JP2003300717A - カーボンナノチューブ前駆体繊維ならびにカーボンナノチューブおよびその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ前駆体繊維ならびにカーボンナノチューブおよびその製造方法

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JP2003300717A JP2003006779A JP2003006779A JP2003300717A JP 2003300717 A JP2003300717 A JP 2003300717A JP 2003006779 A JP2003006779 A JP 2003006779A JP 2003006779 A JP2003006779 A JP 2003006779A JP 2003300717 A JP2003300717 A JP 2003300717A
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carbon nanotubes
island
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Yasumasa Yamamoto
泰正 山本
Yoji Matsuhisa
要治 松久
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】配向を制御しやすいカーボンナノチューブ、そ
のようなカーボンナノチューブを得るに適したカーボン
ナノチューブ前駆体繊維、およびそのような前駆体繊維
を用いたカーボンナノチューブの製造方法を提供する。 【解決手段】直径が500nm以下であり、かつアスペ
クト比が10万以上であることを特徴とするカーボンナ
ノチューブ、ならびに、島成分が焼成により炭化してカ
ーボンナノチューブとなる物質を含み、海成分が焼成ま
たは他の処理により飛散または除去される物質構成され
る海島型連続繊維であって、島成分が直径700nm以
下の芯鞘型繊維であるか、島成分の直径が10nm以下
であるカーボンナノチューブ前駆体繊維、およびそれを
焼成するカーボンナノチューブの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーボンナノチュ
ーブ前駆体繊維ならびにカーボンナノチューブおよびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、カーボンナノチューブとして
直径が1nm前後の単層カーボンナノチューブおよび直
径が1nmから500nm前後の多層カーボンナノチュ
ーブが提案されているが(例えば非特許文献1参照)、
いずれもアスペクト比は1000前後であり、長さとし
ては1μmから長くても数10μmの非常に微細な物で
あった。そのためにマクロな外観はすす状のものであ
り、これを配向させて所望の方向に配列することは非常
に困難であり、引張強度、引張弾性率などの機械的特性
を十分に発揮できないという問題があるとともに、その
取り扱いにはナノレベルの特別の配列設備が必要であっ
た。またナノワイアのような用途に対しても長い連続体
を作れないという問題があった。さらに基本的にアーク
放電、レーザーアブレーションあるいは化学的気相成長
法などの気相のカーボンを原料として製造する方法であ
るために、生産性が低いという問題があった。
【0003】従来、これら問題への対策として、アーク
放電、レーザーアブレーションあるいは化学的気相成長
法などの合成条件を適正化することにより、直径やアス
ペクト比を制御する試みがなされているが、前述のよう
に10万以上といった大きなアスペクト比を得ることに
は成功していない(例えば非特許文献2参照)。また紡
糸法を用いたカーボンナノチューブの製造法として、フ
ェノール樹脂で被覆したポリエチレン微粒子をポリエチ
レンをマトリックスとして溶融紡糸し、その後焼成する
方法が提案されているが(例えば、非特許文献3参
照)、微粒子を引き延ばしてカーボンナノチューブとし
ているため、アスペクト比は高々4000前後と小さい
ものであった。
【0004】また、カーボンナノチューブは、作製した
後、非晶質カーボン等のカーボンナノチューブとは言え
ない炭素化物質や触媒等を取り除いて純度を上げるた
め、精製工程を必要としていた(例えば非特許文献
4)。しかしながら、この工程は煩雑であり、更にカー
ボンナノチューブ本体をも痛めてしまうという問題を有
している。
【0005】
【非特許文献1】田中一義編,「カーボンナノチューブ
−ナノデバイスへの挑戦−」,日本国,(株)化学同
人,2001年1月30日,p.9,19,他全般
【0006】
【非特許文献2】田中一義編、「カーボンナノチューブ
−ナノデバイスへの挑戦−」、日本国、(株)化学同
人、2001年1月30日、p.73
【0007】
【非特許文献3】「ユーロカーボン(Eurocarbon)」,
ドイツ,World Conference on C
arbon(1st),2000年7月9〜13日,V
ol.1,p.233
【0008】
【非特許文献4】斉藤弥八,坂東俊治,「カーボンナノ
チューブの基礎」,日本国,(株)コロナ社,1998
年11月13日,p.47
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術が有する問題点に鑑み、配向を制御しやすく、純度
の高いカーボンナノチューブ、そのようなカーボンナノ
チューブを得るに適したカーボンナノチューブ前駆体繊
維、およびそのような前駆体繊維を用いたカーボンナノ
チューブの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意検討を進めた結果、繊維製造技術を駆
使すればそれらが一挙に解決できることを見出し、本発
明に到達したものである。
【0011】本発明のカーボンナノチューブは、前記目
的を達成するために、次の構成を有する。すなわち、直
径が500nm以下であり、かつアスペクト比が10万
以上であることを特徴とするカーボンナノチューブであ
る。
【0012】また、本発明のカーボンナノチューブ前駆
体繊維は、前記目的を達成するために、次のいずれかの
構成を有する。すなわち、複数の芯鞘型繊維を島成分と
する海島型連続繊維であって、前記島成分の鞘部は焼成
により炭化してカーボンナノチューブとなる物質から構
成され、前記島成分の芯部および海成分は焼成または他
の処理により飛散または除去される物質から構成されて
おり、かつ前記島成分の直径は700nm以下であるこ
とを特徴とするカーボンナノチューブ前駆体繊維、また
は、複数の島成分を有する海島型連続繊維であって、前
記島成分は焼成により炭化してカーボンナノチューブと
なる物質から構成され、海成分は焼成または他の処理に
より飛散または除去される物質であり、かつ前記島成分
の直径は10nm以下であることを特徴とするカーボン
ナノチューブ前駆体繊維である。
【0013】さらに、本発明のカーボンナノチューブの
製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成を有
する。すなわち、上記カーボンナノチューブ前駆体繊維
を焼成してカーボンナノチューブを得ることを特徴とす
るカーボンナノチューブの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、カーボンナノチ
ューブとは、中心付近に連続的な中空部を有する外径5
00nm以下の炭素からなる繊維状物質であり、その炭
素の構造は黒鉛化度もしくは結晶化度は特に限定される
ものではないが、好ましくは高黒鉛化物もしくは高結晶
化物である。更に好ましくは、グラフェンシートが繊維
の中心軸の回りに、一層存在する構造、もしくは同心円
状に積層した円筒状結晶構造を有するものである。ここ
で中空部の径とカーボンナノチューブの外径との比は、
通常1:500〜499:500の範囲にある。
【0015】本発明のカーボンナノチューブは、直径が
500nm以下であり、かつアスペクト比が10万以上
である。このようなカーボンナノチューブとすることに
より、これを配向させて所望の方向に配列することが容
易となり、カーボンナノチューブが有する引張強度、引
張弾性率などの機械的特性を十分に発揮させることがで
き、ナノワイアのような用途に用いることができるよう
になる。本発明のカーボンナノチューブは、そのアスペ
クト比が10万以上であるが、大きいほど配向制御がし
やすいので、好ましくは100万以上、より好ましくは
1000万以上、最も好ましいのは実質的に連続すなわ
ち無限大とすることである。しかし、実際上は巻き取っ
て切断するため、アスペクト比の上限は1000兆とい
ったオーダーとなる。長さの絶対値としては、好ましく
は1mm以上、より好ましくは1cm以上、さらに好ま
しくは1m以上、最も好ましいのは1km以上の連続と
することである。本発明のカーボンナノチューブは、そ
の直径が500nm以下であるが、内層ほど結晶性が高
いので、細いほど平均としての結晶性が高く、物理的、
化学的あるいは機械的特性に優れている。かかる観点か
ら、直径としては好ましくは100nm以下、より好ま
しくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下とす
る。直径の下限としては通常0.1nm以上であり、
0.4nm以上が現実的である。カーボンナノチューブ
の構造としては、グラフェンシートが繊維軸の回りに同
心円状に積層した円筒状結晶構造を有する構造が好まし
く、その積層層数が少ないほど物理的、化学的あるいは
機械的特性に優れるため、好ましくは50層以下、より
好ましくは10層以下、さらに好ましくは5層以下、最
も好ましいのは1層すなわち単層とすることである。た
だし用途に応じ、あるいは後述する製法での生産性との
兼ね合いから層数および直径を適正化することが好まし
い。なお、カーボンナノチューブの直径や層数は、透過
型電子顕微鏡によって求めることができる。その際、加
速電圧100〜500kV、倍率50,000〜2,0
00,000の範囲で条件を適宜調整して求めれば良
い。測定装置としては、例えば、日立製作所製H−90
00UHRを挙げることができる。測定(透過型電子顕
微鏡観察)の際のカーボンナノチューブのサンプリング
法は特に限定されず、例えば、カーボンナノチューブを
目視レベルで粉状に砕いたり切ったりして透過型電子顕
微鏡の観察に適した大きさにして観察すれば良いが、カ
ーボンナノチューブが多かったり、バンドル(束)を形
成したりして、カーボンナノチューブが重なり過ぎて観
察しづらい場合は、例えばエタノール等の有機溶媒にカ
ーボンナノチューブの目視レベルでの粉状物を入れ、一
般的な超音波洗浄機(出力数十W)で数分〜10分程度
の超音波振動を与えると、ある程度分散するので、その
液を透過型電子顕微鏡に適した銅メッシュ(直径数〜数
十μmの穴の空いたマイクログリッド型が好ましい)に
垂らし、乾燥させ、銅メッシュに引っかかったカーボン
ナノチューブを観察すれば良い。また、カーボンナノチ
ューブの長さは例えば焼成の巻取り装置の回転数および
周囲長、時間によって求めることが可能である。
【0016】本発明のカーボンナノチューブは、次のい
ずれかのカーボンナノチューブ前駆体繊維を焼成するこ
とにより得ることができる。
【0017】一つは、複数の芯鞘型繊維を島成分とする
海島型連続繊維であって、前記島成分の鞘部は焼成によ
り炭化してカーボンナノチューブとなる物質から構成さ
れ、前記島成分の芯部および海成分は焼成または他の処
理により飛散または除去される物質から構成されてお
り、かつ前記島成分の直径は700nm以下であるカー
ボンナノチューブ前駆体繊維である。これにより、得ら
れるカーボンナノチューブの外径および内径を任意に制
御することが可能となる。さらに前駆体繊維が連続繊維
であるので、長さも任意に制御することが可能となり、
アスペクト比が10万以上と長いカーボンナノチューブ
の製造が可能となる。また、島成分の直径を700nm
以下とするため、直径が500nm以下のカーボンナノ
チューブを製造することができる。島成分の直径が70
0nmを超えると、直径が500nm以下のカーボンナ
ノチューブを製造することは困難である。なお、芯鞘型
繊維の鞘部の厚さは、0.1〜300nmの範囲である
ことが好ましい。
【0018】もう一つは、複数の島成分を有する海島型
連続繊維であって、前記島成分は焼成により炭化してカ
ーボンナノチューブとなる物質から構成され、海成分は
焼成または他の処理により飛散または除去される物質で
あり、かつ前記島成分の直径は10nm以下であるカー
ボンナノチューブ前駆体繊維である。一般に、島成分が
芯鞘型繊維でない場合には、焼成した後、中空部を有し
たカーボンナノチューブではなく、中空部を有しないカ
ーボンナノファイバーとなりがちであるが、例外的に島
成分の直径を10nm以下と微細なものとした場合に
は、島成分が芯鞘型繊維でなくとも、焼成時に自己組織
化してチューブ状になる。このような前駆体繊維を焼成
して得られるカーボンナノチューブは直径が7nm以下
と微細な物となるが、島成分の直径が10nmを超える
とカーボンナノファイバーとなってしまい、カーボンナ
ノチューブを製造することが困難である。
【0019】本発明においては、芯鞘型繊維を島成分と
する前駆体繊維の方が、内径および外径を任意に制御す
ることができるため、形態の制御という意味で、より好
ましく適用される。直径が7nm以下と微細なカーボン
ナノチューブに対しては、口金コストも含めたトータル
コストと形態制御精度とのバランスで前駆体繊維を選択
することが好ましい。
【0020】本発明において、焼成により炭化してカー
ボンナノチューブになる物質としては、ポリイミド、ポ
リアクリロニトリル、セルロース、フェノール樹脂、ピ
ッチ及びそれらが主成分となる共重合体などから選ばれ
る1種または2種以上の混合物が具体的に用い得る。な
かでも、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、セルロー
ス、ピッチ、またはそれらが主成分となる共重合体が好
ましく、ポリイミド、セルロース、ピッチまたはそれら
が主成分となる共重合体がより好ましい。
【0021】焼成または他の処理によって飛散または除
去可能な物質としては、ポリエチレンテレフタレート等
のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、低融点ナ
イロンなどのポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン
などから選ばれる1種または2種以上の混合物が具体的
に用い得る。
【0022】本発明において、芯鞘型繊維の芯部や海成
分に用いる物質は、焼成段階で飛散または除去するのが
一般的ではあるが、焼成以外のその他の処理で飛散また
は除去しても良い。かかる処理としては、たとえば化学
的処理などが適用でき、具体的には、たとえば、スルホ
ン酸基が導入されたイソフタル酸を共重合成分とするポ
リエチレンテレフタレートであれば、アルカリ水溶液に
溶解するので、好ましい処理の一例である。
【0023】前駆体繊維を得るための紡糸法としては、
基本的に溶融紡糸が生産性が高く好ましい。さらに細い
カーボンナノチューブを製造するために、細いカーボン
ナノチューブ前駆体繊維を製造することが重要であり、
そのために海島型複合紡糸口金を用いた海島型溶融紡
糸、すなわち溶融紡糸温度より高い温度で炭化する物質
を、口金内で溶融紡糸温度より高い温度で除去される物
質から成る海成分中に吐出し、海成分と島成分を口金か
ら吐出して溶融紡糸する方法が有効である。
【0024】また、海島型複合紡糸口金を用いた海島型
溶融紡糸において、溶融紡糸温度より高い温度で炭化す
る物質を鞘部とし、溶融紡糸温度より高い温度で除去さ
れる物質を芯部とする芯鞘状溶融流体を口金内で、溶融
紡糸温度より高い温度で除去される物質から成る海成分
中に吐出し、実質的に島成分の前期芯鞘状溶融流体の芯
鞘状構造を保持したまま、海成分と島成分を口金から吐
出して溶融紡糸することも有効である。
【0025】また、溶融紡糸温度及び溶融押し出し温度
より高い温度で炭化する物質を鞘部とし、溶融紡糸温度
及び溶融押し出し温度より高い温度で除去される物質を
芯部とする芯鞘型繊維を溶融紡糸し、ついで該芯鞘型繊
維を、溶融紡糸温度及び溶融押し出し温度より高い温度
で除去される物質からなる樹脂で含浸することによっ
て、前記芯鞘型繊維を島とし、溶融紡糸温度及び溶融押
し出し温度より高い温度で除去される物質を海とする海
島型構造を有する繊維もしくはガットもしくはロッドも
しくはローソク状物質を作製し、そのような繊維もしく
はガットもしくはロッドもしくはローソク状物質を、細
孔から溶融押し出しして引き取ることも有効である。
【0026】また、溶融紡糸温度及び溶融押し出し温度
より高い温度で炭化する物質を鞘部とし、溶融紡糸温度
及び溶融押し出し温度より高い温度で除去される物質を
芯部とする芯鞘型繊維を溶融紡糸し、ついで該芯鞘型繊
維を、溶融紡糸温度及び溶融押し出し温度より高い温度
で除去される物質からなる繊維と合わせて束にし、その
際好ましくは互いが融着するように加熱することによ
り、更に好ましくは加熱時に束の中心方向に向かって加
圧することにより、実質的に海島型構造を有する繊維も
しくはガットもしくはロッドもしくはローソク状物質を
作製し、そのような繊維もしくはガットもしくはロッド
もしくはローソク状物質を、細孔から溶融押し出しして
引き取ることも有効である。なお、繊維を束にする際に
好ましく採用される加熱において、好ましい加熱温度
は、繊維の外周部を構成するポリマーのガラス転移点以
上融点以下である。また更に好ましく採用される加圧に
おいて、その方法は限定されるものではないが、例え
ば、熱収縮チューブ中に、その熱収縮チューブが自由収
縮した時の直径よりも太い直径の繊維の束を挿入して加
熱し、熱収縮チューブの収縮力が繊維の束に加わるよう
にしたり、あるいは、繊維の束をフィルムで覆って密閉
し、適当な場所から真空引きしてフィルムを収縮するよ
うにしたりすれば良い。また、真空にすることは、前記
のフィルムを用いた場合のみならず、加熱する場合に
も、繊維の間に存在する空気を排除し、繊維同士を空隙
なく融着させることができるので好ましい。
【0027】また、溶融紡糸温度及び溶融押し出し温度
より高い温度で炭化する物質を鞘部とし、溶融紡糸温度
及び溶融押し出し温度より高い温度で除去される物質を
芯部とする芯鞘型繊維を溶融紡糸し、ついで該芯鞘型繊
維を、例えば上記の方法で、束にすることにより、実質
的に海島型構造を有する繊維もしくはガットもしくはロ
ッドもしくはローソク状物質を作製し、そのような繊維
もしくはガットもしくはロッドもしくはローソク状物質
を、細孔から溶融押し出しして引き取ることも有効であ
る。
【0028】以上のような方法で紡糸した繊維をさらに
延伸することも重要であり、2倍〜10万倍に延伸する
ことにより、さらなる細繊度化が可能である。そのため
にレーザー加熱による延伸も有効な手段である。
【0029】また、上記方法で得られるカーボンナノチ
ューブ前駆体を、さらに複数本、上述したように好まし
くは加熱、更に好ましくは加熱と加圧によって、また更
に好ましくは真空引きを併用して、束ねて繊維もしくは
ガットもしくはロッドもしくはローソク状物質とし、吐
出孔に向かって先細りしている溶融紡糸口金に押し込ん
で溶融紡糸することも有効であり、さらに、上述した方
法を繰り返し行うことによってより細くすることも有効
である。
【0030】本発明においては、前記した前駆体繊維を
焼成することによりカーボンナノチューブを製造する。
焼成に際しては、ピッチやポリアクリロニトリルなど、
不融化あるいは耐炎化させることが必要な物質を島成分
に用いた場合には、酸素を含む活性雰囲気中で不融化あ
るいは耐炎化処理した後、アルゴン、窒素あるいはヘリ
ウムといった不活性雰囲気中で焼成することが重要であ
る。不融化あるいは耐炎化処理は、100〜300℃の
温度で、続く不活性雰囲気中での焼成に耐える耐熱性を
付与するに必要な時間で処理することが重要である。不
活性雰囲気中での焼成は通常2000〜3000℃の温
度で処理することが重要である。不活性ガスとしては窒
素は3000℃付近の高温において炭素と反応する場合
があるので、アルゴンまたはヘリウムが好ましい。一連
の焼成は緊張下、張力を付与した状態で行うことが構造
をより完全にし、機械的、物理的あるいは化学的特性を
高める上で好ましい。
【0031】得られたカーボンナノチューブは、さらに
化学修飾を行い、用途に応じた官能基、ポリマーなどを
表面に付与することができる。
【0032】このようにして得られた本発明のカーボン
ナノチューブは、純度が高く、配向制御が容易でカーボ
ンナノチューブの特性を任意の方向に発現させることが
可能となり、強度および弾性率の非常に高い超高性能複
合材料あるいは連続的なナノワイヤ、送電線など、従来
不可能であった高性能な材料を提供することを可能とす
る。
【0033】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお、カーボンナノチューブの直径と層数
は、透過型電子顕微鏡により求めた。また、カーボンナ
ノチューブの長さは焼成の巻き取り装置の回転数および
周囲長、時間により求めた。尚、本実施例において、透
過型電子顕微鏡としては日立製作所製H−9000UH
Rを用い、加速電圧を300kVとし、倍率は200万
倍とした。
【0034】また、以下の実施例で用いたポリスチレ
ン、ポリイミド、ノボラック型フェノール樹脂、低融点
ナイロンには、溶融紡糸温度における溶融粘度が剪断速
度500/secの時に100〜500Pa・sとなる
ものを用いた。 (実施例1)芯鞘型(芯:鞘=95:5)の島成分を3
6個含む海島型複合紡糸口金(島:海=70:30)を
用い、ポリスチレンを島成分の芯部と海成分とし、軟化
点が270℃、キノリン不溶分が21%、光学的異方性
量が90%のピッチを島成分の鞘部として、330℃で
複合溶融紡糸し、400m/分で巻き取った。得られた
繊維の直径は10μmであり、その中に含まれる島成分
の直径は700nm、該島成分の鞘部の厚さは約9nm
であった。
【0035】これを空気中で200〜250℃で不融化
処理した後、アルゴン雰囲気で3000℃で焼成した。
【0036】得られたカーボンナノチューブは直径45
0nm、壁の厚さは約6nm、層数は約17、長さは1
0kmであった。 (実施例2)ポリスチレンを芯部、熱可塑性のポリイミ
ドを鞘部とする芯鞘型繊維(芯:鞘=50:50)を3
20℃で溶融紡糸し、400m/分で巻き取った。得ら
れた芯鞘型繊維は直径が14μmであった。これを、別
途溶融紡糸したポリスチレン繊維の束の中に分散するよ
うに配置し、真空下で310℃に加熱して束ねた時のポ
リマー配置が実質的に保持された直径2.5cmのロー
ソク状物質を得た。このローソク状物質を320℃にて
口径150μmの口金から溶融押し出しし、100m/
分で引き取った。得られた繊維は、直径12.6μm、
芯鞘型繊維が引き延ばされた部分の外径が7nm、鞘部
の厚さが1nmであった。この繊維を、実施例1と同様
に不融化し、焼成した。
【0037】得られたカーボンナノチューブは直径5n
m、壁の厚さは約0.7nm、層数は約2、長さは5k
mであった。 (実施例3)実施例2において、芯鞘型繊維に相当する
繊維をポリイミドの単一成分とする繊維とし、島成分の
外径を5nmとする以外は実施例2と同様に行った。
【0038】得られた繊維には、直径が3nmから5n
mと不揃いであるが、アスペクト比が10万を超えるカ
ーボンナノチューブが認められた。 (実施例4)実施例1において、島成分の芯部及び海成
分のポリスチレンを、スルホイソフタル酸を2%共重合
成分とするポリエチレンテレフタレートに置換して、実
施例1と同様に紡糸した。これを、3%の水酸化ナトリ
ウム水溶液を用いて、90℃にて島成分の芯部及び海成
分を除去した。その後、不融化、焼成を行い、実施例1
と同様のカーボンナノチューブを得た。 (実施例5)融点約95℃のノボラック型フェノール樹
脂と融点約120℃の低融点ナイロンを10:90の重
量比で混練し、200℃で溶融紡糸した。得られた繊維
の中の海成分のフェノール樹脂の直径は0.8〜1.5
μmであった。この繊維を束ね、直径50mmのシリコ
ーンゴム製熱収縮チューブ(西日本電線(株)製)の中
に押し込み、150℃で加熱した。これにより、直径3
5mmのローソク状物質ができた。これを旋盤加工して
直径30mmのローソク状物質とし、入り口内径30.
5mmで、途中からは先細りして最終的には出口内径
0.5mmとなる筒に入れ、先細り部分を170℃に加
熱してローソク状物質を先細り部に向かって押し込ん
だ。筒の先細り部の内径0.5mmの穴から出てきたポ
リマーを100m/分で引き取った。得られた繊維中の
フェノール樹脂の直径は、2〜8nmであった。この繊
維を、ホルムアルデヒド水溶液と塩酸の混合液中で90
℃にて2時間処理した。その後、この繊維を2000℃
で焼成した。得られた物には、アスペクト比10万を越
える直径1.5〜6nmのカーボンナノチューブが認め
られた。 (比較例1)実施例1において、島成分の芯部と鞘部を
同じピッチにして、それ以外は実施例1と同様に行っ
た。
【0039】得られた物は、カーボンナノチューブでは
なく、中が詰まっている直径450nmのカーボンナノ
ファイバーであった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、配向制御が容易なカー
ボンナノチューブを提供することができる。また本発明
によれば、かかるカーボンナノチューブを効率よく製造
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G146 AA11 AB06 AC02A AC02B AC03A AC03B BA04 BA13 BA15 BA16 BA18 BA22 BA32 BA40 BC02 4L041 AA07 BA16 BD12 CA39 CA48 DD14 EE05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直径が500nm以下であり、かつアスペ
    クト比が10万以上であることを特徴とするカーボンナ
    ノチューブ。
  2. 【請求項2】複数の芯鞘型繊維を島成分とする海島型連
    続繊維であって、前記島成分の鞘部は焼成により炭化し
    てカーボンナノチューブとなる物質から構成され、前記
    島成分の芯部および海成分は焼成または他の処理により
    飛散または除去される物質から構成されており、かつ前
    記島成分の直径は700nm以下であることを特徴とす
    るカーボンナノチューブ前駆体繊維。
  3. 【請求項3】複数の島成分を有する海島型連続繊維であ
    って、前記島成分は焼成により炭化してカーボンナノチ
    ューブとなる物質から構成され、海成分は焼成または他
    の処理により飛散または除去される物質から構成されて
    おり、かつ前記島成分の直径は10nm以下であること
    を特徴とするカーボンナノチューブ前駆体繊維。
  4. 【請求項4】海島型複合口金を用い紡糸されて得られる
    請求項2または請求項3に記載のカーボンナノチューブ
    前駆体繊維。
  5. 【請求項5】請求項2乃至4のいずれか1項に記載のカ
    ーボンナノチューブ前駆体繊維を焼成してカーボンナノ
    チューブを得ることを特徴とするカーボンナノチューブ
    の製造方法。
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