JP6474965B2 - 双ロール鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム複合材料を一対の鋳造ロールにて鋳造する双ロール鋳造方法に関する。
マグネシウム合金は、軽量であるので、マグネシウム合金を加工用の素材として用いることにより、加工の際に鉄系材料に比べて省エネルギー化を実現することができる。また、マグネシウムは、海水中など、自然界に存在しており、資源量が豊富である。さらに、マグネシウム合金は、プラスチックと比較して、リサイクルしやすいことが知られている。
また、マグネシウム合金は、常温下で延性が低いことが知られている。これは、六方最密構造を有するマグネシウムの結晶構造による。そのため、鋳造や加熱を行う圧延などにより、所望の形状のマグネシウム合金が製造される。例えば、下記の特許文献1には、双ロール法により連続鋳造圧延を行うマグネシウム合金パイプの製造方法等が開示されている。
特開2012−77320号公報
双ロール法は、溶解した金属材料である溶湯を、一対又は複数対のロールによって鋳造又は圧延するものである。図11に示すように、双ロール鋳造装置1は、溶解した金属材料を保持する溶湯炉10と、金属材料を鋳造するための一対の鋳造ロール20と、を有して構成される。
溶湯炉10は、溶解した金属材料を溶湯として保持するるつぼである。溶湯炉10は、例えば、後述する一対の鋳造ロール20が配置される方向の一端側に、開口部11が形成される。開口部11は、溶湯を一対の鋳造ロール20の間に出すための出口となっている。
一対の鋳造ロール20は、金属材料を鋳造するためのものである。一対の鋳造ロール20は、回転可能な状態で配置される第一鋳造ロール21と第二鋳造ロール22とから構成されることとすることができる。
金属材料は、例えば溶解した金属材料を保持する溶湯炉10で加熱され、溶解される。溶解された金属材料としての溶湯は、溶湯炉10の一端側に設けられた開口部11から出湯される。そして、開口部11から出湯された溶湯は、一対の鋳造ロール20(21,22)の間に供給され、一対の鋳造ロール20(21,22)によって押圧されながら一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過し、冷却され、所望の形状の合金が製造されることとなる。
ここで、双ロール法の特徴の1つとして、溶湯から熱を奪う効率、すなわち抜熱効率が高いことが知られている。溶湯が一対の鋳造ロール20(21,22)と接触すること等により、溶湯から高い抜熱効率で熱が奪われ、溶湯は冷却される。上掲した特許文献1は、双ロール法の特徴の1つである高い抜熱効率を利用して、マグネシウム合金溶湯を極めて速く冷却することにより、粗大なAl−Mn化合物が晶出するのを抑制すると記載されている。
しかしながら、上述した双ロール法の溶湯からの高い抜熱効率は、例えばマグネシウムにカルシウムなどを添加したマグネシウム複合材料を用いる場合に、マグネシウム相の冷却速度とカルシウムの析出物の析出速度との間に差を生じ易くする。そのため、析出物の析出の挙動により、双ロール法により得られる鋳造材に、リップルマークや割れが発生し易くなるという課題があった。さらに、放冷や急冷により鋳造材に発生した割れが深まるという課題があった。
また、双ロール法により得られる鋳造板材は、一般的に板厚中心部を境として凝固相を抱えている場合が多く、鋳造板材の内部に空隙や酸化界面、凝固偏析を形成している場合が多かった。そのような鋳造板材に圧延加工を施して薄板を製造しても、鋳造板材の空隙や界面が阻害物となり、疲労試験、衝撃試験や引張試験などの鋳造板材の機械的性質を測定する試験を精度良く行うことができないという課題があった。
そこで、本発明は上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、リップルマークや割れの発生を防ぐとともに、空隙や酸化界面、凝固偏析の形成を抑制する双ロール鋳造方法を提供することにある。
本発明に係る双ロール鋳造方法は、溶解したマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロールにて鋳造し、鋳造されたマグネシウム鋳造板材を得る双ロール鋳造方法であって、前記マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制工程を有し、また、前記マグネシウム鋳造板材を覆う断熱材によって前記マグネシウム鋳造板材を覆い徐冷する工程を有し、当該双ロール鋳造方法を行う双ロール鋳造装置が、前記一対の鋳造ロールの下流側には、前記マグネシウム鋳造板材を搬送するためのコンベヤと、前記一対の鋳造ロールと前記コンベヤとの間に、前記マグネシウム鋳造板材を前記コンベヤに送り移すためのブリッジ部と、を備え、前記抜熱抑制工程は、前記一対の鋳造ロールの間を通過した後の前記マグネシウム複合材料の温度を、当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下とすること、前記一対の鋳造ロールの間に供給される前記マグネシウム複合材料の温度を、610℃以上750℃以下とした後に施されること、前記一対の鋳造ロールを加熱すること、前記マグネシウム複合材料が前記一対の鋳造ロールと接触する接触長を短くすること、および、前記ブリッジ部を加熱すること、により行われ、さらに、前記一対の鋳造ロールのロール周速度を5m/min以上25m/min以下とすることで、鋳造されたマグネシウム鋳造板材が、当該マグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察したときに、粒界すべりが生じているように製造されることを特徴とするものである。
た、本発明に係る双ロール鋳造方法は、前記一対の鋳造ロールのロール周速度を15m/min以上18m/min以下とすることができる。
本発明によれば、リップルマークや割れが発生することを防ぐとともに空隙や酸化界面、凝固偏析の形成を抑制することができる双ロール鋳造方法および双ロール鋳造装置、ならびにその方法およびその装置を用いて製造されるマグネシウム鋳造板材を提供することができるようになる。
本実施形態に係る鋳造ロールの側面図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造装置の構成例を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のミクロ観察写真を示す図であり、図3中の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板面のミクロ観察写真を示す図であり、図3中の分図(b)および分図(c)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面のミクロ観察写真を示す図である。 比較例としての従来技術に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のミクロ観察写真を示す図であり、図4中の分図(a)は、比較例としての従来技術に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板面のミクロ観察写真を示す図であり、図4中の分図(b)および分図(c)は、比較例としての従来技術に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面のミクロ観察写真を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のSEM観察写真を示す図であり、図5の分図(a)は、マグネシウム複合材料としてAMX602を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のSEM観察写真を示す図であり、図5中の分図(b)は、分図(a)にて示されたマグネシウム鋳造板材のSEM観察写真の拡大組織を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のSEM−EBSD観察を示す図であり、図6中の分図(a)は、SEM観察写真を示す図であり、図6の分図(b)は、SEM−EBSD観察写真を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部におけるSEM−EBSDの観察および解析結果を示す図であり、図7の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部における微細組織を示す図であり、図7の分図(b)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部における微細組織の結晶方位差を示す図であり、図7の分図(c)は、001極の極点図を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部におけるSEM−EBSDの観察および解析結果を示す図であり、図8の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部における微細組織を示す図であり、図8の分図(b)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部における微細組織の結晶方位差を示す図であり、図8の分図(c)は、001極の極点図を示す図である。 本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図であり、図9中の分図(a)は、マグネシウム複合材としてAMX602を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図であり、図9の分図(b)は、マグネシウム複合材料としてAMX1001を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図である。 マグネシウム鋳造板材の溝のSEM観察写真を示す図であり、図10中の分図(a)は、マグネシウム鋳造板材の表面のSEM観察写真を示す図であり、図10の分図(b)は、マグネシウム鋳造板材の裏面のSEM観察写真を示す図である。 従来の双ロール鋳造装置の構成例を示す図である。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
発明者らは、上述した課題の解決のために鋭意研究を行った結果、双ロール法を利用するとともに、マグネシウム複合材料の抜熱を抑制し、マグネシウム複合材料の冷却速度を遅くすることにより、鋳造されたマグネシウム鋳造板材に対してリップルマークや割れが発生することを防ぐとともに、空隙や酸化界面、凝固偏析の形成を抑制することができるとの知見を得た。そこで、以下に記す実施形態では、発明者らが見出した双ロール鋳造方法および鋳造条件と、かかる双ロール鋳造方法および鋳造条件によって製造されたマグネシウム鋳造板材の特徴を示す分析結果および試験結果について説明することとする。
[本実施形態に係る双ロール鋳造方法]
本実施形態に係る双ロール鋳造方法は、溶解したマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)にて鋳造し、鋳造されたマグネシウム鋳造板材を得るものであって、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制工程を有する。
マグネシウム複合材料は、マグネシウムを主成分とし、これにアルミニウム、亜鉛、マンガン、カルシウムなどが含まれる。マグネシウム複合材料としては、例えば、マグネシウムに対してアルミニウムを6%と、マンガン0.2%と、カルシウム2%とを添加したAMX602やマグネシウムに対してアルミニウム10%と、マンガン0.2%と、カルシウム1%とを添加したAMX1001などの材料を用いることができる。
マグネシウム複合材料は、例えば溶解したマグネシウム複合材料を保持する溶湯炉10で加熱され、溶解される。溶解した溶湯としてのマグネシウム複合材料は、溶湯炉10の一端側に設けられた開口部11から出湯され、マグネシウム複合材料を鋳造するための一対の鋳造ロール20(21,22)の間に供給されることとなる(図11参照)。
このとき、マグネシウム複合材料は、マグネシウム複合材料の成分組成に応じて610℃以上750℃以下に加熱されることが好ましい。後述する一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過した後のマグネシウム複合材料の温度を、当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下とするために好適なためである。
そして、本実施形態に係る双ロール鋳造方法では、マグネシウム複合材料を、マグネシウム複合材料の成分組成に応じて610℃以上750℃以下に加熱し、マグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)の間に供給してからマグネシウム鋳造板材を製造するまでの間に、マグネシウム複合材料に対して、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制工程が施されることとなる。マグネシウム複合材料に対して抜熱抑制工程が施されることにより、マグネシウム相の冷却速度と析出物の析出速度と金属間化合物の形成速度との間に差が生じることを防ぐことができるようになる。マグネシウム相の冷却速度や析出物の析出速度、金属間化合物の形成速度の差が生じることを防ぐことにより、後述するように、金属間化合物がマグネシウム相に微細分散するとともに網状組織を形成しない良好な結晶組織を有するマグネシウム鋳造板材を得ることができるようになる。さらに、マグネシウム鋳造板材にリップルマークや割れ、マグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析が発生することを防ぐことができるようになる。したがって、本実施形態に係る双ロール鋳造方法によれば、健全なマグネシウム鋳造板材を製造することができることとなり、疲労試験、衝撃試験や引張試験などの鋳造板材の機械的性質を測定する試験を精度良く行うことができるようになる。
抜熱抑制工程では、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過した後のマグネシウム複合材料の温度を、当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下とすることが好適である。ここで、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過した後とは、特に限定されないが、マグネシウム複合材料が一対の鋳造ロール20(21,22)から200mmから500mm程度移動した地点のことを言い、当該地点において、マグネシウム複合材料の温度が当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下となっていることが好ましい。このような温度に設定することにより、急冷により現出する金属間化合物の網状組織の形成を抑制することができるようになる。金属間化合物の網状組織が形成された鋳造板材は、金属間化合物の網状組織が割れの起点となり、鋳造後の冷却により、鋳造板材の表面にリップルマークや微細な割れが生じることにつながる。したがって、本実施形態に係る双ロール鋳造方法によれば、鋳造板材の表面にリップルマークや割れが発生することを防ぐことができる。
なお、マグネシウム複合材料が一対の鋳造ロール20(21,22)に接触した直後において、マグネシウム複合材料の表面が凝固していれば、マグネシウム複合材料の内部の温度は、液相線温度以上でも良い。すなわち、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、その表面が凝固していれば良く、例えば、その内部は粘性を有する溶融体であっても良い。このような温度に設定することにより、マグネシウム相の冷却速度ならびに析出物の析出速度および金属間化合物の形成速度の差が生じることを防ぐことができるとともに、リップルマーク、割れの発生およびマグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析を防ぐことができるようになる。なお、マグネシウム複合材料の内部は、マグネシウム鋳造板材を鋳造した後の放冷や徐冷によって固化していくことになる。
また、抜熱抑制工程では、一対の鋳造ロール20(21,22)は、特に限定されないが、150℃以上300℃以下に加熱されることとすることができる。このような温度に設定することにより、一対の鋳造ロール20(21,22)によるマグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができるようになる。そして、マグネシウム相の冷却速度と析出物の析出速度と金属間化合物の形成速度との間に差が生じることを防ぐことができるとともに、リップルマーク、割れの発生およびマグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析を防ぐことができるようになる。
さらに、抜熱抑制工程では、一対の鋳造ロール20(21,22)のロール周速度は、特に限定されないが、5m/min以上25m/min以下とすることができ、10m/min以上20m/min以下とすることが好ましく、15m/min以上18min以下とすることがより好ましい。このように、従来の双ロール鋳造方法よりも一対の鋳造ロール20(21,22)のロール周速度を落とすことにより、一対の鋳造ロール20(21,22)によるマグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができるようになる。したがって、上述したように、マグネシウム相の冷却速度と析出物の析出速度と金属間化合物の形成速度との間に差が生じることを防ぐことができるとともに、リップルマーク、割れの発生およびマグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析を防ぐことができるようになる。
また、抜熱抑制工程では、マグネシウム複合材料が一対の鋳造ロール20(21,22)と接触する接触長を短くすることにより行われることとすることができる。このような構成により、一対の鋳造ロール20(21,22)によるマグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができるようになる。そして、マグネシウム相の冷却速度と析出物の析出速度と金属間化合物の形成速度との間に差が生じることを防ぐことができるとともに、リップルマーク、割れの発生およびマグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析を防ぐことができるようになる。また、上述したように、マグネシウム複合材料が一対の鋳造ロール20(21,22)に接触した直後において、マグネシウム複合材料の表面が凝固していれば、マグネシウム複合材料の内部の温度は、液相線温度以上でも良いこととなる。
一対の鋳造ロール20(21,22)の下流側には、図1および図2に示すように、マグネシウム鋳造板材を搬送するためのコンベヤ71と、一対の鋳造ロール20(21,22)とコンベヤ71との間に、マグネシウム鋳造板材をコンベヤ71に送り移すためのブリッジ部73と、を備えることとすることができる。そして、抜熱抑制工程は、ブリッジ部73を加熱することにより行われることとすることができる。ブリッジ部73を加熱することによって、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材からの抜熱を抑制することができるようになる。
そして、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、加熱されながら徐冷されることとすることができる。このように、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材が急冷されることを防ぐことにより、割れのない健全なマグネシウム鋳造板材を得ることができるようになる。
また、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、マグネシウム鋳造板材を覆う断熱材によって覆われ、徐冷されることとすることができる。このように、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材が急冷されることを防ぐことにより、割れのない健全なマグネシウム鋳造板材を得ることができるようになる。
またさらに、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、水をかけることにより徐冷されることとすることができる。マグネシウム鋳造板材にかけられる水は、特に限定されないが、例えば60℃以上とすることができる。また、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材にかけられる水は、霧状とすることができる。このように、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材が急冷されることを防ぐことにより、割れのない健全なマグネシウム鋳造板材を得ることができるようになる。なお、マグネシウム鋳造板材にかけられる霧状の水の温度は、マグネシウム鋳造板材の割れを防ぐことができれば、特に限定されず、60℃以上であっても良いし、60℃以下であっても良い。
なお、本実施形態に係る双ロール鋳造方法では、マグネシウム複合材料が、一対の鋳造ロール20(21,22)を通過する直前および一対の鋳造ロール20(21,22)に接触した直後まで、二枚板形状であっても一枚のマグネシウム鋳造板材として鋳造をすることができるようになっている。
以上、本実施形態に係る双ロール鋳造方法について、説明した。次に、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100の構成例について、図1および図2を用いて、説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る鋳造ロールの側面図であり、図2は、本実施形態に係る双ロール鋳造装置の構成例を示す図である。なお、従来の双ロール鋳造装置1と同一又は類似する構成については、同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
[本実施形態に係る双ロール鋳造装置]
本実施形態に係る双ロール鋳造装置100は、溶解したマグネシウム複合材料を保持する溶湯炉10と、マグネシウム複合材料を鋳造するための一対の鋳造ロール20(21,22)と、抜熱抑制手段90と、を含んで構成される。
マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制手段90は、一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱するための鋳造ロール加熱部30と、マグネシウム複合材料と一対の鋳造ロール20(21,22)とを接触する接触長を短くする接触長調節機構40と、を有することとすることができる。
鋳造ロール加熱部30は、一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱するためのものである。そして、鋳造ロール加熱部30は、例えば図1に示すように、第一鋳造ロール21および第二鋳造ロール22にそれぞれ設置されるホース31,32とすることができる。ホース31,32は、中空となっており、その内部に水や油などの熱媒体が供給されるようになっている。この熱媒体の温度を調節することによって、一対の鋳造ロール20(21,22)のそれぞれの鋳造ロール21,22を加熱することができるように構成される。鋳造ロール加熱部30により加熱される一対の鋳造ロール20(21,22)の温度は、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができる温度であれば良い。なお、熱媒体として、例えば水を用いる場合には、特に限定されないが、一対の鋳造ロール20(21,22)の温度を約90℃とすることができる。
鋳造ロール加熱部30は、一対の鋳造ロール20(21,22)を所定の温度に加熱することができるものであれば良く、例えば、一対の鋳造ロール20(21,22)の周りに設置される電熱線35とすることができる。電熱線35に電流が流れることにより発生する熱によって、一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱することとすることができる。また例えば、鋳造ロール加熱部30は、一対の鋳造ロール20(21,22)に対して熱風を当てることにより、一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱するものであっても良い。さらに例えば、鋳造ロール加熱部30は、一対の鋳造ロール20(21,22)の外側からガスなどを用いて加熱するものであっても良い。鋳造ロール加熱部30により加熱される一対の鋳造ロール20(21,22)の温度は、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができる温度であれば良く、鋳造ロール加熱部30として電熱線35や熱風、ガス等を用いて一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱する場合には、特に限定されないが、一対の鋳造ロール20(21,22)の温度を約150℃〜約300℃とすることができる。
一対の鋳造ロール20(21,22)を加熱することにより、上述した温度に加熱されるとともに溶解されたマグネシウム複合材料から一対の鋳造ロール20(21,22)への抜熱を抑制することができるようになる。したがって、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100によれば、マグネシウム相の冷却速度と析出物の析出速度と金属間化合物の形成速度との間に差が生じることを防ぐことができるとともに、リップルマーク、割れの発生およびマグネシウム鋳造板材の内部に形成されやすい凝固偏析を防ぐことができるようになる。
接触長調節機構40は、マグネシウム複合材料と一対の鋳造ロール20(21,22)とを接触する接触長を短くするためのものである。この接触長調節機構40は、一対の鋳造ロール20(21,22)の間隔を調節する鋳造ロール間隔調節部50と、溶湯炉10の開口部11から出湯されるマグネシウム複合材料の液圧を調節する液圧調節部60と、を含むこととすることができる。
鋳造ロール間隔調節部50は、図1に示すように、例えば、第一鋳造ロール21の高さを調節するための第一鋳造ロール調節部51を有することとすることができる。
ここで、第二鋳造ロール22は、図1に示すように、第二鋳造ロール22を軸支する軸受部24を介して、ベース25に設置されている。ベース25は、一対の鋳造ロール20(21,22)などの基礎となるものである。
ベース25には、第一鋳造ロール調節部51を支持する支柱53が設置される。支柱53には、一端側にレールが設置されるレール板55が設置される。レール板55には、レール板に設けられたレール上を移動可能に配置される移動部57が配置される。移動部57は、第一鋳造ロール21を軸支する軸受部23を介して第一鋳造ロール21に隣接されている。そして、移動部57が移動すると、第一鋳造ロール21も移動するように構成されている。
第一鋳造ロール調節部51を操作することによって、軸受部23および移動部57がレール板55上を摺動して、図1における紙面上下方向に移動し、第一鋳造ロール21も図1における紙面上下方向に移動することとなる。したがって、第一鋳造ロール調節部51によって、第一鋳造ロール21と第二鋳造ロール22との間隔を調節することができるようになっている。
液圧調節部60は、溶湯炉10の開口部11から出湯されるマグネシウム複合材料の液圧を調節するためのものである。液圧調節部60は、例えば、図1に示すように、溶湯炉10に隣接して設置される。
接触長調節機構40としての鋳造ロール間隔調節部50および液圧調節部60は、例えば、液圧調節部60によって開口部11から出湯されるマグネシウム複合材料の液圧を高めるとともに、鋳造ロール間隔調節部50によって一対の鋳造ロール20(21,22)の間隔を狭くすることによって、マグネシウム複合材料と一対の鋳造ロール20(21,22)とを接触する接触長を短くすることができるようになっている。そして、マグネシウム複合材料と一対の鋳造ロール20(21,22)とを接触する接触長を短くすることによって、一対の鋳造ロール20(21,22)による抜熱を抑制することができるようになっている。
なお、本実施形態に係る一対の鋳造ロール20(21,22)には、そのロール面に、溝27が形成されている。一対の鋳造ロール20(21,22)に溝27を形成することにより、マグネシウム複合材料の割れを防ぐことができるとともに、マグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)から剥がすための離型剤を塗布することなくマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)から剥がすことができるようになる。また、本実施形態に係る一対の鋳造ロール20(21,22)の近傍には、溝27の間に塵などが付着することを防ぐために、溝27に空気を噴射して塵などを吹き飛ばす空気噴射手段29を備えることとすることができる。このような構成により、塵などがマグネシウム複合材料の内部に入り込むことを防ぐことができ、健全なマグネシウム鋳造板材を得ることができることとなる。
また、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100は、図1および図2に示すように、一対の鋳造ロール20(21,22)の下流側に、マグネシウム鋳造板材を搬送するためのコンベヤ71と、一対の鋳造ロール20(21,22)とコンベヤ71との間にマグネシウム鋳造板材をコンベヤ71に送り移すためのブリッジ部73と、を備えることとすることができる。ブリッジ部73は、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過したマグネシウム鋳造板材が完全に固化していない場合に、重力によりマグネシウム鋳造板材が下方に下がったり、湾曲したりすることを防ぐことができるものであれば、どのような形状であっても良い。また、ブリッジ部73は、取外し可能に設置され、設置位置を変更することができるように構成しても良い。ブリッジ部73を設置する場合、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100は、ブリッジ部73を加熱するブリッジ部加熱部75を備えることとすることができる。そして、ブリッジ部加熱部75により加熱されたブリッジ部73は、抜熱抑制手段90に含まれることになる。
そして、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、例えば、不図示の加熱装置によって加熱されながら徐冷されることとすることができる。また例えば、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、マグネシウム鋳造板材を覆う断熱材(不図示)によって覆われ、徐冷されることとすることができる。さらに例えば、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材は、マグネシウム鋳造板材に水を噴射する水噴射手段(不図示)によって、水をかけることにより徐冷されることとすることができる。不図示の水噴射手段によりマグネシウム鋳造板材にかけられる水は、特に限定されないが、約60℃以上とすることができる。また、不図示の水噴射手段によってマグネシウム鋳造板材にかけられる水は、霧状とすることができる。なお、マグネシウム鋳造板材にかけられる霧状の水の温度は、マグネシウム鋳造板材の割れを防ぐことができれば、特に限定されず、60℃以上であっても良いし、60℃以下であっても良い。
このように、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過して板状となったマグネシウム鋳造板材が急冷されることを防ぐことにより、割れのない健全なマグネシウム鋳造板材を得ることができるようになる。
以上、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100の構成例について、説明した。
[マグネシウム鋳造板材]
次に、上述した抜熱抑制工程を施されて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の特徴を示す分析結果および試験結果について説明することとする。
発明者らは、双ロール鋳造方法により得られたマグネシウム鋳造板材を切断して樹脂に埋め込み、顕微鏡にてミクロ観察した。その結果を、図3および図4に示す。ここで、図3中の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板面のミクロ観察写真を示す図であり、図3中の分図(b)および分図(c)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面のミクロ観察写真を示す図である。また、図4中の分図(a)は、比較例としての従来技術に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板面のミクロ観察写真を示す図であり、図4中の分図(b)および分図(c)は、比較例としての従来技術に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面のミクロ観察写真を示す図である。
なお、本実施形態でのミクロ観察による金属組織の評価は、樹脂に埋め込まれたマグネシウム鋳造板材を腐食した上で、顕微鏡写真を撮影することによって得られたミクロ写真に基づき、腐食面に表れたミクロ組織を目視観察する方法で行った。
図3中の分図(a)ないし分図(c)にて示されるように、本実施形態に係る双ロール鋳造方法で鋳造されたマグネシウム鋳造板材では、マグネシウム鋳造板材の板面および断面のいずれにおいても、割れや空隙の発生は確認されず、良好な等軸粒状結晶を有する均一組織を観察することができた。
一方、従来の双ロール鋳造方法を採用した場合には、図4中の分図(a)および分図(b)にて示されるように、マグネシウム鋳造板材の板面には割れや空隙が観察された。また、図4中の分図(b)および(c)にて示されるように、板厚中心部に結晶粒状を有していない半凝固部が形成され、従来の双ロール鋳造方法により鋳造されたマグネシウム鋳造板材では、偏析の発生が観察された。
さらに、発明者らは、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材について、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、反射電子(Backscattered Electron)を観察することにより組成像の観察を行った。その結果を、図に示す。なお、本実施形態でのSEM観察は、鋳造方向に対して略垂直方向から観察を行った。ここで、図5の分図(a)は、マグネシウム複合材料としてAMX602を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のSEM観察写真を示す図であり、図5中の分図(b)は、分図(a)にて示されたマグネシウム鋳造板材のSEM観察写真の拡大組織を示す図である。
図5中の分図(a)および分図(b)にて示されるように、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材は、均一な等軸粒であり、ダイカスト(Die−casting:DC)鋳造材と異なり、デンドライト組織を呈していないことが分かった。また、図5の分図(b)にて示されるように、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材は、巣などを有していないことが確認された。さらに、金属間化合物であるAlCa化合物は、マグネシウム相に微細分散し、DC鋳造材と異なり、網状組織を呈していないことが分かった。なお、マグネシウム材料に添加する金属により、形成される金属間化合物は異なるが、同様の事象が観察された。
またさらに、発明者らは、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材について、SEMに後方電子散乱回折(Electron BackScatter Diffraction:EBSD)測定装置(株式会社TLS社製、OIM Data Collection)を付属させ、SEM−EBSDにより微細組織を観察および測定した。なお、データ収集および解析ソフトは、OIM Analysisを用いた。その結果を、図6〜図8に示す。ここで、図6は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材のSEM−EBSD観察を示す図である。図6中の分図(a)は、SEM観察写真を示す図であり、図6の分図(b)は、SEM−EBSD観察写真を示す図である。
図6にて示すように、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材は、板厚中心部と板厚方向端部とで結晶組織が異なっていることが分かった。この結果を踏まえ、発明者らは、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材について、板厚中心部と板厚方向端部とに分けて、SEM−EBSD観察および解析を行った。その結果を図7および図8に示す。ここで、図7は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部におけるSEM−EBSDの観察および解析結果を示す図であり、図7の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部における微細組織を示す図であり、図7の分図(b)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部における微細組織の結晶方位差を示す図であり、図7の分図(c)は、001極の極点図を示す図である。また、図8は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部におけるSEM−EBSDの観察および解析結果を示す図であり、図8の分図(a)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部における微細組織を示す図であり、図8の分図(b)は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部における微細組織の結晶方位差を示す図であり、図8の分図(c)は、001極の極点図を示す図である。
図7の分図(a)にて示されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部の組織は、平均粒径が28μmであり、面積頻度が30μm以内で最大となった。そして、図7の分図(b)にて示されたマグネシウム鋳造板材の板厚中心部の結晶方位差を解析した結果、結晶方位差が15°以上である高傾角粒界が95%であり、結晶方位差が5°以上15°未満である低傾角粒界が5%であった。また、図7中の分図(c)に示すように、マグネシウム鋳造板材の板厚中心部の結晶方位は、特定の方位を示しておらず、ランダムであることが分かった。
板厚中心部の組織について、鏡面研磨を行った場合に偏析が見られても、SEM−EBSDにより結晶方位解析を行うと、結晶粒は結合しており、良好な結晶組織が形成されていることを確認することができた。
一方、図8の分図(a)にて示されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部の結晶組織は、平均粒径が150μmであり、面積頻度が100μm以上で最大となった。最大粒径は約240μmであり、板厚中心部の結晶組織の方が、板厚方向端部の結晶組織より細かいことが分かった。そして、図8の分図(b)にて示されたマグネシウム鋳造板材の板厚方向端部の結晶方位差を解析した結果、結晶方位差が15°以上である高傾角粒界が93.9%であり、結晶方位差が5°以上15°未満である低傾角粒界が3.2%であり、結晶方位差が2°以上5°未満である亜粒界(サブグレイン)が2.9%であった。また、図8中の分図(c)に示すように、マグネシウム鋳造板材の板厚方向端部の結晶方位は、マグネシウム鋳造板材の板厚中心部よりも集合組織が強くなっているが単に視野に占める特定方向の結晶粒が多いためであると考えられ、特定の方位は示しておらず、ランダムであることが分かった。
図8中の分図(a)および分図(b)において、丸で囲まれている箇所は、顕微鏡では粗大粒と認識するが、SEM−EBSDによる結晶方位解析より、一部又は全部が低角粒界で囲まれたセル状の領域であるサブグレイン(亜粒界)の集合体であり、粗大粒の内部に明確なサブグレインを有していることが分かった。サブグレインを有する粗大粒は、板厚中心部から離れるほど、結晶粒内部への合体又は成長によりサブグレインが観察されなくなった。
以上より、図6にて示すように、板厚中心部と板厚方向端部とに接合界面のようなものが形成されているが、結晶構造としては接合状態にあるものと考えられる。これらの混粒状態は、圧延加工前の加熱処理又は加工中に解消されるものと考えられる。
本実施形態に係る双ロール鋳造方法では、結晶粒内変形や回復、再結晶が結晶組織の形成に作用していると考えられるが、変形機構としては、主に粒界すべり(Grain Boundary Sliding:GBS)が作用しているとも考えられる。ここで、図9は、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図であり、図9中の分図(a)は、マグネシウム複合材としてAMX602を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図であり、図9の分図(b)は、マグネシウム複合材料としてAMX1001を用いて鋳造されたマグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図である。図9にて示すように、マグネシウム鋳造板材は、一部に粒内の湾曲(粒内変形や粒内すべり)が観察された。
GBSが連続的に生じることで微細な空隙が形成され、空隙の成長又は合体に伴う割れを形成することから、連続的にGBSが生じない必要がある。本実施形態に係る双ロール鋳造方法において、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制しても、全体的にではなく局所的に凝固相を組むことで、マグネシウム複合材料の内部で内部摩擦のような状態が作用し、GBSが変形機構になり得ることを示唆しているとともに、局所的な凝固相の現出により連続的なGBSが生じることを防ぐことができると考えられる。
したがって、本実施形態に係る双ロール鋳造方法により鋳造されたマグネシウム鋳造板材は、マグネシウム結晶粒界やマグネシウム相と金属間化合物との界面において、GBSによる割れが生じないこととなる。
また、発明者らは、種々の成分組成を有するマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)にて鋳造して得られるマグネシウム鋳造板材の機械的性質の測定を行った。その結果を、表1に示す。ここで、マグネシウム複合材料として、実施例1〜4はAMX602、実施例5〜8はAZ31、実施例9〜12はAZX311、実施例13および14はAZX611、実施例15〜17はAZX612、実施例18および19はAZX310.3、実施例20〜22はAMX1001を用いた。また、降伏強度、極限引張強度および破断伸びの測定方法は、国際規格に基づいて行った。
マグネシウム鋳造板材の降伏強度は60MPa以上120MPa以下であり、極限引張強度は90MPa以上195MPa以下であり、破断伸びは1%以上18%以下となっている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、マグネシウム複合材料として、AMX602、AZ31、AZX311、AZX611、AZX612、AZX310.3、およびAMX1001を用いたが、これらに限定されず、例えばカルシウムなどを添加されたマグネシウムとすることができる。
また、例えば、抜熱抑制手段90は、一対の鋳造ロール20(21,22)の間を通過した後のマグネシウム複合材料の温度を、当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下とすることができれば良く、鋳造ロール加熱部30のみから構成されることとしても良い。
さらに、例えば、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100は、離型剤を塗布することなくマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロール20(21,22)から剥がすことができるように、一対の鋳造ロール20(21,22)に形成される溝27に加え、一対の鋳造ロール20(21,22)の下流側に設置されるスクレイパー77を備えることとすることができる。スクレイパー77は、マグネシウム複合材料が鋳造ロール21,22に付着することを防止するためのものである。スクレイパー77を用いる場合には、スクレイパー77を加熱するスクレイパー加熱部79を備えることとすることができる。スクレイパー加熱部79は、スクレイパー77を加熱するためのものであり、例えば、スクレイパー77の周りに設置される電熱線とすることができる。電熱線に電流が流れることにより発生する熱によって、スクレイパー77を加熱することとすることができる。スクレイパー加熱部79を備え、スクレイパー加熱部79によって加熱されたスクレイパー77は、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制することができ、抜熱抑制手段90に含まれることとなる。なお、スクレイパー77は、特に限定されないが、第二鋳造ロール22の下流側に設置されることが好ましい。なお、本実施形態に係る双ロール鋳造装置100は、スクレイパー77を設置しなくとも、マグネシウム鋳造板材を得ることが可能となっている。なお、例えば、一対の鋳造ロール20(21,22)側のブリッジ部73の形状を、一対の鋳造ロール20(21,22)の方向に向けて先細りにすることによって、ブリッジ部73をスクレイパー77として用いることもできるようになる。
またさらに、例えば、開口部11に、溶湯炉10にて溶解されたマグネシウム複合材料を出湯させるノズル81を設置することとすることができる。このノズル81は、ノズル81を加熱するためのノズル加熱部83を備えることとすることができる。そして、ノズル加熱部83によりノズル81が加熱されることによって、ノズル81は、マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制手段90に含まれることとなる。
また、例えば、本実施形態に係る双ロール鋳造方法にて鋳造されたマグネシウム鋳造板材は、図10に示すように、マグネシウム鋳造板材の表面および裏面に溝が形成されることとすることができる。このような溝は、鋳造ロール20のロール表面に溝を形成することで、マグネシウム鋳造板材の表面および裏面に対してロール表面の溝とは逆の溝を形成することができる。マグネシウム鋳造板材の表面および裏面に溝を形成することによって、離型剤を用いることなく高速鋳造することができるようになる。なお、マグネシウム鋳造板材の表面および裏面に形成される溝の深さは、特に限定されないが、深過ぎると板圧制御が難しくなるため、マグネシウム鋳造板材の品質等も考慮して、0.2mm以下とすることが好ましく、0.05mm以上0.1mm以下とすることがより好ましい。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1,100 双ロール鋳造装置、10 溶湯炉、11 開口部、20 鋳造ロール、21 第一鋳造ロール、22 第二鋳造ロール、23,24 軸受部、25 ベース、27 溝、29 空気噴射手段、30 鋳造ロール加熱部、31,32 ホース、35 電熱線、40 接触長調節機構、50 鋳造ロール間隔調節部、51 第一鋳造ロール調節部、53 支柱、55 レール板、57 移動部、60 液圧調節部、71 コンベヤ、73 ブリッジ部、75 ブリッジ部加熱部、77 スクレイパー、79 スクレイパー加熱部、81 ノズル、83 ノズル加熱部、90 抜熱抑制手段。

Claims (2)

  1. 溶解したマグネシウム複合材料を一対の鋳造ロールにて鋳造し、鋳造されたマグネシウム鋳造板材を得る双ロール鋳造方法であって、
    前記マグネシウム複合材料からの抜熱を抑制する抜熱抑制工程を有し、また、
    前記マグネシウム鋳造板材を覆う断熱材によって前記マグネシウム鋳造板材を覆い徐冷する工程を有し、
    当該双ロール鋳造方法を行う双ロール鋳造装置が、
    前記一対の鋳造ロールの下流側には、前記マグネシウム鋳造板材を搬送するためのコンベヤと、
    前記一対の鋳造ロールと前記コンベヤとの間に、前記マグネシウム鋳造板材を前記コンベヤに送り移すためのブリッジ部と、を備え、
    前記抜熱抑制工程は、
    前記一対の鋳造ロールの間を通過した後の前記マグネシウム複合材料の温度を、当該マグネシウム複合材料の固相線温度以上液相線温度以下とすること、
    前記一対の鋳造ロールの間に供給される前記マグネシウム複合材料の温度を、610℃以上750℃以下とした後に施されること、
    前記一対の鋳造ロールを加熱すること、
    前記マグネシウム複合材料が前記一対の鋳造ロールと接触する接触長を短くすること、および、
    前記ブリッジ部を加熱すること、
    により行われ、さらに、
    前記一対の鋳造ロールのロール周速度を5m/min以上25m/min以下とすることで、
    鋳造されたマグネシウム鋳造板材が、当該マグネシウム鋳造板材の断面を走査型電子顕微鏡で観察したときに、粒界すべりが生じているように製造されることを特徴とする双ロール鋳造方法。
  2. 請求項1に記載の双ロール鋳造方法において、
    前記一対の鋳造ロールのロール周速度を15m/min以上18m/min以下とすることを特徴とする双ロール鋳造方法。
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