstein,J.N.;Black,C.D.V.;Keenan,A.M.;Holten,O.D.;III;Larson,S.M.;Sieber,S.M.;Covell,D.G.;Carrasquillo,J.;Barbet,J.;Parker,R.J.in「Monoclonal Antibodies and Cancer Therpy,「Reisfeld,R.A.及びSell,S.,Eds.,Alan R.Liss:New York;1985,pp.473−488.
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20.例えば下記を参照:Hnatowich,D.J.;Childs,R.L.;Lanteigne,D.;Najafi,A.J.Immunol.Meth.1983,65,147.
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22.Katagi,T.;Yamamura,T.;Saito,T.;Sasaki,Y.Chem.Lett.1981,503.
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26.(a)Paul,R.;Anderson,G.W.J.Am.Chem.Soc.1960,82,4596.(b)Davis,M.−T.B.;Preston,J.F.Anal.Biochem.1981,116,402.(c)Anderson,G.W.;Zimmerman,J.E.;Callahan,F.M.J.Am.Chem.Soc.1964,86,1839.
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30.Furhop.J.−H.;Smith,K.M.in Porphyrins and Metalloporphyrins,Smith,K.M.Ed.,Elsevier:Amsterdam;1975。
【0253】
(発明の要旨)
本発明は、新規なトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)、このような化合物の合成、それらの類縁体もしくは誘導体、およびそれらの使用に関する。これらの拡大ポルフィリン様マクロ環は、二価および三価の金属イオンの効率的なキレート剤である。これらの化合物の金属錯体は、一重項酸素の産生のための光増感剤として有効であり、したがって、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV−1)、そのようなウイルスを伴う単核球または他の細胞、ならびに腫瘍までもの不活化または崩壊について有効である。種々のテキサフィリン誘導体が製造され、しかも多くは容易に得ることができる。本発明のテキサフィリンおよびテキサフィリン誘導体と様々な金属(遷移金属、主群、およびランタニド)との錯体は異常な水溶性と安定性を有し、これがそれらをとくに有用なものとしている。これらのメタロテキサフィリン錯体は特殊な光学的性質を有し、この点で、現存のポルフィリン様または他のマクロ環に比べて独特である。たとえば、これらは生理学的に重要な領域(すなわち、690〜880nm)で光を強力に吸収する。これらの錯体はまた、高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する。これらの特性は、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を付加するものである。
【0254】
【発明の効果】
高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する性質を有し、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を高める化合物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、テキサフィリン(1)および各種錯体(2,3および4)の模式的な構造図を示す。
【図2】図2は、ピリジンとマクロ環のCdへの配位を示す錯体4(図1より)の図である。楕円面は40%確率レベルで表示する。Cdイオンは、ほぼ平面状のマクロ環の平面内に存在する[平面からの最大偏差0.10(1)Å]。関連Cd−N結合の長さ(Å)は次の通りである:2.418(7),N1;2.268(8),N8;2.505(7),N13;2.521(7),N20;2.248(8),N23;2.483(14),N1a;2.473(12),N1b。選ばれたN−Cd−N結合角(deg)は次の通りである:N1−Cd−N8,78.9(2);N1−Cd−N23,80.2(3);N8−Cd−N−13,68.4(2);N13−Cd−N20,64.4(2);N20−Cd−N23,68.2(3):N1a−Cd−N1b,176.1(4)。
【図3】図3は、マクロ環を通る平面に垂直な錯体4の図を示す。ピリジン環(図には示していない)はマクロ環に垂直に、環aに対して88.5(4)°,環bに対して89.1(3)°の二面角で存在する。
【図4】図4は、遊離塩基「テキサフィリン」の還元型(1A)および酸化型(2A)、ならびにこの「拡大ポルフィリン」から誘導される代表的な5,6および7配位カドミウム錯体(3A〜5A)の模式的表示である。
【図5】図5は、ピリジンとマクロ環のCdへの配位を示す陽イオン5aAの図である。楕円面は30%確率レベルで表示してある。カドミウム(II)陽イオンは、ほぼ平面状のマクロ環の平面内に存在する[平面からの最大偏差は0.10(1)Å]。関連Cd−N結合の長さ(Å)は次の通りである:2.418(7)N1;2.268(8)N8;2.505(7)N13;2.521(7)N20;2.248(8)N23;2.438(14)N1a;2.473(12)N1b。選ばれたN−Cd−N結合角(°)は次の通りである:78.9(2)N1−Cd−N8;80.2(3)N1−Cd−N23;68.4(2)N8−Cd−N13;64.4(2)N13−Cd−N20;68.2(3)N20−Cd−N23;176.1(4)N1a−Cd−N1b。その他の構造的な詳細は参考文献11を参照されたい。
【図6】図6は、陽イオン4bAの図であり、原子標識スキームを示す。熱楕円面は30%確率レベルで描かれている。関連Cd−N結合の長さ(Å)は、N1 2.462(13);N8 2.254(9);N13 2.535(13);N202.526(12);N23 2.298(11);N1A 2.310(9)である。選ばれたN−Cd−N結合角(°)は、N1−Cd−N8 78.3(4);N8−Cd−N13 67.8(4);N13−Cd−N20 64.1(4);N20−Cd−N23 67.3(4);N1a−Cd−マクロ環Nの角は93.7(4)〜100.4(3)°の範囲である。硝酸対イオン(図には示していない)はCd原子には配位していない。
【図7】図7は、マクロ環を通る平面に沿った図であって、単位セルにおける陽イオン4bAの対面スタッキングを例示する(マクロ環は1−x,y,zでリアルトされている)。マクロ環平均面は3.38Å離れていて、一方Cd−Cd距離は4.107(1)Åである。
【図8】図8は、マクロ環を通る平面に垂直な陽イオン4bAの図を示す[C15に対する最大偏差0.154(13)Å]。Cd原子はこの面から0.334(2)Å外れて存在する。BzIm(図には示していない)はマクロ環にほぼ垂直に配置され[二面角86.3(3)°]、C22,N23,C24,C25およびC26で決定されるピロール環上に存在する。
【図9】図9は、3A・NO3のCHCl3中1.50×10−5のUV−可視スペクトルを示す。
【図10】図10は、3A・NO3のCDCl3中1H NMRスペクトルを示す。1.5および7.26ppmにおける単一線は、それぞれ残存する水および溶媒のピークである。
【図11】図11は、3A・NO3(スペクトルA)およびそれから錯体4bA・NO3の結晶が単離されたバルク不均一物質(スペクトルB)の1H NMRスペクトルの低フィールド領域を示す。’BzIm’の記号を付した、結合ベンズイミダゾールリガンドに帰属されるシグナルは、6.4、6.81および7.27ppmに認められる。’S’の記号を付したシグナルは残存溶媒によるものである。
【図12】図12は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.85×10−3M)の、BzImの量を増大させていった1H NMRスペクトル滴定であり、中間フィールド領域を示している。[Bzlm]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ0,0.2,0.6,2.8,10および40であり、この場合、[BzIm]および[リガンド]は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。曲線CにおけるBzlmシグナルの化学シフト(6.4,6.62,7.26ppm)は、陽イオン4baの結晶が単離されたバルクサンプルに認められシフト(図8のスペクトルB参照)とよく一致する。
【図13】図13は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.85×10−3M)の、BzImの量を増大させていった1H NMRスペクトル滴定を示し、高フィールド領域を示している。[Bzlm]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ、0,0.2,0.6,2.8,10および40であり、この場合、[Bzlm]および[リガンド]は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を表す。
【図14】図14は、3A・NO3に対する「メソ」シグナルの1H NMR化学シフトを、[BzIm]の増加の関数としてプロットした場合の変化を示す。[BzIm]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。
【図15】図15は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.66×10−3M)の、ピリジン量を増加させていった場合の1H NMR滴定であり、高フィールド領域に起こる変化を示している。[Pyr]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ、0,5,10,14,20および40である。[Pyr]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時5−配位錯体の総モル濃度を表す。
【図16】図16は、3A・NO3に対する「メソ」シグナルの1H NMR化学シフトの、[Pyr]の増加の関数として変化を示している。[Pyr]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。
【図17】図17は、本発明の化合物の金属錯体および誘導体(1B〜11B)を示す。
【図18】図18は、2B・(OH)2のCHCl3中電子スペクトルを示す。
【図19】図19は、本発明の化合物(1C〜11C)の構造、金属錯体および誘導体を、模式的に示している。
【図20】図20は、脱酸素メタノール中での錯体1C・Clの吸収スペクトルを示している。挿入図はこの同じ溶媒中で記録された蛍光発光スペクトルである。
【図21】図21は、脱酸素メタノール中、355nm光(80mJ)の10nsパルスの照射1μs後に記録した1C・Clの三重項−三重項一過性差スペクトルを示している。挿入図は480nmでモニタリングした基底状態への復帰速度を示し、これは三重項の寿命67μsに相当する。
【図22】図22は、厚さ22〜32mmのヒト腹壁のスペクトル透過率を示す47)。(参考文献47は例5参照)。
【図23】図23は、以前に開発された、光増感剤として利用できる可能性のあるポルフィリン誘導体の模式的構造を示している。これらには、プルプリン(1D),ベルジン(2D),ベンズ融合ポルフィリン(3D),ならびにスルホン化フタロシアニンおよびナフチロシアニン(4D)を包含する。
【図24】図24は、テキサフィリン(5D),サフィリン(6D),プラチリン(7D),ビニル誘導体ポルフィリン(8D),およびポルフィセン(9D)の模式的構造を示す。
【図25】図25は、テキサフィリン(5D)の類縁体である、新規な芳香性トリピロールジメチン誘導マクロ環リガンド(10D〜16D)の模式的構造を示す。
【図26】図26は、テキサフィリン(5D)の合成を図式的に(シェーマ1)まとめたものである。
【図27】図27は、現時点での提案されたテキサフィリン誘導体(23D〜30D)の模式的構造を示す。
【図28】図28は、提案されたメチン連結テキサフィリン誘導体(31Dおよび32D)の模式的構造を示す。
【図29】図29は、照射を行わない場合の、錯体1Cおよび3Aの単核球細胞の殺滅を示している。細胞の殺滅は、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激後の[3H]−Thyの取り込みによって測定した。
【図30】図30は、1μg/mlの錯体3Aと照射による単核球細胞の殺滅を示す。細胞の殺滅は、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激後の[3H]−Thyの取り込みによって測定した。
【図31】図31は、利用できる拡大ポルフィリン様マクロ環を示している。ピロール水素に代えて、二価または三価の陽イオン、たとえばCd2+,Zn2+,In3+等を結合させることができる。この場合、錯体は正味総電荷、すなわちM+2の場合は+1,M+3の場合は+2の電荷をもつことになる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、五座拡大ポルフィリン:大ポルフィリン様トリピロールジメチン誘導マクロ環およびそれを含む組成物、ならびにそれらを生産および使用する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポルフィリンおよび関連テトラピロールマクロ環は、最も多方面に応用可能なテトラデンデートトリガンドである1)(この段落における参考文献については例1参照)。さらに大きなポルフィリン様芳香性マクロ環によってさらに高度な配位形態を安定化する試みは、しかしながら、ほとんど成功していない2−5)。実際、現在までに、「スーパーフタロシアニン」のウラニル錯体が単離され、構造的特性が解明されているのみで2)、また他の数種の大ポルフィリン様芳香性マクロ環、たとえば「サフィリン」3,6),「オキソサフィリン」6,7),「プラチリン」8),「ペンタフィリン」9)および「[26]ポルフィリン」10)が、金属を含まない形態で製造されているにすぎない。
【0003】
ポルフィリンおよび関連テトラピロール化合物はすべての既知マクロ環中で最も広範に研究されてはいるものの1)、さらに大きな共役ピロール含有システムの開発には、どちらかといえばあまり努力は払われてこなかった2−12)(この段落における参考文献については、例2参照)。しかしながら、大もしくは「拡大」ポルフィリン様システムは、いくつかの理由によって興味がある。これらのシステムは、詳細に研究されてきたポルフィリン2−8)の芳香性類縁体として役立つ可能性が考えられ、また、これらのもしくは他の天然産ピロール含有システム13,1 4)に対する生物学的模倣モデルとして役立つ可能性がある。さらに、ピロール含有大システムは、新規な金属結合マクロ環として、きわめて興味ある可能性を提供する2,9−12,15)。たとえば、適当に設計されたシステムであれば、通常のテトラデンテートの約2.0Å径のポルフィリンコア内に収容されている場合17)より、大きな金属陽イオンの結合および/または高度な配位形態の安定化2,16)が可能な、多方面に応用できるリガンドとして作用することが考えられる。得られた錯体は、重金属キレート療法の領域への応用に重要であり、磁気共鳴映像法(MRI)用の造影剤として作用し、放射免疫標識作業のビヒクルとして、また、配位化学の範囲を拡大できる新規なシステムとして役立つ可能性がある。さらに、遊離塩基(金属を含まない)および/または反磁性金属含有物質は、光力学的療法用の有用な増感剤としての作用が考えられる。最近、ペンタデンテートポリピロール芳香性システムとしての可能性が考えられる多数の系、たとえば「サフィリン」3,4),「オキソサフィリン」5),「スマラグジリン」3,4),「プラチリン」6)および「ペンタフィリン」7)が製造され、それらの金属を含まない形態について研究が行われている。しかしながら、その大部分について、相当する金属化型化合物の情報はほとんどまたは全くない。実際、「スパーフタロシアニン」のウテニル錯体が、製造され構造的特性が検討された唯一の金属含有ペンタピロールシステムであった2)。「スパーフタロシアニン」システムは、残念ながら、その遊離型としてもまた他の金属含有型としても存在できないことが明らかにされている2)。したがって、本発明以前には、非芳香性ピリジン誘導ペンタデンテートシステムについては多数報告されているものの19,20)、融通性があり、構造的に特性づけられたペンタデンテート芳香性リガンドはなかったといってよい11 )。
【0004】
強力な結合性を有する陰イオン性リガンド、たとえばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)1,2,3),1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)1,4,5)および1,10−ジアザ−4,7,13,16−テトラオキサシクロオクタデカン−N,N’−ジ酢酸(dacda)1,6)から誘導されるガドリニウム(III)錯体は、磁気共鳴造影法(MRI)用に最近開発された化合物で最も有望な常磁性コントラストを示している1)(この段落における参考文献については例3中に示す)。実際、[Gd・DTPA]−については、現在、腫瘍の検出の増強を調べるプロトコールでのその利用可能性の臨床試験がアメリカ合衆国において実施されている1)。さらに、このようなシステムは、現存のカルボキシレートベースの造影剤に比べて大きな動力学的安定性、優れた緩和性、また良好な生物学的分布特性が期待されることから、他のガドリニウム(III)錯体の合成にも興味がもたれている。このようなアプローチのひとつとして、最近、水溶性ポリフィリン誘導体、たとえばテトラキス(4−スルホネートフェニル)ポルフィリン(TPPS)7,8, 9)の使用を基盤とした追跡がなされている。残念ながら、大きなガドリニウム(III)陽イオンは、比較的小さいポルフィリン結合コア(γ≒2.0Å11))内には完全には収容されず10)、したがって、ガドリニウム−ポルフィリン錯体は、加水分解に対して不安定であることが避けられない7,8,12,13)。しかしながら、大きなポルフィリン様リガンドであれば、この問題を回避する手段を提供できる可能性がある。
【0005】
後天性免疫不全症候群(AIDS)および癌は、今日、人類が直面している最も重大な公衆衛生上の問題である。AIDSは1981年に男性同性愛者中にはじめて報告された1)致命的なヒト疾患であるが、現在では汎発流行病の割合に達している(この段落および以下の4段落における参考文献は例5に示す)。癌は、診断および処置における最近の著しい進歩にもかかわらず、アメリカ合衆国における死因の第三位を維持している。これらの疾患の検出、処置および伝達低減のためのより優れた方法の研究は、したがって、最も重要な課題である。
【0006】
腫瘍の制御および処置への利用が最近検討されている、有望な新しい理学療法のひとつに、光力学的療法(PDT)がある1−5)。この技術は、腫瘍部位またはその周辺に局在し、酸素の存在下に照射すると、そうでなければ無害の前駆体たとえばO2(3Σg−)から一重項酸素[O2(1Δg)]のような細胞毒性物質を産生する働きがある光増感性染料の使用に基づくものである。PDTの導入に伴う最近の反響の多くは、その特性、すなわち、現在の方法(たとえば慣用の化学療法)とは全く対照的に、PDTでは、薬剤は、担当医によって光で「活性化」されるまでは完全に無害である(そして、なければならない)ことによる。すなわち、他の方法では不可能であったレベルの制御と選択性が達成できることである。
【0007】
現時点では、PDT用に第一に選択される染料として、反磁性ポルフィリンおよびその誘導体が考えられている。10年ほど前から、ヘマトポルフィリンのようなポルフィリンが急速に成長する組織、たとえば肉腫や癌に選択的に局在することが知られている6)。しかしながら、その選択性の理論的根拠は明らかではない。最近では、ヘマトポルフィリン二塩酸塩を酢酸−硫酸、ついで希釈塩基で処理して製造された23,26)ポルフィリンのモノマーおよびオリゴマー混合物である、特性は完全には明らかにされていない、いわゆるヘマトポルフィリン誘導体(HPD)2−5,7−21)にとくに注意が集中されている。最良の腫瘍局在能を有すると考えられている23,26)オリゴマー種に富んだ分画がPhotofirin II(登録商標)(PII)の商品名で市販されていて、最近、閉塞性気管支上皮腫瘍および表在性膀胱腫瘍に対する臨床試験が行われている。この場合、作用機構は、すべてではないとしても多くは、一重項酸素O2(1△g)の光産生によると考えられるが、別の作用機構、たとえばスーパーオキシド陰イオンまたはヒドロキシルおよび/もしくはポルフィリンベースのラジカルの光産生による可能性も完全には除外できない28−33)。HPDは有望であるとしても、それおよび他の入手可能な光増感剤(たとえば、フタロシアニンおよびナフタフタロシアニン)には重大な欠点がある。
【0008】
ポルフィリン誘導体は、高い三重項収率と長い三重項寿命を有する(したがって、励起エネルギーは効率的に三重項酸素に伝達する)が3b,3g)、Q−バンド領域におけるそれらの吸収はヘム含有組織のそれと平行することが多い。フタロシアニンおよびナフタロシアニンは、もっと便利なスペクトル範囲で吸収するが、三重項収率は有意に低く4)、しかもそれらは極性のプロトン性溶媒に全く不溶性の傾向があって、機能化は困難である。したがって、現在のところ、さらに有効な光化学療法剤の開発には、生体組織に比較的透過性のスペクトル領域(すなわち、700〜l000nm)に吸収を有し1d、高い三重項量子収率を有し、毒性は最小限の化合物の合成が必要と思われる。本発明者らは最近、新規な一群の芳香性ポルフィリン様マクロ環、すなわち組織透過性の730〜770nm範囲に強力な吸収を有するトリピロールジメチン誘導「テキサフィリン」の合成を報告した5)(例1参照)。メタロテキサフィリンlc〜7cの光物理学的性質は相当するメタラポルフィリンのそれと平行し、反磁性錯体lc〜4cは高い量子収率での1O2の産生を増感する。図19には、本発明の化合物(lc〜7c)の模式的構造、金属錯体および誘導体を示すものである。
【0009】
一重項酸素はまた、実験的光増感血液精製操作において効果を発揮する重要な毒性種と考えられている34−39)。光力学的療法のこのきわめて新しい応用は、きわめて重要な可能性を含んでいる。それは、輸血用全血から、エンベロープを有するウイルス、たとえばHIV−1,単純ヘルペス(HSV),サイトメガロウイルス(CMV)、各種形態の肝炎誘発ウィルス、ならびに他の血液に含まれる日和見病原体(たとえば殺菌およびマラリヤプラスモジウム)を除去する安全かつ有効な手段の提供を約束するものである。AIDSが現在では有効な治療法がなく、通常、致命的な疾患であることを考えれば、このような血液精製操作の利益は測り知れないものであるといえる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
現在では、AIDSの蔓延の主要な理由は性的関係と注射針の共用によるものである1)。しかしながら、輸血の結果としてのAIDS感染の率が増大しつつある1,40−43)。不幸にも、近代医学の実行に必須の製品は血液銀行からの血液成分であり、その結果、この経路による伝達は単純な生活様式の変更では予防できない。どちらかといえば、すべての保存血液サンプルがAIDSウイルスを含まないこと(また理想的には他のすべての血液に含まれる病原体をもたないこと)を保証できる、絶対に間違いのない手段が開発されねばならない。これはある程度までは、供血者の経歴のスクリーニングと血清学的テストの実施によって達成できる。しかしながら、現時点では、HIV−1の血清学的テストはすべての感染血液サンプルの検出には不十分であり、とくにこの疾患の保因者ではあるがまだ検出可能な抗体が産生されていない供血者に由来する血液サンプルには有効でない。さらに、AIDSウイルスの新たな変異株が検出されていて、これらの一部またはすべては、現行の手段では見逃されてしまう1)。したがって、どのような形態のHlV−1でも保存血液から除去できる抗ウイルスシステムが必要とされる。これは、一人の感染供血者からの保存血液サンプルが、たとえば小児科での治療過程で、使いきるまで数例の別の患者に投与される可能性がある点で、とくに重要である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、新規なトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)、このような化合物の合成、それらの類縁体もしくは誘導体、およびそれらの使用に関する。これらの拡大ポルフィリン様マクロ環は、二価および三価の金属イオンの効率的なキレート剤である。これらの化合物の金属錯体は、一重項酸素の産生のための光増感剤として有効であり、したがって、腫瘍の不活性化または崩壊、ならびにヒト免疫不全症ウイルス(HIV−1)および他のウイルスに対する予防的処置および血液からの除去に有用性が考えられる。多様なテキサフィリン誘導体が製造され、しかも多くは容易に得ることができる。本発明のテキサフィリンおよびテキサフィリン誘導体と様々な金属(ランタニド)との錯体は異常な水溶性と安定性を有し、これがそれらをとくに有用なものとしている。これらのメタロテキサフィリン錯体は特殊な光学的性質を有し、この点で、現存のポルフィリン様または他のマクロ環に比べて独特である。たとえば、これらは生理学的に重要な領域(すなわち、690〜880nm)で光を強力に吸収する。ある種の反磁性錯体も、高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する。これらの性質は、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を高めるものである。
【0012】
本発明は、以下の構造
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、RはHまたはCH3である)をもつ基本化合物関連の一群の化合物に関する。この化合物は、以下の構造
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、MはH,Lは存在せず、nは0であるか、またはMはCd,Lはピリジンもしくはベンズイミダゾール、nは1である)を有する化合物として製造された。
【0017】
本発明の好ましい化合物は、以下の構造
【0018】
【化4】
【0019】
を有するカドミウム−テキサフィリン錯体である。
【0020】
多様なテキサフィリン誘導体およびそれらの金属錯体が製造され、以下の構造
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、
MはH,RはH,nは0であるか、
MはCd+2,RはH,nは1であるか、
MはNd+2,RはH,nは2であるか、
MはSm+3,RはH,nは2であるか、
MはEu+3,RはH,nは2であるか、
MはGd+3,RはH,nは2であるか、
MはY+3,RはH,nは2であるか、
MはIn+3,RはH,nは2であるか、
MはZn+2,RはH,nは1であるか、
MはHg+2,RはH,nは1であるか、
MはH,RはCH3,nは0であるか、
MはGd+3,RはCH3,nは2であるか、
MはEu+3,RはCH3,nは2であるか、
MはSm3+,RはCH3,nは2であるか、
MはY+3,RはCH3,nは2であるか、または
MはIn+3,RはCH3,nは2である)
で表すことができる。
【0023】
本発明はまた、以下の構造
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、
MはZn+2,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはZn,RはH,R’はCl,nは1であるか、
MはCd,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはCd,RはH,R’はCl,nは1であるか、
MはMn,RおよびR’はH,nは1であるか、
MはSm,RおよびR’はCH3,nは2であるか、
MはEu,RおよびR’はCH3,nは2であるか、
または
MはGd,RおよびR’はCH3,nは2である)
で表される化合物を包含する。
【0026】
より広い意味では、本発明は、以下の構造
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、RおよびR’はCH3,RはHでR’はOCH3,RはHでR’はCl,RはHでR’はCOOHもしくはRはHでR’はNO2であり、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物を包含する。
【0029】
他の態様においては、本発明のテキサフィリンおよびその誘導体ならびにそれらの錯体は、以下の構造
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、Mは三価の金属イオンであってnは2である)を有する。
【0032】
とくに興味のある本発明のテキサフィリン類縁体は、以下の構造
【0033】
【化9】
【0034】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する類縁体である。上述の金属錯体において、MはCa+2,Mn+2,Co+2,Ni+2,Zn+2,Cd+2,Hg+2,Sm+2,およびUO2 +2からなる群より選ばれる二価の金属イオンである(nは1)。ある態様においては、MはCd+2,Zn+2またはHg+2であることが好ましい。Mが三価の金属イオンである場合には、それは、Mn+3,Co+3,Mn+3,Ni+3,Y+3,In+3,Pr+3,Nd+3,Sm+3,Eu+3,Gd+3,Tb+3,Dy+3,Er+3,Tm+3,Yb+3,Lu+3およびU+3からなる群より選ばれることが好ましい(nは2である)。最も好ましい三価の金属イオンは、In+3,Y+3,Nd+3,Eu+3,Sn+3およびGd+3である。
【0035】
さらに、本発明の化合物は、以下の構造
【0036】
【化10】
【0037】
(式中、RおよびR’はFであるか、RはHでR’はO(CH2CH2O)2CH3であるか、RはHでR’はSO3 −であるか、またはRはHでR’はCO2 −であり、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)によって表すことができる。
【0038】
とくに好ましいテキサフィリン誘導化合物は、以下の構造
【0039】
【化11】
【0040】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物である。
【0041】
他の態様においては、本発明は、以下の構造
【0042】
【化12】
【0043】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物を包含する。これは本発明のテキサフィリン誘導体の例である。同様に、以下の構造
【0044】
【化13】
【0045】
(式中、Mは二価の金属イオンであってnは1であるか、またはMは三価の金属イオンであってnは2である)を有する化合物も、本発明に包含される。
【0046】
さらに他の態様においては、本発明は、以下の構造
【0047】
【化14】
【0048】
(式中、R1およびR2はHもしくはCH3であり、MはHg+2,Cd+2,Co+2もしくはMn+2であり、nは1であるか、MはLn+3,Gd+3,Y+3もしくは、In+3であり、nは2であるか、またはR1はHであり、R2はCl,Br,NO2,CO2HもしくはOCH3であり、MはZn+2,Hg+2,Sn+2もしくはCd+ 2であり、nは1である)を有する化合物を包含する。
【0049】
金属を含まない場合、本発明の化合物は以下の構造
【0050】
【化115】
【0051】
【化116】
【0052】
たとえば、ペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物の一合成方法は本発明の態様である。この方法は、ジホルミルトリピランを合成し、このトリピランをオルトアリールジアミン1,2−ジアミノアルケンまたは1,2−ジアミノアルカンと縮合し、ついで縮合生成物を酸化してペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物を形成させることからなる。好ましい1,2−ジアミノアルケンはジアミノマレオニトリルである。オルトアリールジアミンは好ましくは、オルトフェニレンジアミンまたは置換オルトフェニレンジアミンである。他の好ましいオルトアリールジアミンは2,3−ジアミノナフタレンである。このようなペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物は金属と錯体を形成させる。この場合、金属錯体はペンタデンテート拡大ポルフィリン化合物と金属イオンの反応によって製造される。
【0053】
本発明はまた、血液中のレトロウイルスおよびエンベロープを有するウイルスの不活性化方法を包含する。この方法は、上述のようなペンタデンテート拡大ポルフィリン類縁体金属錯体を血液に添加し、この混合物を光に曝露して一重項酸素の形成を促進させることからなる。
【0054】
金属と錯体を形成させたペンタデンテート拡大ポルフィリン類縁体を腫瘍宿主に投与し、腫瘍の近位に存在する類縁体に放射線照射を行うことからなる光力学的腫瘍療法は、本発明の他の態様を構成する。
【0055】
テキサフィリンまたはテキサフィリン類縁体と錯体を形成させた反磁性金属イオン(たとえばガドリニウム等)を投与することからなるMRIの増強方法も、本発明の一態様を構成する。
【0056】
1つの局面において、本発明は、次の構造:
【0057】
【化17】
【0058】
(式中、MはHであり、RはCH3であり、そしてnは0であるか;
MはGd+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはSm+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはY+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;又は
MはIn+3であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか。)
を有する化合物に関する。
【0059】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0060】
【化18】
【0061】
(式中、MはHであり、RはHであり、R’はClであり、そしてnは0であるか;
MはCd+2であり、RはHであり、R’はClであり、そしてnは1であるか;MはSm3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2であるか;
MはGd3+であり、R及びR’はCH3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0062】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0063】
【化19】
【0064】
(式中、R及びR’はCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はOCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はClであるか;RはHであり、そして
R’はCOOHであるか、又はRはHであり、そしてR’はNO2であり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0065】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0066】
【化20】
【0067】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0068】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0069】
【化21】
【0070】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0071】
1つの実施態様において、上記Mは、Ca+2、Mn+2、CO+2、Ni+2、Zn+2、Hg+2、Sm+2及びUO+2より成る群から選択される二価の金属イオンであり、そしてnは1である。1つの実施態様において、上記Mは、Mn+3、Co+3、Mn+3、Ni+3、Y+3、In+3、Pr+3、Nd+3、Sm+3、Eu+3、Gd+3、Tb+3、Dy+3、Er+3、Tm+3、Yb+3、Lu+3及びU+3より成る群から選択される三価の金属イオンであり、そしてnは2である。別の実施態様において、上記Mは、In+3、Y+3、Nd+3、Eu+3、Sn+3又はGd+3である。
【0072】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0073】
【化22】
【0074】
(式中、R及びR’はFであるか;
RはHであり、そしてR’はO(CH2 CH2 O)2CH3であるか;
RはHであり、そしてR’はSO3であるか;又は
RはHであり,そしてR’はCO2Hであり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか;又は
Mは三価の金属イオンであり、そしてnは2である)。
を有する化合物に関する。
【0075】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0076】
【化23】
【0077】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0078】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0079】
【化24】
【0080】
(式中、置換基R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキサミド、エステル、アミド、スルホナト、置換アルキル、置換エステル、置換エーテル又は置換アミドであり、Mは2価又は三価の金属カチオンであり、そしてnは−5乃至+5である。)を有する化合物に関する。好ましくは、MはCd2+、Zn2+、Hg2+、またはNd3+の場合、同時には、R1はメチル、R2およびR3の両方はエチル、R4およびR5の両方は水素ではない。
【0081】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0082】
【化25】
【0083】
(式中、置換基R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキサミド、エステル、アミド、スルホナト、置換アルキル、置換エステル、置換エーテル又は置換アミドであり、Mは2価又は三価の金属カチオンであり、そしてnは−5乃至+5であり;ここで
R1、R2及びR3は全てがメチルであることはなく、又はR4及びR5は両者共にHであることはない。)
を有する化合物に関する。
【0084】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0085】
【化26】
【0086】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは0であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは1である。)
を有する化合物に関する。
【0087】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0088】
【化27】
【0089】
(式中、Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、又はMは三価の金属イオンであり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0090】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0091】
【化28】
【0092】
(式中、R1及びR2はH及びCH3であり、MはHg+2、Cd+2、Co+2又はMn+2であり、そしてnは1であるか、又はMはLn+3、Gd+3、Y+3、Sm+3又はIn+3であり、そしてnは2であるか;又はR1はHであり、R2はCl、Br、NO2、CO2H又はOCH3であり)MはZn+2、Hg+2、Sn+2又はCd+2であり、そしてnは1であるか、MはLn+3、Gd+3、Y+3、Sm+3又はIn+3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。
【0093】
別の局面において、本発明は、次の構造:
【0094】
【化29】
【0095】
を有する化合物に関する。
【0096】
別の局面において、本発明は、血液に5座の広がったポルフィリン類縁化合物の金属錯体を加え、その混合物を光に暴露してシングレット(singlet)の酸素の形成を促進することを含む、血液中のレトロウイルス及び外被ウイルスを不活性化する方法に関する。
【0097】
別の実施態様において、上記5座の広がったポルフィリン類縁化合物の金属錯体は、本発明の化合物である。別の実施態様において、5座の広がったポルフィリン類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体である。
【0098】
別の局面において、本発明は、腫瘍宿主への投与およびその腫瘍の近位におけるその類縁化合物の照射のために、金属と錯化された五座拡大ポルフィリンに関する。別の局面において、本発明は、宿主に投与したときにMPIを強化するための、常磁性の金属で錯化された5座の広がったポルフィリン類縁化合物に関する。1つの実施態様において、本発明の類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体であると更に定義される。別の実施態様において、本発明の類縁化合物は、常磁性の金属イオンがガドリニウムである。
【0099】
さらなる局面において、本発明は、光増感剤として5座の広がったポルフィリン類縁化合物の使用を含むシングレットの酸素の生成法に関する。1つの実施態様において、5座の広がったポルフィリンがテキサフィリン又はテキサフィリン誘導体である。
【0100】
さらなる局面において、本発明は、生体分子に対する結合を伴う用途において使用するための、5座の広がったポルフィリン類縁化合物に関する。1つの実施態様において、生体分子は、蛋白質又は抗体である。別の実施態様において、上記類縁化合物は、テキサフィリン又はテキサフィリン誘導体と定義される。別の実施態様において、上記類縁化合物は、図27の化合物又は錯体と定義される、あるいは二価又は三価の金属で錯化されたものと定義される。さらなる実施態様において、上記金属は、Y、In、Gd又はSmである。
【0101】
1つの局面において、本発明は、次の構造:
【0102】
【化30】
【0103】
(式中、R1はHであり、R2はCO2Hであり、MはIn+3であり、そしてnは2である。)
を有する化合物に関する。1つの実施態様において、インジウムは111Inである。
【0104】
さらなる局面において、本発明は、次の構造:
【0105】
【化31】
【0106】
に関する。
【0107】
【発明の実施の形態】
本発明は、新規な「拡大ポルフィリン」システム、1B(これには「テキサフィリン」の慣用名を与えた)の合成を包含し、またそのカドミウム(III)錯体のビスピリジン付加物の構造の記述を包含する。ポルフィリンの場合に比べて大凡20%大きい、ほぼ環状のペンタデンテート結合コアがこの構造内に存在することは、6配位Cd2+(γ=0.92Å)およびGd3+(γ=0.94Å)25 )においてほぼ同じイオン半径が保持されていることの認識と相まって、この新規なモノ陰イオン性ポルフィリン様リガンドの一般的にランタニド結合性の検討を促すことになった。元の「拡大ポルフィリン」システムの新しい16,17−ジメチル置換類縁体から型通りに誘導された、水安定性ガドリニウム(III錯体の合成および性状の検討、ならびに相当するユーロピウム(III)およびサマリウム(III)錯体の製造および性状の検討が行われた。
【0108】
本明細書に記載の芳香性「拡大ポルフィリン」システムは、現存の豊かなポルフィリン配位化学に重要な補足を与えるものである。たとえば、報告されている方法と類似の方法を用いて、亜鉛(II)、マンガン(II)、水銀(II)、およびネオジム(III)の錯体が製造され、その性状が検討された。
【0109】
この新しい一連のトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)は、光物理学的性質が明らかにされている。これらの化合物は、690〜880nmスペクトル範囲に強力な低エネルギー光吸収と、同時に高い三重項量子収率を示すこと、そして、たとえばメタノール溶液中で、一重項酸素の産生に効率的な光増感剤として作用することが明らかにされた。
【0110】
本発明は、リガンドの設計および合成の領域に、顕著な進歩をもたらしたものであり、すなわち、はじめて理論的に設計された芳香性ペンタデンテートマクロ環リガンド、トリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」を提供するものである。「テキサフィリン」という慣用名を与えられたこの化合物は遊離塩基型としても、また各種の金属陽イオンたとえばCd2+,Hg2+,In3+,Y3+,Nd3+,Eu3+,Sm3+およびGd3+のような、よく研究されているポルフィリンの20%小さいテトラデンテートコア内に安定に収容されるには大きすぎる金属イオンと加水分解に安定な1:1錯体を形成して存在することも可能である。さらに、テキサフィリンの遊離塩基型はモノ陰イオン性リガンドであることから、二価および三価の金属陽イオンから形成されたテキサフィリン錯体は、中性pHでも陽性に荷電している。その結果、これらの錯体の多くは実際上水溶性であり、少なくとも類縁のポルフィリン錯体よりもはるかに水溶性である。
【0111】
本明細書にその一部をまとめた現在までの結果は、本発明の拡大ポルフィリン様マクロ環が、遊離のHIV−1の崩壊、ならびにin vivoにおける腫瘍および血中の感染単核細胞の処置に効率的な光増感剤であることを強く示している。これらのマクロ環の側鎖基の極性および電荷を変えることによって、遊離のエンベロープを有するウイルスたとえばHIV−1およびウイルスが感染した末梢単核細胞への結合の程度、速度および多分、部位が著しく変化することが予測される。これらの置換基の変化はまた、白血病またはリンパ腫細胞が夾雑する骨髄、ならびに骨髄正常細胞による光増感剤の取り込みおよび光増感を修飾することが期待される。
【0112】
【実施例】
(実施例1)
ポルフィリンおよび関連テトラピロールマクロ環は、最も融通性の高いテトラデンテートリガンドである1)。さらに大きなポルフィリン様芳香牲マクロ環によって、さらに高度を配位形態を安定化する試みは、しかしながら、ほとんど成功していない2−5)。実際、現在までに、「スーパーフタロシアニン」のウイルス錯体が単離され、構造的特性が解明されているのみで2)、また他の数種の大ポルフィリン様芳香性マクロ環、たとえば「サフィリン」3,6),「オキソサフィリン」6,7),「プラチリン」8),「ペンタフィリン」9)および「[26]ポルフィリン」10)が、金属を含まない形で製造されているにすぎない。本例では、多様な金属陽イオンと結合が可能な、新しい種類の「拡大ポルフィリン」の開発の一態様について述べる。ここにはまた、化合物の独特な合成2,11)、全く新しいポルフィリン様芳香性ペンタデンテートリガンドの合成2,12)、およびそのカドミウム(II)ビスピリジン錯体4の構造について記載する(化合物または錯体1〜4については図1参照)。
【0113】
本方法は、2,5−ビス[3−エチル−5−ホルミル−4−メチルピロール−2−イル)メチル]−3,4−ジエチル−ピロールとオルトフェニレンジアミンの直接酸触媒縮合による非芳香性メチレン架橋マクロ環(化合物1)の製造13)を包含する。これはキランドとしては、無効であることが明らかにされている14 )。本発明者らは、還元型マクロ環化合物1をクロロホルム−メタノール(1:2,v/v)中空気の存在下、塩化カドミウムとともに24時間攪拌し、ついでシリカゲル上クロマトグラフィーによって精製し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶すると、カドミウム(II)錯体3・Clが暗緑色の粉末として24%の収率で得られることを見出した。この反応条件下には、リガンドの酸化と金属の錯体化の両者が同時に起こる。
【0114】
化合物3の構造は、それが18π電子系のベンゼン縮合[18]アヌレンまたは全体の22π電子系のいずれかの構造を取り得ることを示唆している。いずれの場合も、芳香族性構造が明確である。概して、錯体3・Clは化合物1に認められたのと質的に類似のリガンド特性を示す。しかしながら、強力な反磁性環電流の存在から期待されるように、アルキル、イミンおよび芳香性のピークはすべて低領域側にシフトしている。しかも、化合物1の架橋メチレンシグナル(δ≒4.0)13)は、架橋メチンプロトンに帰属できる11.3ppmの鋭い単一線に置き換えられている。この「メソ」シグナルの化学シフトは、適当な18π電子芳香性対照システムのCd(OEP)16)で認められる値(δ≒10.0)17)よりも大きく、22π電子ピロール含有マクロ環であるデカメチルサフィリンの遊離塩基型で認められた値(δ≒11.5〜11.7)3)にきわめて類似している。
【0115】
錯体3・Clの光学スペクトルは、他の芳香性ピロール含有マクロ環3,6,7,18 )の場合とある種の類似を有し、提案された芳香性構造はさらにこの点でも支持される。最も大きな遷移は424nm(ε=72,700)におけるSoret様バンドで、これはCd(OEP)(Pyr)16)の場合にみられる値(λmax=421nm,ε=288,000)18)よりかなり強度が低下している。このピークは、高および低エネルギー側で、異例に強力なN−およびQ−様バンドと隣接している。π電子系の大きなことから期待されるように、錯体3・Clの最低エネルギーのQ−様吸収(λmax=767.5nm,ε=41,200)および発光(λmax=792nm)バンドは、典型的なカドミウムポルフィリンの場合1 8,19)に比べてかなりレッドシフトしている(約200nm!)。
【0116】
上述の金属挿入を硝酸カドミウムで繰り返すと、微量分析データ15)に基づいてプロトン化錯体3・NO3・(HNO3)の式が考えられる錯体が約30%の収率で得られた。過剰のピリジンで処理し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶すると、スペクトル特性は3・Clとほぼ一致するビス−ピリジン付加錯体4−NO3が暗緑色の結晶として単離された。X線回析分析によって決定された4−NO3の分子構造は、リガンドの芳香族性を確認するものである(図2)20)。錯体4の中心の5個の窒素ドナー原子はほぼ同一平面上にあって、中心から窒素までの半径が約2.39Åのほぼ円形の空洞部を形成し(図3参照)、これはメタロポルフィリンの場合よりもほぼ20%大きい21)。Cd原子は中央のN5結合コアの面内に存在する。すなわち、「拡大ポルフィリン」4の構造は、カドミウム原子がポルフィリンN4ドナー面の外部に存在したCdTPP16,22)またはCdTPP−(ジオキサン)2 23)の場合(それぞれ0.58および0.32Å)とは劇的に異なっている。しかも、5配位の正方錐体構造が好ましく、ただ1個のピリジン分子が結合する24)カドミウムポルフィリンとは対照的に、錯体4−NO3ではカドミウム原子は7配位で、2個の頂点ピリジンリガンドと錯体を形成する。したがって、Cd原子の周囲のコンフィギュレーションは五方複錐体構造であり、これは稀ではあるが、カドミウム(II)錯体について未知の構造ではない25 )。
【0117】
中性条件下には、錯体3および4はカドミウムポルフィリンよりさらに安定であるようにみえる。CdTPPまたはCdTPP(Pyr)をNa2S水溶液で処理すると、陽イオンが失われてCdSが沈殿するが、錯体3および4の場合には脱金属は起こらない(しかしながら、酸に曝露するとマクロ環の加水分解が生じる)。実際、脱金属によって遊離塩基リガンド2を製造することはできない。トリピロールジメチン誘導遊離塩基リガンド2は、直接1から、N,N,N’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレンを含有する、空気を飽和したクロロホルム−メタノール中で攪拌することによって合成された15)。収率は低い(≦12%)26)が、いったん形成されると、化合物2は全く安定であるようにみえる。それは、化合物1よりはるかに徐々に分解を受ける13)。これは多分、化合物2における芳香族性の安定化を反映するものと思われる。遊離塩基型「拡大ポルフィリン」2の芳香族性を指示するものとして、還元型マクロ環1に存在するピロール性プロトンに比較して10ppm以上も上方にシフトして、内部ピロールNH単一線がδ=0.90に認められることが挙げられる13)。このシフトは、sp3−連結マクロ環、オクタエチルポルフィリノーゲン[δ(NH)=6.9]27)が相当するポルフィリン,H2OEP[δ(NH)=−3.74]17)に酸化された場合に認められるシフトと平行している。これは、化合物2に存在する反磁性環電流の強度がポルフィリンの場合と類似することを示唆している。
【0118】
本明細書に記載した芳香性「拡大ポルフィリン」システムは、現存の豊富なポルフィリン配位化学に重要な補足を与えるものである。たとえば、記載された方法と類似の方法を用いて、化合物2の亜鉛(II),マンガン(II),水銀(II),およびネオジム(III)錯体が製造され、性質が明らかにされた。
【0119】
以下の一覧表における引用文献は、引用された理由により参考として、本明細書に導入される。
【0120】
(参考文献と注)
1.The Porphrins;Dolphin,D.編;Academic Press,New York,1978〜1979,第I〜VII巻
2.「スーパーフタロシアニン」,ペンタアザ芳香性フタロシアニン様システムはニラニル仲介縮合によって製造された。それは、遊離塩基型、または他の金属含有型としては得られない。(a)Day,V.W.;Marks,T.J.;Wachter,W.A.J.Am.Chem.Soc.1975,97,4519−4527。(b)Marks,T.J.;Stojakovic,D.R.J.Am.Chem.Soc.1978,100,1695−1705.(c)Cuellar,E.A.;Marks,T.J.Inorg.Chem.1981,208,3766−3770.
3.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429−6436.
今日まで、これらの可能性のあるペンタデンテートリガンドからは、4配位金属錯体しか製造されていない。
【0121】
4.より小さい中央空洞部を有するポルフィリン様システムの例については(a)Vogel,E.;Kocher,M.;Schmickler,H.;Lex,J.Angew.Chem.1986,98,262−263;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1986,25,257−258.(b)Vogel,E.;Balci,M.;Pramod,K.;Koch,P.;Lex,J.;Ermer,O.Angew.Chem.1987,99,909−912;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1987,26,928−931.参照
5.Mertesらは最近、ジピロメチンから誘導される優れた(しかし非芳香性である)ポルフィリン様「アコーディオン」リガンドの5配位銅錯体の特性を明らかにしている。(a)Acholla,F.V.;Mertes,K.B.Tetra−hedron Lett.1984,3269−3270.(b)Acholla,F.V.;Takusagawa,F.;Mertes,K.B.J.Am.Chem.Soc.1985,6902−6908.他の非芳香性ピロール含有マクロ環の4配位銅錯体も最近製造されている:Adams,H.;Bailey,N.A.;Fenton,D.A.;Moss,S.;Rodriguez de Barbarin,C.O.;Jones,G.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1986,693−699.
6.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1972,2111−2116.
7.(a)Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,23−24.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1969,1480−1482.Broadhurst,M.J.;Grigg,R;Johnso,A.W.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1970,807−809.
8.(a)Berger,R.A.;LeGoff,E.;Tetra−hedron Lett.1978,4225−4228.(b)LeGoff,E.;Weaver,O.G.J.Org.Chem.1987,710−711.
9.Rexhausen,H.;Gossauer,A.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1983,275.(b)Gossauer,A.Bull.Soc.Chim.Belg.1983,92,793−795.
10.Gosmann,M.;Franck,B.Angew.Chem.1986,98,1107−1108;Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1986,25,1100−1101.
11.化合物の系統的名称は、4,5,9,24−テトラエチル−10,23−ジメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.13,6.18,11.014,19]ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンである。
【0122】
12.非芳香性平面状ペンタデンテートピリジン誘導リガンドは知られている。たとえば、(a)Curtis,N.F.In Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds;Melson,G.A.;Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 4.(b)Nelson,S.M.;Pure Appl.Chem.1980,52,2461−2476.(c)Ansell,C.W.G.;Lewis,J.;Raithby,P.R.;Ramsden,J.N.;Schroder,M.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1982,546−547.(d)Lewis,J.;O’Donoghue,T.D.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,DaltonTrans.1980,1383−1389.(e)Constable,E.C.;Chung,L.−Y.;Lewis,J.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1986,1719−1720.(f)Constable,E.C.;Holmes,J.M.;McQueen,R.C.S.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1987,5−8.参照
13.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394−4397.
14.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.;Murai,T.J.Coord.Chem.,印刷中.
15.すべての新しい化合物について、満足できる分光分析、マススペクトルおよび/または分析データが得られた。
【0123】
16.OEP=オクタエチルポルフィリンおよびTPP=テトラフェニルポルフィリン;頭に付したH2およびCdはそれぞれ遊離塩基およびカドミウム(II)型を示す。Pyr=ピリジン。
【0124】
17.(a)Scheer,H.;Katz,J.J.In Porphyrins and Metalloporphyrins;Smith,K.,編;Elsevier:Amsterdam,1975;第10章.(b)Janson,T.R.;Katz,J.J.;参考文献1の第4巻第1章.
18.Gouterman,M.,参考文献1の第3巻,第1章.
19.Becker,R.S.;Allison,J.B.J.Phys.Chem.1963,67,2669.
20.結晶データ:CHCl3−ヘキサンから、三斜晶系空間群,P1(no.1)に結晶化された4・NO3は、a=9.650(3)Å,b=10.217(4)Å,c=11.295(4)Å,α=98.16(3),β=l07.05(2),σ=92.62(3)°,v=1049.3(6)Å3),ρc=1.49g−cm−3(Z=1)を示す。ωスキャンを用いた独特の反射(5654)[4936,F≧6σ(F)]を、MoKα照射(λ=0.71069Å)により50°の2θを目標にNicolet R3m/V上193Kで収集した。慣用方法でR=0.0534に精密化した。すべての非−H原子は異方性に精密化した。H原子の位置を計算し(dC−H0.96Å)、関連C原子上に乗せて等方性に精密化した。非配位硝酸イオンは、O・・・C(CHCl3)およびO・・・H距離がそれぞれ3.00(2)Åおよび2.46(2)ÅのCHCl3溶媒分子のH−結合距離内に存在する。詳細は、補足資料参照。
【0125】
21.Hoard,J.L.,参考文献17a,第8章.
22.Hazell,A.Acta Crystallogr.,Sect.C:Cryst.Struct.Commun.1986,C42,296−299.
23.Rodesiler,P.F.;Griffith,E.H.;Ellis.,P.D.;Amma,E.L.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1980,492−493.
24.(a)Miller,J.R.Dorough,G.D.J.Am.Chem.Soc.1952,74,3977−3981.(b)Kirksey,C.H.;Hambright,P.Inorg.Chem.1970,9,958−960.
25.化合物4は、すべて窒素ドナーから誘導された最初の7配位カドミウム錯体であると思われる。他の五方複錐体カドミウム錯体の例については、(a)Cameron,A.F.;Tayler,D.W.;Nuttall,R.H.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1972,1608−1614.(b)Liles,D.C.;McPartlin,M.;Tasker,P.A.;Lip,H.C.;Lindoy,L.F.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1976,549−551.(c)Nelson,S.M.;McFall,S.G.;Drew,M.G.B.;Othman,A.H.B.;Mason,N.G.J.Chem.Soc.Chem.Commun.1977,167−168.(d)Drew,M.G.B.;Othman,A.H.B.;McFall,S.G.;Mcllroy,A.D.A.;Nelson,S.M.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1977,1173−1180.(e)Charles,N.G.Griffith,E.A.H.;Rodesiler,P.F.;Amma,E.L.Inorg.Chem.1983,22,2717−2723.
26.DDQ,Ag2O,I2,PtO2,PbO2およびPh3CBF4を含む他の酸化剤では反応しないか、または分解生成物を与えたのみであった。
【0126】
27.Whitlock,H.W.;Jr.;Buchanan,D.H.Tetrahedron Lett.1969,42,3711−3714.
(実施例2)
ポルフィリンおよび関連テトラピロール系化合物は、全ての既知の大環状化合物1の中で最も広く研究されつづけているが、大型の共有結合ピロール含有系の開発に関しては、比較的僅かな研究が行なわれていただけである。2−12しかしながら、大型の、すなわち「拡張された(拡大された、拡大)」ポルフィリン様系は、いくつかの理由で重要なものである。すなわち、これらの化合物は、かなり研究されているポルフィリンの可能な芳香族類縁体として役立ち、2−8あるいはこれらの、またはその他の天然産生ピロール含有系の強力なバイオミメティックモデルとして役立つ。13,14さらに、大型ピロール含有系は、新規な金属結合性大環状化合物として、刺激的可能性を提供する。2,9−12,15たとえば、適当にデザインされた系は、大きい金属カチオンを結合することができ、そして(または)高度配位構造を安定にすることができる、多目的に使用できるリガンドとして役立ち、これらの化合物は、普通の約2.0Å半径の四座配位子ポルフィリン母体の範囲内に通常、入れられる。17生成する錯体は、重金属キレート化治療の分野に、あるいは配位化学の領域および範囲を拡大する新規な媒体として重要な用途を有する。15,18近年に、「サフィリン」3,4(sapphyrins)、「オキソサフィリン」5(oxosapphyrins)、「スマラジリン」3,4(smaragdyrins)、「プラチリン」6(platyrins)および「ペンタフィリン」7(pentaphyrin)を包含する多くの強力な五座配位子ポリピロール芳香族系が製造され、それらの金属を含有していない形態として研究されている。しかしながら、大部分の場合に、相当する金属化形態に関する情報は、ほとんどまたは全く入手することはできない。実際に、「スーパーフタロシアニン」(superphthalocyanine)のウラニル錯体が、製造され、構造確認されている唯一の金属含有ペンタピロール系である。2不幸なことに、この「スーパーフタロシアニン」系は、その遊離塩基またはその他の金属含有系として明らかに存在することはできない。従って、多くの非芳香族系のピリジン誘導五座配位子系が従来報告されているにもかかわらず19,20、本発明の以前において、多目的に使用でき、構造確認されている五座配位子芳香族リガンドは入手することができなかった。本明細書に記載されている本発明の態様はまた、種種の金属カチオンを結合することができ、かつまた或る範囲の普通ではない配位構造を安定化することができる、新規な種類のピロール由来芳香族「拡大ポルフィリン」の開発を示す。本発明者等は、最近に、化合物2A 11の合成を報告した(例1参照)。この化合物は、新規なポルフィリン様モノアニオン性芳香族五座配位子リガンドであり、慣用名として「テキサフィリン」(texaphyrin)(大型テキサス型ポルフィリン)18と命名され、その七配位カドミウム(II)ビスピリジン五角両錐形錯体5aAの構造が報告された。可能なキレート化にもとづく治療用途における、21,22そしてまた天然の金属タンパク質のための強力な構造探索子として(113Cd NMR分光測定法を使用)23、重要であることから、このカドミウム含有「テキサフィリン」系の配位性質がさらに研究された。この例は、正式には5aAの配位的不飽和類縁体に相当するモノ結合六配位カドミウム(II)ベンズイミダゾール五角錐形カチオン性錯体4bAの単結晶X線回折分析によって、その特徴を報告するものである。本例は、ピリジン(pyr)およびベンズイミダゾール(BzIm)の両方に対する溶液塩基結合(Keq.)研究の結果を包含しており、構造に係る初めての報告であり、本例の場合には、同一金属カチオンの支持に、これらの2種の、独特の、しかし未知の19、配位構造体を使用した。本発明の化合物および錯体の図解式構造は、第4図に1A、2A、3A、4aA、4bA、5aAおよび5bAで示されている。
【0127】
大環状化合物の還元sp3形態(1A)14を、空気飽和クロロホルム−メタノール中で塩化カドミウムまたは硝酸カドミウムで処理すると、両方の場合に、緑色溶液が生成される。シリカゲルによるクロマトグラフィ精製およびクロロホルム−ヘキサンからの再結晶の後に、五配位「テキサフィリン」クロライドまたはナイトレート錯体、3A・Clおよび3A・NO3が、ほぼ25%の収率で、分析的に純粋な形態で得られた(デミハイドレートとして)。しかしながら、金属挿入処理を上記と同一の反応条件および精製条件の下に(ただし、クロマトグラフィはSEPHADEXを用いて行なう)、行なうと(硝酸カドミウムを使用)、結晶および非結晶形の緑色固形混合物が得られた。純粋な五配位錯体として分析することには失敗したが、この明らかに不均質のカサ高の物質を過剰のピリジンで処理し、クロロホルム−ヘキサンから再結晶させると、ビスピリジン錯体5aA−NO3が実質的に定量的収率で、暗緑色結晶として生成された。先に報告されているように11(例1参照)、このビス結合七配位錯体に予想される五角両錐形配位構造を確認し、そしてまた大環状「テキサフィリン」リガンド2Aの平面状五座配位子の特徴(第5図参照)、を確認するために、X線結晶回折分析を行なった。
【0128】
上記中間体生成物の特徴を測定する第一段階として、上記不均質固形混合物から、単結晶を単離し、X線回折分析に付した。このようにして得られた構造(第6図)は全く予想外のものであった。すなわち、六配位五角錐形カドミウム(II)錯体(4bA・NO3)が見出され、この錯体では、2つの可能なアキシャル結合部位の一つが、中央Cd原子に配位されていない、ナイトレートの対アニオンにより結合されているベンズイミダゾール(BzIm)によって占領されている。この五配座「テキサフィリン」大環状化合物の第一配位窒素は次いで、カドミウムの周囲の配位球状圏を完成させる。第六図に示されているように、このリガンドの5個の配位原子はCd原子に結合しており、このCd原子は、ベンズイミダゾールリガンドの配位窒素に対して、N5配位原子面から0.338(4)Å離れて、この大環状化合物の面の外部にある。この面からの突出距離は、CdTPP−(ジオキサン)25に見い出されるものより小さく(0.32Å)26(しかしCdTPP27に見い出されるものより小さい)、相当するビスピリジン五角両錐形付加物5aA−NO3に関して見い出される数値と格別に差違を有する。この初期の構造において、カドミウム(II)カチオンは実質的に、大環状化合物の面内にあることが見い出されていた(第6図参照)。カチオン4bAはまた、5aAと異なっている。すなわち、結晶格子内で、2個の分子は、約3.38Åのバンデルワールス距離で分離されて、面対面の様相で相互に積重されいる。その結果として、いづれか特定の分子中のアルキル基はいずれも、大環状化合物の面のBzIm担持側に置き換えられる。しかしながら、ビスピリジン構造に共通して、11カチオン4bAでは、大環状化合物のsp2原子が、C11に見い出される平面度(planarity)(0.154(13)Å)から最大偏差で実質的に平坦である(第8図)。さらにまた、錯体5aA−NO3に共通して、五個のリガンド窒素は、約2.42Åの中心から窒素までの半径をもって、ほぼ円形の結合空間を定めており、この半径はメタロポルフィリンに見い出されるものよりも、ほぼ20%大きい。
【0129】
上記構造結果は、「テキサフィリン」2Aの元の構造が大きい22π電子(またはベンズアニール化18π−電子)芳香族ポルフィリン様リガンドであることを支持している28。これらの結果はまた、この「拡大ポルフィリン」が、カドミウムの周囲で、1種以上の「異常な」配位構造を支持することができることを明白に証明している。
【0130】
上記構造結果はまた、金属挿入およびセファデックスによる精製の後に得られる不均質カドミウム含有中間体の特徴の洞察手段を提供する。すなわち、この物質の少なくとも或る部分は六配位BzIm結合錯体4bA・NO3からなる。カチオン4bA中の配位したBzImは金属挿入および付随する酸化を含むリガンド分解反応(この反応には多分、トリピランα−炭素の求電子性芳香族脱アシル化および引続く、オルト−フェニレンジアミンとの縮合が含まれる)から誘導されるものとする確かな仮説が考えられるが、この六配位体を検討しても、このようなBzIm配位が化学的に妥当であることは、疑いの余地もないものとして確定することはできない。過剰のピリジンの存在の下では、ビス結合した七配位カチオン性種5aAは固体状態であることを好むことから、この点は特に重要である。化合物3A・NO3の、ベンズイミダゾールおよびピリジンの両方の存在下における溶液結合物性を測定することは重要であると考えた。この目的は、これらの2つのアキシャル塩基の結合差(差がある場合に)を調べることにあるばかりではなく、またCd挿入およびSEPHADEXによる精製の後に生成される中間体の不均質固形物質の特徴を明確にし、特にこの物質が五および六配位カチオン3Aおよび4bAの混合物からなるものであるという妥当な仮説を証明することにあった。
【0131】
厳密に五配位の出発カドミウム錯体たとえば対アニオンも、また偶然のリガンドもアピカル(先端)配位部位を占領していない、構造3Aによって図解式に示されている錯体の場合には、塩基結合は、下記に示す方程式(1)および(2)に従って生じるものと考えることができる。K1≧K2の条件の下に、これらのプロセスでは、先ずモノ結合した、多分五角錐形の六配位体(たとえば、4bA)の生成、引き続く5aAに対して同族の、配位的不飽和のビス結合された五角両錐形生成物の生成が順次生じるものと考えることができる。しかしながら、K2>>K1である場合には、この段階的な概念上の提案は妥当ではない。これらの条件の下では、方程式(3)に示されているように、ビス結合した物質の直接生成という点で、塩基結合を分析する方が容易になる。
L+B LB K1=[LB]/[L][B] (1)
LB+B LB2 K2=[LB2]/[LB][B] (2)
L+2B LB2 K1K2=[LB2]/[L][B]2 (3)
従って、本研究との関係において、この問題はモノ結合およびビス結合と関連する変化を探索することができる、溶液塩基分析法の結果および関連変化を用いる大体のK1,K2またはK1K2の測定の一手段になる。
【0132】
光学分光測定法は、安定な金属錯体の特徴を確認する重要な方法である。吸収変化がリガンド結合に伴なって生じる場合には、光学分光測定法はまた、塩基結合定数を測定するための、都合の良い方法を提供する。29たとえば、カドミウムテトラフェニル ポルフィリン(CdTPP)の場合には、MillerおよびDoroughは30、吸収スペクトルの2つの低エネルギーQ帯に関連する変化を追跡することによって、ベンゼン中の未結合四配位出発金属ポルフィリンに対する、1個のピリジンのアキシャル リガンドの結合に係る数値は、29.9°(K1)でほぼ2700M−1であることが測定された。興味深いことに、これらの30および後続の研究者達31は、ビス結合したCdTPP−(Pyr)2 25の生成の証拠を得ることはできなかった。従って、偽の八座配位子構造はCdTPP−(ジオキサン)2の弱く結合したアキシャル リガンドによって、固体状態で明確にされるが26、このような構造がピリジン含有ベンゼン溶液で得られるという証拠は存在しない。
【0133】
精製錯体3A・NO3の光学スぺクトル(第9図)はカドミウムポルフィリン化合物と共通の若干の要素を示す。30−34たとえば、錯体3A・NO3はCHCl3中で、425nm(ε=82,800)に強力なソレット(Soret)状高エネルギー転移を示し、この数値はカドミウムポルフィリン化合物に見い出される数値[たとえば、CdOEP25:λmax(CHCl3/MeOH v/v 19/1)=406nm(ε=272,000)]35よりも格別に小さい。この錯体はまた、さらに高いエネルギーおよびさらに低いエネルギーにおいて、格別に強力な、側面に位置するN−およびQ−様帯を示す。この最低エネルギーQ−様帯(λmax=770nm、ε=49,800)は、特に注目される。すなわち、これは、約200nm赤側に移動されており、この移動は、典型的カドミウムポルフィリン化合物に見い出される最低エネルギーQ−タイプ転移より、ほとんどさらに4強いファクターである(たとえば、CdOEP:λmax(CHCl3/MeOHv/v 19/1)=571nm、ε=15,400)35。我々は、このような様相が、18π電子ポルフィリン化合物に比較して、総合的に22π電子「テキサフィリン」中に存在する、さらに大きい非局在化芳香族系を反映するものであると考える。重要なことは、3,8,12,13,17,22−ヘキサエチル−2,7,18,23−デカメチルサフィリンのカドミウム錯体がCHCl3中で示す最低エネルギー転移が701nmであるのに対し35、「スーパーフタロシアニン」のウラニル錯体に見られる最低エネルギー転移が914nmであることにある。すなわち3A・NO3の最低エネルギー転移は、これらの2種の非常に異なる22π電子ペンタピロール対照系に見い出されるエネルギーの間の中間にある。
【0134】
不幸なことに、上記の3A・NO3の光学スペクトルと他のピロール含有芳香族大環状化合物の光学スペクトルとの間の総体的な質的類似にもかかわらず、光学分光測定はカチオン3Aのアキシャル結合性の測定手段として、無効であることが証明された。たとえば、3A・NO3のCHCl3溶液に過剰のピリジンを添加しても、ソレット様帯で約1.5nmの赤移動および最低エネルギーQタイプ帯で、3.5nmの青移動が生じるだけであった。(同様の微少の変化がまた、BzImを添加した場合にも見られる)。従って、少なくともカドミウム錯体の場合には、「テキサフィリン」拡大ポルフィリン系の光学物性はほとんど、総合的大環状骨格および結合したカチオンの電子環境の変化に対して比較的鈍感であることによって、決定されるものと見做される。
【0135】
「テキサフィリン」2Aのカドミウム(II)錯体は反磁性であり、従って1HNMR法による研究を容易に受け入れる。第10図に示されているように、3A・NO3の1H NMRは、大型芳香族ピロール含有大環状化合物に予想されるものに典型的である一般的特徴を示す。36たとえば、リガンド(1)14のsp3形態に比較して、そのアルキル、イミンおよび芳香族ピークはいづれも、下方域に移動する。しかしながら、さらに特徴的でさえあることは、遊離塩基「テキサフィリン」2およびその種々のカドミウム含有誘導体3〜5の両方に、架橋sp2混成メチンプロトンに起因する「メソ」シグナルが存在することにある。これらの架橋プロトンは、リガンド(1A)の元のsp3形態の相当する架橋メチレンシグナルよりも約7ppm下方の場で共鳴する。14実際に、3A・NO3の「メソ」シグナルは、代表的β−アルキル置換カドミウムポルフィリンのものから、ほぼ1ppm下流の場に見い出され(たとえば、Cd(OEP)25,36δ≒10.0)、反磁性のサフィリンに見い出される化学シフトの数値に近い、(たとえば、遊離塩基、反磁性サフィリンの場合には、3δ≒ll.5〜11.7)。これらの観察結果は、22π電子「テキサフィリン」系に求められる高度に局在化されたπ特性から見て、予想外のことではない。
【0136】
第11図は、3A・NO3およびカチオン4bAの結晶を得た粗生成物の1H NMRスペクトルの低場領域を比較するものである。これら2つのスペクトル間の最も衝撃的差違は、カサ高の物質のスペクトル(第11図の線B)中の6.81および7.27ppmにおける2つの鋭く、さらにきわ立ったピークおよび約6.4ppmにおける小さく広いシグナルの存在にある。これらの特徴はカチオン4bAに存在する結合したBzImから発生されるシグナルによるものと見做されるが、この結論は必ずしも明白ではない。CDCl3中において、遊離BzImの炭素結合プロトンは、7.25(m,2H)、7.75(m,2H)および8.41(s,1H)ppmで共鳴する。37高い方の場への移動はカチオン3Aへの結合を予想させるが、予想された変化が実際に見い出されたものと同じ位に大きいかは明らかではない。従って、錯体3A・NO3の完全スペクトル測定は、この点を検討し、6.4、6.81および7.27ppmのシグナルが疑いの余地のないものであるとする試みに対して重要である。これらの測定の結果を第12図および第13図に示す。
【0137】
第12図に示されている1H NMR測定の重要な特徴は、カチオン3Aに対する錯体形成においてBzImシグナルに関して生じる化学シフトの劇的変化にある。しかしながら、同様に重要なことは、前記のカサ高のカドミウム含有物質の質的特徴(第11図、スペクトルB参照)が、精製3A・NO3にほぼ3/5当量のBzImを付加した時にも再現されるという発見にある。この劇的な結果は、我我の推定によれば、X線回折分析にもとづいてなされた、カチオン4bAの推定構造を疑いの余地もなく支持する。Cd挿入およびSephadex精製の後に単離される不均質物質が確かに、五配位体と六配位体(すなわち、3A・NO3と4bA・NO3)との混合物を含むことは当初の予想とまた、質的に一致する。
【0138】
定量的Keq.測定の場合には、「メソ」シグナルに関連する変化を追跡するのが最も容易である。この場合には、迅速なリガンド交換29,30を示す鋭いピークおよび化学シフトにおける共鳴上の大きい変化が見い出された(第13図)。さらにまた、この領域には、干渉性のBzImにもとづく共鳴は見い出されない。 第14図では、錯体3A・NO3中「メソ」プロトンに係る化学シフトの変化が添加BzImの関数として示されている。得られる測定曲線は、少なくともこの塩基の場合には、アキシャル結合が2つの実質的に独立した段階状結合プロセスで生じるものと考えることができることを示している。このデータを非常に小さい変換および非常に大きい変換の両点で標準分析38すると、K1=1.8±0.2×104およびK2=13±3の数値が得られる。
【0139】
BzImの場合と真に同様に、五配位錯体3A・NO3へのピリジンの付加は、容易に検出され、充分に明確な、「メソ」シグナルの化学シフトの変化をもたらす(第15図)。しかしながら、BzImにより得られた結果とは全く反対に、この場合の結合は分離した段階的な様相で生じるものと考えることはできない。このことは、第13図を検討すると全く明白である。この第13図には、錯体13A・NO3中の「メソ」プロトンに係る化学シフトの変化がピリジン濃度の増加の関数としてグラフに描かれている。この結合等温式を標準法38によって分析すると、K1≒1.6M−1およびK1K2=315±30M−2の数値が得られる。
【0140】
上記のK1およびK2(またはK1K2)の数値は検討しているカドミウム錯体が、脱金属化に対して安定であり、およびまた方程式1および2(または3)の平衡が塩基結合条件の下に、適切であるという推定は正しいことを示す。これらの事柄の第一の点は、容易に明白にされる。すなわち、脱金属化が生じるならば、誰も塩基結合を研究しないことは明白である!。しかしながら対照実験はいづれも、「テキサフィリン」リガンドから誘導されるカドミウム錯体が格別に小さいポルフィリンのものよりもかなりの大きさの度合で安定であることを示唆した。実際に、この錯体に過剰のスルフィドアニオン(これは、CdTPPを脱金属化させる、25,35)をチャレンジさせた場合でさえも、脱金属化は生じない。39従って、このようなプロセスがピリジンまたはベンズイミダゾールの存在の下に生じることはありえないことは明らかである。第二の点は、定量的研究において特に重要である。すなわち、たとえば、出発錯体3・NO3が厳格な五配位体ではない場合には、K1(および多分、K2もまた)は、上記で暗示されているように、純粋な付加反応であると言うよりは、むしろアキシャル リガンド置換反応を示す。対照実験は、初めの五配位の予想が妥当であることを示す。3A・NO3のNH4NO3およびH2Oによる独立した測定は、「メソ」シグナルの化学シフトにおける適度の、単調な変化が≧50当量のこれらの強力な外来リガンドの付加の間に生じることを示す。40このことは、「完全」結合が1:1化学量論で生じるか(基本的に、分析データにもとづくと、H2Oの場合には、不可能)、またはこれらの錯体がCHCl3中では貧弱な配位性を有し、五配位がカドミウムに関連することを意味し、後者の考え方のほうが妥当であると見做される。
【0141】
前述の推定が妥当である範囲までは、溶液中におけるBzImおよびPyr結合に関して得られるKeq.値は、固体状態で見い出される配位挙動を正確に反映する。たとえば、1H NMR測定実験に使用される濃度(約5×10−3M)において、錯体3A・NO3は0.2モル当量だけのBzImの添加の後にほぼ20%、六配位形態に変換され、1.0モル当量の添加後には90%が変換される。重要なことに、10モル当量の存在の下でさえも、生成するモノ結合体4bAは相当するビス結合七配位形態(5bA)に、35%変換されるだけである。ベンズイミダゾールの場合には、モノ結合カチオン性錯体4bAが主要種である溶液において、大きい濃度範囲が関係を有する。しかしながら、平衡データは、溶液中では、ビス結合種5aAまたは非結合出発錯体3Aが過剰のピリジンの存在の下では独占的であることが常であることを示した。たとえば、1H NMR測定の条件の下では、錯体3A・NO3は、ピリジン3当量の添加後に五角両錐形生成物5aA・NO3にほぼ5%変換され、10当量の添加後には、この種にほぼ35%変換される。
【0142】
立体因子および電子因子の両方がピリジンおよびベンズイミダゾールに対する異なった結合性の説明の助けになりうる。特に、ヘム(heme)モデル化学41の領域において、金属ポルフィリンを用いる相当な研究が、ピリジン型塩基に比較してイミダゾール型リガンドの配位能力が強いことを証明するために用いられた。これは、後者の系の貧しいπ塩基度に一般に帰因することが見い出された。41,42従って、カチオン3Aに対するBzIm結合に見い出された、大きいK1値(ピリジンに比較して)は、少し意外なことになる。しかしながら、さらに問題になることは、この塩基のK2が非常に小さいという発見にある。一目見ただけは、モノ結合はこの強いπ塩基の存在の下に安定であることは妥当ではないように見える。これは、配位的に飽和された七配位種への選択的変換がピリジンの存在の下に生じることによる。しかしながら、第6図に示されている結晶構造を検討してみると、この説明の基礎が判る。すなわち、BzIm残基は4bA中の大環に対しほぼ垂直にあり、ピロール環含有N23上で配向されている。その結果として、BzIm塩基のH8Aはこの環の7個の原子にきわめて接近しており、N23(2.65(2))、C24(2.69(2))、およびC22(2.81(2))とほとんど接触する(Å)。従って、ヘムモデルおよび妨害イミダゾールの場合に関して充分に報告されているように、41b,43立体障害は過剰のBzImの存在の下における六配位を好む基本的因子であるように見える。すなわち、立体効果および電子効果の両方が、本発明の「拡大ポルフィリン」系におけるBzImとPyrとの見掛け上の非常に異なる結合挙動の区別に役立つ。これらの効果はまた、中でも、固体状態での錯体4bA・NO3および5aA・NO3の形成および選択的単離に対して有理であることを示す。
【0143】
五座配位子22π電子ポルフィリン様「テキサフィリン」大環状化合物は、カドミウム(II)のための効果的で、多目的に使用できるリガンドである。このリガンドは、このカチオンの3種の新奇な配位構造、すなわち五角形、五角錐形および五角両錐形、の形成を、支持することができる。これらの形態の第一の形態は、現在、分析的、液相研究にもとづいて推定されているだけであるが、後の2種の構造は、単結晶X線回折分析によって、溶液状態および固体状態の両方で特徴確認されている。従って、我々の知識によるかぎり、「テキサフィリン」系は同一中心金属カチオンに対して五角錐形構造および五角両錐形構造を支持できる、構造的に開示された、最初の系である。この独特のケランド(cheland)はまた、数種の別の重要な性質を有する、そのカドミウム錯体をもたらす。
【0144】
これらの重要な性質には、異常に小さいエネルギーのQタイプ帯を有する光学スペクトルおよび相当するカドミウム(II)ポルフィリンに比較して、はるかに大きい脱金属化に対する安定性が含まれる。この第一の性質は、本発明の「テキサフィリン」(2A)またはその他の「拡大ポルフィリン」系の重要な用途は小さいエネルギー吸収物性が有利である光合成モデル形成の研究または光力学的治療の分野に見い出されるべきであることを示唆している。44上記第二の性質は、現在開示されている系に類似する系が、カドミウム、毒物学的に重要であり、21水銀および鉛の陰にあるだけで、現在も指摘されている金属および、あるとしても治療法22が、現在数少ない金属のための有効なキレート化にもとづく解毒治療の開発の基礎を提供しうることを示唆している。
【0145】
電気スペクトルは、Beckman Du−7分光光度計で記録した。プロトンおよび13C NMRスペクトルは、内部標準としてCHCl3を使用し(1Hの場合にはδ=7.26ppm、13Cの場合には、77.0ppm)、CDCl3中で得た。プロトンNMRスペクトルは、Nicolet NT−360(360MHZ)またはGeneral Electric QE−300(300MHZ)分光計で記録した。炭素スペクトルは、Nicolet NT−500分光計を使用し、125MHZで測定した。高速原子衝撃質量分析(FAB MS)は、Finnigan−MAT TSQ−70装置およびマトリックスとして、3−ニトロベンジルアルコールを使用して行なった。元素分析は、Galbraith Laboratoriesによって行なわれた。X線構造は下記に、および参考文献11および14に記載されているように、解析した。
【0146】
溶剤および反応剤はいづれも、市場から購入した試薬級品質のものであり、これらは、さらに精製することなく使用した。sigma親油性Sephadex(LH−20−100)およびMerckタイプ60(230〜400メッシュ)シリカゲルを、カラムクロマトグラフィで使用した。sp3形態のリガンド(1A)は、先に記載されている酸触媒法14を用いて≧90%の収率で生成した。現在の高い方の収率は、プロセスにおける基本的変更に由来するものではなく、この特別のキイの反応を用いる実験が数多く行なわれたことを単に反映するものである。
【0147】
4,5,9,24−テトラエチル−10,23−ジメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.1.1.3,6.18,11.01 4,19]ヘプタコーサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,,16,18,20,22(25),23−トリデカエン、遊離塩基「テキサフィリン」2Aの製造。
【0148】
大環状化合物1A 14(50mg、0.1ミリモル)をメタノール/クロロホルム(150ml、v/v 2/1)中で、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン(「プロトンスポンジ」)の存在の下に、室温で一日間攪拌した。この反応混合物を次いで、氷水中に注ぎ入れた。有機層を分離し、塩化アンモニウム水溶液で、次いでブラインで洗浄した。回転蒸発器上で濃縮した後に、粗生成物を、SEPHADEX上で、溶出剤として、初めに純粋クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v 10/1)を用いるクロマトグラフィによって精製した。数種の早い方の赤色帯部分は捨て、暗緑色帯部分を採取し、減圧で濃縮し、次いでクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、sp2形態のリガンドを暗緑色粉末として、3〜12%の範囲の収率で得た。この良好な方の収率はまれな場合に得られるだけである。2Aに関して1H NMR(CDCl3):δ=0.90(1H,br.s,NH),1.6−1.8(12H,m,CH2CH3),3.05(6H,s,CH3),3.42−3.58(8H,m,CH2CH3),8.25(2H,m,phen.CH),9.21(2H,s,CH=N,9.45(2H,m,phen.CH),11.25(2H,s,CH=C);C.I.MS(CH4):491(C32H35N5・H+の計算値:490):FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e 512(C32H34N5Na+の計算値:512);
IR(KBr)ν=3420,2960,2920,2860,1600,1560,1540,1370,1350,1255,1210,1080,1050,980,940,905,750cm−1;UV/VIS(CHCl3)λmaxnm(ε)327.0(30,700);422.5(60,500);692.0(10,100);752.0(36,400).
リガンド2Aにカドミウムを結合させる実験を行なった。数ミリグラムの化合物2Aを、前記で概述した直接挿入法に従い、クロロホルム/メタノール中で過剰量の塩化カドミウムとともに攪拌した。しかしながら、二日後でさえも、UV/VIS(751におけるQタイプ帯の追跡)は、金属挿入がほとんど、または全く生じないことを示した。化合物、すなわちリガンド2Aの製造が困難であり、ここに記載した直接挿入法の成功が自明であることから、他の金属化法を検討する実験は行なわなかった。
【0149】
錯体3A・Clを下記のとおりにして製造した。sp3形態のリガンド(1A)1 4(40mg、0.08ミリモル)をクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 2/1)中で塩化カドミウム(21.4mg、0.08ミリモル)とともに、一日間攪拌した。この暗緑色反応混合物を、回転蒸発器上で、減圧の下に濃縮し、次いでシリカゲルに通し、溶出剤として初めに純粋クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v 10/1)を用いてクロマトグラフィ処理した。数種の先行する赤色帯部分を捨てた後に、暗緑色帯部分を採取し、減圧で乾燥させ、化合物3A・Clを得た。この生成物をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、分析的に純粋な化合物3A・Clを暗緑色粉末として、24%の収率で得た。3A・Clに関して:1H NMR(CDCl3):δ=1.55−1.67(12H,m,CH2CH3),3.03(6H,s,CH3),3.04−3.55(8H,m,CH2CH3),8.27(2H,m,phen.CH),9.23(2H,s,CH=N),9.40(2H,m,phen.CH),11.30(2H,s,CH=C);13C NMR(CDCl3):δ=9.8,17.3,18.1,19.1,19.2,117.6,117.8,128.4,132.7,138.2,139.3,145.4,146.7,150.5,153.5,155.0;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e602(112Cd,M+,100),601(113Cd,M+,64),600(112Cd,M+,84);IR(KBr)ν=2950,2910,2855,1635,1605,1380,1255,1210,l090,1010,795cm−1;UV/VISλmaxnm(ε)327.0(32,800);424.0(72,700);704.5(11,000);767.5(41,200);
元素分析:C32H34N5Cd・Cl・(1/2・H2O)について、
計算値:C,59.54;H,5.46;N,10.85.
実測値:C,59.78;H,5.32;N,10.80.
錯体3A・NO3を下記のとおりにして製造した。sp3形態のリガンド(1A)14(40mg、0.08ミリモル)をクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 1/2)中で、硝酸カドミウム四水和物(31mg、0.1ミリモル)とともに一日間攪拌した。この暗緑色の反応混合物を次いで上記のとおりに、濃縮し、次いでシリカゲルに通しクロマトグラフィ処理した。生成する粗製物質を次いで、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、分析的に純粋な3・NO3を27%の収率で得た。453A・NO3に関して:1H NMR(CDCl3):δ=1.55−1.70(12H,m,CH2CH3),3.04(6H,s,CH3),3.42−3.55(8H,m,CH2CH3),8.27(2H,m,phen.CH),9.20(2H,s,CH=N),9.30(2H,m,phen.CH),11.07(2H,s,CH=C);FAB MS(3−ニトロベンジルアルコールマトリックス、8KeV加速):m/e 602(114Cd,M+,100),601(113Cd,M+,100),600(112Cd,M+,87):IR(KBr)ν=2960,2920,2860,1600,1550,1440,1375,1200,1130,1075,l040,975,930,900,740cm−1;UV/Vis λmaxnm(ε)=328.0(39,900),425.0(82,800),706.0(14,400),770(49,800);
元素分析:C32H34N5Cd・NO3・(1/2H2O)について
計算値:C,57.19;H,5.25;N,12.50.
実測値:C,57.12;H,5.19;N,11.80.
錯体3A・NO3の脱金属化の実験を行なった。遊離sp2架橋リガンド2Aを得るための実験において、上記錯体をクロロホルム中で、硫化ナトリウムの存在の下に、次いで独立してチオ硫酸ナトリウムとともに、数時間攪拌した。光学物性における格別の変化は見い出されなかった。このことは、アキシャル結合における変化が生じる可能性を排除しないけれども、これらの観察結果は、この反応条件の下に、脱金属化がほとんどまたは全く生じないことを示す妥当な証拠になる。硫化ナトリウムの場合には、この決定的結論はFAB MSによってさらに支持された。すなわち、質量スペクトルにおいて、高分子量揮発性生成物に相当する証拠は、いづれも得られなかった。水性酸で処理すると、錯体3A・NO3は、加水分解を受ける(イミン残基の部位で)ものと見做れ、従って脱金属化されるように見える。しかしながら、このプロセスの速度は強力にpHに依存し、たとえばその半減期間は、約0.1N HClの存在の下に数時間の程度である。 錯体4bA・NO3の製造および単離。
sp3形態のリガンド(1A)(40mg,0.08ミリモル)を、クロロホルム/メタノール(150ml、v/v=1/2)中で、硝酸カドミウム四水和物(31mg、0.1ミリモル)とともに1日間攪拌した。この暗緑色の反応混合物を回転蒸発器上で濃縮し、次いでSephadetに通し、溶出剤として、初めに真正クロロホルムを、次いでクロロホルム/メタノール(v/v l0/1)を用いてクロマトグラフィ処理した。数種の先行する赤色帯部分を捨た後に、暗緑色帯部分を採取し、次いで濃縮し、暗緑色固形物を得た。この生成物をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させ、結晶固体と非結晶固体との混合物を27%の収率で得た。
【0150】
このカサ高の物質に関して:
1H−NMR(CDCl3):δ=1.55−1.72(12H,m,CH2CH3),3.04(6H,s,CH3),3.45−3.58(8H,m,CH2CH3),6.4(ca.3/5H,br.s,BzIm),6.81(ca.6/5H,br.s,BzIm),7.27(ca.6/5H,br.s,BzIm),829(2H,m,phen.CH),9.21(2H,s,CH=N),9.32(2H,m,phen.CH),11.08(2H,s,CH=C):FAB MS(3−ニトロベンジル アルコール マトリックス、8KeV加速):m/e
602(114Cd,M+,l00),601(113Cd,M+,67),600(11 2Cd,M+,78):IR(KBr)ν=2970,2935,2875,1560,1382,1356,1300,1258,1212,1085,1050,985,910,755cm−1;uv/vis λmax nm(ε)325.0(29,000);425.0(64,400);710.5(9,800);767.5(38,500);
元素分析:
実測値: C,42.42;H,4.28;N,10.34
(C32H34N5Cd・NO3・(1/2 H2O)の計算値:C 57.19;H5.25;N 12.50;C32H34N5Cd・NO3・BzIm・CHCl3の計算値:C 53.35;H 4.59;N 12.44;C32H34N5Cd・NO3・CHCl3の計算値:C 41.26;H 3.66;N,8.25)。
【0151】
X線構造測定に使用する4bAの単結晶は、上記粗生成物のCDCl3中の濃縮溶液をn−ヘキサンにより層形成させ、次いで冷蔵庫内で数ヶ月放置することを含む二回目の再結晶の後に、上記残留非結晶物質から単離した。
【0152】
錯体5aA・NO3の製造。
上記粗製カドミウム含有錯体の製造に使用された方法と同様の方法で、とsp3形態のリガンド(1A)を、硝酸カドミウム四水和物で処理し、次いでSephadex上で精製した。この生成物のCDCl3中の0.005M試料約0.7mlに、pyr−D5 25μlを加えた。生成する溶液をn−へキサンにより層形成させ、冷蔵庫内に入れた。数ヶ月後に、緑色結晶を、ほぼ定量的収率で単離した。これらの結晶の分子組成を、先に開示されている11単結晶X線回折分析にもとづいて測定し、5a・NO3・CHCl3であることが判った。
【0153】
1H NMR(CDCl3/pyr−D5)δ=1.55−1.70(12H,m,CH2CH3),3.22(3H,s,CH3),3.45−3.56(8H,m,CH2CH3),8.40(2H,m,phen.CH),9.32(2H,s,CH=N),9.75(2H,m,phen.CH),11.62(2H,s,CH=C);UV/VIS(CHCl3−pyr v/v 10/1)λm axnm(ε)321.5(45,000),426.5(79,000),700.5(13,5000),765.5(51,900).
BzImまたはPyr−D5を有する3A・NO2の1H NMR測定を行なった。厳しく精製した錯体3A・NO3を減圧(lmmHg)の下に80℃で1日間乾燥した。この五配位錯体(3.32mg、0.005ミリモル)をCDCl3 0.7〜0.75ml中に溶解し、次いでNMR管に定量的に移すことによって、測定用出発試料を調製した。この試料に、一定量のBzImまたはPyr−D5を、量を増加しながら加え(CDCl3中の既知濃度の溶液として)、27℃で「メソ」プロトンの化学シフトを記録した。対照実験をまた、既知量のCF3CO2H、D2OおよびNH4NO3を、3・NO3の同様の保存溶液に加えることによって行なった。これらの各種1H NMR測定において、いずれか一定の塩基対リガンド比に関する絶対化学シフトは、δ−δ0の数値によって、独立した実験の間で、0.05ppmより小さく変化することが見い出された。Keq.測定(下記参照)に使用された決定的な目に見える変化は小さくさえある(一般に、≦0.003ppm)ことが見い出された。
【0154】
結合率の測定。
第14図および第15図を検討すると、これらの図面はカチオン3Aに対するBzImの結合が2種の充分に分離している平衡プロセスであると考えることができる。添加されたBzImの関数として「メソ」シグナルに関して得られた化学シフトデータを、非常に小さい変換と非常に大きい変換との両方について分析した。方程式4(これは、参考文献38の方程式5.13に相当する)に従い、(δ−δ0)/[BzIm]対(δ−δ0)をグラフに描くことによって標準Scatchard(シグナル逆数)グラフを作成し、傾斜の絶対値としてKを、そしてまたインターセプトとして(δω−δ0)Kを得た。
(4)(δ−δ0)/[BzIm]=−K(δ−δ0)+(δ∞−δ0)K
この式において、δは検出された化学シフトであり、δ0は純粋な五または六配位出発物質錯体(3A・NO3または4bA・NO3)の初期化学シフトであり、δωは最終モノ−またはビス−結合した錯体4bA・NO3または5aA・NO3に関して計算された化学シフトであり、Kは問題の平衡定数であり、そして[BzIm]は、遊離の、錯体化されていないベンズイミダゾールの濃度である。小さい変換域および大きい変換域の両方において、添加べンズイミダゾール(「BzIm」)に関して、確実に[BzIm]を表わすためには、結合ベンズイミダゾールに係る補正が必要であることが判った。この補正は、方程式5および6に示されている表現法に従い簡単な方法で行なった。
【0155】
低[BzIm]0において、
[BzIm]=[BzIm]0−[lig]0(δ−δ0)/(δ∞−δ0)(5)
高[BzIm]0において、
[BzIm]≒[BzIm]0−[lig]0(6)
上記式において、[lig]0は、出発五配位リガンド3A・NO3の濃度を表わす。
【0156】
[BzIm]に係る、これらの補正値を使用して、低および高[BzIm]0条件について、それぞれR≧0.99および0.98として、直線状Scatchardグラフを得た。これにより、1.80×104M−1および12.9M−1のK1およびK2値が得られる。このK1値は全く信頼できるものと考えられる(推定誤差≦15%)。しかしながら、BzImの溶解性が低く、かつまた5aA・NO3生成に関連して、不完全な測定が生じるので、K2に関して得られる数値は幾分あいまいである(推定誤差≦25%)。49
第16図に示されている、添加「pyr」の関数としての、「メソ」プロトン化学シフトの変化は、2種の区別できる結合性が明確に存在していないことを示している。さらにまた、予想されたように、このデータを、方程式1に従う単純なモノ結合プロセス(6CN物質を生成するために)に当てはめる実験は行なわなかった。従って、2種の相反する平衡プロセスの観点から、これらのデータを分析する必要がある。この分析はConnorsにより概述されている慣用の反復法を用いてなされた。38この場合に、問題の方程式は、NMR分析に適したConnorsの方程式4.31および4.32に相当する38:
上記各式において、δは見い出された化学シフトであり、δ0は純粋五配位出発錯体3・NO3の初期化学シフトであり、Δ11は純粋な推定上のモノ結合六配位種の生成に相当する総化学シフト差違であり、Δ12は初期五配位物質からのビス結合カチオン性種5aの形成に相当する総化学シフトであり、そして「pyr」は、遊離ピリジン濃度である。「pyr」の正確な数値は方程式938により与えられ、この式において、[pyr]0は添加ピリジンの総濃度であり、そして[lig]0は出発五配位リガンド3A・NO3の濃度を表わす。
しかしながら、結合等温式(第16図)を検討すると、大体の[pyr]≒[pyr]0が、測定範囲の多くにわたり、妥当に有効であることが示唆された。従って、方程式7の初期反復解式(1/[pyr]−K1Δ11/(δ−δ0)対[pyr]{Δ12/δ−δ0)−1をプロットし、それぞれ傾斜およびインターセプトとしてK1K2および−K1を得る)および方程式8の初期反復解式((δ−δ)0{1+K1[pyr]+K1K2[pyr]2}/[pyr]対[pyr]をプロットし、それぞれ傾斜およびインターセプトとして、K1K2Δ12およびK1Δ11を得る)を、この極めて簡易化された前提を用いて行なった。これは迅速に集められ、K1=1.5M−1およびK1K2=308M−2の初期未補正値が得られた。これらの数値は、実験条件([3A・NO3]=0.005M)の下に、大体の[pyr]≒[pyr]0が極めて重要な条件で、すなわち3<[ピリジン]/[リガンド]<10および3A・NO3中0.005Mで≦4%内に対し有効であることを確証した。補正がこの小さいパーセンテージでなされた場合には、得られる最終のK1値は≒1.6M−1であり、K1K2値は=315M−2である(補足試料参照)。我々は、K1K2値は充分に決定されているが(推定誤差≦10%)、このデータはK1(およびK2)を正確に定めることができないものである(推定誤差≒50%)ことを強調することは重要であると考える。しかしながら、この不確実性は、本明細に記載されている中心的結論の価値を損うものではない。
【0157】
錯体4bAに関するX線実験。
4bA・NO3・CHCl3:C40H41N8O3Cl3Cdに関して、M=900.57。このデータの結晶は、0.06×0.22×0.44mmの寸法の非常に暗い緑色の板状物であり、CHCl3−ヘキサンからの、おそい拡散によって成長させ、上記したようにして、付随する非結晶物質から分離した。データは、グラファイト モノクロメーターを備え、Mo Kα放射線(λ=0.71069Å)およびNicolet LT−2低温放出系を用いて、Nicolet R3回折計で採取した。格子定数は、19.2°<2θ<24.4°により、26反射の最小自乗法リファインメントから得た。スペース基は、
Z=2,F(000)=920,a=11.276(4),b=12.845(3),c=14.913(4)Å,α=84.82(2),β=69.57(2),λ=85.84(2)°,v=2014(1)Å,ρC=1.48g−cm− 3を有する、三斜晶系P1(No.2)であった。
【0158】
データはオメガ スキャン技法(7191反射、6566ユニーク、Rint=0.064),2θ範囲4.0〜50.0°、3〜6°/分で1.2°ωスキャン(h=0→14、k=−15、1=−18→18)を用いて採取した。4種の回折点(−2,2,0;3,2,3;2,−3,−1;−1,0,4)は、146反射毎に再測定し、装置および結晶の安定性を調べた。
【0159】
Iに対する減衰補正範囲は、09863〜1.076であった。データはまた、Lp効果および吸収(結晶形状にもとづく、透過因子範囲0.8533〜0.9557、μ=7.867cm−1)に関して補正した。F0<6σ(F0)を有する回折点は無視した(3272反射)。構造は重原子およびFourier法によって解析し、253および287のブロックで、非H原子に関する異方性熱パラメーターにより、フル−マトリックス最小二乗法によってリファインした(ただし、1個のピロール環の乱れたNO3基のO3Aおよび乱れたエチル基の末端C原子、C29(部位占有因子0.44(2))、C29A、C31(部位占有因子0.37(2))およびC31Aは除く)。ナイトレートは0.45(2)のマイナー配向(Aの印をつけたO原子)に関する部位占有因子により、N原子は(N 1B)の2つの配向の周囲で乱れていた。H原子は対応するC原子に依存する等方性熱パラメーターを用いて計算し、リファインした。CHCl3溶剤は、0.43(2)のマイナー成分(Aの印をつけたCl原子)に関する部位占有因子により、C−Cl結合軸(C1C〜C11)の範囲で回転することによって、乱される。これらの乱れによって、クロロホルムH原子の位置は計算できなかった。W=1/[(σ(F0))2+.0118(F2)]およびσ(F0)=0.5KI−1/2(σ(I))の場合には、ΣW(1F01−1FC1)2は最少になった。(1ピーク−1バックグラウンド)×(スキャン速度)およびKによって定められる強度Iは、Lp効果、吸収および減衰による補正である。シグマ(I)は、統計学的計算から推定した:σ(I)=(1ピーク+1バックグラウンド)1/2×(スキャン速度)]。3294反射に関する最終R=0.0781、WR=0.114(Rall=0.143、WRall=0.176)および適合良好度=1.00。最終リファインメントサイクルにおける最大[Δ1σ]<0.1および最終ΔFマップにおける最小ピークおよび最高ピークはそれぞれ、−0.97および1.69e−/Å3であった(Cd原子の領域)。データ換算、構造解折および初期リファインメントは、NicoletのSHELXTLPL−US50ソフトウェア パッケージを用いて行なった。最終リファインメントはSHELX7651を用いて行なった。非H原子のニュートラル原子散乱係数は、CromerおよびLiberman53からの変則分散補正により、CromerおよびMann52から得、一方、H原子の散乱係数は、Stewart.DavidsonおよびSimpson54から得、線状吸収係数はInternationalTables For X−ray Crystallography(1974)55から得た。最小二乗プラン プログラムはCordes56によって提供され、他のコンピューター プログラムはCtadolおよびDavis57の参照刊行物11から得た。
【0160】
表1には、4bA・CHCl3の非水素原子の区分配位または同価の等方性熱パラメーター(A2)が示されている。表2には、カチオン4bAの非水素原子の結合長さ(Å)および角度(°)が示されている。
【0161】
【表1】
【0162】
4bA・NO3・CHCl3の非水素原子の区分配意および等方性もしくは同価の等方性a熱パラメータ(Å2)
a 異方性原子の場合には、U値は
Ueq=1/3ΣiΣjUijai*aj*Aijとして計算されたUeqであり、この式において、Aijは、ithおよびjth直接の空間単位格子ベクターのドット積(内積)である。
【0163】
【表2】
【0164】
カチオン4bAの非H原子の結合長さ(Å)および角度(°)。
【0165】
新規芳香族22π−電子五座配位子「拡大ポルフィリン」リガンド(2A)から誘導される六配位五角錐形カドミウム(II)カチオン性錯体4bAのX線回折分析による特徴を説明する。X線構造は、大環状化合物の5個の中心配位原子がカドミウム(II)カチオンに配位しており、このカドミウム(II)カチオンはこの大環状化合物の平均平面上で0.334(2)Åにあり、さらにアピカル ベンズイミダゾール リガンドにより結合されていることを示す。相当する五角両錐形付加物5aAにおいて真実であるように、カチオン4bAのX線構造は、この大環状リガンドが、≒2.42Åの中心−窒素半径を有するほぼ円形の空間を定めている5個の配位窒素原子を有し、ほぼプラナーである(最大偏差、C15に関して0.154(13)Å)ことを示す。このX線回折分析に使用した4bA・NO3の結晶は、sp3形態のリガンド(1A)をCd(NO3)2・(H2O)4で処理し、引続いてセファデックス上で精製した後に得られる結晶物質を非結晶物質との不均質混合物から単離した。このカサ高の物質のCDCl3中におけるプロトンNMRスペクトルは、独立して製造された純粋な五配位錯体3Aのものと実質的に同一であるが、結合したベンズイミダゾール リガンドに帰因する、6.81および7.27ppmにおける2つの鋭いピークならびに約6.4ppmにおける広い特徴の存在を示した。これらの特徴的なリガンド特性は、ほぼ3/5当量のベンズイミダゾールを含有する純粋な五配位錯体3Aの測定においても再現される。この発見は、4bA・NO3結晶を単離した、カサ高の物質が結晶形および非結晶形の、六および五配位種の混合物からなることを示唆しており、カチオン4bAに見い出される結合ベンズイミダゾールが、金属挿入および付随するリガンド酸化にともなう分解的副反応に由来するものであるとする仮説を支持している。これらの測定から、五配位カチオン性錯体3Aに対する第一当量および第二当量のベンズイミダゾールの結合に関する、順次形成定数(K1およびK2)値は、それぞれ1.8×104M−1であることが決定された。3A・NO3にピリジンを錯化する場合には、同様の1H−NMR測定から1.6M−1および315M−2のK1・K2値がそれぞれ決定された。これらの結果は、ベンズイミダゾール含有クロロホルム溶液中で、拡張された濃度範囲が存在し、ここでは五角錐形錯体4bAが主要カドミウム含有種であり、他方で、ピリジンの存在の下では、未結合錯体3Aまたは配位的に飽和されている五角両錐形種5aAが溶液中で優勢であることを示している。
【0166】
下記にあげた参照公開刊行物を、引用理由に対してここに引用して組入れる。
【0167】
(文献(参照刊行物))
1.「The Porphyrins」;Dolphin,D.,Ed.,Academic Press:New York,1978−1979;Vols.I−VII.
2.(a)Day,V.W.;Marks,T.J.;Wachter,W.A.J.Am.Chem.Soc.1975,97,4519−4527.(b)Marks,T.J.;Stojakovic,D.R.J.Am.Chem.Soc.1978,l00,1695−1705.(c)Cuellar,E.A.;Marks,T.J.Inorg.Chem.1981,20,3766−3770
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10.大形の非芳香族ピロール含有大環状化合物の例に関しては、次の刊行物を参照する:
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17.Hoard,J.L.In Porphyrins & Metalloporphyrins;Chapter 8,Smith.K.,Ecl.;Elsevin,Amsterdam,1975.
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19.精査のためには、次の刊行物を参照する:
(a)Drew,M.G.B.Prog.Inorg.Chem.1977,23,67−210.(b)Melson,G.A.in 「Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds」,Melson,G.A.,Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 1.(c)N.F.Curtis,in 「Coordination Chemistry of Macrocyclic Compounds」,Melson,G.A.Ed.;Plenum:New York,1979,Chapter 4.(d)Nelson,S.M.Pure and Appl.Chem.1980,52,2461−2476.(e)Lindoy,L.F.in 「Synthesis of Macrocycles」,Izatt,R.M.and Christensen,J.J.,Eds.,J.Wiley:New York,1987,Chapter2.(f)Newkome,G.R.;Gupta,V.K.;Sauer,J.D. 「Heterocyclic Chemistry」,Newkome,G.R.,Ed.;J.Wiley:New York,1984,Vol.14,Chapter 3.(g)De Sousa,M.;Rest,A.J.Adv.Inorg.Chem.Radiochem.1978,21,1−40.(h)参照刊行物12もまた参照できる。
20.ビピリジン−誘導系および関連五座配位子リガンドの最近の例に関しては、次の刊行物を参照する:
(a)Ansell,C.W.G.;Lewis,J.;Raithby,P.R.;Ramsden,J.N.;Schroder,M.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1982,546−547.(b)Lewis,J.;O’Donoghue,T.D.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1980,1383−1389.(c)Constable,E.C.;Chung,L.−Y.;Lewis,J.;Raithby,P.R.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1986,1719−1720.(d)Constable,E.C.;Holmes,J.M.;McQueen,R.C.S.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1987,5−8.
21.Ochai,E.−I. 「Bioinorganic Chemistry」,Allyn and Bacon:Boston,1977,pp.475−476.
22.Klaasen,C.D.in 「The Pharmacological Basis of Therapeutics,6th Edition」,Gilman,A.G.;Goodman,L.S.;Gilman,A.,Eds.,Macmillan:New York,1980 Chapter 69,pp.1632−1633.
23.最近の情報を得るためには、下記の刊行物を参照する:
(a)Summers,M.F.Coord.Chem.Rev.1988,86,43−134.(b)Ellis,P.D.Science 1983,221,1141−1146.(c)Ellis,P.D.in 「The Multinuclear Approach to NMR Spectroscopy」,Lambert,J.B.;Riddell,F.G.,Eds.;D.Reidel:Amsterdam,1983,pp.457−523.
24.注目されるべきことに、五角錐形および五角両錐形の構造が、2種の非常に密接に関連する五座配位子大環状シツフ塩基リガンドで見い出されており、このリガンドは環の大きさの点で異なっている(16原子対17原子);この点については下記の刊行物が参照できる:(a)Nelson,S.M.;McFall,S.G.;Drew,M.G.B.;Othman,A.H.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1977,167−168,and(b)Drew,M.G.B.;McFall,S.G.;Nelson,S.M.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1977,575−581.
25.OEP=オクタエチルポルフィリン、TPP=テトラフェニルポルフィリン、およびPPIXDME=遊離塩基およびカドミウム(II)形態にそれぞれ関連する、予め固定されているH2およびCdを有するプロトポルフィリン IX ジメチル エステル;BzIm=ベンズイミダゾール;pyr=ピリジン。
26.Rodesiler,P.F.;Griffith,E.H.;Ellis,P.D.;Amma,E.L.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1980,429−493.
27.Hazell,A.Acta Cryst.1986,C42,296−299.
28.「テキサフィリン」2およびその誘導体は、総合的22π電子芳香族系と同様に、ベンズアネレート化[18]アニュレンとして表わすことができる。予備分子電子軌道画数計算およびジアミノマリオニトリルから誘導される3・NO3の18π電子大環状類縁体に対するスペクトル(692nmの最低エネルギーQタイプ遷移が見い出される)の比較にもとづいて、現時点で我々は22π電子式を好んでいる:
Hemmi,G.;Krull,K.,Cyr,M.,Sessler,J.L.,unpublished results.
29.Drago,R.S. 「Physical Methods in Chemistry」,W.B.Saunders:Philadelphia,1977,Chapter 5.
30.Miller,J.R.;Dorough,G.D.J.Am.Chem.Soc.1952,74,3977−3981.
31.Kirksey,C.H.;Hambright,P.Inorg.Chem.1970,9,958−960.
32.一般的議論に関しては、下記の刊行物を参照する:Gouterman,M.In ref.1,vol.III,Chapter 1.
33.Dorough,G.D.;Miller,J.R.J.Am.Chem.Soc.1951,73,4315−4320.
34.Edwards,L.;Dolphin,D.H.;Gouterman,M.;Adler,A.D.J.Mol.Spectroscopy,1971,38,16−32.
35.Johnson,M.R.;Cyr,M.;Sessler,J.L.,unpublished results.
36.(a)Scheer,H.;Katz,J.J.In ref.17,Chapter 10.(b)Janson,T.R.;Katz,J.J.Inref.1,Vol IV,Chapter 1.
37.「Aldrich Library of NMR Spectroscopy,2nd ed.」,Pouchert,C.J.,Ed.,Aldrich Chemical Co.:Milwaukee,1983;Vol.2,p.558.
38.Connors,K.A. 「Bindihg Constants」,J.Wiley:New York,1987.
39.我々は、この安定性の多くが運動学的因子に帰因するものとする。本明細書に詳述したように、予め形成されている「テキサフィリン」2中へのCd25の挿入は、認識できる速度では生じなかった。このことは、運動学的障害が金属挿入に関して実質的であることを示唆している;同一のことが錯体分解に関してもまた、真実になる。
40.痕跡量の酸の付加は、「メソ」シグナルを高い方の場に劇的に移動させ、たとえば1当量のCF3CO2Hの添加の後に、0.113ppm移動する。このことは、定量的Keq.測定実験が実際に、カドミウムに対する塩基結合を反映し、有利にプロトン付与されている金属錯体の単純な脱プロトン化を反映しないことを示唆している。
41.一般的検討の場合には、下記の刊行物を参照する:
(a)Ellis,P.E.,Jr.;Linard,J.E.;Szymanski,T.;Jones.R.D.;Budge,J.R.;Basolo,F.J.Am.Chem.Soc.1980,l02,1889−1896.(b)Brault,D.;Rougeee,M.Biochemistry,1975,13,4591−4597.(c)Collman,J.P.;Brauman,J.I.;Doxsee,K.M.;Halbert,T.R.;Bunnenberg,E.;Linder,R.E.;LaMar,G.N.;Del Gaudio,J.;Lang,G.;Spartalian,K.J.Am.Chem.Soc.1980,102,4182−4192.(d)Traylor,T.G.Acc.Chem.Res.1981,14,102−109.
42.(a)Collman,J.P.;Brauman,J.I.;Doxsee,K.M.;Sessler,J.L.;Morris,R.M.;Gibson,Q,H.Inorg.Chem.1983,22,1427−1432.
43.一例として、下記の刊行物を参照する。
(a)Collman,J.P.;Reed,C.A.J.Am.Chem.Soc.1973,95,2048−2049.(b)Wagner,G.C.;Kassner,R.J.Biochim.Biophys.Acta 1975,392,319−327.(c)さらにまた、参照刊行物41b−41dを参照できる。
44.初期光学的研究は、350nmにおける光励起の後に、カチオン3の励起トリプルレットがほぼ80%の量子収率で生成されることを示す。酸素の存在していない下では、見い出されたトリプルレットの生涯は54μsである;空気の存在の下では、このトリプルレット状態はシングルレット酸素の生成によって完全に消失する:Mallouk,T.;Sessler,J.L.未公開の結果。
45.この物質の特徴は、固体状態での予備的113Cd NMR実験によってさらに測定されている。(Kennedy,M.A.;Ellis,P.D.;Murai,T.;Sessler,J.L.,未公開の結果)。この錯体(3・NO3)の等方性化学シフト、すなわち固形カドミウム パークロレートに対して_σ=191は、「普通」のカドミウムポルフィリン、たとえばCdTPP25 _(σ=399ppm46)またはCdPPIXDME25 _(σ=480ppm47)に比較して≒200〜300ppm保護される。この差違は「拡大」「テキサフィリン」リガンドの結合芯部内に追加の電子対が存在することによって生じる保護の増大を表わすことがある。MaricqおよびWaughの技術48を用いて、マジック アングル スピニングスペクトルを刺激すると、△σ=207.6の異方性およびη=0.01の非対称性が生じ、これは系が対称の≧3倍軸を有することを示している。さらに、この化学シフトテンソルの固有値は、σ11=120.6ppm、σ22=123ppm、およびσ33=329.6ppmであることが見い出された。
46.Jakobsen,H.J.J.Am.Chem.Soc.1982,104,7442−7542.
47.Keenedy,M.A.;Ellis,P.D.,submittedto J.Boil.Chem.
48.Maricq,M.;Waugh,J.S.J.Chem.Phys.1979,70,3330−3316.
49.このデータはまた、ピリジン錯体形成に使用された反復実験を用いて分析することもできる。この実験を用いて、2.0×104M−1のK1値および1.9×l05M−2のK1K2値が得られた。
50.SHELXTL−PLUS.Nicolet Instrument Corporation,Madison,WI,USA:1987.
51.SHELX76.結晶構造測定に関する問題。
Sheldrick,G.M.;Univ.of Cambridge,England:1976.
52.Cromer,D.T.:Mann,J.B.Acta Cryst.1968,A24,321−324.
53.Cromer,D.T.;Liberman,D.J.Chem.Phys.1970,53,1891−1898.
54.Stewart,R.F.,Davidson,E.R.;Simpson,W.T.J.Phys.Chem.1965,42,3175−3187.
55.International Tables for X−ray crystallography,1974.Vol.IV,p55,Birmingham:Kynoch Press:1974.
56.Cordes,A.W.,personal communication(1983).
57.Gadol,S.M.;Davis,R.E.Organometallics 1982,1,1607−1613.
(実施例3)
ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)1,2,3、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)1,4,5および1,10−ジアザ−4,7,13,16−テトラオキサシクロオクタデカン−N,N’−ジ酢酸(dacda)1,6等の強結合陰イオン性リガンド類から誘導されるカドリニウム(III)錯体は、磁気共鳴造影(MRI)において使用するために近年開発されている常磁性造影剤のうちで最も有望である。実際、[Gd、DTPA]−は、増強された腫瘍検出プロトコールにおける有望な使用について米国において臨床試験にかかっている。しかしながら、他のガドリニウム(III)錯体の合成は、そのような系が、既存のカルボキシレート基剤造影剤に比べてより大きい動力学的安定性、優れた緩和性、より良い生物分布性を有するであろうことからなおも興味あるものである。最近行なわれている一つの手がかりは、テトラキス(4−スルフォネートフェニル)ポルフィリン等の水可溶性ポルフィリン誘導体の使用に基いている7,8,9。残念ながら大きいカドリニウム(III)陽イオンは比較的小さいポルフィリン結合核(γ=2.0Å11)内に完全に収容され得ず、また、その結果としてガドリニウムポルフィリン錯体は常に加水分解的に不安定である7,8,12,13。しかしながら、大型のポルフィリン様リガンドは、この問題を迂回する手段を提供するであろう。
【0168】
前述したように、本発明は、新規「拡大ポルフィリン」系1B(「テキサフィリン」との通称が与えられている)の合成、およびビスピリジン付加物カドミウム(II)錯体2Bの構造に関係する。化合物または錯体1B−11Bの構造については図17参照。ポルフィリンのものより約20%大きく、6座配位子Cd2+(γ=0.92Å)およびGd3+(γ=0.94Å)25に適したものに略同等なイオン半径と実際に結合する略環状のペンタデンテート結合核の構造の存在は、この新規な一価陰イオン性ポルフィリン様リガンドの一般的ランタニド結合性の探究を促進した。対応するユーロピウム(IV)およびサマリウム(III)錯体8Bおよび9B(図17参照)の調製および特徴付けに加え、元来の「拡大ポルフィリン」系の新規な16,17−ジメチル置換類似体(6B)26から形式的に誘導される水に安定なガトリニウム(III)錯体(7B)の合成および特徴付け。
【0169】
電子スペクトルを、Beckman DU−7分光光度計で記録した。IRスペクトルをKBrペレットとしてPerkin−Elmer 1320分光光度計で4000cm−1〜600cm−1にて記録した。低分解能原子衝撃質量分光(FAB MS)をAustinにてFinnigan−MAT TSQ−70装置、および担体としてn−ニトロベンジルアルコールまたはグリセロール/オキサール酸のいずれかを使用して行ない、また高分解能FAB MS分析(HRMS)をMidwest Center for Mass SpectrometryにおいてCsIを標準に用いて行なった。元素分析はGalbraithLaboratoriesにて行なった。
【0170】
材料。 すべての溶媒および試薬は商業的に購入した試薬級の品質のもので、更に精製することなく使用した。カラムクロマトグラフィのために、Sigmaの親油性SEPHADEX(LH−20−100)およびMerckタイプ60(230−400メッシュ)シリカゲルを使用した。
【0171】
Nd錯体3Bの調製。リガンド1027のsp3型(50mg、0.1m mol)を、ネオジムナイトレートペンタハイドレート(63mg、0.15mmol)およびクロロホルム/メタノール(150ml、v/v l/2)中のプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共に1日攪拌した。暗緑色の反応混合物を氷/水/塩化アンモニウム上に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。該錯体をセファデックスを通し、純クロロホルム、クロロホルム/メタノール(10:1)、メタノールおよび水を用いてクロマトグラフィにかけた。暗緑色のバンドをメタノールから回収し、濃縮し、クロロホルム/メタノール/n−ヘキサン(クロロホルム対メタノールの比は1対2である)から再結晶して13mgの3(18%)を得た。3について:UV/VIS(CH3OH)* max(ε):330.5(33,096),432.5(85,762),710.5(10,724),774.5,(38,668);FAB MS(グリセロール担体):m/e(相対強度)631(142Nd,95),633(144Nd,100),635(146Nd,77);IR(KBr)*3360,2965,2930,2870,1610,1560,1450,1400,1350,1250,1205,1135,1080,l050,980,940,905,755cm−1。
【0172】
Sm錯体4Bの調製は、以下のとおりである。マクロサイクル10B 27(40mg、0.08m mol)を酸化白金(18mg、0.2m mol)およびサマリウムアセートハイドレート(69mg、0.2m mol)と共にベンゼン/メタノール(50ml、v/v、1/1中で還流下に攪拌した。2時間後、反応混合物をセライトを通してろ過し、減圧下で濃縮した。該濃縮物を、セファデックスを通してクロロホルムのみを溶離液に用いてクロマトグラフィにより精製した。赤色バンドを廃棄した後、緑色バンドを回収し、真空中にて濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させて0.8mgの4(約1%)を得た。4Bについて、UV/VIS* maxnm438、706.5、765;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール担体):m/e(相対強度)635(147Sm、72)、636(149Sm、72)、637(149Sm、73)、640(152Sm、100)、642(154Sm、55)。
【0173】
Eu錯体5Bの調製は、以下のとおりである。マクロサイクル1027(50mg、0.1m mol)をユーロピウムアセテートハイドレート(34mg、0.1m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v、1/2)中にて1日間攪拌した。該反応混合物を氷/水上に注ぎ、クロロホルムにて抽出した。有機層を塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、次いで濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させた。再結晶固形物を、セファデックスを通して純クロロホルムおよび純メタノールを溶離液として使用してクロマトグラフィにより精製した。メタノール中に回収される暗緑色バンドを濃縮して少量の暗緑色固体(<1%)を得た。5について:UV/VIS* maxnm438、700、765;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール担体):m/e(相対強度)639(151Eu、94)、641(153Eu、100)。
【0174】
4,5,9,24−テトラエチル−10,16,17,23−テトラメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ[20.2.1.13, 6.18,11.014,19]ヘプタコサ−3,5,8,10,12,14(19),15,17,20,22,24−ウンデセン(11B)。このマクロサイクルは、先に10B 27の調製について報告された酸触媒法を使用し、1,2−ジアミノ−3,4−ジメチルベンゼンおよび2,5−ビス−(3−エチル−5−フォルミル−4−メチルピロール−2−イルメチル)−3,4−ジエチルピロールから収率約90%で調製された。
【0175】
11について:mp200−C dec;lH NMR β 1.06(6H,t,CH2CH3),1.13(6H,t,CH2CH3)2.15(6H,s,フェニル−CH3),2.22(6H,s,ピロール−CH3),2.38(4H,q,CH2CH3),2.50(4H,q,CH2CH3),3.96(4H,s,ピロール2−CH2),7.19(2H,s,芳香族性),8.10(2H,s,CHN),11.12(1H,s,NH),12.48(2H,s,NH);13CNMR δ9.49,15.33,16.47,17.22,17.71,19.52,22.41,117.84,120.40,120.75,125.11,125.57,134.95,135.91,141.63;UV/VIS* max367nm;FAB MS,M+522;HRMS,M+521.35045(計算値C34H43N5 521.35185)。
【0176】
Gd錯体7Bの調製。リガンド11のsp3型(42mg、0.08m mol)をガドリニウムアセテートテトラハイドレート(122mg,0.3m mol)およびプロトンスポンジ(54mg、0.25m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v、1/2)中にて1日間攪拌した。暗緑色の反応混合物を減圧下で濃縮し、クロロホルム/トリエチルアミン(50ml、v/v 25/1)により前処理したシリカゲル(25cm×1.5cm)にてクロマトグラフにかけた。クロロホルム/トリエチルアミン(25/1)およびクロロホルム/メタノール/トリエチルアミン(25/2.5/1 v/v)を溶離液として使用した。暗赤色のバンドを最初に回収し、2本の緑色バンドがそれに続いた。UV/VISによって鮮明な芳香族性を示した最後の緑色バンドを濃縮し、クロロホルム/n−ヘキサンから再結晶して14mg(22%)のGd錯体7Bを得た。7Bについて:FAB MS(メタノール/オキサール酸/グリセロール担体):m/e(相対値)671(155Gd,58),672(156Gd,78),673(157Gd,94),674(158Gd,100),676(160Gd,64);HRMS,M+674.2366(計算値C34H38N5 158Gd 674.2368):UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(14,850),450.5(36,350),694.5(6,757),758.0(23,767);IR(KBr)*2990,2960,2900,2830,2765,2700,2620,2515,1710,1550,1440,1410,1395,1365,1265,1220,1180,1150,1105,1090,1060,1040,1095,1045,1015,680cm−1;分析、計算値 C34H38N5Gd°(OH)2°2H2O:C.54.89;H,5.96;N,9.41.測定値:C,54.49;H,5.95;N,8.97。
【0177】
Eu錯体8Bの調製を行なった。マクロサイクル11B(53mg、0.1m mol)をユーロピウムアセテートハイドレート(105mg、0.3m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v 1/2)中で6時間攪拌した。暗緑色の反応混合物を1つの例外を除いて前述したように減圧下で濃縮した。クロロホルム/トリエチルアミン(25:1)およびクロロホルム/メタノール/トリエチルアミン(25:5:1)を溶離液として使用した。緑色の錯体8をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶させて26mgの生成物(33%)を得た。8Bについて:UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(24,570),450.5(63,913),696.0(10,527),759.0(40,907);FAB MS(メタノール/オキサール酸/グリセロール担体):m/e(相対強度)667(151Eu,79),669(153Eu,100);HRMS,M+,669.2336(計算値C34H38N5 153Eu669.2340);IR(KBr)*2970,2930,2870,2740,2680,2600,2500,1700,1535,1430,1350,1255,1205,1165,1135,1095,1075,1050,1030,980,900cm−1;分析、計算値 C34H38N5Eu°(OH)2O:C,56.66;H,5.87;N,9.72.測定値:C,55.92;H,5.47;N,9.95。
【0178】
Sm3+錯体の調製は以下のとおりである。リガンド(11B)のsp3型(52mg、0.1m mol)を、サマリウムアセテートハイドレート(103.5mg、0.3m mol)およびプロトンスポンジ(64mg、0.3m mol)と共にクロロホルム/メタノール(150ml、v/v l/2)中にて1日間撹拝した。暗緑色の反応混合物を濃縮し、上述したと同様にシリカゲルクロマトグラフィにより精製した。次いで、得られた粗製物質をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶して29mgの9を収率37%で得た。9について:UV/VIS(CHCl3)* maxnm(ε)339.5(21,617),451.0(56,350),695.5(9,393),760.0(35,360;FAB MS(3−ニトロベンジルアルコール):m/e(相対強度)663(14 7Sm,74.8),664(148Sm,82.3),665(149Sm,84.58),668(152Sm,100),670(154Sm,78.5);HRMS,M+,668.2300(計算値C34H38N5 152Sm 668.2322);IR(KBr)*2990,2950、2890、2760、2700、2620、2520、1720、1620、1550,1440,1360,1265,1215,1175,1145,1105,1085,1066,995,945,910,680cm−1;分析、計算値 C34H38N5Sm°(OH)2°O:C,54.08;H,6.14;N,9.27.測定値:C,54.30;H,5.66;N,9.06。
【0179】
前述したように23(例1参照)、空気飽和メタノール/クロロホルム中における周囲温度でのタキサフィリンマクロサイクル10Bのメチレン架橋もしくはsp3型とCd(II)塩との処理は、該反応条件下で同時に起こる金属挿入と酸化との両者を伴って、およそ25%の収率をもって緑色のCd(II)錯体2の形成を導く。種々の3価のランタニド塩[すなわち、Ce(OTf)3、Pr(OAc)3、Nd(NO3)3、Sm(OAc)3、Eu(OAc)3、Gd(OAc)3、Dy(OTf)3、TbCl3、Er(OTf)3、Tm(NO3)3、およびYb(NO3)3]を使用して同様な処理を行なった場合、1(または10)の金属錯体は得られなかった(UV/可視スペクトルの変化が無いことから判断される)。しかしながら、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン(「プロトンスポンジ」)を種々の反応混合物に添加した場合には、数時間〜数日間(関連する塩に依存する)の過程を経て* max=365nmにおける10の高エネルギー、低強度のバンドが消失し、435−455nm(Soret)および760−800nm(Q−バンド)領域の2つの強遷移に置き換えられ、リガンド酸化および金属結合が起こることが示唆される。残念ながら、これらの推定される金属含有生成物の単離は問題を有することが示され、一般にシリカゲルまたは親油性セファデックスにおける直接クロマトグラフィは少量の金属非含有酸化リガンド1Bのみを与え、本質的には所望の金属化物質を何ら与えなかった。実際、サマリウム(III)アセテー卜塩の場合にのみ、セファデックス上のクロマトグラフィによって痕跡量(収率約1%)の所望の錯体(4)を単離し得ることが示された。しかしながら、反応混合物を氷水で破砕し、クロロホルムにて反復抽出し、塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、セファデックス上のクロマトグラフィにて精製し、そしてクロロホルム/メタノール/n−ヘキサンから再結晶することにより暗緑色のネオジム(III)錯体3Bを略20%の収率をもって得られることが見出されたことは興味深い。残念ながら、この作り上げ工程は、痕跡量のユーロピウム(III)錯体(5B)がこの工程を用いて得られることが示されたのであるが、他の推定されるランタニド錯体(残念ながら、Gd3+から誘導されるものも含めて)の場合には有効ではないことが示された。
【0180】
分光学的証拠は、sp3マクロサイクル10Bを多くの他のLn3+塩と処理した場合に、金属取込みおよびリガンド酸化が.起きていること示唆していることから、ネオジム(III)錯体(3)のみが妥当な収率をもって単離され得ることは不思議である。注意深い分析は、ある例、特にSm3+、Eu3+、Gd3+の場合において、問題が加水分解的不安定性によるのではないことを示唆している。むしろそれは、最初の水性洗浄に続く有機溶媒への再抽出を妨げるランタニド錯体の極めて高い水への溶解性に起因していた。この観察的な推定は、より疏水性のテキサフィリン類似体が「拡大ポルフィリン」ランタニド錯体の調製および単離において有用性を示すであろうとの考察を導いた。
【0181】
上記推論を試験するために、本来のsp3ハイブリッド化リガンド10Bの単純なジメチル化類似体(11B)を調製した。この新規なより疏水性のsp3ハイブリッド化リガンドは、1027の調製に使用したと同様の酸触媒条件下にて1,2−ジアミノ−4,5−ジメチルベンゼンを2,5−ビス−(3−エチル−5−ホルミル−4−メチルピロール−2−イルメチル)−3,4−ジエチルピロールと縮合することによって、約90%の収率をもって得られた。次いで、このテキサフィリン前駆体とGd(OAc)3、Eu(OAc)3およびSm(OAc)3との、3Bを得るために用いたものと同じ反応および作成条件下における処理は、陽イオン性錯体7B、8Bおよび9Bをそれらのジヒドロキシド付加物として、それぞれ22%、33%および37%の収率をもって与えた。これらの増大した収率は、新規ジメチル置換テキサフィリンリガンド系(6B)の増大した疏水性から直接に導かれたものと思われる。
【0182】
ここに報告する新規ランタニド錯体は、いくつかの面において固有のものである。例えば、高速原子衝撃質量分光(FAB MS)分析により判断されるように、錯体3B−5Bおよび7B−9Bは、単核の1:1種であり、この結論は、化合物7B一9Bの場合において、高分解能FAB MS高精度分子量測定および燃焼分析の両者によって更に支持されている。換言すれば、1:2の金属対リガンド「サンドイッチ」系、またはより研究の進んだランタニドポルフィリン類の場合にしばしば見出されるような高次結合の証拠は見出せなかった。
【0183】
電子スペクトルは、これらの新規物質の第2の顕著な特徴を示す:現在までに単離されている6種のランタニド錯体は、すべてが435−455nm領域に優勢なSoret様遷移を示し、これは対応するメタロポルフィリン類において観察されるものよりかなり低強度であり(図18参照)、また760−800nm領域に顕著な低5エネルギーQ−型バンドを示す。この後者の特徴は、この22π−電子「拡大ポルフィリン」のクラスの特徴であり、また適当な参照ラテンタニドポルフィリン類(例えば[Gd°TPPS]+、* max=575nm)の対応する遷移に比べてかなり高強度、かつ実質的に赤方変位(約200nm)である。これらの一般的観察に関連して、より電子富有リガンド6Bから誘導される錯体のすべてが、元来のタキサフィリン1Bから得られたものに比べて約5−15nmだけ青方変位したQ−型バンドを示す。
【0184】
錯体7B−9Bの第3の顕著な性質は、クロロホルムおよびメタノールの両者に対する高い溶解度である。これら3種の化合物が、1:1(v.v.)メタノール/水混合物に対して中程度の溶解度(およそ10−3Mの濃度)も有する事実は、特に興味深い。更には、上記3−5によって予備的研究に基き先に示唆したように、これらの物質は、これらの溶媒条件に対して安定である。例えば、1:1(v.v.)メタノール/水中のガドリニウム錯体7Bの3.5×10−5M溶液は、周囲温度において2週間にわたって分光学的に監視した場合に、SoretおよびQ−型バンドの10%未満のブリーチング(bleaching)を示した。このことは、この化合物の脱錯合および/または分解についての半減期が、これらの条件下で≧100日であることを示唆している。上述の実験条件で、Q−型バンドの位置に何ら検出可能な変位は観測されなかったが、遊離塩基6BのQ−型遷移は、7Bのものより20nm青色側に落ち、一方この方向の変位は、単純な金属脱離が観測されたスペクトルブリーチングの少量を導く優勢な経路である場合に予期されるものであった。
【0185】
錯体7B−9Bの高い加水分解的安定性は、水性環境に曝露された際に数日間の経過において水誘導金属脱離を起こす[Gd°TPPS]+等の単純な水可溶性ガドリニウムポルフィリン類に対して観察されるものとは極めて対照的である。従って、新規テキサフィリンリガンド6Bまたはその類似体から誘導されるガドリニウム(III)錯体は、MRI応用において使用するための新規常磁性造影剤を開発するための、基礎を提供するものと思われる。更に、錯体7B−9Bの調製の容易さ、および安定した単核的性質は、このような拡大ポルフィリンリガンドが、ランタニドの相対的に未発展の配位化学を更に進展させる基板を提供するであろうことを示唆している。
以下のリスト中の文献の引用を、引用された理由のために、ここに参考として取入れる。
【0186】
(文献)
1.For a recent review see:Lauffer,R.B.Chem.Rev.1987,87,901−927.
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13.Srivastava,T.S.Bioinorg.Chem.1978,8,61−76.
14.「サフィリン類(sapphyrins)」、15,16「プラチリン類(platyrins)」、17「ペンタフィリン類(pentaphyrins)」、18および「[26]ポルフィリン」19を含む数種の大ポルフィリン様芳香族マクロサイクルは、それらの金属非含有形態において調製され、またウラニル錯体は、大「スーパーフタロシアニン」20により安定化されたが、我々はこれらの系21から形成されたランタニド錯体は何ら知るところでない。
15.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429−6436.
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21.Sessler,J.L;Cyr,M.;Murai,T.Comm.Inorg.Chem,in press.
22. より慣用的なシッフ塩基マクロサイクルにより安定化されるランタニド陽イオン錯体の例は、例えば:
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23.Sessler,J.L.;Murai,T.;Lynch,V.;Cyr,M.J.Am.Chem.Soc.1988,110,5586−5588.
24.Chemical & Engineering News August 8,1988,26−27.
25.Cotton,F.A.;Wilkinson,G.「AdvancedInorganic Chemistry,4th ed.,」John Wiley,New,York,1980,pp.589および982.
26.この化合物の系統的名称は、4,5,9,24−テトラエチル−10,16,17,23−テトラメチル−13,20,25,26,27−ペンタアザペンタシクロ−[20.2.1.13,6.18,11.014,19]ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンである。
27.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394−4397.
28.反応直後に観察された光学バンド(nm)と使用した3価ランタニドとの間の関係は、次のとおりである。Ce:453,782;Pr:437,797;Nd:439,786;Sm:438,769;Eu:438,765;Gd:438,765;Tb:439,764;Dy:438,765;Tm:437,765;Yb:437,764.
29. 反応および作出条件下におけるIRおよび微量分析データから判断されるように、ヒドロキシド陰イオンは、最初の金属挿入操作に続いて多分存在するであろうアセテートリガンドを置換する働きをもつ。同様な置換は、1H NMR分析を容易に行ない得る30カドミウム錯体(Cd(OAc)2から調製)の場合にも観察された。
30.Murai,T.;Hemmi,G.;Sessler,J.L.,unpublished results.
31.(a)Buchler,J.W.;Cian,A.D.;Fischer,J.;Kihn−Botulinski,M.;Paulus,H.;Weiss,R.J.Am.Chem.Soc.1986,108,3652−3659.(b)Buchler,J.W.;Cian,A.D.;Fischer,J.;Kihn−Botulinski,M.;Weiss,R.Inorg.Chem.1988,27,339−345.(c)Buchler,J.W.;Scharbert,B.J.Am.Chem.Soc.1988,110,4272−4276.(d)Buchler,J.W.;Kapellmann,H.−G.;Knoff,M.;Lay,K.−L.;Pfeifer,S.Z.Naturforsch.1983,38b,1339−1345.
(実施例4)
トリピロールジメチン−誘導「拡大ポルフィリン類」(「テキサフィリン類」)の新規系列の光物理的性質を報告する。これらの化合物は、高い三重項量子収率に加えて730−770nmの分光領域で高強度の低エネルギー光吸収を示し、メタノール溶液中で一重項酸素生成のための効率的な光感応化剤として作用する。
【0187】
光動力学的治療は、局在化新生物の治療および血中のウイルス性夾雑物の根絶のために最近考慮されているより有望な様式のうちにある。結果として、有効な光化学療法剤の開発にかなりな努力がはらわれてきた。現在までに、ポルフィリン類およびそれらの誘導体、フタロシアニン類、ならびにナフタロシアニン類は、この点に関して最も広く研究されている化合物のうちのものである。残念なことに、これらの染料はいずれも臨界的な不都合を有している。ポルフィリン誘導体類は、高い三重項収率および長い三重項寿命(従って三重項酸素のために充分な遷移励起エネルギー)3b,3gを有し、それらのQ−バンド領域の吸収は、しばしばヘム−含有組織のものと類似する。フタロシアニン類およびナフタロシアニン類は、より都合良いスペクトル範囲に吸収をもつが、しかしながら有意に低い三重項収率を有する;更には、それらは極性のプロトン性溶媒には全く不溶性の傾向を有し、また官能化も困難である。従って、現在においてより有効な光化学治療剤の開発は、生体組織が相対的に透明であるスペクトル領域(すなわち700−1000nm)1dに吸収を有し、高い三重項量子収率を有し、かつ最少限の毒性をもった化合物の合成を必要としているものと思われる。本発明者らは、最近、組織が透明な730−770nmの範囲で強い吸収をもつ芳香族ポルフィリン様マクロサイクルの新規な種類、トリピロールジメチン−誘導「テキサフィリン類」の合成を報告した(例1参照)。メタロテキサフィリン類1c−7cの光物理的性質は、対応するメタロポルフィリンのものに類似し、また反磁性錯体1c−4cは、高い量子収率をもって1O2の生成を官能化している。図19は、本発明の化合物(1c−7c)の模式的構造、金属錯体および誘導体を示している。
【0188】
1c°Clの吸収スペクトルを、図20に示してある。この種の化合物(表3参照)の代表例であるこのスペクトルは、強いSoret−およびQ−型バンドにより特徴付けられ、特に後者は興味深い。最大輻射(約780nm;図20の挿入を参照)において監視されるこの化合物の蛍光励起スペクトルおよび吸収スペクトルは、可視領域(370−800nm)において重ね合せ可能であり、第1励起一重項状態への内部変換が、SoretまたはQ−バンド領域において光励起について定量的であることを示している。1c−4cについて蛍光量子吸収(φf)は、わずかに0−1%であるが、これらの反磁性メタルテキサフィリン類の三重項形成に対する量子収率(φt)は、単一にほぼ等しく、またメタロポルフィリンについて見出されるものに似ている。図21に示した1c°Clの三重項−三重項遷移スペクトルは、基底状態のSoret−およびQ−バンドにおけるブリーチング、および450−600nm領域における正の吸光度変化、さらにはメタロポルフィリン三重項スペクトルの回帰を示す。図21の挿入部は、脱酸素化メタノール中での三重項状態の崩壊を示し、これから67μsの寿命(τt)が計算される。同様な三重項スペクトル、寿命、および量子収率は、メタノール中において他の反磁性メタロテキサフィリン誘導体類について、ならびに混合メタノール/水溶液中において1c°Clについて測定された。興味深いことに、メタノールガラス中において低温度リン光はいずれの化合物についても観測されなかった。最後に常磁性金属イオン(例えばMnIISnIII、およびEuIII、構造5c−7c)を含む数種の錯体を評価した。それらは非−輻射性であることを示し、かつ時間分解能が約10nsである我々のレーザーフラッシュ光分析装置では、それらの三重項励起状態は検出されなかった。
【0189】
メタノール溶液中において、lc−4cの三重項励起状態は、(2.6±0.2)×109dm3mol−1s−1の生物分子速度定数をもって分子状酸素により冷却される。曝気された溶液中において、三重項状態の崩壊プロフィルは、(175±20)nsの平均寿命をもった単一の指数工程によって記述され、従って三重項分子種とO2との間の相互作用は定量的である。曝気メタノール中における該化合物のレーザー励起(355nm、80mJ、10ns)は、何らの酸化還元生成物(例えばタキサフィリン陽イオンおよび過酸化物陰イオン)をも与えなかったが、Geダイオードを使用して1O2の生成がその特徴的な1270nmの光輻射から明確に観察された。この光輻射は、12.5±0.3μsの寿命をもって崩壊し、かつその初期強度は、レーザーパルスの中心まで外挿して、タキサフィリン錯体により吸収される光子数の線形関数であった。該初期強度と、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン(THPP)を光感応剤として使用して得られるものとの同一条件下での比較は、一重項酸素(φ102生成の量子収率の計算を可能とした。誘導された値は、三重項量子収率(表3)の値に類似し、該三重項状態反応は、1O2の生成(74−78%)および振動的に励起したO2の形成(22−26%)の間で分配されるものと思われる。これらのφ102値は、好適にはポルフィリン類を用いて観測された値と比較され、改善された三重項状態収率によってフタロシアニン類およびナフタロシアニン類を用いて得られた値より大きく優れている。しかして、反磁性タキサフィリン錯体は、1O2の形成に対する高度に効率的な光感応剤であるものと思われる。
【0190】
【表3】
【0191】
要約すると、ここで議論した新規メタロテキサフィリン錯体は、3つの重要な光学的特性を有しており、これらは同錯体を存在するポルフィリン様マクロサイクル類の内でも固有なものとしている。それらは生理学的に重要な領域(すなわち730−770nm)において強い吸収を有し、長寿命の三重項状態を高収率で形成し、かつ一重項酸素形成のための効率的な光感応剤として作用する(例えば図21参照)。これらの特性は、それらの高い化学的安定性および極性媒質への好ましい溶解性と組合されて、これらの陽イオン性錯体が現出する光動力学的プロトコールにおける成長し得る光感応剤として使用し得ることを示唆している。10%ヒト血清中の3c°NO3の予備的なインビトロ研究において単純ヘルペス(HSV−1)の感染力の顕著な減少およびリンパ球分裂促進剤活性が767nmの放射により観察され9、この取組み方の可能性が確認された。
【0192】
(文献)
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【0193】
(実施例5)
後天性免疫不全症候群(AIDS)および癌は、今日我国家が面している最も深刻な公衆衛生問題の内にある。男性同性愛者間に起こるものとして1981年に初めて報告されたAIDSは、1致命的なヒト疾患であって、今日では世界的流行の比率にまで達している。癌は、近年においては診断および治療についていくつかの極めて顕著な進展があるにもかかわらず、この国(米国)において、なお死亡原因の第3位をしめている。従って、これらの疾患の検出、治療、および伝達の低減を図るためのより良い方法を見出すことは、最も重要な研究目的である。腫瘍の制御および治療において使用するために近年探究されたより有望な新たな方法の一つは、光動力学的治療法(PDT)1−5である。この技術は、腫瘍部位またはその近傍に局在化し、酸素の存在下に輻射を受けた際に一重項酸素(O2(1*g))等の細胞毒性物質を、あるいは良性の前駆体(例えば(O2(3Σg −)))から生成する作用をする光感応性染料の使用に基くものである。PDTに伴う最近の興奮の多くは、正にこの特性から導かれる。現在の方法(例えば慣用の化学療法)との顕著な対比において、PDTでは薬剤自体が、治療医により光で「活性化」されるまでは、全く無害であり得る(かつそうでなければならない)。従って、制御および選択性の程度は、他では不可能なものも達成できるであろう。
【0194】
現在、反磁性ポルフィリンおよびそれらの誘導体は、PDTのために選択される染料と考えられている。10年来、ヘマトポルフィリン等のポルフィリン類は、その選択性の理由は難解なものとして残されているが、肉腫および癌を含む急速に成長している組織に選択的に局在化することが知られている。最近、最も注目を集めているものは、ヘマトポルフィリンジヒドロクロライドを、酢酸−硫酸により、次いで希釈塩基により処理して生成される22−27モノマーおよびオリゴマーのポルフィリン類の完全には特徴付けられない混合物であるいわゆるヘマトポルフィリン誘導体2−5,7−21である。最良の腫瘍局在化能23,26を有するものと信じられているオリゴマー種に富んだ分画は、商標Photofirin II(登録商標)(PII)のもとに市場に出されており、かつ最近では閉塞気管支内腫瘍および表層膀胱腫瘍に対して第III相の臨床試験が行なわれている。ここにおいて作用機序は、完全ではないにせよ多くは一重項酸素(O2(1*g))の光生成によるものと考えられ、しかしながら過酸化物陰イオンまたはヒドロキシルおよび/またはポルフィリン−基材ラジカルを含む別の作用機序は、完全には解明できない。28−33
一重項酸素は、実験的な光感応化血液精製方法において操作可能な臨界的毒性種であることも信じられている。この極めて新しい光力学療法の応用は、非常に可能性の高い重要なものである。それは、HIV−1、単純ヘルペス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、肝炎の種々の形態等のエンベロープウイルスならびに輸血全血由来の日和見的血液付随感染(例えば細菌およびマラリアプラスモジウム)の除去のために安全かつ有効な方法を提供する。AIDSが現在効果的に治療されず、通常は致命的疾患であることを考えると、このような血液精製方法の利益は、評価し得ないほど価値がある。
【0195】
現在において、性的関係および注射針の共有がAIDS蔓延の主要な機構である1。AIDS感染のうち割合の増大しているものは、今日では輸血の結果によるものである。1,40−43残念ながら、貯蔵血成分は、現代医学の実施のためには基本的製品であり、結果としてこの伝達方法は単純な生活様式の変更によっては排除出来ない。むしろ、全ての保存血試料がAIDSウイルス非含有(および理想的にはすべての他の血液付随病原非含有)であることを確認する完全な不在証明手段が開発されなければならない。ある限度において、このことは提供者の経歴調査および血清学的試験の実施によって達成され得る。しかしながら、現在においてHIV−1に対する血清学的試験は、すべての感染された血液、特には患者に接したが検出可能な抗体が未だ産生されていない提供者から得たものを検出するには充分なものでない。42,43加うるに、AIDSウイルスの新たな変異株が検出されており、これらのうちの数種または全部が、現行方法では検出から漏れるであろう。従って、いずれの形態のHIV−1をも保存血から除去する抗ウイルス系が必要である。このことは、一人の感染した提供者からの貯蔵血試料が、例えば小児科の治療において数人の異なる患者に提供されるような起こり得る事態を考えると特に重要である。
【0196】
理想的には、AIDSウイルスまたは他の血液付随病原体の除去に使用されるいずれの血液精製方法も、望ましからぬ毒素の導入、正常血液成分の損傷、または有害代謝産物形成の誘導を伴わずに操作されるべきである。一般的には、このことは、加熱、UV放射、または純化学的方法に基く通常の抗ウイルス系の使用を排除する。有望な取組方法は、先に言及した光力学的方法である。ここで、Baylor Research FoundationのDr.Matthewsおよび彼の仲間34−37ならびにその他38,39の共同研究者により行なわれた予備的研究は、HPDおよびPIIが、腫瘍治療のために必要なものより低い投与量で、無細胞HIV−1,HIV,肝炎および他のエンベロープウイルスの光不活性化のための効率的な光感応剤として作用し得ることを示すことに貢献した。利用可能なデータに基いて、この方法の成功は、これらの染料が形態学的に特徴的であり、また生理学的に基本的であるウイルス性膜(「エンベロープ」)もしくはその近傍に選択的に局在化し、光輻射によって一重項酸素を形成するという事実から誘導される。こうして生成された一重項酸素は、次いで基本的膜エンベロープを破壊するものと信じられている。これはウイルスを殺滅し、感染力を除去する。従って、光力的血液精製方法は、より古典的な腫瘍治療が腫瘍部位に優先的に吸着または保持される染料を必要とするのと同様に、ウイルス性膜に選択的に局在化する光感応剤の使用によるものと思われる。これが事実である限りにおいて、HSV−1等の単純なエンベロープDNAウイルスは、より危険なHIV−1レトロウイルスの殺滅において有用に使用するための推定上の光感能剤を試験するための良好なモデルであることが示されるであろう。しかしながら、この対応関係は、(細胞内のものとは異なって)自由に循還しているウイルスに限って保たれることに注意することが重要である。血液生成物からのHIV−1の完全な予防学的除去は、単球およびTリンパ球細胞内からのウイルスの破壊的除去を必要とするであろう。44
有望な抗腫瘍および抗ウイルス的光力学的応用として最近HPDおよびPIIを用いて探究され、臨界的であるように、これらの光感応剤が理想的なものではないことを認識することは重要である。実際、この「第1世代」の染料は、それらの生物医学的応用における最終的使用に対して実際に影響するであろう深刻な多くの欠陥をかかえている。それらはある範囲の化学種を含み、それらは分解または体から急速に排泄されることもなく、また血液および他の体組織が透明であるスペクトルの赤色部分において吸収を有するが貧弱である。5これらの欠陥の各々は、重大な臨床的結果をもたらし得、また正にもたらす。例えば、HPDおよびPIIが充分に特定された単一の化学的成分を含むものではないという事実は、該活性成分が確実性をもって同定されるべきであるという事実と合せて、有効濃度が調製毎に変化し得、またしばしば変化することを意味する。従って、投与量および光の影響は、いずれの特定の応用に対しても必然的に最適化し得ず、またあらかじめ決定され得ない。更には、それらが急速には代謝されないという事実は、これらの染料のかなりの量が、予防的な光誘導HIV−1除去後に保存血液単位中に残留し、また光力学的腫瘍治療後、長く患者の体内に残留することを意味する。後者の残留問題は、特に深刻なものとして知られており、HPDおよびPIIは、皮膚中に局在化し、投与後数週間にわたり患者に光感応性を誘発する。5,45
しかしながら、最も深刻であると考えられるものは、上記欠点の最後のものである。なぜならば、これらの染料の最長の波長の吸収最大は630nmにあり、光療法に使用される初期エネルギーのほとんどが、深部にある腫瘍の中心に達する前に分散または減衰し、結果として、初期光のほとんどが一重項酸素生成および治療に利用できないからである。46−48実際、マウスモデルおよび皮下に埋設された3mmの腫瘍を用いたある研究では、腫瘍基部までに90%のエネルギーが失なわれることが示された。参考文献47から取上げた図22のデータにより例示されるように、>700nm領域に吸収を有する光感応剤が開発された場合に、当然ながらそれらがHPDおよびPIIの望ましい特徴(例えば、標的組織への選択的局在化および低い未知の毒性)を保持するのであれば、深部に位置するか、または大型の腫瘍の更に効果的な治療が可能になるであろう。この面における本発明は、光力学的腫瘍治療および血液精製プロトコールにおいて使用するための、そのような改良光感応剤の開発に関係する。
1.容易に入手可能
2.低い本質的な毒性
3.長波長の吸収
4.一重項酸素生成のための有効な光感応剤
5.水への適当な溶解度
6.腫瘍組織への選択的取込み、および/または
7.エンベロープウイルスヘの高い親和性を示す
8.使用後の早い分解および/または排除
9.化学的に純粋かつ安定
10.合成的修飾を容易に行なえる。
【0197】
該リストは、生物医薬的光感応剤において望ましいであろう特徴をまとめてある。明らかに、応用に応じて要件のある程度の変化があるであろう。例えば、血液精製プロトコールにおいて使用するために設計された光感応剤は、光力学的治療に使用されるものに比べて化学的安定性はより低く設計されるべきである。理想は、輻射に続いて染料は、急速な分解または加水分解を起こして非毒性かつ不活性な代謝産物を生じるものである。腫瘍治療のためには、新生物組織中の選択的局在化を達成するために、明らかにより長い時間を要することから、より大きい安定性が望ましい。当然ながら、両者の場合ともに低毒性および良好な長波長吸収および光感応化特性は絶対に不可欠である。
【0198】
近年、これらの要求に合うであろう新規な有望な光感応剤の合成および研究に、多大な努力がはらわれている。これらのうちの数種は、ローダミンおよびシアニン系の古典的染料からなるものであるが、49−51多くは、拡張π網を有するポルフィリン誘導体であった。56−67後者の分類に含まれるものは(図23参照)、Morganのプルプリン類(purpurins)55(例えばlD)およびベルジン類(verdins)56(例えば2B)、および他のクロロフィル様分子種57−59、Dolphinらのべンズ−隔合ポルフィリン(3D)、ならびにBen−Hur61、Rodgers62およびその他63−67により研究されたスルホン化フタロシアニン類およびナフトナフタロシアニン類(4D)である。これらのうち、ナフトナフタロシアニン類のみが、最も望ましい>700nmスペクトル領域に効率的な吸収を有する。残念なことに、これらの特定の染料は、化学的に純粋かつ水溶性の形態で調製することが困難であり、また一重項酸素生成のための光感応剤としては相対的に不充分なものであり、おそらく他の酸素誘導トキシン(例えば過酸化物)を介して光力学的に作用するであろう。従って、前述の10の臨界的基準により合致するであろう光感応剤の「第3世代」が、なおも継続される。
【0199】
大ピロール含有「拡大ポルフィリン類」を使用して、改良された「第3世代の」光感応剤が得られることは、本発明の重要な局面である。これらの系は、完全に合成的であって、少なくとも原理的には任意の所望の性質を取入れるように調節できる。残念ながら、このような系の化学は、未だ未発達である:ポルフィリン類の文献および関連するテトラピロール系(例えば、フタロシアニン類、クロリン類等)に対する顕著な対比において、大ピロール含有系の報告は、わずかしかなく、またこれらのうちのわずかのものが、長波長吸収および一重項酸素光感応化のために本質的であると思われる芳香族性の基準に合致しない。実際、現在までに、テキサフィリン5Dに関する発明者らの研究69(図23参照)、およびWoodward70とJohonson71のグループにより最初に生成された「サフィリン(sapphyrin)」6Dに加え、光感応剤としての有用性をもつであろうものはわずかに2つの大ポルフィリン様系であると思われる。これらは、LeGoffの「プラチリン類(platyrins)」([22]プラチリン7Dとして例示される)72およびFrankのビニル性(vinylogous)ポルフィリン類([26]ポルフィリン8Dにより表される)73である。残念なことに、最近の合成の報告書中には、その研究が進行中である旨、示唆する解説が含まれているが、これらの材料の光力学的面に関してはほとんど刊行物がない。しかしながら、拡大ポルフィリン5Dおよび6Dの現在の研究は、光力学的治療への拡大ポルフィリンの取組が、実際に極めて有望であることを示している。興味深いことに、新しい種類の「収縮ポルフィリン類」であるポルフィセン(porphycenes)74(例えば9D)も、有望な光感応剤としての実質的な可能性を示した。
【0200】
本発明は、リガンドの設計および合成の領域における主要な突破口に関連し、最初に合理的に設計された芳香族性ペンタデンテートマクロサイクル性リガンドであるトリピロールジメチン−誘導「拡大ポルフィリン」5D 69の合成に関する。慣用名「テキサフィリン」が与えられたこの化合物は、遊離の塩基の形態、ならびに、充分に研究されたポルフィリン類の20%ほど小さいテトラデンテート結合核内に安定な形態で収容されるには大き過ぎるCd2+、Hg2+、In3+、Y3+、Nd3+、Eu3+、Sm3+およびGd3+等の多くを含む種々の金属陽イオンと共に、加水分解的に安定な1:1錯体の形成を支持する形態の両者において存在可能である。加えて、5Dの遊離塩基の形態は一価陰イオン性リガンドであるから、二価または三価金属陽イオンから形成されるテキサフィリン錯体は、中性pHにおいて正に荷電している。この結果、これらの錯体の多くは水に可溶性であり、少なくとも類似するポルフィリン錯体に比べて格段に易溶性である。
【0201】
現在までに、2種類の異なったCd2+付加物の2種類のX−線結晶構造が得られている。一つは、同等に飽和した五角形のビピラミダールビスピリジン錯体69 aであり;他は同等に不飽和の五角形のピラミダールベンズイミダゾール錯体である。重要なことに、両者は、この新規リガンド系の平面的ペンタデンテート構造であることが確認され、またこの標準的「拡大ポルフィリン」の芳香族性としての役割を支持している。
【0202】
芳香族性構造の更に別の支持は、5Dの光学的性質によっている。例えば、5Dの構造的に特徴付けられたビスピリジンカドミウム(II)錯体のCHCl3中における767nm(κ=51,900)での最低エネルギーQ−型バンドは、典型的な対照カドミウム(II)ポルフィリンのものと比べて、かなり高強度(およそ10の因子をもって!)であり、実質的に赤方に変位(ほぼ200nm!)している。更に興味あることは、化合物5Dおよびその亜鉛(II)およびカドミウム(II)錯体の両者は、一重項酸素に対して極めて有効な光感応剤であり、空気飽和メタノール中において354nmにて照射された場合に1O2形成について60と70%との間の量子収率を与えることである。69Cこれらの系を光力学的治療および血液精製プロトコールにおいて使用するための有力な理想的候補としているものは、これらの後者の顕著な性質である。
【0203】
化合物5Dに類似する種々の新規な芳香族性トリピロールジメチン−誘導マクロサイクルリガンドが、現在調製され、また更に計画されている。例えば10D−15D(図25参照)等のこれらの多くが既に合成され、テクサフリン5Dとして金属錯体を形成することが見出され、また多くの他のものが容易に想像され得る。本発明のこの局面は、元のテキサフリンの新規類似体の調製、ならびにそれらの化学的および光生物学的性質の説明に関する。重要なことは、具体的に小さい置換を行なうことによって、最低Q−型バンドのエネルギーを望むように調節し得るという事実である。例えば、14D、5Dおよび16D(既に試験されている)から誘導されるカドミウム(II)錯体の一連において、この遷移は、690から880nmまでの範囲にある。従って、現在においてテキサフィリン−型拡大ポルフィリン類の光学的性質は、任意の所望のレーザー周波数に合せ得るものと思われる。再度であるが、このことは、この種の染料が種々の光力学的応用に良く適合するであろうことを示唆する特徴である。
【0204】
いくつかの予備的インビトロの生物学的研究が、18および22π−電子テキサフィリン類14Dおよび5Dのカドミウム(II)錯体を用いて行なわれた。これらの結果は、範囲は限られるが、奨励となるものである。例えば、両錯体は、最低エネルギー吸収(それぞれ690nmおよび767nm)における光の20J/cm2の照射によってHSV−1非感染性の約2log光殺滅(2 logphoto−killing)の効果を有し、更に重要なことに5Dおよび14Dのいずれもが、感知し得る不明な抗ウイルス活性を示さなかった(幸いにも、それらは光の不在時に全身性細胞毒性の多くの証拠を示さない)。加うるに、該22π−電子カドミウム含有タキサフィリン5Dは、吸収および放射の両者の測定によって、リンパ球上に選択的に局在化することが示された。この後者の結果は、特にこれらの材料の予防的な光力学的抗AIDS血液−処理プログラムにおける可能性ある使用について良く予言している。現在までに研究されたタキサフィリン系により達成されるHSV−1活性の2 log減少は、成長し得るプロトコールを完全に設計するには未だ不充分である:サフィリン(6D)に加え、文献の方法70により調製されたHPDおよびPIIの両者は、適切な最低エネルギー遷移(それぞれ630および690nm)において照射された場合に、同様な光の影響下でウイルス活性の約5 logの減少を与えた。完全には特徴付けられていないヘマトポルフィリン−誘導系による機構的な比較は困難であるが、直接的構造的対応関係が、トリピロールジメチン−誘導カドミウム(II)テキサフィリンと遊離塩基サフィリン系との間に存在する。主な差異は、光感応剤上の全電荷にある。従って、これら2種のマクロサイクル系は、ウイルスエンベロープに対して異なった様式で結合するであろう;多分、サフィリンは脂質層に挿入され、また電荷を帯びたメタロテキサフィリンは膜表面に着座して有害な凝集(これは一重項酸素の生成を低減するであろう)を受けるであろう。2種類の密接に関連する系(テキサフィリン対サフィリン)の間の臨界的な観察上の差異は、わずかな構造的差異が重要な機能上の効果に反映するであろうことを示唆している。加うるに、これらの実験的知見は、1)遊離塩基テキサフィリン系は、これまでカドミウム錯体が研究されてきたインビトロおよびインビボにおける応用のための格段に効率的な光感応剤であること、および2)テキサフィリン周囲上の置換基を調節することは、金属化および金属非含有系の重要な生物学的分配特性の変更をもたらすことを示唆している。テキサフィリンの光力学的抗ウイルス効果を増大するすべての試みが失敗であったとしても(我々はほとんど起こり得ない結果と考える)、この新規光感応剤は、より古典的な腫瘍治療法において応用を見出すことが可能であろう:例えば、18π−電子カドミウム−含有マクロサイクル系14Dは、白血病細胞Daudi−株のおよそ4 log光殺滅効果を有することが、既に示されている。
【0205】
テキサフィリン5Dの合成は、図26に要約されている。それは3つの主要工程を含む。第1は、トリピラン19Dの合成である。この重要な中間体は、ピロール17Dと18Dとの間の単純な酸触媒縮合の結果として直接に得られる。脱保護およびホルミル化に続き、重要なジホルミルトリピラン前駆体21Dが、17D基く80%を越える収率をもって得られる。このトリピランとO−フェニレンジアミンとの縮合は、合成経路中の第2の臨界的工程を構成する。幸運にも、この反応は、実質的に定量的に進行し、「テキサフィリン」骨格22DのSP3ハイブリッド化形態を直接的に与える。76次いで、最後の臨界的工程は、酸化、および特有なものとして同時に起こる金属の結合に関する。Cd2+、Hg2+およびZn2+の場合には、出発SP3ハイブリッド化前駆体(22D)を適切な塩と共に酸素の存在下で単に攪拌することにより、芳香族性のSP2ハイブリッド化形態がおよそ25%の収率で得られる。69しかしながら、このような単純な金属挿入および酸化工程は、ランタニド系の陽イオンについては行えない。ここでは、金属塩、プロトンスポンジ(登録商標)(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン)、および酸素の組合せが、酸化および金属挿入を行うために必要とされる。興味深いことに、プロトンスポンジのみの使用は、リガンドの遊離塩基形態を直接に与えるが、残念ながらわずかに10%の収率である。この後者の収率を最適化する努力は、なおも進行中である。
【0206】
他の種々の置換ジアミンおよび/またはジホルミルトリピランを使用することにより、化合物10D−16D(図25)、1E−7E、8E、9E(図31)、23D、25D、26D(図27)を含む広範な他のトリピロールジメチン−誘導マクロサイクル類を生成することが可能であることは既に示されており、当業者は更に多くを調製し得るであろう。例えば、適切なジアミンおよび/またはジホルミルトリピランを使用することにより、当業者は図27に示された修飾テキサフィリン類24D、27D−30Dを生成させることができるであろう。ここにおいて、一般化構造式29Dおよび30Dの場合に、置換基R1、R2、R3、R4およびR5は、別個に独立してH、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボニル、カルボキサミド、エステル、アミド、スルフォナート、または置換アルキル、置換アルコキシ、置換エステル、もしくは置換アミドであってよく、また金属Mは、任意の二価または三価金属陽イオンであってよく、−5と+5との間の整数値として適切に補正された電荷nを伴う。ここで当業者にとっては明らかであるように、電荷nは、金属の選択、考慮されるpHおよび置換基R1−R5を説明するように調節される。例えば、R1=カルボキシルおよびR2−R5=アルキル、ならびに金属M=Gd+3、ならびに溶液のpH=7(R1=CO2 −となるよう)である場合には、電荷nは零であろう。
【0207】
広範囲の種々の可溶化テキサフィリン類の開発の更なる利点は、これらの多くが更に官能化するために好適であることである。例えば、テキサフィリン7E、25D、26D、27D、28Dまたは29Dのチオニルクロライドまたはp−ニトロフェノールアセテートを用いた処理は、モノクローナル抗体類または他の興味ある生物分子種を結合するために好適な活性アシル分子種を生成するであろう。別法として、標準的なその場での(in situ)カップリング法(例えばDCCI)は、ある種の結合を行なうために使用できるであろう。いずれの場合においても、有力な光感応剤または活性な放射性同位体を直接に腫瘍部位に結合または伝達する能力は、新生物疾患の治療および/または検出において計り知れない有力な利益をもたらすであろう。77
現在までに調製された全てのテキサフィリン系、および上記で提案された全ての新規な標準的系は、イミン−含有マクロサイクル核を含む。このような連結基の使用は、利点と不都合との両方を提供する。第1の利点は、このような副単位を含むマクロサイクル系が容易に調製され、一般的に効果的リガンドとして作用することである(このことは、テキサフィリンについては正に真実である)。他方において、少なくともテキサフィリン5Dの場合には、このことは予期されるより小さな問題ではあるが、それらは加水分解に関して熱力学的に不安定である。例えば、最も良く研究されているカドミウム含有錯体5Dおよびガドリニウム錯体2Bおよび7B(図17)のイミン加水分解に関する半減期は、両者ともにpH7において30日以上、またpH2において数時間以上である。それでもやはり、より高い安定性が要求されるであろう場合において応用が考えられる。この理由から、最も弱いCH=N結合が、より強いCH=CH副単位で置換された2種類のメチン−連結テキサフィリン類似体31Dおよび32D(図28参照)の合成は、この発明の目的である。化合物31Dおよび32Dは、大フラン−含有アヌレン類の合成に有用であることが示されている標準的Wittig−塩基閉環78、または最近ポルフィセン合成に有用であることが示されたMcMurry−型カップリング74のいずれかを用いて調製され得ることが期待される。
【0208】
一旦入手すれば、全ての新規テキサフィリン系は、可能な場合にX−線回折法を含めて、通常の分光学的および分析的手段を使用して完全に特徴付けされるであろう。加うるに、光学的性質の完全な分析は、全ての新規系について、インビボに属するであろう条件に近似させるべく設計されたものを含めて実験条件の範囲のもとで行なわれるであろう。光学的吸収および輻射スペクトルの単純な記録等の初期測定は、P.I.の研究所において行なわれるであろう。三重項寿命および一重項酸素の量子収率測定を含むより詳細な分析が行なわれるであろう。提案された研究プログラムのこの部分の目的は、調製された各々およびすべての新規テキサフィリンについて、完全な基底および励起状態の反応性形態を得るためである。かくして、一重項酸素生成が最大となるのは何時か、それの形成の量子収率は、最低エネルギー(Q−型)遷移の位置にどのように影響されるか、集合は、ある種の溶媒中、またはある種の生物学的に重要な成分(例えば、脂質、蛋白質等)の存在下でより一般的なものであるかインビトロにおける光学的性質の有意な差異は、陽イオン性、陰イオン性または中性置換基を持って作出されたテキサフィリン類の使用から誘導されるであろうか、等の質問のすべてに解答されるであろう。
【0209】
一旦、上記錯体が生成されると、選択実験が行なわれる。標準的なインビトロプロトコールが、問題のテキサフィリン誘導体のインビトロ光殺滅能力の評価に使用されるであろう。例えば、選択された染料が、種々異なる濃度をもって種々の癌性細胞に投与され、光の存在および不在下の両者で複製速度が測定される。同様に、選択された染料が標準ウイルス培養物に添加され、光の存在および不在下で成育阻止速度が測定される。適切な場合には、種々の可溶化担体が、テキサフィリン光感応剤の溶解度および/または多量体の性質を増大するために使用され、また、あるのであれば、これらの担体が染料の生物的分布特性を調節する効果が評価される(第1には蛍光分光学を使用する)。当然のことながら、全ての場合において適切な対照実験が正常細胞を用いて行なわれ、テキサフィリンの本質的な暗黒および光毒性が測定されるであろう点は強調されなければならない。
【0210】
インビトロ実験方法の一般化された組合せから、該テキサフィリン系の光力学的能力の明確な様相が明らかになるであろうことが期待される。再び上述したように、構造および反応性に関する重要な質問がなされ、そして(望むらくは)明確な様式で解答されるであろう。加えて、いくつかの予備的な毒性および安定性の情報が、これらのインビトロ実験から明らかと成り始めるであろう。ここで興味ある質問は、該テキサフィリン系が、生理学的条件下でどの程度長く保たれるか、および中心金属の性質がこの安定性に影響を及ぼすかという点を含む。同様に、あるいはより重要な点は、中心陽イオンが細胞毒性に影響するかという質問である。本発明者等により出版された論文中69b,69dで議論したように、大きい結合陽イオン(例えばCd2+またはGd3+)を、単純な化学的方法により除去することは不可能である(しかしながら、Zn2+は容易に脱落すると思われる)。更に、予備的結果は、最もよく研究されたカドミウム(II)−含有テキサフィリン錯体5Dが、感知し得るほどに細胞毒性的ではないことを示唆している。それでもなお、本質的毒性の質問は、最も重要なものの一つであって、全ての新規系の細胞毒性は、インビトロで選別され、適当とみなされた場合に、更にインビボ毒性研究が行なわれるであろう。
【0211】
一旦、インビトロ選択実験が完了した後は、特に有望であると思われる有力な光感応剤の試料が、更に開発のために選択されるであろう。血液処理プロトコールにおいて使用するための安定性と光力学的能力との最良の組合せを有するものは、全血試料を用いた流れの系において更に評価される。腫瘍治療のために有望と思われるものは、更に動物スクリーニングにかけられる。
【0212】
本発明のこの局面は、その第1のものが我々の実験室で最近調製され、特徴付けられた新しい種類の「拡大ポルフィリン類」であるトリピロールジメチン−誘導「テキサフィリン類」の統合および光化学的性質に関連する。これらの基礎研究が、腫瘍の検出および治療に加えて輸血からのHIV−1および他のエンベロープウイルスを除去する成長し得る方法の開発を導くことが期待されている。ここに例示した長距離の目標地点は次のとおりである:
1.血中のヒト免疫不全ウイルス(HlV−1))および他のエンベロープウイルスを殺滅し、血液成分に損傷を与えることなく操作するための安全かつ効率的な光感応剤を、更に合成する。
【0213】
2.インビボにおける腫瘍の光力学的治療に使用する新規な安全かつ効果的な光感応剤を開発する。
【0214】
これらの長距離の目的への取組は、適切に修飾されたトリピロール−ジメチン誘導テキサフィリン型拡大ポルフィリンの調製および使用が中心に置かれる。このことは、上記目標の実現に向けての基本的な第1歩である。本発明の特定の拡大は、以下を含む。
【0215】
1.更に、我々の最初のテキサフィリンおよび存在する類似体の統合および一般的な化学的性質を探究し、生物医学的に最も興味深いと思われるこれらの錯体の完全な溶解性、安定性および反応性の様相を入手する。
【0216】
2.現在入手可能なテキサフィリンの単純な類似体を、陽イオン性、陰イオン性、または中性の置換基を用いて合成し、このような修飾が、これら拡大ポルフィリン類の水溶解性および生物分布特性をどの様に変えるのか研究する。
【0217】
3.モノクローナル抗体または他の興味深い生物分子に結合するために適した、反応性の親核性または親電子性置換基を含むテキサフィリン類似体を作る。
【0218】
4.重要なイミン(CH=N)官能基が、多分より強いメチン(CH=CH)連結基で置換された新規テキサフィリン型芳香族性マクロサイクルを調製する。
【0219】
5.一重項酸素生成を最大にするそれらの因子(例えば*max)を明確に決定するべく新規テキサフィリンすべての完全な光化学的研究を行なう。
【0220】
6.このプロジェクトの合成段階の過程で調製された新規テキサフィリンのインビトロにおける光力学的腫瘍およびウイルス殺滅効率の試験を行なう。
【0221】
7.上記に概説したように合成され、選択された、より有望なテキサフィリンのインビボにおける光力学的抗腫瘍特性の試験を行なう。
【0222】
以下のリスト中の文献引用を、その引用した理由のためにここに参考として取入れる。
【0223】
(文献)
1.Confronting AIDS,National Academy of Sciences Press:Washington,D.C.,1988.
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68.復習のために参照:Sessler,J.L.;Cyr,M.;Murai,T.Comm.Inorg.Chem.1988,7,333.
69.(a)Sessler,J.L,;Murai,T.;Lynch,V.;Cyr,M.J.Am.Chem.Soc.1988,110,5586;(b)Sessler,J.L.;Murai,T.Lynch,Inorg.Chem.印刷中;(c)Harriman,T.;Maiya,B.G.;Murai,T.;Hemmi,G.;Sessler,J.L.;Mallouk,T.E.J.Chem.Soc.Chem.Commun.,印刷中;(d)Sessler,J.L.;Murai,T.;Hemmi,G.Inorg.Chem.,提出済。
70.Bauer,V.J.;Clive,D.R.;Dolphin,D.;Paine,J.B.III;Harris,F.L.;King,M.M.;Loder,J.;Wang,S.−W.C.;Woodward,R.B.J.Am.Chem.Soc.1983,105,6429.
71.Broadhurst,M.J.;Grigg,R.;Johnson,A.W.J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1972,2111.
72.(a)Berger,R.A.;LeGoff,E.Tetrahedron Lett.1978,4225.(b)LeGoff,E.;Weaver,O.G.J.Org.Chem.1987,710.
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76.Sessler,J.L.;Johnson,M.R.;Lynch,V.J.Org.Chem.1987,52,4394.
77.ポルフィリン−抗体結合の例、および種々のカップリング方法の相対的な利点に関する議論は、例えば次を参照のこと:Mercer−Smith,J.A.;Roberts,J.C.;Figard,S.D.;Lavallee,D.K.in「Antibody−Mediated Delivery Systems,」Rodwell,J.D.;Ed.Marcel Dekker:New York;1988,pp.317−352.
78.Vollhardt,K.P.C.Synthesis 1975,765.
(実施例6)
本発明の有用性の1局面は本明細書に記載される錯体をウイルス及びウイルス感染された又は潜在的に感染されたエンカリオティック(encaryotic)細胞の光子誘発不活性化に使用することによって実証される。本実施例で使用される一般的な光不活性化法はテキサス州(Texas)、ダラス(Dallas)のベイラー リサーチ ファンデーション社(Baylor Reseach Foundation)のインフェクシアウス ディシーズ アンドアドヴアンスド レーザー アプリケーションズ ラボラトリーズ(Infectious Disease and Advanced Laser Applications)によって開発されたものであり、ミラード モンロー ジュディー(Millard Monroe Judy)、ジェームスレスターマチュウス(James Lester Matthews)、ヨーゼフ トーマス ニューマン(Joseph Thomas Newman)及びフランクリン ソガンダレス−バーナル(Franklin Sogandares−Bernal)により1987年6月25日に出願された米国特許出願(テキサス州ダラスのベイラー リサーチ ファンデーション社に譲渡)の主題である。
【0224】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)並びにヒトリンパ球及び同単核細胞(両者共、HSV−1の末消単核血管細胞(PMC)及び細胞宿主である)の光増感不活性化におけるポルフィリン様大環状化合物のあるものの効率を明らかにした。大環状化合物の光増感剤であるジヘマトポルフィリンエーテル(DHE)又はヘマトポルフィリン誘導体(HPD)を使用するウイルスの不活性化についての従来の研究は外被を有する、即ち膜質のコートを有する、そのような研究されたウイルスだけがポルフィリンにより不活性化されることを示している。研究された、外被ウイルスにHSV−1、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス1及びヒト免疫欠損ウイルスHIV−12がある。
【0225】
単純ヘルペス1型(HSV−1)の光増感不活性化について本発明の各種大環状化合物を用いて培養培地で調べた。結果を第4表に示す。
【0226】
【表4】
【0227】
3種のカドミウム含有大環状化合物[3A、10D(MがCdの場合)及び14D(MがCdの場合)]は濃度20μMにおいて、ウイルスプラーク検定で判定して、ウイルスの不活性化率が≧90%であることを証明した。
【0228】
この大環状化合物の光増感に関する研究では外被HSV−1を細胞培養におけるその増殖の容易さと感染性の評価に基づいてスクリーニング用モデルとして用いた。HSV−1の光不活性化のスクリーニング法は前記の方法と同様であった3。本質的には、選択された大環状化合物をいろいろな濃度で106PFU/mLのHSV−1の細胞不含懸濁液に加えた。これらウイルス懸濁液に選択された染料の最適吸収波長においていろいろな光エネルギー密度で照射した。対照は(1)非照射ウイルス、(2)大環状化合物の不存在下において照射されたウイルス及び(3)選択された濃度の大環状化合物で処理され、暗所に保持されたウイルスより成るものであった。全てのサンプルについて次にヴェロ(Vero)細胞中のPFU/mLの数を定量することによってウイルスの感染性を評価した。
【0229】
これらウイルス懸濁液を連続的に希釈し、続いてヴェロ細胞の単層に37℃において1.5時間吸収させた。重疊層培地を加え、そして細胞を37℃において3〜4日間インキュベートした。次に、その重疊層培地を取り除き、単層をメタノールで固定し、かつギームサ染色液で染色し、そして解剖顕微鏡下で個々の斑点を数えた。非感染細胞培養物も大環状錯体化合物に暴露して直接的な細胞毒の諸影響を除いた。
【0230】
ヒト全血漿中の0.015〜38μMの範囲の濃度の錯体3Aに暴露した後の光の存在下及び不存在下におけるPMCの不活性化を第29図及び第30図に示す。不活性化はミトゲン検定で判定した。光の不存在下における3Aによる毒性開始(第4図を参照されたい)及び1Cによる毒性開始(第17図を参照されたい)は0.15〜1.5μMであった(第29図)。第30図にミトゲン検定によって示されるように、0.15μM及び波長770nmの20ジュール/cm2において3Aに暴露された細胞の有酸素性光増感化はPMCの細胞分裂を著しく抑制した。光増感剤濃度か光線量のどちらかの中度の増加は本質的に完全な細胞の不活性化をもたらすと期待される。
【0231】
今までに得られた結果(その若干を本明細書にまとめて示す)は、本発明の広がったポリフィリン様大環状化合物は遊離のHIV−1に対する、また同様に感染した単核細胞に対しても効率的な光増感剤であることを強く示している。これら大環状化合物の側鎖基の極性及び電荷を変えることはHIV−1のような遊離の外被ウイルスに対する、及びウイルス感染した抹消単核細胞に対する結合の程度、速度、及び多分位置を著しく変えると予想される。これら置換基の変化はまた光増感剤の吸収、及び骨髄を汚染している白血病細胞及びリンパ腫細胞の光増感化、並びに骨髄の正常細胞による光増感化を変調すると期待される。
【0232】
次の文献は説明において挙げた理由から本明細書において引用、参照されるものである。
【0233】
(文献)
1.Skiles,H.L.,Judy,M.M.及びNewman,J.T.Abstracts to the Annual Meeting of the ASM,A38,pg.7,1985.
2.Matthews,J.L.,Newman,J.T.,Songandares−Bernal,F.,Judy,M.M.,Skiles,H.,Leveson,J.E.Marengo−Rowe,A.J.,及びChanh,T.C.Transfusion,28:81,1988.
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(実施例7)
本実施例は本発明の基本的な(basic)5配位(5座)の広がった(拡大)ポリフィリン化合物及び錯体並びに合成したそれらの誘導体の幾つかを要約して説明するものである。第31図に化合物lE〜7E、14D及び15Dを示す。変種はオルト−フェニレン−ジアミノ置換基、即ちR1及びR2が、及び出発ジアミン自体の性質が変化しているものである。オルト−フェニレン−ジアミノ置換基上のR1及びR2が共に化合物1Eにおけるように水素である場合のテキサフィリンの基本的構造を示す。これらの置換基R1及びR2はまた共にメチルCH3であってもよい(化合物2E)。更に、R1がHであるとき、R2は塩素(化合物3E)、臭素(化合物4E)、ニトロ(化合物5E)、メトキシ(化合物6E)又はカルボキシ(化合物7E)であることができる。Mが水素であるとき、錯体の電荷は0である(M=0)。Mが二価の金属、例えば水銀+2、カドミウム+2、亜鉛+2、コバルト+2又はマンガン+2であるとき、錯体の電荷は+1である(n=1)。Mが三価の金属カチオン、例えばユーロピウム+3、ネオジウム+3、サマリウム+3、ランタン+3、ガドリニウム+3、インジウム+3又はイットリウム+3であるとき、錯体の電荷は+2である(n=2)。1個の星印が付けられた錯体について(1E及び2E)、上記の二価及び三価の金属は総て形成された種々の錯体に含まれている。2重の星印が付けられた錯体(3E〜6E)は亜鉛又はカドミウムのどちらかの誘導体(M=Zn又はCd;n=1)として合成された。本明細書の他に節に使用可能な他の多くの化合物が記載されるか、又は本明細書に示した手引きにより当業者が容易に合成できるが、本実施例に述べられる特定の化合物は多くの目的に、例えばウイルス、特にレトロウイルスの生物学的サンプルを精製することを伴うものに特に有用であると思われる。これらの化合物はまた、本明細書の他の所で述べられる通り、例えば光力学的癌治療、磁気共鳴画像形成(MRI)の強化及び抗体の機能化のような目的に有用であるだろう。
【0234】
(実施例8)
磁気共鳴画像形成の強化
多くの点で、癌コントロールの鍵は、多くはないにしても、それが後続の治療処置にあるのと同じくらい多く早期検出及び診断にある。新形成(neoplastic)組織を発癌の初期段階に観察でき、かつ認識できるようになす新しい技術には従ってこれら疾患に対する戦いに果たす重要な役割がある。1つのそのような有望な技術は磁気共鳴画像形成(MRI)である1−5。全く新しい、この非侵襲性の、明らかに無害の方法は最重要の診断具として確固たるものとはなっていないけれども、補足用又は、場合によっては、交換用コンピュウターは固形腫瘍検出のために選ばれた方法としてX線断層撮影法を助るものであった。
【0235】
現在のMRI法の物理的基礎は、強い磁場では異なる組織における水プロトンの核スピンは、それが短いrfパルスの適用によって静止ボルツマン分布から乱されるとき、緩和されて色々な速度で平衡に戻ると言う事実にその起源を持つ。スピン−エコー画像形成の最も一般的なタイプについては、平衡への復帰は式1に一致して起こり、それぞれ縦(longitudinal)緩和時間と横(transverse)緩和時間である2つの時間定数T1及びT2によって支配される。
SI=[H]H(*){esp(−TE/T2)}{1−exp(−TR/T1)}
(1)
ここで、SIは信号強度を表し、[H]はある任意の容積要素(ボクセルと称される)における水プロトンの濃度であり、H(*)はこの容積要素の内外の運動(もしあれば)に対応する運動因子であり、TE及びTRはそれぞれエコー遅延時間及びパルス反復時間である。MRI画像を得ることと結び付いた種々のパルスシーケンスは従って励起rfパルス及びインテロゲーション(interrogation)rfパルス(第1は系を乱すものであり、第2は平衡への復帰程度を測定するものである)と結び付いた(及び両パルス間の)時岡を設定し、そして上記のとおり有効な特定のT1及びT2の関数であるSIを測定することによってTE及びTRを選択することに相当する。T1及びT2は共に局所的(バルクの)磁場環境の関数であり、また同様に水プロトンが位置する特定の組織の関数であるので、これら値の差(したがってSI)は画像の再構成を可能にする。勿論、これらの局所的な、組織依存性の、緩和の差が大きいときだけ組織の識別を行うのが可能である。
【0236】
生物学的系についての実施においては、T2値は非常に短い(そして、TE及びTRはこの状況を強調するように選ばれる)。しかして、それは緩和効果と信号の相対強度を支配する縦時間定数(T1)における差である:T1の減少は信号強度を増加させることに相当する。従って、特定の組織又は器官についてT1を選択的に減少させるように作用する総ての因子は、かくして、その領域について強度を増加させ、かつ動物のバルクのバックフラウンドに対してより良好な対比(ノイズに対する信号)をもたらす。これは常磁性のMRI対比剤(contrast agent)が作用するようになる場合である4,5。
【0237】
磁気共鳴分光分析の最も初期のころ以来、1個以上の不対スピンを有する常磁性化合物がそれら化合物が溶解されている水プロトンについて緩和速度を高めることは知られている6。この向上の程度は緩和度(relaxivity)と称されるが、これは総合相互作用の不存在下で式2におけるRi(単位:M−1s−1又はmM−1s−1)で与えられる4,5。
(1/Ti)obsd=(1−Ti)d+Ri[M] i=1,2(2)
ここで、(1/Ti)obsdは常磁性種Mの存在下での観察された緩和時間の逆数であり、(1−Ti)dは常磁性種Mの不存在下での観察された緩和時間である。MRIの向上についての、任意の与えられた常磁性種、即ち金属錯体の緩和度は電子のスピン(金属上の)とプロトンのスピン(水上の)との間の双極子−双極子相互作用の大きさに依存する。この相互作用の程度は常磁性錯体と問題の水分子との間の相互作用の本性に強く依存する。「内球(inner sphere)」と「外球(outer sphere)」の両者の全緩和度Riに対する寄与を定義するのが便利であることが旧来から証明されている4,5。前者は金属の配位球(coordination sphere)に直接関与する水分子を説明するものであり、後者は他の総ての緩い相互作用(例えば、第2の配位球中で結合した水の水素結合と並進性拡散)を説明するものである。化学的に実行可能である場合、それは一般にRiを支配する内球緩和である。この相互作用について縦緩和に対する寄与は式3で与えられる4,5。
(1/T1)(内球)=PMq/T1M+tM(3)
ここで、PMは金属イオンのモル分率であり、qは結合した水分子の数であり、tMは結合水の寿命であり、T1Mは結合水のプロトンの緩和時間である。この後者の項の値は双極子−双極子(「空間を介して」)の項と接触(「結合を介して」)の項の両者を説明するソロモン−ブロエムバーゲン(Solomon−Bloembergen)の式(式4−6)で近似される7。
【0238】
【数1】
【0239】
ここで、Y1はプロトンの磁気回転比であり、gは電子g−因子であり、Sは常磁性イオンの全電子スピンであり、βはボアー磁子であり、rは水プロトン−金属イオン間距離であり、[A2π/h]は電子−核の超微細カップリング定数であり、そしてWsとWlはそれぞれ電子ラーマー(Larmor)摂動振動数とプロトンラーマー摂動振動数である。双極子の相関時間及びスカラー相関時間tc及びteは式
1/tc=1/T1e+1/tM+1/tR(5)
1/te=1/T1e+1/tM(6)
で与えられる。ここで、T1eは縦電子スピンの緩和時間であり、tRは全水−錯体の総体としての回転タンブリング時間である。もっと精密な理論的取り扱いは内球の緩和通路における電子サブレベルの静的ゼロ場分裂を乱すと思われる衝突性の緩和効果、その他の因子を説明するのに有効である5。詳細な分析はまた外球機構からの寄与を説明するのにも有効である5。それにもかかわらず、この議論のためには上記の簡単なソロモン−ブロエムバーゲンの式で十分である。即ち、それらの式は良好な常磁性対比剤に必要とされる鍵となる物理的特徴を説明しているのである。
【0240】
物理的観点から、MRI対比剤には、高度に常磁性であり(そのため磁気モーメント項S(S+1)が大きい)、大きなT1eを有し、かつ大きな回転タンブリング時間(tR)を示す種が必要である。加えて、理想的な対比剤は1個以上の水分子を結合させ(そのため内球緩和機構が働く)、かつこれらの水を最適の速度(1/tM)で交換すべきでもある。錯体の選択によるよりも局所環境の有効粘度(即ち、錯体がゆっくり回転している蛋白質にくっつくのか10)によって更にしばしば設定されるtR’を除いて、これら因子は総て塩基性の常磁性カチオンの選択によって、及び続く配位子の設計によって影響されるだろう4,5,9。この配位子の設計−これは現在のMRI研究の主目的をなしている−は勿論非常に厳しい生物学的要求にも依存する。想定上の対比剤は高度に常磁性であり、かつ良好な緩和の向上を達成しなければならないのみならず、それは投与剤量において無毒であり、生体内で安定であり、診断完了後速やかに排出され、そして勿論望ましい組織局在化能を示さなければならない。これらの基準を一緒に満足するのは極めて厳しい。
【0241】
実際は、現在臨床的に使用されている唯一の常磁性MRI対比剤はバーレックス ラボラトリーズ社(Berlex Laboratories)が販売するGd(III)ジエチレントリアミンペンタアセテートのビス(N−メチルグルカミン)塩・(MEG2)[Gd(DTPA)(H2O)]である(構造10を参照されたい)11−18。このジアニオン性錯体は細胞外の領域に選択的に集中し、主として大脳の腫瘍と結び付いた毛細病変部の視覚化に用いられつつある11−13。[Gd(DTPA)(H2O)]−2において、水1分子が第1(内側の)配位球の中で結合されており、そして水中、37℃においてこの錯体は20MHzにおいて3.7mM−1s−1の緩和度を示す4,9,19。EDTAの単なるGd(III)錯体(それについての25℃に似おけるlogKassc.は17.4である20,21)とは著しく違って、上記DTPA錯体は生理的条件下で動力学的に安定なように十分に熱力学的に安定であるように思われ(25℃において、logKassc.=22.520,21)、そして明らかに投与して数日以内にそのまま腎臓を通して分泌される14。これらの望ましい特徴にもかかわらず、優れた動力学的安定性、より良好な緩和度、より少ない正味電荷(投与溶液の重量オスモル濃度、従って痛覚閾値はより低い)及び/又はいろいろな組織限局化容量を持つ他の対比剤が臨床用途に望ましいことは明らかである。実際、ロウファー(Lauffer)はこの主題についての最近の概説において5「動力学的に不活性な錯体、特にGd(III)の錯体に対する新しい合成法の開発が必要である」と記載している。これらは、好ましくは、錯体に対してその性質を変調することができる特定の置換基を可能にすべく十分に使用できなければならない。
【0242】
事実、今日まで、新規な可能性のあるMRI対比剤の開発に相当の努力が向けられて来た21−37。この研究のほとんどはGd(III)の新規な錯体を製造することに集中していた21−29,362,376。Gd(III)塩に力点が置かれたのはこのカチオンが7不対f−電子を有し、その磁気モーメントがFe(III)及びMn(II)のような他の常磁性カチオンより大きいという事実に由来する4, 5。従って、他のすべてのことが同じであれば、Gd(III)の錯体はMn(II)又はFe(III)から誘導されるものよりも優れた緩和剤となると予想される。加えて、鉄及び、程度は鉄よりも低いがマンガンは両者共種々の特殊化された金属結合系によってヒト(及び他の多くの生物)のなかで非常に効率的に金属封鎖され、貯蔵される38。その上、鉄及びマンガンは共に酸化状態の範囲で存在することができ、かつ各種の有害なフェントン(Fenton)型遊離ラジカル反応を触媒することが知られている39。これらの欠陥のいずれも持たないガドリニウム(III)は、従って、明らかに多くの利点を与えると思われる。しかし、残念ながら、Fe(III)及びMn(II)がそうであるように、Gd(III)の水性溶液はこれを有効な向上に必要とされる0.01〜1mM濃度で直接MRI画像形成に用いるには毒性が強すぎる4,5。従って、DTPAがそうであるように、Gd(III)及び/又は他の常磁性カチオンとの加水分解上安定な錯体を生体内で形成する新しい試剤を開発することに力点はある。非常に有望なDOTA系21−27及びEHPG系28,29を含めて多数のそのような配位子が今日知られている(広範な概説については文献5を参照されたい)。ほとんどすべての場合において、よって立つところは、しかしながら、同じ基本的な自然科学的アプローチである。具体的に言うと、Gd(III)の結合について、高い熱力学的安定性が生体内に適用するのに十分である動力学的安定性に変化することを期待して、カルボキシレート、フェノレート及び/又は他のアニオン性のキレート形成性基をそのような高い熱力学的安定性を持つ本来的に変化しやすい(labile)錯体を生成させるのに用いられつつある。実際、錯体自体が高い動力学的安定性を持っている変化しにくいGd(III)錯体の製造には現在努力がほとんど向けられていない。このような系の製造がむづかしいこの問題は極めて単純であるように思われる。例えば、ポルフィリン(容易に変成され、かつ少なくとも〔Mn(II)TPPS〕3−、その他の水溶性の類縁化合物30−34にとっては、良好な緩和度と良好な腫瘍限局性を示す多様に合成し得る配位子)に十分に結合される遷移金属カチオンとは違って、Gd(III)はポルフィリンと弱い及び/又は加水分解上不安定な錯体しか形成しない30c,34,40。ただし、他の単純な大環状アミン−及びイミン−誘導配位子36,37,41はランタニド系列のある特定の元素との安定な錯体を支持し、かつ、今までのところは未だ実現されていないが、Gd(III)に基づくMRI用途の支持用キーランド(supporting cheland)として作用するある徴候を示す。本発明の根拠となる事実は、「広がったポルフィリン」を用いる方法を使用して変化しにくいポルフィリン様Gd(III)錯体を生成させうること、及び一旦形成されるとこれらの錯体はMRI用途のための有用な対比剤となることである。事実、テキサフィリンはCd2+、Hg2+、Y3+In3+及びNd3+を含めて各種の二価及び三価のカチオンとの錯体を安定化することができる。加水分解上安定なNd3+錯体がテキサフィリンによって支持することができるという観察結果は種々のガドリニウム(III)に基づくMRI用途におけるテキサフィリンの使用にとってよい徴候である。しかし、残念ながら、実施例4においてより詳しく説明されたように、テキサフィリンから安定なGd3+錯体を良好な収率で単離すべく今日までなされた努力は総て失敗に終わった。これはその錯体が実際には非常に水溶性であるために標準的な処理法が役に立たないためであると推測される。十分に特徴付けられたSm3+、Eu3+及びGd+3(Y3+も)の錯体が更に疎水性のジメチル−テキサフィリンから製造されているという事実は上記の推定に一致する。これらの錯体は対応する還元された(メチレン架橋された)大環状前駆体化合物から以下において検討され、また実施例1及び2で説明された標準的な金属挿入、酸化条件を用いておおよそ25%の収率で得られる。重大なことには、これら錯体は総て1:1メタノール−水混合物に可溶であり、かつ総てがそのような潜在的に錯体が分解する条件下で極めて安定なことである。例えば、Gd3+錯体の1:1メタノール−水中の室温における半減期は5週間を越える。しかして、加水分解上安定なガドリニウム(III)錯体(単なるポルフィリンを用いては達成することができないなにか)を生成させるのにテキサフィリンタイプの方法を用いることが可能である40。この重要な結果は、改良された水溶性又はより良好なバイオ分布性(biodistribution properties)を持つ安定なGd3+錯体の製造を可能にするテキサフィリン骨格の更なる変成を与えるものであった。加えて、適当なアニオン性側鎖を使用することによって正味の総電荷を持たない中性の錯体を製造することが可能であるべきである。このような錯体は水性溶液中でより低い重量オスモル濃度を示すだろう。これはそれらの投与と結び付いた痛みを低下させ、プラスの臨床結果を有するだろう。かくして、MRIの使用に対する、対比剤開発のテキサフィリンを用いるこの方法は有望であるように見える。
【0243】
次に挙げるリストの文献は上記説明において挙げた理由から本明細書で引用、参照されるものである。
【0244】
(文献)
1.歴史的概説について参照されたい:Budinger,T.F.;Lauterbur,P.C.,Science 1984,226,288.
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4.MRI対比剤の入門的議論について参照されたい:Tweedle,M.F.;Brittain,H.G.;Eckelman,W.C.;Gaughan,G.T.;Hagan,J.J.;Wedeking,P.W.;Runge,V.M.,Magnetic Resonance Imaging,第2版において、Partain,C.L.,et al.Eds.;W.B.Saunders:Philadelphia;1988,vol.I,pp.793−809.
5.常磁性MRI対比剤の総説について参照されたい:Lauffer,R.B.,Chem.Rev.,1987,87,901.
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9.Tweedle.M.F.;Gaughan,G.T.;Hagan,J;Wedeking,P.W.;Sibley,P.;Wilson,L.J.;Lee,D.W.Nucl.Med.Biol.1988,15,31.
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30.(a)Chen,C.;Cohen,J.S.;Myers,C.E.;Sohn,M.FEBS Lett.1984,168,70.(b)Patronas,N.J.;Cohen,J.S.;Knop,R.H.;Dwyer,A.J.;Colcher,D.;Lundy,J.;Mornex,F.;Hambright,P.Cancer Treat.Rep.1986,70,391.(c)Lyon,R.C.;Faustino,P.J.;Cohen,J.S.;Katz,A.;Mornex,F.;Colcher,D.;Baglin,C.;Koenig,S.H.;Hambright,P.Magn.Reson.Med.1987.4,24.(d)Megnin,F.;Faustino,P.J.;Lyon,R.C.;Lelkes,P.I.;Cohen,J.S.;Biochim.Biophys.Acta 1987,929,173.
31.Jackson,L.S.;Nelson,J.A.;Case,T.A.;Burnham,B.F.Invest.Radiology 1985,20,226.
32.Fiel,R.J.;Button,T.M.;Gilani,S.;等
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35.Smith,P.H.;Raymond,K.N.Inorg.Chem.1985,24,3469.
36.ランタニドクリプテート(cryptates)の例について下記を参照:(a)Gansow,O.A.;Kauser,A.R.;Triplett,K.M.;Weaver,M.J.;Yee,E.L.J.Am.Chem.Soc.1977,99,7087.(b)Yee,E.L.;Gansow,O.A.;Weaver,M.J.J.Am.Chem.Soc.1980,102,2278.(c)Sabbatini,N.;Dellonte,S.;Ciano,M.;Bonazzi,A.;Balzani;V.Chem.Phys.Let.1984,107,212.(d)Sabbatini,N.;Dellont,S.;Blasse,G.Chem.Phys.Lett.1986,129,541.(e)Desreux,J.F.;Barthelemy,P.P.Nucl.Med.Biol.1988,15,9.
37,通常のシッフ塩基大環状化合物によって安定化されたランタニド錯体の例について下記を参照されたい:(a)Backer−Dirks,J.D.J.;Gray,C.J.;Hart,F.A.;Hursthouse,M.B.;Schoop,B.C.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1979,774.(b)De Cola,L.;Smailes,D.L.;Vallarino,L.M.Inorg.Chem.1986,25,1729.(c)Sabbatini,N.;De Cola,L.;Vallarino,L.M.;Blasse,G.J.Phys.Chem.1987,91,4681.(d)Abid,K.K.;Fenton,D.E.;Casellato,U.;Vigato,P.;Graziani,R.J.Chem.Soc.,Dalton Trans.1984,351.(e)Abid,K.K.;Fenton,D.E.Inorg.Chim.Acta 1984,95,119−125.(f)Sakamoto,M.Bull Chem.Soc.Jpn.1987,60,1546.
38.Ochai,E.−I Bioinorganic Chemistry,an Introduction,Allyn and Bacon:Boston;1977,p.168(Fe)及びp 436(Mn).
39.概説について下記を参照:(a)Cytochrome P−450:Structure,Mechanism,and Biochemistry,Ortiz de Montellano,P.R.,Ed.;Plenum:New York,1986.(b)Groves,J.T.Adv.Inorg.Biochem.1979,I,119.
40.(a)Buchler,J.W.in The Porphyrins,Dolphin,D.Ed.,Academic Press:New York;1978,Vol.1,Chapter 10.(b)Srivastava,T.S.Bioinorg.Chem.1978,8,61.(c)Horrocks,W.Dew.,Jr.J.Am.Chem.Soc.1978,100,4386.
41.(a)Forsberg,J.H.Coord.Chem.Rev.1973,10,195.(b)Bunzli,J.−C.;Wesner,D.Coord.Chem.Rev.1984,60,191.
(実施例9)
抗体結合体(antibody conjugates)
放射性同位体は長い間新形成性疾患の検出と処置において中心的な役割を果たしてきた。重要な研究は従って医療用途におけるそれらの効能を改良することに継続いて向けられている。研究をそのように行う際のより有望なアプローチの1つは腫瘍に向けられるモノクローナル抗体及びそれらの断片に放射性同位体を結合させることを包含する。そのようなモノクローナル抗体及びそれらの断片は腫瘍の所に選択的に集中する。放射性同位体で標識された抗体は従って「魔法の弾丸」として役立つことができ、かつ放射性同位体の新形成物部位への直接輸送を可能にし、かくして体全体の放射線に対する暴露が最小限に抑えられる1。注目すべき研究がこれらの方向(一般的な概説について文献2−11を参照されたい)に沿って今日行われつつある。総てでないことは確かであるが、多量のものが2官能性の金属キレート化剤の使用に焦点を当てている。それが本発明に最も密接に関係する放射性免疫診断(RID)及び放射性免疫治療(RIT)に対するこのアプローチである。
【0245】
抗体結合体に基づく治療及び診断用途における使用のための2官能性金属キレート化剤は2つの重要な基準を満足しなければならない。即ち、それらキレート化剤は興味を引く放射性同位体を結合することができ、かつ標的抗体に対して結合することができなければならない。かくして、これらの2官能性キレート化剤は(1)抗体に対する結合(conjugation)に適した官能基を持ち、(2)生体内で安定でかつ抗体の免疫学的能力を失わせない共有結合を形成し、(3)比較的無毒であり、そして(4)興味を引く放射性金属を生理的条件下で結合、保持しなければならない11−15。これら条件のうち最後の条件が特に厳しい。低い濃度の錯体分解されたカチオンが多分許容される可能性があるMRI画像形成とは著しく異なって、結合体から放出される「遊離」の放射性同位体に起因する潜在的損傷は非常に重大である可能性がある。しかして、放射性免疫学的研究には、非不安定(nonlability)の条件は厳密に実施されなければならない。他方、ノナモルオーダーのごく低い濃度の同位体、従って配位子がRID及びRIT用途に一般に必要とされ、そのため固有の金属及び/又は遊離の配位子の毒性と結び付いた問題はかなり緩和される。
【0246】
言うまでもなく、上記の条件はRIT及びRIDの研究にとって考えられているどの同位体にも満足されなければならない。しかして、配位子の設計と合成の観点から、問題は医療に有利な同位体を同定し、適当な配位子を設計し、そしてそれを金属の結合前か後に選択した抗体に結合させると言う問題になる。歴史的に見ると、理想的な同位体を選択することと存在している2官能性の結合体と容易に錯体を形成することができるものとの間には妥協(trade−off)があったのである。
【0247】
画像形成の目的には、理想的な同位体は入手できる監視技術で容易に検出でき、かつ最小の、輻射線に基づく毒性応答を誘発すべきである。実際には、これらの及び他の必要な要件は、短い有効半減期(生物学的及び/又は核の半減期)を有し、安定な生成物に崩壊し、そして勿論臨床条件下で容易に入手できる、100〜250KeVの範囲のY−線エミッターの使用を包含する2−4。今日までは従って、注目の焦点はほとんどこれら基準を満足することに最も近い131I(t1 /2=193h)、123I(t1/2=13h)、99mTc(t1/2=6.0h)、67Ga(t1/2=78h)及び111In(t1/2=67.4h)にあった。これらの各々はRIDに対する抗体標識に関して利点と不利点を持っている。例えば、131I及び123Iはチロシン残基の単純な親電子性芳香族置換により抗体(及び他の蛋白質)に容易に結合される17。その結果、これらの同位体に免疫学的適用(RIDのみならずRIT)において広い用途が認められた。しかし、残念ながら、このような結合法は生理学的条件下で特に強力であるという訳ではなく(131I及び123Iで標識された蛋白質の代謝では、例えば遊離の放射性アイオダイドアニオンが生成する)、この結果抗体誘導の「魔法の弾丸」によって標的とされた部位以外の部位の所にかなりの濃度の放射能をもたらす可能性がある17。この問題は131I及び123Iの両者の半減期がそれぞれ長過ぎ、また短過ぎて最適使用には比較的不便であるという事実、及び131Iはβエミッターでもあるという事実によって更に悪化せしめられる16。99mTc、67Ga及び111Inは総て、それらを満足な様式で直接抗体に結合させることができず、2官能性結合体の使用を必要とすると言う不利が避けられない。このような系の化学は99mTcの場合に最も先に進んでおり、そして今では多数の効果的な配位子が99mTc投与の目的のために入手できる2−12,18。この特定の放射性同位体は、しかし、半減期が非常に短く、それを用いて処理するのを技術的に非常に困難にすると言う厳しい不利から避けられない。67Ga及び111Inは共に上記のものより長い半減期を持つ。更に、これら両者は望ましい放射エネルギーを持っている。しかし、残念ながら、これら両者はそれらの最も一般的な三価形態で高電荷密度を持つ「ハード」なカチオンである。RIDにおけるこれら放射性同位体の適用は従って生理学的条件下でこれらカチオンを有する安定な変化しがたい錯体を形成することができる配位子の使用を必要とする。111In3+(及び、おそらくは、67Ga3+も)の結合及び抗体の官能化に適しているだろうDTPA様の系の開発にかなりの努力が払われたけれども19、あらゆる場合において形成された錯体は安全かつ効果的な臨床上の使用には不安定すぎる20。実際、現時点では、安定な変化しがたい錯体を形成し、放射性免疫学的用途に適しているかもしれない111In3+か67Ga3 +には適当な配位子は存在しない。本明細書の他の所で述べたように、テキサフィリンはIn3+と動力学的にかつ加水分解的に安定な錯体を形成する。このような配位子系は111Inに基づくRIDにおける使用のための2官能性結合体の臨界的なコアとして同化し、かつ役立つことが可能であった。
【0248】
放射性同位体に基づく診断に当て嵌まるように、同じ考察の多くが放射性同位体に基づく治療に当て嵌まる。即ち、理想的な同位体も臨床上の条件下で容易に入手でき(即ち、単純な崩壊に基づく発生体から)2、妥当な半減期(即ち、6時間乃至4週間のオーダー)を有し、そして安定な生成物に崩壊しなければならない。更に、この放射性同位体は良好なイオン化性放射線(即ち、300KeV乃至3MeVの範囲の放射線)を与えなければならない。実際には、このことはαエミッター又はメディウム乃至高エネルギーのβエミッターのいずれかを用いることを意味する16。少数のαエミッターが治療用途のために入手できるけれども(211Atは例外である)、131Iを含めて相当数のβエミッターが現在RITに対する可能性のある候補として注目を受けている。更に有望なものに186Re(t1/2=90h)、67Cu(t1/2=58.5h)及び90Y(t1/2=65h)がある。これらのうち、90Yが現在最良と考えられいる16,21。その放射エネルギーは2.28MeVであるが、それは腫瘍に対して186Reか67Cuよりもおおよそ3〜4倍多いナノモル当たりエネルギー(線量)を出すと計算される。現時点ではしかし、残念ながら、良好な免疫適合性のキーランドは186Re及び67Cuだけにしか存在しない。即ち、前者は99mTcについて開発されたものと同じ配位子を用いて結合することができ18、または後者はハンカー カレッジ(Hunter College)のラヴァリー教授(Prof.Lavalee)とロス アラモス(Los Alamos)のINC−11のチームによって開発された、合理的に設計された活性化されたポルフィン類を介して結合させることができる15。これらの新規なポルフィンに基づく系は、特に、真に有望そうで、存在するDTPA−又はDOTA−タイプの系より明らかに遥かに優れているけれども14、90Y3+(これはポルフィン類とは安定な変化しにくい錯体を形成することはできない)と安定な変化しにくい錯体を形成することができる2官能性の結合体から更に多くの利益が導かれる。本発明のテキサフィリン配位子はIn3+と安定な錯体を形成するだけでなく、Y3+を効果的に結合する。テキサフィリンタイプの2官能性結合体が111Inに基づくRIDにおいて使用するために開発されるべきであり、これにはまた90Yに基づくRITに重要な用途を見いだすことができた。この出願はそのような想定上の2官能性結合体を製造することができる方法の概略を述べるものである。
【0249】
Y3+及びIn3+の両者の錯体を製造することができると言う観察結果はテキサフィリンタイプの系の免疫学的用途における結合体としての使用にとってよい前兆をなすものである。即ち、90Yおよび111Inは共に、想像できるように、選択した抗体に官能化されたテキサフィリンを用いて結合させることができた。これに関して、テキサフィリンのY3+及びIn3+の両錯体はメチレン基を介して結合され、還元された前駆体から速やかに形成され(挿入及び酸化時間は3時間未満である)、そして1:1メタノール−水混合物中で加水分解上安定である(錯体分解及び/又は配位子分解の半減期はいずれの場合も3週間を越える)ことに注目することが重要である。
【0250】
第31図及び第27図に示されるもののような広範囲の可溶化されたテキサフィリンを開発したことの、又は開発しつつあることの更に有利な点はこれらの多くが更なる官能化に適しているだろうことである。例えば、テキサフィリン7E又は26Dのチオニルクロライド又はp−ニトロフェノールアセテートによる処理はモノクローナル抗体又は他の興味ある生体分子に対する結合に適した、活性化されたアシル種を生成させる。別法として、標準的な現場カップリング法(例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)26a)は同じ種類の結合を行うのに用いることができる。いずれの場合も、強力な光増感剤を直接腫瘍の場所に送り、結合させる能力は新形成性疾患の治療において途方もなく大きい潜在的な有利さを持つ。更に、それが90Y及び111Inのような種々の有用な放射性同位体をモノクローナル抗体に結合させるようにする正にこの方法である。これはこの重要な方法の開発において腫瘍の検出と治療に対して計り知れないほどの利益があるものであることを証明することができた。
【0251】
次のリストの文献は記載した理由から本明細書において引用、参照されるものとする。
【0252】
(文献)
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【0253】
(発明の要旨)
本発明は、新規なトリピロールジメチン誘導「拡大ポルフィリン」(テキサフィリン)、このような化合物の合成、それらの類縁体もしくは誘導体、およびそれらの使用に関する。これらの拡大ポルフィリン様マクロ環は、二価および三価の金属イオンの効率的なキレート剤である。これらの化合物の金属錯体は、一重項酸素の産生のための光増感剤として有効であり、したがって、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV−1)、そのようなウイルスを伴う単核球または他の細胞、ならびに腫瘍までもの不活化または崩壊について有効である。種々のテキサフィリン誘導体が製造され、しかも多くは容易に得ることができる。本発明のテキサフィリンおよびテキサフィリン誘導体と様々な金属(遷移金属、主群、およびランタニド)との錯体は異常な水溶性と安定性を有し、これがそれらをとくに有用なものとしている。これらのメタロテキサフィリン錯体は特殊な光学的性質を有し、この点で、現存のポルフィリン様または他のマクロ環に比べて独特である。たとえば、これらは生理学的に重要な領域(すなわち、690〜880nm)で光を強力に吸収する。これらの錯体はまた、高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する。これらの特性は、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を付加するものである。
【0254】
【発明の効果】
高収率で寿命の長い三重項状態を形成し、一重項酸素の形成に際し効率的な光増感剤として作用する性質を有し、それらの高い化学的安定性と極性溶媒たとえば水への適当な溶解性と合わせて、それらの有用性を高める化合物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、テキサフィリン(1)および各種錯体(2,3および4)の模式的な構造図を示す。
【図2】図2は、ピリジンとマクロ環のCdへの配位を示す錯体4(図1より)の図である。楕円面は40%確率レベルで表示する。Cdイオンは、ほぼ平面状のマクロ環の平面内に存在する[平面からの最大偏差0.10(1)Å]。関連Cd−N結合の長さ(Å)は次の通りである:2.418(7),N1;2.268(8),N8;2.505(7),N13;2.521(7),N20;2.248(8),N23;2.483(14),N1a;2.473(12),N1b。選ばれたN−Cd−N結合角(deg)は次の通りである:N1−Cd−N8,78.9(2);N1−Cd−N23,80.2(3);N8−Cd−N−13,68.4(2);N13−Cd−N20,64.4(2);N20−Cd−N23,68.2(3):N1a−Cd−N1b,176.1(4)。
【図3】図3は、マクロ環を通る平面に垂直な錯体4の図を示す。ピリジン環(図には示していない)はマクロ環に垂直に、環aに対して88.5(4)°,環bに対して89.1(3)°の二面角で存在する。
【図4】図4は、遊離塩基「テキサフィリン」の還元型(1A)および酸化型(2A)、ならびにこの「拡大ポルフィリン」から誘導される代表的な5,6および7配位カドミウム錯体(3A〜5A)の模式的表示である。
【図5】図5は、ピリジンとマクロ環のCdへの配位を示す陽イオン5aAの図である。楕円面は30%確率レベルで表示してある。カドミウム(II)陽イオンは、ほぼ平面状のマクロ環の平面内に存在する[平面からの最大偏差は0.10(1)Å]。関連Cd−N結合の長さ(Å)は次の通りである:2.418(7)N1;2.268(8)N8;2.505(7)N13;2.521(7)N20;2.248(8)N23;2.438(14)N1a;2.473(12)N1b。選ばれたN−Cd−N結合角(°)は次の通りである:78.9(2)N1−Cd−N8;80.2(3)N1−Cd−N23;68.4(2)N8−Cd−N13;64.4(2)N13−Cd−N20;68.2(3)N20−Cd−N23;176.1(4)N1a−Cd−N1b。その他の構造的な詳細は参考文献11を参照されたい。
【図6】図6は、陽イオン4bAの図であり、原子標識スキームを示す。熱楕円面は30%確率レベルで描かれている。関連Cd−N結合の長さ(Å)は、N1 2.462(13);N8 2.254(9);N13 2.535(13);N202.526(12);N23 2.298(11);N1A 2.310(9)である。選ばれたN−Cd−N結合角(°)は、N1−Cd−N8 78.3(4);N8−Cd−N13 67.8(4);N13−Cd−N20 64.1(4);N20−Cd−N23 67.3(4);N1a−Cd−マクロ環Nの角は93.7(4)〜100.4(3)°の範囲である。硝酸対イオン(図には示していない)はCd原子には配位していない。
【図7】図7は、マクロ環を通る平面に沿った図であって、単位セルにおける陽イオン4bAの対面スタッキングを例示する(マクロ環は1−x,y,zでリアルトされている)。マクロ環平均面は3.38Å離れていて、一方Cd−Cd距離は4.107(1)Åである。
【図8】図8は、マクロ環を通る平面に垂直な陽イオン4bAの図を示す[C15に対する最大偏差0.154(13)Å]。Cd原子はこの面から0.334(2)Å外れて存在する。BzIm(図には示していない)はマクロ環にほぼ垂直に配置され[二面角86.3(3)°]、C22,N23,C24,C25およびC26で決定されるピロール環上に存在する。
【図9】図9は、3A・NO3のCHCl3中1.50×10−5のUV−可視スペクトルを示す。
【図10】図10は、3A・NO3のCDCl3中1H NMRスペクトルを示す。1.5および7.26ppmにおける単一線は、それぞれ残存する水および溶媒のピークである。
【図11】図11は、3A・NO3(スペクトルA)およびそれから錯体4bA・NO3の結晶が単離されたバルク不均一物質(スペクトルB)の1H NMRスペクトルの低フィールド領域を示す。’BzIm’の記号を付した、結合ベンズイミダゾールリガンドに帰属されるシグナルは、6.4、6.81および7.27ppmに認められる。’S’の記号を付したシグナルは残存溶媒によるものである。
【図12】図12は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.85×10−3M)の、BzImの量を増大させていった1H NMRスペクトル滴定であり、中間フィールド領域を示している。[Bzlm]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ0,0.2,0.6,2.8,10および40であり、この場合、[BzIm]および[リガンド]は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。曲線CにおけるBzlmシグナルの化学シフト(6.4,6.62,7.26ppm)は、陽イオン4baの結晶が単離されたバルクサンプルに認められシフト(図8のスペクトルB参照)とよく一致する。
【図13】図13は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.85×10−3M)の、BzImの量を増大させていった1H NMRスペクトル滴定を示し、高フィールド領域を示している。[Bzlm]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ、0,0.2,0.6,2.8,10および40であり、この場合、[Bzlm]および[リガンド]は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を表す。
【図14】図14は、3A・NO3に対する「メソ」シグナルの1H NMR化学シフトを、[BzIm]の増加の関数としてプロットした場合の変化を示す。[BzIm]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時の5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。
【図15】図15は、3A・NO3(CDCl3中初期濃度:6.66×10−3M)の、ピリジン量を増加させていった場合の1H NMR滴定であり、高フィールド領域に起こる変化を示している。[Pyr]/[リガンド]比は、トレースAからFまでそれぞれ、0,5,10,14,20および40である。[Pyr]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時5−配位錯体の総モル濃度を表す。
【図16】図16は、3A・NO3に対する「メソ」シグナルの1H NMR化学シフトの、[Pyr]の増加の関数として変化を示している。[Pyr]および[リガンド]の語は、添加ベンズイミダゾールおよび開始時5−配位錯体3A・NO3の総モル濃度を示す。
【図17】図17は、本発明の化合物の金属錯体および誘導体(1B〜11B)を示す。
【図18】図18は、2B・(OH)2のCHCl3中電子スペクトルを示す。
【図19】図19は、本発明の化合物(1C〜11C)の構造、金属錯体および誘導体を、模式的に示している。
【図20】図20は、脱酸素メタノール中での錯体1C・Clの吸収スペクトルを示している。挿入図はこの同じ溶媒中で記録された蛍光発光スペクトルである。
【図21】図21は、脱酸素メタノール中、355nm光(80mJ)の10nsパルスの照射1μs後に記録した1C・Clの三重項−三重項一過性差スペクトルを示している。挿入図は480nmでモニタリングした基底状態への復帰速度を示し、これは三重項の寿命67μsに相当する。
【図22】図22は、厚さ22〜32mmのヒト腹壁のスペクトル透過率を示す47)。(参考文献47は例5参照)。
【図23】図23は、以前に開発された、光増感剤として利用できる可能性のあるポルフィリン誘導体の模式的構造を示している。これらには、プルプリン(1D),ベルジン(2D),ベンズ融合ポルフィリン(3D),ならびにスルホン化フタロシアニンおよびナフチロシアニン(4D)を包含する。
【図24】図24は、テキサフィリン(5D),サフィリン(6D),プラチリン(7D),ビニル誘導体ポルフィリン(8D),およびポルフィセン(9D)の模式的構造を示す。
【図25】図25は、テキサフィリン(5D)の類縁体である、新規な芳香性トリピロールジメチン誘導マクロ環リガンド(10D〜16D)の模式的構造を示す。
【図26】図26は、テキサフィリン(5D)の合成を図式的に(シェーマ1)まとめたものである。
【図27】図27は、現時点での提案されたテキサフィリン誘導体(23D〜30D)の模式的構造を示す。
【図28】図28は、提案されたメチン連結テキサフィリン誘導体(31Dおよび32D)の模式的構造を示す。
【図29】図29は、照射を行わない場合の、錯体1Cおよび3Aの単核球細胞の殺滅を示している。細胞の殺滅は、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激後の[3H]−Thyの取り込みによって測定した。
【図30】図30は、1μg/mlの錯体3Aと照射による単核球細胞の殺滅を示す。細胞の殺滅は、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激後の[3H]−Thyの取り込みによって測定した。
【図31】図31は、利用できる拡大ポルフィリン様マクロ環を示している。ピロール水素に代えて、二価または三価の陽イオン、たとえばCd2+,Zn2+,In3+等を結合させることができる。この場合、錯体は正味総電荷、すなわちM+2の場合は+1,M+3の場合は+2の電荷をもつことになる。
Claims (13)
- 五座拡大ポルフィリン化合物の合成のための方法であって、以下の工程:
ジホルミルトリピランを合成する工程、
該トリピランをオルトアリールジアミン1,2−ジアミノアルケンまたは1,2−ジアミノアルカンと縮合する工程、および
縮合生成物を酸化して該五座拡大ポルフィリンを形成させる工程、
を包含し、
ここで、該五座拡大ポルフィリンは、以下の構造:
ここで、該五座拡大ポルフィリンの置換可能部位は、置換基を有し、該置換基は、以下:
H、CH3、CH2CO2、CO2、CO2H、OCH3、O(CH2CH2O)2CH3、NO2、SO3、ClおよびBr
から別個に独立して選択されるか;あるいは
ここで、該五座拡大ポルフィリンは、以下の構造:
方法。 - 前記五座拡大ポルフィリンの金属錯体が以下:
1.次の構造:
MはGd3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはSm3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはY3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;または
MはIn3+であり、RはCH3であり、そしてnは2である)
を有する化合物;
2.次の構造:
RはHであり、そしてR’はOCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はClであるか;
RはHであり、そしてR’はCOOHであるか、または
RはHであり、そしてR’はNO2であり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、または
Mは三価の金属イオンであり、そしてnは2である)
を有する化合物;ならびに
3.次の構造:
を有する化合物、
からなる群より選択される化合物である、請求項3に記載の方法。 - 前記五座拡大ポルフィリンがテキサフィリンまたはテキサフィリン誘導体である、請求項3に記載の方法。
- テキサフィリンであるとさらに定義される、請求項7に記載の組成物。
- 前記常磁性の金属イオンがガドリニウムである、請求項7に記載の組成物。
- 前記五座拡大ポルフィリンがテキサフィリンである、請求項10に記載の方法。
- ウイルス疾患、レトロウイルス疾患、および腫瘍からなる群より選択される疾患の処置のため、一重項酸素の産生のため、または光増感のための薬学的組成物であって、以下:
1. 次の構造:
と、Mが金属イオンのとき対イオンとしての硝酸イオンとからなる、化合物;
2. 次の構造:
を有する、1.に記載の化合物;
3. 次の構造:
RはHであり、そしてR’はOCH3であるか;
RはHであり、そしてR’はClであるか;
RはHであり、そしてR’はCOOHであるか、または
RはHであり、そしてR’はNO2であり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか、または
Mは三価の金属イオンであり、そしてnは2である)
を有する、1.に記載の化合物;
4. 次の構造:
RはHであり、そしてR’はO(CH2CH2O)2CH3であるか;
RはHであり、そしてR’はSO3 −であるか;または
RはHであり,そしてR’はCO2Hであり;そして
Mは二価の金属イオンであり、そしてnは1であるか;または
Mは三価の金属イオンであり、そしてnは2である)
を有する、1.に記載の化合物;
5. 次の構造:
を有する、1.に記載の化合物;
6. 前記置換基R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に、H;アルキル;アミノ;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシ;カルボキサミド;エステル;エーテル;アミド;スルホナト;カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される置換基を有するアルキル;またはエーテルおよびポリエーテルからなる群より選択される置換基を有するアルコキシである、1.または2に記載の化合物;
7. 前記R5がポリエーテルで置換されたアルコキシである、6.に記載の化合物;
8. 以下の構造:
9. MがCa2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Hg2+、Sm2+およびUO2 2+よりなる群から選択される二価の金属イオンであり、そしてnは1である、1.〜8.のいずれか1項に記載の化合物;
10. MがMn3+、Co3+、Mn3+、Ni3+、Y3+、In3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+およびU3+より成る群から選択される三価の金属イオンであり、そしてnは2である、1.〜8のいずれか1項に記載の化合物;
11. MがIn3+、Y3+、Nd3+、Eu3+、Sn3+またはGd3+である、10.に記載の化合物;
12. 次の構造
MはGd3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはSm3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;
MはY3+であり、RはCH3であり、そしてnは2であるか;または
MはIn3+であり、RはCH3であり、そしてnは2である)
を有する、1.に記載の化合物;
13. 次の構造:
MはCd2+であり、RはHであり、R’はClであり、そしてnは1であるか;
MはSm3+であり、RおよびR’はCH3であり、そしてnは2であるか;
MはEu3+であり、RおよびR’はCH3であり、そしてnは2であるか;または
MはGd3+であり、RおよびR’はCH3であり、そしてnは2である。)
を有する、1.に記載の化合物;
14. 次の構造:
R1はHであり、R2はCl、Br、NO2、CO2HまたはOCH3であり、MはZn2+、Hg2+、Sn2+またはCd2+であり、そしてnは1であるか、MはLn3+、Gd3+、Y3+、Sm3+またはIn3+であり、そしてnは2である。)
を有する1.に記載の化合物;
15. 次の構造:
を有する1.に記載の化合物;
16. 前記インジウムが111Inである、15.に記載の化合物;
17. 次の構造:
請求項17〜21のいずれか1項に記載の化合物、
からなる群より選択される化合物を含む、薬学的組成物。 - ウイルス疾患、レトロウイルス疾患、および腫瘍からなる群より選択される疾患の処置のため、一重項酸素の産生のため、または光増感のための医薬を調製するための方法であって、請求項12で定義される化合物を該医薬に含ませる工程を包含する、方法。
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