JP2003285149A - 均質な鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法 - Google Patents

均質な鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法

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JP2003285149A JP2002084605A JP2002084605A JP2003285149A JP 2003285149 A JP2003285149 A JP 2003285149A JP 2002084605 A JP2002084605 A JP 2002084605A JP 2002084605 A JP2002084605 A JP 2002084605A JP 2003285149 A JP2003285149 A JP 2003285149A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 遠心力鋳造法で製造した鉄系の形状記憶合金
は管内の位置によって形状記憶機能にバラツキがある。 【解決手段】 高速回転する金型の一端に架設した鋳込
み点より所定成分の注湯を開始すると共に、該鋳込み点
を金型の回転軸方向へ定速で移動しつつ注湯を続けて金
型の他端に至ると共に、注湯された溶湯の表面に発熱・
保温フラックスを散布し、金型の他端に至ることによ
り、管のほぼ全長に亘って何れの横断面においても柱状
晶率が肉厚の少なくとも70%以上の長さを越えること
によって前記の課題を解決した。なお、発熱・保温フラ
ックスとしては、Ca−Si系の使用が最も望ましく、
推奨に値する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉄系形状記憶合金に
よる管継手の製造方法、とくに遠心力鋳造法による管の
全長に亘ってほぼ均質な管継手の製造方法に係る。
【0002】
【従来の技術】形状記憶合金による管継手は、形状回復
力を利用した特徴ある応用分野であり、開発当初は液体
窒素中に貯蔵しなければならなかったが、その後の合金
組成や熱処理技術の開発が進み、常温貯蔵が可能となっ
て急速に用途を拡張しつつある。材質的にはNi−Ti
系やCu−Al系が先行したが、コスト的に有利で加工
性のよい鉄系の形状記憶合金(Mn−Si−Cr−Fe
系)が開発され、たとえば新トンネル工法(WBR)な
どに提供されている。さらにこの系統の合金について研
究が深化し、従来までは所望成分の鋼塊を熱間圧延して
板材とし、これを円筒形に曲げ加工した後溶接するか、
熱間圧延して棒材とし、機械加工によって円筒形に穿削
して成形していたものを、遠心力鋳造法によって直接、
円筒形の鋳造管を得る技術が提案されるに至った。
【0003】特開2001−82642号公報による従
来技術は、鉄系形状記憶合金製の管継手として求められ
る機能と、そのマクロ組織との相関性に着目した提案で
ある。本来、形状記憶合金による管継手は、締結すべき
相手管の外径より僅かに小さい内径の円筒を成形し、押
し拡げてから継合すべき管を差し込んで所望温度に加熱
することによって、元の径に戻ろうとする形状記憶機能
を利用したものである。したがって継合後の高い締結強
度を得るためには、加熱時における円筒の形状回復率、
すなわち内径の収縮率が高いほど良好なことは当然想定
できる。
【0004】該従来技術では高い内径収縮率が安定して
得られる条件を検討した結果、内径収縮率の違いがそれ
ぞれのマクロ組織と対応していることを見出し、柱状晶
率の高い円筒が全体に内径収縮率の高い部分にあること
を知見し、結局、管継手横断面のマクロ組織の中で柱状
晶率が50%を越える面積を占めることを要件に定め
た。この要件を満たす限り、管継手として実用上望まし
い内径収縮率2.5%以上というレベルの確保が得られ
る効果を謳っており、実施例では柱状晶率が92%の場
合には内径収縮率が3.4%という高いレベルにある
が、ほぼ同成分の形状記憶合金の熱延板を曲げ加工、溶
接で製作した同サイズの円筒に係る比較例では、柱状晶
が熱間加工時に失われて0であるため内径収縮率も2.
7%に留まったことと比べ、明らかに凌駕したと例示し
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】管継手はその使用目的
に照らせば、円筒の両端から継合すべき管を挿入し、堅
固に固着することを要件とするから、この固着力が発揮
できる程度の接触面積さえ得られればよい。したがって
短管形状で足りるから、遠心力鋳造法で製造した管を、
所望の寸法ごとに切断して使用に供するのが普通であ
る。したがって定尺管のどの位置でもほぼ均等な組織、
この場合はほぼ均等な柱状晶率を維持し、ほぼ均等な内
径収縮率、すなわち形状回復率を保証することが最も望
ましい。
【0006】ところがそのような意味での均等性につい
ては、遠心力鋳造法による管継手には、砂型やロストワ
ックス法による静置鋳造法で管継手を単品毎に製造する
場合は言うに及ばず、鋼塊を熱間加工して板、または棒
状に一次加工した後、円筒形に曲げ加工したり、機械的
に穿削加工して定尺管を成形した後、単品サイズに切断
する場合と比べても課題が残る。
【0007】前記従来技術の実施例によれば、2,65
0mmの定尺管を80mmづつに分割した短管のうち、
鋳込み時のノズルに最も近い位置にある短管Aと、逆に
最も遠い位置にある短管Bを比較したところ、短管Aで
は平均92%の高い柱状晶率であったのに対し、短管B
では柱状晶率が平均40%でしかなかった。両管を拡
径、加熱、内径収縮後に測定したところ、短管Aの内径
収縮率は3.4%得られたのに対し、柱状晶率の低い短
管Bでは内径収縮率が2.7%に留まったとあり(同公
報の0029記載)、この従来技術においても、遠心力
鋳造管の部位によっては柱状晶率、したがって形状回復
率に相当なバラツキが認められ、その意味では均質な形
状記憶機能が全品担保されるわけではないことを率直に
開示している。
【0008】遠心力鋳造管は金型を高速で回転し、通常
はその一端の開口部(中心孔)へ差し込んだトラフか
ら、所定成分の溶湯を注湯して遠心力によって溶湯を金
型内面に押圧しつつ他端まで流動させ、所定肉厚の円筒
管を成形する工法である。この場合、液相−固相の経過
が全長に亘ってほぼ均等に進行しなければ全長レベルで
見た組織の均一性が保証できないことは当然予見され
る。ところが遠心力鋳造の基本的な構成として、円筒形
の金型(内径が製品の外径となる)の両端が内面と同径
で開口しておれば、鋳造時に鋳込んだ溶湯が外へ飛び出
すから、目標とする製品内径よりさらに小径のドーナツ
形蓋板を両側に装着しなければならない。蓋板は金型と
同様にかなりの肉厚からなる丈夫な鉄板(または鍛造
材)でなければ危険である。この蓋板も金型と同様に溶
湯を急速に冷却するから、接触面を原点とする柱状晶を
形成する点は同じである。すなわち、金型内面から進行
する柱状晶と直角に交差する柱状晶が両端付近に生成し
て、この領域の組織の均一性を著しく阻害する要因とな
る。
【0009】別の要因としては、材質と遠心力鋳造法と
の因果関係も考えられる。遠心力鋳造法では前記の通り
回転する金型の一端から内部へトラフを差し込み、三角
取鍋など定量を保持する溶湯容器から一挙に金型内へ注
湯するのが一般であり、遠心力鋳造法の最大の利用分野
であるダクタイル鋳鉄管の製造ではそれで何の支障も起
らない。しかし、鉄系形状記憶合金のように低炭素
(C:0.01〜0.02%)の鋼系の場合は、鋳鉄よ
りも鋳込み温度が高い上に、溶湯の湯流れは逆にかなり
低いから、溶湯が遠心力を受けて金型内面に貼り付きな
がら一方から他方へ進行する作用はダクタイル鋳鉄より
遥かに緩慢である。そのため一端からの定点鋳込みで
は、鋳込み点の近傍と遠く隔たった他端を比べると、金
型温度も溶湯温度も鋳鉄以上の大差となって顕れ、凝固
−柱状晶の生成と成長の条件に局部的なバラツキの生じ
ることは容易に推定できる。
【0010】遠心力鋳造法において、凝固後のマクロ組
織を調整するために発熱・保温フラックスを使用する技
術自体は公知である。特開昭63−16843号公報は
高合金のステンレス鋼管の遠心力鋳造法に係り、図5に
示す典型的な遠心力鋳造設備を使って高合金の溶湯を鋳
込み、凝固を開始して一定長さの柱状晶組織が形成され
た時間に、内面の未凝固溶湯の内面に発熱・保温フラッ
クスを吹き付けて前記柱状晶の内側に一定厚さの等軸晶
組織を形成させ、製品として使用中に懸念されるクリー
プ損傷としての割れの進展を防止することを要旨として
いる。
【0011】しかしこの従来技術は石油化学施設の高温
反応管の耐食性、耐熱性を重視した管に係り、結晶にあ
る特定の方向性を全長に亘って与え、優れた形状記憶機
能を期待する本発明の主旨は発想が逆転している。ま
た、この図にような定点からの鋳込みでは、前記柱状晶
率のバラツキを生じる大きな原因は依然として解消され
ていない。
【0012】また、特開平9−24450号公報による
別の従来技術では、図6のような遠心力鋳造設備によっ
て溶湯(材質特定せず)を鋳込んだ後、Al+Al23
+SiO3を主成分とする金属アルミタイプの保温剤
と、FeO+Ca+Siを主成分とするカルシリタイプ
の保温剤を所望の割合で混練した保温剤を溶湯内面に投
入することを要旨としている。
【0013】この従来技術はフラックスの発熱作用と、
全体(全長)に行き渡る効果的な拡散作用のバランスを
とるために異種のフラックスを混練したというだけであ
るから、金型内面と溶湯内面側との冷却速度の差を調整
して健全な柱状晶を生成する点では共通すると謂えど
も、図6に示す定点からの鋳造構造では全長に亘る均一
性の確保という点で依然として課題は残ると言わざるを
得ない。
【0014】また、発熱・保温フラックスを使用すると
発熱量が大きいほど内外面の冷却速度差が拡がって有効
なように見えるが、下手に使うと過激な燃焼作用に伴っ
て粉塵やガスの飛散が甚だしく、気泡や非金属介在物の
多い不健全な内面層を肥厚させ、職場環境を一挙に汚染
する懸念がある。そしてこの不健全層を機械加工で取り
除こうとすれば、鋳放しの肉厚を増加せざるを得ず、材
料歩留まりを低下し、加工費が嵩み、肉厚の増加は金型
の冷却能力を相対的に低下させて肝心の形状記憶機能の
低下を誘発するし、欠陥の発生範囲を縮小するために遠
心力を増強すれば、ある限度を超えた回転数が柱状晶の
成長を乱して形状記憶機能を却って低下させるという悪
循環に陥りかねない。
【0015】本発明は以上の課題を解決して全長に亘っ
てほぼ均等な柱状晶率、したがって形状記憶機能を具備
する遠心力鋳造法による鉄系形状記憶合金製管継手の製
造方法の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明に係る遠心力鋳造
法による鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法は、高速
回転する金型の一端に架設した鋳込み点より所定成分の
鉄系形状記憶合金の注湯を開始し、該鋳込み点を金型の
回転軸方向へ定速で移動しつつ注湯を続け、注湯された
溶湯の表面に発熱・保温フラックスを散布し、金型の他
端に至ることにより、管のほぼ全長に亘って何れの横断
面においても柱状晶率が肉厚の少なくとも70%以上の
長さを越えることによって前記の課題を解決した。
【0017】より具体的には、注湯を開始した後、発熱
・保温フラックスが前記鋳込み点の近傍に設けた供給口
から所定の秒数だけ遅れて散布を開始するとともに、注
湯される溶湯と同速で追随することが望ましい実施態用
である。
【0018】なお、実施形態として具体的には、ここで
使用する発熱・保温フラックスは、Ca−Si系フラッ
クスが最も望ましく推奨に値する。本発明の製造方法は
前記の手順を踏むから、定尺管の全長に亘って安定した
高率の柱状晶率が保証される。まず、溶湯の鋳込みは金
型一端内に架設した鋳込み点から始まり、定速で金型内
を移動して他端に到達したときに予定した全量の鋳込み
が完了する。従来技術の定点鋳込みの場合には、金型内
の特定の位置が絶えず新しい溶湯に洗われ続けるから、
他の部位に比べると異常に昇温して冷却機能を局部的に
失う。また、溶湯自体も遠くまで走行する間に急速に降
温し、湯先部分の湯流れが著しく低下する。組織的にも
引け巣やノロ(ドロス)を巻き込みやすく、健全な結晶
の成長を阻害していたが、この要因が鋳込み点の移動
と、定刻遅れで追随する発熱・保温フラックスの供給に
よって一挙に好転する。
【0019】発熱・保温フラックスには多くの種類があ
り、従来技術でも課題としていたそれぞれの長所、短所
は確かに認められるが、発熱・保温フラックスと溶湯の
比重差、散布の難易、溶湯内面での拡散の難易などいろ
いろのチェックポイントがある。しかし、移動する鋳込
み点から注入される溶湯より数秒遅れで追随して発熱・
保温フラックスが溶湯内面に供給されるから、迅速、か
つ完全に溶湯内面を被覆して所望の冷却速度の調整作用
を全うする。規則的な組織が最も乱れる管の両端付近に
対しても、確実な保温、または発熱保温作用が発現して
前記金型の蓋板による冷却作用を減殺し、ほぼ均等な軸
心へ指向した柱状晶の成長を援助する。この結果、定尺
管のほぼ全長に亘って少なくとも70%以上の柱状晶率
を確保し、実施例の記録では少なくとも3%以上の高度
な形状回復率を保証する元管を製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施に使用した遠
心力鋳造装置である。図において高速回転する2個1組
の駆動ローラ2の回転を受けて、該ローラ上に水平に支
持されている金型1が回転する構造である。まず、金型
1の内面にコーティング層11を400〜1000μm
厚さ程度に形成し、金型の左右両端の開口部には十分に
強度の高い厚肉の蓋板12を装着する。つぎに高周波溶
解炉4から供給装置3の三角取鍋31へ所望の鉄系形状
記憶合金の溶湯を注入する。鉄系形状記憶合金の成分自
体は公知の範囲に入り、C≦0.006%、Mn:28
%、Si:6%、Cr:5%、残りFeの成分を採用し
た。
【0021】注湯は金型内の一端P点に鋳造トラフ32
の先端を位置決めして鋳込み点33を設定し、その段階
で三角取鍋31を図のように傾動して開始する。三角取
鍋31の傾動と連動して走行台車34が矢印の方向に移
動を始め、鋳造トラフ32の先端にある鋳込み点33は
溶湯を注入しつつ定速で軸方向に走行する。この鋳造ト
ラフ32には供給ホース35が一体的に固着されて発熱
・保温フラックスの材料槽36と連結しており、溶湯の
鋳込みから数秒遅れて先端のノズル37から発熱・保温
フラックスが溶湯の表面上へ均等に散布しながら同速で
追随していく。遅れる秒数は、たとえば5秒とか、7秒
など経験的に設定し、この遅れと走行台車の走行速度と
が整合するように、鋳造トラフ32先端の鋳込み点33
と供給ノズル37間の距離を選定する。鋳込み点33が
移動すると共に注湯が進行し、鋳込み点33が金型他端
のQ点に達したときに三角取鍋31内のすべての溶湯が
金型内へ移し替えられ鋳造が終了する。
【0022】発熱・保温性フラックスの散布方法は、上
述した方法の他に、供給ホース35とトラフ32を一体
化せずに、別途フラックスの供給装置を設けて散布して
も構わない。この場合、蓋板12側の開口部または蓋板
13側の開口部から、トラフとは独立させて供給ホース
を挿入できるため、トラフの動作にとらわれず、自在に
散布のタイミングを制御できる利点がある。また、前
記、蓋板12、13両開口部の一方もしくは両方に供給
ホース先端を定置し、金型内に溶湯を鋳込み終えた後、
フラックスを散布してもよく、簡便な方法としては、前
記同開口部から手作業でフラックスを投入、散布しても
よい。
【0023】この実施例では発熱・保温フラックスとし
てCaO−SiO2(CaO:37%、SiO2:35
%)を採用した。発熱・保温フラックスについては特に
限定しないが、同時に試用したAl−Al23−Fe
系、およびAl−FeO系の発熱・保温フラックスに比
べると一番結果が優れていた。その理由について定量的
に説明することは必ずしも容易ではないが、一般的に言
えばCaO−SiO2フラックスは投入すると直ちに溶
湯内面で溶融状態になって表面に溶融スラグを形成して
完全に溶湯内面を被覆保温する利点が挙げられる。前記
従来技術の特開平9−24450号公報によれば、溶融
したスラグが製品内面に強固に固着して後に除去するの
が困難であることをこのタイプの短所に挙げているが、
本発明の対象である形状記憶合金は、凝固の際に管の収
縮量が大きいため、製品内面に付着した溶融スラグは、
管の収縮の間に容易に剥離除去される。また、内面は、
寸法調整の機械加工を施すため、万が一強固に付着した
場合であっても、溶融スラグは除去できるため問題には
ならない。
【0024】これに反し、Alを含む後記2種類の発熱
・保温フラックスは、テルミット反応による発熱作用を
利用するもので、この反応開始まで若干の時間を要する
ため、管内面の溶湯と直ちには反応せず、重力の100
〜150倍に相当する遠心力という重圧によって溶湯内
部へ一部が押し込まれ、肉厚内部に異物として介在した
り、表面より内部で反応し、柱状晶の正常な発達を却っ
て妨害するのではないかとも考えられる。
【0025】鋳造された管は全長1,150mmであ
り、この管を1,100℃で溶体化処理を施した後、図
2に示すように管の両端と中央から試験片A,B,Cを
切断採取した。試験片の両断面は、まず#800まで研
磨した後、塩化第二銅溶液に約2分間、浸漬し腐食させ
て柱状晶組織の生成状態を観察し、肉厚に対する柱状晶
の生成割合を測定した。柱状晶率の生成割合は次式によ
って算出する。 柱状晶率の生成割合(%)=(柱状晶の長さ/肉厚)×1
00 また、上記の同試料から、鋳造管の内面に発生するドロ
スの最大発生長さを測定し、ドロス発生割合として次式
により算出した。 ドロス発生割合(%)=(ドロスの最大発生長さ/肉
厚))×100 この試験片についてそれぞれ形状記憶機能の評価を行っ
た。機能の評価は以下のトレーニング処理の手順を経た
試験片の形状回復率を測定して数値化することにした。 第一次歪み付与(8%歪み)→600℃×10分間加熱
→第二次歪み付与(8%歪み)→300℃×10分間加
熱→空冷後→内径収縮量測定
【0026】表1は実施例と比較例の測定結果とその評
価をまとめたものである。表中、比較例、実施例ともに
成分は標準的な鉄系形状記憶合金の公知材料であり、溶
解条件、鋳込み温度、金型の回転数など鋳造条件はすべ
て共通であって、異なる点は比較例が、フラックス無し
で定点鋳造したのに対し、実施例は本発明の要件に基づ
いて全長に亘って移動する鋳込み点からの鋳造であるこ
とと、この鋳込み点に連動して移動しながら追随して供
給するCaO−SiO2フラックスの添加という2点で
ある。
【0027】
【表1】
【0028】図3は、本願発明によって得られた実施例
のマクロ組織の一例(No.3)であり、形状記憶機能
の発揮に必要な柱状晶が肉厚全体に生成した組織となっ
ている。一方、図4は比較例によって得られたマクロ組
織の一例(No.2)であるが、肉厚の半分以上に等軸
晶が生成した組織となっている。これらのマクロ組織よ
り柱状晶率の生成割合を定量化した表1の結果から明白
に読みとれるように、本発明の実施例4件はA,B,C
の管内位置の如何に拘わらず何れの柱状晶率も70%を
越え、その結果として形状回復率も3.1〜3.6%の
高いレベルを維持するが、比較例は管中央に位置する試
験片Bにおいて合格ラインとされる50%をクリアして
はいるものの、両端に位置するA,Cではこの水準に届
いた例はなく、形状回復率も2.1〜3.8%の広い範
囲にばらつくなど、管継手として実用上望ましい内径収
縮率2.5%を維持するものもあるが、全体としてきわ
めて変動の幅が大きく、1本の遠心力鋳造管の中におけ
る品質のバラツキが大きく、形状記憶機能に対する信頼
性に関して明瞭な差のあることを物語っている。さら
に、比較例におけるドロス発生率は、肉厚に対して1
5.4〜26.3%とドロス発生率が大きく、トレーニ
ング処理の際、この欠陥を起点として割れが生じていた
のに対し、本発明の実施例におけるドロス発生率は、1
0〜12.1%とドロス発生率を縮小できるため、トレ
ーニング処理の際に割れるという問題を同時に解消でき
た。
【0029】
【発明の効果】本発明は以上述べたように遠心力鋳造に
よって製造した定尺管を寸法切りして得られる鉄系合金
形状記憶合金の機能を同一レベルに担保し、個々の管継
手についての品質にバラツキが少ない製品を提供する効
果がある。この製造方法によって品質が安定し、鉄系形
状記憶合金のさらに広い分野での活用を促す点で意義が
大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例に使用する遠心力鋳造法を説明す
る一部断面正面図である。
【図2】本発明実施例、比較例の試験片採取の位置を説
明する斜視図である。
【図3】(A)(B)(C)は本発明実施例の試験片
A,B,Cのそれぞれのマクロ組織を示す金属顕微鏡写
真である。
【図4】(A)(B)(C)は比較例の試験片A,B,
Cのそれぞれのマクロ組織を示す金属顕微鏡写真であ
る。
【図5】従来技術の遠心力鋳造方法を例示する正面断面
図である。
【図6】別の従来技術の遠心力鋳造方法を例示する一部
断面正面図である。
【符号の説明】
1 金型 2 駆動ローラ 3 供給装置 4 高周波溶解炉 11 コーティング層 12 蓋板 13 蓋板 31 三角取鍋 32 鋳造トラフ 33 鋳込み点 34 走行台車 35 供給ホース 36 材料槽 37 ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前殿 裕章 大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会 社栗本鐵工所内 (72)発明者 松野 進 大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会 社栗本鐵工所内 (72)発明者 久保 紘 宮城県仙台市青葉区川内元支倉35番川内住 宅11−204

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遠心力鋳造法による鉄系形状記憶合金製
    管継手の製造方法において、高速回転する金型の一端に
    架設した鋳込み点より所定成分の鉄系形状記憶合金の注
    湯を開始し、該鋳込み点を金型の回転軸方向へ定速で移
    動しつつ注湯を続け、注湯された溶湯の表面に発熱・保
    温フラックスを散布し、金型の他端に至ることにより、
    管のほぼ全長に亘って何れの横断面においても柱状晶率
    が肉厚の少なくとも70%以上の長さを越えることを特
    徴とする均質な鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、注湯を開始した後、
    発熱・保温フラックスが前記鋳込み点の近傍に設けた供
    給口から所定の秒数だけ遅れて散布を開始するととも
    に、注湯される溶湯と同速で追随することを特徴とする
    製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、発熱・保温
    フラックスがCa−Si系フラックスであることを特徴
    とする均質な鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法。
JP2002084605A 2002-03-25 2002-03-25 均質な鉄系形状記憶合金製管継手の製造方法 Expired - Lifetime JP3929339B2 (ja)

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