JP2003334436A - 多孔性プラズマ放電用電極、大気圧プラズマ放電処理装置、薄膜形成方法及び高機能性フィルム - Google Patents

多孔性プラズマ放電用電極、大気圧プラズマ放電処理装置、薄膜形成方法及び高機能性フィルム

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JP2003334436A
JP2003334436A JP2002142840A JP2002142840A JP2003334436A JP 2003334436 A JP2003334436 A JP 2003334436A JP 2002142840 A JP2002142840 A JP 2002142840A JP 2002142840 A JP2002142840 A JP 2002142840A JP 2003334436 A JP2003334436 A JP 2003334436A
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thin film
porous
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English (en)
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Kazuhiro Fukuda
和浩 福田
Yoshikazu Kondo
慶和 近藤
Yoshiro Toda
義朗 戸田
Kiyoshi Oishi
清 大石
Ko Mizuno
航 水野
Akira Nishiwaki
彰 西脇
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Konica Minolta Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 対向電極への薄膜の付着(汚れ)を起こさせ
ることなく、基材への薄膜形成が長時間にわたって安定
して行うことが出来るプラズマ放電用電極を提供し、こ
のプラズマ放電用電極を使用した高生産性能を有する大
気圧プラズマ放電処理装置を提供し、更にこの装置を使
用して生産性や品質に優れた薄膜を形成する方法及びこ
の方法により作製される高品質の高機能性フィルムを提
供する。 【解決手段】 対向電極の少なくとも一方の電極に、少
なくとも一面にガスを通すことの出来る多孔性プラズマ
放電用電極を用いることにより達成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な多孔性プラズ
マ放電用電極、大気圧もしくはその近傍下で高機能性の
薄膜を形成する大気圧プラズマ放電処理装置、該装置を
用いた薄膜形成方法及びこの方法により作製した高機能
性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より1〜1kPa程度の圧力下での
放電プラズマの真空プラズマCVD法により基材表面に
薄膜を形成する方法は知られているが、このようなバッ
チ式の真空装置を必要とすることから、脱気したり真空
にしたり、基材の出し入れ等の不連続性の製造を行わな
くてはならず、またプラズマ密度が低いため処理効率が
低く、生産性が低かった。また、プラズマCVD法で
は、対向電極間でプラズマ放電を発生させるため、基材
への薄膜の形成と同様に、電極表面にも付着し易いとい
う課題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】その改良として、今
日、生産性の良い大気圧もしくはその近傍の圧力下での
放電プラズマが可能な技術が開発されている。
【0004】本発明者らは、基材を大気圧もしくはその
近傍下、100kHzを超える高周波電圧を印加してプ
ラズマ放電処理を行うことにより、基材上により均一で
且つより良質の薄膜を、上述のプラズマCVD法より非
常に早い速度で薄膜形成を行うことに成功した。この方
法を大気圧プラズマ放電処理法ということとする。
【0005】しかしながら、100kHzを超える高周
波電圧を印加して処理することにより、薄膜形成速度が
速いということがメリットであったが、連続して生産し
ているうちに電極の汚れが発生しはじめる時間が短くな
ってきたり、また汚れが目立つようになって来た。汚れ
た電極をそのまま使用し続けると、反応性ガスを含む混
合ガスの流路にも汚れが付着し、狭い電極間隙がより狭
くなったり、更に付着片が基材上に落下したりして、基
材への薄膜の形成を阻害するようになった。その結果、
薄膜の品質の劣化、膜厚のムラ、薄膜の硬度が低下する
等の現象がみられるようになった。また、汚れを清掃す
る回数が多くなり、長時間の生産が中断され生産性が大
きく低下することも課題となった。
【0006】本発明は上記の課題に鑑みなされたもの
で、本発明の目的は、電極への汚れの付着を起こさせる
ことなく、基材への薄膜形成が長時間にわたって安定し
て行うことが出来るプラズマ放電用電極を提供すること
にあり、第2の目的は、このプラズマ放電用電極を使用
した高生産性能を有する大気圧プラズマ放電処理装置を
提供することにある。また、本発明の第3の目的は、こ
の装置を使用して生産性や品質に優れた薄膜を形成する
方法及びこの方法により作製される高品質の高機能性フ
ィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特願20
01−286720において、対向電極間に導入する混
合ガスを、基材表面側に混合ガスと、また基材のない電
極表面側には希ガス(反応性ガスを含まない混合ガス)
とに分けて層流とすることにより基材のない側の電極表
面の汚れを発生させない方法及び装置を提案した。しか
しながら、この方法は、何らかのショック的な刺激で層
流が乱され、必ずしも目的を達成し得ない場合があるこ
とがわかった。
【0008】本発明者等は上記方法及び装置を改良し、
少なくとも一方の電極を、ガスを通すことが出来る多孔
性部分を有するプラズマ放電用電極とし、該電極から薄
膜形成の直接関与しない不活性ガスをその孔から滲み出
すように放出することによって、該電極表面及びその付
近を該不活性ガスで覆い、該電極表面に汚れが付着しな
い方法を見い出した。
【0009】本発明は下記の構成よりなる。 (1) 少なくとも一面にガスを通すことが出来る多孔
性部分を有することを特徴とする多孔性プラズマ放電用
電極。
【0010】(2) 前記電極が、導電性の金属質母材
及び該金属質母材の上に被覆されている誘電体を有して
いることを特徴とする(1)に記載の多孔性プラズマ放
電用電極。
【0011】(3) 少なくとも一面にガスを通すこと
の出来る多孔性部分を有し、導電性の金属質母材及び該
金属質母材表面の上に被覆されている誘電体を有し、且
つ多孔性部分の面から内部に向かって垂直または法線方
向に3mm以上の深さまで該金属質母材表面の上に被覆
されている該誘電体を有することを特徴とする多孔性プ
ラズマ放電用電極。
【0012】(4) 前記金属質母材がアルミニウムセ
ラミックス、ステンレススティール、チタン合金及びチ
タン金属から選ばれる少なくとも一つであることを特徴
とする(2)または(3)に記載の多孔性プラズマ放電
用電極。
【0013】(5) 前記誘電体がセラミックス溶射し
たものであることを特徴とする(2)乃至(4)の何れ
か1項に記載の多孔性プラズマ放電用電極。
【0014】(6) 前記多孔性部分の面積が、電極の
表面積の3〜50面積%であることを特徴とする(1)
乃至(5)の何れか1項に記載の多孔性プラズマ放電用
電極。
【0015】(7) 前記多孔性部分の表面に開いてい
る孔の開口率が10〜95面積%であることを特徴とす
る(1)乃至(6)の何れか1項に記載の多孔性プラズ
マ放電用電極。
【0016】(8) 前記電極の内部が中空となってお
り、且つ温度調節用ジャケット部分とガス通路部分を有
していることを特徴とする(1)乃至(7)の何れか1
項に記載の多孔性プラズマ放電用電極。
【0017】(9) 印加電極とアース電極で構成され
る対向電極を有し、該印加電極が(1)乃至(8)の何
れか1項に記載の多孔性プラズマ放電用電極であり、該
印加電極に高周波電圧を印加する印加手段を有し、且つ
該電極間に希ガス及び薄膜形成性の反応性ガスを含有す
る混合ガスを供給するガス供給手段を有することを特徴
とする大気圧プラズマ放電処理装置。
【0018】(10) 前記多孔性プラズマ放電用電極
に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有するこ
とを特徴とする(9)に記載の大気圧プラズマ放電処理
装置。
【0019】(11) 前記対向電極の少なくとも一方
の電極の温度をコントロールする温度制御手段を有する
ことを特徴とする(9)または(10)に記載の大気圧
プラズマ放電処理装置。
【0020】(12) (9)乃至(11)の何れか1
項に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、対向
電極の電極間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、多
孔性プラズマ放電用電極の表面から不活性ガスを緩やか
に放出して該多孔性プラズマ放電用電極の表面を不活性
ガスで覆い、該電極間に高周波電圧を印加して放電し、
希ガス及び反応性ガスを含有する混合ガスを該電極間に
導入してプラズマ状態とし、且つ基材を該プラズマ状態
の混合ガスに晒すことを特徴とする薄膜形成方法。
【0021】(13) 前記希ガスがアルゴンまたはヘ
リウムから選ばれるガスであることを特徴とする(1
2)に記載の薄膜形成方法。
【0022】(14) 前記混合ガスが前記希ガスを9
0.0〜99.9体積%含有することを特徴とする(1
2)または(13)に記載の薄膜形成方法。
【0023】(15) 前記反応性ガスが有機フッ素化
合物、有機金属化合物、金属水素化合物及び金属ハロゲ
ン化合物から選ばれる少なくとも一つであることを特徴
とする(12)乃至(14)の何れか1項に記載の薄膜
形成方法。
【0024】(16) 前記有機金属化合物、金属水素
化合物及び金属ハロゲン化合物の金属がSi、Ti、S
n、Zn、In、Al、Cu及びAgから選ばれる少な
くとも一つの金属元素であることを特徴とする(15)
に記載の薄膜形成方法。
【0025】(17) 前記有機金属化合物が、金属ア
ルコキシド、β−ケトン金属錯体、β−ケト酸金属錯
体、β−ケト酸エステル金属錯体、及びケトオキシ金属
錯体から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とす
る(15)または(16)に記載の薄膜形成方法。
【0026】(18) 前記混合ガスが、反応性ガスと
して水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及
び炭酸ガスから選ばれる少なくとも一つを含有すること
を特徴とする(12)乃至(17)の何れか1項に記載
の薄膜形成方法。
【0027】(19) 前記混合ガスが、0.1〜10
体積%の前記反応性ガスを含有することを特徴とする
(12)乃至(18)の何れか1項に記載の薄膜形成方
法。
【0028】(20) 前記不活性ガスが、窒素、ヘリ
ウム及びネオンから選ばれる少なくとも一つであること
を特徴とする(12)乃至(19)の何れか1項に記載
の薄膜形成方法。
【0029】(21) 前記電極間に印加する電界が、
周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W
/cm2以上の電力を供給して放電させることを特徴と
する(12)乃至(20)の何れか1項に記載の薄膜形
成方法。
【0030】(22) (12)乃至(21)の何れか
1項に記載の薄膜形成方法により基材の上に薄膜を形成
したことを特徴とする高機能性フィルム。
【0031】本発明を以下に詳述する。本発明の多孔性
を有するプラズマ放電用電極、本発明の大気圧プラズマ
放電処理装置及びそれらを使用して基材へ薄膜を形成す
る方法について概略を説明する。
【0032】本発明において、プラズマ放電処理が大気
圧もしくはその近傍の圧力下で行われる際の大気圧近傍
の圧力は20kPa〜110kPa程度であり、本発明
に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜10
4kPaが好ましい。
【0033】大気圧プラズマ放電処理装置は、アース電
極と、対向する位置に配置された印加電極との対向電極
を有し、これらの対向電極の間で放電させ、当該電極間
に導入した希ガスと反応性ガスを含有する混合ガスをプ
ラズマ状態とし、該電極間を移送する基材を該プラズマ
状態の混合ガスに晒すことによって、該基材の上に高機
能薄膜を形成させるものである。また他の方式の大気圧
プラズマ放電処理装置は、対向電極間に上記と同様に放
電させ、該対向電極間に導入した混合ガスをプラズマ状
態とし、該対向電極外にジェット状に該プラズマ状態の
混合ガスを吹きつけ、該対向電極の近傍にある基材(静
置していても移送されていてもよい)を該プラズマ状態
の混合ガスに晒すことによって該基材の上に高機能薄膜
を形成させるジェット方式の装置である。
【0034】図1は、本発明に係る大気圧プラズマ放電
処理装置の一例を示す概略図である。なお、図1におい
ては、対向電極の少なくとも一方を多孔性部分を有する
プラズマ放電用電極に関する記述は省いて説明すること
とする。
【0035】図1の大気圧プラズマ放電処理装置は、プ
ラズマ放電処理装置30、ガス充填手段50、電圧印加
手段40、及び電極温度調節手段60で構成されてお
り、対向電極をロール回転電極35と角筒型固定電極群
36として、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成
するものである。基材Fは、図示されていない元巻きか
ら巻きほぐされて搬送して来るか、または前工程から搬
送されて来てガイドロール64を経てニップロール65
で基材に同伴して来る空気等を遮断し、ロール回転電極
35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群3
6との間を移送し、プラズマ放電処理を行い、ニップロ
ール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き
取り機で巻き取られるか、次工程に移送する。ガス充填
手段50のガス発生装置51で発生させた混合ガスG
を、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容
器31内に導入し、放電処理室32及び該プラズマ放電
処理容器31内を混合ガスGで満たし、放電処理済みの
処理排ガスG′を排気口53より排出する。次に電圧印
加手段40の高周波電源41を角筒型固定電極群36に
接続して電圧を印加し、ロール回転電極35にはアース
を接地し、対向電極間で放電プラズマを発生させる。ロ
ール回転電極35及び角筒型固定電極群36を加熱また
は冷却するために、電極温度調節手段60を用いて媒体
を電極に送液する。電極温度調節手段60で温度を調節
した媒体を送液ポンプPで配管61を経てロール回転電
極35及び角筒型固定電極群36内側から温度を調節す
る。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得
られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに
対して適宜制御することが望ましい。媒体としては、蒸
留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズ
マ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の
温度ムラが出来るだけ生じないように電極の内部の温度
を均等に調節することが望まれる。なお、68及び69
はプラズマ放電処理容器31と外界を仕切る仕切板であ
る。
【0036】図2は、図1に示したロール回転電極の導
電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構
造の一例を示す見取り図である。なお、図2において、
多孔性プラズマ放電用電極についての説明は省略する。
【0037】図2において、ロール電極35aは導電性
の金属質母材35Aとその上に誘電体が被覆されたもの
であり、内部は中空のジャケットになっていて温度調節
が行われるようのなっている。
【0038】図3は、角筒型電極の導電性の金属質母材
とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す見
取り図である。なお、図3において、多孔性プラズマ放
電用電極についての説明は省略する。
【0039】図3において、角筒型電極36aは、導電
性の金属質母材に対し、図2同様の誘電体の被覆を有し
ており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、
それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるよ
うになっている。
【0040】なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール
電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されて
いおり、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向
している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0041】図3に示した角筒型電極36aは、円筒型
電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放
電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に
好ましく用いられる。
【0042】ロール電極35aは、導電性の金属質母材
35Aの上に誘電体35Bとしてのセラミックスを溶射
後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミ
ックス被覆処理したものである。セラミックス誘電体は
片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミ
ックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用
いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特
に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライ
ニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体で
あってもよい。
【0043】角筒型電極36aは、導電性の金属質母材
36Aの上に誘電体36Bとして、上記と同様にセラミ
ックスを溶射により被覆した誘電体が好ましい。
【0044】導電性の金属質母材35A及び36Aとし
ては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステン
レススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄と
セラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミ
ックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理
由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0045】アース電極と印加電極の電極間の距離は、
導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の
大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定され
るが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と
導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に
誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、
いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20
mmが好ましく、特に好ましくは1±0.5mmであ
る。
【0046】本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘
電体についての詳細については後述する。
【0047】プラズマ放電処理容器31はパイレックス
(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、
電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能であ
る。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティー
ルのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても
良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性
をとってもよい。
【0048】図4は、本発明に係る大気圧プラズマ放電
処理装置の一例を示す概略図である。図4はジェット方
式の大気圧プラズマ放電処理装置を示したものである。
なお、図4において、後述する多孔性プラズマ放電用電
極についてはここでは省略してある。
【0049】高周波電源104により高周波電圧を印加
する印加電極101とアース電極102の対向電極の電
極間で放電を起こさせ、該電極間に混合ガスGを導入
し、そこでプラズマ状態の混合ガスG°(点線で表して
いる)がジェット状に下方に流れ(ジェット方式)、電
極下の処理位置103において静置してある基材F(例
えば、ガラス板)または移送して来る基材F(例えば、
フィルム)上に高機能性薄膜を形成させる。フィルム状
の基材Fの場合は、図示してない基材の元巻ロールから
巻きほぐされて搬送されるか、あるいは前工程から搬送
して来る。また、ガラス板のような基材Fもベルトコン
ベアのような移動体の上に載せられ移送して処理しても
よい。更に、ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理
装置を複数基接して直列に並べて同時に同じ放電させ、
基材そのものが移送しているか、あるいは基材がベルト
コンベアのようなものに載せられて移送していることに
より、何回も処理を受けるため高速で処理することも出
来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェ
ット噴射すれば、積層することも出来る。G′は処理排
ガスである。図4においても、図示してないが、図1の
電圧印加手段40、ガス充填手段50及び電極温度調節
手段60を有している。また電極の内部も中空となって
温度調節用のジャケットになっている。
【0050】上述のごとき大気圧プラズマ放電処理装置
の対向電極の少なくとも一方の電極に、本発明の多孔性
プラズマ放電用電極を使用することにより電極に薄膜成
分が付着することなく長時間連続運転が可能になる。
【0051】ここで、本発明の多孔性プラズマ放電用電
極について説明する。本発明の多孔性プラズマ放電用電
極は、電極の少なくとも一面に多孔性部分を有している
もので、多孔性部分にはガスを通すことの出来る大きさ
の孔が開いており、多孔性プラズマ放電用電極の中から
不活性ガス(後述する)が滲み出すように不活性ガスが
放出出来るようになっている。更に多孔性プラズマ放電
用電極の内部が部分的に中空になっていて電極の温度を
調節出来るジャケットになっていることが好ましい。上
述の図1のようなアース電極としてのロール回転電極に
巻き回しながら基材を移送して薄膜を形成する場合に
は、印加電極を本発明の多孔性プラズマ放電用電極とす
ることが望ましい。また、上述の図4のような場合に
は、印加電極とアース電極の両方の電極を本発明の多孔
性プラズマ放電用電極とすることが望ましい。
【0052】以下、図を用いて本発明の多孔性プラズマ
放電用電極を説明する。図5は本発明の多孔性プラズマ
放電用電極の1例を示す断面図である。図5は、図1に
示した角筒型電極を本発明の多孔性プラズマ放電用電極
とした例である。なお、図5においては、図3に示した
ような導電性の金属質母材及び誘導体については図示せ
ず省略してある。角筒型多孔性プラズマ放電用電極20
1は角パイプ状をしており、その対向する他方の電極側
(近い側)に多孔性部分202があり、外側(遠い側)
には非多孔性部分203となった構造をしている。図4
において、多孔性部分の多数の点は多孔性部分202の
微細な孔は鬆(す)がはいっている様子を示している。
それらの鬆(す)はつながっていて、ガスが通れるよう
になっている。この角筒型プラズマ放電用電極の内側の
中空部分204には不活性ガスHGが満たされており、
多孔性部分202の微細な孔からくねくねした経路(矢
印のように)を経て多孔性部分の表面に放出される。放
出した不活性ガスは多孔性プラズマ放電用電極の多孔性
部分202の表面近くに漂って存在し、混合ガスがそば
を通過しても、多孔性部分202の表面の不活性ガスH
G°はほとんど掻き乱されることなく、表面近くに存在
している。
【0053】図6は本発明の多孔性プラズマ放電用電極
の1例を示す断面図である。図6において、角筒型多孔
性プラズマ放電用電極301は、非多孔性の構造部分3
03と多孔性部分302とがあり、多孔性部分の孔は直
線的に開けられている。305はその孔である。孔をこ
のような構造にすると、内部からの不活性ガスHGが直
接多孔性部分の表面で外側に勢いよく放出する場合があ
るので、孔の直径は0.1mm程度(誘電体被覆後の直
径)の細いものが好ましい。また図示してないが、多孔
性部分の表面に孔を大きく開き、例えば漏斗を逆さまに
したような形の広がりを持たせることによって不活性ガ
スHGを緩く放出することが出来、しかもプラズマ放電
用電極の多孔性部分表面を不活性ガスHGで覆うように
なるので好ましい。図5及び6に示したような孔が多孔
性プラズマ放電用電極の多孔性部分の表面で開いている
開口率は10〜95面積%であることが好ましい。この
場合孔の先が多孔性部分で広がっている大きな孔(図示
してない)の面積もこの開口率に含まれる。
【0054】図7は、温度調節用ジャケットを有する多
孔性プラズマ放電用電極の1例を示す断面図である。図
7の角筒型多孔性プラズマ放電用電極401は、図5の
角筒型プラズマ放電用電極201の他の態様を示したも
ので、該電極の中空部分には、温度調節用ジャケット部
分405と不活性ガスHGを導入し多孔性部分に送る部
分404とを有している。図7における孔は、図5と同
様に微細なくねくねとした小さな孔をを示している。不
活性ガスHGが滲み出す過程も図5と同様である。この
図7においては、ジャケット部分405を有している
が、本発明においては、電極にジャケットを設けること
は好ましいことである。このようにジャケットを設ける
ことにより、高電圧を用いた場合にもより安定して、よ
り長時間の運転が可能となるので好ましい。
【0055】このように、本発明の多孔性プラズマ放電
用電極の多孔性部分の孔は、電極内側とその外側との間
をガスの経路が直線的に開けてあるものでも、図5に示
したような入り組んだ鬆(す)の入ったくねくねした経
路になっていてもよい。また、直線的な孔以外の孔の形
状は、文字で表すのはかなり難しいが、例えば、化学実
験で使用するガラスフィルターの濾材部分、金属ワイヤ
が絡み合って出来ているリーフディスクフィルターの金
属ワイヤ部分あるいは不織布等のようなものであっても
よく、何れも好ましく用いられる。要するにガスが滲み
出すように抵抗なく放出出来るような大きさの孔であれ
ば制限ない。
【0056】図8は、大気圧プラズマ放電処理装置の一
例を示す概略図である。図8は図1の印加電極の角筒型
固定電極群36を、凹面を有するプラズマ放電用電極6
02に代えたもので、アース電極としてのロール回転電
極601は図1のロール回転電極35と同様である。ロ
ール回転電極601に基材Fを巻き回しながら移送し、
高周波電源615に接続された印加電極の凹面を有する
プラズマ放電用電極602と、アースに接地されたロー
ル回転電極601との電極間隙603においてプラズマ
放電を発生させ、図示してないが図1のガス充填手段5
0のガス発生装置51と同様な手段及び装置から給気口
608を通して導入された混合ガスGがプラズマ状態と
し、基材F表面に薄膜を形成する。基材Fをガイドロー
ル604によりロール回転電極601に巻き付け、ニッ
プロール606で基材Fをロール回転電極601に押し
つけて基材Fに同伴して来る空気を遮断する。一方、プ
ラズマ放電処理容器610内に、給気口608とは別に
混合ガスGを給気口607から導入して混合ガスを満た
すようにする。プラズマ放電処理容器610はニップロ
ール606及び613、また仕切板609及び615で
仕切られ外界と遮断されている。処理排ガスG′は排気
口611から排出され、また使用されずにプラズマ放電
処理容器610内を通過した混合ガスGは排気口614
から排出される。凹面を有するプラズマ放電用電極60
2の、対向するロール回転電極601側の面には、図示
してないが、上記と同様な多孔性部分を有している。ま
たロール回転電極601及び凹面を有するプラズマ放電
用電極602の内部は中空になっていて電極の温度調節
用ジャケットを有しており、図示してないが、図1の温
度調節手段と同様な手段により電極の温度調節が行われ
る。図7において、多孔性部分、ジャケット部分等につ
いては上述のものと同様であるので、省略する。
【0057】図9は図8の凹面を有する多孔性プラズマ
放電用電極の1例を示す拡大断面図である。
【0058】図9は図6と同様な直線的な細い孔により
不活性ガスを滲み出すように放出する例である。凹面を
有する多孔性プラズマ放電用電極602は多孔性部分6
22と非多孔性部分623からなっている。多孔性部分
622には、直線的な細い孔625(例えば、誘電体被
覆後の直径0.1mm程度の孔)が無数に開いている。
凹面を有する多孔性プラズマ放電用電極の表面の凹面で
孔が漏斗型を逆さにしたように広がって開いていてもよ
い。電極内部からの不活性ガスHGが孔625を通り、
凹面表面において、滲み出た不活性ガスHG°が、該表
面を覆うように広がり、該電極をプラズマ放電処理から
保護される。624は不活性ガスHGの導入溜まりであ
り、626はジャケットである。
【0059】多孔性部分の材質は非多孔性の構造部分と
同じ導電性の金属質母材であることが好ましく、更に金
属質母材の上に誘電体で被覆されていることが好まし
い。放電中、プラズマ放電用電極の導電性の金属質母材
表面が露出しているとその金属表面部に放電が集中し放
電の不均一性、更には薄膜の不均一性を生じ易いという
問題がある。
【0060】図10は、図6のプラズマ放電用電極の一
部の拡大図と図1で示した大気圧プラズマ放電処理装置
のロール電極の一部を直線的に描き直し模式的に示した
部分拡大図である。図1の大気圧プラズマ放電処理装置
のロール回転電極の曲線を直線的に描き直し、ロール電
極735aとした。735A(ハッチの部分)及び73
5B(黒塗りの部分)はロール電極735aの金属質母
材及び誘電体である。その上に基材Fがある。736a
は角筒型多孔性プラズマ放電用電極で、736b及び7
36cは多孔性部分及び非多孔性部分(構造部分)であ
る。また、736A(ハッチの部分)及び736B(黒
塗りの部分)は、それぞれ角筒型多孔性プラズマ電極の
金属質母材と誘電体である。Gは混合ガス、G°はプラ
ズマ状態の混合ガス、HGは不活性ガス及びHG°(点
線で表している)は多孔性部分表面に漂う不活性ガスで
ある。多孔性部分には無数の孔705が開いている。7
04は不活性ガスがプラズマ放電用電極内部に貯めら
れ、満たされて、そして孔に滲むように放出する場所で
ある。
【0061】ガス充填手段(図1の50)からプラズマ
放電処理装置に供給された混合ガスGは、複数の角筒型
多孔性プラズマ放電用電極736aの間を通って基材F
面に向かい、印加電極の複数の角筒型多孔性プラズマ放
電用電極736aとアース電極のロール電極735aと
の間隙732において、プラズマ放電が発生し、混合ガ
スGをプラズマ状態の混合ガスG°とし、そこにある基
材Fの表面に高機能薄膜を形成する。この際に、多孔性
部分736bの孔705から滲み出た不活性ガスHG°
が多孔性部分の表面付近で纏わり付くように漂いプラズ
マ状態の混合ガスG°から多孔性部分を保護する。
【0062】もう一つの本発明は、上記のように多孔性
部分736bを保護しながら、基材Fに高機能薄膜を形
成している間に、多孔性のプラズマ放電用電極に付着し
易い混合ガスG°からの薄膜(汚れ)を該プラズマ放電
用電極の金属質母材に形成させないようにすることであ
る。この際重要なことは、図10において、対向する電
極(ここではロール電極)面に相対する多孔性プラズマ
放電用電極の面から内部に向かって、法線方向に直線距
離でLの深さまで誘電体を被覆しておくことである。L
は3mm以上で電極全体を覆うところまで被覆しておく
ことである。3mm未満では高出力を印加した場合に多
孔性部分の金属質母材が放電で損傷を受けたりすること
がある。このようにLを3mm以上とすることで、高出
力条件でも、長時間の高機能薄膜形成を行うことが出来
るメリットがある。Lは多孔性プラズマ放電用電極の形
状にもよるが、3〜20mmが好ましく、3〜15mm
がより好ましく、更に3〜10mmが好ましい。このよ
うにすることによって、薄膜が均一に形成され、ムラが
なく良好な薄膜が得られる。この特性は出来上がりの薄
膜の性質、例えば導電性の高機能薄膜であれば抵抗値を
測定することにより、抵抗値が小さくなることで検知出
来る。多孔性部分の細い孔、鬆(す)のようなくねくね
した孔、または金属質線の絡み合いの間の孔等の大きさ
は、前述したように、誘電体を被覆した後に少なくとも
0.1mmあることが望ましい。
【0063】本発明において、不活性ガスHGが多孔性
プラズマ放電用電極内部から該電極表面に向かって放出
される圧力は、大気圧プラズマ放電処理を実際に行う際
の圧力より1〜10kPa程度高いことが好ましい。ま
た、放出される不活性ガスの流量は、0.1〜10L/
cm2・minが好ましい。
【0064】本発明において、放電プラズマ処理時の基
材への影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処
理時の基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜300℃
以下の温度に調整することが好ましい。上記の温度範囲
に調整するため、必要に応じて電極、基材は温度調節手
段で冷却や加熱をしながら放電プラズマ処理される。
【0065】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理方法
おいて、対向する電極間に印加する高周波電圧は、10
0kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2
上の電力(出力密度)を供給し、混合ガスを励起してプ
ラズマを発生させる。
【0066】本発明において、電極間に印加する高周波
電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下
であり、より好ましくは15MHz以下である。また、
高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは20
0kHz以上、より好ましくは800kHz以上であ
る。
【0067】また、電極間に供給する電力の上限値は5
0W/cm2で、好ましくは50W/cm2以下であり、
またより好ましくは20W/cm2以下である。下限値
は1.2W/cm2で、好ましくは1.2W/cm2以上
である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放
電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0068】高周波電源より印加電極に印加される電圧
の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10
kV程度で、上記のように電源周波数は100kHzを
越えて150MHz以下に調整される。
【0069】ここで電源の印加法に関しては、連続モー
ドと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルス
モードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振
モードのどちらを採用しても良いが連続サイン波の方が
より緻密で良質な膜が得られる。
【0070】本発明においては、このような電圧を印加
して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極を
大気圧プラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0071】本発明においては、印加電極に電圧を印加
する電源としては、特に限定はないが、神鋼電機製高周
波電源(50kHz)、ハイデン研究所インパルス高周
波電源(連続モードで100kHz)、パール工業製高
周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源
(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MH
z)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)、
パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製
高周波電源(150MHz)等が使用出来る。好ましく
は、200kHz〜150MHzの高周波電源であり、
より好ましくは、800kHz〜15MHzのものであ
る。
【0072】このような大気圧プラズマ放電処理方法に
使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に
耐えられるものでなければならない。このような電極と
しては、導電性の金属質母材上に誘電体を被覆したもの
であることが好ましい。
【0073】本発明に使用する誘電体被覆電極において
は、様々な導電性の金属質母材と誘電体との間に特性が
合うものが好ましく、その一つの特性として、導電性の
金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10
-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは
8×10-6/℃以下、さらに好ましくは5×10-6/℃
以下、さらに好ましくは2×10-6/℃以下である。な
お、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値であ
る。
【0074】線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電
性の金属質母材と誘電体との組み合わせ、特に多孔性プ
ラズマ放電用電極に対しては、 導電性の金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、
誘電体がセラミックス溶射被膜 導電性の金属質母材がステンレススティールで、誘電
体がセラミックス溶射被膜 導電性の金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材
料で、誘電体がセラミックス溶射被膜 導電性の金属質母材がセラミックスおよびアルミの複
合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜 等が好ましく、線熱膨張係数の差という観点では、特に
が好ましい。
【0075】なお、非多孔性のプラズマ放電用電極にお
いて、上記の他に、上記した金属母材とガラスライニン
グの誘電体の組み合わせも使用することが出来るが、や
はり、〜が好ましく、特にが好ましい。
【0076】本発明において、導電性の金属質母材は、
上記の特性からはチタンまたはまたはチタン合金が特に
有用である。導電性の金属質母材をチタンまたはチタン
合金とすることにより、誘電体を上記とすることによ
り、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落
等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが
出来る。
【0077】本発明の多孔性プラズマ放電用電極及び本
発明に有用な対向する電極の導電性の金属質母材は、チ
タンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン
金属が特に好ましい。本発明において、チタン合金また
はチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上で
あれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%
以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に
有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタ
ン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用され
ているものを用いることが出来る。工業用純チタンとし
ては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げること
が出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原
子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの
含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性
チタン合金としては、T15PBを好ましく用いること
が出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン
含有量としては、98質量%以上である。また、チタン
合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウ
ムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT6
4、T325、T525、TA3等を好ましく用いるこ
とが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%
以上を含有しているものである。これらのチタン合金ま
たはチタン金属はステンレススティール、例えばAIS
I316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、導
電性の金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の
上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高
温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0078】一方、誘電体の求められる特性としては、
具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であるこ
とが好ましく、また、このような誘電体としては、アル
ミナ、窒化珪素等のセラミックス等がある。この中で
は、後述のセラミックスを溶射により設けたものが好ま
しい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好まし
い。
【0079】上記、大気プラズマ溶射法は、セラミック
ス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶
融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の母材に吹
き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源と
は、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネ
ルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスで
ある。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のア
ーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で母
材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得
ることが出来る。詳しくは、特開2000−30165
5に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方
法を参照することが出来る。
【0080】また、大電力に耐える別の好ましい仕様と
しては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることであ
る。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、
好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下であ
る。
【0081】本発明の薄膜形成方法に係る電極において
は、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0
601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が
10μm以下になるように調整することが、本発明に記
載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、
表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましく
は、7μm以下に調整することである。このように誘電
体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法によ
り、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つこ
とが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差
や残留応力による歪やひび割れを無くし、かつ、高精度
で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表
面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体
において行われることが好ましい。更にJIS B 0
601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.
5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下
である。
【0082】本発明に使用する誘電体被覆電極におい
て、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温
度が100℃以上であることである。更に好ましくは1
20℃以上、特に好ましくは150℃以上である。な
お、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出
来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指
す。
【0083】次に、本発明の高機能性薄膜を形成する混
合ガスについて説明する。使用する混合ガスは、基本的
に、希ガスと高機能性薄膜を形成するための反応性ガス
の混合ガスである。
【0084】希ガスとは、周期表の第18属元素、具体
的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キ
セノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明に記
載の緻密で、低比抵抗値を有する薄膜を形成する効果を
得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ
る。希ガスは、混合ガス100体積%に対し、90.0
〜99.9体積%含有されることが好ましい。
【0085】反応性ガスは、放電空間でプラズマ状態と
なり、高機能薄膜を形成する成分を含有するものであ
り、その主成分として少なくとも有機金属化合物または
金属化合物が好ましく用いられる。
【0086】本発明に有用な有機金属化合物としては、
金属β−ジケトン錯体等の有機金属錯体、金属アルコキ
シド、アルキル金属等を挙げることが出来るが、分子内
に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が
好ましく、特に、爆発の危険性のない金属β−ジケトン
錯体等の有機金属錯体、金属アルコキシドが好ましい。
ここで、アルキル基とβ−ジケトン錯体等の錯体、アル
コキシ基とβ−ジケトン錯体等の錯体、あるいはアルキ
ル基とアルコキシド基を同時に有するアルキル金属アル
コキシド、あるいはこれらのアルキル基、アルコキシ基
及びβ−ジケトン錯体等の錯体を同時に有するアルキル
金属アルコキシド−β−ジケトン錯体等の錯体も好まし
い。また、アルキル基、アルコキシ基またはβ−ジケト
ン錯体等の錯体基の炭素原子数は1〜18、好ましくは
1〜10である。更にアルキル基、アルコキシ基または
β−ジケトン錯体等の錯体は水素原子をフッ素原子で置
換したものでもよい。更に本発明に有用な有機金属化合
物として、ケトオキシ基と金属が錯体を形成する有機金
属錯体も好ましく用いることが出来、アルキル基、また
は金属β−ジケトン錯体等の有機金属錯体と同時に有機
金属化合物を形成してもよい。
【0087】本発明に有用なβ−ジケトン錯体基等の錯
体基としては、β−ジケトン、β−ケトカルボン酸、ま
たはβ−ケトカルボン酸エステルでもよく、例えば、β
−ジケトンとしては、2,4−ペンタジオン(アセチル
アセトン)、β−ケトカルボン酸としては、アセチル酢
酸(アセト酢酸)、β−ケトカルボン酸エステルとして
は、アセチル酢酸メチルエステル(アセト酢酸メチルエ
ステル)等を挙げることが出来、これらはβ−ジケトン
錯体を構成する骨格構造であり、これらの水素原子が他
の原子あるいは分子に置換されていてもよい。例えば、
上記のように、フッ素原子に置換されたもの、メチル基
に置換されたもの、フェニル基に置換されたもの等であ
る。また、ケトオキシ錯体基を有する有機金属錯体も本
発明において好ましく用いることが出来る。ケトオキシ
錯体基として、例えば、アセトオキシ、プロピオニルオ
キシ、アクリロキシ基、メタアクリロオキシ基等の錯体
を挙げることが出来る。
【0088】これらの有機金属化合物が一部ハロゲン原
子が金属やアルキル基に結合していてもよい。
【0089】また、金属化合物としては、水素化金属化
合物、ハロゲン化金属化合物、水酸化金属化合物、過酸
化金属化合物などを用いることも本発明においては可能
である。
【0090】本発明に有用な反応性ガスとしての有機金
属化合物または金属化合物の金属としては、例えば、L
i、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、S
c、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、
Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、M
o、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、L
a、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、
Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Luから選択される金属を含むことが出来
る。本発明において、Si、Ti、Zn、In、Al、
Cu及びAgから選ばれる少なくとも一つの金属を有す
る有機金属化合物、金属水素化合物または金属ハロゲン
化物が好ましい。
【0091】本発明に使用する有機金属化合物または金
属化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者
は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であって
も構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出
来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射
等の手段により気化させて使用される。有機金属化合物
または金属化合物を加熱により気化して用いる場合、常
温において液体で、沸点が200℃以下であるものが薄
膜の形成に好適に用いられる。上記有機金属化合物また
は金属化合物は、溶媒によって希釈して使用されても良
く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンな
どの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。な
お、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中におい
て、分子状、原子状に分解される為、基材上への薄膜の
形成、薄膜の組成などに対する影響は殆ど無視すること
が出来る。本発明において、有機金属化合物または金属
化合物を気化する際に使用する気化器は、市販のものを
使用することが出来、例えば、リンテック社製気化器を
挙げることが出来る。
【0092】本発明において、有機金属化合物または金
属化合物の反応性ガスに補助的に用いる反応性ガスとし
て、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及
び炭酸ガスから選ばれる少なくとも一つを含ませること
によって、更に多機能の薄膜を得ることが出来る。
【0093】本発明に係る多孔性プラズマ放電用電極か
ら滲み出る不活性ガスの成分は、大気圧プラズマ放電処
理において薄膜を形成しない成分で不活性であれば制限
なく使用出来るが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリ
プトン、キセノン及びラドンから選ばれる少なくとも1
種の周期表の第18属元素使用出来る。特に、ヘリウム
及びアルゴンが好ましい。また窒素ガスも好ましく用い
ることが出来る。特に、上述の混合ガス中の希ガスと同
一であることが好ましい。
【0094】上記または上記以外の反応性ガスを適宜選
択して、本発明の薄膜形成方法に使用することにより様
々な高機能性の薄膜を得ることが出来る。その一例とし
て、 電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、
Mo−Si 誘電体保護膜:SiO2、SiO、Si34、Al
23、Al23、Y23 透明導電膜:In23、SnO2、ITO エレクトロクロミック膜:WO3、IrO2、MoO3
25 蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS 磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe
23、Co、Fe34、Cr、SiO2、AlO3 超導電膜:Nb、Nb−Ge、NbN 太陽電池膜:a−Si、Si 反射膜:Ag、Al、Au、Cu 選択性吸収膜:ZrC−Zr 選択性透過膜:In23、SnO2 反射防止膜:SiO2、TiO2、SnO2 シャドーマスク:Cr 耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN 耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr 耐熱膜:W、Ta、Ti 潤滑膜:MoS2 装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu 等を挙げることが出来るが、本発明はこれに限られるも
のではない。
【0095】本発明の高機能性薄膜を形成する基材とし
ては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のも
の、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等
の薄膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定は
ない。基材が電極間に静置するか移送することの出来る
ものであればよい。平面形状のものとしては、ガラス
板、樹脂フィルム等を挙げることが出来る。材質的に
は、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを
使用出来る。具体的には、ガラスとしては、ガラス板、
レンズ等、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、
樹脂シート等を挙げることが出来る。
【0096】樹脂フィルムは本発明の大気圧プラズマ放
電処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送さ
せて高機能薄膜を形成することが出来るので、スパッタ
リングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生
産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適で
ある。
【0097】樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、
樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリア
セテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテ
ートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレ
ートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフ
タレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエス
テル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレ
フィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビ
ニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマ
ー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネ
ート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエ
ーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、
ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フ
ッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポ
リマー等を挙げることが出来る。
【0098】これらの素材は単独であるいは適宜混合さ
れて使用することも出来る。中でもコニカタックKC4
UX(コニカ(株)製、セルローストリアセテートフィ
ルム)ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTO
N(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使
用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリア
リレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン
などの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延
製膜、溶融押し出し製膜等の条件、更には縦、横方向に
延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出
来るものを得ることが出来る。これらの樹脂の表面にゼ
ラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエ
ステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したもの
も使用出来る。またこれら樹脂フィルム透明導電膜を有
する側の反対側の面に防眩層、クリアハードコート層、
反射防止層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応
じて透明導電膜側にに接着層、アルカリバリアコート
層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。ま
た、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。
フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μm
が好ましい。
【0099】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、こ
れらに限定されない。
【0100】実施例1 本実施例1は請求項1の多孔性プラズマ放電用電極を用
いた発明に係るものである。
【0101】〔大気圧プラズマ放電処理装置〕アース電
極として、図2に示したような金属質母材の上に誘電体
で被覆したロール電極35aを用い、また印加電極とし
て、図6に示したような角筒型の多孔性プラズマ放電用
電極301を用いた大気圧プラズマ放電処理を実施し
た。
【0102】ロール電極35aのような導電性の金属質
母材をチタン合金T64製としたジャケットロールと
し、該金属質母材の上に大気プラズマ溶射法により高密
度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、仕上がりのロ
ール径を1000mmφ、また幅手方向の長さを150
0mmとなるようにした。その後、テトラメトキシシラ
ンを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照
射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被
覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μ
mとなるように加工した。このロール回転電極は、最終
的な誘電体の空隙率は5体積%、このときの誘電体層の
SiOx含有率は75モル%、最終的な誘電体の膜厚
は、1mm(膜厚変動±1%以内)、誘電体の比誘電率
は10、導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の
差は、1.7×10-6/℃であった。
【0103】一方、印加電極としては、チタン合金T6
4製で図6で示したような多孔性部分に通ずる直線的な
細い孔を有し、ジャケット部分と不活性ガスHGを導入
し多孔性部分に送る流路部分とを有する構造のものであ
る。多孔性部分の導電性の金属質母材には無数の細い孔
が開いており、それらの孔の径は誘電体被覆後の直径と
して0.1mmとし、多孔性電極の表面における誘電体
被覆後の開口率を40面積%とした。誘電体の被覆は上
記アース電極と同様に行った。但し、多孔性の孔の内部
にも誘電体の被覆が行き届くようにした。対向するロー
ル電極の面に対するこの角筒型プラズマ放電用電極の多
孔性部分の面から、垂直に3mmの深さまでまで孔を塞
がないように誘電体を被覆した。この多孔性の角筒型プ
ラズマ放電用電極は、誘電体被覆後、基材の幅手方向の
長さ1500mm、対向電極に対する面の基材の移送方
向の長さ40mm、高さ50mmの仕上がりとした。こ
の印加電極の放電総面積は、1500mm(幅手方向の
長さ)×40mm(搬送方向の長さ)×25本(印加電
極の数)=15000cm2として大気圧プラズマ放電
処理装置にロール回転電極と25本の角筒型多孔性プラ
ズマ放電用電極を装備した。ロール回転電極をアース
(接地)し、角筒型多孔性プラズマ放電用電極群には高
周波電源としてパール工業製高周波電源CF−5000
0−2M(2MHz)を接続した。なお、ロール回転電
極はドライブにより回転させた。下記フィルムをアンワ
インダーから繰り出し、図1と同様にロール回転電極に
巻き回しながら移送し、下記条件で大気圧プラズマ放電
処理を行い、基材上にFドープSnO2透明導電膜を形
成した。
【0104】〔基材〕基材としては、厚さ80μm、幅
1500mm、長さ2500mのコニカタックKC4U
Xフィルムのロール巻きとして必要本数用意した。
【0105】 〔混合ガスと不活性ガス〕 〈FドープSnO2薄膜形成混合ガス組成〉 希ガス:アルゴン 99.4体積% 反応性ガス1:ジブチルジアセトキシ錫(リンテック社製気化器にてアルゴン ガスに混合) 0.1体積% 反応性ガス2:酸素 0.5体積% 反応性ガス3:フッ化メタン(混合ガスに対して) 500ppm 〈不活性ガス〉 不活性ガス:アルゴン(流量1L/cm2・nin) 〔プラズマ放電条件〕 プラズマ放電処理時の圧力:104kPa 出力密度:10W/cm2 処理速度:2m/min 対向電極間隙:1mm 多孔性プラズマ放電用電極からの不活性ガスを放出さる
際の圧力:106kPa 処理時間:連続して24時間処理 実施例2 本実施例2は請求項1の多孔性プラズマ放電用電極を用
いた発明に係るものである。
【0106】図9に示したような凹面を有する多孔性プ
ラズマ放電用電極を使用した。凹面を有する多孔性プラ
ズマ放電用電極の導電性の金属質母材はチタン合金T6
4製で、電極内部に温度調節用ジャケットと不活性ガス
の導通路がある。多孔性部分は、厚さ20mmの凹面部
分の金属質母材に、ガスが通過可能な、誘電体被覆後の
平均孔径0.1mmの直線的細かい孔が凹面に対して法
線方向に開いており、誘電体被覆後の開口率45面積%
とした。誘電体の被覆は実施例1の方法と同様に行った
が、プラズマ放電用電極の多孔性部分の面から、凹面に
対する法線方向に3mmの深さまでまで孔を塞がないよ
うに誘電体を被覆した。ロール電極は実施例1と同様の
ものを用いた。凹面を有する多孔性プラズマ放電用電極
の大きさは、基材の幅手方向の長さとして1500m
m、電極面の基材移送方向の長さ(凹面の弧の長さ)1
000mmのものを使用した。該ロール電極と凹面を有
する多孔性プラズマ放電用電極を図8と同様な大気圧プ
ラズマ放電処理装置に装備した。大気圧プラズマ放電処
理条件を実施例1と同様にして、基材上にFドープSn
2透明導電膜を形成した。
【0107】比較例1 角筒型多孔性プラズマ放電用電極を、多孔性でないもの
に変更した以外は実施例1と同様に24時間の連続処理
を行った。
【0108】比較例2 凹面を有する多孔性プラズマ放電用電極を多孔性でない
凹面を有するプラズマ放電用電極に変更した以外は実施
例2と同様に行った。
【0109】上記実施例1及び2、比較例1及び2につ
いて下記の評価を行い結果を表1に示した。
【0110】〔評価〕 〈スジの評価〉24時間連続プラズマ放電処理を行った
基材を各巻きロールごとの巻き終わり部分から全幅10
m試料を切り出し、それぞれを全幅1mの長さに更に裁
断しスジ用試料とした。2mの長さの蛍光灯を5本10
cm間隔で並べた光源パネルを作り、1mのスジ用試料
に該光源パネルの蛍光灯を映し、蛍光灯の微妙な曲がり
具合を観察し、下記のようなレベルでスジの評価を行っ
た。
【0111】A:スジなし B:スジ1〜3本 C:スジ4本以上 〈薄膜片の落下欠陥の評価〉印加電極のプラズマ放電用
電極から落下して来る薄膜片を、大気圧プラズマ放電処
理装置の巻き取り前にインラインで、反射光と透過光を
同時に検出出来る欠陥検出装置により、薄膜形成中24
時間基材全長をチェックした。欠陥検出装置が欠陥を表
示した場所と個数をカウントし、下記のようなレベルで
評価した。
【0112】A:薄膜片0個 B:薄膜片1〜5個 C:薄膜片6個以上
【0113】
【表1】
【0114】(結果)本発明の多孔性プラズマ放電用電
極を使用した大気圧プラズマ放電処理装置を用いて24
時間連続運転したところ、スジも薄膜片の落下による欠
陥もなく、長時間安定して、品質良好な高機能薄膜を形
成することが出来た。これに対して非多孔性のプラズマ
放電用電極を使用したものは、スジも発生し、薄膜片の
落下による欠陥もあり、これらを削除すると収率が低下
し、安定した生産、品質も劣化の懸念がある。
【0115】実施例3 本実施例3は請求項3のプラズマ放電用電極を用いた発
明に係るものである。
【0116】実施例2で使用し図9に示した凹面を有す
る多孔性プラズマ放電用電極を使用した。実施例2で使
用した凹面を有する多孔性プラズマ放電用電極の多孔性
部分の表面から凹面に対して法線方向に下記のようなL
の深さまで誘電体を実施例1と同様な方法で被覆及び大
気圧プラズマ溶射を行い、Lをそれぞれ10mm、5m
m、4mm、3mm、2mm及び1mmとし、6種の凹
面を有する多孔性プラズマ放電用電極を用意した。ロー
ル電極は実施例1と同様なものを使用した。ロール電極
とそれぞれの6種の多孔性プラズマ放電用電極を実施例
2で使用した大気圧プラズマ放電処理装置にそれぞれ装
備した。基材としては実施例1で使用した2500m長
のコニカタックKC4UXフィルムを用い、そのフィル
ムの上に、混合ガス、不活性ガス及び放電条件を実施例
1と同様にしてそれぞれ大気圧プラズマ放電処理を行
い、膜厚が100nmとなるようにそれぞれFドープS
nO 2高機能性フィルムを作製した。下記の評価を行い
結果を表2に示した。
【0117】〔評価〕 〈抵抗値の測定〉それぞれの高機能フィルム2500m
の長さ全長から100m間隔で、幅方向に両端から20
cmの部分中央の部分で20cm四方の試料を切り出し
た。23℃、20%RHの雰囲気中において、市販のテ
スターを用いテスター触針間隔を20mmとして抵抗値
を測定した。全測定点の平均抵抗値、及び最大抵抗値と
最低抵抗値とのバラツキの大きさで評価した。
【0118】
【表2】
【0119】(結果)本発明の多孔性プラズマ放電用電
極のLが3mm以上では平均抵抗値もそのバラツキも小
さく、電極が損傷することなく安定した生産が出来るこ
とが判った。これに対して、Lが3mm未満では平均抵
抗値及びバラツキも大きく、電極が破損し易いことが判
る。
【0120】
【発明の効果】本発明の多孔性プラズマ放電用電極を大
気圧プラズマ放電処理装置に用いることにより、対向電
極への汚れの付着を起こさせることなく、基材への薄膜
形成が長時間にわたって安定して行うことが出来、生産
性や品質に優れた高機能性薄膜を形成することが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一
例を示す概略図である。
【図2】図1に示したロール回転電極の導電性の金属質
母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示
す見取り図である。
【図3】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被
覆されている誘電体の構造の一例を示す見取り図であ
る。
【図4】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一
例を示す概略図である。
【図5】本発明の多孔性プラズマ放電用電極の1例を示
す断面図である。
【図6】本発明の多孔性プラズマ放電用電極の1例を示
す断面図である。
【図7】温度調節用ジャケットを有する多孔性プラズマ
放電用電極の1例を示す断面図である。
【図8】大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略
図である。
【図9】図8の凹面を有する多孔性プラズマ放電用電極
の1例を示す拡大断面図である。
【図10】図6のプラズマ放電用電極の一部の拡大図と
図1で示した大気圧プラズマ放電処理装置のロール電極
の一部を直線的に描き直し模式的に示した部分拡大図で
ある。
【符号の説明】
30 プラズマ放電処理装置 35 ロール回転電極 36 角筒型固定電極群 40 電圧印加手段 50 ガス充填手段 60 電極温度調節手段 301 角筒型多孔性プラズマ放電用電極 302 多孔性部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大石 清 東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会 社内 (72)発明者 水野 航 東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会 社内 (72)発明者 西脇 彰 東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会 社内 Fターム(参考) 4G075 AA24 BC01 BD01 BD14 BD26 CA47 CA63 DA02 DA12 EA06 EB01 EC21 EC30 ED04 ED09 EE31 FA02 FA11 FA14 FB02 FB04 4K030 AA04 AA11 AA14 AA17 JA09 JA10 JA16 JA18 KA15 KA41 KA46 KA47 5F045 AB02 AB04 AB31 AB32 AB33 AC07 AE29 BB08 BB14 CA13 CA15 DP22 EF05 EH05 EH12

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一面にガスを通すことが出来
    る多孔性部分を有することを特徴とする多孔性プラズマ
    放電用電極。
  2. 【請求項2】 前記電極が、導電性の金属質母材及び該
    金属質母材の上に被覆されている誘電体を有しているこ
    とを特徴とする請求項1に記載の多孔性プラズマ放電用
    電極。
  3. 【請求項3】 少なくとも一面にガスを通すことの出来
    る多孔性部分を有し、導電性の金属質母材及び該金属質
    母材表面の上に被覆されている誘電体を有し、且つ多孔
    性部分の面から内部に向かって垂直または法線方向に3
    mm以上の深さまで該金属質母材表面の上に被覆されて
    いる該誘電体を有することを特徴とする多孔性プラズマ
    放電用電極。
  4. 【請求項4】 前記金属質母材がアルミニウムセラミッ
    クス、ステンレススティール、チタン合金及びチタン金
    属から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする
    請求項2または3に記載の多孔性プラズマ放電用電極。
  5. 【請求項5】 前記誘電体がセラミックス溶射したもの
    であることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に
    記載の多孔性プラズマ放電用電極。
  6. 【請求項6】 前記多孔性部分の面積が、電極の表面積
    の3〜50面積%であることを特徴とする請求項1乃至
    5の何れか1項に記載の多孔性プラズマ放電用電極。
  7. 【請求項7】 前記多孔性部分の表面に開いている孔の
    開口率が10〜95面積%であることを特徴とする請求
    項1乃至6の何れか1項に記載の多孔性プラズマ放電用
    電極。
  8. 【請求項8】 前記電極の内部が中空となっており、且
    つ温度調節用ジャケット部分とガス通路部分を有してい
    ることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載
    の多孔性プラズマ放電用電極。
  9. 【請求項9】 印加電極とアース電極で構成される対向
    電極を有し、該印加電極が請求項1乃至8の何れか1項
    に記載の多孔性プラズマ放電用電極であり、該印加電極
    に高周波電圧を印加する印加手段を有し、且つ該電極間
    に希ガス及び薄膜形成性の反応性ガスを含有する混合ガ
    スを供給するガス供給手段を有することを特徴とする大
    気圧プラズマ放電処理装置。
  10. 【請求項10】 前記多孔性プラズマ放電用電極に不活
    性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有することを特
    徴とする請求項9に記載の大気圧プラズマ放電処理装
    置。
  11. 【請求項11】 前記対向電極の少なくとも一方の電極
    の温度をコントロールする温度制御手段を有することを
    特徴とする請求項9または10に記載の大気圧プラズマ
    放電処理装置。
  12. 【請求項12】 請求項9乃至11の何れか1項に記載
    の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、対向電極の電
    極間を大気圧もしくはその近傍の圧力とし、多孔性プラ
    ズマ放電用電極の表面から不活性ガスを緩やかに放出し
    て該多孔性プラズマ放電用電極の表面を不活性ガスで覆
    い、該電極間に高周波電圧を印加して放電し、希ガス及
    び反応性ガスを含有する混合ガスを該電極間に導入して
    プラズマ状態とし、且つ基材を該プラズマ状態の混合ガ
    スに晒すことを特徴とする薄膜形成方法。
  13. 【請求項13】 前記希ガスがアルゴンまたはヘリウム
    から選ばれるガスであることを特徴とする請求項12に
    記載の薄膜形成方法。
  14. 【請求項14】 前記混合ガスが前記希ガスを90.0
    〜99.9体積%含有することを特徴とする請求項12
    または13に記載の薄膜形成方法。
  15. 【請求項15】 前記反応性ガスが有機フッ素化合物、
    有機金属化合物、金属水素化合物及び金属ハロゲン化合
    物から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする
    請求項12乃至14の何れか1項に記載の薄膜形成方
    法。
  16. 【請求項16】 前記有機金属化合物、金属水素化合物
    及び金属ハロゲン化合物の金属がSi、Ti、Sn、Z
    n、In、Al、Cu及びAgから選ばれる少なくとも
    一つの金属元素であることを特徴とする請求項15に記
    載の薄膜形成方法。
  17. 【請求項17】 前記有機金属化合物が、金属アルコキ
    シド、β−ケトン金属錯体、β−ケト酸金属錯体、β−
    ケト酸エステル金属錯体、及びケトオキシ金属錯体から
    選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項
    15または16に記載の薄膜形成方法。
  18. 【請求項18】 前記混合ガスが、反応性ガスとして水
    素ガス、酸素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及び炭酸
    ガスから選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴
    とする請求項12乃至17の何れか1項に記載の薄膜形
    成方法。
  19. 【請求項19】 前記混合ガスが、0.1〜10体積%
    の前記反応性ガスを含有することを特徴とする請求項1
    2乃至18の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  20. 【請求項20】 前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム及
    びネオンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴
    とする請求項12乃至19の何れか1項に記載の薄膜形
    成方法。
  21. 【請求項21】 前記電極間に印加する電界が、周波数
    100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm
    2以上の電力を供給して放電させることを特徴とする請
    求項12乃至20の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  22. 【請求項22】 請求項12乃至21の何れか1項に記
    載の薄膜形成方法により基材の上に薄膜を形成したこと
    を特徴とする高機能性フィルム。
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