JP2003520037A - 乳汁および乳製品からβ−ラクトグロブリンおよびカゼインを抽出する方法を包含する乳汁およびチーズの改質プロセス及びそれによって生産される新規の産物 - Google Patents

乳汁および乳製品からβ−ラクトグロブリンおよびカゼインを抽出する方法を包含する乳汁およびチーズの改質プロセス及びそれによって生産される新規の産物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乳汁及びチーズの改質プロセス並びにそれにより生産される新規な産物を提供する。 【解決手段】 最初の乳汁のものとは有意に異なる物理的な特性を有している産物を生じるように、乳汁のカゼインミセルを脱凝集させ再形成するための方法。β−ラクトグロブリン(BLG)について高度に富化させられた乳汁の画分、および対応して除去された可溶性の乳清の画分を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、pHを調整することによって乳汁中のカゼインミセルを脱凝集させ
再形成するため、および単一のタンパク質であるβ−ラクトグロブリンを乳汁の
乳清の画分から選択的に沈殿させるための、新規の方法に関する。本発明はさら
に、改質された乳汁、チーズ、および食品、ならびにそれらを作成するための方
法、ならびにカゼイン塩の原料を使用してカゼインの画分を分離するためのプロ
セスに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、特に、物理的な特性が最初の乳汁のものとは有意に異なる産物を生
じるように、乳汁のカゼインミセルを脱凝集させ再形成するための方法に関する
。さらに、単一のタンパク質であるβ−ラクトグロブリン(BLG)は、このタ
ンパク質について高度に富化されている画分、および対応して除去される可溶性
の乳清の画分を生じるように、乳汁の乳清の画分中に存在している可溶性のタン
パク質の混合物から選択的に沈殿させられる。この方法は、乳汁のpH、ならび
に酸およびチーズの乳清のpHの両方の変化に基づく。BLGは選択的に沈殿さ
せられ、そして濾過または遠心分離によって容易に回収され得るか、あるいはこ
れは、カゼイン塩およびチーズの製造においてカゼインを用いて共沈させられ得
る。
【0003】 乳汁(特に、ウシの乳汁)は、ヒトの栄養の主要な供給源である。世界中の乳
汁の生産は、1998年には5億5700万トンであり、前年の1.4%の増加
と概算された。乳汁自体は、脂質、タンパク質、ミネラル、および糖(ラクトー
ス)の比較的複雑な混合物である。タンパク質の含有量は、35g/Lの領域で
あり、乳汁中のタンパク質は、乳清タンパク質およびカゼインの2つの主要なク
ラスに便宜的に分けられ得る。タンパク質含有量の約80%は、カルシウムおよ
びリン酸塩のほとんどとともに、カゼインミセルと呼ばれるミクロン未満の大き
さのコロイド粒子中にパッケージされる。カゼインミセルによる光の散乱は、乳
汁が白く見える理由である。カゼインミセルの完全性は、乳汁の安定性のために
重要であり、そして乳汁から産生される産物の特性は、ミセルの特性によって一
部決定される。例えば、チーズの保形性が、それらが作成される乳汁中のミセル
の平均の直径と直接相関し得ることが公知である。世界中でのチーズの生産は、
1998年には1500万トンの領域であると概算された。だんだんと、乳汁の
タンパク質は、液体の乳汁としてではなく、より大きな程度でまたはより少ない
程度に処理されている製品中の成分として消費されている。処理の程度は、ミセ
ルが酸性化によって凝集するように誘導されるヨーグルトおよびカッテージチー
ズの製品から、ソースおよびスプレッドへの乳汁タンパク質の画分の取り込みま
での範囲にわたる。
【0004】 乳汁の乳清の画分は、カゼインミセルが、チーズの製造の場合においてはタン
パク質溶解性の酵素の添加によって、またはカゼイン塩製造の場合においては酸
性化によってのいずれかで沈殿させられた後に残っている、液体の部分である。
世界中での乳清の生産は、1億1800万トンと概算され、その66%が欧州で
、そして25%が北米で製造されている。92%はチーズの産生によって、そし
て8%はカゼイン塩の産生によって生成された。乳清の画分は、多数のタンパク
質を含有し、これらは、栄養学的に高品質であるが、ラクトースおよび無機塩と
互いに稀釈された形態で存在する。乳清中のタンパク質の含有量が約8g/Lで
あり、その50%がBLGであるので、これは、タンパク質の940,000ト
ン、およびBLGの470,000トンに等しい。
【0005】 溶液のうすい性質に起因して、タンパク質の回収は難しく、そして比較的高価
である。以前は、乳清は、乳汁の処理による廃棄副生成物としてとして処理され
、そしてほとんどが、液体の形態で動物の飼料として使用されていたか、または
水脈中に直接処分されていた。しかし、タンパク質を伴う、糖であるラクトース
のその高い含有量によって生じる高い生物学的な酸素要求(BOD)に起因して
、この後者に手順は水脈の富栄養化を導き、そして現在は禁止されている。通常
の汚水処理システムを通じて任意の材料を処理するコストは、現在は製造業者が
負担しなければならない。液体の乳清のほとんどは、現在は、タンパク質および
ラクトースの回収が可能であるように処理されているが、有意な量はなお、動物
の飼料として使用されている。現在の回収プロセスは一般的には、高エネルギー
の技術であり、および/または高価であり特殊化された機器を必要とする。一般
に、最終産物は、最初の乳清中に存在しているタンパク質の全ての混合物である
。乳清からBLGを回収する単純な低エネルギーの方法が有益である。なぜなら
、この方法によって比較的少ないコストで有用な副生成物を生じるからである。
本発明の目的は、乳清からのタンパク質の回収のための方法を提供することであ
り、そして本発明の重要な関連する目的は、安くそして少なくエネルギーである
、そのようなBLGの調製方法を提供することである。
【0006】 本発明は、分画された乳清タンパク質を生じる。これはまた、分画されていな
い乳清の特性とは異なる特性を有し得、そして従って、食品および医薬品業界の
ような多数の分野での製品に興味をそそり得る。食品の処理の業界においては、
乳清のタンパク質は、乳濁物および泡を安定化させるそれらの能力について、脂
肪のリプレーサーとして水に結合するように、そしてゲル化剤として使用されて
いる。さらにBLGは、疎水性のリガンドに結合し得、そしてそれらはフレーバ
ー分子に結合するようにこれを使用することにおいて食品業界において、そして
香水の業界において、そして香水および疎水性の薬物に結合するように香水およ
び医薬品の業界において、いくつかの目的が存在する。
【0007】チーズを製造するための先行技術 乳汁のpHが酵素の作用の結果として製造の間に低下する、チーズおよびヨー
グルトの製造における目的の結果として、乳汁の構造および機能に対する酸性化
の影響についての多くの詳細が公知である。対照的に、乳汁の特性についてのア
ルカリ処理の影響についてはほとんど知られていない。
【0008】 基本的なチーズの製造は、酸性化によって、またはより一般的には、ミセルの
外表面を安定化させるカゼインの成分を水和するレンネットのような、タンパク
質溶解性の酵素の添加によるかのいずれかで、カゼインミセルの凝集を誘導する
ことを含む。消費の前に熟成期間があるチーズにおいては、乳汁中に天然に存在
しているかまたは故意に添加されたかのいずれかである微生物から放出された他
の酵素が、続いて熟成期間の間に脂質、炭水化物、およびタンパク質のさらなる
加水分解を行う。伝統的な殺菌してない生牛乳がこのプロセスにおいて使用され
るが、衛生的な考慮に起因して、ほとんどの乳汁は殺菌される。チーズへのBL
Gの画分の取り込みは、タンパク質の含有量を約14%増大させる可能性があり
、そしてまた、最終的な産物の特性にも影響を与え得る。
【0009】 従来のチーズの製造には、加熱されていない乳汁、または可能性のある有害な
生物を死滅させるための穏やかな加熱に供されている殺菌された乳汁のいずれか
を使用する。ミセルタンパク質の凝集は、キモシンのようなタンパク質溶解性の
酵素の添加、またはpH4.6への酸性化によって達成される。形成された凝集
物は、凝乳と呼ばれ、そして液体の部分は乳清と呼ばれる。乳汁中に存在してい
る全タンパク質の約30%が乳清中に存在し、そしてこれらはチーズを作成する
プロセスによって失われる。加熱によって凝乳中にこのタンパク質のいくらかを
取り込むための試みが行われている。しかしこれは、比較的長い時間にわたって
75℃を超える温度を必要とし、そして乳汁の処理、ならびにチーズのフレーバ
ーおよびきめの特徴の両方に対して決定的な影響を有する。乳清のタンパク質を
チーズの中に取り込むための別の方法は、分離された乳清から産生された不溶性
の乳清のタンパク質の粉末を、凝乳中に添加して戻すことである。
【0010】 カッテージチーズの製造においては、乳汁は酸を産生する細菌の作用によって
、またはpHが4.6から5.0に達するような酸の添加によって酸性化され、
ミセルが沈殿し、そして凝集する。酵素によって誘導される凝集におけるように
、正常な製造条件下では、乳清のタンパク質のほとんどの量はチーズ中には取り
込まれない。
【0011】乳清のタンパク質を回収しそしてそれらを乳製品中に取り込むための先行技術の 方法 乳清中でのタンパク質の非常にうすい性質に起因して、回収は困難でありそし
て現時点では比較的高価である。
【0012】 乳清は、明澄化させた乳清を40から62%の固体に蒸発させること、続いて
スプレー乾燥させることによって、チーズを作成することによって得られた甘い
乳清から主に製造され、そしてしばしば、最終的な乾燥の段階は振動する液体の
ベッドの中である。乳清の粉末の高いミネラルの含有量は、それをいくつかの適
用(例えば、動物の飼料および乳児用の処方物)のためには不適切にする。ミネ
ラルの含有量を減少させるためのプロセスが存在する。これらは、イオン交換ク
ロマトグラフィーを含み、ここでは殺菌された乳清は、陰イオンおよび陽イオン
交換樹脂を充填されたカラムを連続して通過させられる。ミネラルの約90から
98%が除去され得る。電気透析は、その後に水が再循環させられている別の陽
イオンおよび陰イオン選択膜から構成される電気透析用のセルを通じて、20か
ら30%の固体に濃縮させられた乳清を通過させることを含む。電流が適用され
、そしてイオンが電極に移動する。代表的には、90%の脱ミネラル化(が達成
され得る。膜分離技術であるナノ濾過は、一価のイオンがタンパク質およびラク
トースを保持している膜を通過することを可能にする。
【0013】 乳清のタンパク質はまた、熱による沈殿によってもまた回収され得る。代表的
には、これは、乳清を加熱することを含む。乳清は、90から95℃で、そして
pH4.4から4.8で30から50分間、脱ミネラル化されそして濃縮される
。タンパク質は変性し、そして凝集し、そして静的なまたは加速されたかのいず
れかの沈殿法によって回収され、そして次いで沈殿させられたタンパク質が洗浄
され、再度分離され、そして乾燥させられる。
【0014】 ラクトースおよび塩はまた、限外濾過法によって、明澄化させられた乳清から
取り除かれ得る。ここでは、膜は、乾燥後に30から80%のタンパク質を含有
している乳清のタンパク質の濃縮物を産生するタンパク質を保持するために使用
される。精製として、非常に特異的な分子量カットオフ値を有している限外濾過
膜が、比較的純粋なBLGを産生するタンパク質の分画を達成するために使用さ
れ得る。しかし、これらのシステムはなお、比較的小さい大きさであり、そして
プロセスが財政的に実行可能であるかどうかがなお検証される。
【0015】 乳清のタンパク質はまた、錯化剤の添加によっても回収され得る。一例として
、長鎖のポリリン酸エステルが、低いpH(例えば、2.5)で乳清に対して添
加される。そのように形成された沈殿は遠心分離によって回収され、洗浄され、
そして次いでリン酸エステルを除去するためのpHの変更およびカルシウムの添
加に供される。乳清のタンパク質の90%までが回収され得る。
【0016】 乳清のタンパク質はまた、イオン交換クロマトグラフィーによっても回収され
得る。タンパク質は、カラム中にパッケージされるか、または攪拌されたタンク
中でのいずれかで、適切なイオン交換樹脂に対して吸着させられる。脱タンパク
質化させられた乳清が取り除かれた後、タンパク質はpHを変化させることによ
って脱着させられ、そして溶出液が限外濾過され、そしてスプレー乾燥させられ
る。
【0017】 カゼインおよび乳清のタンパク質を含有している変性させられ、凝固させられ
た乳汁タンパク質である共沈物は、代表的には、乳汁に対して塩化カルシウムを
添加すること、そしてプレート熱交換器中で80〜98℃で間接的に加熱するこ
と、または凝固が生じるまでの蒸気の噴射によって直接加熱することによって、
製造される。そして次いで、生成物が乾燥させられる。世界中でのカゼイン塩製
造は、約250,000トンと概算される。乳汁のカゼインの含有量は約30g
/Lであり、そしてBLGの含有量は4g/Lであるので、BLGの全てがカゼ
インとともに共沈させられる場合には、収量は14%増大する。
【0018】
【発明の解決しようとする課題】 従って、本発明の目的として以下が挙げられる: ・乳清からBLGを抽出するためのより経済的な方法を考案すること、BLG
だけではなく低−BLGの乳清を得ること、そしてそうでない場合には、廃棄物
を収入源に転換すること。 ・新規のカゼインの分離の方法。 ・それらの特性を変化させるために、カゼインミセルを改質する方法。 ・きめ、味などが変化するようにする、チーズについての新規の成分。 ・新規の食品を調製すること。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本明細書中においては、カゼインミセル、β−ラクトグロブリン、および乳汁
の他の成分についての言及は、状況が別に必要としない限りは、これらの成分の
関連する種内および種間変異体の全てを包含すると解釈されるべきである。例え
ば、β−ラクトグロブリンは、種々の哺乳動物中でわずかに異なる一次構造を有
する:本発明が全てのこれらの変異体に対して適用されることが、当業者に明ら
かである。
【0020】 本発明の第1の局面に従うと、β−ラクトグロブリンが変性するpHに達する
まで乳清のpHを増大させる工程、および次いでβ−ラクトグロブリンが沈殿す
るpHに達するまで得られた混合物のpHを低下させる工程を包含している、乳
清からβ−ラクトグロブリンを単離する方法が提供される。
【0021】 好ましくは、乳清のpHは、アルカリ溶液の添加によって増大させられ、そし
て酸性の溶液の添加によって低下させられる。
【0022】 より好ましくは、乳清のpHが増大させられる工程においては、pHは、10
から12の間にまで増大させられる。
【0023】 また好ましくは、一旦pHが増大させられると、乳清は一定の時間の間、静置
させられる。
【0024】 一定の時間は、代表的には、30から120分である。
【0025】 また好ましくは、得られた混合物のpHが低下させられる工程においては、p
Hは、pH5まで低下させられる。
【0026】 本発明の第2の局面に従うと、第1の局面の方法によって得ることが可能であ
るβ−ラクトグロブリンが提供される。
【0027】 変性させられたβ−ラクトグロブリンは、第1の局面の方法によって得ること
ができる。
【0028】 本発明の第3の局面に従うと、本発明の第1の局面の方法に従って乳清からβ
−ラクトグロブリンを抽出することによって得ることができる、低いβ−ラクト
グロブリン含有量の乳清が、提供される。
【0029】 低いβ−ラクトグロブリン含有量の乳清は、本発明の第1の局面の方法に従っ
て乳清からβ−ラクトグロブリンを抽出することによって得ることができる。
【0030】 本発明の第4の局面に従うと、本発明の第1の局面に従って調製された、その
中にβ−ラクトグロブリンを有している食料品が提供される。
【0031】 これらの食料品は、本発明の第1の局面に従って調製されたβ−ラクトグロブ
リンから主に構成され得、そして次いで凍結乾燥させられ得る。
【0032】 本発明の第5の局面に従うと、カゼインミセルを有している乳汁を改質する方
法が提供される。この方法は、その中のカゼインミセルが破壊されるまで乳汁の
pHを上昇させる工程、および続いてミセルが再形成される値にまでpHを低下
させる工程を包含している。
【0033】 好ましくは、pHは、10から12の間にまで上昇させられる。
【0034】 より好ましくは、pHは乳汁の最初のpHに戻される。
【0035】 ウシの乳汁が使用される場合には、pHは、pH6.7に戻され得る。
【0036】 pHは、ラクトースを醗酵させる微生物によってチーズ中に取り込まれるβ−
ラクトグロブリンの量を増大させる値に戻され得る。
【0037】 これらの状況においては、pHは、代表的には約4.6に低下させられる。
【0038】 本発明の第6の局面に従うと、以下の工程を包含している、乳汁に由来するカ
ゼインミセルを改質する方法が提供される:ミセルが破壊されるまでpHを上昇
させるために、乳汁に対してアルカリを添加する工程、化学的な構成成分を添加
するかまたは除去する工程、そして次いで続いて、ミセルが再形成される値にま
でpHを戻すために酸を添加する工程。上記の化学的な構成成分は、この手順に
よってミセル中に取り込まれ得る化学薬品のグループから選択される化学薬品で
ある。
【0039】 好ましくは、pHは少なくとも10にまで上昇させられる。
【0040】 より好ましくは、pHは、乳汁の最初のpHに戻される。
【0041】 ウシの乳汁が使用される場合には、pHは、pH6.7に戻され得る。
【0042】 本発明の第7の局面に従うと、第5の局面または大6の局面の方法によって乳
汁のカゼインミセルを脱凝集させそして再形成させることによって得ることがで
きる、改質された乳汁が提供される。
【0043】 改質された乳汁は、第5の局面または第6の局面の方法によって乳汁のカゼイ
ンミセルを脱凝集させそして再形成させることによって得ることができる。
【0044】 本発明の第8の局面に従うと、第5の局面または第6の局面の方法によって改
質された乳汁から、他の公知の方法において乳製品を調製することによって得る
ことができる乳製品が提供される。
【0045】 乳製品は、第5の局面または第6の局面の方法によって改質されている乳汁か
ら、他の公知の方法において乳製品を調製することによって得ることができる。
【0046】 本発明の第9の局面に従うと、乳汁からβ−ラクトグロブリンおよびカゼイン
塩を共沈させる方法が提供される。この方法は、乳汁のpHを増大させる工程、
得られた溶液を静置させておく工程、および次いで得られた溶液のpHを低下さ
せる工程を包含する。
【0047】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、以下の図面を参照して本明細書中で記載される。 本発明は、乳汁中のカゼインミセルを脱凝集させそして再形成させるため、な
らびに単一の乳清のタンパク質であるBLGの変性および沈殿を特異的に引き起
こすための、低いエネルギーの方法に関する。
【0048】 10よりも大きい値にまで乳汁のpHを上昇させることによって、乳汁中のミ
セルの脱凝集を生じるための方法が、本発明において提供される。このプロセス
は、最初の乳汁のpHにまでタンパク質のこの溶液のpHを低下させることによ
って反対にされ得る。再形成されたミセルは、最初のミセルの物理的な特徴とは
異なる物理的な特徴を有する。チーズはなお、これらの再形成されたミセルから
製造され得る。
【0049】 BLGを非常に多く含む固体およびそれが高度に除去されている溶液を生じる
チーズの乳清からBLGを特異的に精製するための方法もまた、提供される。
【0050】 カゼインおよびBLGの共沈物を製造するための低いエネルギーの技術がさら
に提供される。
【0051】 本発明の第1の実施態様においては、高いおよび低いpHの循環が、チーズの
製造において使用される。図1は、カゼインおよびカルシウムの血清濃度をpH
の関数として示す。遠心分離(下記の実施例1においてさらに記載されているよ
うな)によって得られるミセルのペレットの写真もまた、示される。この図は、
アルカリ性のpHがミセルの崩壊を生じ、それによってカゼインを可溶性にし、
そして乳汁が乳白色になることを生じることを示す。なぜなら、これは、乳汁の
白さの大きな原因であるカゼインミセルによって光を散乱させるという理由から
である。これは、乳汁のカゼイン成分を分画することにおいて有用である第1の
工程であり得る。個々のカゼインおよび特異的なカゼインの混合物は、この混合
物から産生され得る可能性がある。これは可逆的なプロセスである。なぜなら、
pHが再びウシの乳汁の天然でのpHである6.7に低下させられる場合には、
ミセルが再形成されるからである。しかし、ミセルの大きさの分布は、図2によ
って証明されているように、最初の乳汁のものとは異なる。
【0052】 乳汁のpHは、10から12の間の値に増大させられ、そして乳汁は数分間か
ら1時間以上の範囲の時間の間、ミセルを脱凝集させそしてBLGを変性させる
ために貯蔵される。次いで、pHは、ウシの乳汁の天然でのpHである6.7に
低下させられ、そして乳汁は室温または4℃のいずれかで一晩静置される。この
時間の間にミセルが再形成され、そして乳汁は再び白色となる。次いで、チーズ
は、通常はスターター微生物およびタンパク質溶解性の酵素の添加によって作成
され得る。このpHの循環は、乳汁のゲル化の性質に影響を与え、そしてまた、
熟成の間にこの様式で処理された乳汁から製造されたチーズにおいて生じる生化
学的な変化にも影響を与える可能性がある。なぜなら、チーズの香りおよびきめ
の特性は、処理されていない乳汁を用いて製造されたチーズとは異なるからであ
る。
【0053】 さらに、カゼインミセルが再形成される場合には、種々のペプチドおよび他の
ミセルの成分が、溶液に対してそれらを添加することによって簡単に再形成され
るミセルに取り込まれ得る。これによって、乳汁およびチーズを改質されたミセ
ルを用いて調製する可能性、異なる味、香り、または物理的な特徴の製品を生じ
ること、あるいはラベルもしくは完全に新規の成分を直接、またはミセル中に取
り込まれる他の化学的な成分をそれらに対して貼りつけることによって取り込む
ことの可能性を導く。
【0054】 40年以上もの間、pH7.5でタンパク質であるBLGが立体構造の変化を
うけることが公知である(JOURNAL OF THE AMERICAM
CHEMICAL SOCIETY,第81巻、1959、4032−4036
頁、Tanford,C.,Bunville,LG.およびNozaki,Y
.、「pH7.5でのβ−ラクトグロブリンの可逆的な形質転換」)。これは、
熱によって誘導される変性によってそれを崩壊させるために、冷変性と呼ばれて
いる。本明細書中で記載されている方法は、 乳汁の乳清の画分からBLGタン
パク質を特異的に沈殿させる手段として、この立体構造の変化および続く変性を
利用する。驚くべきことに、タンパク質のほとんど全てが、BLG分子の様式と
同じ様式で安定化させられる球形の構造を有している乳清中に存在しているにも
かかわらず、BLG分子だけがこの変性を受け、そして続いて乳清のタンパク質
が分画され、そしてBLGがカゼインの凝集物中に取り込まれることを可能にす
る酸性のpHで沈殿するように誘導され得る。
【0055】 本発明のこの態様においては、チーズの作成またはカゼインの製造によって得
られた乳清は、10から38℃の間の温度で、pH10から12の間に、5Mの
水酸化ナトリウムのゆっくりとした添加によって調整される。乳清中のBLG成
分の変性の速度は、pHおよび温度に依存し、より高いpHの値およびより低い
温度でより迅速である。乳清は、30から120分の間これらのpHの値で維持
される。次いでpHは、5Mの塩酸または乳酸のいずれかのゆっくりとした添加
によって、pH5に調整される。次いで、乳清は、攪拌を伴わずに静置させられ
る。長くなって立っている塊であり、そして容器の底に沈殿する重たい沈殿が形
成する。上清の層のほとんどは、次いで、デカントすることによって除去され得
、そして低いレベルに残っている塊となったタンパク質が遠心分離によって回収
される。この材料は、少量のpH5の水中に再懸濁させられ、そして遠心分離さ
れることによって洗浄される。次いで、固体の材料が凍結乾燥させられる。
【0056】 逆相高速によって凍結乾燥させられた固体の分析は、それがほぼ純粋なBLG
であることを示し、純度の割合は90から100%の間で変化する(図3)。固
体の代表的な収量は、3から4g/Lの乳清であり、そして全BLGの70%以
上が抽出され得る。このプロセスによる上清は、BLGが対応して枯渇させられ
ることを示し(図4)、そしてそれ自体は異なる機能的な特性を有し得、そして
出発乳清から使用する。例えば、ヒトの乳汁はBLGを含まず、そして実際にこ
れは、乳児においてアレルギー性の反応を引き起こす可能性が最もあるウシの乳
汁中のタンパク質であることが公知である。低いレベルのBLGを有している乳
清のタンパク質の単離物は、他のタンパク質の割合が対応して増大させられるの
で、乳児用の粉ミルクの製造の目的であるべきである。
【0057】 BLGの画分は、大部分は不溶性であるが、口触り、香り、および匂いの良い
、滑らかなペーストを形成する。従ってこれは、チーズおよび他の加工食品にお
いて脂質の代用品として有用である。BLGを除去された可溶性の画分は、続い
て、濃縮および乾燥によって、または他のタンパク質の画分を生じるように分画
されるかのいずれかによってさらに処理され得る。BLGに除去によって、可溶
性の画分は、他の乳清のタンパク質を富化させられ、そして乳児用の処方物の製
造の目的であり得る。
【0058】 この方法に従って調製された凍結乾燥させられたBLGが、水と混合された場
合には、味の良いキャンディーの風味をつけられたスプレッドを生じることが見
出された。このことは、BLG(特にこのプロセスによって調製された形態)の
、味の良い高タンパク質の食料品のような、それ自体によるかまたは他の食品の
材料との混合物中での可能性のある適用を導く。
【0059】 pHの循環はまた、カッテージチーズの製造においてタンパク質の回収を増大
させるためにも使用され得る。再形成されたpHを循環させた乳汁のpHは、酸
またはラクトースを醗酵する微生物のいずれかの添加によって4.6に低下させ
られる。BLGの冷変性によって、このタンパク質は廃棄物である乳清中で失わ
れるよりもむしろチーズの凝乳中に取り込まれるはずであり、これによってタン
パク質の回収を増大させ、そしてこのプロセスによる廃棄物中に存在しているタ
ンパク質を減少させ、そして従って廃棄物のBODを減少させる。
【0060】 pHを循環させることを利用するさらなるプロセスにおいては、BLGおよび
カゼインの共沈(これはまた、興味深い機能的な特性を有し得る)が産生され得
る。脱脂粉乳のpHは、水酸化ナトリウムの添加によって11に上昇させられる
。最短で1時間の後、pHは鉱酸の添加によって4.6に低下させられる。変性
させられたBLGとともにカゼインは酸性の乳清を残して共沈し、酸性の乳清は
わずかなBLGを含む。90%程度のBLGが酸性の乳清から回収され得、そし
て共沈物中に取り込まれ得る(図5)。
【0061】 BLGの変性を誘導することに加えて、これらの方法において使用される高い
pHもまた、これら産物の全ての製造において使用される乳汁および乳清を部分
的に滅菌し、それによって微生物の増殖を減少させ、そしておそらく熱滅菌工程
の必要性を取り除く。
【0062】 本明細書中で報告される変化を誘導するために十分である高いpHに対する短
い暴露は、乳汁のタンパク質に対しては化学的な損傷を引き起こさないようであ
る(図6)。
【0063】実施例1 脱脂粉乳のpHを、1MのNaOHまたは1MのHClのいずれかのゆっくり
とした添加によって、5.2から10.7の間の値に調整した。室温で1時間の
インキュベーションの後、サンプルを遠心分離し、そして上清を回収した。上清
画分中のカゼインの量を、逆相様式の高速液体クロマトグラフィー(RP−HP
LC)によって決定した。上清の相中のカルシウムの含有量を、比色アッセイを
使用して決定した。結果(図1)は、酸性のpHの値(乳汁の天然のpH以下)
では、少量のカゼインが上清の相中の存在することを示す。可溶性のカルシウム
の量は、pHが減少するに伴って増大した。pH6.7よりも上では、可溶性の
カゼインの量は、pH10.7で1mlの乳汁あたり28mgのカゼインが可溶
であるレベルにまで増大した。これは、乳汁中のカゼインの全てに等しい。pH
が増大するに伴って、遠心分離チューブ中のペレットの大きさは、pH8.3の
周辺まで最初は増大し、ミセルはさらに膨張し、そして次いで減少した。同様に
、乳汁は外観上はだんだんと白色を失い、そして最も高いpHでは半透明であり
、そして色は緑/茶であった。上清の相中のカルシウムの量もまた、pHととも
に増大した。従って、高いpHは、カゼインミセルを崩壊させるための簡単な方
法であり、そしてカゼインおよびカルシウムの全てを可溶化させる。これは、個
々のカゼインタンパク質を分画する前の有用な可溶化の工程であり得る。
【0064】実施例2 脱脂乳に室温で5MのNaOHを撹拌しながら加え、pHを12.0に上昇さ
せた。その脱脂乳の白色度が失われた後、直ちに室温で5M のHClを撹拌し
ながら少しずつ加え、この脱脂乳のpHを未処理の牛乳と同じ6.7に再調整し
た。HClを加える間に生じる凝集塊は、一時的なもので、直ぐに溶解した。こ
のpHサイクリングを行った乳汁をpH6.7の状態で、元の乳汁のサンプルと
共に2時間保温した後、継続時間/強度を大きくしていく一連の遠心分離処理を
行い、カゼインのミセルを主にそのサイズによって分画した。この処理は分画遠
心分離と呼ばれる。各ペレット画分および最終上清画分中のミセルのサイズは、
各画分を適切な濃度で乳汁の限外濾過液に再懸濁させた後、光子相関分光法によ
って測定した。各画分のタンパク質含有量は、RP−HPLCによって求められ
た。この結果は図2に示されている。pHサイクリングによって分解・再形成さ
れたミセルのサイズの分布は、未処理の乳汁のものとは大きく異なっている。こ
れは、ミセルの直径が重要な要素となるチーズ、ヨーグルト等の製品のテクスチ
ャーを変化させる手段として有用であろう。
【0065】実施例3 容量45リットルのバット2個の乳汁に1MのNaOHを加え、pHを10.
5に調整した。2時間後、1個のバットのpHを6.7に下げた。両方のバット
を4℃で16時間保存した。その後、もう1個のバットのpHを6.7に調整し
た。両方のバットを37℃で2時間保温した。どちらの場合も、ミセルは上図(
図3)に示すように分離し、再形成した。その後、通常のチェダーチーズ製造プ
ロセスと同様に、両方のバットに遺伝子組換えキモシンおよびスターターカルチ
ャー となる微生物を加えた。このpHサイクリングを行った乳汁にレンネット
ゲルが形成され、それに要する時間は未処理の乳汁に要するよりもわずかに長か
った。このゲルは、未処理の乳汁から得られるものよりもわずかに柔らかいが、
通常のプロセスで加熱 および加塩できた。この方法で製造されたチェダーチー
ズは、低温で熟成され、期間を置いて複数回、香り、テクスチャーの検査のため
のサンプルを採取した。香り、テクスチャー共に良好であり、またそれは、未処
理の乳汁からこのプロセスで製造したチーズとは異なっていた。乳汁のpHサイ
クリングは、チーズの香りおよびテクスチャーを変化させる手段を提供するもの
である。
【0066】実施例4 チーズ製造時の廃液であるスイートホエー10リットルずつをA、B、Cと3
つ用意し、AおよびBはpH11に、CはpH10に調整した。Aは室温で2時
間保存した後pHを5.1に調整した。Bは室温で2時間保存した後pHを7.
5に調整し、さらにこのpHで2時間保存後、pHを5.1に調整した。Cはp
H10.0で2時間保存した後、pHを5.1に下げた。全ての乳清をpH5.
1、4℃の状態で一晩保存した。重い凝集物が急速に形成され始め、容器の底に
沈殿が形成された。上清の多くを傾瀉により取り除き、最終的に沈殿物を遠心分
離によって回収し、pH5に調整した同量の水で再懸濁により洗浄した。次にこ
れらの沈殿物を凍結乾燥した。沈殿物を除去した後の乳清のサンプルは、分析の
ために保存した。凍結乾燥によって得られた粉末はpH値に関わらず概ね水に不
溶であることが判明した。しかし、これらの粉末から非常に滑らかなペーストが
得られ、その幾つかは興味深いクリーム様の香りを有していた。7Mの尿素およ
び60mMの2−メルカプトエタノールからなる緩衝剤に溶解し、pH7で行っ
たRP−HPLCによる分析によれば、これらの粉末はほぼ純粋なBLGである
と判明した(図4)。これらの純度は90%を超えるものと推定され、主な不純
物は痕跡量のα−ラクトアルブミンであった。水に不溶性であるのとは対照的に
、この緩衝液には溶解することから、この水への不溶性は、pH処理の結果、ニ
硫化物の架橋によって結合されたオリゴマーおよびポリマーを形成する個々のB
LG分子に起因するものであることがわかる。この技法により、通常、乳清に含
まれるBLGの70%以上を回収することが可能であった。この不溶性のBLG
は、脂肪の代替品として、または低脂肪チーズのテクスチャーを改善するための
含有物として有用であろう。
【0067】 上記と対応して、不溶性のBLGを除去した後の乳清はα−ラクトアルブミン
を多く含み、BLGは少ししか含まないことがわかった(図5)。これは特殊調
整粉乳の製造に有用であろう。なぜなら、ヒトの乳汁はα−ラクトアルブミンを
多く含み、乳幼児の牛乳のタンパク質に対するアレルギー反応の主な原因となる
BLGは全く含まないからである。
【0068】実施例5 脱脂牛乳20mlを0℃でpH11に調整し、また、同量の脱脂牛乳を24℃で
同じpH11に調整する。10分後、両方に1MのHClを加えてpHを4.6
に調整する。これにより、酸カゼイン塩製造時と同じ沈殿が形成される。この不
溶性物質のサンプルおよびpH11に調整する処理をしなかった乳汁から製造さ
れた不溶性物質のサンプルを細管電気泳動法で分析した(図6)。その結果、通
常の乳汁では沈殿中のタンパク質は痕跡量のα−ラクトアルブミンおよびBLG
しか含まないのに対し、pH11に調整する処理を行った乳汁から得られた沈殿
には、乳汁中のほとんど全てのBLGが含まれており、α−ラクトアルブミンは
痕跡量しか含まれていない、ということがわかった。このBLGとカゼインとの
共沈により、従来のカゼイン塩製造によって得られるタンパク質の量を約15%
増やすことができる。このようにして生成される物質は、興味深い処理特性を持
ち、副産物の乳清は特殊調整粉乳のような他の製品の製造に有用であろう。
【0069】実施例6 アルカリ処理がタンパク質に有害な変化を生じさせていないことを確認するた
め、未処理の乳汁とpHサイクリングを行った乳汁のサンプルをトリプシンで加
水分解した。トリプシンのタンパク質分解作用によって生じたこれらのペプチド
を、RP−HPLCによって分析した(図7)。こうして得られたペプチドパタ
ーンは非常に類似しており、これはpHサイクリングによってタンパク質の化学
的特性に重大な変化が起こっていないことを示している。
【0070】
【産業上の利用可能性】
ここで意図されている発明の範囲から逸脱することなく、さらなる修正および
改良が組み入れられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】カゼインタンパク質およびカルシウムの可溶化を乳汁のpHの関
数として示し、そして実施例1で得られるような高速の遠心分離の結果として得
られたミセルのペレットの容量における変化を示すグラフである。
【図2】実施例2のディファレンシャル遠心分離によって決定されるよう
な、最初の乳汁およびpHを循環させた乳汁における、カゼインミセルの大きさ
の分布を示す。
【図3】実施例4に詳述されるような、チーズの乳清のpHの循環によっ
て得られたBLGの純度を示す;
【図4】実施例4に詳述されるような、チーズの乳清からのBLGの沈殿
の後で得られた、BLGを除去された乳清を示す。
【図5】実施例5に詳述されるような、高いpHでの乳汁の処理の後で得
られる、カゼインおよびBLGの共沈を示す。
【図6】高いpHに対する単純な暴露の結果としてのタンパク質中での化
学的な変化が存在しないことを実証するための、最初の乳汁およびpHを循環さ
せた乳汁を用いて得られたトリプシンペプチドのマップを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ロー,アンドゥルー イギリス、エアー ケイエイ6 5エイチ エル、ハナー リサーチ インスティテュ ート内 Fターム(参考) 4B001 AC05 BC13 BC99 4B035 LG15 LG44 LP56 LP59

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】β−ラクトグロブリンが変成するpHに達するまで乳清のp
    Hを増大させる工程、および次いでβ−ラクトグロブリンが沈殿するpHに達す
    るまで得られた混合物のpHを低下させる工程を包含している、乳清からβ−ラ
    クトグロブリンを単離する方法。
  2. 【請求項2】前記乳清のpHが、アルカリ溶液の添加によって増大させら
    れ、そして酸性の溶液の添加によって低下させられる、請求項1に記載の乳清か
    らβ−ラクトグリブリンを単離する方法。
  3. 【請求項3】前記請求項のいずれか1項に記載の乳清からβ−ラクトグロ
    ブリンを単離する方法であって、ここで、乳清のpHは、10から12の間にま
    で増大させられる方法。
  4. 【請求項4】前記請求項のいずれか1項に記載の乳清からβ−ラクトグロ
    ブリンを単離する方法であって、ここで、一旦pHが増大させられると、乳清は
    一定の時間の間、静置させられる方法。
  5. 【請求項5】請求項4に記載の乳清からβ−ラクトグロブリンを単離する
    方法であって、ここで、一定の時間が30から120分である方法。
  6. 【請求項6】前記請求項のいずれか1項に記載の乳清からβ−ラクトグロ
    ブリンを単離する方法であって、ここで、得られた混合物のpHをpH5まで低
    下させる方法。
  7. 【請求項7】請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得ることが
    できるβ−ラクトグロブリン。
  8. 【請求項8】請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得られた請
    求項7に記載のβ−ラクトグロブリン。
  9. 【請求項9】 請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得ること
    ができる低いβ−ラクトグロブリン含有量の乳清。
  10. 【請求項10】請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得られた
    請求項9に記載の低いβ−ラクトグロブリン含有量の乳清。
  11. 【請求項11】請求項1から6のいずれかに記載の方法によって調製され
    るβ−ラクトグロブリンを含有している食料品。
  12. 【請求項12】前記食料品が、請求項1から6のいずれかに記載の方法に
    よって調製されたβ−ラクトグロブリンから主に構成され、そして凍結乾燥させ
    られている、請求項11に記載の食料品を含有している食料品。
  13. 【請求項13】その中のカゼインミセルが破壊されるまで乳汁のpHを上
    昇させる工程、および続いてミセルが再形成される値にまでpHを低下させる工
    程を包含している、カゼインミセルを有している乳汁を改質する方法。
  14. 【請求項14】前記pHが、10から12の間にまで上昇させられる、請
    求項13に記載のカゼインミセルを有している乳汁を改質する方法。
  15. 【請求項15】pHが乳汁の最初のpHに戻される、請求項13から14
    に記載のカゼインミセルを有している乳汁を改質する方法。
  16. 【請求項16】pHが、ラクトースを醗酵させる微生物によってチーズ中
    に取り込まれるβ−ラクトグロブリンの量を増大させる値に低下させられる、請
    求項13から15に記載のカゼインミセルを有している乳汁を改質する方法。
  17. 【請求項17】pHが約4.6に低下させられる、請求項13から16に
    記載のカゼインミセルを有している乳汁を改質する方法。
  18. 【請求項18】請求項13から17のいずれかに記載の方法によって乳汁
    のカゼインミセルを脱凝集させ再形成することによって得ることができる改質さ
    れた乳汁。
  19. 【請求項19】請求項13から17のいずれかの方法によって得られた請
    求項18に記載の改質された乳汁。
  20. 【請求項20】請求項13から17のいずれかの方法によって改質された
    乳汁から、他の公知の方法において調製することによって得ることができる乳製
    品。
  21. 【請求項21】ミセルが破壊されるまでpHを上昇させるために乳汁に対
    してアルカリを添加する工程、化学的な構成成分を添加するかまたは除去する工
    程、そして次いで続いて、ミセルが再形成される値にまでpHを戻すために酸を
    添加する工程を包含している、乳汁に由来するカゼインミセルを改質する方法で
    あって、前記化学的な構成成分は、これらの手順によってミセル中に取り込まれ
    得る化学薬品のグループから選択される化学薬品である方法。
  22. 【請求項22】pHが少なくとも10にまで上昇させられる、請求項20
    に記載の乳汁に由来するカゼインミセルを改質する方法。
  23. 【請求項23】pHが乳汁の最初のpHに戻される、請求項20から21
    に記載の乳汁に由来するカゼインミセルを改質する方法。
  24. 【請求項24】請求項20から22のいずれかに記載の乳汁のカゼインミ
    セルを脱凝集させ再形成することによって得ることができる改質された乳汁。
  25. 【請求項25】請求項20から22のいずれかに記載の方法によって得ら
    れた、請求項23に記載の改質された乳汁。
  26. 【請求項26】請求項20から22のいずれかに記載の方法によって改質
    された乳汁から、他の公知の方法において調製することによって得ることができ
    る乳製品。
  27. 【請求項27】乳汁のpHを増大させる工程、得られた溶液を静置させて
    おく工程、および次いで得られた溶液のpHを低下させる工程を包含する、乳汁
    からβ−ラクトグロブリンおよびカゼイン塩を共沈させる方法。
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