JP2004001611A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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飯田 英一
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Abstract

【課題】ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体に起因するカーカス層への剪断歪みの集中を緩和し、耐久性の向上効果を最大限に発揮することを可能にした空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7を配置する。ベルト構造体7とカーカス層4との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度θで補強コードを配列してなるバイアス層10を配置し、該バイアス層10の幅Wbをベルト構造体7の幅Wlの80〜120%にする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体を備えた自動車用空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を向上させると共に、そのベルト構造体に起因するカーカス層への剪断歪みの集中を緩和し、耐久性の向上効果を最大限に発揮するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気入りラジアルタイヤのベルト層は、引き揃えられた複数本のコードをゴム被覆したベルト材をバイアスカットし、複数枚のベルト材を層間で互いにコードが交差するようにカーカス層の外周側に配置することにより構成されている。しかしながら、上記タイヤではベルト層の幅方向両端部に切断端が存在するため、その切断端への応力集中によりエッジセパレーションを生じ易く、これが耐久性を低下させる要因になっている。
【0003】
これに対して、特開昭53−22205号公報には、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを配列してなる環状のコア材の周りに、引き揃えられた複数本の補強コードからなるストリップ材を螺旋状に巻き付けてなるベルト構造体が開示されている。このようなベルト構造体は幅方向両端部に切断端を持たないため、タイヤの高速耐久性や耐ベルトセパレーション性を改善することが可能である。
【0004】
しかしながら、上記ベルト構造体はタイヤ加硫時に径方向に拡張されるとき、その形状変化が螺旋状に巻かれた補強コードの角度変化に転換され、しかも螺旋状に巻かれた補強コードとカーカス層の補強コードとが比較的大きな角度で交差しているので、カーカス層に大きな剪断歪みを生じるという欠点がある。そのため、切断端を持たないベルト構造体を採用しても、耐久性向上のメリットを十分に活かすことができず、ベルト構造体とカーカス層との間にセパレーションを生じ易いのである。その結果、このようなベルト構造体を備えた空気入りラジアルタイヤは実用化に至っていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体に起因するカーカス層への剪断歪みの集中を緩和し、耐久性の向上効果を最大限に発揮することを可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体と前記カーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなるバイアス層を配置し、該バイアス層の幅を前記ベルト構造体の幅の80〜120%にしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体と前記カーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる左右一対のバイアス層を配置し、各バイアス層の外端と前記ベルト構造体の外端とのタイヤ幅方向の距離を前記ベルト構造体の幅の10%以下にすると共に、各バイアス層の内端と前記ベルト構造体の中央とのタイヤ幅方向の距離を前記ベルト構造体の幅の20%以下にしたことを特徴とするものである。
【0008】
このように芯体ベルト層と被覆ベルト層とからなるベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体とカーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなるバイアス層を挿入することにより、カーカス層への剪断歪みの集中を緩和することができる。これにより、ベルト構造体による耐久性の向上効果を最大限に発揮することが可能になる。
【0009】
本発明のベルト構造体は、各種の空気入りラジアルタイヤに適用可能であるが、特に重荷重用空気入りラジアルタイヤに好適である。但し、重荷重用空気入りラジアルタイヤとは、JATMAイヤーブック(2002年度版)の空気圧−負荷能力対応表において、最大負荷能力が1450kg以上に設定されたタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのタイヤ幅方向両端部がそれぞれビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。ビードコア5の外周上には硬質ゴムからなるビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7が埋設されている。一方、各ビード部3にはビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように複数の補強層8が埋設されている。ベルト構造体7の外周側には、必要に応じて、ベルト保護層9を設けても良い。
【0012】
上記ベルト構造体7は、図2に示すように、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層7aと、該芯体ベルト層7aの周りにタイヤ周方向に対して15〜60度の角度βで補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層7bとから構成されている。このようなベルト構造体7は、好ましくはコードとゴムとの複合体からなる環状のコア材の周りに単一のコード又はゴム被覆コードを螺旋状に巻き付けることで得られる。
【0013】
芯体ベルト層7a及び被覆ベルト層7bを構成する補強コードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、アラミド繊維のような有機繊維コードを使用することも可能である。
【0014】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト構造体7とカーカス層4との間には、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度θで補強コードを配列してなるバイアス層10が挿入されている。特に、バイアス層10のコード角度θはベルト構造体7を構成する被覆ベルト層7bのコード角度βとカーカス層4のコード角度との中間値であることが望ましい。このバイアス層10はベルト構造体7の略全幅にわたって存在しており、バイアス層10の幅Wbはベルト構造体7の幅Wlの80〜120%の範囲に設定されている。
【0015】
このように芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体7とカーカス層4との間に中間的なコード角度θを有するバイアス層10を挿入することにより、カーカス層4への剪断歪みの集中を緩和することができる。これにより、ベルト構造体7とカーカス層4とのセパレーションを防止し、ベルト構造体7による耐久性の向上効果を最大限に発揮することが可能になる。
【0016】
ここで、バイアス層10のコード角度θが上記範囲から外れると剪断歪みの集中を緩和する効果が不十分になる。また、バイアス層10の幅Wbがベルト構造体7の幅Wlの80%未満であると剪断歪みの集中を緩和する効果が不十分になり、逆に120%を超えても単に重量が増加するだけでそれ以上の効果が得られないのである。
【0017】
図3は本発明の他の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示すものである。本実施形態はバイアス層を左右に分散させて配置したものであり、上述の実施形態と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0018】
本実施形態において、図4に示すように、ベルト構造体7とカーカス層4との間には、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度θで補強コードを配列してなる左右一対のバイアス層10X,10Xが挿入されている。特に、バイアス層10Xのコード角度θはベルト構造体7を構成する被覆ベルト層7bのコード角度βとカーカス層4のコード角度との中間値であることが望ましい。各バイアス層10Xの外端とベルト構造体7の外端とのタイヤ幅方向の距離Woは、ベルト構造体7の幅Wlの10%以下に設定されている。但し、各バイアス層10Xの外端はベルト構造体7の外端から突出していても良く、或いはベルト構造体7の外端より内側にあっても良い。また、各バイアス層10Xの内端とベルト構造体7の中央とのタイヤ幅方向の距離Wiは、ベルト構造体7の幅Wlの20%以下に設定されている。
【0019】
このように芯体ベルト層7aと被覆ベルト層7bとからなるベルト構造体7に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、ベルト構造体7とカーカス層4との間に中間的なコード角度θを有する左右一対のバイアス層10X,10Xを挿入することにより、カーカス層4への剪断歪みの集中を緩和することができる。これにより、ベルト構造体7とカーカス層4とのセパレーションを防止し、ベルト構造体7による耐久性の向上効果を最大限に発揮することが可能になる。
【0020】
ここで、バイアス層10Xのコード角度θが上記範囲から外れると剪断歪みの集中を緩和する効果が不十分になる。また、バイアス層10Xが上記寸法規定から外れて小さ過ぎると剪断歪みの集中を緩和する効果が不十分になり、逆に上記寸法規定から外れて更に大きくしても単に重量が増加するだけでそれ以上の効果が得られないのである。
【0021】
バイアス層10,10Xを構成する補強コードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、アラミド繊維のような有機繊維コードを使用することも可能である。
【0022】
【実施例】
タイヤサイズを285/60R22.5で共通にし、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト構造体とカーカス層との間に挿入されるバイアス層の有無、そのバイアス層の構成を種々異ならせた実施例1〜2及び比較例1〜2のタイヤをそれぞれ製作した。
【0023】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0024】
耐久性:
試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のリムに装着し、空気圧875kPa、荷重3150kg、速度50km/hの条件でドラム耐久試験を実施し、タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐久性が優れていることを意味する。
【0025】
【表1】
Figure 2004001611
この表1から判るように、実施例1〜2のタイヤはバイアス層を持たない比較例1のタイヤに比べて耐久性が優れていた。また、比較例2のタイヤでは耐久性がむしろ低下していた。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置し、更にベルト構造体とカーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなるバイアス層を所定の領域にわたって配置したから、上記ベルト構造体に基づいて高速耐久性や耐ベルトセパレーション性の向上を図るに際し、そのベルト構造体に起因するカーカス層への剪断歪みの集中を緩和し、耐久性の向上効果を最大限に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図2】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
【図4】図3の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト構造体を示す切り欠き平面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト構造体
7a 芯体ベルト層
7b 被覆ベルト層
8 補強層
9 ベルト保護層
10 バイアス層

Claims (2)

  1. トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体と前記カーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなるバイアス層を配置し、該バイアス層の幅を前記ベルト構造体の幅の80〜120%にした空気入りラジアルタイヤ。
  2. トレッド部におけるカーカス層の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に0度の角度で補強コードを巻回してなる環状の芯体ベルト層と、該芯体ベルト層の周りに補強コードを螺旋状に巻き付けてなる被覆ベルト層とからなるベルト構造体を配置した空気入りラジアルタイヤであって、前記ベルト構造体と前記カーカス層との間に、タイヤ周方向に対して10〜60度の角度で補強コードを配列してなる左右一対のバイアス層を配置し、各バイアス層の外端と前記ベルト構造体の外端とのタイヤ幅方向の距離を前記ベルト構造体の幅の10%以下にすると共に、各バイアス層の内端と前記ベルト構造体の中央とのタイヤ幅方向の距離を前記ベルト構造体の幅の20%以下にした空気入りラジアルタイヤ。
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