JP2610856B2 - 耐摩耗表面層及びその形成方法 - Google Patents

耐摩耗表面層及びその形成方法

Info

Publication number
JP2610856B2
JP2610856B2 JP62021598A JP2159887A JP2610856B2 JP 2610856 B2 JP2610856 B2 JP 2610856B2 JP 62021598 A JP62021598 A JP 62021598A JP 2159887 A JP2159887 A JP 2159887A JP 2610856 B2 JP2610856 B2 JP 2610856B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
surface layer
wear
powder
test
molybdenum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP62021598A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS63190154A (ja
Inventor
順一 佐川
淳一 安岡
Original Assignee
株式会社 リケン
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社 リケン filed Critical 株式会社 リケン
Priority to JP62021598A priority Critical patent/JP2610856B2/ja
Publication of JPS63190154A publication Critical patent/JPS63190154A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2610856B2 publication Critical patent/JP2610856B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】 イ.産業上の利用分野 本発明は、耐摩耗表面層及びその形成方法に関する。
ロ.従来技術 近年、内燃機関はその高出力化のために、高圧縮比、
高速回転が図られ、これに伴なって例えばピストンリン
グやシリンダダイナ等の摺動部品は高温に曝されて潤滑
油膜が薄くなり、金属接触の機会が多くなって異常摩耗
や甚だしくはスカッフを起すことがある。そのため、こ
れらの摺動部品には、従来に増して一層の耐摩耗性、耐
スカッフ性が要求されるようになってきている。
これら摺動部品に耐摩耗性を付与するために、古くか
ら摺動部品に硬質クロムめっきを施すことが行われてい
る。硬質クロムめっき層は硬度が高く、それ自身の摩
耗、相手摺動部品の摩耗共に少なく、優れた耐摩耗性を
備えてはいるが、保油性がないために摺動中にスカッフ
を起し易いという問題点を有している。
耐スカッフ性の改善された表面層として、近年、硬質
クロムめっき層に替えてモリブデン熔射表面層が一部に
採用されるようになってきている。モリブデンを熔射し
てなる表面層は、多孔質であるために良好な保油性を示
すことと、モリブデンは融点が高いことから、耐スカッ
フ性に優れている。然し、モリブデン熔射表面層は、硬
度が硬質クロムめっき層に較べて低いので、耐摩耗性は
硬質めっき層のそれに較べて劣っている上に、高温で酸
化され易いので寿命が短いという欠点を有している。
モリブデン熔射表面層の上記問題点を解消する表面層
として、モリブデンに金属の炭化物、酸化物又は窒化物
(例えば炭化タングステンや炭化チタン等のセラミック
ス)粒子を混合した熔射材料を熔射してなる熔射表面層
があるが、このようなセラミックス粒子分散熔射表面層
は摺動中にこれらセラミックス粒子が表面層から脱落
し、これがアブレイシブ剤となって、相手の摺動部品を
摩耗させるという問題点がある。また、モリブデン粉末
と炭化クロム(Cr3C2)粉末とニッケル−クロム合金(8
0重量%Ni−20重量%Cr)粉末との混合粉末をプラズマ
熔射してなる熔射表面層も提案されているが、この表面
層は、耐摩耗性が硬質クロムめっき層には及ばず、特に
鋳鉄のような硬度の低い材料を相手として摺動させる
と、相手材の摩耗が大きくなる。その上、上記の表面層
は、内燃機関の所謂低温運転状態では、燃料中に含まれ
る硫黄から生成するSO2から更にSO3が生成し、シリンダ
壁の温度が燃焼ガスの露点以下になって水分と反応して
硫酸(H2SO4)が生成して凝縮し、この硫酸による腐食
が起こる。また、燃料の完全燃焼が妨げられて一部燃料
の潤滑油中への希釈によって潤滑油の粘性が著しく下
る。その結果、潤滑が不充分になって乾式摺動に近い状
態で摺動することになり、益々摩耗が促進されるという
問題がある。そのほか、燃料の一部不完全燃焼によって
生成されるカーボンスラッジやダストが潤滑油に混入す
ると、これらの混入物がアブレイシブ剤となってピスト
ンリングやシリンダライナを摩耗させるので、耐アブレ
イシブ摩耗の点で満足し得るには至っていない。
上記のような事情から、種々の運転条件下に於ける摺
動部材の選定には多くの困難があり、苛酷な運転条件下
で優れた耐摩耗性、耐スカッフ性を示す表面層の開発が
望まれている。
ハ.発明の目的 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであっ
て、耐スカッフ性に優れると共に、特に高温にあっても
優れた耐摩耗性を示す耐摩耗表面層及びその形成方法を
提供することを目的としている。
本明細書で「耐摩耗性」とは、表面層の摩耗及び相手
摺動部品の摩耗が共に少ないことを意味する。
ニ.発明の構成 本発明の第一の発明は、25〜60重量%の金属モリブデ
ンと25〜50重量%のニッケル自溶合金と、合計で5〜25
重量%の周期表IV族、V族、VI族元素の硬質炭化物の1
種又は2種以上とを含有し、前記金属モリブデンと前記
ニッケル自溶合金とが層状に混合してなる素地中に平均
粒径0.5〜10μmの前記硬質炭化物粒子が分散した組織
を有する耐摩耗表面層に係る。
本発明の第二の発明は、25〜60重量%の金属モリブデ
ン粉末と、25〜50重量%のニッケル自溶合金粉末と、合
計で5〜25重量%の周期表IV族、V族、VI族元素の硬質
炭化物粉末の1種又は2種以上(但し、これらの硬質炭
化物粉末は平均粒径0.5〜10μmの粒子からなる粉末で
ある。)とによって造粒された粒径10〜105μmの造粒
粉末を熔射材料として使用し、母材表面に熔射する、耐
摩耗表面層の形成方法に係る。
上記自溶合金としては、JIS H8303「自溶合金熔射」
に規定されているニッケル自溶合金MSFNi1〜5が使用可
能である。
また、上記周期表IV族、V族、VI族に属する元素で硬
質炭化物を形成する元素としては、IV族に属する珪素,
チタン,ジルコニウム,ハフニウムが、V族に属する元
素のバナジウム,ニオブ,タンタルが、VI族に属する元
素のクロム,モリブデン,タングステンが挙げられる。
ホ.発明の作用効果 本発明の第一の発明に基づく表面層は、金属モリブデ
ン(以下、単にモリブデンと呼ぶ。)の耐スカッフ性改
善に寄与する作用と、自溶合金の表面層の硬度を高めて
耐摩耗性改善に寄与する作用と、硬質炭化物粒子の耐摩
耗性改善に寄与する作用とを組合せて、耐摩耗性、耐ス
カッフ性改善を図っている。
以下に上記表面層を構成する各成分について説明す
る。
モリブデンは、前述したように、表面層の耐スカッフ
性を改善するが、耐摩耗性は硬質クロムめっき層のそれ
に劣り、高温で酸化され易く表面層の劣化や剥離を起し
易いという欠点を有する。モリブデン含有量は、25重量
%(以下、「重量%」を単に「%」で表わす。)未満で
は耐スカッフ性改善の効果が顕著ではなく、60%を越え
ると上記の欠点が顕著になって耐摩耗性が劣化し、また
酸化され易くなる。従ってモリブデン含有量は25〜60%
の範囲とする。
自溶合金は、表面層の硬度を高めて耐摩耗性を改善す
ると共に、表面層の機械的強度を高めて表面層を強固な
ものにし、その耐久性を改善する。自溶合金含有量は、
25%未満では上記の効果が顕著ではない上にモリブデン
の含有量が多くなり過ぎて、上記のモリブデンの欠点が
顕著に顕われ、60%を越えると表面層が却って脆くなっ
て摺動中に摩耗するようになるので、25〜60%の範囲と
する。
炭化物粒子は、上記モリブデンと自溶合金とからなる
素地中に均一に分散してハードスポットを形成し、表面
層の耐摩耗性を改善すると共に、相手摺動部品の摩耗を
も軽減する。その粒径は、10μmを越えると上記ハード
スポットが大きくなり過ぎて相手摺動部品を摩耗させる
ようになる傾向が生ずると共に、粗大炭化物粒子が表面
層から脱落してアブレイシブ剤として作用し、表面層、
相手摺動部品共に摩耗が増大するようになる。従ってそ
の平均粒径は10μm以下とする。炭化物粒子の平均粒径
が0.5μm未満では粉末製造のコストが高騰しかつ表面
層の摩耗減少の効果が顕著ではないので、0.5μm以上
とする。また、炭化物粒子の量は、5%未満では耐摩耗
性改善の効果が顕著ではなく、25%を越えると表面層が
脆くなって表面層の耐久性が低下すると共に、相手摺動
部品を摩耗させるようになる。従ってその含有量は5〜
25%の範囲とする。
本発明の第二の発明に基づく表面層形成方法は、形成
される表面層が第一の発明に基づく表面層の成分組成と
なるよう、前記と同じ成分組成の熔射材料を使用して熔
射する。
また、熔射に使用する熔射材料としては、前述したよ
うな造粒粉末を使用する。その理由は次の通りである。
炭化物粉末を含有する熔射材料として従来使用されて
いたものは、比較的粗い硬質炭化物粉末を含有している
ので、相手摺動部品を摩耗させるようになる。従って、
本発明にあっては、粒径0.5〜10μmの硬質炭化物粒子
からなる粉末を使用するのであるが、このような微粒子
粉末を含有する混合粉を熔射材料として使用すると、熔
射時に様々な問題が生ずる。例えば、微粉末は流動性が
悪く、熔射装置内でノズル内やノズル出口に搬送するの
が困難であるばかりでなく、フレーム(火焔)に乗り難
く、熔射材料として有効には使用され難いという問題が
ある。従って、このような微細な硬質炭化物粉末をモリ
ブデン粉末や自溶合金粉末と混合してなる混合粉を熔射
材料として熔射しても、所望の組成、組織を有する表面
層を形成することは至難である。そこで、本発明にあっ
ては、モリブデン粉末と、自溶合金粉末と、平均粒径10
μm以下の硬質炭化物粒子からなる粉末とを造粒、分級
して10〜105μmの造粒粉末とし、これを熔射材料とし
て使用する。
この造粒粉末粒子の粒径は、105μm以下(JIS Z880
1に規定された標準篩を使用)、10μm以上とする。造
粒粉末の粒度が140メッシュ(105μm)よりも粗いと、
熔射時に造粒粉末の熔融が不充分となり、熔射表面層を
構成する各粒子間の結合が弱くなって熔射表面層の機械
的強度が低下し、これが10μmよりも細いと、熔射時に
熔射ガンのノズルに半熔融状態で付着、堆積し易く、い
わゆるスピッティングを起すようになり易く、熔射作業
が困難となる。
上記のような造粒粉末を熔射材料として使用すること
により、ポッパ内での個々の構成成分粉体の分離を考慮
する必要がなく、均一かつ緻密な表面層が形成され、而
も、相手摺動部品を摩耗させるような粗大な硬硬質炭化
物粒子を含むことがなく、微細な硬質炭化物粒子が均一
に分散されて耐摩耗性、耐スカッフ性、耐久性に優れる
表面層が形成される。また、熔射時に上記のスピッティ
ングが起る虞れもない。
ヘ.実施例 先ず、本発明に使用する造粒粉末の好適な造粒方法に
ついて説明する。
硬質炭化物粉末には、前述した炭化物粉末のうちで、
珪素、チタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロ
ム、モリブデン、タングステンの炭化物粉末が入手し易
く、便利に使用できる。また、クロム炭化物粉末には、
例えば、JIS G2303「フェロクロム」に規定されている
高炭素フェロクロムFCrH0〜FCrH5がクロム複炭化物
〔(Fe、Cr)7C3〕を主成分としているので、これらの
高炭素フェロクロムを粉砕、分級したものも使用でき
る。
造粒には、前述した構成粉末に対して、水やアルコー
ルなどの有機溶媒にバインダーとしてポリビニルアルコ
ール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、フェノー
ル系樹脂、エポキシ系樹脂、カルボオキシメチルセルロ
ース(CMC)、ヘキサプロピルセルロース(HPC)などを
使用してスラリーとし、このスラリーをスプレードライ
ヤによって造粒する方法、又は前記の構成粉末を混合、
撹拌しながら水又はアルコールに上記バインダ樹脂を溶
かした溶液を滴下させて造粒する方法等、いずれの方法
によっても良い。
また、造粒時の混合に際して、各構成粉末が一様に混
合し易いようにするためには、これらの粒度が余り違わ
ないようにするのが望ましく、モリブデン粉末、自溶合
金粉末も硬質炭化物粉末と同様に平均粒径10μm以下の
粒子からなる粉末を使用するのが好適である。特に、モ
リブデン粉末粒子の平均粒径が10μmよりも大きいと、
形成される表面層中でモリブデンリッチの領域が粗大に
なって、高温で酸化され易くなるので、平均10μm以下
のものを使用するのが望ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
下記第1表に示す配合によって粒径10〜105μmの造
粒粉末を製造した。但し、バインダ樹脂にはポリビニル
アルコールを、溶媒には水を使用してスプレードライ法
によって造粒し、気流分級法と篩によって分級した。
上記のほかに、造粒粉末の粒径を変えた熔射材及び造
粒せずに混合粉とした熔射材を用意した。なお、微粉末
を混合してなる混合粉を熔射した場合は、熔射が不可能
であった。これらの熔射材の配合を下記第2表に示す。
但し、これらの表中、平均粒径はフッシャー社製サブシ
ブサイザ(Sub Sieve Sizer)(FSSSと呼ばれてい
る。)によって測定した値である。
第1表、第2表に示した熔射材料を使用して通例のプ
ラズマ熔射によって鋳鉄母材の表面に厚さ0.3mmの熔射
表面層を形成して試験片を製作し、スカッフ試験、熱間
摩耗試験及び熱衝撃試験に供した。熔射条件は下記の通
りである。
使用ガン:メテコ社製3MB 電 流:450〜500A、電圧61V 使用ガス:アルゴン水素混合ガス アルゴン 110ft3/hr 水素 10ft3/hr 本発明に基づく熔射表面層の顕微鏡組織(倍率200
倍)は、試験片NO.4を例に挙げると第1図に示す通りで
あって、白色を呈するモリブデン相とねずみ色を呈する
自溶合金相とが層状に混合してなる素地中に点状のCr3C
2粒子が均一に分散しており、それら各相の境界の一部
に黒色に見える気孔が形成されている。上記各相の成分
組成及び比率は、X線マイクロアナライザによる試験及
びX線回折試験によって熔射材料との差異が認められな
いことが確認されている。
なお、スカッフ試験及び熱間摩耗試験には、モリブデ
ン線を熔射材料として酸素−アセチレン火焔熔射によっ
て熔射表面層を形成した試験片及び硬質クロムめっきを
施した試験片についても同様の試験を併せ行った。
スカッフ試験 5mm×5mm×10mmの鋳鉄製の角柱状試験片を多数用意
し、その正方形端面に熔射表面層を形成し、その表面を
研磨仕上げしてスカッフ試験に供した。
試験装置は第3図及び第3図のIV−IV線に沿う矢視側
面図である第4図に概要を図解的に示すものであって、
ステータホルダ1に取外し可能に取付けられた直径80m
m、厚さ10mmの研磨仕上げを施した円板2の中央には裏
側から注油孔3を通じて潤滑油が注油される。ステータ
ホルダ1には図示しない油圧装置によって図に於いて右
方向へ向けて所定圧力で押圧力Pが作用するようにして
ある。円板2に相対向してロータ4があり、図示しない
駆動装置によって所定速度で回転するようにしてある。
ロータ4の円板2に対する端面に取付けられた試験片保
持具4aには正方形端面の熔射表面層5aを摺動面として試
験片5が同心円上に等間隔に4個取外し可能に、かつ円
板2に対して摺動自在に取付けてある。
このような装置に於いて、ステータ1に所定の押圧力
Pをかけ、所定の面圧で円板(相手材)2と試験片5と
が接触するようにしておいて、注油孔3から摺動面に所
定給油速度で給油しながらロータ4を回転させる。一定
時間毎にステータ1に作用する圧力を段階的に増加して
ゆき、ロータ4の回転によって試験片5と相手の円板2
との摩耗によってステータ1に生ずるトルク(摩擦力に
よって生ずるトルク)Tをスピンドル6を介してロード
セル7に作用せしめ、その変化を動歪計8で読み、記録
計9に記録させる。このようにして各試験片についてト
ルクTが急激に上昇するときにスカッフが起ったものと
し、このときの接触圧力を比較して耐スカッフ性の評価
を行なった。
試験条件は次に示す通りである。
摩擦速度:8m/sec 潤滑油:モータオイル#30を2ml/min給油、油温80℃ 接触圧力:試験開始時20kg/cm2、その後3分間経過毎に
10kg/cm2づつ上昇 相手円板材料:舶用2サイクルディーゼルエンジンのシ
リンダライナに使用される、下記第3表の組成の高燐、
含硼素鋳鉄 但し、造粒粉の粒径を小さくしたNo.21は、熔射ガン
のノズルでスピッティングを起し、均一な熔射表面層を
形成できなかったので、スカッフ試験、熱間摩耗試験、
共に行わなかった。
試験結果は第5図に示す通りである。
第5図から解るように、本発明の実施例の試験片であ
るNo.1〜5は、硬質クロムめっき層に較べては勿論、従
来から耐スカッフ性に優れると評価されているモリブデ
ン熔射表面層に較べて略同程度、或いはモリブデン配合
量の増加に伴って更に耐スカッフ性が改善されている。
これに対して、モリブデンの配合量が25%未満になる
と(No.10、11)、耐スカッフ性が著しく低下してい
る。
熱間摩耗試験 第6図に示すように、5mm×5mm×20mmの角柱状を呈
し、その正方形端面に半径10mmのアール加工を施した鋳
鉄製試験片15を多数用意し、このアール加工面に厚さ0.
3mmの熔射表面層15aを形成し、その表面に研磨仕上げを
施した。
試験装置は第7図に概要を図解的に示すものであっ
て、図示しない駆動装置によって回転する中空の回転軸
14に着脱可能に取付けられた鋳鉄製シリンダ12が矢印方
向に回転するようにしてある。シリンダ12は、外径80m
m、内径60mm、長さ100mmの寸法を有し、第3表に示した
組成の舶用シリンダライナから切出して製作されたもの
であって、外周面は表面粗さ1.0〜1.5μm(Rz)に仕上
げられている。シリンダ12の回転軸14への取付けは、回
転軸14に固定された図示しないフランジにシリンダ12の
端面を取付けることによってなされる。回転軸14の中空
部には、その内周面に対して0.5mmの間隔を隔ててカー
トリッジヒータ13が静止状態で着脱可能に装着されてい
て、カートリッジヒータ13からの熱を受けてシリンダ12
が図示しない温度制御装置によって所定温度に加熱され
るようにしてある。レバー保持具16にはレバー11が11a
を支点として摺動可能に取付けられ、レバー11には試験
片15が着脱可能に取付けられ、レバー11の先端部に取付
けられた重錘17によって試験片15の熔射表面層15aが所
定の荷重でシリンダ12の外周面に接するようにしてあ
る。
このような装置に於いて、所定温度に加熱されたシリ
ンダ12と試験片15の熔射表面層15aとを互いに摺動させ
て乾式熱間摩耗試験を行い、熔射表面層15aの摩耗量と
シリンダ12の摩耗量とを測定した。
熔射表面層15aの摩耗量は、摺動によって生じた摩耗
痕の幅から摩耗体積を計算によって求めた。シリンダ12
の摩耗量は、第8図に示すように、摺動面12bの4箇所
の表面粗さを表面粗さ計で計測し、仮想線で示す試験前
の表面12aと摺動によって摩耗した摺動面12bとの間の摩
耗空間12cの断面積を求め、上記4箇所の断面積の平均
で表す。なお、第8図は摺動方向に垂直の断面を示す。
試験条件は下記の通りである。
摩擦速度(シリンダ周速):0.25m/sec 荷重:6kg(摩擦初期の線接触はヘルツ応力約19kg:mm2) シリンダ温度:80℃ 摩擦時間:4hr 試験結果は第9図に示す通りである。
第9図から解るように、本発明の実施例の試験片であ
るNo.1〜5は、従来のモリブデン熔射試験片に較べては
勿論、従来から耐摩耗性に優れると評価されている硬質
クロムめっきを施した試験片に較べて、表面層の摩耗、
相手摺動材の摩耗共に少なくなっていて、極めて優れた
耐摩耗性を示している。
これに対して、硬質炭化物粒子の配合量が5%未満に
なると(No.6、7)、表面層の摩耗が急に増大するよう
になり、これが25%を越えると(No.8、9)相手材の摩
耗が急に増大するようになる。また、硬質炭化物粒子
は、平均粒径が0.5μm未満のもの(No.18)は耐摩耗性
が明らかには改善されず、10μmを越えるもの(No.1
9)は相手材の摩耗が増大している。
自溶合金の配合量が25%未満では(No.14、15)、表
面層の摩耗が明らかに増大し、これが50%を越えると
(No.10、11)、表面層の摩耗が増大する。特に自溶合
金が60%になると(No.10)、相手材の摩耗が著しくな
っているが、これは、表面層が硬くなり過ぎて相手材を
摩耗させたものと考えられる。
モリブデン含有量が60%を越えると(No.12、13、1
4)、表面層の摩耗が著しく増大している。
造粒粉の粒径が105μmよりも大きいと(No.20)、熔
射表面層の機械的強度が低くなって、耐スカッフ性、耐
摩耗性共に低下し、相手材の摩耗も大きくなる。
熔射材料に造粒粉を使用せずに10〜105μmの粒径の
各構成成分の混合粉を使用した場合(No.22)は、スカ
ッフ試験、熱間摩耗試験のいずれの結果も良好ではなか
った。これは各粒子特に炭化物粒子が大きいために相手
材の摩耗が大きくなるためと考えられる。
以上の結果から、耐摩耗性に優れると共に相手材の摩
耗も軽微であり、かつ、耐スカッフ性に優れる表面層
は、上記試験片のうちのNo.1〜5であることが理解でき
る。
熱衝撃試験 前記スカッフ試験に供したと同じ試験片について、20
分間で450℃に加熱後強制空冷を行うサイクルを200回繰
返し、試験前後の表面層の組織を観察してその状態の変
化を調べた。
試験片No.4を例に挙げて試験後の顕微鏡組織(200
倍)を第2図に示す。第1図に示した試験前の組織と較
べて変化が実質的に認められず、熱衝撃(温度の急変)
の繰返しによる表面層の変化はない。試験片No.1〜3及
びNo.5についての結果も上記No.4の結果と同様であっ
た。
これに対して、造粒粉末を使用せず、混合粉を熔射し
た試験片No.22は、第11図に示す試験前の顕微鏡組織、
第12図に示す試験後の顕微鏡組織(いずれも倍率200
倍)に見られるように、熔射表面層を構成する各相が粗
大であって、試験後には第12図に見られるように、部分
的な相間の剥離が進行している。
適用例 本発明をピストンリングの摺動表面層に適用した例を
挙げて、第10図に示す。第10図はバレルフェイスの圧力
リング18の拡大断面図で、鋳鉄製母材19の外周摺動面に
前述のNo.1〜5の熔射表面層25が形成され、これが圧力
リング18及び図示しない相手シリンダライナの摩耗を軽
減し、スカッフ発生を防止する。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第10図は本発明の実施例を示すものであって、 第1図は熔射表面層の金属組織を示す顕微鏡写真、 第2図は熱衝撃試験後の熔射表面層の金属組織を示す顕
微鏡写真、 第3図はスカッフ試験装置の要部を示す部分断面図、 第4図は第3図のIV−IV線側面図、 第5図はスカッフ試験の結果を示すグラフ、 第6図は熱間摩耗試験に供した試験片の拡大斜視図、 第7図は熱間摩耗試験装置の概略部分断面図、 第8図は熱間摩耗試験後の相手摺動材表面を模式的に示
す拡大断面図、 第9図は熱間摩耗試験結果を示すグラフ、 第10図はピストンリングの拡大断面図である。 第11図及び第12図は比較例を示すものであって、 第11図は熔射表面層の金属組織を示す顕微鏡写真、 第12図は熱衝撃試験後の熔射表面層の金属組織を示す顕
微鏡写真である。 なお、図面に示された符号に於いて、 1……ステータ 2……相手材円板 3……注油孔 4……ロータ 4a……試験片保持具 5、15……試験片 5a、15a、25……熔射表面層 7……ロードセル 8……動歪計 11……レバー 12……相手材シリンダ 13……カートリッジヒータ 14……中空回転軸 17……重錘 18……ピストンリング 19……ピストンリングの母材 である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】25〜60重量%の金属モリブデンと、25〜50
    重量%のニッケル自溶合金と、合計で5〜25重量%の周
    期表IV族、V族、VI族元素の硬質炭化物の1種又は2種
    以上とを含有し、前記金属モリブデンと前記ニッケル自
    溶合金とが層状に混合してなる素地中に平均粒径0.5〜1
    0μmの前記硬質炭化物粒子が分散した組織を有する耐
    摩耗表面層。
  2. 【請求項2】25〜60重量%の金属モリブデン粉末と、25
    〜50重量%のニッケル自溶合金粉末と、合計で5〜25重
    量%の周期表IV族、V族、VI族元素の硬質炭化物粉末の
    1種又は2種以上(但し、これらの硬質炭化物粉末は平
    均粒径0.5〜10μmの粒子からなる粉末である。)とに
    よって造粒された粒径10〜105μmの造粒粉末を熔射材
    料として使用し、母材表面に熔射する、耐摩耗表面層の
    形成方法。
JP62021598A 1987-01-30 1987-01-30 耐摩耗表面層及びその形成方法 Expired - Fee Related JP2610856B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP62021598A JP2610856B2 (ja) 1987-01-30 1987-01-30 耐摩耗表面層及びその形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP62021598A JP2610856B2 (ja) 1987-01-30 1987-01-30 耐摩耗表面層及びその形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS63190154A JPS63190154A (ja) 1988-08-05
JP2610856B2 true JP2610856B2 (ja) 1997-05-14

Family

ID=12059470

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP62021598A Expired - Fee Related JP2610856B2 (ja) 1987-01-30 1987-01-30 耐摩耗表面層及びその形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2610856B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1109123C (zh) * 1998-05-29 2003-05-21 宝山钢铁股份有限公司 一种镍基自熔性合金粉末
JP4790135B2 (ja) * 2001-02-28 2011-10-12 日本ピストンリング株式会社 耐摩耗性摺動部材
JP2006241514A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Tohoku Univ 耐溶融塩腐食コーティング部材の製造方法及び耐溶融塩腐食コーティング部材
DE102005020999A1 (de) * 2005-05-03 2006-11-09 Alfred Flamang Verfahren zur Beschichtung von verschleißbeaufschlagten Bauteilen und beschichtetes Bauteil
JP6416498B2 (ja) * 2014-05-08 2018-10-31 株式会社リケン 摺動部材及びピストンリング
CN117400406A (zh) * 2022-12-21 2024-01-16 湖北燕沙建材科技有限公司 一种石英石板的生产工艺

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5138006B2 (ja) * 1971-10-18 1976-10-19
DE2841552C2 (de) * 1978-09-23 1982-12-23 Goetze Ag, 5093 Burscheid Spritzpulver für die Herstellung verschleißfester Beschichtungen auf den Laufflächen gleitender Reibung ausgesetzter Maschinenteile
JPS5776363A (en) * 1980-10-31 1982-05-13 Mitsubishi Heavy Ind Ltd Piston ring
JPS62124267A (ja) * 1985-08-02 1987-06-05 Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd 耐摩耗性被膜、その形成方法及びそのための原料粉末

Also Published As

Publication number Publication date
JPS63190154A (ja) 1988-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2932248B2 (ja) 往復ピストン機関のクランクケースへ鋳込むための過共晶アルミニウム−けい素合金から成るシリンダライナ及びその製造方法
JP3187847B2 (ja) ディーゼル型内燃機関のシリンダライナー、ピストン、ピストンスカート部又はピストンリングのようなシリンダ要素及び該機関のピストンリング
US7291384B2 (en) Piston ring and thermal spray coating used therein, and method for manufacturing thereof
US4233072A (en) Sliding member having wear- and scuff-resistant coating on its surface
KR100614022B1 (ko) 용사 피스톤 링
KR100501985B1 (ko) 미끄럼 부재용 내마모성 용사피막
EP2402474B1 (en) Piston ring
JP2610856B2 (ja) 耐摩耗表面層及びその形成方法
JP2007314839A (ja) ピストンリング用溶射皮膜及びそのピストンリング
JPS61144469A (ja) 摺動面対構造
JPH0243838B2 (ja)
CN100489144C (zh) 活塞环、用于活塞环的喷镀膜及制造方法
JPS62255591A (ja) 摺動部材の組合せ
JP2003336742A (ja) ピストンリング及びその製造方法
JPS6028902B2 (ja) 溶射表面層
JPS581066A (ja) 溶射表面層
JPS5946303B2 (ja) 溶射表面層
JPS5893867A (ja) 摺動部材
JPS60135561A (ja) 耐摩耗性熔射層
JP3059793B2 (ja) ピストンリング
JPH0323622B2 (ja)
JPH0235026B2 (ja)
JPH06146017A (ja) シリンダ
JPH0220702B2 (ja)
JPH0337478A (ja) 摺動部材

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees