JP2003314712A - 温水栓バルブ - Google Patents
温水栓バルブInfo
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Abstract
もって密着することにより、高い耐食性を示す弁体を備
えた温水栓バルブを提供する。 【解決手段】 本発明の温水栓バルブは、互いに摺動す
る2枚の弁体1、9の少なくとも一方が、ポア11aを
有するアルミナセラミックスからなる基材11と、その
基材の摺動面を被覆するダイヤモンド状炭素膜12とを
有しており、そのダイヤモンド状炭素膜がケイ素および
水素を含有するとともに、実質的にポア11a内部にも
被覆されている。
Description
合栓、切り替えレバー混合栓などをはじめとする水栓、
混合水栓などの可動弁体と固定弁体とを有する温水栓バ
ルブに関するものである。
レバー混合栓のような可動弁体と固定弁体とを有する温
水栓バルブは、2枚の円盤状の弁体のうち、1枚の弁体
をもう1枚の弁体の上で摺動させることにより、2枚の
弁体の間で流体の通路を形成したり閉じたりしていた。
合わされた状態になるため、ラッピング加工などにより
面粗さをできるだけ小さくして、摺動時に異常な加重が
加わって摺動面が損傷を受けないように工夫されてい
た。
摺動面が摩耗して、かじりついたり、あるいは水漏れが
発生したりするという課題があった。このため、極めて
平滑で自己潤滑性に優れたダイヤモンド状炭素膜を摺動
面に被覆して、これらの課題をクリアする試みが多く行
なわれてきた。
は、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ
CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、膜中
に水素を35atomic%以下含有するダイヤモンド状炭素
膜を弁体表面に直接被覆した温水栓バルブが開示されて
いる。
膜を被覆せずに、中間層を介してダイヤモンド状炭素膜
を被覆する方法も種々開示されている。たとえば、特開
平5−79069号公報には、金属、またはその炭化
物、窒化物、炭窒化物から選ばれる少なくとも1種類以
上の薄膜を傾斜組成を設けながら介在させて、その上に
ダイヤモンド状炭素膜を被覆した温水栓バルブが開示さ
れている。
−96368号公報には、弁体表面に中間層として炭化
ケイ素のようなシリコン(Si)系非酸化物膜を介して
表層にダイヤモンド状炭素膜を被覆することが開示され
ている。
ミックスの弁体表面に、チタン(Ti)膜、シリコン膜
の順序で積層した中間層を介してダイヤモンド状炭素膜
を被覆することが開示されている。
面にチタン(Ti)、またはクロム(Cr)からなる中
間層を設け、さらにその上にケイ素または炭化ケイ素
(SiC)からなる中間層を設けた上にダイヤモンド状
炭素膜を被覆した温水栓バルブが開示されている。
イ素を中間層として、その上にダイヤモンド状炭素膜を
被覆した温水栓バルブが開示されている。
試みも開示されている。たとえば、特開平9−9636
8号公報は、弁体の摺動面上に存在するポアの形状およ
び分布状態について開示している。
弁体表面に中間層として炭化ケイ素のようなシリコン系
非酸化物膜を介して表層にダイヤモンド状炭素膜を被覆
するとともに、もう一方の弁体の摺動面が炭化ケイ素焼
結体からなり、さらにその摺動面に3次元網目構造の開
放気孔を持ち、その気孔内にフッ素系オイルおよびシリ
コン系オイルのうち少なくとも1種からなる潤滑剤が含
浸されている温水栓バルブの構造を開示している。
公報の中で開示されている技術による温水栓バルブは、
高温多湿下、温水冷水による急激な温度変化、摺動によ
る大きな荷重が加わるような厳しい使用条件下では、摺
動面上の被膜の密着性が低い、あるいは/および使用水
に対する耐食性が悪いため、長期間の使用が困難であっ
た。またこれらの温水栓バルブは、製造コストが高くな
り非経済的であるという問題点も有していた。以下その
ことを説明する。
技術では、ダイヤモンド状炭素膜が摺動面を構成するア
ルミナセラミックスに密着性よく被覆されないため、使
用時に容易にダイヤモンド状炭素膜が剥離し、摺動面に
おけるかじりが発生していた。
技術では、中間層としての金属膜とダイヤモンド状炭素
膜との間の密着性が低いため、使用時に容易にダイヤモ
ンド状炭素膜が剥離し、摺動面におけるかじりが発生し
ていた。
た技術では、炭化ケイ素を被覆するには反応槽内を50
0℃以上に加熱する必要があるため、被覆設備が大掛か
りとなるばかりでなく、反応槽内の加熱、冷却に多くの
時間とエネルギーとを要するため非経済的である。
技術では、イオンプレーティングをはじめとするPVD
(Physical Vapor Deposition)法、CVD法、スパッ
タリング法などの手法を用いて形成された炭化ケイ素膜
を中間層として、アルミナバルブの摺動面に被覆するこ
とが開示されている。特にイオンプレーティング法を用
いれば、炭化ケイ素膜とダイヤモンド状炭素膜とが、低
温でかつ連続して被覆できると記載されている。しか
し、イオンプレーティング法のような物理的蒸着法によ
って被覆するならば、後述するようにアルミナの摺動面
に存在するポア(気孔)の内部への被膜の付き周りが不
十分であるため、十分な耐食性が得られないという欠点
が生じる。
た技術では、後述する理由により、使用環境下での耐食
性が極めて低いため、長期間使用に耐えることは困難で
ある。
た技術では、ケイ素を中間層として用いる場合、後述の
理由により、使用環境下での耐食性が極めて低いため、
長期間使用に耐えることが困難である。また、ケイ素以
外の金属化合物を中間層として用いた場合も、これらの
中間層がスパッタリング法などの物理蒸着法によって被
覆されるため、後述する理由により、使用環境下での耐
食性が低いため、長期間使用に耐えることが困難であ
る。
た技術では、ダイヤモンド状炭素膜を被覆する弁体とは
別の相手側の弁体が炭化ケイ素焼結体で作製されるが、
炭化ケイ素焼結体は極めて硬いセラミックスであり、加
工性が極めて悪いため、製造コストが高くなる。
なされたものであり、より高い密着性と高い耐食性とを
有する被膜により摺動面が被覆された弁体を備える温水
栓バルブに関するものである。
は、互いに摺動する2枚の弁体のうち、少なくとも一方
の弁体がポア(気孔)を有するアルミナセラミックス
と、そのアルミナセラミックスの摺動面に被覆されたダ
イヤモンド状炭素膜とを有する温水栓バルブにおいて、
ダイヤモンド状炭素膜がケイ素および水素を含有すると
ともに、実質的にポア内部にも被覆されたことを特徴と
するものである。
ダイヤモンド状炭素膜に炭化ケイ素が含まれ、ダイヤモ
ンド状炭素膜中に含まれるケイ素成分の割合が、アルミ
ナセラミックス側から最表面側に向かって減少してい
る。
ダイヤモンド状炭素膜が、ケイ素を含有する第1の膜
と、ケイ素を実質上不純物としてのみ含むカーボンを主
要成分とする第2の膜との積層構造を有し、第1の膜に
含有されるケイ素が主に炭化ケイ素として第1の膜に含
まれるとともに、第2の膜がダイヤモンド状炭素膜の最
表面に位置している。
ダイヤモンド状炭素膜中に含まれるケイ素と炭素との原
子数の割合が、ケイ素の原子数に対する炭素の原子数の
割合(炭素原子数/ケイ素原子数)で1.5以上の範囲
内である。
ダイヤモンド状炭素膜において、第1の膜中に含まれる
ケイ素と炭素との原子数の割合が、ケイ素の原子数に対
する炭素の原子数の割合で1.5以上4.0以下の範囲
内である。
ダイヤモンド状炭素膜とアルミナセラミックスとの間
に、クロム、ゲルマニウム、チタン、タングステンおよ
びニッケルよりなる群から選ばれる1種以上の金属から
なる膜が存在している。
ダイヤモンド状炭素膜の厚みが0.1μm以上2μm以
下で、ダイヤモンド状炭素膜とアルミナセラミックスと
の間に設けられる金属膜の厚みが0.05μm以上1μ
m以下である。
相手攻撃性の低い、すなわち摺動特性に優れたダイヤモ
ンド状炭素膜を、弁体のアルミナ摺動面に密着性よく被
覆し、さらに耐食性にも優れた被膜の構造を提供するも
のであり、具体的には、膜中にケイ素を含むとともに、
そのケイ素の大半が非晶質の炭化ケイ素として存在して
いるダイヤモンド状炭素膜を摺動面に備えた温水栓バル
ブを提供するものである。
ンド状炭素膜を被覆したアルミナセラミックス製の温水
栓バルブは、使用している際に、被膜が十分な密着性を
有しないため、ダイヤモンド状炭素膜、あるいは中間層
の薄膜が剥離してしまい、かじりつく現象が発生してい
た。
表面は、非常に荒れた状態になっていた。あるいは、ダ
イヤモンド状炭素膜が剥離していない状態であっても、
アルミナセラミックスの摺動面に存在するポアの側壁面
が侵食され、アルミナの粒子、あるいはアルミナ粒子間
を形成する粒界相が脱落し、その粒子が2枚の弁体の間
にかじりつく現象が発生していた。
追求した結果、そのメカニズムとして、以下のことを推
定するに至った。すなわち、本発明者らは、温水栓バル
ブが使用される状態を加速させるために以下の評価を行
なった。
ップ加工されたアルミナ製の温水栓バルブを用い、摺動
面にスパッタリング法によりケイ素膜を被覆した後にプ
ラズマCVD法によりダイヤモンド状炭素膜を被覆した
サンプルを用いた。
濃度pHを8〜9に調整した水を90℃に加熱し、その
中に評価用サンプルを浸し、そのまま200時間保持し
た。水の水素イオン濃度をアルカリ性にする理由は、市
水を加熱した状態で保持すると、アルカリ性に変質する
場合が起こるためである。その理由はまだ定かではない
が、市水中に溶解している炭酸ガスや次亜塩素酸ガスが
加熱により脱気するためと考えられる。
価用サンプルの表面状態をSEM(Scanning Electron
Microscope)、EDX(Energy-Dispersive X-ray Spec
trometer)などによって評価した。その結果、以下のこ
とが判明した。
面上に被覆したダイヤモンド状炭素膜は、被覆領域全域
に亘って剥離が発生していた。
表面に存在するポアの周辺部から発生していた。また、
剥離は、アルミナと中間層のケイ素膜との間で発生して
いた。
の表面状態は、面粗さが著しく劣化しており、アルミナ
粒子同士の間に存在する粒界相が腐食されていた。
も、その領域内にポアが存在する場合、内部が侵食され
ているポアが多数存在していた。
メカニズムを以下のように推定した。
させるために、焼結助剤としてMgO、SiO2などが
僅かに添加されるが、これらの焼結助剤がアルミナの表
面層と反応し、アルミナ粒子同士の間に粒界相を形成す
る。粒界相は、アルミナマトリックスの三次元ネットワ
ークを構築するために重要な役割を果たすが、試験に供
したアルカリ水溶液はこの粒界相を腐食する。
高いため、腐食されて脆化したアルミナはダイヤモンド
状炭素膜の応力によって膜剥離を発生する。
とにより、アルミナ粒子が脱落していく。
溶液に対して耐食性を持たない材質を用いてバルブ表面
を被覆した場合、バルブ表面に存在する一部のポアから
アルミナセラミックスのマトリックス中に浸入したアル
カリ水溶液が、さらにアルミナセラミックスの摺動面に
まで浸入し、摺動面の粒界相を介して接触していたケイ
素膜を腐食させる。あるいは、ダイヤモンド状炭素膜が
被覆せずに露出しているケイ素膜が存在すれば、そのケ
イ素膜を腐食させる。
界面の密着性が低下する。 (f)ダイヤモンド状炭素膜の内部応力が高いため、ケ
イ素膜とアルミナの界面で剥離が生じ、アルミナが露出
する。
剥離や、ポアの内壁の侵食を防止するには、アルミナセ
ラミックスに存在するポアの内部、ならびに摺動面に存
在する粒界相をアルカリ水溶液に接触させないようにす
ればよいと本発明者らは推定した。
ヤモンド状炭素膜をアルミナ表面に密着性よく被覆する
ための中間層として炭化ケイ素膜を被覆する手法の1つ
であるスパッタリング法は、物理的蒸着法であり、炭化
ケイ素から形成されたスパッタカソードにアルゴンのよ
うな不活性ガスを照射し、カソード表面から飛び出した
炭化ケイ素分子をカソードに対向して配置した基材の表
面に付着させるものである。このため、スパッタリング
法では、常温または常温付近での成膜が可能であるが、
アルミナセラミックスの表面に存在する多数のポアの深
部にまで実質的に膜を被覆することは困難であり、さら
にポアの内壁を構成する三次元形状のアルミナ粒子の表
面、特にカソード側から直接見えない、ポア内部のアル
ミナ粒子の裏側に実質的に膜を被覆することが著しく困
難であるため、膜が被覆不可能な箇所を有するポアが存
在する。
VD法で被覆されるが、プラズマCVD法はガス原料の
化学反応を用いており、三次元形状や細孔部の内部に被
覆することが可能である。しかし、ダイヤモンド状炭素
膜は、アルミナセラミックスに密着性よく直接被覆する
ことが困難であるため、通常は公知のようにスパッタリ
ングによって被覆された炭化ケイ素膜の上にのみ被覆さ
れる。
イ素を被覆してさらにダイヤモンド状炭素膜を被覆した
場合、アルミナセラミックスの摺動面上のポアの内面に
面する粒界相のうち、炭化ケイ素が被覆されない粒界相
が、アルカリ水によって腐食される。そして、その腐食
された粒界相から腐食が進行し、ラップ加工されたアル
ミナセラミックスの摺動面に存在する粒界相が腐食され
ると、その箇所のアルミナセラミックスの摺動面の面粗
さが悪くなり、またその箇所に存在する炭化ケイ素とア
ルミナセラミックスとの密着性が悪くなる。
部応力が高いため、その下部の炭化ケイ素膜のアルミナ
セラミックスに対する密着性が悪くなると、ダイヤモン
ド状炭素膜の内部応力により炭化ケイ素膜から剥離して
しまう。そのため、スパッタリング法を用いて成膜した
炭化ケイ素膜は、バルブの長時間使用には耐えきれな
い。
D法で炭化ケイ素膜を被覆する場合、原料ガスの化学的
な反応を用いるため、上に説明したスパッタリング法の
ような三次元形状への不均一な被覆はなく、均一に炭化
ケイ素が被覆され、ボイド内部や深部へも実質的に被覆
することが可能である。
7882号公報に開示されているように500℃以上、
さらには700℃〜900℃が好ましいとされており、
その温度に炉内を加熱するためには、加熱するための大
きなエネルギと加熱・冷却するための時間、ならびにそ
れに相当するコストが必要となり、経済的ではない。ま
た、高温に耐えるための特殊な材質からなる治具も必要
となる。
ブの被覆膜に関して新しい知見を与えるものである。以
下、本発明の作用について説明する。
面がアルミナセラミックスから構成されているが、摺動
面は相手側の弁体とのかじりを防ぐために、ラップ加工
などを施して、表面粗さを整える必要がある。この場
合、相手側の弁体との摺動をより潤滑に行なうために、
摺動面に適当な大きさのポアが適当な割合で存在してい
ることが必要である。このポアに極少量の水が溜まり、
それが潤滑剤としての役目を果たすのである。
るために、この摺動面の上にダイヤモンド状炭素膜が被
覆される。ダイヤモンド状炭素膜は、DLC(Diamond
LikeCarbon)、硬質炭素膜、非晶質炭素膜とも呼ばれる
膜で、硬質ながら相手攻撃性が著しく低いために、高い
摺動特性が必要とされる分野で使用されることが多い。
が含まれていることが必要である。ダイヤモンド状炭素
膜内に含まれるケイ素成分は、ケイ素として含有されて
いてもかまわないが、ケイ素成分の一部は炭化ケイ素と
して含まれていることが必要である。炭化ケイ素は、ダ
イヤモンド状炭素膜と同じく周期律表の第IVb族の元
素で構成されるため、炭化ケイ素とダイヤモンド状炭素
膜とは高い密着性を保ちながら結合することができる。
ケイ素との含有割合は、X線光電子分光分析(XPS:
X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって評価すれ
ばよい。この場合、XPSのチャートに現れるピークプ
ロファイルをケイ素と炭化ケイ素とのピークに分割して
やり、各々のピークの面積比でそれぞれの含有率を求め
ることができる。
イ素の原子数とカーボンの原子数との割合も、XPSに
よって評価することができる。この場合、検出されるケ
イ素の原子数は、炭化ケイ素に含まれるケイ素の原子数
と単独で存在するケイ素の原子数との合計として表わさ
れ、ケイ素の原子数に対するカーボンの原子数の割合
は、金属膜とダイヤモンド状炭素膜との界面付近からダ
イヤモンド状炭素膜の最表面側に向かうにつれて増加し
てくる。
ダイヤモンド状炭素膜中に含まれるケイ素成分の割合が
アルミナセラミックス側から最表面側に向かって減少し
ているような膜構造または、(ii)ケイ素を含有する第
1の膜と、ケイ素を実質上不純物としてのみ含むカーボ
ンを主要成分とする第2の膜との2層の積層構造を有す
る構造からなり、第1の膜に含まれるケイ素成分が主に
非晶質の炭化ケイ素として含まれるとともに、第2の膜
が最表面に位置するような膜構造である。
いても、ダイヤモンド状炭素膜中に含まれるケイ素と炭
素との原子数の割合は、ケイ素に対する炭素の原子数の
割合で1.5以上であることが必要である。特に、後者
の(ii)のような膜構造の場合、ケイ素を含有する第1
の膜に含まれるケイ素と炭素との原子数の割合は、ケイ
素の原子数に対する炭素の原子数の割合で1.5以上
4.0以下であることが必要である。
に対する炭素の原子数の割合が1.5よりも小さいと、
ケイ素の添加効果が小さくなり、ダイヤモンド状炭素膜
が密着性よく基材の被覆面に被覆されず、同じくその割
合が4.0よりも高い場合にはダイヤモンド状炭素膜が
密着性よく基材の被覆面に被覆されず、しかも上に説明
したようなアルカリ性の水溶液に対する耐食性が劣化す
る。
状炭素膜をケイ素を含む第1の膜と、実質的に不純物と
してのみケイ素を含みカーボンを主要成分とする第2の
膜との積層構造とそれ以外の別の層とが積層されていて
もよい。
する領域に予め、クロム、ゲルマニウム、チタン、タン
グステン、およびニッケルよりなる群から選ばれる少な
くとも1種の金属を含む膜(単一の金属よりなる金属
膜、あるいは2種以上の金属よりなる合金膜)あるいは
少なくとも1種の金属を含む膜が多層に被覆されてもよ
い。これらの金属を含む膜は、アルミナと密着性よく被
覆することが可能であるばかりでなく、炭化ケイ素とも
密着性よく被覆することが可能である。
オンプレーティング法のような通常の公知の手法により
被覆すればよく、その膜厚は0.05μm以上1μm以
下の範囲が好適である。0.05μmよりも薄いと、均
質に密着性よく金属膜を被覆することが困難になり、1
μmよりも厚いと、金属膜を設けた効果が飽和し、経済
的ではない。
イヤモンド状炭素膜には、ケイ素成分が炭化ケイ素とし
て含まれていることが必要である。
タン、タングステンおよびニッケルのような金属膜と密
着性よく被覆することができる。一方、ダイヤモンド状
炭素膜は、炭化ケイ素と密着性よく結合でき、摺動特性
に優れている。このため、ダイヤモンド状炭素膜を上記
(ii)のように第1および第2の膜の積層構造とする場
合、ケイ素を含む第1の膜が金属膜との界面を有する下
側に位置し、第2の膜が最表面側(上側)に位置するこ
とが必要である。また、第1の膜には、少なくとも炭化
ケイ素成分が含まれていることが必要である。
の同定は、ラマン分光分析によって行なうことができ
る。一般的に波長514.5nmのAr+レーザーを用
いたラマン分光分析においては、ダイヤモンド状炭素膜
は1390cm-1と1540cm-1近傍にピークが現れ
る。そのピークプロファイルを比較することにより、ダ
イヤモンド状炭素膜の同定を行なうことができる。
は、0.1μm以上2μm以下である。ダイヤモンド状
炭素膜を上記(ii)のように第1および第2の膜の積層
構造とする場合には、第1および第2の膜の合計の膜厚
が0.1μm以上2μm以下となる。
よりも薄い場合には、ダイヤモンド状炭素膜が持つ優れ
た摺動特性を発揮することが困難である。またダイヤモ
ンド状炭素膜の膜厚が2μmを超えると、ダイヤモンド
状炭素膜の高い内部応力により剥離が発生する。またい
ずれの場合でも、ダイヤモンド状炭素膜の膜厚は0.5
μm以上1.5μm以下であることが特に好ましい。
素膜の面粗さは、Raが0.05μm以上0.5μm以
下であることが好ましい。面粗さが0.05μmよりも
小さい場合、被膜の面粗さは被覆される基材表面の面粗
さが反映されるため、基材を十分にラップ加工する必要
があり、非経済的である。また面粗さが0.5μmより
も大きいと、摺動特性が悪くなり、相手側の弁体との間
にかじりが発生する。
ンド状炭素膜の被覆は、少なくとも炭素とケイ素とを主
要成分とするケイ素化合物ガスを用いて被覆する工程を
含んでいる。この場合、炭素とケイ素とを主要成分とす
るケイ素化合物ガスとしては、たとえばトリメチルシラ
ン、テトラメチルシラン、テトラエチルシランなどの有
機シリコン化合物ガスが挙げられるが、テトラメチルシ
ランは低腐食性で操作性も良好なため、原料ガスとして
好適である。
H3)4Siであり、四塩化ケイ素(SiCl4)と過剰
量のメチルグリニャール試薬の反応で作られ、主に核磁
気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)スペク
トルの化学シフトの標準物質として用いられている。
イ素化合物ガスを原料材料として用いて炭化ケイ素膜を
被覆するには、通常は100℃程度の低温で被覆するこ
とが可能である。このため、経済性および生産性が向上
する。また、炭化ケイ素膜は、ケイ素化合物ガスと必要
に応じて炭化水素系ガスを混合してプラズマを発生させ
ながら化学蒸着法により形成することができる。このた
め、アルミナバルブの摺動面に均一に目的とする被膜が
被覆されるばかりでなく、摺動面に存在するポア内部や
深部へも実施的に被覆することが可能である。
7℃で、被覆工程を行なう装置内には、テトラメチルシ
ランを充填したボンベからマスフローを使って一定量供
給してやればよい。その場合、該ボンベと該装置とを連
結するテトラメチルシランの経路をテープヒータなどで
加熱して、供給ボンベから装置内にテトラメチルシラン
が輸送されるときに液化しないように管理する必要があ
る。
チルシランは、装置内で発生されたプラズマによって容
易に分解し、それにより目的とする基材の表面に、炭化
ケイ素を含んだカーボン膜が被覆される。
と同時に炭化水素系ガスを流すこともできる。炭化ケイ
素系ガスとしては、たとえばメタン、アセチレン、ベン
ゼンなどがある。また、さらに必要に応じて、水素、窒
素、アルゴンなどもガスに加えて適宜供給してやること
もできる。
分の割合は、テトラメチルシランの供給量、あるいはプ
ラズマの出力、装置内の反応圧力、基板の加熱温度によ
って変更することが可能である。ダイヤモンド状炭素膜
に含まれるケイ素の割合を変化させるためには、テトラ
メチルシランの供給量を変化させてやることが最も制御
しやすいため好適である。また、2層のダイヤモンド状
炭素膜を被覆する場合、最表面側のカーボンを主要成分
とする第2の膜を被覆するには、テトラメチルシランの
供給を止めてやればよい。
は、三次元形状の対象物に均質に被覆することが可能
な、通常の公知のプラズマCVD法を用いることができ
る。プラズマCVD法を用いることにより、ダイヤモン
ド状炭素膜をアルミナセラミックスからなる弁体の摺動
面に存在するポアの内部にまで実質的に被覆することが
可能になる。
金属膜を被覆した後にダイヤモンド状炭素膜を被覆する
が、物理蒸着法で被覆する金属膜は、アルミナセラミッ
クスからなる弁体の摺動面に存在するポアの内部にまで
十分に被覆されないか、あるいは全く被覆されない。し
かし、金属膜は、摺動面には均質に密着性よく被覆さ
れ、さらにその上に本発明によるダイヤモンド状炭素膜
が密着性よく被覆されるため、摺動特性には全く問題が
ない。
ば、カーボンを主要成分とするダイヤモンド状炭素膜は
アルミナには直接被覆することが極めて困難なため、ポ
ア内部には被覆されない。しかし、ポア内部に膜を被覆
する目的は、摺動特性ではなく、耐食性を向上させるた
めである。
ルミナセラミックスからなる弁体の摺動面に金属膜を被
覆した後に、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素膜を被覆
するが、この膜は、前述の物理的蒸着法による金属膜が
被覆されないようなポアの内部に至るまで実質的に被覆
される。
被覆される部分が生じるが、前述のように、ポア内部に
被覆されるダイヤモンド状炭素膜に必要な特性は、摺動
特性ではなく耐食性であるため、金属膜を介さずに被覆
されたダイヤモンド状炭素膜でも、優れた耐食性を示す
ことができる。その後、今度はケイ素を実質的に不純物
としてのみ含み、カーボンを主要成分とするダイヤモン
ド状炭素膜が被覆され、摺動面には摺動特性に優れた膜
が形成される。
のビッカース硬度はHv=1000〜1500であり、
相手攻撃性に優れている。
ば、アルミナバルブの摺動面には、摺動特性に優れた膜
が被覆され、耐食性の要因となるポア内部には膜が細部
にわたり実質的に被覆されるため、腐食を防ぎ、高い耐
食性を示すことができる。このため、本発明によれば、
高い摺動特性だけでなく、優れた耐食性を有する温水栓
バルブを提供することができる。
て図に基づいて説明する。
水栓バルブの構成を示す部分分解斜視図であり、図2は
図1の固定弁1の部分拡大断面図である。
は、互いに摺動する2枚の弁体として固定弁1と可動弁
9とをケース8内に有している。固定弁1はやや厚みの
ある円盤状の形態を有しており、その平面部には水流入
穴2、湯流入穴3および混合水流出用弁穴4が貫通して
設けられている。この固定弁1は、上記各穴にそれぞれ
対応する開口部5、6および7を有するケース8の底部
に配置されている。
設してあり、この空洞部10の底部には図示しない混合
水用弁穴および湯水用弁穴が貫通して設けられている。
この可動弁9は固定弁1上に圧接した状態でケース8内
に組込まれており、このケース8はさらに前記湯水混合
栓内に組込まれている。また上記可動弁9は、図示しな
い温度調節レバーと連動する構成とされている。上記温
度調節レバーを作動させると、そのレバーの動きは可動
弁9に伝達され、可動弁9が固定弁1上を摺動して前記
各穴の開度を変化させることができる。したがって、適
温の湯の流出あるいは給湯の停止を自在に行なうことが
可能である。
うにアルミナセラミックスからなる基材11と、その基
材11の摺動面上を被覆するダイヤモンド状炭素膜12
とを有している。またアルミナセラミックスよりなる基
材11には、図3に示すように複数のポア11aが生じ
ており、ダイヤモンド状炭素膜12はそのポア11aの
内表面のほぼ全面に形成されており、実質的にポア11
a内部に形成されている。つまり、ダイヤモンド状炭素
膜12は、ポア11aの外部から見ることのできない内
表面にまで被覆されている。このダイヤモンド状炭素膜
12は、ケイ素および水素を含有している。
イ素を含有し、ケイ素成分がダイヤモンド状炭素膜12
中に含まれる割合が基材11側から最表面側(矢印A
側)に向かって減少していることが好ましい。またダイ
ヤモンド状炭素膜12は、図4に示すようにケイ素を含
有する第1の膜12aと、ケイ素を実質上不純物として
のみ含むカーボンを主要成分とする第2の膜12bとの
積層構造を有していてもよい。この場合、第1の膜12
aにケイ素は主に非晶質の炭化ケイ素として含まれると
ともに、第2の膜12bがダイヤモンド状炭素膜12の
最表面に位置することが好ましい。
イ素と炭素との割合が、ケイ素の原子数に対する炭素の
原子数の割合で1.5以上の範囲内であることが好まし
い。また図4に示すダイヤモンド状炭素膜において第1
の膜12a中に含まれるケイ素と炭素との割合が、ケイ
素の原子数に対する炭素の原子数の割合で1.5以上
4.0以下の範囲内であることが好ましく、2.5以上
4.0以下の範囲内がさらに好ましい。
素膜12とアルミナセラミックスよりなる基材11との
間に、チタン、クロム、ゲルマニウム、タングステンお
よびニッケルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の
金属からなる金属膜13が存在していてもよい。またこ
の金属膜13は、図6に示すようにダイヤモンド状炭素
膜12が上述の第1の膜12aと第2の膜12bとの積
層構造よりなる場合に設けられてもよい。
ンド状炭素膜の厚み12は0.1μm以上2μm以下で
あり、金属膜13の厚みは0.05μm以上1μm以下
であることが好ましい。
いて説明したが、可動弁9が上記と同様の構成を有して
いてもよく、さらに固定弁1と可動弁9との双方が上記
と同様の構成を有していてもよい。
れ、摺動面にポアが多数散在しているアルミナ製セラミ
ックスバルブを成膜装置内にセットし、拡散ポンプで装
置内を真空排気した後、装置内壁に設けた抵抗加熱によ
りアルミナバルブを100℃に加熱した状態で、チタン
ターゲットを用いてアルミナセラミックスバルブの摺動
面の上にチタン膜を0.1μmの厚みで被覆した。
したまま、テトラメチルシランのボンベのバルブを開
き、装置内にテトラメチルシランとメタンガスとを導入
し、アルミナバルブをセットした電極に600WのRF
(Radio Frequency)出力を加えた。被覆中、テトラメ
チルシランガスとメタンガスとの流量分率を1:1から
1:10へと、テトラメチルシランガスの流量分率を傾
斜的に減らしていき、最終的にテトラメチルシランガス
の供給を中止し、メタンガスのみを供給した。被覆に要
した時間は70分であった。
行ない、検出されたピークをガウス分布にしたがって解
析した結果、1390cm-1近傍と1480cm-1近傍
にピークが検出された。1390cm-1のピーク強度
(I1)に対する1480cm -1のピーク強度(I2)
の割合(I1/I2)は、0.38であり、1390c
m-1のピーク面積(M1)に対する1480cm-1のピ
ーク面積(M2)の割合(M1/M2)は、0.17で
あった。
sp3結合性を有する非晶質の炭素膜、すなわちダイヤ
モンド状炭素膜であることが判明した。
膜の上に被覆した被膜は非晶質であることが判明した。
また、XPSによってこの膜に含まれているケイ素と炭
素との比率および混合状態を測定した結果、ケイ素の成
分の含有量は、摺動面から膜の最表面に向かって減少し
ており、膜中に含まれるケイ素と炭素との含有割合は原
子数比で1:8であり、最表面および最表面近傍はすべ
て炭素から形成されていた。また、膜中に含まれるケイ
素はほぼすべてが炭化ケイ素として存在していた。これ
らの結果、この被膜は、ケイ素を非晶質の炭化ケイ素と
して含有するダイヤモンド状炭素膜であることが判明し
た。
た結果、1.4μmであることがわかった。ダイヤモン
ド状炭素膜の表面粗さはRa=0.08μmであった。
また、この被膜のビッカース硬度Hvは1100であっ
た。
性測定器(島津製作所製SST−101)で評価した。
その結果、100gまで評価しても、膜剥離は観察され
なかった。
後、そのままチタンターゲットをシリコンターゲットに
変更して、同じようにスパッタリングでシリコン膜を被
覆した。次に、メタンガスを導入してアルミナバルブを
セットした電極に600WのRF出力を加えてプラズマ
CVD法によりダイヤモンド状炭素膜を被覆した。被覆
された被膜の厚みは、チタン膜は0.1μm、シリコン
膜は0.4μm、ダイヤモンド状炭素膜は1.4μmで
あった(比較例1)。
で被覆した後、炭化ケイ素(SiC)ターゲットを用い
て、チタン膜の上に炭化ケイ素膜をスパッタリングで被
覆した。さらにその上に、上と同じ条件でプラズマCV
D法によりダイヤモンド状炭素膜を被覆した。それぞれ
の被膜の膜厚は、各々0.1μm、0.4μm、1.4
μmであった(比較例2)。
パッタリング法によりアルミナセラミックス製バルブの
摺動面に0.4μmの厚みで被覆した。さらにその上に
ダイヤモンド状炭素膜をプラズマCVD法により1.4
μmの厚みで被覆した(比較例3)。
摺動面にプラズマCVD法により炭化ケイ素膜を被覆し
た。装置内を600℃に加熱して、四塩化ケイ素とメタ
ンガス(CH4)とを装置内に供給し、RF出力を発生
させて0.4μmの厚みの炭化ケイ素を被覆した。その
後、100℃まで冷却させ、上と同じ要領でダイヤモン
ド状炭素膜を1.4μmの厚みで被覆した(比較例
4)。
イヤモンド状炭素膜を被覆するまでの時間は約6時間で
あった。また、被覆後の装置内に残存している未反応物
のスケールの除去や、装置内から発生した有毒ガスを排
気系の途中で液体窒素で凍結させているため、この有毒
ガスの処理などに約2時間必要であった。
の方法で測定した。その結果、比較例1、2、3および
4の密着性は、各々100g以上、100g以上、80
g、100gであった。
合した水に加えてから水を90℃に加熱して200時間
浸し、その後のサンプルの表面状態を外観、および光学
顕微鏡、SEMによって観察して、摺動面に被覆されて
いる被膜の剥離状態を評価した。
く観察されず、摺動面に存在するポアの内部も侵食され
ていなかった。
されたが、剥離はチタンとケイ素との界面で発生してい
た。
されなかったが、摺動面に存在するポアの内部は侵食さ
れていた。
しており、剥離はアルミナセラミックスとケイ素との間
で発生していた。また、剥離が発生した箇所のアルミナ
セラミックスの表面はアルミナ粒子同士の粒界相が激し
く侵食されていた。また、摺動面に存在するポアも激し
く侵食されており、ポアの直径が著しく大きくなってい
るものも観察された。
面の剥離は全く観察されず、摺動面に存在するポアの内
部も侵食されていなかった。
らびに経済性のすべての面において、比較例に比べて優
れていることが判明した。
工によるアルミナセラミックスバルブの摺動面にスパッ
タリング法によりチタン膜を0.1μmの厚みで被覆し
た後、テトラメチルシランガスを用いてRF出力600
Wで被覆した。さらに、テトラメチルシランガスの供給
を中止して、メタンガスとアルゴンガスとを供給してR
F出力600Wでダイヤモンド状炭素膜を0.9μmの
厚みで被覆した。いずれの被膜の被覆工程も、装置内の
温度は100℃に保持して行なった。チタン膜の被覆を
開始してからダイヤモンド状炭素膜の被覆が終わるまで
70分であった。
びX線回折評価を行なった。XPS評価では、被膜の最
表面からアルゴンイオンを照射して被膜をエッチングし
ていきながら、被膜の元素分析を行った。当初は炭素の
みが検出されたが、途中でケイ素が検出されるようにな
り、最後はチタンが検出された。
チルシランガスを供給しながら被覆した箇所で、最下層
のチタン膜に隣接する膜であると推定できるが、その膜
中でのケイ素と炭素の含有割合は、原子数の比率に換算
して、各々27%と73%であった。また、検出された
ピークの分析により、この膜中に存在するケイ素は、ほ
とんど100%炭化ケイ素として存在していることが分
かった。
に換算して46%含まれていることが判明した。
子数に対する炭素の原子数の割合は、73/27=2.
70であることが分かった。
ークとアルミナの粒界相を構成する化合物のピーク、な
らびにチタン膜のピークのみが検出された。
は非晶質であることが分かった。また、この被膜のビッ
カース硬度Hvは1500であった。
と同様に評価した結果、密着性は100g以上であり、
耐食評価試験後の摺動面上の被膜には剥離が全く観察さ
れず、耐食評価試験前の状態と差異は見られず、耐食性
にも全く問題ないことが判明した。
の摺動面にテトラメチルシランとアセチレンガスとを用
いてRF出力1300Wで被覆した。さらに、テトラメ
チルシランガスの供給を中止して、アセチレンガスとア
ルゴンガスとを供給してRF出力1000Wでダイヤモ
ンド状炭素膜を0.7μmの厚みで被覆した。こうして
被覆したダイヤモンド状炭素膜の被覆工程を通して、装
置内の温度は110℃に保持して行なった。ダイヤモン
ド状炭素膜の被覆が終わるまで50分であった。
XPS評価、およびX線回折評価を行なった結果、被覆
された被膜は、非晶質の炭化ケイ素が添加されたダイヤ
モンド状炭素膜であり、テトラメチルシランガスとアセ
チレンガスとを同時に供給することによって形成された
部位には炭化ケイ素が含まれており、テトラメチルシラ
ンガスの供給を中止してアセチレンガスとアルゴンガス
とを供給して形成した部位は殆どがダイヤモンド状炭素
膜から形成されており、ケイ素成分は不純物として存在
する程度であった。
および2と同様に評価した結果、密着性は100g以上
であり、耐食評価試験後の摺動面上の被膜には剥離が全
く観察されず、耐食評価試験前の状態と差異は見られ
ず、耐食性にも全く問題ないことが判明した。
タリング法でアルミナセラミックスバルブの摺動面に被
覆した後、メタンガスを流しながら高周波電圧を加えた
プラズマCVD法によりダイヤモンド状炭素膜を0.7
μmの厚みで被覆したサンプル(比較例5)において
は、上記と同じ耐食評価試験を行なった結果、摺動面に
存在するポアの内部が明らかに侵食されており、ポア部
の周辺部には、直径数μmの小さなスケールが多く見ら
れた。これらのスケールの元素分析を行なった結果、マ
グネシウム、シリコン、アルミニウムなどが検出され、
アルミナセラミックスの粒界相を構成している焼結助剤
が溶解してできた反応物であることが推定された。
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
高いながらも相手攻撃性の低い、すなわち摺動特性に優
れたダイヤモンド状炭素膜を、弁体のアルミナ摺動面に
密着性よく被覆し、さらに耐食性にも優れた被膜の構造
を提供するものであり、具体的には、膜中にケイ素を含
むとともに、そのケイ素の大半が炭化ケイ素として存在
しているダイヤモンド状炭素膜を提供するものである。
膜生成手法によるため、優れた密着性を示すのみなら
ず、優れた耐食性を示すことができる。しかも、短時間
で成膜することが可能であり、低コストで経済効果も十
分にある。これにより、性能、生産性共に優れたバルブ
を提供することができる。
の構成を概略的に示す部分分解斜視図である。
分拡大断面図である。
が形成された様子を示す概略断面図である。
成を示す概略断面図である。
を配置した構成を示す概略断面図である。
そのダイヤモンド状炭素膜と基材との間に金属膜が配置
された構成を示す概略断面図である。
流出用弁穴、5,6,7 開口部、8 ケース、9 可
動弁、10 空洞部、11 アルミナセラミックスより
なる基材、11a ポア、12 ダイヤモンド状炭素
膜、12a 第1の膜、12b 第2の膜、13 金属
膜。
Claims (7)
- 【請求項1】 互いに摺動する2枚の弁体のうち、少な
くとも一方の弁体がポアを有するアルミナセラミックス
と、前記アルミナセラミックスの摺動面に被覆されたダ
イヤモンド状炭素膜とを有する温水栓バルブにおいて、
前記ダイヤモンド状炭素膜がケイ素および水素を含有す
るとともに、実質的にポア内部にも被覆されたことを特
徴とする、温水栓バルブ。 - 【請求項2】 前記ダイヤモンド状炭素膜に非晶質の炭
化ケイ素が含まれ、前記ケイ素成分が前記ダイヤモンド
状炭素膜中に含まれる割合が、前記アルミナセラミック
ス側から最表面側に向かって減少していることを特徴と
する、請求項1に記載の温水栓バルブ。 - 【請求項3】 前記ダイヤモンド状炭素膜が、ケイ素を
含有する第1の膜と、ケイ素を実質上不純物としてのみ
含むカーボンを主要成分とする第2の膜との積層構造を
有し、前記第1の膜に含有されるケイ素が主に非晶質の
炭化ケイ素として前記第1の膜に含まれるとともに、前
記第2の膜が前記ダイヤモンド状炭素膜の最表面に位置
することを特徴とする、請求項1または2に記載の温水
栓バルブ。 - 【請求項4】 前記ダイヤモンド状炭素膜中に含まれる
ケイ素と炭素との原子数の割合が、ケイ素に対する炭素
の割合(炭素原子数/ケイ素原子数)で1.5以上の範
囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか
に記載の温水栓バルブ。 - 【請求項5】 前記ダイヤモンド状炭素膜において、前
記第1の膜中に含まれるケイ素と炭素との原子数の割合
が、ケイ素に対する炭素の割合(炭素原子数/ケイ素原
子数)で1.5以上4.0以下の範囲内であることを特
徴とする、請求項3に記載の温水栓バルブ。 - 【請求項6】 前記ダイヤモンド状炭素膜と前記アルミ
ナセラミックスとの間に、クロム、ゲルマニウム、チタ
ン、タングステンおよびニッケルよりなる群から選ばれ
る1種以上の金属からなる膜が存在することを特徴とす
る、請求項1〜5のいずれかに記載の温水栓バルブ。 - 【請求項7】 前記ダイヤモンド状炭素膜の厚みが0.
1μm以上2μm以下で、前記ダイヤモンド状炭素膜と
前記アルミナセラミックスとの間に設けられる前記金属
膜の厚みが0.05μm以上1μm以下であることを特
徴とする、請求項6に記載の温水栓バルブ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002124380A JP2003314712A (ja) | 2002-04-25 | 2002-04-25 | 温水栓バルブ |
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Country | Link |
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Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
- 2002-04-25 JP JP2002124380A patent/JP2003314712A/ja active Pending
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