JP2003273400A - 半導体発光素子 - Google Patents

半導体発光素子

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JP2003273400A
JP2003273400A JP2002070165A JP2002070165A JP2003273400A JP 2003273400 A JP2003273400 A JP 2003273400A JP 2002070165 A JP2002070165 A JP 2002070165A JP 2002070165 A JP2002070165 A JP 2002070165A JP 2003273400 A JP2003273400 A JP 2003273400A
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light emitting
substrate
nio
zno
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JP2002070165A
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Hideaki Maruta
秀昭 丸田
Hideo Hosono
秀雄 細野
Hiromichi Ota
裕道 太田
Masahiro Hirano
正浩 平野
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Japan Science and Technology Agency
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Japan Science and Technology Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 青色系の半導体発光素子に適したp形層を実
現させ、さらにはその結晶性を向上させることにより、
青色系の発光材料として適したZnO系化合物などの半
導体層を発光層部に用いて、発光特性の優れた青色系の
LEDやLDなどを提供する。 【解決手段】 基板1の一主面上に、n形クラッド層
4、活性層5およびp形クラッド層6を少なくとも具備
する発光層形成部8が設けられている。そして、活性層
5は基板1の一主面に垂直方向にc軸配向しており、p
形クラッド層6がNiOからなっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、p形層としてNi
O層を用いた発光ダイオードやレーザダイオードなどの
半導体発光素子に関する。さらに詳しくは、NiO層を
p形層として用いることにより、格子定数などが異なる
半導体層上に積層しても、発光効率の向上などの素子特
性を向上することができる半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】高度情報化社会の発達に伴い、記録メデ
ィアの高密度化が進んでおり、たとえば光ディスクの記
録、再生はコンパクトディスクから、より高密度記録可
能なDVD(デジタル多用途ディスク;digital versat
ile disk)へと変化している。光ディスクでは、記録、
再生は光を使って行うため、波長の短い光を用いること
ができれば記録密度を増加させることができる。このた
め、青色系(紫外から黄色の波長領域を意味する、以下
同じ)の発光ダイオード(以下、LEDという)や、青
色系レーザダイオード(以下、LDという)の実用化が
進められており、最近サファイア基板の(0001)面
上にGaN系化合物半導体を積層することにより得られ
るようになり脚光を浴びている。
【0003】一方、ZnO系化合物半導体は、そのエキ
シトン(励起子;電子と正孔がクーロン力により束縛さ
れてペアを作ったもの)の結合エネルギー(束縛エネル
ギー)が60meVと非常に大きく、このエキシトンは
一旦形成されると光子を生成し、効率よく発光するた
め、発光素子材料として注目されている。さらに、Zn
Oは高電気伝導性、可視領域での光透過性を利用して太
陽電池用の透明導電膜として検討されているほか、緑色
の蛍光材料としても広く応用されており、ZnOは室温
でのバンドギャップエネルギーが約3.38eVの直接
遷移型の半導体であり、紫外光励起により紫外領域(室
温では波長380nm)の蛍光を示すことやZnOにC
dを混晶させることによりバンドギャップエネルギーの
ナロー化がなされることが知られており、これら性質を
利用したZnO系化合物半導体からなる青色系の発光素
子の研究開発も盛んに行われている。
【0004】一般にLEDやLDを作製するには、p形
半導体とn形半導体を接合する必要がある。ZnOは酸
素欠陥もしくは格子間亜鉛によりn形化するため、n形
ZnOを作製することは容易であるが、p形ZnOを作
製することは困難とされており、ZnOの亜鉛の一部を
Gaで置換した焼結体ターゲットを用いて、パルスレー
ザーデポジション法(以下、PLD法という)によりN
2Oガス中で成膜することにより、co−dope効果
によるホール濃度を増加させ、p形を作製する方法など
の研究が現在進められている。しかし、再現性などの点
から実用化の段階には至っていない。
【0005】また、p形層としてZnOではないp形を
示す酸化物を用いることも試みられており、p形層に酸
化ストロンチウム銅(以下、SrCu22という)を用
いた発光素子が作製されたという報告例(H. Ohta et a
l. Appl. Phys. Lett.77巻、475頁2000年)が
ある。しかしながら、SrCu22は水によりたやすく
分解される性質があり、大気中で発光素子を駆動すると
大気中に含まれる水分によって材料が分解し、発光素子
の寿命が短くなるという問題がある。さらに、Cuイオ
ンには1価と2価があり、青色系発光をさせるにはCu
が1価であることが必要であるが、どちらの価数も安定
なため、成長条件によっては、SrCu 22が容易にC
uの2価の酸化物(SrCuO2)に変化してしまう
が、生成された2価のCuを含むSrCuO2のバンド
ギャップエネルギーは約2eVである。そのため、発光
素子を作製しても電子とホールの再結合はバンドギャッ
プエネルギーの狭いSrCuO2で起こってしまい、青
色系発光素子を作製することが極めて困難であるという
問題もある。
【0006】一方、n形ZnOとの接合に適するp形半
導体層としてSrCu22以外にNiOを用いることが
考えられる。NiOは室温でのバンドギャップエネルギ
ーが約3.7eVの間接遷移型半導体であり、p形伝導
を示す。結晶系は立方晶系(NaCl構造)であり、堆
積時の基板温度が室温以上であれば、単一相であるNi
Oとして形成することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、NiO
はドーパントをドーピングしなくてもp形を呈するた
め、p形層を得られやすく、しかもバンドギャップエネ
ルギーも3.7eVと青色系に用いる活性層のバンドギ
ャップエネルギーより大きいため、青色系半導体発光素
子のp形層として用いることが考えられている。しか
し、活性層またはn形層として使用することが考えられ
るZnO系化合物は六方晶でその格子定数は、c軸長が
0.5213nmで、a軸長が0.325nmであるのに
対して、NiOは立方晶で、その格子定数が0.417
6nmであるため、格子整合をし難く、しかもZnO系
化合物半導体層自体も、その基板として考えられている
サファイア基板との格子整合も得られないため、NiO
層は隙間の多い柱状の成長となり、結晶性のよいNiO
層が得られず、発光素子として実現していない。とく
に、LDを形成する場合、結晶性が悪いとリーク電流が
増えてしきい電流値の小さい高特性の半導体レーザが得
られない。
【0008】本発明はこのような問題を解決するために
なされたもので、青色系の半導体発光素子に適したp形
層を実現させることにより、発光能力に優れたZnO系
化合物などの半導体層を発光層部に用いて、青色系の発
光材料として適したLEDなどの半導体発光素子を提供
することにある。
【0009】本発明の他の目的は、p形層としてNiO
層を用い、その結晶性を向上させることにより、リーク
電流の少ない高特性のLDやさらに高輝度のLEDな
ど、高特性の青色系半導体発光素子を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、たとえば
エキシトンの結合エネルギーの大きいZnO系化合物を
発光層部分に用いながら、p形層の得にくいZnO系化
合物の代りにNiO層を用いることにより、高輝度のL
EDやLDなどの化合物半導体発光素子を得るため鋭意
検討を重ねた結果、NiO層の下地となる発光層部分の
結晶性を向上させたり、NiO層とその下層との界面の
ヘテロ接合による格子歪緩和層が数原子層以下程度にな
るようにきれいな界面とする、などの手段を講ずること
により、結晶構造や格子定数の異なるZnO系化合物半
導体層上に積層されるNiO層を、結晶性の良い層とし
て成長することができて、高輝度の発光素子を得ること
ができ、さらには基板の一主面と垂直方向のみならず水
平方向にも配向性を有するように形成することもでき、
LD特性なども向上させることができることを見出し
た。
【0011】とくに、たとえば発光層部にZnO系化合
物を用い、発光層形成部を、クラッド層により活性層を
挟持するダブルヘテロ構造により形成し、その活性層
を、基板の一主面に垂直方向にc軸配向させて結晶性を
よくすることにより、さらに望ましくは、その一主面の
面内にもa軸配向をさせた結晶性の優れた層とすること
により、NiO層の結晶性を余り気にしなくても、LE
Dとして充分に使用し得る発光素子が得られることを見
出した。
【0012】本発明による青色系の半導体発光素子は、
基板と、該基板の一主面上に設けられ、n形クラッド
層、活性層およびp形クラッド層を少なくとも具備する
発光層形成部とを有し、前記活性層が前記基板の一主面
に垂直方向にc軸配向しており、前記p形クラッド層が
NiOからなっている。
【0013】ここに「c軸配向」とは、結晶のc軸方向
がある程度揃っていることを意味し、完全に揃っている
ことを必要とするものではない。また、「垂直方向にc
軸配向」とは、基板表面(一主面)と完全に垂直方向に
c軸配向している必要はなく、ほぼ垂直方向という意味
で、たとえば図4に示されるように、基板面と垂直方向
に対して5°程度以下の傾いているものも含む意味であ
る。
【0014】この構造にすることにより、ヘテロ接合で
あっても、NiO層の下層がきれいな結晶層になってお
り、NiO層とZnO系化合物層との間に良好なヘテロ
界面が形成ているため、たとえばZnO系化合物を発光
層部に用いることにより、p形層からの正孔の供給を充
分に行うことができると共に、p形層での電流ロス、光
吸収の発生を抑制することができ、高効率の発光素子と
することができる。
【0015】前記活性層が、さらに前記基板の主面と平
行方向にa軸配向していることにより、NiO層とZn
O系化合物層との間に、さらに良好な界面が形成される
ためとくに好ましい。
【0016】ここに「a軸配向」とは、a軸方向がほぼ
同一方向を向くことを意味し、完全にはa軸が揃う必要
はなく、さらに、たとえばZnO系化合物のように、あ
る1つの面内でa軸配向するドメインと、それに対して
30°回転したa軸配向ドメインとが混在する場合があ
るが、この場合、その30°回転ドメインも含み、その
混在により転位が生じても支障はない。
【0017】前記n形クラッド層および活性層がZnO
系酸化物からなることにより、エキシトンの結合エネル
ギーの大きいZnO系化合物半導体を活性層として使用
しながら、NiO層によりp形層が得られるため、青色
系の半導体発光素子としてとくに好ましい。
【0018】ここに「ZnO系化合物」とは、Znを含
む酸化物、具体例としてはZnOの他IIA族元素とZn
またはIIB族元素とZnまたはIIA族元素およびIIB族
元素とZnのそれぞれの酸化物であることを意味する。
【0019】前記基板がサファイアからなり、該基板の
一主面がサファイアの(0001)面(以下、C面とも
いう)と直交する面、たとえば(11−20)面(以
下、A面ともいう)であれば、サファイアのc軸がその
一主面に平行に現れ、その上に成長するZnO層のa軸
長の4倍(1.30nm)とサファイア基板のc軸長
(1.2991nm)とがほぼ同じになるため、非常に
整合性よく成長する。そのため、ZnO系化合物層の結
晶性が優れ、その上に成長されるNiO層とZnO系化
合物層との間の界面が良好になる。ここに「サファイア
のC面と直交する」とは、通常の基板製作仕様上許容さ
れる±1°以内のものを含む意味である。
【0020】前記p形層の下面に5原子層以下の格子歪
緩和層が形成されることにより、NiO層とZnO系化
合物層との間の界面が良好になるため好ましい。
【0021】前記NiOからなるp形クラッド層の結晶
構造が、前記基板の一主面と垂直方向に配向性を有する
ように形成されれば、NiO層も結晶性の優れたp形層
となるため、p形層でのキャリアの移動度を高めること
ができ、電流ロス、光吸収の発生を抑制することができ
るため、高効率の発光素子とすることができる。ここに
「配向性を有する」とは、結晶軸の方向がランダムな結
晶構造ではなく、結晶軸の方向がある程度揃っているこ
とを意味し、完全に揃っていることを必要とするもので
はない。
【0022】前記p形クラッド層が、さらに前記基板の
主面と平行方向にa軸配向していれば、さらにNiO層
の結晶性も向上し、発光特性が良好になると共に、LD
としてもしきい電流値が下がり、非常に高性能な半導体
発光素子が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】つぎに、図面を参照しながら本発
明の半導体発光素子について説明をする。本発明による
青色系の半導体発光素子は、図1にその一実施形態であ
るLEDチップの斜視説明図が示されるように、基板1
の一主面上に、n形クラッド層4、活性層5およびp形
クラッド層6を少なくとも具備する発光層形成部8が設
けられている。そして、活性層5は基板1の一主面に垂
直方向にc軸配向しており、p形クラッド層6がNiO
からなっていることに特徴がある。
【0024】図1に示される例では、基板1として、A
面を一主面とするサファイア基板が用いられている。こ
れは、後述するように、この上に堆積するZnO系化合
物半導体層の結晶性を良好にし、発光特性を向上させる
と共に、その上に堆積されるNiOからなるp形クラッ
ド層6との間に良好な界面を形成するためである。しか
し、結晶性を良好にする他の手段が用いられれば、とく
に基板材料およびその一主面の結晶面には限定されず、
たとえば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル
などのプラスチック基板、石英ガラス、パイレックス
(登録商標)ガラスなどのガラス基板、YSZ、サファ
イアなどの結晶性基板などを用いることもできる。この
場合でも、ZnO層、NiO層などの成膜プロセスに耐
える化学的性質を有するものであることが必要である。
また、LEDで基板裏面から光を取り出す場合には、3
80nmにおける光透過率の良いものが好ましく、たと
えば50〜100%、さらに好ましくは80〜100%
の透過率を有すものが好ましい。さらに、ガラス基板や
結晶性基板は、光透過率を高めるために、両面を光学的
鏡面に研磨してあることが好ましい。
【0025】サファイアのA面は、図2(a)にサファ
イア単結晶の代表的な面方位が、図2(b)に単結晶の
C面の正面図が示されるように、C面の格子の1つおき
の格子を結ぶ線分のC面と垂直な面で、サファイア単結
晶の(11−20)の面方位で示される面である。この
面方位は6回対称で、図2(b)に示されるように、1
つの六角柱にて形成される結晶で6か所ある。このA面
であれば、前述のようにサファイアのc軸長がZnOの
a軸長の4個分に対応して、優れた結晶構造が得られる
と考えられる。しかし、必ずしもA面でなくても、図2
(b)のXで示されるように、A面がC面内で回転する
ような面でもC面に対して直角になり、同様の結晶構造
を得ることができる。なお、このC面に対して直角(直
交)というのは、ほぼ直角という程度のもので、通常の
面方位の誤差である±1°程度の範囲は結晶軸長のズレ
には影響しない。
【0026】発光層形成部8は、図1に示される例で
は、サファイア基板1上に、5nm程度の厚さのアンド
ープZnOからなるバッファー層2およびGaをドープ
したn形ZnOからなり、1μm程度の厚さのコンタク
ト層3を介して設けられている。この発光層形成部8
は、GaドープもしくはアンドープのMgy Zn1-y
(0<y<1、たとえばy=0.25)からなるn形ク
ラッド層4が0.5μm程度、Mgx Zn1-x O(0≦
x<1、かつ、クラッド層よりバンドギャップエネルギ
ーが小さくなる組成、たとえばx=0)からなる活性層
5が0.3μm程度、LiをドープしたNi Oからなる
p形クラッド層6が0.2μm程度、それぞれ積層され
ることにより、ダブルヘテロ構造に形成されている。コ
ンタクト層3は、後述するn側電極9を形成するため、
できるだけキャリア濃度が大きい方が好ましく、1×1
18〜1×1020cm-3程度の範囲に形成され、n形ク
ラッド層4は、高い発光効率を得るためにキャリア濃度
が1×1018cm-3以下であることが望ましい。
【0027】なお、活性層5は、非発光再結合中心の形
成を避けるため、アンドープであることが好ましい。ま
た、その観点から、クラッド層の活性層5側の不純物濃
度をあまり大きくしない方がよい場合には、たとえばp
形層をクラッド層とコンタクト層(電流拡散層)とに分
けてコンタクト層のキャリア濃度をより大きくしたり、
1層でキャリア濃度に勾配をもたせてもよい。これらの
基板1上に積層される半導体層全てを纏めて半導体積層
部11という。なお、n形およびp形クラッド層4、6
は、活性層5よりバンドギャップが大きく、キャリアを
活性層5内に有効に閉じ込める効果を有するように形成
されている。これらの半導体層は、前述のMBE装置ま
たはPLD法で連続的に成長される。
【0028】前述のように、本発明者らがこの構造の半
導体発光素子でしきい値電流の小さいLDを得るため、
また、LEDでも高効率で発光させるため鋭意検討を重
ねた結果、NiO層の下地となる発光層部分の結晶性を
向上させたり、NiO層とその下層との界面のヘテロ接
合による格子歪緩和層が数原子層以下程度になるように
成長する、などのNiO層とZnO系化合物半導体層間
の良好な界面を得る手段を講ずることにより、結晶構造
や格子定数の異なるZnO系化合物半導体層上に積層さ
れるNiO層をきれいな界面で積層することができて、
高輝度の発光素子を得ることができ、さらには基板の一
主面と垂直方向のみならず水平方向にも配向性を有する
ように形成することもでき、LD特性なども向上させる
ことができることを見出した。さらに、NiO層6をそ
の結晶構造が基板1の一主面(半導体層が積層される表
面)に対して垂直方向のみならず、面内でも配向性を有
するように成長させることにより、より一層高特性の発
光素子が得られることを見出した。図1に示される例で
は、その下層である少なくとも活性層5の結晶構造を垂
直方向のみならず、面内でも結晶性良く配向させる構造
が用いられている。
【0029】すなわち、図3にA面を主面とするサファ
イア基板1に、ZnO系化合物からなるn形クラッド層
4と活性層5を積層した状態における活性層5の結晶軸
の方向が示されているように、基板1の主面と垂直方向
にc軸配向をし、面内でa軸配向をするようにZnO系
化合物が成長されている。この面内配向をa軸配向にす
ると共に、前述のように、基板にA面を主面とするサフ
ァイア基板を用いることにより、サファイア基板1のc
軸長とZnO系化合物のa軸の4倍の長さとが殆ど一致
するため、きれいに配向する。すなわち、青色系発光が
得られたGaN系化合物で基板として用いられているサ
ファイア基板はC面を主面とする基板が用いられてお
り、ZnO系化合物を成長するのに用いる場合でも、一
般的にはC面を主面とするサファイア基板が用いられる
が、サファイアのa軸長asは0.4754nmであるの
に対して、ZnOのa軸長azは0.325nmであるた
め、その不整合度((az−as)/as)は−31.6%
と大きく、ZnO系化合物自体の面内配向が充分に得ら
れていなかった。
【0030】さらに、ZnOの結晶成長時の基板温度
や、ZnおよびO元素の供給量、さらに下部の基板の表
面処理方法などにもZnOの結晶性が左右され、これら
の改良によっても結晶性のよいZnO系化合物半導体層
が得られ、その上に堆積するNiO層の結晶性も改善す
ることができた。そのため、必ずしも面内でのa軸配向
が充分に得られなくても、垂直方向にc軸配向させて結
晶性をよくすれば、NiO層との界面をきれいにするこ
とができ、高輝度の半導体発光素子が得られた。
【0031】なお、このZnO系化合物は、a軸方向で
6回対称であるため、1つのa軸配向ドメインに対して
30°回転したa軸配向ドメインも発生し得る。この場
合、結晶間に転位が形成され得るが、このような30°
回転ドメインが含まれていても、その上に積層されるN
iO層の結晶性には影響がなく、本願発明でいう、「a
軸方向に配向」は、このような30°ドメインも含む意
味である。なお、a軸配向には、完全にa軸が一致して
いなくても、その結晶性に影響を受けないような僅かな
角度ずれは問題がなく、それらも含む意味である。
【0032】また、前述の基板の主面と「垂直方向にc
軸が配向」についても、必ずしも基板主面と完全に垂直
方向である必要はなく、ほぼ垂直方向にc軸が配向され
ておればよいという意味であり、たとえば図4に示され
るように、垂直方向Vに対して、たとえば5°程度以下
の角度θ傾いていても、活性層5の結晶性には影響しな
い。
【0033】NiO層6は、たとえばNiOの焼結体を
ターゲットとして、PLD法により堆積することができ
る。このNiOは、熱的、化学的に安定であるため、水
により分解されることはなく、大気中で素子特性の安定
性に優れた発光素子を作製することができる。また、こ
のNiO層はドーピングしなくてもp形が得られるが、
アクセプタとなるLiなどのアルカリ金属元素をドーピ
ングすることにより、容易に電気特性を制御することが
できる。たとえばLiをドーピングしたNiOの焼結体
をターゲットとしてPLD法によりNiO層を成膜する
と、そのNiO層(すなわちターゲット)中に含まれる
Li濃度とゼーベック係数との関係は、図5に示される
ように、Li濃度(at%)の増加に伴ってゼーベック
係数(μV/K)が減少しており、キャリア濃度が増加
していることが分る。なお、ドーパントとしては、Li
の他にNa、KなどのI族元素などを用いることができ
る。
【0034】このキャリア濃度としては、1×1016
1×1020/cm-3程度に設定される。キャリア濃度が
1×1016/cm-3より低いと正電極とのコンタクトを
取るのが難しく、キャリア濃度が1×1020/cm-3
り高いと、リーク電流が増大するため好ましくない。前
述のように、活性層はアンドープの方が発光には好まし
いため、不純物が活性層に拡散し難くするという面で
は、キャリア濃度を余り高くすることは好ましなく、一
方、電流をチップ全体に広げるためには、また、電極と
のオーミックコンタクト特性を向上させるためには、キ
ャリア濃度が大きい方が好ましい。この観点からは、こ
のp形層のキャリア濃度を活性層側と電極側とで変えて
形成することが好ましい。また、MBE法などにより堆
積する場合には、ドーパントの量を連続的に変化させて
そのキャリア濃度を連続的に変化させることもできる。
【0035】積層された半導体積層部11は、その一部
がエッチングにより除去されてn形コンタクト層3が露
出され、その露出するn形コンタクト層3上に、Ti/
AlまたはTi/Auなどの積層構造からなるn側電極
9が真空蒸着などにより形成されている。また、p形ク
ラッド層6の表面には、Ni/AuまたはPtなどの仕
事関数の大きい金属材料を真空蒸着などにより成膜して
p側電極10がリフトオフ法などにより設けられてい
る。このp側電極10は、NiOとのオーミックコンタ
クトがとれると共に、仕事関数の大きい材料が好まし
く、NiがNiOの酸素と反応して良好なオーミックコ
ンタクトが得られやすいと共に、仕事関数が大きく安価
であるため好ましい。この場合、その表面にAu膜を設
けるとワイヤボンディングをしやすいため好ましい。
【0036】つぎに、このLEDの製法について、具体
的実施例により説明をする。前述のように、A面を主面
とする(11−20)サファイア基板1をアセトンなど
により脱脂洗浄をし、サンプル導入室にて400℃程度
の仮加熱をし、余分な水分や有機物を飛ばす。その後、
7×10-7Pa以下の真空度に保たれたMBE装置に導
入し、再び700℃程度に加熱してサーマルクリーニン
グを行った。その後、基板温度を350℃程度に下げ、
酸素プラズマを2分ウォームアップしてからZnのセル
を開け、5nmのZnOからなるバッファ層2を堆積し
た。引き続きGaセルシャッタを開け、ZnOからなる
コンタクト層3を1μm程度、さらに、Mgセルシャッ
タを開け、Mg0.25Zn0.75Oからなるn形クラッド層
4を0.5μm程度、GaセルシャッタとMgセルシャ
ッタを閉め、アンドープのZnOからなる活性層5を
0.3μm程度積層した。なお、Zn、Mgは原料に固
体金属を用い、クヌーセンセルにより分子線として供給
し、O原料としては、酸素分子をプラズマでクラッキン
グすることにより発生する反応性の高いラジカル酸素を
用いた。
【0037】その後、活性層までエピタキシャル成長さ
れたウェハをMBE装置より取り出し、PLD法により
室温で、2×10-5Paの酸素雰囲気中で、Liを10
at%程度ドーピングしたNiOの焼結体をターゲット
として、200nm程度堆積し、p形クラッド層6を形
成した。なお、PLD法を用いないで、MBE法により
Ni、Liを飛ばし、ラジカル酸素を用いて成膜するこ
ともできる。その上に、たとえばリフトオフ法を用い、
真空蒸着によりNiを10nm、Auを50nmそれぞ
れ成膜し、p側電極10を形成した。ついで、表面にレ
ジスト膜などを設けてホトリソグラフィによりパターニ
ングをし、反応性イオンエッチング(RIE)などのド
ライエッチング法により半導体積層部11の一部をエッ
チングし、n形コンタクト層3を露出させた。そして、
リフトオフ法を用い真空蒸着により、Ti膜を500n
mほど堆積してn側電極9を形成した。その後、ダイシ
ングによりウェハから各チップに分割することにより、
図1に示される構造のLEDチップが得られた。
【0038】この構造のLEDチップの発光特性を調べ
た結果、図6に示されるように、385nmの波長をピ
ークとする発光特性が得られた。また、このLEDの活
性層の結晶構造を調べた結果、縦方向のみならず、横方
向にもきれいに配向性を有していた。すなわち、従来
は、ZnO系化合物もサファイア基板のC面に成長され
ていたため、サファイアとZnO系化合物との結晶の整
合性が得られず、横方向の配向性が不充分であったの
が、本発明によれば、ZnO系化合物が横方向にもきれ
いに配向されており、その結果、NiO層との間も非常
に良好な界面が得られていた。
【0039】このような結晶性の優れたZnO系化合物
層上にNiO層を堆積することにより、従来の柱状構造
とは異なり、NiO層自体も縦方向(基板面と垂直方
向)のみならず、横方向(NiO層の面内方向)にも配
向性を有する結晶性の優れたp形層が得られやすい。こ
のNiO層は必ずしも縦方向および横方向に配向性を有
することを必要とはしないが、配向性を有することによ
り、NiO層とZnO系化合物層との間に良好な界面が
得られると共に、NiO層でのキャリア移動度を高める
ことができ、p形層での電流ロス、光吸収の発生を抑制
することができ、発光特性を向上させることができる。
すなわち、非常に高輝度のLEDや高性能なLDを得る
ためには、NiO層が縦方向のみならず横方向にも配向
性を有することが好ましい。しかし、簡単に発光させる
という観点からは、活性層の結晶性が縦方向のみなら
ず、横方向にも配向していることにより良好に形成され
ておれば、NiO層により高キャリア濃度のp形層が得
られるため、たとえばエキシトンの結合エネルギーの大
きいZnO系化合物を発光層として用いることにより、
青色系のLEDを得ることができる。
【0040】さらに前述の構造のLEDでは、NiO層
6と活性層5との界面が非常にはっきりとしており、Z
nO系化合物の結晶からNiOの結晶へ移行する格子歪
緩和層が数原子層以下であった。すなわち、ZnO系化
合物層の結晶性に拘わらず、NiO層とその界面の格子
歪緩和層が5原子層程度以下になるようにNiO層が堆
積されれば、NiO層の結晶性を良好にし得ることを見
出した。
【0041】前述の例は、LEDの例であったが、LD
であっても同様である。この場合、半導体積層部11が
若干異なり、たとえば図7に一例の斜視説明図が示され
ている。まず、活性層15はアンドープのMgxZn1-x
O(0≦x<1)のバルク構造またはZnO/Mgx
1-xOからなるバリア層とウェル層とをそれぞれ5n
mおよび4nmづつ交互に2〜5層づつ積層した多重量
子井戸構造により形成する。また、活性層15が薄く充
分に光を活性層15内に閉じ込められない場合には、た
とえばZnOからなる光ガイド層14、16が活性層1
5の両側に設けられる。なお、半導体積層部11の一部
がエッチングされて、露出するn形コンタクト層3にn
側電極9が形成されるのは、前述のLEDの場合と同様
である。この場合、p側電極10はストライプ状に形成
されて、電極ストライプ構造のLDとして形成されてい
る。しかし、ストライプ状電極の両側の半導体積層部1
1をp形クラッド層の上部までをメサ型形状にエッチン
グするメサストライプ構造や、エッチングをしないでプ
ロトンなどを打ち込んだプロトン打込み型にすることも
できる。
【0042】前述の例では、LEDとして、ダブルヘテ
ロ構造の例であったが、単純なpn接合構造など他の構
造にすることもできる。また、LDチップの構造も、光
ガイド層がなく他の層が設けられてもよく、前述の積層
構造に限定されるものではない。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、p形層が得られ難い青
色系半導体発光素子のp形層として、NiO層を用いる
ことができるようになったため、エキシトンの結合エネ
ルギーの大きいZnO系化合物などの半導体材料を発光
層として使用することができ、非常に高輝度で高特性の
青色系半導体発光素子を得ることができる。その結果、
DVDなどの記録メディアの高密度化を可能とし、高度
情報化社会の発達に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるLEDチップの説明
図である。
【図2】サファイア単結晶の代表的な面方位の説明図で
ある。
【図3】図1に示される例の活性層における結晶方位を
示す図である。
【図4】図1に示される例の活性層におけるc軸方向が
基板と垂直方向から傾き得ることを説明する図である。
【図5】図1に示されるNiO層の不純物濃度とゼーベ
ック係数との関係を示す図である。
【図6】図1に示される構造のLEDの波長に対する発
光特性を示す図である。
【図7】本発明の半導体発光素子の他の実施形態である
LDチップの説明図である。
【符号の説明】
1 A面サファイア基板 4 n形クラッド層 5 活性層 6 p形クラッド層 8 発光層形成部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丸田 秀昭 京都府京都市下京区西七条南衣田町32 グ ランコート西七条603 (72)発明者 細野 秀雄 神奈川県大和市下鶴間2786−4−212 (72)発明者 太田 裕道 神奈川県川崎市高津区千年1184 グランド ールB−202 (72)発明者 平野 正浩 東京都世田谷区松原5−5−6 Fターム(参考) 5F041 AA11 CA04 CA05 CA41 CA46 CA49 CA57 CA66 5F073 AA74 CA22 CA24 CB19 DA06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、該基板の一主面上に設けられ、
    n形クラッド層、活性層およびp形クラッド層を少なく
    とも具備する発光層形成部とを有し、前記活性層が前記
    基板の一主面に垂直方向にc軸配向しており、前記p形
    クラッド層がNiOからなる半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 前記活性層が、さらに前記基板の主面と
    平行方向にa軸配向している請求項1記載の半導体発光
    素子。
  3. 【請求項3】 前記n形クラッド層および活性層がZn
    O系酸化物からなる請求項1または2記載の半導体発光
    素子。
  4. 【請求項4】 前記基板がサファイアからなり、該基板
    の一主面がサファイアの(0001)面と直交する面で
    ある請求項1、2または3記載の半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 前記p形クラッド層の下面に5原子層以
    下の格子歪緩和層が形成されてなる請求項1ないし4の
    いずれか1項記載の半導体発光素子。
  6. 【請求項6】 前記NiOからなるp形クラッド層の結
    晶構造が、前記基板の一主面と垂直方向に配向性を有し
    ている請求項1ないし5のいずれか1項記載の半導体発
    光素子。
  7. 【請求項7】 前記p形クラッド層が、さらに前記基板
    の主面と平行方向にa軸配向している請求項6記載の半
    導体発光素子。
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