JP2003502390A - 自己免疫疾患の治療もしくは予防のための組成物と方法 - Google Patents

自己免疫疾患の治療もしくは予防のための組成物と方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は自己免疫疾患を予防もしくは治療するための組成物および方法を提供する。特に、本発明の方法は、被験者に投与されると免疫系を調節し、それによって自己反応性抗原に伴う状態を改善するように作用する自己反応性エピトープの少なくとも一部分をコードする遺伝物質を用いるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は一般的に述べれば免疫系の調節に、より特定して述べれば自己免疫疾
患の治療もしくは予防のための組成物と方法に関する。とりわけ、本発明の方法
は、自己反応性の抗原もしくはエピトープの少なくとも1部分をコードする遺伝
物質を用いるもので、それは被験者に投与するとその免疫系を調節させるように
作用し、それによってそのような自己抗原もしくはその他の自己抗原に伴う状態
が改善される。
【0002】発明の背景 脊椎動物は環境からの病原体に対して、ならびに腫瘍細胞などの体内で発生す
る異常な細胞に対しての防御として免疫応答を出動させる能力を有している。こ
のことはNK細胞、好中球、および単球/マクロファージ系に媒介される先天的な
免疫の形、またはリンパ球で媒介される、特定の抗原に対する獲得性もしくは能
動免疫の形をとりうる。能動的免疫応答はさらに2つのアームに分けることがで
きるが、それは全身循環に曝露された抗原を中和するように働き貪食の専門家で
ある貪食細胞による取り込みを助ける特異的抗体の産生を必要とする液性反応と
、体内の感染した細胞もしくは異常な細胞を認識することが要求される細胞性の
アームである。
【0003】 これらの双方の場合で、特異的応答は細胞内プロセシングとエフェクターT細
胞による抗原の認識によって制御されている。成熟した細胞溶解性T細胞(CTL)も
しくはヘルパーT細胞(Th)は、それらのレセプターがMHCクラスIもしくはクラスI
I分子の関わりにおいて認識することのできるような抗原と遭遇しない限りは通
常は休止状態にとどまっている。特定の抗原と遭遇すると、T細胞は増殖し、エ
フェクター機能を発揮してその結果、応答性の抗原を排除する。その抗原が細胞
質経路でプロセスされると、その結果得られるペプチドは、エフェクターT細胞
への適切な提示を促進する発生期のMHCクラスI分子と結合する。MHCクラスIでの
提示はCD8リガンドを有している細胞傷害性T細胞(CTL)による認識に好都合であ
る。これに対して、エンドサイトーシスの経路を介する抗原の細胞内プロセシン
グの結果、液性および細胞性アームの双方の刺激に関与するヘルパーTの応答に
好都合なMHCクラスII分子上に提示されることとなる。ワクチン接種の目的は、
免疫系が病原性感染に対しての応答の準備ができるように、これら双方の応答の
準備をさせてメモリーT細胞を生成することである。液性および細胞性免疫応答
の双方の連動は、広範な基礎を有する免疫がもたらされ、細胞内病原体に対して
は好ましい目的となる。
【0004】 T細胞の活性化は、直接的作用もしくは免疫系の他の細胞が作用するような刺
激をもたらす一連の化学的シグナル(主としてサイトカイン)の生成を伴う。クラ
スI MHC−抗原による活性化の場合には、CTLが増殖し、その抗原をMHC結合ペプ
チドの形で提示している感染細胞を破壊するように作用する。感染細胞を殺滅す
ることによって、ウイルスの増殖は防止され、中和抗体はそのウイルスに接近可
能となり、そのウイルスの排除ができることとなる。これに対して、クラスII M
HC−抗原複合体によるTh細胞の活性化では抗原提示細胞を破壊せず(これは、宿
主の防御システムの一部である)、むしろTh細胞を刺激して増殖させ種々の細胞
に影響を及ぼすシグナル(ここでも主としてサイトカイン)を生成させる。他にも
結果的に、シグナル伝達によってB細胞の刺激、マクロファージ活性化、CTLの分
化、および炎症の促進がもたらされる。このような一斉に起こる応答はかなり特
異的であり、クラスII MHC系によって提示されるペプチドを有する外来性エレメ
ントに通常は向けられている。
【0005】 適切に作動すれば、免疫応答は顕微鏡的病原体、およびその程度はより小さい
ものの新生物細胞の排除に驚くほど有効である。通常は、自己認識の複雑なメカ
ニズムが有効に働き強力な応答は外来性の抗原の排除にのみ向けられている。自
己/非自己の区別の調節、それは免疫系に欠くことのできない機能であるが、そ
の調節には、TおよびBリンパ球の発達と寿命の間の多数のメカニズムが関与する
。中枢リンパ器官中の自己応答性のTおよびB細胞前駆体の欠失は大多数の自己応
答性細胞を排除するが、Fas、IL-2R、およびCTLA-4が媒介するシグナル伝達を必
要とする末梢のメカニズムが免疫ホメオスタシスにきわめて重要であると考えら
れている。不幸にも免疫系はしばしばうまく機能せず、宿主の細胞に対して自己
免疫応答を引き起こす。自己免疫もしくは自己応答性は典型的には免疫細胞上の
抗原レセプターが宿主細胞上の特定の自己抗原(例えば自己エピトープ)を認識し
、宿主細胞の崩壊をもたらすような反応を起こす。多くの場合、自己免疫反応は
それ自体に限定されておりそのような反応を引き起こした抗原が取り去られると
消失する。しかし、自己反応性のリンパ球がそれらが存在するはずの期間より長
く生存してアポトーシスを誘導し続けるかもしくは宿主細胞を排除し続ける場合
がある。動物およびヒトで得られたいくつかの証拠からは、自己反応性細胞の生
存の延長が少なくとも2つの慢性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデスと慢性
関節リウマチと関係があるとされている。
【0006】 その他の作用機構も種々の自己免疫疾患の発生に寄与していると考えられてい
る。例えば、この2、3年、T細胞−抗原提示細胞(APC)相互作用の強さが胸腺での
学習と自己抗原の寛容を規定することが明らかとなった。従って、強固な相互作
用があればT細胞は排除されるが、相互作用の程度が弱い場合には成熟して胸腺
から出てしまう。この機構は自己反応性の免疫系を一掃するためには有効ではあ
るが、自己抗原が隔離されて胸腺での提示で有効なレベルに達し得ない場合には
、自己反応性を付与されたT細胞前駆体は依然として生成され末梢に移動して、
その後、胸腺潜在化を受けるか、あるいは十分に提示されない。さらに、抗原模
倣物、エピトープ伝播(spreading)、もしくはペプチド潜在化の末梢における緩
和を刺激する特定のT細胞レセプターおよびイベントと反応することのできるス
ーパー抗原は、これらの自己反応性T細胞の活性化の引き金を引き抗原の曝露を
もたらすことができる。いずれにしても、自己抗原の継続的供給とT細胞レセプ
ターリガンドの豊富な生成(ペプチド-MHC複合体)がT細胞の攻撃性の機構として
考えられる。自己寛容の自発的破壊の結果生ずる状態の例としては、多発性硬化
症(MS)、慢性関節リウマチ(おそらくは2つ以上のメカニズム)、全身性エリテマ
トーデス、およびI型糖尿病を挙げることができ、それら全てはT細胞が媒介する
自己免疫疾患(自己寛容からの脱出であるが抗体によって駆動される重症筋無力
症、炎症性腸疾患(クローン病))と考えられている。
【0007】 I型糖尿病のような自己免疫疾患の病因に関して最も考えうるシナリオの1つ
は、傍観者的(bystander)活性化もしくは分子的な疑似性のいずれかによる自己
反応性T細胞の制御の異常で開始されるというものである。例えば、ウイルス感
染もしくはスーパー抗原に対する曝露によって、十分な共刺激が提供される可能
性があり、その結果、胸腺での選択を逃れるアフィニティーが低い自己反応性T
細胞がわずかながら活性化されることとなる。そのような自己反応性の応答の異
常なダウンレギュレーションが、認識しうる抗原が存在する器官に浸潤する病原
性T細胞の拡大につながりうる。いくつかの宿主関連因子は、以下のことを促進
する:すなわち、非病原性の自己反応性から自己免疫疾患への移行、自己反応性
前駆体がより多数逃れ出ることになる中枢でのネガティブセレクションの漏れ、
リンパ球活性のダウンレギュレーションを媒介したレセプターもしくはリガンド
が関与する異常による末梢での免疫寛容の障害、より均衡のとれたTh1/Th2応答
に対抗してのTh1前炎症性応答を生成させるバイアス、専門的な抗原提示細胞の
高頻度で異常な活性。局所の炎症および宿主細胞の直接的な破壊によって、抗原
の放出、専門的抗原提示細胞による取り込み、および特異的T細胞への提示が誘
導され、自己免疫性を悪化させるポジティブフィードバックを永続させる。同時
に、正常な状態では潜在化している器官間連抗原は、専門的抗原提示細胞の活性
化と抗原放出という状況に曝露されることになり、その結果、これらの他の自己
抗原に特異的なT細胞の活性化をもたらす。とりわけTh1/Th2の相対的不均衡に好
都合な状況では、さらに特異性が追加されると疾患が加速されうる。IFN-γのよ
うなTh1サイトカインが自己免疫の病因に寄与し、IL-4およびIL-10のようなTh2
サイトカインが病原性Th1もしくはTc1細胞の活性を抑制しうるということが広く
信じられている。
【0008】 自己免疫疾患における免疫系の機能不全にどのような機構が原因であるかに関
わらず、その結果は個体にとって破壊的なものである。例えば、多発性硬化症は
慢性の炎症性疾患であり、米国では約25万人が罹患している。この炎症プロセス
は、主として中枢神経系の白質内で生じ、軸索の脱髄化の原因となる活性化され
たT細胞、B細胞、およびマクロファージにより媒介される。臨床経過は非常に様
々ではあるが、最も一般的な形態は、麻痺、知覚喪失および視力障害などの神経
学的欠乏により発症するものである。
【0009】 別の衰弱性の自己免疫疾患であるインスリン依存性糖尿病(IDDM、I型糖尿病も
しくは若年性糖尿病)では、免疫系は膵臓内のインスリン生産β細胞を攻撃し、
その細胞を破壊する。IDDM患者は、天然のインスリンを少量しかもしくは全く産
生せず、生きてゆくためにはホルモンを毎日注射する必要がある。毎年、11,000
から12,000人の小児がIDDMと診断され、米国で糖尿病の治療を受けている700万
人以上の人々のうち約5〜10%がIDDMである。若い人々では、不適切に調節された
ブドウ糖の変動による急性の合併症がIDDM患者の生存にとって最大の脅威である
。年をとるにつれて、血管壁の劣化による器官の障害に起因する長期にわたる合
併症がより重要となり、その結果、例えば末梢神経障害、ニューロパシーおよび
網膜変性となる。
【0010】 自己免疫疾患に対する治療はこれまでのところ限定的な成功しかおさめていな
い。例えば、器官特異的自己免疫疾患を代謝調節によって改善していくことは可
能であることも多い。機能が失われ、回復し得ない場合には、機械的代替物もし
くは組織移植がおそらく適切であろう。しかし、症状のいくつかを緩和すること
はおそらく可能ではあろうが、最も機能を失わせる自己免疫疾患(例えば、多発
性硬化症およびIDDMなど)のいくつかの疾患の有効な長期にわたる治癒をもたら
す治療法は存在しない。インスリン、コルチコステロイドおよび改変したβ-イ
ンターフェロンを含む多数の化合物が自己免疫疾患の症状のうちのいくつかを改
善することができるが、それらは重篤な副作用が起こることが確かめられている
、および/もしくは長期間の使用を必要とするものである。
【0011】 別の手段での治療は、前臨床での動物モデル試験で可能性を示したが、ヒトで
の有効性は未だ示されていない。そのような治療の1つは、病原性のリンパ球を
特異的抗原を用いて処置することによる抑制である。そのような治療法は、特異
的T細胞のみに対するものであり、免疫系の残りの部分を用いないという重要な
利点があるかもしれない。自己反応性のリンパ球を自己抗原の投与量を増加させ
て曝露させると、欠失やアネルギーをもたらし、それが今度はそれ自体がその疾
患の防止もしくは抑制をもたらす。このシナリオが、ある種の状況下では実際に
起こる可能性があり、考慮しなければならない少なくとも2つの要素がある:第1
は自己免疫疾患には末梢の調節機構の障害を伴う可能性があることであり、第2
は自己免疫疾患がいったん発症するとその他多数の自己抗原に対する反応性を伴
う可能性があることである。
【0012】 これらの限定要因を考慮すると、より魅力的な方策は、器官特異的抗原を認識
する能力を有し、疾患を促進する能力の代わりに病原性細胞の能力を抑制するメ
ディエーターを産生する自己反応性細胞を作ることであろう。例えば、免疫調節
性化合物、例えばIL-4、IL-10、IL-9、IL-13およびTGF-βのようなサイトカイン
の産生を選択的に刺激することが望ましい。そのような免疫調節性化合物の誘導
が、T細胞レパートリーとの関連でどのようなエピトープが選択されたのか、プ
ライミング過程で間にどのようなサイトカインが働くのか、接種の処方計画/抗
原接種をどの時点でどのくらいの期間行うのか、という点が明確になっているこ
とが好ましいであろう。意義深いことには、そのような方策が、自己免疫疾患の
病因の主要な部分である抗原のみに限定されず、どのような器官特異的抗原につ
いても用いうる可能性があることである。そのようなものとして、この免疫調節
性化合物の選択的誘導は、自己免疫疾患の改善においていくつかの利点を有して
いる。例えば、この治療法は、病原性を誘導するエピトープの同定を必要とせず
、むしろこの治療法は、種々のエピトープに対する自己反応性の有害なT細胞の
傍観者的な広範な抑制をもたらしうる。さらに、このような方策では、抗原によ
る治療過程で起こる病原性T細胞の一過性活性化段階による疾患の悪化の危険性
を抑えるであろうし、アネルギーおよび欠失を媒介する末梢の寛容機構に対する
病原性T細胞の不応性を回避することができる。不幸なことに、自己免疫疾患に
伴う症状を軽減もしくは防止するために免疫調節性化合物を選択的に誘導するた
めの方法は現在のところ存在しない。
【0013】発明の概要 本発明が自己エピトープの提示に応答するいずれの免疫疾患の治療にも用いう
ることは評価されることとなろう。このことは、T細胞が媒介する自己免疫疾患
、例えばそのようなものとしては多発性硬化症、狼瘡、慢性関節リウマチ、強皮
症、インスリン依存性糖尿病、重症筋無力症および潰瘍性大腸炎などが含まれる
が、それらに対しては特にあてはまる。同様に、本発明は、アレルゲンなどの持
続的に提示されているアゴニストに関する免疫系の選択的ダウンレギュレートに
用いることができる。さらに、本発明の化合物および関連組成物は、移植後の臓
器もしくは組織の拒絶反応の可能性を低減するために免疫系の種々の構成成分を
選択的に抑制する目的で用いることもできる。
【0014】 上述の利点に加えて、本発明の化合物、組成物および方法は、新生児および幼
児における種々の自己抗原に対する寛容を誘導するために用いることができる。
より具体的に説明すると、本発明はさらに、成人になってからの自己免疫疾患の
誘発に対する抵抗性を哺乳動物の新生児もしくは幼児に対して付与するための組
成物および方法を提供する。本明細書の教示に従えば、この新生児の寛容性は、
リンパ節の異常および適切な自己抗原でチャレンジさせた場合に生ずるγ-イン
ターフェロン媒介型脾臓アネルギーが異常であることを特徴とするものである。
上述したように、本発明の好ましい実施形態では、非反応性担体(すなわちアジ
ュバントを含まないもの)中に含有させたものの投与によって、新生児に所望の
寛容を誘導させることを提供する。
【0015】 従って、本発明の全般的な目的は、自己免疫疾患を治療もしくは防止する予防
および治療目的で脊椎動物の免疫系を有効に改変するための方法および組成物を
提供することである。
【0016】 本発明のまた別の目的は、自己免疫状態を有する哺乳動物の免疫系をダウンレ
ギュレートさせる調節性サイトカインを有効に誘導するための方法および組成物
を提供することである。
【0017】 本発明のさらにまた別の目的は、インスリン依存性糖尿病の治療もしくは予防
のための方法および組成物を提供することである。
【0018】 1態様においては、本発明は、自己免疫疾患の治療もしくは予防に用いるため
の、製薬上許容される担体中に自己抗原からの少なくとも1つのエピトープをコ
ードする核酸構築物を含む免疫調節性組成物を提供する。本発明で挙げることの
できるエピトープの1例はインスリンB鎖である。
【0019】 別の1態様においては、本発明は自己免疫疾患に既に罹患しているかもしくは
罹患する危険性のある被験体において自己免疫疾患を治療もしくは予防する方法
を提供するものであり、その方法は、製薬上許容される担体中に含ませた自己抗
原からの少なくとも1つのエピトープをコードする核酸構築物を、免疫調節に有
効な量で、被験体へ投与することを含むものであり、該エピトープの発現によっ
て調節性の免疫応答がもたらされ、それによって該疾患を治療もしくは予防する
。例えば、該方法は、IDDMに既に罹患している、もしくは罹患する危険性のある
被験体に用いるためのインスリンB鎖エピトープを提供する。
【0020】 さらに1態様では、本発明は、自己免疫疾患に既に罹患しているかもしくは罹
患する危険性のある被験体に、調節性の免疫応答を誘導するための方法を提供す
るものであり、その方法は、製薬上許容される担体中に含ませた自己抗原からの
少なくとも1つのエピトープをコードする核酸構築物を、免疫調節に有効な量で
、被験体へ投与することを含むものであり、該エピトープの発現によって調節性
の免疫応答がもたらされる。
【0021】 本発明の組成物および方法には、自己抗原からの少なくとも1つのエピトープ
をコードする核酸構築物を、生物学的応答調節剤(BRM:例えばサイトカイン、ケ
モカイン、インターフェロン、インターロイキン)をコードする核酸構築物と同
時投与すること、または自己抗原からの少なくとも1つのエピトープをコードし
また少なくとも1つの生物学的応答調節剤(例えばIL-4)をもコードする核酸構築
物を投与することを含むことを意図している。
【0022】 本発明のその他の目的、特徴および利点は、下記の好ましい例示的実施形態の
詳細な説明を、図と共に考慮すれば当業者であれば明白であろうが、図について
は最後に簡単に説明している。
【0023】本発明の詳細な説明 本発明は、自己抗原を発現するプラスミドを用いたDNA免疫感作が自己免疫疾
患を防止する予防的および治療的アプローチを提供するとの有力な発見に基づく
ものである。本発明者らは、トランスジーンとしてリンパ球性脈絡髄膜炎ウイル
ス(LCMV)核タンパク質(NP)をβ細胞中で発現しているマウスが、LCMV感染後しか
IDDMを発症しないことを示している。インスリンB鎖をコードするプラスミドDNA
の接種によって、ウイルスで誘導される自己免疫性糖尿病(IDDM)がこのモデルで
は50%減少する。インスリンB鎖DNAのワクチン接種は、インスリンB鎖と反応する
調節性CD4リンパ球を誘導してIL-4を分泌させ、膵臓が流入するリンパ節中のLCM
V-NP自己反応性CTLの活性を局所的に低減するのに有効である。これに対して、L
CMVウイルス(自己)タンパク質を発現しているプラスミドを用いて同様なワクチ
ン接種を行ってもIDDMは防止されず、これはこのような調節性細胞が誘導されな
いからである。
【0024】 例示的モデルにおいては、本発明は、インスリンB鎖を発現するプラスミドを
用いるDNAワクチン接種によって前糖尿病期の間に行えば自己免疫性糖尿病を効
果的に低減しうることを示している。この防御は、インスリンB反応性であるIL-
4産生性(TH2)リンパ球、おそらくはCD4+細胞系統のリンパ球によって媒介され
、糖尿病原性のNP特異的エフェクター細胞(この細胞の活性と数は不変である)
の総体的な/全身的な低減により生じるものではない。むしろこの防御は、膵島
もしくは膵臓流入リンパ節中にインスリンB特異的CD4+T細胞によって誘導され
、それによって、おそらくはIL-4に曝露された抗原提示細胞による抗原刺激の欠
乏のために、NP特異的自己反応性T細胞の顕著な局所的減少がもたらされる「傍
観者的抑制」から引き起こされたものである。
【0025】 自己免疫に関連する可能性のある自己ペプチドエピトープと種々の細菌性およ
びウイルス性病原体との間の配列相同性を同定しようとの努力が行われてきた。
これらの相同性検索は配列同一性によるアラインメントに焦点が当てられてきた
。そのようなアラインメントを用いて、自己免疫疾患のヒト患者から得た病原性
T細胞系統と交差反応しうる病原体からのエピトープを同定しようとする試みで
は今のところ成功の報告はない(Oldstone, 1990)。最近、ある配列同一性がコク
サッキーウイルスタンパク質のエピトープの1つと糖尿病の自己抗原ではないか
と疑われているGAD65との間に見出された。これらのペプチドは、他方のペプチ
ドと交差反応するポリクローナルT細胞系統をマウスから相互に作製することが
できた(Tianら, 1994)。しかし、これらのペプチドが糖尿病性マウス(もしくは
ヒト)から得たクローンを刺激することができたとの証拠は提出されていない。
【0026】 当分野での最近の発展、特にアレル特異的ペプチド結合モチーフの同定は当分
野を変えた(Maddenら, 1991; RotschkeおよびFalk, 1991)。この知識に基づいて
、MHCに関連した自己免疫疾患の罹患しやすさについての構造的基礎を、当分野
で長く解決されなかった疑問を解決するために十分に詳細なレベルで再評価する
ことができる。いくつかのMHCクラスIおよびクラスII分子に対するペプチド結合
のモチーフは、天然にプロセシングされたペプチドの配列分析および既知エピト
ープの変異分析によって特定されてきた。MHCクラスIに結合するペプチドは短く
(通常は8〜10個のアミノ酸長)、2つの主要なMHCアンカー残基を有していること
が見出され、MHCクラスIIに結合するペプチドはより長く、その大きさがより不
均質であることが見出された(Maddenら, 1991; RotschkeおよびFalk, 1991; Jar
detzkyら, 1991; Chiczら, 1993)。しかし、大きさが不均質であるため、MHCク
ラスII結合モチーフを配列アラインメントに基づいて特定することはより困難で
あることが示された。より最近になり、HLA-DR1の結晶構造では、主たる疎水性
アンカー残基がペプチドのN末端の近傍にあり、第2のアンカー残基はその他のい
くつかのペプチド位置に認められることが示された(Brownら,1993)。しかし、こ
の結晶構造からでも、 MHC結合のための、HLA-DRタンパク質の結合ポケット、構
造的要求性を有するこれらのポケットの形成に関与する特定の残基、もしくは抗
原に関して詳細な説明は得られなかった。
【0027】 自己抗原エピトープ配列、もしくは自己反応性抗原は当業界で公知の種々の技
法によって同定することができる(例えば米国特許第5,874,531号参照)。ひとた
び、ペプチドのセットが同定されれば、それらのペプチドの活性を任意にスクリ
ーニングすることができる。そのようなスクリーニングは実施者の自由裁量で選
択することができ、本発明の範囲外である。しかし、好ましいスクリーニングと
しては、自己反応性T細胞の増殖を誘導する能力、もしくはこれらのT細胞からの
リンフォカイン(サイトカイン)の分泌を誘導する能力、または細胞傷害性などの
他のエフェクター機能を誘導する能力に関するin vitro試験が含まれる。いくつ
かの状況では、ヒトでのin vivo試験が適切なことがあり、他の状況ではヒト疾
患の動物モデルが利用可能である。
【0028】 本明細書で用いている「遺伝子構築物」という用語は、上記抗原もしくはエピ
トープをコードし、ワクチン接種された個体の細胞における発現を指令すること
のできるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントと機
能しうる形で連結された、開始および終止シグナルを含むヌクレオチド配列を含
有するDNAもしくはRNA分子を意味する。本明細書で用いている「発現可能な形態
」という用語は、自己抗原エピトープのコード配列と機能しうる形で連結された
、必要とされる調節エレメントを含有しており、個体の細胞中に存在する場合に
はコード配列を発現するような遺伝子構築物を意味する。本明細書で用いている
「遺伝子ワクチン」という用語は、遺伝子構築物を含む医薬製剤を意味する。
【0029】 本発明では、自己抗原エピトープをコードするDNAもしくはRNAは、それが発現
される個体の細胞中に導入され、自己抗原エピトープを産生する。そのDNAもし
くはRNAは、その個体の細胞における発現に必要な調節エレメントに連結されて
いる。調節エレメントとしては、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルが
含まれる。さらに他のエレメントを該遺伝子構築物中に含有させてもよい。
【0030】 本発明は、自己抗原エピトープをコードするDNAもしくはRNAを含有する遺伝子
構築物を含む遺伝子ワクチンを提供する。本明細書で用いる「自己抗原エピトー
プ」という用語は、免疫応答がそれに対して引き出されるペプチドもしくはタン
パク質を意味する。自己抗原エピトープとは、自己免疫疾患に関与する自己反応
性抗原もしくは細胞に由来する免疫原性のペプチド、タンパク質フラグメントも
しくはタンパク質である。該エピトープもしくはタンパク質に対する免疫応答は
、自己抗原エピトープを伴う特定の感染もしくは疾患に対してその個体を防御す
ることになる。
【0031】 遺伝子ワクチンの遺伝子構築物は、遺伝子発現に必要な調節エレメントと機能
しうる形で連結された自己抗原エピトープをコードする核酸配列を含むものであ
る。従って、生細胞中へのDNAもしくはRNA分子の導入によって、該ペプチドもし
くはタンパク質をコードするDNAもしくはRNAの発現と自己抗原エピトープの産生
がもたらされる。
【0032】 細胞中に取り込まれると、調節エレメントと連結された自己抗原エピトープを
コードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物は、機能を有するエピソーム性
分子として細胞内にとどまるか、または細胞の染色体DNAに組込まれる。DNAは細
胞中に導入することができ、その細胞内ではプラスミドの形で別の遺伝物質とし
てとどまることとなる。あるいはまた、染色体中に組込むことのできる直鎖状DN
Aを細胞内に導入することもできる。DNAを細胞内に導入する際にDNAの染色体へ
の組込みを促進する薬剤を添加してもよい。該DNA分子中に組込みを促進するた
めに有用なDNA配列を含ませてもよい。染色体DNA中への組込みには染色体を操作
することが必然的に必要なので、該DNA構築物をエピソームとして維持しておく
ことが好ましい。これによって、ワクチンの有効性に影響を及ぼすことなく染色
体中にスプライシングして組込むことによる細胞損傷の危険性が低減する。
【0033】 遺伝子ワクチンの遺伝子構築物に必要なエレメントとしては、自己抗原エピト
ープをコードする核酸配列およびその配列をワクチン接種された個体の細胞中で
発現させるために必要な調節エレメントが含まれる。該調節エレメントは、発現
を可能とするために、自己抗原エピトープをコードするDNA配列と機能しうる形
で連結されている。自己抗原エピトープをコードする核酸配列としては、cDNA、
ゲノムDNA、合成DNA、もしくはそれらのハイブリッド、またはmRNAなどのRNA分
子が含まれる。従って、本明細書で用いる「DNA構築物」、「遺伝子構築物」、
ならびに「ヌクレオチド」もしくは「核酸」配列という用語は、DNAおよびRNAの
双方を意味する。
【0034】 遺伝子発現に必要な調節エレメントとしては、プロモーター、開始コドン、終
止コドン、およびポリアデニル化シグナルが含まれる。これらのエレメントはワ
クチン接種された個体の体内で機能しうるものであることが必要である。さらに
、ワクチン接種された個体の細胞内で該核酸配列が発現され、その結果自己抗原
エピトープが産生されうるように、これらのエレメントが自己抗原エピトープを
コードする核酸配列と適切に連結されていることが必要である。
【0035】 開始コドンと終止コドンは通常は自己抗原エピトープをコードする核酸配列の
一部分とみなされている。これらのエレメントがワクチン接種された個体の体内
で機能を有することが必要である。同様に、用いるプロモーターおよびポリアデ
ニル化シグナルもまたワクチン接種された個体の細胞内で機能を有するものでな
ければならない。
【0036】 本発明の実施に有用なプロモーター、とりわけヒト用の遺伝子ワクチンの作製
に有用なものの例としては、限定はされないが、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロ
モーター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列(HIV LTR)プロモーター、モロニ
ーウイルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒトアクチン、ヒ
トミオシン、RSV、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびEBVを挙げるこ
とができる。
【0037】 本発明の実施に有用なポリアデニル化シグナル、とりわけヒト用の遺伝子ワク
チンの作製に有用なものの例としては、限定はされないが、SV40ポリアデニル化
シグナルおよびLTRポリアデニル化シグナルを挙げることができる。
【0038】 DNA発現に必要な調節エレメントに加えて、その他のエレメントもまた上記DNA
分子中に含ませることができる。そのような付加的エレメントとしてはエンハン
サーが挙げられる。エンハンサーは、限定されるものではないが、ヒトアクチン
、ヒトミオシン、CMV、RSV、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびEBV
を含む群から選択されるものでありうる。
【0039】 遺伝子構築物は、該構築物を染色体外で維持し、該構築物の多数のコピーが細
胞内で産生されるようにするために哺乳動物の複製起点を備えることができる。
Invitrogen(San Diego, 米国カリフォルニア州)から入手したプラスミドpCEP4お
よびpREP4は、エプスタイン・バーウイルスの複製起点、および組込むことなく
多数のコピー数のエピソーム性複製物を産生させる核抗原EBNA-1コード領域を有
している。
【0040】 本発明では、自己抗原からの少なくとも1つのエピトープをコードする配列を
組換え発現ベクター中に挿入する。「組換え発現ベクター」という用語は、該エ
ピトープの遺伝子配列の挿入もしくは組込みによって操作されたプラスミド、ウ
イルスもしくはその他の当業界では既知のビヒクルを意味する。そのような発現
ベクターは、挿入された宿主の遺伝子配列の効率的な転写を促進するプロモータ
ー配列を含むものである。発現ベクターは、典型的には複製起点、プロモーター
、ならびに形質転換された細胞の表現型による選択を可能とするような特定の遺
伝子を含むものである。本発明において使用するのに適したベクターとしては、
限定はされないが、細菌内発現のためのT7をベースとする発現ベクター(Rosenbe
rgら, Gene, 56:125, 1987)、哺乳動物細胞内発現のためのpMSXND発現ベクター(
LeeおよびNathans, J.Biol.Chem., 263:3521, 1988)、および昆虫細胞内発現の
ためのバキュロウイルス由来のベクターを挙げることができる。該DNAセグメン
トは、そのベクター中に調節エレメント、例えばプロモーター(例えば、T7、メ
タロチオネインI、もしくはポリヘドリンプロモーター)と機能しうる形で連結さ
れて存在することができる。
【0041】 原核細胞中で真核細胞性もしくはウイルス性の配列を有するDNA配列を発現さ
せる方法は当業界ではよく知られている。宿主内で発現および複製しうる、生物
学的に機能を有するウイルスおよびプラスミドDNAベクターは当業界でよく知ら
れている。そのようなベクターを本発明のDNA配列を組込むために用いる。
【0042】 上記エピトープをコードする配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む
発現ベクターを構築するために、当業者に周知の方法を用いることができる。そ
のような方法としては、in vitro 組換えDNA技法、合成技法、およびin vivo組
換え/遺伝的技法が含まれる。例えば、Maniatisら, 1989 Molecular Cloning A
Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.を参照のこと。
【0043】 エピトープをコードする配列の発現を試験するために、種々の宿主−発現ベク
ター系を用いることができる。そのようなものとしては、限定はされないが、エ
ピトープコード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしく
はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物;該コード配列
を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換させた酵母;該コード配列を含む組換
えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス, CaMV;タバ
コモザイクウイルス, TMV)を感染させた、または該コード配列を含む組換えプラ
スミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換させた植物細胞系;該コ
ード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染
させた昆虫細胞系;あるいは、該コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター
(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)を感染させた
動物細胞系、または安定な発現が得られるように操作した形質転換された動物細
胞系が挙げられる。
【0044】 用いる宿主/ベクター系の如何によって、多数の適切な転写および翻訳エレメ
ントのいずれのものでも発現ベクター中に用いることができ、そのようなエレメ
ントとしては、構成および誘導プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転
写ターミネーターなどが含まれる(例えば、Bitterら, Methods in Enzymology 1
53:516-544, 1987参照)。例えば、細菌系でクローニングする場合には、バクテ
リオファージγのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lac ハイブリッドプロモーター)
などを用いることができる。哺乳動物細胞系でクローニングする場合には、哺乳
動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)
もしくは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、レトロウイルス末端反
復配列(LTR);アデノウイルス後期プロモーター;CMV ワクシニアウイルス7.5K
プロモーター)を用いることができる。組換えDNAもしくは合成技法で作られたプ
ロモーターもまた、挿入されたコード配列の転写のために用いることができる。
【0045】 何らかの理由で遺伝子構築物を受け取った細胞を排除することが望ましい場合
には、細胞破壊の標的として働く付加的エレメントを加えることができる。発現
可能な形のヘルペスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を該遺伝子構築物中に含めるこ
とができる。該構築物が細胞中に導入されるとtkが産生される。ガンシクロビル
という薬剤をその個体に投与するとその薬剤はtkを産生している細胞の全てを選
択的に殺滅する。従って、ワクチンで処置された細胞の選択的な破壊が可能な系
を提供することができる。
【0046】 機能を有する遺伝子構築物とするためには、調節エレメントは標的タンパク質
をコードする核酸配列と、機能しうる形で連結されなければならない。従って、
プロモーターおよびポリアデニル化シグナルはコード配列とインフレームである
必要がある。タンパク質産生を最大化するために、ワクチン接種される細胞での
遺伝子の発現によく適した調節配列を選択することができる。さらに、ワクチン
接種された細胞中で最も効率的に転写されるコドンを選択することができる。当
業者であれば、ワクチン接種された細胞中で機能を有するDNA構築物を作成する
ことができる。
【0047】 発現を試験するために、ワクチン接種される細胞と同じタイプの細胞の組織培
養を用いてin vitroで遺伝子構築物の発現レベルを調べることができる。例えば
、その遺伝子ワクチンがヒトの筋肉細胞中に投与されるものであるとするならば
、横紋筋肉腫の固形筋肉腫瘍細胞などの培養液中で増殖させた筋細胞を、発現レ
ベル測定のためのin vitoモデルとして用いることができる。
【0048】 本発明は、自己免疫に関連する標的(細胞受容体および「自己」に向けられた
抗体が含まれる)に対する広範なベースの防御的免疫応答を授けることによる自
己免疫疾患および障害に罹患した個体を治療する方法を提供する。
【0049】 T細胞が媒介する自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化
症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDD
M)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、汎筋炎(panmy
ositis)、皮膚筋炎、乾癬(psorisis)、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、クローン
病および大腸炎が含まれる。これらの疾患の各々は、内因性抗原と結合し自己免
疫疾患に伴う炎症カスケードを開始させる高アフィニティーにT細胞受容体によ
っておそらくは特徴づけられるであろう。この高アフィニティーT細胞の可変部
に対するワクチンの接種によって、これらのT細胞を排除するCTLを含む免疫応答
が引き出されるであろう。本発明の方法と組成物はこれらのもしくはその他の自
己免疫疾患の全ての治療に有用である。
【0050】 慢性関節リウマチ(RA)では、この疾患に関与しているT細胞受容体(TCR)のいく
つかの特定の可変領域の特徴が明らかにされている。これらのTCRとしては、Vβ
-3、Vβ-14、Vβ-17、およびVα-28が含まれる。従ってこれらのタンパク質のう
ちの少なくとも1つをコードするDNA構築物を用いてワクチン接種すればRAに関与
するT細胞を標的とする免疫応答が引き出されることとなる。Howell, M.D.ら, 1
991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10921-10925; Paliard, X.ら, 1991 Scien
ce 253:325-329; Williams, W.V.ら, 1992 J. Clin. Invest. 90:326-333を参照
すればよいが、これらの各々は本明細書中に参照により組み入れることとする。
さらに、コラーゲンから得たエピトープは本発明の遺伝子構築物もしくは免疫方
法におそらく有用であろう。
【0051】 多発性硬化症(MS)では、この疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域
の特徴が明らかにされている。これらのTCRとしてはVβ-7およびVα-10が含まれ
る。従ってこれらのタンパク質のうちの少なくとも1つをコードするDNA構築物を
用いてワクチン接種すればMSに関与するT細胞を標的とする免疫応答が引き出さ
れることとなる。Wucherpfenning, K.W.ら, 1990 Science 248:1016-1019; Okse
nberg, J. R. ら, 1990 Nature 345:344-346を参照すればよいが、これらの各々
は本明細書中に参照により組み入れることとする。本発明の方法のための抗原の
候補としてはミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、トランス
アルドラーゼ、2'3'サイクリックヌクレオチド3'ホスホジエステラーゼ、ミエリ
ンオリゴデンドログリア糖タンパク質、およびミエリン関連糖タンパク質が含ま
れる。
【0052】 強皮症では、この疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域の特徴が明
らかにされている。これらのTCRとしてはVβ-6、Vβ-8、Vβ-17、およびVα-16
が含まれる。従ってこれらのタンパク質のうちの少なくとも1つをコードするDNA
構築物を用いてワクチン接種すれば強皮症に関与するT細胞を標的とする免疫応
答が引き出されることとなる。
【0053】 B細胞が媒介する自己免疫疾患としては狼瘡(SLE)、グレーブス病(バセドウ病)
、筋無力症、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、
喘息、クリオグロブリン血症、原発性胆汁性硬化症、および悪性貧血が含まれる
。これらの疾患の各々は、内因性の抗原と結合し自己免疫疾患に伴う炎症カスケ
ードを開始させる抗体によって特徴づけられる。
【0054】 SLEの場合には、抗原はDNAであろうと考えられている。従ってSLEに対する免
疫を行おうとする患者では、患者の血清を抗DNA抗体についてスクリーニングす
ることができ、その血清中に見出された抗DNA抗体の可変領域をコードするDNA構
築物を含んでいるワクチンを調製することができる。
【0055】 インスリン依存性糖尿病(IDDM)の場合には、抗原はインスリンB鎖、またはイ
ンスリンの一部もしくは全体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65/67)、膵
ランゲルハンス島細胞抗原(IA)、および熱ショックタンパク質(HSP60)が含まれ
る。好ましい実施形態においては、本明細書で説明したように、インスリンB鎖
がワクチン接種の目的での遺伝子構築物中に用いられる。
【0056】 本発明の構築物では、投与された遺伝物質で自己細胞がトランスフェクション
もしくは形質転換された後、自己抗原の1つ以上のエピトープが宿主によって発
現されることとなる。次いで発現されたエピトープは被験者の体内で所望の免疫
応答を引き出す。前述のとおり、ここに開示された構築物を、製薬上許容される
担体と共に裸のままの組換え分子(例えばDNAもしくはRNA)の形態で、または、よ
り手の込んだ多数のベクターの形態のうちのいずれのものでも、投与することが
できるということは理解されよう。どちらの場合でも、本発明で使用できる核酸
は好ましくは1つ以上のエピトープをコードし、場合によりさらにそのエピトー
プの発現および/もしくは安定性および/もしくは免疫原性を調節するエレメント
を含むことができる。
【0057】 該エピトープの安定性および/もしくは免疫原性を増強するために、そのエピ
トープをより大きなペプチドもしくはタンパク質のコンテクストに置いて提示す
ることが望ましい。例えば、関連エピトープはキメラ抗体の可変領域中、もしく
は選択した自己抗原の1ドメインとして発現させることができる。他の好ましい
実施形態においては、1つ以上のエピトープを含んでいる完全長のタンパク質(例
えば、多発性硬化症の場合にはミエリン塩基性タンパク質)を投与することが有
利であろう。あるいはまた、種々の免疫原性自己エピトープおよび/もしくは補
因子をコードする遺伝物質の組み合わせもしくはカクテルを含んでいる組成物を
投与することが望ましいであろう。この点については、関連エピトープは同じか
もしくは別の自己抗原から誘導できることは理解されよう。上記で説明したよう
に、選択したエピトープは、被験者の疾患の病因に対して決定的な自己抗原由来
のもの、もしくはその疾患の病因に役割を果たさないが免疫原性を有する宿主ペ
プチド由来のものとすることができる。広範な標的に加えて、ここに開示した組
成物は種々のエピトープの組み合わせを含むことができる。例えば、本発明の組
成物は、B細胞エピトープの混合物、T細胞エピトープの混合物、もしくはB細胞
エピトープとT細胞エピトープの組み合わせを含むペプチドもしくはタンパク質
をコードする遺伝物質を含むものとすることができる。
【0058】 より具体的には、2種以上の関連エピトープを含むかまたは発現させる組成物
を投与すれば、期待していなかった相乗効果を示す可能性がある。そのような組
み合わせが単一の関連エピトープをコードする単一の核酸種を含んでいる組成物
よりも自己反応性細胞に所望の免疫調節をもたらすことにおいてより効率的であ
ることが証明され得ることは理解されよう。当業者には、さらに、そのような相
乗作用によって、単一のエピトープの組成物より低い投与量と少ない頻度の投与
で効果的な免疫予防的もしくは免疫治療的応答をもたらしうることが理解されよ
う。さらに、そのような多エピトープ組成物で誘導される多部位免疫はある種の
中での表現型の天然の変動もしくは選択された病原体による標的抗原の迅速な変
異に対してより抵抗性である傾向があるので、そのような多エピトープ組成物の
使用によってより包括的な防御が提供しうる。もちろん、単一のB細胞もしくはT
細胞エピトープをコードする構築物によっても効果的な免疫は与えることができ
、そのような化合物および組成物が本発明の範囲内にあるものであることは明確
に意図されている。
【0059】 本発明によれば、遺伝子ワクチンを免疫感作しようとする個体に直接投与する
こと、または取り出した個体の細胞中にex vivoで投与してその細胞を投与後に
再移植することができる。いずれかの経路によって、遺伝物質を個体の体内に存
在する細胞に導入する。好ましい投与経路は、筋内、腹腔内、皮内および皮下注
射が挙げられる。あるいは、遺伝子ワクチンを、個体から取り出した細胞中に様
々な方法によって導入してもよい。そのような方法は、例えば、トランスフェク
ション、エレクトロポレーションおよび微粒子発射ボンバードメントが挙げられ
る。遺伝子構築物が細胞により取り込まれた後に、細胞を個体中に再移植する。
別なやり方として、遺伝子構築物を既に組み込んでいる非免疫原性細胞を個体に
再移植してもよく、その場合、たとえそのワクチン接種された細胞は起源的に他
の個体から取られたものでもよいことを意図している。
【0060】 本発明による遺伝子ワクチンは、約0.1〜1000μgまたは約10mgのDNAを含んで
なる。複数の好ましい実施形態においては、ワクチンは約1〜約500μgのDNAを含
有する。複数の好ましい実施形態においては、ワクチンは約25〜約250μgのDNA
を含有する。最も好ましくは、ワクチンは約100μgのDNAを含有する。
【0061】 本発明による遺伝子ワクチンは、使用する投与様式に従って製剤される。当業
者であれば、遺伝子構築物を含んでなる遺伝子ワクチンを容易に製剤することが
できる。筋内注射が選ばれた投与方式であれば、等張製剤を使用する。一般的に
、等張性のための添加剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビ
トールおよびラクトースが挙げられる。リン酸緩衝化生理食塩水などの等張液が
好ましい。安定剤としてはゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
【0062】 本発明によれば、遺伝子構築物の投与前にまたは同時に、細胞に「細胞刺激」
または「細胞増殖」剤を投与することができる。本明細書に用いられる用語「細
胞刺激剤」または「細胞増殖剤」は互換的に使用され、細胞分裂を刺激する化合
物を意味する。そのような化合物はDNAおよびRNA取込みを促進する。
【0063】 例えば、周知の市販される製薬化合物であるブピバカインを、遺伝子構築物の
前にまたは同時に投与する。ブピバカインは化学的かつ薬理学的にアミノアシル
クラスの局所麻酔薬と関係がある。ブピバカインはメピバカインの同族体であっ
てリドカインと関係がある。ブピバカインは筋組織電圧をナトリウムチャレンジ
に対して鋭敏化し、細胞内イオン濃度に影響を与える。ブピバカインの薬理活性
の完全な説明は、本明細書に参照により組み入れられる、Ritchie,J.M.およびN.
M.Greene, 「治療の薬理学的基礎」(The Pharamacological Basis of Therapeut
ics):Gilman,A.G.ら編、第8版,15章:3111頁に見られる。ブピバカインと機能
的類似性を提示する化合物を本発明の方法に利用してもよい。
【0064】 ブピバカイン、メピバカイン、リドカインおよび他の類似した作用をもつ化合
物に加えて、他の意図される細胞刺激剤としては、レクチン、増殖因子、サイト
カインおよび血小板由来増殖因子(PDGF)、GCSF、GMCSF、上皮増殖因子(EGF)
およびIL-4などのリンホカインが挙げられる。
【0065】 塩酸ブピバカインは、化学的には、2-ピペリジンカルボキサミド-1-ブチル-N-
(2,6-ジメチルフェニル)一塩酸塩一水和物と記され、多くの供給者から製薬用途
向けに広く市販されており、供給者としてはAstra Pharmaceutical Products In
c.(Westboro,Mass.)、Sanofi Winthrop Pharmaceuticals(New York,N.Y.)、およ
びEastman Kodak(Rochester,N.Y.)が挙げられる。等張製薬担体中の0.5%塩酸ブ
ピバカインおよび0.1%メチルパラベン約50μl〜約2ml、好ましくは50μl〜約150
0μl、さらに好ましくは約1mlを、ワクチンを接種する部位に投与してもよい。
遺伝子構築物をコラーゲンと組み合わせて乳化液とし、腹腔内に送達してもよい
。コラーゲン乳化液はDNAを徐放するための方法を提供する。コラーゲン50μl〜
2mlを使う。本製剤を使う好ましい実施形態においては、DNA約100μgをコラーゲ
ン1mlと組み合わせる。
【0066】 本発明の複数の実施形態においては、個体は最初にブピバカイン注射を受け、
その後に筋内注射による遺伝子ワクチン接種を受ける。すなわち、例えば、ワク
チン接種の24時間前に、個体に最初にブピバカインを注射する。あるいは、ブピ
バカインをワクチン接種と同時に、直前にまたは直後に注射してもよい。
【0067】 本発明の複数の実施形態においては、個体に一連のワクチンを投与し、全ての
広い免疫応答を産生させる。この方法によれば、ある期間にわたって少なくとも
2回の、好ましくは4回の注射を行う。注射間の期間は、24時間間隔〜注射間2週
間以上まで、好ましくは1週間間隔であってもよい。あるいは、少なくとも2回〜
4回までの別々の注射を、身体の様々な部分に同時に行う。
【0068】 本明細書における開示は、主に、ヒトを免疫感作するための本発明の方法の使
用に関するが、本発明の方法を獣医学的医療用途に応用してもよい。病原体およ
びタンパク質特異的障害および疾患に対して非ヒトならびにヒト個体を免疫感作
する方法を提供することは、本発明の範囲内にある。従って、本発明は哺乳動物
、鳥類および魚類の遺伝子免疫感作に関する。本発明の方法は、特に哺乳動物種
に対して有用であって、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌおよびネ
コ種が挙げられる。
【0069】 本開示は一般的に予防的な保護の方法の立場から免疫感作を考察するが、用語
「免疫感作する」は予防および治療の両方の方法を指すことを意味する。従って
、免疫感作の方法には、個体を病原体チャレンジまたは特定細胞の発生もしくは
増殖から保護する方法、ならびに病原体感染または自己免疫疾患を患う個体を治
療する方法が含まれる。従って、本発明を、予防保護用ワクチンとして、または
治療法において、すなわち、免疫治療の方法および調製物として利用できる。
【0070】 本明細書において教示した、被験者に投与するために利用し得る様々なウイル
スベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス
、ワクシニア、または、好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げ
られる。好ましくは、レトロウイルスベクターはマウスまたは鳥類レトロウイル
スの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入しうるレトロウイルスベクターの例
としては、限定されるものでないが、モロニー(Moloney)マウス白血病ウイル
ス(MoMuLV)、ハーベイ(Harvey)マウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌
ウイルス(MuMTV)、およびラウス(Rous)肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。
最も好ましくは、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)などの非ヒト霊長類レトロ
ウイルスベクターを利用し、それによって、例えば、ヒトにおいてマウスベクタ
ーより広い宿主範囲を提供する。
【0071】 多数のさらなるレトロウイルスベクターに複数の遺伝子を組みこむことができ
る。これらのベクターは全て、選択マーカー用の遺伝子を導入するかまたは組み
こんで、形質導入した細胞を同定しかつ作製できるようにしてもよい。レトロウ
イルスベクターは、例えば、糖類、糖脂質、またはタンパク質をコードするポリ
ヌクレオチドを挿入することによって標的特異的にしてもよい。好ましいターゲ
ッティングは、レトロウイルスを標的とする抗体を用いて行う。当業者により、
レトロウイルスゲノム中に挿入して、コード配列を含有するレトロウイルスベク
ターの標的特異的送達を可能にする特定のポリヌクレオチド配列が知られている
か、または過度の実験を行うことなく容易に確認されるであろう。
【0072】 組換えレトロウイルスは欠陥があるので、感染性ベクター粒子を産生するため
に支援が必要である。この支援は、例えば、LTR内の調節配列の制御下にあるレ
トロウイルスの構造遺伝子の全てをコードするプラスミドを含有するヘルパー細
胞系を利用して与えることができる。これらのプラスミドは、パッケージング機
構がRNA転写物を認識してキャプシドを形成することを可能にするヌクレオチド
配列を持たない。パッケージングシグナルを欠失するヘルパー細胞系としては、
限定されるものでないが、例えばPSI.2、PA317およびPA12が挙げられる。これら
の細胞系は、ゲノムをパッケージングしないので、空のビリオンを作製する。レ
トロウイルスベクターをそのような細胞中に導入すると、その細胞内ではパッケ
ージングシグナルは無傷であり、しかし構造遺伝子が他の目的の遺伝子により置
き換えられているので、そのベクターをパッケージしてベクタービリオンを産生
することができる。
【0073】 本発明の遺伝子構築物を送達するためのその他の標的送達系は、コロイド分散
系である。コロイド分散系は、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ
および水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づ
く系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソー
ムは人工膜小胞であり、in vitroおよびin vivoの送達ビヒクルとして有用であ
る。サイズが0.2〜4.0μmの範囲にある大きな単層小胞(LUV)は、大きな巨大分
子を含有する水性バッファー液の相当な割合を封入することができる。RNA、DNA
および無傷のビリオンを、水性内部液内に封入して生物活性を有する形態で細胞
に送達することができる(Fraleyら, Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981)。リ
ポソームは、哺乳動物細胞に加えて、植物、酵母および細菌細胞中のポリヌクレ
オチドの送達にも利用されている。リポソームが効率的な遺伝子導入ビヒクルで
あるためには、次の特性がなければならない:(1)目的の遺伝子を高い効率で封
入するがそれらの生物活性を損なわないこと;(2)非標的細胞と比較して標的細
胞と選好的かつ実質的に結合すること;(3)小胞の水性内容物を標的細胞の細胞
質に高い効率で送達すること;および(4)遺伝子情報を正確かつ効果的に発現す
ること(Manninoら, Biotechniques, 6:682, 1988)。
【0074】 リポソームの組成は通常、リン脂質、特に高い相転移の温度リン脂質の組合わ
せであり、通常、ステロイド、特にコレステロールを組合わせている。他のリン
脂質または他の脂質も利用しうる。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度、
および二価カチオンの存在に依存する。
【0075】 リポソームの作成に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミ
ンなどのホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガング
リオシドが挙げられる。特に有用なのはジアシルホスファチジルグリセロールで
あり、その脂質部分は14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原子を有し飽和
している。リン脂質の例は、タマゴホスファチジルコリン、ジパルミトイルホス
ファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0076】 リポソームのターゲッティングは、解剖学的および機構的因子に基づいて分類
されている。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、器官特異性、細胞特異
性、および小器官特異性に基づく。機構的ターゲッティングは、それが受動であ
るかまたは能動であるかに基づいて識別することができる。受動ターゲッティン
グは、リポソームが類洞毛細管(sinusoidal capillaries)を有する器官の細網
内皮系(reticulo-endothelial system:RES)細胞へ分布する自然の傾向を利用
する。一方、能動ターゲッティングは、自然に起こる局在化の部位ではない器官
および細胞型へのターゲッティングを達成する目的で、リポソームをモノクロー
ナル抗体、糖、糖脂質、もしくはタンパク質などの特定のリガンドとカップリン
グすることにより、またはリポソームの組成もしくはサイズを変えることによる
リポソームの改変を行うことを含む。
【0077】 標的送達系の表面は、様々な方法で改変することができる。標的リポソーム送
達系の事例においては、ターゲッティングリガンドをリポソーム二重層と安定し
た会合で維持するために、脂質基をリポソームの脂質二重層中に組込んでもよい
。様々な連結基を利用して脂質鎖をターゲッティングリガンドと接続することが
できる。
【0078】 一般的に、標的送達系の表面に結合される化合物は、標的送達系が所望の細胞
を見出しかつ「ホームイン(home in)」することを可能にするリガンドおよび
受容体であろう。リガンドは、他の化合物と結合しうるいずれの目的の化合物、
例えば受容体であってもよい。
【0079】 生物学的応答調節剤(BRM)は特異性を持たずに免疫系を刺激する。その利用
についての実験は、感染性膿胸(empyema)が場合によって腫瘍の回復をもたら
すという19世紀の観察に遡る。19世紀後期にWilliam Coleyは、もし免疫系が十
分に活性化されれば腫瘍は異物とみなされるであろうと推論し;次いで、癌患者
を治療するために用いる熱殺菌した細菌のコレクションを開発した。非特異的免
疫刺激の物性は、BRMおよびアジュバントが共有する。事実、この用語はこの意
味で互換性がある。
【0080】 癌免疫治療については、2つのタイプのBRMが突出している:BCGおよびサイト
カインである。BCG(Bacille de Calmette et Guerin)は、非特異的、免疫刺激
物性を持つ生弱毒化ウシ結核菌である。BCGは、現在、表層膀胱癌の内視鏡切除
後の腫瘍再発に対する予防対策としての使用がF.D.A.により認可されている。小
胞内に注入すると、マクロファージまたはTリンパ球のいずれかによる腫瘍細胞
死滅が起ると考えられる。BCGに対する応答は免疫学的に非特異的であり、その
点で、免疫系の一般的活性化に関わると思われる。有効性は腫瘍障害および患者
免疫適格性の制限の両方に依存する。
【0081】 同様に、サイトカインは抗原提示の細胞環境を改変することによってリンパ球
の活性化をもたらす。従って、サイトカインは全腫瘍細胞、腫瘍細胞溶解物、ま
たは特定の腫瘍細胞抗原により提示される腫瘍抗原に対するアジュバントとして
作用し得る。サイトカインにより提示される特定の抗原は、高力価のB細胞(抗
体)応答を刺激するために、それ自身のヘルパーT細胞エピトープも運ばなけれ
ばならない。
【0082】 複数のサイトカインは癌治療用に有望であることを示している。αインターフ
ェロンは、ヘアリー(hairly)細胞白血病の治療用としてF.D.A.により認可されて
いる。GM-CSFおよびIL-2も良好な評価を受けている。GM-CSFは、多形核顆粒球(
好中球)および単球の増殖を支援することに加えて、上記系統の成熟細胞を活性
化してin vitroで殺腫瘍性かつ食作用性になることを支援する。IL-2は、Tリン
パ球の増殖および活性化を刺激する。
【0083】 適当な免疫強化剤または生物学的応答調節剤は、宿主に対して免疫原性でない
が、それにも関わらず、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、またはリンホカイ
ン活性化キラー(LAK)細胞などの免疫系細胞の活性を活性化もしくは強化する
ことによって免疫能力を強化する作用剤を含む。免疫強化剤のこのカテゴリーに
は、「インターロイキン」として分類された多数のサイトカインをコードするも
のが含まれる。これらには、例えば、インターロイキン1〜12が含まれる。また
このカテゴリーには、必ずしも同じ機構によって作用するのではないが、インタ
ーフェロン、特にγインターフェロン(γ-IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)および
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。
【0084】 用語「サイトカイン」または本明細書における文脈から同等となる用語により
、免疫系細胞の一般クラスのホルモン、リンホカインとモノカインの両方および
その他を意味する。この定義は、限定されるものでないが、局所的に作用して血
中に循環しないホルモンであって、本発明に従って使用されると個体の免疫応答
の改変をもたらし得るものを含むことを意味する。サイトカインは、限定される
ものでないが、IL-1(αまたはβ)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8
、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、M-CSF、G-CSF、LIF、LT、TGF-β、γ-I
FR(またはαもしくはβ-IFN)、TNF-α、BCGF、CD2、またはICAMであってもよ
い。上記のサイトカインならびに他の応用しうる免疫調節剤の説明は、本明細書
に参照により組み入れられる、"Cytokines and Cytokine Reseptors(サイトカ
インとサイトカイン受容体)", A.S. Hamblin, 1993, (D.Male,編, Oxford Univ
ersity Press, New York, N.Y.)、または"Guidebook to Cytokines and Their R
eceptors(サイトカインとその受容体へのガイドブック)", 1995, N.A.Nicola,
編(Oxford University Press, New York, N.Y.)に見ることができる。
【0085】 ヒトの治療用途を意図する場合、サイトカインまたはホルモンはヒト型のタン
パク質に実質的に類似しているかまたはヒトの配列から誘導されている(すなわ
ちヒト由来である)ことが好ましい。
【0086】 さらに、ヒト型のIL-2、GM-CSF、TNF-αなどと実質的に相同性をもつ他の哺乳
動物のサイトカインが、免疫系に類似の活性を表すことが実証されているときは
、本発明に有用であり得る。同様に、いずれかの特定のサイトカインと実質的に
類似しており、タンパク質配列の変化が比較的少ないタンパク質も、本発明に利
用し得る。タンパク質分子の機能的能力を撹乱することなくタンパク質配列の複
数の小さい改変があり得ることは周知であり、従って本発明においてサイトカイ
ンとして機能し、現在公知の配列とはわずかに異なるタンパク質を作製し得る。
従って、特定のサイトカインのいずれかと実質的に類似しており、タンパク質配
列の変化が相対的に小さいタンパク質も本発明に利用しうる。
【0087】 最後に、本願における用語「サイトカイン」または「ケモカイン」または「イ
ンターフェロン」または「インターロイキン」の単数形または複数形のいずれか
の使用は限定的でなく、本発明および請求の範囲の解釈を限定するものではない
【0088】 免疫調節剤のどの型を選定しても、本発明の組成物は、所望の安定性を与えか
つ選択した投与形態を容易にするように製剤することができる。例えば、組成物
を、当業界で公知の全ての通常の経路を用いて投与することができる。経路とし
ては、限定するものではないが、経口、経膣、経耳、経鼻、経肺、静脈内、頭骸
内、腹腔内、皮下、または筋内投与が挙げられる。本発明の他の実施形態では、
本明細書に記載の組成物を徐放性移植片の一部として投与してもよい。さらに他
の実施形態では、本発明の組成物を、適当な当技術分野で認められている再水和
前の安定性を与える賦形剤を利用して、凍結乾燥またはスプレー乾燥製剤として
製剤してもよい。
【0089】 非経口投与用の調製物は「製薬上許容される担体」中に含有させる。そのよう
な担体は、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液および乳化液が挙げられる。非
水溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリー
ブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙
げられる。水性担体は、水、アルコール/水溶液、乳化液または懸濁液が挙げら
れ、生理食塩水および緩衝化媒質が含まれる。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウ
ム溶液、デンプンリンゲル液、デンプンおよび塩化ナトリウム、乳酸入りリンゲ
ル液、または固定油(fixed oil)が挙げられる。静脈注射用ビヒクルは、デン
プンリンゲル液などに基づく、液体および栄養補充物、電解質補充物などが挙げ
られる。また、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの
保存剤および他の添加剤が存在してもよい。
【0090】 本発明に適用される用語「製薬活性物質」は、ヒトおよび動物の両方を含む宿
主に投与されたとき、治療上有益な薬理学的応答を引き起こすいずれの物質も包
含する。もし所望であれば、本発明の方法に使われる製薬組成物中に、1以上の
製薬活性物質が含まれてもよい。
【0091】 本発明において、製薬活性物質は、分子複合体または製薬上許容される塩など
の様々な形態で使用することができる。そのような塩の代表的な例は、コハク酸
塩、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレ
イン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、金属塩(例えば、アルカリまたはアルカリ
土類)、アンモニウムまたはアミン塩(例えば、第四級アンモニウム)などであ
る。さらに、所望の保持および放出特性を有するが生理pHまたは酵素によりin v
ivoで容易に加水分解されるエステル、アミド、およびエーテルなど活性物質の
誘導体も利用しうる。
【0092】 本明細書に使われる用語「治療有効量」または「免疫調節有効量」とは、製薬
活性物質の量が、所望の薬理学的効果を誘導するのに十分な量および活性である
ことを意味し、本発明においては、所望の薬理学的効果とは自己抗原のエピトー
プに対する免疫応答の免疫強化である。製薬活性物質の量は、特定の活性物質の
有効性、個々の宿主の年齢、体重、および応答ならびに宿主の症状の性質および
重篤度によって大きく変りうる。従って、活性物質の量についての決定的な上限
または下限はない。本発明に用いられる所要の量は、当業者であれば容易に決定
することができる。
【0093】 本明細書において、用語「免疫応答を調節する」またはその文法上同等な表現
は、免疫応答に関わる任意の細胞型におけるあらゆる変化を意味する。本定義の
意味することとしては、免疫系内で起りうる細胞数の増加もしくは減少、細胞活
性の増加もしくは低下、または他の全ての変化が挙げられる。その細胞は、限定
されるものでないが、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マク
ロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、または好中球であってもよい。上記
定義は、有害な標的に対する十分に強力な応答を引き起こすための免疫系の刺激
または増強、ならびに所望の標的に対する破壊的応答を回避するための免疫系の
抑制、の両方を包含する。免疫系の刺激の場合には、この定義はその後のチャレ
ンジ(例えば、ウイルスによる)に対する将来的な防御を含む。
【0094】 本明細書において、自己抗原からの「エピトープ」もしくは「抗原」という用
語、またはそれらの文法上同等な表現は、免疫応答を誘発し得るいずれかのタン
パク質、炭水化物またはその他の成分を意味する。この定義は、限定されるもの
でないが、少なくとも1つのエピトープを用いることを包含することを意味する
【0095】 本明細書において、用語「全身性免疫応答」またはその文法上同等な表現は、
局在化しないで、個体全体に影響を及ぼし、したがって同じ刺激に対するその後
の特異的な応答が可能になるような免疫応答を意味する。
【0096】 本明細書において、用語「同時投与」またはその文法上同等な表現は、少なく
とも1つの自己抗原エピトープと少なくとも1つのサイトカインまたは他の生物学
的応答調節剤とが、個体の免疫系と本質的に同時に出会う方法を意味する。それ
らの構成要素が同一ビヒクルを用いて投与される必要はない。それが2つの別個
のビヒクルで投与される場合には、それらは時間および投与経路共に十分近接し
て投与されて、それらが本質的に同時に個体の免疫系と出会って所望の特異性を
達成するようにしなければならない。少なくとも1つのエピトープと少なくとも1
つの生物学的応答調節剤とは、同一遺伝子構築物上にまたは同時投与する2種以
上の構築物(例えば、同じまたは異なるプラスミド)上にコードされていてもよ
いと理解されるべきである。
【0097】 当業者であれば、医師または患者の視点からは、望ましくない症候(例えば、
疾患に関係する諸症状、環境因子に対する感受性、通常の加齢など)に対する実
質的に全ての軽減または予防が望ましいものであることを理解するであろう。従
って、本出願の目的にとって、本明細書に使われる用語「治療」、「治療上の利
用」、または「医薬上の利用」とは、それが何であれ任意の様式によって病態も
しくは症状を治療するか、あるいは疾患もしくは他の望ましくない症状の進行を
妨げ、阻止し、遅延させ、または後退させる、特許請求の範囲に記載した組成物
のいずれかの利用および全ての利用を意味する。
【0098】 遺伝子構築物の適当な投与量は、複数の十分確立された方法のいずれかにより
決定することができる。例えば、通常、動物研究を利用して体重1kg当たりの生
物活性物質の最大耐量すなわちMTDを決定する。一般的に試験動物種の少なくと
も1種は哺乳類である。当業者であれば、用量から規則的に推定して、ヒトを含
む他の種に対する有効性および毒性の回避を求める。ヒトの有効性の研究を行う
前に、正常な被験者におけるフェーズI臨床研究が安全投与量の確立を助ける。
あるいは、初期の毒性研究は、疾患の進行が末期段階にある個体を参加させても
よい。
【0099】 本明細書において、用語「被験者」もしくは「個体」またはその文法上同等な
表現は、任意の一個体を意味する。
【0100】 これらの新規のワクチン製剤は、通常の固体または液体の製薬投与形態、例え
ば非コート錠剤または(フィルム)コート錠剤、カプセル剤、粉剤、粒剤、座剤
、または液剤で投与することができる。これらは通常の方法で製造する。この目
的のために、活性物質を、例えば錠剤結合剤、充填剤、保存剤、錠剤崩壊剤、流
出調節剤、可塑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶媒、徐放性組成物、酸化防止剤
および/または噴射ガスなどの通常の製薬助剤と共に加工してもよい(H. Sucke
r,ら, 「製薬技術(Pharmazeutische Technologie)」 1978. Thieme-Verlag,
Stuttgartを参照すること)。このようにして得られる投与形態は、通常1〜90重
量%の活性物質を含有する。
【0101】 先に言及したように、本発明の免疫調節性化合物または構築物は、選択された
1以上のエピトープまたは自己抗原の発現をもたらす組換えヌクレオチドの形態
であることが望ましいであろう。本明細書の教示に従って、本発明の構築物を、
環状もしくは直鎖状のプラスミドとして製薬上許容される担体と一緒に投与して
もよいし、またはより複雑なベクターと結合させてもよい。例えば、本発明の構
築物を裸のDNA、ウイルスベクター、組換えファージ、形質転換した細菌、また
は形質転換した宿主細胞もしくは異種由来細胞の形態で投与してもよい。このよ
うなベクター系は、当業技術者の理解範囲内で周知であって、本出願の明細を見
れば過度な実験をせずとも容易に提供することができる。本発明の構築物は、多
くの送達システムと適合することに加えて、例えば多発性硬化症、狼瘡、慢性関
節リウマチ、重症筋無力症、強皮症、インスリン依存性糖尿病および潰瘍性大腸
炎を含む、様々な自己免疫疾患を治療するために利用することができる。
【0102】 選択したエピトープまたはそれを送達する際の最終形態(すなわち、プラスミ
ド、ウイルスベクターなど)に関わらず、当業者はさらに、被験者の有効な治療
または予防の誘導は2回以上の接種を含むことを理解するであろう。本明細書に
使われるこれらの用語および関連用語は、発現された自己エピトープによる適切
な生物学的応答調節剤の誘導を通じた、自己反応性免疫細胞のダウンレギュレー
ションを意味する。自己免疫疾患の治療または予防では、自己反応性細胞の全集
団を完全に排除する必要はなく、むしろその集団が臨床的に有利な効果をもたら
す程度まで低減されるかまたはアネルギー化されればよいのは理解されるであろ
う。一定の自己免疫疾患に関連する諸症状の重篤度の低減に加え、自己反応性応
答を定量化するアッセイが周知であり、当業者は容易に実施することができる。
【0103】 同様に、本明細書において使われる用語「接種する」は、接種された宿主によ
り発現され得る少なくとも1種の自己エピトープを含んでなる免疫調節性化合物
を組み込んでいる製薬上許容される組成物を投与または導入することを意味する
。有効免疫応答は1回の接種によって誘導しうるが、被験者の処置には多数回接
種、あるいは続いての1回以上のブースターを行ってもよい。そのように、本発
明の方法では、1、2、3、4または5回の接種を行って、所望の免疫予防効果を達
成することを含み得る。当業者であれば、さらに、本発明の組成物を使って新生
児(0〜6ヶ月)、幼児(6ヶ月〜2年)、小児(2年〜13年)または成人(13年以
上)に接種しうることを理解するであろう。
【0104】 そのような抗原は、自己抗原全体、抗原断片(当業界で周知の分子生物学また
は生化学的技術により得られる)または単一エピトープを含んでなるペプチドで
あってもよい。発現されるエピトープは、免疫グロブリンなどの他の天然産物ま
たは体細胞上の受容体に対する天然もしくは合成リガンドと結合するものであっ
てもよい。それらは単離された個々の構成要素としてまたは混合物として投与し
てもよい。I型糖尿病の治療に有用である発現されるエピトープの例は、限定さ
れるものでないが、次のペプチドおよび抗原が挙げられる:GAD65(グルタミン
酸デカルボキシラーゼ65、Baekkeskovら, Nature 1990, 347:151)、インスリン
(Palmerら, Science 1983, 222:1337)、ICA512/IA-2(島細胞抗原512;Rabin
ら, J.Immunol 1994, 152:3183)。MSの場合、そのようなタンパク質およびペプ
チドは次の通りである:MBP(ミエリン塩基性タンパク質, Steinmanら, 1995, M
ol. Med. Today, 1:79;Warrenら, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:110
61)、PLP.トランスアルドラーゼ、2',3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステ
ラーゼ(CNP)、MOGおよびMAG(Steinman L., 1995, Nature, 375:739)。自己
免疫疾患に加えて、本発明の組成物および方法はまた、アレルゲンにより引き起
こされる免疫応答をダウンレギュレーションするためにも用い得ることが理解さ
れるであろう。
【0105】 ある特定のペプチドおよびタンパク質は自己抗原に対する免疫応答を調節する
かまたはダウンレギュレーションする能力を有することが知られている。このよ
うなペプチドまたはタンパク質は、内在性受容体と結合して特定のプロセスの活
性化または抑制をもたらしたり、または内在性エレメントのリガンド-受容体結
合を妨害したりして作用する。自己免疫の抑制をもたらす免疫調節機能を発揮す
る、そのような生物学的応答調節剤の例は、限定されるものではないが、天然の
形態、または本明細書に開示した自己エピトープを含む他の分子に付着、結合ま
たは複合体化した断片の形態での、IL-4、IL-10、IL-13、IL-9、が挙げられる。
この点において、本発明は、選択された抗原もしくはエピトープを、標的送達部
位内の刺激局所免疫応答を増加しうる補因子(cofactor)と一緒に同時製剤する
ことが可能になるため、有利である。そのような同時発現される補因子を用いて
局在化された免疫応答を増強することにより、本発明の構築物は自己反応体のダ
ウンレギュレーションを増加させる。
【0106】 本発明に従って使用しうる他の活性タンパク質またはペプチドは、天然形態の
、または断片、構築物もしくは他の分子との複合体である、ケモカインを含み、
それらはリンパ球の動員を調節もしくは抑制しうる。例えば、MIG、IP-10、MIP-
1、MIP-1b およびRANTESは、Th1細胞の動員を媒介すると考えられる(Sallusto
ら, 1998, J.Exp.Med., 187:875;Wardら, 1998, Immunity, 9:1)。同様に、天
然形態の、または断片、組換え構築物もしくは他の分子との複合体である、サイ
トカインまたはケモカイン受容体は、ある特定のリンパ球の動員または活性化を
抑制し得る。進行中のTh1応答を抑制すると思われるサイトカインおよびケモカ
イン受容体の例としては、IL-12受容体、IFN-g 受容体、IL-2受容体、TNF-a
容体、CXCR3またはCCR5を含む。勿論、適合性のある化合物は、サイトカイン、
ケモカインまたはそれらの受容体に限定されるものでなく、インテグリンおよび
ホーミング受容体のような他のリガンドまたは受容体(天然形態、断片、構築物
または他の分子との複合体の状態)を含みうることは理解されよう。好ましい実
施形態において、望まない自己反応性を抑制または調節するために、これら全て
のカテゴリーの化合物を、製剤化し、かつ局所的にまたは全身的に投与すること
ができる。
【0107】 以上述べたように、本発明の組成物、化合物および方法は、哺乳動物の新生児
または幼児において自己反応性を低下させ、それによって将来の自己免疫を予防
または低下させるために、特に有用でありうる。本明細書に用いる用語「幼児(
infant)」は、免疫系がまだ完全に成熟していない誕生後の時期のヒトまたは非
ヒト哺乳動物を意味する。ヒトにおいては、この期間は誕生からほぼ9月齢まで
の範囲であるが、マウスではこの期間は誕生からほぼ4週齢の範囲である。用語
「新生児」は、基本的には産まれたばかりの幼児哺乳動物の集合を意味する。本
発明に係る「幼児」と関連した他の特徴としては次の免疫応答が挙げられる:(i
)高域寛容に対する感受性(T細胞前駆体の欠落/アネルギー化、アポトーシス傾
向の増大);(ii)Th2に偏ったヘルパー応答(新生児期T細胞の表現型特殊性;新
生児期T細胞上の低減したCD40L発現);(iii)細胞応答規模の低下(機能性T細胞
数の低下;抗原提示細胞機能の低下);および(iv)体液性応答の規模の低下とタ
イプの限定(顕著な高IgM、低IgD、B細胞、Th細胞とB細胞との間の協働作用の低
減)。本発明の限定するものではないが特定の実施形態においては、母体由来抗
体が検出しうる量で残存する幼児哺乳動物に、開示した免疫調節性構築物を投与
してもよい。関係する実施形態においては、妊娠中の母に開示した組成物を接種
して、胎児に所望の免疫調節を生じさせてもよい。
【0108】 以下の非限定の実施例は、本発明の原理をさらに説明する役割を果たすであろ
う。これに関して、以下の記述および実施例を通して使われる略語および対応す
る定義の表を提供する: LCMV:リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(lymphocytic chiromeningtis virus);
LCMV-NPまたはNP:リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス核タンパク質; RIP-LCMV-NP:ラットインスリンプロモーター(RIP)の制御下でLCMV-NPを発現
するトランスジェニックマウス系; IDDM:インスリン依存性糖尿病; pCMV:プラスミドベクター; pCMV-insB:ブタインスリンB鎖をコードするプラスミドベクター; pCMV-NP:LCMVの核タンパク質をコードするプラスミドベクター; pCTL:LCMV特異的CTL前駆体。
【0109】 明らかな実際的および倫理的理由のために、多くの疾患に関して実験組成物お
よび実験的方法の有効性を判定するための初期研究はヒトにおいて実行できない
。従って、どのような薬剤でもその開発初期には、安全と費用の理由で、適当な
動物モデルを利用するのが標準的方法である。実験室動物モデルを使用すること
で成功するということは、免疫優性エピトープが異なる宿主種においてしばしば
活性であるという知見に基づき予測される。従って、ある種、例えばげっ歯類ま
たはブタにおける免疫原決定基は、一般的にヒトなどの異なる種においては免疫
反応性であろう。適当な動物モデルを十分に開発した後でのみ、ヒトにおけるワ
クチンの安全および有効性をさらに実証するためのヒトの臨床試験を実施し得る
であろう。従って、限定する目的ではなく説明するだけの目的で、本発明は、哺
乳動物宿主であるマウスについての典型的な記載において、大部分実証されるで
あろう。当業者であれば、本発明は、ヒトおよび家畜動物を含む他の哺乳動物宿
主を用いて実施しうることを理解するであろう。
【0110】 これに関して、十分確立されて当業界で認められており、ウイルスにより誘導
されるインスリン依存性糖尿病の動物モデルとして利用される、RIP-LCMV-NPマ
ウスモデルを、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)による感染により誘導す
ることができる。LCMVによる感染後、90〜100%のマウスは、ウイルス感染を除去
し、同時に、マウスβ細胞により発現されるLCMV核タンパク質と反応するCD4+
よびCD8+リンパ球によって介在される糖尿病を日常的に発病する。このモデルは
2つの異なる利点、すなわち疾患の誘因を正確に制御できること、および自己反
応性(抗NP)リンパ球を正確に追跡できることを示す。ヒトの糖尿病の標的抗原
はなお議論の余地があるが、膵臓β細胞に対して特異的なT細胞の度数は、正常
被験者よりIDDM患者においてより高い。従って、これらの自己反応性T細胞を無
症候化することこそ、糖尿病を予防または治療するための論理的アプローチであ
ると思われる、そして、その故に、このモデルを使って本発明の利点が説明され
よう。しかし、強調すべきは、例示の方法および組成物は広範囲の自己免疫疾患
に応用しうるものであって、いずれかの特定の症状または疾患に限定されるもの
でない。
【0111】実施例1 糖尿病トランスジェニックマウスの接種 本発明の利点を実証する目的で、誘導可能な糖尿病トランスジェニックマウス
を得て、開示した組成物を用いてワクチン接種した。さらに特定すれば、以下の
実施例で用いたトランスジェニックRIP-LCMV-NP 25-3 H-2dマウス系は、ラット
インスリンプロモーター(RIP)の制御下にあるLCMVの核タンパク質(NP)を、
膵臓β細胞内ならびに胸腺内で発現するが、他のいかなる組織内でも発現しない
ものである。Balb/c非トランスジェニックH-2dマウスを、複数の実験(8)にお
いて対照として使った。IDDMを誘導するのに使ったウイルスはLCMVアームストロ
ング(ARM)株(クローン53b)であった。4〜21週齢RIP-NP 25-3マウスに、容積
0.2ml溶液の1×105 pfu LCMV ARMを腹腔内(i.p.)接種した。
【0112】 選択したマウスに、ブタの膵腺から精製したインスリン(Novo Nordisk, Bags
vaerd, Denmark)ならびに他の対照ペプチドを経口接種した。インスリンは酸性
バッファー中に可溶化し、そのpHを調整し、使用するまで-20℃で保存した。ペ
プチドは、自動ペプチド合成機(Applied Biosystems 430A)で、t-ブトキシル
またはN-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル(Fmoc)化学を利用した固相法
によって合成し、RP300-C8逆相カラム(Brownlee Lab)での高圧液体クロマトグ
ラフィーによって精製し、そして高速原子衝撃エレクトロスプレー質量分析法に
よって同定した。LCMVを増殖し、精製し、UVにより不活性化したが、NPペプチド
はScripps Core施設で合成した。全ての経口抗原は、食道/胃中に挿入した平ら
な末端の曲った給餌チューブを経由して投与した。RIP-NPマウスに、隔週、抗原
1mg/mlを含有する水溶液0.5mlを給餌した。給餌は、LCMVによる感染前1週に開始
し、8週後に止めた。他の対照グループは、生理食塩水またはウシ血清アルブミ
ン(BSA)を1mg/mlの濃度で与えられた。
【0113】 さらなる対照として、様々なマウスにインスリンAおよびBポリペプチドを接種
した。精製インスリンAおよびB鎖はZymogenetics(Seattle, WA)から得た。免
疫感作のために、RIP-NP(H-2d)トランスジェニックマウスに、BもしくはA鎖ペ
プチド100μgを含む1:1不完全フロイントアジュバント(IFA)乳化液を投与した
。注射は2回、LCMV感染後2および8日目に行った。
【0114】 さらに、他のマウスに、本明細書に記載の免疫調節性構築物を接種した。構築
物および様々な対照を調製するために、LCMV-NPまたはブタのインスリンB鎖をコ
ードするオープンリーディングフレームを、先に記載された(本明細書に参照に
より組み入れられる、Yokoyama,M.ら, J.Virol. 69:2684-2688)プラスミド、pCM
V中に配置させた。DNAは、1mg/ml生理食塩水の濃度で調製した。50mlを、各後肢
の大腿四頭筋中に、皮を剃った後、Metophane(登録商標)を用いて全身麻酔を
かけて注射した。それぞれの場合に、注射は両方の後肢に実施した(全100ml/
マウス)。図1に示したプロトコルによって免疫感作を与え、該免疫はLCMV感染
後最大4週間継続した(図1のプロトコル1および3)。
【0115】実施例II 免疫および非免疫マウスにおける糖尿病の進行 実施例Iからの免疫RIP-LCMVマウスならびに非免疫対照から得た血液サンプル
を、10週齢から、毎週2回、血中グルコース試験により高血糖を試験することに
よって、糖尿病についてスクリーニングした。糖尿病は、連続した2回の血中グ
ルコース分析(Accucheck III, Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)に
おいてその値が350mg/dlを越えることにより定義した。このスクリーニング結果
を図2に示す。
【0116】実施例III インスリン-B保護マウスからの脾細胞導入はIDDMを予防する DNA免疫感作マウスをLCMVを用いてチャレンジし、血中グルコースレベルを1ヶ
月間追跡して「保護」マウスと「非保護」マウスを同定した。脾細胞を、「保護
」マウス(pCMV-ins-Bで免疫感作した、プロトコル1)から、または「非保護」
マウス(pCMV-NPで免疫感作した、プロトコル1もしく2)から、回収し、in vitr
oで上記の抗原刺激をして培養した。培養3日後、組織培養上清中のIL-4およびIF
N-γレベルを、ELISAによって次の通り決定した。
【0117】 脾細胞が産生したサイトカイン(IL-4、IFN-γ)をELISA(Pharmingen, San D
iego, CA)アッセイを使って検出した。簡単に説明すると、96ウエルMilltiter
(商標)HAプレート(Millipore, Bedford, MA)を、2μg/mlに希釈したIL-4お
よびIFN-γに対するそれぞれの捕捉抗体を用いてコートした。一夜、4℃にてイ
ンキュベーションの後、プレートをPBS-Tween20(0.05%)によって4回洗浄し、1
0%FCSを含有するPBSを用いて1時間、室温にてプレインキュベートした。組織培
養上清および標準物を、10%FBS、0.05% Tween20を含むPBS中に様々な希釈率とな
るよう加え、室温で2〜4時間、インキュベートした。それから、プレートをPBS-
Tweenを用いて4回洗浄し、サイトカインに対するそれぞれの検出抗体を1μg/ml
にて含む、10%FCSを含有するPBS-Tweenを加えた。プレートを室温にて1時間イン
キュベートし、PBS-Tween中で4回洗浄した後、ストレプトアビジン-ペルオキシ
ダーゼコンジュゲート(Boehringer, Indianapolis, IN)を1:1000に希釈して加
えた。30分間、室温でインキュベーションした後、発色基質溶液(ABTS)を加え
て、プレート上に10〜30分間放置した。その後、プレートをELISAリーダーで490
nmにて測定した。結果を下の表1に示す。
【0118】
【表1】 培養8日後の5×106細胞を、導入5日前にLCMVに感染させておいたRIP-NP受容マ
ウス(1グループ当たり6匹)に導入した。細胞は次の通り導入した。
【0119】 脾細胞を、保護(pCMB-Ins-B処置した)または非保護(pCMB-NP処置した)マ
ウスから、LCMVによる感染28〜45日後に回収し、抗生物質およびグルタミンを含
有する7%RPMIを容れた24ウエル組織培養プレート中で培養した。示してあるよう
に、同系H-2d(Balb/c)マウス由来の被照射LCMV感染マクロファージ、あるいは
、インスリンB鎖もしくはLCMV NPペプチド(RPQASGVYM)を1mg/mlでコートした
かまたはLCMVを用いて感染した同系脾細胞を、抗原提示細胞として使用した。サ
イトカインを組織培養上清中で培養後3日および1週目にアッセイし、8日後、細
胞を同系RIP-NPトランスジェニック受容個体に、腹腔内にて養子導入した。導入
前に、全細胞をPBSで3回洗浄した。
【0120】 表1に示したように、受容マウスの血中グルコースレベルを2〜3ヶ月間分析し
て、IDDMの発症率を確認した。CD8欠乏はin vitroで、製造者(Dynal, Lake Suc
cess, NY)の示唆に従い、α-CD8結合磁性ビーズおよびサブトラクションカラム
を用いて実施した。
【0121】実施例IV pCMV-B保護マウスにおける自己反応性(LCMV-NP)CTL活性の低下 脾臓および膵臓排出リンパ節(draining lymph nodes)を、pCMV-Bワクチン接
種した(図1のプロトコル1)保護RIP-NPマウスおよび糖尿病無処置RIP-NPマウス
から回収した。LCMV-NP118-126MHCクラスIペプチドの存在下のIFN-γ産生につい
てのELISPOTアッセイ(36時間)を、以下に記載の通り実施した。1グループ当た
り2匹のマウスを2つの異なる実験で試験した。保護マウスおよび対照マウスは、
LCMVの4ヶ月後、糖尿病マウスはLCMVの3週後に安楽死させた。
【0122】 γ-IFN産生に対するELISPOTアッセイを、本明細書に参照により組み入れられ
るに記載のように実施した。さらに、LCMV-NP抗原特異的シグナルを保証するた
めに、脾およびリンパ節の各サンプルを、ELISPOTアッセイの際、LCMV-NP118-12 6 H-2dペプチドを用いる場合と用いない場合で、36時間、37℃にて5%CO2中で直接
インキュベートした。非ペプチド刺激培養物に現れるバックグラウンドスポット
(0〜3スポット/ウエル)をペプチド処置培養物に見出されるスポット(0〜100
スポット=読み取り範囲)から差引いた。連続5倍希釈を、2×105〜103の範囲で
、各サンプルについて行った。結果を下の表2に示す。
【0123】
【表2】 表2は、pCMV-B保護マウスの膵臓排出リンパ節における自己反応性(LCMV-NP
)CTL活性の局所的低下を明らかに示す。
【0124】実施例V LCMV特異的CTLレベルに対するワクチン接種の効果 LCMV特異的一次CTL活性および前駆体CTL(pCTL)を、2〜3匹のRIP-NPトランス
ジェニックマウスのグループについて、実施例1に記載の通り、LCMVによる感染
の7日後およびpCMV-ins-BもしくはpCMV-NPプラスミドまたはペプチド/タンパク
質の経口投与後(感染の0、7、14および21日後)に評価した。前駆体CTLについ
て平均を示したが、標準誤差は20%以下であった。IDDMの発症率は、pCMV-ins-B
(図1のプロトコル1)またはpCMV-NP(図1のプロトコル1、2または3)を用い
て処置したRIP-NPマウスについて、方法の節に記載したようにして決定した。イ
ンスリンB鎖またはLCMV H-2d NPペプチドの経口投与は、実施例1に記載の通り、
給餌管を通じて実施した(週2回、500μg)。CTLおよびpCTLレベルは以下に説明
したように確認した。
【0125】 105 LCMV ARMのi.p.接種の7日後に回収した脾臓におけるLCMV特異的CTL活性を
、標準的な4〜5時間51Cr放出アッセイによって、LCMV感染および無感染の、MHC-
一致[Balb/c17(H2d)]および不一致[MC57(H-2b)]標的細胞について評価した。感
染7日後のLCMV特異的CTL前駆体(pCTL)度数を測定するため、免疫感作したマウ
スからの脾細胞を連続希釈し、96ウエル平底プレート(1希釈当たり12ウエル、
最高希釈:1ウエル当たり16000細胞)中で、LCMV感染し照射した(2000rad)マ
クロファージおよび被照射脾細胞と共に培養した。8日後、それぞれのウエルか
らの細胞を分け、LCMV感染したおよび無感染のBalb/c17標的について、4〜5時間 51 Cr放出アッセイにより試験した。pCTL度数は、ネガティブ培養物の割合を半対
数目盛りに培養当たり脾細胞数に対してプロットして、評価した。pCTL度数は、
少なくとも3つの別々のデータ点間の線形回帰の傾きによって定めた。ポジティ
ブ培養物は、バックグラウンドの溶解を上回る標準誤差3よりも大きい特異的な
Cr51放出によって定めた。結果を下の表3に示しかつ図3にグラフで表示した。
【0126】
【表3】 表3および図3はどちらも明らかに、LCMV特異的CTLはLCMV-NP投与後に低下す
るが、ins-B投与後には低下しないことを示す。
【0127】 当業者であればさらに、本発明は、その精神または中心的特質から逸脱するこ
となく、他の特定の形態の実施形態をとり得ることを理解するであろう。本発明
の以上の説明において、本発明の例示の実施形態だけを開示したが、他の改変は
本発明の範囲内にあると意図していることが理解されなければならない。従って
、本発明は、本明細書に詳細に記載された特定の実施形態に限定されるものでな
い。むしろ本発明の範囲および内容を示すものとして特許請求の範囲を参照すべ
きである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本明細書中で示す実施例で用いた免疫プロトコールを示す。より具体
的に説明すると、本発明の遺伝子構築物は、両側の大腿四頭筋中へ1注射あたり5
0μLの食塩水中に50μgを溶解させた液(×2)を、図示した3つのプロトコール
のうちの1つに従って筋肉内注射する。星印はLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイル
ス)特異的CTL応答が測定された時点を示す。IDDMの発症についてはLCMV感染後3
ヶ月以上にわたり追跡した。
【図2】 図2は、本発明の組成物をマウスモデルで糖尿病の発病を防止するために用い
ることができることを示す。RIP-NPトランスジェニックマウスを、図1に示すプ
ロトコールに従ってpCMV-ins-Bを有するpCMV-NPを用いて処置するか、もしくは
本明細書に記載の経口投与用ブタインスリンを餌として与えた。糖尿病(すなわ
ち血糖値が持続的に>350mg/dLとなる)は毎週調べ、観察期間の総計は3ヶ月であ
った。各群の動物数は次のとおりである:pCMV-B マウス10匹、pCMV-NP マウス1
0匹、経口用ブタインスリン マウス10匹、無処置対照群 マウス10匹。
【図3】 図3は、5時間の51Cr放出アッセイで、LCMV-NP H-2dペプチドの階段対数希
釈を用いたLCMV-NP CTLの、同系のBalb/c標的に対するアフィニティーを示す。1
群3匹のマウスにpCMVもしくはpCMV-NPを図1のプロトコール2に従って注射した
。全体として放出のプラトーは、pCMV-NP処置群ではpCMV処置対照群と比べ減少
していたが、カーブの減退はシフトしておらず、このことはアフィニティにーに
顕著な相異のないことを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 1/04 A61P 17/00 3/10 21/04 17/00 29/00 101 21/04 37/02 29/00 101 A61K 37/02 37/02 37/66 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C N,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES ,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU, ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,K R,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV ,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ, NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S G,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ ,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C084 AA13 DA01 DA12 DA21 MA66 NA14 ZA022 ZA682 ZA892 ZB072 ZB152 ZC352 4C085 AA03 BB11 EE01 EE06 FF03 GG03 4C087 AA01 AA02 BC83 MA01 MA66 NA14 ZA02 ZA68 ZA89 ZB07 ZB15 ZC35

Claims (31)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 製薬上許容される担体中に自己抗原からの少なくとも1つ以
    上のエピトープをコードする核酸構築物を含んでなる、自己免疫疾患の治療もし
    くは予防に用いるための免疫調節性組成物。
  2. 【請求項2】 該自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)、慢性関節リウマチ、
    全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、強皮症、重症筋無力症、および潰瘍性大
    腸炎からなる群から選択されるものである、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 該エピトープがインスリンB鎖由来である、請求項1記載の
    組成物。
  4. 【請求項4】 該エピトープがミエリン塩基性タンパク質由来である、請求
    項1記載の組成物。
  5. 【請求項5】 該構築物がプラスミド骨格を含むものである、請求項1記載
    の組成物。
  6. 【請求項6】 生物学的応答調節剤をコードする核酸配列をさらに含む、請
    求項1記載の組成物。
  7. 【請求項7】 該生物学的応答調節剤がサイトカイン、ケモカイン、インタ
    ーフェロン、およびインターロイキンからなる群から選択されるものである、請
    求項6記載の組成物。
  8. 【請求項8】 該生物学的応答調節剤がIL-1(αもしくはβ)、IL-2、IL-3、
    IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、M-CSF、
    G-CSF、LIF、LT、TGF-β、γIFN(またはαもしくはβIFN)、TNFα、BCGF、CD2、
    またはICAMからなる群から選択されるものである、請求項6記載の組成物。
  9. 【請求項9】 該核酸構築物が調節エレメントをさらに含む、請求項1記載
    の組成物。
  10. 【請求項10】 該調節エレメントが、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモー
    ター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列(HIV LTR)プロモーター、モロニーウ
    イルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒトアクチン、ヒトミ
    オシン、RSV、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびEBVからなる群か
    ら選択されるプロモーターである、請求項9記載の組成物。
  11. 【請求項11】 自己免疫疾患に罹患しているかもしくは罹患する危険性の
    ある被験者の自己免疫疾患を治療もしくは予防するための方法であって、製薬上
    許容される担体中の、自己抗原からの少なくとも1つのエピトープをコードする
    核酸構築物を、免疫調節に有効な量、該被験者に投与することを含み、該エピト
    ープの発現が調節性の免疫応答を提供し、それによって該疾患を治療もしくは予
    防する、方法。
  12. 【請求項12】 該被験者がヒトである、請求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 該自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)、慢性関節リウマチ
    、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、強皮症、重症筋無力症、および潰瘍性
    大腸炎からなる群から選択されるものである、請求項11記載の方法。
  14. 【請求項14】 該エピトープがインスリンB鎖由来である、請求項11記
    載の方法。
  15. 【請求項15】 該エピトープがミエリン塩基性タンパク質由来である、請
    求項11記載の方法。
  16. 【請求項16】 該構築物がプラスミド骨格を含むものである、請求項11
    記載の方法。
  17. 【請求項17】 生物学的応答調節剤をコードする核酸配列をさらに含む、
    請求項11記載の方法。
  18. 【請求項18】 該生物学的応答調節剤がサイトカイン、ケモカイン、イン
    ターフェロン、およびインターロイキンからなる群から選択されるものである、
    請求項17記載の方法。
  19. 【請求項19】 該生物学的応答調節剤がIL-1(αもしくはβ)、IL-2、IL-3
    、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、M-CSF
    、G-CSF、LIF、LT、TGF-β、γIFN(またはαもしくはβIFN)、TNFα、BCGF、CD2
    、またはICAMからなる群から選択されるものである、請求項17記載の方法。
  20. 【請求項20】 該核酸構築物が調節エレメントをさらに含む、請求項11
    記載の方法。
  21. 【請求項21】 該調節エレメントが、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモー
    ター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列(HIV LTR)プロモーター、モロニーウ
    イルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒトアクチン、ヒトミ
    オシン、RSV、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびEBVからなる群か
    ら選択されるプロモーターである、請求項20記載の方法。
  22. 【請求項22】 自己免疫疾患に罹患しているかもしくは罹患する危険性の
    ある被験者に調節性免疫応答を誘導するための方法であって、製薬上許容される
    担体中の、自己抗原からの少なくとも1つのエピトープをコードする核酸構築物
    を、免疫調節に有効な量、該被験者に投与することを含み、該エピトープの発現
    が調節性の免疫応答を提供する、方法。
  23. 【請求項23】 該自己免疫疾患が、多発性硬化症(MS)、慢性関節リウマチ
    、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、強皮症、重症筋無力症、および潰瘍性
    大腸炎からなる群から選択されるものである、請求項22記載の方法。
  24. 【請求項24】 該エピトープがインスリンB鎖由来である、請求項22記
    載の方法。
  25. 【請求項25】 該エピトープがミエリン塩基性タンパク質由来である、請
    求項22記載の方法。
  26. 【請求項26】 該構築物がプラスミド骨格を含むものである、請求項22
    記載の方法。
  27. 【請求項27】 生物学的応答調節剤をコードする核酸配列をさらに含む、
    請求項22記載の方法。
  28. 【請求項28】 該生物学的応答調節剤がサイトカイン、ケモカイン、イン
    ターフェロン、およびインターロイキンからなる群から選択されるものである、
    請求項27記載の方法。
  29. 【請求項29】 該生物学的応答調節剤がIL-1(αもしくはβ)、IL-2、IL-3
    、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、M-CSF
    、G-CSF、LIF、LT、TGF-β、γIFN(またはαもしくはβIFN)、TNFα、BCGF、CD2
    、またはICAMからなる群から選択されるものである、請求項22記載の方法。
  30. 【請求項30】 該核酸構築物が調節エレメントをさらに含む、請求項22
    記載の方法。
  31. 【請求項31】 該調節エレメントが、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモー
    ター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列(HIV LTR)プロモーター、モロニーウ
    イルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒトアクチン、ヒトミ
    オシン、RSV、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびEBVからなる群か
    ら選択されるプロモーターである、請求項30記載の方法。
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