JP2003239744A - 可変制御方式の電子式サーモスタット - Google Patents

可変制御方式の電子式サーモスタット

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の走行環境、その他の与件によってエン
ジンの冷却水温度を可変的に精密に制御でき、これによ
り、常に最適の冷却効率を維持し、車両の燃費向上と排
気ガス低減の効果が図れる、可変制御方式の電子式サー
モスタットを提供する。 【解決手段】 熱膨張材質の膨張力と電気的信号を受け
て作動するアクチュエータ手段を用いてバルブの開閉作
動温度を制御する際に、車両の走行環境による各種の制
御信号を受けて作動し、ワックスを収容したワックスチ
ャンバ内に進入するロッドのストロークを変化させて、
ワックスチャンバの容積変化を誘導するアクチュエータ
手段を備え、ワックスの膨張力とアクチュエータ手段の
ストローク変化によって、バルブの動力を得られるよう
にしたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変制御方式の電
子式サーモスタットに係り、さらに詳しくは、冷却水の
温度に応じて反応するワックスの熱膨張によってバルブ
の開閉作動温度を調節するメカニズムを含む可変制御方
式の電子式サーモスタットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車用サーモスタットは、エ
ンジンとラジエータとの間に設けられており、冷却水の
温度変化によってバルブの開閉変位(開閉作動及び開度
変更を含む)を発生させてラジエータに流れる冷却水の
流量を調節することにより、冷却水の適正温度を保つ役
割をする。
【0003】このようなサーモスタットは、バルブの開
閉変位により冷却水の流量を調節することによりエンジ
ンの温度を制御することができる。
【0004】現在の自動車用サーモスタットは大部分機
械式であり、ワックスの膨張による力がピストンに伝達
されてバルブの開閉変位を起こす構造からなっている。
【0005】例えば、図6に示すように、機械式サーモ
スタットは、冷却水の流路上に設けられるフレーム10
と、冷却水の流路を開閉するバルブ11と、バルブ11
を支持するバネ12と、ワックス13及びピストン14
を含むカプセル15等で構成されており、冷却水の温度
が規定温度(たとえば、約80〜90℃)まで高くなる
とワックス13は固体状態から液体状態に変化し、この
際の体積変化による力がピストン14に伝達されてバル
ブ11を動かす作動方式となっている。
【0006】このような機械式サーモスタットは、規定
温度に応じて動作する方式、すなわち、予め定められた
温度でのみ単にバルブを開閉作動する方式であるため、
次第に車両が高性能化及び高効率化されていく最近の趨
勢に鑑みるとき、車両の走行環境やその他与件等の変化
に積極的に対処するのに限界がある。
【0007】一方、車両の冷却性能の設定は、実際車両
のフルロード(Full load)状態、大気温度等
のすべての条件を満足するように設計されるが、車両の
走行条件はほとんど大部分がフルロード状態の70%以
内の範囲で行われるので、実際にエンジンが保有してい
る最大冷却能力はその一部分しか使用できず、エンジン
が必要以上に過冷される現象が発生し、それにより燃費
の損失や排気ガスの過多発生が起こる。
【0008】これにより、既存の部分ロード(Part
ial load)の範囲では全体エンジンの冷却水の
温度水準を上げ、フルロード又は車両の最大速度範囲で
はエンジン冷却水の温度水準を低めることにより、エン
ジン冷却水の温度を常に最適の状態に保たせる冷却水制
御方式が要求されている。
【0009】このため、最近は一般的な機械式サーモス
タットが有する短所を補完し、かつエンジン冷却水の温
度を最適の状態に保つための可変制御方式の電子式サー
モスタットに対する様々なモデルが提示されている趨勢
である。
【0010】このような可変制御方式の電子式サーモス
タットは、車両の走行状態や負荷状態等に応じてエンジ
ン冷却水の温度を制御することにより、常に最上のエン
ジン冷却状態を維持でき、燃費の改善効果と排気ガスの
低減効果が期待できる。
【0011】例えば、ワックスの膨張と連携的に反応で
きるヒータを含む電子式サーモスタットがある。
【0012】図7に示すように、前記電子式サーモスタ
ットは、既存の機械式サーモスタットの基本的な構成要
素に電源供給のための差込み16と、ワックス13を反
応させるヒータ17をさらに含む構造となっており、車
両の速度や吸入空気の温度等のような車両の走行環境に
よってヒータの熱量を調節してバルブの開閉作動温度を
可変的に制御する方式となっている。
【0013】ここで、符号11はバルブであり、12は
バネであり、14はピストンである。
【0014】しかし、前記のような既存の電子式サーモ
スタットは反応速度が遅く、特に高温による部品寿命の
短縮という短所がある。
【0015】すなわち、既存の電子式サーモスタットの
短所を挙げると次の通りである。 1)付加的な加熱システムを採用することにより、構成
要素、例えば、ワックス材料の熱的劣化(亀裂等)が生
じる短所がある。 2)ヒータの加熱からワックスの膨張まで、時間がかか
り、応答性が劣るという短所がある。 3)サーモスタットケースの内外両側に電線が配置され
るので、不良シーリングによる電気信号の断絶のおそれ
があるという短所がある。 4)電線の配線時、シーリングのために用いられるエポ
キシがエンジンの振動等によって損傷し、これによりシ
ーリング性に深刻な問題が生じるという短所がある。 5)電気信号の断絶による安全モード作動時でも、バル
ブの開閉作動温度が高温領域に固定され、エンジン過熱
及び冷却効率の低下をもたらし得るという短所がある。
【0016】
【先行技術文献】
【特許文献1】 特開平11−287123
【特許文献2】 特開平07−279666
【0017】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、前記のような問題点を解決するために創出されたも
のであり、車両の走行環境、その他の与件によってエン
ジンの冷却水温度を可変的に精密に制御でき、これによ
り、常に最適の冷却効率を維持し、車両の燃費向上と排
気ガス低減の効果が図れるようにするため、車両の走行
環境、その他の与件に基き算出したアクチュエータ手段
のストローク変化とワックスの温度で決まるワックスの
膨張力によってバルブの動力が得られるようにした、電
子式サーモスタットを提供することに、その目的があ
る。
【0018】また、本発明は、ストロークの変化が可能
なアクチュエータ手段を適用してワックスチャンバの容
積を直接的に変化させる方式の電子式サーモスタットを
提供することにより、エンジンの運転条件と関連したバ
ルブの開閉作動制御に関する迅速な応答性を確保するこ
とに他の目的がある。
【0019】なお、本発明は、電気的信号によって即時
作動するアクチュエータ手段を適用することにより、エ
ンジンの冷却水の温度を精巧に制御できるようにした電
子式サーモスタットを提供することにまた他の目的があ
る。
【0020】なお、本発明のまた他の目的は、電気信号
の断絶によるワックスの膨張作用時、最適の条件でワッ
クス自体の特性が発揮できるようにする安全装置を含む
電子式サーモスタットを提供することにある。
【0021】なお、本発明の電子式サーモスタットは、
スクリューフィーディング方式のアクチュエータ手段を
採用することにより、ストロークの設定を小さくしても
十分なバルブの開閉変位が得られるようにすることにま
た他の目的がある。
【0022】なお、電子式サーモスタットの機構的な作
動メカニズムの観点からみると、バルブの開閉作動時、
膨張作用に係わる流動性を有するワックスを含むエレメ
ント自体が可動しながらバルブを開閉する方式を排除
し、バルブの動力を発生させるワックス部分を含む感温
部を固定支持体とし、最小限の可動要素のみでバルブの
開閉動作を制御できるようにすることにより、バルブの
開閉動作時、揺れ等の機構的な誤差を最大限減らすこと
ができ、これにより、バルブの開閉をより正確に制御で
きるようにした電子式サーモスタットを提供することに
また他の目的がある。
【0023】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の電子式サーモスタットは、熱膨張材質の膨張
力と電気的信号を受けて作動するアクチュエータ手段を
用いてバルブの開閉作動温度を制御できる電子式サーモ
スタットであって、車両の走行環境による各種の制御信
号を受けて作動し、ワックスを収容したワックスチャン
バ内に進入するロッドのストロークを変化させて、ワッ
クスチャンバの容積変化を誘導するアクチュエータ手段
を備え、ワックスの膨張力とアクチュエータ手段のスト
ローク変化によって、バルブの動力を得られるようにし
たことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る電子式サーモスタットの好適な実施例を説明する。本
発明の電子式サーモスタットはワックスの膨張力とアク
チュエータのストローク変化を用いてバルブの動力を得
る。
【0025】このため、図1と図2に示すように、車両
の電子制御装置ECUによる制御を受けて作動するアク
チュエータ20と、ワックス23を含むワックスチャン
バ25を有するケース26が提供される。
【0026】前記アクチュエータ20のロッド27はケ
ース26が有するワックスチャンバ25の内部を一部占
める状態で取り付けられ、ケース26の上端入口とはネ
ジ結合構造で組み立てる。
【0027】これにより、アクチュエータ20の作動と
同時に回転力を受けるロッド27はケース26とのネジ
結合を通じて直線運動に転換されるとともにストローク
変化を引起こすようになる。
【0028】前記アクチュエータ20は電気的信号を受
けて作動する駆動媒体であって、例えば、リニアステッ
プモータ、DCモータ、リニアソレノイド等のような応
答性が優れたものを適用することができる。
【0029】特に、アクチュエータ手段として、線形的
な直線運動方式を採用しているリニアソレノイドを適用
する場合、ロッド27は直線運動をそのまま行うように
なるので、ケース26とのネジ結合を必要とせず、スラ
イド結合構造で十分になる。前記アクチュエータ20と
ケース26は筐体100を用いて取り付けるが、筐体1
00の内側に垂直形の支持部材110が形成され、これ
を支持手段として取り付けられる。
【0030】例えば、アクチュエータ20はロッド27
が支持部材110の中心軸に沿って貫通するように筐体
100の外側上部に取り付けられ、ケース26はその上
端内側にロッド27の一部を含みながら上端外側が支持
部材110の下端内側に挿入又は締結される構造で取り
付けられる。
【0031】なお、バルブの実質的な開閉作動のための
手段としてピストン24及び可動ケース28が提供され
る。
【0032】ピストンケース34内のピストン24はワ
ックスの膨張力を伝達されて直線運動で動作する手段で
あり、前記可動ケース28はピストン24の下端とバル
ブ21の上端に接しながらピストン24の動きを受けて
バルブ21を開閉する手段である。
【0033】また、ワックスの膨張力をピストン24の
直線運動に転換するためにダイヤフラム29と非圧縮性
質を有するゲルタイプの電動流体30が提供される。
【0034】前記ダイヤフラム29はケース26が有す
るワックスチャンバ25の下端を締め切るとともに伸縮
作用を通じてワックスの膨張力を伝達し、前記電動流体
30はダイヤフラム29とピストン24間に充填され、
ダイヤフラム29を伸縮するとともにその力をピストン
24に媒介して伝える。
【0035】前記電動流体30の気密性維持のためにピ
ストン24側と接する方にゴム材質のパッキング31を
備えることが好ましい。
【0036】また、前記ピストン24と可動ケース28
が接する下端にはバイパス通路の開閉役割を果すストッ
パ32と補助バネ33が取り付けられ、バルブ21は筐
体100のサポート120に下端支持されるバネ22に
よる弾力支持を受けるとともに、可動ケース28の上端
フランジの底面に組み立てられ、かつ筐体100の冷却
水通路内に取り付けられる。
【0037】したがって、このように構成された本発明
に係る電子式サーモスタットの作用と特性をみると次の
通りである。
【0038】本発明の電子式サーモスタットはアクチュ
エータ手段としてリニアタイプのステップモータ、DC
モータ、ソレノイド等を用いる。
【0039】既存のサーモスタットは、ただワックスの
膨張力によってバルブの動力を得るが、本発明で提供さ
れる電子式サーモスタットでは、ワックスの膨張力とア
クチュエータ手段の有するロッドのストローク変化によ
ってバルブの動力を得る。
【0040】ここで、アクチュエータ手段、例えば、ス
テップモータのロッドはケース内部にあるワックスチャ
ンバの内部に位置しており、これがワックスチャンバの
容積の変化を可能にする重要な要素である。
【0041】なお、アクチュエータ手段として電気的な
信号によって作動するステップモータを用いることによ
り、エンジンの温度を既存のサーモスタットより遥かに
精巧に制御できる。
【0042】すなわち、ステップモータのロッドストロ
ークを用いてワックスチャンバの容積を変えてバルブの
開閉変位(開閉作動及び開度変更を含む)を調節するこ
とによりエンジンの温度をより精巧に制御できる。
【0043】ワックスの膨張によるバルブの開閉変位に
関しては既存のシステムと同じであるが、アクチュエー
タ手段のストローク位置の変化によりバルブの開閉作動
温度を制御することができる点で、本発明による方式は
既存のシステムと異なる。
【0044】さらに、本発明の電子式サーモスタットで
は、機械的な構造によってステップモータロッドの小さ
いストロークのみでも十分な性能を発揮することができ
る。すなわち、ロッドの小さいストロークによってエン
ジンの最適温度を保たせるのに十分な冷却流量を精度良
く確保することができる。
【0045】これは、ロッドとピストンの直径比率を調
節することによって可能である。例えば、ロッドストロ
ーク0〜2mmによってバルブの開閉変位をピストンの
ストローク0〜8mmの範囲で制御できる。
【0046】前記のようなバルブの開閉変位に係るロッ
ドとピストンのストロークの関係は、例えば次の通りで
ある。 ロッドのストローク:ΔL=2mm であり、 ロッドの外径:D=φ8mm であれば、 ワックスチャンバの容積変化:ΔV=ΔL×π×D×D
/4=100.48mm。 ピストンの外径:D’=φ4mm であり、 ピストンのストローク:ΔL’ とすれば、 ピストンの移動体積変化:ΔV’=ΔL’×π×D’×
D’/4。 ピストンの移動体積変化ΔV=ワックスチャンバの容積
変化ΔV’、 したがって、ピストンのストロークΔL’=8mmであ
る。
【0047】このようにステップモータロッドの小さい
ストロークのみで十分な性能を発揮することができ、こ
の際のストローク比率はロッドとピストン間の所定の直
径比率を通じて調節できる。
【0048】このようにして、本発明の電子式サーモス
タットでは、車両の種々の走行環境を考慮した最適の条
件で制御でき、エンジンの冷却温度を従来より遥かに精
巧に制御できる。
【0049】車両の種々のセンサから検出される信号を
受けて作動するアクチュエータ手段、例えば、ステップ
モータはエンジン冷却システムの性能を最適化できる
が、これはバルブの開閉変位を自由自在に調節できるか
らである。
【0050】バルブの開閉変位を自由自在に調節すると
いうことは冷却水の流量を自由自在に調節することを意
味するので、既存の機械式サーモスタットが抱えている
反応時間の遅延と状況によって車両の冷却能力を異にす
ることができない短所を補完できる。
【0051】例えば、多くの冷却水流量を必要とする場
合や高負荷、或は高速運転時等のような種々の走行環境
において本発明の電子式サーモスタットはバルブの開閉
変位をエンジンの負荷、速度等による因子の影響を受け
て作動させるとともに、バルブの開閉変位の制御をステ
ップモータのロッドストロークによって即時補償でき
る。
【0052】換言すれば、エンジンの負荷、状況等によ
るエンジンの冷却能力を異にすることができるので、冷
却効率を最適に制御できるものである。
【0053】図3〜図5に示すように、エンジンの負荷
状態、速度、冷却水温度、吸入空気の温度等を入力信号
とする電子制御装置ECUの出力制御によってステップ
モータのロッドストロークを増加又は減少させることに
より、ワックスチャンバの容積を可変的に選択でき、し
たがって、車両の走行環境に合わせてバルブの開閉作動
温度の範囲を約T(85℃)〜T(105℃)程度
に幅広く調節できるので、エンジンの運転条件に合う冷
却水流量を十分に確保できる。
【0054】例えば、エンジンの負荷が増加する場合
は、迅速な冷却水流量の増加を必要とするので、図3と
図5に示すように、ロッドストロークを増加させてワッ
クスチャンバ内のロッド占有率を高めることにより、ワ
ックスの膨張に係わるバルブの開閉時点を85℃程度に
繰上げることができ、これとは反対にエンジンの低負荷
状態では、図4と図5に示すように、ロッドストローク
の減少によってワックスの膨張に係わるバルブの開閉時
点を105℃程度に遅らせることができる。
【0055】換言すれば、ロッドの増加したストローク
(ワックスチャンバ内に最大進入した状態)やロッドの
減少したストローク(ワックスチャンバ内に最少進入し
た状態)に応じてバルブの開閉作動が図5の領域と同じ
範囲内で選択的に定められ得る。
【0056】すなわち、エンジンの負荷条件によって実
時間にバルブの開閉程度を異にして冷却水の流量を自由
自在に調節することにより、エンジンの冷却効率を常に
最適に制御することができる。
【0057】また、本発明は、バルブの正確な開閉作動
を可能にする機構的な作動メカニズムを提供する。
【0058】このため、膨張作用による流動性を保有し
ているワックス部分はバルブの開閉作動に直接的な影響
を与えないようにし、バルブの開閉作動はワックスの膨
張力を受けるピストン及び可動ケースを通じて行われる
ようにする。
【0059】すなわち、ワックスを含むケースは固定体
の役割を果しながらただバルブの駆動のための膨張力の
みを提供し、実質的にバルブの駆動はワックスの膨張力
を受けるピストンと可動ケースを可動体として行われる
ようにする。
【0060】これにより、バルブの動力を発生させる駆
動源自体の動きなしに周辺の可動要素のみでバルブが開
閉できるので、バルブの開閉作動を機械的な誤差なしに
安定的で、かつ精密に制御できる。
【0061】ここで上記の本発明に係る電子式サーモス
タットの作用を、これを使うシステムの立場から要約し
て述べる。まず、ECU(上記では直接ふれていない)
はエンジンの環境・負荷条件から任意の手順に従って、
冷却水のその時点ごとの望ましい最適温度とこれに相当
するワックスの望ましい温度を計算し、次にこれに見合
うワックスチャンバの容積に当たる位置にアクチュエー
タロッドを動かす。ワックスの実際の温度が望ましい温
度より低いと、ピストンは動かずバルブは閉じたままで
ある。ワックスの実際の温度が望ましい温度より高い
と、ワックスの体積がワックスチャンバの容積を超え、
ピストンが動きバルブが開閉作動する。ピストンのスト
ローク、すなわちバルブの開度はワックスの実際の温度
と望ましい温度の差に対応し、両者が同一値になるよう
に負のフィードバックがかかり、この制御は安定であ
る。これは、エンジンの最適冷却を可能する、従来にな
い強力な武器となる。図5に、このようにして得られる
制御特性を示す。図5で、横軸は冷却水の温度(相当す
るワックスの温度、したがって相当するロッドのストロ
ークから逆算できる)であり、縦軸はピストンのストロ
ークである。バルブの開閉作動温度、つまり望ましい冷
却水温度は、ある範囲、たとえばT (85℃)〜T
(105℃)内で自由に動かすことができる。この上限
と下限はロッドのストロークの物理的限界に対応し、設
計により調節可能である。
【0062】また、本発明の電子式サーモスタットが有
する特徴のもう一つは、電気信号の断絶時、安全装置を
提供することにある。
【0063】車両の運転時、電気信号が断絶することが
あるが、もし、そのような場合、安全装置を含んでいな
い完全な電子式サーモスタットは全く機能を発揮でき
ず、エンジンに問題を引起すことがある。
【0064】本発明の電子式サーモスタットは内部にワ
ックスを含んでいるので、ワックス自体の特性を常に保
有しており、これにより、電気信号が断絶してもワック
ス自体の特性によってバルブの開閉作動が問題なく行わ
れ得る。
【0065】特に、本発明では、アクチュエータとロッ
ド間の結合部位にトーション力を発揮できる弾性復帰手
段、例えば、ロッドに復元力を与えるトーションバネ3
5が提供される。
【0066】このような弾性復帰手段は電気信号の断絶
時、ロッドの位置を初期状態に復元させることが可能で
あり、これにより、既存の機械式サーモスタットと同様
にバルブの開閉作動はワックスの膨張力によって行われ
得る。
【0067】この際、前記ロッドの復元位置を、減少し
たストローク状態の位置になるようにしてワックスの膨
張開始温度が低い水準(85℃)に設定されるようにす
ることで、電気信号の断絶時、既存の機械式サーモスタ
ットと同様にワックスの膨張力に依存してバルブの開閉
作動を行う場合にもエンジンの冷却能力を最適に制御で
きるものである。
【0068】
【発明の効果】以上、述べたように、車両の冷却能力
は、車両の走行環境、その他与件によって相当部分影響
を受けるが、既存の機械式サーモスタットはそのような
周辺与件を反映する機能がなく、現在提供されているヒ
ータを用いた電子式サーモスタットの場合も熱的特性に
よる様々な問題を抱えているが、本発明で提供される電
子式サーモスタットは前記した要素の内部構成を排除
し、熱的特性による問題及びシーリングによる問題を完
全に解消できることはもちろん、構造的に動力駆動源を
固定することにより、バルブ作動時の機械的欠陥要因を
なくすことができ、何よりも周辺の影響を予め電子制御
装置に貯蔵し、状況による制御を可能にすることによ
り、車両の走行環境、その他与件等によって常に最適の
冷却効率が維持でき、自動車エンジンの耐久性及び出力
向上を遂げることができるだけでなく、窮極的に車両の
燃費向上と排気ガス低減の効果をすべて満足させること
ができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子式サーモスタットを示す分解
斜視図である。
【図2】本発明に係る電子式サーモスタットの設置状態
を示す断面斜視図である。
【図3】本発明に係る電子式サーモスタットの作動状態
に対する一具現例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る電子式サーモスタットの作動状態
に対する他の具現例を示す断面図である。
【図5】図3と図4の作動状態に対するグラフである。
【図6】従来のペレット型サーモスタットを示す断面図
である。
【図7】従来の電子式サーモスタットを示す断面図であ
る。
【符号の説明】
10: フレーム 11、21:バルブ 12、22:バネ 13、23:ワックス 14、24:ピストン 15: カプセル 16: 電源供給差込み 17: ヒータ 20: アクチュエータ 25: ワックスチャンバ 26: ケース 27: ロッド 28: 可動ケース 29: ダイヤフラム 30: 電動流体 31: パッキング 32: ストッパ 33: 補助バネ 34: ピストンケース 35: トーションバネ 100: 筐体 110: 支持部材 120: サポート

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱膨張材質の膨張力と電気的信号を受け
    て作動するアクチュエータ手段を用いてバルブの開閉作
    動温度を制御できる電子式サーモスタットであって、 車両の走行環境による各種の制御信号を受けて作動し、
    ワックスを収容したワックスチャンバ内に進入するロッ
    ドのストロークを変化させて、ワックスチャンバの容積
    変化を誘導するアクチュエータ手段を備え、ワックスの
    膨張力とアクチュエータ手段のストローク変化によっ
    て、バルブの動力を得られるようにしたことを特徴とす
    る可変制御方式の電子式サーモスタット。
  2. 【請求項2】 前記ワックスの膨張力をバルブの動力に
    伝達する手段は、アクチュエータ手段のロッドを一部収
    容するとともに、ワックスを収容したワックスチャンバ
    を有するケース及びそれの下部を締め切るダイヤフラム
    と、ケース下端に組み立てられるピストンケース内に配
    置され、ダイヤフラムの伸縮力を直接受ける電動流体及
    びそれによって直線運動を行うピストンと、ピストンの
    下端とバルブの上端に接し、かつピストンの動きを受け
    てバルブを開閉する可動ケースを含むことを特徴とする
    請求項1記載の可変制御方式の電子式サーモスタット。
  3. 【請求項3】 前記アクチュエータ手段は、スクリュー
    フィーディング方式のロッドを含むことを特徴とする請
    求項1記載の可変制御方式の電子式サーモスタット。
  4. 【請求項4】 前記バルブの開閉作動温度は、アクチュ
    エータ手段のロッドが有する増加したストロークと減少
    したストロークとで決まる範囲内で可変的に決定される
    ことを特徴とする、請求項1記載の可変制御方式の電子
    式サーモスタット。
  5. 【請求項5】 前記バルブの開閉作動温度の前記範囲
    は、85〜105℃であることを特徴とする請求項4記
    載の可変制御方式の電子式サーモスタット。
  6. 【請求項6】 前記アクチュエータ手段のロッドが有す
    るストロークの範囲は、ピストンとの直径比によって調
    節できることを特徴とする請求項1又は2記載の可変制
    御方式の電子式サーモスタット。
  7. 【請求項7】 前記アクチュエータ手段は、リニアステ
    ップモータ、DCモータ又はリニアソレノイドであるこ
    とを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載
    の可変制御方式の電子式サーモスタット。
  8. 【請求項8】 前記アクチュエータ手段は、電気信号の
    断絶時、ロッドの位置を初期状態に復元させる弾性復帰
    手段を含むことを特徴とする請求項1記載の可変制御方
    式の電子式サーモスタット。
  9. 【請求項9】 前記ロッドの復元位置は、減少したスト
    ローク位置とし、電気信号の断絶時、前記バルブの開閉
    作動温度が低い水準(85℃)に設定されるようにした
    ことを特徴とする請求項8記載の可変制御方式の電子式
    サーモスタット。
  10. 【請求項10】 前記バルブの開閉作動は、ワックスを
    含む部分を固定体とし、ワックスの膨張力を受けるピス
    トンと可動ケースを可動体として行われることを特徴と
    する請求項2記載の可変制御方式の電子式サーモスタッ
    ト。
  11. 【請求項11】 前記アクチュエータ手段は、線形的な
    直線運動方式のロッドを含むことを特徴とする請求項1
    記載の可変制御方式の電子式サーモスタット。
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