JP2003503026A - ヒト遺伝子abc1に対応する核酸及びタンパク質 - Google Patents

ヒト遺伝子abc1に対応する核酸及びタンパク質

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ルスト,シユテフアン
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、病気、例えばアテローム性動脈硬化症、より詳しくはコレステロールの逆輸送の変調、より詳しくは例えばタンジエール病のような家族性のHDL欠乏(FHD)を誘発する、コレステロールの代謝の機能不全に関連した病気の原因遺伝子であることが現在証明されている、遺伝子ABC1の様々なエキソン及びイントロンに対応する核酸に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、遺伝子ABC1の様々なエキソン及びイントロンに対応する核酸に
関する。これについては現在、アテローム性動脈硬化症のような病気を誘発する
コレステロールの代謝の機能不全、より詳しくはコレステロールの逆輸送の変調
、より詳しくはタンジエール病のような家族性のHDL欠乏(FHD)に関連し
た病原遺伝子であることが証明されている。本発明はまた、遺伝子ABC1にお
ける、又は遺伝子ABC1のアレリック形態によって生産される対応タンパク質
における一般的な多形性、特に突然変異の検出手段にも関する。本発明はまた、
遺伝子ABC1のコード領域を含んでいる核酸を含む製薬組成物、及びコレステ
ロールの逆輸送における欠損に関連した病気、例えばタンジエール病の治療のた
めのタンパク質ABC1を含む製薬組成物をも提供する。本発明はまた、それ自
体がコレステロールの逆輸送に対して作用する生成物を構成することができ、か
つそのままで、治療的観点からアテローム性動脈硬化症に対して効率的に闘うこ
とを可能にしうるタンパク質ABC1に対して作用する小分子の選別方法をも提
供する。
【0002】 高密度リポタンパク質(HDL)は、血漿中を流れるリポタンパク質の主な4
つの種類のうちの1つである。
【0003】 これらのリポタンパク質は、様々な代謝経路、例えば脂質輸送、胆汁酸の形成
、ステロイド発生、細胞増殖に関わっており、さらには血漿プロテイナーゼ系と
も競合する。
【0004】 HDLは、遊離コレステロールの完全なアクセプターであり、コレステロール
の転移タンパク質(CETP)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、肝リパー
ゼ(HL)、及びレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCA
T)と組合わせて、コレステロールの逆輸送、すなわち胆汁酸の形態での生物か
らの除去のための、末梢細胞内の過剰コレステロールの肝臓への輸送において大
きい役割を果たす。
【0005】 HDLは、末梢組織から肝臓へのコレステロールの輸送において中心的役割を
果たすことが証明された。
【0006】 HDLの欠乏に関連した様々な病気が記載されている。これには、タンジエー
ル病、HDLの欠乏症、及びLCATの欠乏症が含まれる。
【0007】 タンジエール病に関わる欠乏は、HDLの分解を伴なう細胞コレステロールの
トランスロケーションにおける細胞欠損に関連している。それにもかかわらず、
タンジエール病の場合、この欠損の正確な性質はいまだに正確には規定されてい
ない。
【0008】 タンジエール病において、この細胞欠損は、リポタンパク質代謝の変調を生じ
る。末梢細胞からのコレステロールを組込まず、かつ正しく代謝されえないHD
L粒子は、生物から迅速に除去される。従ってこれらの患者のHDL血漿濃度は
極端に低下し、HDLはもはや、肝臓へのコレステロールの戻りを保証しない。
このコレステロールは、これらの末梢細胞中に蓄積され、例えばオレンジ扁桃の
形成のような特徴的な臨床的兆候を引起す。さらにはその他のリポタンパク質変
調、例えばトリグリセリドの過剰生産、並びにリン脂質の増加した細胞内合成及
び異化作用が観察される。
【0009】 上記のような症状のタンジエール病は、冠動脈疾患に冒されている患者におい
て最も普通に検出される、HDL代謝に関係した家族性疾患に分類される。
【0010】 数多くの研究によって、HDLコレステロールの低下したレベルは、冠動脈疾
患を見つけ出すことができる優れたリスク因子であることが証明された。
【0011】 このような状況において、HDL欠乏に関連した症候群は、アテローム性動脈
硬化症におけるHDLの役割の理解を増すことができるという事実によって、過
去十年間に関心が高まっている。
【0012】 遺伝子アポA−Iにおけるいくつかの突然変異が特徴決定された。これらの突
然変異はまれであり、アポA−Iの生産の欠如を生じることがある。
【0013】 リポタンパク質リパーゼ(LPL)又はその活性化因子アポC−IIについて
コードする遺伝子における突然変異は、重症の高トリグリセライド血症及び非常
に低下したHDL−cのレベルと関連している。
【0014】 レシチン酵素:コレステロール、アシルトランスフェラーゼ(LCAT)につ
いてコードする遺伝子における突然変異も、重症のHDL欠乏に関連している。
【0015】 さらにはコレステロールの逆輸送における機能不全は、生理学的欠損によって
誘発されるのであろう。これは、細胞内小胞の貯蔵されたコレステロールの膜表
面への輸送工程のうちの1つ又は複数に影響を与える。この膜表面のレベルにお
いて、コレステロールはHDLによって引き受けられる。
【0016】 従ってこの技術の状態において、コレステロール及び/又はリポタンパク質の
代謝工程のうちのいずれか1つに関わっている遺伝子、及び特に末梢細胞のコレ
ステロールの肝臓への逆輸送の機能不全に関連した遺伝子を同定する必要がます
ます大きくなっている。
【0017】 最近、ゲノムの全体上に分配され、かつ互いの間が平均して10.3cM離れ
ている343マイクロサテライトマーカーの様々なアレリック形態の分離研究が
実施された。
【0018】 連鎖(linkage)研究が、11世代に対して十分に特徴決定された一家
族に対して実施された。この家族の多くのメンバーがタンジエール病に冒されて
おり、この家族は5血統の血縁を含んでいる。
【0019】 この研究によって、その疾患に統計学的に関連したヒト染色体9の遺伝子座9
q31中に局在化された領域を同定することができた(Rust S.ら、Na
ture Genetics,第20巻、1998年9月、96−98ページ)
【0020】 しかしながらRustらの研究は、タンジエール病に関連させることができる
改変を有するゲノムの広い領域のみを規定している。これは単に、該領域9q3
1−34が、ESTを含んでいるが、既知の遺伝子はまったく含んでいないこと
を明らかにするだけである。
【0021】 本発明によれば今や、ヒトにおける遺伝子座9q31中に位置する約1cMの
領域が、一般的にはHDLの家族性欠乏と関連していることが証明された。
【0022】 より正確には、遺伝子座9q31の1cMの領域に正確に局在化されている輸
送体ABC族のタンパク質についてコードする遺伝子が、コレステロールの逆輸
送における欠損に関係した病気に関わっていることが証明された。
【0023】 より詳しくは本発明によれば、輸送体ABC−1についてコードする遺伝子は
、コレステロールの逆輸送に冒されている患者において、とりわけタンジエール
病に罹っている患者において、突然変異されていることが証明された。
【0024】 輸送体タンパク質ABC(「ATP結合カセット」)は、ヒトにおける細菌の
進化中に極端に保存されているタンパク質の一族を構成する。
【0025】 輸送体タンパク質ABCは、種々の基質、例えばイオン、アミノ酸、ペプチド
、糖、ビタミン、あるいはさらにはステロイドホルモンの膜輸送に関わっている
【0026】 あるいくつかの輸送体ABCのアミノ酸の完全配列の特徴決定によって、これ
らのタンパク質が一般に共通の構造、特にウオーカー(Walker)A及びB
型のモチーフを伴なう2つのヌクレオチド結合折畳み(Nucleotide
Binding Fold又はFBF)、並びに2つの貫膜ドメインを有すると
決定することができた。これらの貫膜ドメインの各々は、6つの螺旋から成って
いる。輸送された様々な分子についての輸送体ABCの特異性は、貫膜ドメイン
の構造によって決定されるようであるが、一方、輸送活性に必要なエネルギーは
、NBF折畳みのレベルにおけるATPの分解によって供給される。
【0027】 ヒトにおいて同定された輸送体タンパク質ABCのいくつかは、様々な病気に
関連していた。
【0028】 例えばムコビシドーシスは、遺伝子CFTR(のう胞性線維症貫膜コンダクタ
ンス調節剤)における突然変異によって引起される。
【0029】 さらには腫瘍細胞中の医薬への多耐性のいくつかの表現型は、これも同様に輸
送体ABCの構造を有する、タンパク質MDR(多薬剤耐性)をコードする遺伝
子中の突然変異に関連していた。
【0030】 他の輸送体ABCは、ニューロン及び腫瘍疾患に関連しており(米国特許第5
,858,719号)、あるいはまた、金属のホメオスタシスの改変、例えばタ
ンパク質ABC−3によって引起された病気に潜在的に関わっていた。
【0031】 同様にもう1つの輸送体ABCは、PF1C2と呼ばれているが、これは進行
性家族性肝臓内胆汁分泌停止の一形態に関わっているように見える。このタンパ
ク質は潜在的に、ヒトの場合、胆汁塩の輸出の原因である。
【0032】 1994年に、マウスの新規輸送体ABCについてコードするDNAcが同定
され、ABC1と名付けられた(Lucianiら、1994年)。このタンパ
ク質は、高度に疎水性のセグメント及び2つのNBFモチーフに結合した2つの
貫膜ドメインを含む対称構造を含んでいるという点において、輸送体ABCの特
徴である。
【0033】 ヒトにおいて、ヒト輸送体ABC1のオープンリーディング段階の全体を含む
部分的DNAcが同定された(Langmannら、1999)。
【0034】 同様に、ヒトタンパク質ABC1についてコードする遺伝子が、種々の組織に
おいて、より詳しくは胎盤、肝臓、肺、副腎内、並びに胎児組織内で、高いレベ
ルで発現されることも証明された。
【0035】 これらの研究者らはまた、ヒトタンパク質ABC1についてコードする遺伝子
の発現が、試験管内でのマクロファージへの単核細胞の分化中に誘発されること
をも発明した。さらにはタンパク質ABC1についてコードする遺伝子の発現は
、ヒトマクロファージがアセチル化低密度リポタンパク質(AcLDL)の存在
下にインキュベーションされる時に増加する。
【0036】 しかしながら脂質の輸送系におけるヒトタンパク質ABC1の正確な役割は、
まったく知られていない。タンパク質ABC1が、リン脂質のトランスロカーゼ
活性を有すると仮定されるだけである。
【0037】 本発明によれば今や、タンジエール病に罹っている患者が、突然変異された遺
伝子ABC1を含むことが証明された。遺伝子ABC1の様々なエキソン中に分
配されているいくつかの突然変異は、様々な患者、特に冠動脈異常に関連する病
気の重症形態に冒された患者のゲノムにおいて同定された。さらには種々の多形
性が、この病気のより軽症の形態に罹っている患者において、遺伝子ABC1の
エキソンとイントロンとにおいて同時に発見された。このことは、これらの患者
が、1つ又は複数の「野生型」アレレとは異なるこの遺伝子の特別なアレレレを
有することを示している。一部これらの多形性を特徴とするこのようなアレレは
さらに、それぞれこの遺伝子の第一エキソンの5’側、あるいはさらには最後の
エキソンの3’側に局在化された非コード領域において、特に調節領域において
、例えばプロモーター配列において、あるいはさらには活性化配列において(英
語で“enhancer」)において、ヌクレオチドの置換、付加、欠失を含み
やすく、これはポリペプチドABC1の合成において欠陥増加又は減少を誘発す
る性質を有するものである。
【0038】 従って遺伝子ABC1において、タンジエール病に罹っている患者において、
特別な第一突然変異が同定された。これは、エキソン13に局在化されており、
ヌクレオチドの置換から成っており、これによって、オープンリーディング段階
への早すぎる翻訳停止コドンの導入を引起し、これはタンジエール病に冒されて
いない患者において、合成ポリペプチドのアミノ酸配列の約1/4を含む一部分
が欠けたポリペプチドの合成を生じる。
【0039】 遺伝子ABC1における特別な第二突然変異が発見された。これは、エキソン
12への100ヌクレオチドの断片の挿入から成っており、これは、次の点にお
いて異常なポリペプチドの合成を生じる。すなわち、これは6残基の欠失及び3
8アミノ酸の挿入を含む、それもタンパク質配列の468位において含むという
点においてである。
【0040】 さらに本発明によれば、遺伝子ABC1がアセチル化低密度リポタンパク質(
AcLDL)によって確かに調節されていることも確認された。
【0041】 (一般的定義) 本発明の意味における「単離されている」という用語は、もとの環境(これが
自然に局在化されている環境)から取られた生物学的物質(核酸又はタンパク質
)のことについて言う。
【0042】 例えば植物又は動物において自然状態で存在するポリヌクレオチドは、単離さ
れていない。隣接核酸(この中でポリヌクレオチドは植物又は動物のゲノム中に
自然に挿入されている)から分離された同じポリヌクレオチドは、「単離されて
いる」と考えられる。
【0043】 このようなポリヌクレオチドは、ベクター中に含まれていてもよく、及び/又
はこのようなポリヌクレオチドは、1つの組成物中に含まれていてもよく、それ
にもかかわらず、このベクター又は組成物がその自然の環境を構成していないと
いう事実によって、単離された状態に留まりうる。
【0044】 「精製された」という用語は、この物質が、他の化合物の存在を排除する絶対
純度の形態で存在することを必要としない。これはむしろ相対的な定義である。
【0045】 ポリヌクレオチドは、少なくとも好ましくは2又は3程度の大きさ、好ましく
は4又は5程度の大きさの出発原料又は天然物質の精製後の「精製された」状態
にある。
【0046】 本明細書の目的のためには、「ヌクレオチド配列」という表現は、ポリヌクレ
オチド又は核酸を無差別に示すために用いることができる。「ヌクレオチド配列
」という表現は、遺伝物質それ自体を包含しており、従ってその配列に関する情
報には制限されない。
【0047】 「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、あるいはさらに
は「ヌクレオチド配列」という用語は、RNA、DNA、DNAc配列、あるい
はさらには1つ以上のヌクレオチドのRNA/DNAハイブリッド配列を、単鎖
形態でも二重鎖形態でも無差別に包含する。
【0048】 「ヌクレオチド」という用語は、天然ヌクレオチド(A、T、G、C)と同時
に、例えば(1)プリンの類似体、(2)ピリミジンの類似体、又は(3)類似
糖のような少なくとも1つの修飾を含む、修飾されたヌクレオチドを示しており
、このような修飾ヌクレオチドの例は、例えばPCT出願第WO95/0406
4号に記載されている。
【0049】 本発明の目的のためには、第一ポリヌクレオチドは、第一ヌクレオチドの各塩
基が、逆の配向を有する第二ポリヌクレオチドの相補塩基と対になっている時、
第二ポリヌクレオチドの「相補的なもの」であると考えられる。相補塩基は、A
とT(又はAとU)、又はCとGである。
【0050】 本発明による核酸の「変異型」とは、対照ポリヌクレオチドと比べて1つ又は
複数の塩基が異なる核酸のことを言う。変異型核酸は、天然起源のもの、例えば
自然界に見られるアレリック変異型であってもよく、あるいはまた、例えば突然
変異誘発技術によって得られた、非天然変異型であってもよい。
【0051】 一般に対照核酸と変異型核酸との差は、対照核酸と変異型核酸のヌクレオチド
配列が非常に近くなるように、多くの領域では同一になるように小さくされる。
変異型核酸中に存在するヌクレオチドの修飾は、サイレントであってもよく、こ
のことは、これらの修飾が前記変異型核酸によってコードされたアミノ酸配列を
改変しないことを意味する。
【0052】 しかしながら変異型核酸中のヌクレオチドの変化もまた、対照核酸によってコ
ードされたポリペプチドと比べて、変異型核酸によってコードされたポリペプチ
ドにおける置換、付加、欠失において結果として生じうる。さらにはコード領域
中のヌクレオチドの修飾は、アミノ酸配列における同類又は非同類置換を生じる
ことがある。
【0053】 好ましくは本発明による変異型核酸は、対照核酸のポリペプチドと実質的に同
じ生物学的機能又は活性、あるいはさらには、最初の核酸によってコードされた
ポリペプチドに対して向けられた抗体によって認識される能力を保持するポリペ
プチドについてコードする。
【0054】 従ってあるいくつかの変異型核酸は、体系的研究によって、問題のタンパク質
の構造・活性の関係を推論することができるポリペプチドの突然変異形態につい
てコードする。研究された病気に対してこれらの変異型を知ることは基本的なこ
とであるが、それは、これによって、この病気の分子的原因を理解することがで
きるからである。
【0055】 「断片」とは、本発明による対照核酸、対照核酸と比べて小さくなった長さを
有し、かつ共通の部分において対照核酸と同一のヌクレオチド配列を有するヌク
レオチド配列のことを言う。
【0056】 本発明による核酸のこのような「断片」は場合によっては、これが構成してい
る、より大きいポリヌクレオチドの中に含まれていてもよい。
【0057】 このような断片は、本発明による核酸の8、10、12、15、18、20〜
25、30、40、50、70、80、100、200、500、1000、又
は1500連続ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含んでいるか、ある
いはまたこれらから成っている。
【0058】 本発明によるポリペプチドの「変異型」とは主として、対照ポリペプチドのア
ミノ酸配列と比べて、少なくとも1つのアミノ酸残基の1つ又は複数の置換、付
加、又は欠失を含むアミノ酸配列のポリペプチドのことを言い、アミノ酸の置換
は、無差別に同類であっても非同類であってもよいと理解される。
【0059】 本発明によるポリペプチドの「断片」とは、対照ポリペプチドの配列よりも短
いアミノ酸配列を有し、かつこれらの対照ポリペプチドとの共通部分全体におい
て、同一のアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドのことを言う。
【0060】 このような断片は場合によっては、これらが属している、より大きいポリペプ
チドの中に含まれていてもよい。
【0061】 本発明によるポリペプチドのこのような断片は、10、15、20、30〜4
0、50、100、200、又は300アミノ酸の長さを有していてもよい。
【0062】 ヌクレオチド又はアミノ酸の2つの配列間の「同一性の割合%」は、本発明の
意味においては、比較窓(fenetre de comparaison)を
通して、最適に整合された2つの配列を比較して決定することができる。
【0063】 従って比較窓におけるヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配
列の最適な整合を得るように、対照配列(これは付加も欠失も含んでいない)に
対して、付加又は欠失(例えば「ギャップ」)を含んでいてもよい。
【0064】 この割合%は、同一な核塩基又はアミノ酸残基が、比較された2つの配列(核
又はペプチド配列)について観察される位置数を測定し、ついで2つの塩基又は
アミノ酸残基間に同一性がある位置数を、比較窓における位置総数で割り、つい
でこの結果に100を掛けて計算され、配列の同一性の割合%が得られる。
【0065】 この比較のための配列の最適な整合は、ウイスコンシン州マジソン、575サ
イエンスドクターのウイスコンシン・ジェネティックス・ソフトウエア・パッケ
ージ、ジェテティックス・コンピュータ・グループ社(GCG)(WISCON
SIN GENETICS SOFTWARE PACKAGE,GENETI
CS COMPUTER GROUP(GCG),575 Science D
octor,Madison,WISCONSIN)のパッケージに入っている
既知のアルゴリズムによって、情報科学的に実施することができる。
【0066】 例えば、配列の同一性割合%は、端数を切り捨てたパラメーターを専ら用いて
、ブラスト(BLAST)ソフトウエア(1996年3月のブラストバージョン
1.4.9、1998年2月のブラスト2.0.4、及び1998年9月のブラ
スト2.0.6)によって実施することができる(S.F.Altschulら
、J.Mol.Biol.1990、215;403−410、S.F.Alt
schulら、Nucleic Acids Res.1997 25:338
9−3402)。ブラストは、Altschulらのアルゴリズムを用いて、対
照「リクエスト」配列と同様な/相同な配列を求めている。このリクエスト配列
及び用いられたデータのベースは、ペプチドであっても又は核であってもよく、
あらゆる組合わせが可能である。
【0067】 本発明の意味での「強緊縮ハイブリダイゼーション条件」とは、下記条件を意
味する: 1.膜競合及びプレハイブリダイゼーション: −混合する:サケの精液40μl DNA(10mg/ml) +ヒト胎盤40μl DNA(10mg/ml)。
【0068】 −96℃で5分間変性し、ついでこの混合物を氷の中に浸す。
【0069】 −SSC2Xを取り除き、これらの膜が入っているハイブリダイゼーション管
の中にホルムアミドミックス4mlを注ぐ。
【0070】 −変性された2つのDNAの混合物を添加する。
【0071】 −42℃で5〜6時間、回転を伴なうインキュベーション。
【0072】 2.マークされたプローブの競合: −マーク及び精製されたプローブに、繰返し体の量に応じて、10〜50μl DNA Cot lを添加する。
【0073】 −95℃で7〜10分間変性する。
【0074】 −65℃で2〜5時間インキュベーションする。
【0075】 3.ハイブリダイゼーション: −プレハイブリダイゼーションミックスを取除く。
【0076】 −サケの精液40μl DNA+ヒト胎盤40μl DNAを混合し、96℃
で5分間変性し、ついで氷の中に浸す。
【0077】 −ハイブリダイゼーション管の中に、ホルムアミドミックス4ml、2つのD
NAの混合物、マークされたプローブ/変性されたDNA Cot lを添加す
る。
【0078】 −42℃で15〜20時間、回転を伴なってインキュベーションする。
【0079】 4.洗浄: −濯ぎ洗いをするために、周囲温度でSSC2X中での洗浄。
【0080】 −周囲温度でSSC2Xで及び65℃でSDS0.1%で5分間2回。
【0081】 −65℃でSSC1Xで、65℃でSDS0.1%で15分間2回。
【0082】 これらの膜をサランに包んで暴露する。
【0083】 前記ハイブリダイゼーション条件を、数百のヌクレオチドを有する20ヌクレ
オチドの可変長さの核酸分子の強緊縮条件下でのハイブリダイゼーションに適合
させる。
【0084】 前記ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションが求められてい
る核酸の長さ、又は当業者に知られている技術に従って選ばれたマーキング型に
応じて適合させてもよいことは言うまでもない。
【0085】 便利なハイブリダイゼーション条件は、例えばHAMES及びHIGGINS
の研究(1985)、あるいはまたF.AUSUBELらの研究(1999)に
含まれている教示に従って適合させてもよい。
【0086】 遺伝子ABC1の核酸 ゲノム配列 ヒト遺伝子ABC1は、特にマウスにおけるオーソロガス遺伝子ABC1の構
造を参照するならば、48エキソンと47イントロンとを含むであろう。
【0087】 遺伝子ABC1のいくつかの部分的ゲノムヌクレオチド配列が単離され、本発
明によって特徴決定された。これらのゲノム配列は、エキソン配列と新規イント
ロン配列とを同時に備えている。これらは特に、試料中の遺伝子ABC1又はこ
れのヌクレオチド発現産物の様々な検出手段の製造のために用いることができる
。これらの部分的ゲノム配列を、下記表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】 従って本発明の第一の目的は、ヌクレオチド配列配列番号1−14から成る群
から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも245連続ヌ
クレオチドを含む核酸から成る。
【0090】 本発明はまた、ヌクレオチド配列配列番号1−14から成る群から選ばれるポ
リヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも245連続ヌクレオチドを含
む核酸との、少なくとも80%、有利には90%、好ましくは95%、非常に好
ましくは98%のヌクレオチド同一性を有する核酸にも関する。
【0091】 遺伝子ABC1の32エキソンは少なくとも一部、下記表IIに示されている
ような、これらのヌクレオチド配列を特徴としていた。
【0092】
【表2】
【0093】 従って本発明はまた、ヌクレオチド配列配列番号15−47から成る群から選
ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む核酸にも関する。
【0094】 さらには、遺伝子ABC1の35イントロンが単離され、少なくとも一部特徴
決定された。遺伝子ABC1のイントロンのヌクレオチド配列、並びにこれらの
断片及びこれらの変異型はまた、試料中の遺伝子ABC1の少なくとも1つのコ
ピーの存在を検出するため、あるいはまた遺伝子ABC1中の決定された配列を
増幅させるためのヌクレオチドプローブ又はプライマーとしても用いることがで
きる。
【0095】 遺伝子ABC1のイントロン配列への参照は、下記表IIIに示されている。
【0096】
【表3】
【0097】 本発明はまた、ヌクレオチド配列配列番号48−89から成る群から選ばれる
ポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌクレオチドを含む
核酸にも関する。
【0098】 本発明はさらに、ヌクレオチド配列配列番号48−89から成る群から選ばれ
るポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチド
同一性を有する核酸をも目的とする。
【0099】 本発明はまた、強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号48−89から成
る群から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸とハイブリダイズする
核酸にも関する。
【0100】 さらには、遺伝子ABC1の最後のエキソンの3’末端の下流に局在化されて
いる潜在的調節ゲノムヌクレオチド配列が単離された。配列配列番号90のポリ
ヌクレオチドである。特にコレステロールの逆輸送における欠損の軽症形態、特
にタンジエール病の軽症形態に冒されている患者の場合、この潜在的調節配列に
おける多形性の特徴決定は、遺伝子ABC1の発現の調節における欠陥を誘発し
やすいこれらの多形性のいくつかに特異的な、適切な検出手段、プローブ、又は
プライマーをつくることができるようにする性質のものであろう。
【0101】 配列配列番号90の生物学的に活性なポリヌクレオチド断片を同定するために
、当業者は有利にはSambrookらの研究(1989)を参照することがで
きるであろう。これは、マーカー遺伝子(例えばβガラクトシダーゼ、クロラム
フェニコールアセチルトランスフェラーゼ等)を有する組換えベクターの使用に
ついて記載している。これの発現は、このマーカー遺伝子が配列配列番号90の
ポリヌクレオチドの適合させられたプロモーター及び生物学的に活性な断片の制
御下に置かれた時に検出することができる。配列配列番号90の生物学的に活性
なこのような断片は特に、適切な調節配列の選択ベクター、例えばクロンテック
社(Clontech)から販売されているベクターpSEAP−ベイシック(
Basic)、pSEAP−エンハンサー(Enhancer)、pβgal−
ベイシック、pβgal−エンハンサー、あるいはさらにはpEGFP−1のう
ちの1つにクローンすることができる。
【0102】 本発明はさらに、ヌクレオチド配列配列番号90から成る群から選ばれるポリ
ヌクレオチド、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチド同一性
を有する核酸をも目的とする。
【0103】 本発明はまた、強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号90から成る群か
ら選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸とハイブリダイズする核酸に
も関する。
【0104】 完全DNAc 以前に既に指摘されているように、遺伝子ABC1の発現に対応するDNAc
の部分配列が、Langmannら(1999)によって同定された。ABC1
のDNAcのこの部分配列は、6880ヌクレオチドを含んでおり、コレステロ
ールの逆輸送と関連した障害に冒されていない被験者において生産されるタンパ
ク質ABC1に対応するオープンリーディング段階の全体を含んでいる。Lan
gmannら(1999)によって記載されたDNAc配列はさらに、5’−U
TR(ヌクレオチド1〜120)領域の一部と、3’−UTR(ヌクレオチド6
727〜6880)領域の一部とを含んでいる。
【0105】 本発明によれば今や、遺伝子ABC1に対応する完全DNAcの全体が単離さ
れ、特徴決定された。これは、新規3’−UTR領域を含んでおり、これは、特
に細胞中のメッセンジャーRNAの安定性の観点から重要な核領域を構成する。
【0106】 配列配列番号91の転写物の発現分析が、実施例1に記載されているようにR
T−PCRによって実施された。様々な組織のRNAポリA+から実施されたこ
れらの分析によって、遺伝子ABC1は胎児の大脳、大脳、心臓、胎盤、又は子
宮において発現されることを示すことができた。
【0107】 従って本発明はまた、ヒト遺伝子ABC1のDNAcの配列配列番号91のポ
リヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む核酸にも関する。
【0108】 配列配列番号91のヒト遺伝子ABC1のDNAcは、121位のヌクレオチ
ド(翻訳ATGの開始コドンの塩基A)から配列配列番号91の6723位のヌ
クレオチドまでのオープンリーディング段階を含んでいる。ポリアデニル化シグ
ナル(配列ATTAAAのもの)が存在しており、これは配列配列番号91の9
454位におけるヌクレオチドにおいて開始される。
【0109】 配列配列番号91のDNAcは、2201アミノ酸長さを有し、かつアミノ酸
配列配列番号139を有するポリペプチドABC1についてコードする。
【0110】 本発明はまた、配列配列番号92のポリヌクレオチド、これの生物学的に活性
な断片、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌクレオチドを含む核酸にも関
する。
【0111】 本発明はまた、配列配列番号92のポリヌクレオチド、これの生物学的に活性
な断片、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチド同一性を有す
る核酸をも目的とする。
【0112】 本発明のもう1つの目的は、強緊縮条件下に、配列配列番号92のポリヌクレ
オチド、これの生物学的に活性な断片、又は相補配列の核酸とハイブリダイズす
る核酸から成る。
【0113】 遺伝子ABC1中の多形性 突然変異 本発明によれば、いくつかの突然変異が、遺伝子ABC1の配列において同定
された。これらの突然変異は、突然変異された配列によってコードされたポリペ
プチドABC1の大きい構造的改変を生じた。これらの突然変異は特に、重大な
冠動脈障害に関連したタンジエール病の重症形態に罹っている患者において見ら
れた。特に有害な2つの突然変異を次に記載する。
【0114】 1.エキソン12における突然変異 この突然変異は、配列配列番号2の正常なゲノムDNAの472位のヌクレオ
チドから485位のヌクレオチドまでの局在化14ヌクレオチド(「TGAGA
GGAAGTTCT」)のセグメントの欠失と、配列番号2の正常なゲノムDN
Aの486位のヌクレオチドの上流において、遺伝子ABC1のエキソン12の
配列中への110ヌクレオチドのAlu型の配列の挿入とから同時に成る。
【0115】 欠失/挿入のこの突然変異を有するエキソン12は、ヌクレオチド配列配列番
号93を有する。
【0116】 突然変異されたこの対応DNAcは、ヌクレオチド配列配列番号94を有し、
配列配列番号140の2233アミノ酸長さの突然変異されたポリペプチドAB
C1についてコードする。これの構造は、配列配列番号139の正常なポリペプ
チドABC1に比べて強く改変されている。
【0117】 ヌクレオチド配列配列番号93及び94、並びにポリペプチド配列配列番号1
40もまた、本発明に属する。
【0118】 2.エキソン13における突然変異 この突然変異は、エキソン13に局在化されているゲノム配列配列番号2の1
232位のヌクレオチド(G)の欠失から成る(エキソン13の配列配列番号1
7の106位のヌクレオチドG)。1つの塩基のこの点欠失は、遺伝子ABC1
のRNAm中の正常なリーディング段階に停止コドンを導入する。
【0119】 この突然変異を有する遺伝子ABC1のエキソン13の配列は、配列配列番号
95のポリヌクレオチドである。
【0120】 遺伝子ABC1のエキソン13におけるこの突然変異に対応するDNAcは、
ヌクレオチド配列配列番号96によって表わされる。
【0121】 突然変異された遺伝子ABC1によってコードされる突然変異タンパク質は、
574アミノ酸長さを有する。すなわち正常なタンパク質のアミノ酸長さの約1
/4である。一部分が欠けたポリペプチドは、アミノ酸配列配列番号141を有
する。 ABC1の突然変異された配列の正常な配列を分化させうる構造的特徴(ゲノム
、メッセンジャーRNA、DNAc)は、試料中のABC1の突然変異配列の検
出手段、特にABC1の突然変異配列と特異的にハイブリダイズするプローブ、
あるいはさらには上記突然変異を有する遺伝子ABC1の領域を選択的に増幅さ
せうるプライマーカップルをつくるために利用することができる。これらの突然
変異の存在の検出は特に、増幅された核酸の断片の長さを見分けること、前記特
異的プローブによる増幅断片のハイブリダイゼーションによって、あるいはさら
にはこれらの増幅断片の直接配列決定によって、実施することができる。
【0122】 このようにして本発明はさらに、ヌクレオチド配列配列番号93−96から成
る群から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌ
クレオチドを有する核酸をも目的とする。
【0123】 好ましくはこのような核酸は、下記のものを含んでいる: a)配列配列番号93及び94に局在化された配列Aluの少なくとも2つの
連続ヌクレオチド、好ましくは配列配列番号93及び94中に局在化された配列
Aluの5、10、15、20、25、30、35、40、50、又は100連
続ヌクレオチド; b)あるいは配列配列番号94及び95において欠失された塩基Gの両側に位
置する少なくとも2つのヌクレオチド「CT」。
【0124】 同様に、前記2つの突然変異のどちらかを有するABC1の配列(ゲノム、メ
ッセンジャーRNA)の領域に局在化された1つの核配列とハイブリダイズする
プライマーも、本発明の一部である。
【0125】 本発明はさらに、ヌクレオチド配列配列番号93−96から成る群から選ばれ
るポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチド
同一性を有する核酸にも関する。
【0126】 本発明はまた、強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号93−96から成
る群から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸とハイブリダイズする
核酸にも関する。
【0127】 その他の多形性 その他の多形性は、遺伝子ABC1の配列の中に見られた。特にコード領域(
エキソン)及び非コード領域に同時に局在化されているヌクレオチドの置換であ
る。
【0128】 コード領域の中に見られる多形性に関して、本質的にはABC1のオープンリ
ーディグフレームのコドンの第三塩基上に局在化されている唯一のヌクレオチド
の置換であり、これらの置換は、当業者によく知られている、人間における遺伝
的変質の規則を考慮すると、コードされたアミノ酸の性質に関して修飾を伴なわ
ない。
【0129】 これらの多形性は、本明細書において41塩基長さのヌクレオチド配列の形態
で示されている。多形塩基は、多形断片の中心に局在化されている。探し当てら
れた多形性の各々の場合、各々のアレレは従って41塩基の配列として表わされ
、多形性それ自体は、それぞれこれらの形態の各々に対応する2つのヌクレオチ
ド配列によって規定される。遺伝子ABC1において同定されている多形性は、
下記表IVに示されている。
【0130】
【表4】
【0131】 被験者からのDNA試料中のこれらの多形性の検出は、例えば多形塩基を含む
ABC1のヌクレオチド領域の特異的増幅、ついで増幅された断片の配列決定に
よって実施し、前記被験者が有する1つ又は複数のアレレの性質を決定すること
ができる。
【0132】 被験者からのDNA試料中のこれらの多形性の検出はまた、本発明による遺伝
子ABC1の多形性の多形塩基のうちの1つを含む、決定されたアレレと特異的
にハイブリダイズするヌクレオチドプローブ又はプライマーを用いて実施するこ
ともできる。
【0133】 例えば、適切なヌクレオチドプライマーは例えば、その3’末端における塩基
が、前記多形性を含むこの断片の多形塩基の5’側のすぐ近くに局在化された塩
基とバイブリダイズするプライマーである。特異的プライマーのハイブリダイゼ
ーション工程後、例えば蛍光によって差別的にマークされた前記多形性の多形塩
基の2つの相補的ジデオキシヌクレオチドの混合物を用いた延長工程、ついで得
られた蛍光シグナルの検出工程によって、異なった仕方でマークされたこれら2
つの蛍光ジデオキシヌクレオチドのうちのどちらが組込まれたかを決定すること
ができ、この多形性のレベルに存在する多形塩基の性質を直接推論することがで
きる。
【0134】 これらのジデオキシヌクレオチドのマーキング及び検出のために、様々な方法
を用いることができる。FRET(「蛍光共鳴エネルギー転移」に基づいた均一
相方法が、Chen及びKwok(1997年)によって記載された。この方法
によれば、多形性を含むゲノムDNAの増幅断片を、マークされた三リン酸ジデ
オキシヌクレオチド及び修飾ポリメラーゼTaqの存在下に、5’末端において
フルオレセインでマークされたプライマーと共にインキュベーションする。マー
クされたプライマーは、相補ゲノムDNAの配列上に存在するアレレの特異的マ
ークジデオキシヌクレオチドの組込みによって一塩基だけ伸ばされている。この
遺伝子型決定(genotypage)反応が終わった時、マークされたジデオ
キシヌクレオチドの2つのマーカー化合物についての蛍光強度を、分離も精製も
行なわずに直接分析する。これらの工程の全体は、同じ管で実施されてもよく、
蛍光シグナルの修飾がリアルタイムにその後に続く。もう1つの実施態様によれ
ば、伸ばされたプライマーは、MALDI−TOF型のマススペクトロメトリー
によって分析することができる。多形を有する部位のレベルに局在化された塩基
は、ミクロ配列決定のプライマーに添加された質量の測定によって同定される(
Haff及びSmirnov、1997)。
【0135】 このようなヌクレオチドプライマーは例えば、支持体上に固定化されてもよい
。さらには、前記のような特異的多プライマーを、例えば秩序正しく支持体上に
固定化することもできる。これらのプライマーの各々は、本発明による遺伝子A
BC1の多形性の1つの検出に適している。
【0136】 本発明による遺伝子ABC1の多形性は、被験者におけるある一定のアレレの
存在と、この被験者のある一定の病気への素質、特に染色体領域9q31と既に
関連付けられている病気の1つ、好ましくはコレステロールの逆輸送の機能不全
に関連した病気への素質との間の関連性の研究において、特に遺伝マーカーとし
て有用である。
【0137】 複合形質(表現型)の遺伝的分析方法は、様々な種類を有する(Lander
及びSchork、1994)。一般に、本発明によるビアレリック多形性は、
遺伝子型と表現型との間の統計的に有意な相関関係を証明するための技術の状態
において記載されている方法のいずれか1つにおいて有用である。ビアレリック
多形性は、連鎖分析(「linkage analysis」)及びアレレの共
有(「allele sharing」)方法において用いることができる。好
ましくは本発明によるビアレリック多形性は、関連性の研究を用いて検出可能な
形質(表現型)と関連する遺伝子を同定するために用いられる。これは、この形
質によって影響を受けている家族を利用する必要もなく、さらには複合的及び散
発性形質と関連する遺伝子の同定をも可能にする方法である。
【0138】 本発明によるビアレリック多形性を利用するその他の統計学的方法は例えば、
Forsellら(1997)、Xiongら(1999)、Horvathら
(1998)、Shamら(1995)、あるいはさらにはNickerson
ら(1992)によって記載された方法である。
【0139】 もう1つの側面によれば、本発明はまた、前記のような少なくとも1つのビア
レリック多形性を含む遺伝子ABC1のヌクレオチド配列にも関する。
【0140】 従って本発明はまた、ヌクレオチド配列配列番号97−108から成る群から
選ばれ、かつ多形塩基を含むポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくと
も8連続ヌクレオチドを有する核酸にも関する。
【0141】 ヌクレオチドプローブ及びプライマー ヌクレオチド配列配列番号1−14、15−47、48−89、90、92、
94−96、及び97−108のいずれか1つから誘導された核酸の断片は、試
料中の遺伝子ABC1の1つのヌクレオチド配列、あるいはさらにはこの後者の
ものの1つの断片又は変異型(突然変異又は多形性を含むもの)の少なくとも1
つのコピーの存在の検出に有用である。
【0142】 本発明によるヌクレオチドプローブ又はプライマーは、配列配列番号1−14
、15−47、48−89、90、92、93−96、及び97−108から成
る群から選ばれる1つの核酸、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌクレオ
チドを含んでいる。
【0143】 好ましくは本発明によるヌクレオチドプローブ又はプライマーは、本発明によ
る核酸、特に配列配列番号1−14、15−47、48−89、90、92、9
3−96、及び97−108から選ばれるヌクレオチド配列の核酸、又は相補配
列の核酸の10、12、15、18、又は20〜25、35、40、50、70
、80、100、200、500、1000、又は1500連続ヌクレオチドの
長さを有するであろう。
【0144】 あるいはまた、本発明によるヌクレオチドプローブ又はプライマーは、本発明
による核酸、より詳しくは配列配列番号1−14、15−47、48−89、9
0、92、93−96、及び97−108から選ばれる1つの核酸、又は相補配
列の核酸の12、15、18、20、25、35、40、50、100、200
、500、1000、又は1500連続ヌクレオチドの長さの断片から成るか、
及び/又はこれを含むであろう。
【0145】 従って本発明によるヌクレオチドプローブ又はプライマーの定義は、前記のよ
うな強緊縮バイブリダイゼイション条件下において、配列配列番号1−14、1
5−47、48−89、90、92、93−96、及び97−108から選ばれ
る1つの核酸、又はこれらの後者の相補配列の核酸とハイブリダイズするオリゴ
ヌクレオチドを包含する。
【0146】 遺伝子ABC1の種々の領域を増幅することができるプライマー及びプライマ
ーカップルの例は、下記表Vに示されている。
【0147】
【表5】 本発明による好ましいプローブ及びプライマーの第一実施態様によれば、これ
らは、ヌクレオチド配列配列番号109−138から選ばれるポリヌクレオチド
、又は相補配列の核酸のすべて又は一部を含んでいる。
【0148】 本発明によるヌクレオチドプライマー又はプローブは、当業者によく知られた
あらゆる適合方法によって調製することができる。この方法には、制限酵素のク
ローニング及び作用、あるいはさらには例えばNarangら(1979)又は
Brownら(1979)のホスホジエステル方法、Beaucageら(19
80)のジエチルホスホルアミダイト方法のような技術、あるいはさらには欧州
特許第EP0707592号に記載されている固体支持体上の技術よる化学合成
による方法が含まれる。
【0149】 前記オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーが含まれる、本発明による核
酸の各々は、所望であれば、分光、光化学、生化学、免疫化学、あるいはさらに
は化学的手段によって検出しうるマーカーを組込んで、マークされてもよい。
【0150】 例えばこのようなマーカーは、放射性同位元素(32P、33P、3H、35
S)、蛍光分子(5−ブロモデオキシウリジン、フルオレセイン、アセチルアミ
ノフルオレン、ジゴキシゲニン)、あるいはまた例えばビオチンのようなリガン
ドから成っていてもよい。
【0151】 プローブのマーキングは好ましくは、プライマーの延長によって、あるいはま
た5’又は3’末端上への付加によって、ポリヌクレオチドの中にマーク分子を
組込んで実施される。
【0152】 核酸断片の非放射性マーキングの例は特に、フランス特許第FR781097
5号、あるいはさらにはUrdeaら(1988)又はSanchez−pes
cadorら(1988)の論文に記載されている。
【0153】 有利には本発明によるプローブは、このシグナルの増幅を可能にする性質の構
造的特徴を有していてもよい。例えばUrdeaら(1991)によって、ある
いはさらには欧州特許第EP−0225807号(CHIRON)に記載されて
いるプローブである。
【0154】 本発明によるオリゴヌクレオチドプローブは特に、ゲノムDNAのサザン型ハ
イブリダーゼーションにおいて、あるいはさらには対応する転写物の発現が試料
中において求められている時に、対応メッセンジャーRNAのハイブリダイゼー
ションにおいて用いることができる。
【0155】 本発明によるプローブはまた、PCR増幅産物の検出のために、あるいはさら
にはメソペア(mesappariements)の検出にも用いることができ
る。
【0156】 本発明によるヌクレオチドプローブ又はプライマーは、固体支持体上に固定化
されてもよい。このような固体支持体は、当業者によく知られており、これらに
は、ミクロ滴定プレート容器(puits)の表面、ポリスチレン床、磁気床、
ニトロセルロースバンド、あるいはさらには例えばラテックス粒子のようなミク
ロ粒子が含まれる。
【0157】 従って本発明はまた、試料中の前記のような核酸の存在の検出方法にも関する
。前記方法は下記工程を含む: 1)本発明による1つ又は複数のヌクレオチドプローブと、テストされる試料
とを接触させる工程; 2)1つ又は複数のプローブと、試料中に存在する核酸との間に場合によって
は形成される複合体を検出する工程。
【0158】 本発明による検出方法の特別な実施態様によれば、1つ又は複数のオリゴヌク
レオチドプローブは、支持体上に固定化されている。
【0159】 もう1つの側面によれば、オリゴヌクレオチドプローブは、検出可能なマーカ
ーを含んでいる。
【0160】 本発明はさらに、試料中の本発明による核酸の存在の検出のために必要なもの
又はキットに関する。前記必要なものは、次のものを含んでいる: a)例えば前記のような1つ又は複数のヌクレオチドプローブ; b)場合によっては、ハイブリダイゼーション反応に必要な反応体。
【0161】 第一側面によれば、検出に必要なもの又はキットは、1つ又は複数のプローブ
が支持体上に固定化されていることを特徴とする。
【0162】 第二側面によれば、検出に必要なもの又はキットは、オリゴヌクレオチドプロ
ーブが、検出可能なマーカーを含んでいることを特徴とする。
【0163】 前記検出キットの特別な実施態様によれば、このようなキットは、関連標的配
列を検出するため、あるいはまた本発明による核酸、より詳しくは配列配列番号
1−14、15−47、48−89、90、92、93−96、及び97−10
8の核酸、又は相補配列の核酸のコード領域又は非コード領域における突然変異
を検出するために用いることができる、本発明に合致する複数のオリゴヌクレオ
チドプローブを含む。
【0164】 従って支持体上に固定化された本発明によるプローブは、例えば「DNAチッ
プ」のようにマトリックスにおいて秩序正しいものであってもよい。このような
秩序のあるマトリックスは特に、米国特許第5,143,854号、PCT出願
第WO 90/15070号及び第92/10092号に記載されている。
【0165】 オリゴヌクレオチドプローブが高密度で固定化されている支持体マトリックス
は、例えば米国特許第5,412,087号、及びPCT出願第WO 95/1
1995号に記載されている。
【0166】 本発明によるヌクレオチドプローブは、本発明による核酸のいずれか1つ、よ
り詳しくは配列配列番号1−14、15−47、48−89、90、92、93
−96、及び97−108の核酸、あるいはさらにはこれの変異型の全部又は一
部を増幅させるために用いられてもよい。
【0167】 本発明のもう1つの目的は、本発明による核酸、より詳しくは配列番号1−1
4、15−47、48−89、90、92、93−96、及び97−108の核
酸、又は試料の中に含まれているこれの断片又は変異型の増幅方法に関する。前
記方法は、下記工程を含んでいる: a)増幅反応に必要な反応体の存在下において、標的核酸の存在が疑われる試
料と、ハイブリダイゼーション位置が、増幅が求められている標的核酸の領域の
それぞれ5’側及び3’側に局在化されている一対のヌクレオチドプライマーと
を接触させる工程;及び b)増幅された核酸の検出工程。
【0168】 前記のような増幅方法の実施のためには、有利には前記ヌクレオチドプライマ
ーのいずれか1つを利用する。
【0169】 本発明はさらに、本発明による核酸、より詳しくは配列配列番号1−14、1
5−47、48−89、90、92、93−96、及び97−108の核酸の全
部又は一部の増幅に必要なもの又はキットをも目的とする。前記必要なもの又は
キットは、次のものを含んでいる: a)ハイブリダイゼーション位置が、増幅が求められている標的核酸のそれぞ
れ5’側及び3’側に局在化されている、本発明に合致するヌクレオチドプライ
マーカップル; b)場合によっては、増幅反応に必要な反応体。
【0170】 このような増幅に必要なもの又はキットは、有利には前記のような少なくとも
一対のヌクレオチドプライマーを含む。
【0171】 好ましい第一実施態様によれば、本発明によるプライマーは、前記第一突然変
異(欠失/挿入)を有する遺伝子ABC1のエキソン12の領域を増幅しうる、
ヌクレオチド配列配列番号109及び110から選ばれるポリヌクレオチド、又
は相補配列の核酸の全部又は一部を含んでいる。
【0172】 好ましい第二実施態様によれば、本発明によるプライマーは、前記第ニ突然変
異(塩基Gの欠失)を有する遺伝子ABC1のエキソン13の領域を増幅しうる
、ヌクレオチド配列配列番号111及び112から選ばれるポリヌクレオチド、
又は相補配列の核酸の全部又は一部を含んでいる。
【0173】 好ましい第三実施態様によれば、本発明によるプライマーは一般に、ヌクレオ
チド配列配列番号109−138から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列
の核酸の全部又は一部を含んでいる。
【0174】 好ましい第四実施態様によれば、本発明はまた、配列配列番号97−108か
ら成る群から選ばれる1つの核酸、又は相補配列の核酸の少なくとも15連続ヌ
クレオチドを含むヌクレオチドプライマーにも関する。これらのプライマーの3
’末端の塩基は、配列配列番号97−108又はこれらの相補配列の1つの多形
塩基の5’側のすぐ近くに局在化されているヌクレオチドの相補的なものである
【0175】 もう1つの側面によれば、本発明はまた、配列配列番号97−108から成る
群から選ばれる1つの核酸、又は相補配列の核酸の少なくとも15連続ヌクレオ
チドを含むヌクレオチドプライマーにも関する。これらのプライマーの3’末端
の塩基は、これらの配列配列番号97−108又はこれらの相補配列のうちの1
つの多形塩基の5’側の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、20ヌクレオチド又はそれ以上に
位置するヌクレオチドの相補的なものである。3’末端におけるヌクレオチドが
、配列配列番号97−108の1つの多形塩基の5’側の20以上のヌクレオチ
ドに局在化されたヌクレオチドの相補的なものであるプライマーを構成するため
に、当業者なら有利には、アレレの性質が求められている多形性を含む、配列配
列番号1−14、あるいはさらには配列番号15−47、及び48−90のうち
の対応するゲノム配列を参照するであろう。
【0176】 このようなプライマーは、被験者の遺伝子型決定及び/又は集団の遺伝子型決
定方法の枠内で、特に被験者において特別なアレレ形態又は特別なアレレ群(半
数型(haplotypes))の形態と、これらの被験者における特別な表現
型(形質)の存在、例えばこれらの被験者が、コレステロールの逆輸送における
欠損に関連した病気を発生させる素質、あるいはさらにはこれらの被験者が、染
色体9、より正確には腕9q上、さらにより正確には遺伝子座9q31の中に位
置する候補染色体領域を有する病気を発生させる素質との間の関連性の研究の枠
内で特に有用である。 DERKFW組換えベクター 本発明は、本発明による核酸を含む組換えベクターに関する。
【0177】 このような組換えベクターは次の核酸の中から選択した核酸を含むのが有利で
ある。すなわち、 a) 配列配列番号92の核酸またはこの核酸の生物学的に活性なフラグメン
ト、 b) 配列配列番号91、94または96のポリヌクレオチドを含む核酸、 c) ヌクレオチド配列配列番号15〜47および48〜90からなる群から
選択されるポリヌクレオチドを含む核酸、 d) ヌクレオチドとして、配列 配列番号15〜47および48〜90から
なる群から選択された核酸、またはこの核酸のフラグメントまたはこの核酸の異
性体と少なくとも80%同一性を有する核酸、 d)極めて厳密なハイブリダイゼーション条件において、配列 配列番号15
〜47および48〜90の核酸、またはこの核酸のフラグメントまたは異性体と
ハイブリッド形成する核酸。
【0178】 本発明の意味での『ベクター』とは、一本鎖または2本鎖の形態には拘わらず
、環状または線状 DNAまたはRNA分子を言う。
【0179】 第1実施方法に従って、本発明による組換えベクターは、所望の細胞宿主の形
質転換または形質移入後にそこに(組換えベクター)挿入される核酸を増幅する
ために使用される。
【0180】 第2の実施方法に従って、本発明に準拠する核酸の他に、本発明による組換え
ベクターは、核酸の転写および/または翻訳に導くことができる制御配列含む発
現ベクターに関する。
【0181】 有利な実施方法に従って、本発明による組換えベクターは特に次の要素を含む
【0182】 (1) プロモーターおよび活性化配列(転写促進因子)のような、挿入すべ
き核酸の発現を制御するエレメント、 (2) このようなベクター内に挿入すべき、本発明に準拠する核酸の中に含
まれるコード配列、前記コード配列は(1)に記載した制御信号との局面で配置
される、 (3) 適切な転写開始配列および終止配列。
【0183】 さらに、本発明による組換えベクターは、増幅または発現が求められる細胞の
宿主内で一つまたは複数の複製開始点、マーカーまたは選択マーカーを有してい
てもよい。
【0184】 例として、細菌プロモーターは Lacl、LacZプロモーター、バクテリ
オファージT3またはT7のRNAポリメラーゼプロモーター、λファージのP
RまたはPLプロモーターであってもよい。
【0185】 真核細胞用プロモーターはHSVウイルスのチミジンキナーゼのプロモーター
またはマウスのメタロチオネイン−Lのプロモーターを含む。
【0186】 一般に、採用するプロモーターの選択には、当業者は上述した Sambro
okらの著作(1989年)またはFullerらの技術文書(1996年)を
参考にするのが有利であろう。 ABC1遺伝子のゲノム配列の発現が望ましい場合は、大きな挿入配列を含むこ
とが可能なベクターを用いるのが好ましい。この特別な実施方法では、Ster
nbergが記載している(1992、1994年)ベクター p158または
さらにベクターp158/ネオ8などのバクテリオファージベクターP1のよう
なバクテリオファージベクターを使用するのが好ましい。
【0187】 本発明による好ましい細菌性ベクターは、たとえばベクターpBR322(A
TCC37017)、またはpAA223−3(Pharmacia、Upps
ala、スウェーデン)およびpGEM1(Promega Biotech、
Madison、WI、米国)のようなベクターである。
【0188】 さらに、ベクターpQE70、pQE60、pQE9(Qiagen)、ps
iX174、pBluescript SA、pNH8A、pNH16A、pN
H18A、pNH46A、pWLNEO、pSV2CAT、OG44、pXTI
、pSG(Stratagene)のようなその他の市販のベクターを挙げるこ
とができる。
【0189】 さらに、Spodoptera frugiperdaから派生したSf9(
ATCC番号CRL1711)系統の細胞を形質移入するために使用されるベク
ターpVL1392/1393(Pharmingen)のようなバキュロウイ
ルス型のベクターでもよい。
【0190】 さらには2または5型のヒトアデノウイルスのようなアデノウイルスベクター
であってもよい。
【0191】 本発明による組換えベクターはまた、レトロウイルスまたはアデノ随伴ベクタ
ー(AAV)であってもよい。このようなアデノ随伴ベクターはたとえば Fl
otteら(1992年)、Samulskiら(1989年)またはMcLa
ughlin BAら(1996年)により記載されている。
【0192】 本発明によるポリヌクレオチドの発現を可能にするために、これらのポリヌク
レオチドを宿主細胞内に導入する必要がある。本発明によるポリヌクレオチドの
宿主細胞内への導入は、細胞の形質転換または形質移入を行うために当業者によ
く知られた技術により、インビトロで、あるいは一次培養において、あるいは細
胞系統形態下で行ってもよい。また、コレステロールの逆輸送不全に関連する病
気の予防または治療のために、本発明によるポリヌクレオチドの導入をインビボ
またはエックスビボで行うことも可能である。
【0193】 ポリヌクレオチドまたはベクターを宿主細胞内へ導入するために、当業者は、
リン酸カルシウムによる沈殿技法(Grahamら、1973年、Chenら、
1987年)、DEAEデキストラン(Gopal、1985年)、電気穿孔法
(Tur−Kaspa、1896年、Potterら、1984年)、直接微量
注入(Harlandら、1985年)、DNA電荷リポソーム(Nicola
uら、1982年、Fraleyら、1979年)のようなさまざまな技術を参
考にするのが有利である。
【0194】 ひとたびポリヌクレオチドが宿主細胞内に導入されると、細胞のゲノム内に安
定した状態で取り込まれる。取り込みはゲノムの一定の場所で相同的組換えによ
り行われてもよく、または場所を特定せずに行われてもよい。実施方法によって
は、ポリヌクレオチドは、エピソームフラグメントの形態下で宿主細胞内に安定
的に維持されることも可能で、エピソームはこのエピソームを細胞サイクルから
独立して、あるいは細胞サイクルと同期して維持、複製することができる配列を
含んでいる。
【0195】 特別な実施方法により、本発明によるポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入す
る方法、特に哺乳類に由来する宿主細胞内にインビボで導入する方法には、医薬
的に適合性のあるベクターと、適切な制御配列のコントロール下に置かれた本発
明による『裸の』ポリヌクレオチドとを含むプレパラートを、選択した組織、た
とえば平滑筋組織に局所注入により導入する工程が含まれ、『裸の』ヌクレオチ
ドは、この組織の細胞に吸収される。
【0196】 『裸の』ポリヌクレオチドを含む、インビトロおよびインビボで利用する組成
物はたとえば、PCT出願番号 WO95/11307(パスツール研究所、国
立衛生医学研究所、オタワ大学)、ならびにTacsonら(1996年)およ
びHuygenら(1996年)の論文に掲載されている。
【0197】 本発明の特殊実施方法により、ABC1蛋白のインビボ生成のための組成物が
提供されている。この組成物は、物理理論学上受容可能なベクター内に溶液状で
、適切な調節配列のコントロール下に置かれたABC1ポリペプチドのためのコ
ードポリヌクレオチドを含む。
【0198】 選択された宿主生物に注入されるベクターの量は注入部位により異なる。参考
までに、動物の、好ましくはコレステロールの逆輸送不全に関連する病気が進行
する可能性のある患者、またはすでにこの病気が進行している患者の体内にAB
C1蛋白質をコードするポリヌクレオチドを約0.1〜100μg注入してもよ
い。
【0199】 したがって、本発明はまた、物理理論学上適合性のある一つまたは複数の賦形
剤と組み合わせたABC1蛋白質をコードする核酸を含む、コレステロールの逆
輸送機能不全の罹っている患者の予防または治療のための医薬組成物にも関する
【0200】 有利には、このような組成物は、適切な制御エレメントのコントロール下に置
かれた、配列配列番号91のポリヌクレオチドを含む。
【0201】 本発明はさらに、物理理論学上適合性のある一つまたは複数の賦形剤と組み合
わせた本発明による組換えベクターを含む、コレステロールの逆輸送機能不全に
罹患した患者の予防または治療のための医薬組成物を対象とする。
【0202】 本発明はまた、さまざまな形態のアテローム性動脈硬化症の予防のための、ま
たはより詳細にはコレステロールの逆輸送機能不全の患者の治療のための医薬品
製造のために、ABC1蛋白質をコードする、本発明による核酸の使用に関する
【0203】 本発明はまた、さまざまな形態のアテローム性動脈硬化症の予防のための、ま
たはより詳細にはコレステロールの逆輸送機能不全の患者の治療のための医薬品
製造のために、ABC1蛋白質をコードする核酸を含む、本発明による組換えベ
クターの使用に関連する。
【0204】 体細胞遺伝子治療方法に使用されるベクターおよびこのようなベクターを含む
組成物 本発明はまた、コレステロール輸送に関連する病理を処置するための新規の治
療方法にも関する。本発明は、コレステロールの輸送および代謝に関与するAB
C1蛋白質をコードする遺伝子のインビボでの伝達および発現により、遺伝子治
療によるコレステロール輸送に関する病気を治療できることを証明することで、
従来技術の不都合面を対して優れた解決策を提供する。このように本発明は、た
とえばアテローム性動脈硬化症のような関連する病理の特殊なかつ効果的な治療
を可能にする簡単な方法を提供する。
【0205】 遺伝子治療は、欠陥または異常(異常な突然変異や発現、等)を修正する、ま
たは害を受けた細胞または器官内に遺伝情報を導入することで、治療効果のある
蛋白質を発現させるものである。この遺伝情報は、器官から抽出した細胞内に
エックスビボで導入され、修正された細胞が生体内に戻されてもよく、あるいは
直接適切な組織内に導入されてもよい。第2の場合さまざまな技術が存在し、中
でもDNAとDEAE−デキストランとの複合体(Paganoら、J. Vi
rol. 1(1967年) 891)、DNAと核蛋白質との複合体(Kan
edaら、Science243(1989年)375)、DNAと脂質との複
合体(Felgnerら、PNAS84(1987年)7413)、リポソーム
の使用(Fraleyら、J.Biol.Chem.225(1980年)10
431)、等を必要とするさまざまな形質移入技術ある。近年、これら形質移入
の物理的技術にとって有望な代替技術として遺伝子伝達のためのベクターとして
ウイルスを使用する方法が発表された。このためにさまざまなウイルスが、一定
の細胞群を感染させる能力についてテストが行われた。特にこれらはレトロウイ
ルス(RSV、HMS、MMS、等)、HSVウイルス、アデノ随伴ウイルス、
およびアデノウイルスである。
【0206】 したがって本発明は、ABC1をコードする遺伝子をインビボで伝達および発
現させる、コレステロールの輸送に関連する病気の処置ための新規の治療方法に
も関する。特に有利に、本出願人は今回、コレステロールの代謝に関与するAB
C1蛋白質に対してコードする DNA配列を含む組換えウイルスを構成し、こ
れら組換えウイルスをインビボで投与することが可能であること、またこの投与
により、インビボで生物学的に活性なABC1蛋白質の安定したかつ有効な発現
が可能であり、しかも細胞病理学的な副作用がないことを証明した。
【0207】 本発明はまた、アデノウイルスがABC1遺伝子の伝達と発現に対して特に有
効なベクターであることが明らかになったことに由来している。特に本発明は、
ベクターとして組換えアデノウイルスの使用することで、この遺伝子の十分に高
い発現レベルが得られ、求められている治療効果を生み出すことができることを
証明するものである。遺伝子の安定した発現を可能にするレトロウイルスまたは
アデノ随伴ウイルス(AAV)のようなその他ベクターも本請求の対象である。
【0208】 このように本発明は、コレステロールの輸送異常に関連する心血管病態および
神経性病態の治療および予防の新しい方法を提供する。
【0209】 したがって本発明はまた、コレステロールの代謝に関与するABC1蛋白質に
対してコードする核配列を含む欠損組換えウイルスも対象とする。
【0210】 本発明はまた、心血管病の治療および/または予防のための医薬組成物調製の
ためのこのような欠陥組換えウイルスの使用にも関する。
【0211】 本発明はまた、生物学的に活性なABC1蛋白質のインビボでの長期にわたる
かつ有効な発現を可能にする、上述したようなウイルスによりエックスビボで遺
伝子的に修正された細胞、またはこのようなウイルスを生成する、生体内に移植
された細胞の使用にも関する。
【0212】 本発明は、ウイルスベクター内にABC1をコードするDNA配列を取り込ま
せることが可能であること、かつこれらのベクターが生物学的に活性な成熟形態
を有効に発現させることが可能であることを証明する。より詳細には、本発明は
、アデノウイルスを直接投与することにより、または生成細胞、またはそのよう
なDNAを取り込んだアデノウイルスまたはレトロウイルスによって遺伝子的に
修正された細胞を移植することによりABC1がインビボで発現される可能性が
あることを証明する。
【0213】 本発明は、コントロールされた発現を引き起こすことが可能であり、しかも通
常この蛋白質の発現には関係しない器官にABC1の有害な影響を与えないので
特に有益である。特に本発明のベクターを生成する細胞、または本発明のベクタ
ーにエックスビボで感染させた細胞を移植することにより、ABC1蛋白質が有
意に単離される。
【0214】 本発明の範囲内でもたらされるコレステロールの輸送体活性はヒトABC1型
または動物ABC1型であってもよい。本発明の範囲内で使用する核配列は、c
DNA、ゲノムDNA(gDNA)、RNA(レトロウイルスの場合)、または
一つまたは複数のイントロンが挿入されたたとえばcDNAからなるハイブリッ
ド構成であってもよい。さらに合成配列または半合成配列であってもよい。特に
有利な方法としては、cDNAまたはgDNAを用いる。特にgDNAはヒト細
胞においてより優れた発現を可能にする。本発明によるウイルスベクター内これ
らを取り込めるようにするには、特に、適切な制限部位を挿入するためには、こ
れらの配列をたとえば方向付けされた変異誘発により修正するのが有利である。
従来技術に記載されている配列は本発明による使用のために構成されておらず、
大量の発現を得るには予め調整を行うことが必要な場合がある。本発明の範囲内
においては、ヒトABC1蛋白質に対してコードする核配列を使用するのが好ま
しい。さらにこれらABC1蛋白質の誘導体に対してコードする構成を用いるこ
とも可能である。これらABC1蛋白質の誘導体はたとえば、未変性配列に対し
て行われる変異、遺伝子欠失および/または付加により得られるもので、コレス
テロール輸送体活性を保持した生成物をコードするあらゆる配列を含む。これら
の修正は当業者に既知の技術で行うことができる(下記の細胞生物学の一般技術
を参照)。このようにして得られた誘導体の生物学的活性は、特に実施例で示し
たように、細胞からのコレステロールの流出測定により、容易に決定することが
できる。本発明の意味での誘導体はまた、プローブとして未変性配列またはその
フラグメントを用いて、核酸バンクからハイブリダイゼーションにより得ること
も可能である。
【0215】 これらの誘導体は特に、その固定部位に対してより大きな親和力を有する分子
、プロテアーゼに対して耐性を増した分子、より優れた治療効果を有するまたは
副作用が少なく、または場合によっては新規の生物学的特性を持つ分子である。
誘導体はまたインビボにおけるより優れた発現を可能にする修正されたDNA配
列を含む。
【0216】 第1の実施方法においては、本発明は、コレステロールの輸送および代謝に関
与するABC1蛋白質をコードするcDNA配列を含む欠損組換えウイルスに関
する。本発明の好ましい別の実施方法においては、DNA配列はgDNA配列で
ある。
【0217】 本発明のベクターはさまざまな型のウイルスから調製してもよい。好ましくは
、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス(HSV
)またはレトロウイルスから誘導したベクターを使用する。特に、移植目的の細
胞の直接投与またはエックスビボでの修正のためにはアデノウイルス、生成細胞
の移植のためにレトロウイルスを用いるのが有利である。
【0218】 本発明によるウイルスは欠損したウイルス、すなわち標的細胞内において自力
で複製することができないウイルスである。したがって一般に、本発明の範囲内
で使用する欠損ウイルスのゲノムは少なくとも、感染させた細胞内において前記
ウイルスの複製に必要な配列を欠失している。これらの領域は(すべてまたは一
部を)除去する、あるいは機能不可にする、あるいは他の配列、特にABC1蛋
白質をコードする核配列によって置換してもよい。しかしながら好ましくは欠損
ウイルスは、ウイルス粒子のキャプシド形成に必要なそのゲノム配列は保持して
いる。
【0219】 より詳細にはアデノウイルスに関しては、構造および特性が多少異なったさま
ざまな血清型が分類されている。これらの血清型の中で、本発明の範囲では、2
または5型のヒトアデノウイルス(Ad2またはAd5)または動物起源アデノ
ウイルス(請求 WO94/26914を参照)を用いるのが好ましい。本発明
の範囲で使用可能な動物起源アデノウイルスの中では、イヌ、ウシ、マウス(例
:Mav1, Beardら、Virology75(1990年)81)、ヒ
ツジ、ブタ、トリまたはサル(例:SAV)からのアデノウイルスがある。好ま
しくは動物起源アデノウイルスはイヌアデノウイルスであり、より詳細にはCA
V2アデノウイルス[たとえばマンハッタンまたはA26/61(ATCC V
R−800)株]である。本発明の範囲内では、好ましくはヒトまたはイヌまた
はその混合のアデノウイルスを使用する。好ましくは、本発明の欠損アデノウイ
ルスは、ITR、キャプシド形成を可能にする配列およびABC1蛋白質をコー
ドする配列を含む。本発明のアデノウイルスゲノムにおいては、少なくとも領域
E1が機能不可になっているのが有利である。さらに、本発明のアデノウイル
スゲノムにおいて、遺伝子E1、および遺伝子 E2、E4、L1〜L5のうち
の少なくとも一つが機能不可であることがより好ましい。考慮するウイルス遺伝
子を当業者に既知のあらゆる技術により機能不可にしてもよく、特に考慮する一
つまたは複数の遺伝子において全面的抑制、置換、部分的除去、または一つまた
は複数の塩基の付加により機能不可にする。このような修正は、たとえば遺伝子
工学を用いて、または変異誘発因子よる処理を行ってインビトロで(単離したD
NA上で)またはin situで得ることが可能である。他の領域、特に領域
E3(WO95/02697)、E2(WO94/28938)、E4(WO9
4/28152、WO94/12649、WO95/12697)およびL5(
WO95/02697)を修正することもできる。好ましい実施方法により、本
発明によるアデノウイルスは領域 E1およびE4おいて欠失があり、ABC1
をコードする配列が不活性化された領域E1を挿入する。別の好ましい実施方法
に従って、本発明によるアデノウイルスは領域 E1において欠失があり、そこ
に領域 E4およびABC1をコードする配列を挿入する(仏特許請求 FR9
413355)。
【0220】 本発明による欠損組換えウイルスは当業者に既知のあらゆる技術により調製さ
れてもよい(Levreroら、Gene101(1991年)195、EP1
85573、Graham、EMBO J.3(1984年)2917)。特に
これらは、アデノウイルスと、なかでもABC1蛋白質をコードするDNA配列
を有するプラスミドとの相同組換えにより調製されてもよい。相同組換えは適切
な細胞系統における前記アデノウイルスとプラスミドとの同時形質移入後に行わ
れる。使用する細胞系統は好ましくは、(i)前記エレメントにより形質転換が
可能であること、(ii)欠損アデノウイルスのゲノムの一部を、好ましくは組換
えの危険を避けるために完全な形態で補うことができる配列を有していること。
系統の例としては、そのゲノムに組み入れられた、特にアデノウイルスAd5の
ゲノム左部分(12%)を含むヒト胚性腎臓系統293(Grahamら、J.
Gen. Virol. 36(1977年)59)、または特に請求番号WO
94/26914およびWO95/02697に記述されているようなE1およ
びE4機能を補うことができる系統を挙げることができる。
【0221】 次に、繁殖させたアデノウイルスを回収し、実施例に例証されているように分
子生物学の従来の技術により純度を高める。
【0222】 アデノ随伴ウイルス(AAV)については、このウイルスが感染させた細胞の
ゲノム内に安定的にかつ特定部位に組み込まれた、比較的短いDNAを有するウ
イルスである。これらは細胞の大部分を感染させることができ、細胞の成長、形
態または分化に影響を与えない。さらにヒトの病理には関与しないと考えられる
。AAVのゲノムはクローン化され、配列が決定されて分類が行われてい。約4
700個の塩基を有し、各末端には、ウイルスの複製の源となる約145個の塩
基による逆方向反復領域(ITR)を持つ。ゲノムの残りの部分はキャプシド形
成機能を備える 2つの主要領域に分けられ、ゲノム左部分はウイルス複製およ
びウイルス遺伝子の発現に関与する rep遺伝子を含み、ゲノムの右部分はウ
イルスのキャプシド蛋白質をコードするcap遺伝子を含む。
【0223】 インビトロおよびインビボでの遺伝子伝達のためのAAVから派生したベクタ
ーの使用については文献に記載されている(特にWO91/18088、WO9
3/09239、US4797368、US5139941、EP488528
を参照)。これらの請求は AAVから誘導されたしたさまざまな構成を記載し
ており、この中で rep遺伝子および/またはcap遺伝子は除去されて価値
のある別の遺伝子に置き換えられており、前記価値のある遺伝子をインビトロで
(培養細胞に対して)またはインビボで(生体内に直接に)伝達するために使用
されている。しかしながら、これらの文献のいずれもABC1蛋白質のインビボ
またはエックスビボでの伝達および発現対する組換えAAVの使用については説
明も提案もしておらず、このような伝達の利点についても触れていない。本発明
による欠損組換えAAVは、ヒト補助ウイルスにより感染させた細胞系統内で、
AAVの二つの逆方向反復領域(ITR)に縁取られたABC1蛋白質をコード
する配列を含むプラスミドと、AAVのキャプシド形成遺伝子(repおよびc
ap遺伝子)を備えるプラスミドとの同時形質移入により調製することができる
。次に、生成された組換えAAVを従来の方法により精製する。
【0224】 ヘルペスウイルスおよびレトロウイルスに関しては、組換えベクターの構成に
ついて文献に幅広く説明されている。特にBreakfieldら、New B
iologist 3(1991年) 203、EP453242、EP178
220、Bernsteinら、Genet. Eng. 7(1985年)3
25、McCormick, Bio Technology 3(1985年
)689、等を参照。
【0225】 特にレトロウイルスは、分裂細胞を感染させる組み込みウイルスである。レト
ロウイルスのゲノムは主に二つのLTR、キャプシド形成配列、3つのコード領
域(gag、pol、env)を含む。レトロウイルスから派生した組換えベク
ターにおいては、gag、polおよびenv遺伝子は一般に全てまたは一部が
除去されており、価値のある異種核酸配列に置き換えられている。これらのベク
ターは、特に MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」、MoMLV
とも表示される)、MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「
ハーベイ肉腫ウイルス」)、SNV(「脾臓壊死ウイルス」)、RSV(「ラウ
ス肉腫ウイルス」)またはFriendウイルスのようなさまざまなレトロウイ
ルス型から作られてもよい。
【0226】 本発明によるABC1蛋白質をコードする配列を含む組換えレトロウイルスを
構成するためには、一般に、LTRを特に含むプラスミド、キャプシド形成配列
および前記コード配列を含むプラスミドを構成し、ラスミド内に欠損レトロウイ
ルス機能をトランス状態で運ぶことができる、いわゆるキャプシド形成細胞系統
を形質移入するために使用する。したがって一般にキャプシド形成系列は、ga
g、pol、env遺伝子を発現させることができる。このようなキャプシド形
成系列は従来技術に記載されており、特にPA317系列(US4861719
)、PsiCRIP系列(WO90/02806)およびGP+envAm−1
2系列(WO89/07150)がある。さらに、組換えレトロウイルスは、転
写活性を抑制するためにLTRのレベルで修正部分を含む場合、またgag遺伝
子の一部(Benderら、J. Virol. 61(1987年)1639
)を含む延長されたキャプシド形成配列を含む場合もある。生成した組換えレト
ロウイルスをさらに従来の技術により精製を行う。
【0227】 本発明を実施するために、欠損組換えアデノウイルスを使用するのが特に有利
である。下記に示す結果で、実際に、コレステロール輸送活性を有する蛋白質の
インビボでの発現に対するアデノウイルスの特に興味深い特性が示されている。
本発明によるアデノウイルスベクターは、精製した懸濁液のインビボでの直接投
与に対して、または特に自家移植のための細胞のエックスビボでの形質転換に対
して特に有利である。さらに本発明によるアデノウイルスベクターは、とりわけ
少量のウイルス懸濁液からの感染も可能にする極めて高い感染能力のような重要
な利点を有する。
【0228】 本発明の別の特に有利な実施方法に従って、インビボでの移植のために、AB
C1蛋白質をコードする配列を含むレトロウイルスベクター生成系統を使用する
。この目的のために使用できる系統は特に細胞 PA317(US486171
9)、PsiCRIP(WO90/02806)およびGP+envAm−12
(US5278056)であり、本発明によるABC1蛋白質をコードする核配
列を含むレトロウイルスを生成できるように修正されている。たとえば血液細胞
の前駆体である全能性の細胞株が被験者から採取され、単離される。培養状態に
おいたこれらの細胞を、ウイルス性プロモーター、非ウイルス性プロモーター、
マクロファージの特殊プロモーターのコントロール下の、またはそれ独自のプロ
モーターのコントロール下の、ABC1蛋白質をコードする配列を含むレトロウ
イルスベクターにより形質移入が行われてもよい。次にこれらの細胞を被験者に
再導入する。これらの細胞の分化は、ABC1蛋白質を発現させる血液細胞の元
になり、特にマクロファージに転換されて動脈壁のコレステロールの除去に関わ
る単球の元になる。ABC1蛋白質を発現させるこれらのマクロファージは過剰
コレステロールを代謝する能力が高く、コレステロールを細胞表面に配置して、
膜様コレステロールの一次受容体によりこれを除去する。
【0229】 有利には、本発明のベクターにおいて、ABC1蛋白質をコードする配列は、
感染させた細胞内でその発現を可能にするシグナルによるコントロール下に置か
れる。これは相同または異種発現シグナル、すなわちABC1蛋白質の発現に本
来関係するシグナルとは異なるシグナルである。これは特に、他の蛋白質の発現
に関係する配列、または合成配列に関する。とりわけ、特殊な方法でまたは非特
殊方法で、かつ誘導可能にまたは非誘導的に転写を促すまたは抑制する真核生物
遺伝子またはウイルス遺伝子の配列、または派生配列に関する。たとえば、感染
させたい細胞のゲノムに由来する、またはウイルスのゲノムに由来するプロモー
ター配列、特にアデノウイルスのE1A、MLP遺伝子のプロモーター、CMV
、LTR−RSVプロモーター、等に関するものである。真核生物プロモーター
の中で、偏在性プロモーター(HPRT、ビメンチン、a−アクチン、チューブ
リン、等)、中間フィラメント(デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、
GFAP、等)のプロモーター、治療遺伝子(MDR、CFTR型、因子VIII、
等)プロモーター、組織特殊プロモーター(ピルビン酸キナーゼ、ビリン、脂肪
酸結合腸蛋白質プロモーター、平滑筋細胞のアクチンaプロモーター、肝臓特有
プロモーター、Apo Al、Apo A11、ヒトアルブミン、等)、または
刺激反応プロモーター(ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体、等)
も挙げることができる。さらに、これらの発現配列は、活性化配列、制御配列、
等の付加により修正してもよい。さらに挿入された遺伝子が発現配列を含まない
場合、欠損ウイルスのゲノム内のこのような配列の下流に遺伝子を挿入してもよ
い。
【0230】 独自の実施方法において、本発明は、LTR−RSVまたはCMVの早熟性プ
ロモーターの中から選択されるプロモーターのコントロール下にコレステロール
の代謝に関与するABC1蛋白質コード核配列を含む欠損組換えウイルスに関す
る。
【0231】 上記したように、本発明はまた、コレステロール輸送に関連する病理の治療お
よび/または予防のための医薬組成物を調製するための上記のようなウイルスの
あらゆる使用にも関する。
【0232】 本発明はまた、上述のような一つまたは複数の欠損組換えウイルスを含む医薬
組成物にも関する。これらの医薬組成物は局所、経口、非経口、鼻孔内、静脈内
、筋肉内、皮下、眼内、経皮、等の投与のために処方してもよい。好ましくは、
本発明の医薬組成物は、特に、たとえば患者の門静脈内のような静脈内注入のた
めの、注射剤処方に受け入れ可能な医薬媒体を含んでいる。これは特に、無菌液
、等張液、または、場合によって無菌水または血清を添加することで注射薬を作
ることができる特に親液性の乾燥組成物に関する。患者の門静脈内への直接の注
入は、肝臓への感染を標的とすることができ、したがってこの器官の治療効果に
集中させることができるので有効である。
【0233】 注入に使用される欠損組換えウイルスの投与量はさまざまなパラメータに応じ
て調整されてよく、特にウイルスベクターに応じて、用いられる投与方法に応じ
て、関連する病態に応じて、また求められる治療期間に応じて調整することが可
能である。一般に、本発明による組換えアデノウイルスは、10〜1014
pfu/ml、好ましくは10〜1010 pfu/mlの投与量形態で処方
、投与される。用語pfu(「plaque forming unit プラ
ーク形成単位」)はウイルス液の感染能力に対応しており、適切な細胞培地の感
染、および感染させた細胞のプラーク数の一般に48時間後の大きさにより決定
する。ウイルス液のpfu力価の測定技術は文献に詳しく述べられている。
【0234】 レトロウイルスに関して、本発明による組成物は、その移植のために生成細胞
を直接含んでいてもよい。
【0235】 このために、本発明は、上記したような一つまたは複数の欠損組換えウイルス
により感染させたあらゆる哺乳類細胞が本発明のもう一つの対象である。より詳
細には、本発明はこれらのウイルスにより感染させたあらゆるヒト細胞群に関す
る。特に血液源細胞(全能性細胞株または前駆体)、繊維芽細胞、筋芽細胞、肝
細胞、ケラチン生成細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、グリア細胞、等に関する場合
もある。
【0236】 本発明による細胞は一次培養に由来してもよい。これらは当業者に既知のあら
ゆる技術により採取してもよく、次いで、増殖が可能な条件において培養する。
繊維芽細胞についてより詳しく述べると、これらはたとえばHamにより記載さ
れた技術[Methods Cell.Biol. 21a(1980年)25
5]により生検から容易にえられる。これらの細胞はウイルスによって感染させ
るために直接利用してもよく、あるいは後に使用するために、自家バンク設定の
ためにたとえば冷蔵保存してもよい。本発明による細胞はまた、予め設定された
バンクから得た、二次培養に由来するものであってもよい(たとえばEP228
458、EP289034、EP400047、EP456640を参照)。
【0237】 次に培養細胞は、これに生物学的に活性なABC1蛋白質を生成する能力を付
与するために、組換えウイルスによって感染させる。感染は、当業者に既知の技
術によりインビボで行う。特に、使用する細胞の型および所望する細胞によるウ
イルスの複製数により、当業者は感染の多様性を図り、場合によっては実施する
感染サイクルの回数を調整してもよい。これらの工程は、細胞がインビボ投与向
けである場合適切な無菌条件で行う必要があることは当然である。細胞の感染に
使用する組換えウイルスの量は、使用目的に応じて当業者が調整してもよい。イ
ンビボでの投与のための上記の条件をインビトロでの感染に応用してもよい。レ
トロウイルスによる感染に対して、感染させたい細胞を、本発明による組換えレ
トロウイルス生成細胞と共に同時培養することも可能である。この方法ではレト
ロウイルスの純度を高める必要はない。
【0238】 本発明のもう一つの目的は、上記したような一つまたは複数の欠損組換えウイ
ルスにより感染させた哺乳類細胞、または組換えウイルスを生成する細胞、およ
び細胞外基質を含むインプラント(移植組織)に関する。好ましくは、本発明に
よるインプラントは10〜1010個の細胞を含んでいる。より好ましくは1
〜10個の細胞を含む。
【0239】 より詳細には、本発明のインプラントにおいて、細胞外基質には、ゲル化化合
物および場合によっては細胞の定着を可能にする支持体が含まれる。 本発明によるインプラントを調製するために、各種のゲル化剤が用いられても
よい。ゲル化剤は、ゲルの成分を有する基質内に細胞を封入するために、また必
要な場合、支持体上に細胞を定着させるために用いられる。したがって特にコラ
ーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、レクチンのよう
なさまざまな細胞接着剤が、ゲル化剤として使用されてもよい。好ましくは本発
明の範囲においてはコラーゲンを使用する。これはヒト、ウシ、マウス起源コラ
ーゲンであってもよい。1型コラーゲンを使用するのがより好ましい。
【0240】 上記したように、本発明による組成物には、細胞の定着を可能にする支持体が
含まれるのが有利である。定着という言葉は、支持体上に細胞を接着するおよび
/または固定する、生物学的および/または化学的および/または物理学的なあ
らゆる相互作用形態を意味する。さらに細胞は使用する支持体を覆う、あるいは
この支持体の内部に侵入してもよくあるいはその両方の場合がある。本発明の範
囲では毒性の無いおよび/または生物学的に適合性のある固体支持体を使用する
のが好ましい。特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維または生物起
源支持体を使用してもよい。
【0241】 本発明はまた、コレステロールの輸送に関連する病理、特に肥満、高トリグリ
セリド血症、または心血管疾患分野における心筋梗塞、狭心症、突然死、心不全
、および脳血管不調を治療または予防するために極めて有効な方法も提供する。
【0242】 さらにこの治療はヒトならびに、ヒツジ、ウシ、家畜(イヌ、ネコ、等)、ウ
マ、魚などのようなあらゆる動物を対象にすることもできる。 組換え宿主細胞 本発明はまた、本発明の核酸のいずれか一つ、より詳しくは配列 配列番号9
1、94または96の核酸を含む組換え宿主細胞にも関する。
【0243】 別の見地から、本発明はまた、上記のような組換えベクターを含む組換え宿主
細胞にも関する。
【0244】 本発明による好ましい宿主細胞はたとえば次のものである。
【0245】 a) 原核動物宿主細胞 :大腸菌株(DH5−a株)、枯草菌株、ネズミチ
フス菌株、またはシュードモナス、ストレプトマイセス、ブドウ球菌のような種
の株、 b) 真核生物宿主細胞 :HeLa(ATCC番号 CCL2)、Cv 1
細胞(ATCC番号 CCL70)、COS細胞(ATCC番号 CRL 16
50)、Sf−9細胞(ATCC番号 CRL 1711)、CHO細胞(AT
CC番号 CCL−61)または3T3細胞(ATCC番号 CRL−6361
)。
【0246】 変異ABC1ポリペプチド 別の見地から、本発明は変異ABC1遺伝子、より詳しくはコレステロールの
逆輸送における不全に罹患した患者、特にTangier病の患者の体内で変異
したABC1遺伝子によりコード化されたポリペプチドに関する。
【0247】 すでに上述したように、Tangier病の患者で二つの有害な突然変異が特
定された。
【0248】 第1の突然変異は、ABC1遺伝子のエクソン12のコード配列の中に約百対
の塩基フラグメントが挿入され、配列配列番号140の2233アミノ酸の生物
学的に不活性なポリペプチドが生成されることである。配列 配列番号140の
変異ABC1ポリペプチドは、配列配列番号139の正常ポリペプチドと比べて
次のような違いがある。 a) 配列「DERKFW」ペプチドフラグメントの欠失、およびこのペプチド
フラグメントが、挿入 Alu型のヌクレオチドフラグメントによりコード化さ
れた配列「EYSGVTSAHCNLCLLSSSDSRASASQVAGIT
APATTPA」により置き換えられている。
【0249】 第2の突然変異は、ABC1遺伝子のエクソン13のコード配列の最初の4分
の1に早発性終止コドンが導入され、配列配列番号141の574アミノ酸を有
する一部が欠けたポリペプチドが生成されることである。さらに塩基Gの欠失が
読み取り範囲の変化を引き起こし、正常ABC1ポリペプチドのアミノ酸配列に
は存在しないCOOH−末端を有する蛋白質を生成する。これは配列配列番号1
41の変異したABC1ポリペプチドのCOOH−末端「RAPRRKLVSI
CNRCPIPVTLMTSFCG」に関する。
【0250】 これら二つのポリペプチドは、特に、特定的にこれらを組み換える抗体の調製
に役立つ。このような抗体は、被験者、好ましくはコレステロールの逆輸送不全
の特徴的症状を示す患者、特に好ましくはTangier病の特徴的症状を示す
患者に由来する標本中の変異したこれらABC1ポリペプチド生成の欠失手段と
なる。
【0251】 別の見地から、したがって本発明は配列番号140アミノ酸配列を含むポリペ
プチドに関する。
【0252】 さらに別の見地から、本発明は配列番号141アミノ酸配列を含むポリペプチ
ドに関する。
【0253】 本発明はまた、配列番号140および141配列のペプチド、またはこのペプ
チドのペプチドフラグメントからなる群から選ばれるアミノ酸配列と、少なくと
も80%同一のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する
【0254】 好ましい第1ペプチドフラグメントは、配列配列番号140の変異したABC
1ポリペプチド内に含まれる配列「EYSGVTSAHCNLCLLSSSDS
RASASQVAGITAPATTPG」のペプチドフラグメントの少なくとも
5つの連続アミノ酸を含む。
【0255】 好ましい第2ペプチドフラグメントは、配列配列番号141の変異したABC
1ポリペプチド内に含まれる配列「RAPRRKLVSICNRCPIPVTL
MTSFCG」のペプチドフラグメントの少なくとも5つの連続アミノ酸を含む
【0256】 有利には、配列配列番号140および141のペプチド、またはこのペプチド
のペプチドフラグメントからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも8
5%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドが
本発明の一部を成す。
【0257】 好ましくは、本発明によるポリペプチドは、本発明による核酸の15、18ま
たは20〜25、35、40、50、70、80、100または200の連続ア
ミノ酸の長さ、特に配列配列番号140および141から選ばれるアミノ酸配列
のポリペプチドを有する。
【0258】 または、本発明によるポリペプチドは、本発明によるポリペプチドの、より詳
しくは配列配列番号140および141から選ばれるポリペプチドの15、18
、20、25、35、40、50、100または200の連続アミノ酸の長さの
フラグメントから成るおよび/または含むことになる。
【0259】 一般に、本発明によるポリペプチドは単離したまたは純度を高めた形態下に存
在する。
【0260】 本発明はまた、配列配列番号140および141のポリペプチド、またはペプ
チドフラグメントまたはこのペプチドフラグメントの変異体のいずれか一つの生
産方法に関し、前記方法には次の各工程が含まれる。
【0261】 a) 前記ポリペプチドをコードする核酸を適切なベクター内に挿入する、 b) 工程a)の組換えベクターによりあらかじめ形質転換または形質移入し
た宿主細胞を適切な培養培地内で培養する、 c)条件付けした培養媒質を回収する、またはたとえば超音波処理または浸透
圧ショックにより宿主細胞を溶解する、 d) 前記培養培地からまたは工程c)で得られた細胞溶解物から前記ポリペ
プチドを分離し、純度を高める、 e) 必要があれば生成された組換えポリペプチドの特徴付け(分類)を行う
【0262】 本発明によるペプチドは、このポリペプチドに対して、またはこのポリペプチ
ドのフラグメントまたは変異体に対して導かれた抗体があらかじめ固定されてい
る免疫親和性クロマトグラフィーカラム上に固定して分類を行ってもよい。
【0263】 別の見地から、本発明による組換えポリペプチドは、当業者に既知であり、た
とえばF. Ausubelらにより記述された(1989年)方法に従って、
適切な本数組み合わせたクロマトグラフィーカラム上を通過させることで純度を
高めるすることができる。
【0264】 本発明によるポリペプチドは、従来の、均質溶液または固相の無差別化学合成
技術により調製することも可能である。
【0265】 例証として、本発明によるポリペプチドは、Houben Weylが記載し
た(1974年)技術または均質溶液により、またはMerrifieldが記
載した(1965年a、1965年b)固相合成技術により調製してもよい。
【0266】 配列番号140および141アミノ酸、またはそれらのフラグメントまたは
変異体配列のポリペプチドのいずれかといわゆる『相同』なポリペプチドも本発
明の一部である。
【0267】 このような相同ポリペプチドは、基準ポリペプチドに対して、同等のアミノ酸
による一つまたは複数のアミノ酸置換を持つアミノ酸配列を有する。
【0268】 本発明による同等のアミノ酸とは、たとえば当業者によく知られた技術による
、L形態下の残基のD形態下の残基による置き換え物、またはグルタミン酸(E
)のピログルタミン酸による置き換え物を意味する。例証として、少なくとも一
つのD形態残基を含むペプチド合成はKochにより記載されている(1977
年)。
【0269】 もう一つの見地から、同じ分類に属する二つのアミノ酸、すなわち非極性また
は非電荷極性の酸性、塩基性の二つのアミノ酸も同等アミノ酸として見なされる
【0270】 レトロ逆結合(NHCO)、カルバ結合(CHCH)またはケトメチレン
結合(CO−CH)のような非ペプチド結合を少なくとも一つ有するポリペプ
チドも本発明の対象となる。
【0271】 好ましくは、少なくとも一つのアミノ酸の一つまたは複数の付加、欠失、置換
を含む本発明によるポリペプチドは、非修正ポリペプチドに対して導かれた抗体
により認識される能力を保持している。
【0272】 抗体 本発明による変異されたABC1ポリペプチド、特に配列番号140および1
41アミノ酸による配列のポリペプチドまたはそれらのフラグメントならびに相
同ペプチドは、特に患者体内のABC1ポリペプチドの変質形態の生成を検出す
ることを目的とした抗体を調製するために用いられてもよい。
【0273】 本発明による好ましい第1抗体は、配列配列番号140の変異ABC1ポリペ
プチドに含まれる配列「EYSGVTSAHCNLCLLSSSDSRASAS
QVAGITAPATTPG」のペプチドフラグメントの少なくとも5つの連続
アミノ酸を含むペプチドフラグメントに対して導かれた。
【0274】 本発明による好ましい第2抗体は、配列配列番号141の変異ABC1ポリペ
プチドに含まれる配列「RAPRRKLVICNRCPIIPVTLMTSFC
G」のペプチドフラグメントの少なくとも5つの連続アミノ酸を含むペプチドフ
ラグメントに対して導かれた。
【0275】 本発明の意味での『抗体』とは、特に、多クローン性または単クローン性抗体
またはフラグメント(たとえば、フラグメントF(ab)’、Fab)、また
は本発明の標的であるポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを認識する
初期抗体分域を含むあらゆるポリペプチドを意味する。
【0276】 単クローン性抗体は、KohlerおよびMilsteinが記載した(19
75年)技術によりハイブリドーマから調製することができる。
【0277】 本発明はまた、上記したようなポリペプチド、またはKozborらが記載し
た(1983年)trioma技術またはハイブリドーマ技術における生成物の
ようなこのポリペプチドのフラグメントまたは変異体に対して導かれた抗体にも
関する。
【0278】 本発明はまた、米国特許第4946778号にまたはMartineauらに
より記載された(1998年)ような一本鎖抗体フラグメント Fv(ScFv
)にも関する。
【0279】 本発明による抗体はまた、Riddrら(1995年)ファージバンクにより
得られる抗体フラグメントまたはReinmannら(1997年)、Lege
rら(1997年)のヒトに適合させた抗体を含む。
【0280】 本発明による抗体の調製物は、標本中の抗体の有無および/または量を確認す
るための免疫性検出テストにおいて有効である。
【0281】 本発明による抗体はさらに、たとえば蛍光性の、または当業者によく知られた
技術により、ビオチンなどの分子に結合された同位体または非同位体検出マーカ
ーを含んでいてもよい。
【0282】 このように本記載さらには、標本中の本発明に準拠するポリペプチドの有無を
検出するための方法を対象とし、前記方法には次の各工程が含まれる。
【0283】 a) テストすべき標本を上記のような抗体と接触させる、 b) 形成された抗原/抗体の複合体を検出する。
【0284】 本発明はまた、標本中の本発明に準拠するポリペプチドの有無を検出するため
の必需品または診断キットにも関し、前記必需品には次のものが含まれる。
【0285】 a) 上記で定義されたような抗体、 b) 形成された抗原/抗体複合体を検出できる反応体。
【0286】 医薬組成物および治療措置方法 本発明はまた、アテローム性動脈硬化症のようなコレステロールの代謝におけ
る不全、特にコレステロールの輸送における不全、より詳しくはコレステロール
の逆輸送における不全の予防または治療のための医薬組成物であり、正常ABC
1ポリペプチド、特に配列 配列番号139のポリペプチドの有効量を生成する
ことができるポリヌクレオチドを治療的に有効な量含むことを特徴とする医薬組
成物に関する。
【0287】 本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症のようなコレステロールの代謝にお
ける不全、特にコレステロールの輸送における不全、より詳しくはコレステロー
ルの逆輸送における不全の予防または治療のため医薬組成物であり、正常ABC
1ポリペプチド、特に配列配列番号139のポリペプチドを治療的に有効な量含
むことを特徴とする医薬組成物も対象とする。
【0288】 このような医薬組成物は、たとえば、ABC1ポリペプチドの量が1mg/k
g/日〜10mg/kg/日、好ましくは少なくとも0.01mg/kg/日、
もっとも好ましくは0.01〜1mg/kg/日の非経口投与に適合されるのが
有利である。
【0289】 本発明による医薬組成物は、経口、経腸、非経口、静脈内、皮下または真皮内
のいずれの方法によっても投与してもよい。
【0290】 本発明はまた、さまざまな形態のアテローム性動脈硬化症の予防、より詳しく
はコレステロールの逆輸送機能不全の患者を治療するための医薬品製造のための
、配列配列番号139のABC1ポリペプチドの使用に関する。
【0291】 最後に本発明は、コレステロールの逆輸送機能不全の患者の予防または治療の
ための、配列配列番号139のポリペプチドを治療的に有効な量含む医薬組成物
に関する。
【0292】 別の見地から、本発明はまた、コレステロールの代謝における、より詳しくは
コレステロールの輸送、さらに詳しくはコレステロールの逆輸送における欠陥に
より引き起こされる病気の予防的または治療的措置方法をも対象とし、このよう
な方法には、前記患者の体内にABC1ポリペプチドを発現させることができる
ポリヌクレオチドを患者に投与する工程が含まれ、前記ポリヌクレオチドは、必
要があれば、生物学的に適合性のある一つまたは複数の媒体および/または賦形
剤と組み合わせられる。
【0293】 好ましくは、上記で定義したような、ポリヌクレオチドを含む医薬組成物を患
者に投与する。
【0294】 さらに別の見地から、本発明はまた、コレステロールの代謝における、より詳
しくはコレステロールの輸送における、さらにより詳しくはコレステロールの逆
輸送における欠陥により引き起こされる病気の予防的または治療的処置方法も対
象とし、このような方法には、前記患者の体内においてABC1ポリペプチドの
治療上有効な量を患者に投与する工程が含まれ、前記ポリペプチドは、必要があ
れば、生物学的に適合性のある一つまたは複数の媒体および/または賦形剤と組
み合わせられる。
【0295】 好ましくは、上記で定義したような、ポリペプチドを含む医薬組成物を患者に
投与する。
【0296】 ABC1ポリペプチドの作用薬化合物または拮抗薬化合物のスクリーニング方
法 別の見地から、本発明はまた、Tangir病、またはより一般にはFHD型
疾患のような、コレステロールの代謝における、特にコレステロールの輸送にお
ける、よく詳しくはコレステロールの逆輸送における不全による病気の治療に有
効な治療目的を持った化合物のスクリーニング方法にも関する。
【0297】 したがって、本発明はまた、コレステロールの逆輸送機能不全による病気の予
防的または治療のための活性成分をスクリーニングするための、ABC1ポリペ
プチドの使用、またはABC1ポリペプチドを発現させる細胞の使用にも関する
。 ABC1ポリペプチドの触媒部位およびオリゴペプチドフラグメントまたは免疫
原性フラグメントは多数のあらゆる既存技術により生成物バンクをスクリーニン
グするために役立つ。この型のスクリーニングにおいて使用するフラグメントは
、細胞表面上でまたは細胞内で固体支持体上に固定されて、溶液状に遊離してい
てもよい。次に、ABC1フラグメントとテストされる作用薬との間の結合複合
体の形成が測定されてもよい。
【0298】 価値のある蛋白質に対して親和性を有する生成物への到達を可能にする高流速
スクリーニングにおいて用いることができるもう一つの生成物スクリーニング技
術は、出願WO84/03564に記載されている。ABC1蛋白質が適用され
ているこの方法においては、さまざまな生成物が固体表面上で合成される。これ
らの生成物は、ABC1蛋白質とまたはABC1蛋白質のフラグメントと反応し
、複合体は洗浄される。次にABC1蛋白質と結合した生成物は、当業者に既知
の方法論により検出される。非中和抗体もまたペプチドを捕獲し、支持体上にこ
れを固定するために使用してもよい。
【0299】 もう一つの可能性は、ABC1を中和する抗体、ABC1蛋白質およびABC
1蛋白質と潜在的に結合している生成物の競合を利用した生成物スクリーニング
を使用することである。このように、抗体はABC1と共通の抗原性モチーフを
有するペプチドの有無を検出するために使用されてもよい。
【0300】 評価すべき、かつABC1活性を増大させる生成物の中で、特に、分子の活性
化に関与するキナーゼの特殊ATP相同体、ならびにこれらいわゆるキナーゼに
由来する脱リン酸化を回避することができるホスファターゼを挙げる。特にホス
ホジエステラーゼ(PDE)テオフィリンおよび3−イソブチル−1−メチルキ
サンチン型の阻害薬またはアデニルシクラーゼ フォルスコリン活性剤を挙げる
【0301】 したがって、我々は本特許において、メンブランまたは小胞間のコレステロー
ルの転位置方法(実施例17を参照)に基づく生成物のあらゆるスクリーニング
方法の使用を請求するものであり、これはあらゆる合成または細胞の型、すなわ
ち連続的にヒトABC1配列を発現する、またはヒトABC1配列を取り込んで
いる哺乳類、昆虫、細菌または酵母において使用される。このため、標識された
された脂質類似物を使用してもよい。
【0302】 同じく、ABC1蛋白質がアニオン輸送を可能にすることが記載されており(
Becqら、Journal of Biological Chemistr
y vol 272, 番号 5 pages 2695−2699,1997
年およびYamonら、Blood vol 90, 番号 8 pages
2911−2915, 1997年)、かつこの輸送はオカダ酸およびオルトバ
ナジン酸塩のようなホスファターゼ阻害剤ならび、フォルスコリンのような作用
薬によるcAMPの上昇により活性化される。我々はABC1蛋白質の活性を調
整する分子をスクリーニングするためにこのシステムの使用を請求する(実施例
18を参照)。
【0303】 Yamonら(Blood vol 90, 番号 8 pages 291
1−2915, 1997年)は、マウスのABC1蛋白質がマウスの腹腔マク
ロファージ内の炎症誘発性サイトカインIL−ベータの分泌に関与することを証
明した。したがって、二つの蛋白質を発現させるあらゆるタイプの細胞からのI
L−ベータの塩析測定により、ABC1蛋白質活性を調節する生成物のスクリー
ニング方法も提案してもよい(実施例19を参照)。
【0304】 さらに数多くの輸送体の分裂が記載されているので(van, den Ha
zel. H., H. Pichler, V.M.M. do, E. L
eitner, A. Goffeau, and G. Daum. 199
9. PDR16 and PDR17, two homologous g
enes of Saccharomyces cerevisiae, af
fect lipid biosynthesis and resistan
ce to mutiple drugs. J Biol Chem. 27
4(4):1934−41)、特徴的な表現型を有する細胞変異体を使用し、A
BC1により変異体の機能を補い、全体をスクリーニング目的に使用することを
考慮してもよい。
【0305】 本発明はまた、コレステロールの代謝に対して活性な、ABC1ポリペプチド
の作用薬または拮抗薬化合物のスクリーニング方法にも関し、前記方法には次の
各工程が含まれる。
【0306】 a)ABC1蛋白質と、検出可能マーカーを有する脂肪基質とを含む膜性小胞
を調製する、 b)工程a)で得られた小胞を作用または拮抗薬候補化合物と共にインキュベ
ートする、 c)検出可能マーカーを含む脂質基質の遊離を質的および量的に測定する、 d)工程b)で得た測定値を、あらかじめ作用薬または拮抗薬候補化合物と共
にインキュベートされていない小胞により標識されたされた脂質基質の遊離測定
値と比較する。
【0307】 上記のスクリーニング方法の第1見地から、膜性小胞は、当業者によく知られ
た技術により調製することができる合成脂質小胞である。この独自な見地から、
ABC1蛋白質は組換えABC1蛋白質であってもよい。
【0308】 第2の見地から、膜性小胞は、ABC1ポリペプチドを発現させる細胞から誘
導された細胞質膜小胞である。これはABC1ポリペプチドを自然に発現させる
細胞、またはABC1ポリペプチドをコードする組換えベクターと共に形質移入
させた細胞である。
【0309】 上記スクリーニング方法の第3の見地から、脂質基質はコレステロールまたは
ホスファチジルコリンの中から選ばれる。
【0310】 第4の見地から、脂質基質は、たとえば、Hまたは125Iの中から選択さ
れた同位元素による放射性標識が行われる。
【0311】 第5の見地から、脂質基質は、NBDまたはピレンのような蛍光性化合物によ
り標識する。
【0312】 第6の見地から、標識された膜性小胞およびABC1ポリペプチドを含む脂質
基質は、工程b)であらかじめ固体支持体の表面に固定されている。 第7の見地から、小胞により遊離された蛍光または放射能の測定値は、ABC1
ポリペプチドによる脂質基質の輸送活性を直接反映している。
【0313】 本発明はまた、コレステロールの代謝に対する、ABC1ポリペプチドの作用
薬または拮抗薬化合物のスクリーニング方法に関し、前記方法には次の各工程が
含まれる。
【0314】 a)自然にまたは形質移入後にABC1ポリペプチドを発現させる細胞、たと
えば細胞系統を得る、 b)検出可能マーカーにより標識したアニオンの存在下に、工程a)の細胞を
インキュベートする、 c)工程b)の細胞を洗浄し、これらの細胞内に侵入しなかった標識された過
剰アニオンを除去する、 d)工程c)で得られた細胞を、ABC1ポリペプチドの作用薬または拮抗薬
候補化合物と共にインキュベートする、 e)標識したアニオンの流出を測定する、 f)工程e)で測定した、標識したアニオンの流出値を、ABC1ポリペプチ
ドの作用薬または拮抗薬候補化合物の存在下にあらかじめインキュベートしなか
った細胞で測定した標識アニオンの流出値と比較する。
【0315】 上記スクリーニング方法の第1の見地から、使用する細胞はABC1ポリペプ
チドを自然に発現する細胞である。これは、ヒト血液の単核細胞群から精製した
、一次培養のヒト単球であってもよい。また単核球性白血病系統THP1のよう
な、ヒト単核細胞系統であってもよい。
【0316】 第2の見地から、上記に記載されたスクリーニング方法で使用する細胞は、自
然にABC1ポリペプチドを発現しない、またはわずかしか発現しない細胞であ
ってもよく、前記細胞はABC1ポリペプチドの発現を導くことができる、本発
明による組換えベクターと共に形質移入される。
【0317】 第3の見地から、細胞はアニオン輸送における生得不全を有する細胞、または
バラパミルTMまたはテトラエチルアンモニウムのようなアニオンチャネルの一
つまたは複数の阻害剤により予備処理した細胞であってもよい。 前記スクリーニング方法の第4の見地により、アニオンは塩K125IまたはN
125Iのような放射能で標識したヨウ化物である。
【0318】 第5の見地から、標識したアニオンの流出量は実験中に定期的に測定され、こ
のようにしてこの流出の動力学的基準も確立できる。
【0319】 第6の見地から、標識したアニオンの流出値を細胞培養残存物中にある時間存
在する標識したアニオンの量の測定により決定する。
【0320】 第7の見地から、標識したアニオンの流出量値を、細胞溶解物中の放射能と細
胞培養残存物中の放射能との総和に一致する全放射能に対する、細胞培養残存物
中に見いだされる放射能の割合として決定する。
【0321】 本発明はまた、コレステロールの代謝に対する、ABC1ポリペプチドの作用
薬または拮抗薬活性化合物のスクリーニング方法を対象とし、前記方法には次の
各工程が含まれる。
【0322】 a)ヒト単球系統の細胞を、純度を高めたヒトアルブミンの存在下に、適切な
培養培地でインキュベートする、 b)工程a)の細胞を、IL−1ベータの生成を促す化合物および作用薬また
は拮抗薬候補化合物の存在下に同時にインキュベートする、 c)工程b)で得られた細胞を適切な濃度の ATPの存在下にインキュベー
トする、 d)細胞培養残存物中で単離した IL−1ベータを測定する、 e)工程d)で得られたIL−1ベータの単離値を、作用薬または拮抗薬候補
化合物の存在下にあらかじめインキュベートしていない細胞培養残存物中で単離
したIL−1ベータの値と比較する。
【0323】 上記のスクリーニング方法の第1の見地から、使用する細胞はヒト白血病単球
系統THP1に属する。
【0324】 スクリーニング方法の第2の見地から、IL−1ベータの生成を促す化合物は
リポ多糖類である。
【0325】 前記方法の第3の見地から、さらにこれらの細胞によりIL−1アルファ、I
L−6およびTNFアルファを質的および/または量的に測定する。
【0326】 第4の見地から、IL−1をコードするメッセンジャーRNAの発現レベルも
同様に測定する。
【0327】 本発明は、制限されることなく、次の図および実施例により例証される。
【0328】 図1はABC1遺伝子のエクソン12におけるAlu配列の挿入による変異の
分離を例証している。ABC1遺伝子のエクソン 12における挿入−欠失は、
図1Aに示すような14のヌクレオチドの欠失および110のヌクレオチドの挿
入からなる。図1Bは、エクソン12のPCRによる増幅後にそれぞれの患者か
ら得た系統 NuおよびDNAフラグメントの大きさを示している。コースMは
移動マーカーに対応する(Gibco BRL)。コースCは指標DNAに対応
する。
【0329】 図2はABC1遺伝子のエクソン13における一つのヌクレオチドの欠失によ
る変異を例証している。補足片の配列が得られ、これを3’から5’の方向へ示
している。ABC1ポリペプチドのアミノ酸546〜552をコードする配列を
調査を行った系統群のさまざまな患者について示しており、それぞれ同型接合個
体(図2−a)、異種接合個体(図2−b)および非罹患個体(図2−c)に対
している。図2−aの配列は 3人の同型接合個体で見いだされ、図2−bの配
列は5人の異種接合個体で、図2−cの配列は4人の非罹患個体で見いだされた
【0330】 実施例 実施例1:本発明によるABC1遺伝子の転写物の組織分布 本発明によるポリヌクレオチドの発現プロフィールは、特にSambrook
らが記載したPCRにつながるノーザンブロットおよび逆転写の分析手順により
決定される(ref. CSH Sambrook, J., Fritsch
, E. F., and Maniatis, T.(1989).“Mol
ecular Cloning : A Laboratory Manual
,”2nd ed., Cold Spring Harbor Labora
tory Press, Cold Spring Harbor, NY.) たとえば、逆転写による分析の場合、配列配列番号91のABC1ヒト遺伝子
の完全DNAから合成した端緒(プライマー)対を対応する cDNAを検出す
るために用いる。
【0331】 連鎖的なポリメラーゼ反応(PCR)は、mARN polyA+(Clon
tech)レトロ転写物に対応するcDNA基質上で行う。cDNAにおける逆
転写は、製造者が記載した条件に従って酵素 SUPERSCRIPT II(G
ibcoBRL, Life Technologies)と共に行う。連鎖的
なポリメラーゼ反応はcDNA調製物25ngとの反応混合物20mlの中で、
標準条件に従って行う。反応混合物は、各dNTPを400 mM、Therm
us aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ(Ampli Taq
Gold;Perkin Elmer)を 2単位、各プライマー 0.5
mM、MgClを 2.5 mM、およびPCRタンポンから構成される。テ
ルモサイクラー Perkin Elmer 9700内で94℃で10分間の
第一変性工程後に、PCRを34サイクル行う。PCR反応は電気泳動によるア
ガロースゲル上で視覚化される。得られたcDNAフラグメントはノーザンブロ
ットによる分析のためのプローブとして使用してもよく、またポリヌクレオチド
配列の正確な決定に使用してもよい。
【0332】 ノーザンブロットによる分析の場合、上記したように生成されたcDNAプロ
ーブを、DNA High Prime(Boehringer)標識システム
により、製造者の説明書に従って32Pにより標識する。標識後、製造者の説明
書に従って、プローブをSephadex G50(Pharmacia)の微
小カラム上で純度を高める。標識して、純度を高めたプローブをさまざまな組織
内におけるmRNAの発現検出のために使用する。
【0333】 さまざまなヒト組織のRNA試料を含むノーザンブロット((Multipl
e Tissue Northern, MTN, Clontech) Bl
ot2,参照77759−1)を標識したプローブと共にハイブリッド形成する
【0334】 ハイブリダイゼーションおよび洗浄の手順は、直接製造者が記載した手順であ
ってもよく、あるいは当業者に既知の技術、たとえば F. Ausubelら
が記載した技術(1999年)を使って、この手順に適合させ他ものでもよい。
このようにすることで、たとえば、プレハイブリダイゼーションおよびホルムア
ミドの存在下におけるハイブリダイゼーションの温度を変化させることができる
【0335】 たとえば次の手順を用いてもよい。 1.− メンブランの競合およびプレハイブリダイゼーション −混合する:サケの精子DNA40ml(10mg/ml) +ヒトの胎盤DNA 40ml(10mg/ml) −96℃で5分間変性させ、混合物を氷の中に浸す。
【0336】 −SSC 2Xを取り除き、メンブランを含むハイブリダイゼーションチュー
ブ内に混合ホルムアミド4mlを流し込む。
【0337】 −変性させた二つのDNAの混合物を加える。
【0338】 −回転させながら、42℃で5〜6時間インキュベートする。
【0339】 2.−標識したプローブの競合 −標識を行い純度を高めたプローブに、反復配列の量に従って、DNA Cot
Iを10〜50ml加える。
【0340】 −95℃で7〜10分変性させる。
【0341】 −65℃で2〜5時間インキュベートする。
【0342】 3.−ハイブリダイゼーション −予備ハイブリダイゼーション混合物を取り除く。 −サケ精子DNA40ml+ヒト胎盤DNA 40mlを混合する、 96℃で5分間変性させ、氷に浸す。
【0343】 −ハイブリダイゼーションチューブ内に、ホルムアミド混合物を4ml、二つ
のDNAの混合物および標識したプローブ/変性させたDNA Cot 1を加
える。
【0344】 −回転させながら、42℃で15〜20時間インキュベートする。
【0345】 4.−洗浄: −2×SSC内で室温で洗浄を行い、リンスする、 −2×SSCおよび65℃の0.1%SDSを室温で5分間2回、 −1×SSCおよび65℃の0.1% SDSを65℃で15分間2回。
【0346】 ハイブリダイゼーションおよび洗浄の後、ブロットを、Storm(Mole
cular Dynamics, Sunnyvale, CA)により顕した
蛍光体スクリーンに接触させて一晩露光した後分析する。
【0347】 実施例2:ABC1遺伝子の完全cDNAの獲得 ヒトABC1遺伝子のcDNAの3’−UTR領域の配列をデータベース内を調
査して特定した。 配列 ESTのデータベース(「Genbank mouse human s
ubdivision EST, v. 111」)の反復スクリーニングをソ
フトBLASTにより行った。
【0348】 配列ESTから誘導された部分的共通配列からオリゴヌクレオチドプライマー
を合成し、RT−PCR反応により、ヒトABC1遺伝子のcDNA3’末端を
増幅してその配列を決定した。
【0349】 使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次の通りである。
【化1】
【0350】 脳組織、胎児脳、心臓、子宮および胎盤(Clontech社から市販されて
いるバンク)からのmRNA poly(A)+の逆転写を、Superscr
iptTMキット(Life Technologies Inc.社より市販
)を使用して、製造者の説明書に従い、oligodTプライマーによるエロン
ゲーション(延長術)により行った。
【0351】 各実験において、逆転写酵素を含まない標本中のPCRにより増幅されるポリ
ヌクレオチドの欠如により汚染された DNAの存在を排除することができた。
【0352】 PCR反応を、次の条件における第1逆転写工程を受けたまたは受けない生成
物対して行った。
【0353】 −NTP 400 mM、DNAポリメラーゼ Taq(Thermus a
quaticus、Ampli Taq Gold、Perkin Elmer
社より市販) 2単位、各プライマーを 0.5 mMずつ、MgClを 2
.5 mM、全体は、同じく DNAを 50ngまたはcDNAを約25ng
含む PCR用タンポンに入れる。
【0354】 −PCR反応を、96穴のマイクロプレート内、thermocycler装
置(Perkin Elmer 9700 Thermal Cycler)内
で30サイクル行った。
【0355】 −94℃、10分間の初期変性の後、各サイクルを次のように行った。
【0356】 −94℃、30秒間の変性工程、30秒間のハイブリダイゼーション工程(6
4℃で2サイクル、61℃で、2サイクル、58℃で2サイクル、55℃で28
サイクル)。
【0357】 −延長術工程をキロベース当たり1分間に相当する時間行う。
【0358】 −7分間の拡大最終工程でPCR反応を終える。
【0359】 ABC1の完全cDNAに対応するcDNAを単離するためには他のさまざま
な方法を用いてもよい。
【0360】 たとえば、完全クローンはcDNAバンクを価値のある遺伝子の配列を持つ特
殊ポリヌクレオチドプローブを使ってスクリーニングすることで、ハイブリダイ
ゼーションにより直接単離してもよい。
【0361】 特に30〜40のヌクレオチドの特殊プローブは、選択した配列により、Ap
plied Biosystemマーク合成機/Perkin Elmerを使
って合成する。
【0362】 得られたオリゴヌクレオチドを、T4 ポリヌクレオチドキナーゼを用いてた
とえば32P−γ−ATPにより放射能標識し、通常の方法(たとえば Man
iatisら、Molecular cloning : A Laborat
ory Manual, Cold Spring Harbor Press
, Cold Spring, NY 1982年またはF. Ausubel
ら . Current Protocols in Molecular B
iology, J. Wiley and Sons Eds, 1989年
)により純度を高める。
【0363】 スクリーニングを望むcDNAを含むクローンバンクは、上記で挙げた通常の
方法(F. Ausubelら)による適切な抗生物質を含むペトリボックス内
の培養培地(寒天1.5%)上に陳列されている。インキュベーション後このよ
うに生成されたコロニーはニトロセルロースフィルター上に移されて、通常の方
法で、放射能標識されたヌクレオチドプローブによりスクリーニングされる。プ
ローブとハイブリッド形成したコロニーを単離し、下位クローン化する。
【0364】 このようにして探知するクローンのDNAを調製し、配列毎に分析する。完全
cDNAに対応するフラグメントを含むクローンの純度を高め、当業者に既知で
あり、たとえばF.Ausubelらが紹介している(1989年)の手順によ
りpcDNA3ベクター内で再クローン化する。
【0365】 本出願に記載する遺伝子に対応するcDNAの5’および3’末端を識別する
ためにはさまざまな方法が知られている。これらの方法には、ハイブリダイゼー
ションによるクローン化、当業者によく知られている 3’または5’RACE
−PCR(Rapid Amplification of cDNA End
−PCR)に類似したまたは同一の手順を用いるクローン化があるが、これらに
限定されるものではない。
【0366】 たとえば、Clontech社から市販されているキット(Marathon
ReadyTM cDNA kit, 参照手順 PT1156−1)を使用
してもよい。または5’RACEに類似の方法は cDNAの 5’末端欠如を
分析するために使用できる(Fromont−Racine et al. N
ucleic Acid Res. 21(7) : 1683−1684(1
993))。要するに、RNAのオリゴヌクレオチドはmRNA群の5’末端に
結合する。cDNAでのレトロ転写、価値のある遺伝子の 5’で結合したアダ
プターと3’に位置する配列とのそれそれの特殊プライマーセットを、求めるc
DNAの5’部分を増幅するためにPCRで用いる。増幅されたフラグメントは
次に完全cDNAを再構成するために使われる。
【0367】 実施例3:Tangier病についての遺伝子発現プロフィール分析 Tangier細胞表現型を導くABC1遺伝子の発現レベルの変化は、この
病気に罹患したまたは非罹患者の繊維芽細胞に由来する mRNAに対応するプ
ローブとこれら配列とのハイブリダイゼーションを下記の方法に従って行うこと
で確認できる。
【0368】 1.全 RNA、mRNA poly(A)+およびcDNAプローブの調製
全RNAを健康被験者またはTangier病患者の繊維芽細胞の細胞培養から
、イソチオシアン酸塩グアニジン方法により得る(Chomczynski &
Sacchi, 1987)。mRNA poly(A)+は、オリゴ(dT
)−セルロースカラム(Sambrookら、1989)上での親和性クロマト
グラフィーにより獲得し、プローブとして使用するcDNAは、蛍光物質(Am
ersham Pharmacia Biotech; CyDye)により標
識したオリゴヌクレオチドとのRT−PCR(DeRisiら、1997) に
より得る。
【0369】 2.ハイブリダイゼーションおよび発現レベルの検出 Tangier遺伝子に対応する、本特許請求中に示されている配列を含むガラ
スメンブレンを繊維芽細胞から得た、cDNAプローブと共にハイブリッド形成
する(lyerら、1999)。Amersham/molecularCyn
amicsシステム(Avalanche MicroscannerTM)を
使用することで、健康または罹患した細胞タイプに対する配列生成物の発現を量
子化できる。
【0370】 実施例4:哺乳類細胞におけるABC1完全cDNAを含む発現ベクターの構
成 ABC1遺伝子は哺乳類細胞中で発現させることが可能である。典型的な真核
生物の発現ベクターは、mRNAの転写の開始を可能にするプロモーター、蛋白
質をコードする配列、転写の終結および転写物のポリアデニル化に必要なシグナ
ルを含んでいる。また転写促進因子のような補足シグナル、Kozak配列、m
RNAのスプライシングに必要な配列も含んでいる。有効な転写はウイルスSV
40のプロモーターの初期および遅発エレメント、LTRレトロウイルスまたは
CMVウイルスの初期プロモーターにより得られる。しかしながら、アクチンプ
ロモーターのような細胞エレメントもまた用いることができる。本発明を実施す
るために数多くの発現ベクターを、pcDNA3ベクターのように使用すること
ができる。
【0371】 実施例5:正常または変異ABC1ポリペプチドの生成 実施例2にその単離を記載した(完全cDNAのクローン化)ABC1の完全
cDNAによりコードされる正常ABC1ポリペプチド、またはその完全cDN
Aもまた実施例2に記載した技術に従って得ることができる変異ABC1ポリペ
プチドは、バキュロウイルスを用いることで、細菌、昆虫細胞発現システムにお
いて、またはワクチンのウイルスベクターと共に、またはこれを用いずに、哺乳
類細胞中で容易に生成することができる。これら全ての方法は今日幅広く公表さ
れており、当業者に既知の方法である。たとえば、F. Ausubelらによ
り詳細に説明されている。
【0372】 実施例6:突然変異したポリペプチドABC1の一つに対して誘導される抗体
の生成 本発明における抗体は、種々の方法によって調製することができる(Fred
erick M.Ausubel、Roger Brent、Robert E
.Kingston、David D.Moore、J.G.Seidman、
John A.Smith、Kevin Struhl−マサチューセッツ総合
病院ハーバード医学学校、第11章によって編集されたCurrent Pro
tocols in Molecular Biology Volume1−
分子生物学における一般的プロトコル、第一巻)。たとえば、本発明のプロペプ
チドを表わす細胞は、抗体を含む血清の生成を誘導するために、動物に投与され
る。上述した方法の一つにおいては、プロテインは、汚染を防ぐために調製され
、浄化される。こうして、このような調製は、活性がより大きなポリクローン抗
血清剤を生成する目的で動物において行なわれた。
【0373】 好ましい方法においては、本発明の抗体は、モノクローン抗体である。このよ
うなモノクローン抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler等、Nature
256:495(1975年);Kohler等、Eur.J.Immuno
l. 6:511(1976);Kohler等、Eur.J.Immunol
.6:292(1976);Hammeling等、:Monoclonal
Antibodies & T−Cell Hybridomas−モノクロー
ン抗体&T細胞ハイブリドーマ、Elsevier, N.Y., pp.56
3−681 51981)を使用することによって調製することができる。一般
に、このような方法は、ポリペプチドによって、さらに好ましくはポリペプチド
を表わす細胞によって、動物(好ましくはマウス)に対して免疫を与えることを
前提としている。これらの細胞は、適切な組織培養基の中で培養され得る。しか
しながら、牛の胎盤の血清(56℃で不活化)10%を補われ、非必須アミノ酸
およそ10g/lと、ペニシリン1000U/mlと、ストレプトマイシン10
0μg/mlを追加したイーグル法の媒質(イールを修正したもの)内で細胞を
培養することが好ましい。
【0374】 これらのマウスのスプレノサイトは、適切なミエローマの細胞系統とともに抽
出及び融合される。しかしながら、ATCCで入手可能な両親のミエローマの細
胞系統(SP20)を使用することが好ましい。融合後、その結果生じるハイブ
リドーマ細胞は、選別的にHAT媒質において保持され、さらに、Wands等
(Gastroemterology−胃腸病学80:225−232(198
1))によって紹介されているような限定希釈によってクローン化される。この
ような選別後に得られたハイブリドーマ細胞は、ポリペプチドに固定することが
できる抗体を分泌するクローンを識別するためにテストされる。
【0375】 その一方で、ポリペプチドに固定することができる他の抗体は、抗イディオタ
イプ抗体を使用する2段階の手順にしたがって生成することができ、このような
方法は、抗体それ自体で抗原であり、したがって、他の抗体を特定する抗体を得
ることが可能であるという事実に基づいている。この方法によれば、動物、好ま
しくはマウスにに免疫を与えるために、プロテインの特定の抗体が使用される。
次に、ハイブリドーマ細胞を生成するためにこの動物のスプレノサイトが使用さ
れ、これらの細胞は、抗体を生成するクローンを識別するために選別され、プロ
テインと特定の抗体との錯体に固定されるべきその抗体の体積は、ポリプロペプ
チドによってブロックされる。これらの抗体は、より大きな量のプロテインの特
定の抗体の形成を誘導するために動物に免疫を与えるように使用することができ
る。
【0376】 本発明の抗体のFab及びF(ab’)2及び他のフラグメントは、通常、こ
こに説明した方法によって使用することができると考えられるだろう。このよう
なフラグメントは、通常、パペイン(Fabフラグメントを生成するため)また
はペプシン(フラグメントF(ab’)2を生成するため)のような酵素を用い
てタンパク質加水分解型分裂によって生成される。そうでなければ、プロテイン
を特定する分泌されたフラグメントは、DNA組換え技術または化学合成技術を
適用して生成することができる。
【0377】 人間における抗体の生体内使用のためには、「人間に適用された」架空のモノ
クローン抗体を使用することが望ましい。このような抗体は、上述のモノクロー
ン抗体を生成するハイブリドーマ細胞から派生する遺伝子構造を使用することに
よって生成されうる。架空の抗体を生成するための方法は、当業者によって知ら
れている(定期刊行物としては、Morrison、Science 229:
1202(1985);Oi等、Biotechnique 4:214(19
86);Cabilly等、EP173494;Neuberger等、WO
8601533;Robinson等、WO 8702671; Boulia
nne等;Nature 312:643(1984);Neuberger等
、Nature 314:268(1985)) 例7:Tangier病の細胞表現型の補正 Tangier病は、高密度リポタンパク質(HDL)粒子によって加速され
る異化作用と、組織内コレステロールの蓄積によって特徴づけられる。特に、T
angier病にかかった患者の皮膚の線維芽細胞は、HDLの重要なプロテイ
ンであるアポリポプロテインA−1(アポA−1)によって保証されるコレステ
ロールの流れのプロセスによって、その内容のコレステロールを除去するべき小
さい体積を有する(Francis等、1995年)。官能基の喪失に対応する
この特徴はまた、家族性HDL不全にかかっている患者の他の線維芽細胞内にも
見られる(Marcil等、1999年)。
【0378】 Tangierの線維芽細胞の表現型の補正は、前記の細胞において、本発明
によるABC1の完全なDANcのトランスフェクションによって行なうことが
できる。DANcは、次に以下に説明する方法によってトランスフェクションさ
れる表現ベクトル内に挿入される。
【0379】 1.Tangier病にかかっている患者及び正常な被験者の線維芽細胞培養
の調製 人間の皮膚の一次的線維芽細胞は、前腕から生じる肌のバイオプシ培養化によ
って得られる。それらのバイオプシは、「ホモ接合体」の臨床学的及び生化学的
特殊性、すなわちオレンジ色の扁桃、百分の五未満のアポA−I及びコレステロ
ール−HDLのプラズマ濃度を有する、Tangier病にかかった患者におい
て実施される。正常の線維芽組織系統は、アメリカンタイプ培養コレクション(
Rockville、MD)で得られる。線維芽組織は、牛の胎児の血清10%
、グルタミン2mM,ペニシリン100Ul/ml、ステプトマイシン100μ
m/ml(EMMEM10によって指定される媒質)によって補足されEMME
M(イーグル−変更済み最小必須媒質;GIBCO)媒質において培養される。
コレステロールの流れの研究を実施するために、これらの細胞は、子牛の血清は
持たないが、2mg/mlの牛のアルブミンを含む(BSA、フラクションV)
上述の媒質の中で50μg/mlのコレステロールとともに24時間インキュベ
ーションすることによってコレステロールが予備装入される。
【0380】 2.コレステロールの流れの研究 24ウェルにおけるプレート上で融合することによってコレステロールを予備
装入された線維芽組織は、48時間、EMMEM10及び1.2−H−コレス
テロール媒質(50 Ci/mmol;Dupont;Wilimington
、DE)においてインキュベーションされる。ウェルごとに、毎分およそ100
,000回が、または細胞プロテイン1μgごとにおよそ毎分1,000回得ら
れる。細胞は、EMMEM/BSA媒質によって3回洗浄され、優性遺伝子をト
ランスフェクションし、EMMEM/BSA媒質にアポA−Iを含むプロテオロ
ポゾーム10μg/mlを付加することによって流れを開始させる前に、24時
間、この媒質によってインキュベーションされる。これらのプロテオリポゾーム
は、ホスファチジルコリン及び浄化された人間のapoA−Iのソニケーション
によって調製される(Jonas、1986年)。細胞のトランスフェクション
は、リン酸カルシウムの沈殿技術によって行なわれる(Sambrook等、1
989年)。流れの時間、一般に20時間を経た後に、媒質は集められ、遠心分
離され(1000g、5分間)、液体のシンチレーションでカウントすることに
よって放射能が決定される。細胞内に残された放射能はまた、イソプロパノール
の脂質から抽出された後に夜間に決定される。流れのパーセンテージは、細胞の
表面に残存するものと細胞エキスにおいて、表面に残存されたものの中で測定さ
れた放射能力を測定された放射能力の和で割ることによって計算される。証拠遺
伝子によってトランスフェクションされた、正常の線維芽細胞からの細胞コレス
テロールの流れは、6±2%に対応し、それに対して、Trangier病にか
かり、その証拠遺伝子によってトランスフェクションされた線維芽細胞から得ら
れる流れは、1%未満である。反対に、本発明による、完全なDNAcまたはさ
らにABC1のゲノムのDANを含むプラスミドによる、Tanfier病にか
かった線維芽細胞のトランスフェクションは、正常線維芽組織のに対応するレベ
ルで、コレステロールの過剰分を除去するそれらの細胞の能力を回復させること
ができるだろう。
【0381】 実施例8:人間の遺伝子ABC1のゲノムフラグメントの隔離と特徴付け 人間ABC1のDANcのおよそ3kbのフラグメントは、ABC1のATP
の第一の固定領域を含む「pf10」と称されたDANcのクローンから得られ
た。このDANcクローンは、Luciant等の論文(1994年)の中で紹
介されている。
【0382】 制限エンドヌクレアーゼEcoRIを用いてクローンpf10の温浸によって
得られたDANcフラグメントは、電気泳動の後にアガロースのゲル上で隔離さ
れ、さらに、メーカの指示にしたがって、ジゴキシゲニンによってマークされた
(Boehringer Mannheimによって市販されたキット、商品番
号1 585 614)。
【0383】 マークされたDANcのフラグメントは、ナイロンフィルタTM上に固定され
た染色体9のコスミドLLNL(lawrence Livemore Nat
ional Labs)のバンクを選別するために使用された。
【0384】 陽性の6つのクローンが識別された。それら6つのコスミドについては、ゾン
デが単一のコロニーとともに混成された。
【0385】 代表的なクローンは、これらのコロニーの各々から隔離された。
【0386】 クローンLLNLC 131J087 Q2(ここではcos3aと称される
)とLLNLc 13O1165 Q2(ここではcos6f)がより詳細に分
析された。
【0387】 クローンcos3aは、ベクトルGen3zf(−)内でフラグメントExo
RIの形状でサブクローン化され、タイプABI377のシーケンサにおいてビ
ッグ・ダイ・ターミネータ技術を使用しながら2つの先端でシーケンス化された
(Applied Biosystems−応用バイオシステム、Perkin
Elmer)。
【0388】 ベクトルのシーケンスと混成させる前駆体を用いて、完全にシーケンス化され
るためにあまりに長い長さを有する別々のインサート(種々のインサートとの先
端、あるいはまたそれらのサイズの決定によって決定される)を含むクローンは
、トランスポソンの装入技術、次に、トランスポソンの特殊な前駆体を用いたシ
ーケンス化技術によってさらに分析が進められた(New England B
ialabs社によって市販された「GPS」システム)。
【0389】 この方法で、人間の遺伝子ABC1に対応するゲノムシーケンスは、隔離され
、特徴付けられた。これらシーケンスは、イントロン−エキソン接合を決定する
ことができるデータベースの中で参照される人間及びマウスのシーケンスと比較
された。
【0390】 実施例9:遺伝子ABC1の中の多形性/突然変異の決定 遺伝子ABC1の転写シーケンスの中またはゲノムシーケンスの中の多形性ま
たは突然変異の検知は、種々の手順に沿って行なわれた。選択方法は、直接シー
ケンス化である。ARNmの調製を得ることができる患者については、選択方法
はDNAsを調製し、それらを直接的にシーケンス化することである。DNAし
か入手できない患者については、対応する遺伝子の構造が知られていない、また
は部分的にしか知られていない転写の場合には、イントロン−エキソン構造と、
対応する遺伝子のゲノムシーケンスを厳密に決定することが必要である。したが
って、まず最初に、例8で説明された方法にしたがって検討された転写に対応す
るゲノムDANのBACまたは一つまたは複数のコスミドクローンを隔離し、対
応する1つまたは複数のクローンのインサートをシーケンス化して、DANcの
シーケンスと得られたゲノムDANのシーケンスとを比較することによって、イ
ントロン−エキソン構造を決定することが問題となる。
【0391】 直接シーケンス化による突然変異の検知技術は、疾患のためのホモ接合体また
は少なくとも8人の個人(研究対象の病理に感染した4人及び感染していない4
人)から得られた遺伝子ABC1のゲノムシーケンスを比較することからなる。
シーケンスの相違が多形性を構成する。自然のプロテインのアミノ酸のシーケン
スを変更させるあらゆるシーケンスは、前記プロテインの官能基に影響を与える
恐れがある突然変異とすることもできる。とりわけ、血統の中、あるいはまた、
散発性の症例の分析のために症例と証拠の接合の研究において、突然変異と病気
の共−分離研究(遺伝子型と表現型との相関)のために考察することが興味深い
と思われる。
【0392】 実施例10:原因となる突然変異または転写の相違によるコレステロールの逆
輸送不全に関連した病気の原因となる遺伝子の識別 実施例9に紹介されている方法によって識別された突然変異については、病気
の表現型に結びついたものはすべて原因となる恐れがある。それらの結果の有効
化は、あらゆる患者と(DNAが入手可能な)その親戚における遺伝子をシーケ
ンス化しながら行なわれる。
【0393】 他方、例1に紹介された方法によって、病気にかかっている個人またはかかっ
ていない個人の特定のARNからのNothernブロットまたはRT−PCR
の実施は、研究対象の遺伝子の表現レベルの著しい変化、とりわけ遺伝子の転写
が不在を検知することができる。
【0394】 実施例11:Tangier病にかかった患者における遺伝子ABC1のエキ
ソン13におけるヌクレオチドの欠失の識別 遺伝子ABC1における突然変異の分析は、複数のメンバーが、早発性冠動脈
変調をともなうTangier病にかかっている血統に属する何人かのDNA遺
伝子について行なわれた。
【0395】 ヌクレオチドの欠失は、エキソン13において識別された(DG1764:L
eu548Leu;575End)。この欠失は、突然変異した遺伝子ABC1
によってコード化されたプロテインABC1の欠如を予測することができるポジ
ション575にストップコドンを引き入れる。この欠如は、アミノ酸の正常のシ
ーケンスの大部分、とりわけATPにおける2つの固定用カセットの欠失された
ポリペプチドの合成を導く。
【0396】 ヌクレオチドのこの欠失の存在と患者の症状の所見との間の完璧な相関が、血
族の全体の中に存在した(図1)。
【0397】 実施例12:遺伝子ABC1のエキソン12におけるヌクレオチドのセグメン
トの装入の識別 複数のメンバーがTangier病にかかっている他の血族において、エキソ
ン12にお14の基礎対の欠失をともなう、Alu−Sqタイプの反復ヌクレオ
チドシーケンス構造を有する110の基礎対の装入が見られた(図2)。装入/
欠失によるこの突然変異は、65のアミノ酸(DERKFW)の欠失と、さらに
38のアミノ酸(EYSGVTYSAHCNLCLLSSSDRASASQVA
GITAPATTPG)の位相への装入を予測することを可能にする。
【0398】 こうした突然変異は、正常の輸送用ポリペプチドの合成を可能にしない。した
がって、この系統の個人においては、Tangier病は、遺伝子ABC1にお
ける欠陥によって引き起こされる。
【0399】 実施例13:遺伝子ABC1における双対立遺伝子の多形性の識別 患者のDNAの拡大のための前駆体は、遺伝子ABC1のイントロンDANの
非反復性シーケンスから考えられ、その結果イントロン−エキソン接合の拡大と
、ARNの組み継ぎ段階中の二次構造の形成のための重要なベースが、拡大され
たフラグメント内に含まれる。
【0400】 特別に調製された前駆体の種々の対は、表5に示されている。
【0401】 冠動脈の合併症をもたないTangier病の症例を含む血統のDNAにおい
て認められた結果は、表6に示されている。
【0402】 患者の遺伝子DNAは、メーカによって推薦された拡大サイクルの条件と混成
条件を使用しながら、Qiagen’s Star TagキットまたはSup
ertaqキットを用いて、上述の前駆体によって拡大された。
【0403】 拡大された生成物PCRは、Qiagen社から市販されているキットを用い
て浄化され、さらに、シーケンサABI377においてBig Dye Ter
mminator法によってシーケンス化された(Applied Biosi
systems、Perkin Elmer)。
【0404】 実施例14:タンジエール病に関連した遺伝子座9q31上の1cM領域の同
定 第一連鎖(「linkage」)分析が、Rustらの論文(1998年)に
記載された。
【0405】 この論文は、タンジエール病に罹っている患者の3家族に対する連鎖分析を紹
介しており、9q31における8cMの候補区間を規定した。
【0406】 本出願人は、4つの補足家族、並びに公開データベースにおいて参照されてい
る追加のマーカーを含めて連鎖研究を実施し、ジェネトン社(Genethon
)によって公開された遺伝カード(carte genetique)(Dib
ら、1996年)を参照して、候補領域を約1cMにきめ細かく決定した。
【0407】 下記に示されている連鎖分析結果によって、本出願人は、候補領域から、それ
ぞれマーカーD9S271及びD9S1866に近位(セントロメア)及び遠位
(テロメア)のゲノムセグメントを除外することができた。
【0408】 従って候補領域は、これら2つの除外マーカー間に局在化されている。
【0409】 候補領域をきめ細かくするのを可能にした重要な情報は、Rustらの論文(
1998年)に記載された血統のE1部分から得られた。実際、この論文の図2
に既に記載されている乗換え事象(crossing−over)(マーカーD
9S277とD9S53間)が、実際にマーカーD9S271に対してテロメア
的に局在化されているであろうということが、E121m部分を起源とする母性
染色体上において証明された。候補区間のセントロメア境界は、D9S271と
D9S277間に位置する。
【0410】 新規家族のうちの2つ、すなわちそれぞれ家族「S1」と家族「NU」におい
て、補足乗換え事象が観察された。これらの乗換え事象によって、候補区分のテ
ロメア境界を、マーカーD9S1677(Rustらの論文(1998年)に記
載されているもの)からマーカーD9S1866に移動させることができた。
【0411】 第一血統「S1」が伸長された。罹患している個人は、8cM領域のすべての
マーカー、並びにこの領域の両側に局在化されているさらに遠いマーカーについ
て、ホモ接合体遺伝子型を示している。2人の両親(二重近親交配)によってS
1に類似している個人S1のいとこのうちの一人は、4人の子供を持っている。
これらの子供のうちの2人は、父性起源の染色体上に、病気のハプロ型(hap
lotype)の大部分の保持を示す(8cMの規定領域内)。これらの2人の
子供はまた、タンジエール病に罹っている家族のヘテロ接合体両親の典型的な特
徴、すなわちこの病気に冒されていない患者において見られるレベルの半分のH
DLレベルを示す。
【0412】 しかしながらこれらのマーカーについてのホモ接合体形質は、マーカーD9S
1866(これはこれらの個人においてヘテロ接合体である)からの染色体領域
においてはもはや見られない。これによって、D9S1866を、候補領域のテ
ロメア境界と規定することができた。
【0413】 同じテロメア境界は、家族「Nu」においても見られた。この家族において、
明白ないとこ同士の両親からの4人の子供のうちの一人は、ホモ接合体タンジエ
ール病に冒された患者であった。
【0414】 候補領域の全体上のマーカーについてのホモ接合性が、この患者において見ら
れた。
【0415】 ヘテロ接合体(表現型レベルにおいて)のこの患者の兄弟のうちの一人は、2
つの染色体のうちの1つ上で乗換え事象(crossing−over)を示し
ており、従ってこの兄弟は、マーカーD9S1866を含むあらゆるテロメアマ
ーカーについてホモ接合体(遺伝レベルにおいて)であるが、セントロメアの方
への領域において局在化されているマーカーの場合、ヘテロ接合体(遺伝レベル
において)である。
【0416】 この患者は、ホモ接合体患者の表現型を示さないので、マーカーD9S186
6を含むテロメア領域は除外することができた。
【0417】 実施例15:ヒト遺伝子ABC1の単離及び特徴決定 ヒトABC1のDNAcの約3kbの断片は、ABC1のATPの第一固定ド
メインを含む「pf10」と名付けられたDNAcのクローンから得られた。こ
のDNAcのクローンは、Lucianiらの論文(1994年)に記載されて
いる。
【0418】 制限エンドヌクレアーゼEcoRlによるクローンpf10の消化によって得
られたこのDNAc断片は、電気泳動後アガロースゲル上で単離され、ついで構
成者の指示に従って(ベーリンガー・マンハイム社(Boehringer M
annheim)によって販売されているキット)ジゴキシゲニンでマークされ
た。
【0419】 マークされたこのDNAc断片は、ナイロン(Nylon)(登録商標)のフ
ィルター上に固定化された染色体9のコスミドバンクLLNLを選別するために
用いられた。
【0420】 6つのポジティブクローンが同定された。これら6つのコスミドについて、プ
ローブはユニークコロニーとハイブリダイズした。
【0421】 代表的クローンが、これらのコロニーの各々から単離された。
【0422】 これらのクローンLLNLC 131J087 Q2(ここではcos3aと
名付けられている)及びLLNLc 13101165 Q2(ここではcos
6fと名付けられている)が、より詳細に分析された。
【0423】 クローンcos3aは、ベクターGen3zf(−)内の断片EcoRlの形
態でサブクローニングされ、AB1377型のシークエンサー上のビッグダイ・
ターミネーター(Big Dye Terminator)技術を用いて、2つ
の末端に配列決定された。
【0424】 ベクターの配列とハイブリダイズするプライマーによって完全に配列決定され
るには大きすぎる長さを有する別々の挿入断片(異なる挿入断片の末端の配列決
定後、あるいはさらにはこれらのサイズの決定によって決定されたもの)を含む
クローンは、トランスポゾンの挿入技術によって、ついでトランスポゾンの特異
的プライマーによる配列決定技術(ニューイングランド・バイオラブス社(Ne
w England Biolabs)によって販売されている系「GPS」)
によってさらに詳しく分析された。
【0425】 このようにして、ヒト遺伝子ABC1に対応するゲノム配列が単離され、特徴
決定された。これらの配列は、ヒトの配列及びデータベースにおいて参照されて
いるマウスの配列と比較された。
【0426】 イントロン−エキソン結合の配列を決定した。
【0427】 これらの患者のDNAの増幅用のプライマーは、イントロン−エキソン結合の
増幅並びにスプライス工程中の投げ縄型構造の形成に対して不可欠の塩基が、増
幅された断片の中に含まれるように、遺伝子ABC1のイントロンDNAの非反
復的配列から考え出された。
【0428】 これらの患者のゲノムDNAは、キアゲン社(Qiagen)のスター・タッ
ク(Star Taq)キット、あるいはさらにはスーパータック(Super
taq)キットを用い、ハイブリダイゼーション条件及び構成者によって推奨さ
れている増幅サイクル条件を用いて、上記プライマーによって増幅された。
【0429】 増幅PCR産物は、キアゲン社によって販売されているキットを用いて精製さ
れ、ついでシークエンサーAB1377上のビッグダイ・ターミネーター方法に
よって配列決定された。
【0430】 実施例16:タンパク質ABC1についてコードするポリヌクレオチドを含む
組換えベクターの構成 1.ヒト遺伝子ABC1の合成 ヒト胎盤組織(米国カリフォルニア州パロアルトのクロンテック社(Clon
tech,Palo Alto,CA,USA))から単離された全RNA(5
00ng)が、下記のものを利用して、ヒト遺伝子ABC1のDNAcの合成源
として用いられた。すなわち「スーパースクリプト・ワン・ステップ(Supe
rscript one step)RT−PCR(米国メリーランド州ゲイタ
ーズバーグのライフ・テクノロジー社(Life Technologies,
Gaithersburg,MD,USA))及び下記ABC1の特異的オリゴ
ヌクレオチドプライマー(0.25μM)を利用した: − 行きのプライマー:5’−CTACCCACCCTATGAACAAC−
3’(ABC1 DNAcのnt 75−94) −帰りのプライマー:5’−1GCCACCCCGTATGAACAGGG−
3’(ABC1 DNAcのnt 6731−6751)。
【0431】 これらのオリゴヌクレオチドプライマーは、AB1 394型のDNAの合成
装置(米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ
社(Applied Biosystems,Foster City,CA,
USA))でのホスホルアミダイト方法によって合成された。
【0432】 制限酵素Notlによって認識された部位は、新規増幅工程によって、667
6pbの増幅DNAc中に組み込まれた。この時、前記ジデオキシヌクレオチド
dATP、dCTP、dTTP、及びdGTPの各々200μM、並びにPyr
ococcus furiosus(米国カリフォルニア州ラジョラのストラタ
ジーン社(Stratagene,Inc.La Jolla,CA,USA)
)のDNAポリメラーゼの存在下、マトリックスとしてのヒトABC1のDNA
c 50ng、及び5’末端に制限酵素Notlによって認識された部位を含む
前記オリゴヌクレオチドプライマー0.25μMを用いた。
【0433】 PCR反応は、PCR用の熱サイクラー(thermocycleur)装置
(米国コネチカット州ノーウオークのシータス・パーキン・エルマー社(Cet
us Perkin Elmer,Norwalk,CT,USA))において
、各々95℃で1分間の変性工程、50℃で1分間の復元工程、及び72℃で2
分間の延長工程を含む30サイクルの間に施した。
【0434】 II.発現ベクターにおけるヒト遺伝子ABC1のDNAcのクローニング ヒトABC1のDNAcの6676pbの挿入断片が、サイトメガロウイルス
の早発性(precoce)プロモーター及び活性化配列(「Enhancer
」)、並びにSV40のポリアデニル化シグナルを含む発現ベクターpCMVの
制限部位Notlにクローンされ(Begら、1990年;Applebaum
−Boden、1996年)、pABC1と名付けられた発現ベクターがつくら
れた。
【0435】 クローンされたDNAcの配列は、ABl 310型の毛管シークエンサー(
米国カリフォルニア州フォスターシティ、アプライド・バイオシステムズ社)に
おいて、反応セット「ABl プリズム・ビッグダイ・ターミネーター・サイク
ル・シークエンシング・レディ」(米国カリフォルニア州フォスターシティ、ア
プライド・バイオシステムズ社によって販売されているもの)を用いて、2つの
ストランド(brin)上の配列決定によって確認された。
【0436】 III.ヒト遺伝子ABC1のDNAcを含む組換えアデノウイルスベクター
の構成 A.発現ベクターpCMV−βの修飾 発現ベクターpCMV−β(米国カリフォルニア州パロアルトのクロンテック
社、遺伝子バンク受入れ番号第U02451号)のβ−ガラクトシダーゼのDN
Acは、制限エンドヌクレアーゼNotlでの消化によって欠失させられ、5’
末端から3’末端の方へ、下記部位を含むクローニング多部位(polysit
e)と置換えられた: Notl、Ascl、Rsrll、Avrll、Swal、及びNotl(ク
ローニング多部位の配列):
【0437】
【化2】 クローニングのこの多部位は、部位Notlのレベルでクローンされた。
【0438】 修飾された発現ベクターpCMVの部位EcoRlとSanlとの間に含まれ
るDNA断片が単離され、シャトルベクターpXCXllの修飾部位Xbal中
にクローンされた(McKinnonら、1982年;McGroryら、19
88年)。
【0439】 B.シャトルベクターpXCXllの修飾 5’末端から3’末端の方へ、制限部位Xbal、EcoRl、Sfil、P
mel、Nhel、Srfl、Pacl、Sall、及びXbal(配列:
【0440】
【化3】 のもの)を含むクローニング多部位は、ベクターpXCXllのXbal部位(
3329位のヌクレオチド)のレベルに挿入された(McKinnonら、19
82年;McGroryら、1988年)。
【0441】 CMVのプロモーター/エンハンサー、FV40のスプライシングドナー及び
アクセプター部位、及びFV40のポリアデニル化シグナルを含む、修飾ベクタ
ーpCMV−βから単離されたDNA EcoRl−Sallの断片はついで、
pCMV−11と名付けられた修飾シャトルベクターpXCXの部位EcoRi
−Sall中にクローンされた。
【0442】 C.シャトルベクターpAD12−ABC1の調製 ヒトABC1 DNAcは、前記のようにRT−PCR反応によって得られ、
ベクターpCMV−12中の部位Notlのレベルにクローンされ、その結果ベ
クターpCMV−ABC1が結果として得られる。
【0443】 ベクターpCMV−ABC1中に含まれているABC1 DNAcは、ヒトA
BC1 DNAcの75位のヌクレオチドから、6751位のヌクレオチドまで
の配列を含む、6676pbのDNA断片から構成されている。
【0444】 D.ABC1組換えアデノウイルスの構成 ヒトABC1 DNAcを含む組換えアデノウイルスABC1−rldVは、
McGroryら(1988年)によって記載された技術に従って構成された。
【0445】 簡潔に言えば、ベクターpAD12−ABC1は、CHEN及びOKAYAM
Aの技術(1987年)に従って、ベクターtGM17と共にコトランスフェク
ションされた。
【0446】 同様にベクターpAD12−ルシフェラーゼが構成され、ベクターpJM17
と共にコトランスフェクションされた。
【0447】 組換えアデノウイルスは、PCR増幅によって同定され、ヒトの腎臓の胚細胞
系統HEK293(米国メリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カル
チャー・コレクション(American Type Culture Col
lection,Rockville、MD、USA))中での大規模増幅前に
2サイクルの精製に付された。
【0448】 感染された細胞は、アデノウイルスベクターによる感染の48〜72時間後に
収集され、凍結及び解凍による5サイクルの溶解に付された。
【0449】 これらの粗ライゼートは、フレオン(ハロカーボン113、米国ニュージャー
ジー州スコーカスのマセソン・プロダクト社(Matheson Produc
t,Scaucus,N.J.USA))によって抽出され、0.2%マウスア
ルブミンが補足された塩化セシウム(米国ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケ
ミカル社(Sigma Chemical Co.,Saint−Louis、
MO,USA))中に2回沈降され、150nM NaCl、10mM Hep
es(pH7,4)、5mM KCl、1mM MgCl、及び1mM Ca
Clから成る緩衝液に対して示量的に(extensivement)透析さ
れた。
【0450】 組換えアデノウイルスは、−70℃に保存され、動物へのこれらの投与、又は
培養中細胞とのこれらのインキュベーション前に滴定された。
【0451】 野生型の汚染アデノウイルスの不在は、欠失領域の構造部分上に局在化された
オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR増幅による選別によって確認さ
れた。
【0452】 IV.ヒトABC1 DNAcの発現の有効化 ヒトポリペプチドABC1の特異的ポリクローナル抗体は、タンパク質ABC
1から誘導された合成ペプチド「LHKNQTVVDVAVLTSFLQDEK
VKESYV」の注入によって、ウサギ及びひよこにおいて調製された。これら
のポリクローナル抗体は、免疫インプリンティング(immunoemprei
nte)及び/又は免疫検出による細胞及び動物モデルにおけるヒト遺伝子AB
C1の発現を検出及び/又は定量化するために用いられる。
【0453】 ABC1の生物活性は、コレステロールが挿入されたベクターpCMV−AB
C1によってトランスフェクションされた細胞から、アポA−lによって誘発さ
れたコレステロールフラックスを定量化して追跡することができる(Remal
eyら、1997年)。
【0454】 V.細胞中のヒトABCl DNAcの試験管内発現 系統HEK293及び系統COS−7の細胞(米国メリーランド州ベテスダの
アメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション(American Ti
ssue Culture Collection,Betesda,MD,U
SA))、並びにタンジエール病患者又は低アルファリポタンパク質血症に罹っ
ている患者に由来する初代培養の繊維芽細胞が、リポフェクタミン(米国メリー
ランド州ゲイターズバーズのBRL社)を用いて、あるいは塩化カルシウムによ
る共沈殿によって(Chenら、1987年)、発現ベクターpCMV−ABC
1(5〜25μg)でトランスフェクションされる。
【0455】 これらの細胞はまた、ベクターpABC1−AdVで感染させられてもよい(
感染指数、MOl=10)。
【0456】 ヒトABC1発現後に、免疫インプリンティング、並びにトランスフェクショ
ン及び/又は感染された細胞からのアポA−1によって誘発されたコレステロー
ルの流出の定量化を行なってもよい。
【0457】 タンジエール病患者及び低アルファリポタンパク質血症患者が、これらの患者
の繊維芽細胞から罹っている遺伝的欠陥の相補性は、正常遺伝子ABC1の発現
の検出によって確認することができる。これによって、この受容体の機能的重要
性を確立することができる。
【0458】 VI.:各動物モデルにおけるABC1遺伝子のインビボでの発現 溶菌斑(PFUs)を形成する108〜109単位を含む純度を高めた組換え
アデノウイルス(pABC1−AdVまたはpLucif−AdV)を含む媒質
の適切量(100〜300ml)を、実験0日に、マウスの伏在静脈内に注入す
る(C57BL/6、一度に基準マウスおよび遺伝子組換えマウスまたはノック
アウトマウス)。
【0459】 リポ蛋白質の代謝におけるABC1蛋白質の生理的な役割の評価は、コレステ
ロール、トリグリセリド、リン脂質および遊離コレステロール(Sigma e
t Wako Chemicals, Richmond, VA, USA)
、HDLコレステロール(CIBA−Corning, Oberlin, O
H, USA)およびマウスのアポリポ蛋白質A−I、A−II、EおよびB(F
ogerら、1997年)の総量を、アデノウイルスの投与前(0日)および後
(2、4、7、10、14日)に測定することで行う。
【0460】 アポA−I−HDL、CE−HDLならびにアポB−LDLおよびCE−LD
Lのような放射能で標識した生成物による動力学的な調査をベクターrLucf
−AdVおよびrABC1−AdVの投与5日後に行って、HDLsおよびLD
Lsならびにコレステロールの肝臓への放出に対するABC1の発現効果を評価
する。
【0461】 アテローム性動脈硬化症の進行に対するABC1発現の効果は、ベクターrA
BC1−Advの投与後、マウスアポEにおける大動脈損傷の平均面積を計量化
して評価してもよい。
【0462】 さらに、遺伝子組換えマウスおよびABC1遺伝子を過剰発現するウサギを、
Waisman(1995年)およびHoeg(1996年)の情報に従って、
ABC1、CMVまたはアポEのような内在性プロモーターのコントロール下に
ヒトABC1のcDNAを含む構成を用いて生成してもよい。
【0463】 脂質、リポ蛋白質、血漿アポリポ蛋白質の動力学およびアテローム性動脈硬化
症に対するABC1発現の長期にわたる効果の評価は上述のように行ってもよい 実施例17:ABC1遺伝子の作用分子および拮抗分子のスクリーニングに対
する小胞の利用 この試験の基本は、ABC1遺伝子を取り込み、コレステロールまたはリン脂
質のような基質を含むメンブランの再構成である。ABC1蛋白質はそこで活性
化されてもよく、またはその機能を価値ある分子を付加することで抑制してもよ
い。ABC1蛋白質により形成された導管による基質の排出を検出する。
【0464】 a) ABC1蛋白質および標識した基質を含むメンブランの再構成 有機溶媒や、超音波処理『フレンチプレス』のような機械的手段を用いた方法、
または凝結・解凍サイクルによる方法、さらには界面活性剤を用いた方法(コー
ル酸塩類, Chaps, Chapso) (参照 : Rigaudら B
iochimica およびBiophysica Acta 1231 (1
995年)223−246)など、これらのメンブランを製造するためには数多
くの方法を用いることができる。
【0465】 より詳細には、リン脂質のような脂質基質、3H−コレステロール、125−
I−コレステロール、3H−ホスファチジリコリン型の放射性またはNBDまた
はピレン(分子プローブ、http://www.probes.com)およ
び卵のホスファチジリコリンを伴った蛍光性コレステロールまたはコレステロー
ルエステルをガラスフラスコの底部で乾燥させる。このフラスコ内で、コール酸
ナトリウムおよび0.3モルのモル比率のABC1蛋白質を一度に混合する。全
体をボルテックスにより5分間混合し、次いで25℃で30分間インキュベート
を行い、続いて食塩緩衝液に対して透析を行う。この手順により作られた蛋白リ
ポソームを混濁度計測器で検査して、良好に製造されているかを確認する。
【0466】 b)固体表面上での蛋白リポソーム捕獲 この段階はインテグリンタイプの固定蛋白質を取り込んで行ってもよい。この
手順では、あらかじめ96または384穴のプレート上に吸収させたABC1蛋
白質に対して導かれた抗体による捕獲を用いる。
【0467】 濃度100mg/lのこれら抗体を含む溶液を、4℃の装置上でインキュベー
ションを行ってこれら多穴プレート上に吸収させる。洗浄後、37℃で2時間イ
ンキュベートした1mg/mlのウシアルブミンによりプレートを飽和する。全
体をさらに洗浄し、ABC1を含む蛋白リポソームと共に37℃で2時間インキ
ュベートする。
【0468】 c)価値ある分子への結合 この工程は生成物を37℃で1時間インキュベーションすることで行われる。
【0469】 d)ABC1の活性化または抑制の測定 基質が蛍光性である場合、残存物の蛍光により、蛋白リポソームの外側への脂
質の輸送を引き起こす生成物の活性が明らかにされる。または、共焦点システム
を用いることで蛋白リポソームの内外での基質の量についての情報が得られる。
基質が放射性である場合は、シンチレーション液との保存液を有するCytoS
tarタイプのプレートを使用することで、蛋白リポソーム内にまだ残存してい
る基質が明らかになる。
【0470】 実施例18:ABC1蛋白質の作用および拮抗分子のスクリーニングのための
アニオン輸送の利用 この試験の原理は、アニオンをその活性時に輸送するABC1蛋白質の特性に
基づくものである。。
【0471】 a)THP−1系統のマクロファージ細胞、単球白血病ヒト細胞は異なったマ
クロファージモデルである。これら細胞を、1穴毎に2105細胞密度である4
8穴プレート内の胎生子牛血清を10%追加した媒質RPMI1640内で培養
する。Tangier病患者の繊維芽細胞は、これらのABC1蛋白質が機能し
ないので、マイナス指標として用いることができる。もう一つのマイナス指標は
抗ABC1抗体を付加することで得てもよい。
【0472】 b)アニオン輸送不全細胞またはアニオン導管阻害剤で処理した細胞(バラパ
ミル型、P−グリコプロテイン阻害剤またはテトラエチルアンモニウム、カリウ
ム導管阻害剤)を使用してもよい。
【0473】 c)厳密な意味での試験のために、細胞を、Klを1ml〜1mmol/L(
Na125が0.1mCi/ml)であらかじめ電荷した塩水で修飾したEar
les媒質により、このESS媒質内で、37℃、30分間洗浄する。生成物を
細胞外媒質内に加える。次に細胞をESS媒質により洗浄する。
【0474】 d)媒質内のヨウ化物の量を11分間の間1分ごとに検出する。二つの第1点
が基本的な流出量に一致する。インキュベーション終了時に媒質を取り出し、細
胞内に残ったヨウ化物の量を、NaOH1モル内の細胞溶解物に基づき計測する
【0475】 e)ゼロ時間における総放射量は細胞の残存物および残渣中に見いだされる放
射能の総計に等しい。時間毎の媒質中に放出された放射能のパーセンテージを記
入して流出グラフ作成する。
【0476】 実施例19:ABC1蛋白質の作用および拮抗分子のスクリーニングのための
IL−1ベータを発現するTHP−1マクロファージの使用 このテストの原理は、ABC1蛋白質の活性を調製するあらゆる物質がIL−
1の合成に影響を与えることにある。
【0477】 a)THP−1系統のマクロファージ細胞、単球白血病ヒト細胞は異なったマ
クロファージモデルである。各細胞を、穴毎に2105細胞密度である多穴プレ
ート内の胎生子牛血清を10%追加した媒質RPMI1640内で培養する。
【0478】 b)本来の意味での試験のために、細胞を洗浄して、純度を高めたヒトアルブ
ミン(フラクショIV)1mg/mlを含むRPMI1640媒質内に配置する。
【0479】 c)生成物を細胞外媒質に加える。同時に細胞を1mg/mlのリポ多糖類(
LPS)を3時間かけて加えて活性化し、5mmol/LのATPの存在下に3
0分間インキュベートする。
【0480】 d)IL−1ベータの濃度、コントロール状態のIL−1アルファ腫瘍壊死因
子(TNFアルファ)およびIL−6の濃度を、ELISAキットにより、製造
者((R & D Sytem;ヒト IL−1ベータ化学蛍光ELISA 参
照 QLB00)の説明に従って測定する。影響を受けないとされるIL−1ベ
ータのmRNAでの変化を対応するプローブを使ってノーザンブロット法で評価
する。
【0481】
【表6】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はABC1遺伝子のエクソン12におけるAlu配列の挿入による変異の
分離を例証している。ABC1遺伝子のエクソン 12における挿入−欠失は、
図1Aに示すような14のヌクレオチドの欠失および110のヌクレオチドの挿
入からなる。図1Bは、エクソン12のPCRによる増幅後にそれぞれの患者か
ら得た系統 NuおよびDNAフラグメントの大きさを示している。コースMは
移動マーカーに対応する(Gibco BRL)。コースCは指標DNAに対応
する。
【図2】 図2はABC1遺伝子のエクソン13における一つのヌクレオチドの欠失によ
る変異を例証している。補足片の配列が得られ、これを3’から5’の方向へ示
している。ABC1ポリペプチドのアミノ酸546〜552をコードする配列を
調査を行った系統群のさまざまな患者について示しており、それぞれ同型接合個
体(図2−a)、異種接合個体(図2−b)および非罹患個体(図2−c)に対
している。図2−aの配列は 3人の同型接合個体で見いだされ、図2−bの配
列は5人の異種接合個体で、図2−cの配列は4人の非罹患個体で見いだされた
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 3/04 A61P 9/04 4C086 3/06 9/10 4C087 9/04 C07K 14/47 4H045 9/10 16/18 C07K 14/47 C12N 1/15 16/18 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12Q 1/02 1/21 1/68 A 5/10 G01N 33/15 Z C12Q 1/02 33/50 Z 1/68 33/53 D G01N 33/15 M 33/50 33/566 33/53 C12N 15/00 ZNAA 5/00 A 33/566 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU, ZA,ZW (72)発明者 アルヌウ−ルギーニユ,イザベル フランス国、エフ−94430・シユネビエー ル・シユール・マルヌ、リユ・ドウ・ブ リ、112 (72)発明者 プラドウ,カトリーヌ フランス国、エフ−94320・チエ、アブニ ユ・ドユ・ジエネラル・ドウ・ゴール、30 (72)発明者 ノダン,ローラン フランス国、エフ−91150・エタンプ、リ ユ・ドウ・ラ・ロシユ・プラツト、11・ビ ス (72)発明者 ルモアンヌ,サンドリンヌ フランス国、エフ−91300・マシー、アブ ニユ・マルセル・ラモルフオ・ガルニエ、 5 (72)発明者 ドユベルジエ,ニコラ フランス国、エフ−75005・パリ、リユ・ ロラン、4 (72)発明者 アースマーン,ゲルト ドイツ国、デー−48161・ミユンスター、 ニユニンクベーク・49 (72)発明者 ルスト,シユテフアン ドイツ国、デー−48147・ミユンスター、 タンネンベルクシユトラーセ・6−8 (72)発明者 フンケ,ハラルト ドイツ国、デー−48145・ミユンスター、 ゲーアハルトシユトラーセ・13 (72)発明者 ブルアー,エイチ・ブライアン アメリカ合衆国、メリーランド・20854、 ポトマツク、ペブル・ブルツク・レイン・ 10805 Fターム(参考) 2G045 AA40 BB20 CB01 DA12 DA13 DA14 DA36 FB02 FB03 FB07 4B024 AA01 AA11 CA04 CA09 EA02 HA14 HA17 4B063 QA01 QA18 QA19 QQ02 QQ43 QQ79 QR48 QR55 QS32 4B065 AB01 BA02 CA22 CA44 CA46 4C084 AA02 AA13 CA01 CA53 NA14 ZA36 ZA40 ZA45 ZA70 ZC33 4C086 AA01 AA02 AA03 EA16 MA01 NA14 ZA36 ZA40 ZA45 ZA70 ZC33 4C087 AA01 AA02 BC83 NA14 ZA36 ZA40 ZA45 ZA70 ZC33 4H045 AA10 AA11 AA30 CA40 DA75 EA23 EA27 EA50

Claims (51)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヌクレオチド配列配列番号1−14から成る群から選ばれる
    ポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも245連続ヌクレオチドを
    含む核酸。
  2. 【請求項2】 ヌクレオチド配列配列番号15−47から成る群から選ばれ
    るポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む核酸。
  3. 【請求項3】 ヌクレオチド配列配列番号48−90から成る群から選ばれ
    るポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌクレオチドを含
    む核酸。
  4. 【請求項4】 ヌクレオチド配列配列番号48−90から成る群から選ばれ
    るポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチド
    同一性を有する核酸。
  5. 【請求項5】 強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号48−90から
    成る群から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸とハイブリダイズす
    る核酸。
  6. 【請求項6】 配列配列番号91のポリヌクレオチド又は相補配列の核酸を
    含む核酸。
  7. 【請求項7】 ヌクレオチド配列配列番号92から成る群から選ばれるポリ
    ヌクレオチド、これの生物学的に活性な断片、又は相補配列の核酸の少なくとも
    8連続ヌクレオチドを含む核酸。
  8. 【請求項8】 ヌクレオチド配列配列番号92から成る群から選ばれるポリ
    ヌクレオチド、これの生物学的に活性な断片、又は相補配列の核酸との少なくと
    も80%のヌクレオチド同一性を有する核酸。
  9. 【請求項9】 強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号92から成る群
    から選ばれるポリヌクレオチド、これの生物学的に活性な断片、又は相補配列の
    核酸とハイブリダイズする核酸。
  10. 【請求項10】 ヌクレオチド配列配列番号93−96から成る群から選ば
    れるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも8連続ヌクレオチドを
    含む核酸。
  11. 【請求項11】 ヌクレオチド配列配列番号93−96から成る群から選ば
    れるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸との少なくとも80%のヌクレオチ
    ド同一性を有する核酸。
  12. 【請求項12】 強緊縮条件下に、ヌクレオチド配列配列番号93−96か
    ら成る群から選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸とハイブリダイズ
    する核酸。
  13. 【請求項13】 ヌクレオチド配列配列番号97−108から成る群から選
    ばれ、かつ多形塩基を含むポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸の少なくとも
    8連続ヌクレオチドを含む核酸。
  14. 【請求項14】 請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の核酸から選ば
    れる少なくとも15ヌクレオチドの長さの、遺伝子ABC1の特異的ヌクレオチ
    ドプローブ又はプライマー。
  15. 【請求項15】 ヌクレオチド配列配列番号109−138から成る群から
    選ばれるポリヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む、請求項14に記載のプ
    ローブ又はプライマー。
  16. 【請求項16】 請求項11又は12に記載の核酸から選ばれる、少なくと
    も15ヌクレオチドの長さの、遺伝子ABC1中の突然変異の検出に有用なヌク
    レオチドプローブ又はプライマー。
  17. 【請求項17】 ヌクレオチド配列配列番号109−112から選ばれるポ
    リヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む、請求項16に記載のヌクレオチド
    プローブ又はプライマー。
  18. 【請求項18】 請求項13に記載の核酸から選ばれる、少なくとも15ヌ
    クレオチドの長さの、遺伝子ABC1中の多形性の検出に有用なヌクレオチドプ
    ローブ又はプライマー。
  19. 【請求項19】 ヌクレオチド配列配列番号142−149から選ばれるポ
    リヌクレオチド、又は相補配列の核酸を含む、請求項18に記載のプローブ又は
    プライマー。
  20. 【請求項20】 ヌクレオチド配列配列番号97−108又はこれらの相補
    配列から成る群から選ばれるポリヌクレオチドの少なくとも15連続ヌクレオチ
    ドを含むヌクレオチドプライマーであって、これらのプライマーの3’末端の塩
    基は、配列配列番号97−108又はこれらの相補配列のうちの1つの多形塩基
    の5’側のすぐ近くに局在化されているヌクレオチドの相補的なものであるプラ
    イマー。
  21. 【請求項21】 ヌクレオチド配列配列番号97−108又はこれらの相補
    配列から成る群から選ばれるポリヌクレオチドの少なくとも15連続ヌクレオチ
    ドを含むヌクレオチドプライマーであって、これらのプライマーの3’末端の塩
    基は、配列配列番号97−108又はこれらの相補配列のうちの1つの多形塩基
    の5’側の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、
    15、16、17、18、19、20ヌクレオチド又はそれ以上に位置するヌク
    レオチドの相補的なものであるプライマー。
  22. 【請求項22】 試料中に含まれている、請求項1〜13のうちのいずれか
    1つに記載の核酸の増幅方法であって、前記方法は、下記工程: a)増幅反応に必要な反応体の存在下において、標的核酸の存在が疑われる試
    料と、ハイブリダイゼーション位置がそれぞれ、増幅が求められている標的核酸
    の領域の5’側及び3’側に局在化されている一対のヌクレオチドプライマーと
    を接触させる工程;及び b)増幅された核酸の検出工程、 を含んでいる方法。
  23. 【請求項23】 ヌクレオチドプライマーが、請求項14〜19のうちのい
    ずれか1つに記載のプライマーから選ばれることを特徴とする、請求項22に記
    載の増幅方法。
  24. 【請求項24】 下記のもの: a)ハイブリダイゼーション位置がそれぞれ、増幅が求められている標的核酸
    の5’側及び3’側に局在化されているヌクレオチドプライマーカップル; b)場合によっては、増幅反応に必要な反応体、 を含む、請求項1〜13のうちのいずれか1つに記載の核酸の増幅に必要なもの
  25. 【請求項25】 ヌクレオチドプライマーが、請求項14〜19のうちのい
    ずれか1つに記載のプライマーから成る群から選ばれることを特徴とする、請求
    項22に記載の核酸の増幅に必要なもの。
  26. 【請求項26】 存在を検出しうるマーカー化合物を含むことを特徴とする
    、請求項14〜19のうちのいずれか1つに記載のヌクレオチドプローブ。
  27. 【請求項27】 試料中における、請求項1〜13のうちのいずれか1つに
    記載の核酸の存在の検出方法であって、前記方法が、下記工程: a)請求項14〜19のうちの1つに記載の1つ又は複数の核プローブと、テ
    ストされる試料とを接触させる工程;及び b)1つ又は複数のプローブと、試料中に存在する核酸との間に場合によって
    は形成される複合体の検出工程、 を含んでいる方法。
  28. 【請求項28】 1つ又は複数のプローブが、支持体上に固定化されている
    ことを特徴とする、請求項27に記載の検出方法。
  29. 【請求項29】 試料中における、請求項1〜13のうちのいずれか1つに
    記載の核酸の存在の検出に必要なものであって、前記の必要なものが、 a)請求項14〜19のうちのいずれか1つに記載の1つ又は複数のヌクレオ
    チドプローブ; b)場合によっては、ハイブリダイゼーションに必要な反応体、 を含むもの。
  30. 【請求項30】 1つ又は複数のプローブが、支持体上に固定化されている
    ことを特徴とする、請求項29に記載の検出に必要なもの。
  31. 【請求項31】 請求項1〜13のうちのいずれか1つに記載の核酸を含ん
    でいる組換えベクター。
  32. 【請求項32】 アデノウイルスであることを特徴とする、請求項31に記
    載のベクター。
  33. 【請求項33】ABC1−rldVであることを特徴とする、請求項32又
    は33に記載のベクター。
  34. 【請求項34】 請求項1〜13のうちのいずれか1つに記載の核酸又は請
    求項31〜33のうちのいずれか1つに記載の組換えベクターを含む組換えホス
    ト細胞。
  35. 【請求項35】 アミノ酸配列配列番号140のポリペプチドを含むことを
    特徴とする、突然変異されたポリペプチドABC1。
  36. 【請求項36】 アミノ酸配列配列番号141のポリペプチドを含むことを
    特徴とする、突然変異されたポリペプチドABC1。
  37. 【請求項37】 請求項35又は36に記載の突然変異されたポリペプチド
    ABC1又はこの後者のペプチド断片に対して向けられた抗体。
  38. 【請求項38】 検出可能な化合物を含むことを特徴とする、請求項37に
    記載の抗体。
  39. 【請求項39】 下記工程: a)この試料と、請求項37又は38に記載の抗体とを接触させる工程; b)形成された抗原/抗体複合体の検出工程、 を含んでいる、試料中の請求項35又は36に記載のポリペプチドの存在を検出
    する方法。
  40. 【請求項40】 試料中の請求項35又は36に記載のポリペプチドの存在
    を検出するための診断に必要なものであって、前記の必要なものが、 a)請求項37又は38に記載の抗体; b)形成された抗原/抗体複合体の検出を可能にする反応体、 を含んでいるもの。
  41. 【請求項41】 コレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者
    の予防又は治療のための製薬組成物であって、生理学的に適合する1つ又は複数
    の賦形剤と組合わせて、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の核酸を含ん
    でいる組成物。
  42. 【請求項42】 コレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者
    の予防又は治療のための製薬組成物であって、生理学的に適合する1つ又は複数
    の賦形剤と組合わせて、請求項31に記載の組換えベクターを含んでいる組成物
  43. 【請求項43】 様々な形態のアテローム性動脈硬化症の予防、又はより詳
    しくはコレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者の治療のための
    薬剤の製造のための、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の核酸の使用。
  44. 【請求項44】 様々な形態のアテローム性動脈硬化症の予防、又はより詳
    しくはコレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者の治療用薬剤の
    製造のための、請求項31に記載の組換えベクターの使用。
  45. 【請求項45】 このベクターが、ABC1−rldVであることを特徴と
    する、請求項44に記載の使用。
  46. 【請求項46】 様々な形態のアテローム性動脈硬化症の予防、又はより詳
    しくはコレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者の治療のための
    薬剤の製造のための、配列配列番号139のポリペプチドABC1の使用。
  47. 【請求項47】 コレステロールの逆輸送の機能不全に冒されている被験者
    の予防又は治療のための製薬組成物であって、配列配列番号139のポリペプチ
    ドの治療的有効量を含む組成物。
  48. 【請求項48】 コレステロールの逆輸送の機能不全の結果生じる病気の予
    防又は治療のための活性成分を標的するための、ポリペプチドABC1、又はポ
    リペプチドABC1を発現する細胞の使用。
  49. 【請求項49】 ポリペプチドABC1のアゴニスト又はアンタゴニストの
    コレステロールの代謝に対して活性な化合物の標的方法であって、前記方法が下
    記工程: a)ポリペプチドABC1と、検出可能なマーカーを含む脂質基質とを含む膜
    小胞を調製する工程; b)アゴニスト又はアンタゴニスト候補化合物と共に、工程a)で得られた小
    胞をインキュベーションする工程; c)検出可能なマーカーを含む脂質基質の放出を、定性的及び/又は定量的に
    測定する工程; d)工程b)で得られた測定値と、アゴニスト又はアンタゴニスト候補化合物
    と共に予めインキュベーションされなかった小胞によってマークされた脂質基質
    の放出の測定値とを比較する工程、 を含んでいる方法。
  50. 【請求項50】 ポリペプチドABC1のアゴニスト又はアンタゴニストの
    コレステロールの代謝に対して活性な化合物の標的方法であって、前記方法が下
    記工程: a)自然に又はポリペプチドABC1のトランスフェクション後に発現する細
    胞、例えば細胞系統を得る工程; b)検出可能なマーカーによってマークされたアニオンの存在下に、工程a)
    の細胞をインキュベーションする工程; c)これらの細胞の中に浸透しなかった過剰のマークアニオンを除去するため
    に、工程b)の細胞を洗浄する工程; d)ポリペプチドABC1のアゴニスト又はアンタゴニスト候補化合物と共に
    、工程c)で得られた細胞をインキュベーションする工程; e)マークアニオンの流出を測定する工程; f)工程e)で決定されたマークアニオンの流出の値と、ポリペプチドABC
    1のアゴニスト又はアンタゴニスト候補化合物の存在下に予めインキュベーショ
    ンされなかった細胞で測定されたマークアニオンの流出の値とを比較する工程、 を含んでいる方法。
  51. 【請求項51】 ポリペプチドABC1のアゴニスト又はアンタゴニストの
    コレステロールの代謝に対して活性な化合物の標的方法であって、前記方法が下
    記工程: a)精製されたヒトアルブミンの存在下に、適切な培養培地中で、ヒト単核細胞
    系統の細胞を培養する工程; b)IL−1ベータ生産を刺激する化合物とアゴニスト又はアンタゴニスト候補
    化合物との同時の存在下に、工程a)の細胞をインキュベーションする工程; c)ATPの適切な濃度の存在下に、工程b)で得られた細胞をインキュベー
    ションする工程; d)細胞培養の上澄み液中に放出されたIL−1ベータを測定する工程; e)工程d)で得られたIL−1ベータの放出の値と、アゴニスト又はアンタ
    ゴニスト候補化合物の存在下に予めインキュベーションされなかった細胞の培養
    上澄み液中に放出されたIL−1ベータの値とを比較する工程、 を含んでいる方法。
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