JP2003300931A - 不飽和カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

不飽和カルボン酸エステルの製造方法

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JP2003300931A
JP2003300931A JP2002109255A JP2002109255A JP2003300931A JP 2003300931 A JP2003300931 A JP 2003300931A JP 2002109255 A JP2002109255 A JP 2002109255A JP 2002109255 A JP2002109255 A JP 2002109255A JP 2003300931 A JP2003300931 A JP 2003300931A
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alcohol
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Yoshifumi Shimokawa
慶史 下川
Seiya Minou
晴也 美納
Toshinao Ukiana
俊直 浮穴
Haruyuki Sato
治之 佐藤
Koji Koyanagi
幸司 小柳
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Kao Corp
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Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ゲルの生成を効果的に抑制し、安定して不飽
和カルボン酸エステルを製造できる方法を提供する。 【解決手段】 不飽和カルボン酸とアルコールのエステ
ル化反応を行う際に、仕込み原料中の水分量と酸素ガス
の流量とが特定の関係を満たすように、酸素ガスを反応
系中に導入する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不飽和カルボン酸
エステルの製造法に関するものであり、この不飽和カル
ボン酸エステルは、セメントペースト、モルタル、コン
クリート等の水硬性組成物において、セメント粒子の分
散性を向上させるセメント用分散剤として有用な重合体
の原料とすることができる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】不飽和
カルボン酸エステルはアルコールと不飽和カルボン酸の
エステル化反応により得られるが、このエステル化工程
では不飽和カルボン酸自体が重合性モノマーであること
から、反応工程の途中で重合反応を起こし、ゲル化物を
生成して、エステル化反応工程が持続不可能になってし
まうことが課題となっている。
【0003】さらにこのゲルはエステル化工程のみなら
ず、これを用いて重合体を合成する反応においてもゲル
の混入を招く場合があり、この為重合反応の後にゲルを
除去することが必要となることがある。
【0004】これを解決する為に特開平11−7115
1号公報には、過酸化物価が0.7meq/kg以下の
ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸系単量体
とを用いてエステル化反応をさせる方法が、また特開2
001−146449号公報には、ポリアルキレングリ
コールと、過酸化物価が5meq/kg以下である(メ
タ)アクリル酸系単量体を原料としてエステル化を行う
方法が開示されているが、これらは原料の厳密な管理が
必要である。
【0005】また、特開平6-234699号公報に
は、エステル化反応またはエステル交換反応の後に水洗
浄して得られた重合防止剤とエステル化触媒を利用し
て、脱水エステル化反応またはエステル交換反応させる
方法が開示されている。ここには、重合禁止剤と同時に
酸素含有ガス雰囲気下でエステル化反応を行うことによ
り重合を防止することが示されているが、例示されてい
る仕込み原料当たりの酸素含有ガスの吹き込み量は非常
に多く、スケールアップによる工業化の際に大量のガス
を吹き込むことが必要となり、ガスの使用量が多くなる
だけでなく、凝縮器や減圧設備、排ガス処理設備等の建
設設備に大きな能力が必要となる。このように、重合禁
止剤を反応液中に仕込むと共に、重合禁止効果の大きい
酸素を反応液中に吹き込むことは知られているが、ゲル
生成を十分に抑制するのに必要な酸素量については検討
がなされていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造条件を
制御することにより不飽和カルボン酸とアルコールのエ
ステル化工程でゲルの生成を効果的に抑制し、安定して
不飽和カルボン酸エステルを製造できる方法を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記式(A)
を満たす酸素含有ガスの導入下に、不飽和カルボン酸と
アルコールとをエステル化反応させる工程を有する不飽
和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0008】 0.33+1.39X≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(A) 〔式中、 Y;不飽和カルボン酸とアルコールの合計仕込み量当た
りに吹き込まれる酸素の流量〔ml/(min・k
g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
に換算した値) X;仕込み原料中の水分量(重量%)である。〕。
【0009】また、本発明は、下記式(B)を満たし且
つ開口面積3mm2以下の供給口を有する供給手段から
供給される酸素含有ガスの導入下に、不飽和カルボン酸
とアルコールとをエステル化反応させる工程を有する不
飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0010】 0.039X+1.39≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(B) 〔式中、 Y;不飽和カルボン酸とアルコールの合計仕込み量当た
りに吹き込まれる酸素の流量〔ml/(min・k
g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
に換算した値) X;仕込み原料中の水分量(重量%)である。〕。
【0011】また、本発明は、上記本発明の方法により
不飽和カルボン酸エステルを製造するエステル工程と、
該工程により得られた不飽和カルボン酸エステルと該エ
ステルと共重合可能な単量体とを反応させてカルボン酸
系重合体を製造する重合工程とを有するカルボン酸系重
合体の製造方法、及び該製造方法により得られたカルボ
ン酸系重合体、並びに該カルボン酸系重合体を含有する
セメント分散剤に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明では不飽和カルボン酸とア
ルコールとを、酸素を含有するガスの導入下にエステル
化反応させる。
【0013】エステル化反応で用いる不飽和カルボン酸
としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸等の
モノカルボン酸系、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸
等のジカルボン酸系等がある。また市販されている予め
重合禁止剤を含むもの等を用いることができる。この中
でも特に重合しやすいアクリル酸、メタクリル酸におい
て優れた効果が発揮される。
【0014】エステル化反応で用いるアルコールとして
は、アルコール性水酸基を1個以上含有するものであれ
ば何れの化合物でも使用可能である。このような化合物
として、例えばブチルアルコール、ペンチルアルコー
ル、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチ
ルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、
イソデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコー
ル、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、パルミ
チルアルコール、ステアリルアルコール等のアルキル型
アルコール類;メトキシエチルアルコール、エトキシエ
チルアルコール、ブトキシエチルアルコール、メトキシ
ジエチレングリコール、エトキシジエチレングリコー
ル、ブトキシジエチレングリコール、メトキシトリプロ
ピレングリコール、エトキシトリプロピレングリコー
ル、ブトキシトリプロピレングリコール、メトキシポリ
エチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコー
ル等のアルコキシ基含有型アルコール類;環式アルキル
型アルコール類;テトラフルフリール型アルコール類;
イソボニル型アルコール類;複素環式脂肪族基含有型ア
ルコール類;アミノ基含有型アルコール類;含フッ素型
アルコール類;ベンジル基含有型アルコール類;フェニ
ル基含有型アルコール類;フェノキシ基含有型アルコー
ル類;ヒドロキシル基をε−カプロラクトン又はアルキ
レンオキサイドで変性した変性型のアルコール類等の1
価のアルコール類、両末端水酸基含有アルキル型アルコ
ール類;アルキレングリコール型アルコール類;エステ
ル型両未端水酸基含有アルコール類;トリメチロールプ
ロパンおよびその誘導体のアルコール類;ペンタエリス
リトールおよびその誘導体のアルコール類;イソシアヌ
レートおよびその誘導体のアルコール類;複素環誘導体
のアルコール類;ビスフェノール化合物の変性型アルコ
ール類;多価のアルコール類等が挙げられる。
【0015】その中でも、一般式R1O(R2O)nH(n
は1〜300の数、R1は炭素数1〜22のアルキル
基、フェニル基又は炭素数1〜22のアルキル基を有す
るアルキルフェニル基、R2は炭素数2〜4のアルキレ
ン基を示す。)で表されるものは、エーテル基を含有し
ている為に易酸化性であり、重合反応を招きやすく、本
発明の効果が顕著に発揮される。
【0016】エステル化反応は、反応を円滑に進行させ
るためにアルコールまたは不飽和カルボン酸の内、沸点
の低い方を過剰量に用い、反応終了後に過剰な量を留去
することが望ましい。
【0017】不飽和カルボン酸とアルコールは、高沸点
のもの(化合物(A)とする)に対する低沸点のもの
(化合物(B)とする)のモル比が、化合物(B)/化
合物(A)で1.5〜50の範囲で使用することが好ま
しく、更に好ましくは3〜40の範囲である。
【0018】エステル化反応を促進するために触媒を使
用することが好ましい。その例としてはp−トルエンス
ルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の
スルホン酸類、硫酸、リン酸等の鉱酸類等の酸触媒を挙
げることができる。
【0019】酸触媒の使用量は、アルコールと不飽和カ
ルボン酸のうち、モル量の少ない方の成分100モルに
対して、1〜300モルが好ましい。1モル以上である
と反応速度を適度に保つことができ、300モル以下、
更に150モル以下とすることにより経済的であり、副
反応させることなく、円滑にエステル化反応を進行させ
ることができるため好ましい。
【0020】エステル化反応中に重合が起きない様に重
合禁止剤が使用される。重合禁止剤は、ハイドロキノ
ン、ベンゾキノン、メトキノン、BHT、フェノチアジ
ン等から選ばれる1種以上のものを任意比率の組み合わ
せで用いることができる。
【0021】重合禁止剤の使用量は、アルコールと不飽
和カルボン酸のうち、モル量の少ない方の成分100g
に対して0.001〜1gが好ましい。
【0022】又これら原料は含水状態で用いることがで
きるが、水はエステル化反応を阻害する為、留出させる
ことが好ましく、初期水分が大きすぎると水とカルボン
酸、アルコールも留出してしまう為、全系に対して仕込
み原料中の水分量は10重量%以下にすることが好まし
い。すなわち、本発明の製造方法において、式(A)、
(B)で用いられるXは10以下が好ましい。
【0023】本発明において、反応中の不飽和カルボン
酸及びアルコールの合計仕込み単位量当たりに吹き込ま
れる(導入される)酸素の流量Y〔ml/(min・k
g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
に換算した値)は、仕込み原料中の水分量X(重量%)
によって変動し、下記式(A)、好ましくは式(A−
1)を満たす必要がある。
【0024】 0.33+1.39X≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(A) 1.5(0.33+1.39X)≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(A−1) 〔式中、 Y;不飽和カルボン酸とアルコールの合計仕込み量当た
りに吹き込まれる酸素の流量〔ml/(min・k
g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
に換算した値) X;仕込み原料中の水分量(重量%)である。〕。
【0025】ここでいう仕込み原料中の水分量とは、仕
込み原料すべてから持ち込まれる水全ての重量を仕込み
原料の総重量で除して、百分率で表したものである。
【0026】式(A)において、酸素の流量Yが0.3
3+1.39X(以下、Y1で表す)以上であると、酸素
による重合禁止効果が十分となり、ゲル化を起こすこと
なく合成することが可能となる。又8(0.039X+
1.39)(以下、0.039X+1.39をY2で表す)
以下とすることで、同じ酸素の含有量(純度)のガスで
比較した場合には、エステル化反応中減圧下で反応や反
応終了時の過剰原料の留去を行う時の真空系設備や凝縮
器等の設備を最小限のものとすることができ、製造設備
面で有利となる。
【0027】本発明者らは、エステル化の際のゲル化を
防止するために必要な酸素量が仕込み水分量が増加する
と増加すること、また、酸素含有ガスの供給口の開口面
積によりこの酸素量が変動することを見出し、実験に基
づきY1、Y2を求め、優れたゲル化抑制効果が得られる
範囲として、上記式(A)、更に(B)の範囲を決定し
たものである。その際、工業的な製造設備の規模を考慮
して式(A)、(B)の上限を8Y2と定めたものであ
る。
【0028】ここで吹き込みを行う酸素を含有するガス
(以下、酸素含有ガスという)は、酸素ガスそのものの
他、例えば、空気やその他の不活性ガスを混合したもの
を用いることができる。この不活性ガスは予め酸素ガス
や酸素ガス含有ガスと混合しても良いし、別々に導入し
てもよいが、反応器の気相に導入する方が好ましい。
【0029】また酸素含有ガスを反応槽内に導入する
際、系内に爆発性雰囲気が形成されないようにする為、
窒素等の不活性ガスを同時に吹き込むことが好ましい。
この時の不活性ガスの流入量は酸素の流入量に対して、
2〜30容量倍が好ましく、特に10〜30容量倍にす
ることが好ましい。
【0030】また酸素含有ガスは、反応液中で微細に吹
き込まれる程、効率良く重合防止の効果が得られるの
で、気泡の微細化が可能な開口面積3mm2以下、更に
1mm2以下の供給口を有する供給手段を用いて吹き込
むことが好ましい。
【0031】このように開口面積3mm2以下の供給口
を有する供給手段を用いて吹き込むことにより、ゲル化
を抑制するのに必要な酸素含有ガスの量を更に低減する
ことが可能となり、反応系中の酸素導入量Yを、式
(B)のようにY2〜8Y2、更に好ましくは1.5Y2
8Y2とすることができる。
【0032】開口面積3mm2以下の供給口を有する供
給手段において、供給口の形状は任意のものを用いるこ
とができるが、正方形や円形が望ましい。またこの供給
手段の供給口は単数であっても複数であってもよい。
【0033】酸素含有ガスの吹き込み位置は、ガスと反
応液との接触時間が長くなるという観点から、反応器の
底部付近に設けることが望ましく、具体的には酸素含有
ガスの吹き込み位置と反応器の底部の距離が、反応器の
底部から液面までの距離の1/2以下であることが好ま
しい。
【0034】エステル化反応は温度の均一性や酸素含有
ガスの分散の面から撹拌下に行うことが好ましい。この
時の撹拌回転数は反応槽のスケールや撹拌翼の形状、大
きさ等によって、前記目的を達成する為に任意に選ぶこ
とができるが、通常20〜500r/minが好まし
い。反応温度は80〜130℃が好ましい。80℃以上
であると適度な反応速度を保つことができ、130℃以
下であるとアルコールの分解等の品質劣化を防止でき、
反応系の粘度を適度に保つことができるため好ましい。
【0035】エステル化反応における反応系の圧力は特
に限定されるものではないが、反応により生成した水を
系外に留去する観点から減圧することが好ましい。
【0036】エステル化反応において酸触媒等を用いた
場合、エステル化反応後、アルカリ剤を添加して酸触媒
を失活させる。このアルカリ剤としては、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸
化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げる
ことができる。アルカリ剤の使用量は、使用した酸触媒
に対して0.9〜1.5当量倍が好ましく、1.0〜
1.3当量倍が特に好ましい。
【0037】エステル化反応終了後は、未反応の不飽和
カルボン酸またはアルコールを留去して、不飽和カルボ
ン酸エステルを得る。未反応の不飽和カルボン酸または
アルコールを留去する方法としては、真空蒸留法、水蒸
気蒸留法又は常圧でキャリアガスとともに留去させる方
法等を適用することができる。
【0038】このようにして得られた不飽和カルボン酸
エステルは共重合可能なモノマーと共重合することによ
り、ポルトランドセメント、アルミナセメント、各種混
合セメント等の水硬セメント、石膏等のセメント以外の
水硬材料等の分散剤として用いることができる。
【0039】不飽和カルボン酸エステルの重合工程にお
いては、重合反応系の粘度を低下させるため、溶媒の存
在下で反応を行うことができる。この溶媒としては、
水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシ
レン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭
化水素;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル
等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケ
トン類等を挙げることができる。これらの中でも、取り
扱いが容易で、留去も容易であることから、水及び低級
アルコールが好ましい。
【0040】不飽和カルボン酸エステルの重合工程にお
いては、重合開始剤を添加することができる。重合開始
剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、ニトリル系
化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物、スルフィン酸
系化合物等を挙げることができる。重合開始剤の添加量
は単量体の合計に対して1〜50モル%が好ましい。
【0041】重合工程においては、連鎖移動剤を添加す
ることができる。連鎖移動剤としては、低級アルカリメ
ルカプタン、低級メルカプトカルボン酸、チオグリセリ
ン、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタノール等を挙げ
ることができる。特に水を溶媒として用いる場合には、
これらの連鎖移動剤を添加することで、分子量調整をよ
り安定に行うことができる。
【0042】不飽和カルボン酸エステルの重合工程にお
ける共重合反応の反応温度は、0〜120℃が好まし
い。
【0043】このようにして得られたカルボン酸系重合
体は、必要に応じて、さらに脱臭処理をすることができ
る。特に連鎖移動剤としてメルカプトエタノール等のチ
オールを用いた場合には、不快臭が重合体中に残存する
ため、脱臭処理をすることが望ましい。脱臭処理とし
て、例えば、過酸化水素による処理が挙げられる。
【0044】このようにして得られたカルボン酸系重合
体は、酸のままでもセメント用分散剤として適用するこ
とができるが、酸によるエステルの加水分解を抑制する
観点から、アルカリによる中和によって塩の形にするこ
とが好ましい。このアルカリとしては、アルカリ金属又
はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニウム、アルキ
ルアンモニウム、アルカノールアミン、N−アルキル置
換ポリアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンポリア
ミン等を挙げることができる。共重合体をセメント用分
散剤として使用する場合は中和によりpHを5〜7にす
ることが好ましい。
【0045】
【実施例】以下の例において「%」は「重量%」を表
し、空気や窒素等のガス流量は0℃、101.3kPa
に換算した数値で表す。
【0046】実施例1 (エステル化反応)80℃で溶融したエチレンオキシド
平均付加モル数120のポリエチレングリコールモノメ
チルエーテル(重量平均分子量5312)1700g
を、温度計、攪拌機(東京理科器械(株)製MAZEL
A Z−1100)、滴下ロート、窒素導入管及び還流
冷却器を備えた3Lガラス製反応容器に仕込んだ。羽根
付きテフロン被膜撹拌棒〔増田理科工業株式会社製、製
品コード12−171−202、撹拌羽根(三日月形
状、横幅80mm、高さ8mm)がその横幅方向の中心
部で軸(撹拌棒)と接合したもの〕を用いた。次に撹拌
機を250r/minの回転数で回転させながら、ハイ
ドロキノン5.1g、p−トルエンスルホン酸63%水
溶液86.9gを投入した。メタクリル酸90%水溶液
918g(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル
に対して30モル倍となる量)を投入した。ここで吹き
込み口が反応容器の底部から30mmの高さになるよう
に取り付けた孔径5mm単一孔ノズル(開口面積19.
6mm2)を用いて37.9ml/minとなる流量で空
気を反応液中に導入した。さらに反応容器内の気相部に
104.2ml/minの流量で窒素を導入しながら、
反応容器内圧力を26.7kPaに制御し、加熱を開始
した。撹拌機の回転数は工程終了まで、250r/mi
nを維持した。
【0047】反応液温度が105℃に到達した時点を反
応開始時刻とし、引き続き加熱して反応液温度を110
℃に維持して反応を行った。圧力は、反応開始1時間後
に12〜13.3kPaに減圧したのち、そのまま維持
した。反応開始から6時間後に圧力を常圧に戻し、p−
トルエンスルホン酸の固形分に対して1.05倍当量の
水酸化ナトリウム48%水溶液を添加して中和し、反応
を終了させた。反応終了後、反応液温度を130℃以下
に維持し、真空蒸留法により、未反応のメタクリル酸を
回収し、エステル化反応物を得た。この時の反応物の酸
価は28.5であった。この反応工程においてゲル化物
の生成は見られなかった。
【0048】実施例4 メタクリル酸90%水溶液918gを用い、ビードレッ
クス製ガラス濾過板の円筒型ガス噴射管(直径10mm
×長さ15mm、孔径0.1mm、開口面積0.008m
2)を用いて空気量を20.2ml/minとし、反
応容器内の気相部に窒素流量を55.6ml/minと
してそれ以外は実施例1と同様な方法でエステル化反応
を行った。この反応工程においてゲル化物の生成は見ら
れなかった。
【0049】実施例2、3、9、11、12、14 表に示した原料と条件で、実施例1又は実施例4と同様
な方法でエステル化反応を行った。これら反応工程にお
いてゲル化物の生成は見られなかった。
【0050】実施例5 (エステル化反応)30℃のエチレンオキシド付加モル
数9のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重
量平均分子量428)1400gを、温度計、攪拌機
(東京理科器械(株)製MAZELA Z−1100)、
滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス
製反応容器に仕込んだ。次に撹拌機を250r/min
の回転数で回転させながら、ハイドロキノン4.2g、
p−トルエンスルホン酸63%水溶液88.8gを投入
した。
【0051】メタクリル酸90%水溶液1565g(ポ
リエチレングリコールモノメチルエーテルに対して5モ
ル倍となる量)を投入した。ここで吹き込み口が反応容
器の底部から30mmの高さになるように取り付けた孔
径5mm単一孔ノズル(開口面積19.6mm2)を用
いて56.2ml/minとなる流量で空気を反応液中
に導入し、さらに反応容器の気相部に154.4ml/
minの流量で窒素を導入しながら、反応容器内圧力を
26.7kPaに制御し、加熱を開始した。撹拌機の回
転数は工程終了まで、250r/minを維持した。反
応液温度が97℃に到達した時点を反応開始時刻とし、
引き続き加熱して反応液温度を100℃に維持して反応
を行った。圧力は、反応開始1時間後に13.3kPa
に減圧したのち、徐々に減圧し、反応6時間目で5kP
aまで減圧した。反応開始から7時間後に圧力を常圧に
戻し、p−トルエンスルホン酸の固形分に対して1.0
5倍当量の48%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中
和し、反応を終了させた。反応終了後、反応液温度を1
30℃以下に維持し、真空蒸留法により、未反応のメタ
クリル酸を回収し、エステル化反応物を得た。この時の
反応物の酸価は36.0であった。この反応工程におい
てゲル化物の生成は見られなかった。
【0052】実施例6 メタクリル酸94%水溶液1498gを用い、空気量を
49.1ml/min、窒素流量を135.1ml/m
inとして、それ以外は実施例5と同様な方法でエステ
ル化反応を行った。この反応工程においてゲル化物の生
成は見られなかった。
【0053】実施例7、8、10、13 表に示した原料を用いて、実施例5と同様な方法でエス
テル化反応を行った。これら反応工程においてゲル化物
の生成は見られなかった。
【0054】比較例1 空気量を15.2ml/min、窒素流量を41.7m
l/minとして、それ以外は実施例1と同様の条件で
エステル化反応を行った。昇温の途中で温度が95℃に
達したところで反応槽内にゲル化物が発生したので、そ
の場で反応を停止した。
【0055】比較例2 空気量を15.2ml/min、窒素流量を41.7m
l/minとして、それ以外は実施例4と同様の条件で
エステル化反応を行った。昇温の途中で温度が93℃に
達したところで反応槽内にゲル化物が発生したので、そ
の場で反応を停止した。
【0056】比較例3 空気量を16.8ml/min、窒素流量を46.3m
l/minとしてそれ以外は実施例5と同様の条件でエ
ステル化反応を行った。昇温の途中で温度が90℃に達
したところで反応槽内にゲル化物が発生したので、その
場で反応を停止した。
【0057】表1、2に、上記実施例1〜14、比較例
1〜3の製造条件等をまとめた。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】実施例15(セメント分散剤用共重合体の
製造)温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還
流冷却器を備えた1Lのガラス製反応容器に水305g
を仕込み、攪拌しながら反応容器の気相部を窒素置換
し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。次に、実施例
1で得たエステル化反応物を60%水溶液に希釈したも
のを602g、メタクリル酸23g、2−メルカプトエ
タノール15%水溶液13g、ディクエスト(ホスホン
酸系キレート剤;日本モンサント社製)0.7g及び8
5%リン酸5gを混合溶解した液と、過硫酸アンモニウ
ム15%水溶液25.5gの2液を同時に滴下し、両液
とも90分かけて滴下を終了させた。次に、過硫酸アン
モニウム15%水溶液10.2gを30分かけて滴下
し、2時間80℃で熟成させた。さらに、水酸化ナトリ
ウム48%水溶液30gを加えて中和したのち、35%
過酸化水素0.7gを滴下し、1時間90℃で熟成させ
て、重合体を得た。この重合体の中にはゲル塊はみとめ
られなかった。
【0061】(セメント分散性能試験)セメントとして
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社
製)900g、細骨材として千葉県君津産山砂(比重
2.61、FM2.70)1636g、セメント分散剤と
して上記で得られた重合体1.6g(固形分)を含む水
315gを用いて、JIS R 5201に準拠しモル
タルを調製し、タッピングなしでのモルタルの広がりを
モルタルフロー値(mm)として測定した。この結果、
モルタルフロー値は253mmであり、優れた分散性能
を有していることが確認された。
【0062】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、エステル化
反応におけるゲル化反応を抑制し、生産性を低下するこ
となく不飽和脂肪酸エステルを製造できる。
【0063】またこのようにして得られた不飽和脂肪酸
エステルは、セメント用分散剤として好適な(メタ)ア
クリル酸系重合体の原料として用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 C04B 103:40 C04B 103:40 (72)発明者 浮穴 俊直 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内 (72)発明者 佐藤 治之 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内 (72)発明者 小柳 幸司 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内 Fターム(参考) 4D077 AA10 AB20 AC05 DC12Z DC14Z DC26Z DC32Z DD18X 4H006 AA02 AC48 BA52 BA66 BA94 BB31 BB61 KA06 4H039 CA66 CD10 CD30

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(A)を満たす酸素含有ガスの導
    入下に、不飽和カルボン酸とアルコールとをエステル化
    反応させる工程を有する不飽和カルボン酸エステルの製
    造方法。 0.33+1.39X≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(A) 〔式中、 Y;不飽和カルボン酸とアルコールの合計仕込み量当た
    りに吹き込まれる酸素の流量〔ml/(min・k
    g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
    に換算した値) X;仕込み原料中の水分量(重量%)である。〕
  2. 【請求項2】 下記式(B)を満たし且つ開口面積3m
    2以下の供給口を有する供給手段から供給される酸素
    含有ガスの導入下に、不飽和カルボン酸とアルコールと
    をエステル化反応させる工程を有する不飽和カルボン酸
    エステルの製造方法。 0.039X+1.39≦Y≦8(0.039X+1.39) 式(B) 〔式中、 Y;不飽和カルボン酸とアルコールの合計仕込み量当た
    りに吹き込まれる酸素の流量〔ml/(min・k
    g)〕(流量mlは、0℃、101.3kPaでの状態
    に換算した値) X;仕込み原料中の水分量(重量%)である。〕
  3. 【請求項3】 アルコールがR1O(R2O)nH(nは1
    〜300の数、R1は炭素数1〜22のアルキル基、フ
    ェニル基又は炭素数1〜22のアルキル基を有するアル
    キルフェニル基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を
    示す。)である請求項1又は2記載の不飽和カルボン酸
    エステルの製造方法。
  4. 【請求項4】 不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタ
    クリル酸である請求項1〜3何れか記載の不飽和カルボ
    ン酸エステルの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れか1項記載の方法に
    より不飽和カルボン酸エステルを製造するエステル工程
    と、該工程により得られた不飽和カルボン酸エステルと
    該エステルと共重合可能な単量体とを反応させてカルボ
    ン酸系重合体を製造する重合工程とを有するカルボン酸
    系重合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の製造方法により得られた
    カルボン酸系重合体。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のカルボン酸系重合体を含
    有するセメント分散剤。
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