JP2003245485A - ミシン - Google Patents

ミシン

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JP2003245485A
JP2003245485A JP2002045817A JP2002045817A JP2003245485A JP 2003245485 A JP2003245485 A JP 2003245485A JP 2002045817 A JP2002045817 A JP 2002045817A JP 2002045817 A JP2002045817 A JP 2002045817A JP 2003245485 A JP2003245485 A JP 2003245485A
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sewing machine
sliding
film
coating
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JP2002045817A
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English (en)
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Tetsuya Kitamura
哲弥 北村
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Brother Industries Ltd
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Brother Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の
摺動性と耐磨耗性を格段に高めることができるミシンを
提供すること。 【解決手段】相対運動する天秤軸24とブッシュ29と
の摺動部分において、その一方の表面には、DLC(ダ
イヤモンドライクカーボン)コーティング処理が施さ
れ、DLC被膜30が形成され、他方の表面には、リン
酸亜鉛被膜34、PAI(ポリアミドイミド樹脂)をバ
インダーとしてフッ素樹脂が分散した固体潤滑剤被膜3
6が積層して設けられている。更に、その摺動部分に
は、グリース38が塗布または注入されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はミシンに関し、特
に、相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の耐磨
耗性を改善したミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のミシンにおいては、針棒と針棒支
持部材、針棒抱きと針棒クランクロッド等々、相対運動
する2部材の摺動部分に、グリース等の潤滑油がミシン
の動作時間や音を目安に塗布または注入されたりしてい
る。或いは、潤滑油が自動的にタンクから必要なところ
へ供給されるミシンがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ミシンのように、摺動部分のグリースだけでは、摺動部
分の摺動性と耐磨耗性を十分に高めることができないと
いう問題点がある。
【0004】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、相対運動する第1部材と第2部
材の摺動部分の摺動性と耐磨耗性を格段に高めることが
できるミシンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、請求項1記載のミシンは、第1部材と第2部材との
少なくとも一方の摺動部分に、PAI(ポリアミドイミ
ド樹脂)をバインダーとしてフッ素樹脂が分散した固体
潤滑剤被膜を設けられている。そして、前記第1部材と
前記第2部材とは、前記固体潤滑剤被膜を設けられた摺
動部分において摺動する。
【0006】請求項2記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との少なくとも一方の摺動部分に、5μm
から30μmの厚さの固体潤滑剤被膜を設けられてい
る。そして、前記第1部材と前記第2部材とは、5μm
から30μmの厚さの固体潤滑剤被膜を設けられた摺動
部分において摺動する。
【0007】請求項3記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との少なくとも一方の摺動部分に、リン酸
亜鉛被膜を設けられた表面に設けられた固体潤滑剤被膜
を設けられている。そして、前記第1部材と前記第2部
材との少なくとも一方の摺動部分に、前記固体潤滑剤被
膜と前記リン酸亜鉛被膜とが積層して設けられ、前記第
1部材と前記第2部材とは、前記固体潤滑剤被膜を設け
られた摺動部分において摺動する。前記固体潤滑剤被膜
が摺動によって消耗されたときには、その下の層の前記
リン酸亜鉛被膜が露出する。
【0008】請求項4記載のミシンは、PTFE(4フ
ッ化エチレン)或いはPFE(ポリフッ化エチレン)で
あるフッ素樹脂が分散した固体潤滑剤被膜を設けられて
いる。そして、前記第1部材と前記第2部材とは、PT
FE或いはPFEであるフッ素樹脂が分散した固体潤滑
剤被膜を設けられた摺動部分において摺動する。
【0009】請求項5記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との摺動部分のいずれか一方のみに設けら
れている固体潤滑剤被膜を有している。そして、前記固
体潤滑剤被膜とその固体潤滑剤被膜とは異なる材質の摺
動部分において、前記第1部材と前記第2部材とは摺動
する。
【0010】請求項6記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との摺動部分のうち、前記固体潤滑剤被膜
を設けられていない他方の摺動部分には、DLC(ダイ
ヤモンドライクカーボン)コーティング処理が施されて
いる。そして、前記固体潤滑剤被膜が設けられた部分と
DLCコーティング処理を設けられた部分とにおいて、
前記第1部材と前記第2部材とは摺動する。
【0011】請求項7記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との摺動部分のうち、前記固体潤滑剤被膜
を設けられていない他方の摺動部分には、DLCコーテ
ィング処理が施され、その硬度がHv400〜Hv10
00である。そして、前記固体潤滑剤被膜が設けられた
部分とDLCコーティング処理を設けられた硬度Hv4
00〜Hv1000である部分とにおいて、前記第1部
材と前記第2部材とは摺動する。
【0012】請求項8記載のミシンは、前記第1部材と
前記第2部材との摺動部分に、グリースが塗布または注
入されている。そして、前記固体潤滑剤被膜が設けられ
ると共に、グリースが塗布または注入された摺動部分に
おいて、前記第1部材と前記第2部材とは摺動する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。本実施の形態は2本針ミシ
ンに本発明を適用した場合の一例で、2本分の糸が1つ
の天秤機構に作用するものである。尚、図1に矢印で示
す前後左右を前後左右として説明する。
【0014】図1に示すように、2本針ミシンM(以
下、ミシンMという)は、左右方向に長いベッド部1
と、ベッド部1の右部から上方へ延びる脚柱部2と、脚
柱2からベッド部1と対向するように左方へ延びるアー
ム部3とを有する。
【0015】アーム部2の内部に、左右方向向きの主軸
5が配設され、この主軸5の下側に左右方向向きの針棒
揺動軸6が配設されている。主軸5の右端部分はアーム
部3から外部へ突出し、その突出部分にプーリ7が固着
されている。このプーリ7とミシンモータ(図略)で駆
動されるプーリ(図略)とにベルト(図略)が掛けら
れ、ミシンモータの駆動力がプーリとベルトを介して主
軸5に伝達されて主軸5が回転駆動される。
【0016】アーム部3の左端部分は頭部4に形成さ
れ、この頭部4の内部に、図1、図2に示すように、ク
ランク8、クランクレバー9、針棒抱き10、針棒1
1、針棒支持部材12、天秤16を有する天秤機構15
が設けられている。針棒11の下端部分は頭部4の下側
へ突出し、その先端部に2本針13が装着されている。
主軸5の左端部にクランク8が固着され、クランクレバ
ー9の上端部がクランク8のクランク軸20に回動自在
に連結され、クランクレバー9の下端部が針棒抱き10
に回動自在に連結されている。
【0017】針棒11の長さ方向途中部が針棒抱き10
に内嵌固定され、針棒11は針棒抱き11の上下両側に
おいて針棒支持部材12に上下動自在に支持されてい
る。つまり、主軸5が回転駆動されると、クランク8と
クランクレバー9を介して針棒抱き10と針棒11が上
下に往復駆動される。
【0018】天秤機構15の天秤16は、固定軸22に
回動可能に設けられ、天秤16と一体に形成された天秤
軸24がクランクレバー9に回動可能に取り付けられた
滑り子26内を摺動するように構成されている。そし
て、天秤16は、針棒11の上下動に同期して所定のタ
イミングで上下に揺動駆動される。この針棒揺動軸6が
回転駆動されることにより、針棒支持部材12と共に針
棒11(針棒抱き10)が前後水平方向に揺動駆動され
る。
【0019】滑り子26の貫通穴には、上下方向に伸長
する貫通穴が形成されており、その貫通穴には、上下方
向に伸張する中空円筒状のブッシュ29(これが第1部
材に相当する)が回転及び移動不可能に圧入されてい
る。そしてミシンが駆動されると、滑り子26のブッシ
ュ29は上下方向に往復運動して、ブッシュ29の内側
面と天秤16の天秤軸24(これが第2部材に相当す
る)の外側面とが、摺動しつつ、相対的に移動する。
【0020】そして、図3に模式的に示すように、天秤
16の天秤軸24の表面(ブッシュ29に対する摺動
面)には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーテ
ィング処理が施され、DLC被膜30が厚さ0.5μm
〜5μm、望ましくは2μm(基板の最大表面粗さRma
xよりも大きく)程度設けられる。また、ブッシュ29
の貫通穴内側面の表面(天秤軸24に対する摺動面)に
は、下地としてリン酸亜鉛被膜34が形成され、そのリ
ン酸亜鉛被膜34の更に摺動側の表面には、PAI(ポ
リアミドイミド樹脂)をバインダー(結合剤)としてフ
ッ素樹脂が分散した固体潤滑剤被膜36が積層して厚さ
15μmで設けられている。即ち、相対的に移動する部
材の摺動部分のいずれか一方に、固体潤滑剤被膜36が
設けられ、他方の摺動部分には、DLC被膜30が設け
られている。
【0021】この固体潤滑被膜36は結合型固体潤滑剤
であり、特に、DLC被膜30との摺動面とでは、最適
な相性を持つ被膜であることが判った(後述)。また、
このように固体潤滑剤被膜36を被膜として形成して摺
動部分に配置しているので、その他の形態、塊、いわゆ
るバルクの固体潤滑剤を用いることも考えられる。しか
し、固体潤滑剤をそのようなバルクの形態で形成する
と、バルクに対する荷重によって、バルクが変形して、
摺動相手に掘り起こされることで生じる余計な摩擦抵抗
(掘り起こし摩擦)のために、その摺動部分の寿命が1
年に達しないことが、本出願人の実験によりわかってい
る。従って、上述のように被膜の形態に固体潤滑剤をす
ることで、バルクのような余計な摩擦抵抗である掘り起
こし摩擦が生じないような、荷重を支える役目をなす部
材のおかげで潤滑性を極めて向上させることができたの
である。
【0022】そして、固体潤滑剤被膜36が摺動によっ
て消耗されたときには、その下の層のリン酸亜鉛被膜3
4が摺動部分として露出する。このリン酸亜鉛被膜34
は、固体潤滑被膜36が付着しやすい易接着処理として
しての効果が有ると共に、せん断抵抗の非常に低い被膜
であるので、仮に固体潤滑被膜36が無くなっても低摩
擦状態が維持されるバックアップ機能を果たす。尚、こ
のブッシュ29は、0.1mmから3mm、望ましくは
圧入作業上あまり薄いと製造歩留まりが悪くなる点と機
構上あまりスペースがとれない点で望ましくは0.3m
mの厚みのステンレスなどの鋼材によって構成され、表
面に固体潤滑剤被膜36を形成したあとに、中空円筒状
の形状をなし、その内側に固体潤滑剤被膜36が位置す
るように加工されたものである。この固体潤滑剤被膜3
6の設けられる基材表面は、固体潤滑剤被膜36の密着
性を上げるためにリン酸亜鉛被膜34以外に同じパーカ
ライジング処理としてのリン酸マンガン被膜が用いられ
る場合がある。あるいはリン酸亜鉛被膜34の形成され
る前のステンレスなどの鋼材にブラスト処理(#100
〜#400の範囲)をして密着性を上げたり、ブラスト
処理のみでリン酸亜鉛被膜34を設けないパターンもあ
り、適宜、必要程度の処理を行う。尚、このような、バ
ックアップ機能を必要としない場合には、その機能を果
たす被膜を設ける必要はない。
【0023】この固体潤滑剤被膜36は、15μmに形
成しているが、5μmから30μmの厚さの被膜として
形成すればミシンMにおける摺動部に用いる被膜として
は、ミシンの摺動性と耐磨耗性を得るには十分であり、
また、固体潤滑剤被膜36が消耗したとしても、ガタの
影響などの縫製に支障がない程度の厚さである。この固
体潤滑剤被膜36のフッ素樹脂は、PTFE(4フッ化
エチレン)或いはPFE(ポリフッ化エチレン)を用い
ることが望ましい。更に望ましくはPTFEを用い。こ
のPTFEの分子は、原子半径の比較的大きなフッ素原
子が炭素原子表面をほぼ完全に覆い隠し、炭素原子が表
面に現れない構造をしているので、炭素を主成分とする
DLCと同一元素同士が凝着し合ういわゆる凝着摩耗が
生じない。
【0024】この固体潤滑剤被膜36のPAIはNMP
(エヌメチルピロリドン)の溶剤に溶けたインク(溶
液)であり、そのPAIインクにフッ素樹脂の粒子が適
度に分散されている薬剤を固体潤滑剤被膜36は主原料
としている。固体潤滑剤被膜36は、スプレー内に収納
された薬剤(PAI、NMP、フッ素樹脂等からなる薬
剤)を上記リン酸亜鉛被膜34の表面に吹きかけて設け
ても良いし、また、いわゆるディッピング(浸透法)よ
り設けても良い。そして、その薬剤の溶剤のNMPを除
去するために、中空の形状に加工される前のブッシュ2
9が190℃で30分間焼かれる。
【0025】上記DLC被膜30は、プラズマCVD、
スパッタリング(非平衡マグネトロンスパッタリン
グ)、アークオンプレーティング、等の既存の薄膜形成
技術を用いて、天秤16の少なくとも天秤軸24の外側
表面にコーティング処理を施して形成される。DLC被
膜30の硬度は、水素含有量とsp3/sp2結合比に
よって調節することができ、HVにて数百からダイヤモ
ンドのHVに近いHV8000くらい迄の高硬度被膜と
することができる。DLC被膜30の動摩擦係数は約
0.1以下となり、基材としての天秤軸24との密着強
度は20N以上となる。このように、DLC被膜30は
耐磨耗性と摺動性に非常に優れた被膜である。DLCの
密着強度は基板との間に薄い金属の薄層(0.1μm〜
0.5μmの厚さ)を設けることで強固なものとしてい
る。従来はシリコンなどが用いられていたが最近ではク
ロムを用いることでかなり高い密着強度が得られてい
る。基材は焼き入れなどの表面硬化された鋼材を用いて
摩擦係数を下げるように処理してある。
【0026】更に、DLC被膜30と固体潤滑剤被膜3
6との摺動部分には、グリース38が注入されており、
それらの間を潤滑するようになっている。グリース38
は、潤滑剤として40℃において10〜20mm2/s(c
St)の動粘度のエステル系やPAO(ポリαオレフィ
ン)等の合成油を基油として、ひまし油系のリチウム石
鹸またはウレアを増ちょう剤としてちょう度250に調
整されたものを用いる。基油は、望ましくは油性効果
(潤滑油分子が極性を持って潤滑部材に強固に密着す
る)による潤滑性の高いジエステルあるいはポリオール
エステルなどのエステル系のものを使う。
【0027】上述した構成のミシンMにおいては、1つ
の縫製作業が完成すると、ミシンモータは停止され、次
の縫製作業のために再回転され、ミシンモータの回転速
度は増減を繰り返す。また、ミシンモータが仮に等回転
速度で回転し、天秤16やブッシュ29は揺動(往復運
動)する、即ち、同一方向運動時の動摩擦抵抗よりも大
きいといわれる静止状態から動作する静摩擦抵抗が起こ
るので天秤軸24とブッシュ29との摺動部分の摺動性
と耐磨耗性は極めて高いものが要求されるのである。
【0028】その天秤軸24とブッシュ29とは、0.
5μm〜5μmの厚さのDLC被膜30と5μmから3
0μmの厚さの固体潤滑剤被膜36とを設けられた摺動
部分において摺動し、その固体潤滑剤被膜36には、P
TFE或いはPFEであるフッ素樹脂が分散しており、
固体潤滑剤として機能する。その固体潤滑剤被膜36は
リン酸亜鉛被膜34の上方(表面側)に積層して設けら
れ、固体潤滑剤被膜36が摺動によって万が一消耗され
たときには、その下の層の前記リン酸亜鉛被膜34が露
出してバックアップ機能を果たす。更に、固体潤滑剤被
膜36を設けられると共に、グリース38を塗布または
注入された摺動部分において、天秤軸24とブッシュ2
9とは摺動するのである。
【0029】次に、PAIをバインダーとしてフッ素樹
脂が分散した固体潤滑剤被膜が設けられた摺動部分につ
いての実験結果について説明する。
【0030】この実験においては、円盤の表面にピンの
先端を接触させた状態で、その円盤を回転させて、その
表面の摩擦摩耗特性を調べるピンオンディスク試験を行
った。この試験において、ピンによる円盤に対するヘル
ツ接触圧力は400MPaであり、この状態はミシンM
のほとんどの摺動部分で発生する加速荷重の100倍以
上であり、円盤とピンとの接触部分の相対移動速度は、
上述の天秤軸24とブッシュ29との最大摺動速度とほ
ぼ同様の4m/sである。
【0031】その円盤はクロムモリブデン鋼で構成さ
れ、浸炭焼き入れによってその表面硬度が約HV600
以上(およそHV800)のものである。ピンは、クロ
ムモリブデン鋼であり、その表面が浸炭焼き入れされ、
その表面に1μmの厚さのDLC被膜がプラズマCVD
によって形成され、水素を若干含んだもので、硬度はH
V1500程度のものである。ピンの先端はDLC成膜
前に球面研磨され、円盤に対して点接触するようにピン
は構成されている。
【0032】この試験では、本願の実施の形態に関する
PAIの固体潤滑剤被膜、並びに、そのPAIの固体潤
滑剤被膜と比較するための固体潤滑剤被膜(比較例1,
2)についても、上記ピンオンディスク試験を行った。
この比較例1、2の固体潤滑剤被膜では、エポキシ樹脂
をバインダーとしてフッ素樹脂を分散させているもので
あり、230℃で30分間の焼結を行って形成したもの
である。それらの固体潤滑剤被膜の当初の動摩擦係数は
それぞれ、PAIのものが約0.02、比較例1のもの
が約0.12、比較例2のものが約0.06程度のもの
であり、それらの固体潤滑剤被膜はいずれも厚さ10μ
mで形成した。尚、エポキシ樹脂やPAIはいずれも比
較的低せん断特性を有しているものである。
【0033】図4に示すように、比較例1では、当初よ
り動摩擦係数が徐々に上昇し、一旦は、その動摩擦係数
の上昇がおさまり、一定の動摩擦係数0.16を維持す
るが、40分が経過すると、再び動摩擦係数が徐々に上
昇して、50分が経過すると、その固体潤滑剤被膜が消
耗して無くなってしまい摩擦係数が上がった。またDL
Cの摩耗が始まっていた。また、比較例2でも、比較例
1よりは緩やかではあるが、当初より動摩擦係数が徐々
に上昇し、動摩擦係数は、0.16にまで上昇して、6
0分が経過するまでは、その動摩擦係数の値で安定して
いたが、この試験後にその摩耗状況を検査すると、その
固体潤滑剤被膜はほとんど消耗して無くなっており、い
つDLCが摩耗を始めて摩擦係数が急上昇してもおかし
くない状況であった。一方、PAIのものでは、120
分が経過してもわずかな動摩擦係数の上昇に留まり、し
かも、その後の摩耗状況を検査すると、2μmしか摩耗
していないことがわかった。
【0034】上記摺動部材の組合せにてミシンMの摺動
部分の少なくとも過酷な部分、一つは上述の天秤16の
天秤軸24と天秤滑り子26との摺動部分、もう一つは
クランク軸20とクランクレバー9との摺動部分に、一
方に固体潤滑剤被膜、他方にDLC被膜を設けることで
出願人は実機試験を行った。最高速度4000rpm
で、5秒間隔でon/off切り替えの繰り返し可動す
るようにミシンMを動作させる試験において、図5に示
すように、比較例1,2がいずれも3年相当時間でミシ
ンが焼き付き停止したことに対して、PAIのものは8
年相当の耐久性が実機試験にて確認された。と、比較例
1,2に対して2倍以上の耐久年数であることが確認さ
れた。
【0035】上述した実施の形態においては、天秤軸2
4にDLCを設け、ブッシュ29にPAIをバインダー
とするフッ素樹脂の固体潤滑被膜を設けたが、逆に設け
ても良い。ただ現状の技術では、軸受け側の狭い領域に
DLC被膜あるいは固体潤滑剤被膜を設けることは製造
上非常に困難であるために、一度平板の上に固体潤滑剤
被膜を形成したあとに巻き加工をしてブッシュ形状とし
た。今後の技術の進展により高いアスペクト比でも均一
に成膜できるようなDLC成膜技術あるいは固体潤滑剤
被膜形成技術が開発されると非常に選択肢は広がる。天
秤軸24に固体潤滑剤被膜だけを設けた領域とDLC被
膜だけを設けた領域とを設け、その逆の種類の被膜が摺
動するように、ブッシュ29にDLC被膜だけを設けた
領域と固体潤滑剤被膜だけを設けた領域とを設けても良
い。上述した実施の形態においては、天秤軸24とブッ
シュ29との摺動部分において、一方に固体潤滑剤被膜
を設け、他方にDLC処理を施したが、その他のミシン
Mの摺動部分のどこであっても良い。例えば、天秤16
と固定軸22との間の摺動部分、針棒11と針棒支持部
材12との摺動部分、クランク軸20とクランクレバー
9のそれと摺動する摺動部分、クランクレバー9とそれ
に摺動する部材との摺動部分である。特にクランク軸2
0とクランクレバー9のそれと摺動する部分は高負荷の
過酷な摺動部分であるので、すべりの形態を使う以上は
本提案の適用は必須である。
【0036】尚、上述した実施の形態においては、PA
Iの固体潤滑剤被膜とDLC被膜とを摺動するように構
成しているが、DLCの中でも水素含有量を多くした
り、タングステン、チタン、モリブデンなどの金属を含
有させることによって比較的低硬度のものを用いること
でより潤滑寿命が向上されることが出願人の実験によっ
て確かめられている。例えば、タングステン含有の硬度
400HvのDLCを使うことによって、固体潤滑被膜
の摩耗寿命が倍になることが確かめられている。ミシン
寿命にして16年である。低硬度のDLCを使うことで
相手へのアッタク性が低くなり固体潤滑剤被膜の摩耗が
抑制されることと考えられる。上述の実施の形態ではH
v1500のものを用いているが、Hv400〜Hv1
000でおよそ10年の実機寿命があり、ほぼ実状の耐
用年数はクリアしている。尚、DLCの相手方の硬度
は、Hv1〜Hv50程度である。
【0037】上述のように潤滑性においてPAIをバイ
ンダーとする固体潤滑剤被膜が、エポキシ樹脂をバイン
ダーとするものよりも優れていることに加え、比較例
1,2のものでは、PAIの固体潤滑剤被膜よりも高い
温度で焼結する必要があるものであるので、PAIの固
体潤滑剤被膜の方がエポキシ樹脂の固体潤滑剤被膜より
も生産性に優れ、且つ、低温焼結なので基材への加熱時
の影響や残留が少なくてすむ。
【0038】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
請求項1記載のミシンでは、第1部材と第2部材とは、
PAIをバインダーとする固体潤滑剤被膜を設けられた
摺動部分において摺動するので、その摺動部分の摺動性
と耐磨耗性が向上している。
【0039】請求項2記載のミシンでは、第1部材と第
2部材とは、5μmから30μmの厚さの固体潤滑剤被
膜を設けられた摺動部分において摺動するので、ミシン
に必要な摺動性と耐磨耗性が十分に得られる。
【0040】請求項3記載のミシンでは、固体潤滑剤被
膜とリン酸亜鉛被膜とが積層して設けられ、固体潤滑剤
被膜が摺動によって消耗されたときには、その下の層の
前記リン酸亜鉛被膜が露出して、固体潤滑剤被膜の設け
られた基材での摺動されることが防止される。
【0041】請求項4記載のミシンでは、第1部材と第
2部材とは、PTFE或いはPFEであるフッ素樹脂が
分散した固体潤滑剤被膜を設けられた摺動部分において
摺動するので、その摺動部分の摺動性と耐磨耗性が向上
している。
【0042】請求項5記載のミシンでは、第1部材と第
2部材との一方の部材に固体潤滑剤被膜を設けられ、固
体潤滑剤被膜が異質の表面の部材と摺動するので、その
摺動部分の摺動性と耐磨耗性が向上している。
【0043】請求項6記載のミシンでは、第1部材と第
2部材との摺動部分のうち、固体潤滑剤被膜を設けられ
ていない他方の摺動部分には、DLC(ダイヤモンドラ
イクカーボン)コーティング処理が施され、固体潤滑剤
被膜が設けられた部分とDLCコーティング処理を設け
られた部分とにおいて摺動するので、その摺動部分の摺
動性と耐磨耗性が一層向上している。
【0044】請求項7記載のミシンでは、第1部材と第
2部材との摺動部分のうち、固体潤滑剤被膜を設けられ
ていない他方の摺動部分には、DLCコーティング処理
が施され、固体潤滑剤被膜が設けられた部分とDLCコ
ーティング処理を設けられた硬度Hv400〜Hv10
00の部分とにおいて摺動するので、その摺動部分の摺
動性と耐磨耗性が極めて向上し、その寿命も長くなる。
【0045】請求項8記載のミシンでは、第1部材と第
2部材とは、固体潤滑剤被膜が設けられると共に、グリ
ースが塗布または注入されており、その摺動部分の摺動
性と耐磨耗性が一層確実なものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る2本針ミシンの機枠内部の斜
視図である。
【図2】針棒及びその周辺の部材を含む要部の斜視図で
ある。
【図3】相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の
断面図である。
【図4】耐久試験のデータを示すグラフである。
【図5】耐久試験のデータを別の示すグラフである。
【符号の説明】
M 2本針ミシン 11 針棒 12 針棒支持部材 22 固定軸 29 ブッシュ 30 DLC被膜 34 リン酸亜鉛被膜 36 固体潤滑剤被膜 38 グリース

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対運動する第1部材と第2部材との摺
    動部分を有するミシンにおいて、 前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方の摺動
    部分に、PAI(ポリアミドイミド樹脂)をバインダー
    としてフッ素樹脂が分散した固体潤滑剤被膜を設けられ
    たことを特徴とするミシン。
  2. 【請求項2】 前記固体潤滑剤被膜は、5μmから30
    μmの厚さの被膜であることを特徴とする請求項1記載
    のミシン。
  3. 【請求項3】 前記固体潤滑剤被膜は、リン酸亜鉛被膜
    を設けられた表面に設けられていることを特徴とする請
    求項1または2のいずれかに記載のミシン。
  4. 【請求項4】 前記フッ素樹脂は、PTFE(4フッ化
    エチレン)或いはPFE(ポリフッ化エチレン)である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のミ
    シン。
  5. 【請求項5】 前記固体潤滑剤被膜は、前記第1部材と
    前記第2部材との摺動部分のいずれか一方のみに設けら
    れていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに
    記載のミシン。
  6. 【請求項6】 前記第1部材と前記第2部材との摺動部
    分のうち、前記固体潤滑剤被膜を設けられていない他方
    の摺動部分には、DLC(ダイヤモンドライクカーボ
    ン)コーティング処理が施されていることを特徴とする
    請求項5記載のミシン。
  7. 【請求項7】 前記第1部材と前記第2部材との摺動部
    分のうち、前記固体潤滑剤被膜を設けられていない他方
    の摺動部分には、DLCコーティング処理が施され、H
    v400〜Hv1000の硬度であることを特徴とする
    請求項6記載のミシン。
  8. 【請求項8】 前記第1部材と前記第2部材との摺動部
    分に、グリースが塗布または注入されていることを特徴
    とする請求項1から7のいずれかに記載のミシン。
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