JP2003514169A - 増圧装置および増圧装置を備えた燃料噴射システム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は、複数のシリンダを備えた直接噴射式の内燃機関、特にディーゼルエンジンで噴射圧を高めるための増圧装置であって、相対的に低い圧力で負荷されている相対的に大きい端面と、フィード行程で、高められた噴射圧が存在するようになっている相対的に小さい端面とを備えた伝達ピストン（３）を有しており、伝達ピストン（３）の２つの端面の面積差によって、相対的に大きい端面とは反対側に死容積（２０）が生ぜしめられている形式のものものに関する。小さい伝達比でも、十分かつ迅速な増圧装置の戻しを保証するために、外部に設けられたばね蓄圧器（２２）に死容積（２０）が接続され、ばね蓄圧器（２２）が、内燃機関のそれぞれ個々のシリンダに対して局所的に、または全てのシリンダに対して中央に、つまり共通に配置されている。また、本発明は、このような増圧装置を備えた燃料噴射システムにも関する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、直接噴射式の内燃機関、特にディーゼルエンジンの噴射圧を高める
ための増圧装置であって、相対的に低い圧力で負荷されている相対的に大きい端
面と、フィード行程で、高められた噴射圧が存在するようになっている相対的に
小さい端面とを備えた伝達ピストンを有しており、伝達ピストンの２つの端面の
面積差によって、相対的に大きい端面とは反対側に死容積が生ぜしめられている
形式のものに関する。また本発明は、燃料噴射システム、特にコモンレールシス
テムであって、インジェクタに接続された高圧接続部を有しており、インジェク
タから燃料が内燃機関の燃焼室に噴射される形式のものに関する。

【０００２】 直接噴射式のディーゼルエンジンに燃料を供給する方法としては、圧力制御式
の噴射システム（ドイツ連邦共和国特許第１９７０６４６７号明細書）および行
程制御式の噴射システム（ドイツ連邦共和国特許出願公開第１９６１９５２３号
明細書）が公知である。コモンレールシステムにおけるように、噴射圧が負荷お
よび回転数に適合されるようになっていれば、有利である。

【０００３】 コモンレール噴射システムでは、高圧ポンプが、場合によっては前供給ポンプ
に補助されて、タンクからコモンレールとよばれる中央の燃料高圧蓄圧器へ噴射
燃料を供給する。レールから、燃料導管が内燃機関のシリンダに対応配置された
それぞれのインジェクタに通じている。これらのインジェクタは、燃料を内燃機
関の燃焼室に噴射するために、内燃機関の運転パラメータに依存して、エンジン
電子機器によって個別に制御される。コモンレールシステムにおける最大噴射圧
は、現在、蓄圧器の耐高圧性および高圧ポンプの性能のために、約１６００から
１８００ｂａｒに制限されている。噴射圧をさらに高めるためには、圧力伝達部
を備えた噴射システムが使用される。

【０００４】 このようなコモンレールシステムは、例えば、欧州特許第０５６２０４６号明
細書に記載されている。この明細書に記載されているのは、圧力伝達部（約１：
７の高伝達比）を備えた圧力制御式のコモンレールシステムである。すべての圧
力伝達式噴射システムがそうであるように、この場合も死容積が存在し、この死
容積内に戻しばねが配置されている。死容積は、１つの（ばねなし）逆止弁を介
して漏れ導管に接続されている。このことは、フィード行程の間に押しのけられ
た量が、増圧ピストンが戻される際に漏れ導管から再び吸い上げられることがな
いという利点をもたらす。しかし、不都合には、ピストンが戻される間に死容積
内の燃料でキャビテーションが起こってしまう。このキャビテーション気泡の崩
壊により、付加的な騒音発生が起こる。

【０００５】 増圧装置が作動状態にある場合には、増圧ピストンの面積比の違いにより、フ
ィード行程中、高められた噴射圧が得られる。噴射終了後、増圧ピストンは、再
びその初期位置に戻らねばならない（再充てん）。このために、ピストンの低圧
側はたいてい放圧され、ピストンは、力バランスに基づき初期位置へ押し戻され
る。ピストンが戻される間、圧力伝達部の高圧室は、燃料で充てんされねばなら
ない。この充てんが前供給圧を用いることでしか行われない場合には、圧力伝達
比が大きいときには付加的な戻しばねが必要となる。なぜならば、高圧側の端面
で生ぜしめられた力は、ピストンの摩擦力にうち勝つには十分でないからである
。戻しばねなしで戻し位置に到達させようとするならば、付加的な高圧が高圧側
で必要となり、多くの付加的なコストもしくは手間をかけなければならない。戻
しばねの設置は、原則的には、３つのスペース（死室、高圧室および低圧室）そ
れぞれで可能である。１つまたは複数のばねを設ける場所は、ピストンの形態（
一体的、または２つの部分から成っている）および得られる構造スペースによっ
て規定される。戻しばねによって、いわゆる混合運転（Mischbetrieb）での低圧
側での放圧の際、戻し速度も大きくなる。

【０００６】 圧力伝達比が小さい場合には、構造スペースが著しく制限されるので、適当な
行程力の過程を有する戻しばねを組み込むことは困難である。

【０００７】 本発明の課題は、圧力伝達比が小さい場合でも、十分かつ迅速な増圧装置の再
充てんが保証される手段を設けることである。

【０００８】 この課題は、直接噴射式の内燃機関、特にディーゼルエンジンの噴射圧を高め
るための増圧装置であって、相対的に低い圧力で負荷されている相対的に大きい
端面と、フィード行程で、高められた噴射圧が存在するようになっている相対的
に小さい端面とを備えた伝達ピストンを有しており、相対的に大きい端面とは反
対側で、伝達ピストンの２つの端面の面積差のために死容積が生ぜしめられる形
式のものにおいて、外部に設けられたばね蓄圧器に死容積が接続され、ばね蓄圧
器が、内燃機関のそれぞれ個々のシリンダに対して局所的に、または全てのシリ
ンダに対して中央に、つまり共通に配置されることで解決される。ばねが圧力伝
達ピストン室の外部に設けられることで、適当なばねの形状寸法（直径、長さ、
ワイヤの太さ、剛性）を選択することができ、これにより、ピストン形状の最適
化ひいては別の良好な効果（摩擦の最小化、密着高さおよび直径比の最適化）を
得ることができる。また、全てのシリンダに対する１つの共通の中央の蓄圧室/
ダイヤフラム室を用いた場合には、別の利点が得られる。というのは、少ない付
加的構造部材によって戻しが実現できるからである（高圧側における前圧力を介
しての純粋な戻しが行われる場合は、この圧力が始めに生ぜしめられ、効率が低
下する）。

【０００９】 本発明の特別な構成は、ばね蓄圧器がばねによって予負荷されたピストンを有
することを特徴としている。このばねによって最大噴射圧は相応に低下するが、
このことは、迅速な再充てんには有利である。ばね室では、大きなばねのための
十分な構造スペースがある。場合によっては、再充てんをさらに補助する小さな
ばねを死室内に付加的に配置することもできる。

【００１０】 本発明の別の特別な構成は、ばね蓄圧器が予負荷されたダイヤフラムを有する
ことを特徴としている。このダイヤフラムは、ピストンに置き換えることができ
る。

【００１１】 ダイヤフラムが設けられていない場合には、ばね室ピストンでの漏れが生じる
ので、ばね背室と漏れとの間が接続されなければならない（冒頭の引用明細書の
、死室に漏れ導管が接続されている構成と同義）。というのは、そうでなければ
、ばね室ピストンの背後で漏れが多く集まり過ぎた場合に、システムが故障して
しまうからである。ダイヤフラムを用いる場合には、死容積とばね蓄圧器との間
で、漏れへの接続が必要となる。なぜならば、増圧ピストンでの漏れにより、死
容積内の燃料量は一定ではなく、燃料量が増大すると、圧力は上昇して増圧装置
が故障することがあるからである。このことは、余剰量を制御する適当な圧力制
限弁によって避けることができる。

【００１２】 燃料噴射システム、特にコモンレールシステムであって、ノズル室を備えた少
なくとも１つのインジェクタに接続されている高圧接続部を有しており、インジ
ェクタから内燃機関の燃焼室に燃料が噴射される形式のものにおける、前述の課
題を解決した構成では、高圧接続部とインジェクタのノズル室との間の任意の位
置に前述のような増圧装置が配置されている。高圧接続部は、例えば高圧蓄圧器
または直接高圧ポンプに接続されている。噴射中、増圧装置の死容積は、ばね蓄
圧器内に押し出される。

【００１３】 本発明の構成によって、吸い込み/押し出しの際の摩擦による流れ損失が漏れ
より大きい場合には、燃料の押し出しおよび吸い込みに必要な摺動作業が減じら
れる。これによって、より高い効率を得ることができる。

【００１４】 本発明の燃料噴射システムの特別な構成は、増圧装置がインジェクタに組み込
まれていることを特徴とする。コモンレールシステムにおいては、増圧装置はレ
ールに組み込むこともできる。

【００１５】 一般的に、このような構成は、前述の形式の増圧装置を有する他の燃料噴射シ
ステムでも使用することができる。この場合、例えば、３ポート２位置弁を、分
配ポンプの近くで増圧装置の前に設けたり、相応な２ポート２位置弁を備えた分
配器に置き換えることもできる。

【００１６】 本発明の別の利点、特徴および詳細を、実施例を示した図面に基づき以下に説
明する。この場合、請求項および実施例の説明に記載された特徴は、それぞれ個
別に、または任意に組み合わせて使用することが可能である。

【００１７】 添付した図面には、本発明の増圧装置１を実施例として示す。この増圧装置１
は、伝達ピストン３を収容するシリンダ２を有している。伝達ピストン３は、シ
リンダ２内で、低圧側４と高圧側５との間で往復運動可能である。

【００１８】 この低圧および高圧の概念は、本発明との関連性において、相対的に使用され
ている。低圧側４では、実際には、高圧ポンプから供給された高圧が存在してい
る。高圧側５では、伝達ピストン３のフィード行程で、高められた噴射圧が存在
するようになっており、この噴射圧は、高圧ポンプによって供給された前述の高
圧よりも高くなっている。

【００１９】 伝達ピストン３は、大きさの異なる２つの端面を有している。この伝達ピスト
ン３の低圧側４の端面は、高圧側５の端面より大きい。したがって、ピストンが
低圧側４から高圧側５に移動すると、高圧側５における圧力は増大する。

【００２０】 シリンダ２の低圧側４から２つの導管６，７が出ている。導管６は、３ポート
２位置方向切替弁８を介して、高圧接続部９または非加圧の漏れ戻し導管１０と
接続可能である。３ポート２位置方向切替弁８が図示の位置にある時、導管６は
、漏れ戻し導管１０に接続されている。この状態では、シリンダ２の高圧側５は
燃料で充填されている。３ポート２位置方向切替弁８がもう１つの位置にある時
、導管６は高圧接続部９を介して、中央の燃料蓄圧器（レール）に接続されてい
る。この状態では、フィード行程が行われ、高圧側５に存在する燃料が圧縮され
る。

【００２１】 導管７は、ばねによって予負荷された逆止弁１１の予負荷力に抗して、２つの
導管１２，１３に接続されている。導管１２は、シリンダ２の高圧側５に通じて
おり、燃料を再充てんする際、燃料が高圧接続部９から高圧側５に到達するのを
保証している。

【００２２】 導管１３は、インジェクタ１５のノズル室１４に通じている。インジェクタ１
５内には、ノズルニードル１６が、ノズルばね１７の予負荷力に抗して往復運動
可能に収容されている。ノズルニードル１６の先端がノズルニードル座から持ち
上げられると、燃料は、ノズル室１４から燃料が供給されるべき内燃機関の燃焼
室１８へ噴射される。

【００２３】 伝達ピストン３の往復運動を可能にするために、シリンダ２内には、死容積２
０が設けられている。死容積２０は、伝達ピストン３の、大きさの異なる端面の
面積差によって生ぜしめられるフランジを、フィード行程の際に受ける役割を果
たしている。

【００２４】 死容積２０は、導管２１を介して、ばね蓄圧器２２に接続されている。ばね蓄
圧器２２内では、ピストン２３が、押圧ばね２４の予負荷力に抗して往復運動可
能に収容されている。

【００２５】 図示の燃料噴射システムによって、増圧装置１のより良好な再充てんが可能に
なる。

【００２６】 図示の実施例では、押圧ばね２４が、外部でばね蓄圧器２２内に収容されてい
る。本発明の増圧装置１の運転中、死容積２０は、ばね蓄圧器２２へ押し出され
て、このばね蓄圧器２２内に規定の圧力で貯えられる。ばね蓄圧器２２は、ダイ
ヤフラム蓄圧器としても構成することができる。

【００２７】 図示の実施例は、圧力制御式のシステムの適用例として想定したものである。
行程制御式のシステムへ適用する場合には、ノズル室１４が持続的に圧力下にあ
るように（増圧装置が非運転状態にある場合にはレール圧下にあるように）、導
管７を弁８の手前で導管９に持続的に接続することが必要である。このような行
程制御式のシステムにも、もちろん蓄圧器が必要である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の増圧装置の概略図である。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のシリンダを備えた直接噴射式の内燃機関、特にディー
   ゼルエンジンで噴射圧を高めるための増圧装置であって、相対的に低い圧力で負
   荷されている相対的に大きい端面と、フィード行程で、高められた噴射圧が存在
   するようになっている相対的に小さい端面とを備えた伝達ピストン（３）を有し
   ており、伝達ピストン（３）の２つの端面の面積差によって、相対的に大きい端
   面とは反対側に死容積（２０）が生ぜしめられている形式のものにおいて、 外部に設けられたばね蓄圧器（２２）に死容積（２０）が接続され、ばね蓄圧
   器（２２）が、内燃機関のそれぞれ個々のシリンダに対して局所的に、または全
   てのシリンダに対して中央に配置されていることを特徴とする、増圧装置。
2. 【請求項２】 ばね蓄圧器（２２）が、ばねによって予負荷されているピス
   トン（２３）を有している、請求項１記載の増圧装置。
3. 【請求項３】 ばね蓄圧器が、予負荷されたダイヤフラムを有している、請
   求項１または２記載の増圧装置。
4. 【請求項４】 燃料噴射システム、特にコモンレールシステムであって、ノ
   ズル室（１４）を備えた少なくとも１つのインジェクタ（１５）に接続されてい
   る高圧接続部（９）を有しており、インジェクタ（１５）から内燃機関の燃焼室
   （１８）に燃料が噴射される形式のものにおいて、 高圧接続部（９）とインジェクタ（１５）のノズル室（１４）との間の任意の
   位置に、請求項１から３までのいずれか１項記載の増圧装置（１）が配置されて
   いることを特徴とする、燃料噴射システム。
5. 【請求項５】 増圧装置がインジェクタまたは高圧蓄圧器に組み込まれてい
   る、請求項４記載の燃料噴射システム。