JP2003219892A - 耐熱性システイン合成酵素 - Google Patents
耐熱性システイン合成酵素Info
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Abstract
きる耐熱性システイン合成酵素および該酵素をコードす
るDNA等を提供する。 【解決手段】 90〜100℃という高温下で生育できる超
好熱性古細菌Aeropyrum pernixからシステイン合成酵素
を単離し、アミノ酸配列およびDNA配列を決定した。こ
の酵素は80℃で6時間熱処理した場合に実質的に活性が
低下しないシステイン合成酵素である。本酵素は、この
ように酵素の耐熱性が高いことから、高温で高濃度の基
質溶液を調製することができ、その結果効率良くアミノ
酸等を生産することができる。
Description
合成酵素、該酵素をコードするDNA、該DNAを組み込んだ
ベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、該
形質転換体を用いた耐熱性システイン合成酵素の生産方
法に関する。
的に合成されている。化学合成反応による硫黄含有有機
化合物の合成においては、副反応による不純物の生成が
避けられないことから、不純物を除去する手間がかか
る。また、例えば硫黄酸化物などの副反応生成物による
環境汚染等の問題も生じる。さらに、触媒を使用しなけ
ればならない場合が多く、コスト高になる。
ン合成酵素であるO−アセチルセリンスルフヒドリラー
ゼを用いた硫黄含有有機化合物の合成方法が提案されて
いる(Flint et.al.,J.Biol.Chem.,271,16053-16067,19
96)。従来公知のO−アセチルセリンスルフヒドリラー
ゼは、硫黄の転移を伴う種々の反応を行うことができ
る。システイン合成酵素を用いて生化学的に硫黄含有有
機化合物を合成する場合には、副生成物の生成が極めて
少ないことから、精製コストを抑えることができ、製品
の純度も高くなり、さらに環境汚染の問題も起こらな
い。また、触媒を使用しなくてもよいため、コストを低
く抑えることができる。
シナサーモフィラ(Methanosarcinathermophila)、サ
イトルラスブルガリス(Citrullus vulgaris)、サルモネ
ラティフィムリウム(Salmonella typhimuriumu)、大腸
菌、その他植物等に由来する酵素が単離されている。
酵素は、耐熱性が低い。ここで、一般に、溶質の水に対
する溶解度は温度と共に上昇するため、高温下で機能で
きる耐熱性のシステイン合成酵素を用いることができれ
ば、高温下で調製した高濃度の基質溶液に該耐熱性シス
テイン合成酵素を作用させることにより、効率よく目的
物質を生産することができる。
を始めとするアミノ酸の合成反応を効率良く行うことが
できる耐熱性システイン合成酵素、該酵素をコードする
DNA、該DNAを組み込んだベクター、該ベクターで形質転
換された形質転換体、該形質転換体を用いた耐熱性シス
テイン合成酵素の効率的な生産方法を提供することを主
目的とする。
に、本発明者は、90〜100℃という高温下で生育で
きる超好熱性古細菌に着目した。古細菌は、真核生物及
び原核生物のいずれにも属さない第3の生物群に属する
生物である。また、太古の地球の生物の末裔と考えら
れ、常温環境に対する進化・適用を免れた特殊な生物で
ある。
来のシステイン合成酵素を初めて単離した。また、この
酵素は80℃で6時間の熱処理によって実質的に活性が
低下しないことを見出した。
であり、以下のシステイン合成酵素等を提供する。
実質的に活性が低下しない耐熱性システイン合成酵素。
由来の項1に記載の耐熱性システイン合成酵素。
に80%以上活性が残存する耐熱性システイン合成酵
素。
由来の項3に記載の耐熱性システイン合成酵素。
ド。 (5) 配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。 (6) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しく
は2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列を含み、かつ、耐熱性システイン合成酵素活
性を有するポリペプチド。
ジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、
耐熱性システイン合成酵素活性を有するポリペプチドを
コードするDNAを含むDNA。 (5) 項5に記載のポリペプチドをコードするDNA。
ター。
形質転換体。
該形質転換体からシステイン合成酵素を回収する耐熱性
システイン合成酵素の生産方法。
れる酵素であり、100℃で6時間熱処理した場合に実
質的に活性が低下しない酵素である。本発明において、
「実質的に活性が低下しない」には、例えば90%以上
の活性を有する場合が含まれる。また、80℃で6時間
熱処理した場合に80%以上活性が残存する耐熱性シス
テイン合成酵素も本発明の酵素に含まれる。本発明の耐
熱性システイン合成酵素が活性を示す最高温度は、通常
90℃程度である。
ても異なるが、本発明の耐熱性システイン合成酵素は、
酵素反応の初速度を測定した場合の至適温度が60℃以
上の酵素であることが好ましい。
例の項目に記載の活性測定方法(1)により測定した値
である。また、至適温度の検討時の酵素活性は、実施例
の項目に記載の活性測定方法(2)により測定した値で
ある。常温での安定性 本発明の耐熱性システイン合成酵素は、常温下での安定
性にも優れる。本発明のシステイン合成酵素は、30℃
の50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で4時間
インキュベートした場合に、90%以上の活性が残存す
る酵素であることが好ましい。この酵素活性は、50mMリ
ン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で、O-アセチルセリンと
硫化ナトリウムとからシステインを合成する活性を測定
した値である。pHに対する安定性 本発明の耐熱性システイン合成酵素は、高pHまたは低pH
に対する安定性にも優れる。本発明のシステイン合成酵
素は、pH6〜10程度の広範囲のpH下でも活性を示す酵
素であることが好ましい。
のアミノ酸配列を有する耐熱性システイン合成酵素の至
適pHは、7.5〜8.0程度である。
項目に記載の活性測定方法(3)により測定した値であ
る。有機溶媒耐性 本発明の耐熱性システイン合成酵素は、有機溶媒に耐性
である。例えば、エタノール、ブタノール、テトラヒド
ロフラン、酢酸エチル等の有機溶媒を20容量%以上含
む緩衝液中で活性を示す酵素であることが好ましい。本
発明のシステイン合成酵素が酵素活性を示し得る、緩衝
液中の有機溶媒の容量比率の上限は、酵素蛋白が沈殿し
ない範囲である。なお、有機溶媒に対する耐性は、古細
菌に特有の性質である。基質特異性 本発明のシステイン合成酵素は、以下の式(I)の反応を
行える酵素である。
に代えてSeである反応も行えるものであってよい。
−アセチルセリンと種々の求核剤とから対応するアミノ
酸を合成できる酵素であってよい。例えば、本発明酵素
は、O−アセチルセリンと硫化ナトリウム又は硫化水素
とからシステインを合成できる酵素であってよい。ま
た、本発明酵素は、O−アセチルセリンとチオ硫酸とか
らS−スルフォシステインを合成できる酵素であってよ
く、ピラゾールとO−アセチルセリンとからb-ピラゾー
ルアラニンを合成できる酵素であってよい。求核剤と生
成物との組み合わせの例を、以下の表1に示す。但し、
本発明のシステイン合成酵素は、必ずしも表1に記載の
全ての反応を行えるものでなくてもよく、本発明のシス
テイン合成酵素には、表1に記載の反応を行うものが含
まれる。
性のシステイン合成酵素を用いる場合に比べて、高温で
調製したより高濃度の基質溶液に対して作用させること
ができ、その結果効率よく目的化合物を合成することが
できる。
として用いる反応を行う場合には、これらの基質が水溶
液には溶解し難いことから、高濃度の基質溶液を得るた
めには、高温で基質溶液を調製したり、有機溶媒を溶解
した水溶液を用いて基質溶液を調製せざるを得ない。こ
の場合にも、本発明のシステイン合成酵素は、耐熱性お
よび有機溶媒耐性に優れることから、高濃度の基質溶液
が得られ、その結果、効率良く合成反応を行うことがで
きる。生産細菌 本発明の耐熱性システイン合成酵素としては、好熱性細
菌、例えばAeropyrum属、Pyrococcus属、Sufolobus属、
Thermoplasma属、Thermoproteus属、Mastigocladus属、
Bacillus属、Synechococcus属、Thermus属等の細菌によ
り生産されたものが挙げられる。特に、超好熱性古細菌
Aeropyrum pernixにより生産されたものが好ましい。アミノ酸配列 また、本発明のシステイン合成酵素としては、以下のア
ミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。 (1) 配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。 (2) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しく
は2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列を含み、かつ、耐熱性システイン合成酵素活
性を有するポリペプチド。
ノ酸配列において、1~50個程度、特に1~25個程度のア
ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を
含むポリペプチドであることが好ましいが、システイン
合成酵素間で保存されていない領域であれば、配列番号
2のアミノ酸配列を、アミノ酸数の30%以下の範囲で改
変したものであってよい。
には、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、
可溶性、親水性/疎水性、極性等の点で、置換前のアミ
ノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することが
できる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類さ
れ;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、ア
スパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フ
ェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族側
鎖を有するアミノ酸に分類され;リジン、アルギニン、
ヒスチジンは塩基性アミノ酸に分類され;アスパラギン
酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従っ
て、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができ
る。
に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドとしては、例え
ば、配列番号2に示すアミノ酸配列の3倍以下の長さの
ポリペプチドが挙げられる。同様に、(2)のポリペプチ
ドにおいて、配列番号2に示すアミノ酸配列において1
若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加さ
れたアミノ酸配列を含むポリペプチドとしては、例え
ば、配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは
2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミ
ノ酸配列の3倍以下の長さのポリペプチドが挙げられ
る。
に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。
(2)のポリペプチドの中では配列番号2に示すアミノ酸
配列において1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換
若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、耐熱
性システイン合成酵素活性を有するポリペプチドが好ま
しい。
を培養し、菌体破砕液から回収又はさらに精製すること
により得られる。また、配列番号1のアミノ酸配列を基
に化学的に合成することによっても得ることができる。
また、後述する本発明方法によっても得られる。本発明のDNA 本発明のDNAは、以下の(3)、(4)又は(5)のDNAである。 (3) 配列番号1に示す塩基配列を含むDNA。 (4) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、
耐熱性システイン合成酵素活性を有するポリペプチドを
コードするDNAを含むDNA。 (5) 前述した本発明のポリペプチドをコードするDNA。
件」とは、例えば、通常のハイブリダイゼーション溶液
中であれば68℃で行う条件が挙げられ、50%フォル
ムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中であれば
42℃で行う条件が挙げられる。詳しくは、Molecular
Cloning: A Laboratory Manual第2版第2巻に記載のサ
ザンハイブリダイゼーションに用いられる条件が挙げら
れる。
において1〜50個程度、特に1〜25個程度のアミノ酸が
欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポ
リペプチドをコードするDNAを含むDNAであることが好ま
しい。しかし、システイン合成酵素間で保存されていな
い領域であれば、配列番号2のアミノ酸配列の全アミノ
酸配列の30%以下を改変したポリペプチドをコードする
DNAを含むDNAでもよい。
配列を含むDNAとしては、例えば、配列番号1に示す塩
基配列の3倍以下の長さのDNAが挙げられる。配列番号
1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条
件下でハイブリダイズするDNAであって耐熱性システイ
ン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
を含むDNAとしては、配列番号1に示す塩基配列からな
るDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズす
るDNAであって、耐熱性システイン合成酵素活性を有す
るポリペプチドをコードするDNAの3倍以下の長さのDNA
が挙げられる。
配列からなるDNAが好ましい。(4)のDNAの中では、配列
番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェント
な条件下でハイブリダイズし、かつ、耐熱性システイン
合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが
好ましい。
coccus属、Sufolobus属、Thermoplasma属、Thermoprote
us属、Mastigocladus属、Bacillus属、Synechococcus
属、Thermus属等の好熱性細菌の染色体DNAのライブラリ
ーからプローブを用いたハイブリダイゼーションにより
単離することもできるが、配列番号1のDNA配列を基にP
CR法により増幅することもできる。また、化学合成によ
っても取得できる。
酵素DNAは、化学合成法、遺伝子工学的手法、突然変異
誘発法などの公知の方法で作成することができる。遺伝
子工学的手法としては、入手可能なシステイン合成酵素
DNAに対して、エキソヌクレアーゼを用いたDNA欠失導
入、リンカー導入、位置指定突然変異導入、変異プライ
マーを用いたPCR法による塩基配列の改変などの公知の
方法を挙げることができる。(3)本発明のベクター 本発明のベクターは、前記説明した本発明のDNAを含有
する組換えベクターである。本発明のDNAが組み込まれ
るベクターは公知のものを広く利用でき、細菌用ベクタ
ーの他、酵母用ベクター、動物細胞用ベクター等も利用
できる。酵素の生産効率の点から、通常は細菌用ベクタ
ーを用いればよい。公知のベクターとしては、大腸菌ベ
クターのpBR322、pUC19、pKK233-2等、バチルス属細菌
ベクターのpUB110、pC194、pE194、pTHT15、pBD16等、
酵母用ベクターYip5、Yrp17、Yep24等、動物細胞用ベク
ターpUC18、pUC19、M13mp18等を例示できる。(4)本発明の形質転換体 また、本発明の形質転換体は、前記説明した本発明の組
換えベクターを含有する形質転換体である。宿主として
は、ベクターに応じて細菌、酵母、動物細胞等を利用で
きる。宿主としては、Bacillus subtilis、Bacillus br
evis 、酵母、カビ等が、大量に目的タンパク質を生産
できる点で、好ましい。形質転換は、リン酸カルシウム
法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、ス
フェロプラスト法、酢酸リチウム法、リポフェクション
法、マイクロインジェクション法等の公知の方法で行う
ことができる。これらの公知の方法の中から、宿主の種
類に応じて選択すればよい。(5)本発明のシステイン合成酵素の製造方法 本発明のシステイン合成酵素の製造方法は、本発明の形
質転換体を培養し、この形質転換体からシステイン合成
酵素を回収する方法である。
塩析、溶媒沈殿法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、
イオン交換クロマトグラフィー法、アフィニティクロマ
トグラフィー法、逆相高速液体クロマトグラフィー法等
の公知の蛋白精製方法を組み合わせて精製することがで
きる。本発明の酵素が細胞内またはペリプラズム内に生
産される場合には超音波処理、界面活性剤処理等の公知
の方法で細胞を破壊した後に精製を行えばよい。
する場合、精製ステップの一つとして、本発明酵素を10
〜30分間程度(特に20分間程度)インキュベートした場
合に通常60%以上、特に80%以上活性が残存し、かつ、
当該酵素を生産する宿主の生育限界温度より通常10℃以
上、特に15℃以上高い温度で、被精製タンパク質溶液を
通常10〜120分間程度、特に10〜30分間程度インキュベ
ートすることが好ましい。これにより、目的酵素を殆ど
失活させることなく、宿主が生産する夾雑タンパク質を
変性、失活させることができる。この加熱処理工程後
に、タンパク質溶液を、特に限定されないが、例えば15
000rpm程度で20分間程度遠心することにより変性した夾
雑タンパク質を沈殿させることができる。この加熱処理
工程は、精製のいずれの段階で行ってもよい。
性システイン合成酵素の精製に限らず、いずれの耐熱性
タンパク質の精製においても行うことができ、これによ
り耐熱性タンパク質の精製度を飛躍的に向上させること
ができる。(6)アミノ酸の合成方法 本発明のシステイン合成酵素を用いて、各種のアミノ酸
を合成するにあたっては、基質を50〜100mM程度の
リン酸緩衝液、炭酸緩衝液(pHは使用する酵素の至適
pHとする。)等の緩衝液に溶解した基質溶液に本酵素を
添加し、至適温度でインキュベートすればよい。合成反
応は、本酵素の活性が維持される温度範囲、好ましくは
至適温度で行えばよい。また、水溶液に溶解し難い基質
の場合には、酵素活性が余りに低下しない範囲で、基質
溶液の温度を高くしたり、基質溶液に有機溶媒を添加す
ればよい。
成反応を行う際には、通常、補酵素としてピリドキサー
ル5'−リン酸のような補酵素を用いる。補酵素は、本発
明の酵素に対して、通常モル比で1000倍〜1000
0倍程度、特に1000倍〜2500倍程度の割合で使
用することが好ましい。
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例1(Aeropyrum pernix K1株のシステイン合成酵
素遺伝子のクローニング) i)染色体DNAの調製 バクトマリン培地(Difco)37.4g とNa2S2O3-5H2O 1.0g
を水1リットルに溶かした後、pHを7.0〜7.2に調整する
ことにより培地を調製した。超好熱性古細菌Aeropyrum
pernix K1株(理化学研究所においてJCM9820として登
録)をこの培地に接種し、90℃で3日間振盪培養した。
培養液を5,000rpmで10分間遠心分離することにより集菌
した。
液で2回洗浄後インサートアガロース(InCert Agaros
e、FMC社製)ブロック中に封入した。このブロックを1
%N-ラウロイルザルコシン−1mg/ml プロテアーゼK溶液
中で処理することにより、染色体DNAがアガロースブロ
ック中に分離調製された。インサートアガロースブロッ
クを用いた染色体DNAの分離条件は、アガロースブロッ
クの添付マニュアルに従った。ii)システイン合成酵素遺伝子の増幅 配列番号1の塩基配列を含むDNAをPCR法により増幅し
た。PCR条件は、PCRキットの添付マニュアルに従った。
5'末端側に対応するプライマーとしては、配列表の配列
番号1に示すDNA配列において、塩基番号1から始まる
(すなわち開始コドンから始まる)オリゴヌクレオチド
プライマーを合成した。また、3'末端側に対応するプ
ライマーとしては、Aeropyrum pernix K1株の染色体DNA
において配列番号1の塩基配列の3'末端より下流域に
対応するプライマーであって、増幅されたDNA中に制限
酵素のBamHIサイトが生じるようなプライマーを合成し
た。PCR反応後、DNAを制限酵素のBamHIで完全分解
(37℃で3時間)した。次いで、システイン合成酵素遺
伝子を精製カラムキットを用いて精製した。iii)システイン合成酵素遺伝子を含有するベクターの構
築 ベクターのpET-8c(Novagen社製)を制限酵素NcoIで切
断し、精製した後、T4DNA ポリメラーゼを用いて平滑末
端化した。精製したプラスミドを制限酵素BamHIで切断
・精製した。次いで、BamHIで切断されたプラスミドpET
-8cと BamHIで切断された上記のシステイン合成酵素遺
伝子とをT4リガーゼを用いて16℃で、16時間反応さ
せることにより連結した。連結したDNAを用いて、大
腸菌(E. coli) XL2-BlueMRF' 株(Novagen社製)のコン
ピテントセルを形質転換した。形質転換体は、(0.05 m
g/ml アンピシリン)を含むLB寒天プレート上でのコロ
ニー形成を指標に選択した。形質転換体からシステイン
合成酵素遺伝子含有プラスミドをアルカリ法で抽出し
た。実施例2(システイン合成酵素の生産) i)システイン合成酵素遺伝子を含有する形質転換体の作
製 1.5ml容チューブ内に、大腸菌(E. coli )Rosetta (DE
3)株( Novagen社製)のコンピテントセル0.04ml(2,0
00,0000cfu/mg)と、上記調製したシステイン合成酵素
遺伝子含有プラスミドDNA溶液0.003ml(プラスミドDNA
8.4ng)を加え氷中に30分間放置した後、42℃で30
秒間ヒートショックを与えた。次いで、チューブ内にS
OCmedium を0.25ml加え、37℃で1時間振とう培養し
た。次いで、アンピシリン及びクロラムフェニコールを
含むLB寒天プレートに塗布し、37℃で一晩培養すること
により形質転換体を得た。ii)システイン合成酵素の精製 得られた形質転換体をアンピシリン及びクロラムフェニ
コールを含むNZCYM培地に接種し、600nmにおける
吸光度が0.5に達するまで、37℃で培養した後、プラ
スミドの発現量を高めるためにIPTG(Isopropyl-b-
D-thiogalactopyranoside)を加えさらに19時間培養し
た。培養液を8,000rpmで10min遠心分離することにより
集菌した。
A、0.2mM ピリドキサール 5'−リン酸、0.15M NaClを含
む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.6)50mlを加
え、菌体を90Wの出力で3分間超音波破砕 した。破砕し
た菌液を 15,000rpmで30分間遠心分離し、上清を採取し
た。
の上清を85℃で20分間加熱した後、15,000rpmで20分
間遠心分離し、上清を採取した。上清に固形硫酸アンモ
ニウムを50%になるように加え、得られた蛋白質の沈
澱を遠心分離機で集め、1 mMDTT, 2 mM EDTA及び 0.2 m
M ピリドキサール 5'−リン酸を含む50 mMリン酸カリウ
ム緩衝液(pH7.6)で透析し、同緩衝液で平衡化した
陰イオン交換樹脂のHitrapQ(ファルマシア社製)カラ
ムを用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。さ
らに、活性画分を1mM DTT、1mM EDTA、0.2mM ピリドキ
サール 5'−リン酸及び0.15M NaClを含む50mMリン酸
カリウム緩衝液(pH7.6)中で透析し、同緩衝液で平
衡化した。ゲル濾過材のSuperdex 200(ファルマシア社
製)カラムを用いてゲル濾過クロマトグラフィーを行っ
た。活性画分には、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動により単一バンドを与える均一標品が含まれてい
た。
果、本酵素の分子量は約65kDaであった。iii)システイン合成酵素(O-アセチルセリンスルフヒド
リラーゼ)活性測定法 なお、精製工程におけるシステイン合成酵素の検出は、
以下の方法でシステイン合成活性またはS-スルフォシス
テイン合成活性を測定することにより行った。 システイン合成活性 1mM EDTA、 0.2mMピリドキサール5'−リン酸、基質とし
ての20mM O-アセチル-L-セリン、基質としての2mM 硫
化ナトリウム(Na2S) を含むpH7.5の100mMリン酸カリ
ウム緩衝液0.3mlに、酵素溶液0.8μgを添加し、40℃
で4分間反応させる。反応液に20%トリクロロ酢酸溶液
を0.15ml加えることにより反応を停止させた後、ニンヒ
ドリン法で560nmにおける吸光度を測定することによ
り、生成システイン量を定量する。 S-スルフォシステイン合成活性 上記の方法において、基質としての2mM 硫化ナトリ
ウムに代えて20mM チオ硫酸を用いる。また、基質溶液
に精製酵素3μgを添加し、40℃で4分間反応させる。
反応液に20%トリクロロ酢酸溶液を0.15ml加えることに
より反応を停止させた後、沈殿が生じるため、反応液を
15,000rpmで3分間遠心し、上清を回収する。上清につ
いて、ニンヒドリン法で560nmにおける吸光度を測定す
ることにより、生成S-スルフォシステイン量を定量す
る。実施例3(超好熱性古細菌Aeropyrum pernix K1株のシ
ステイン合成酵素遺伝子の同定) 実施例1で得られた超好熱性古細菌Aeropyrum pernix K
1株の染色体DNA中のシステイン合成酵素遺伝子のDNA配
列を配列番号1に示す。また、実施例2で得られたAero
pyrum pernix K1株のシステイン合成酵素のアミノ酸配
列を配列番号2に示す。実施例4(耐熱性システイン合成酵素の性質) 前記の方法で得られたAeropyrum pernix K1株由来のシ
ステイン合成酵素の諸特性を評価した。i)至適pH 以下のシステイン合成酵素の活性測定方法(3)により至
適pHを求めた。すなわち、基質としての20mM O-アセ
チルセリンおよび2mM硫化ナトリウム、1mM EDTA、 0.2m
Mピリドキサール5'−リン酸を含む緩衝液0.3mlに精製酵
素0.8μgを添加し、40℃で4分間反応させた後のシステ
イン合成量をニンヒドリン法で測定することにより、酵
素活性を測定した。緩衝液としては、pH6.2〜7.8の50
mMリン酸カリウム緩衝液およびpH7.6〜9.9の50mM炭
酸ナトリウムを用いた。
適pHは7.5〜8.0であった。ii)至適温度 以下のシステイン合成酵素の活性測定方法(2)により至
適pHを求めた。すなわち、基質としての20mM O-アセ
チルセリンおよび2mM 硫化ナトリウム、0.2mMピリドキ
サール5'−リン酸を含有する50mMリン酸カリウム緩衝
液(pH7.5またはpH7.0)に精製酵素を0.8μg/mlとな
るように添加し、4分間反応させた後のシステイン合成
量をニンヒドリン法で測定することにより、酵素活性を
測定した。
pH7.5の緩衝液を用いた場合には50℃程度、pH7.0の緩衝
液を用いた場合には60℃程度であった。図2に示す酵素
の比活性において、1Uは、1分間当たり1μmolのシス
テインを生成する酵素量である。iii)耐熱性 以下のシステイン合成酵素の活性測定方法(1)により至
適pHを求めた。すなわち、1mM EDTA、0.2mM ピリドキサ
ール5'−リン酸を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(p
H6.7)中に、システイン合成酵素を0.3mg/ml濃度に
なるように添加した4つの酵素溶液サンプルを用意し
た。各サンプルを、それぞれ4℃、80℃、及び100℃で6
時間インキュベートして残存活性を測定した。
キュベートした場合に6時間後に97%程度の活性が残
り、100℃でインキュベートした場合に6時間後に85
%程度の活性が残った。
ステイン合成酵素を提供することができる。従って、本
発明酵素を使用することにより、高温下で調製した高濃
度の基質溶液を用いることができ、効率良く種々の合成
反応を行える。例えばO−アセチルセリンとスルフィド
等の求核剤とから対応アミノ酸を、高温下で効率良く合
成できる。また、種々の加工製品に含まれる有害な硫化
水素を、高温下で効率良く無害で高付加価値のアミノ酸
等に変換することにより、除去することもできる。
温下でも安定であるため、長期保存にも耐えることがで
きる。
より失活し易いが、本酵素は有機溶媒に対しても安定で
ある。従って、有機溶媒中あるいは有機溶媒を含む水溶
液中で、本発明のシステイン合成酵素を用いた反応を行
うことができる。その結果、水溶液には溶解し難い基質
であっても反応の基質として用いることができ、反応の
適用対象が広がる。
至適pHを示すグラフである。
至適温度を示すグラフである。
耐熱性を示すグラフである。
Claims (9)
- 【請求項1】 80℃で6時間熱処理した場合に実質的
に活性が低下しない耐熱性システイン合成酵素。 - 【請求項2】 超好熱性古細菌Aeropyrum pernix由来の
請求項1に記載の耐熱性システイン合成酵素。 - 【請求項3】 100℃で6時間熱処理した場合に80
%以上活性が残存する耐熱性システイン合成酵素。 - 【請求項4】 超好熱性古細菌Aeropyrum pernix由来の
請求項3に記載の耐熱性システイン合成酵素。 - 【請求項5】 以下の(1)または(2)のポリペプチド。 (1) 配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド。 (2) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しく
は2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列を含み、かつ、耐熱性システイン合成酵素活
性を有するポリペプチド。 - 【請求項6】 以下の(3)、(4)又は(5)のDNA。 (3) 配列番号1に示す塩基配列を含むDNA。 (4) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、
耐熱性システイン合成酵素活性を有するポリペプチドを
コードするDNAを含むDNA。 (5) 請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNA。 - 【請求項7】 請求項6に記載のDNAを含有するベクタ
ー。 - 【請求項8】 請求項7に記載のベクターを含有する形
質転換体。 - 【請求項9】 請求項8の形質転換体を培養し、該形質
転換体からシステイン合成酵素を回収する耐熱性システ
イン合成酵素の生産方法。
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- 2002-11-20 JP JP2002335876A patent/JP2003219892A/ja active Pending
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