JP2003286886A - ディーゼルエンジンの燃焼制御装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの燃焼制御装置

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JP2003286886A
JP2003286886A JP2002092271A JP2002092271A JP2003286886A JP 2003286886 A JP2003286886 A JP 2003286886A JP 2002092271 A JP2002092271 A JP 2002092271A JP 2002092271 A JP2002092271 A JP 2002092271A JP 2003286886 A JP2003286886 A JP 2003286886A
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fuel
injection
exhaust gas
temperature
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Ichiji Kataoka
一司 片岡
Akihiro Kobayashi
明宏 小林
Tomoaki Saito
智明 齊藤
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 予混合燃焼の割合が拡散燃焼の割合よりも多
い主燃焼がTDC付近から開始するように圧縮行程上死
点よりも前の早い時期に燃料を筒内に噴射する一方、設
定量以上の排気を還流させるようにしたエンジンの燃焼
制御装置において、排気浄化手段の早期活性化を図る。 【解決手段】 排気浄化手段の温度を検出する温度検出
手段38を設け、該手段38によって検出される温度が
所定値よりも低いときには、拡散燃焼を主体とするディ
ーゼル燃焼を生ずるようにするとともに、膨張行程又は
排気行程においてさらに燃料が後噴射されるようにし
て、排気温度を上昇させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はディーゼルエンジン
の燃焼制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、直噴式ディーゼルエンジンで
は、気筒の圧縮行程上死点近傍で高温高圧の燃焼室に燃
料を噴射して、自着火により燃焼させるようにしてい
る。このとき、燃焼室に噴射された燃料は高密度の空気
との衝突によって微細な液滴に分裂(霧化)しながら進
行し、略円錐状の燃料噴霧を形成するとともに、その燃
料液滴の表面から気化しつつ燃料噴霧の主に先端側や外
周側で周囲の空気を巻き込んで混合気を形成し、この混
合気の濃度及び温度が着火に必要な状態になったところ
で燃焼を開始する(予混合燃焼)。そして、そのように
して着火、即ち燃焼を開始した部分が核となり、周囲の
燃料蒸気及び空気を巻き込みながら拡散燃焼すると考え
られている。
【0003】そのような通常のディーゼルエンジンの燃
焼(以下、単にディーゼル燃焼ともいう)では、初期の
予混合燃焼に続いて大部分の燃料が拡散燃焼することに
なるが、この際、濃度の不均質な燃料噴霧(混合気)の
中で空気過剰率λが1に近い部分では急激な熱発生に伴
い窒素酸化物(NOx)が生成され、また、燃料の過濃
な部分では酸素不足によって煤が生成されることにな
る。この点について、NOxや煤を低減するために排気
の一部を吸気に還流させる(Exhaust Gas recirculatio
n:以下、単にEGRという)ことや燃料の噴射圧力を
高めることが従来から行われている。
【0004】そのようにEGRによって不活性な排気を
吸気系に還流させると、燃焼温度が低下してNOxの生
成が抑えられる一方で、吸気中の酸素が減ることになる
から、多量のEGRは煤の生成を助長する結果となる。
また、燃料噴射圧力を高めると、燃料噴霧の微粒化が促
進されるとともに、その貫徹力が大きくなって空気利用
率が向上するので、煤の生成は抑制されるが、NOxは
むしろ生成し易い状況になる。つまり、ディーゼル燃焼
においてはNOxの低減と煤の低減とがトレードオフの
関係にあり、両者を同時に低減することは難しいのが実
状である。
【0005】これに対し、近年、燃料の噴射時期を大幅
に進角させて、予混合燃焼が主体の燃焼状態とすること
により、NOxと煤とを同時に且つ格段に低減できる新
しい燃焼の形態が提案されており、一般に予混合圧縮着
火燃焼と呼ばれるものが公知である。特開2000−1
10669号公報に記載のディーゼルエンジンでは、E
GRによって多量の排気を還流させるとともに、気筒の
圧縮行程で燃料を噴射して空気と十分に混合し、この予
混合気を圧縮行程の終わりに自着火させて、燃焼させる
ようにしている。
【0006】そのような予混合燃焼(予御合圧縮着火燃
焼)のときには、EGRによって吸気中に還流させる排
気の割合(EGR率)を上述したディーゼル燃焼のとき
よりも一段、高くするのが好ましい。すなわち、空気に
比べて熱容量の大きい排気を吸気中に多量に混在させ、
予混合気中の燃料及び酸素の密度を低下させることで、
着火遅れ時間を延長して予混合気の着火タイミングを圧
縮上死点(TDC)近傍に制御することができる。しか
も、その予混合気中では燃料及び酸素の周囲に不活性な
排気が略均一に分散し、これが燃焼熱を吸収することに
なるので、NOxの生成が大幅に抑制されるのである。
【0007】但し、EGRによって吸気中の排気の還流
割合が多くなるということは、その分、空気の量が少な
くなるということなので、予混合圧縮着火燃焼をエンジ
ンの高負荷側で実現することは困難であると考えられて
いる。このため、従来は、低負荷側の運転領域では前記
の如く予混合圧縮着火燃焼とし、この際、EGR率は比
較的高い第1の設定値以上に制御する一方、高負荷側の
運転領域では燃料の噴射態様を切換えてディーゼル燃焼
となるようにTDC近傍で噴射させるようにしており、
この際、EGR率は、煤の増大を回避すべく前記第1の
設定値よりも小さい第2の設定値以下に制御するように
している。
【0008】また、特開2000−8929号公報に
は、燃料の一部を吸気行程から圧縮行程にかけて筒内に
噴射し空気と混合させて希薄予混合気を形成させ、残り
の燃料を着火時期に筒内へ点火用燃料として噴射するよ
うにした予混合燃焼方法において、予混合気形成用の燃
料を複数回に分割して噴射することにより、正規の着火
以前の自着火を防止することが記載されている。
【0009】また、特開平11−159369号公報に
は、EGR率を70%以上にし且つ圧縮行程上死点前に
燃料を筒内に噴射して燃焼させる第1の燃焼と、EGR
率を30〜50%にし且つ圧縮行程上死点付近で燃料を
筒内に噴射して燃焼させる第2の燃焼とを選択的に行な
うようにした圧縮着火式内燃機関において、排気通路の
触媒温度が低いときは第2の燃焼形態から第1の燃焼形
態に切り換えて排気温度を上昇させることが記載されて
いる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の予混
合圧縮着火燃焼では、空気に比べて熱容量の大きい排気
を吸気に多量に混在させて燃料を燃焼させるため、通常
のディーゼル燃焼の場合に比べて筒内での燃焼温度が低
くなり、その結果、排気温度が低くなる。従って、排気
通路に配設された排気浄化手段(排気浄化用触媒やDP
F(ディーゼルパティキュレートフィルタ))の温度が
低く所期の排気浄化作用を発揮し得ない状態にあるとき
は、その温度上昇が遅くなり、エミッションの悪化を招
く。本発明はこの問題に対策することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題に対
して、エンジンが予混合圧縮着火燃焼を実行すべき運転
状態にあるときでも、エンジン温度又は排気浄化手段の
温度が低いときはディーゼル燃焼を実行して排気ガス温
度を上昇させるようにした。
【0012】すなわち、請求項1に係る発明は、エンジ
ンの気筒内の燃焼室に臨む燃料噴射弁と、前記燃焼室へ
の排気の還流量を調節する排気還流量調節手段と、エン
ジンが第1の運転状態にあるときは、燃料が吸気行程な
いし圧縮行程で噴射され且つ排気の還流量が第1の設定
値以上になって、予混合燃焼が圧縮行程上死点付近から
開始され且つ該予混合燃焼の割合が拡散燃焼の割合より
も多くなる第1の燃焼形態となり、エンジンが第2の運
転状態にあるときは、燃料が圧縮行程上死点付近で噴射
され且つ排気の還流量が前記第2の設定値以下になっ
て、拡散燃焼の割合が予混合燃焼の割合よりも多くなる
第2の燃焼形態となるように、前記燃料噴射弁及び排気
還流量調節手段を制御する燃焼制御手段とを備えている
ディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、エンジン
の排気通路に設けられた排気浄化手段と、エンジン温度
又は前記排気浄化手段の温度を検出する温度検出手段と
を備え、前記燃焼制御手段は、前記温度検出手段によっ
て検出される温度が所定値よりも低いときには、前記第
2の燃焼形態となるように前記燃料噴射弁及び排気還流
量調節手段を作動させることを特徴とする。
【0013】この構成においては、エンジンが第1の運
転状態にあるときには、燃料噴射弁から要求トルクに応
じた燃料が早期に(吸気行程ないし圧縮行程で)気筒内
に噴射されることによって予混合気が形成されるが、こ
の予混合気は排気還流量の制御により圧縮行程上死点付
近で自着火して予混合燃焼を主体とする第1の燃焼を開
始するようになる。すなわち、還流される排気量を増大
させる(EGR値≧第1設定値)ことによって予混合気
の着火遅れ時間を確保するものである。この着火遅れ時
間の確保により、上述の早期に噴射された燃料は筒内に
おいて比較的広く分散し且つ空気及び還流排気と十分に
混合することになり、均質度合いの高い予混合気が形成
される。従って、煤の発生量が少なくなり、また、排気
の多量の還流により低温燃焼になるから、NOxの発生
量も少なくなる。
【0014】一方、エンジンが第2の運転状態にあると
きには燃料が気筒の圧縮上死点近傍で噴射されて、相対
的に拡散燃焼の割合が多い第2の燃焼形態になる。この
場合、吸気への排気の還流によってNOxや煤の生成が
ある程度、抑制されるとともに、排気の還流割合が所定
以下とされることで(EGR値≦第2設定値)、空気の
供給量が確保されて十分な出力が得られる。
【0015】そうして、上述の第1の燃焼形態では排気
温度が低くなるが、エンジンが第1の運転状態にあって
も、エンジン温度又は排気浄化手段の温度が所定値以下
のときには、拡散燃焼を主体とする前記第2の燃焼形態
が選択される。この第2の燃焼形態では、第1の燃焼形
態に比べて燃焼熱が吸収される還流排気量が少なく、逆
に、燃焼に寄与する酸素量が多く、しかも、燃料噴射時
期が圧縮行程上死点側に遅角されていることから、燃焼
性が良く、排気温度が高くなる。よって、排気浄化手段
の速やかな暖機が図れ、排気の浄化に有利になる。
【0016】請求項2に係る発明は、請求項1に記載さ
れているディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、
前記温度検出手段は、排気中のHCを浄化する前記排気
浄化手段としての触媒の温度を検出するものであり、前
記燃焼制御手段は、前記触媒の温度が所定の触媒活性を
示す温度よりも低いときには、前記第2の燃焼形態とな
り、前記触媒の温度が前記所定の触媒活性を示す温度以
上に上昇したときには、前記第1の燃焼形態となるよう
に、前記燃料噴射弁及び排気還流量調節手段を作動させ
ることを特徴とする。
【0017】従って、触媒の温度が所定の触媒活性を示
す温度よりも低いときは、第2の燃焼形態が選択される
から、触媒の早期活性化を図ることができる。この触媒
が所期の活性を示すようになった後は、第1の燃焼形態
が選択されるが、この第1の燃焼形態は還流排気量の多
い低温燃焼であるから、排気中のHC量が増大して前記
触媒でのHCの酸化反応が活発になる。すなわち、第2
の燃焼形態から第1の燃焼形態へ移行すると排気温度は
低下するものの、既に触媒が活性を呈するようになって
いるから、HCの酸化反応が活発になり、該触媒を活性
温度に維持することができる。
【0018】請求項3に係る発明は、請求項1又は請求
項2に記載されているディーゼルエンジンの燃焼制御装
置において、前記燃焼制御手段は、前記温度検出手段に
よって検出される温度が所定値よりも低いときには、前
記第2の燃焼開始後の膨張行程又は排気行程においてさ
らに燃料が後噴射されるように前記燃料噴射弁を作動さ
せることを特徴とする。
【0019】従って、前記第2の燃焼開始後の膨張行程
又は排気行程において後噴射される燃料が着火燃焼する
ことにより、排気温度が上昇する。よって、排気浄化手
段の速やかな暖機が図れ、排気の浄化に有利になる。ま
た、排気浄化手段の暖機中は排気の浄化が不充分になる
が、後噴射によってHC(炭化水素)や煤の再燃焼が図
れるから、暖機中のエミッション性を良好にする上でも
有利になる。
【0020】請求項4に係る発明は、請求項3に記載さ
れているディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、
前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射を圧縮行程上死
点後10度〜60度のクランク角度のときに実行するこ
とを特徴とする。
【0021】これにより、排気浄化手段の速やかな暖機
が図れ、排気の浄化に有利になるとともに、排気浄化手
段の暖機中でも後噴射によってHCや煤の再燃焼が図れ
る。なお、本明細書において、「〜」はその両側に記載
した数値(10度〜60度の場合は10度及び60度)
を含む範囲であることを意味する。
【0022】請求項5に係る発明は、請求項3に記載さ
れているディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、
前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射時期を、前記第
2の燃焼形態による熱発生率が所定値以下になったとき
に当該後噴射燃料の燃焼が開始するように設定すること
を特徴とする。
【0023】すなわち、第2の燃焼形態は拡散燃焼を主
体とするが、この拡散燃焼においては、筒内において局
所的に生じた過濃混合気の熱分解によって一次粒子が形
成され、これが重・縮合を繰り返すことによって煤の核
が生成し、それが高温雰囲気において成長・凝集するこ
とによって所謂煤を生ずると一般には考えられている。
また、このような煤核の成長・凝縮は、燃料の拡散燃焼
が終わりに近付く頃まで、つまり、熱発生率が略零にな
るまで続いていると考えられる。
【0024】これに対して、本発明の場合は、第2の燃
焼の熱発生率が所定値以下になったときに前記後噴射燃
料の燃焼が開始するようにしているから、拡散燃焼によ
って生ずる煤の再燃焼を促してその量を低減する上で有
利になる。
【0025】請求項6に係る発明は、請求項3に記載さ
れているディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、
前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射時期を、前記第
2の燃焼形態による熱発生率が略零になった時点又は該
時点から所定期間内に当該後噴射燃料の燃焼が開始する
ように設定することを特徴とする。
【0026】上述の如く、煤核の成長・凝縮は、燃料の
拡散燃焼が終わりに近付く頃まで、つまり、熱発生率が
略零になるまで続くと考えられるが、本発明の場合は、
第2の燃焼の熱発生率が略零になった時点又は該時点か
ら所定期間内に前記後噴射燃料の燃焼が開始するように
しているから、拡散燃焼によって生成した煤の再燃焼を
促してその量を低減することに有効に働く。
【0027】また、前記熱発生率が略零になった時点又
は該時点から所定期間内に前記後噴射燃料の燃焼が開始
するときは、それによって排気温度が上昇するから、排
気浄化手段の早期暖機に有利になる。但し、後噴射燃料
の燃焼開始が遅くなりすぎると、排気中のHC量が増大
することになるので、前記所定期間内に当該燃焼が開始
するようにするものである。すなわち、HC量の増大を
避けるために、前記熱発生率が零になった時点を中心に
例えばクランク角にして±5゜程度の範囲で又は±3゜
の範囲で後噴射燃料の燃焼が開始する、あるいはそれよ
りも少し遅れて後噴射燃料の燃焼が開始することが好ま
しい。
【0028】そうして、前記拡散燃焼が終了する頃には
煤が筒内で偏在せず酸素との接触が比較的良好なものと
なるために、後噴射燃料による煤の再燃焼が効率良く行
なわれることになる。しかも、このような比較的遅い時
期の後噴射であれば、筒内温度が下がっているから、煤
核の生成、成長、凝縮を生ずることが避けられる。
【0029】
【発明の効果】以上のように、請求項1に係る発明によ
れば、エンジンが第1の運転状態にあるときには、燃料
の早期噴射と多量の排気還流とによって予混合燃焼の割
合が拡散燃焼の割合よりも多い第1の燃焼形態となり、
エンジンが第2の運転状態にあるときには、圧縮行程上
死点付近での燃料噴射と相対的に少ない排気還流量とに
よって拡散燃焼の割合が予混合燃焼の割合よりも多い第
2の燃焼形態となるようにしたディーゼルエンジンの燃
焼制御装置において、エンジン温度又は排気浄化手段の
温度が所定値よりも低いときには、前記第2の燃焼形態
となるから、排気温度が高くなって、排気浄化手段の速
やかな暖機が図れ、排気の浄化に有利になる。
【0030】請求項2に係る発明によれば、請求項1に
記載されているディーゼルエンジンの燃焼制御装置にお
いて、触媒の温度が所定の触媒活性を示す温度よりも低
いときには、前記第2の燃焼形態となるから、触媒の早
期活性化を図ることができるとともに、この触媒が所期
の活性を示すようになった後は、第1の燃焼形態となる
から、排気温度は低下するものの、排気中のHC量が増
大して前記触媒でのHCの酸化反応が活発になり、該触
媒を活性温度に維持することができる。
【0031】請求項3に係る発明によれば、請求項1又
は請求項2に記載されているディーゼルエンジンの燃焼
制御装置において、前記温度検出手段によって検出され
る温度が所定値よりも低いときには、前記第2の燃焼開
始後の膨張行程又は排気行程においてさらに燃料が後噴
射されるように前記燃料噴射弁を作動させるから、排気
温度が上昇し、排気浄化手段の速やかな暖機が図れ、排
気の浄化に有利になるとともに、後噴射によってHCや
煤の再燃焼が図れるから、排気浄化手段の暖機中のエミ
ッション性を良好にする上でも有利になる。
【0032】請求項4に係る発明によれば、請求項3に
記載されているディーゼルエンジンの燃焼制御装置にお
いて、圧縮行程上死点後10度〜60度のクランク角度
のときに前記燃料の後噴射を実行するから、排気浄化手
段の速やかな暖機が図れ、排気の浄化に有利になるとと
もに、排気浄化手段の暖機中でも後噴射によってHCや
煤の再燃焼が図れる。
【0033】請求項5に係る発明によれば、請求項3に
記載されているディーゼルエンジンの燃焼制御装置にお
いて、前記第2の燃焼による熱発生率が所定値以下にな
ったときに前記後噴射の燃料の燃焼が開始するから、拡
散燃焼によって生ずる煤の再燃焼を促してその量を低減
する上で有利になる。
【0034】請求項6に係る発明によれば、請求項1乃
至請求項4のいずれか一に記載されているエンジンの燃
焼制御装置において、前記第2の燃焼の熱発生率が略零
になった時点又は該時点から所定期間内に前記後噴射の
燃料の燃焼が開始するようにその後噴射時期を設定した
から、後噴射燃料の燃焼が拡散燃焼によって生成した煤
の再燃焼を促してその量を低減することに有効に働くと
ともに、排気温度を上昇させて排気浄化手段の早期暖機
を図る上で有利になる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0036】(全体構成)図1は本発明の実施形態に係
るエンジンの燃焼制御装置Aの一例を示し、1は車両に
搭載されたディーゼルエンジンである。このエンジン1
は複数の気筒2,2,…(1つのみ図示する)を有し、
その各気筒2内に往復動可能にピストン3が嵌挿されて
いて、このピストン3とシリンダヘッドとにより各気筒
2内に燃焼室4が区画形成されている。また、燃焼室4
の天井部にはインジェクタ5(燃料噴射弁)が配設され
ていて、その先端部の噴口から高圧の燃料を燃焼室4に
直接、噴射するようになっている。一方、各気筒2毎の
インジェクタ5の基端部は、それぞれ分岐管6a,6
a,…(1つのみ図示する)により共通の燃料供給管6
(コモンレール)に接続されている。このコモンレール
6は、燃料供給管8により高圧供給ポンプ9に接続され
ていて、該高圧供給ポンプ9から供給される燃料を前記
インジェクタ5,5,…に任意のタイミングで供給でき
るように高圧の状態で蓄えるものであり、その内部の燃
圧(コモンレール圧力)を検出するための燃圧センサ7
が配設されている。
【0037】前記高圧供給ポンプ9は、図示しない燃料
供給系に接続されるとともに、歯付ベルト等によりクラ
ンク軸10に駆動連結されていて、燃料をコモンレール
6に圧送するとともに、その燃料の一部を電磁弁を介し
て燃料供給系に戻すことにより、コモンレール6への燃
料の供給量を調節するようになっている。この電磁弁の
開度が前記燃圧センサ7による検出値に応じてECU4
0(後述)により制御されることによって、燃圧がエン
ジン1の運転状態に対応する所定値に制御される。
【0038】また、エンジン1の上部には、図示しない
が、吸気弁及び排気弁をそれぞれ開閉させる動弁機構が
配設されていて、各気筒2毎の吸気弁及び排気弁の閉弁
時期は、当該気筒2の実圧縮比、即ち、気筒2内に吸入
された気体が圧縮行程上死点において圧縮されたときの
実質的な圧縮比率が、略17以下になるように設定され
ている。一方、エンジン1の下部には、クランク軸10
の回転角度を検出するクランク角センサ11と、冷却水
の温度を検出するエンジン水温センサ13とが設けられ
ている。前記クランク角センサ11は、詳細は図示しな
いが、クランク軸端に設けた被検出用プレートとその外
周に相対向するように配置した電磁ピックアップとから
なり、前記被検出用プレートの外周部全周に亘って等間
隔に形成された突起部が通過する度に、パルス信号を出
力するものである。
【0039】エンジン1の一側(図の右側)の側面に
は、各気筒2の燃焼室4に対しエアクリーナ15で濾過
した空気(新気)を供給するための吸気通路16が接続
されている。この吸気通路16の下流端部にはサージタ
ンク17が設けられ、このサージタンク17から分岐し
た各通路がそれぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室
4に連通しているとともに、サージタンク17には吸気
の圧力状態を検出する吸気圧センサ18が設けられてい
る。
【0040】また、前記吸気通路16には、上流側から
下流側に向かって順に、外部からエンジン1に吸入され
る空気の流量を検出するホットフィルム式エアフローセ
ンサ19と、後述のタービン27により駆動されて吸気
を圧縮するブロワ20と、このブロワ20により圧縮し
た吸気を冷却するインタークーラ21と、バタフライバ
ルブからなる吸気絞り弁22とが設けられている。この
吸気絞り弁22は、弁軸がステッピングモータ23によ
り回動されて、全閉から全開までの間の任意の状態とさ
れるものであり、全閉状態でも吸気絞り弁22と吸気通
路16の周壁との間には空気が流入するだけの間隙が残
るように構成されている。
【0041】一方、エンジン1の反対側(図の左側)の
側面には、各気筒2の燃焼室4からそれぞれ燃焼ガス
(排気)を排出するように、排気通路26が接続されて
いる。この排気通路26の上流端部は各気筒2毎に分岐
して、それぞれ排気ポートにより燃焼室4に連通する排
気マニホルドであり、該排気マニホルドよりも下流の排
気通路26には上流側から下流側に向かって順に、排気
中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ29と、排気
流を受けて回転されるタービン27と、排気中の有害成
分(未燃HC、CO、NOx、煤等)を浄化可能な排気
浄化手段としての触媒コンバータ28とが配設されてい
る。触媒コンバータ28には触媒温度を検出する温度セ
ンサ38が設けられている。
【0042】前記タービン27と吸気通路16のブロワ
20とからなるターボ過給機30は、可動式のフラップ
31,31,…によりタービン27への排気の通路断面
積を変化させるようにした可変ターボ(以下VGTとい
う)であり、前記フラップ31,31,…は各々、図示
しないリンク機構を介してダイヤフラム32に駆動連結
されていて、そのダイヤフラム32に作用する負圧の大
きさが負圧制御用の電磁弁33により調節されること
で、該フラップ31,31,…の回動位置が調節される
ようになっている。尚、ターボ過給機は可変ターボでな
くてもよい。
【0043】前記排気通路26には、タービン27より
も排気上流側の部位に臨んで開口するように、排気の一
部を吸気側に還流させるための排気還流通路(以下EG
R通路という)34の上流端が接続されている。このE
GR通路34の下流端は吸気絞り弁22及びサージタン
ク17の間の吸気通路16に接続されていて、排気通路
26から取り出された排気の一部を吸気通路16に還流
させるようになっている。また、EGR通路34の途中
には、その内部を流通する排気を冷却するためのEGR
クーラ37(冷却手段)と、開度調節可能な排気還流量
調節弁(以下EGR弁という)35とが配置されてい
る。このEGR弁35は負圧応動式のものであり、前記
VGT30のフラップ31,31,…と同様に、ダイヤ
フラムへの負圧の大きさが電磁弁36によって調節され
ることにより、EGR通路34の断面積をリニアに調節
して、吸気通路16に還流される排気の流量を調節する
ものである。尚、前記EGRクーラ37はなくてもよ
い。
【0044】そして、前記各インジェクタ5、高圧供給
ポンプ9、吸気絞り弁22、VGT30、EGR弁35
等は、いずれも燃焼制御手段としてのコントロールユニ
ット(Electronic Contorol Unit:以下ECUという)
40からの制御信号を受けて作動する。一方、このEC
U40には、前記燃圧センサ7、クランク角センサ1
1、エンジン水温センサ13、吸気圧センサ18、エア
フローセンサ19、リニアO2センサ29、触媒温度セ
ンサ38等からの出力信号がそれぞれ入力され、さら
に、図示しないアクセルペダルの踏み操作量(アクセル
開度)を検出するアクセル開度センサ39からの出力信
号が入力される。
【0045】(エンジンの燃焼制御の概要)前記ECU
40によるエンジン1の基本的な制御は、主にアクセル
開度に基づいて基本的な目標燃料噴射量を決定し、イン
ジェクタ5の作動制御によって燃料の噴射量や噴射時期
を制御するとともに、高圧供給ポンプ9の作動制御によ
り燃圧、即ち燃量の噴射圧力を制御するというものであ
る。また、吸気絞り弁22やEGR弁35の開度の制御
によって燃焼室4への排気の還流割合を制御し、さら
に、VGT30のフラップ31,31,…の作動制御
(VGT制御)によって吸気の過給効率を向上させる。
【0046】具体的には、例えば図2の制御マップ(燃
焼モードマップ)に示すように、エンジン1の温間の全
運転領域のうちの相対的に低回転ないし低負荷側には、
予混合燃焼領域(H)が設定されていて、ここでは、図
3(a)〜(c)に模式的に示すように、インジェクタ5によ
り気筒2の圧縮行程中期から後期にかけて燃料を噴射さ
せ、予めできるだけ均質な混合気を形成した上で自着火
により燃焼させるようにしている(第1の運転状態)。
このような燃焼形態は、従来より予混合圧縮着火燃焼と
呼ばれており、気筒の1サイクル当たりの燃料噴射量が
あまり多くないときにその燃料の噴射時期を適切に設定
して、燃料を適度に広く分散させ且つ空気と十分に混合
した上で、自着火させて一斉に燃焼させるものである。
つまり、予混合圧縮着火燃焼は、予混合燃焼の割合が拡
散燃焼の割合よりも多い燃焼形態(第1の燃焼形態)で
ある。
【0047】尚、前記インジェクタ5による燃料の噴射
は、図3(a)に示すように1回で行うようにしてもよ
く、或いは同図(b)、(c)に示すように複数回に分けて行
うようにしてもよい。これは、気筒2の圧縮行程中期か
ら後期にかけて、即ち圧縮行程上死点近傍よりも気体の
圧力や密度状態が低い燃焼室4に燃料を噴射する場合
に、燃料噴霧の貫徹力が強くなり過ぎることを避けるた
めであり、従って、燃料噴射量が多いほど燃料噴射の回
数(分割回数)を増やすのが好ましい。
【0048】前記予混合圧縮着火燃焼の際には、EGR
通路34のEGR弁35を相対的に大きく開いて吸気通
路16に多量の排気を還流させるようにする。こうする
ことで、新気、即ち外部から供給される新しい空気に不
活性で熱容量の大きい排気が多量に混合され、これに対
して燃料の液滴及び蒸気が混合されることになるから、
予混合気自体の熱容量が大きくなるとともに、その中の
燃料及び酸素の密度は比較的低くなる。このことで、着
火遅れ時間を延長して空気と排気と燃料とを十分に混合
した上で、TDC近傍の最適なタイミングで着火させて
燃焼させることができる。
【0049】図4に示すグラフは、エンジン1の低負荷
域でBTDCの所定のクランク角(例えばBTDC30
°CA)に燃料を噴射して予混合圧縮着火燃焼させたと
きに、熱発生のパターンがEGR率(吸気量(新気量と
還流排気量とを合わせた量)に対する還流排気量の割
合)に応じてどのように変化するかを示した実験結果で
ある。同図に仮想線で示すように、EGR率が低いとき
には燃料はTDCよりもかなり進角側で自着火してしま
い、サイクル効率の低い過早な熱発生のパターンとな
る。一方、EGR率が高くなるに連れて自着火のタイミ
ングは徐々に遅角側に移動し、図に実線で示すようにE
GR率が略55%のときには、熱発生のピークが略TD
Cになってサイクル効率の高い熱発生パターンとなるま
た、前記図4のグラフによれば、EGR率が低いときに
は熱発生のピークがかなり高くなっていて、燃焼速度の
高い激しい燃焼であることが分かる。このときには燃焼
に伴うNOxの生成が盛んになり、また、極めて大きな
燃焼音が発生する。一方、EGR率が高くなるに連れて
熱発生の立ち上がりが徐々に緩やかになり、そのピーク
も低下する。これは、前記の如く混合気中に多量の排気
が含まれる分だけ、燃料及び酸素の密度が低くなること
と、その排気によって燃焼熱が吸収されることとによる
と考えられる。そして、そのように熱発生の穏やかない
わゆる低温燃焼ではNOxの生成が大幅に抑制される。
【0050】図5に示すグラフは、前記の実験において
EGR率の変化に対する燃焼室4の空気過剰率λ、排気
中のNOx及び煤の濃度の変化を示し、同図(a)によれ
ば、この実験条件においてEGR率が0%のときには空
気過剰率λがλ≒2.7と大きく、EGR率が大きくな
るに従い空気過剰率λが徐々に小さくなって、EGR率
が略55〜60%のときに略λ=1になっている。すな
わち、排気の還流割合が多くなるに連れて混合気の平均
的な空気過剰率λが1に近づくのであるが、たとえ燃料
及び空気の比率が略λ=1であっても、それらの周囲に
は多量の排気が存在しているから、燃料や酸素の密度自
体はあまり高くはないのである。従って、同図(b)に示
すように、排気中のNOxの濃度はEGR率の増大とと
もに一様に減少していて、EGR率が45%以上ではN
Oxは殆ど生成しなくなる。
【0051】一方、煤の生成については、同図(c)に示
すように、EGR率が0〜略30%では殆ど煤が見られ
ず、EGR率が略30%を超えると煤の濃度が急激に増
大するが、EGR率が略50%を超えると再び減少し、
EGR率が略55%以上になると略零になる。これは次
のように考えられる。まず、EGR率が低いときは吸気
中には燃料に対して酸素が過剰に存在することから、着
火遅れ時間が短くても煤は殆ど生成しない。これに対し
て、EGR率が増大してくると、吸気中の酸素が少なく
なるにも拘わらず、着火遅れ時間は酸素と燃料とが十分
に混合する時間が得られるほどには長くならず、そのた
めに煤の生成量が急増する。一方、EGR率が略55%
以上になると、上述したように、着火遅れ時間がかなり
長くなるため、新気と排気と燃料とが十分に混合された
上で燃焼するようになり、煤は殆ど生成しない。
【0052】以上、要するに、この実施形態では、エン
ジン1が低負荷側の予混合燃焼領域(H)にあるとき
に、燃料を比較的早期に噴射するとともに、EGR弁3
5の開度を制御して、EGR率を予め設定した所定値
(第1設定値:前記の実験例では略55%くらい)以上
とすることで、NOxや煤の殆ど生成しない予混合燃焼
が主体の低温燃焼を実現するものである。
【0053】これに対し、前記図2の制御マップに示す
ように、予混合燃焼領域(H)以外の高回転ないし高負
荷側の運転領域(D)では、混合気の拡散燃焼の割合が
予混合燃焼の割合よりも多い一般的なディーゼル燃焼を
行うようにしている(第2の運転状態)。すなわち、図
3(d)に示すように、インジェクタ5により主に気筒2
のTDC近傍で燃料を噴射させて、初期の予混合燃焼に
続いて大部分の混合気を拡散燃焼させるようにする(以
下、この運転領域(D)を拡散燃焼領域というが、この
運転領域では気筒2の圧縮行程上死点近傍以外でも燃料
を噴射するようにしてもよい)。このように拡散燃焼が
主体の燃焼形態により、高い出力が得られる。
【0054】その際、EGR弁35の開度は、前記した
予混合燃焼領域(H)に比べれば小さくして、EGR率
が予め設定した所定値(第2設定値)以下になるように
する。これは、拡散燃焼が主体の一般的なディーゼル燃
焼において煤の増大を招かない範囲で、NOxの生成を
できるだけ抑制するように設定されていて、具体的には
図6のグラフに一例を示すように、拡散燃焼領域(D)
におけるEGR率の上限は、例えば略30〜略40%の
範囲に設定されている。また、エンジン1の負荷が高く
なるほど気筒2への新気の供給量を確保する必要がある
ので、高負荷側ほどEGR率は低くなり、しかも、高速
ないし高負荷側ではターボ過給機30による吸気の過給
圧が高くなるので、排気の還流は実質的に行われない。
【0055】ところで、予混合圧縮着火燃焼(第1の燃
焼形態)は、上述の如くエンジン低回転ないし低負荷側
で実行される低温燃焼であるから、排気温度が低くなり
がちである。従って、例えば、エンジン始動後、当該予
混合圧縮着火燃焼を続けていると、触媒コンバータ28
の温度が低いままになり、触媒の早期活性が図れない。
そこで、本実施形態では、そのような場合は、エンジン
の運転状態が第1の運転状態である予混合燃焼領域
(H)にあっても、拡散燃焼を主体とするディーゼル燃
焼(第2の燃焼形態)を選択し、排気温度を上昇させる
ことができるようにしている。さらには、そのディーゼ
ル燃焼開始後の膨張行程又は排気行程において燃料の後
噴射を実行することにより、排気温度を上昇させること
ができるようにしている。
【0056】まず、主噴射開始時期と排気温度、エミッ
ション等との関係を図7〜図12に示すデータに基づい
て説明する。
【0057】このデータは、エンジン回転数を1500
rpmとし、スワールコントロールバルブを閉(スワー
ル強化)として、燃料を一括噴射したとき及び3分割噴
射したときの各々について、EGR率を0%、30%及
び50%の3種類に変え、VGTを開又は閉とし、燃圧
(コモンレール圧力)Pfを適宜調節して得たものであ
る。3分割噴射については、燃料を3等分とし、且つ各
分割噴射時間を同じとして実行した。図に記載の噴射開
始時期は、分割噴射の場合は最後の(3段目の)噴射開
始時期である。また、横軸(噴射開始時期)の数値はク
ランク角度であり、「0」はTDC、「−」はBTDC
であることを意味する。
【0058】図7は主噴射開始時期と排気温度との関係
を示す。噴射開始時期が遅角するに従って予混合燃焼の
割合が少なくなり、つまりは拡散燃焼の割合が多くなっ
ていき、いわゆるエンジンの燃焼性が良くなり、排気温
度が高くなっていくことがわかる。
【0059】図8は主噴射開始時期と煤排出量との関係
を示す。一括噴射の場合は、EGR率が低いときは噴射
開始時期が遅角しても煤排出量の増大は見られないが、
EGR率が50%では、噴射開始時期の遅角に伴って拡
散燃焼の割合が高くなっていくと、酸素量が少ないこと
から、燃料と酸素との混合が不充分になり、煤排出量が
多くなっている。3分割噴射の場合も、EGR率50%
では燃圧が高い場合に噴射開始時期が−10度まで遅角
すると(ディーゼル燃焼になると)煤排出量が多くなっ
ている。
【0060】図9は主噴射開始時期と排気中のHC量と
の関係を示す。一括噴射及び分割噴射のいずれにおいて
も、EGR率が低いときは噴射開始時期の遅角に伴って
HC量が減る傾向にある。これは、噴射開始時期の遅角
に伴って拡散燃焼の割合が高くなり、燃焼性が良くなる
ためと考えられる。但し、EGR率が高くなると、相対
的に酸素量少なくなるため、HCの減少傾向が鈍化して
いる。
【0061】図10は主噴射開始時期と排気中のCO量
との関係を示す。HCの場合と同じく、一括噴射及び分
割噴射のいずれにおいても、EGR率が低いときは噴射
開始時期の遅角に伴ってCO量が減る傾向にある。但
し、EGR率が高くなると、噴射開始時期の遅角に伴っ
てCO量が増大する傾向が見られる。
【0062】図11は主噴射開始時期と排気中のNOx
量との関係を示す。一括噴射及び分割噴射のいずれにお
いても、噴射開始時期の遅角に伴ってNOx量が増大す
る傾向にある。これは、噴射開始時期の遅角に伴って拡
散燃焼の割合が高まって熱発生率のピークが高くなり、
燃焼温度が高まるためと考えられる。噴射開始時期が−
20度よりもさらに遅角すると、NOx量が低下してい
るが、これは、予混合燃焼よりも拡散燃焼の割合が多く
なり、熱発生率のピークの立上りが鈍化するためと考え
られる。
【0063】図12は主噴射開始時期と正味平均有効圧
との関係を示す。噴射開始時期の遅角に伴って正味平均
有効圧が高くなり、燃費が良くなることがわかる。
【0064】以上の点を踏まえ、本実施形態において
は、予混合圧縮着火燃焼の実行中(第1の運転状態)に
おいて、温度センサ38によって検出される触媒コンバ
ータ28の触媒温度が所定活性温度(例えば当該触媒の
ピークのHC浄化率の半分の浄化率を示す温度)に達し
ていないときには、主噴射時期をTDC付近まで遅角さ
せるとともに、排気還流量を第2設定値以下として、拡
散燃焼を主体とするディーゼル燃焼(第2の燃焼形態)
を生ずるようにし、さらに、圧縮行程上死点後10度〜
60度のクランク角度において燃料の後噴射を実行する
ようにしている。また、前記触媒温度が前記所定活性温
度以上に上昇したときはディーゼル燃焼から予混合圧縮
着火燃焼に戻るようにしている。
【0065】次に前記後噴射時期の好ましい態様につい
て説明する。後噴射時期については、前記ディーゼル燃
焼による熱発生率が所定値以下になったとき、特にその
熱発生率が略零になった時点又は該時点から所定期間内
に後噴射燃料の燃焼が開始するように設定することが好
ましい。ディーゼル燃焼では、その大部分が拡散燃焼で
あり、この拡散燃焼で生ずる煤の再燃焼を図る上で有利
になるからである。
【0066】前記熱発生率が零になる時点は、エンジン
運転状態(目標トルクTr及びエンジン回転数Ne)に
応じて設定される主噴射の開始時期、主噴射量、噴射の
形態(一括か分割か)、最後の噴射時期等によって異な
る。また、後噴射を行なっても、直ちに着火するわけで
はなく、着火遅れがあり、さらにインジェクタ5に対す
る駆動信号の出力から実際に開弁するまでには駆動遅れ
がある。
【0067】従って、予め実験により各エンジン運転状
態での主燃焼(この場合はディーゼル燃焼)の熱発生率
が零になる時点を求め、これに上記着火遅れ及び駆動遅
れを考慮して、当該熱発生率が所定値以下になったと
き、又はその熱発生率が略零になった時点、又は該時点
から所定期間内に後噴射燃料の燃焼が開始するように、
後噴射時期を定め、これをエンジン運転状態に対応させ
てマップ化して電子的に格納し、このマップにより後噴
射時期をエンジン運転状態に応じて設定すればよい。
【0068】上記各エンジン運転状態での主燃焼の熱発
生率が零になる時点は、実験によって各エンジン運転状
態での各クランク角毎の筒内圧力データを求め、これに
基づいて熱発生率を熱力学的に計算しグラフ化すること
によって求めることができる。
【0069】このようにして求めた熱発生率を図示する
と、図13のようになり、燃料の主噴射による燃焼に応
じて熱発生率が正の方向に大きな値を示した後、その拡
散燃焼の終了に応じて熱発生率が0となるため、この熱
発生率が略0となる時点t1を基準に後噴射時期を定め
ることになる。
【0070】また、後噴射燃料の着火遅れ時間τfは、
エンジンの排気量、燃料噴射圧力等によって異なるが、
排気量1〜3Lクラスのエンジンでは、燃料噴射圧力が
50〜200MPa程度のときは0.4〜0.7ms程
度となる。
【0071】圧縮行程上死点付近で燃料を一括噴射して
主燃焼(通常のディーゼル燃焼)を行なわせる場合、実
験によると、エンジン回転数Neが1500rpm、平
均有効圧力Peが0.3MPaの低回転低負荷運転時で
は、後噴射時期をATDC30゜CAとしたときに、主
燃焼の熱発生率が略零になった時点で当該後噴射燃料が
着火燃焼した。後噴射燃料の着火遅れ時間τfは約0.
6msである。エンジン回転数Neが2000rpm、
平均有効圧力Peが0.57MPaの中回転中負荷運転
時では、後噴射時期をATDC35゜CA(クランク
角)としたときに、主燃焼の熱発生率が略零になった時
点で当該後噴射燃料が着火燃焼した。後噴射燃料の着火
遅れ時間τfは約0.5msである。エンジン回転数N
eが2500rpm、平均有効圧力Peが0.9MPa
の高回転高負荷運転時では、後噴射時期をATDC48
゜CA(クランク角)としたときに、主燃焼の熱発生率
が略零になった時点で当該後噴射燃料が着火燃焼した。
後噴射燃料の着火遅れ時間τfは約0.7msである。
【0072】また、前記エンジンの中回転中負荷運転時
のディーゼル燃焼において、後噴射時期、後噴射量を種
々に変化させて排気温度を測定する実験を行なったとこ
ろ、図14に示すように、主燃焼の熱発生率が略零にな
るATDC35゜CA付近に後噴射時期を設定したとき
に排気温度が最も高くなった。また、後噴射時期がAT
DC35゜CAよりも遅くなってくると、排気温度が緩
やかに低下することがわかった。また、後噴射量が多い
ほど排気温度が高くなることがわかった。
【0073】また、後噴射時期と排気中のHC量との関
係を調べると、前記エンジンの低回転低負荷運転時に
は、図15(a)に示すように、ATDC30゜CA付
近まではHC量が急上昇することがなく、前記エンジン
の中回転中負荷運転時には、図15(b)に示すよう
に、ATDC35゜CA付近まではHC量が急上昇する
ことがなかった。前記エンジンの高回転高負荷運転時に
は、図15(c)に示すように、ATDC45゜CA付
近まではHC量が急上昇することがなかった。
【0074】従って、以上から、主燃焼の熱発生率が略
零になる時点又はその時点から所定期間内に後噴射燃料
の燃焼が開始するようにすると、排気中のHC量の増大
を避けながら、排気温度を高めることができることがわ
かる。
【0075】なお、燃焼室4内の温度を検出する温度セ
ンサの検出信号、燃焼光センサの検出信号、または燃焼
室4内に存在する電荷が偏った反応性の高い水素や炭化
水素等の量を検出するセンサの検出信号等に応じて上記
拡散燃焼状態を判別する燃焼状態判別手段を設け、この
燃焼状態判別手段において、燃料の主噴射後の温度が所
定温度以下の低温となった否か、燃焼光の発光がなくな
ったか否か、または水素や炭化水素の量が急減したか否
か等を判別することにより、上記拡散燃焼による熱発生
率が零になる時点を求め、これに基づいて次の燃焼サイ
クルでの後噴射時期を設定するように構成してもよい。
さらに、温度センサによって検出された気筒内温度から
断熱膨張温度を減算した値の微分値を求め、この微分値
がマイナスの値から0になった時点を検出することによ
って上記拡散燃焼による熱発生率が零になる時点を判別
するようにしてもよい。
【0076】(燃料噴射制御)以下に、前記ECU40
によるインジェクタ5の具体的な制御手順を図16のフ
ローチャート図に基づいて説明する。スタート後のステ
ップSA1において、少なくとも、燃圧センサ7からの
信号、クランク角センサ11からの信号、吸気圧センサ
18からの信号、エアフローセンサ19からの信号、温
度センサ38、アクセル開度センサ39からの信号等を
入力する(データ入力)。続いて、ステップSA2にお
いて、クランク角信号から求めたエンジン回転速度Ne
とアクセル開度Accとに基づいてエンジン1の目標トル
クTrを目標トルクマップから読み込んで、設定する。
この目標トルクマップは、アクセル開度Accとエンジン
回転速度Neとに対応する最適な値を予め実験的に求め
て設定して、ECU40のメモリに電子的に格納したも
のであり、アクセル開度Accが大きいほど、またエンジ
ン回転速度Neが高いほど、目標トルクTrが大きくなっ
ている。
【0077】続いて、ステップSA3において、燃焼モ
ードマップ(図2参照)を参照してエンジン1の燃焼モ
ードを判定する。すなわち、目標トルクTrとエンジン
回転速度Neとに基づいてエンジン1が予混合燃焼領域
(H)にあるかどうか判定する。予混合燃焼領域(H)
であるときはステップSA4に進み、触媒温度センサ3
8の出力に基づいて触媒温度Tcatが前記所定活性温度
Tcatoよりも低いか否かを判定する。なお、エンジンの
運転状態から触媒温度Tcatを推定するようにしてもよ
く、また、触媒温度に代えてエンジン水温を採用しても
よい。
【0078】ステップSA4において、触媒温度Tcat
が所定活性温度Tcatoよりも低いと判定されたときはス
テップSA5に進み、目標トルクTrとエンジン回転速
度Neとに基づいて、噴射量マップから基本噴射量QEBL
を読み込んで設定し、また、噴射時期マップから基本噴
射時期IEBL(インジェクタ5の針弁が開くクランク角
位置)を読み込んで設定する。
【0079】前記噴射量マップや噴射時期マップは、目
標トルクTrとエンジン回転速度Neとに対応する最適な
値を予め実験的に求めて設定して、ECU40のメモリ
に電子的に格納したものであり、前記噴射量マップにお
ける基本噴射量QEBLの値は、予混合燃焼領域(H)に
おいてアクセル開度Accが大きいほど、またエンジン回
転速度Neが高いほど大きくなっている。
【0080】また、前記噴射時期マップにおいて基本噴
射時期IEBLの値は、予混合燃焼領域(H)において、
燃料噴射の終了時期(インジェクタ5の針弁が閉じるク
ランク角位置)が圧縮上死点後の所定の時期になって、
燃料噴霧が良好に拡散燃焼するように燃料噴射量や燃圧
(コモンレール圧)に対応付けて設定されている。
【0081】続くステップSA6では燃料の後噴射量Q
fuL及び後噴射時期IfuLを設定する。後噴射量QfuLは
主噴射と後噴射とを合わせた総燃料噴射量に占める後噴
射量の割合が10%〜20%程度となるように、且つエ
ンジン回転数が高くなるほど又はエンジン負荷が高くな
るほど後噴射量の割合を多くなるように設定される。エ
ンジン回転数が高くなるほど又はエンジン負荷が高くな
るほど煤の生成量が増大するからである。後噴射時期I
fuLは、主燃焼による熱発生率が略零になった時点で後
噴射燃料の燃焼が開始するように、エンジン運転状態に
応じて予め設定された後噴射時期マップにより設定され
る。
【0082】そうして、続くステップSA7で、前記ス
テップSA5,SA6で設定された噴射量及び噴射時期
による主噴射及び後噴射を実行する。
【0083】一方、ステップSA4において、触媒温度
Tcatが所定活性温度Tcato以上であると判定されたと
きはステップSA8に進み、目標トルクTrとエンジン
回転速度Neとに基づいて、噴射量マップから基本噴射
量QHHを読み込み、噴射時期マップから基本噴射時期I
HHを読み込んで、3分割噴射の各段の噴射量QHH1、QH
H2及びQHH3、並びにそれら各段の噴射開始時期IHH1、
IHH2及びIHH3を設定する。
【0084】前記噴射量マップや噴射時期マップは、目
標トルクTrとエンジン回転速度Neとに対応する最適な
値を予め実験的に求めて設定して、ECU40のメモリ
に電子的に格納したものであり、前記噴射量マップにお
ける基本噴射量QHHの値は、予混合燃焼領域(H)にお
いてアクセル開度Accが大きいほど、またエンジン回転
速度Neが高いほど大きくなっている。
【0085】また、前記噴射時期マップにおいて基本噴
射時期IHHの値は、予混合燃焼領域(H)においてアク
セル開度Accが大きいほど、またエンジン回転速度Neが
高いほど進角側になっていて、燃料噴霧の殆どが空気と
十分に混合されてから燃焼するよう、気筒2の圧縮行程
における所定のクランク角範囲(例えばBTDC90°
〜20°CA)において燃料噴射量や燃圧に対応付けて
設定されている。
【0086】また、3分割噴射のための各噴射量は等量
(QHH1=QHH2=QHH3=1/3・QHH)としている。1段
目の噴射開始時期は基本噴射時期とし(IHH1=IH
H)、また、所定の噴射休止間隔をおいて2段目及び3
段目の各噴射開始時期IHH2,IHH3が設定される。この
場合、3段目の噴射開始時期IHH3は、排気中のHCの
増量が図れるようにBTDC30゜CA〜20゜CAと
なるように設定される。
【0087】そうして、ステップSA7に進み、前記ス
テップSA8で設定された噴射量及び噴射時期による主
噴射を実行する。
【0088】また、ステップSA3において、エンジン
1が拡散燃焼領域(D)にあると判定されたときはステ
ップSA9に進み、目標トルクTrとエンジン回転速度
Neとに基づいて、噴射量マップから基本噴射量QEBHを
読み込んで設定し、また、噴射時期マップから基本噴射
時期IEBHを読み込んで設定する。
【0089】前記噴射量マップや噴射時期マップは、目
標トルクTrとエンジン回転速度Neとに対応する最適な
値を予め実験的に求めて設定して、ECU40のメモリ
に電子的に格納したものである。前記噴射量マップにお
ける基本噴射量QEBHの値は、拡散燃焼領域(D)にお
いてもアクセル開度Accが大きいほど、またエンジン回
転速度Neが高いほど大きくなっている。前記噴射時期
マップにおいて基本噴射時期IEBHの値は、予混合燃焼
領域(H)において、燃料噴射の終了時期が圧縮上死点
後の所定の時期になって、燃料噴霧が良好に拡散燃焼す
るように燃料噴射量や燃圧に対応付けて設定されてい
る。
【0090】続くステップSA10ではエンジン回転速
度Neが所定値Neoよりも大きいか否かを判定し、大き
いときはステップSA11に進んで燃料の後噴射量Qfu
H及び後噴射時期IfuHを設定する。ステップSA10で
エンジン回転速度Neが所定値Neo以下であると判定さ
れたときはステップSA12に進んで目標トルクTrが
所定値Troよりも大きいか否かを判定する。目標トルク
Trが所定値Troよりも大きいときはステップSA11
に進んで燃料の後噴射量QfuH及び後噴射時期IfuHを設
定し、目標トルクTrが所定値Tro以下であるときは後
噴射量及び後噴射時期を設定することなくステップSA
7に進む。すなわち、エンジン1が拡散燃焼領域(D)
においても高回転又は高負荷の領域にあるときは後噴射
を実行するものである。
【0091】後噴射量QfuHは主噴射と後噴射とを合わ
せた総燃料噴射量に占める後噴射量の割合が10%前後
となるように、且つエンジン回転数が高くなるほど又は
エンジン負荷が高くなるほど後噴射量の割合を多くなる
ように設定される。エンジン回転数が高くなるほど又は
エンジン負荷が高くなるほど煤の生成量が増大するから
である。
【0092】但し、この場合の総燃料噴射量に占める後
噴射量の割合は、燃費の悪化を避けるために、触媒温度
Tcatが所定活性温度Tcatoよりも低いときに設定され
る後噴射量(ステップSA6)が総燃料噴射量に占める
割合よりも少なくされる。逆に言えば、触媒温度Tcat
が所定活性温度Tcatoよりも低いときは、触媒の早期活
性化を図るべく、後噴射量の割合が多くされるものであ
る。
【0093】後噴射時期IfuHは、主燃焼による熱発生
率が略零になった時点で後噴射燃料の燃焼が開始するよ
うに、エンジン運転状態に応じて予め設定された後噴射
時期マップにより設定される。
【0094】図16に示す制御フローによって、エンジ
ン1が予混合燃焼領域(H)にあるときは、燃料が吸気
行程ないし圧縮行程で噴射され、エンジン1が拡散燃焼
領域(D)にあるとき又は触媒温度Tcatが所定活性温
度Tcatoよりも低いときは燃料が圧縮行程上死点付近で
噴射されるように、インジェクタ5の作動を制御する燃
料噴射制御部(燃料噴射制御手段)が構成されている。
【0095】(EGR制御)次に、前記ECU40によ
るEGR制御の具体的な手順について、図17のフロー
チャート図に基づいて説明すると、まず、スタート後の
ステップSB1において、少なくとも、燃圧センサ7か
らの信号、クランク角センサ11からの信号、吸気圧セ
ンサ18からの信号、エアフローセンサ19からの信
号、アクセル開度センサ39からの信号等を入力する
(データ入力)。続くステップSB2では、前記燃料噴
射制御フローのステップSA3と同様にしてエンジン1
の燃焼モードを判定し、エンジン1が予混合燃焼領域
(H)であるときはステップSB3に進み、前記燃料噴
射制御フローのステップSA4と同様にして触媒温度T
catが所定活性温度Tcatoよりも低いか否かを判定す
る。触媒温度Tcatが所定活性温度Tcato以上であると
判定されたときはステップSB4に進み、ECU40の
メモリに電子的に格納されているEGRマップからEG
R弁35の開度に関する予混合燃焼用の目標値EGRHを読
み込んで設定する。続いて、ステップSB5でECU4
0からEGR弁35のダイヤフラムの電磁弁37に制御
信号を出力して(EGR弁の作動)、しかる後にリター
ンする。
【0096】一方、前記ステップSB2においてエンジ
ン1が拡散燃焼領域(D)にあると判定したとき、或い
はステップSB3において触媒温度Tcatが所定活性温
度Tcatoよりも低いと判定したときはステップSB6に
進み、前記EGRマップからEGR弁35の開度に関す
る拡散燃焼用の目標値EGRDを読み込んで設定し、ステッ
プSB4に進んで、EGR弁35を作動させ、しかる後
にリターンする。
【0097】前記EGRマップは、目標トルクTrqとエ
ンジン回転速度Neとに対応する最適な値を予め実験的
に求めて設定したものであり、図18に示すように、E
GR弁35の開度の目標値EGRを予混合燃焼領域(H)
及び拡散燃焼領域(D)の各々においてアクセル開度Ac
cが大きいほど、またエンジン回転速度Neが高いほど小
さくなるように設定したものである。
【0098】より詳しくは、エンジン1が予混合燃焼領
域(H)にあるときには、EGR弁35を相対的に大き
く開いて、EGR通路34により多量の排気を吸気通路
16に還流させ、これによりEGR率EGRHを第1設定値
以上として良好な予混合圧縮着火燃焼を実現する。一
方、エンジン1が拡散燃焼領域(D)にあるとき、或い
は触媒温度Tcatが所定活性温度Tcatoよりも低いとき
は、エンジン1を一般的なディーゼル燃焼の状態にし、
このときにはEGR弁35の開度を相対的に小さくし
て、EGR率EGRを第2設定値以下の適度な状態とする
ことで、煤の増大を招くことなく、NOxの生成を抑制
するようにしている。
【0099】図17に示す制御フローによって、エンジ
ン1が予混合燃焼領域(H)にあるときに、EGR値が
第1設定値以上になるようにEGR弁35の開度を制御
する一方、拡散燃焼領域(D)にあるとき又は触媒温度
Tcatが所定活性温度Tcatoよりも低いときはEGR値
が前記第1設定値よりも少ない第2設定値以下になるよ
うに、EGR弁35の開度を制御するEGR制御部(排
気還流制御手段)が構成されている。
【0100】(作用効果)次に、この実施形態に係るデ
ィーゼルエンジン1の燃焼制御装置Aの作用効果を説明
すると、まず、エンジン1が予混合燃焼領域(H)にあ
るときには、EGR弁35が相対的に大きく開かれ、タ
ービン27上流の排気通路26から取り出された排気が
EGR通路34によって吸気通路16に還流される。そ
して、そのように還流する多量の排気が外部から供給さ
れる新気と共に気筒2内の燃焼室4へ供給されて、実E
GR率EGRが第1設定値(例えば55%)以上の状態に
なる。
【0101】また、前記気筒2内の燃焼室4に臨むイン
ジェクタ5により燃料が当該気筒2の圧縮行程の所定ク
ランク角範囲(BTDC90°〜20°CA)にて分割
噴射され、この燃料が燃焼室4において比較的広く分散
し且つ吸気(新気及び還流排気)と十分に混合して、均
質度合いの高い混合気を形成する。この混合気中では、
特に燃料蒸気や酸素の密度が高い部分で比較的低温度の
酸化反応(いわゆる冷炎)が進行するが、混合気中には
空気(窒素、酸素等)と比べて熱容量の大きい排気(二
酸化炭素等)が多量に混在していて、その分、燃料及び
酸素の密度が全体的に低くなっており、しかも、冷炎の
反応熱は熱容量の大きい二酸化炭素等に吸収されること
になるので、高温の酸化反応への移行(いわゆる着火)
は抑制されて、着火遅れ時間が長くなる。
【0102】そして、気筒2の圧縮上死点近傍に至り、
燃焼室4の気体の温度がさらに上昇し且つ燃料及び酸素
の密度が十分に高くなると、混合気は一斉に着火して燃
焼する。この際、混合気中の燃料蒸気と空気及び還流排
気とは既に十分に均一に分散しており、特に燃料の密度
が高い部分では冷炎反応が進行しているから、混合気中
には燃料の過濃な部分が殆ど存在せず、従って、煤の生
成は見られない。
【0103】また、前記の如く混合気中の燃料蒸気の分
布が均一化されていて、さらに多量の二酸化炭素等が均
一に分散して存在することから、この混合気全体が一斉
に燃焼してもその内部で局所的に急激な熱発生の起こる
ことがなく、さらに、燃焼熱は周囲の二酸化炭素等によ
って吸収されることになるから、燃焼温度の上昇が抑え
られて、NOxの生成が大幅に抑制される。
【0104】そうして、エンジン1が予混合燃焼領域
(H)にあるときでも、触媒温度Tcatが所定活性温度
Tcatoよりも低いときは、インジェクタ5により燃料が
TDC近傍で燃焼室4に噴射され、初期の予混合燃焼に
続いて良好な拡散燃焼状態になる(一般的なディーゼル
燃焼)。また、EGR弁35の開度は相対的に小さくさ
れ、適度な分量の排気の還流によってNOxや煤の生成
が抑制される。そうして、この拡散燃焼を主体とするデ
ィーゼル燃焼により、排気温度が高くなる。また、後噴
射される燃料が着火燃焼することにより、排気温度が上
昇する。よって、触媒コンバータ28の触媒温度の速や
かな上昇が図れ、排気の浄化に有利になる。しかも、後
噴射によって排気中のHC量の低減が図れる。
【0105】また、後噴射時期IfuLの制御により、拡
散燃焼による熱発生率が所定値以下になったときに、特
に、主燃焼の熱発生率が略零になった時点又は該時点か
ら所定期間内に、後噴射燃料の燃焼が開始するから、拡
散燃焼によって生ずる煤の再燃焼を促してその量を低減
することができる。また、前記拡散燃焼が終了する頃に
は煤が筒内で偏在せず酸素との接触が比較的良好なもの
となるために、後噴射燃料による煤の再燃焼が効率良く
行なわれることになる。しかも、このような比較的遅い
時期の後噴射であれば、筒内温度が下がっているから、
煤核の生成、成長、凝縮を生ずることが避けられる。
【0106】一方、触媒温度Tcatが所定活性温度Tcat
o以上になったときは、拡散燃焼を主体とする燃焼から
予混合燃焼を主体とする燃焼に移行するから、燃料と酸
素及び排気との混合が十分に進むことになり、煤の発生
量を低減する上で有利になる。また、主噴射時期の進角
により排気中のHC量が増大し、後噴射がされないから
排気中のHC量が増大するが、これは、前記触媒でのH
Cの酸化反応を活発にして該触媒を活性温度に維持する
上で有利に働くことになる。
【0107】一方、エンジン1が拡散燃焼領域(D)に
あるときは、インジェクタ5により燃料がTDC近傍で
燃焼室4に噴射され、初期の予混合燃焼に続いて良好な
拡散燃焼状態になる(一般的なディーゼル燃焼)。この
ときは、EGR弁35の開度は相対的に小さくされ、適
度な分量の排気の還流によってNOxや煤の生成が抑制
されるとともに、排気の還流割合が所定以下とされるこ
とで(実EGR率≦第2設定値)、新しい空気の供給量
が確保されて、十分な出力が得られるようになる。
【0108】また、エンジン1が拡散燃焼領域(D)の
高回転又は高負荷側の運転状態にあるときは、拡散燃焼
による熱発生率が略零になるころに後噴射燃料の燃焼が
開始する。これにより、当該拡散燃焼によって生ずる煤
の再燃焼が図れ、煤排出量が低減する。
【0109】(燃焼形態の変更(移行)について)上述
の如くエンジンの燃焼形態を予混合圧縮着火燃焼(第1
の燃焼形態)とディーゼル燃焼(第2の燃焼形態)との
間で切換えるようにした場合、その切換えの際に過渡的
に排気の状態が悪化したり、大きな騒音を生じるという
問題がある。すなわち、例えば、予混合圧縮着火燃焼か
らディーゼル燃焼に切換えるときには、EGRによる排
気の還流量を減少させてEGR率が第1設定値以上の状
態から第2設定値以下の状態へと変更するのであるが、
この排気還流量の調節にはある程度の時間が必要なの
で、仮に燃料の噴射態様だけを直ちにディーゼル燃焼の
ためのTDC近傍での噴射に切換えると、図19(a)
に示すようにEGR率の過大な状態で拡散燃焼が主体の
燃焼が行われることになり、煤の生成が著しく増大する
のである。
【0110】反対にディーゼル燃焼から予混合圧縮着火
燃焼に切換えるときに、吸気中の還流排気の割合が十分
に高くない状態で燃料噴射態様を早期噴射に切換える
と、予混合気が過早なタイミングで一斉に着火して、燃
焼音が極めて大きくなるとともに、NOxの生成量が急
増しさらに図20(a)に示すように煤の生成量も増大
することになる。
【0111】この問題に対しては次のように対策すれば
よい。 (1) 予混合圧縮着火燃焼形態からディーゼル燃焼形態に
移行するときには、まずEGR弁35の開度を小さくし
て排気の還流量を減少させ、これによりEGR率が低下
して第1設定値と第2設定値との間の所定値以下になっ
たときに、燃料の噴射態様を早期噴射からTDC近傍で
の噴射に切換えるようにする。すなわち、図19(b)に
示すように、高EGR率側において2つの燃焼形態にお
ける煤の生成量が略同じになるEGR率を目安として、
それよりも少しだけ高いEGR率EGR1のときに燃料の噴
射態様を切換えることで、同図(a)と比較して煤の濃度
を大幅に低減することができる。
【0112】また、エンジン1が拡散燃焼領域(D)か
ら予混合燃焼領域(H)に移行するときにも、まずEG
R弁35の開度を大きくして排気の還流量を増大させ、
これによりEGR率が高くなって第1設定値と第2設定
値との間の所定値よりも大きくなったときに、燃料の噴
射態様をTDC近傍での噴射から早期噴射に切換えるよ
うにする。すなわち、図20(b)に示すように、2つの
燃焼状態における煤の生成量が略同じになるEGR率よ
りも少しだけ低いEGR率EGR2のときに燃料の噴射態様
を切換えることで、同図(a)と比較して煤の濃度を大幅
に低減することができる。このときには予混合気の過早
着火も抑制されるので、NOxの生成量が急増するとと
もなく、また、過大な燃焼音の発生も回避される。
【0113】尚、前記2つの所定値EGR1,EGR2は、燃焼
室4への排気の還流状態が燃料噴射態様を切換えるのに
適した所定の状態になったことを判定するための基準と
なるものであり、以下、切換EGR率と呼ぶことにす
る。また、2つの所定値EGR1,EGR2を少しだけ異ならせ
ているのは、制御のハンチングを防止するためである
が、EGR1=EGR2とすることも可能である。さらに、この
実施形態では、主に煤の生成量に着目して、エンジン1
の運転状態の移行時に煤の生成を最も効果的に抑えられ
るように、前記切換EGR率の値EGR1,EGR2を設定して
いるが、これに限らず、騒音が最も小さくなるように設
定することも可能である。
【0114】上述の如き噴射態様の切換えを行なうため
には実際のEGR率EGRを検出するEGR率検出手段を
設けることになる。そのためには、例えば、エアフロー
センサ19からの信号に基づいて求められる吸入空気量
と、リニアO2センサ29からの信号に基づいて求めら
れる酸素濃度と、目標燃料噴射量とに基づいて所定の計
算により推定するようにすればよい。 (2) 予混合圧縮着火燃焼形態からディーゼル燃焼形態に
切り換えるときは、前記EGR率が前記第1の設定値以
上の状態から前記第2の設定値以下の状態になるように
EGR弁35を作動させる一方、燃料が膨張行程の所定
時期に噴射されて予混合燃焼の割合が拡散燃焼の割合よ
りも多い第3の燃焼形態となった後、燃料が圧縮行程上
死点付近で噴射されるディーゼル燃焼形態に切り換わる
ように前記燃料噴射弁を作動させる。
【0115】すなわち、予混合圧縮着火燃焼形態からデ
ィーゼル燃焼形態に移行するときに途中で第3の燃焼形
態を経るようにしたものである。この第3の燃焼形態で
は、燃料が気筒の膨張行程の所定時期に噴射されるが、
膨張行程ではピストンの上死点からの下降に伴い燃焼室
の容積が増大して、その温度及び圧力が低下するので、
燃料の着火遅れ時間が長くなり、燃料と空気との十分な
混合が図れる。よって、予混合燃焼が主体となり、前記
第1の燃焼と同様にNOxや煤の生成を抑えることがで
きる。
【0116】前記第3の燃焼状態では圧縮上死点後に燃
焼が開始することになるので、サイクル効率が低下して
燃費が悪化するきらいがある。そこで、EGR値が第1
及び第2設定値の中間の値にあるときの全期間で第3の
燃焼形態にするのではなく、例えば、特に煤の生成が盛
んになる所定範囲にあるときにのみ、第3の燃焼形態に
するようにしてもよい。
【0117】例えば、予混合圧縮着火燃焼から前記第3
の燃焼形態への切換え(噴射形態の切換え)は、実EG
R率が図19に示す第1設定値とEGR1との間にあるとき
に行ない、前記第3の燃焼形態からディーゼル燃焼形態
への切換え(噴射形態の切換え)は、実EGR率が前記
EGR1よりも小さくなったときに行なうようにすればよ
い。 (3) エンジンの気筒の実圧縮比は、少なくとも前記燃焼
形態の切換えの際、略17以下になるようにすることが
好ましい。すなわち、エンジン回転数1500rpm、
スワールコントロールバルブ閉、並びに圧縮行程上死点
前30度(クランク角度)での一括噴射開始(主燃焼)
という条件下で、有効圧縮比εを18.3及び16.0
(ε=16.0では還流排気を冷却した場合と冷却しな
い場合の2種類)の各々について、EGR率と煤排出量
との関係を調べた。結果は図21に示されている。同図
によれば、EGR率30%〜55%では煤排出量が多く
なっている。但し、有効圧縮比が小さくなると煤排出量
が少なくなり、また、同じ有効圧縮比16.0でもEG
R冷却の方が煤排出量が少なくなっている。これは着火
遅れ時間が長くなり、燃料と酸素との混合が進むためと
考えられる。同図から有効圧縮比を17以下とするこ
と、また、EGR冷却を行なうことが煤排出量を少なく
する上で有効であることがわかる。
【0118】ここで、実圧縮比というのは、気筒の吸気
弁が閉じるまでに気筒内に吸入された気体が圧縮上死点
において圧縮されたときの実質的な圧縮比率のことであ
り、気筒の上死点及び下死点における燃焼室の幾何学的
な容積比率とは異なり、概ね、吸気弁が閉じたときの燃
焼室容積に対する圧縮上死点での燃焼室容積の比率に近
いものである。
【0119】また、前記実圧縮比が、少なくとも前記燃
焼形態の切換えの際、略17以下となるというのは、実
圧縮比を変更可能な機構を備えない場合を含み、この場
合にはエンジンの運転状態に拘わらず気筒の実圧縮比は
略17以下の略一定の値になる。一方、実圧縮比を変更
可能な機構として、例えば吸気弁の開閉時期又はリフト
量の少なくとも一方を変更する可変動弁機構を備える場
合には、この可変動弁機構を少なくともエンジンの運転
状態の移行時に実圧縮比が略17以下となるように作動
させる。すなわち、例えば、吸気弁の閉弁時期を気筒の
下死点よりも大幅に遅角させることにより、幾何学的な
圧縮比が同じであっても実際の気体の圧縮比率(実圧縮
比)が低くなるようにすればよい。
【0120】そして、例えば、ディーゼル燃焼から予混
合圧縮着火燃焼に移行するときに前記の如く気筒の実圧
縮比を低くすれば、このことによって気筒の圧縮行程で
の温度上昇が相対的に抑えられて、早期噴射した燃料の
過早着火を抑えることができるので、燃焼音の増大や排
気状態の悪化をさらに効果的に抑制できる。 (4) ディーゼル燃焼から予混合圧縮着火燃焼に移行する
ときは、還流排気を冷却するようにすれば、相対的に温
度状態の低い排気によって燃料の着火遅れ時間を効果的
に延長し、これにより早期噴射した燃料の過早着火を抑
えることができる。 (5) エンジンが所定以上の加速運転状態になったときに
は、予混合燃焼領域(H)であっても、ディーゼル燃焼
となるようにインジェクタ5を制御し、且つEGR率が
前記第2設定値以下になるようにEGR弁35を制御す
る。すなわち、エンジンの急加速時には高負荷側のディ
ーゼル燃焼領域(D)への移行を見越して、吸気量や燃
料噴射量の少ない間に先にディーゼル燃焼に切換える。
こうすれば、その切り換えの際には燃料噴射量が少な
く、また排気の流量も少ないことから、燃焼に伴う煤の
生成が盛んになってもその排出量はそれほど多くはなら
ず、よって、排気状態の悪化を抑制できる。
【0121】この場合の燃焼形態の切換えも、EGR弁
35の制御によって実EGR率が前記第1及び第2設定
値の間の所定値になった後に、インジェクタ5による燃
料の噴射態様を切換えるものとする。これにより、予混
合燃焼領域(H)からディーゼル燃焼領域(D)への移
行を見越して燃焼状態を切換える際に、吸気中への排気
の還流割合が過大な状態で拡散燃焼が行われることはな
くなり、過渡的な煤の増大を抑制できる。
【0122】また、上述の如くエンジンが所定以上の加
速運転状態になって、予混合圧縮着火燃焼形態からディ
ーゼル燃焼形態に切り換えたときは、圧縮行程上死点後
10度〜60度のクランク角度のときに燃料の後噴射を
実行することにより、実EGR率変化の遅れに伴って一
時的に生成量が増大する煤を再燃焼させて低減する。こ
の場合、後噴射時期は、ディーゼル燃焼による熱発生率
が所定値以下になったときに、特にその熱発生率が略零
になった時点又は該時点から所定期間内に当該後噴射燃
料の燃焼が開始するように設定することが好ましい。
【0123】なお、上記実施形態では排気浄化手段が触
媒である場合を説明したが、DPFであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼制御装
置の全体構成図である。
【図2】エンジンの燃焼モードを切換える制御マップの
一例を示す図である。
【図3】インジェクタによる噴射作動の様子を模式的に
示す説明図である。
【図4】EGR率の変化に対する熱発生率の変化を示す
グラフ図である。
【図5】EGR率の変化に対して、(a)空気過剰率、
(b)NOx濃度及び(c)煤の濃度の変化を互いに対
応付けて示すグラフ図である。
【図6】ディーゼル燃焼のときのEGR率の変化に対す
る排気中のNOx及び煤の濃度の変化をそれぞれ示すグ
ラフ図である。
【図7】主噴射開始時期の変化に対する排気温度の変化
を示すグラフ図である。
【図8】主噴射開始時期の変化に対する煤排出量の変化
を示すグラフ図である。
【図9】主噴射開始時期の変化に対する排気中のHC量
の変化を示すグラフ図である。
【図10】主噴射開始時期の変化に対する排気中のCO
量の変化を示すグラフ図である。
【図11】主噴射開始時期の変化に対する排気中のNO
x量の変化を示すグラフ図である。
【図12】主噴射開始時期の変化に対する正味平均有効
圧の変化を示すグラフ図である。
【図13】インジェクタのニードルリフト量と熱発生率
との関係を示すタイムチャート図である。
【図14】後噴射時期・後噴射量の変化に対する排気温
度の変化を示すグラフ図である。
【図15】後噴射時期の変化に対する排気中のHC量の
変化を示すグラフ図である。
【図16】燃料噴射制御のフローチャート図である。
【図17】EGR制御のフローチャート図である。
【図18】エンジンの燃焼モードを切換える制御マップ
(a)とEGR弁開度(b)との関係を示すグラフ図で
ある。
【図19】予混合圧縮着火燃焼からディーゼル燃焼に移
行するときの実EGR率の変化と、これに対応する煤の
濃度の変化とを対応付けて示すグラフ図である。
【図20】ディーゼル燃焼から予混合圧縮着火燃焼に移
行するときの図19と同様の図である。
【図21】EGR率の変化に対する煤排出量の変化を示
すグラフ図である。
【符号の説明】
A ディーゼルエンジンの燃焼制御装置 H 予混合燃焼領域(第1運転領域) D 拡散燃焼領域(第2運転領域) 1 ディーゼルエンジン 2 気筒 4 燃焼室 5 インジェクタ(燃料噴射弁) 16 吸気通路 26 排気通路 28 触媒コンバータ(排気浄化手段) 34 EGR通路 35 EGR弁(排気還流量調節手段) 38 温度センサ 40 コントロールユニット(ECU)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02D 45/00 F02D 45/00 314R F02M 25/07 570 F02M 25/07 570D 570J (72)発明者 齊藤 智明 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 Fターム(参考) 3G062 AA01 AA03 AA05 BA05 CA06 EA10 FA06 FA08 GA01 GA02 GA04 GA09 GA15 3G084 AA01 BA13 BA15 BA20 DA10 FA07 FA10 FA11 FA18 FA20 FA21 FA22 3G092 AA02 AA17 AA18 AB03 BB06 BB11 DC09 EA04 EA08 FA18 GA05 GA06 HA01Z HB02X HB03Z HD01Z HD02Z HE01Z HE03Z HE08Z 3G301 HA02 HA06 HA11 HA13 JA21 KA06 LB11 MA11 MA19 MA26 MA27 NC02 ND02 NE12 PA01Z PA07Z PA17Z PB08Z PC01Z PD12Z PE03Z PE08Z

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの気筒内の燃焼室に臨む燃料噴
    射弁と、 前記燃焼室への排気の還流量を調節する排気還流量調節
    手段と、 エンジンが第1の運転状態にあるときは、燃料が吸気行
    程ないし圧縮行程で噴射され且つ排気の還流量が第1の
    設定値以上になって、予混合燃焼が圧縮行程上死点付近
    から開始され且つ該予混合燃焼の割合が拡散燃焼の割合
    よりも多くなる第1の燃焼形態となり、エンジンが第2
    の運転状態にあるときは、燃料が圧縮行程上死点付近で
    噴射され且つ排気の還流量が前記第2の設定値以下にな
    って、拡散燃焼の割合が予混合燃焼の割合よりも多くな
    る第2の燃焼形態となるように、前記燃料噴射弁及び排
    気還流量調節手段を制御する燃焼制御手段とを備えてい
    るディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、 エンジンの排気通路に設けられた排気浄化手段と、 エンジン温度又は前記排気浄化手段の温度を検出する温
    度検出手段とを備え、 前記燃焼制御手段は、前記温度検出手段によって検出さ
    れる温度が所定値よりも低いときには、前記第2の燃焼
    形態となるように前記燃料噴射弁及び排気還流量調節手
    段を作動させることを特徴とするディーゼルエンジンの
    燃焼制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載されているディーゼルエ
    ンジンの燃焼制御装置において、 前記温度検出手段は、排気中のHCを浄化する前記排気
    浄化手段としての触媒の温度を検出するものであり、 前記燃焼制御手段は、前記触媒の温度が所定の触媒活性
    を示す温度よりも低いときには、前記第2の燃焼形態と
    なり、前記触媒の温度が前記所定の触媒活性を示す温度
    以上に上昇したときには、前記第1の燃焼形態となるよ
    うに、前記燃料噴射弁及び排気還流量調節手段を作動さ
    せることを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼制御装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載されている
    ディーゼルエンジンの燃焼制御装置において、 前記燃焼制御手段は、前記温度検出手段によって検出さ
    れる温度が所定値よりも低いときには、前記第2の燃焼
    開始後の膨張行程又は排気行程においてさらに燃料が後
    噴射されるように前記燃料噴射弁を作動させることを特
    徴とするディーゼルエンジンの燃焼制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載されているディーゼルエ
    ンジンの燃焼制御装置において、 前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射を圧縮行程上死
    点後10度〜60度のクランク角度のときに実行するこ
    とを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載されているディーゼルエ
    ンジンの燃焼制御装置において、 前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射時期を、前記第
    2の燃焼形態による熱発生率が所定値以下になったとき
    に当該後噴射燃料の燃焼が開始するように設定すること
    を特徴とするディーゼルエンジンの燃焼制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項3に記載されているディーゼルエ
    ンジンの燃焼制御装置において、 前記燃焼制御手段は、前記燃料の後噴射時期を、前記第
    2の燃焼形態による熱発生率が略零になった時点又は該
    時点から所定期間内に当該後噴射燃料の燃焼が開始する
    ように設定することを特徴とするディーゼルエンジンの
    燃焼制御装置。
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