JP2003226109A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 タイヤクラウン部の構造を工夫することによ
り、高速耐久性の低下や重量増加を抑えながら、耐ベル
トセパレーション性及びロードノイズを改善し、更には
転がり抵抗の低減を可能にした空気入りラジアルタイヤ
を提供する。 【解決手段】 カーカス層２の外周側に直径０．３８〜
０．４５ｍｍのスチール単線４からなる２層のベルト層
３を配置し、これらベルト層を構成するスチール単線の
タイヤ径方向の間隔ｔを０．３５〜０．９０ｍｍとし、
内側ベルト層３Ａとカーカス層２の間のベルト層両端部
位置に、タイヤ周方向に対して傾斜する有機繊維コード
からなり、内側ベルト層３Ａの端部からタイヤ幅方向外
側へ突出する帯状の有機繊維層５，５をスプリットに配
置する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はベルト層にスチール
単線を用いた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳し
くは、クラウン部の構造を改良することにより軽量化を
阻害することなくロードノイズや転がり抵抗を改善した
空気入りラジアルタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、省資源、省エネルギーといった社
会的要請から車両の低燃費化が世界的規模で強く求めら
れており、これを受けて転がり抵抗を低減した低燃費タ
イヤの開発が盛んに行われている。転がり抵抗を低減す
る一つの手段としてタイヤの軽量化が挙げられ、その手
法として空気入りラジアルタイヤのベルト層に使用され
ているベルトコードの構成を見直すことが行われてい
る。

【０００３】ところで、スチールコードは他の有機繊維
コードに比べて引張り強度や引張り弾性率が著しく優れ
ているため、長年にわたり空気入りラジアルタイヤのベ
ルト層に使用されているが、スチールコードは比重が非
常に大きいためにタイヤの軽量化の障害になっている。
近年はベルト層のコートゴム削減による軽量化を目的と
してスチールコードに代えて種々のスチール単線をベル
ト層に使用したタイヤ（例えば、特開平５−３３８４０
８号公報、特開平８−３００９０５号公報、特開平１１
−９１３１１号公報、特開２０００−１９８３１１号公
報、特開２００１−１８０２２３号公報）が提案されて
きた。しかしながら、これら空気入りラジアルタイヤは
耐久性が不十分であるという欠点があり、これに加えて
タイヤ騒音や転がり抵抗等の特性を十分に満足するもの
ではなかった。

【０００４】他方、耐ベルトセパレーション性を改善し
つつロードノイズの低減を可能にする技術として、特開
２０００−９４９０６号公報には、ベルト層とカーカス
層との間にタイヤ周方向に平行な有機繊維コードからな
るバンド層を配置することが提案されている。しかしな
がら、上記のようなタイヤでは、加硫時に周方向に配置
した有機繊維コードの影響を受けてカーカス層が蛇行し
てしまい、これにより耐久性（特に、高速耐久性）が悪
化するという問題が避けられなかった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スチ
ール単線をベルト層に使用したタイヤのクラウン部の構
造を改良することにより、高速耐久性の低下や重量増加
を抑えながら、耐ベルトセパレーション性及びロードノ
イズを改善し、更には転がり抵抗の低減を可能にした空
気入りラジアルタイヤを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の空気入りラジアルタイヤは、タイヤクラウン部にお
けるカーカス層の外周側に直径０．３８〜０．４５ｍｍ
のスチール単線を並列に配置したゴム被覆材からなる２
層のベルト層を有する空気入りラジアルタイヤであっ
て、これらベルト層を構成するスチール単線のタイヤ径
方向の間隔（以下、ベルト間ゲージという）が０．３５
〜０．９０ｍｍであり、内側ベルト層とカーカス層との
間のベルト層両端部位置に、タイヤ周方向に対して傾斜
する有機繊維コードからなり、前記内側ベルト層の端部
からタイヤ幅方向外側へ突出する帯状の有機繊維層をス
プリットに配置したことを特徴とするものである。

【０００７】このように内側ベルト層とカーカス層との
間のベルト層両端部位置に、タイヤ周方向に対して傾斜
する有機繊維コードからなる帯状の有機繊維層をスプリ
ットに配置したので、タイヤ剛性を高めることができ、
その結果として、ロードノイズの低減及び転がり抵抗の
低減が可能になる。上記有機繊維層は、ベルト層両端部
位置に必要量だけスプリットに配置されるため重量増加
を最小限に抑えることができ、しかも有機繊維コードが
タイヤ周方向に対して傾斜しているため加硫時にタイヤ
クラウン部でカーカス層が蛇行するのを防止して高速耐
久性を改善することができる。また、上記有機繊維層
は、カーカス層とベルト層との間の緩衝材として作用
し、耐ベルトセパレーション性を向上することができ
る。

【０００８】ここで、有機繊維層を構成する有機繊維コ
ードは、タイヤ周方向に対して１０〜８０°の角度で配
置することが好ましく、更に好ましくは１５〜２５°の
角度で配置すると良い。また、有機繊維層を構成する有
機繊維コードの傾斜方向と内側ベルト層を構成するスチ
ール単線の傾斜方向とは互いに異ならせることが好まし
い。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、添付図面を引用して本発明
の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一の構
成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略す
る。

【００１０】図１は本発明の実施形態からなる空気入り
ラジアルタイヤのタイヤクラウン部を示すタイヤ子午線
断面図で、タイヤクラウン部１におけるカーカス層２の
外周側には２層のベルト層３が配置されている。

【００１１】このベルト層３はスチール単線４を並列に
配置したゴム被覆材からなる内側ベルト層３Ａと外側ベ
ルト層３Ｂとで構成され、各ベルト層３を構成するスチ
ール単線４はタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で
互いに交差するように配置されている。スチール単線４
は撚りが無いため剛直であり、繰り返し荷重による曲げ
変形や圧縮変形に対する耐久性が小さいものである。こ
れを補うために通常はスパイラル状又は波状に型付けし
て使用される。

【００１２】内側ベルト層３Ａとカーカス層２との間の
ベルト層両端部位置には、有機繊維コードをタイヤ周方
向に対して傾斜するように並列に配置したゴム被覆材か
らなる帯状の有機繊維層５，５がそれぞれ配置されてい
る。有機繊維層５のコード傾斜方向と内側ベルト層３Ａ
のコード傾斜方向とは互いに異なるようになっている。
この有機繊維層５のコード傾斜方向と内側ベルト層３Ａ
のコード傾斜方向とが同一であると、タイヤ剛性が不足
するためロードノイズや転がり抵抗の改善効果が不十分
になる。

【００１３】また、有機繊維層５，５は、そのタイヤ幅
方向内側端部が外側ベルト層３Ｂの下に位置し、タイヤ
幅方向外側端部が内側ベルト層３Ａの端部を超えた位置
まで延びている。有機繊維層５の外側端部は、内側ベル
ト層３Ａの端部から３ｍｍ以上離れていることが好まし
い。この有機繊維層５の外側端部と内側ベルト層３Ａの
端部とが一致していると、耐ベルトセパレーション性が
悪化する。

【００１４】有機繊維層５，５のコード角度は、タイヤ
周方向に対して１０〜８０°とすることが好ましく、更
に好ましくは１５〜２５°とする。このコード角度が１
０°未満ではタイヤクラウン部においてカーカス層に蛇
行を生じる恐れがあり、８０°超ではタガ効果が不足す
るためロードノイズや転がり抵抗の低減効果が不十分に
なる。有機繊維コードは特に限定されないが、汎用のナ
イロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等から
適宜選定することができる。

【００１５】図２は本発明の実施形態からなる空気入り
ラジアルタイヤのベルト層を示す拡大断面図で、内側ベ
ルト層３Ａと外側ベルト層３Ｂには直径ｄが０．３８〜
０．４５ｍｍのスチール単線４がスパイラル状に型付け
されてゴム中に埋設され、ベルト間ゲージｔが０．３５
〜０．９０ｍｍに設定されている。

【００１６】本発明において、ベルト間ゲージｔは図２
中の点線で示すスチール単線４の外輪郭線同士がなすタ
イヤ径方向の間隔により定義される。

【００１７】ここで、スチール単線４の直径ｄが０．３
８ｍｍ未満ではベルト層の曲げ剛性が不足してロードノ
イズ及び転がり抵抗が悪化するばかりでなく、単線間隔
を狭くする必要があるため耐ベルトセパレーション性が
低下することになり、０．４５ｍｍ超では重量増加に起
因して転がり抵抗が悪化するばかりでなく、コードとゴ
ムとの間に生じる剪断力が大きくなるため耐ベルトセパ
レーション性が低下することになる。

【００１８】また、ベルト間ゲージｔが０．３５ｍｍ未
満ではベルト層の層間剪断力が大きくなるため耐ベルト
セパレーション性が低下することになり、０．９０ｍｍ
超では重量増加に起因して転がり抵抗が悪化することに
なる。

【００１９】スチール単線４は、図３に示すように、波
長λ（スパイラルピッチ）と波高ｈ（スパイラル径）を
有するスパイラル状に型付けされている。スチール単線
４において、（波高ｈ−直径ｄ）と波長λとの比〔（ｈ
−ｄ）／λ〕は０．０１〜０．５０の範囲に設定すれば
良い。これにより、スチール単線４の剛直性を緩和し、
繰り返し曲げ変形や圧縮変形に対して優れた耐疲労性を
示す。

【００２０】また、上記空気入りラジアルタイヤにおい
て、ベルト層３Ａ、３Ｂの外周側にはベルトカバー層６
が配置されている。ベルトカバー層６は少なくとも外側
ベルト層３Ｂ及び内側ベルト層３Ａの幅方向両端部を覆
うように配置するもので、これらベルト層３Ａ，３Ｂの
全体を覆うフルカバーとベルト層３Ａ，３Ｂの両端部の
みを覆うエッジカバーのいずれであっても良い。このベ
ルトカバー層６は主としてタイヤの高速走行時における
ベルト層３の幅方向両端部の変形を抑え、ベルト層３の
両端部の剥離による故障を抑えるために配置するもの
で、ナイロン等の有機繊維コードをタイヤ周方向に配列
したゴム被覆材が使用される。

【００２１】

【実施例】タイヤサイズを１９５／６０Ｒ１４として、
２層のベルト層を構成するスチール単線の素線径（ｍ
ｍ）、スチール単線の幅５０ｍｍ当たりの打込み本数
（本）、ベルト間ゲージ（ｍｍ）、及びカーカス層と内
側ベルト層との間に配置する有機繊維層の構成及び配置
位置がタイヤの諸性能に与える影響を確認するために、
表１に掲げる仕様を有する従来タイヤ、本発明タイヤ及
び比較タイヤ１〜６を作製して性能を評価した。

【００２２】なお、ベルト層に使用したスチール単線は
予め（ｈ−ｄ）／λが０．０３（λ＝６ｍｍ）となるよ
うにスパイラル状に型付けしたものを使用し、各ベルト
層を構成するスチール単線がタイヤ周方向に対して２４
°の角度で互いに交差するように配置した。

【００２３】カーカス層と内側ベルト層の間に配置する
有機繊維層のコード材料にはナイロンを使用し、そのコ
ードをタイヤ周方向に対して所定の角度（°）に配置
し、そのコード配置方向を従来タイヤを除き内側ベルト
層のスチール単線と交差する方向とし、クラウン部を図
１、図４及び図５のいずれかに示す構造とした。

【００２４】すなわち、図４では有機繊維層５を下側ベ
ルト層３Ａより広幅の幅方向に連続した構造とした場合
を示し、図５では左右の帯状有機繊維層５，５のタイヤ
幅方向外側端部をそれぞれ下側ベルト層３Ａの両端部位
置と一致させて配置した場合を示している。

【００２５】これら８種のタイヤにつき以下の要領に従
ってタイヤの高速耐久性、耐ベルトセパレーション性、
ロードノイズ、転がり抵抗、及び軽量化を評価し、その
結果を表１に示した。なお、表１には参考までに各タイ
ヤのクラウン部におけるカーカス層の蛇行の状況を併記
した。

【００２６】〔高速耐久性の評価要領〕各タイヤをリム
サイズ１４Ｘ６ＪＪのリムに装着し、空気圧２３０ｋＰ
ａ、荷重５ｋＮの条件下で直径１７０７ｍｍの回転ドラ
ム上で３０分毎に速度を８ｋｍ／時ずつ増加してタイヤ
が故障するまでの走行距離を測定した。その結果は相対
的に５段階で評価して点数表示した。この点数が大きい
ほど高速耐久性が優れていることを示している。

【００２７】〔耐ベルトセパレーション性の評価要領〕
各タイヤをリムサイズ１４Ｘ６ＪＪのリムに装着し、空
気圧をＪＡＴＭＡ最大空気圧の７５％とした低圧条件か
つ同最大荷重の１４０％とした高荷重条件において、速
度約８０ｋｍ／ｈｒのドラム上をタイヤ故障（ベルト部
セパレーション）が発生するまで継続して走行させ、そ
の合計走行距離を相対的に５段階で評価してその結果を
点数表示した。この点数が大きいほど耐ベルトセパレー
ション性が優れていることを示している。

【００２８】〔ロードノイズの評価要領〕試験タイヤを
空気圧２００ｋＰａとして排気量１８００ｃｃの乗用車
に装着し、粗い路面を速度５０ｋｍ／ｈｒで走行し、車
室内の運転席窓側耳位置における周波数０〜４００Ｈｚ
のオーバーオールのロードノイズを測定した。特にベル
ト端部に起因する３００Ｈｚ前後の測定域を主に評価
し、これらを相対的に５段階で評価してその結果を点数
表示した。この点数が大きいほどロードノイズが小さい
ことを示している。

【００２９】〔転がり抵抗の評価要領〕各タイヤを空気
圧２００ｋＰａでリムサイズ１４Ｘ６ＪＪのリムに組付
け、ドラム径１７０７ｍｍの室内ドラム式タイヤ転動抵
抗試験機を用いて、ＪＡＴＭＡ最大負荷荷重の８５％に
相当する荷重を負荷してドラムに押し付けた状態で速度
８０ｋｍ／ｈｒで走行させたときの転動抵抗を測定し
た。これらを相対的に５段階で評価してその結果を点数
表示した。この点数が大きいほど転がり抵抗が少ないこ
とを示している。

【００３０】〔軽量化の評価要領〕タイヤ１本に使用し
たベルト層及びベルト下の有機繊維層の重量を測定し、
その結果を相対的に５段階で評価して点数表示した。こ
の点数が大きいほど軽量であることを示している。

【００３１】

【表１】

【００３２】この表１より、本発明タイヤは従来タイヤ
及び比較タイヤ１〜６に比べて高速耐久性、耐ベルトセ
パレーション性、ロードノイズ、転がり抵抗、及び軽量
化の全ての項目にわたりバランス良く優れた性能を示す
ことを確認した。

【００３３】

【発明の効果】本発明によれば、ベルト層としてスチー
ル単線を使用して軽量化を図るに際して、ベルト間ゲー
ジを特定すると共に、タイヤ周方向に対して傾斜する有
機繊維コードからなる帯状の有機繊維層を特定位置に配
置することより、高速耐久性をはじめとして耐ベルトセ
パレーション性、ロードノイズ、及び転がり抵抗を総合
的に改善することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタ
イヤのタイヤクラウン部を示すタイヤ子午線断面図であ
る。

【図２】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタ
イヤのベルト層を示す拡大断面図である。

【図３】本発明に使用するスチール単線の平面図であ
る。

【図４】本発明の効果を確認するために作製した空気入
りラジアルタイヤのクラウン部の構造を説明するための
図１に相当する図である。

【図５】本発明の効果を確認するために図４とは別に作
製した空気入りラジアルタイヤのクラウン部の構造を説
明するための図１に相当する図である。

【符号の説明】

１ タイヤクラウン部 ２ カーカス層 ３ ベルト層 ３Ａ 内側ベルト層 ３Ｂ 外側ベルト層 ４ スチール単線 ５ 有機繊維層 ６ ベルトカバー層

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 タイヤクラウン部におけるカーカス層の
   外周側に直径０．３８〜０．４５ｍｍのスチール単線を
   並列に配置したゴム被覆材からなる２層のベルト層を有
   する空気入りラジアルタイヤであって、これらベルト層
   を構成するスチール単線のタイヤ径方向の間隔が０．３
   ５〜０．９０ｍｍであり、内側ベルト層とカーカス層と
   の間のベルト層両端部位置に、タイヤ周方向に対して傾
   斜する有機繊維コードからなり、前記内側ベルト層の端
   部からタイヤ幅方向外側へ突出する帯状の有機繊維層を
   スプリットに配置した空気入りラジアルタイヤ。
2. 【請求項２】 前記有機繊維層を構成する有機繊維コー
   ドの傾斜方向と前記内側ベルト層を構成するスチール単
   線の傾斜方向とを互いに異ならせた請求項１に記載の空
   気入りラジアルタイヤ。
3. 【請求項３】 前記有機繊維層がタイヤ周方向に対して
   １０〜８０°の角度で有機繊維コードを並列に配置した
   ゴム被覆材からなる請求項１に記載の空気入りラジアル
   タイヤ。
4. 【請求項４】 前記２層のベルト層の外周側にベルトカ
   バー層を配置した請求項１〜３のいずれかに記載の空気
   入りラジアルタイヤ。