JP2003226581A - 耐食性セラミックス及びその製造方法並びにガスタービン用部品 - Google Patents

耐食性セラミックス及びその製造方法並びにガスタービン用部品

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JP2003226581A
JP2003226581A JP2002029736A JP2002029736A JP2003226581A JP 2003226581 A JP2003226581 A JP 2003226581A JP 2002029736 A JP2002029736 A JP 2002029736A JP 2002029736 A JP2002029736 A JP 2002029736A JP 2003226581 A JP2003226581 A JP 2003226581A
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corrosion
sintered body
silicon nitride
powder
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JP2002029736A
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Kazuhiro Okamoto
和弘 岡本
Yutaka Kubo
豊 久保
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Kyocera Corp
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Kyocera Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】表面層を形成しても強度劣化を起こさず、飛来
物に対しても十分な剥離強度を有する耐食性セラミック
ス及びその製造方法並びにガスタービン用部品を提供す
る。 【解決手段】窒化珪素及び/又はサイアロンからなる焼
結体と、該焼結体の表面に形成された周期律表第3a族
元素の珪酸化合物からなる表面層と、前記表面層と前記
焼結体との間に設けられ、前記焼結体を構成する主結晶
と前記表面層を構成する珪酸化合物とからなる厚さ3〜
60μmの混合層とを具備し、該混合層における窒化珪
素及び/又はサイアロン主結晶の粒子の平均長径が40
μm以上であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高温燃焼ガス又は水
蒸気を含む燃焼ガスに対して高耐食性を有する耐食性セ
ラミックス及びその製造方法並びにガスタービン用部品
に関する。
【0002】
【従来技術】近年、エネルギー問題や地球環境問題等の
観点から、発電と発熱とを組合せたコ・ジェネレーショ
ンシステムが注目されている。このコ・ジェネレーショ
ンシステムは、最大で85%もの総合熱効率を得ること
ができ、化石燃料の削減、およびCO2排出量の削減に
極めて大きな効果がある。
【0003】しかし、オフィスビルや集合住宅等におい
てコ・ジェネレーションシステムを使用する場合、マイ
クロガスタービンが使用されるが、マイクロガスタービ
ンは大型ガスタービンに比べて熱効率が低いため、ター
ビン入口温度を高温化することで、熱効率を向上させる
ことが必要であった。
【0004】しかし、従来の金属製ガスタービンでは、
金属の使用温度が低いため、高温化することが困難であ
ったため、より耐熱性に優れたセラミックスを使用する
ことが求められた。
【0005】セラミックガスタービンは高効率、低公
害、小型軽量という特徴を有し、省エネルギー、CO2
削減、省資源など点で、早期実用化が進められている。
このようなセラミックスとしては、耐熱性、耐熱衝撃
性、耐摩耗性及び耐酸化性に優れることから、エンジニ
アリングセラミックスとして知られている窒化珪素質焼
結体やサイアロン質焼結体が有望であり、マイクロガス
タービンやターボロータ等の熱機関用部品として開発が
進められている。
【0006】ところが、窒化珪素質焼結体やサイアロン
質焼結体は、室温における機械的特性に優れるものの、
高温強度、耐酸化特性及び耐腐食性の改善が求めらてい
た。そこで、窒化珪素質焼結体やサイアロン質焼結体を
基体とし、基体表面に保護膜を形成することによりこれ
らの改善が図られた。
【0007】例えば、窒化珪素質焼結体上に耐腐食性の
良好なRE2SiO5又はRE2Si27を溶射やスラリ
ー塗布の手法で保護膜をコーティングし、耐酸化性、耐
コロージョン性を向上する試みが特開平7−17295
8号公報に記載されている。
【0008】また、溶射法によってRE2SiO5又はR
2Si27を珪化物セラミックス焼結体上に積層コー
ティングし、保護膜を形成して剥離強度及び耐熱性を改
善する試みが特開2000−007472号公報に記載
されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
7−172958号では、前処理なしに直接基体表面に
表面層を形成するため、表面層と基体との密着力が小さ
く、コーティングした際に強度劣化が生じてしまうとい
う問題が発生し、例えばマイクロガスタービンに使用し
た場合、強度が低下し、使用中の応力集中でタービンブ
レードが破損するという問題があった。
【0010】また、特開2000−007472号で
は、多層積層コーティングによって表面層を容易に厚く
できるものの、各コーティング層は薄く、剥離強度が低
いため、ために燃焼ガス流中に含まれる飛来物によって
次々とコーティング層が剥がれやすいという問題があっ
た。
【0011】従って、本発明は、表面層を形成しても強
度劣化を起こさず、付着力の高い耐食性セラミックス及
びその製造方法並びにガスタービン用部品を提供するこ
とを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、窒化珪素及び
/又はサイアロンからなる焼結体表面に、焼結体の主結
晶の粒成長を助長するスラリーを塗布し、焼成すること
によって焼結体の主結晶相が一方向に伸張した結晶を含
む混合層を形成して、珪酸化合物からなる表面層と焼結
体との密着性を向上することができるとの知見に基づく
ものであり、その結果、膜剥離、強度劣化を著しく改善
した耐食性セラミックスが実現でき、特に、ガスタービ
ン用部品に応用した場合、高温、高圧及び高速のガスに
曝されても部品の表面層の剥離を抑制し、高強度で信頼
性の高い部品を実現できる。
【0013】即ち、本発明の耐食性セラミックスは、窒
化珪素及び/又はサイアロンからなる焼結体と、該焼結
体の表面に形成された周期律表第3a族元素の珪酸化合
物からなる表面層と、前記表面層と前記焼結体との間に
設けられ、前記焼結体を構成する主結晶と前記表面層を
構成する珪酸化合物とからなる厚さ3〜60μmの混合
層とを具備し、該混合層における窒化珪素及び/又はサ
イアロン主結晶の粒子の平均長径が40μm以上である
ことを特徴とするものである。これにより、窒化珪素及
び/又はサイアロン質焼結体と表面層との結合力を持た
せ、高温高圧高速ガスに曝されても剥離を抑制するがで
きる。
【0014】特に、前記周期律表第3a族元素の珪酸化
合物が85体積%以上のRE2Si27と、15体積%
以下のRE2SiO5からなることにより、表面層の酸化
による重量増加を防ぐことができ、表面層の耐酸化性が
向上する。
【0015】また、前記表面層に含まれるSi及び周期
律表第3a族元素以外の不純物元素量が0.08質量%
以下であることが望ましい。これにより、表面層の酸化
重量増加又は腐食反応によって生じるクラックを防ぐこ
とができ、酸化、腐食による表面層の劣化を低減させる
ことができる。
【0016】さらに、前記表面層の珪酸化合物の平均粒
径が10〜50μmであることが好ましい。これによ
り、強度劣化を低減することができる。
【0017】また、200℃、飽和水蒸気圧1.6MP
aの密閉環境に100時間放置して、重量減少が0.5
mg/cm2以下であることが好ましい。これにより、
燃焼ガス流に含まれる高温・高圧水蒸気と反応を抑える
ことができ、寿命の長い表面層を有する窒化珪素及び/
又はサイアロン質焼結体を提供することができる。
【0018】さらに、前記表面層の厚さが5〜100μ
mであることが好ましい。これにより、熱膨張差による
残留応力を低減するため、窒化珪素及び/又はサイアロ
ン質焼結体と表面層との密着性が向上し、強度劣化を大
幅に低減できる。また、消耗による寿命低下と表面層の
剥がれを防ぐことができる。
【0019】本発明の耐食性セラミックスの製造方法
は、窒化珪素及び/又はサイアロンからなる焼結体の表
面に、窒化珪素粉末と周期律表第3a族元素の珪酸化合
物粉末とからなる混合層用スラリーを塗布し、800〜
1500℃で熱処理をして混合層を作製した後、周期律
表第3a族元素の珪酸化合物からなる表面層を形成する
ことを特徴とするものであり、また、窒化珪素及び/又
はサイアロンからなる焼結体の表面に、窒化珪素粉末と
周期律表第3a族元素の珪酸化合物粉末とからなる混合
層用スラリーを塗布し、しかる後にRE2Si27形成
用粉末からなる表面層用スラリーを塗布し、1400〜
1700℃で熱処理することを特徴とするものである。
【0020】この製造方法を用いることにより、焼結体
表面の主結晶を40μm以上に粒成長させ、厚さ3〜6
0μmの混合層を有する耐食性セラミックスを作製する
ことができる。
【0021】本発明のガスタービン用部品は、ガスター
ビンエンジンの燃焼ガスと直接接触する部位に用いられ
るガスタービン用部品であって、上記のいずれかに記載
の耐食性セラミックスからなることを特徴とするもので
あり、高温高圧高速の燃焼ガスに曝されても長時間の使
用が可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の耐食性セラミックスは、
窒化珪素及び/又はサイアロンを主結晶とする焼結体の
表面に周期律表第3a族元素の珪酸化合物からなる表面
層が、混合層を介して設けられ、混合層中には、表面層
を構成する珪酸化合物と焼結体を構成する主結晶相及び
/又は粒界相とが混在している。
【0023】そして、混合層の厚さを3〜60μmとす
ることが重要である。これは、厚さが3μmに満たない
場合、表面層の剥離強度が低下することとなり、また、
60μmを越えると、混合層中における長尺状粒子が破
壊源になるためである。焼結体と表面層との熱膨張差を
低減できるとともに、化学的結合力を強固にし、高温高
圧高速ガスに曝されても剥離や強度劣化をさらに防止す
るため、特に、10〜55μm、さらには、30〜50
μmが好ましい。
【0024】また、本発明の耐食性セラミックスは、混
合層における主結晶相の結晶粒子の平均長径が40μm
以上であることも重要である。このように、一方向に長
い長尺状の結晶を混合層に存在させることにより、クラ
ックの進展を防止し、強度劣化を大幅に低減でき、且つ
表面層の剥離を防ぐため、高温での寿命を改善すること
ができる。混合層の密着力をより高めるため、特に45
μm以上、更には50μm以上であることが好ましい。
また、平均長径の上限は、特に制限するものではない
が、長尺状粒子が破壊源となることがあるため、60μ
m以下、特に55μm以下であることが好ましい。
【0025】なお、混合層には、高強度及び耐剥離性を
維持することができれば、他の化合物を含有していても
差し支えない。例えば、AlN、TiN、MgO又はA
23のうち少なくとも1種を含有させることができ
る。
【0026】表面層は、周期律表第3a族元素の珪酸化
合物からなる。具体的には、RE2Si27(ダイシリ
ケート)、RE2SiO5(モノシリケート)のうち少な
くとも1種を用いることができる。珪酸化合物を用いた
理由は、基体である窒化珪素及び/又はサイアロンとの
熱膨脹率差が小さいからである。これらの珪酸化合物の
中で、耐食性に優れている点で、特にRE2Si27
85体積%以上、更には95体積%以上含有させ、残部
をRE2SiO5とすることが表面層の酸化による重量増
加を防ぎ、表面層の耐酸化性を向上する点で好ましい。
【0027】この珪酸化合物を構成する周期律表第3a
族元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、P
m、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、M、
Yb及びLuであり、これらの中でも、特に、Yb、E
r、Luが結晶間の結合強度が強く、また熱的に安定で
高融点化合物であるという観点で、又Yが安価で入手し
やすいという観点で好適である。
【0028】また、表面層に含まれる不純物量を0.0
8質量%以下、特に0.05質量%以下とすることが好
ましい。不純物が表面層の結晶粒界に存在すると、不純
物が酸化されることによって体積が膨張するため、表面
層の剥離や強度低下を助長し、または、腐食反応によっ
て気孔を形成し、表面層の寿命を低減させるためであ
る。
【0029】ここで、不純物とはSi及び周期律表第3
a族元素以外の元素を意味するものであり、特に、F
e、Mn、Na及びAl等の元素は、酸化又は腐食によ
る表面層の寿命低下が著しい。なお、珪酸化合物を形成
しないで粒界に存在するSiについても、酸化腐食の影
響があるため、不純物とみなすことは言うまでもない。
【0030】さらに、前記表面層の珪酸化合物の結晶
は、その平均粒径が10〜50μm、特に15〜40μ
m、更には20〜30μmであることが好ましい。これ
によって、表面層のボイドを少なくし、強度劣化を防止
することができる。
【0031】本発明によれば、燃焼ガス流に含まれる高
温・高圧水蒸気と反応を抑えることができ、寿命の長い
耐食性セラミックスを提供するため、温度200℃で飽
和水蒸気圧1.6MPaの密閉環境に100時間放置し
た後の、表面層の重量減少が0.5mg/cm2以下、
特に0.3mg/cm2以下、更には0.2mg/cm 2
以下であることが好ましい。
【0032】表面層は、表面層の消耗による耐食性セラ
ミックスの寿命低下を防ぐため、少なくとも5μm、特
に10μm、更には15μmの厚さを有していることが
望ましい。また、表面層と窒化珪素及び/又はサイアロ
ン質焼結体との熱膨張差を低減して表面層の剥離及び強
度劣化を防ぐため、表面層の厚さを100μm以下、特
に75μm以下、更には50μm以下とすることが望ま
しい。
【0033】なお、表面層には、高強度及び耐剥離性を
維持することができれば、他の化合物を含有していても
差し支えない。例えば、AlN、TiN、MgO又はA
23のうち少なくとも1種を含有させることができ
る。
【0034】表面層を形成する基体として用いる焼結体
は、窒化珪素を主結晶相とする焼結体(窒化系素質焼結
体)及び/又はサイアロンを主結晶相とする焼結体(サ
イアロン質焼結体)であることが重要である。
【0035】窒化珪素質焼結体は、高密度、高強度、高
靭性であるため、タービンブレードやタービンロータ等
の室温から高温まで高強度及び高耐食性の特性が要求さ
れるガスタービン部品として好適に用いることができ
る。そして、混合層を介して表面層を具備することによ
り、高温燃焼ガス雰囲気中での耐食性を改善し、優れた
機械的特性を保持するとともに、高温構造部品として寿
命を長くすることができるため、信頼性の高い部材を提
供することができる。
【0036】高密度で優れた機械的特性を有していれ
ば、窒化珪素質焼結体に含まれる焼結助剤は周知の材料
を使用することができる。特に、周期律表第3a族元素
を含む組成が、表面層と同一又は類似の結晶相を粒界に
析出させることができ、表面層の密着性をさらに高める
ことができる。
【0037】また、サイアロン質焼結体は、優れた機械
的強度、耐熱衝撃性により、タービンブレードやタービ
ンノズル等の高耐食性の特性が要求される部品として好
適に用いることができる。そして、混合層を介して表面
層を具備することにより、高温燃焼ガス雰囲気中では耐
食性及び高温特性の劣化を改善し、寿命を長くすること
ができる。
【0038】高密度で優れた機械的特性を有していれ
ば、サイアロン質焼結体に含まれる焼結助剤は周知の材
料を使用することができる。特に、周期律表第3a族元
素を含む組成が、表面層と同一又は類似の結晶相を粒界
に析出させることができ、表面層の密着性をさらに高め
ることができる。
【0039】なお、基体の焼結体と混合層との境界は、
長尺状の結晶が線分率で40%以上になることで判断す
る。また、表面層と混合層との境界は、長尺状の結晶が
線分率で30%以下になることで判断できる。
【0040】以上のように構成された耐食性セラミック
スは、基体の焼結体の有する特性を維持しつつ、高温高
圧高速ガスに曝されても剥離や強度劣化を抑制し、部品
の寿命を著しく改善することができ、タービンロータ、
タービンノズル、燃焼管などのガスタービンエンジン用
部品等、特に高温燃焼ガス雰囲気に曝されるガスタービ
ンエンジン用部品に好適に用いられる。
【0041】次に、本発明の耐食性セラミックスの製造
方法について、基体として窒化珪素質焼結体を用いた場
合について説明する。
【0042】基体となる窒化珪素質焼結体は、周知の方
法により作製すれば良いが、ここでは一例として、周期
律3a族元素酸化物を焼結助剤として用いた場合につい
て説明する。
【0043】まず、基体を作製する。出発原料として、
窒化珪素粉末、周期律表第3a族元素酸化物(RE
23)粉末、また、所望によりSiO2粉末を添加すれ
ばよいが、実際には、RE23とSiO2からなる化合
物、または窒化珪素とRE23とSiO2の化合物粉末
を用いることもできる。
【0044】上記の粉末を所望の組成に調合し、混合粉
末をボールミルなどにより十分混合及び/又は粉砕した
後、所望の成形手段、例えば、金型プレス、鋳込成形、
冷間静水圧成形、押出し成形等の手法により、所望の形
状に成形し、得られた成形体を焼成することができる。
【0045】これらの成形体を、真空、又はAr、N2
等の不活性ガス雰囲気中で1700〜1900℃、好ま
しくは1750〜1850℃の温度範囲で1〜10時間
程度焼結することにより、気孔率5%以下の焼結体が得
られる。
【0046】焼成方法としては、例えば、ホットプレス
方法、常圧焼成、窒素ガス圧焼成等の公知の手法を用い
ることができ、さらには、これらの焼成後に1000気
圧以上の高圧下で熱間静水圧焼成することもできる。
【0047】このようにして得られた焼結体の粒界相に
は、周期律表第3a族元素と珪素を含む複合酸化物から
なる結晶相が形成されていることが、表面層の密着性向
上のために好ましい。また、この基体を所望によって熱
処理をし、表面粗さを大きくすることも可能である。
【0048】次に、混合層を作製する。まず、窒化珪素
及び/又はサイアロンと周期律表第3a族元素の珪酸化
合物の混合粉末を作製する。周期律表第3a族元素の珪
酸化合物の出発原料として、予め合成した珪酸化物(R
2Si27及び/又はRE2SiO5)粉末を用いるこ
ともできるが、より簡便には、周期律表第3a族元素酸
化物(RE23)粉末とシリカ(SiO2)の混合粉末
を用意することもできる。このとき、窒化珪素及び/又
はサイアロンの含有比率は10質量%〜40質量%程度
でよい。
【0049】上記の混合粉末に対して、結合剤と溶媒を
加え、混合粉末をボールミルなどにより十分混合し、ス
ラリーを作製する。結合剤は乾燥後、取り扱いやすいよ
うに付着性の良いポリビニルアルコール等を用いると良
い。媒体としては有機溶剤や、水(蒸留水)等がある
が、安全性、揮発性等を考慮すると水(蒸留水)である
ことが望ましい。
【0050】得られたスラリーを窒化珪素質焼結体の表
面に塗布する。塗布には、周知の手法である刷毛による
塗布、スプレーによる吹付け、又はディッピング等の方
法を用いることができる。ここで、スラリーの塗布によ
る付着の際、一度で目的とする厚さを持つ付着層を形成
しても良いし、一度に数μm〜数10μm程度の薄膜を
形成し、それを何度も繰り返し形成することで目的の厚
さにしても良い。
【0051】上記のスラリーを表面に塗布された窒化珪
素質焼結体を乾燥後、1気圧以下の窒素雰囲気において
熱処理する。スラリーを表面に塗布された窒化珪素質焼
結体を、800〜1500℃、特に1000〜1400
℃で熱処理を行なうことによって混合層を形成できる。
【0052】以上のように、焼結体表面に、焼結体の主
結晶を粒成長させた長尺状の結晶と、表面層の珪酸化合
物との混合層を作製することが重要であり、この混合層
を焼結体と表面層との間に介在させることによって、ク
ラックの進展を防止し、強度劣化を大幅に低減し、表面
層の剥離を防止することができる。
【0053】最後に、表面層を作製する。表面層の作製
には、先に準備した周期律表第3a族元素の珪酸化合物
の原料粉末を、所望の組成に調合して作製する。例え
ば、SiO2/RE23比(モル比)が1〜3、特に
1.5〜2.5、さらには1.8〜2.2となるように
調合する。
【0054】上記の混合粉末に対して、結合剤と溶媒を
加え、混合粉末をボールミルなどにより十分混合し、ス
ラリーを作製する。結合剤は乾燥後、取り扱いやすいよ
うに付着性の良いポリビニルアルコール等を用いると良
い。媒体としては有機溶剤や、水(蒸留水)等がある
が、安全性、揮発性等を考慮すると水(蒸留水)である
ことが望ましい。
【0055】上記の方法により作製したスラリーを窒化
珪素質焼結体の表面に塗布し、熱処理を行なって表面層
を形成する。塗布には、周知の手法である刷毛による塗
布、スプレーによる吹付け、又はディッピング等の方法
を用いることができる。なお、表面層が表面の一部にの
み必要であれば、スクリーン印刷等を用いる方法や、マ
スクを用いたスプレー吹き付け等により、所望の部位に
のみスラリーを塗布することができる。
【0056】ここでも、スラリーの塗布による付着の
際、一度で目的とする厚さを持つ付着層を形成しても良
いし、一度に数μm〜数10μm程度の薄膜を形成し、
それを何度も繰り返し形成することで目的の厚さにする
こともできる。
【0057】上述した混合層及び表面層の製造方法は、
順次作製する別工程であるが、混合層及び表面層を同時
に作製することもできる。即ち、窒化珪素粉末と周期律
表第3a族元素の珪酸化合物からなる混合層用スラリー
を塗布後、その上にRE2Si27形成用粉末からなる
表面層用スラリーを塗布し、これを1400〜1700
℃で熱処理して混合層及び表面層を同時に作製すること
ができる。
【0058】なお、上記のいずれの方法においても表面
層の形成に塗布法を用いて説明したが、周知のプラズマ
溶射法等の表面被覆法を用いても良い。例えば所定量の
割合からなるRE23粉末とSiO2との混合粉末か、
または混合粉末を一度高温で処理して化合物を合成した
後、周知のプラズマ溶射法等により前記化合物を基体表
面に付着させて表面層を形成することも可能である。
【0059】本発明のガスタービン用部品は、ガスター
ビンエンジンの燃焼ガスと直接接触する部位に用いられ
るガスタービン用部品であって、上記の耐食性セラミッ
クスからなることを特徴とするものである。このガスタ
ービン用部品は、機械特性や耐食性に優れ、寿命が長い
ため、特に、タービンロータ、タービンブレード、ノズ
ル、コンバスタ、スクロール、ノズルサポート、シール
リング、スプリングリング、ディフューザ、ダクト、シ
ュラウドなどのガスタービンエンジン用部品に好適に使
用することができる。
【0060】
【実施例】窒化珪素質焼結体の原料粉末として、BET
比表面積7m2/g、窒化珪素のα率99%、酸素量
1.1質量%、Al、Mg、Ca、Feなどの陽イオン
金属不純物量0.03質量%以下の窒化珪素粉末を90
モル%、純度が99.9%、平均粒径2.5μmの酸化
イッテルビウム(Yb23)粉末、酸化エルビウム(E
23)粉末、酸化ルテチウム(Lu23)粉末又は酸
化イットリウム(Y23)粉末を3モル%、及び純度9
9.9%、平均粒径0.5μmの酸化珪素を7モル%調
合し、バインダー及び溶媒のメタノールを添加し、窒化
珪素ボールを用いて48時間回転ミルで混合粉砕した。
得られたスラリーを乾燥後、直径60mm、厚さ30m
mの形状に100MPaの圧力で静水圧プレス(CI
P)成形した。そして、得られた成形体を10気圧の窒
素ガス雰囲気において1850℃で焼成し、窒化珪素質
焼結体からなる基体とした(試料No.1〜34及び3
9)。
【0061】また、サイアロン質焼結体の原料粉末に
は、純度99.999%、平均粒径0.7μmの窒化珪
素を88モル%、純度が99.99%、平均粒径0.5
μmのアルミナ粉末を3モル%、純度99.9%、平均
粒径0.5μmの窒化アルミニウム粉末を2モル%、お
よび純度が99.9%、平均粒径1.5μmのY23
末、Yb23粉末、Er23粉末及びLu23粉末を7
モル%混合し、調合した。それぞれバインダー及び溶媒
のメタノールを添加し、窒化珪素ボールを用いて48時
間回転ミルで混合粉砕し、スラリーを乾燥後、直径60
mm、厚さ30mmの形状に1t/cm2の圧力でラバ
ープレス成形し、焼成し、サイアロン焼結体からなる基
体とした(試料No.35〜38及び40)。
【0062】得られた基体の焼結体を1×10-2〜1×
10-1Paの真空中、700〜1000℃で30分間の
加熱処理をし、焼結体表面の表面粗さを大きくした。
【0063】次に、表面層及び混合層の珪酸化合物の原
料粉末は、純度が99.9%、平均粒径が2.5μmの
Yb2Si27粉末、Y2Si27粉末、Er2Si27
粉末、Lu2Si27粉末、及びSm2Si27粉末、及
び純度が99.9%、平均粒径が2.5μmのYb2
iO5粉末、Y2SiO5粉末、Er2SiO5粉末、Lu 2
SiO5粉末、及びSm2SiO5粉末を用いた。また、
不純物として平均粒径0.1μmのCaおよび平均粒径
0.1μmのMg粉末を用いた。
【0064】上記の窒化珪素と珪酸化合物の原料粉末を
メタノールに分散させてスラリーを作製し、スプレーに
よって上記基体に均一に塗布し、窒素雰囲気中、140
0℃で熱処理をして混合層を形成した。なお、混合層中
の珪酸化合物の組成は、表1の表面層の組成と一致させ
た。
【0065】なお、試料No.39及び40は、混合層
を形成しなかった。
【0066】表面層には、珪酸化合物の原料粉末を表1
の割合になるように混合し、メタノールに分散させて作
製したスラリーを、スプレーによって前記焼結体に均一
に塗布した。乾燥後、窒素雰囲気中、1400〜170
0℃で熱処理をして所望の平均粒径を有する表面層を形
成し、表1に示す厚さを有する混合層及び表面層を有す
る焼結体を得た。
【0067】X線回折測定により焼結体中の粒界相の結
晶および表面層の結晶を同定した。表面層の珪酸化合物
は、いずれの試料もRE2Si27及びRE2SiO5
あった。この表面層に含まれるRE2Si27とRE2
iO5の含有量は、表面層を基体から剥し、粉砕してX
線回折で得られた各々のピークの強度比から算出した。
【0068】また、混合層の平均長径及び表面層の珪酸
化合物の平均粒径は、コーティングされたサンプルの断
面写真を用いて、画像解析を用いて測定した。
【0069】さらに、表面層の不純物濃度は、表面層を
基体から剥し、粉砕した粉末をフッ化水素酸と硝酸で溶
解させて、ICP発光分光分析を用いて測定した。
【0070】また、200℃において圧力1.6MP
a、100時間水熱酸化試験を行ない、その重量変化を
表面層の重量減少量として計測した。
【0071】さらに、JIS−R1601に基づいて室
温および高温(1500℃)での4点曲げ抗折強度試験
を実施し、30個の試験結果の平均値を算出した。
【0072】また、酸化特性として酸化テストを行っ
た。即ち、焼結体を1250℃の大気中に1000時間
保持した後の重量増加を測定し、酸化重量増とした。結
果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】基体が窒化珪素質焼結体からなる本発明の
試料No.2〜7及び10〜34は、水熱酸化試験にお
ける重量減少量が0.5mg/cm2以下と小さく、室
温強度が700MPa以上、高温強度が470MPa以
上、酸化テストの酸化重量増が0.05mg/cm2
下であった。
【0075】一方、混合層の厚さが1μmと小さい本発
明の範囲外の試料No.1及び混合層の厚さが100μ
mと大きい本発明の範囲外の試料No.8、平均長径が
30μmと小さい本発明の範囲外の試料No.9は、水
熱酸化試験における重量減少量が0.9mg/cm2
上、室温強度が570MPa以下、高温強度が430M
Pa以下、酸化テストの酸化重量増が0.10mg/c
2以上であった。
【0076】また、表面層に珪酸化合物を用いていない
本発明の範囲外の試料No.39は、水熱酸化試験にお
ける重量減少量が250mg/cm2と非常に大きく、
また室温強度が450MPa、高温強度が90MPaと
いずれも低く、酸化テストの酸化重量増が1.23mg
/cm2であった。
【0077】基体がサイアロン焼結体からなる本発明の
試料No.35〜38は、水熱酸化試験における重量減
少量が0.5mg/cm2以下、室温強度が1100M
Pa以上、高温強度が200MPa以上、酸化テストの
酸化重量増が0.04mg/cm2以下であった。
【0078】一方、表面層が本発明の範囲外の試料N
o.40は、酸化重量増が1.65mg/cm2、重量
減少量が120mg/cm2と特性が著しく劣化した。
【0079】
【発明の効果】本発明は、表面層を形成しても強度劣化
を起こさず、且つ付着力の高い表面層を具備する耐食性
セラミックスを実現することができる。また、高温燃焼
ガス又は水蒸気を含む燃焼ガスに対して高耐食性を有
し、且つ飛来物に対しても十分な剥離強度を有し、80
0〜1300℃付近の高温域において長時間使用が可能
で、機械的特性に優れるガスタービン用部品として好適
に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02C 7/00 C04B 35/58 302Z

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化珪素及び/又はサイアロンからなる焼
    結体と、該焼結体の表面に形成された周期律表第3a族
    元素の珪酸化合物からなる表面層と、前記表面層と前記
    焼結体との間に設けられ、前記焼結体を構成する主結晶
    と前記表面層を構成する珪酸化合物とからなる厚さ3〜
    60μmの混合層とを具備し、該混合層における窒化珪
    素及び/又はサイアロン主結晶の粒子の平均長径が40
    μm以上であることを特徴とする耐食性セラミックス。
  2. 【請求項2】前記周期律表第3a族元素の珪酸化合物が
    85体積%以上のRE 2Si27と、15体積%以下の
    RE2SiO5からなることを特徴とする請求項1記載の
    耐食性セラミックス。
  3. 【請求項3】前記表面層に含まれるSi及び周期律表第
    3a族元素以外の不純物元素量が0.08質量%以下で
    あることを特徴とする請求項1又は2記載の耐食性セラ
    ミックス。
  4. 【請求項4】前記表面層の珪酸化合物の平均粒径が10
    〜50μmであることを特徴とする請求項1乃至3のい
    ずれかに記載の耐食性セラミックス。
  5. 【請求項5】200℃、飽和水蒸気圧1.6MPaの密
    閉環境に100時間放置して、重量減少が0.5mg/
    cm2以下であることを特徴とする請求項1乃至4のい
    ずれかに記載の耐食性セラミックス。
  6. 【請求項6】前記表面層の厚さが5〜100μmである
    ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載
    の耐食性セラミックス。
  7. 【請求項7】窒化珪素及び/又はサイアロンからなる焼
    結体の表面に、窒化珪素粉末と周期律表第3a族元素の
    珪酸化合物粉末とからなる混合層用スラリーを塗布し、
    800〜1500℃で熱処理をして混合層を作製した
    後、周期律表第3a族元素の珪酸化合物からなる表面層
    を形成することを特徴とする耐食性セラミックスの製造
    方法。
  8. 【請求項8】窒化珪素及び/又はサイアロンからなる焼
    結体の表面に、窒化珪素粉末と周期律表第3a族元素の
    珪酸化合物粉末とからなる混合層用スラリーを塗布し、
    しかる後にRE2Si27形成用粉末からなる表面層用
    スラリーを塗布し、1400〜1700℃で熱処理する
    ことを特徴とする耐食性セラミックスの製造方法。
  9. 【請求項9】ガスタービンエンジンの燃焼ガスと直接接
    触する部位に用いられるガスタービン用部品であって、
    請求項1乃至6のいずれかに記載の耐食性セラミックス
    からなることを特徴とするガスタービン用部品。
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