JP2003336742A - ピストンリング及びその製造方法 - Google Patents

ピストンリング及びその製造方法

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JP2003336742A
JP2003336742A JP2002146409A JP2002146409A JP2003336742A JP 2003336742 A JP2003336742 A JP 2003336742A JP 2002146409 A JP2002146409 A JP 2002146409A JP 2002146409 A JP2002146409 A JP 2002146409A JP 2003336742 A JP2003336742 A JP 2003336742A
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chromium carbide
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powder
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Akira Obara
亮 小原
Takuma Sekiya
琢磨 関矢
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Riken Corp
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Riken Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性及び耐焼付性に優れ、且つ相手攻撃
性の低い炭化クロム-NiCr系溶射被膜を形成したピスト
ンリングを提供することである。 【解決手段】 本発明のピストンリングはNi-Cr合金又
はNiとNi-Cr合金のマトリックス中に炭化クロム粒子が
分散した溶射皮膜を少なくとも外周側摺動面に有するピ
ストンリングであって、溶射皮膜の面積率を100%とし
たときに溶射皮膜に含まれる気孔の面積率が5%未満、
炭化クロム粒子の面積率が45〜90%、及び残部が実質的
にNi-Cr合金又はNiとNi-Cr合金からなり、炭化クロム粒
子の平均粒径が15μm以下であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関や圧縮機等
に用いるピストンリング及びその製造方法に関し、特に
少なくとも外周摺動面に溶射皮膜を形成したピストンリ
ング及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
エンジンの高出力化等の高性能化に伴い、ピストンリン
グに要求される条件はますます厳しくなり、耐摩耗性や
耐焼付性を有するピストンリングが要求されている。他
方、環境問題への配慮や自動車のランニングコスト削減
の観点からエンジンの長寿命化の要求も強く、ピストン
リングが相手材であるシリンダライナを摩耗させないよ
うな相手攻撃性の低いピストンリングが要求されてい
る。
【0003】そこで、鋳鉄材や鋼材からなるピストンリ
ング母材との結合性が高いCr3C2とNi-Cr合金を含有する
溶射皮膜を形成したピストンリングと、フェライトが多
く析出している軟質の鋳鉄材からなるシリンダライナと
の組み合わせが提案されている。特開平03-172681号に
記載のピストンリングは少なくとも外周摺動面に溶射被
膜が形成されており、この溶射被膜は20〜40重量%のNi
と60〜80重量%のCrからなるNi-Cr合金20〜40重量%
と、Cr3C2 60〜80重量%とから構成され、空孔率が3体
積%以下になっている。この場合、耐摩耗性は飛躍的に
向上するが、単純に炭化クロムとNi-Cr合金をブレンド
した原料粉末を用いて溶射するため組織が均一になら
ず、図5に示すように炭化クロムとNi-Cr合金が粗大に
分布する皮膜となる。その結果、Ni又はNi-Cr合金がシ
リンダライナに凝着し、硬質粒子である炭化クロムが被
膜中から浮き上がり、シリンダライナを摩耗させてしま
うという問題があった。
【0004】従って本発明の目的は、上記問題点を解決
し、耐摩耗性及び耐焼付性に優れ、且つ相手攻撃性の低
い炭化クロム-NiCr系溶射皮膜を形成したピストンリン
グ及びその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、平均粒径15μm以下の非常に微
細な炭化クロムとNi-Cr合金を所定の割合で造粒焼結し
た粉末を溶射用原料粉末として用い、ピストンリングの
摺動面に溶射することによって、耐摩耗性、耐焼付性に
優れ、且つ相手攻撃性の低いピストンリングが得られる
ことを発見し、本発明に想到した。
【0006】すなわち、本発明のピストンリングは、Ni
-Cr合金又はNiとNi-Cr合金のマトリックス中に炭化クロ
ム粒子が分散した溶射皮膜を少なくとも外周側摺動面に
有するピストンリングであって、前記溶射皮膜の面積率
を100%としたときに前記溶射皮膜に含まれる気孔の面
積率が5%未満、炭化クロム粒子の面積率が45〜90%、
残部が実質的にNi-Cr合金又はNiとNi-Cr合金からなり、
前記炭化クロム粒子の平均粒径が15μm以下であること
を特徴とする。
【0007】溶射皮膜の平均硬さはビッカース硬さで70
0HV0.1以上であるのが好ましく、硬さの標準偏差は200H
V0.1未満であるのが好ましい。
【0008】上記ピストンリングを製造する本発明の製
造方法は、溶射皮膜の原料を成形して造粒焼結粉とし、
造粒焼結粉を溶射することにより溶射皮膜を形成するこ
とを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】[1] ピストンリング (A) 構造 図1及び図2は、本発明の好ましい実施例によるピスト
ンリングの縦断面を示す。ピストンリング1は鋳鉄材や
鋼材等からなる母材2の外周摺動面に溶射皮膜3が設け
られている。溶射皮膜3は図1に示すように母材2の外
周に溝2aを削設し、溝2aに溶射材を埋設して形成しても
よいし、図2に示すように、溝2aを設けずにフラットな
外周面上に溶射材を盛り金して形成してもよい。溶射皮
膜3はピストンリング1の少なくとも外周摺動面に設け
られていればよく、ピストンリング1の表面全体に設け
られていてもよい。
【0010】(B) 溶射皮膜 本発明に用いる溶射皮膜は、Ni-Cr合金又はNiとNi-Cr合
金からなる金属系マトリックス中に粒状の炭化クロムが
分散して構成されている。Ni-Cr合金は母材及び炭化ク
ロム粒子との結合性が良好なため、皮膜の密着性すなわ
ち耐剥離性を向上させるとともに、耐酸化性及び耐触性
の向上にも寄与する。Ni-Cr合金はNi/Crの重量比が40
/60〜80/20からなる組成が好ましく、それによって溶
射皮膜は高温での耐酸化性が向上する。金属系マトリッ
クスがNiとNi-Cr合金からなる場合には、Ni/Ni-Cr合金
の重量比が10/90〜40/60からなる組成が好ましい。ま
た炭化クロム粒子は摺動材として適度な硬度を有するた
め、耐摩耗性及び耐スカッフィング性を向上させ、相手
攻撃性が低くしかも安価である。
【0011】溶射皮膜に含まれる炭化クロム粒子の面積
率(溶射皮膜の面積率を100%としたときの面積率)は4
5〜90%であり、好ましくは60〜80%である。炭化クロム
が面積率で45%未満であるとNiCr成分が多くなるため、
凝着摩耗を起こして相手材を多く摩耗させてしまう。ま
た90%を超えると、炭化クロム成分が多過ぎるためNiCr
が炭化クロムを保持することができなくなり、炭化クロ
ム粒子が多く脱落し、結果としてアブレシブ摩耗を起こ
して相手材を多く摩耗させてしまう。溶射皮膜に含まれ
る気孔の面積率は5%未満であり、好ましくは3%未満
である。気孔の面積率が5%以上になると皮膜と母材の
境界に酸化や腐食が起こりやすくなり、運転中に皮膜が
剥離しやすくなる。炭化クロム及び気孔以外の溶射皮膜
の残部は実質的にNi-Cr合金又はNiとNi-Cr合金からな
る。ここで「実質的に」とは、本発明の作用効果を損な
わない範囲で溶射皮膜中に不可避的不純物をはじめ他の
微量元素を含んでいてもよいことを意味する。
【0012】炭化クロムとしては、Cr2C、Cr3C2、Cr7C3
及びCr23C6をそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以
上を混合して使用してもよい。図3に溶射皮膜に用いる
炭化クロムの一例を示す。X線回折プロファイルに示す
ように、この例では炭化クロムとしてCr2C、Cr3C2、Cr7
C3及びCr23C6を含んでいる。
【0013】溶射皮膜中に含まれる粒状の炭化クロム
は、微細な粒子が均一に分布することにより、相手攻撃
性を低減する効果を有する。溶射皮膜中の炭化クロム粒
子の平均粒径は15μm以下が好ましく、10μm以下がより
好ましい。微細な炭化クロム粒子を形成するため溶射皮
膜の原料を造粒焼結粉として用いるのが好ましい。図4
は造粒焼結粉を用いて形成した溶射皮膜の電子顕微鏡二
次電子像写真(×1000)を示す。造粒焼結粉を用いるこ
とにより粒状の炭化クロム粒子を組織中に形成すること
ができるため、シリンダライナの摩耗を抑制することが
できる。これに対し、原料として単純にブレンドされた
溶射用原料粉末を用いると炭化クロム組織は均一になら
ず、図5の電子顕微鏡二次電子像写真(×1000)に示す
ように粗大な炭化クロム組織となり、シリンダライナを
摩耗させてしまう。
【0014】溶射皮膜の平均硬さは700HV0.1以上が好ま
しく、800〜1000HV0.1がより好ましい。ここで溶射皮膜
の硬さはJIS Z 2244により規定されるビッカース硬さを
意味し、試験力が0.9807Nのときの硬さ値を表す。また
平均硬さは皮膜を任意に20箇所測定したときの硬さ値の
平均値を表す。硬さのばらつきを表す標準偏差は、皮膜
の硬さを任意に20箇所測定したとき200HV0.1未満である
のが好ましく、150HV0.1未満であるのがより好ましい。
このように所定の範囲の硬度で均一に形成された溶射皮
膜は耐摩耗性に優れ、かつシリンダライナの摩耗を抑制
することができる。
【0015】[2] 製造方法 本発明のピストンリングの製造方法は、溶射材料として
造粒焼結粉を用い、造粒焼結粉を溶射することにより溶
射皮膜を形成することを特徴とする。溶射材料として造
粒焼結粉を用いることにより均一で微細な炭化クロム組
織を有する溶射皮膜を形成することができる。
【0016】図1に示すように溶射材をピストンリング
の外周に埋設して溶射皮膜3を形成する場合には、予め
母材2の外周に溝2aを削設する。母材2は窒化処理、洗
浄処理等の前処理が施されていてよい。
【0017】造粒焼結粉は原料となる微粉末にバインダ
ーを加え、造粒、焼結したものである。原料微粉末は、
平均粒径が15μm以下の炭化クロム粒子と金属系粉末材
料(Ni-Cr合金又はNiとNi-Cr合金からなる粉末材料)か
らなる。バインダーは特に限定されないが、水、エチル
アルコール、メチルアルコール等を用いるのが好まし
い。微細な炭化クロム粒子を形成するため造粒焼結粉の
平均粒径は5〜50μmが好ましい。
【0018】造粒焼結粉の製造方法は公知の方法を用い
てよく、例えば原料微粉末にバインダーを添加し、造粒
装置により目的とする粒度の粉末にした後これを焼結
し、バインダーを蒸発させてとばすことにより得ること
ができる。溶射皮膜中の炭化クロムの面積率を上記範囲
にするため、原料微粉末の混合比を炭化クロム粒子/金
属系粉末材料の重量比で40/60〜80/20とするのが好ま
しい。バインダーの添加量は原料微粉末100重量部に対
し、7〜20重量部が好ましく、8〜16重量部がより好ま
しい。7重量部未満ではバインダー効果が小さく焼結性
が不良となり、結果として均一な炭化クロム組織を得る
ことができない。また20重量部を超えると焼結時に軟化
しやすく粒子の形状を保持することができない。
【0019】造粒工程は、原料微粉末にバインダーを加
え混合した後造粒装置に投入し、圧縮造粒、解砕造粒等
により造粒してもよいし、造粒装置内で撹拌しながら造
粒してもよい。また2種以上の方法を併用してもよい。
得られた造粒物を所望の粒度に分級し、さらに800〜900
℃で焼結することにより造粒焼結粉を得ることができ
る。分級は焼結前に行っても焼結後に行ってもよい。溶
射材料として造粒焼結粉を用いることにより、溶射用粉
末としては細かすぎる平均粒径が数μm以下の微粉末を
溶射に適する粒度に粗粒化することができる。また、造
粒された粒子形状は球状化するので粉末の流動性も良く
なる。
【0020】溶射は高速フレーム溶射、プラズマ溶射、
減圧プラズマ溶射等により行うことができる。なかでも
高速フレーム溶射により行うのが好ましい。高速フレー
ム溶射のフレーム温度はプラズマ溶射のプラズマ温度に
比べ低いため溶射粉の溶融には不利であるが、細かい溶
射粉を用いているのでNi-Cr合金粒子が充分に溶融し、
微細な炭化クロム粒子をNi-Cr合金素地に均一に分散さ
せることができる。その結果、従来の破砕粉を用いて成
膜した溶射皮膜と比べ粗大な炭化クロム粒子及びNi-Cr
合金が皮膜中に存在せず、シリンダライナの摩耗を抑制
することができる。以下、高速フレーム溶射を用いる溶
射方法について説明する。
【0021】高速フレーム溶射は、例えばメテコ社製Di
amond Jetガン(以下、「DJガン」という)により行うこ
とができる。DJガンは図6に示すようにパウダーインジ
ェクター4、インサート5、シェル6及びエアキャップ
7からなる4重構造になっている。高速フレーム溶射を
行うには、まずエアキャップ7の先端から100〜300 mm
離れた位置にピストンリングを設置する。この状態でパ
ウダーインジェクター4とインサート5間、及びシェル
6とエアキャップ7の間に圧縮エアを流し、インサート
5とシェル6の間に高圧プロピレンガスと酸素ガスの混
合ガスを流し、エアキャップ7の先端に着火することに
より混合ガスを燃焼させ、高速且つ高温の高速フレーム
を形成する。この高速フレームの中心に位置するパウダ
ーインジェクター4から所望の組成の皮膜となるように
配合した原料粉末を窒素ガスで搬送して投入する。原料
粉末は高速フレーム中で溶融、加速されて母材に衝突す
る。衝突した原料粉末は瞬時に偏平化し、母材温度まで
急冷凝固して皮膜を形成する。
【0022】皮膜を形成する母材の表面には予めショッ
トブラスト等で10〜20μm程度の大きさの凹凸を形成し
ておくのが好ましい。これにより、溶融粒子が母材の凸
部に衝突した際に、凸部が局部溶融を起こして合金化し
やすくなり、また機械的にも溶融粒子の凝固収縮応力に
よるアンカー効果が生じて皮膜の接着が強固となる。さ
らに、溶射直前に母材2を約100℃に予熱した後、フレ
ームにより母材2の表面をクリーニングすると表面が活
性化し、溶射後に母材2と皮膜3との間に相互拡散層が
形成され、母材と皮膜が強固に接合する。
【0023】高速フレーム溶射では粉末粒子が高速に加
速されて母材に衝突する結果、溶射皮膜の空孔の面積率
が5%未満の緻密な組織を形成することができる。形成
する溶射皮膜3の厚さは通常50〜500μmであり、好まし
くは100〜300μmである。50μm未満では耐摩耗性が不足
し、500μmを超えると剥離しやすくなる。
【0024】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0025】実施例1 (1) ピストンリング供試材の作製 母材として球状黒鉛鋳鉄材(FCD 60)を使用し、縦5m
m、横5mm、厚さ20mmの角柱状に加工し、さらにその一端
面を湾曲面となるように研削加工した。次に、Cr 3C2
末75重量%及びNi-Cr合金粉末(Ni/Crの重量比=80/2
0)25重量%からなる原料微粉末100重量部にバインダー
として水を15重量部加えて造粒、分級し、800℃で焼結
してCr3C2とNi-Cr合金からなる造粒焼結粉を作製した。
造粒焼結粉の粒度は325メッシュであった。
【0026】得られた造粒焼結粉を用いて、高速フレー
ム溶射により供試材の湾曲面に厚さ約300μmの溶射皮
膜を形成した。溶射条件は以下の通りであった。
【0027】 溶射条件 使用ガン : メテコ社製DJ1000 HVOF溶射ガン エア圧力 : 75PSI エア流量(目盛り) : 47 プロピレンガス圧力 : 92PSI プロピレンガス流量(目盛り) : 38 酸素圧力 : 142PSI 酸素流量(目盛り) : 42 窒素圧力 : 125PSI 窒素流量(目盛り) : 60 母材予熱温度 : 100 ℃
【0028】得られた供試材の湾曲面における金属組織
の電子顕微鏡二次電子像写真(×1000)を図4に示す。
図4から明らかなように、溶射皮膜と母材の接合部は合
金化して拡散結合しており、皮膜中には空孔が極めて少
なかった。溶射皮膜の面積率を100%としたとき皮膜に
含まれる空孔の面積率は1%であり、炭化クロム粒子の
面積率は68.5%であった。また皮膜中の炭化クロム粒子
の平均粒径は8μmであった。溶射皮膜の硬度は、ビッ
カース硬度計(MVK-G2、(株)アカシ製)により皮膜断
面(厚さ方向)の中央部の5mmの範囲内をほぼ等間隔に
20箇所測定したところ、平均硬さが895HV0.1であり、標
準偏差が135HV0.1であった。溶射皮膜のX線回折プロフ
ァイルを図3に示す。
【0029】(2) 高温湿式摩耗試験 図7に示す科研式摩耗試験機により高温湿式摩耗試験を
行った。試験機は、回転可能なドラム型シリンダライナ
材14と、シリンダライナ材14の外周面に摺接する供試材
11を押圧するアーム9と、アーム9の一端に取り付けられ
た重錘10と、アーム9の他端に取り付けられたバランサ1
2と、供試材11とバランサ12との間でアーム9を支えてい
る支点8とからなる。シリンダライナ材14は駆動装置
(図示せず)によって所定の速度で回転するとともに、
ヒータ13を内蔵して所望の温度に調節し、供試材11の湾
曲面と摺接する。その際、シリンダライナ材14と供試材
11とが摺接する部位に潤滑油15を注油する。アーム9が
供試材11をシリンダライナ材14方向へ押圧する力(供試
材11とシリンダライナ材14との接触面圧となる)は、重
錘10の重量を変えることにより変化させることができ
る。
【0030】得られた供試材及びFC25からなるシリンダ
ライナ材を上記の科研式摩耗試験機に取り付けて、以下
の試験条件で高温湿式摩耗試験を行った。供試材及びシ
リンダライナ材の耐摩耗性試験の結果を図8に示す。図
8から明らかなように、実施例1の供試材は良好な耐摩
耗性を有し、相手材であるシリンダライナ材の摩耗量も
少ないことが分かる。
【0031】試験条件 摩擦速度 :0.50 m/秒 潤滑油 :クーラント シリンダライナ材温度 :80℃ 給油量 :1.5 cc/分 重錘の重量 :50 kg 時間 :240分
【0032】比較例1 造粒焼結粉の代わりにCr3C2粉末75重量%、Ni-Cr合金粉
末(Ni/Crの重量比=80/20)25重量%からなる混合粉
末(粒度:325メッシュ)を用いた以外実施例1と同様
にして厚さが約300μmの溶射皮膜を形成した。図5か
ら明らかなように溶射皮膜中の炭化クロムは層状に偏っ
て分布しており、粒径15μm以上の粗大な組織になって
いた。溶射皮膜の面積率を100%としたとき皮膜に含ま
れる空孔の面積率は1%であり、炭化クロム粒子の面積
率は50%であった。溶射皮膜の硬度は、ビッカース硬度
計(MVK-G2、(株)アカシ製)により皮膜断面(厚さ方
向)の中央部の5mmの範囲内をほぼ等間隔に20箇所測定
したところ、平均硬さが702HV0.1であり、標準偏差が22
0HV0.1であった。
【0033】得られた供試材と、実施例と同じシリンダ
ライナ材とを組み合わせ、実施例1と同様にして高温湿
式摩耗試験を行った。供試材及びシリンダライナ材の耐
摩耗性試験の結果を図8に示す。
【0034】図8から明らかなように、比較例1の供試
材は実施例1の供試材とほぼ同等の耐摩耗性を有する
が、相手材であるシリンダライナ材の摩耗量は実施例1
の供試材よりも大幅に増大していた。従って比較例1の
供試材は実施例1の供試材に比べ相手攻撃性が高いこと
が分かる。
【0035】
【発明の効果】以上の通り、本発明のピストンリングは
造粒焼結粉を用いて溶射皮膜を形成することにより、炭
化クロム粒子の面積率が高く、平均粒径が小さい溶射皮
膜を形成することができる。そのため、溶射皮膜の耐摩
耗性に優れており、相手材であるシリンダライナ材に対
する攻撃性が低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるピストンリングを示
す概略断面図である。
【図2】 本発明の別の実施例によるピストンリングを
示す概略断面図である。
【図3】 実施例1のピストンリング供試材に形成され
た皮膜のX線回折プロファイルである。
【図4】 実施例1において造粒焼結粉を用いて高速フ
レーム溶射皮膜を成膜した供試材の電子顕微鏡二次電子
像写真(×1000)である。
【図5】 比較例1において破砕粉を用いて高速フレー
ム溶射皮膜を成膜した供試材の電子顕微鏡二次電子像写
真(×1000)である。
【図6】 高速フレーム溶射を行う装置(DJガン)を示
す概略断面図である。
【図7】 科研式摩耗試験機の概略図である。
【図8】 実施例1及び比較例1の摩耗試験におけるピ
ストンリング供試材とシリンダライナ材の摩耗量を示す
グラフである。
【符号の説明】
1・・・ピストンリング 2・・・ピストンリング母材 3・・・溶射皮膜 4・・パウダーインジェクター 5・・・インサート 6・・・シェル 7・・・エアキャップ 8・・・支点 9・・・アーム 10・・・重錘 11・・・ピストンリング供試材 12・・・バランサ 13・・・ヒータ 14・・・ドラム型シリンダライナ材 15・・・潤滑油
フロントページの続き Fターム(参考) 3J044 AA02 AA04 BB21 BB28 BB29 BB35 4K031 AA02 AB02 BA01 BA07 CB09 CB22 CB28 CB45 CB49 DA01 DA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni-Cr合金又はNiとNi-Cr合金のマトリッ
    クス中に炭化クロム粒子が分散した溶射皮膜を少なくと
    も外周側摺動面に有するピストンリングであって、前記
    溶射皮膜の面積率を100%としたときに前記溶射皮膜に
    含まれる気孔の面積率が5%未満、前記炭化クロム粒子
    の面積率が45〜90%、及び残部が実質的にNi-Cr合金又は
    NiとNi-Cr合金からなり、前記炭化クロム粒子の平均粒
    径が15μm以下であることを特徴とするピストンリン
    グ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のピストンリングにおい
    て、前記溶射皮膜の平均硬さがビッカース硬さで700HV
    0.1以上であり、硬さの標準偏差が200HV0.1未満である
    ことを特徴とするピストンリング。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のピストンリング
    を製造する方法であって、前記溶射皮膜の原料を成形し
    て造粒焼結粉とし、前記造粒焼結粉を溶射することによ
    り前記溶射皮膜を形成することを特徴とするピストンリ
    ングの製造方法。
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