JP2003508510A - グリコール酸を用いるニトリルの処理 - Google Patents

グリコール酸を用いるニトリルの処理

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Abstract

(57)【要約】 アクリロニトリルのようなニトリルを精製するための方法を開示する。該方法は、(1)グリコール酸またはグリコール酸発生化合物と、アクリロニトリルおよびシアン化水素を含む生成物混合物を接触させて、グリコール酸処理された生成物を生成する工程と、(2)該グリコール酸処理された生成物からニトリルを回収する工程とを含む。ニトリルおよびシアン化水素を生成するのに効果的な条件の下で、オレフィンとアンモニアを接触させることによって、生成物混合物を生成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は、ニトリルおよびシアン化水素を含む混合物からニトリルを回収また
は精製するための方法、およびオレフィンおよびアンモニアから、ニトリル、と
りわけアクリロニトリルを生成するための方法に関連する。
【0002】 (発明の背景) アクリロニトリルのようなニトリルまたはメタクリロニトリルのようなその誘
導体は、特にプラスチック類、表面被覆および接着剤工業において、重要な工業
薬品である。例えば、アクリロニトリルは、抗酸化剤、薬品、染料および界面活
性剤の合成における中間体として、アクリル繊維を生産するために用いることが
できる。また、それは天然ポリマーのための改質剤として、または貯蔵される穀
物の殺虫燻蒸剤としてもまた用いることができる。
【0003】 オレフィンの触媒的アンモ酸化によるアクリロニトリルまたはその誘導体の生
成はよく知られ、および広く用いられる。例えば、アクリロニトリルを生成する
ために用いられるオレフィンは、プロピレンまたはプロパンである。この方法に
おいて、オレフィン、アンモニアおよび空気は、高温で触媒を介して反応され、
水および他の副反応生成物と同時にアクリロニトリル、アセトニトリル、および
シアン化水素の蒸気状混合物を生成する。次に熱蒸気は冷却されおよび硫酸でク
エンチされ、未反応のアンモニアを除去する。次に蒸気流れは回収システムへ送
られる。それは、第1に水中に吸収され、反応の生成物(アクリロニトリル、ア
セトニトリルおよびシアン化水素)を含む水性流れを作り出す。次に水性流れは
、一連の蒸留カラム中で処理され、およびこれらの生成物を回収および精製する
。回収のためにアセトニトリルを除去した後、シアン化水素をアクリロニトリル
流れから抜き取り、精製カラムへ送り、および貯蔵のために冷却する。
【0004】 一般的に、酢酸が、アクリロニトリルからのシアン化水素の分離の間に導入さ
れる。しかしながら、該方法における酢酸の使用は、いくつかの欠点を有する。
いくらかの酢酸はアクリロニトリル流れと共に残留し、金属装置の腐食を引き起
こし、および潜在的にアクリロニトリル中の不純物として残留する。加えて、そ
れは残留アンモニアと反応して酢酸アンモニウムを形成し、次に回収および精製
システムの第1の部分に戻る再利用流れによって輸送され、そこで分解すなわち
該方法に有害なアンモニアを放出する傾向がある。
【0005】 また、リン酸および硫酸のようなより強い鉱酸は、炭素源としてのメタンまた
はメタノールからのシアン化水素の直接生成のための方法においてしばしば用い
られる。これらの方法は回収可能な副生成物をほとんど生成しないので、鉱酸は
該システムに不利に作用しない。しかしながら、アクリロニトリルが主生成物で
ある方法において、鉱酸を用いることはできない。なぜなら、特にアクリロニト
リル精製方法において見出されるような無水条件下で、それらはアクリロニトリ
ルと反応することができるからである。
【0006】 それゆえに、例えばアクリロニトリルのようなニトリルの精製のための方法を
開発するための増大する必要性がある。
【0007】 (発明の概略) 本発明は、(1)グリコール酸またはグリコール酸発生化合物と、ニトリルお
よびシアン化水素を含む生成混合物を接触させて、グリコール酸処理された生成
物を生成する工程と、(2)グリコール酸処理された生成物からニトリルを回収
する工程とを含む。
【0008】 (発明の詳細な説明) 本発明に従って、生成混合物がニトリルおよびシアン化水素を含む限り、いか
なる源から該生成混合物を得ることができる。現在、アンモニアおよび空気とオ
レフィンを接触させて、ニトリルおよびシアン化水素を含む生成混合物を生成す
る工程を含む方法によって該生成混合物を生成することが好ましい。
【0009】 一般に、グリコール酸またはグリコール酸発生化合物とニトリルおよびシアン
化水素を含む生成混合物を接触させ、グリコール酸処理された生成物を生成する
。本発明に従って、ニトリルの回収または精製の間に、グリコール酸と生成混合
物を接触させる。適したグリコール酸発生化合物の例は、グリコール酸のエステ
ル類、モノクロロ酢酸、シュウ酸およびそれらの2つ以上の組み合わせを含むが
これらに制限されない。
【0010】 用いられるグリコール酸またはグリコール酸発生化合物の量は、本質的に重合
を防ぎ、それによってアクリロニトリルのようなニトリルの回収または精製を促
進することができる量である限りいかなる量であることも可能である。一般的に
、グリコール酸対生成混合物中に存在するシアン化水素のモル比は、約0.00
1:1から約1000:1までの範囲内であることが可能である。あるいはまた
、グリコール酸またはグリコール酸発生化合物の量は、生成混合物のpHを約4
.2以下まで低下させることができる量である。一般的に、約25℃から約13
0℃、好ましくは約30℃から約100℃の範囲内の温度で、該温度範囲に適応
できる圧力下で、ニトリルを分離、回収または精製するのに十分な時間、一般的
には約10秒から約2時間にわたって、接触を実施することが可能である。
【0011】 本発明に従って、「ニトリル」という用語は、RCNの式を有する化合物(式
中、Rは基当たり1から約10の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)を
指す。現在好ましいニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、また
はそれらの組み合わせである。オレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブチ
レン、ブテン、ペンテン、プロパンまたはそれらの組み合わせである。現在好ま
しいオレフィンはプロピレンである。なぜならアクリロニトリルはプロピレンか
ら生成されることが可能であるからである。
【0012】 一般的に、例えばエアーコンプレッサーおよび急冷カラムを有する流動層反応
器のような適当な容器中の気相において、アンモニアおよび空気とオレフィンの
接触を実施する。例えばプロピレンのようなオレフィンおよびアンモニアを気化
し、および容器または反応器中へ導入する。オレフィン対アンモニアのモル比は
、ニトリルが生成される限りいかなる比でも可能である。一般的に、該モル比は
、約0.1:1から約10:1、好ましくは約0.2:1から約5:1、および
最も好ましくは約0.5:1から約2:1までの範囲内であることが可能である
。約250から約600℃、好ましくは約300から約550℃、および最も好
ましくは約350から約500℃までの範囲内の温度で、該温度範囲に適応でき
る圧力下で、ニトリルを生成するのに十分な時間、一般的には約10秒から約2
時間にわたるような任意の適当な条件下で、該接触を実施することができる。
【0013】 また、米国特許第3,936,360号、および第4,981,670号にお
いて開示されるように、アンモ酸化触媒の存在下でアンモニアおよび空気とオレ
フィンの接触を実施することができ、それらの開示は参照によって本明細書に組
み込まれるものとする。アンモ酸化触媒は当業者によく知られているので、その
開示は、簡潔さのために本明細書から省略される。該接触は、一般的にガスまた
は蒸気相にあるニトリルおよびシアン化水素を含む生成混合物を生成する。
【0014】 一般的に、任意の源から生成された生成混合物を約200から約270℃まで
の範囲内の温度まで冷却し、冷却された生成混合物を生成する。次に、米国特許
第3,936,360号において定義されるような水および再利用流れを含むク
エンチ溶液を用いて、冷却された生成混合物を約30から約90℃にクエンチし
、クエンチされた混合物を生成する。次に、約70℃から約90℃で硫酸とクエ
ンチされた混合物を接触させる。硫酸の量は、それが任意の過剰量のアンモニア
と反応してクエンチされた生成物を生成するのに十分である限り、いかなる量で
あることも可能である。
【0015】 一般的に、高沸点材料、一次触媒粉末、タールおよび他の有機材料を濃縮し、
冷却し、およびオレフィンとアンモニアとの接触により発生される水と共に廃液
処理へ送るように、使用済みのクエンチ溶液をさらに処理することができる。
【0016】 一般的に、有機材料を冷水中に吸収させる吸収器へ、生成混合物の蒸気を送る
ことができる。溶解された有機材料を含む吸収器からの水性流れ中の、ニトリル
およびシアン化水素を、水の大部分から分離する。一般的に、溶媒として水を用
いる共沸抽出蒸留によって、分離を実施することができる。また、オレフィンが
プロピレンである場合、アセトニトリルは一般的に生成物混合物中に存在し、お
よびアクリロニトリルおよびシアン化水素から分離されることが可能である。オ
ーバーヘッド流れを介してアクリロニトリルおよびシアン化水素を取り出し、お
よびさらに精製することができる。水およびアセトニトリルを含む下部流れ中で
、アセトニトリルおよび他の有機材料を水から分離する。水を再利用して、吸収
器およびニトリルの回収の双方において溶媒として使うことができる。
【0017】 米国特許第3,936,360号における開示のように当業者に知られる任意
の手段によって、生成混合物をさらに精製することができる。精製はよく知られ
ているために、その記述は本明細書において省略される。
【0018】 (実施例) 次の実施例は本発明を例示することを意図するが、その請求の範囲を不当に制
限するために解釈されるものではない。
【0019】 (実施例1) DuPontプラント(Beaumont, Texas)の乾燥カラムから400mlの粗製のアク
リロニトリルの試料を1mlのグリコール酸で処理し、および次に大抵のアクリ
ロニトリルの方法において実施される蒸留を模倣して、75mlの体積に低下す
るまで蒸留した。反応、重合、付加的な色の形成の傾向は、認められなかった。
酢酸を用いる対照試料は、より暗い色を有していた。留出物のガスクロマトグラ
フィーは、2つの試料中の組成物または不純物における変化を示さなかった。
【0020】 本実施例は、粗製のアクリロニトリルの蒸留の間中、グリコール酸は酢酸より
もより少量の使用を可能にするより効果的な加工助剤であることを例示する。
【0021】 (実施例2) 0.5質量%のグリコール酸で、アセトニトリル、アクリロニトリル、水、約
2%のシアン化水素および極微量のアンモニアを含むアクリロニトリルプラント
のストリッパーオーバーヘッド流れの200mlの試験試料を処理した。0.5
%の酢酸で同一の流れの対照試料を処理した。試験試料は、対照試料ほど急速に
は黒ずまなかった。
【0022】 本実施例は、アクリロニトリルストリッパーのオーバーヘッドにとって、酢酸
よりもグリコール酸の方が、より効果的な加工助剤であったことをさらに例示し
た。
【0023】 (実施例3) 100μlの各々の酸と共に各々100mlのアクリロニトリルおよび水を攪
拌することによって、水とアクリロニトリルとの間のグリコール酸および酢酸の
分配係数を決定し、引き続いて各々の層の5mlの部分標本を8.2のpHまで
滴定した。酢酸の分配比が2.31であった一方で、グリコール酸の分配比は水
に有利な21.4であった。
【0024】 予期しなかったことに、本実施例は、酢酸よりもかなり少量のグリコール酸し
か有機相中に残留していなかったことを例示する。一方で、酢酸は双方の相へ分
配された。一般的に、有機相は腐食を引き起こす生成物回収装置を通過する。グ
リコール酸は、ほとんど完全に水相中へ分配するので、装置の腐食は本質的に低
減される。
【0025】 (実施例4) アンモニア緩衝溶液のpHを低下することにおけるグリコール酸および酢酸の
相対効果を試験した。濃水酸化アンモニウムの部分標本(5ml;79mmol
es)を、各々の2つの300mlの水の試料に添加して、11を上回るpHを
与えた。次に、各々の酸で、各々を4.2のpHまで滴定した。それは16ml
の100%酢酸(280mmoles)を必要とするが、所与のpHを達成する
のに8.9mlの70%グリコール酸(103mmoles)しか必要としなか
った。
【0026】 本実施例は、pH調整のために酢酸よりもかなり少量のグリコール酸しか必要
としないことを例示する。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年8月1日(2001.8.1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ウィリアム ランドルフ レイエンデッカ ー アメリカ合衆国 77630 テキサス州 オ レンジ ライブ オーク 2130 (72)発明者 ロバート クリホード ブラックストーン アメリカ合衆国 77706 テキサス州 ビ ューモント ウィリアムバーグ レーン 1530 Fターム(参考) 4H006 AA02 AD11 AD40

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)グリコール酸またはグリコール酸発生化合物とニトリ
    ルおよびシアン化水素を含む生成混合物を接触させて、グリコール酸処理された
    生成物を生成する工程と、(2)前記グリコール酸処理された生成物から前記ニ
    トリルを回収する工程とを含むことを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 (1)アンモニアとオレフィンを接触させて、ニトリルおよ
    びシアン化水素を含む生成混合物を生成する工程と、(2)グリコール酸または
    グリコール酸発生化合物と前記生成混合物を接触させて、グリコール酸処理され
    た生成物を生成する工程と、(2)前記グリコール酸処理された生成物から該ニ
    トリルを回収する工程とを含むことを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】 前記ニトリルはアクリロニトリルであることを特徴とする請
    求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記グリコール酸対前記シアン化水素のモル比が約0.00
    1:1から約1000:1までの範囲内であることを特徴とする請求項1、2ま
    たは3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記生成混合物は、アンモニアとプロピレンの接触によって
    生成され、アクリロニトリルおよびシアン化水素を含む生成混合物を生成するこ
    とを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記グリコール酸は、前記生成混合物のpHを約4.2未満
    まで低下させるのに十分な量において前記生成混合物中に存在することを特徴と
    する請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 (1)アンモニアとプロピレンを接触させて、アクリロニト
    リルおよびシアン化水素を含む前記生成混合物を生成する工程と、(2)グリコ
    ール酸またはグリコール酸発生化合物と前記反応混合物を接触させて、グリコー
    ル酸処理された生成物を生成する工程と、(2)前記グリコール酸処理された生
    成物からアクリロニトリルを回収する工程とを含むことを特徴とする方法。
  8. 【請求項8】 前記グリコール酸対前記シアン化水素は、約0.001:1
    から約1000:1の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
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