JP2004009771A - 空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止し、しかもベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することを可能にした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7を配置する。ベルト構造体7を含む台タイヤ部分Yを予め加硫した後、台タイヤ部分Yに未加硫のキャップトレッドXを貼り合わせ、トレッド部1に溝10を成形しつつキャップトレッドXと台タイヤ部分Yの加硫を完了させる。
【選択図】 図1
【解決手段】トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7を配置する。ベルト構造体7を含む台タイヤ部分Yを予め加硫した後、台タイヤ部分Yに未加硫のキャップトレッドXを貼り合わせ、トレッド部1に溝10を成形しつつキャップトレッドXと台タイヤ部分Yの加硫を完了させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体を備えた自動車用空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を向上させると共に、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止するようにした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気入りラジアルタイヤのベルト層は、引き揃えられた複数本のコードをゴム被覆したベルト材をバイアスカットし、複数枚のベルト材を層間で互いにコードが交差するようにカーカス層の外周側に配置することにより構成されている。しかしながら、上記タイヤではベルト層の幅方向両端部に切断端が存在するため、その切断端への応力集中によりエッジセパレーションを生じ易く、これが耐久性を低下させる要因になっている。
【0003】
これに対して、特開昭53−22205号公報には、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材の周りに、引き揃えられた複数本の補強コードからなるストリップ材を螺旋状に巻き付けてなるベルト構造体が開示されている。このようなベルト構造体は幅方向両端部に切断端を持たないため、タイヤの高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を改善することが可能である。
【0004】
しかしながら、上記ベルト構造体は、加硫時に未加硫タイヤにリフトが掛かった際にコード間隔を広げることで形状変化を吸収することができず、その結果として、加硫後のベルト構造体の幅が大きく狭まり、コードとコードとの接触等による故障を生じ易いという欠点がある。なお、加硫時のリフト率(未加硫時の外径寸法に対する加硫後の外径寸法の増加率)を小さく設定すれば、ベルト構造体の変形を防止することが可能である。しかし、トレッド部の溝は一般にキャップトレッドを金型に対して押し付けることで成形されるので、リフト率を下げると溝形成が困難になってしまう。
【0005】
また、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材において、加硫時のリフトによって補強コードが伸長し過ぎて弾性域が十分に残らないと、タイヤの耐久性が悪化することになるので、その補強コードには破断伸びが3.5%以上のスチールコードを用いることが提案されているが、このようなスチールコードは補強効率が悪く、経時での外径成長を生じ易いという欠点がある。そのため、このようなベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤは実用化に至っていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止し、しかもベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することを可能にした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分と、前記キャップトレッドとが互いに異なる加硫履歴を持つことを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法は、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤの製造方法であって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分を予め加硫した後、該台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、前記トレッド部に溝を成形しつつ前記キャップトレッドと前記台タイヤ部分の加硫を完了させることを特徴とするものである。
【0009】
このように芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体を含む台タイヤ部分の加硫工程とキャップトレッドの加硫工程とを分けることにより、台タイヤ部分の加硫工程ではベルト構造体を変形させないようにリフト率を小さく設定することができる。上記台タイヤ部分の加硫工程では、台タイヤ部分を完全な加硫状態にしても良く、或いは半加硫状態にしても良い。また、台タイヤ部分を予め加硫しておけば、キャップトレッドの加硫工程では台タイヤ部分に高い内圧を付与しながらキャップトレッドに対して金型を押し当てることでトレッド部に溝を成形することが可能になる。
【0010】
本発明では、台タイヤ部分の加硫工程でのリフト率を低く設定することにより、ベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することが可能になる。そこで、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層の補強コードには、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを用いることが好ましい。これにより、上記ベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、経時での外径成長を抑制することができる。
【0011】
本発明のベルト構造体は、各種の空気入りラジアルタイヤに適用可能であるが、特に重荷重用空気入りラジアルタイヤに好適である。但し、重荷重用空気入りラジアルタイヤとは、JATMAイヤーブック(2002年度版)の空気圧−負荷能力対応表において、最大負荷能力が1450kg以上に設定されたタイヤである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのタイヤ幅方向両端部がそれぞれビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア5の外周上には硬質ゴムからなるビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7が埋設されている。一方、各ビード部3にはビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように複数の補強層8が埋設されている。ベルト構造体7の外周側には、必要に応じて、ベルト保護層9を設けても良い。10はトレッド部1に形成された溝であり、そのパターンは特に限定されるものではない。
【0014】
上記ベルト構造体7は、図2に示すように、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りにタイヤ周方向に対して15〜60度の角度βで補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとから構成されている。このようなベルト構造体7は、好ましくはコードとゴムとの複合体からなる環状のコア材の周りに単一のコード又はゴム被覆コードを螺旋状に巻き付けることで得られる。
【0015】
芯体ベルト層7a及び被覆ベルト層7bを構成する補強コードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、アラミド繊維のような有機繊維コードを使用することも可能である。特に、芯体ベルト層7aの補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコード(撚りコード)を用いることが好ましい。
【0016】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト構造体7を含みトレッド部1からキャップトレッドXを除いた台タイヤ部分Yと、キャップトレッドXとは互いに異なる加硫履歴を持っている。即ち、上記空気入りラジアルタイヤを製造する場合、図3に示すように、ベルト構造体7を含みトレッド部1からキャップトレッドXを除いた台タイヤ部分Yを予め加硫状態(半加硫状態を含む)にした後、台タイヤ部分Yに未加硫のキャップトレッドXを例えばトレッドリングの形態で貼り合わせ、次いで、トレッド部1に溝10を成形しつつキャップトレッドXと台タイヤ部分Yの加硫を完了させる。ここで、台タイヤ部分Yを予め完全な加硫状態にした場合は、キャップトレッドXだけを加硫すれば良い。一方、台タイヤ部分Yを予め半加硫状態にした場合は、キャップトレッドXを含むタイヤ全体を加硫することが必要である。
【0017】
このように芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体7を含む台タイヤ部分Yの加硫工程とキャップトレッドXの加硫工程とを分けているので、台タイヤ部分Yの加硫工程ではベルト構造体7を変形させないようにリフト率を小さく設定することができる。例えば、台タイヤ部分Yのリフト率(未加硫時の外径寸法に対する加硫後の外径寸法の増加率)は、2.0%以下に設定すると良い。
【0018】
一方、キャップトレッドXの加硫工程では台タイヤ部分Yに高い内圧を付与しながらキャップトレッドXに対して金型をタイヤ径方向外側から押し当てることでトレッド部1に溝10を成形すれば良い。これら溝10の成形にはリトレッド技術を応用することが可能である。キャップトレッドXの加硫工程において、台タイヤ部分Yの内圧は、1500〜2500kPaに設定すると良い。
【0019】
また、台タイヤ部分Yの加硫工程でのリフト率を低く設定することにより、芯体ベルト層7aの補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを問題なく使用することができる。従って、上記ベルト構造体7を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、芯体ベルト層7aの補強コードによる補強効率を高め、経時での外径成長を抑制することができる。
【0020】
【実施例】
タイヤサイズを285/60R22.5で共通にし、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤを製造するに際して、加硫工程、加硫時のリフト率、芯体ベルト層に用いる補強コード(以下、芯体コードという)の新品時の破断伸びを種々異ならせた実施例1及び比較例1のタイヤをそれぞれ製作した。
【0021】
実施例1の製造方法では、ベルト構造体を含みトレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分を所定のリフト率で予め加硫した後、その台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、トレッド部に溝を成形しつつキャップトレッドと台タイヤ部分の加硫を完了させるような2段階の加硫工程とした。一方、比較例1の製造方法では、ベルト構造体を含むグリーンタイヤを成形した後、トレッド部に溝を成形しつつグリーンタイヤを所定のリフト率で加硫するような1段階の加硫工程とした。
【0022】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、外径成長について評価し、その結果を表1に示した。
【0023】
外径成長:
試験タイヤに正規内圧を充填し、ドラム試験機にて正規荷重の70%を負荷した状態で20000km走行させ、走行後における外周長の増加量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど外径成長が少ないことを意味する。
【0024】
【表1】
【0025】
この表1から判るように、実施例1のタイヤは外径成長が殆ど見られず、寸法安定性に優れたものであった。勿論、実施例1のタイヤは2段階の加硫工程を経ることでリフト率を小さく設定しているので、加硫時にベルト構造体が変形することもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤを製造するにあたって、ベルト構造体を含む台タイヤ部分を予め加硫した後、該台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、トレッド部に溝を成形しつつキャップトレッドと台タイヤ部分の加硫を完了させるから、上記ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止し、しかもベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することを可能にし、タイヤの外径成長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図2】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【図3】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト構造体
7a 芯体ベルト層
7b 被覆ベルト層
8 補強層
9 ベルト保護層
10 溝
X キャップトレッド
Y 台タイヤ部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体を備えた自動車用空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を向上させると共に、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止するようにした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気入りラジアルタイヤのベルト層は、引き揃えられた複数本のコードをゴム被覆したベルト材をバイアスカットし、複数枚のベルト材を層間で互いにコードが交差するようにカーカス層の外周側に配置することにより構成されている。しかしながら、上記タイヤではベルト層の幅方向両端部に切断端が存在するため、その切断端への応力集中によりエッジセパレーションを生じ易く、これが耐久性を低下させる要因になっている。
【0003】
これに対して、特開昭53−22205号公報には、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材の周りに、引き揃えられた複数本の補強コードからなるストリップ材を螺旋状に巻き付けてなるベルト構造体が開示されている。このようなベルト構造体は幅方向両端部に切断端を持たないため、タイヤの高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を改善することが可能である。
【0004】
しかしながら、上記ベルト構造体は、加硫時に未加硫タイヤにリフトが掛かった際にコード間隔を広げることで形状変化を吸収することができず、その結果として、加硫後のベルト構造体の幅が大きく狭まり、コードとコードとの接触等による故障を生じ易いという欠点がある。なお、加硫時のリフト率(未加硫時の外径寸法に対する加硫後の外径寸法の増加率)を小さく設定すれば、ベルト構造体の変形を防止することが可能である。しかし、トレッド部の溝は一般にキャップトレッドを金型に対して押し付けることで成形されるので、リフト率を下げると溝形成が困難になってしまう。
【0005】
また、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材において、加硫時のリフトによって補強コードが伸長し過ぎて弾性域が十分に残らないと、タイヤの耐久性が悪化することになるので、その補強コードには破断伸びが3.5%以上のスチールコードを用いることが提案されているが、このようなスチールコードは補強効率が悪く、経時での外径成長を生じ易いという欠点がある。そのため、このようなベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤは実用化に至っていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止し、しかもベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することを可能にした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分と、前記キャップトレッドとが互いに異なる加硫履歴を持つことを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法は、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤの製造方法であって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分を予め加硫した後、該台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、前記トレッド部に溝を成形しつつ前記キャップトレッドと前記台タイヤ部分の加硫を完了させることを特徴とするものである。
【0009】
このように芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体を含む台タイヤ部分の加硫工程とキャップトレッドの加硫工程とを分けることにより、台タイヤ部分の加硫工程ではベルト構造体を変形させないようにリフト率を小さく設定することができる。上記台タイヤ部分の加硫工程では、台タイヤ部分を完全な加硫状態にしても良く、或いは半加硫状態にしても良い。また、台タイヤ部分を予め加硫しておけば、キャップトレッドの加硫工程では台タイヤ部分に高い内圧を付与しながらキャップトレッドに対して金型を押し当てることでトレッド部に溝を成形することが可能になる。
【0010】
本発明では、台タイヤ部分の加硫工程でのリフト率を低く設定することにより、ベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することが可能になる。そこで、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層の補強コードには、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを用いることが好ましい。これにより、上記ベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、経時での外径成長を抑制することができる。
【0011】
本発明のベルト構造体は、各種の空気入りラジアルタイヤに適用可能であるが、特に重荷重用空気入りラジアルタイヤに好適である。但し、重荷重用空気入りラジアルタイヤとは、JATMAイヤーブック(2002年度版)の空気圧−負荷能力対応表において、最大負荷能力が1450kg以上に設定されたタイヤである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのタイヤ幅方向両端部がそれぞれビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア5の外周上には硬質ゴムからなるビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7が埋設されている。一方、各ビード部3にはビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように複数の補強層8が埋設されている。ベルト構造体7の外周側には、必要に応じて、ベルト保護層9を設けても良い。10はトレッド部1に形成された溝であり、そのパターンは特に限定されるものではない。
【0014】
上記ベルト構造体7は、図2に示すように、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りにタイヤ周方向に対して15〜60度の角度βで補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとから構成されている。このようなベルト構造体7は、好ましくはコードとゴムとの複合体からなる環状のコア材の周りに単一のコード又はゴム被覆コードを螺旋状に巻き付けることで得られる。
【0015】
芯体ベルト層7a及び被覆ベルト層7bを構成する補強コードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、アラミド繊維のような有機繊維コードを使用することも可能である。特に、芯体ベルト層7aの補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコード(撚りコード)を用いることが好ましい。
【0016】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト構造体7を含みトレッド部1からキャップトレッドXを除いた台タイヤ部分Yと、キャップトレッドXとは互いに異なる加硫履歴を持っている。即ち、上記空気入りラジアルタイヤを製造する場合、図3に示すように、ベルト構造体7を含みトレッド部1からキャップトレッドXを除いた台タイヤ部分Yを予め加硫状態(半加硫状態を含む)にした後、台タイヤ部分Yに未加硫のキャップトレッドXを例えばトレッドリングの形態で貼り合わせ、次いで、トレッド部1に溝10を成形しつつキャップトレッドXと台タイヤ部分Yの加硫を完了させる。ここで、台タイヤ部分Yを予め完全な加硫状態にした場合は、キャップトレッドXだけを加硫すれば良い。一方、台タイヤ部分Yを予め半加硫状態にした場合は、キャップトレッドXを含むタイヤ全体を加硫することが必要である。
【0017】
このように芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体7を含む台タイヤ部分Yの加硫工程とキャップトレッドXの加硫工程とを分けているので、台タイヤ部分Yの加硫工程ではベルト構造体7を変形させないようにリフト率を小さく設定することができる。例えば、台タイヤ部分Yのリフト率(未加硫時の外径寸法に対する加硫後の外径寸法の増加率)は、2.0%以下に設定すると良い。
【0018】
一方、キャップトレッドXの加硫工程では台タイヤ部分Yに高い内圧を付与しながらキャップトレッドXに対して金型をタイヤ径方向外側から押し当てることでトレッド部1に溝10を成形すれば良い。これら溝10の成形にはリトレッド技術を応用することが可能である。キャップトレッドXの加硫工程において、台タイヤ部分Yの内圧は、1500〜2500kPaに設定すると良い。
【0019】
また、台タイヤ部分Yの加硫工程でのリフト率を低く設定することにより、芯体ベルト層7aの補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを問題なく使用することができる。従って、上記ベルト構造体7を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、芯体ベルト層7aの補強コードによる補強効率を高め、経時での外径成長を抑制することができる。
【0020】
【実施例】
タイヤサイズを285/60R22.5で共通にし、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤを製造するに際して、加硫工程、加硫時のリフト率、芯体ベルト層に用いる補強コード(以下、芯体コードという)の新品時の破断伸びを種々異ならせた実施例1及び比較例1のタイヤをそれぞれ製作した。
【0021】
実施例1の製造方法では、ベルト構造体を含みトレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分を所定のリフト率で予め加硫した後、その台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、トレッド部に溝を成形しつつキャップトレッドと台タイヤ部分の加硫を完了させるような2段階の加硫工程とした。一方、比較例1の製造方法では、ベルト構造体を含むグリーンタイヤを成形した後、トレッド部に溝を成形しつつグリーンタイヤを所定のリフト率で加硫するような1段階の加硫工程とした。
【0022】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、外径成長について評価し、その結果を表1に示した。
【0023】
外径成長:
試験タイヤに正規内圧を充填し、ドラム試験機にて正規荷重の70%を負荷した状態で20000km走行させ、走行後における外周長の増加量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど外径成長が少ないことを意味する。
【0024】
【表1】
【0025】
この表1から判るように、実施例1のタイヤは外径成長が殆ど見られず、寸法安定性に優れたものであった。勿論、実施例1のタイヤは2段階の加硫工程を経ることでリフト率を小さく設定しているので、加硫時にベルト構造体が変形することもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤを製造するにあたって、ベルト構造体を含む台タイヤ部分を予め加硫した後、該台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、トレッド部に溝を成形しつつキャップトレッドと台タイヤ部分の加硫を完了させるから、上記ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体の加硫時の変形を防止し、しかもベルト構造体に破断伸びが小さい補強コードを使用することを可能にし、タイヤの外径成長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図2】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【図3】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト構造体
7a 芯体ベルト層
7b 被覆ベルト層
8 補強層
9 ベルト保護層
10 溝
X キャップトレッド
Y 台タイヤ部分
Claims (4)
- トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分と、前記キャップトレッドとが互いに異なる加硫履歴を持つ空気入りラジアルタイヤ。
- 前記芯体ベルト層の補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを用いた請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
- トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤの製造方法であって、前記ベルト構造体を含み前記トレッド部からキャップトレッドを除いた台タイヤ部分を予め加硫した後、該台タイヤ部分に未加硫のキャップトレッドを貼り合わせ、次いで、前記トレッド部に溝を成形しつつ前記キャップトレッドと前記台タイヤ部分の加硫を完了させる空気入りラジアルタイヤの製造方法。
- 前記芯体ベルト層の補強コードに、破断伸びが3.5%未満のスチールコードを用いた請求項3に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。
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