JP2003227064A - 塩縮した天然繊維ならびにその製造方法 - Google Patents

塩縮した天然繊維ならびにその製造方法

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JP2003227064A
JP2003227064A JP2002028090A JP2002028090A JP2003227064A JP 2003227064 A JP2003227064 A JP 2003227064A JP 2002028090 A JP2002028090 A JP 2002028090A JP 2002028090 A JP2002028090 A JP 2002028090A JP 2003227064 A JP2003227064 A JP 2003227064A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩縮した野蚕絹糸や羊毛の提供、この塩
縮野蚕絹糸や羊毛の製造方法の提供、また、この塩縮野
蚕絹糸や羊毛を利用した抗菌性繊維素材や活性物質担持
繊維素材の提供。 【解決手段】 野蚕絹糸または羊毛を中性塩水溶液中に
浸漬した後、取り出した野蚕絹糸または羊毛を凝固浴中
に浸漬して、塩縮・凝固した野蚕絹糸または羊毛を得
る。羊毛として、尿素水溶液中で浸漬処理して分子間・
分子内の水素結合を切断した羊毛を用いる。中性塩は、
臭化リチウム、硝酸カルシウム等であり、凝固浴は、水
単独または水/アルコールの混合水溶液からなる。塩縮
した野蚕絹糸や羊毛に抗菌性金属イオンや活性物質を吸
着せしめる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩縮した天然繊維
およびその製造方法、ならびにこの塩縮した天然繊維を
利用した金属・活性物質担持天然繊維素材に関し、特
に、塩縮した野蚕絹糸および羊毛である天然繊維、該天
然繊維の製造方法、ならびに該天然繊維を利用した抗菌
性繊維素材および活性物質担持繊維素材に関する。塩縮
(以下、捲縮と呼ぶこともある)とは、一般に、中性塩
水溶液中に蛋白質繊維を浸漬処理することにより繊維長
が収縮する現象を意味する。
【0002】
【従来の技術】加熱した中性塩水溶液中に家蚕由来の絹
糸を浸漬し、絹糸を塩縮して、新規な機能性を備えた家
蚕絹糸を得ることは知られている。すなわち、家蚕絹糸
を加熱した中性塩水溶液に浸漬すると、中性塩水溶液中
に浸漬した初期の段階、通常20秒程度の短時間で、家蚕
絹糸は膨潤し、繊維長が縮み、その結果、絹糸表面が不
規則となり捲縮する。このような塩縮処理により、絹糸
は柔らかくなり、また、糸嵩が増して、軽くソフトな肌
ざわりになる。
【0003】家蚕絹糸を塩縮処理する方法として、例え
ば、硝酸カルシウム水溶液で処理する方法が知られてい
る(加藤弘、日本蚕糸学雑誌、59,271-279,280-287,341
-349(1990))。この場合、比重:1.410〜1.420g/cm
硝酸カルシウム水溶液(80℃)中に家蚕絹糸を浸漬する
と、中性塩水溶液中に約1分浸漬する塩縮過程の初期で
塩縮率が40%に達する(上記日本蚕糸学雑誌参照)。な
お、従来用いた硝酸カルシウム水溶液の濃度は本発明表
示の濃度、約1.3g/mLに対応する。このように、家蚕絹
糸は、中性塩水溶液中への浸漬工程で塩縮するという特
徴を有し、柔らかく、且つ、バルキー性の増した絹糸と
して利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、野蚕幼虫が製造
する絹糸の利用についての関心が高まっているが、この
野蚕絹糸は、家蚕絹糸の場合と異なり、上記のような従
来の塩縮処理条件では全く塩縮しない。野蚕は、一般の
農家が飼育する家蚕とは種を異にするものである。野蚕
としては、例えば、柞蚕(Antheraea pernyi)、天蚕(Ant
heraea yamamai)、タサール蚕(Antheraea militta)、ム
ガ蚕(Antheraea assama)、エリサン、シンジュサン等の
カイコを例示することができ、こうした野蚕の幼虫に由
来する絹糸が野蚕絹糸である。上記の野蚕絹糸の中で、
素材の希少価値の面から最も関心が寄せられているのが
天蚕絹糸である。天蚕は、わが国を原産地とし、江戸時
代から飼育の記録があり長い歴史を持つこと、最近人工
飼料が開発されて幼虫の飼育が容易であること、農家段
階で一般的に飼育されていることから、飼育に関する情
報が多い。
【0005】家蚕(カイコ)幼虫が専ら桑の葉を食べる
のに対して、柞蚕や天蚕等の野蚕はクヌギ、コナラ、カ
シワ、アベマキ等の葉を食べる。家蚕幼虫は養蚕農家が
飼育するのに対して、野生の天蚕幼虫は自然状態で生育
することが一般的である。天蚕種は、その孵化率が低
く、繭糸から絹糸となる割合(糸歩)が極めて少なく、
さらに、繭糸をとる作業が困難であるため、希少価値と
しての意義がある。柞蚕や天蚕等の野蚕の絹糸を家蚕絹
糸に配合した絹織物は、野蚕絹糸の配合率が増加するに
つれて、糸の滑りが抑えられ、縫目の滑脱抵抗が改善で
きるため好ましい。野蚕絹糸はまた、家蚕絹糸以上に、
バルキー性、耐摩耗性にすぐれ、手触り時の風合感もよ
いため、実用天然繊維としての関心がもたれている。
【0006】現代の実用繊維素材のうち、野蚕絹糸等の
昆虫由来の絹蛋白質繊維は、一般に、衣料素材の中でも
感性に富み、吸湿性と染色性ならびに手触り、風合いに
優れた天然素材である。また、羊毛も、天然蛋白質特有
の風合い感を持ち、染色性も良好なことから衣料素材と
して重要である。野蚕絹糸は、その主要な結晶領域が分
子内水素結合を特徴とするアラニン連鎖からなる安定し
た構造をもつため、また、羊毛は分子間がS-S結合で架
橋されているため、化学薬品に対して安定である。野蚕
絹糸や羊毛に対して、さらに嵩高性やバルキー性に優れ
た繊維素材とするために、家蚕絹糸の場合と同様の塩縮
処理を施しても、上記の安定した構造のために収縮は起
きないので、新しい塩縮技術の出現が望まれてきた。
【0007】野蚕絹糸に対して家蚕絹糸と同様の塩縮処
理をしても、野蚕絹糸が塩縮しないのは、家蚕絹糸と野
蚕絹糸とのアミノ酸組成が全く異なるためと、分子間に
-S-S-結合が形成されており安定な構造を有し、耐薬品
性にも優れているためである。家蚕絹フィブロインの結
晶構造はAla-Gly-Ala-Gly-Ala-Serであるのに対し、柞
蚕等の野蚕の絹フィブロインの主要結晶構造はAlaの連
鎖からなる-(Ala)n-である。このように、野蚕絹フィブ
ロインでは、家蚕絹フィブロインとは異なり、その分子
間、分子内にアラニン残基に基づく水素結合が3次元的
にしっかりと形成されている。したがって、両者は、耐
薬品性も、中性塩に対する溶解性も異なる。例えば、高
濃度の硝酸カルシウム水溶液を用いて浸漬処理を行う
と、家蚕絹糸では膨潤するが、野蚕絹糸では全く膨潤し
ない。これは、野蚕絹糸では、上述の通り分子間に-S-S
-結合が形成されて形態安定化していること、また、結
晶部分がAlaの連鎖で構成されており、Ala連鎖の分子間
や分子内の水素結合が安定であることによるものであ
る。
【0008】また、羊毛の場合、中性塩処理しても膨潤
することも塩縮することもないのは、分子間・分子内に
水素結合があるためである。さらに、野蚕絹糸等の絹蛋
白質繊維や羊毛等の動物性蛋白質繊維には、染料の吸着
座席となる塩基性基、酸性基、水酸基、無極性基が多く
含まれているので、鮮やかで、深みのある色相に染色で
きる。この場合、染料の種類には、直接染料、酸性染
料、バット染料、反応性染料等がある。また、染料とし
ては、多種類の天然及び合成染料が知られているが、工
業的に重要なものの大部分は合成染料である。こうした
合成染料は、化学組成的に単一な構造の染料であり、安
価にしかも多量に生産されている。また、合成染料を用
いる染色においては、染色条件が同一でありさえすれ
ば、毎回同一の色調に染色でき、好みによっては原色や
けばけばしく彩度の高い色調も容易に発色させることが
可能である。
【0009】一般の染色技術では、染色時には染色浴の
温度を高温にしなければならず、多大の熱エネルギーが
必要となる。そのため、低温で、短時間で可能な濃色染
色技術が開発されれば、省エネルギー、効率化の面から
理想的な染色加工方法となるものと期待できる。通常、
染色性を向上させるには、染料濃度を増加させるか、浴
比を小さくするか、pHを低下させるか、或いは染色助剤
濃度を高くするか等の染色加工上の工夫をしている。し
かし、濃色染めを達成するために、浴比を小さくし、染
色浴のpHを低下させると、染めむらが発生する危険があ
った。また、染着が急速すぎると染めムラが生じやすい
し、反対に緩やか過ぎると容易には目的とする望みの濃
さに染まらない等の問題点があった。そのため、野蚕絹
糸や羊毛等の天然繊維について、簡単な前処理により染
色性をさらに向上させる技術の出現が望まれていた。
【0010】本発明の課題は、上記従来技術の問題点を
解決することにあり、バルキー性、耐摩耗性に優れ、手
触り時の風合感がよく、さらには染料による染着性に優
れた塩縮天然繊維(野蚕絹糸および羊毛)を提供するこ
と、この塩縮した野蚕絹糸および羊毛の製造方法を提供
すること、ならびに塩縮した野蚕絹糸や羊毛を利用した
抗菌性繊維素材や活性物質担持繊維素材を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、野蚕幼虫
由来の絹糸または羊毛について、繊維を繊維長方向に収
縮させ、柔らかく、風合い感に優れた素材を製造するた
めの技術の開発を進めてきた。その結果、野蚕絹糸や羊
毛を中性塩水溶液で処理した後、凝固処理することによ
り、所望の塩縮した野蚕絹糸や羊毛を製造できることを
見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の塩縮し
た天然繊維の製造方法は、天然繊維として野蚕絹糸また
は羊毛を中性塩水溶液中に浸漬し、引き続いて、取り出
した天然繊維を凝固浴中に浸漬して塩縮・凝固した天然
繊維を製造することを特徴とする。
【0012】処理対象羊毛として、中性塩水溶液中に浸
漬する前に尿素水溶液中に浸漬して分子間・分子内の水
素結合を切断した羊毛を用いることが望ましい。中性塩
は、臭化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、チオ
シアン酸リチウム、硝酸カルシウム、および塩化カルシ
ウムから選ばれることが望ましい。これらの中性塩の濃
度は、0.8g/mLより高く6.0g/mL以下であることが望まし
い。この中性塩濃度は中性塩の無水物に換算した値を意
味する。凝固浴は、水単独または水/アルコールの混合
溶液であることが望ましい。処理対象野蚕絹糸または羊
毛は、グラフト重合用モノマーを用いて加工したグラフ
ト加工野蚕絹糸もしくは羊毛、または反応性モノマーを
用いて化学修飾加工した化学修飾加工野蚕絹糸もしくは
羊毛であっても良い。
【0013】グラフト重合用モノマーは、例えば、メタ
クリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(n-BMA)およ
びスチレン(St)から選ばれた疎水性ビニル化合物、また
は、メタクリルアミドおよびメタクリル酸2-ヒドロキシ
エチルから選ばれた親水性ビニル化合物であり、また、
反応性モノマーは、例えば、エチレングリコールジグリ
シジルエーテルおよびグリセロールポリグリシジルエー
テルから選ばれたエポキシ化合物、または無水コハク
酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、および無水フタ
ル酸のような酸無水物から選ばれた酸無水物であること
が望ましい。
【0014】また、本発明の塩縮した天然繊維(野蚕絹
糸および羊毛)の製造方法は、羊毛を尿素水溶液中に浸
漬して分子間・分子内の水素結合を切断し、引き続い
て、得られた羊毛を中性塩水溶液中に浸漬して塩縮・凝
固した羊毛を製造することを特徴とする。羊毛の場合、
この中性塩水溶液中での浸漬処理により塩縮は起こり、
十分実用可能であるが、実用可能な塩縮が起こらない場
合には、前記したように、中性塩水溶液処理の後、さら
に凝固浴による処理を行うことにより、塩縮反応が確実
に完了する。この製造方法の場合も、使用される中性塩
や羊毛は前記製造方法の場合と同様である。本発明の塩
縮した野蚕絹糸や羊毛である天然繊維は、中性塩水溶液
中に浸漬した野蚕絹糸や羊毛を取り出して、引き続いて
凝固浴中に浸漬することにより塩縮・凝固せしめたもの
である。また、本発明の塩縮した羊毛は、尿素水溶液中
に浸漬して分子間・分子内の水素結合を切断した羊毛を
中性塩水溶液中に浸漬することにより塩縮・凝固せしめ
たものであっても良い。
【0015】本発明によれば、上記製造方法に従って得
られた塩縮した天然繊維(野蚕絹糸および羊毛)には抗
菌性金属が多く吸着するので実用的な抗菌性繊維素材と
することができ、また、上記製造方法に従って得られた
塩縮した天然繊維に、絹フィブロインを付着させ、この
絹フィブロインを基質として、該基質中に酵素、医薬
品、生理活性物質、生体触媒からなる活性物質を含有せ
しめて活性物質担持繊維素材とすることもできる。さら
に、上記製造方法に従って得られた塩縮した野蚕絹糸ま
たは羊毛である天然繊維は、廃液中の金属を吸着する繊
維素材としても有用である。
【0016】本発明によれば、野蚕絹糸および羊毛を塩
縮させることにより、これらの繊維は、柔らかく、伸び
やすくなり、かつ、嵩高くなると共に、染料を多量に吸
着する優れた染色挙動を示すようになる。その結果、ソ
フトで嵩高い繊維製品等を製造することができる。ま
た、抗菌性金属等の金属イオンの吸着性が向上した野蚕
絹糸や羊毛の製造が可能となる。野蚕絹糸や羊毛を中性
塩水溶液中に浸漬した後、取り出した野蚕絹糸や羊毛を
水/アルコールからなる凝固浴に浸漬することにより蛋
白質が凝固する。この過程で繊維は塩縮する。野蚕絹糸
のように、分子間に水素結合のない絹蛋白質は、中性塩
水溶液による膨潤処理後の凝固処理だけで所望の塩縮絹
糸を製造することができる。一方、羊毛の場合、例え
ば、前処理として25℃で8Mの尿素水溶液中で所定時間処
理することで分子間および分子内の水素結合を切断した
後、加熱した中性塩水溶液中に所定時間浸漬すること
で、または、その後、所望により、凝固性のある水もし
くは水/アルコールの混合水溶液中に所定時間浸漬する
ことで塩縮した羊毛を製造することができる。
【0017】本発明によれば、塩縮加工により野蚕絹糸
や羊毛の微細構造が粗となるため、塩縮した野蚕絹糸や
羊毛を低分子化合物を含んだ水溶液中に浸漬すると、こ
の化合物は繊維内に容易に浸透し得る。そこで、塩縮加
工した野蚕絹糸や羊毛を絹フィブロイン水溶液中に入れ
ると、絹フィブロインが繊維内部に浸透したり、塩縮繊
維の表面が絹フィブロインの薄膜で覆われる。このた
め、絹フィブロイン水溶液中に、水溶性の酵素、医薬
品、生理活性物質、生体触媒等からなる活性物質を溶解
させた混合水溶液を用いることにより、塩縮した野蚕絹
糸や羊毛に絹フィブロインが付着すると共に、この絹フ
ィブロインが基質となって、この基質中に活性物質を含
ませることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の塩縮した野蚕絹糸
および羊毛である天然繊維およびその製造方法、ならび
にこの塩縮した天然繊維に抗菌性金属が吸着されてなる
抗菌性繊維素材および塩縮した天然繊維に絹フィブロイ
ンが付着し、この絹フィブロインからなる基質中に酵
素、医薬品、生理活性物質、生体触媒等の活性物質が含
有されてなる活性物質担持繊維素材について、その好ま
しい実施の形態を詳細に説明する。本発明によれば、天
然繊維としての柞蚕絹糸等の野蚕絹糸および羊毛に対し
て塩縮処理を行い、所望の塩縮率を有する塩縮野蚕絹糸
および羊毛を製造することができる。
【0019】野蚕絹糸の場合は、所定濃度の中性塩水溶
液中に野蚕絹糸を所定温度で一定時間浸漬して膨潤処理
をした後、取り出した野蚕絹糸を水単独または水/アル
コールの混合溶液からなる凝固浴中に浸漬して、繊維長
を収縮させ、塩縮・凝固処理を行い、塩縮した野蚕絹糸
を製造する。一方、羊毛の場合は、好ましくは、所定濃
度の尿素水溶液中に羊毛を所定温度で一定時間浸漬して
分子間および分子内の水素結合を切断し、このように処
理された羊毛を所定濃度の中性塩水溶液中に所定温度で
一定時間浸漬して、繊維長を収縮させ、塩縮・凝固し、
塩縮した羊毛を製造する。しかし、羊毛は、この工程だ
けでは、必ずしも塩縮・凝固反応が完了しないことがあ
るので、塩縮を確実に完了させるためには、さらに、凝
固浴中に浸漬処理することにより塩縮を完成せしめるこ
とが望ましい。
【0020】本発明では、塩縮処理する天然繊維として
野蚕絹糸および羊毛を対象としたが、野蚕幼虫に由来す
る絹蛋白質の他に動物由来のケラチン(羊毛ケラチ
ン)、コラーゲン、ゼラチンであっても処理対象とする
ことができ、また、その形態としては、絹繊維、絹繊維
製品もしくはその繊維集合体、または動物繊維のケラチ
ン繊維、ケラチン繊維製品もしくはその繊維集合体であ
ってもよい。中性塩としては、例えば、上記したよう
に、臭化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、チオ
シアン酸リチウム、硝酸カルシウム、または塩化カルシ
ウム等を挙げることができ、これらの中性塩は無水物で
もよいし、水和物であっても同様に利用できる。水和物
については、本明細書中では、例えば、硝酸カルシウム
四水和物のように水が四分子結合した中性塩表示とした
場合や、硝酸リチウムのように結合水のない中性塩の場
合もあるが、濃度については、無水中性塩を水1mLに何g
溶解するかとして表示するようにした。ただし、チオシ
アン酸リチウム水和物の場合は、結合水の水和数が不定
のため、換算係数は求められなかった(以下の表1参
照)。
【0021】これらの中性塩のうち、臭化リチウムや硝
酸カルシウムが好ましい。これらは、同一濃度における
他の中性塩の場合と比べると、柞蚕絹糸を膨潤させる作
用が強いので、また、中性塩水溶液中に浸漬した後に引
き続いて凝固浴中に浸漬した際に、絹糸を収縮させる働
きが優れているので特に好ましく用いられる。次に、野
蚕の代表として柞蚕を用いて、柞蚕絹糸の塩縮処理につ
いて説明する。柞蚕絹糸を所望の程度まで膨潤させた
り、塩縮させるためには、中性塩の濃度、処理温度およ
び処理時間、また、凝固浴の処理条件を適切に設定する
必要がある。
【0022】中性塩水溶液の濃度は、一般に0.8g/mLよ
り高く6.0g/mL以下、好ましくは1.0〜3.0g/mL、さらに
好ましくは2.0〜3.0g/mLである。中性塩濃度が0.8g/mL
以下であると、低温では塩縮は十分に起こらない。しか
し、処理温度を90℃以上にすれば0.8g/mL以下でも塩縮
処理に用いることはできるが、非経済的である。6.0g/m
Lを超えると、柞蚕絹糸等を塩縮するためには過酷な条
件となり、その結果、ついには柞蚕絹糸等が溶解してし
まう恐れがあるため、塩縮を効率的に起こすには不都合
である。なお、3.0g/mLを超えると加熱温度が低くても
極短時間に絹糸が収縮してしまい、塩縮率を制御するこ
とが困難となる場合がある。
【0023】加熱処理温度は、一般に60〜95℃、好まし
くは75〜95℃、さらに好ましくは80〜90℃で行うとよ
い。60℃未満だと塩縮は起こりにくく、95℃を超えると
塩縮は起こるが柞蚕絹糸等の膨潤が進みすぎて塩縮率を
制御することが困難となる。また、処理時間は、中性塩
の種類、濃度とも関連するが、柞蚕絹糸等の収縮状況を
観察しながら適宜調節すればよい。一般的には1分〜30
分、好ましくは5〜30分であり、特に20分程度が安定し
た塩縮効果を発揮させる上で好都合である。
【0024】中性塩水溶液の処理後の凝固浴処理におい
て、水を凝固浴として用いると塩縮が起こりやすい。し
かし、水中に浸漬すると塩縮率が大きな値となってしま
って、所望の塩縮率が得られ難いときは、水とメタノー
ル、エタノール等の従来公知のアルコールとの混合水溶
液でアルコール濃度を、目的とする塩縮率に応じて適宜
変えた混合水溶液で処理することが好ましい。この場
合、アルコール濃度を高くすると、塩縮率を低下させる
ことができる。
【0025】柞蚕絹糸、羊毛を効率的に塩縮するための
好ましい方法は、例えば、次の通りである。 柞蚕絹糸の塩縮:一定濃度以上の中性塩水溶液中に柞蚕
絹糸を浸漬し、温度が一定に設定できる振とう装置にこ
れを取り付け、中性塩水溶液の温度を80℃に設定する。
柞蚕絹糸を80℃の中性塩水溶液中に20分間浸漬する。柞
蚕絹糸は、この浸漬処理により膨潤するが、家蚕絹糸と
違ってこの中性塩処理だけでは収縮することはない。そ
のため、膨潤した柞蚕絹糸を、中性塩水溶液から取り出
した直後、水または水/アルコール(例えば、メタノー
ル、エタノール等)混合水溶液中に浸漬して塩縮・凝固
させるとよい。処理後、柞蚕絹糸を取り出して流水で十
分に洗浄し、絹糸内に残留している中性塩成分を除き、
室温で乾燥させて、塩縮柞蚕絹糸を製造することができ
る。
【0026】柞蚕絹糸の塩縮・捲縮は、中性塩処理した
柞蚕絹糸を水または水/アルコール混合水溶液に浸漬す
る工程で著しく進む。その収縮程度は、水/アルコール
混合水溶液の水、アルコール濃度を変えることで制御で
きる。収縮効果を高めるには、一般的に、アルコール濃
度を下げること、すなわち水中で凝固させる方法が好ま
しい。 羊毛の塩縮:羊毛の塩縮は、8M程度の濃度の尿素水溶液
中に25℃で1時間程度浸漬し、還元反応により分子間の
水素結合を破壊させ、続いて、80〜85℃の臭化リチウム
水溶液等の中性塩水溶液中に30分浸漬することにより行
われる。その後、所望により、水または水/アルコール
(例えば、メタノール、エタノール等)混合水溶液中に浸
漬して塩縮反応を完了させる。かくして、所定の塩縮率
を有する羊毛を製造することができる。
【0027】本発明における塩縮処理対象としての野蚕
絹糸および羊毛として、繊維にグラフト加工または化学
修飾加工した野蚕絹糸や羊毛を用いることができる。グ
ラフト加工用モノマー、化学修飾加工用化合物を適宜選
択することによって加工された野蚕絹糸および羊毛を用
いて塩縮処理すると、その塩縮率を制御することができ
るし、その加工率によっても塩縮率を制御することがで
きる。グラフト加工用モノマーとしてビニル化合物を利
用することができ、このビニル化合物としては、疎水性
モノマーと親水性モノマーとがある。例えば、上記した
ように、疎水性モノマーとしては、メタクリル酸メチル
(MMA)、メタクリル酸ブチル(n-BMA)またはスチレン(St)
等が、また、親水性モノマーとしては、メタクリルアミ
ドまたはメタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が例示でき
る。
【0028】本発明における野蚕絹糸または羊毛へのグ
ラフト加工は、次のように、前記ビニルモノマーを含む
溶液または分散液に繊維を浸漬して処理することにより
行うことができる。ビニルモノマーを含む溶液または分
散液は、ビニルモノマーが水溶性であれば水溶液、水不
溶性であれば界面活性剤により分散させ水分散液とする
ことが好ましい。具体的は方法としては、野蚕絹糸への
グラフト加工は、例えば、グラフト開始剤として過硫酸
アンモニウム2.5% (owf)、グラフト加工用モノマー20〜
80%(owf)を含み、85%蟻酸でグラフト加工系のpHを3.0に
調整した混合溶液中(浴比1:20)に絹糸を浸漬し、処理す
ることにより行われる。グラフト加工系の温度を常温か
ら80℃まで20分間で昇温した後、40分間、同温度を保持
して反応を進める。反応終了後、水洗し、ノイゲンHC
(1cc/l:第一工業製薬(株)製)を添加した混合溶液中
で、70℃で20分間洗浄し、絹糸表面に付いた試薬を除去
する。水洗い後、風乾し、次いで、標準状態(20℃、65%
RH)で調湿させて加工絹糸を作製した。
【0029】本発明における野蚕絹糸または羊毛への化
学修飾加工は、以下の方法により実施できる。化学修飾
加工用化合物として、酸無水物やエポキシ化合物を利用
することができる。酸無水物としては、無水コハク酸、
無水グルタル酸、無水イタコン酸、または無水フタル酸
等のような二塩基酸無水物が、エポキシ化合物として
は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、または
グリセロールポリグリシジルエーテル等が例示できる。
柞蚕絹糸等の野蚕絹糸や羊毛にエポキシ化合物または酸
無水物を有機溶媒中で化学結合させると、臭化リチウム
等の濃厚な中性塩水溶液で加熱浸漬処理しても塩縮程度
を軽減することができる。例えば、グリセロールポリグ
リシジルエーテル(ナガセ化成工業株式会社製、商品
名:デナコールEX-313およびEX-314)のように3官能性エ
ポキシ化合物や、エチレングリコールジグリシジルエー
テル(ナガセ化成工業株式会社製、商品名:デナコールE
X-810)のような2官能性エポキシ化合物を用いて化学修
飾加工した野蚕絹糸や羊毛を塩縮処理することにより、
塩縮率を低く抑えることができる。
【0030】野蚕絹糸や羊毛への化学修飾加工におい
て、エポキシ化合物、酸無水物に対する有機溶媒として
は、従来公知の有機溶媒を利用できる。このようなもの
としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ピリジン等が挙
げられる。本発明においては、例えば、N,N-ジメチルホ
ルムアミド、ジメチルスルホキシド等の使用が特に好ま
しい。化学修飾加工は、例えば、エポキシ化合物を絹糸
重量に対して20倍(浴比1:20と略記することもある)のジ
メチルホルムアミド(DMF)に溶解し、この溶液を逆流冷
却器を付けた100mLのナス型フラスコに入れ、絹糸がDMF
中に完全に浸漬するように留意しながら、ウォーターバ
ス中で、75〜80℃で時間を変えて反応させることにより
実施できる。なお、エポキシ化合物は、例えば、100mL
のDMFに20g含まれるようにする。反応終了後、試料を取
り出し、DMFで洗浄し、続いて55℃のアセトンで洗浄す
ることで未反応試薬を除去する。最終的に水で洗浄し、
乾燥後重量を測定し、化学修飾加工の有無を確認する。
【0031】化学修飾加工は、通常60〜90℃の加熱下で
行う。最も好ましい反応温度は70〜85℃である。反応温
度が60℃より低すぎると反応効率が良くなく、反応温度
が90℃を超えると反応が短時間に進んでしまい、反応量
を制御でき難くなる等の問題がある。有機溶媒中におけ
るエポキシ化合物または酸無水物の濃度は5〜30%であ
ればよい。濃度が5%未満となると反応効率が低下する
という問題があり、また、30%を超えると、有機溶媒へ
の酸無水物の溶解量が次第に減少する傾向にあり、か
つ、反応温度を上げると短時間に反応効率が上がりすぎ
てしまい、加工効率を制御することが困難となるという
問題がある。なお、75℃以上の温度で化学加工処理する
場合、溶媒が次第に蒸発し、これに伴い加工試薬濃度が
変化し、野蚕絹糸や羊毛との反応性が変わってしまうこ
とが懸念される。そのため、化学加工処理は逆流冷却器
を付けたナス型フラスコ、三角フラスコ等内で行うこと
が望ましい。
【0032】塩縮とは別に柞蚕絹糸等の野蚕絹糸または
羊毛を伸長させることもできる。中性塩水溶液により膨
潤処理した試料を中性塩水溶液から取り出し、流水で水
洗いをした後、含水状態にある試料を機械的に引き伸ば
し、標準状態において引き延ばした長さを試料が乾燥す
るまで保持することで、結果的には塩縮率を変化させる
ことができる。野蚕絹糸や羊毛の塩縮率は、中性塩の種
類、濃度、処理温度、処理時間により、また、野蚕絹糸
へのグラフト加工あるいは化学修飾加工等によっても影
響を受ける。
【0033】野蚕絹糸や羊毛の所望の塩縮率は、中性塩
の種類、濃度、処理温度、処理時間を調整することで達
成でき、また、一旦中性塩で十分に処理した後、水また
はアルコール濃度の異なる水/アルコールの系に入れて
凝固させることによっても可能である。ほとんどの場
合、アルコールを含まない水だけの凝固浴を用いると高
い塩縮率が得られ、アルコール100%を凝固浴としたとき
は、塩縮率が減少する。アルコール濃度をかえた凝固浴
を用いると任意の塩縮率を有する野蚕絹糸や羊毛を製造
できる。柞蚕絹糸等の野蚕絹糸が膨潤する度合は中性塩
の種類によって異なる。臭化リチウムや硝酸リチウム等
のように、野蚕絹糸を溶解する作用の高い中性塩程膨潤
が進むので、その分高い塩縮率が得られる。本発明によ
れば、セリシンを除去する前の野蚕生糸であっても、セ
リシンを除去したあとの野蚕絹フィブロイン繊維であっ
ても同様に塩縮させることができる。
【0034】本発明においては、被染物の形態として
は、動物性蛋白質繊維、その繊維製品、その繊維集合体
を挙げることができる。すなわち、野蚕由来の絹蛋白質
繊維、その繊維製品、その繊維集合体(例えば、不織
布)の他、羊毛ケラチン繊維、その繊維製品、その繊維
集合体等を挙げることができる。本発明で製造される塩
縮野蚕絹糸や羊毛に対する染色方法は従来公知の染色技
術でよく、通常の酸性染料で染色することができる。
【0035】さらに、本発明によれば、塩縮した野蚕絹
糸や羊毛を抗菌性金属イオンを含む水溶液中または廃水
中に浸漬すると、塩縮前の野蚕絹糸や羊毛よりも多くの
抗菌性金属イオンまたは廃水中の金属イオンを吸着する
ことができる。抗菌性金属イオンを吸着したものは抗菌
性繊維素材として活用できる。また、廃水中の金属を吸
着するための繊維素材としても活用できる。前記したよ
うにして得られた塩縮した野蚕絹糸や羊毛である天然繊
維を、例えば、硝酸カリウムを含む0.5mMの硝酸銀(AgNO
3)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、または抗菌性を有するその他の
硝酸化した金属イオンの水溶液中に25℃で30時間浸漬す
ることで、銀イオン、銅イオンあるいはその他の抗菌性
金属イオンをこの天然繊維に吸着せしめることができ
る。金属イオンの吸着量を増加させるため、金属含有水
溶液にアンモニア水溶液を加えてpHをアルカリ側の8.5
に調整することが望ましい。
【0036】さらにまた、本発明によれば、絹フィブロ
イン水溶液に水溶性の酵素、ホルモン、医薬品、生理活
性物質、生体触媒等の活性物質を溶解させ、この溶液中
に塩縮した野蚕絹糸や羊毛を浸漬し、これらの繊維表面
を超薄の皮膜状の絹フィブロインで被覆させ、あるいは
繊維内に絹フィブロインを浸透させることで、この絹フ
ィブロイン基質中に含有された活性物質を繊維に担持さ
せた活性物質担持繊維素材として利用でき、この活性物
質を徐放させるようにすることができる。活性物質を担
持させるための塩縮率は、野蚕絹糸の場合には0〜40%で
あることが好ましく、また、羊毛の場合には0〜30%であ
ることが好ましい。それぞれの繊維の塩縮率が、上限を
超えると繊維製品等の全体が硬くなってしまう。かくし
て、堅くて粗悪な風合感の素材となるため、絹フィブロ
インを付着させる効果を発現させる上での塩縮効果は減
少する。
【0037】
【実施例】次に、本発明を実施例および比較例により更
に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例および比較
例によって限定されるものではない。なお、すべての中
性塩は、和光純薬工業製のものを使用した。用いた中性
塩の中には水和物となっているものもあるため、以下の
例を含めて本明細書中では、中性塩の濃度(g/mL)を、中
性塩に含まれる水の分子量を除いて無水物に換算して表
示する。用いた中性塩の名称と分子量とを表1に示す。
【0038】(表1) (注)MW:分子量を意味する。 換算係数:水和物となっている中性塩の重量から無水物
重量を求めるには、 中性塩重量に換算係数を掛け
ることで換算できる。チオシアン酸リチウム水和物は、
結合水の水和数が不定であり、分子量、換算計数を表示
できないため、上記表中では便宜的に「?」を付し、無
水物に換算しないで水和物重量で濃度表示することし
た。
【0039】まず、以下の実施例および比較例記載の塩
縮率、機械的特性、繊維への金属イオンの吸着方法、金
属吸着量の定量、染色方法、染着率について説明する。 (1)塩縮率 野蚕絹糸や羊毛を加熱した濃厚な中性塩水溶液中に浸漬
し、次いで、凝固浴に入れると、野蚕絹糸や羊毛試料は
繊維長方向に任意に収縮する。次式を用いて塩縮率(%)
を求めた。 塩縮率(%) = [(Li−Lf)/Li]×100 上式において、Liは収縮前の試料長を、また、Lfは収縮
後の素試料を示す。
【0040】(2)機械的特性 機械的特性として、試料の降伏点の伸度(%)、切断時の
試料の強度と伸度(%)を測定した。測定条件は、試料長5
0mm、引張り速度10mm/min、チャートスケール250gであ
り、島津製インストロン(オートグラフAGS-5D)を使用
して測定した。なお、測定値は測定25回の平均値で表示
した。 (3)繊維への金属イオンの吸着方法 羊毛を、硝酸カリウムを含む0.5mMの金属塩水溶液(ア
ンモニア水を加えてpHを11.4に調整)に室温で30時間浸
漬することで金属を吸着させた。また、柞蚕絹糸を金属
塩水溶液(pH8.5に調整)に浸漬することで柞蚕絹糸に
金属イオンを吸着させた。
【0041】(4)金属吸着量の定量 羊毛に吸着した金属イオンを、パーキンエルマー社製の
プラズマ原子吸光スペクトロメーター (Inductive Coup
led Plasma-Atomic Emission Spectrometer (ICP-AES)
を用いて分析した。5〜10mgの試料をミクロウエーブ加
水分解炉(MDS-81DCCEM)を用いて2mLの65%硝酸で完全に
加水分解し、実験時にさらに10mLの水を加え、ICP-AES
分析を行った。金属イオンの吸着量は、試料重量(g)あ
たりの金属イオン量をmmolで表示した。
【0042】(5)染色方法 染料として、羊毛等を染色する際に一般的に使用される
酸性染料を用いた。染色方法は、酸性染料Acid Orange
10(日本化薬株式会社製)を0.5%、酢酸を4%、無水硫酸
ナトリウム(無水芒硝)を15%含み、浴比を1:100とした
酸性浴に塩縮羊毛試料を投入した。染色は、40℃からは
じめ、徐々に温度を上げて85℃まで30〜45分間で昇温さ
せ、85℃で1時間処理することにより行った。塩縮柞蚕
絹糸の場合は、染料として酸性染料Acid Red 18(Scarle
t 3R)(日本化成工業株式会社製)を用いて染色した。
【0043】(6)染着率 染着率(%)は、羊毛等の試料の染着前および染着後にお
ける染色浴中の染料濃度変化から求めた。染着前、染着
後における染色浴に対して、最大吸収波長505nmにおけ
る吸光度を島津自記分光光度計(MPC-3100/UV-3100S)を
用いて求め、予め作成した既知濃度−吸光度関係の検量
線にあてはめて染色浴濃度を求めた。染着率は下記の式
から計算した。 染着率(%)=[(染着前の染色浴濃度−染着後の染色浴濃
度)/(染色前の染色浴濃度)]×100
【0044】(7)色差測定(L.a.b系) L.a.b系は、Richard S. Hunterにより提唱されたもので
あり、色差計で用いられる尺度である。L.a.bの各値を
指定すると「色」が表現できる。Lは明度に対応し、+a
は赤み、+bは黄味を表す尺度指標である。+aは、a値が0
から+方向に隔たることを意味する。本発明では、柞蚕
絹糸、羊毛ともに赤系の染料による染色実験を行ったの
で、+a値を色差計で測定することにより、染料吸着度を
便宜的に評価できる。
【0045】実施例1:各種野蚕絹糸の塩縮 ムガ蚕、クリキュラ、エリ蚕、天蚕、柞蚕由来の絹糸
を、濃度2.0g/mLの臭化リチウム(LiBr)水溶液中で、83
℃で、20分間処理することで膨潤させた。その後、直ち
に、膨潤試料を取り出し、水を用いた凝固浴中に浸漬し
て塩縮した。塩縮処理前後の繊維長変化から収縮率を求
めた。得られた結果を表2に示す。
【0046】(表2) (注)中性塩の種類の欄で中性塩の後の( )内の数値は
水1mL当たりに添加した中性塩をg単位で表示したもので
あり、中性塩濃度に符合する。
【0047】ムガ蚕、エリ蚕、天蚕、柞蚕幼虫由来の野
蚕絹糸あるいはクリキュラ絹糸はいずれも加熱した臭化
リチウム水溶液中に浸漬することにより大幅に収縮し
た。これら試料の中でもムガ蚕絹糸は最大70%以上も収
縮することが確認された。臭化リチウム以外の中性塩で
も塩縮させたところ、いずれも塩縮効果は充分に得られ
た。一番安定した塩縮効果が得られたのは臭化リチウム
であったため、以下の実施例および比較例では臭化リチ
ウムを主として用いて実験を行うことにした。
【0048】実施例2:柞蚕絹糸の塩縮 濃度が異なる中性塩水溶液をバイアル瓶に入れ、温度を
一定に調整できる振とう装置にこれを取り付け、バイア
ル瓶中の中性塩水溶液の温度を80℃に調整した。約200m
gの柞蚕絹糸を80℃の中性塩水溶液中に20分間浸漬し、
膨潤させた。20分の浸漬処理の後、中性塩水溶液中で膨
潤した柞蚕絹糸を取り出し、直ちに水もしくは水/メタ
ノールの混合水溶液に入れ、塩縮・凝固せしめた。得ら
れた塩縮柞蚕絹糸を流水で十分に洗浄し、次いで室温で
乾燥させ、試料長を測定した。中性塩の種類および濃度
と、凝固浴の種類(水または水/メタノール混合水溶
液)および濃度と、塩縮率との関係を調べた。得られた
結果を表3に示す。
【0049】(表3) (注)1)( )内は中性塩濃度(g/mL)を意味する。 2)W/M:水/メタノールからなる凝固浴を意味し、凝固浴W
/M 80/20とは、水80% v/v、メタノール20% v/vからなる
混合水溶液を意味する。
【0050】表3から明らかなように、一定組成の中性
塩水溶液で塩縮処理したのち、凝固浴濃度、組成の違い
で塩縮率を制御することが可能であることがわかる。お
おむね、メタノール濃度が高い程塩縮率は小さな値とな
り、凝固浴中における水の含量が多い程塩縮率は大きな
値となる傾向がある。
【0051】実施例3:羊毛の塩縮 実施例2で用いた柞蚕絹糸の代わりに羊毛を用いて同様
の処理を行った。得られた結果を表4に示す。(表4) 表4から明らかなように、羊毛の場合は、実施例2に示し
た柞蚕絹糸とは違って、臭化リチウム水溶液、および凝
固浴による処理だけでは塩縮の程度がやや低い。
【0052】比較例1:家蚕絹糸の塩縮 実施例2で用いた柞蚕絹糸の代わりに家蚕絹糸を用いて
塩縮処理を行った。得られた結果を表5に示す。ただ
し、表5で溶解有無の欄に示す記号○および×は、それ
ぞれ、所定の中性塩で所定時間処理後に家蚕絹糸が溶解
してしまい塩縮率が求められなかったものおよび何とか
求められたものを意味する。
【0053】(表5) 表中、測定不能とは、家蚕絹糸が過度に膨潤し、溶解状
態に達し、繊維方向の収縮状態が評価できないことを意
味する。表5から明らかなように、家蚕絹糸は中性塩濃
度が高いと溶解してしまうか、または溶解しないにして
も塩縮率を制御できないという問題がある。これに対し
て、実施例2に示す通り、柞蚕絹糸では塩縮をうまくコ
ントロールできる。
【0054】比較例2:家蚕絹糸および柞蚕絹糸の塩縮 各種の浸漬温度において、濃度が1.0g/mLの硝酸カルシ
ウム水溶液中に5分間家蚕絹糸および柞蚕絹糸を浸漬し
たときの塩縮率を比較した。なお、中性塩として硝酸カ
ルシウムの4水和物を用いたときには、硝酸カルシウム
無水物の使用量に換算して濃度(g/mL)を求めた。得られ
た結果を表6に示す。 (表6)
【0055】次に、浸漬温度を60℃に設定し、各種濃度
の硝酸カルシウム水溶液中に5分間家蚕絹糸および柞蚕
絹糸を浸漬したときの塩縮率を比較した。なお、塩縮処
理薬剤として硝酸カルシウムの4水和物を用いたときに
は、硝酸カルシウム無水物の使用量に換算して濃度(g/m
L)を求めた。得られた結果を表7に示す。 (表7)
【0056】表6および7の結果から明らかなように、家
蚕絹糸を硝酸カルシウム水溶液中で浸漬処理すると、浸
漬温度が高い程、また、硝酸カルシウム水溶液濃度が高
い程、塩縮率が増加することが確かめられた。しかし、
柞蚕絹糸は、従来の方法である中性塩水溶液処理だけで
はほとんど塩縮しないことが分かる。柞蚕絹糸は塩縮し
てもたかだか2%程度であった。この違いは、家蚕絹糸と
柞蚕絹糸との化学構造ならびに微細構造の違いに基づく
中性塩の浸透量の違いによるものである。所定の温度お
よび濃度の中性塩水溶液中に家蚕絹糸を所定時間浸漬す
ると、中性塩水溶液浸漬中、家蚕絹糸は浸漬時間数10
秒で塩縮してしまう。この過程で家蚕絹糸の塩縮反応は
既に終了してしまう。塩縮家蚕絹糸をその後、絹糸中に
含まれる中性塩を除くために水洗いしても、塩縮率、塩
縮状態に変化は見られなかった。本発明で柞蚕絹糸等の
野蚕絹糸や羊毛を塩縮するには、中性塩水溶液で膨潤さ
せ(この段階では家蚕絹糸と違って塩縮反応は全く観察
されない)、しかる後、凝固浴に入れると短時間に急激
に塩縮反応が起こる。したがって、塩縮した家蚕絹糸を
水と接触しても塩縮反応が更に進展しないのが、家蚕絹
糸の最大の特徴である。これに対して、中性塩処理中、
直後の膨潤した柞蚕絹糸には塩縮は起こらないが、これ
を凝固浴(この中には、水洗いプロセスも含まれる)に入
れて初めて塩縮が起こる。
【0057】実施例4 柞蚕絹糸を実施例1と同様に臭化リチウム水溶液で膨潤
処理した後、これを取り出して水に入れ凝固させた。水
を含んだ状態では柞蚕絹糸はゴム状挙動を示す。そこで
適当な力を加えて柞蚕絹糸を引きのばしたまま、長さを
固定し標準状態で風乾させた。風乾時に固定する試料長
を適当に設定することで、塩縮率を適宜制御することが
できた。
【0058】実施例5:化学修飾加工した柞蚕絹糸の塩
縮 エポキシ化合物(上記デナコールEX-810、EX-313)および
酸無水物(無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコ
ン酸、無水フタル酸)を用いた柞蚕絹糸への化学修飾加
工を次のようにして行った。デナコールEX-810あるいは
EX-313をそれぞれ溶解したDMF中で柞蚕絹糸の化学修飾
加工を行った。この際、20gのエポキシ化合物を100mLの
DMFに溶解させた。使用したDMF量は、絹糸重量の20倍に
設定した(浴比1:20と略記することもある)。この絹糸を
入れたDMF溶液を逆流冷却器を付けた100mLのナス型フラ
スコに入れ、絹糸がDMF中に完全に浸漬するように留意
しながら、ウォーターバスを用いて75〜80℃で時間を変
えて反応させ、化学修飾加工を行った。反応終了後、絹
糸試料を取り出してDMFで洗浄し、続いて55℃のアセト
ンで洗浄して未反応試薬を除去した。最終的に水で洗浄
し、乾燥後絹糸重量を測定した。
【0059】75〜80℃のウォーターバスで1時間および3
時間反応することで、それぞれ、加工率が8.1%および1
0.1%(EX-810)、ならびに8.2%および15%(EX-313)の化学
修飾加工試料を調製した。なお、エポキシ化合物の代わ
りに、酸無水物として無水コハク酸、無水グルタル酸、
無水イタコン酸、無水フタル酸を用いても、柞蚕絹糸へ
の化学修飾加工が実施できた。これらの化学修飾加工し
た柞蚕絹糸を実施例1に準じて塩縮・凝固処理した。す
なわち、2.0g/mLの臭化リチウム水溶液中で膨潤処理を8
3℃で20分間行った後、この水溶液中より絹糸試料を取
り出し、これを水中に入れて5分間処理した。次いで、
十分水洗いした後、ゴム状態の柞蚕絹糸を適当な力を加
えないで乾燥させた。得られた結果を表8に示す。
【0060】実施例6:グラフト加工した柞蚕絹糸の塩
縮 柞蚕絹糸へのグラフト加工は、試料重量に対して60重量
%のスチレン(St)あるいはメタクリル酸ブチル(n-BMA)
と、グラフト開始剤として過硫酸アンモニウム2.5重量%
(owf)とを含み、85%蟻酸でグラフト加工系のpHを3.0に
調整した混合溶液(浴比1:20)中で絹糸を処理すること
により行った。グラフト加工系の温度を室温から80℃ま
で20分間で昇温した後、40分間、同温度を保持して反応
を進めた。反応終了後、水洗し、次いでノイゲンHC(1mL
/L)を添加した混合溶液中で、70℃で、20分間洗浄し、
絹糸表面等に付いた試薬を除去した。水洗い後、105℃
で1時間乾燥させ、グラフト加工反応前後の重量変化か
らグラフト加工率を求めた。スチレンおよびメタクリル
酸ブチルによるグラフト加工ではグラフト加工率がそれ
ぞれ50%、10%のグラフト加工絹糸が得られた。
【0061】これらのグラフト加工した柞蚕絹糸を実施
例1に準じて塩縮・凝固処理した。すなわち、1.6g/mLの
臭化リチウム水溶液中で膨潤処理を83℃で20分間行った
後、この水溶液中より絹糸試料を取り出し、これを水中
に入れて5分間処理した。次いで、十分水洗いした後、
ゴム状態の柞蚕絹糸を適当な力を加えないで乾燥させ
た。得られた結果を表8に示す。
【0062】(表8) 表8から明らかなように、柞蚕絹糸をEX810あるいはEX31
3で化学修飾加工すると、化学修飾加工率が高い程塩縮
率は減少し、修飾加工により収縮し難くなることが分か
る。そのため、化学修飾加工により塩縮率を制御するこ
とが可能である。また、柞蚕絹糸をSt、n-BMAでグラフ
ト加工すると、塩縮程度は対照区と比べて軽減すること
が分かる。なお、化学修飾加工したまたはグラフト加工
した羊毛の場合も、柞蚕絹糸と同様な傾向が得られる。
【0063】実施例7:塩縮した柞蚕絹糸の機械的特性
前記実施例記載の方法に準じて得られた各種塩縮率の柞
蚕絹糸の機械的特性をテンシロン測定装置により分析し
た。また、各種塩縮率の羊毛についても機械的特性を調
べた。なお、塩縮した柞蚕絹糸については降伏点の伸度
も評価した。得られた結果を表9に示す。降伏点の伸度
は、物体に働く応力が弾性限度を越えてある値に達し、
応力の増加がほとんどないまま急激に永久歪が増加する
点の応力であり、引っ張り初期の荷重−伸長曲線には折
れ曲がり点として現れる。家蚕絹糸の降伏点は、荷重1.
5〜1.8g/d、伸度0.3%に現れる。したがって、降伏点に
対応する伸度が大きな値の素材である程、ゴム弾性的な
性質を示し、伸びやすく柔らかな素材であるといえる。
【0064】(表9) (注)NT:未測定を意味する。また、強度および伸度の
欄において、例えば、強度が222±9.7とあるのは、強度
が222gfであり、標準偏差が9.7であることを意味する。
【0065】表9から明らかなように、柞蚕絹糸に現れ
た降伏点伸度が、塩縮加工により2倍以上の値になっ
た。このことは、塩縮により柞蚕絹糸の弾性率が増加
し、柞蚕絹糸が柔らかく伸びやすくなったことを意味す
る。その結果、塩縮柞蚕絹糸を用いた織物は厚さが増し
て、空気含量が増加し、嵩高い風合感をもつ織物とな
る。また、塩縮羊毛の場合も、塩縮により伸度が増し
た。以上のように、柞蚕絹糸や羊毛が伸びやすい性質を
示したことは、塩縮絹糸や羊毛を用いて織物、編地、不
織布等の繊維集合体を製造すると、しなやかで嵩高性に
優れた風合感のよい特性を有するものが提供できるとい
うことを意味する。しかし、臭化リチウムによる塩縮率
が55.5%に達すると柞蚕絹糸は急激に脆弱化する。した
がって天然繊維の機械的機能を保持させたまま利用する
には、柞蚕絹糸、羊毛の塩縮率が過度に大きくならない
ように配慮するのが望ましい。
【0066】実施例8:羊毛の塩縮 メリノ種羊毛(64'S)を用いたが、使用に際してはベンゼ
ン−エタノールおよびエチルエーテルによりソックスレ
ー抽出し、精製した。この精製羊毛に対して、前処理と
して、各種濃度の尿素水溶液中で室温もしくは所定温度
で1時間処理した後、所定濃度の臭化リチウム水溶液中
で所定温度、所定時間浸漬処理し、処理後の羊毛を流水
で洗い、室温で自然乾燥させた。処理前後の繊維長さの
変化から塩縮率を求めた。得られた結果を表10に示し
た。表10中、例えば、前処理条件において、「8M尿素水
溶液、25℃、1hr」、中性塩浸漬条件において、「中性
塩濃度:LiBr(1.0)、温度(℃):80〜85、時間(分):30
分、塩縮率(%):43.6」とは、まず、25℃の8M尿素水溶
液中で1時間前処理し、これを取り出し、80〜85℃の1.0
g/mLのLiBr水溶液中に30分間浸漬処理することにより塩
縮率43.6%の羊毛が調製されるということを意味する。
【0067】(表10) 表10から、尿素水溶液中で羊毛を前処理することで、羊
毛ケラチン分子間の水素結合が切断され、その後、実施
例1と同様の方法でLiBr水溶液中に所定の温度および時
間浸漬することで満足に塩縮させることが可能であるこ
とが分かる。上記のようにして得られた塩縮羊毛をさら
に凝固液(水、水/メタノール)中で浸漬すると塩縮率は
向上した。
【0068】実施例9:塩縮試料への金属イオンの吸着 塩縮した柞蚕絹糸および羊毛への金属イオンの吸着量を
次のようにして求めた。2.4g/mLのLiBr水溶液中での処
理、およびその後の水からなる凝固浴による処理で一定
の塩縮率となるように塩縮させた試料を、硝酸カリウム
を含む0.5mMの硝酸銀(AgNO3)水溶液および硝酸銅(Cu(NO
3)2)水溶液のそれぞれに25℃で30時間浸漬することによ
り銀イオン、銅イオンを吸着させた。金属水溶液にアン
モニア水溶液を加えてpHを11.4に調整した。得られた結
果を表11に示す。
【0069】(表11) 表11から、塩縮した柞蚕絹糸や羊毛に抗菌性を有するこ
とが知られている銀イオンや銅イオンを吸着させると、
その吸着量は、塩縮率0%で表示される対照区試料(塩縮
処理せず)への金属イオンの吸着量に比べて増加するこ
とが分かる。かくして、銀イオンや、銅イオンを多量に
吸着させることで抗菌性繊維素材とすることができる。
【0070】実施例10:塩縮羊毛への絹フィブロインの
吸着 Pick up率を40%に設定した塩縮率の異なる羊毛を1%の絹
フィブロイン水溶液中に60分間浸漬した。この水溶液か
ら取り出した羊毛を室温で軽く乾燥した。絹フィブロイ
ン水溶液に浸漬する前後の羊毛を105℃で1時間30分乾燥
し、前後の重量変化から絹フィブロインの付着率を求め
た。得られた結果を表12に示す。(表12)
【0071】表12から、絹フィブロイン水溶液への浸漬
処理前後で試料重量が増加しており、塩縮試料に絹フィ
ブロインが付着していることが確かめられた。塩縮処理
した羊毛を絹フィブロイン水溶液中に浸漬すると、対照
区の羊毛(塩縮せず)に比べて絹フィブロインが多く付
着するようになった。また、塩縮処理することにより、
絹フィブロインが付着した羊毛の風合感や吸湿性が対照
区の羊毛に比べて改善された。羊毛への絹フィブロイン
の吸着率は、塩縮率が0〜30%程度で充分実用的な値とな
り、塩縮率が60%程度になると絹フィブロインの吸着率
は逆に減少した。また絹フィブロインが付着した羊毛の
吸湿率は、塩縮率16%で増大し、塩縮率59%で逆に減少し
た。
【0072】また、塩縮した柞蚕絹糸等の野蚕絹糸の場
合も、羊毛の場合と同様な傾向が得られた。以上のこと
から、羊毛や野蚕絹糸表面を絹フィブロインの超薄膜で
被覆するには、羊毛や野蚕絹糸を中性塩で前処理して塩
縮させることが効果的であり、その際の塩縮率は0〜30%
の範囲にあることが望ましい。塩縮率が更に高い値とな
ると羊毛や野蚕絹糸はかえって硬くなり、微細構造的に
地詰まりした構造となり、その結果、絹フィブロインの
拡散、付着が困難となって、絹フィブロインの超薄膜が
試料表面を被覆し難くなる。また、水溶性の酵素、医薬
品、生理活性物質、生体触媒等からなる活性物質を絹フ
ィブロイン水溶液に溶解させた混合水溶液中に塩縮した
羊毛や野蚕絹糸等の塩縮試料を浸漬すれば、絹フィブロ
インを基質としてこれらの活性物質が担持された羊毛や
野蚕絹糸を調製することができる。 実施例11:塩縮羊毛の染色性
【0073】前記実施例に準じて中性塩で収縮処理した
各種塩縮率を有する羊毛の染色挙動を調べた。染料とし
ては、羊毛を染色する際に一般的に用いる酸性染料を使
用した。染色は、酸性染料Acid Orange 10を0.5重量%(o
wf)、酢酸を4重量%、無水硫酸ナトリウム(無水芒硝)
を15重量%含み、浴比を1:100とした酸性浴に塩縮羊毛を
投入して行った。染色は、40℃からはじめ、徐々に温度
を上げて85℃まで30〜45分間で昇温させ、85℃で1時間
実施した。なお、染着率は前記のようにして求め、得ら
れた結果を表13に示す。 (表13) 表13から、塩縮羊毛への染着率が向上したことが明らか
となった。58%程度まで塩縮した羊毛の場合の染着率
は、未塩縮羊毛に比べて33%も増加した。
【0074】実施例11:塩縮柞蚕絹糸の染色性 前記実施例に準じて中性塩で収縮処理した各種塩縮率を
有する柞蚕絹糸の染着挙動を調べた。すなわち、酸性染
料Acid Red 18(Scarlet 3R)を0.5重量%(owf)、酢酸を5
重量%、無水硫酸ナトリウム(無水芒硝)を15重量%含
み、浴比を1:100とした酸性浴に柞蚕絹糸を投入して行
った。染色は、40℃からはじめ、徐々に温度を上げて85
℃まで30〜45分間で昇温させ、85℃で1時間実施した。
染着率は実施例10で述べた方法により求めた。また、L.
a.b系で求まるa値をShimadzu UV-3100S紫外分光分析装
置を用いて求めた。このa値は赤色の指数となり、大き
なa値ほど赤みが増すことを意味する。得られた染着率
およびa値を表14に示す。
【0075】(表14) (注)a値は、L.a.b表示のa値を意味する。表14から、
柞蚕絹糸が塩縮されると、塩縮柞蚕絹糸への染料の染着
率が向上することが明らかであり、また、染色実験の結
果、塩縮した柞蚕絹糸には多量の染料が吸着することが
明らかになった。
【0076】
【発明の効果】本発明によれば、野蚕絹糸または羊毛を
濃厚な中性塩水溶液中に浸漬した後、水単独または水/
アルコール混合水溶液からなる凝固浴中に浸漬処理する
ことにより、繊維に捲縮が起こり、塩縮した野蚕絹糸や
羊毛が得られる。得られた塩縮野蚕絹糸や羊毛は、塩縮
前の野蚕絹糸や羊毛と比べて、染色性は向上する。塩縮
した野蚕絹糸や羊毛は、未塩縮時のかたさが軽減され、
柔らかく、肌触りが良好となり、風合感が改善され、糸
嵩が増してソフトタッチの風合い感となる。このため、
塩縮した柞蚕絹糸や羊毛を用いて、糸、布(織物、編物
等)の繊維製品や不織布等の繊維集合体等を作製すれ
ば、得られた繊維製品等は、風合感が改善され、糸嵩が
増してソフトタッチの感触となる。
【0077】また、本発明によれば、羊毛として、予め
尿素水溶液により分子間の水素結合を切断したものを用
い、これを中性塩水溶液で処理処理することにより塩縮
が起こるが、引き続いて上記のように凝固浴で処理すれ
ば、塩縮はさらに完全になる。さらに、本発明によれ
ば、処理対象野蚕絹糸や羊毛として、グラフト加工した
または化学修飾加工したものを用いれば、加工用化合物
の種類や加工率により、塩縮率を制御することができ
る。さらにまた、本発明により得られた塩縮した野蚕絹
糸や羊毛である天然繊維は、金属イオンを多く結合する
ので、抗菌性金属水溶液や廃液中の金属を吸着させるた
めの繊維素材として有用である。さらにまた、塩縮した
野蚕絹糸や羊毛である天然繊維は絹フィブロインを付着
するので、酵素、医薬品、生理活性物質、生体触媒等か
らなる活性物質を添加した絹フィブロイン水溶液で処理
すれば、塩縮した野蚕絹糸や羊毛にこれらの活性物質を
担持させることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 14/06 D06P 3/04 Z 15/263 3/14 Z // D06M 13/432 5/00 103 D06P 3/04 106 3/14 DBF 5/00 103 D06M 3/10 A 106 DBF (72)発明者 新居 孝之 茨城県つくば市春日3丁目11番地4 ツク バセントラルハイツ205 Fターム(参考) 4H011 AA02 BA01 BB18 BC19 DA07 DH06 4H057 CA37 CB22 CB34 CB36 CB56 CB61 CC01 DA01 DA21 4L031 AA03 AB01 BA05 BA07 BA13 BA34 DA04 DA05 4L033 AA03 AB01 AC02 AC15 BA01 BA08 BA16 BA19 BA76

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然繊維として野蚕絹糸または羊毛を中
    性塩水溶液中に浸漬し、引き続いて、取り出した天然繊
    維を凝固浴中に浸漬して塩縮・凝固した天然繊維を製造
    することを特徴とする塩縮した天然繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記羊毛として、中性塩水溶液中に浸漬
    する前に尿素水溶液中に浸漬して分子間・分子内の水素
    結合を切断した羊毛を用いることを特徴とする請求項1
    記載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記中性塩が、臭化リチウム、硝酸リチ
    ウム、塩化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カル
    シウム、または塩化カルシウムであることを特徴とする
    請求項1または2に記載の塩縮した天然繊維の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記中性塩の濃度が0.8g/mLより高く6.0
    g/mL以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
    かに記載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記凝固浴が、水単独または水/アルコ
    ールの混合水溶液であることを特徴とする請求項1〜4
    のいずれかに記載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記野蚕絹糸または羊毛が、グラフト重
    合用モノマーを用いて加工したグラフト加工野蚕絹糸も
    しくは羊毛、または反応性モノマーを用いて化学修飾加
    工した化学修飾加工野蚕絹糸もしくは羊毛であることを
    特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塩縮した天
    然繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記グラフト重合用モノマーが疎水性ま
    たは親水性ビニル化合物であり、また、前記反応性モノ
    マーがエポキシ化合物または酸無水物であることを特徴
    とする請求項6記載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記疎水性ビニル化合物がメタクリル酸
    メチル、メタクリル酸ブチルまたはスチレンであり、前
    記親水性ビニル化合物がメタクリルアミドまたはメタク
    リル酸2-ヒドロキシエチルであり、前記エポキシ化合物
    がエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはグ
    リセロールポリグリシジルエーテルであり、前記酸無水
    物が無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、
    または無水フタル酸であることを特徴とする請求項7記
    載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】 天然繊維として羊毛を尿素水溶液中に浸
    漬して分子間・分子内の水素結合を切断し、引き続い
    て、得られた羊毛を中性塩水溶液中に浸漬して塩縮・凝
    固した羊毛を製造することを特徴とする塩縮した天然繊
    維の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記中性塩が、臭化リチウム、硝酸リチ
    ウム、塩化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カル
    シウム、または塩化カルシウムであり、前記羊毛が、メ
    タクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルスチレンル酸ブ
    チルおよびスチレンから選ばれた疎水性ビニル化合物、
    もしくはメタクリルアミドおよびメタクリル酸2-ヒドロ
    キシエチルから選ばれた親水性ビニル化合物を用いてグ
    ラフト加工したグラフト加工羊毛であるか、またはエチ
    レングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセロー
    ルポリグリシジルエーテルから選ばれたエポキシ化合
    物、もしくは無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタ
    コン酸および無水フタル酸から選ばれた酸無水物を用い
    て化学修飾加工された羊毛であることを特徴とする請求
    項9記載の塩縮した天然繊維の製造方法。
  11. 【請求項11】 中性塩水溶液中に浸漬した後、引き続い
    て凝固浴中に浸漬することにより塩縮・凝固せしめた野
    蚕絹糸または羊毛であることを特徴とする塩縮した天然
    繊維。
  12. 【請求項12】 尿素水溶液中に浸漬して分子間・分子内
    の水素結合を切断した羊毛を中性塩水溶液中に浸漬する
    ことにより塩縮・凝固せしめた羊毛であることを特徴と
    する塩縮した天然繊維。
  13. 【請求項13】 請求項1〜10のいずれかに記載の製造
    方法に従って得られた塩縮した天然繊維に抗菌性金属が
    吸着されていることを特徴とする抗菌性繊維素材。
  14. 【請求項14】 請求項1〜10のいずれかに記載の製造
    方法に従って得られた塩縮した天然繊維に、絹フィブロ
    インが付着し、この絹フィブロインを基質として、該基
    質中に酵素、医薬品、生理活性物質、生体触媒から選ば
    れた活性物質が含有されていることを特徴とする活性物
    質担持繊維素材。
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