JP2003344600A - X線顕微鏡性能試験方法および装置 - Google Patents

X線顕微鏡性能試験方法および装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料のX線像を電子像に変換して観察する新
規なX線顕微鏡において性能評価を簡便に行う性能試験
方法と装置を提供する。 【解決手段】 電子イメージ拡大機構1に対向する位置
に電子銃20を備え、電子銃と試料ホルダー3の間に電
界シールドを施した電子通路40を形成して、電子銃2
0から放出される電子ビームの走行軸を電子イメージ拡
大機構1の中心軸に合致するように調整し、試料ホルダ
ー3の中心軸位置を電子ビーム走行軸に合わせることに
より位置調整し、さらに、試料ホルダー3の中心軸上に
電子線X線変換膜を設置し定位置に試料スライドをセッ
トして、電子銃20の電子ビームをX線に変換して照射
し、発生する電子を加速し拡大して電子線検出素子で測
定することにより、拡大倍率と解像度を計測する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線を照射して形
成される陰影に対応して発生する電子線を観察するよう
にしたX線顕微鏡において電子イメージ拡大機構の調整
と性能試験を行う方法とそれに用いる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、X線顕微鏡は、波長が短く透過力
の強いX線を光源として物体の形状や内部微細構造等の
情報を得ることができる。しかし、フレネル・ゾーンプ
レートや斜入射ミラーなど像を拡大するためのX線結像
素子は収束力が小さくレンズとしての焦点距離が長くな
るため装置が大きくなり像拡大率を調整することが困難
であること、集光効率が悪いため放射光のような強力な
X線光源が必要であることなどの問題があった。
【0003】そこで、本願出願人は既に特願2001−
235678などにより、光電変換面に試料を密着させ
て背後からX線を照射し光電変換面から発生する電子を
引き出し拡大して電子検出素子面に結像させて可視像と
して提示する新しい形式のX線顕微鏡装置を開示してい
る。開示されたX線顕微鏡は、図8の原理説明図および
図9の装置断面図に示すように、光電変換膜の裏面に試
料を近接して配置してX線を照射し、試料を透過したX
線を光電変換素子により電子に変換し、光電変換面とア
ノードの間に電界を生じさせて光電変換面表面に発生し
た電子を引出して加速し、電磁コイルを用いた電子イメ
ージ拡大装置により拡大して蛍光面やCCD素子面など
電子線検出素子面に投影して、可視像化するものであ
る。
【0004】X線は装置外部に設けられたレーザ発生装
置で放射されるレーザ光を導いて透明窓から試料室内に
設けられたX線ターゲットに照射して発生させる。発生
するX線は、適宜なフィルタを通して波長選択した上で
試料に照射する。ターゲット位置はターゲット移動回転
機構により調整することができる。X線ターゲットはレ
ーザ光を照射した部分が消耗するので、適宜回転移動す
ることにより新しい部分がレーザ光に当たるようにす
る。また、試料の位置は試料移動機構により調整するこ
とができる。
【0005】開示装置は、収束力の弱いX線光学系を利
用するものと異なり、十分収束力のある電子イメージ拡
大装置を使用するため装置全体が小型になり、試料を光
電変換面に密着してセットするのでぼけのないX線透過
像を得ることができる。また、開示装置では試料を透過
したX線を光電変換素子で電子に変換するので、観察対
象の部位やX線波長によるX線吸収能の差を反映した濃
淡画像を作成することができ、また軟X線による観察も
可能である。このため、取得するX線像の情報量が格段
に増大し、生体試料の観察を行うこともできるようにな
った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記新規のX線顕微鏡
では、X線像を電子像に変換し、高圧静電界を作用させ
てこの電子像から電子を引出し加速して、対物レンズと
投射レンズを組合わせた電子イメージ拡大機構により拡
大して検出面に投影する。イメージの拡大は電子流に対
する磁界の作用によるため、拡大機構の性能確認のため
には電子を使う必要がある。このX線顕微鏡では、X線
を光電変換面に照射して電子に変換するが、像の拡大率
が極めて高く、またX線は目に見える形で把握すること
が難しく、しかも細いビーム状に成形することができな
いので、光電変換面を介在させた状態で電子イメージ拡
大機構のアライメントを行うことは極めて困難であっ
た。
【0007】また、X線を発生させるために自由電子レ
ーザ装置など強力なレーザ光発生装置を運転しなければ
ならないので、製造工程や製造場所における性能試験工
程、設置場所における組立て調整工程や保全作業などに
おいて、高性能レーザ光発生装置を同時に運転しなけれ
ばならないことの不便は大きいものがある。そこで、本
発明が解決しようとする課題は、上記開示されたX線を
照射して形成される陰影に対応して発生する電子線を観
察するようにした新規のX線顕微鏡において、光軸調整
と拡大倍率や解像度などの性能評価試験を簡単に行う方
法とそれに用いる機構を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記開示された新規のX
線顕微鏡における上記課題を解決するため、本発明の性
能試験方法は、X線顕微鏡の電子イメージ拡大機構に対
向する位置に電子銃を備え、電子銃と試料ホルダーの間
に電界シールドを施した電子通路を形成して、電子銃か
ら放出される電子ビームの走行軸を電子イメージ拡大機
構の中心軸に合致するように調整し、試料ホルダーの中
心軸位置を電子ビーム走行軸に合わせることを特徴とす
る。
【0009】さらに、上記方法により電子イメージ拡大
機構のアライメントを取った後で、試料ホルダーの中心
軸上に電子線X線変換膜を設置し定位置に試料スライド
をセットして、電子銃から発射される電子ビームをX線
に変換して試料スライドに照射し、試料スライドで発生
する電子を引出して加速し、電子イメージ拡大機構に入
射させて電子線検出素子で測定することにより、拡大倍
率と解像度を計測することができる。電子銃は、電子イ
メージ拡大機構としてはほぼ同じ構造を有する電子顕微
鏡に用いられるものと同じ形式のものを利用することが
できるので、新たに設計製作する必要はない。
【0010】本発明の性能試験方法では、電子銃から放
射される電子ビームを用いて電子イメージ拡大機構のア
ライメントを行うため、電子線検出素子に投影された電
子ビームの強度分布を観察することにより、電子ビーム
の軸が電子イメージ拡大機構の電子線走行軸に一致する
ように位置調整することが簡単にできる。こうして確定
した電子ビーム軌道に試料ホルダーの中心軸を合わせて
試料スライドをセットすれば、測定対象試料を電磁レン
ズで構成されるイメージ拡大機構の光軸位置に配置する
ことができる。
【0011】電子ビームの軸位置は、走行路中にビーム
センサを挿入して確認することができる。なお、試料室
内には試料ホルダーをカソードとして利用するために外
部の電源から高電圧を供給する電線が配置されるので、
電子ビームに対する電場の影響を抑えるため、電子通路
は導電体で囲んで電界シールドを施すことが好ましい。
【0012】本発明の性能試験方法では、さらに、試料
ホルダーの試料スライドより上流位置に金膜などの電子
線X線変換素子を配置し、電子銃からの電子ビームを照
射してX線を発生させ、このX線を光電変換面に照射さ
せて電子を発生させ、この電子を電子イメージ拡大機構
で拡大して電子線検出素子で検出することにより、実際
に使用する形態に近い状態で電子イメージ拡大機構の実
物と像の関係を測定することができる。
【0013】試料スライドの中央位置に、大きさの決ま
った標準サンプルを固定して測定すれば、電子線検出素
子で鮮明な像を得られるように位置調整することにより
正しい実物位置を知ることができ、また、得られた像の
大きさから拡大倍率を、像の鮮明さから解像度を評価す
ることができる。なお、電子イメージ拡大機構の倍率は
大きいため、光軸から少しずれただけでも基準サンプル
を見つけだして位置修正することが難しい。しかし、予
め電子ビームを用いて確定した光軸位置にターゲットを
配置するようにすれば、比較的容易にターゲット位置調
整を行うことができる。
【0014】また、本発明の性能試験装置は、X線を照
射して形成される陰影に対応して発生する電子像を拡大
して観察するようにしたX線顕微鏡において、試料室の
電子イメージ拡大機構に対向する背面に電子銃を備え、
電子銃の電子ビーム通路を囲う保護管を備えることを特
徴とする。保護管は、電界シールドを有し少なくとも一
部が可撓性を持ち先端に電子イメージ拡大機構の前面に
設置される試料ホルダーに係合して固定する係合具を有
して、試料ホルダーに対して脱着可能になっている。
【0015】なお、保護管の一部はバネ部材あるいは蛇
腹機構など可撓性を有する構造にすることが好ましい。
電子通路の少なくとも一部を可撓性を持った筒体で形成
すると、容易に試料ホルダーを電子ビーム軸の位置に調
整することができる。保護管の先端は、試料ホルダーの
中心軸孔に嵌入して固定されたボスの外径に嵌合して固
定されるようにする。なお、このボスは中心軸に沿って
電子が走行する孔が貫通していて、試料ホルダーに挿入
する先端に、金膜を固定するジグを備えている。また、
X線ターゲットを設置するときは試料ホルダーから引き
抜くことができる。
【0016】性能試験時には保護管を試料ホルダーに装
着して、電子銃から放出する電子ビームの走行軸を電子
イメージ拡大機構の中心軸に合致するように調整して、
試料ステージにより試料ホルダーの中心軸位置を電子ビ
ーム走行軸に合わせることができる。さらに、試料ホル
ダーの中心軸上に電子線X線変換膜を設置するジグを備
えることが好ましい。性能試験時には、定位置に試料ス
ライドをセットして、電子ビームを発生させ、電子線X
線変換膜でX線に変換して試料スライドに照射し、発生
した電子像を電子イメージ拡大機構で拡大して電子線検
出素子で測定することにより、拡大倍率と解像度を評価
することができる。
【0017】なお、電子銃の直ぐ下流位置に磁界レンズ
によるコンデンサレンズと偏向コイルを備えて、電流調
整により、電子ビームを細化して質を向上させ走行軸を
調整して電子イメージ拡大機構の光軸に一致させるよう
にすることが好ましい。顕微鏡による観察には、試料ホ
ルダーの入り口付近にX線ターゲットを配置し、このタ
ーゲットに装置外から案内されるレーザ光を照射してX
線を発生させ、これを試料に照射して光電変換面上にX
線の影を形成し、発生する電子像を観測する。このた
め、試料観測時には、電子銃で発生する電子ビームを覆
う保護管を除去して、代わりにX線発生装置を配置する
必要がある。そこで、電子通路の保護管は、導電性材料
からできた管をいくつか入れ子型に組立てて、不要時に
は試料室内で小さく畳んでおけるようにすることが好ま
しい。保護管が入れ子になっている場合は、不要なとき
には畳んだだけで簡単に、X線ターゲットなど必要な部
品をセットすることができる。
【0018】なお、電子銃と試料室を区切る位置に電子
通路を遮断すると共に電子銃側を真空に吸引することが
できるセパレートバルブを設置して、試料室を開放する
ときに遮蔽して電子銃の真空を維持し、試料室を真空に
するときには電子銃と一緒にセパレートバルブの方から
も電子通路の気体を排気できるようにすることが好まし
い。電子銃の内部は高真空に保持する必要があるため、
一旦真空を破ると使用できる状態にするために極めて長
い時間が掛かる。このため、通路を遮断して電子銃内の
真空を維持できるようにすることは、立ち上げに必要な
時間を節約して稼働率を向上させる利益がある。また、
電子通路となる保護管は細く長いため真空化するために
時間が掛かるが、セパレートバルブの排気口に試料室の
真空排気系を接続して保護管の根元から真空引きするこ
とにより保護管内部を迅速に高真空化することができ
る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下実施例を用いて本発明を詳細
に説明する。本実施例のX線顕微鏡性能試験方法と装置
は、光電変換面に試料を密着させて背後からX線を照射
し、光電変換膜中に発生する電子を引き出し拡大して電
子検出素子面に結像させて可視像として提示するように
したX線顕微鏡装置に適用する。図1は、本実施例のX
線顕微鏡性能試験装置部分を示す断面図、図2は性能試
験におけるアライメント方法を説明するブロック図、図
3と図4は性能試験装置に使用する部品を説明する断面
図である。
【0020】本発明の対象とするX線顕微鏡装置は、電
子イメージ拡大機構1の前面に試料スライドの光電変換
面から電子を引き出して加速する電界を形成する電子加
速空間2を有する。電子加速空間2は試料ホルダー3と
試料ホルダーを囲うアノード電極4により形成され、試
料ホルダー3を陰極として−15〜−20kVの負電圧
を印加し、陰極に対向するアノード4をアース極として
電子加速空間2内に電界を形成する。アノード4の裏側
に近接して電磁コイル5のポールピース6,7を配置
し、電子加速空間2内に対物レンズの磁界を形成する。
図2にも示すように、対物レンズの下流にはさらに投射
レンズが配置され、拡大された電子イメージは電子検出
素子面に結像して可視化され、観察者に提供される。
【0021】試料は、試料ホルダー3のアノード4に対
向する先端に取り付けられる。X線顕微鏡は、試料交換
をするための空間として試料室10を備え、試料交換時
には投射レンズ以降の空間を遮蔽して真空を維持した状
態で、試料室10の蓋11を開け大気開放して試料ステ
ージ8から試料ホルダー3を外し、観察済みの試料を取
り外して新しい試料スライドを取り付けた試料ホルダー
3を試料ステージ8に戻して蓋11を閉め、試料室10
を真空に引いてからX線を照射して拡大画像を観察す
る。
【0022】本実施例の性能試験装置は、試料室10の
電子イメージ拡大機構1と対向する端面にセパレートバ
ルブ30を挟んで電子銃20を取り付けたものである。
電子銃20は、陰極21とウェーネルト22、陽極23
を備え、高真空下でウェーネルト22に−25kVまで
の負電圧を印加して陰極21に発生する熱電子を加速し
ビームとして放射できるようになっている。電子銃20
から放射された電子ビームは、セパレートバルブ30の
開口と電子通路を通って試料ホルダー3に入射する。
【0023】セパレートバルブ30の直ぐ下流の位置に
コンデンサレンズ24が設けられ、さらに1対の軸調偏
向コイル25が設けられている。コンデンサレンズ24
は、電子通路の周りを囲むように設けられた電磁コイル
26のヨークの一部を環状に切断してポールピースを介
装した部分に形成され、電子通路内の電子ビームを細化
しビームの質を向上させる。また、軸調偏向コイル25
は、電子ビームの走行方向を2次元的に調整するもので
ある。さらに、電子銃20自体の位置は、筐体の外に軸
が交わるように設けられている微動つまみ27を操作す
ることにより、軸に垂直な面内で調整することができ
る。
【0024】軸調偏向コイル25の下流には、伸縮可能
な入れ子型保護管40が設けられていて、電子通路を保
護する筒体を試料ホルダー3まで延伸できるようになっ
ている。入れ子型保護管40は、図3に例示するよう
に、複数の筒体が重なって互いに鈎部で係合して固定す
るようになっている。たとえば、図3の断面図に示した
ものは、3個の導電性筒体からなる。一番太い第1筒体
41は先端に内側に曲がった鈎部を備える。第2筒体4
2は第1筒体の内側に収納されるようになっていて、根
元に第1筒体の鈎部に係合する外側に曲がった鈎部を備
え、先端に内側に曲がった鈎部を備える。
【0025】また、第3筒体43は弦巻バネで構成され
た可撓性筒体で、第2筒体の内側に収納されるようにな
っていて、根元と先端にバネを固定するピース44.4
5を備え、根元のピース44に第2筒体先端の鈎部に係
合する外側に曲がった鈎部を備え、先端のピース45に
試料ホルダー3に嵌入して固定されるマウスピース46
の先端に固定するチャック機構を備える。マウスピース
46と試料ホルダー3の内壁の間には、案内ピース47
が介装されている。
【0026】なお、セパレートバルブ30は、図4に概
念図として表示したように、電子銃20に開口する穴3
1と下流の電子通路に開口する穴32と真空配管に接続
する排気口33が設けられた筐体に弁体34を組込んだ
装置である。弁体34は駆動機35に駆動される弁軸3
6によって中心軸に向って往復動する。弁体34は側部
にピンを備え、弁軸36の先端に設けた枠体37の側帯
に斜めに設けられた長穴38に嵌合するようになってい
る。
【0027】弁体34が弁軸36により中心軸方向に押
出されて、ストッパーに当ると、その後はピンが長穴3
8に案内されて中心軸に沿って移動し、試料室10に繋
がる開口31を塞ぐことができる。弁体34が開口31
の弁座に当接する部分にはOリング39が設けられてい
て、高い気密を維持することができる。このように、セ
パレートバルブ30は、簡単な機構を用いて駆動機35
で弁軸36を往復動させるだけで電子通路を開閉し、閉
鎖時には電子銃内空間を気密に封鎖することができる。
【0028】X線顕微鏡装置の性能試験中など電子銃を
稼動させているときは、弁体34は図中点線で示すよう
に中心軸位置から後退して電子通路を開通させる。ま
た、試料室10を開放するときは、弁体34を中心軸位
置に押出して試料室側の開口31を塞ぐことにより、電
子銃内の真空が低下することを防ぐ。なお、X線顕微鏡
を使用しているときは電子銃20を使用しないが、電子
銃内の真空が低下すると次に使用するときに真空にする
ための時間が無駄に必要となるので、セパレートバルブ
30を閉止して電子銃内の真空を維持しておくことが好
ましい。
【0029】さらに、電子銃20を使用しようとすると
きは、セパレートバルブ30を閉めたまま真空引きして
下流側の電子通路内を十分排気し、ほぼ同圧になってか
らセパレートバルブ30を開放するようにする。電子通
路は狭隘なので真空にするため時間がかかりがちである
が、セパレートバルブ30から排気すると細管の根元か
ら直接的に排気するため比較的短時間で効率よく真空化
することができる。
【0030】本実施例の性能試験装置を用いてX線顕微
鏡のアライメントを行うときは、図2に示すように、試
料スライドを取り外した状態で、電子銃20から発射さ
れる電子線を対物レンズや投射レンズで構成される電子
イメージ拡大機構1に直接入射させるようにして、ビー
ム位置センサを用いて電子銃からの電子ビームを試料ホ
ルダー3の孔を通って電子イメージ拡大機構1の軸に合
わせる。電子銃20の軸合わせは、コンデンサレンズ2
4や軸調偏向コイル25、さらに微動つまみ27により
行うことができる。
【0031】電子イメージ拡大機構1のアライメントが
よければ、画像観察部の光軸位置に最も強い電子分布が
観察される。予定される位置に最強点が無いときは、各
要素の光軸を修正して電子イメージ拡大機構全体の光軸
調整を行う。
【0032】電子加速空間に強い電界を生成させる場合
は、試料ホルダー3に−15〜−20kV程度の強い負
電圧を印加するため、電源供給電線が配置される試料室
10の内には強い電界が形成され、電子線がこの電界に
晒されると軌道が乱れることになる。本実施例の性能試
験装置では、電子銃20から放射される電子の軌道に電
界シールドをかけているため、電子ビームは直線を保持
して正確に電子イメージ拡大機構に到達する。
【0033】次に、電子イメージ拡大機構の軸方向の調
整を行いX線顕微鏡としての拡大倍率や解像度を評価す
るために、試料のセット位置を確定しなければならな
い。このため、X線顕微鏡は実地の測定時と同様に試料
位置から電子線が発生するようにする必要がある。そこ
で、本実施例の性能試験方法は、図5に示すように、軌
道中に電子線X線変換素子を置き基準試料を試料ホルダ
ーにセットして、電子銃20から放出される電子線を電
子線X線変換素子によりX線に変換して基準試料に照射
し、発生する電子を加速し拡大して画像観察部に投射さ
せて、X線顕微鏡の性能評価を行えるようにする。
【0034】本実施例の性能試験装置は、図6の要部断
面図に示すように、試料ホルダー3の中心軸孔に案内ピ
ース47を挿入し、案内ピース47にマウスピース46
を挿入して、このマウスピース46の尻に入れ子型保護
管の第3筒体43の先端側バネ固定ピース45を止める
ようになっている。さらに、このマウスピース46の奥
側の先端部に金膜などの電子線X線変換膜50を装着す
ることができるようになっている。図7は、電子線X線
変換膜50の装着部分を拡大して示した図である。マウ
スピース46の先端部には凹みが形成されていて、電子
線X線変換膜50を挿入して、中央に穴の開いた栓49
で押さえられるようになっている。
【0035】なお、試料ホルダー3は試料ステージ8に
脱着可能で、導電性物質で形成された挿入孔壁9を介し
て負電圧が供給されるとカソードとなる。また、電子線
X線変換膜50はマウスピース46と案内ピース47を
介して筐体アースに接続されていて電子銃20の電位に
対して高い電位に保持されるため、電子銃20から発射
される電子線が衝突しやすくX線発生効率が高い。な
お、負電位に保持される試料ホルダー3に対して電気的
接触をしないようにするため、案内ピース47は絶縁性
物質で構成されている。案内ピース47の側面には軸方
向に排気溝48を設けて、試料ホルダー3内部の排気を
促進するようにしてある。
【0036】性能試験を行うときは、試料ホルダー3先
端に基準試料を載せた光電変換面60をセットしてカソ
ードを兼ねるキャップ61で止め、さらに電子線X線変
換素子50をマウスピース46の先端に配置し、カソー
ド61とアノード4の間に電圧を掛けて電子加速用電界
を形成し、対物レンズと投射レンズで構成される電子イ
メージ拡大機構1を稼動させる。
【0037】その上で、電子銃20を作動させると、電
子ビームがX線に変換して、基準試料に照射し光電変換
面60から電子を放出させるので、放出された電子を電
子加速空間2で加速して電子イメージ拡大機構1で拡大
して画像観察部に投射する。主として試料60の軸方向
位置を調整して、画像観察部に鮮明な基準試料の画像が
形成されるようにすると、電子加速空間2の作用を含め
た電子イメージ拡大機構1の位置調整が完了する。適正
な位置が定まったら、試料ホルダー3の全長を適合する
値に決めて、試料ホルダー3の本体と先端部のネジ咬合
を固定する止めナット62を締め込んで固定することに
より、目的の試料を実地に測定する時の再現性を確保す
ることができる。さらに、画像観察部で取得する画像の
サイズを基準試料の大きさと比較することにより拡大倍
率を正確に知ることができ、画像の鮮明さから解像度を
評価することができる。
【0038】なお、本実施例では、電子銃から放射され
る電子ビームを入れ子型保護管で電界シールドしたが、
単に脱着可能な保護管など別の形式のシールド方法を用
いてもよい。また、電子銃と試料室を仕切るセパレート
バルブに真空配管を接続して狭隘な電子通路を効率よく
排気できるようにしたが、このような工夫が無くても電
子線を使って簡便に性能試験をすることができることは
いうまでもない。なお、試料ホルダーを電子加速空間に
対して調整可能に固定するために筐体壁に固定された試
料ステージを使用しているが、たとえば試料室内に3次
元的に位置の調整をすることができるような移動機構を
備えるなど、他の手段により位置調整するようにしても
よい。
【0039】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のX線顕微鏡
性能試験方法および装置を用いれば、X線を照射して形
成される電子像を観察するようにしたX線顕微鏡の製造
現場および使用現場において、より簡便に電子イメージ
拡大機構部分の調整および性能評価をすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例のX線顕微鏡性能試験装置部
分を示す断面図である。
【図2】本実施例の性能試験におけるアライメント方法
を説明するブロック図である。
【図3】本実施例に使用する入れ子型保護管の断面図で
ある。
【図4】本実施例に使用するセパレートバルブの断面図
である。
【図5】本実施例の性能試験における性能評価方法を説
明するブロック図である。
【図6】本実施例のX線顕微鏡性能試験装置の要部断面
図である。
【図7】本実施例における電子線X線変換膜装着部分の
拡大断面図である。
【図8】本発明を適用する新規なX線顕微鏡の構成を説
明する概念図である。
【図9】本発明を適用する新規なX線顕微鏡の構造を説
明する断面図である。
【符号の説明】
1 電子イメージ拡大機構 2 電子加速空間 3 試料ホルダー 4 アノード電極 5 電磁コイル 6,7 ポールピース 8 試料ステージ 9 導電性挿入孔壁 10 試料室 11 蓋 20 電子銃 21 陰極 22 ウェーネルト 23 陽極 24 コンデンサレンズ 25 軸調偏向コイル 26 電磁コイル 27 微動つまみ 30 セパレートバルブ 31 電子銃側開口 32 電子通路側開口 33 排気口 34 弁体 35 駆動機 36 弁軸 37 枠体 38 長穴 39 Oリング 40 入れ子型保護管 41 第1筒体 42 第2筒体 43 第3筒体 44,45 バネ固定用ピース 46 マウスピース 47 案内ピース 48 排気溝 49 栓 50 電子線X線変換膜 60 光電変換面 61 キャップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 貞夫 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内 (72)発明者 室 幹雄 千葉県野田市二ツ塚118番地 川崎重工業 株式会社野田工場内 (72)発明者 矢田 慶治 宮城県仙台市泉区北中山4−25−11 Fターム(参考) 2G088 EE27 EE30 FF02 GG21 GG25 JJ01 JJ09 JJ22 JJ24 JJ25 KK32 LL12 LL13 5C030 AA08 AA09

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線顕微鏡の電子イメージ拡大機構に対
    向する位置に電子銃を備え、該電子銃と該電子イメージ
    拡大機構の前面に設置される試料ホルダーの間に電界シ
    ールドを有する電子通路を形成して、該電子銃から電子
    ビームを放出し、該電子ビームの走行軸を前記電子イメ
    ージ拡大機構の中心軸に合致するように調整して、前記
    試料ホルダーの中心軸位置を前記電子ビーム走行軸に合
    わせるようにすることを特徴とする、X線を照射して形
    成される陰影に対応して発生する電子像を拡大して観察
    するようにしたX線顕微鏡における性能試験方法。
  2. 【請求項2】 さらに、前記試料ホルダーの中心軸上に
    電子線X線変換膜を設置し定位置に試料スライドをセッ
    トして、前記電子銃から電子ビームを発射させ、該電子
    ビームをX線に変換させて該試料スライドに照射し、該
    試料スライドで発生する電子像を前記電子イメージ拡大
    機構で拡大して電子線検出素子で測定することにより、
    拡大倍率と解像度を評価するようにしたことを特徴とす
    る請求項1記載の性能試験方法。
  3. 【請求項3】 X線顕微鏡の試料室の電子イメージ拡大
    機構に対向する背面に電子銃を備え、該電子銃の電子ビ
    ーム通路を囲う保護管であって電界シールドを有し少な
    くとも一部が可撓性を持ち先端に前記電子イメージ拡大
    機構の前面に設置される試料ホルダーに係合して固定す
    る係合具を有し該試料ホルダーに脱着可能な保護管を備
    えることを特徴とした、X線を照射して形成される陰影
    に対応して発生する電子像を拡大して観察するようにし
    たX線顕微鏡における性能試験装置であって、性能試験
    時には該保護管を該試料ホルダーに装着して、前記電子
    銃から放出する電子ビームの走行軸を前記電子イメージ
    拡大機構の中心軸に合致するように調整して、前記試料
    ホルダーの中心軸位置を前記電子ビーム走行軸に合わせ
    ることができる性能試験装置。
  4. 【請求項4】 さらに、前記試料ホルダーの中心軸上に
    電子線X線変換膜を設置するジグを備えることを特徴と
    し、性能試験時には定位置に試料スライドをセットし
    て、前記電子ビームをX線に変換して該試料スライドに
    照射し発生した電子像を前記電子イメージ拡大機構で拡
    大して電子線検出素子で測定することにより、拡大倍率
    と解像度を評価することができるようにしたことを特徴
    とする請求項3記載の性能試験装置。
  5. 【請求項5】 前記電子銃の直ぐ下流位置に磁界レンズ
    によるコンデンサレンズと偏向コイルを備えることを特
    徴とする請求項3または4記載の性能試験装置。
  6. 【請求項6】 前記保護管は、導電性材料からできた2
    個以上の管を入れ子型に組立てたものであることを特徴
    とする請求項3から5のいずれかに記載の性能試験装
    置。
  7. 【請求項7】 前記保護管は、少なくとも一部の管が可
    撓性を有することを特徴とする請求項3から5のいずれ
    かに記載の性能試験装置。
  8. 【請求項8】 前記電子銃と前記試料室を区切る位置に
    電子通路を遮断すると共に電子銃側を真空に吸引するこ
    とができるセパレートバルブを設置することを特徴とす
    る請求項3から7のいずれかに記載の性能試験装置。
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JP2020071209A (ja) * 2018-11-02 2020-05-07 神津精機株式会社 寸法測定装置及び寸法測定方法

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