JP4255583B2 - 精密プレス用成形型、及びその製造方法、並びにガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ガラスからなるプリフォームを、加熱軟化してプレス成形するガラスの製造方法、その製造方法で使用する精密プレス用成形型、精密プレス用成形型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学ガラスの形状を所定形状に形成する、最もオーソドックスな製造技術は、レンズブランクを研磨する方法であるが、近年、研磨を必要としないガラスの精密プレス方法が広まりつつある。この精密プレス方法によれば、複雑な曲面の光学レンズを容易に製造することができる。
【0003】
この精密プレス方法の特徴は、ガラスからなるプリフォームを106〜1012ポアズの粘性になるように加熱軟化し、このプリフォームを、高精度に研磨した成形面を有する精密プレス用成形型でプレスすることにある。このように精密プレス成形することで、高い平滑性を有する成形面をプレス成形品に転写することができるので、次工程として研磨が不要になる。
ところで、この種の精密プレス用成形型には、ガラスと成形基盤が反応して酸化物を形成することによって、ガラスと成形面が融着することを防止するために、離型膜を成形基盤表面に形成する対策を講じるのが一般的である。
【0004】
この離型膜の材料としては、カーボン、窒化チタン、Ir−Pt、Pt等、種々の材料が既に提案されている。
なかでも、Pt等の貴金属膜は酸化しないので、他の材料に比べて利点がある。この種の貴金属を離型膜を提案した公報として特開平7−138032号公報がある。この公報には成形基盤に形成する離型膜として、Pt等の貴金属にAu等を含有させ、Pを離型膜に混入させた成形型が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の白金離型膜の成形型で、P2O5−TiO2系又は、SiO2−TiO2系のガラスを、プレス成形すると、ガラスの表面に微細な凹部又は気泡が発生し、一見するとガラス表面に曇ったように見える表面欠陥が発生することがあった。
【0006】
又、P2O5―PbO系ガラスを上述のPtの成形型でプレス成形すると、成形型の離型膜に金属等が付着し、離型膜表面の曇りが発生するという問題点があった。この付着物が付着した状態でプレス成形をすると、成形品の表面精度の劣化を招くという問題点になる。
【0007】
このように、白金の離型膜は、ガラスと反応し、成形品の表面に欠陥を引き起こす問題点があった。又、白金は、ガラスとの濡れ性も十分ではなく、成形型とガラスの融着を完全に防止するには至っていなかった。
又、白金に金を含有させた合金からなる離型膜も、白金が主成分であるので、上述の問題点を解決することはできなかった。
【0008】
そこで、このような背景の下、本発明は案出されたものであり、本発明の目的は、ガラスとの反応性が低い精密プレス用成形型、及びその製造方法を提供することである。
【0009】
又、本発明の他の目的は、離型膜にくもりが発生することなく、離型性に優れた精密プレス用成形型、及びその製造方法を提供することである。
又、本発明の他の目的は、成形基盤との密着性,耐摩耗性,硬度、耐久性に優れている離型膜を有する精密プレス用成形型、及びその製造法を提供することである。
【0010】
そして、本発明の他の目的は、表面欠陥が少ないプレス成形品を製造できるガラスの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されており、
前記Au離型膜と前記成形基盤との間には、当該Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深くイオンを注入することによってミキシング層が形成されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成2)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面はイオンが注入されることによって表面改質されており、当該成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成3)
請求項2に記載の精密プレス用成形型において、前記Au離型膜上には第二のAu離型膜が成膜されており、当該第二のAu離型膜には第二のイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成4)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面はイオンが注入されることによって表面改質されており、この表面にAu離型膜が成膜されており、
更に、前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深く第二のイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成5)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAuイオンが注入されており、当該成形基盤の表面には当該成形基盤を熱処理することによって当該成形基盤の表面付近に存在しているAuが溶融して得られるAu離型膜が形成されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成6)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAuイオンが注入されて、更にAu離型膜が成膜されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成7)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されており、当該Au離型膜にはAuイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。
(構成8)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、
前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深くイオンを注入することによって当該Au離型膜と前記成形基盤との間にミキシング層を形成する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成9)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にイオンを注入して当該成形基盤の表面を改質し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成10)
請求項9に記載の精密プレス用成形型の製造方法において、
更に、前記Au離型膜上に第二のAu離型膜を成膜し、
前記第二のAu離型膜の表面に第二のイオン注入をする
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成11)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にイオンを注入して当該成形基盤の表面を改質し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、
前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深く第二のイオンを注入する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成12)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAuイオンを注入し、当該成形基盤を熱処理して当該成形基盤の表面付近に存在しているAuを溶融させて前記成形面を形成する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成13)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAuイオンを注入し、当該成形基盤の表面にAu離型膜を成膜する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成14)
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、当該成形基盤の表面にAuイオンを注入する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
(構成15)
軟化状態にあるガラスを一対の精密プレス用成形型でプレス成形し、当該精密プレス用成形型の成形面を転写する精密プレスによるガラス成形品の製造方法において、
前記一対の精密プレス用成形型の少なくとも一方は、請求項1〜7の何れかに記載の精 密プレス用成形型である
ことを特徴とするガラス成形品の製造方法。
(構成16)
酸化金の融点以上の温度でプレス成形する
ことを特徴とする請求項15に記載のガラス成形品の製造方法。
本発明の第1発明は、軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、前記成形面は、金を主成分とする材料から構成されていることを特徴とする精密プレス用成形型。
【0012】
本発明の精密プレス用成形型は、研磨フリーの光学製品をプレス成形する際に使用される成形型であって、使用目的に応じて、上型、下型、胴型として使用される。特に、上型及び/又は下型が好適である。
【0013】
本発明の成形面は、成形面を軟化状態にあるガラスの表面に転写することにより、プレス後のプレス成形品の表面を研磨が不必要になるように、高い平滑性を有している。
本発明の金を主成分とした成形面は、種々のガラスとの反応性が極めて低い。金を主成分とするとは、ガラスとの反応性を低下する効果が得られるように含有するということである。
【0014】
本発明の第2発明は、
成形面は、成形基盤の表面であることを特徴とする第1発明に記載の精密プレス用成形型。
前記成形基盤は、WC又はSiC等の焼結体、CVD法で成膜したSiC、炭化クロム、窒化ケイ素、ジルコニア等の材料が好適である。成形面は、プレス成形品の最終形状に対応した形状に形成されている。又、成形面はプレス成形品を研磨不要にできるように高精度に研磨されている。
成形基盤の表層部の金は、80wt%以上が好ましく、更に好ましくは、90wt%以上である。
【0015】
成形基盤の厚さ方向における金の分布は、成形基盤の表面近傍における金の含有量が、内部より高くなっている状態が好ましい。
【0016】
本発明の第3発明は、
成形面は、成形基盤の表面上に形成された離型膜の表面であることを特徴とする第1発明に記載の精密プレス用成形型。
【0017】
本発明の離型膜は、最終プレス成形品の形状に対応した形状に形成された成形基盤の表面に、ガラスと成形基盤が固着することを防止するために形成した薄膜である。
金を主成分とする離型膜の成膜方法は、マグネトロンスパッタ法、レーザアブレーション法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法等が好ましい。特に、膜表面を鏡面に形成できるイオンビームスパッタ法が好ましい。
【0018】
又、離型膜の表面粗さは、ガラス成形品の表面粗さを劣化させない状態であれば良く、Rz0.1μm(Ra0.01μm)以下が好ましい。
【0019】
本発明の第4発明は、成形基盤の表面及び/又は離型膜の成形面に、イオン注入したことを特徴とする第2又は第3発明に記載の精密プレス用成形型。成形基盤の表層部にイオン注入する場合、成形基盤の材料は、イオン注入することによって、セラミック等のアモルファス化する材料が好ましい。イオン注入の方法は、離型膜の表面からイオン注入し、離型膜と成形基盤の表層部にイオンを注入する方法、離型膜の表面から離型膜のみにイオン注入する方法、離型膜の形成前に、成形基盤の表面にイオン注入する方法がある。
【0020】
本発明の第5発明は、
イオン注入は、C、N、N2、Au、Ar,Krの中から選ばれた少なくとも一種のイオンを、イオン注入量1×1015〜1×1019ions/cm2、加速電圧10KeV〜5MeVの条件で照射したことを特徴とする第4発明に記載の精密プレス用成形型。
【0021】
イオン注入量が、1×1015ions/cm2以下だと膜の硬度が十分でなく、1×1019ionsを超えると、膜の表面粗さが劣化するので、イオン注入量は、1×1015〜1×1019ions/cm2が好ましい。加速電圧は、10KeV未満だと、膜表面がスッパッタリングされるので、10KeV〜5MeVが好ましい。特に好ましいのは、2×1015〜1×1018ions/cm2、加速電圧40〜200KeVである。
【0022】
本発明の第6発明は、
離型膜の膜厚は、3〜1500オングストロームであることを特徴とする第3発明に記載の精密プレス用成形型。
【0023】
膜厚を3〜1000オングストロームに限定することにより、イオン注入によって金を主成分とする離型膜の硬度を向上させなくても実用に耐える離型膜を得ることができる。離型膜の膜厚が1000オングストロームを超えると膜の凹凸が転写するガラス表面の表面欠陥となるためであり、3オングストローム以下だと、成形基盤の表面が露出し、ガラスとの反応性を低下するの効果が得られないためである。更に好ましい膜厚は、10〜500オングストロームである。
【0024】
本発明の第7発明は、
金を主成分にした材料は、金の含有量が90wt%以上であることを特徴とする第1〜6の何れかの発明に記載の精密プレス用成形型。
【0025】
本発明の第8発明は
金を主成分にした材料は、金の含有量が99wt%以上であることを特徴とする第1〜6の何れかの発明に記載の精密プレス用成形型。
好ましくは、3N(99.9%)以上の純度の金である。
【0026】
本発明の第9発明は、
成形基盤と、離型膜との間に中間層が形成されていることを特徴とする第3発明に記載の精密プレス用成形型。
【0027】
中間層は、成形基盤と離型膜の付着向上の観点から、Ni、Si,Cr,Ti,Pt,Ir,Rh,Ru,Pd,Hf,Ta,Re,Os等が好ましい。又、TiO2,ZrO2,Al2O3,NiO等の酸化物、TiN,CrN,TaN,BN,AlN等の窒化物、TiC,Cr2C2,B4C,HfC,TaC,SiC等の炭化物、TiB2,HfB等のホウ化物でも良い。又、内部応力による剥離防止の理由から、膜厚は100〜10000オングストロームが好ましい。この中間層の成膜方法は、スパッタ法等のPVD法が好ましい。
【0028】
本発明の第10発明は、
軟化状態にあるガラスを一対の精密プレス用成形型でプレス成形し、該精密プレス用成形型の成形面を転写する精密プレスによるガラスの製造方法において、前記一対の精密プレス用成形型の少なくとも一方は、第1〜9発明の何れかに記載の精密プレス用成形型であることを特徴とするガラスの製造方法。
【0029】
本発明の精密プレスは、高精度の平滑性を有する成形面を備えた精密プレス用成形型によって軟化ガラスをプレス成形するもので、プレス後のガラス成形品の表面には研磨を必要としない。
精密プレスするときの雰囲気は、成形基盤の酸化を防止するため、窒素、Ar、(窒素+水素)等の不活性ガスが好ましい。
そして、本発明のガラスの製造方法によって形成する製品としては、光学レンズ等の光学製品、情報記録媒体用ガラス基板等の電子製品部品等が挙げられる。
【0030】
本発明の第11発明は、
ガラスは、酸化鉛又は酸化チタンを含有していることを特徴とする第10発明に記載のガラスの製造方法。
【0031】
酸化鉛を含有するガラスとしては、wt%でP2O3が、10〜35%、PbOが25〜55%、LiOが0〜5%、Na2Oが0〜18%、K2Oが0〜14%、(但し、LiO+Na2O+K2O:1〜20%)、Nb2Oが0〜25%、WO3が0〜30%、(但しNb2O3+WO3:5〜40%)が好ましい。
【0032】
又、AL2O3が1〜8%、PbOが0.1〜5%、TiO2が0〜3%、P2O3が0〜3%、La2O3が0〜15%、Y2O3が0〜5%、Gd2O3が0〜5%、Nb2O3が0〜3%、ZrO2を0〜5%が好ましい。
【0033】
酸化チタンを含有するガラスとしては、
wt%でP2O3が、14〜35%、B2O3が0.5〜16%、Nb2O5が15〜55%、Li2Oが0.1〜6%、Na2Oが5〜25%、SiO2が0.1〜5%、TiO2が1〜15%が好ましい。
【0034】
本発明の第12発明は、
酸化金の融点以上の温度でプレス成形することを特徴とする第10又は11発明に記載のガラスの製造方法。
Auがガラスに含まれる酸素と反応して酸化金を形成したとしても、酸化金(Au2O)は、その融点である200℃以上で分解する。このため、酸化金の融点以上でプレス成形を行なえば、金とガラス中の酸素との反応によって発生した不純物は分解し、酸化金に含まれる金は成形面に残る。従ってガラス成分の成形面への付着、又は、プレス成形品の外観上における、くもりの発生を抑制することができる。
【0035】
本発明の第13発明は、
軟化状態にあるガラスの粘度は、106〜1012ポアズであることを特徴とする第10〜12発明の何れかに記載のガラスの製造方法。
好ましい粘度は、108〜1012ポアズである。
【0036】
本発明の第14発明は、
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
成形基盤の表面上に、金を主成分とする離型膜を形成する際、
離型膜の成形面及び/又は成形基盤の表面にイオンビームを照射することを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
照射されたイオンは、その種類によって、離型膜に残存する場合と、残存しない場合があるが、何れの場合でも、離型膜の硬度を向上させることができる。又、照射されたイオンは、成形基盤に残存する場合と、残存しない場合があるが、何れの場合でも、離型膜の付着力を向上させることができる。
【0037】
本発明の第15発明は、
イオン注入は、C、N、N2、Au、Ar,Krの中から選ばれた少なくとも一種のイオンを、イオン注入量1×1015〜1×1019ions/cm2、加速電圧10keV〜5MeVの条件で照射したことを特徴とする第14記載の精密プレス用成形型の製造方法。
【0038】
本発明の第16発明は、
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
成形基板の表面に、金を主成分とし、且つ、膜厚は、3〜1000オングストロームである離型膜を形成することを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
【0039】
本発明の第17発明は、
金を主成分とした離型膜は、金の含有量が90wt%以上であることを特徴とする第14〜16発明の何れかに記載の精密プレス用成形型の製造方法。
【0040】
本発明の第18発明は、
軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形面を前記ガラスに転写する成形基盤からなる精密プレス用成形型の製造方法において、
成形基盤の表面に、Auイオンを、イオン注入量1×1015〜1×1019ions/cm2、加速電圧10keV〜5MeVで照射したことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明にかかる実施例を説明する。
(実施例1)
(精密プレス用成形型と、精密プレス用成形型の製造方法)
最初に図1を参照して、本実施例に係る精密プレス用成形型について説明する。
本実施例の精密プレス用成形型は、図1に示すように、上型5と下型6のそれぞれであり、これらの成形型は一対でガラスをプレス成形する。
【0042】
上型5と下型6とは同一の形状となっている。各成形型5、6は、WCからなる成形基盤1、3と、成形基盤の表面1a,3aに形成された金からなる離型膜2、4とから構成されている。成形基盤1、3は、その表面1a、3aを、プレス成形する光学レンズの表面に対応する形状に形成している。
Au離型膜2、4は、99.9wt%の純度のAuからなる薄膜(膜厚:1000オングストローム)であり、前記成形基盤1、3の表面1a、3a上に形成されている。そして、このAu離型膜2、4の表面2a、4aが各成形面になる。
【0043】
又、離型膜2、4から、成形基盤1、3の表層部にわたる領域には、Arイオンが照射されている。図2は、離型膜表面から所定の深さにおいて、到達したArイオンの量の分布を示す図である。図2は、縦軸が注入原子密度(任意単位)、横軸は注入深さ(Å)である。Arイオンは離型膜の表面から700Åに到達したイオンが最も多い。
次に、本実施例の精密プレス用成形型の製造方法について説明する。
先ず、WCからなる超硬合金を出発材料とし、所望の形状に加工して成形基盤の基本形状(転写面の形状)を得る。次に成形基盤の表面を表面粗度Raが0.5nm以下になるように鏡面研磨した。
【0044】
前記成形基盤を洗浄した後、真空チャンバー内にセットした。この真空チャンバーには成形基盤表面にイオンを照射するためのイオン源と、ターゲットをスパッタするためのイオン源とが配置されている。
そして、装置内を到達真空度2×10-5Paまで真空引きし、成形基盤を400℃に加熱した。その後、Arガスを3×10-2Paの圧力で導入し、ターゲットスパッタ用のイオン源からアノード電流0.3Aで1kWの加速電圧でArイオンを引き出し、純度99.9%以上のAuターゲットをスパッタして純度99.9%のAu離型膜を成膜した。この時のAu膜の膜厚は1000オングストロームとした。
【0045】
次に、上記Au離型膜が成膜された成形基盤に、イオン照射用のイオン源によりArイオンを注入した。照射条件は、の加速電圧が200keV、注入量が1×1017ions/cm2とした。
この場合、シュミレーション(モンテカルロ法)によると、Au離型膜の表面から2000オングストロームの深さまでイオンは到達していると考えられる。この結果、Au離型膜と、成形基盤との間にミキシング層が形成され、このミキシング層によって膜剥離は防止されている。
【0046】
このようにして得られた、精密プレス用成形型の表面粗さRaは、0.5nmであった。
【0047】
(ガラスのプレス成形方法1)
次に、上述のように作製した精密プレス用成形型を使用して、精密プレス成形を行なうガラスの製造方法について説明する。本実施例では、光学レンズを製造した。
最初にP2O5−PbO系ガラスで屈伏点温度511℃の硝材から、500mgのプリフォームを製作する。
【0048】
プリフォームのガラスの組成は、wt%で、B2O3が3%、P2O3が19%、Na2Oが4%、BaOが1%、PbOが49%、TiO2が4%、Nb2O5が15%、WO3が5%、残り脱泡剤である。
【0049】
そして、上述の本実施例の成形型を使用して、このプリフォームを、N2の雰囲気下で、プレス温度570℃、プレス荷重100kgfの条件でプレス成形した。成形時のガラスの粘性は、約106.5ポアズであった。そして、成形温度から離型温度250℃になるまで冷却した後、プレス成形品を取り出した。
このようにして得たプレス成形品と同じプレス条件で、1000ショット連続してプレス成形を行なった。
【0050】
そして、プレス後、本実施例の精密プレス用成形型の成形面、及びプレス成形品の表面を観察したところ、それらの表面には、ガラス成分(Pb、酸素)と金との反応物による曇り等の異常は認められなかった。又、離型膜の膜剥離も認められなかった。
更に、1000ショットごとに観察を繰り返し、10万ショットまで連続成形を実施したが、成形したプレス成形品の表面、及び成形面には、依然、異常は認められなかった。
【0051】
本実施例では、ガラス成形型の成形面の表面がAuであるため、ガラス成分と反応した反応層が形成されないので、曇りが発生しなかった。
又、イオン注入によりAu表面の硬度と、耐摩耗性が向上しているので、傷等の外観劣化が進行しない。本実施例では、イオン注入層がAu膜から成形基盤の表面層まで達しているので、Au膜と成形基盤間でミキシング層が形成されており、高い密着性を有している。その結果、膜剥離のない長寿命のガラス成形型が得られた。
【0052】
比較例として、WCからなる超硬合金の成形基盤の表面に、Au−Rh−Pt−Ir合金膜(Pt:25.5wt%、Rh:3wt%、Au:1.5wt%、Ir:70wt%)を、スパッタ法で成膜した精密プレス用成形型を作製した。そして、この精密プレス用成形型を使用して、本実施例と同一のプレス条件で、同じ種類のガラスをプレス成形した。そして、本実施例と同様の評価を行なった。
【0053】
比較例の精密プレス用成形型は、1000ショット成形した後に成形面を観察したところ、成形面にくもりが発生するとともに、膜剥離も1カ所確認された。そして、くもりが発生した比較例の成形型を、その都度くもりを手拭きで除去しながら成形を続け、10000ショット成形した後、改めて、成形面を観察した。その結果、成形面にはくもりが、1000ショットの時に比べてさらに顕著になると共に、膜剥離も15カ所に増加した。又、プレス成形品の表面にも微小なガラスが融着していたので、比較例の成形型による成形は困難になった。
【0054】
又、比較例として使用した精密プレス用成形型に付着していたくもりについて、元素分析を行った結果、ガラスとの反応物は、Pbが主成分であることがわかった。
【0055】
(ガラスのプレス成形方法2)
本実施例の精密プレス用成形型を使用して、今度は、酸化珪素―酸化チタン系のガラスをプレス成形した。
【0056】
ガラスの組成は、wt%で、SiO2が28%、Na2Oが10%、K2Oが4%、CaOが1%、BaOが14%、ZrO2が2%、TiO2が28%、Nb2O5が13%
である。
上記組成のプリフォームを、窒素雰囲気下において、プレス温度670℃、プレス荷重100kgfでプレス成形した。成形時のガラスの粘性は、約107ポアズであった。その後、400℃になるまで、冷却し、プレス成形品を取り出した。
【0057】
成形後に成形型の成形面、並びにプレス成形品の表面を観察したが、上述したP2O2−Pb系のガラスのプレス例と同様、評価結果に、異常は認められなかった。又、離型膜の耐久性も同様に優れていた。
【0058】
(ガラスのプレス成形法3)
次に、燐酸―酸化チタン系の下記の組成のガラスを、本実施例の精密プレス用成形型でプレス成形した。
ガラスの組成は、wt%で、B2O3が3%、P2O3が25%、Li2Oが3%、Na2Oが7%、K2Oが2%、BaOが12%、TiO2が4%、Nb2O3が39%、WO3が5%、残り脱泡剤である。
【0059】
プレス後、成形面とプレス成形品の表面の変化、並びに耐久性を調べたが、上述のプレス法と同様の評価結果であった。又、上述の比較例の精密プレス用成形型を使用して、このガラスをプレス成形したが、上述の(プレス成形法1)場合と異なり、レンズ表面に数μmの大きさの泡が発生した。
【0060】
(実施例2)
本実施例は、実施例1のイオン注入エネルギーを40keV、注入量を5×1016ions/cm2に変更した以外は、全て実施例1の製造方法で作製した精密プレス用成形型である。本実施例のイオンの到達位置は、離型膜の表面から800Åのところで、成形基盤に至っていないことがシュミレーションで判る。
本実施例の成形型で、実施例1と同様の耐久試験を行ったが、10万ショットで離型膜の周辺に2〜3個所、膜剥離が認められたが、実用的には問題がない程度であった。
【0061】
(実施例3)
本実施例は、金からなる離型膜にイオン注入して離型膜の硬度を向上させる方法ではなく、離型膜の膜厚を所定の範囲に制御することによって、ガラス成形品の表面精度を確保した例である。
本実施例では、WCからなる成形基盤上に、イオンビームスパッタ法によりAu離型膜(99.9wt%:膜厚100オングストローム)を形成した。
【0062】
実施例1と同様のP2O5―PbO系ガラスを連続プレス成形して、成形面とガラスプレス成形品の表面を調べたが、実施例1と同様の効果が得られることが確認できた。
【0063】
(実施例4)
本実施例は、離型膜と成形基盤の付着力を向上させるために、成形基盤と、離型膜との間に、中間膜を形成した成形型である。
本実施例では、WCからなる成形基盤上にイオンビームスパッタ法によりNi膜を100Å形成し、その上にAu膜(99.9Wt%:膜厚100オングストローム)を形成した。
【0064】
NiはAuとは全率で固溶するためAu/Ni界面で合金層が形成されていた。このため、Au膜の密着強度は向上し、付着力試験においても中間層を挿入しない実施例3に比べて1.2倍の付着強度を示した。本実施例では中間層としてNiを形成したが、Ni以外にSi,Cr,Ti,Pt,Ir,Rh,Ru,Pd,Hf,Ta,Re,Os等でも同様の効果が得られた。
【0065】
(実施例5)
実施例1では、離型膜にArイオンを注入したが、本実施例では、ArイオンとNイオンを注入した成形基盤表面に離型膜を形成した。
成形基盤は、実施例1と同様にWCからなる超硬合金を出発材料とし、これを所望の形状に加工した後、成形面となる面を表面粗度Rzが5nm以下になるように鏡面研磨を施した。そして、前記成形基盤を洗浄した後、真空チャンバー内にセットした。
【0066】
この真空チャンバーには、成形基盤の表面にイオンを照射するためのイオン源と、純度99.9wt%以上のAuからなるターゲットをスパッタするためのマグネトロンスパッタ装置が内設されている。
先ず、マグネトロンスパッタ装置内を到達真空度2×10-5Paまで真空引きし、成形基盤を400℃に加熱した。次に、成形基盤の表面に180keVの加速電圧、2×1016ions/cm2の注入量でNイオンを注入し、続いてArイオンを180keVの加速電圧、2×1016ions/cm2の注入量で注入した。
【0067】
その後、チャンバー内にArガスを6×10-1Paの圧力になるように導入し、高周波電源により出力100WでAuターゲットをスパッタした。これにより膜厚50ÅのAuからなる離型膜を成形基盤の表面に形成した。Au離型膜の表面粗さは、Rz5nmであった。
このように、Au膜の成膜前に、成形基盤の表面にイオン注入しているので、Au離型膜を成膜する際の、核形成密度が高くなり密着性が向上した。
【0068】
尚、本実施例ではAu離型膜の成膜前に成形基盤表面に、イオン注入による表面改質を施すことにより、母材表面にアモルファス層が形成されていることが確認できた。
このアモルファス層は、成形基盤の表層部における結晶粒界が、低減されており、更に硬度も高く、また非常に活性化されている。このため、Auからなる離型膜の核形成密度が高くなり、高い密着性を有することになる。
【0069】
従って、比較的薄い膜厚(3〜500オングストローム)でも高密着性を有しているので、Au離型膜は剥離することがない。又、Au離型膜の硬度は成形基盤である超硬合金に依存している。
本実施例の精密プレス用成形型を用いて、ガラスのプレス成形を連続して行った。1000ショット成形したところで、本実施例の精密プレス用成形型の成形面の外観を観察したところ、成形面に異常は認められなかった。
【0070】
更に、10000ショットごとに観察を繰り返し、10万ショットまで連続成形を実施したが、成形されたプレス成形品の外観は良品で、成形面にも異常は認められなかった。
【0071】
(実施例6)
本発明の実施例6は、実施例5のガラス成形型に、更にAuを主成分とする離型膜を、膜厚500Åで成膜した後、更に離型膜の表面にArイオンを注入した。注入条件は、200keVの加速電圧、5×1016ions/cm2の注入量に設定した。
本実施例で得た精密プレス成形型を用いて、実施例1と同様のプレス成形を実施したところ、実施例1と同様に10万ショットの成形後であっても、依然、プレス成形を続行できる状態であった。
【0072】
本実施例では、実施例5よりもAu離型膜の膜厚を厚くして成膜しているが、成膜後にイオン注入しているので、更に膜の硬度・耐摩耗性が向上しているので、高耐久性のガラス成形型が得られた。
【0073】
(実施例7)
本実施例は、成形基盤の出発材料としてSiCを使用し、このSiCにイオン照射することによって成形基盤の表面を改質し、この表面に金を主成分とする離型膜を形成したものである。
成形基盤は、CVD法により成長させたβ−SiCによって構成した。成形する形状に対応する表面および、その表面以外を所望の形状に加工した後、前記成形基盤を洗浄後、真空装置にセッティングした。
【0074】
まず、成形基盤を400℃に加熱後、成形面にCイオンを、100keVの注入エネルギー、1×1016ions/cm2 の注入量の条件で注入した。その後、Ar雰囲気下で、温度1350℃で1時間、赤外線ヒーターにより熱処理を行った。その後、イオンプレーティング法により99.9wt%の純度のAuを用いて膜厚1000オングストロームのAu離型膜を成形基盤の表面に成膜した。
【0075】
その後、ArイオンをAu離型膜に、200keVの加速電圧、5×1016ions/cm2の注入量で注入した。シュミレーションによれば、成形基盤の表面から1500オングストロームまでイオンが到達してきることが確認された。
このようにして得られたガラス成形型は、CイオンによってSiC表面がアモルファス化しているので、非アモルファスの成形基盤材料に比べて、約1.3倍ほど硬度が向上した。CVD法により成長させたSiCは、一般的にSiリッチになる傾向が高いが、本実施例の表面改質によって、その欠点を解決し、カケや粒子脱落の発生がない長寿命の精密プレス用成形型が得られた。
【0076】
(実施例8)
本実施例は、金を主成分とした離型膜を成形基盤上に形成するのではなく、成形基盤の表面にAuイオンを注入することにより、ガラスと成形面の反応性を低減した例である。
本実施例の精密プレス用成形型は、図3に示すように成形面7bを有する成形基盤7から構成されており、上述した実施例のように離型膜を有していない。図3においては、下型だけ図示している。プレス成形時には、同様の成形面を有する上型と一対で使用する。
【0077】
成形基盤7における成形面7b近傍領域7aには、Auイオン8が注入されている。成形基盤7はCVD法により成長させたβ−SiCで構成した。Auイオン8の深さ方向の密度分布は図4に示すように、成形基盤7の表面近傍(表面から20オングストローム)でピークを示すような状態になっている。以下に本実施例の製造方法について説明する。
【0078】
成形基盤の表面および表面以外を所望の形状に加工した後、前記成形基盤を洗浄後、真空装置にセッティングした。次に、成形基盤の成形面にAuイオンを注入エネルギー50keV、注入量1×1017ions/cm2で注入した。本実施例では、イオンの注入量を相対的に多くすることにより、Auが成形基盤の深さ方向における表層部に高く分布している。又、Auは、成形基盤の表面の面方向に分散しており、表層部は90wt%の金を含有している。
【0079】
このようにして製造された精密プレス用成形型を用いて、実施例1と同様のプレス条件でプレス成形した。プレス成形するガラスは、B2O3−SiO2−BaO系からなる屈伏点温度545℃の硝材を選んだ。そして、この組成のプリフォームを、プレス温度620℃で連続プレス成形を行ったところ、10万ショットの成形でもなお異常は認められなかった。実施例1では離型膜と成形基盤の間に形成されたミキシング層によって、膜剥離が防止されるが、本実施例では、注入されたAuがSiCの表面に分散しているので、Auの脱落をより一層防止することができる。
【0080】
(実施例9)
本実施例は、実施例8の精密プレス用成形型に、更に熱処理を施すことにより、注入された表面の金を溶融することによって、成形面に高い平滑性を付与したものである。
具体的には、実施例8で製作した精密プレス用成形型に対して、Ar雰囲気中で温度1200℃で、60分間、熱処理を行った。
この工程を付加することにより、表面付近に存在していたAu原子が溶融し、平滑且つ耐酸化性に優れた成形面が得られた。これは、Auの展延性により表面に緻密なAu離型層が形成されるためである。
【0081】
(実施例10)
本実施例は、金を主成分とした離型膜と成形基盤との付着力を更に向上させた例である。
具体的には、実施例8の精密プレス用成形型を作成した後、さらにイオンビームスパッタ法により、膜厚10オングストロームのAu離型膜を形成した。
この工程を付加することにより、成形面には、成形基盤のβ―SiCの成分が露呈せず、しかも離型膜の金と、成形基盤表面に分散する金とが結合して、離型膜と成形基盤とは強固に付着する。又、離型膜は、非常に薄いので、成形時にほとんど損傷を受けることが無く、高耐久性を有するガラス成形型を製造することができる。
【0082】
(実施例11)
本実施例は、成形基盤の材料としてWCを主成分とする超硬合金を使用し、成形基盤を所望の形状に加工し、成形面となる面を表面粗度Rzが5nm以下になるように鏡面研磨加工を施した。そして、前記成形基盤を洗浄した後、真空装置内にセットした。
マグネトロンスパッタ法により、チャンバー内にArガスを6×10-1Paの圧力になるように導入し、高周波電源により出力100WでAuターゲット(99.9wt%)を、スパッタリングして前記成形基盤の表面に、膜厚100オングストロームのAu離型膜を形成した。
【0083】
この後、Au離型膜が形成された成形基盤の成形面に、Auイオンを注入エネルギー150keV、注入量1×1016ions/cm2で注入した。
本実施例では、Au離型膜を成膜した後にAuイオンを注入したので、耐久性が一層、向上し、ガラスとの反応性、即ち、くもりに対して高い耐久性を有するようになった。
また、Au離型膜の成膜前に、Au,C,Ar,N,等のイオンを注入すると、さらに密着性を向上させることができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、種々のガラスとの反応性が低い精密プレス用成形型が得られる。従って、精密プレス用成形型の離型膜にくもりが発生することなく、離型性に優れたガラス成形型が得られる。
【0085】
また、本発明の精密プレス用成形型は、Au離型膜の成膜工程にイオン注入工程を有しているので密着性,耐摩耗性,硬度、耐久性に優れた成形型が得られる。
又、本発明のガラスの製造方法によれば、ガラスとの反応物による表面欠陥が少ないプレス成形品を製造することができる。又、プレス成形するガラス材料の選択の幅を、広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の一対の精密プレス用成形型の模式的断面図
【図2】実施例1の精密プレス用成形型における、表面近傍のイオン密度を示す図
【図3】実施例8の精密プレス用成形型の模式的断面図
【図4】実施例1の精密プレス用成形型における、表面近傍のイオン密度を示す図
【符号の説明】
1 成形基盤
2 離型膜
3 成形基盤
4 離型膜
5 上型
6 下型
7 成形基盤
8 Auイオン
Claims (16)
- 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されており、
前記Au離型膜と前記成形基盤との間には、当該Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深くイオンを注入することによってミキシング層が形成されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面はイオンが注入されることによって表面改質されており、当該成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 請求項2に記載の精密プレス用成形型において、前記Au離型膜上には第二のAu離型膜が成膜されており、当該第二のAu離型膜には第二のイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面はイオンが注入されることによって表面改質されており、この表面にAu離型膜が成膜されており、
更に、前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深く第二のイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAuイオンが注入されており、当該成形基盤の表面には当該成形基盤を熱処理することによって当該成形基盤の表面付近に存在しているAuが溶融して得られるAu離型膜が形成されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAuイオンが注入されて、更にAu離型膜が成膜されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型において、
前記成形基盤の表面にはAu離型膜が成膜されており、当該Au離型膜にはAuイオンが注入されている
ことを特徴とする精密プレス用成形型。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、
前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深くイオンを注入することによって当該Au離型膜と前記成形基盤との間にミキシング層を形成する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にイオンを注入して当該成形基盤の表面を改質し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 請求項9に記載の精密プレス用成形型の製造方法において、
更に、前記Au離型膜上に第二のAu離型膜を成膜し、
前記第二のAu離型膜の表面に第二のイオン注入をする
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にイオンを注入して当該成形基盤の表面を改質し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、
前記Au離型膜側から前記成形基盤側へ当該Au離型膜の成膜厚さよりも深く第二のイオンを注入する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAuイオンを注入し、当該成形基盤を熱処理して当該成形基盤の表面付近に存在しているAuを溶融させて前記成形面を形成する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAuイオンを注入し、当該成形基盤の表面にAu離型膜を成膜する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを所定形状に成形し、且つ成形基盤に形成された成形面を前記ガラスに転写する精密プレス用成形型の製造方法において、
前記成形基盤の表面を所定形状に加工して当該成形基盤の表面に前記成形面を形成し、
前記成形基盤の表面にAu離型膜を成膜し、当該成形基盤の表面にAuイオンを注入する
ことを特徴とする精密プレス用成形型の製造方法。 - 軟化状態にあるガラスを一対の精密プレス用成形型でプレス成形し、当該精密プレス用成形型の成形面を転写する精密プレスによるガラス成形品の製造方法において、
前記一対の精密プレス用成形型の少なくとも一方は、請求項1〜7の何れかに記載の精密プレス用成形型である
ことを特徴とするガラス成形品の製造方法。 - 酸化金の融点以上の温度でプレス成形する
ことを特徴とする請求項15に記載のガラス成形品の製造方法。
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