JP2003289884A - 新規糖転移活性を有する蛋白質をコードする遺伝子 - Google Patents
新規糖転移活性を有する蛋白質をコードする遺伝子Info
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Abstract
する活性を有する新規な蛋白質をコードする遺伝子及び
その使用方法の提供。 【解決手段】 例えば、アサガオに由来する、特定のア
ミノ酸配列を有する、アントシアニンの3位の糖にグル
コースを転移する蛋白質をコードする遺伝子、及びこの
遺伝子によりコードされる蛋白質が提供される。この遺
伝子が導入された植物は、この遺伝子の発現により、天
然植物とは異なる色を有する花などをもたらす。
Description
化する酵素遺伝子及びその利用方法に関するものであ
る。
るいは多様性に富んだ新品種の開発が重要である。なか
でも、花の色は花卉のもっとも重要な形質である。交配
に頼った従来の育種により、さまざまな色の品種が育種
されてきたが、交配可能な植物種の遺伝資源が限定され
ているため、単一の植物種がすべての色の品種を有する
ことはまれである。
称されるフラボノイドの一群の化合物である。植物には
多様なアントシアニンが存在することは知られており、
それらの多くの構造が既に決定されている。アントシア
ニンの色は主としてその構造に依存している。アントシ
アニンの生合成に関わる酵素や遺伝子に関しても研究が
進んでおり、分子生物学的手法と植物への遺伝子導入に
より、アントシアニンの構造を変換し、花の色を変えた
例もある(Holton et al. (1995) Plant Cell,7, p.107
1、Tanaka et al. (1998) Plant Cell Physiol. 39. p1
119)。
ン3−グルコシドに至るまではほとんどの顕花植物で共
通である。アントシアニジン3−グルコシドは種・品種
に特異的な多様な修飾を受ける。この多様性が花色の多
彩さの一因となっている。アントシアニンは中性溶液中
では不安定な化合物であるが、糖やアシル基により修飾
されることにより安定性が向上する。また、これら修飾
がアントシアニンの溶解度に影響する。
内での分布、液胞内での分布にも影響し、結果として花
色に影響する(Markham et al. Phytochem. 55, p327-3
36.(2000), Markham et al. Phytochem. 58, p403-413.
(2001), Raymond Brouillardand Olivier Dangles. Fla
vonoids and Flower colour, p565-588. in The Flavon
oids. J. B. Harborne(ED))。アシル基は、アントシア
ニジン骨格に直接結合するのではなく、その糖に結合す
るため、アントシアニンをアシル化するためには、アン
トシアニンが配糖化されている必要がある。
の報告がある。アントシアニジンの3位の水酸基にグル
コースを転移する反応を触媒する酵素の遺伝子は、キン
ギョソウ、リンドウ、バラ、オオムギ、トウモロコシな
どからクローン化されている(Tanaka et al. (1998) P
lant Cell Physiol. 39. p1119)。また、アントシアニ
ジンの3位の水酸基にガラクトースを転移する反応を触
媒する酵素の遺伝子はケツルアズキ(Vigna mungo)とペ
チュニアからクローン化されている(Mato et al. (199
8) Plant Cell Physiol. 39, p1145; Miller et al.(19
99) J. Biol. Chem. 273, p34011)。
グルコースを転移する反応を触媒する酵素の遺伝子は、
シソ、バーベナ、トレニアなどからクローン化されてい
る(WO 99/05287公報)。アントシアニジン3−グルコシ
ドの3位のグルコースの6位の水酸基にラムノースを転
移する反応を触媒する酵素(UDP-ラムノース:アントシ
アニジン3-グルコシド ラムノシルトランスフェラー
ゼ)の遺伝子はペチュニアからクローン化されている(B
rugliera et al. (1994) Plant J. 5, p81)。
を転移する反応を触媒する酵素の遺伝子は、オウゴンか
らクローン化されており、これを大腸菌で発現させた蛋
白質はフラボノイドの7位にグルコースを転移する反応
を触媒することが報告されている(Hirotani et al. (2
000) Planta 210, p1006)。ベタニジンの5位の水酸基
にグルコースを転移する反応を触媒する酵素の遺伝子が
リビングストンデージーからクローン化されており、こ
れを大腸菌で発現させた蛋白質はフラボノイドの4’位
と7位の水酸基にグルコースを転移する反応を触媒する
ことが示された(Vogt et al. (1999) Plant J. 19:509
-519)。
されたことにより、植物ゲノム中には多数の糖転移酵素
遺伝子が存在することも明らかとなった(J Biol Chem
2001276 p4344)。また、糖転移酵素のアミノ酸配列
は、程度は異なるが、相同性があり、スーパーファミリ
ーを形成していること、同じ機能を持つ糖転移酵素のア
ミノ酸配列は植物種が異なっていても相同性が高くスー
パーファミリーの中でファミリーを形成していること、
一つのファミリーの中で異なる植物種由来の糖転移酵素
のアミノ酸配列の同一性は30〜50%以上であることが示
されている(J Biol Chem 2001 276 p4344、Planta 200
1 213 p164)。
グルコースを転移する酵素の活性が確認されたことはあ
る(Forkmann (1999) Comprehensive natural products
chemistry Vol 1. p.713-748, Ed. Sankawa, Pergamo
n)が、酵素が精製されたこともないし、遺伝子がクロ
ーン化されたことはない。アサガオは(Ipomea nil)は日
本において育種され、多種多様な変種が得られている。
また、その連鎖地図も作成されており、花色や形態形成
に関する遺伝子座が同定されている。そのうち、いくつ
かの遺伝子、たとえば、カルコン合成酵素、フラバノン
3-水酸化酵素、ジヒドロフラボノール4-還元酵素等の遺
伝子がクローン化されている(Annual. New York Acad.
Sci. 1999, 870, p265)。
ンはヘブンリーブルーアントシアニンと呼ばれる複雑に
修飾されたアントシアニンであるペオニジン3-[2-[6-(3
-グルコシルカフェイル)グルコシル]-6-(4-[6-(3-グル
コシルカフェイル)グルコシル]カフェイル)グルコシ
ド]-5-グルコシド(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 199
1, 30, 17)で、その構造からアントシアニジン3−グル
コシドの糖に、グルコースを転移する酵素が存在するこ
とは示唆されるが、その酵素活性が確認されたり、酵素
が単離されたり、遺伝子がクローン化されたこともな
い。
7, p.1071
ysiol. 39. p1119
-336.(2000)
-413.(2001)
gles. Flavonoids and Flowercolour, p565-588. in Th
e Flavonoids. J. B. Harborne(ED)
ysiol. 39. p1119
iol. 39, p1145
273, p34011
5, p81
0, p1006
09-519
tural products chemistry Vol 1. p.713-748, Ed. San
kawa, Pergamon
9, 870, p265
1, 30, 17
ドの3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白
質をコードする遺伝子、およびその用途、特に花色の調
節方法を提供しようとするものである。
題を解決すべく種々研究した結果、アサガオのフラボノ
イドの3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋
白質をコードする遺伝子のクローニングに成功し、さら
にこの遺伝子を植物に導入し、植物中で発現させる事に
成功した。従って本発明は、フラボノイドの3位の糖に
グルコースを転移する活性を有する蛋白質をコードする
遺伝子を提供する。好ましくは、フラボノイドはアント
シアニンである。
号:14に記載のアミノ酸配列を有するフラボノイドの3
位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質をコ
ードする遺伝子;配列番号:2又は配列番号:14に記載
のアミノ酸配列に対して1個又は複数個のアミノ酸の付
加、欠失及び/又は他のアミノ酸による置換によって修
飾されているアミノ酸配列を有し、且つフラボノイドの
3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質を
コードする遺伝子を提供する。
号:14に記載のアミノ酸配列に対して30%以上の同一性
を有するアミノ酸配列を有し、且つフラボノイドの3位
の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質をコー
ドする遺伝子を提供する。更に、本発明は、配列番号:
2又は配列番号:14に記載のアミノ酸配列をコードする
塩基配列の全部または一部に対して、5 x SSC、50℃の
条件下でハイブリダイズにより得られ、且つフラボノイ
ドの3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白
質をコードする遺伝子;或いは、配列番号:1又は配列
番号:13に記載の塩基配列の全部または一部に対して、
5 x SSC、50℃の条件下でハイブリダイズにより得ら
れ、且つフラボノイドの3位の糖にグルコースを転移す
る活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を提供する。
でなるベクター、例えば発現ベクター又は遺伝子移行用
(トランスファー)ベクター;及び該ベクターにより形
質転換された宿主、例えば微生物宿主、またはトランス
ジェニック植物を提供する。本発明は更に、上記何れか
の遺伝子が導入された植物と同じ性質を有する該植物の
子孫またはそれらの組織もしくは器官、例えば切り花を
提供する。
によってコードされる蛋白質、或いは上記の形質転換さ
れた宿主、例えば微生物宿主又はトランスジェニック植
物により生産される蛋白質を提供する。本発明は又、上
記何れかの遺伝子を用いてフラボノイドの3位を修飾す
る方法を提供する。本発明はまた、上記何れかの遺伝子
を用いる花色の調節方法、さらに、本発明は前記宿主を
培養し、又は生育させ、そして該宿主からフラボノイド
の3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質
を採取することを特徴とする該蛋白質の製造方法を提供
する。また、本発明は、3位に糖を有するフラボノイド
に、前記蛋白質を作用せしめて3位の糖にグルコースが
転移したフラボノイドを製造する方法を提供する。
配列表の配列番号:2又は配列番号:14に記載するアミ
ノ酸配列をコードするものが挙げられる。しかしなが
ら、複数個のアミノ酸の付加、欠失および/又は他のア
ミノ酸との置換によって修飾されたアミノ酸配列を有す
る蛋白質も、もとの蛋白質と同様の酵素活性を維持する
ことが知られている。従って本発明は、フラボノイドの
3位の糖にグルコースを転移する活性を有している蛋白
質である限り、配列番号:2又は配列番号:14に記載の
アミノ酸配列に対して1個または複数個のアミノ酸配列
の付加、欠失および/又は他のアミノ酸との置換によっ
て修飾されたアミノ酸配列を有する蛋白質および当該蛋
白質をコードする遺伝子も本発明に属する。複数個のア
ミノ酸とは、例えば数個のアミノ酸である。
号:14に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列の全
部またはその一部、例えばコンセンサス領域の6個以上
のアミノ酸をコードする塩基配列、より具体的には配列
番号:1又は配列番号:13に示す塩基配列の全部又は一
部、例えばコンセンサス領域の6個以上のアミノ酸に対
応する部分に対して、例えば5xSSC、50℃の条件下でハ
イブリダイズし、且つフラボノイドの3位の糖にグルコ
ースを転移する活性を有する蛋白質をコードする遺伝子
に関するものである。なお、適切なハイブリダイゼーシ
ョン温度は塩基配列やその塩基配列の長さによって異な
り、例えばアミノ酸6個をコードする18塩基からなるDN
Aフラグメントをプローブとした場合には50℃以下の温
度が好ましい。
て選択される遺伝子としては、天然由来のもの、例えば
植物由来のもの、例えば、ダイコン、アカキャベツ、キ
キョウ、コーンソリダ、カンパニュラ、ラークスパー、
ニンジン、ロベリア、ヤマノイモ、西洋アサガオ、サツ
マイモ、チョウマメ、エンドウマメ由来の遺伝子が挙げ
られるが、植物以外の由来であってもよい。また、ハイ
ブリダイゼーションによって選択される遺伝子はcDNAで
あってもよく、ゲノムDNAであってもよい。
来のフラボノイドの3位の糖転移酵素遺伝子は高い相同
性(72%)を示し、種が異なっても同一機能を有するフ
ラボノイド糖転移酵素遺伝子は高い配列同一性を示すこ
とが知られている。本発明はさらに配列番号:2又は配
列番号:14に記載のアミノ酸配列に対して約30%以上、
好ましくは約50%以上、より好ましくは約60%または約
70%以上、さらに好ましくは約90%以上の同一性を有す
るアミノ酸配列を有し、且つフラボノイドの3位の糖に
グルコースを転移する活性を有する蛋白質をコードする
遺伝子の花色変換への利用に関するものである。
具体的に示すように、例えばcDNAライブラリーのスクリ
ーニングによって得られる。また、修飾されたアミノ酸
配列を有する酵素をコードするDNAは生来の塩基配列を
有するDNAを基礎として、常用の部位特定変異誘発やPCR
法を用いて合成することができる。例えば修飾を導入し
たいDNA断片を生来のcDNAまたはゲノムDNAの制限酵素処
理によって得、これを鋳型にして、所望の変異を導入し
たプライマーを用いて部位特異的変異誘発またはPCR法
を実施し、所望の修飾を導入したDNA断片を得る。その
後、この変異を導入したDNA断片を目的とする酵素の他
の部分をコードするDNA断片と連結すればよい。
らなる酵素をコードするDNAを得るには、例えば目的と
するアミノ酸配列より長いアミノ酸配列、例えば全長ア
ミノ酸配列をコードするDNAを所望の制限酵素により切
断し、その結果得られたDNA断片が目的とするアミノ酸
配列の全体をコードしていない場合は、不足部分の配列
からなるDNA断片を合成し、連結すればよい。
での遺伝子発現系を用いて発現させ、酵素活性を測定す
ることにより、得られた遺伝子がフラボノイドの3位の
糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質をコード
することを確認することができる。さらに、当該遺伝子
を発現させることにより、遺伝子産物であるフラボノイ
ドの3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白
質を得ることができる。あるいはまた、配列番号:2又
は配列番号:14に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質に
対する抗体を用いても、フラボノイドの3位の糖にグル
コースを転移する活性を有する蛋白質を得ることがで
き、抗体を用いて他の生物からも、フラボノイドの3位
の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質をクロ
ーン化することもできる。
組換えベクター、特に発現ベクター、及び当該ベクター
によって形質転換された宿主に関するものである。宿主
としては、原核生物または真核生物を用いることができ
る。原核生物としては細菌、例えばエシェリヒア(Esch
erichia)属に属する細菌、例えば大腸菌(Escherichia
coli)、バシルス(Bacillus)属微生物、例えばバシ
ルス・スブチリス(Bacillus subtilis)など常用の宿
主を用いることができる。真核性宿主としては、下等真
核生物、例えば真核性微生物、例えば真菌である酵母ま
たは糸状菌が使用できる。
ccharomyces)属微生物、例えばサッカロミセス・セレ
ビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等が挙げられ、また
糸状菌としてはアスペルギルス(Aspergillus)属微生
物、例えばアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryz
ae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nige
r)、ペニシリウム(Penicillium)属微生物が挙げられ
る。さらに動物細胞または植物細胞が使用でき、動物細
胞としては、マウス、ハムスター、サル、ヒト等の細胞
系が使用される。さらに昆虫細胞、例えばカイコ細胞、
またはカイコの成虫それ自体も宿主として使用される。
き宿主の種類に依存して発現制御領域、例えばプロモー
ターおよびターミネーター、複製起点等を含有する。細
菌用発現ベクターのプロモーターとしては、常用のプロ
モーター、例えばtrcプロモーター、tacプロモーター、
lacプロモーター等が使用され、酵母用プロモーターと
しては、例えばグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲ
ナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が使用され、
糸状菌用プロモーターとしては例えばアミラーゼプロモ
ーター、trpCプロモーター等が使用される。
ウイルス性プロモーター、例えばSV40アーリープロモー
ター、SV40レートプロモーター等が使用される。発現ベ
クターの作製は制限酵素、リガーゼ等を用いて常法に従
って行うことができる。また、発現ベクターによる宿主
の形質転換も常法に従って行うことができる。前記の発
現ベクターによって形質転換された宿主を培養、栽培ま
たは生育し、培養物等から常法に従って、例えば、濾
過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィ
ー、イオン交換クロマトグラフィー等により目的とする
蛋白質を回収、精製することができる。
ノイドに、前記蛋白質を作用せしめて3位の糖にグルコ
ースが転移したフラボノイドを製造する方法に関するも
のである。例えば、得られた遺伝子を発現させた植物、
酵母、大腸菌等から、本酵素を取得し、それらにUDP-グ
ルコースとフラボノイド3配糖体を加え、酵素反応を行
うことでフラボノイド3位の糖にグルコースが付加され
たフラボノイド3−ソフォロシドを製造することができ
る。
について述べているが、本発明はアサガオ由来の本遺伝
子のみに限定されるものではなく、フラボノイドの3位
の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質をコー
ドする遺伝子であれば、いずれの由来でもよい。すなわ
ち本発明の遺伝子の由来としては、植物でも動物でも微
生物であってもよく、フラボノイドの3位の糖にグルコ
ースを転移する活性を有していれば同様に花色変換へ利
用できる。さらに本発明は、本発明の遺伝子を導入する
ことによる、色合いが調節された植物もしくはその子孫
又はこれらの組織に関するものであり、その形態は切り
花であってもよい。
トシアニンの3位の糖にグルコースを転移する反応を促
進したり、あるいはアントシアニンの3位の糖にグルコ
ースを転移する反応を抑制することができ、結果として
花の色を調節することができる。この際3位のソフォロ
ースにアシル基を転移する活性を有する蛋白質をコード
する遺伝子と併せて利用することもできる。本発明の遺
伝子を、アシル基を転移する活性を有する蛋白質をコー
ドする遺伝子と併用することにより、本発明の遺伝子に
より付加された糖にさらにアシル基を転移することがで
きる。アシル基が付加することにより、安定性が向上す
るので、本発明の遺伝子単独で用いるよりも、より青い
花色を有する植物を作出することもできる。
構成的あるいは組織特異的に発現させることは可能であ
り、またアンチセンス法やコサプレッション法などによ
って目的の遺伝子の発現を抑制することも可能である。
形質転換可能な植物の例としては、バラ、キク、カーネ
ーション、金魚草、シクラメン、ラン、トルコギキョ
ウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソ
ウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、
ペチュニア、トレニア、チューリップ、イネ、オオム
ギ、小麦、ナタネ、ポテト、トマト、ポプラ、バナナ、
ユーカリ、サツマイモ、タイズ、アルファルファ、ルー
ピン、トウモロコシ、カリフラワーなどがあげられるが
これらに限定されるものではない。
分子生物学的手法はとくに断らない限り、Molecular Cl
oning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)に
依った。
l 6, 375-383)のツボミからRNAを回収し、プライマーN
otId(T)18 (5’-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTT
TTTTTTTTTTTTT-3’)(配列番号:3)をプライマーとし
て、逆転写反応を行った。逆転写物を鋳型とし、プライ
マーATC(5’-GA(CT)TT(CT)GGITGGGGIAA-3’)(配列番
号:4)とプライマーNotI(5’-AACTGGAAGAATTCGCGGCCG
CAGGAA-3’)(配列番号:5)とをプライマーにしてPCR
反応を行った。反応は、94℃にて1分間保持した後、94
℃にて30秒、55℃にて30秒、72℃にて1分からなるサイ
クルを30サイクル行い、さらに72℃で1分間保持した。
これにより得られたDNA断片をKAT5とした。その配列
を、配列番号:6に示す。
dification of Gene Expression and Non-Mendelian In
heritance, NIAR/STA, Tsukuba, p.23-40))からmRNAを
抽出し、λZAPIIをベクターとするdirectional cDNAラ
イブラリー作製キット(ストラタジーン社)を用いて製
造者の推奨する方法でcDNAライブラリーを作製した。5.
0×106のプラークをP32でラベルしたKAT5でスクリーニ
ングした。ハイブリダイゼーションは、6×SSC、0.5%の
SDS、40%ホルムアミド中で37℃にて15時間行った。その
後、3×SSC、0.5%のSDS中で5分間室温にて洗浄し、同じ
洗浄液で室温にて15分間洗浄した。
℃で45分間洗浄した後、3×SSC, 0.5% SDS 中でさらに6
0℃で45分間洗浄した。しかしながら、明瞭にプローブ
にハイブリダイズしたクローンは得ることができなかっ
た。かすかにハイブリダイズした12クローンを単離し、
DNA塩基配列を決定した。その内の一つのクローンKAT5-
1は、ペチュニアの遺伝子座RtにコードされるUDP-ラム
ノース:アントシアニジン3−グルコシドラムノシル転
移酵素遺伝子(以下、RT)(Plant J. 1994 5 p69 Plant
J. 1994 5 p81)と弱い相同性が見られた。アミノ酸の同
一性は37%であった。
列番号:1に示し、塩基配列から推定されるアミノ酸配
列を配列表の配列番号:2に示す。アサガオのアントシ
アニンの構造からは、アントシアニンラムノシル基転移
酵素が存在するとは考えられず、本遺伝子の機能を決定
するために、鋭意研究を行った。
腸菌での発現 以下の手順でKAT5-1にコードされる糖転移酵素遺伝子を
大腸菌で発現した。KAT5-1を鋳型とし、プライマー 3GG
T NcoI (5'-CCCCATGGGTTCTCAAGCAACAACTTAC-3')(配列
番号:7)とプライマー2GT 500R (5'-CGGGAAACTGGCCG
GAGC-3')(配列番号:8)とをプライマーとし、Taqポ
リメラーゼ(TaKaRa)を用いて、PCR(反応条件:94℃
にて30秒、60℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルと
した反応を30回繰り返した後、 72℃で7分間保持。)を
行った。
とで消化して得たDNA断片と、KAT5-1をHaeIIとKpnIと
で消化して得られた約1200bpのDNA断片と、NcoIとKpnI
で消化した大腸菌発現ベクターpQE61(QIAGEN)とをライ
ゲーションし、得られた大腸菌用発現プラスミドをpQE6
1KAT5−1とした。
この大腸菌を37℃で一晩前培養した後、前培養液の一部
を400mLの本培養液に植菌し、27℃でOD600=0.6になるま
で培養した。KAT5-1遺伝子の発現誘導のため、最終濃度
0.4mMとなるようにイソプロピルベータチオガラクトシ
ド(IPTG)を加え、さらに27℃で一晩培養した。菌体を
集菌し、洗浄後、20mlの破砕用緩衝液(25mM Tris-HCl
(pH7.5), 250mM NaCl,1mM EDTA, 0.5% 2-メルカプト
エタノール)に懸濁し、そして懸濁液を超音波処理する
ことによって菌体を破壊した。菌体破壊液の上清をKAT5
-1粗抽出液として以下で述べる反応に用いた。
加活性能の確認 20μlの実施例3で得られたKAT5-1粗抽出液、10μlの0.
5M リン酸カリウム(pH7.5)、20μlの5mM UDP-グルコ
ース、30μlの蒸留水、及び20μlのデルフィニジン3-グ
ルコシド(1.5 mg/ml)を混合し、30℃にて15分間保持
した。その後、1N-HClを最終濃度0.16Nとなるように添
加し、反応を停止した。反応液に90% CH3CN/1% TFAを5
0μl加え高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し
た。HPLCカラムは、Asahipak-ODP-50(6mmφX250mm、昭
和電工)、移動相として、A液 0.5%トリフルオロ酢酸
(TFA)水溶液、B液0.5%TFA を含む50%アセトニトリ
ルを用いた。
液:B液=5:5 の混合液の直線濃度勾配を20分で行った。
流速は、0.6ml/分とした。また、検出は520nmの吸光度
を用いた。その結果、基質であるデルフィニジン3-グル
コシドのピーク(リテンションタイム:13.2分)に加
え、リテンションタイムが11.7分である新しいピークが
検出された。従って、この化合物は、デルフィニジン3-
グルコシドに糖が付加されたものであると考えられる。
また、基質にシアニジン3−グルコシド(リテンション
タイム:14.1分)を用いた場合においても新たなピーク
(リテンションタイム:12.6分)が得られたことから、
KAT5-1遺伝子産物は、デルフィニジンおよびシアニジン
3-グルコシドを基質として利用できる糖転移能を持つ酵
素であると考えられる。
に、KAT5-1遺伝子を構成的に発現するためのバイナリー
ベクター(pSPB1002)を構築し、花弁にシアニジン 3-
グルコシドを含有するペチュニア(品種:バカラレッ
ド、サカタのタネ社)を形質転換し、その結果得られた
形質転換体の花弁を用いて色素分析を行った。pSPB100
2の作製は以下のように行った。
ra et al. Plant Cell Physiol. 37, p49)をSnaBIで消
化し、BamHIリンカーを挿入した。生じたプラスミドをS
acIで消化し、平滑末端化し、さらにSalIリンカーを挿
入した。生じたプラスミドをEcoRIとHindIIIで消化し、
得られる約2kbのDNA断片をバイナリーベクターpBINPLU
S(van Engelen et al. Plant Mol. Biol. 15, p373)
のEcoRI−HindIII部位に挿入し、プラスミドpSPB176を
得た。一方、クローンKAT5-1のプラスミドをBamHIとXho
Iで消化し、約1.64kbのDNA断片を得た。この断片を、pS
PB176のBamHI−SalI部位に挿入し、pSPB1002とした。
を用いるアグロバクテリウム法により、ペチュニア(品
種バカラレッド、サカタのタネ社)を形質転換し、約5
0系統の形質転換個体を得た。形質転換の方法は公知の
方法(Plant J. 1994 5 p81)によった。
べるために、ぞれぞれの形質転換体からゲノミックDNA
を抽出し、DNA20μgをBamHIで消化し、電気泳動後、Hyb
ond N+メンブレン(Amersham)にブロッティングを行い、
ジゴキシゲニン(DIG)で標識したKAT5-1遺伝子をプロ
ーブに用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。
DIGシステムを用いたサザンハイブリダイゼ−ション法
は製造業者(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会
社)が推奨する条件に倣った。その結果、得られた個体
が独立した形質転換体であることを確認した。
確認するために定量的RT-PCR解析を行った(Plant J. 19
98 13, p475.)。独立した形質転換体の花弁から全RNAを
抽出した後、この全RNA 1μgを鋳型として逆転写を行
い、cDNAを得た。cDNA合成は、SuperScriptTM First-S
trand Synthesis System for RT-PCR(GIBCO BRL)を利
用し、合成条件は本システム製造業者が推奨する条件に
倣った。
異的プライマーであるPn3GGT-F; 5’-atg ggt tct caa
gca aca act tac(配列番号:9)及びPn3GGT-R; 5’-t
tatat cgc cac cga act tca tta(配列番号:10)を用
いて、PCR反応を行った。また、導入遺伝子(KAT5-1)
発現量と内在遺伝子発現量とを比較するために、比較対
象としてペチュニアのグリセルアルデヒド-3-リン酸脱
水素酵素(Pet GAPDH)遺伝子を採用し、それを特異的に
増幅するプライマーとしてPet Gapdh-F;ggt cgtttg gt
t gca aga gt(配列番号:11)及びPet Gapdh-R;ctg g
tt att cca ttacaa cta(配列番号:12)を用いた。
に、94℃にて1分、55℃にて1分、及び72℃にて2分の反
応を12サイクル行った。PCR産物を、前述のサザンハイ
ブリダイゼーションの際と同様の方法でメンブレンにブ
ロッティングし、DIGラベルのKAT5-1またはPetGAPDHを
プローブに用いてハイブリダイゼーションを行った。そ
の結果、独立した形質転換体においてKAT5-1の過剰発現
を確認した。
トニトリル、0.1%TFAで抽出しアントシアニンをHPLCで
分析した結果、9.5-47.5%(A520nmにおける全アントシ
アニン量に対する割合)のシアニジン 3-ソフォロシド
(ポリフェノールラボラトリリーズ社)と同じ15.0分に
溶出する物質のピークが検出された。なおアントシアニ
ンのHPLC分析条件は以下の通りである。
を用いて、移動相として0.5%TFA含有、アセトニトリル1
0%から50%のグラジエント15分の後、50%アセトニトリル
10分間溶出を行った。また、流速は0.6ml/minで行っ
た。検出は島津photo diode array検出器SPD-M10AVPを
用いて250-600nmのスペクトルをとり、A520nmで定量し
た。また、このシアニジン 3-ソフォロシドの量は形質
転換体におけるKAT5-1の発現量と正の相関があった。
ン3−ソフォロシドであることを確認するため、同ピー
クを分取し、そしてMSによる分析を行った。MSはThermo
quest社のLC-Qシステムを用い、ESI、ポジティブモード
で測定した。その結果、KAT5-1形質転換体花弁で生成さ
れた物質は分子量が611([M]+ m/z)であり、シアニジ
ン 3−ソフォロシドが生成していることが確認された。
以上により、KAT5-1はアントシアニジン 3-グルコシド
のグルコースに対してグルコースを転移し、アントシア
ニジン 3-ソフォロシドを生成する糖転移酵素をコード
する遺伝子であることが示された。
/ZSK-2 buds cDNA library (Gene 226 (1999) 181-18
8.)に対してKAT5-1をプローブに実施例2と同様のスク
リーニングを行った。その結果、50000プラークあたり
約25のポジティブなシグナルが得られ、このうち単離を
行ったクローンの中から、もっとも長い5’非翻訳領域
をもつPNGT1-7の塩基配列の解析を行った。PNGT1-7の塩
基配列を配列表の配列番号:13に示し、塩基配列から
推定されるアミノ酸配列を配列表の配列番号:14に示
す。
子産物はマルバアサガオ由来KAT5-1と比べ、DNAレベル
で97%の同一性、アミノ酸レベルで99%の同一性を示
し、両者は極めて類似しておりPNGT1-7はKAT5-1同様の
機能を有するものと考えられる。また、ノザンハイブリ
ダイゼーションにより野生型系統KK/ZSK-2の蕾みに於い
てPNGT1-7mRNAの蓄積を示す結果が得られた。
常(減少)が見られるアサガオの変異体において、PNGT
1-7遺伝子の発現も同様に発現が低下している結果が得
られた。従って、PNGT1-7遺伝子は、花の色素合成系に
関わる遺伝子と同じ発現制御下にあることが類推され、
KAT5-1との相同性からしても、デルフィニイン及びシア
ニジン3−グルコシドを基質として利用できる糖転移酵
素であると考えられる。
ルコシドにグルコースを転移する反応を触媒する活性を
有する蛋白質をコードする遺伝子をはじめてクローン化
でき、花弁で発現させることができた。本蛋白質を花弁
で発現させたり、コサプレッション法等を用いて、活性
を抑制することにより、アントシアニンの構造と花色を
変えたりすることができる。
Claims (17)
- 【請求項1】 フラボノイドの3位の糖にグルコースを
転移する活性を有する蛋白質をコードする遺伝子。 - 【請求項2】 フラボノイドがアントシアニンである請
求項1に記載の遺伝子。 - 【請求項3】 配列番号:2又は配列番号:14に記載の
アミノ酸配列を有するフラボノイドの3位の糖にグルコ
ースを転移する活性を有する蛋白質をコードする請求項
1または2に記載の遺伝子。 - 【請求項4】 配列番号:2又は配列番号:14に記載の
アミノ酸配列に対して1個又は複数個のアミノ酸の付
加、欠失及び/又は他のアミノ酸による置換によって修
飾されているアミノ酸配列を有し、且つフラボノイドの
3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白質を
コードする請求項1または2記載の遺伝子。 - 【請求項5】 配列番号:2又は配列番号:14に記載の
アミノ酸配列に対して30%以上の同一性を有するアミノ
酸配列を有し、且つフラボノイドの3位の糖にグルコー
スを転移する活性を有する蛋白質をコードする請求項1
または2記載の遺伝子。 - 【請求項6】 配列番号:2又は配列番号:14に記載の
アミノ酸配列をコードする塩基配列の全部または一部に
対して、5 x SSC、50℃の条件下でハイブリダイズによ
り得られ、且つフラボノイドの3位の糖にグルコースを
転移する活性を有する蛋白質をコードする請求項1また
は2記載の遺伝子。 - 【請求項7】 配列番号:1又は配列番号:13に記載の
塩基配列の全部または一部に対して、5 x SSC、50℃の
条件下でハイブリダイズにより得られ、且つフラボノイ
ドの3位の糖にグルコースを転移する活性を有する蛋白
質をコードする請求項1または2記載の遺伝子。 - 【請求項8】 フラボノイドの3位の糖がグルコースで
ある請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子。 - 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の遺
伝子を含んでなるベクター。 - 【請求項10】 請求項9に記載のベクターにより形質
転換された宿主。 - 【請求項11】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
遺伝子によってコードされる蛋白質。 - 【請求項12】 請求項1〜9のいずれか1項に記載の
遺伝子が導入された植物もしくはこれと同じ性質を有す
る該植物の子孫またはそれらの組織もしくは器官。 - 【請求項13】 請求項12に記載の植物又はこれと同
じ性質を有するその子孫の切り花。 - 【請求項14】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
遺伝子を用いてフラボノイドの3位を修飾する方法。 - 【請求項15】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
遺伝子を用いる花色の調節方法。 - 【請求項16】 請求項10に記載の宿主を培養し、又
は生育させ、そして該宿主からフラボノイドの3位の糖
にグルコースを転移する活性を有する蛋白質を採取する
ことを特徴とする該蛋白質の製造方法。 - 【請求項17】 3位に糖を有するフラボノイドに、請
求項11に記載の蛋白質を作用せしめて3位の糖にグル
コースが転移したフラボノイドを製造する方法。
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