JP2003301203A - 希土類−鉄−硼素系合金、ならびに磁気異方性永久磁石粉末およびその製造方法 - Google Patents
希土類−鉄−硼素系合金、ならびに磁気異方性永久磁石粉末およびその製造方法Info
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Abstract
とによって母合金を作製する工程と、前記母合金に対し
てHDDR処理を施す工程とを包含する磁気異方性磁石
粉末の製造方法である。 【解決手段】 母合金を作製する工程は、合金の溶湯を
冷却部材に接触させることにより、合金の溶湯を冷却
し、内部に希土類リッチ相が分散した複数のR2Fe14
B型結晶(Rは希土類元素およびイットリウムからなる
群から選択された少なくとも1種の元素)を含む凝固合
金層を形成する工程を含む。
Description
系合金、磁気異方性永久磁石粉末およびその製造方法、
ならびに、当該磁気異方性永久磁石粉末を用いた異方性
ボンド磁石およびその製造方法に関する。
鉄−硼素系希土類磁石は、三元系正方晶化合物であるR
2Fe14B型結晶相を主相として含む組織を有し、優れ
た磁石特性を発揮する。ここで、Rは希土類元素および
イットリウムからなる群から選択された少なくとも1種
の元素であり、FeやBの一部は他の元素によって置換
されていても良い。
は、焼結磁石とボンド磁石とに大別される。焼結磁石
は、希土類−鉄−硼素系磁石合金の微粉末(平均粒径:
数μm)をプレス装置で圧縮成形した後、焼結すること
によって製造される。これに対して、ボンド磁石は、通
常、希土類−鉄−硼素系磁石合金の粉末(粒径:例えば
100μm程度)と結合樹脂との混合物(コンパウン
ド)をプレス装置内で圧縮成形することによって製造さ
れる。
を用いるため、個々の粉末粒子が磁気的異方性を有して
いる。このため、プレス装置で粉末の圧縮成形を行うと
き、粉末に対して配向磁界を印加し、それによって、粉
末粒子が磁界の向きに配向した成形体を作製することが
できる。
子の粒径が結晶粒径を超えた大きさを持つため、通常、
磁気的異方性を示すことがなく、各粉末粒子を磁界で配
向させることはできなかった。従って、粉末粒子が特定
方向に配向した異方性ボンド磁石を作製するには、個々
の粉末粒子が磁気的異方性を示す磁性粉末を作製する技
術を確立する必要がある。
造するため、現在、HDDR(Hydrogenation-Dispropo
rtionation-Desorption-Recombination)処理が検討さ
れている。「HDDR」は、水素化(Hydrogenatio
n)、不均化(Disproportionation)、脱水素化(Desor
ption)、および再結合(Recombination)を順次実行す
るプロセスを意味している。このHDDR処理によれ
ば、まず、希土類−鉄−硼素系合金(母合金)の鋳片ま
たは粉末をH2ガス雰囲気またはH2ガスと不活性ガスと
の混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、
それによって、上記合金中に水素を吸蔵させる。この水
素吸蔵により、R2Fe14B相は希土類の水素化物や鉄
基硼化物などに分解する。その反応式は、以下の通りで
ある。
B+12Fe、または R2Fe14B+2H2 ⇔ 2RH2+Fe3B+11Fe
素処理を行った後、冷却することによって合金磁石粉末
を得る。この脱水素処理により、上記の水素化物や鉄基
硼化物などから再びR2Fe14B相が生成される。
径:数十μm以上)を有していたR 2Fe14B結晶粒の
各々は、HDDR処理により、多数の細かいR2Fe14
B結晶粒(粒径0.1〜1μm程度)の集合体に変化す
る。このようにして形成された非常に微細なR2Fe14
B結晶粒の集合体を「再結晶集合組織」と呼ぶ。再結晶
集合組織中の微細なR2Fe14B結晶粒は、もとの大き
なR2Fe14B結晶粒の結晶方位を記憶している。この
ため、粉砕や分級によってHDDR処理後の合金粉末の
粒径をHDDR処理前の結晶粒径程度以下の範囲にすれ
ば、各粉末粒子に含まれる微細なR2Fe14B結晶粒の
結晶方位は特定の方向に整列するため、磁気的異方性を
発揮することができる。また、「再結晶集合組織」中の
微細なR2Fe14B結晶粒は単磁区臨界粒径に近いサイ
ズを有しているため、高い保磁力を発揮することもでき
る。
ら、HDDR処理を説明する。
合金1の一部を模式的に示している。母合金1は多結晶
であるため、その中に多数の粒界3が存在し、各結晶粒
の結晶方位2は必ずしも一方向にそろっていない。母合
金1に対して粗粉砕工程を行い、図19(b)に示すよ
うに、各々が単一の結晶方位を有する程度の大きさを持
った粉末粒子5を形成する。粉末粒子5の粒径が大きす
ぎると、各粉末粒子5は多結晶状態になり、粉末粒子5
に含まれる結晶粒の方位が一つにそろわなくなる。ここ
で、粉末粒子5の集合体を粗粉砕粉4と称することにす
る。
施し、各粒子5に再結晶集合組織を与える。図19
(c)は、各粉末粒子5内に再結晶集合組織7が形成さ
れた状態を示している。なお、図19(d)は、再結晶
集合組織7の拡大図であり、組織内の各結晶粒の結晶方
位2が一方向に配向していることを示している。
子5の凝集を解くか、微粉砕することにより、磁気異方
性を有する合金粉末9を得ることができる。
って、再結晶集合組織を持つ希土類−鉄−硼素系合金粉
末を製造する方法は、例えば、特許文献1および特許文
献2に開示されている。
R処理によって作製された磁性粉末(以下、「HDDR
粉末」と称する)には、以下のような問題がある。
に、母合金の段階で、高温で長時間の均質化処理(例え
ば、1100℃、20時間)が必須であった。これは、
母合金組織が微細であると、HDDR処理前の原料粉末
が多結晶となり、粉末粒子が磁気的に等方的になるから
である。
理を進行させるには、水素を母合金の内部にまで充分に
拡散させる必要がある。そのためには水素化処理の時間
を長くしなければならない(例えば、800℃、6時
間)が、水素化処理の時間が長くなるほど、飽和磁化が
低下する傾向がある。この理由は、水素化処理時間が長
くなると、前述の化学式で示される可逆反応が繰り返し
起こり、母合金のR2Fe14B相の結晶方位の記憶が次
第に失われてゆく結果、最終的に得られる「再結晶集合
組織」の磁気的異方性が低下してしまうからである。
DDR処理が不完全になり、微細なR2Fe14B相の生
成が不充分となるため、高い保磁力HcJが得られず、残
留磁束密度Brも低くなるという問題が生じる。
どを添加することが提案されている。特に母合金にGa
を添加した場合、水素化処理の時間を長くしても、母合
金中におけるR2Fe14B相の結晶方位の記憶が失われ
にくくなる。その結果、保磁力HcJおよび残留磁化Jr
の両方を充分なレベルにまで向上させることができる。
処理のための熱処理を長時間行うことも製造コストを増
加させる。HDDR粉末の性能を高めつつ、低コストで
量産するには、高価なGaの添加が不要となり、しか
も、短い水素化処理時間で必要な磁石特性を得ることが
強く求められている。
合金として高周波溶解炉などで溶解、鋳造して製造した
いわゆる合金インゴットを用いた場合について説明して
いるが、近年ではストリップキャスティング法にて得ら
れた薄板状原料(合金鋳塊)にHDDR処理を施した粉
末を用いてボンド磁石を得る方法も提案されている(特
許第3213638号)。
られる合金鋳塊は、実質的にα−Fe相を含有せず、均
質な組織を有するものの、結晶粒のサイズが小さすぎる
ため、ボンド磁石に用いる粉末粒度では各粉末粒子の磁
気的異方性が低く、実用化に至っていないのが現状であ
る。
のであり、その主な目的は、実質的にGaを添加しなく
とも、前記母合金の均質化処理の省略および水素化処理
時間の短縮を可能とし、保磁力HcJおよび残留磁化Jr
の両方を向上させることが可能な希土類−鉄−硼素系合
金、磁気異方性磁石粉末およびその製造方法、更に異方
性ボンド磁石およびその製造方法を提供することにあ
る。
粉末の製造方法は、希土類−鉄−硼素系合金の溶湯を冷
却することによって母合金を作製する工程と、前記母合
金に対してHDDR処理を施す工程とを包含する磁気異
方性磁石粉末の製造方法であって、前記母合金を作製す
る工程は、前記合金の溶湯を冷却部材に接触させること
により、前記合金の溶湯を冷却し、内部に希土類リッチ
相が分散した複数のR2Fe14B型結晶(Rは希土類元
素およびイットリウムからなる群から選択された少なく
とも1種の元素)を含む凝固合金層を形成する工程を含
む。
層を形成する工程は、前記冷却部材に接触する側に第1
組織層を形成した後、前記第1組織層上に更に前記合金
の溶湯を供給することにより、前記R2Fe14B型結晶
を前記第1組織層上に成長させて第2組織層を形成する
ことを含む。
層は、主として短軸方向平均サイズが20μm未満のR
2Fe14B型結晶である。
層におけるR2Fe14B型結晶の短軸方向平均サイズは
20μm以上、長軸方向平均サイズは100μm以上で
ある。
2Fe14B型結晶の個々の領域は、結晶方位が同じ領域
を意味するものである。すなわち、「結晶方位が同じ領
域」とは、合金の断面組織を偏光顕微鏡で観察したと
き、観察像中のコントラストが同じ領域であるものとす
る。
層は、第1組織層と第2組織層とを有し、前記第1組織
層の比率が体積比で10%未満である。
層における希土類リッチ相は、前記R2Fe14B型結晶
の内部において、平均50μm以下の間隔で分散してい
る。
に含まれるα−Fe相の比率は、5体積%以下である。
に含まれる希土類元素の濃度は、26質量%以上32質
量%以下である。
に含まれるGaの濃度は、0.6質量%以下である。
層を形成する際の合金溶湯の冷却は、10℃/s以上1
000℃/s以下、過冷却100℃以上300℃以下の
条件で行い、前記第2組織層を形成する際の合金溶湯の
冷却は、1℃/s以上500℃/s以下の条件で行う。
層の冷却部材接触部に空隙部を形成する。
湯が冷却部材に届く時点における前記溶湯の温度は約1
300℃以下である。
層の形成は、遠心鋳造法によって行う。
対してHDDR処理を施す工程は、前記母合金の温度を
550℃以上900℃以下の範囲に昇温させた後に水素
と反応させる工程を含んでいる。
組織層と、第1組織層上に内部に希土類リッチ相が分散
した複数のR2Fe14B型結晶(Rは希土類元素および
イットリウムからなる群から選択された少なくとも1種
の元素)を形成した第2組織層を有し、前記第1組織層
の比率が体積比で10%未満であるとともに、前記R 2
Fe14B型結晶の短軸粒径が20μm以上110μm以
下であり、前記希土類リッチ相が前記R2Fe14B型結
晶の内部において平均50μm以下の間隔で分散してい
る。
含まれるα−Fe相の比率は、5体積%以下である。
濃度が26質量%以上32質量%以下である。
0.6質量%以下である。
金粉末は、平均粒径が10μm以上300μm以下であ
り、粒径50μm以下の粉末粒子における希土類元素濃
度が、粒径50μmを超える粉末粒子における希土類元
素濃度を超えない。
よって脆化されている。
金磁石粉末は、希土類元素の濃度が26質量%以上32
質量%以下、α−Fe相の比率が5体積%以下、Gaの
濃度が0.6質量%以下であり、HDDR処理によって
形成された微細集合組織を含んでいる。
上記いずれかの製造方法によって作製された磁気異方性
磁石粉末を用意する工程と、前記磁気異方性磁石粉末を
結合剤と混合し、配向磁界中で成形する工程とを包含す
る。
異方性希土類−鉄−硼素系合金磁石粉末を含む。
石を備えている。
となる母合金の金属組織構造が水素化処理に要する時間
に大きな影響を及ぼすことを見出し、本発明を想到する
に至った。本発明者は、種々の組織形態を有する母合金
に対するHDDR処理を行い、得られたHDDR粉末の
磁気特性を評価したところ、図1(d)に示すような金
属組織を有する母合金を用いた場合には、主相であるR
2Fe14B型結晶が粗大であっても、短時間で水素化処
理を遂行することができ、その結果、飽和磁化の低下を
招くことなく、保磁力増加を達成できることを見出し
た。
末の製造に用いる母合金の金属組織を模式的に示してい
る。この母合金は、比較的大きな柱状結晶の内部に微細
な希土類リッチ相(図中、黒いドット状領域として示さ
れている)が分散した構造を有している。このような、
内部に希土類リッチ相が分散した複数の柱状結晶を含む
母合金は、希土類−鉄−硼素系合金の溶湯を冷却部材に
接触させ、合金溶湯を冷却することによって形成するこ
とができる。合金の組成は、R2Fe14B型結晶の化学
量論比に近く、必要に応じて種々の元素が添加されたも
のを使用し得る。例えば、母合金の組成をRxT
100-z-y-zByMz(質量比)で表現した場合、Rは希土
類元素およびイットリウムからなる群から選択された少
なくとも1種の元素、TはFeおよび/またはCo、B
は硼素、Mは添加元素である。x、z、およびyを質量
比率とすると、それぞれ、26≦x≦32、0.95≦
y≦1.20、および0.01≦z≦2を満足すること
が好ましい。Mは、Al、Ti、V、Cr、Mn、N
i、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、In、S
n、Hf、Ta、W、およびPbからなる群から選択さ
れた少なくとも1種の元素である。また、Bの一部は
C、N、Si、P、および/またはSで置換してもよ
い。
ら、上記母合金の好ましい作製方法を詳細に説明する。
湯Lを冷却部材(例えば銅製の冷却板や冷却ロール)に
接触させることにより、冷却部材に接触する側に微細な
初晶(R2Fe14B)を含む第1組織層を薄く形成す
る。この後、あるいは第1組織層を形成しつつ、第1組
織層上に更に上記合金の溶湯Lを供給することにより、
第1組織層上に柱状結晶(R2Fe14B型結晶)を成長
させる(図1(b))。この柱状結晶は、溶湯の供給を
継続しながら最初よりも冷却速度の低い状況下で合金溶
湯を冷却することによって作製される。その結果、図1
(c)に示すように、比較的ゆっくりと供給される合金
溶湯中の希土類元素が下方に位置する大きな柱状結晶の
粒界に拡散しないうちに凝固が進行し、内部に希土類リ
ッチ相が分散した柱状結晶が大きく成長することにな
る。このように、凝固初期において初晶を形成するとき
は冷却速度を相対的に速くし、その後の結晶成長に際し
ては冷却速度を遅くすることにより、最終的には、図1
(d)に示すように粗大な柱状結晶を含む第2組織層が
得られる。
DR処理後においては、磁粉が大きな磁化を発揮するた
めには不要かつ有害である。しかし、第1組織層は、そ
の表面が第2組織層の凝固核となり、更には第2組織層
の冷却速度を制御するという重要な役割を果たしてお
り、本発明においては必須である。合金全体に占める第
1組織層の比率は、体積比で10%未満、より好ましく
は5%未満である。なお、後述するように第1組織層と
第2組織層との間には、短軸方向の平均サイズが異なる
という差異が存在する。このため、顕微鏡による合金断
面を観察すれば、各組織層の厚さ比率を容易に測定でき
るので、その厚さ比率から体積比を測定するができる。
凝固速度を厳密に制御する必要がある。凝固速度が大き
すぎると、凝固組織が微細になってしまうが、逆に凝固
速度が小さくなりすぎると、α−Feが生成してしま
う。
B型結晶から構成され、その結晶粒径は、短軸方向平均
サイズで20μm未満である。また、偏光顕微鏡による
光学的な結晶方位観察では、R2Fe14B型結晶の結晶
方位は特定することができない。
Fe14B型結晶から構成され、その結晶粒径は、短軸方
向平均サイズで20μm以上であり、長軸方向平均サイ
ズは100μm以上である。
e14B型化合物が存在する部分において、R2Fe14B
型化合物の結晶学的なC面に起因する迷図模様または冷
却部材に平行な縞模様が観察される。第2組織層におけ
るR2Fe14B型化合物のC軸は冷却部材に対し略平行
に配向している。言い換えると、このC軸は、結晶の短
軸方向とほぼ一致している。
結晶の短軸方向平均サイズは20μm〜110μmであ
ることが好ましく、60〜110μmであることが更に
好ましく、70〜100μmであることが最も好まし
い。第2組織層における柱状結晶の短軸方向平均サイズ
を上記の範囲内に設定することにより、後述する実施例
のように保磁力および残留磁化のいずれもが向上する。
1組織層と第2組織層とは、それらが所定の比率で形成
されるときに良好な磁気特性を示す。上述のように、合
金全体に占める第1組織層の体積比が10%未満、より
好ましくは5%未満のときに、良好なる磁気特性が発揮
される。
の内部には、平均50μm以下の間隔で希土類リッチ相
が分散している。上記間隔は、好ましくは平均20μm
〜平均50μmの範囲にあり、更に好ましくは平均30
μm〜平均50μmの範囲にある。
2組織層におけるR2Fe14B型結晶の短軸方向の平均
サイズを、以下の測定方法によって定義する。すなわ
ち、合金の厚さ方向の断面を、偏光顕微鏡写真(図17
及び図18参照)で観察し、冷却部材接触面と平行な切
断線を設定する。そして、この切断線が各々R2Fe14
B型結晶を横切る個数(No)を数える。R2Fe14B
型結晶の短軸方向の平均サイズは、切断線長さ(Lo)
を用いて、Lo/Noによって表現される。
向に平行移動した切断線に沿って短軸方向の平均サイズ
を測定し、その値が20μm未満の範囲を第1組織層
と、20μm以上の範囲を第2組織層とする。そして、
各々の組織層の厚さが合金全体の厚さに占める割合に基
づいて、上記の体積比を算出することができる。
結晶の短軸方向平均サイズとは、上記測定法によって測
定された短軸方向サイズのうち、合金の厚さ方向中央部
における値である。
相の間隔は、以下の測定方法によって求める。
24から図26)で観察すると、希土類リッチ相が白く
観察される。この反射電子線像上において、冷却部材接
触面と平行な切断線を設定する。切断線が白い希土類リ
ッチ相を横切る個数Nを数え、切断線長さLとから、希
土類リッチ間隔=L/Nで求めることができる。なお、
切断線を入れる位置は、合金の厚さ方向の中央部に設定
し、数点の視野から求めた値の平均値を算出する。
成する際の合金溶湯の冷却は、10℃/s以上1000
℃/s以下、過冷却100℃以上300℃以下の条件で
行うことが好ましい。過冷却により、Fe初晶の析出を
抑制できる。一方、第2組織層を形成する際の合金溶湯
の冷却は、溶湯を供給しつつ、1℃/s以上500℃/
s以下の条件で行うことが好ましい。
速度によって調節されるため、上述のような合金組織を
得るには、溶湯供給量の調節が可能な冷却方法を採用す
ることが重要である。より詳細には、本発明の合金組織
を得るには、冷却部材(鋳型など)の上に溶湯を均一に
少量づつ供給することが望ましい。このため、溶湯を液
滴化して分散・噴霧する冷却方法を行うことが好まし
い。例えば、溶湯流にガスを噴き当てて噴霧する方法
や、遠心力によって液滴を飛散させる方法を採用するこ
とができる。
るためには、以下の方法を採ることができる。すなわ
ち、第1組織層を形成する段階で、第1組織層内に空隙
を形成し、第1組織層の実質的な伝熱断面積を小さくす
る方法である。これにより、第2組織層の形成時に溶湯
供給量を少なく調整せずとも、第2組織層の冷却速度
は、伝熱面積の減少に伴って小さくなる。なお、第1組
織層における空隙の形成と溶湯供給量の調整とを同時に
行うこともできる。
第1組織層に空隙を形成する場合の母合金の好ましい作
製方法を説明する。
滴を冷却部材上に供給し、最初期の微細なR2Fe14B
型結晶を生成する。図27(b)は、空隙の形成状態を
示す。凝固層の上には、次に供給された溶湯が存在して
いる。
うに第1組織層上に大きなR2Fe1 4B型結晶が生成し
始め、第1組織層から第2組織層への遷移が生じる。図
27(d)および(e)は、第2組織層の成長の様子を
示している。冷却面の空隙は、凝固終了後も残存する。
は、比較的粘性の高い溶湯を噴霧供給すれば良い。具体
的には、溶湯の温度を通常の合金鋳造時における145
0℃よりも低下させ、冷却部材に届く時点の温度を13
00℃程度以下にする方法がある。
行中に放熱させる方法を採ることができる。具体的に
は、不活性ガスに満たされた炉内雰囲気を大気圧程度に
維持する方法や、不活性ガスで溶湯を噴霧する方法を採
ることができる。不活性ガスとしては、一般的にはAr
ガスが用いられるが、Heガスを用いてもよい。Heガ
スを用いることにより、溶湯液滴の放熱が促進される。
却部材と母合金との接触面で示すことができる。母合金
を厚さ方向の断面組織を観察すれば、冷却部材との接触
面と空隙部を容易に区別できるので、冷却面の長さに対
する空隙部の占める長さを比として表すことができる。
本発明の合金では、空隙率が20%〜70%の範囲内に
ある。
点は、生成した溶湯の液滴を冷却部材上において高い収
率で回収する(凝固合金の形成に効率よく用いる)こと
にある。収率を高めるには、平板状の冷却部材の上にガ
ス噴霧で溶湯の液滴を吹き付ける方法や、回転する円筒
ドラム状の冷却部材の内壁に溶湯の液滴を飛散させる方
法(遠心鋳造法)を用いることが望ましい。
ップキャスト法や合金インゴット法などの従来方法によ
っては得られなかった。以下、従来の方法によって作製
される凝固合金(母合金)の結晶成長を説明する。
ら、ストリップキャスト法による結晶成長を説明する。
ストリップキャスト法では、冷却速度が速いため、高速
で回転する冷却ロールなどの冷却部材に接触した合金溶
湯Lは、接触面から急速に冷却され、凝固してゆく。大
きな冷却速度を得るためには合金溶湯Lの量を少なくす
る必要があり、また、ストリップキャスト装置の構造
上、溶湯の逐次供給を行うことができない。その結果、
冷却部材上の溶湯Lの厚さは冷却過程で増加せず、略一
定であり、その一定の厚さを有する溶湯Lの内部におい
て冷却部材との接触面から結晶成長が急速に進行してゆ
くことになる。冷却速度が速いため、柱状結晶の短軸方
向サイズは、図2(a)から(c)に示すように小さ
く、最終的に得られる凝固合金の金属組織は微細であ
る。希土類リッチ相は柱状組織の内部には存在せず、粒
界に分散している。ストリップキャスト合金では、結晶
粒のサイズが小さすぎるため、結晶方位の揃った領域が
小さく、ボンド磁石に用いる粉末粒度では、各粉末粒子
の磁気的異方性が低下するという問題がある。
ら、従来のインゴット法による結晶成長を説明する。イ
ンゴット法では、冷却速度が比較的遅いため、冷却部材
に接触した合金溶湯Lは、接触面からゆっくりと冷却さ
れ、凝固してゆく。静止状態の溶湯Lの内部において、
まず、冷却部材との接触面にFe初晶が生成され、その
後、図3(b)および(c)に示すように、Feのデン
ドライド結晶が成長してゆく。最終的には、包晶反応に
より、R2Fe14B型結晶相が形成されるが、その内部
には磁石特性を劣化させるα−Fe相が残存することに
なる。凝固合金の金属組織は粗大であるが、体積比率で
2%を超えるような量の粗大なα−Fe相が残存する。
α−Feを低減するためには、均質化処理を行う必要が
ある。具体的には、インゴット合金中のα−Fe相やR
2Fe17相などを拡散させ、これらの相を可能な限り消
滅させ、実質的にR2Fe14B相とR−rich相の2
相からなる組織にする必要がある。均質化熱処理は、窒
素を除く不活性ガス雰囲気中または真空中において、1
100℃〜1200℃の範囲の温度で1〜48時間行わ
れる。このような均質化処理は、製造コストを増大させ
るという問題がある。一方、α−Feの生成を抑制する
には、原料合金中に含まれる希土類の組成量を化学量論
比よりも充分に大きくすることが必要であるが、希土類
の含有量が多くなると、最終的に得られる磁石の残留磁
化が低下し、また、耐食性が劣化するという問題もあ
る。
照)は、化学量論比に近い希土類含有量であっても、α
−Feが生成されにくいという利点がある。このため、
希土類含有量を従来よりも低減することが可能である。
更に、本発明で用いる母合金は、主相のサイズがストリ
ップキャスト合金に比べて大きいため、HDDR処理に
よって高い磁気異方性を発現させることができ、磁気異
方性磁石粉末の母合金として好適である。
土類元素の濃度を26質量%以上32質量%以下の範囲
に設定した場合でも、熱処理前の母合金(as−cas
t)中に含まれるα−Fe相が微細であり、その比率を
5体積%以下に抑制することが可能である。このため、
従来のインゴット合金に必要であった母合金に対する均
質化熱処理を行わなくとも、HDDR粉末の磁気特性、
特に保磁力に悪影響を及ぼすことがない。
に対してHDDR処理を行った場合に、どのような差異
が生じるかを説明する。
明の母合金、従来のインゴット合金、およびストリップ
キャスト合金について、HDDR処理前の時刻T1にお
ける組織を模式的に示している。図示するように、従来
のインゴット合金におけるR 2Fe14B型結晶相は粗大
であるが、ストリップキャスト合金におけるR2Fe14
B型結晶相の短軸粒径は小さい。また、本発明による母
合金では、R2Fe14B型結晶相の平均粒径はストリッ
プキャスト法による母合金におけるR2Fe14B型結晶
相の平均粒径よりも大きく、R2Fe14B型結晶相の内
部に希土類リッチ相が分散している点に特徴がある。
明の母合金、従来のインゴット合金、およびストリップ
キャスト合金について、HDDR処理開始後の時刻T2
における組織を模式的に示している(T1<T2)。図
中の斜線は、水素化による反応が生じている部分を示し
ている。この反応は、主相の格子欠陥や表層部の水素吸
蔵に伴って発生したクラックなどを経由した水素拡散に
よって進行する。水素は格子欠陥だけではなく、結晶粒
界を介しても拡散しやすいため、水素化反応は、R2F
e14B型結晶相の粒界部から内部に向かって進行する。
明の母合金、従来のインゴット合金、およびストリップ
キャスト合金について、HDDR処理開始後の時刻T3
における組織を模式的に示している(T2<T3)。図
6(a)および(b)からわかるように、短軸粒径の小
さなストリップキャスト合金では水素化反応が速やかに
進行している。一方、従来のインゴット合金では、大き
なR2Fe14B型結晶粒の内部には水素化反応が充分に
進んでいない部分が多く存在している。これに対し、本
発明による母合金では、結晶粒径が大きいにもかかわら
ず、比較的早い段階で水素化反応が広い領域で進行して
いる。このように本発明による母合金で水素化反応が速
やかに進行する理由は、R2Fe14B型結晶粒の内部に
分散する希土類リッチ相が水素拡散の経路を形成するた
めであると考えられる。
明の母合金、従来のインゴット合金、およびストリップ
キャスト合金について、HDDR処理の途中における組
織を模式的に示している。HDDR処理開始後の時刻T
4における組織を模式的に示している(T3<T4、T
4は例えば30〜60分)。従来のインゴット合金の場
合、この段階では水素化による反応が進んでいない部分
が存在しているが、本発明による母合金では、略全体で
水素化反応が充分に進行している。なお、水素化反応が
進んだ領域では、その後の適切な脱水素処理により、前
述した再結晶集合組織が生成されることになる。
時間Tと残留磁束密度Brおよび保磁力HcJとの関係を
示すグラフである。グラフにおける○、●、および▲の
データは、それぞれ、本発明による合金、従来のインゴ
ット合金、およびストリップキャスト合金に関してい
る。合金の組成は、Nd:27.5質量%、Zr:0.
1質量%、B:1.0質量%、およびFe:残余であっ
た。HDDR処理の前には、0.3MPaの水素雰囲気
中で2時間の水素脆化処理を行った後、425μm以下
のサイズに粗粉砕した。その後のHDDR処理の条件
は、以下の通りである。
50℃)でグラフに示す時間だけ水素化処理を行い、そ
の後、アルゴンガスによる置換を5分間行った。次に、
850℃で30分間、圧力1.0kPaのアルゴン雰囲
気中で脱水素処理を行った後、室温まで冷却した。
段階においては、処理時間の増加に従って保磁力HcJは
増加するが、やがて飽和する。本発明による合金の場
合、水素化処理の時間が1時間以下であっても、充分に
高い保磁力を示している。これは、水素が粗粉砕粉末の
内部にまで速やかに拡散し、早い段階で水素化反応が完
了することを意味している。一方、ストリップキャスト
合金やインゴット合金の場合は、保磁力が飽和レベルに
達する時間が長い。特に、インゴット合金の場合、2時
間以上の水素化処理を行わないと、充分な保磁力は得ら
れなかった。
過に伴ってピーク値を示した後、水素化処理時間が長く
なるほど低下した。これは、前述したように、水素化処
理時間が長くなるほど、水素化および脱水素化の可逆反
応が何度も繰り返され、母合金における結晶方位の記憶
が徐々に消失してゆくためである。
場合に比べて短い水素化処理時間で充分に高い保磁力H
cJを得ることができるため、保磁力HcJおよび残留磁化
Jrの両方が優れたレベルにあるHDDR粉末を得るこ
とが可能になる。
平均粉末粒度依存性を示すグラフである。グラフにおけ
る○、●、および▲のデータは、それぞれ、本発明によ
る合金従来のインゴット合金、およびストリップキャス
ト合金に関している。
的に低くなっているが、本発明による合金の場合、平均
粉末粒径が大きい場合でも残留磁化Jrの低下は少な
い。これは、本発明の場合、母合金の結晶粒径が大き
く、より広い範囲で結晶方位のそろった再結晶集合組織
が形成されているためと考えられる。また、本発明の場
合は、平均粉末粒径が大きくなっても保磁力は低下して
いない。
の母合金を遠心鋳造法によって作製した。具体的には、
回転する円筒型冷却部材の内側に対して、希土類−鉄−
硼素系合金の溶湯(温度:約1300℃)を遠心力で飛
散させた。こうして、図1(d)に示すような組織を有
する母合金を作製した。表1に記載している各組成に関
する数値は、質量比率である。
金の偏光顕微鏡写真を示している。図17は、冷却部材
との接触面近傍の組織断面を示しており、図18は、厚
さ方向中央部の組織断面を示している。各図の上方が冷
却面、下方が放冷面(自由面)側を示している。図から
わかるように、接触面から100μm程度までの領域で
は微細な結晶組織(第1組織層)が形成されているが、
接触面から100μm程度離れた内部側の領域(第2組
織層)では大きな柱状結晶が形成されている。一方、自
由面の近傍では、一部に微細な組織が観察されるが、大
部分は粗大な結晶である。なお、合金鋳片の厚さは5〜
8mmであり、その大部分は、粗大な柱状結晶の第2組
織層から構成されている。なお、第1組織層と第2組織
層との境界は、場所によって明瞭な部分と不明瞭な部分
とが存在するが、上記のように第1組織層は冷却部材と
の接触面から100μm程度までの領域に形成され、合
金鋳片厚さ方向の数%程度までである。第1組織層の厚
さは、冷却条件によって合金鋳片の厚さの5%程度にな
ることもあるが、10%未満にすることが望ましい。
造を比較したところ、希土類元素濃度が高い合金ほど、
結晶サイズが小さくなっていることがわかった。
希土類リッチ相が分散していることが確認できた。粗大
な結晶粒中に分散する希土類リッチ相は、母合金中の希
土類含有量が多くなるほど、多く観察された。また、α
−Fe相は観察されなかった。
して、水素脆化による粗粉砕を行った。具体的には、2
00℃で100分、水素雰囲気で水素脆化処理を行った
後、めのう乳鉢で解砕し、ふるい分級によって425μ
m以下のサイズを有する粗粉砕粉を得た。
て、HDDR処理を行った。具体的には、水素化処理
(昇温レート:15℃/分、処理温度:800℃、処理
時間:1時間、雰囲気:水素雰囲気)→雰囲気置換(処
理温度:800℃、処理時間:5分、雰囲気:アルゴ
ン、アルゴン流量:5リッター/分)→脱水素処理(処
理温度:800℃、処理時間:1時間、雰囲気:アルゴ
ン、アルゴン圧力:2kPa)の条件で実行した。
級を行った後、VSMを用いて粒度毎に磁気特性を評価
した。試料はパラフィンとともに磁界中で加熱・冷却し
て固定し、約5MPaのパルス磁界で着磁した後、減磁
曲線を測定した。
いて、粗粉砕粉の粒度別Nd濃度を示している。グラフ
の縦軸はNd濃度(Nd concentration、質量%)であ
り、横軸は平均粉末粒度(Particle size、μm)であ
る。試料No.4や試料No.5などのNd含有量が多
い試料では、微粉(例えば、粒径50μm以下)におけ
るNd濃度が、粗粉におけるNd濃度よりも低くなって
いる。これに対し、BやZrの濃度は、グラフに示して
いないが、粒度依存性を示さなかった。
ト合金やストリップキャスト合金におけるNd濃度の粒
度依存性とは反対の傾向を示している。すなわち、従来
のインゴット合金やストリップキャスト合金の場合は、
微粉(例えば、粒径50μm以下)におけるNd濃度
が、粗粉におけるNd濃度よりも高くなるのが一般的で
ある。
ト合金では、Ndなどの希土類元素は、R2Fe14B型
結晶の化学量論比よりも高い濃度で粒界に存在する一
方、主相結晶粒内においてはR2Fe14B型結晶の化学
量論比で決まる値で存在する。水素脆化は希土類元素濃
度の高い粒界部分を膨張させ、その部分から割れやすく
するため、水素脆化によって作製した粗粉砕粉末中の微
粉(粒径:50μm以下)は、粒界に由来する微粉末を
含有する可能性が高く、その結果、希土類含有量は相対
的に高くなる傾向がある。
大な結晶粒の内部に希土類リッチ相が分散しているた
め、粒界における希土類元素濃度が希土類リッチ相の分
散した主相内部に比べて必ずしも高いといえない状態に
なっていると考えられる。また、母合金の主相結晶粒の
内部においては、50μm程度(例えば10μm)以下
の間隔をおいて希土類リッチ相が分散しているため、小
さな粉末粒子中には、希土類リッチ相が少ない可能性も
ある。
粉砕粉において、平均粒径50μm以下の微細な粉末粒
子に含まれる希土類の濃度は、平均粒径50μmを超え
る粉末粒子中に含まれる希土類の濃度以下になってい
る。このことは、図10からわかるように、母合金の希
土類含有量が高い場合に顕著である。
真空中で800℃1時間の熱処理を行い、水素を合金か
ら外部を放出させた後、VSMにより、原料粉末の粒度
別の磁化(外部磁界Hex:1.2MAm-1)を測定し
た。
する磁化(Magnetization、テスラ)の粒度依存性を示
している。
大きいほど、磁化が小さくなる傾向がある。粒度毎の組
成変動はほとんどないため、粒径が大きくなるほど、結
晶の配向度が低下していると考えられる。
料粉末中)のCo含有量が磁化に与える影響を示し、図
13は、母合金中(HDDR処理前の原料粉末中)のG
a含有量が磁化に与える影響を示している。図14は、
試料No.1から4について、HDDR処理後の磁気特
性を示している。CoおよびGaを添加していない試料
(Nd−Fe−B−Zr系合金)であっても、Nd含有
量が高ければ、高い磁化が得られることがわかる。
後の粉末について示している。Co添加量が2原子%の
場合(グラフ中で「○」のデータ)、磁化は低下する
が、保磁力の増加は顕著である。Co添加量が5原子%
の場合(グラフ中で「□」のデータ)、磁化の低下は少
なくなるが、保磁力向上の程度も小さくなる。
後の粉末について示している。Gaの添加は残留磁化に
はほとんど影響を与えないが、保磁力はGa添加量に応
じて増加することがわかる。
発明による粗粉砕粉末の磁化を向上させることに対して
は特に寄与していないことがわかる。従って、本発明に
よれば、磁化向上を目的としてCoゃGaを添加する必
要は無くなる。
にCoおよびGaを添加することが好ましいと考えられ
てきたが、以上の実験結果から明らかなように、本発明
では、CoやGaを添加していない場合でも充分に優れ
た磁気異方性磁石粉末を得ることができる。ただし、磁
気特性の温度依存性を少なくするには、Coの添加が効
果的であり、またCoの添加は耐候性向上に役立つた
め、用途に応じては、Coを添加することが好ましい。
例えば希土類Rの含有量が32質量%の母合金にCoを
添加する場合は、耐候性の観点から、Co含有量を1質
量%以上に設定することが望ましい。
aを添加すると若干の磁気特性向上が図れるが、本発明
の目的を達成するためにおいては必ずしも必須ではな
い。
合剤と混合し、磁界中で成形すれば、磁石特性に優れた
異方性ボンド磁石を得ることができる。この異方性ボン
ド磁石は、各種モータやアクチュエータの永久磁石に適
用して優れた特性を発揮することが可能である。
る試料No.10の組成と同一の組成を有するストリッ
プキャスト合金およびインゴット合金を作製した。次
に、各合金に対して水素化処理による脆化を施し、42
5μm以下に粗粉砕した。この後、以下の条件でHDD
R処理を行った。
で復圧し、大気圧(0.1MPa)のアルゴンガスを流
気しつつ、試料を850℃まで加熱した。次に、試料温
度を850℃に保持しながら、アルゴンガスによる流気
を停止し、水素ガスの流気を開始した。毎分、炉内容積
の約20%に相当する量の水素ガスを炉内に導入しつ
つ、排気した(圧力は一定に保持)。このような状態を
2時間保持した後、炉内温度を略一定に維持したまま、
水素の導入を停止し、代わりにアルゴンガスを炉内に導
入した。このようなアルゴンガスの導入を5分間行い、
炉内の雰囲気をアルゴンガスで置換した。更に、ロータ
リポンプで炉内を減圧し、炉内のアルゴンガス圧力を2
kPaにまで低下させ、その状態で1時間保持した。そ
の後、炉内にアルゴンガスを供給し、炉内のアルゴンガ
ス圧力を大気圧まで上昇させ、冷却工程を行った。
で試料を高温(550℃以上900℃以下)に加熱した
後、水素を炉内に供給し、水素化工程を開始する点に特
徴を有している。合金の温度を充分に上昇させてから、
炉内に水素を導入することにより、HDDR処理が過剰
に進行することを抑制できる。本発明による母合金は、
従来の合金に比べて水素と反応しやすいため、高温に上
昇させるまで水素と反応させず、HDDR処理の進行を
少し遅らせることが好ましい。
状の試料をふるいで分級した後、VSMを用いて試料の
残留磁化Jrおよび保磁力HcJを粒度ごとに測定した。
測定結果を図20に示す。本発明による母合金(本発
明)、ストリップキャスト合金(比較例1)、およびイ
ンゴット合金(比較例2)に関する測定結果を比較する
と、本発明による母合金の磁気特性が粒度の広い範囲に
わたって優れていることがわかる。また、上記のHDD
R処理を行うことにより、本発明の母合金については磁
化が増加することがわかる。
合金に対して1120℃で8時間の熱処理を行った場合
の測定結果を図21に示す。HDDR処理で到達する温
度よりも高い温度での熱処理をHDDR工程の前に行う
ことにより、HDDR処理後の残留磁化Jrが向上する
という効果が得られた。
1.0Dy−15.0Co−0.6Ga−0.1Zr−
1.0B−残部Feの組成を持つ合金溶湯を用意し、こ
の溶湯を遠心噴霧によって冷却板上に堆積させ、合金
(母合金)を作製した。このとき、冷却部材との接触面
にはいずれの条件でもおよそ50%の空隙を形成させ
た。溶湯の噴霧量を変化させることにより、冷却板上で
の堆積レートを調節した。噴霧量が増加するほど、堆積
レートも増加し、合金溶湯の冷却速度は低くなる。逆
に、噴霧量が低下させると、堆積レートが小さくなるの
で、合金溶湯の冷却速度は速くなる。こうして、種々の
冷却速度で母合金を作製した。
画像処理によって主相の粒径および希土類リッチ相の分
散間隔を測定した。分散間隔の決定は、具体的には、冷
却基板と平行な切断線を用いる切断法によって行った。
ことなく、水素脆化を行い、粒径425μm以下のサイ
ズに粗粉砕した。その後、HDDR処理を行った。HD
DR処理は、次のようにして行った。
素ガスで流気しつつ、試料を800℃まで加熱し、80
0℃で2時間保持した。次に、水素の導入を停止し、代
わりにアルゴンガスを炉内に導入した。このようなアル
ゴンガスの導入を5分間行い、炉内の雰囲気をアルゴン
ガスで置換した後、炉内のアルゴンガス圧力を1kPa
にまで低下させ、その状態で1時間保持した。その後、
炉内にアルゴンガスを供給し、炉内のアルゴンガス圧力
を大気圧まで上昇させ、冷却工程を行った。このHDD
R工程は、水素ガス雰囲気中で試料を加熱する点で、実
施例2におけるHDDR工程と異なっている。
相の短径およびHDDR処理後の磁気特性について、堆
積レート(rate of accumulation)の依存性を示すグラ
フである。このグラフからわかるように、堆積レートが
大きくなるほど、主相短径も大きくなっている。堆積レ
ートが60μm/sを超えて大きくなると、磁気特性が
低下するため、堆積レートは60μm/s以下に設定す
ることが好ましい。
ける主相短径とHDDR処理後の磁気特性との関係を示
すグラフであり、図23(b)は、この母合金における
希土類リッチ相の分散間隔とHDDR処理後の磁気特性
との関係を示すグラフである。
却して母合金を作製する際の合金堆積レートが34μm
/s、47μm/s、および62μm/sの場合におけ
る本発明の母合金の反射電子線像写真である。これらの
写真から、母合金の堆積レートが大きいほど、希土類リ
ッチ相の分散間隔(space of R-rich)が大きくなって
いることがわかる。具体的には、合金堆積レートが34
μm/s、47μm/s、および62m/sの場合、そ
れぞれ、平均の分散間隔は19μm、43μm、および
56μmであった。写真の暗い部分が主相を示し、明る
い部分が希土類リッチ相を示している。また、黒い部分
はα−Feを示している。なお、写真上における8mm
の長さが現実の50μmに相当する。
くとも、効果的にHDDR処理を実行でき、しかも、磁
気異方性に優れた大きな再結晶集合組織を生成できるた
め、HDDR粉末の保磁力HcJおよび残留磁化Jrの両
方を向上させることができる。また、母合金への均質化
熱処理の省略、及びHDDR処理における水素化処理時
間を短縮することが可能になるため、製造コストを低減
し、製造時間を短縮できる。
末の製造に用いる母合金の金属組織が形成される過程を
模式的に示す断面図である。
る母合金の金属組織が形成される過程を模式的に示す断
面図である。
母合金の金属組織が形成される過程を模式的に示す断面
図である。
金、従来のインゴット合金、およびストリップキャスト
合金について、HDDR処理前の時刻T1における組織
を模式的に示している
金、従来のインゴット合金、およびストリップキャスト
合金について、HDDR処理開始後の時刻T2における
組織を模式的に示す図である(T1<T2)。
金、従来のインゴット合金、およびストリップキャスト
合金について、HDDR処理開始後の時刻T3における
組織を模式的に示す図である(T2<T3)。
金、従来のインゴット合金、およびストリップキャスト
合金について、HDDR処理開始後の時刻T4における
組織を模式的に示す図である(T3<T4)。
時間との関係を示すグラフである。
との関係を示すグラフである。
度別Nd濃度を示すグラフである。グラフの縦軸はNd
濃度(Nd concentration、質量%)であり、横軸は平均
粉末粒度(Particle size、μm)である。
度別磁化を示すグラフである。グラフの縦軸は磁化J
(Magnetization、テスラ)であり、横軸は平均粉末粒
度(Particle size、μm)である。
粒度別磁化を示すグラフである。グラフの縦軸は磁化J
(Magnetization、テスラ)であり、横軸は平均粉末粒
度(Particle size、μm)である。
粗粉砕粉の粒度別磁化を示すグラフである。グラフの縦
軸は磁化J(Magnetization、テスラ)であり、横軸は
平均粉末粒度(Particle size、μm)である。
R処理後の磁気特性を示すグラフである。グラフの縦軸
は、残留磁化Jr(Remanence、テスラ)と保磁力H
cJ(Intrinsic coercivity、MAm-1)であり、横軸は
平均粉末粒度(Particle size、μm)である。
理後の磁気特性を示すグラフである。グラフの縦軸は、
残留磁化Jr(Remanence、テスラ)と保磁力HcJ(Intr
insic coercivity、MAm-1)であり、横軸は平均粉末
粒度(Particle size、μm)である。
HDDR処理後の磁気特性を示すグラフである。グラフ
の縦軸は、残留磁化Jr(Remanence、テスラ)と保磁力
H cJ(Intrinsic coercivity、MAm-1)であり、横軸
は平均粉末粒度(Particlesize、μm)である。
り、冷却部材との接触面近傍の組織断面を示している。
り、厚さ方向中央部の組織断面を示している。
る模式図である。
よびストリップキャスト合金について、HDDR処理を
行ったときの磁気特性を示すグラフである。グラフの縦
軸は、残留磁化Jr(Remanence、テスラ)と保磁力HcJ
(Intrinsic coercivity、MAm-1)であり、横軸は平
均粉末粒度(Particle size、μm)である。
よびストリップキャスト合金について、1020℃の熱
処理およびHDDR処理を行ったときの磁気特性を示す
グラフである。グラフの縦軸は、残留磁化Jr(Remanen
ce、テスラ)と保磁力HcJ(Intrinsic coercivity、M
Am-1)であり、横軸は平均粉末粒度(Particle siz
e、μm)である。
びHDDR処理後の磁気特性について、堆積レート依存
性を示すグラフである。グラフの縦軸は主相平均短径
(Width of grain、[μm])、残留磁化Jr(Remanen
ce、[テスラ])と保磁力H cJ(Intrinsic coercivit
y、MAm-1)であり、横軸は堆積レート(Rate of acc
umulation、μm/s)である。
の短径とHDDR処理後の磁気特性との関係を示すグラ
フであり、(b)は、この母合金における希土類リッチ
相間隔とHDDR処理後の磁気特性との関係を示すグラ
フである。(a)のグラフの横軸は、主相平均短径であ
り、(b)のグラフの横軸は、希土類リッチ相の分散間
隔である。
積レートが34μm/sの場合における本発明の母合金
の反射電子線像写真である。
積レートが47μm/sの場合における本発明の母合金
の反射電子線像写真である。
積レートが62μm/sの場合における本発明の母合金
の反射電子線像写真である。
粉末の製造に用いる母合金の金属組織が形成される過程
を模式的に示す断面図である。
Claims (24)
- 【請求項1】 希土類−鉄−硼素系合金の溶湯を冷却す
ることによって母合金を作製する工程と、前記母合金に
対してHDDR処理を施す工程とを包含する磁気異方性
磁石粉末の製造方法であって、 前記母合金を作製する工程は、 前記合金の溶湯を冷却部材に接触させることにより、前
記合金の溶湯を冷却し、内部に希土類リッチ相が分散し
た複数のR2Fe14B型結晶(Rは希土類元素およびイ
ットリウムからなる群から選択された少なくとも1種の
元素)を含む凝固合金層を形成する工程を含む、磁気異
方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項2】 前記凝固合金層を形成する工程は、 前記冷却部材に接触する側に第1組織層を形成した後、
前記第1組織層上に更に前記合金の溶湯を供給すること
により、前記R2Fe14B型結晶を前記第1組織層上に
成長させて第2組織層を形成することを含む請求項1に
記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項3】 前記第1組織層は、主として短軸方向平
均サイズが20μm未満のR2Fe14B型結晶である請
求項2に記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項4】 前記第2組織層におけるR2Fe14B型
結晶の短軸方向平均サイズは20μm以上、長軸方向平
均サイズは100μm以上である請求項2または3に記
載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項5】 前記凝固合金層は、第1組織層と第2組
織層とを有し、前記第1組織層の比率が体積比で10%
未満である請求項2から4のいずれかに記載の磁気異方
性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項6】 前記第2組織層における希土類リッチ相
は、前記R2Fe14B型結晶の内部において、平均50
μm以下の間隔で分散している請求項2から5のいずれ
かに記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項7】 前記母合金中に含まれるα−Fe相の比
率は、5体積%以下である請求項1から6のいずれかに
記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項8】 前記母合金中に含まれる希土類元素の濃
度は、26質量%以上32質量%以下である請求項1か
ら7のいずれかに記載の磁気異方性磁石粉末の製造方
法。 - 【請求項9】 前記母合金中に含まれるGaの濃度は、
0.6質量%以下である請求項1から8のいずれかに記
載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項10】 前記第1組織層を形成する際の合金溶
湯の冷却は、10℃/s以上1000℃/s以下、過冷
却100℃以上300℃以下の条件で行い、 前記第2組織層を形成する際の合金溶湯の冷却は、1℃
/s以上500℃/s以下の条件で行う請求項2から9
のいずれかに記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項11】 前記第1組織層の冷却部材接触部に空
隙部を形成する請求項2から10のいずれかに記載の磁
気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項12】 前記合金の溶湯が冷却部材に届く時点
における前記溶湯の温度は約1300℃以下である請求
項11に記載の磁気異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項13】 前記凝固合金層の形成は、遠心鋳造法
によって行う請求項1から12のいずれかに記載の磁気
異方性磁石粉末の製造方法。 - 【請求項14】 前記母合金に対してHDDR処理を施
す工程は、 前記母合金の温度を550℃以上900℃以下の範囲に
昇温させた後に水素と反応させる工程を含んでいる請求
項1から10のいずれかに記載の磁気異方性磁石粉末の
製造方法。 - 【請求項15】 第1組織層と、第1組織層上に内部に
希土類リッチ相が分散した複数のR2Fe14B型結晶
(Rは希土類元素およびイットリウムからなる群から選
択された少なくとも1種の元素)を形成した第2組織層
を有し、前記第1組織層の比率が体積比で10%未満で
あるとともに、前記R2Fe14B型結晶の短軸粒径が2
0μm以上110μm以下であり、 前記希土類リッチ相が前記R2Fe14B型結晶の内部に
おいて平均50μm以下の間隔で分散している希土類−
鉄−硼素系合金。 - 【請求項16】 前記合金中に含まれるα−Fe相の比
率は、5体積%以下である請求項15に記載の希土類−
鉄−硼素系合金。 - 【請求項17】 希土類元素の濃度が26質量%以上3
2質量%以下である請求項15または16に記載の希土
類−鉄−硼素系合金。 - 【請求項18】 Gaの濃度が0.6質量%以下である
請求項15から17のいずれかに記載の希土類−鉄−硼
素系合金。 - 【請求項19】 平均粒径が10μm以上300μm以
下であり、 粒径50μm以下の粉末粒子における希土類元素濃度
が、粒径50μmを超える粉末粒子における希土類元素
濃度を超えない磁気異方性希土類−鉄−硼素系合金粉
末。 - 【請求項20】 水素処理によって脆化された請求項1
9に記載の磁気異方性希土類−鉄−硼素系合金粉末。 - 【請求項21】 希土類元素の濃度が26質量%以上3
2質量%以下、α−Fe相の比率が5体積%以下、Ga
の濃度が0.6質量%以下であり、 HDDR処理によって形成された微細集合組織を含んで
いる磁気異方性希土類−鉄−硼素系合金磁石粉末。 - 【請求項22】 請求項1から14のいずれかに記載の
製造方法によって作製された磁気異方性磁石粉末を用意
する工程と、 前記磁気異方性磁石粉末を結合剤と混合し、配向磁界中
で成形する工程と、を包含する異方性ボンド磁石の製造
方法。 - 【請求項23】 請求項21に記載の磁気異方性希土類
−鉄−硼素系合金磁石粉末を含む異方性ボンド磁石。 - 【請求項24】 請求項23に記載の異方性ボンド磁石
を備えたモータ。
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