JP2004001610A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Hidekazu Iida
飯田 英一
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Abstract

【課題】ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体に起因する製造上の制約を回避し、設計の自由度を高めることを可能にした空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7を配置する。芯体ベルト層7aは1層又は2層とする。2層の場合、芯体ベルト層7a,7aを層間で補強コードが互いに交差するようにバイアス積層する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体を備えた自動車用空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を向上させると共に、そのベルト構造体に起因する製造上の制約を回避し、設計の自由度を高めるようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気入りラジアルタイヤのベルト層は、引き揃えられた複数本のコードをゴム被覆したベルト材をバイアスカットし、複数枚のベルト材を層間で互いにコードが交差するようにカーカス層の外周側に配置することにより構成されている。しかしながら、上記タイヤではベルト層の幅方向両端部に切断端が存在するため、その切断端への応力集中によりエッジセパレーションを生じ易く、これが耐久性を低下させる要因になっている。
【0003】
これに対して、特開昭53−22205号公報には、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材の周りに、引き揃えられた複数本の補強コードからなるストリップ材を螺旋状に巻き付けてなるベルト構造体が開示されている。このようなベルト構造体は幅方向両端部に切断端を持たないため、タイヤの高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を改善することが可能である。
【0004】
しかしながら、上述のようにベルト構造体がタイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材を含んでいる場合、タイヤ加硫時に未加硫タイヤにリフトが掛かった際に、コア材の補強コードが伸びきっていまうとタイヤの耐久性が悪化することになるので、必要なリフト率(未加硫タイヤの外径寸法に対する加硫タイヤの外径寸法の増加率)を設定することができないという欠点がある。また、必要なリフト率を設定するために、コア材の補強コードとして、破断伸びが大きいコードを選択すると、経時での外径成長を生じ易くなるという欠点がある。そのため、このようなベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤは実用化に至っていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体に起因する製造上の制約を回避し、設計の自由度を高めることを可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置したことを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる2層の環状の芯体ベルト層と、これら芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とを含み、かつ前記芯体ベルト層を層間で補強コードが互いに交差するようにバイアス積層してなるベルト構造体を配置したことを特徴とするものである。
【0008】
このようにベルト構造体がバイアス構造の芯体ベルト層を備えているので、タイヤ加硫時に未加硫タイヤにリフトが掛かった際に、芯体ベルト層は補強コードを過度に伸長させることなく変形することが可能であり、タイヤの耐久性を悪化させることはない。そのため、芯体ベルト層の補強コードをタイヤ周方向に対して実質的に0度で配列した場合に比べて、加硫時のリフト率の設定範囲を広くし、設計の自由度を高めることができる。また、芯体ベルト層の補強コードには、一般的な破断伸びを有するコードを選択すれば良いので、経時での外径成長を抑制することができる。勿論、ベルト構造体は幅方向両端部に切断端を実質的に持たないので、空気入りラジアルタイヤの高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を向上することができる。
【0009】
本発明のベルト構造体は、各種の空気入りラジアルタイヤに適用可能であるが、特に重荷重用空気入りラジアルタイヤに好適である。但し、重荷重用空気入りラジアルタイヤとは、JATMAイヤーブック(2002年度版)の空気圧−負荷能力対応表において、最大負荷能力が1450kg以上に設定されたタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのタイヤ幅方向両端部がそれぞれビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア5の外周上には硬質ゴムからなるビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7が埋設されている。一方、各ビード部3にはビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように複数の補強層8が埋設されている。ベルト構造体7の外周側には、必要に応じて、ベルト保護層9を設けても良い。
【0012】
上記ベルト構造体7は、図2に示すように、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度αで補強コードを配列してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りにタイヤ周方向に対して15〜60度の角度βで補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとから構成されている。このようなベルト構造体7は、好ましくはコードとゴムとの複合体からなる環状のコア材の周りに単一のコード又はゴム被覆コードを螺旋状に巻き付けることで得られる。
【0013】
図3は本発明の他の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示すものである。本実施形態はベルト構造体に2層の芯体ベルト層を用いたものであり、上述の実施形態と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0014】
本実施形態において、ベルト構造体7は、図4に示すように、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度αで補強コードを配列してなる2層の環状の芯体ベルト層7a,7aと、これら芯体ベルト層7a,7aの周りにタイヤ周方向に対して15〜60度の角度βで補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとから構成されている。このベルト構造体7において、芯体ベルト層7a,7aは層間で補強コードが互いに交差するようにバイアス積層されている。このようなベルト構造体7は、好ましくはコードとゴムとの複合体からなる環状のコア材の周りに単一のコード又はゴム被覆コードを螺旋状に巻き付けることで得られる。
【0015】
このようにベルト構造体7がバイアス構造を有する1層又は2層の芯体ベルト層7aを備えているので、タイヤ加硫時に未加硫タイヤにリフトが掛かった際に、芯体ベルト層7aは補強コードを過度に伸長させることなく変形することが可能である。つまり、加硫時のリフト率を大きくしても、タイヤの耐久性を悪化させることはない。しかも、芯体ベルト層7aの補強コードには、一般的な破断伸びを有するコード、例えば、未使用時の破断伸びが2.0〜4.0%であるコードを選択することで、経時での外径成長を抑制することができる。
【0016】
ここで、芯体ベルト層7aのコード角度αが10度未満であるとタイヤ加硫時のリフトにより芯体ベルト層7aが補強コードが過度に伸長してタイヤの耐久性が低下し、逆に60度を超えるとベルト層としてのタガ効果が不十分になる。
【0017】
芯体ベルト層7a及び被覆ベルト層7bを構成する補強コードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、アラミド繊維のような有機繊維コードを使用することも可能である。
【0018】
また、上記空気入りラジアルタイヤは、ベルト構造体7が幅方向両端部に切断端を実質的に持たないので、高速耐久性や耐ベルトセパレーション性も優れている。
【0019】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、芯体ベルト層7aの幅Wcと被覆ベルト層7bの幅Wlとの比(Wc/Wl)は、0.5〜0.95、より好ましくは0.6〜0.9とすることが望ましい。比(Wc/Wl)を上記範囲にすることにより、接地形状を適正に保ち、偏摩耗や外径成長を抑制することができる。ここで、比(Wc/Wl)が上記範囲から外れて小さ過ぎると、ベルト層としてのタガ効果が不十分になるため、経時での外径成長を生じ易くなる。一方、比(Wc/Wl)が上記範囲から外れて大き過ぎると、ベルト構造体の幅方向端部における周剛性が過剰になるため、ショルダー部で急激に接地長が短くなり、偏摩耗を生じ易い接地形状となる。
【0020】
【実施例】
タイヤサイズを285/60R22.5で共通にし、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤを製造するに際して、芯体ベルト層の層数、タイヤ周方向に対する芯体ベルト層のコード角度、タイヤ加硫時のリフト率、芯体ベルト層に用いる補強コード(以下、芯体コードという)の新品時の破断伸びを種々異ならせて実施例1〜2及び比較例1〜2のタイヤをそれぞれ製作した。
【0021】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、芯体コードの加硫タイヤ中の破断伸び及び外径成長について評価し、その結果を表1に示した。
【0022】
芯体コードの加硫タイヤ中の破断伸び:
試験タイヤから芯体コードを取り出し、その破断伸びを測定した。加硫タイヤにおける芯体コードの破断伸びが1.0%程度であると耐久性が不十分であると推定される。
【0023】
外径成長:
試験タイヤに正規内圧を充填し、ドラム試験機にて正規荷重の70%を負荷した状態で20000km走行させ、走行後における外周長の増加量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど外径成長が少ないことを意味する。
【0024】
【表1】
Figure 2004001610
この表1から判るように、実施例1〜2のタイヤは外径成長が殆ど見られず、しかも芯体コードの加硫タイヤ中の破断伸びが十分に大きく耐久性が優れたものであった。一方、比較例1のタイヤは芯体コードの加硫タイヤ中の破断伸びが小さく耐久性が不十分であった。また、比較例2は走行後の外径成長が過度に大きくなっていた。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置したから、上記ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を改善すると共に、そのベルト構造体に起因する製造上の制約を回避し、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図2】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図4】図3の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト構造体
7a 芯体ベルト層
7b 被覆ベルト層
8 補強層
9 ベルト保護層

Claims (2)

  1. トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤ。
  2. トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる2層の環状の芯体ベルト層と、これら芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とを含み、かつ前記芯体ベルト層を層間で補強コードが互いに交差するようにバイアス積層してなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤ。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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