JP2003266494A - 射出成形用金型と射出成形品の製造方法 - Google Patents

射出成形用金型と射出成形品の製造方法

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JP2003266494A
JP2003266494A JP2002070552A JP2002070552A JP2003266494A JP 2003266494 A JP2003266494 A JP 2003266494A JP 2002070552 A JP2002070552 A JP 2002070552A JP 2002070552 A JP2002070552 A JP 2002070552A JP 2003266494 A JP2003266494 A JP 2003266494A
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movable mold
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 可動型の凹部から射出成形品を脱型しやす
く、転写層のインキクラック、転写材の破れが発生しな
い射出成形用金型を提供する。 【解決手段】 可動型1と固定型2との間に転写材13
を配置し、射出成形品を形成すると同時に射出成形品の
表面に転写材13の転写層を一体化接着させるための射
出成形用金型であって、可動型1と固定型2とを型閉め
したときに、可動型1の凹部aに形成された断面曲線部
4の終端部5と固定型2の凹部bの端部とによって段差
7を形成することができる射出成形用金型において、断
面曲線部4の深さをD(mm)、曲率半径をR(m
m)、可動型抜き勾配をA(°)としたとき、5≦R×
A/D≦20の条件を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、携帯通話機器の
上蓋や下蓋、電子応用玩具の表面部品や外装部品、炊飯
器入力部パネルや自動車内外装パネル、パチンコ台の外
枠などを加飾するための射出成形用金型と射出成形品の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、携帯電話の上蓋に文字や図形を形
成する場合に、射出成形法が用いられている。この成形
法において用いられる射出成形用金型は、次のような構
成をしている。凹部を有する可動型と凹部を有する固定
型との間に基体シート上に転写層を備えた転写材を配置
し、可動型と固定型との型閉めにより形成した成形用空
間内に成形樹脂を注入して射出成形品を形成すると同時
に射出成形品の表面に転写層を一体化接着させるための
射出成形用金型であって、可動型と固定型とを型閉めし
たときに、可動型の凹部に形成された断面曲線部の終端
部と固定型の凹部の端部とによって段差を形成すること
ができるものである(いわゆる中間パートを形成するタ
イプの金型とも言われる。)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来の技
術は、次のような課題があった。前記したように、従来
の射出成形用金型では、エンドユーザーのデザイン指定
が変るごとに、可動型の凹部の断面曲線部の深さD(m
m)と、曲率半径R(mm)、可動型抜き勾配A(°)
の各要素のバランスを調節しなければならず、調節に失
敗した場合には、次のような問題が発生していた。 (1)エンドユーザーのデザイン指定が、可動型の凹部
の深さDが大で、曲率半径Rと可動型抜き勾配Aとが小
の傾向にあるとき(図5参照)は、可動型の凹部から射
出成形品を脱型しにくく、しかも、急角度のコーナー部
に成形樹脂を押し込むことになるため、転写層のインキ
クラック、転写材の破れが発生していた。なお、脱型と
は、可動型の凹部から射出成形品を抜き出すことをい
う。 (2)エンドユーザーのデザイン指定が、可動型の凹部
の深さDが小で、曲率半径Rと可動型抜き勾配Aが大の
傾向にあるとき(図6参照)は、可動型の凹部に形成さ
れた断面曲線部の終端部と固定型の凹部の端部との接点
近傍(以下「パーティング部コーナー部」という。)に
おいて、成形樹脂の圧力が不十分となりやすく、転写層
と成形樹脂との密着不良などにより、転写層と成形樹脂
との剥がれが発生していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記課題を
解決するためにつぎのようにした。つまり、請求項1に
記載したように、凹部を有する可動型と凹部を有する固
定型との間に基体シート上に転写層を備えた転写材を配
置し、可動型と固定型との型閉めにより形成した成形用
空間内に成形樹脂を注入して射出成形品を形成すると同
時に射出成形品の表面に転写層を一体化接着させるため
の射出成形用金型であって、可動型と固定型とを型閉め
したときに、可動型の凹部に形成された断面曲線部の終
端部と固定型の凹部の端部とによって段差を形成するこ
とができる射出成形用金型において、断面曲線部の深さ
をD(mm)、曲率半径をR(mm)、可動型抜き勾配
をA(°)としたとき、5≦R×A/D≦20の条件を
満たすことを特徴とする射出成形用金型である。また、
請求項2に記載したように、深さDが0.15〜4.0
mmであり、曲率半径RとDとの関係がD/2≦R≦D
であり、可動型抜き勾配Aが45°以下である射出成形
用金型である。また、請求項3に記載したように、凹部
を有する可動型と凹部を有する固定型との間に基体シー
ト上に転写層を備えた転写材を配置し、可動型と固定型
との型閉めにより形成した成形用空間内に成形樹脂を注
入して射出成形品を形成すると同時に射出成形品の表面
に転写層を一体化接着させるための射出成形用金型であ
って、可動型と固定型とを型閉めしたときに、可動型の
凹部に形成された断面曲線部の終端部と固定型の凹部の
端部とによって段差を形成することができる射出成形用
金型において、断面曲線部の深さをD(mm)、曲率半
径をR(mm)としたとき、R=Dの条件を満たすこと
を特徴とする射出成形用金型である。また、請求項4に
記載したように、前記射出成形用金型を用いる製造方法
であって、まず、可動型と固定型との間に基体シート上
に転写層を備えた転写材を配置し、次に、可動型と固定
型との型閉めにより形成した成形用空間内に成形樹脂を
注入して射出成形品を形成すると同時に射出成形品の表
面に転写材の転写層側を一体化接着させ、次に、可動型
と固定型とを型開きし、射出成形品を可動型および固定
型から脱型する際または脱型した後に転写材から基体シ
ートを剥離することを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】この発明の射出成形用金型の説明
をする。
【0006】この発明の射出成形用金型は、凹部を有す
る可動型と凹部を有する固定型との間に基体シート上に
転写層を備えた転写材を配置し、可動型と固定型との型
閉めにより形成した成形用空間内に成形樹脂を注入して
射出成形品を形成すると同時に射出成形品の表面に転写
層を一体化接着させるための射出成形用金型であって、
可動型と固定型とを型閉めしたときに、可動型の凹部に
形成された断面曲線部の終端部と固定型の凹部の端部と
によって段差を形成することができる射出成形用金型に
おいて、断面曲線部の深さをD(mm)、曲率半径をR
(mm)、可動型抜き勾配をA(°)としたとき、5≦
R×A/D≦20の条件を満たすものである。なお、深
さとは、型底11から終端部5までの高さのことをいう
(図1参照)。また、曲率半径とは、断面曲線部におけ
る曲率半径のことをいう(図1参照)。可動型抜き勾配
とは、可動型と固定型との開閉方向に対する断面曲線部
の終端部5近傍におけるストレート部の傾きのことをい
う(図1参照)。なお、ストレート部が存在しない場合
は、終端部5における接線の勾配のことをいう。断面曲
線が円周を1/4に切り取った形状である円弧形状であ
るときは、可動型抜き勾配は0となる。
【0007】この発明の射出成形用金型は、凹部aを有
する可動型1と凹部bを有する固定型2とを備えたもの
であり、前記凹部aと凹部bとを向かい合わせにして可
動型1と固定型2とを型閉めして成形用空間3を形成す
る金型、つまり、いわゆる中間パートを形成するタイプ
の金型である。
【0008】可動型1の凹部aは、少なくとも断面曲線
部4とその断面曲線部4の終端部5を有する。可動型1
と固定型2とを型閉めしたときに、パーティングコーナ
ー部において、可動型1の凹部aに形成された断面曲線
部4の終端部5と後述する固定型2の凹部bの端部6と
によって段差7を形成することができる。この段差7
は、射出成形品8の外周9に形成されるものでもよいし
(図2、図7参照)、射出成形品8の孔部10の内周1
5に形成されるものでもよい(図2、図3、図4、図8
参照)。なお、段差7を形成するとつぎのような作用効
果がある。射出成形品8の側面を完全に面一にするため
には可動型1と固定型2とを完全に一致させればよい
が、金型精度を上げても誤差が生じる場合がある。そこ
で、可動型1の終端部5が固定型2の凹部bの端部6よ
り外側に位置するように構成することにより、射出成形
品8を表面から見た場合に体裁が落ちないようにするた
めに段差7を形成することができるようにしているので
ある(図9参照)。
【0009】(1)射出成形品8の外周9に形成される
場合(図2参照)の段差7の距離(いわゆる「ミスマッ
チ」)は0.05〜0.1mmである。0.05mm以
上である理由は、可動型1と固定型2とを型閉めしたと
きに発生する可動型1と固定型2との位置ずれを吸収で
きる限界が0.05mmであり、これより小さくする
と、型閉め時のわずかな位置ずれにより、前記はみ出し
が発生しやすくなり(図9参照)、射出成形品8の外径
寸法に影響を与えるなどの不都合があるからである。
0.1mm以下である理由は、これより大きくすると、
パーティングコーナー部が先細りの形状となるため(図
6参照)、成形樹脂の圧力が不十分となりやすく、転写
層14と成形樹脂との密着不良などにより、転写層14
と成形樹脂との剥がれが発生しやすくなるからである。
【0010】(2)射出成形品8の孔部10の内周15
に形成される場合(図3、図4、図8参照)の段差7の
距離の数値範囲とその理由も(1)と同様である。
【0011】固定型2は、凹部bを有する。凹部bの端
部6は、前記したように段差7を形成する部分である。
固定型2の凹部bの内径は、可動型1の凹部aの内径よ
り小さく形成されている。こうすることによって、外周
9に段差7を有する形状の射出成形品8、あるいは、射
出成形品8の孔部10の内周15に段差7を有する形状
の射出成形品8が得られる(図1〜4参照)。固定型2
の凹部bは固定型抜き勾配Bを有するのが好ましい(図
1、図3参照)。固定型2の凹部bの固定型抜き勾配B
は、1〜10°である。1°以上である理由は、これよ
り小さくすると、射出成形品8を固定型2から脱型する
時に射出成形品8と凹部bの壁面との間で摩擦抵抗が増
し、射出成形品8に擦り傷が発生し、更に悪化すると射
出成形品8にクラックが発生するからである。10°以
下である理由は、これより大きくすると、パーティング
コーナー部において成形樹脂の圧力が不十分となりやす
く、転写層14と成形樹脂との密着不良などにより、転
写層14と成形樹脂との剥がれが発生しやすくなるから
である。固定型2は転写材13が密着する金型ではない
が、固定型2の固定型抜き勾配Bはパーティングコーナ
ー部における成形樹脂の圧力に影響を及ぼすのである。
【0012】固定型2は、凹部bの型底11あるいは凹
部bの側面に射出口12を有する。射出口12は、可動
型1と固定型2とを型閉めすることにより形成された成
形用空間3内に、溶融された成形樹脂を注入する口であ
る。成形樹脂の射出により、両金型間に配置された転写
材13に圧力をかけて可動型1の凹部aの隅々にまで確
実に転写材13を密着させるようにする。
【0013】この発明の射出成形用金型においては、断
面曲線部4の深さをD(mm)、曲率半径をR(m
m)、可動型抜き勾配をA(°)としたとき、5≦R×
A/D≦20の条件を満たすことを特徴とする。射出成
形品8を可動型1から脱型しにくいか、脱型しやすいか
の観点で考えると次のようになる。可動型1の凹部aの
断面曲線部4の深さDが大きいほど、射出成形品8が深
く嵌り込んでいるため、射出成形品8を可動型1から脱
型しにくくなり、反対に、可動型1の凹部aの断面曲線
部4の深さDが小さいほど、射出成形品8を可動型1か
ら脱型しやすくなる。しかし、可動型1の凹部aの断面
曲線部4の深さDが小さくても、曲率半径Rが小さいほ
ど、急角度のコーナー部を有することになるため、射出
成形品8を可動型1から脱型しにくくなり、反対に、可
動型1の凹部aの断面曲線部4の深さDが大きくても、
曲率半径が大きいと、急角度のコーナー部を有さないこ
とになるため、射出成形品8を可動型1から脱型しやす
くなる。また、可動型1の凹部aの断面曲線部4の深さ
Dが小さかったり、曲率半径が大きかったりしても、可
動型抜き勾配Aが小さければ、射出成形品8は可動型1
の終端部5で締めつけられることになるため、射出成形
品8を可動型1から脱型しにくくなり、反対に、可動型
1の凹部aの断面曲線部4の深さDが大きかったり、曲
率半径が小さかったりしても、可動型抜き勾配Aが大き
ければ、射出成形品8は可動型1の終端部5で締めつけ
られることがないため、射出成形品8を可動型1から脱
型しやすくなる。これらの観点と、転写材13の転写層
14のインキクラックや転写材13の破れの発生、転写
材13と成形樹脂との密着不良などによる転写材13と
成形樹脂との剥がれの発生をなくすためにはどのような
条件が好ましいかという観点とを総合的に考え合わせ
て、曲率半径R(mm)と可動型抜き勾配A(°)と断
面曲線部の深さD(mm)とをバランスをとり、可動型
抜き勾配A(°)と断面曲線部の深さD(mm)で除し
た値に曲率半径R(mm)を乗じた値を所定の幅に設定
すれば、所望の結果が得られるのではないかとの着想を
得、この着想に基づき実測を行ったところ、前記5≦R
×A/D≦20の条件を見出した(射出成形品8の外周
9に関しては表1参照、射出成形品8の孔部10に関し
ては表2参照)。特に、曲率半径RとDとの関係は、D
/2≦R≦Dmmである。D/2mmより小さいと、断
面曲線部4において、成形樹脂の樹脂圧によりフィルム
が伸ばされ過ぎて、転写層14のインキクラックが発生
し、さらには転写材13が破れてしまいやすくなるから
である。Dmmより大きいと、ストレート部が小さくな
り、転写層14のインキクラックや転写材13の破れが
発生しやすくなるからである。また、パーティングコー
ナー部において成形樹脂の圧力が不十分とならないよう
にする必要があるからである。また、可動型抜き勾配A
は、45°以下である。45°より大きいと、特にパー
ティングコーナー部において、成形樹脂の流量が減少し
すぎるために転写に必要な圧力を十分に伝達することが
できず、転写層14と成形樹脂との密着不良が発生する
からである。45°以下の中でも転写に必要な圧力を十
分に伝達することができ、かつ、転写層14のインキク
ラックや転写材13の破れが発生しないように確実を期
するためには、7〜20°が特に好ましい。なお、可動
型抜き勾配Aが0となってもよい。この場合は、断面曲
線部の深さをD(mm)、曲率半径をR(mm)とした
とき、R=Dとなり、断面曲線が円周を1/4に切り取
った形状である円弧形状となるが、転写層14のインキ
クラックや転写材13のしわや破れは発生しない。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】(1)射出成形品8の外周9に段差7を形
成する場合における凹部aの断面曲線部4の深さDの説
明をする。深さDは、0.15〜5.0mmである。
0.15mmより小さくすると、曲率半径Rや可動型抜
き勾配Aを形成すること自体が困難となるからである。
5.0mmより大きくすると、射出成形品8を可動型1
から脱型し易くするために可動型抜き勾配A、曲率半径
Rともに大きくとる必要に迫られる結果、転写材が延伸
しきれずに破れてしまうからである。深さDは、0.3
〜2.0mmが特に好ましい。2.0mmより大きな深
さがあると転写層14のインキクラックや転写材13の
破れの発生を抑えにくくなりやすく、成形時にその対処
法を試行錯誤する必要が出てくるからである。また、
0.3mmより小さいと転写材13の伸縮量が小さくな
り、転写層14の切れが悪くなることから、射出成形品
8に余分な転写層14が付着する、いわゆる箔バリの量
が多くなる。箔バリの量が多くなるとそれが金型内に飛
散する傾向にあり、後続の射出成形品8に付着すること
があるからである。
【0017】(2)射出成形品8の孔部10の内周15
に段差7を形成する場合における凹部aの断面曲線部4
の深さDの説明をする。深さDは、0.2〜0.4mm
である。0.2mmより小さいと、成形樹脂の流量が減
少しすぎるために、特にパーティングコーナー部におい
て、転写に必要な圧力を十分に伝達することができず、
転写層14と成形樹脂との密着不良が発生するからであ
る。0.4mmより大きいと、転写材13にしわが発生
し、また転写層14にインキクラックが入りやすくな
る。携帯電話のボタン孔やスピーカーホール等の孔部1
0の内周15の曲率は外周9に比べて小さいので、転写
材13のしわや転写層14のインキクラックが発生しや
すい。このことから、特に、0.2〜0.3mmが好ま
しい。
【0018】つぎに、この発明の射出成形用金型を用い
た射出成形品の製造方法を説明する。
【0019】まず、凹部aを有する可動型1と凹部bを
有する固定型2との間に基体シート上に転写層14を備
えた転写材13を配置する。転写材13は、可動型1の
凹部aと固定型2の凹部bとで適切な位置で挟み込まれ
るように配置する。枚葉の転写材13を1枚づつ送り込
んで配置してもよいし、長尺の転写材13のまま切り取
らずに必要部分のみを間欠的に連続して送り込んで配置
してもよい。長尺の転写材13を切り取らずに使用する
場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写
材13と射出成形用金型との見当が一致するようにする
とよい。また、転写材13を間欠的に送り込む際に、転
写材13の位置をセンサーで検出した後に転写材13を
可動型1と固定型2とで固定するようにすれば、常に同
じ位置で転写材13を固定することができ、転写材13
の位置ずれが生じないので有利である。位置決めが完了
した転写材13は、真空吸引されて、可動型1の凹部a
の内面に沿って変形する。枚葉の転写材13を1枚づつ
送り込む場合は、射出成形用金型内に送り込まれる前に
可動型1の凹部aに嵌まり込む形状に変形させてから、
射出成形用金型内に送り込み、可動型1の凹部aに嵌め
込んで配置することもできる。予備成形は、転写材13
を真空成形、プレス成形などにより立体形状に変形させ
ることにより行なうとよい。
【0020】次に、型閉めにより成形用空間3を形成
し、成形用空間3内に成形樹脂を注入して射出成形品8
を形成すると同時に射出成形品8の表面に転写材13の
転写層14を一体化接着させる。この発明の射出成形用
金型は、凹部aの断面曲線部4の深さD、曲率半径R、
可動型抜き勾配Aが、5≦R×A/D≦20の条件を満
たすので、注入された成形樹脂は、転写層14のインキ
クラックや転写材13の破れなどが発生しない。また、
パーティングコーナー部においても成形樹脂の圧力が十
分確保でき、転写層14と成形樹脂との密着不良は発生
せず、転写層14と成形樹脂との剥がれが発生しない。
【0021】次に、可動型1と固定型2とを型開きし
て、射出成形品8を可動型1および固定型2から脱型す
る際または脱型した後に、転写材13から基体シートを
剥離する。この発明の射出成形用金型は、凹部aの断面
曲線部4の深さD、曲率半径R、可動型抜き勾配Aが、
5≦R×A/D≦20の条件を満たすので、射出成形品
8が可動型1の凹部aの内面に引っ掛からずに容易に脱
型できる。なお、射出成形品8の外周9に段差7が形成
された射出成形品8としては、図1、図2、図7に示す
ようなものがある。射出成形品8の孔部10の内周15
に段差7が形成された射出成形品8としては、図2、図
4、図8に示すようなものがある。
【0022】成形樹脂としては、アクリル樹脂、ABS
樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポ
リ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポ
リマーアロイなどがある。成形樹脂は透光性を有してい
てもよい。
【0023】なお、この発明において用いる転写材13
の基本的な層構成の具体例としては、基体シート、離型
層、剥離層、図柄層、接着層が順次積層されたものがあ
り、剥離層、図柄層、接着層の積層物が転写層14とな
る。基体シートの材質としては、アクリル系樹脂、ポリ
エステル系樹脂などの樹脂シートがある。
【0024】
【発明の効果】この発明の射出成形用金型は、凹部を有
する可動型と凹部を有する固定型との間に基体シート上
に転写層を備えた転写材を配置し、可動型と固定型との
型閉めにより形成した成形用空間内に成形樹脂を注入し
て射出成形品を形成すると同時に射出成形品の表面に転
写層を一体化接着させるための射出成形用金型であっ
て、可動型と固定型とを型閉めしたときに、可動型の凹
部に形成された断面曲線部の終端部と固定型の凹部の端
部とによって段差を形成することができる射出成形用金
型において、断面曲線部の深さをD(mm)、曲率半径
をR(mm)、可動型抜き勾配をA(°)としたとき、
5≦R×A/D≦20の条件を満たすことを特徴とす
る。また、この発明の射出成形用金型は、凹部を有する
可動型と凹部を有する固定型との間に基体シート上に転
写層を備えた転写材を配置し、可動型と固定型との型閉
めにより形成した成形用空間内に成形樹脂を注入して射
出成形品を形成すると同時に射出成形品の表面に転写層
を一体化接着させるための射出成形用金型であって、可
動型と固定型とを型閉めしたときに、可動型の凹部に形
成された断面曲線部の終端部と固定型の凹部の端部とに
よって段差を形成することができる射出成形用金型にお
いて、断面曲線部の深さをD(mm)、曲率半径をR
(mm)としたとき、R=Dの条件を満たすことを特徴
とする。さらに、この発明の射出成形品の製造方法は、
前記射出成形用金型を用いる製造方法であって、まず、
可動型と固定型との間に基体シート上に転写層を備えた
転写材を配置し、次に、可動型と固定型との型閉めによ
り形成した成形用空間内に成形樹脂を注入して射出成形
品を形成すると同時に射出成形品の表面に転写材の転写
層側を一体化接着させ、次に、可動型と固定型とを型開
きし、射出成形品を可動型および固定型から脱型する際
または脱型した後に転写材から基体シートを剥離するこ
とを特徴とする。
【0025】したがって、断面曲線部の深さをD(m
m)、曲率半径をR(mm)、可動型抜き勾配をA
(°)のバランスをとっているため、エンドユーザーの
デザイン指定が可動型の凹部の深さDが大で、曲率半径
Rと可動型抜き勾配Aとが小の傾向にあるときでも、可
動型の凹部から射出成形品を脱型しやすいだけでなく、
転写層のインキクラックや転写材の破れが発生しない。
また、エンドユーザーのデザイン指定が可動型の凹部の
深さDが小で、曲率半径Rと可動型抜き勾配Aが大の傾
向にあるときでも、パーティングコーナー部において、
成形樹脂の圧力を十分確保できるので、転写層と成形樹
脂との密着が良好となり、転写層と成形樹脂との剥がれ
が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の射出成形用金型の一例を示す一部切
欠要部断面図である。
【図2】この発明の射出成形品の製造方法によって得ら
れる射出成形品の一例を示す斜視図である。
【図3】この発明の射出成形用金型の一例を示す一部切
欠要部断面図である。
【図4】図2の射出成形品のY−Y断面拡大図である。
【図5】従来の射出成形用金型を示す一部切欠要部断面
図である。
【図6】従来の射出成形用金型を示す一部切欠要部断面
図である。
【図7】図2の射出成形品のX−X断面拡大概略説明図
である。
【図8】図2の射出成形品のY−Y断面拡大概略説明図
である。
【図9】この発明の射出成形用金型の「段差」を説明す
るための断面説明図である。
【符号の説明】
a 凹部 b 凹部 1 可動型 2 固定型 3 成形用空間 4 断面曲線部 5 終端部 6 端部 7 段差 8 射出成形品 9 外周 10 孔部 11 型底 12 射出口 13 転写材 14 転写層 15 内周

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】凹部を有する可動型と凹部を有する固定型
    との間に基体シート上に転写層を備えた転写材を配置
    し、可動型と固定型との型閉めにより形成した成形用空
    間内に成形樹脂を注入して射出成形品を形成すると同時
    に射出成形品の表面に転写層を一体化接着させるための
    射出成形用金型であって、可動型と固定型とを型閉めし
    たときに、可動型の凹部に形成された断面曲線部の終端
    部と固定型の凹部の端部とによって段差を形成すること
    ができる射出成形用金型において、断面曲線部の深さを
    D(mm)、曲率半径をR(mm)、可動型抜き勾配を
    A(°)としたとき、5≦R×A/D≦20の条件を満
    たすことを特徴とする射出成形用金型。
  2. 【請求項2】深さDが0.15〜4.0mmであり、曲
    率半径RとDとの関係がD/2≦R≦Dであり、可動型
    抜き勾配Aが45°以下である請求項1に記載の射出成
    形用金型。
  3. 【請求項3】凹部を有する可動型と凹部を有する固定型
    との間に基体シート上に転写層を備えた転写材を配置
    し、可動型と固定型との型閉めにより形成した成形用空
    間内に成形樹脂を注入して射出成形品を形成すると同時
    に射出成形品の表面に転写層を一体化接着させるための
    射出成形用金型であって、可動型と固定型とを型閉めし
    たときに、可動型の凹部に形成された断面曲線部の終端
    部と固定型の凹部の端部とによって段差を形成すること
    ができる射出成形用金型において、断面曲線部の深さを
    D(mm)、曲率半径をR(mm)としたとき、R=D
    の条件を満たすことを特徴とする射出成形用金型。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形
    用金型を用いる製造方法であって、まず、可動型と固定
    型との間に基体シート上に転写層を備えた転写材を配置
    し、次に、可動型と固定型との型閉めにより形成した成
    形用空間内に成形樹脂を注入して射出成形品を形成する
    と同時に射出成形品の表面に転写材の転写層側を一体化
    接着させ、次に、可動型と固定型とを型開きし、射出成
    形品を可動型および固定型から脱型する際または脱型し
    た後に転写材から基体シートを剥離することを特徴とす
    る射出成形品の製造方法。
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