JP2003313046A - ガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

ガラス光学素子の製造方法

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JP2003313046A
JP2003313046A JP2003016120A JP2003016120A JP2003313046A JP 2003313046 A JP2003313046 A JP 2003313046A JP 2003016120 A JP2003016120 A JP 2003016120A JP 2003016120 A JP2003016120 A JP 2003016120A JP 2003313046 A JP2003313046 A JP 2003313046A
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optical element
molding
glass material
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Shinichiro Hirota
慎一郎 広田
Hiroyuki Sakai
裕之 坂井
Takashi Takahashi
岳志 高橋
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Hoya Corp
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  • Re-Forming, After-Treatment, Cutting And Transporting Of Glass Products (AREA)
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  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】品質の良いガラス光学素子を安定して製造する
ことができる方法及びガラスの偏肉が防止できるガラス
光学素子の製造方法を提供すること。 【解決手段】被成形ガラス素材を成形型に供給し、次い
で供給された被成形ガラス素材を成形型によりプレス成
形することを含むガラス光学素子の製造方法。少なくと
も上型及び下型からなる成形型の前記下型の成形面上に
被成形ガラス素材を落下させて供給し、次いで供給され
た被成形ガラス素材を成形型によりプレス成形すること
を含むガラス光学素子の製造方法。前記成形型は、少な
くとも成形面に、スパッタ法による炭素薄膜を有し、前
記被成形ガラス素材は、表面にカーボン膜を有し、かつ
前記プレス成形は、非酸化性雰囲気下で行なわれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学レンズ等のガ
ラス光学素子をプレス成形により製造する方法に関し、
特に成形型とガラス素材の間の融着や成形型の劣化を防
止して、高い面精度を有するガラス光学素子を製造する
方法に関する。さらに本発明は、下型の成形面上に被成
形ガラス素材を落下させて供給することを含むガラス光
学素子を製造する方法であって、ガラスの偏肉を防止で
きる方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】プレス
後に研削、研磨を必要としない高精度のレンズを一発成
形で得る為、高い形状精度に鏡面加工した成形型を用
い、型温をガラス転移点より高い温度にしてプレス成形
する方法が知られている。このとき加熱軟化ガラスが成
形型と融着することが問題となり、これを防止する有効
な手段として加熱軟化ガラスと成形型との間に炭素系薄
膜を介在させることが提案されている。
【0003】特許文献1には成形型の基盤材料上にスパ
ッタ法により炭素膜を形成する成形型の製造法が開示さ
れている。この製造法では、基盤材料の温度を250〜450
℃とし、スパッタガスとして不活性ガスを、スパッタタ
ーゲットとしてグラファイトをそれぞれ用いて成膜して
いる。この炭素膜は水素を含んでおらず、また成膜温度
が比較的高温である。この炭素膜は、600℃の窒素雰囲
気で12時間保持した後に冷却した場合でも、型表面(実
施例ではCVD法によるSiC)との密着力や硬度が維
持され、室温で成膜されるi―カーボンなどよりも優れ
ている旨記載されている。さらに、上記炭素膜を形成し
た成形型を用いることにより、融着が発生するまでのプ
レス回数が200〜300回にまで改善されると記載されてい
る。
【0004】特許文献2には、イオンプレーティング法
によりアノード電極とカソード電極からなるイオン化源
にて炭化水素イオンを生成して200〜400℃の型表面にi
−カーボン膜を形成して成形型とする方法が示されてい
る。
【0005】ところで、特許文献3は、イオンプレーテ
ィング法により得られたi−カーボン膜を形成した成形
型に関して以下のように記載している。耐熱性、耐酸化
性および基盤との密着性に優れ、かつ成形時のガラスの
融着も起こりにくい。しかし、膜構造が緻密でありガラ
スと接する膜表面が高平滑性を有するために、プレス成
形時にガラス表面と膜表面との間にガラス表面から放出
されるガス(水素ガス等)が閉じ込められて被成形ガラス
表面に微小な凹部が生じることがある。また、クモリが
生じたり、高平滑性の面にガラスが密着するために離型
性が不充分という問題がある。
【0006】さらに、特許文献3では、スパッタ法によ
り得られる炭素膜を型表面に形成すると、耐熱性および
離型性に優れるが、非晶質のグラファイトを含んでいる
ために、特にプレス成形温度が600℃以上の高温で多数
回プレス操作を繰り返すと、膜の一部に剥離が生じるこ
とがあるとしている。そこで、特許文献3では、成形型
の加工面上にi−カーボンと炭素とを順次積層してなる
炭素質の2層構造膜を有する成形型にすることにより前
記の問題点の解決を図った発明を開示する。
【0007】加熱軟化ガラスと成形型との間に炭素系薄
膜を介在させる方法としては、上記のように成形面に炭
素系薄膜を設けること以外に、ガラスに炭素系薄膜を設
けることも提案されている。例えば、特許文献4には、
アセチレンの熱分解により、10〜50Åの炭素膜をガラス
プリフォームの表面に形成することにより、ガラスプリ
フォームと成形型との融着を防止する方法が開示されて
いる。しかし、この公報にはこのガラスプリフォームを
リヒートプレスすることは記載されているが、どのよう
な成形型を用いてリヒートプレスしたのかの開示は無
い。
【0008】特許文献5には、表面がカーボン膜で覆わ
れたガラスブランクスと成形面が硬質炭素膜からなる成
形型を用いたガラス光学素子のプレス成形方法が示され
ている。後述するが、特許文献5に記載の成形面に設け
られた硬質炭素膜は、前記特許文献1及び特許文献3に開
示されている成形面に設けられた炭素膜と、それぞれの
製法に起因して、実質的な相違がある。
【0009】光学ガラスの精密プレスにおいては、上記
のように、成形型と被成形ガラス素材との界面に働く様
々な物理的、化学的な作用に起因する、多くの課題があ
る。成形面には、ガラスの融着が起きないよう、優れた
離型性が要求される。特許文献1に開示された成形型を
用いれば、この点はある程度改善される。しかし、融着
発生までのプレス回数はまだ十分とはいえない。高温下
で加圧成形する際にガラスが伸ばされて型の成形面に密
着し、冷却して離型することを繰り返すことにより、成
形面には大きな力がかかる。融着防止のために、型表面
に炭素薄膜を設けても、プレスの繰り返しと共に成形面
に対する炭素薄膜の密着力が低下していき、部分的な剥
離が起きる。例えば、CVD法により作製された炭化ケイ
素は緻密で鏡面加工でき、高温での耐酸化性が高いので
成形型に有望な材料である。しかし、上記のような炭素
薄膜の剥離が起きると、炭化ケイ素の極表面は酸化され
ているため軟化ガラスが融着し、プレス後の冷却時の応
力で炭化ケイ素の表面がスポット状にえぐり取られる
(この現象をプルアウトと呼ぶ)ことが知られている。
このプルアウトが生じると、型はもはや使用できない。
このため、炭素薄膜の剥離を起きにくくすることでプル
アウトを防止し、型寿命を延ばしたいという課題があ
る。
【0010】また、プレス成形時に型の成形面と被成形
ガラス素材の間に、ガスが閉じ込められて被成形ガラス
表面に微小な凹部が生じたり、クモリが生じたりする等
のレンズ外観不良の問題も避けなければならない。更
に、成形するガラスの硝種(例えばランタン系光学ガラ
スや、リン酸塩系ガラス)又は形状によっては、カン、
ワレが発生しやすく、生産性を悪化させる問題がある。
カンとは、光学素子の面形状の非連続な部分などに発生
するクラックを言う。
【0011】このような、被成形ガラス素材と型表面と
の界面にはたらく力によって、プレス成形上起きる様々
な不都合(融着、プルアウト、レンズ外観不良、など)
を解消し、ガラス光学素子の成形に最適な、被成形ガラ
ス素材と型表面の相互関係を見出すことが望まれてい
た。
【0012】特許文献5には、上述のように、光学素子
成形用型の成形面が硬質炭素膜からなるとの記載があ
る。硬質炭素膜は、Ion Beam Deposition 装置を用い、
CH4とH 2をイオン化室に導入して加速電圧をかけイオン
ビームを引き出して成形面に照射し、母材表面のTiN膜
と35nm厚のミキシング層を形成したものである。従っ
て、特許文献5に記載の「硬質炭素膜」は、水素を多く
含む膜であり、特許文献1に記載のスパッタ法で成膜し
た炭素膜とは、実質的にかなり相違するとともに、前記
特許文献2に記載のイオンプレーティング法により得ら
れた炭素膜と同様の問題点を有する。
【0013】加えて、このイオンビームを用いて形成し
た硬質炭素膜は離型性が充分とは言えず、さらには、含
有する水素のため、成形された光学素子にクモリや発泡
による凹部が発生し易い。
【0014】さらに、特許文献5に記載のブランクスと
成形型を用いると、両者の滑り性が充分でないため、型
上でブランクスが偏在したままプレスされ、成形された
光学素子に偏肉が発生しやすい。
【0015】上記のように、成形型表面に炭素系膜を形
成すること、或いは被成形ガラス素材に炭素系膜を形成
することは、個々には長所があるものの課題もあり、成
形型表面と被成形ガラス素材のそれぞれにある種の炭素
系膜を形成し、これらをプレス成形に使用することが提
案されているが、十分な性能を有する成形方法が得られ
たとは到底言えない。
【0016】そこで本発明の第1の目的は、被成形ガラ
ス素材と成形型表面との界面にはたらく力によって、プ
レス成形上起きる様々な不都合(融着、プルアウト、レ
ンズ外観不良、など)を解消し、品質の良い光学素子を
安定して製造することができる方法を提供することにあ
る。
【0017】ところで、精密に加工した成形型を用いて
高精度のガラス光学素子をプレス成形する成形方法は、
ガラスと成形型を実質的に等しい温度にしてプレス成形
する等温プレス法と、ガラス温度が高く、型温度が低い
状態でプレス成形を開始する非等温プレス法とに分類さ
れる。等温プレス法は、たとえば非酸化性雰囲気で非成
形ガラス素材と型をガラスの軟化点近傍まで昇温し、被
成形ガラス素材と型がほぼ等しい温度で型によりガラス
を加圧し、そして加圧を維持しながら型温度をガラス転
移点以下まで降温する方法である。一方、非等温プレス
法は、たとえば105.5〜109.5ポアズの粘度になるよ
うに加熱したガラス素材を、それより低温で、このガラ
ス素材が107〜1012ポアズの粘度なる温度に調温し
た成形用型でプレス成形した後、少なくとも成形型の温
度がガラスの転移点以下になるまで10〜250℃/minの範
囲の選択された冷却速度で冷却し、しかる後に離型する
方法である。非等温プレス法は、等温プレス法に比べ
て、ガラス光学素子1つを生産するための所要時間であ
るサイクルタイムが大幅に短縮されるという利点があ
る。
【0018】上記した非等温プレス法においては、被成
形ガラス素材の予熱が必要となる。この予熱は、例え
ば、被成形ガラス素材を浮上皿上で気流により浮上させ
ながら加熱することで行われることが有利である。加熱
軟化した被成形ガラス素材は、浮上皿から下型の成形面
上に落下させ、しかる後にプレス成形される。この方法
において、被成形ガラス素材が、成形面の中心からずれ
たところに落下供給され、それがそのままプレス成形さ
れると、ガラスの偏肉が起こり、良好なプレス成形品は
得られない。そこで、浮上皿から下型の成形面上に落下
させるに際し、下型と浮上皿の間にファンネル式ガイド
手段を挿入し、割型式浮上皿を水平に開くことにより下
型上に落下させる方法が提案されている(特許文献
6)。さらに、この公報には、被成形ガラス素材を下型
の成形面上に供給した後、被成形ガラス素材の位置を、
位置修正手段を用いて被成形ガラス素材の垂直中心と下
型の成形面の中心点が実質的に合致するように修正する
ことも示されている。このようなガイド手段を用いるこ
とで、被成形ガラス素材を下型の成形面に安定して落下
させることができるため、光学素子の偏肉を防止でき、
かつ成形面外への飛び出しも防止できる、としている。
また、位置修正手段を用いることで被成形ガラス素材を
下型の成形面の中央に位置させることができるため、光
学素子の偏肉を防止できる、としている。
【0019】しかるに、本発明者らの検討によれば、上
記のようなガイド手段や位置修正手段を用いた場合であ
っても、依然としてガラスの偏肉が生じる場合があり、
歩留まり向上の妨げになっていることが判明した。これ
は、ガイド手段や位置修正手段を用いて被成形ガラス素
材を下型の成形面中心に導いても、被成形ガラス素材が
球形以外のときなどに、下型の成形面中心に移動せず、
被成形ガラス素材がガイド手段や位置修正手段に寄り掛
かった状態になっている場合があり、被成形ガラス素材
が成形面中心からずれた状態でプレスされてしまうこと
があることか判明した。
【0020】そこで本発明の第2の目的は、被成形ガラ
ス素材を下型の成形面上に落下させ、しかる後にプレス
成形する方法であって、被成形ガラス素材を下型の成形
面中心に容易に導くことができ、その結果、ガラスの偏
肉が防止できる、ガラス光学素子の製造方法を提供する
ことである。
【0021】
【特許文献1】特開昭64−83529号公報
【特許文献2】特開平2−199036号公報
【特許文献3】特開平6−191864号
【特許文献4】特開平8-217468号公報
【特許文献5】特開平8-259241号公報
【特許文献6】特開平11-35332号公報
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炭素系膜
には様々な膜質(構造、成分、表面状態)のものが存在
し、製法によってこれらの性質が大きく異なることを見
出した。さらに、成形型及び被成形ガラス素材の各々
に、最も適した膜質のものを採用することで、被成形ガ
ラス素材と型表面との界面にはたらく力によって、プレ
ス成形上起きる様々な不都合(融着、プルアウト、レン
ズ外観不良、など)を解消し、品質の良い光学素子を安
定して製造することができることを見いだして本発明の
第1の態様の製造方法を完成した。さらに、成形型及び
被成形ガラス素材の各々に、所定の膜質の炭素系膜を設
けることで、被成形ガラスがガイド手段や位置修正手段
に寄り掛かった状態になることを防止でき、被成形ガラ
ス素材を容易に成形面中心に位置させることができるこ
とを見いだして、本発明の第2の態様の製造方法を完成
した。
【0023】本発明の第1の態様は、被成形ガラス素材
を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材
を成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素
子の製造方法であって、前記成形型は、少なくとも成形
面に、スパッタ法による炭素薄膜を有し、前記被成形ガ
ラス素材は、表面にカーボン膜を有し、かつ前記プレス
成形は、非酸化性雰囲気下で行なわれることを特徴とす
るガラス光学素子の製造方法(請求項1)である。さら
に、本発明の第2の態様は、少なくとも上型及び下型か
らなる成形型の前記下型の成形面上に被成形ガラス素材
を落下させて供給し、次いで供給された被成形ガラス素
材を成形型によりプレス成形することを含むガラス光学
素子の製造方法であって、前記成形型は、少なくとも成
形面に、スパッタ法による炭素薄膜を有し、前記被成形
ガラス素材は、表面にカーボン膜を有し、かつ前記プレ
ス成形は、非酸化性雰囲気下で行なわれることを特徴と
するガラス光学素子の製造方法(請求項2)である。
【0024】さらに、本発明は、以下の態様を含む。
[請求項3]前記炭素薄膜は、スパッタガスとして不活
性ガスを、スパッタターゲットとしてグラファイトを用
いたスパッタ法により成膜されたものであることを特徴
とする請求項1又は2に記載のガラス光学素子の製造方
法。[請求項4]前記炭素薄膜の膜厚が3〜200nmである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の
ガラス光学素子の製造方法。[請求項5]前記カーボン
膜が、炭化水素の熱分解法により形成したものであるこ
とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス
光学素子の製造方法。[請求項6]前記カーボン膜が、
蒸着により形成されたものであることを特徴とする請求
項1〜4のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方
法。[請求項7]前記カーボン膜の平均厚さが0.1〜2nm
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に
記載のガラス光学素子の製造方法。[請求項8]前記成
形型は、少なくとも成形面近傍がCVD法で作製された
炭化ケイ素からなることを特徴とする請求項1〜7のい
ずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。[請求項
9]前記炭化ケイ素の部分と前記炭素薄膜との間に中間
層を有することを特徴とする請求項8に記載のガラス光
学素子の製造方法。[請求項10]前記中間層はイオン
プレーティング法によって形成されたものであることを
特徴とする請求項9に記載のガラス光学素子の製造方
法。[請求項11]成形型に供給される被成形ガラス素
材の温度が、成形型の温度より高いことを特徴とする請
求項1〜10のいずれか1項に記載のガラス光学素子の
製造方法。[請求項12]成形型に供給される被成形ガ
ラス素材がその粘度が105.5〜109ポアズに相当する
温度に加熱されたものであり、被成形ガラス素材が供給
される成形型が被成形ガラス素材の粘度が107〜10
12ポアズに相当する温度に予熱されたものであることを
特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のガラ
ス光学素子の製造方法。[請求項13]被成形ガラス素
材の成形型への供給が、被成形ガラス素材を浮上皿上で
気流により浮上させながら軟化させ、被成形ガラス素材
を浮上皿から下型の成型面上に落下させることを含むこ
とを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の
ガラス光学素子の製造方法。[請求項14]前記被成形
ガラス素材の落下を、ガイド手段を用いて行うことを特
徴とする請求項13に記載のガラス光学素子の製造方
法。[請求項15]プレス成形前に位置修正手段により
落下させた被成形ガラス素材の位置決めを行うことを特
徴とする請求項13に記載のガラス光学素子の製造方
法。[請求項16]前記被成形ガラス素材が、ランタン
系ガラス又はリン酸塩系ガラスからなることを特徴す
る、請求項1〜15のいずれかに記載のガラス光学素子
の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法(以下、本発明
の製造方法という場合、特に断らない限り、第1の態様
及び第2の態様の両方を指すものとする。)に用いる成
形型は、少なくとも成形面に、スパッタ法による炭素薄
膜を有する。このスパッタ法による炭素薄膜は、イオン
プレーティング法により形成されるi−カーボンとは異
なり、水素を含まず、プレス成形時に水素ガス発生によ
る問題を生じることが無い。ここで成形面とは、被成形
ガラス素子が接触する、成形型の面をいう。また、成形
型は、少なくとも上型及び下型からなり、上型及び下型
のいずれの成形面にもスパッタ法による炭素薄膜を有す
る。成形型が、上型及び下型に加えて胴型を有する場
合、プレス成形の際に、胴型に被成形ガラス素子と接触
する部分があれば、その部分には、スパッタ法による炭
素薄膜を施しておくこともできる。しかし、胴型の被成
形ガラス素子と接触する部分に、スパッタ法による炭素
薄膜を施しておかなくてもよい。
【0026】前記炭素薄膜は、例えば、スパッタガスと
して不活性ガスを、スパッタターゲットとしてグラファ
イトを用いたスパッタ法により、例えば、200〜450℃の
温度で成膜されたものであることができる。成形面への
スパッタ法による炭素薄膜の形成について、以下に説明
する。スパッタ法は、プレス成形型基盤を保持する基盤
ホルダーと、これと対向するスパッタターゲットとを収
容するスパッタ装置を用いて実施される。このスパッタ
法(例えば、マグネトロンスパッタ法)において、前記
基盤温度は200〜450℃であることが好ましい。2
00℃以上であれば比較的高い膜硬度が得られ、450
℃以下であれば、成膜された膜表面の面粗度が低下する
ことも無いからである。スパッターガスとして用いられ
る不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを挙げるこ
とができる。スパッターターゲットとしては、グラファ
イトを用い、高周波によってプラズマを発生させてグラ
ファイトをスパッターすることで、プレス成形型基盤の
成形面に炭素薄膜を形成することができる。炭素薄膜の
厚さは、好ましくは3〜200nmの範囲であり、より好
ましくは10〜100nmの範囲である。この炭素薄膜
は、後述するガラス素材のカーボン膜との滑り性が特に
良い。
【0027】本発明の製造方法では、プレス成形される
被成形ガラス素材として、表面にカーボン膜を有する被
成形ガラス素材を用いる。被成形ガラス素材の表面に設
けられるカーボン膜は、水素を含有しない、または水素
含有量の少ないものが好ましく、そのようなカーボン膜
は、例えば、炭素材料を用いた蒸着法や炭化水素ガスの
熱分解により形成されたものであることができる。蒸着
法による場合には、公知の蒸着装置を用いて、10-4
orr程度の真空雰囲気中で、炭素材料を電子ビーム、
直接通電もしくはアークにより加熱し、材料から蒸発お
よび昇華により発生する炭素蒸気を基材の上に輸送し、
凝縮・析出させることによりカーボン膜を形成する。例
えば、直接通電の場合、断面積0.1cm2程度の炭素
材料に100V−50A程度の電気を通電し、炭素材料
を通電加熱することができる。基材加熱温度は室温〜4
00℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度
(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度は
Tg−50℃とすることが好適である。炭化水素ガスの
熱分解によるカーボン膜の形成は、所定温度にて真空中
に炭化水素を導入し、炭素と水素に分解することによ
り、被成形ガラス素材の表面に炭素を沈着させて行う。
炭化水素ガスとしては、例えばアセチレン、エチレン、
ブタン、エタン等の低級炭化水素ガスであることがで
き、特にアセチレンが分解し易く好ましい。炭化水素の
熱分解時の反応系内の圧力は、例えば、10〜200T
orr、好ましくは50〜200Torrとすることが
適当である。圧力は、熱分解反応の進行に伴って次第に
増加又は減少させてもよいし、一定に保ってもよい。
【0028】炭化水素ガスの熱分解によるカーボン膜の
形成温度は、使用する炭化水素の熱分解温度と、用いる
被成形ガラス素材の軟化温度に応じて適宜決定すること
ができ、通常250℃〜600℃の範囲内である。但し、炭化
水素としてアセチレンを用いる場合には、上記形成温度
は、400〜520℃であることが好ましい。熱分解に用いる
炭化水素は、その保管状態に応じ、事前に十分水分を除
去しておくことが好ましい。
【0029】被成形ガラス素材に設けられるカーボン膜
の平均膜厚は、0.05〜10nmの範囲であることが好まし
く、0.1〜2nmの範囲であることがより好ましい。カーボ
ン膜の平均膜厚は、熱分解時の温度、導入する炭化水素
の圧力、処理時間によって制御することができる。炭化
水素の導入を複数回に分けて行なう場合には、その回数
によっても平均膜厚を制御できる。
【0030】上記カーボン膜の膜厚は平均値である。即
ち、膜厚が極く小さい場合には微視的には均一な膜状に
ならず、カーボンが島状に、被成形ガラス素材の表面に
略均一に散在する状態となる場合があるが、こうした状
態も本発明でいうカーボン膜に含まれる。本発明でいう
平均膜厚とは、換言すれば、被成形ガラス素材表面の単
位面積あたりの炭素の担持量の平均値である。炭素の膜
厚は、ESCA(Electron spectroscopy for chemical ana
lysis)を用いて、炭素膜からのC1sのシグナル強度を測
定し、これをガラス上に設けられた炭素膜の膜厚が既知
の参照試料からのC1sのシグナル強度と比較することに
より求めることができる。本発明の製造方法において被
成形ガラス素材に設けられるカーボン膜は、水素の含有
量が15at%以下であることが好ましく、更に好ましく
は、8.5at%以下であり、更には5at%以下が好適であ
る。水素の含有量が15at%以下であることでプレス成形
時に水素ガス発生によるガラスと型の界面での発泡が防
止されるという利点がある。
【0031】本発明の製造方法に用いられる成形型は、
少なくとも成形面にスパッタ法による炭素薄膜を有する
ことに加えて、成形型の少なくとも成形面近傍がCVD法
で作製されたβ型の炭化ケイ素、好ましくはβ型の炭化
ケイ素から成るものであることが好ましい。成形面近傍
がCVD法で作製されたβ型の炭化ケイ素から成る成形型
を用いることで、高精度の鏡面加工が可能で、耐熱性が
高いという利点がある。尚、「少なくとも成形面近傍」
とは、成形型の基盤自体がCVD法による炭化ケイ素か
ら成っていても良いし、成形面近傍のみがCVD法による
炭化ケイ素から成っていてもよいことを意味する。その
ような成形型は、例えば、基盤が炭化ケイ素焼結体であ
り、成形面近傍のみがCVD法による炭化ケイ素からなる
ものが挙げられる。
【0032】少なくとも成形面にスパッタ法による炭素
薄膜を有し、かつ少なくとも成形面近傍がCVD法で作製
されたβ型の炭化ケイ素から成る成形型は、例えば、得
ようとするガラス成形体の形状にもとづき、所定形状の
成形面を加工形成した炭化ケイ素部分に、直接又は中間
層を介して前記スパッタ法による炭素薄膜を設けること
により調製することができる。あるいは、CVD法で作製
されたβ型の炭化ケイ素から成る部分の上に更に異なる
製法により炭化ケイ素層を設け、又は他の組成による層
や膜を設け、さらにその上に上記スパッタ法による炭素
薄膜を施すことで、成形型を調製することもできる。中
間層としては、例えば、イオンプレーティング法による
i−カーボン膜を挙げることができる。
【0033】イオンプレーティング法によるi−カーボ
ン膜の形成は、以下のようにして行うことができる。イ
オンプレーティング法は、例えば、アノード電極と第1
のカソード電極とガラスプレス成形型の基盤を保持する
基盤ホルダーとを有し、更に前記第1のカソード電極及
びアノード電極を取り囲む形で配置したリフレクターを
有するイオンプレーティング装置を用いて実施される。
このイオンプレーティング装置において、前記アノード
電極と第1のカソード電極との間に50〜150Vの低
電圧を印加して炭化水素イオンのプラズマを発生させ
る。この低電圧は、50V未満ではイオン化効率が低く
非能率的であり、150Vを超えるとプラズマが不安定
となるので、前記範囲(50〜150V)が好ましい。
また用いられる炭化水素は適宜選択されるが、好ましく
は、炭素原子数と水素原子数の比率(C/H)が1/3
以上であるものが好ましく、その例としては、ベンゼン
(C/H=6/6)、トルエン(C/H=7/8)、キ
シレン(C/H=8/10)等の芳香族炭化水素、アセ
チレン(C/H=2/2)、メチルアセチレン(C/H
=3/4)、ブチン(C/H=4/6)等の三重結合含
有不飽和炭化水素、エチレン(C/H=2/4)、プロ
ピレン(C/H=3/6)、ブテン(C/H=4/8)
等の二重結合含有不飽和炭化水素、エタン(C/H=2
/6)、プロパン(C/H=3/8)、ブタン(C/H
=4/10)、ペンタン(C/H=5/12)等の飽和
炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、単独で用
いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0034】また前記アノード電極に対して前記基盤ホ
ルダーが第2のカソード電極となるように0.5〜2.
5kVの電圧を印加して炭化水素イオンの加速を促進す
ることもできる。イオンプレーティング処理時の型基盤
温度は200〜400℃であることが好ましい。この温
度範囲で形成したi−カーボン膜が最も剥離しにくいか
らである。i−カーボン膜の厚さは、好ましくは5〜1
000nmの範囲である。5nm未満では均一な膜の形
成が困難であり、1000nmを超えると、膜中の歪の
ために剥離しやすくなる。
【0035】本発明では、成形型の成形面近傍にダイヤ
モンド膜又はダイヤモンド構造を50%以上含む炭素膜を
設けることができる。ダイヤモンド膜又はダイヤモンド
構造を50%以上含む炭素膜としては、例えば、熱フィラ
メント法によるDLC膜を挙げることができる。また、ダ
イヤモンド膜又はダイヤモンド構造を50%以上含む炭素
膜は、固形カーボンを使用したPVD(物理蒸着)により、
常温で成膜した炭素膜であることもできる。ダイヤモン
ド膜又はダイヤモンド構造を50%以上含む炭素膜として
は、密度が3.2〜3.4g/cm2、硬度がHv6000〜10000の
ものが好適に用いられる。膜厚は、0.05〜10μmの範囲
であることが好ましい。この炭素膜は、成形型基盤の形
状を一次加工した上で成膜するが、それにより形状精度
が劣化する場合は、二次加工を行うこともできる。即
ち、前記成形型は、型基盤の成形面近傍を一次加工によ
り所定の形状に加工した後、前記ダイヤモンド膜または
ダイヤモンド構造を50%以上含む炭素膜を形成し、その
後、形状を二次加工したものであること、および前記成
形型は、前記ダイヤモンド膜またはダイヤモンド構造を
50%以上含む炭素膜と、前記炭素薄膜の中間に、中間層
を有し、前記中間層がイオンプレーティング法によって
形成されたi―カーボン膜であることができる。
【0036】本発明の製造方法に用いる成形型を構成す
る成形型基盤には、前述のようにCVD法によるβ型の
炭化ケイ素を用いることができる以外に、成形型用の材
料として公知の素材、例えば、炭化タングステン系超硬
合金等も適宜使用できる。あるいは、例えば、炭化タン
グステン系超硬合金などの基盤材料上に直接又は間接
に、成形面近傍に炭化ケイ素からなる薄膜を成膜しても
よい。成形型基盤を焼結SiCとし、成形面近傍をCVD SiC
とすることもできる。本発明の製造方法に用いる成形型
は、前述のように、CVD法による炭化ケイ素から成る
基盤材料の上にイオンプレーディング法によるi−カー
ボン膜を形成し、その上にスパッタ法による炭素薄膜を
積層したものであることが好ましい。
【0037】本発明の製造方法に用いられる被成形ガラ
ス素材の硝種に特に限定は無いが、バリウムホウケイ酸
塩光学ガラスや、ランタン系光学ガラスなどが、特に有
効に用いられる。バリウムホウケイ酸塩光学ガラスは、
融着やプルアウトを起こしやすく、またランタン系光学
ガラスは割れやすいが、本発明の製造方法によれば、高
精度での成形が可能である。
【0038】バリウムホウケイ酸塩光学ガラスのガラス
組成は、例えば、ガラス成分として、SiO2を30〜
55wt%、B23を5〜30wt%、但しSiO2
23との合量が56〜70wt%でSiO2/B23
の重量比が1.3〜12.0、Li2Oを7〜12wt
%(但し7wt%は含まない)、Na2Oを0〜5wt
%、K2Oを0〜5wt%、但しLi2OとNa2OとK2
Oとの合量が7〜12wt%(但し7wt%は含まな
い)、BaOを10〜30wt%、MgOを0〜10w
t%、CaOを0〜20wt%、SrOを0〜20wt
%、ZnOを0〜20wt%、但しBaOとMgOとC
aOとSrOとZnOとの合量が10〜30wt%、含
有するガラスであって、前記ガラス成分のうちSi
2、B23、Li2OおよびBaOの合量が72wt%
以上であり、TeO2を含まないことを特徴とする光学
ガラスであることができる。
【0039】又は、上記のガラスであって更に、Al2
3を1〜7.5wt%、P25を0〜3wt%、La2
3を0〜15wt%、Y23を0〜5wt%、Gd2
3を0〜5wt%、TiO2を0〜3wt%、Nb25
0〜3wt%、ZrO2を0〜5wt%、PbOを0〜
5wt%を含有するガラスも好適に用いられる。
【0040】具体的な被成形ガラス素材としては、SiO2
37.8、 B2O3 24.0、Al2O3 5.3、Li 2O 8.5、CaO 5.0、
BaO 16.1、La2O3 3.3、As2O3 0.5、Sb2O3 0.2 (各w
t%)を含み、Tg:500℃であるガラス素材、或いはSiO2
41.2、 B2O3 19.5、Al2O35.2、 Li2O 9.0、BaO 16.
1、La2O3 9.0、As2O3 0.5、Sb2O3 0.2(各wt%)を含
み、Tg:495℃であるガラス素材などがある。
【0041】また、ランタン系光学ガラスとしては、ガ
ラス成分として、重量%で、B23 25〜42%、L
23 14〜30%、Y23 2〜13%、SiO2
2〜20%、Li2O 2%より多く9%以下、CaO
0.5〜20%、ZnO 2〜20%、Gd23
〜8%、ZrO20〜8%、Gd23+ZrO2 0.5
〜12%を含有し、かつこれらの成分の合計含有量が9
0%以上であり、さらに、場合により、Na2O 0〜
5%、K2O 0〜5%、MgO 0〜5%、SrO
0〜5%、BaO 0〜10%、Ta2O5 0〜5%、
Al23 0〜5%、Yb23 0〜5%、Nb25
〜5%、As23 0〜2%およびSb23 0〜2%
を含有する光学ガラスが挙げられる。
【0042】好ましくは上記のガラスであって、必須成
分それぞれの含有量が、重量%で、酸化ホウ素27〜3
9%、酸化ランタン16〜28%、酸化イットリウム4
〜12%、酸化ケイ素4〜18%、酸化リチウム2.5
〜8%、酸化カルシウム1〜18%、酸化亜鉛3〜18
%、酸化ガドリニウム0〜6%、酸化ジルコニウム0〜
7%、酸化ガドリニウムと酸化ジルコニウムの合計0.
5〜11%であって、これらの必須成分の合計含有量が
92%以上であり、かつ任意成分として、重量%で、酸
化ナトリウム0〜3%、酸化カリウム0〜3%、酸化マ
グネシウム0〜3%、酸化ストロンチウム0〜3%、酸
化バリウム0〜7%、酸化タンタル0〜3%、酸化アル
ミニウム0〜3%、酸化イッテルビウム0〜3%、酸化
ニオブ0〜3%、酸化ヒ素0〜2%および酸化アンチモ
ン0〜2%を含有する光学ガラスが好適に用いられる。
【0043】具体的な被成形ガラス素材としては、SiO2
15、 B2O3 28、 Li2O 3、 CaO11、La2O3 21、 As2
03 、Y2O3 8、ZnO 8、 ZrO2 6 (各wt%)を含
み、Ts(屈伏点)590℃であるガラス素材などがある。
また、被成形ガラス素材は、バリウムホウケイ酸ガラス
からなり、カーボン膜の膜厚が0.05〜1nmであること、
または被成形ガラス素材は、ランタン系ガラス又はリン
酸塩系ガラスからなり、カーボン膜の膜厚が1〜2nmであ
ることができる。
【0044】本発明の製造方法によって製造されるガラ
ス光学素子の形状に特に制限はないが、少なくとも一つ
の凸面を有したガラス光学素子を製造する場合、本発明
の効果が顕著に得られる。特に、ランタン系光学ガラス
であって、少なくとも一つの凸面を有したガラス光学素
子の製造には、効果が高い。更に本発明の製造方法が有
効であるガラス光学素子の形状として、コバの薄い凸メ
ニスカスレンズ及び両凸レンズが挙げられる。
【0045】本発明の製造方法では、表面にカーボン膜
を有する被成形ガラス素材を少なくとも成形面にスパッ
タ法による炭素薄膜を有し成形型によりプレス成形す
る。その際、プレス成形は、非酸化性雰囲気下で行なわ
れる。非酸化性雰囲気とは、例えば、窒素、水素を数%
含む窒素と水素の混合ガス、アルゴンガスなどを挙げる
ことができる。
【0046】本発明の製造方法におけるプレス成形の方
法及び条件は、公知のガラス光学素子の製造方法におけ
るプレス成形方法及び条件をそのまま適用することがで
きる。特に、本発明の製造方法は、等温プレス法及び非
等温プレス法のいずれにも適用できる。等温プレス法
は、ガラスと成形型を実質的に等しい温度にしてプレス
成形する方法であり、具体的には、非酸化性雰囲気で非
成形ガラス素材と型をガラスの軟化点近傍まで昇温し、
被成形ガラス素材と型がほぼ等しい温度で型によりガラ
スを加圧し、そして加圧を維持しながら型温度をガラス
転移点以下まで降温する方法である。等温プレス法では
成形型の転写性が良く、形状精度が得やすい。但し、非
等温プレス法と対比すると成形のサイクルタイムが長く
なる。
【0047】非等温プレス法は、ガラス温度が高く、型
温度がガラス温度よりも低い状態でプレス成形を開始す
る方法であり、具体的には、たとえば105.5〜109.5
ポアズの粘度になるように加熱した被成形ガラス素材
を、それより低温で、このガラス素材が107〜1012
ポアズの粘度なる温度に調温した成形型でプレス成形し
た後、少なくとも成形型の温度がガラスの転移点以下に
なるまで10〜250℃/minの範囲の選択された冷却速度で
冷却し、しかる後に離型する方法である。非等温プレス
法は、非等温プレス法と対比するとサイクルタイムが大
幅に短縮される。被成形ガラス素材の温度は、ガラス粘
度で、106.5〜108ポアズ相当が好ましく、また型温
度は、107.5〜1010ポアズ相当が好適であり、冷却
速度は、20〜100℃/minであることが更に好ましい。
【0048】上記した非等温プレス法においては、被成
形ガラス素材のプレス成形前に予熱が必要となる。予熱
の際、及び/又は予熱して軟化した被成形ガラス素材を
搬送して成形型上に供給する際には、被成形ガラス素材
と非接触の状態で、浮上皿上で気流により被成形ガラス
素材を浮上させることで、被成形ガラス素材を非接触状
態で予熱及び搬送することが好ましい。被成形ガラス素
材は、浮上皿上で気流により浮上させながら軟化し、下
型直上に移送し、浮上皿から下型上に落下させて、しか
る後にプレス成形することができる。
【0049】特に、本発明の第2の態様では、成形型
(少なくとも上型及び下型からなる)の下型の成形面上
に被成形ガラス素材を落下させて供給し、次いで供給さ
れた被成形ガラス素材を成形型によりプレス成形する。
本発明の第2の態様では、下型の成形面上に落下した被
成形ガラス素材は、下型の成形面にスパッタ法による炭
素薄膜が施され、かつ被成形ガラス素材の表面にカーボ
ン膜が施されていることで、成形面上での滑りが良く、
所定の位置に容易に移動できるという今までに知られて
いない利点を有する。但し、この効果が得られるのは、
成形面の炭素薄膜がスパッタ法による炭素薄膜であり、
かつ被成形ガラス素材の表面の炭素膜がカーボン膜であ
る場合に限られる。この点は実施例においてさらに説明
する。
【0050】特に、上記の被成形ガラス素材が所定の位
置に容易に移動できるという効果は、後述するように、
被成形ガラス素材の落下をガイド手段を用いて行う場合
や被成形ガラス素材の成形面上での位置を位置修正手段
で修正する場合に特に有効である。いずれの場合も、被
成形ガラス素材が下型成形面の所望位置(中央)に配置
され、プレス時に型内に均一に広がるために偏肉が防止
され、従って、被成形ガラス素材が型からはみ出たり、
不良品を生じることを防止できる。
【0051】本発明の製造方法において、非等温プレス
法を採用する場合、予熱した被成形ガラス素材を浮上皿
上で、気流により浮上させて、被接触状態で成形型に落
下供給することが有効である。このとき、被成形ガラス
素材が浮上皿から正しく下型の中央に落下供給されるよ
う、浮上皿と下型の間にガイド手段を用いることもでき
る。このガイド手段は、被成形ガラス素材の落下通路を
形成し、かつ被成形ガラス素材を実質的に垂直に落下さ
せることができるガイド部を有するものである。好まし
いガイド手段は、被ガラス素材の落下通路の少なくとも
一部が下方に向かって狭くなる漏斗形状を有するファン
ネル式ガイド手段である。浮上皿から下型上に落下させ
るに際し、下型と浮上皿の間にファンネル式ガイド手段
を挿入し、割型式浮上皿を水平に開くことにより下型上
に落下させることが好ましい。ガイド手段の材質は、耐
熱性の材質であれば特に限定されず、金属、セラミッ
ク、炭素材料であり得る。但し、高密度カーボン、又は
高密度カーボンの表面をグラッシーカーボン化したもの
が、ガイド手段の材質としては特に好ましい。
【0052】また、下型の成形面上に被成形ガラス素材
を供給する際、供給された被成形ガラス素材の位置を修
正することができる。具体的には、被成形ガラス素材を
下型の成形面上に供給した後、被成形ガラス素材の位置
を位置修正手段でガラス素材の垂直中心と下型の成形面
の中心点が実質的に合致するように修正することが好ま
しい。これにより、被成形ガラス素材が型の所望位置
(中央)に配置され、プレス時に型内に均一に広がるた
めに偏肉が防止され、従って、被成形ガラス素材が型か
らはみ出たり、不良品を生じることを防止できる。位置
修正手段はリング状、チャック状等が使用できるが、両
側からはさむ方式のチャック形状の位置決め手段が好適
に用いられる。位置修正手段の材料は、耐熱性があれば
特に限定されない。金属、セラミック、炭素系材料であ
り得る。高密度カーボン、又は高密度カーボンの表面を
グラッシーカーボン化したものが、特に好ましい。位置
修正手段は、成形型の温度以下の高温で使用されること
が好ましい。上記ファンネル式ガイド手段及び位置修正
手段は、例えば、特開平11-35332号公報に開示されてい
る。
【0053】本発明の製造方法においては、プレス成形
の後、被成形ガラス素材に施されていたカーボン膜を、
例えば、酸化処理によって除去することができる。酸化
処理による除去は、酸化処理すべきガラス成形品を、所
定温度、例えば250℃以上、ガラスの歪点以下の酸化
性雰囲気下におくことにより行なうことができる。除去
方法としては酸素プラズマアッシングなど他の方法での
酸化処理を用いることもできる。
【0054】又は、プレス成形の後、ガラス成形品を、
ガラス転移点−10℃以下、かつ歪点以上の酸化性雰囲気
で所定時間保持し、所定の冷却速度で冷却することによ
り、カーボン膜を除去すると同時に除歪と屈折率の調整
を行なうこともできる。このときの歪点−30℃までの
冷却速度は、好ましくは、10℃〜80℃/hrである。
【0055】
【実施例】実施例1 図1および図2は本発明の製造方法に用いる光学素子成形
用型の一つの実施態様を示すものである。図1はプレス
前、図2はプレス後の状態を示す。図1中1は型基盤全体
がCVD法で製造されたβ型の炭化ケイ素からなる成形
型、2はイオンプレーティング法によるi−カーボンか
らなる中間層、3は成形型の最表面層を構成するスパッ
タ法で形成した炭素薄膜である。4は被成形ガラス素材
であり、その表面はアセチレンの熱分解法により形成し
たカーボン膜で覆われている。図2のように型によって
被成形ガラス素材4をプレス成形することによって本実
施例ではプレス外径φ16mm、中心肉厚3mm、コバ厚0.8mm
の凸メニスカスレンズが得られる。
【0056】次に本実施例で使用する光学素子成形用型
について詳細に説明する。型母材としてCVD法で製造さ
れたβ型の炭化ケイ素を用い所定の形状に加工した。成
形面はレンズに要求される形状精度と面粗度に仕上げ
た。次に前記成形面上にi−カーボン膜をイオンプレー
ティング法により被覆する。図3は、i−カーボン膜を
成膜するために用いられるイオンプレーティング装置の
概略図であり、図3に示すイオンプレーティング装置に
おいて真空槽11の上部にヒーター19を内蔵した基盤
ホルダー12が設けられ、これにCVD法による炭化ケイ
素からなる成形型基盤13が保持されている。基盤ホル
ダー12と対向した下部にはタンタル(Ta)フィラメ
ントから成る第1のカソード電極14とタングステン
(W)基盤から成るアノード電極15が設置され、この
両電極14、15を取り囲む形で円筒形のリフレクター
16が設けられており、これは生成されたイオンを基盤
13の方向へ集中することを目的としている。また、図
中17はアルゴン及びベンゼンガス導入口、18は真空
排気のための排気口である。
【0057】排気口18より真空槽11内の真空度を
5.0×10-6Torrに排気した後、ガス導入口17
よりアルゴンガスを導入することによって真空度を8.
0×10-4Torrに保持し、第1のカソード電極14
とアノード電極15間に80Vの電圧を印加し、この間
にプラズマを発生させ、第1のカソード電極14からの
熱電子によりアルゴンガスをイオン化した。更に第2の
カソード電極である基盤ホルダー12とアノード電極1
5間に1.5kVの電圧を印加するとともに、リフレク
ター16に80Vの電圧を印加して、アルゴンイオンを
基盤13へ集中的に加速させることで、基盤13の表面
をイオンボンバードし清浄化した。
【0058】次に再び真空槽11の真空排気を行いガス
導入口17によりベンゼンガスを導入することによって
真空度を2.0×10-3Torrに保持し、第1のカソ
ード電極14とアノード電極15間に80Vの電圧を印
加してベンゼンガスを炭化水素イオンとし、更に第2の
カソード電極である基盤ホルダー12とアノード電極1
5間に1.5kVの電圧を印加するとともにリフレクタ
ー16に80Vの電圧を印加して炭化水素イオンを成形
型基盤13の方向に集中的に加速し、あらかじめ300
℃に加熱しておいた成形型基盤13の表面に膜厚40nmの
i−カーボン膜を形成した。
【0059】次にこのi−カーボン膜上にスパッタ法に
より炭素薄膜を形成するために用いられるスパッタ装置
の概略図を図4に示す。図4に示すスパッタ装置におい
て、真空槽20の上部にはヒーターを内蔵した基盤ホル
ダー22が設けられ、すでにi−カーボン膜が被覆され
た成形型基盤21が保持されている。更に真空槽20の
下部にはグラファイトから成るターゲット23が前記成
形型基盤21と対向するように配置されている。図中、
24はマグネット、25はRF電源で13.56MHz
の高周波であり、また26はアルゴンガスの導入口、2
7は真空排気のための排気口である。
【0060】排気口27により真空槽20内の真空度を
5.0×10-5Torrに排気した後、ガス導入口26
よりアルゴンガスを導入することによって真空度を5.
0×10-3Torrに保持し、RF電源25により高周
波電力を印加して前記グラファイトターゲット23をス
パッターして、あらかじめ300℃に加熱しておいた成
形型基盤21のi−カーボン膜上に膜厚30nmの炭素薄
膜を形成した。
【0061】このようにして、図1、図2に示すよう
に、所定形状CVD法により形成されたβ型炭化ケイ素
成形型上に、イオンプレーティング法によりi−カーボ
ン膜2を形成し、更にこのi−カーボン膜2上に、スパ
ッタ法により炭素薄膜3を形成した本実施例で使用する
ガラスプレス成形型が得られた。
【0062】次にバリウムホウケイ酸塩光学ガラス(基
本組成:SiO2 37.8、 B2O3 24.0、Al2O3 5.3、 Li2O
8.5、CaO 5.0、 BaO 16.1、 La2O3 3.3、 As203 0.
5、Sb2O3 0.2 (各wt%)、Tg:500℃、Ts 540℃)か
らなる被成形ガラス素材(偏平球形状に熱間成形された
もの)にアセチレンの熱分解法によりカーボン膜を形成
する。方法については以下に述べる。
【0063】上記被成形ガラス素材4を石英製31のト
レーにのせ、図5に示すベルジャー30内に設置した。
ベルジャー内を0.5torr以下に排気した後、加熱し480℃
に保つ。ガス導入管34から窒素ガスを流しながら真空
ポンプで排気を行うことにより160torrに保ち、30分間
パージを行った。窒素ガスの導入を止め、0.5torrまで
排気を行った。この後、排気系に繋がるバルブを閉じた
後、圧力が120torrになるまで流量65sccmにて100分間ア
セチレンを導入し続けた。所定の圧力に達した後、加熱
を止めアセチレンの導入を止め、真空引きを行った。温
度が下がった後被成形ガラス素材を取り出した。ESCAを
用いてC1sからのシグナル強度を測定し、炭素膜厚が既
知である参照試料のシグナルと比較して、膜厚が平均0.
6nm であることが判った。
【0064】次に上記のようにして多数のカーボン膜を
形成した被成形ガラス素材を用意し、前記の成形型を用
いてプレス成形した。図1及び2に示すように、上型5
及び下型6と案内型7との間に被成形ガラス素材4を配
置した後、窒素雰囲気中でガラス粘度が107.6ポアズ
に相当する温度で100Kg/cm2の圧力で60秒間プレスし、
転移点まで80℃/minの冷却速度で冷却し、その後さらに
急冷して取出すことを繰り返した。ここでは、プレス成
形500回毎に成形型に設けられたi−カーボン膜とスパ
ッタ法による炭素薄膜は酸素プラズマアッシングによる
酸化処理により一旦除去し(表面に生成した酸化層も除
去する)、新たに上記と同様の方法及び条件でi−カー
ボン膜とスパッタ法による炭素薄膜を成膜することを繰
り返した。プレス結果を後述する実施例2〜4および比
較例とともに表1に示す。
【0065】なお、被成形ガラス素材にカーボン膜を形
成した場合、プレス成形後のガラス成形体にはカーボン
が付着したままになっているので、ここでは、ガラスの
転移点−20℃の大気中で2時間保持し、50℃/hrの冷却速
度で冷却することにより、カーボン膜を除去するととも
に除歪と屈折率調整を行った。表1から明らかなとお
り、プレスを50000回行なっても型に異常はなく、
またガラス成形体の面精度は良好で、外観上の問題(く
もり、気泡など)も見られなかった。
【0066】比較例1 被成形ガラス素材表面に、カーボン膜を被覆しなかった
以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形を行なっ
た。除歪と屈折率調整は実施例1と同様に行なった。平
均5000回でプルアウトが発生した。
【0067】実施例2 成形型がi−カーボン膜からなる中間層を有しないこと
以外は実施例1同様の方法により、プレス成形を行なっ
た。表1に示すように、実施例1に比べると平均10,000回
でプルアウトが発生した。型寿命は実施例1に比較して
短いが、比較例1に比べて明らかなとおり、本発明の効
果が得られた。
【0068】実施例3 本実施例ではCVD法による炭化ケイ素成形型基盤を形状
加工した後、DLC膜(ダイヤモンド構造で、一部がグラ
ファイト構造の炭素膜)を厚さ2μm形成し、その後さら
に所望の最終形状に研磨加工し、しかる後に表面層とし
て実施例1と同様にスパッタ法による炭素薄膜を形成し
た。DLC膜は固形カーボンを使用したPVD法により形成し
た。被成形ガラス素材へのカーボン膜の成膜については
実施例1と同様である。この実施例においてはプレス成
形500回毎にスパッタ法による炭素薄膜をプラズマアッ
シングにより除去し、新たに成膜することを繰り返し
た。このとき、ダイヤモンド膜はプラズマアッシングで
除去されず、そのまま使用した。プレス結果は表1に示
すように50,000回のプレスにおいても型には何ら異常は
生じなかった。
【0069】実施例4 CVD法による炭化ケイ素からなる成形型基盤の代わりに
金属バインダーを含まない炭化タングステン系超硬合金
成形型を使用した以外は実施例3と同様であり、実施例3
と同様の結果が得られた。
【0070】比較例2〜6 被成形ガラス素材表面に、カーボン膜を被覆しなかった
か、炭素薄膜及び/又は中間層を有しない成形型を用い
た以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形を行なっ
た。結果は表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】上記実施例1〜4、及び比較例1〜6の結
果は表1に示すとおりである。比較例1においては、プ
レス回数平均5,000回でプルアウトが発生し、成形型が
使用できなくなった。また、それ以外の比較例において
も、プルアウト、クモリによる外観不良、融着等の問題
が生じた。それに対して、実施例1〜4では少なくとも
10,000回のプレスに対し、なんら異常は発生しなかっ
た。さらに、実施例1〜4については、成形されたガラ
ス成形体に、外観品質、面精度等について問題はなかっ
た。
【0073】実施例5 本実施例ではランタン系光学ガラス(基本組成SiO2 7.
0, B2O3 34.0, Li2O 3.5, CaO 7.5, ZnO 9.0, La2O3 2
4.0, Y2O3 8.0, Gd2O3 3.0, ZrO2 4.0 wt%のガラス(T
g:530℃、Ts:570℃)からなる被成形ガラス素材(偏
平球形状に熱間成形されたもの)を実施例1と同様のレ
ンズ形状にプレス成形した。実施例1と同様の方法で成
形型に2層膜を形成した。まず、被成形ガラス素材にカ
ーボン膜を施さずにプレス成形を行ったところ、プレス
成形体にはカン、ワレが発生しプレス成形が困難であっ
た。そこで被成形ガラス素材表面に実施例1と同様の方
法でアセチレンの熱分解法により被成形ガラス素材表面
にカーボン膜を形成しプレス成形に供した。実施例1と
同様の方法でプレス成形を行ったところ、カン、ワレ防
止効果が顕著に見られたが、20回に1回程度の割合で
カンが発生した。そこで、カーボン膜の厚さを平均1.2n
mとした。その結果、カン、ワレの発生を皆無に抑える
ことができ、品質の良い良好なレンズを安定して生産で
きた。更に、カーボン膜により、プレス後のガラスが収
縮する際の摩擦抵抗が少なくなり、ガラスの応力が大き
くならないために、カン,ワレが防止されるという優れ
た効果が発揮された。これに対し、カーボン膜が無い場
合は、光学素子の光学機能面を有する曲面と、周辺部と
の境界に、円弧状にカン(クラック)が発生したり、光
学素子が真二つに割れるものが見られた。これは、被成
形ガラス素材と型の間の密着力のため、ガラスの収縮時
に大きな応力が発生したためとみられる。
【0074】実施例6〜9 ここでは被成形ガラス素材としてランタン系光学ガラス
(実施例5と同じもので、偏平球形状に熱間成形したも
の)を用い、かつ特開平11-35332の実施例1のファンネ
ル式ガイド手段または実施例2の位置修正手段を併用し
て、プレス径14mm、中心肉厚4mm 、コバ厚2mmの両凸レ
ンズを成形した。ファンネル式ガイド手段と位置修正手
段としては、高密度カーボンの表面をグラッシーカーボ
ン化処理したものを用いた。その結果、表2のような結
果が得られた。表中、のファンネル式ガイド手段使用
で「悪い」とは、サンプルのうち10%以上に、大きな偏
肉が発生し、光学素子としての使用ができないものであ
る。これは、被成形ガラス素材が成形型に落下した時に
傾き、ファンネル式ガイド手段によりかかったままとな
り、その状態からガイド手段が取除かれてプレス成形さ
れたことによるとみられる。また、「良好」とは上記し
た不良サンプルが1%未満であり、言いかえれば、落下
した時に成形型上で被成形ガラス素材が滑ってほぼ中心
位置に収まり、プレス成形で良好な結果が得られたもの
である。
【0075】の位置修正手段使用で「悪い」とは下型
上の中心からずれた位置に落下することでその位置に止
まり、位置修正手段を使用してもスムーズに動かず、そ
の後のプレス成形でいびつ形状となるものがサンプルの
10%以上となる場合である。良好とはこうした不良のサ
ンプルが1%未満であり、言いかえれば位置修正手段に
よりスムーズに滑って中心位置に移動し、その後のプレ
ス成形で良好なレンズが得られるものである。尚、この
レンズはコバが厚いためカン、ワレの問題は発生しなか
った。
【0076】
【表2】
【0077】実施例6〜9で良好な結果が得られること
がわかった。それに対して、比較例7、11に示すように
成形面(表面)にi−カーボンのみを被覆したものは、
被成形ガラス素材にカーボン膜を施しても滑りが悪く、
このために、偏肉が起きやすいことがわかった。さら
に、被成形ガラス素材にカーボン膜を施さなかった比較
例8、9、10、12、13、14でも、偏肉が発生し
た。
【0078】
【発明の効果】本発明では、特定の成膜方法による型の
成形面の炭素薄膜と、ガラス素材の表面のカーボン膜の
相互作用により、界面にかかる力(特に密着力、摩擦
力)が緩和され、成形面の層が剥離しにくい。従ってプ
ルアウトの問題が起きず、型寿命が大幅に向上する。さ
らに、本発明によれば、プレス中の界面に発泡による微
少凹部やクモリを生じることが無く、面精度の向上に寄
与する。
【0079】また、カン、ワレの起きやすい、即ち製造
条件の厳しい硝種であっても、本発明の方法により成形
型と被成形ガラス素材の界面に働く力の緩和により、カ
ン,ワレの問題を解消することができる。即ち、プレス
後のガラスが収縮する際の摩擦抵抗が少なくなり、ガラ
スの応力が大きくならない為、優れた効果が発揮され
る。例えば、カン、ワレの起きやすい硝種(例えばラン
タン系光学ガラス)や、得ようとする光学素子の形状
(凸面を有するもの、とくにコバの薄い形状)に関し、
本発明によると、ガラスに生じる力が緩和されるため、
問題なく成形することができる。
【0080】更に、本発明では、被成形ガラス素材表面
のカーボン膜と、型成形面の特定成膜方法による炭素薄
膜の相互作用により、型に供給された被成形ガラス素材
がスムーズに型の中で移動し、中央に導かれやすい。こ
のため、偏肉による不良が発生しにくい。また、カーボ
ン膜は、ガラスの変形に追随する柔軟性、伸縮性が良
く、ガラスが成形面上で加圧を受けて変形する際に、滑
りやすく、従って抵抗が少なくして伸びることができる
ためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる光学素子成形用型の
一つの実施態様(プレス前の状態)を示すものである。
【図2】本発明の製造方法に用いる光学素子成形用型の
一つの実施態様(プレス後の状態)を示すものである。
【図3】i−カーボン膜を成膜するために用いられるイ
オンプレーティング装置の概略図。
【図4】スパッタ法により炭素薄膜を形成するために用
いられるスパッタ装置の概略図。
【図5】アセチレンの熱分解法によりカーボン膜を形成
するための装置の概略図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 16/42 C23C 16/42 (72)発明者 高橋 岳志 東京都新宿区中落合2丁目7番5号 HO YA株式会社内 Fターム(参考) 4G015 HA01 4K029 AA04 BA34 BB02 BB10 BD05 CA03 CA05 EA01 4K030 BA37 LA21

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被成形ガラス素材を成形型に供給し、次い
    で供給された被成形ガラス素材を成形型によりプレス成
    形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
    前記成形型は、少なくとも成形面に、スパッタ法による
    炭素薄膜を有し、前記被成形ガラス素材は、表面にカー
    ボン膜を有し、かつ前記プレス成形は、非酸化性雰囲気
    下で行なわれることを特徴とするガラス光学素子の製造
    方法。
  2. 【請求項2】少なくとも上型及び下型からなる成形型の
    前記下型の成形面上に被成形ガラス素材を落下させて供
    給し、次いで供給された被成形ガラス素材を成形型によ
    りプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法
    であって、前記成形型は、少なくとも成形面に、スパッ
    タ法による炭素薄膜を有し、前記被成形ガラス素材は、
    表面にカーボン膜を有し、かつ前記プレス成形は、非酸
    化性雰囲気下で行なわれることを特徴とするガラス光学
    素子の製造方法。
  3. 【請求項3】前記炭素薄膜は、スパッタガスとして不活
    性ガスを、スパッタターゲットとしてグラファイトを用
    いたスパッタ法により成膜されたものであることを特徴
    とする請求項1又は2に記載のガラス光学素子の製造方
    法。
  4. 【請求項4】前記炭素薄膜の膜厚が3〜200nmであること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラ
    ス光学素子の製造方法。
  5. 【請求項5】前記カーボン膜が、炭化水素の熱分解法に
    より形成したものであることを特徴とする請求項1〜4
    のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。
  6. 【請求項6】前記カーボン膜が、蒸着により形成された
    ものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載のガラス光学素子の製造方法。
  7. 【請求項7】前記カーボン膜の平均厚さが0.1〜2nmであ
    ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載
    のガラス光学素子の製造方法。
  8. 【請求項8】前記成形型は、少なくとも成形面近傍がC
    VD法で作製された炭化ケイ素からなることを特徴とす
    る請求項1〜7のいずれかに記載のガラス光学素子の製
    造方法。
  9. 【請求項9】前記炭化ケイ素の部分と前記炭素薄膜との
    間に中間層を有することを特徴とする請求項8に記載の
    ガラス光学素子の製造方法。
  10. 【請求項10】前記中間層はイオンプレーティング法に
    よって形成されたものであることを特徴とする請求項9
    に記載のガラス光学素子の製造方法。
  11. 【請求項11】成形型に供給される被成形ガラス素材の
    温度が、成形型の温度より高いことを特徴とする請求項
    1〜10のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造
    方法。
  12. 【請求項12】成形型に供給される被成形ガラス素材が
    その粘度が105.5〜109ポアズに相当する温度に加熱
    されたものであり、被成形ガラス素材が供給される成形
    型が被成形ガラス素材の粘度が107〜1012ポアズに
    相当する温度に予熱されたものであることを特徴とする
    請求項1〜11のいずれか1項に記載のガラス光学素子
    の製造方法。
  13. 【請求項13】被成形ガラス素材の成形型への供給が、
    被成形ガラス素材を浮上皿上で気流により浮上させなが
    ら軟化させ、被成形ガラス素材を浮上皿から下型の成型
    面上に落下させることを含むことを特徴とする請求項1
    〜12のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造方
    法。
  14. 【請求項14】前記被成形ガラス素材の落下を、ガイド
    手段を用いて行うことを特徴とする請求項13に記載の
    ガラス光学素子の製造方法。
  15. 【請求項15】プレス成形前に位置修正手段により落下
    させた被成形ガラス素材の位置決めを行うことを特徴と
    する請求項13に記載のガラス光学素子の製造方法。
  16. 【請求項16】前記被成形ガラス素材が、ランタン系ガ
    ラス又はリン酸塩系ガラスからなることを特徴する、請
    求項1〜15のいずれかに記載のガラス光学素子の製造
    方法。
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