JP3765781B2 - X線顕微鏡の像調整装置と像調整方法 - Google Patents

X線顕微鏡の像調整装置と像調整方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線顕微鏡の像調整方法と装置に関し、特にX線を試料に入射することで生じる透過像を光電変換面で光電変換し電子線像として電子結像系で結像させるX線顕微鏡における像調整方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線顕微鏡は、波長が短く透過力の強いX線を光源として物体の透過像を得ることができる。
従来のX線顕微鏡には、点X線源から発散するX線光束中に試料を配置して後方に配置したX線検出器で画像化する投影拡大型X線顕微鏡、X線源からのX線をフレネルゾーンプレートや多層膜鏡などの光学素子で試料上に集光し、透過したX線を同様の光学素子でX線検出器に投影して画像化する結像型X線顕微鏡などがある。
【0003】
なお、特許第2844703号公報には、X線顕微鏡の大きな特徴となる生体観察をより容易にすることができる小型のX線顕微鏡が開示されている。ここで開示されたX線顕微鏡は、X線源からのX線を凹面非球面多層膜鏡コンデンサーによって単色化して試料に集光し、結像光学系に位相ゾーンプレートを用いて光子計数撮像法により生体試料を観察するようにしたものである。当該公報には、細胞を痛めないなどの条件から最大検出光子数を25から200に収まる程度のX線照射線量を選択すべきことが示されており、適当な条件下で使用することにより小型な装置でも高品質のX線画像を得ることができるとされている。
【0004】
しかし、従来のX線顕微鏡には、X線が屈折しにくいため拡大倍率を大きくすることが難しいという問題があった。
この問題を解決するものとして、本願出願人が特願2001−235678により開示したX線画像を電子線画像に変換した上で電子結像系で拡大するようにしたX線顕微鏡がある。こので線顕微鏡は、X線透過像を光電変換面で電子線像に変換し電子イメージ拡大装置を用いて電子線可視化装置に投影して観察する方式である。電子線は比較的容易に屈折するため高倍率の結像系を形成することができるので、複雑な試料処理や像可視化処理を行わないで、X線透過像を光学顕微鏡以上に大きく拡大して対象物のX線透過像を詳細に観察することができる。特に、電子顕微鏡では不可能な生体などウェットな試料についても観察ができるという顕著な性質を有効に活用することができるため、このX線顕微鏡は研究現場から大きな期待が寄せられている。
【0005】
しかし、X線顕微鏡を的確に利用するためには、像の鮮明度や倍率など像調整が重要であるが、X線発生器の出力を過大にしたくないことや光電変換面の効率が低いことなどにより、試料観察のために照射するX線量では十分な電子線量を得ることができない。電子線可視化装置で像が明確に見えるようにするためにはたとえば数時間の露光が必要になるほど長時間にわたって電子線を蓄積しなければならない場合もある。したがって、電子結像系の調整は、長時間待って結像状態の観察をし、その結果に基づいて装置の微調整をするという時間のかかる作業を、試行錯誤法により繰り返し行う手法に頼らざるを得ず、極めて長い時間を要する作業となっていた。
このため、電子結像系の像調整作業が、X線顕微鏡観察実験の効率を低下させる主因となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、X線を試料に入射することで生じる透過像を光電変換面で光電変換し電子線像として電子結像系で結像させるX線顕微鏡において、より簡単に電子結像系の像調整を行う方法と装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のX線顕微鏡の像調整方法は、光電変換面前の試料位置に標準試料を配設し、電子発生装置を出力ビームが標準試料に照射する位置に配置して、電子発生装置から放射される電子線を標準試料に照射して得られる電子線像を用いて結像系の調整を行うことを特徴とする。
なお、像調整は電子線とX線を一緒に標準試料に照射して行うようにしてもよい。
標準試料には所定のパターンがグリッドの形で刻まれている。この標準試料に電子線を照射するとグリッドを通過して所定のパターンになった電子線が光電変換面を介して電子結像系に進入し拡大して電子線検出装置で画像化する。画像の状態から電子結像系の状態を知ることができる。
【0008】
光電変換面は、電子が入射すると2次電子を放出するが、この現象は光電変換より効率が高い。また、電子銃などの電子発生装置は、X線変換電子線と比較すると極めて大量の電子を発生することができるので、電子線検出装置において迅速にたとえば数分から数10分間で画像化され、装置調整の結果として得られる像が短時間で検査できる。したがって、像調整は極めて簡単に実施することができる。
【0009】
レーザプラズマX線を用いたX線顕微鏡では、レーザが照射するX線発生ターゲットが試料の直前の位置に配置されているので、電子線を用いた像調整を行うときにはX線発生ターゲットを待避させて電子発生装置からの電子線が試料に当たるようにする。
また、シンクロトロン放射X線を用いたX線顕微鏡では、X線ビームが光軸上を直進して試料に当たるようになっており、しかもシンクロトロン放射をするシンクロトロンや自由電子レーザ装置を移動させることは困難であるので、像調整に用いる電子線を光軸から外れた方向から標準試料に当てるようにすることが好ましい。
【0010】
さらに、X線ビームが光軸上を直進して試料に当たるようになったX線顕微鏡では、光電変換面の前方に電子線偏向装置を備え、この電子線偏向装置で電子発生装置から放射される電子線を偏向させて、光電変換面の全面に配置される標準試料に照射するようにしてもよい。
電子線偏向装置は、電界もしくは磁界を用いて、電子発生装置から入射する電子線を偏向させて標準試料に当たるようにする。X線は電子線偏向装置では偏向しないので、X線透過像の観察や像調整にX線を使用するときにも、電子線偏向装置を移動する必要がない。
【0011】
また、X線顕微鏡に電子発生装置を着脱する取り付け座を設けて、電子発生装置は、像調整するときにX線顕微鏡に取り付けて使用し、不要のときには取り外すことができるようにしてもよい。
像調整用電子発生装置を共用することができるようにすれば、多数のX線顕微鏡を運転する場合の経済性が向上する。また、標準的に使用される一般型式の電子銃などを利用するようにすれば、X線顕微鏡以外の装置と共用することもできる。
【0012】
さらに、本発明の第2の像調整方法は、光電変換面の代わりに点電子源を光電変換面の位置に配置して、この点電子源から放射される電子線を用いて結像系の調整を行うことを特徴とする。
鋭い先端を持ったシリコンや金属先端に強い電界をかけると電子を放出するフィールドエミッタなどを点電子源として利用することもできる。
このような点光源を実物の位置に置けば、電子検出装置における結像状態が点像として明瞭に把握できるので、電子結像系の像調整を行うことができる。
【0013】
また、本発明のX線顕微鏡の像調整装置は、出力ビームが試料把持装置の把持する試料に照射するような位置に電子銃などの電子発生装置を配置し、試料把持装置で標準試料を支持して、電子発生装置から放射される電子線を標準試料に照射して得られる電子線像を用いて結像系の調整を行うことを特徴とする。
電子結像系として、電子顕微鏡と同様に磁界型レンズを用いることができる。
【0014】
なお、X線により光電変換面で発生する電子線像の焦点と同じ位置に電子発生装置から照射する電子ビームの焦点が結ばれるようにするためには、電子発生装置から照射する電子ビームの光電変換面におけるエネルギーがX線により発生する電子線のエネルギーと同等になるようにする必要がある。このため、電子線を用いた像調整では、標準試料が電子線エネルギーよりやや小さい値を持つ負の電位になるように電圧を引加することが好ましい。
このような構成を有する像調整装置により、上記本発明の像調整方法を実施することができる。
【0015】
X線発生装置として、レーザが照射するX線発生ターゲットを試料の前に配置したレーザプラズマX線発生装置を用いるときは、X線発生ターゲットを光軸から待避させることができるようにしておいて、像調整を行うときには、ターゲットをずらせてから電子線を標準試料に当てるようにすることが好ましい。
なお、X線発生ターゲットと光電子発生用ターゲットを隣接して一体となった回転駆動可能な筒形で形成して、像調整を行うときには、X線発生ターゲットの部分を回転軸方向に移動して光電子発生用ターゲットの部分を光軸の位置に来るように配置することができる。
【0016】
また、X線発生装置として、シンクロトロンや自由電子レーザ装置などシンクロトロン放射光発生装置を用いるときは、X線発生装置を移動させることが難しいので、電子発生装置からの電子線がX線の光軸と異なる方向から入射するような位置に電子発生装置を配設するようにしてもよい。
さらに、光電変換面のX線入射方向に電子線偏向装置を備えて、X線の光軸と異なる方向から入射する電子発生装置からの電子線を偏向させて標準試料に照射するようにすることもできる。
【0017】
X線顕微鏡の光電変換面の上流側に電子発生装置の着脱装置を備えて、像調整を行うときに電子発生装置を取り付けて使用し、不要のときには電子発生装置を取り外すことができるようにすることができる。着脱装置を設けることにより、電子発生装置を他の装置にも利用することができるようになるので、経済性が優れる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、いくつかの実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0019】
【実施例1】
図1は本発明に係る像調整装置の第1の実施例を適用した状態のX線顕微鏡を概念的に表した概念図である。
本実施例の像調整装置を設置するX線顕微鏡は、X線ビーム1を光電変換面3の前面に配置した試料2に当てて、試料2をX線が透過することにより形成されるX線透過像を、たとえば金Au薄膜とヨウ化セシウムやアンチモンセシウムの膜などで形成された光電変換面3の上に投影すると、光電変換面3がX線を受けた部分に電子が発生してX線透過像を電子像に変換することができる。
【0020】
この電子像から電子線を電界で引き出して電子顕微鏡と同様の構成を持った電子結像系4に投入すると、電子顕微鏡と同様の作用で拡大する電子線軌道6を形成し結像面5上に投影し、結像面5が各部に当たった電子線に対応する強度で発光するので拡大された電子像の可視像として提示することができる。
操作員は、結像面5で得られる拡大された電子像によって試料2のX線透過像を微細に観察することができる。
【0021】
最も簡単な結像面5は、蛍光スクリーンである。なお、画像データを機械で解析するためには、CCD素子型検出器など電子線画像を電気信号化する各種の電子検出器を利用することが好ましい。
また、鮮明なX線画像を得るためには、電子結像系4のレンズ強度や光軸7を調整して、光電変換面3で放出される電子線が結像面5上に正確に収束されるようにしなければならない。
【0022】
X線発生装置として、電子線励起X線源や放電励起X線源など各種のX線源を用いることができる。しかし、鋭い波長分布を持つ極めて強力なシンクロトロン放射光などを用いた場合でも、光電変換面3から放出される電子線量は小さく、結像面5に形成される可視化像が十分評価ができるような明るい画像になるためには電子線量の蓄積が必要でかなりの時間がかかる。
そこで、本実施例では、像調整時には、入射X線の光軸中に電子発生装置10を介装して、大流量の電子線を試料面2に照射して結像面5で蓄積する電子線量を増大し得られる画像を明るくすることにより、電子結像系4の調整結果として得られる画像の評価を迅速化して調整に掛かる時間を短縮した。
【0023】
また、試料の実物とX線透過画像の間の拡大倍率や対応位置関係についても、正確に把握する必要があるが、調整時に使用する試料2として、各部の大きさや位置関係が正確に決められた標準パターンになっているグリッドを刻んだ標準試料を使用すると、結像面5で得られるX線画像との対応が容易かつ正確に評価できる。
【0024】
電子発生装置10として、一般によく使用される電子銃を利用することができる。
電子銃は、電子放出フィラメント11、アノード12、フィラメント加熱電源13、フィラメントバイアス電源14、試料バイアス電源15を備えたもので、フィラメント11で発生しアノード12で加速された電子線16を標準試料2に入射させる。
【0025】
なお、電子銃10から入射する電子線16のエネルギーが大き過ぎると光電変換面3を透過する電子が出てくる。こうして透過した電子線は光電変換面3の位置で速度を持っているので、X線により発生する初期速度を持たない2次電子と同じ位置に像を結ばなくなる。
したがって、フィラメント11のバイアス電位と光電変換面3のバイアス電位を調整して、電子エネルギーが過大にならないようにする必要がある。このため、たとえばフィラメントバイアス電源14の供給電圧を−20kVとするときには、試料バイアス電源15の供給電圧を−16kVから−19kV程度とするなど、フィラメントバイアスとの差を小さくして電子に大きな加速を与えないように設定する。
【0026】
このように構成された像調整装置を用いれば、従来と比較して極めて短時間で効率よく、電子結像系4の焦点位置や光軸を調整し、また標準試料のパターンと結像面における像を対応させることにより拡大倍率を正確に評価することができる。
【0027】
【実施例2】
図2は本発明に係る像調整装置の第2の実施例を適用したX線顕微鏡を概念的に表した概念図である。
本実施例を適用するX線顕微鏡は、レーザプラズマX線を用いる点が第1実施例におけるものと相違する。この他の要素については第1実施例と同じなので、図1と同じ参照番号を使用して重複した説明を避けることにする。また、電子銃10には図1に示したものと同じバイアス回路が付属するが、簡単のため図2ではこのバイアス回路を省略してある。
【0028】
YAGレーザなど各種のレーザ発生装置を使用して発生させたレーザ光21を、金や黒鉛など任意の固体からなるX線発生ターゲット22に照射して表面にプラズマを発生させ、このプラズマから放射させることにより、レーザプラズマX線23を得る。
X線発生ターゲット22は使用に伴い消耗するので、円筒状に形成し、軸の周りに回転させることにより照射する位置を少しずつずらしてレーザ光がいつでも新しい部分に当たるようにして、X線出力を安定させている。
【0029】
X線発生ターゲット22は、試料と光電変換面からなる試料部8の前面に接近して設けられているため、像調整のために電子線16を試料部8に照射するときには、図中点線で示すように光軸7から待避するようにする。こうして、電子結像系4の軸上、あるいはその近傍に設置した電子銃10からの電子線16を試料部8に入射させて、電子結像系4の調整と拡大倍率の評価を効率よく行うことができる。
こうして、レーザプラズマX線を用いるX線顕微鏡に適用した第2実施例の場合でも、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0030】
【実施例3】
図3は本発明に係る像調整装置の第3の実施例を適用したX線顕微鏡を概念的に表した概念図である。
本実施例は、電子発生装置を電子結像系の軸から離れた位置に設置して、X線入射方向と異なる方向から像調整用の電子線を試料部に入射させるようにしたもので、その他の点は第1実施例におけるものと同じである。そこで、図3では図1におけるものと同じ機能を有する要素に、図1と同じ参照番号を使用して重複した説明を避けた。また、電子銃のバイアス回路は簡単のため表示を省略してある。
【0031】
本実施例の像調整装置では、入射X線1にシンクロトロン放射X線を用いたX線顕微鏡に適用するときは勿論、レーザプラズマX線を用いたX線顕微鏡においても、電子結像系光軸7の外であって試料部8を見通せる位置に電子銃10を設置してある。
電子銃10を電子結像系光軸7外に設置したので、試料観察時には試料2にX線1を照射してX線顕微鏡として使用し、像調整時には電子銃10を作動させて電子線16を標準試料2に照射し電子結像系4の調整と拡大倍率の評価を効率よく行うことができる。また、像調整時には電子線16とX線1を一緒に標準試料2に照射することにより、さらに電子線量を増加させて調整してもよい。
このように、本実施例では、機器の配置を変更しないまま試料観察と像調整を行うことができるので、作業の効率が向上する。
【0032】
【実施例4】
図4は本発明に係る像調整装置の第4の実施例を適用したX線顕微鏡の概念図である。
本実施例は、上記実施例の対象と同じX線顕微鏡の試料部の前方に電子線を偏向させる手段を設けて、別の方向から入射する電子線を電子結像系光軸上に導いて試料部に照射するようにしたものである。図4では、第1実施例におけるものと同じ機能を有する要素に、図1と同じ参照番号を使用して重複した説明を避けた。なお、図面では、バイアス回路のうち本実施例の本質に関わらない部分の表示を省略してある。
【0033】
本実施例の像調整装置は、図4に示すように、試料部8の前面に同心円弧状の電極面を持つ1対の対向電極31,32を備えた電子線偏向装置30を設けている。静電電極31,32は、それぞれ電界発生用電源34と電極バイアス電源33と接続されて、前者が正電極31、後者が負電極32になる。電界発生用電源34は負端子を電極バイアス電源33の負端子に接続し、電極バイアス電源33の正端子は、電子銃10の電源装置と共通に接地されている。
電子銃10は、静電電極31,32の電極面が対向する空間の、試料部8の反対側の開口に向かって、電子線16を放出するように配置されている。
【0034】
正電極31と負電極32の間に形成される空間には、電界発生用電源34により与えられる電位差に基づく電界が生成していて、電極面間を通過する電子線16に運動方向に垂直な等加速度を与えて偏向させ、電極間空間の開口から放出して試料部8に投射させる。
対向電極32には試料部8に対向する開口に繋がる通孔35が設けられていて、直進するX線1を通過させて試料部8に投射できるようになっている。
【0035】
電子線16を用いた像調整を行うときには、たとえば、フィラメントバイアス電源14から与えられるフィラメント電位を−20kVとするとき、電極バイアス電源33に−19kV程度の負の電圧を設定して静電電極31,32のバイアス電位を電子流の電位に対して電位差を小さくして、電子線を減速させる。すると、電極間電位差が小さくても電子線16が大きく偏向するので、短い距離で電子線軌道を十分大きく曲げて試料部8に投射させることができる。
なお、さらに静電電極31,32の形状を適当に設計することにより、電子線が試料面上に収束するような機能を持たせて、さらに効率よく電子線16を試料部8に入射させるようにすることができる。
【0036】
本実施例の像調整装置では、電子銃10の設置位置が比較的自由に選べる。電子線偏向装置30を適当に設計して、電子銃10を試料部8に近い位置に設置することで、効率よく電子線を試料に入射させることができる。
また、X線1はこれらの電子線偏向装置30で軌道が変化しないので、このまま試料観察を行ったり、像調整時に電子線と一緒に使用したりすることが可能である。
なお、本実施例では電子線偏向装置30に静電電極を用いたが、これに代えて偏向磁石を用いてもよいことはいうまでもない。
【0037】
上記第1から第4の各実施例の装置のように、電子銃などの電子発生装置10を使って像調整を行う装置では、図5に示すように、X線顕微鏡のチャンバ9に取り合いフランジ25を備えたノズル26設けて、必要なときに気密チャンバ27に収納した電子銃10をこの取り合いフランジ25に取り付けて使用するようにすることが好ましい。
電子銃などの電子発生装置10は特殊なものではないので、X線顕微鏡を複数所有している場合は勿論、時々電子銃などを使用する他の装置を所有する場合には、このノズル26を備えて電子発生装置を脱着可能にすることにより、本実施例のX線顕微鏡の像調整装置と他の装置の間で1基のあるいはいくつかの電子銃等を使い回すことができるので、経済的である。
また、像調整時以外は電子発生装置を取り外しておけるので、試料観察時における装置寸法をコンパクト化することができる。
【0038】
【実施例5】
図6は本発明に係る像調整装置の第5の実施例を適用したX線顕微鏡の概念図である。
本実施例は、上記実施例の対象と同じX線顕微鏡の試料部を待避可能に構成して、像調整するときは点状電子線源を試料部の位置に配設して調整することができるようにしたものである。図6でも、上記各実施例におけるものと同じ機能を有する要素に同じ参照番号を使用して重複した説明を避けた。
【0039】
図6に示すように、試料部8には試料と光電変換面の組の他にフィールドエミッタなどの点電子源38が設けられている。フィールドエミッタは鋭い先端を持ったシリコンや金属先端に強い電界をかけると先端から放射状に電子を放出する現象を利用するもので、先端を点電子源とみることができる。なお、カーボンナノチューブを配置してその先端から電子を放出させるものでは低電圧で使用することができて有利である。
フィールドエミッタは小さいので、試料部8に容易に組み込むことができる。
【0040】
本実施例では、試料観察時には試料部8の試料と光電変換面を電子結像系光軸7の軸上に配置し、像調整を行うときには試料と光電変換面を待避させて点電子源38を光軸7上に配置する。
酸化バリウムBaOなどで形成する熱フィラメントの先端を点電子源として配置してもよい。
点電子源38を物体位置に置いて、放射状に放出される電子線を使って電子結像系を調整すれば、像調整をほぼ理想的に行うことができる。なお、この方法では結像系の実効的な倍率を直接求めることができないので、これを必要とするときは別途、標準試料などにより倍率測定を行うことになる。
試料部8の光電変換面と点電子源の交代方法は、平行移動に限らず回転により位置変換させる方法など任意の方法を利用することができることは言うまでもない。
【0041】
【実施例6】
図7は本発明に係る像調整装置の第6の実施例を適用したX線顕微鏡の概念図、図8はここで使用される円筒ターゲットの斜視図である。
本実施例は、第5実施例の変形とも言うことができ、レーザプラズマX線を用いたX線顕微鏡において、レーザ励起電子発生装置の光電変換ターゲットをX線ターゲットと交換して電子結像系光軸上に配置できるようにしたものである。
円筒表面に軸方向に隣接してX線ターゲット47と光電子ターゲット48を形成した回転円筒体41が試料部8の前面に設置されている。
【0042】
X線ターゲット47は、金やカーボンなどで形成され,YAGレーザなどのX線励起光源42から放射されるレーザを当てるとX線1を放出する。
一方、光電子ターゲット48は酸化バリウムBaO、炭酸バリウムBaCO、テルル化カドミウムCdTeなどで形成され、YAGレーザの4倍高調波やヘリウムカドミウムHeCdランプなどの光電子発生用励起光源43から放射されるレーザを当てると光電効果により電子線16を発生する。
【0043】
X線励起光源42からのレーザと光電子発生用励起光源43からのレーザは反射鏡や偏光子などで構成したレーザ光学系44により光路が重なって同じ方向から回転円筒体41の表面の同じ位置に入射するように構成される。なお、回転円筒体41の円筒表面が結像系光軸7と交わる交点付近にレーザ光45が入射する。
回転円筒体41は、回転軸46の周りを回転して、レーザ照射により表面が荒れる前に新しい部分に移動させていつでも安定したX線1あるいは光電子線16を発生するようになっている。
また、回転円筒体41は回転軸46の軸方向に移動するようになっている。
【0044】
試料観察時には、X線励起光源42を運転してX線ターゲット47からのX線1を使ってX線透過像を観察するが、像調整時には、回転円筒体41を軸方向に移動させて光電子ターゲット48の部分がレーザ光45に当たる位置に来るようにしてから光電子発生用励起光源43を運転し、光電子ターゲット48から放射される電子線16を使用して電子結像系の像調整を行う。
本実施例の像調整装置は、機器配置の自由度が大きくなる上に、小さな改造によって構成できるのでコストダウンが可能である。また、像調整のための切り換え作業も簡単である。
【0045】
なお、上記各実施例において、試料から放出された光電子像を拡大結像させる電子結像系には、図9に示すような、電磁石による磁界型レンズを用いることが好ましい。
図9は、上段の図に磁界型レンズ51,52,53を用いた電子結像系4の配置例を示し、下段の図に結像系光軸7に沿った磁界強度Bzの変化を示す。
磁界強度Bzは、電磁石51のギャップに部分に形成される対物レンズのところで正の強磁界を生成して、放射されてくる電子束を収束してさらに逆位相方向に拡大する。この電子束は投射レンズに進入してさらに拡大して結像面5に投影される。投射レンズは2個の電磁石52,53で構成され、実際には下段図に示したように逆方向に磁界強度を有する2段のレンズで収束拡大する。
【0046】
磁界レンズは磁界の強さに応じて電子軌道を回転させるので、逆方向の磁界をかけて像の回転を防止するのである。なお、一旦、像の回転が起こらないように調整した後でレンズパラメータとして磁界強度を変えると像が回転するので、これを反対方向の磁界で相殺して新しい条件下でも像の回転を防止することができる。
なお、光軸に小径のアパーチャーを挿入すると収差が向上するが、静電型結像系ではアパーチャーがあると電界が乱れるため、アパーチャーを使用することができない。これに対して、磁界型レンズによる電子結像系では適当なアパーチャーを使用して収差をより向上させることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のX線顕微鏡における像調整装置および像調整方法により、電子結像系における電子線が増大して結像面における映像が迅速に明瞭化するので、像調整に必要な時間と手間が格段に減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図3】本発明の第3実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図4】本発明の第4実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図5】本発明の各実施例において電子発生装置を脱着可能とした態様を示す構成概念図である。
【図6】本発明の第5実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図7】本発明の第6実施例に係るX線顕微鏡の像調整装置を示す構成概念図である。
【図8】第6実施例で使用される円筒ターゲットの斜視図である。
【図9】本発明の各実施例において電子結像系を磁界型レンズで構成する態様を示す概念図である。
【符号の説明】
1 X線
2 試料、標準試料
3 光電変換面
4 電子結像系
5 結像面
6 電子線軌道
7 結像系光軸
8 試料部
9 X線顕微鏡チャンバ
10 電子発生装置、電子銃
11 電子放出フィラメント
12 アノード
13 フィラメント加熱電源
14 フィラメントバイアス電源
15 試料バイアス電源
16 電子線
21 レーザ光
22 X線発生ターゲット
23 レーザプラズマX線
25 取り合いフランジ
26 ノズル
27 気密チャンバ
30 電子線偏向装置
31 正電極
32 負電極
33 電極バイアス電源
34 電界発生用電源
35 通孔
38 点電子源
41 回転円筒体
42 X線励起光源
43 光電子発生用励起光源
44 レーザ光学系
45 レーザ光
46 回転軸
47 X線ターゲット
48 光電子ターゲット
51 対物レンズ用電磁石
52,53 投射レンズ用電磁石

Claims (14)

  1. X線を試料に入射することで生じる透過像を光電変換面で光電変換し電子線像として電子結像系で結像させるX線顕微鏡において、前記光電変換面前の試料位置に標準試料を配設し、電子発生装置を出力ビームが該標準試料に照射する位置に配置して、該電子発生装置から放射される電子線を前記標準試料に照射して得られる電子線像を用いて結像系の調整を行うことを特徴とするX線顕微鏡の像調整方法。
  2. 前記X線はシンクロトロン放射光であって、前記電子線が該X線の光軸と異なる方向から入射するように前記電子発生装置を配設することを特徴とする請求項1記載のX線顕微鏡の像調整方法。
  3. 前記光電変換面の前方に電子線偏向装置を備え、前記電子発生装置から放射される電子線を偏向させて前記標準試料に照射することを特徴とする請求項1記載のX線顕微鏡の像調整方法。
  4. 前記電子線に加えて前記X線発生装置からの前記X線を前記標準試料に入射させて結像系の像調整を行うことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のX線顕微鏡の像調整方法。
  5. 前記X線はレーザプラズマX線であって、レーザが照射するX線発生ターゲットが前記試料の前に配置されたX線顕微鏡であって、前記結像系の調整を行うときには、該X線発生ターゲットを光軸から待避させることを特徴とする請求項1記載のX線顕微鏡の像調整方法。
  6. 前記電子発生装置は像調整するときに該X線顕微鏡に取り付けて使用することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のX線顕微鏡の像調整方法。
  7. X線を試料に入射することで生じる透過像を光電変換面で光電変換し電子線像として電子結像系で結像させるX線顕微鏡において、前記光電変換面の代わりに点電子源を前記光電変換面の位置に配置して、該点電子源から放射される電子線を用いて結像系の調整を行うことを特徴とするX線顕微鏡の像調整方法。
  8. X線発生装置と試料把持装置と光電変換面と電子結像系を備えてX線を試料に入射することで生じる透過像を光電変換面で光電変換し電子線像として電子結像系で結像させるX線顕微鏡において、前記電子結像系の調整を行うために、出力ビームが前記試料把持装置の把持する試料に照射する位置に電子発生装置を備え、前記試料把持装置で支持した標準試料を該電子発生装置から放射される電子線照射して得られる電子線像を用いて結像系の調整を行うことを特徴とするX線顕微鏡の像調整装置。
  9. 前記X線発生装置は、レーザが照射するX線発生ターゲットを前記試料の前に配置したレーザプラズマX線発生装置であって、前記像調整を行うときには、前記X線発生ターゲットを光軸から待避させることができることを特徴とする請求項8記載のX線顕微鏡の像調整装置。
  10. 前記X線発生ターゲットが、光電子発生用ターゲットと隣接して一体となった回転駆動可能な筒形で形成され、前記像調整を行うときには、前記X線発生ターゲットを回転軸方向に移動して前記光電子発生用ターゲットの部分を光軸の位置に配置することを特徴とする請求項9記載のX線顕微鏡の像調整装置。
  11. 前記X線発生装置は、シンクロトロン放射光発生装置であって、前記電子発生装置は、前記電子線が該X線の光軸と異なる方向から入射するように配設されることを特徴とする請求項8記載のX線顕微鏡の像調整装置。
  12. 前記光電変換面の前方に電子線偏向装置を備え、前記電子発生装置から放射される電子線を偏向させて前記標準試料に照射することを特徴とする請求項8記載のX線顕微鏡の像調整装置。
  13. 電子発生装置の着脱装置を備えて、像調整を行うときに前記電子発生装置を該X線顕微鏡に取り付けて使用することができることを特徴とする請求項8,9,11および12のいずれかに記載のX線顕微鏡の像調整装置。
  14. 前記結像系は磁界型レンズを用いることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載のX線顕微鏡の像調整装置。
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