JP2010119322A - シャペロニン変異体およびこれをコードするdna - Google Patents

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Abstract

【課題】ATPの加水分解活性が低下し、シャペロニン複合体の保持時間が延長されるシャペロニン変異体および該シャペロニン変異体をコードするDNAを提供する。
【解決手段】シャペロニン変異体を、特定のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、特定のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体を含んで構成する。また、特定の塩基配列からなるDNA、または、特定の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【選択図】なし

Description

本発明は、シャペロニン変異体およびこれをコードするDNAに関する。
シャペロニンは、基質タンパク質の正しいフォールディングを介助するいわゆる分子シャペロンの1種である。シャペロニンファミリーは、分子量50〜60kDaのタンパク質であり、リング状の複合体構造をとり、ATP依存的に基質タンパク質のフォールディングを介助するという共通の特徴を有している。シャペロニンの中でも、GroELは大腸菌が有するシャペロニンであり、ATPとGroES依存的にタンパク質のフォールディングを介助することが明らかにされている。
シャペロニンGroELは、GroELサブユニットの7量体が1つのリングを構成し、このリングがさらに背中合わせに2つ重なった状態の合計で14量体の構造をしている。また、ひとつのGroELサブユニットはATP結合部位を含む赤道ドメインと、基質タンパク質とGroESの結合部位を含む頂点ドメインと、その両ドメインをつなぐ中間ドメインとから構成されている。
基質タンパク質のフォールディングにおいては、まずシャペロニンGroELサブユニットで構成されたリングの「入り口」に基質タンパク質が結合し、リングを構成するシャペロニンGroELサブユニットに7つのATPがそれぞれ結合すると、シャペロニンGroELの構造変化が起こって補因子であるGroESがGroELに結合可能となる。次いで、GroESがGroELに結合すると、基質タンパク質がリングの空洞内に落とし込まれ、シャペロニン複合体を形成する。シャペロニン複合体ではリングの空洞内で落とし込まれた基質タンパク質のフォールディングが進行する。次いでリング内のATPが加水分解されるとGroESが解離し、それと同時にリング内のフォールディングされた基質タンパク質も解離する。すなわち、ATPの加水分解の時間がシャペロニンGroELの反応サイクルのタイマーになっている。
ATPの加水分解の時間は、野生型GroELでは約8秒である。一方、野生型GroELのアミノ酸配列のうち、398番のアスパラギン酸がアラニンに置換されたGroEL変異体(以下、「GroEL(D398A)」ということがある)では、ATPの加水分解活性が野生型の2%以下となり複合体の半減期が30分以上となることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Cell、Vol.97、p325〜338、1999.
非特許文献1に記載のシャペロニン変異体は、シャペロニンによるフォールディング反応の生化学的解析に利用されているが、より詳細な解析等のため、半減期がより長いシャペロニン変異体が要望されている。
本発明は、従来のシャペロニン変異体よりもATPの加水分解活性が低下し、シャペロニン複合体の保持時間が延長されるシャペロニン変異体および該シャペロニン変異体をコードするDNAを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
すなわち本発明の第1の態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体である。
また本発明の第2の態様は、前記GroELサブユニット変異体を少なくとも1つ含むシャペロニン変異体である。
本発明の第3の態様は、前記GroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAである。前記DNAは、配列番号2の塩基配列からなるDNA、または、配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAであることが好ましい。
本発明の第4の態様は、前記GroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAを含む組換えベクターである。また本発明の第5の態様は、前記組換えベクターで形質転換された形質転換体である。
本発明の第6の態様は、前記シャペロニン変異体および被内包物を接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記被内包物を内包すること、を含むシャペロニン複合体の製造方法である。
さらに本発明の第7の態様は、前記シャペロニン変異体と目的タンパク質とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記タンパク質を内包することと、目的タンパク質の構造を解析することと、を含む目的タンパク質の構造解析方法である。
本発明によれば、従来のシャペロニン変異体よりもATPの加水分解活性が低下し、シャペロニン複合体の保持時間が延長されるシャペロニン変異体および該シャペロニン変異体をコードするDNAを提供することができる。
本発明のGroELサブユニット変異体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するタンパク質である。
かかる構成のGroELサブユニット変異体は、野生型のGroELサブユニットのアミノ酸配列における52番目と398番目のアスパラギン酸がアラニンに変異しているため、ATPの加水分解活性が顕著に低下している。このため、これを含んで構成されるシャペロニン変異体の反応サイクルを従来のシャペロニン変異体、例えば、GroEL(D398A)と比べて、フォールディング活性を低下させることなく、飛躍的に延ばすことができる。
本発明のGroELサブユニット変異体は、GroEL(D398A)変異体における52番目のアスパラギン酸をアラニンにさらに変異させることで、相乗的にATPの加水分解活性が低下するという本発明者らが初めて見出した知見に基づいて完成されたものである。
尚、本明細書においては、GroELサブユニットの14量体を「シャペロニンGroEL」、GroELサブユニット変異体の14量体を「シャペロニンGroEL変異体」、「シャペロニンGroEL」と基質タンパク質等との複合体を「シャペロニン複合体」と称する。
本発明において、配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体としては、ATPの加水分解活性が低下しているものであれば特に制限はない。
本発明において、配列番号1のアミノ酸配列のうち52番および398番のアラニン以外の位置における、アミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。
前記アミノ酸の置換としては、以下のような例が挙げられる。
一般にタンパク質の機能を維持するためには、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。このようなアミノ酸の置換は、保存的置換と呼ばれている。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、Asp及びGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループ内のアミノ酸置換は好ましく許容される。
本発明におけるアミノ酸の置換は、本発明のGroELサブユニット変異体に機能を追加するものであってもよい。新たな機能を付加する置換の具体例としては、例えば、野生型GroELの490番のアスパラギン酸をシステインに変異させた変異体(Nat. Biotechnol., 2001 Sep; 19(9): 861-5.)が挙げられる。かかる変異は、シャペロニンGroEL変異体をガラス基板等に固定化することを可能にする。また、265番のアスパラギンをアラニンに変異させた変異体(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2000 Jan 27; 267(3): 842-9.)を挙げることもできる。かかる変異は変性タンパク質をより強固にシャペロニンGroEL変異体に結合することを可能にする。
また前記GroELサブユニット変異体において、さらにアミノ酸が欠失、付加(挿入)された変異体は、前記GroELサブユニット変異体と同様の機能を有するものであっても、さらに機能が追加されたものであってもよい。これらの具体例としては、例えば、GroELサブユニットにおけるC末端の繰返し配列を欠失、付加した変異体(Cell, 2006 Jun 2; 125(5): 903-14.)を挙げることができる。かかる変異は、シャペロニンGroEL変異体の空洞の体積を変化させることを可能とする。
更に本発明におけるGroELサブユニット変異体は、用途に応じて、1以上のアミノ酸がさらに付加したものであってもよい。このような付加可能なアミノ酸としては、シグナルペプチド、タグ配列等を挙げることができる。
本発明における配列番号1のアミノ酸配列中、52番と398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、または付加されたアミノ酸配列からなるGroEL変異体サブユニットとしては、前記具体例として挙げた変異以外の変異を有するものであってもよい。そのような変異としては例えば、Cell. 2002 Dec 27; 111(7): 1027-39.等に記載された特定のタンパク質をより効率的にフォールディングすることを可能にする変異や、Cell. 1995 Nov 17; 83(4): 577-87.等に記載された単一のリングからなる7量体を形成することを可能にする変異等をあげることができる。
本発明におけるGroELサブユニット変異体は、例えば、GroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAを通常用いられる方法で発現させることで製造することができる。具体的には、GroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAを含む組換えベクターを、組換えベクターに応じて選択される宿主細胞に感染させて、宿主細胞を培養することで製造することができる。
本発明のGroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAは、野生型のGroELサブユニットをコードする塩基配列からなるDNAに、対応する変異を導入することで得ることができる。導入する変異は少なくともアミノ酸配列における52番目と398番目のアスパラギン酸をアラニンに変異するものであればよい。
変異の導入方法としては、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。例えば、PCRを用いる方法や、部位特異的突然変異導入キット(例えば、Stratagene社製等)を用いる方法等を挙げることができる。
本発明においてGroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNAは、配列番号2の塩基配列からなるDNA、または、配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAであることが好ましい。
本発明における配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAは、対応するGroELサブユニットのアミノ酸配列のうち52番目と398番目に相当するアスパラギン酸がアラニンに変異しているタンパク質をコードすることが必要である。
またストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸同士、すなわち60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜65℃、好ましくは65℃での条件をいう。
本発明の組換えベクターは、前記GroELサブユニット変異体をコードするDNAを含む。また本発明の形質転換体は、前記組換えベクターで形質転換されたものである。かかる組換えベクター、および形質転換体は、GroELサブユニット変異体の製造に好適に用いることができる。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに前記GroELサブユニット変異体をコードするDNAを連結(挿入)することにより得ることができる。前記DNAを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに前記DNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが挙げられる。本発明において前記DNAは、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明の組換えベクターには、プロモーター、前記DNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子)等が挙げられる。
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的DNAが発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられる。またサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母も挙げられる。さらに、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞や、Sf9等の昆虫細胞も挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli) DH5α、Y1090、BL21(DE3)などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また前記プロモーターは、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。
宿主細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110(1972)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターは酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を用いることができる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182(1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929(1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J.Bacteriol., 153:163(1983)]等が挙げられる。
目的DNAが宿主に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、通常用いられる条件で行うことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法も採用することができる。
本発明のGroELサブユニット変異体は、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩(例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等)が挙げられ、その他含窒素化合物(例えばペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等)が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で行う。なお、培地のpHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドール酢酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
宿主の培養後、本発明のGroELサブユニット変異体が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより抽出することができる。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のGroELサブユニット変異体を単離精製することができる。
本発明のシャペロニン変異体は、配列番号1のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体の少なくとも1種を含む。
すなわち、本発明のシャペロニン変異体を構成する7以上(好ましくは14)のGroELサブユニットのうち、少なくとも1つは上記のGroELサブユニット変異体である。
かかる構成のシャペロニン変異体は、従来知られているシャペロニン変異体(例えば、GroEL(D398A))と比べて顕著にATPの加水分解活性が低下して、この変異体が基質タンパク質等と形成するシャペロニン複合体の保持時間を延長することを可能としながら、フォールディング活性は低下していないという優れた効果を奏する。さらに本発明のシャペロニン変異体は、シャペロニン変異体を構成する2つのリング(空洞)に同時に被内包物(例えば、タンパク質)を内包することができるため、より効率的に被内包物をシャペロニン複合体内に内包することができる。
本発明のシャペロニン変異体を構成するGroELサブユニットの数は、被内包物を内包可能であれば特に制限はないが、7量体であることが好ましく、より好ましくは14量体である。またこれらのサブユニットのうち、配列番号1のアミノ酸配列またはこれと同等のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体の数は少なくとも1であるが、ATPの加水分解活性の観点から、GroELサブユニット変異体の7量体であることが好ましく、より好ましくは14量体である。
尚、本発明のシャペロニン変異体は、GroELサブユニット変異体を含むGroELサブユニットの集合から、通常の条件下、例えば、ATP依存的(Nature, 1990 Nov 22; 348(6299): 339-42)に形成される。
本発明のシャペロニン複合体の製造方法は、前記シャペロニン変異体と、被内包物とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記被内包物を内包し、被内包物が内包されたシャペロニン複合体を形成することを含む。
本発明においては、シャペロニン変異体のATP加水分解活性が低下していることで、被内包物を内包したシャペロニン複合体の状態を長時間維持することができる。
本発明における被内包物は、シャペロニン変異体が内包可能なものであれば特に制限はない。具体的には例えば、タンパク質、凝集性の有機化合物等を挙げることができる。さらに例えば、Nature 2003 Jun 5; 423(6940): 628-32.等に記載されているような半導体ナノ粒子(量子ドット)等であってもよい。
また本発明における被内包物は、シャペロニン変異体に内包されることから、例えば、タンパク質の場合、60kDa以下の大きさであることが好ましい。
本発明のシャペロニン複合体においては、シャペロニン変異体が、特定の変異を有するGroELサブユニット変異体を含んで構成されているため、GroEL(D398A)に比べて遥かに長時間にわたって被内包物をシャペロニン変異体内に内包した状態を維持することができる。具体的には例えば、野生型のGroELサブユニットからなるシャペロニンにおいては8秒程度の内包時間であり、公知の変異体であるGroEL(D398A)サブユニットからなるシャペロニン変異体においては1時間程度であるのに対して、本発明のGroEL(D52、398A)サブユニットからなるシャペロニン変異体においては5日以上と圧倒的に長時間にわたってシャペロニン複合体の維持が可能となる。
このように安定なシャペロニン複合体は種々の用途に適用することができる。例えば、凝集性の目的タンパク質の製造に適用することで、該目的タンパク質を凝集させることなく、正しいフォールディング状態で安定に製造することができる。また、被内包物の構造解析、被内包物の徐放、被内包物の分散等に用いることができる。
本発明のシャペロニン複合体の製造方法においては、前記シャペロニン変異体と被内包物とを接触させてシャペロニン変異体内に被内包物を内包させることを含むが、シャペロニン変異体と被内包物を接触させる際に、ATPと、GroESタンパク質と、金属イオン(好ましくは、マグネシウムイオン)をさらに共存させることが好ましい。これにより、より効率的に被内包物をシャペロニン変異体内に内包することができる。
前記GroESタンパク質は、シャペロニンGroELの補因子として作用し、被内包物をシャペロニンGroELの空洞内に閉じ込めることができる。本発明においてGroESタンパク質は、野生型のGroESタンパク質であっても、GroES変異体であってもよい。またGroESタンパク質に蛍光ラベル等を常法により付加したものであってもよい。前記蛍光ラベル等には通常用いられる蛍光ラベル等を特に制限なく用いることができる。
また本発明においては、前記ATPの代わりにATP代替化合物を用いてもよい。ATP代替化合物としては、GroELサブユニット変異体のATP結合部位に結合可能で、シャペロニンGroEL変異体の構造変化を引き起こすことが可能な化合物であれば特に制限はない。例えば、ADP、ADPとフッ化ベリリウムの付加物(J. Biol. Chem., 279, 45737-45743 (2004).)、ADPとフッ化アルミニウムやフッ化ガリウムの付加物(J. Mol. Biol., 2003 May 23; 329(1): 121-34.)等を挙げることができる。
ATP代替化合物として、GroELのATP加水分解部位で加水分解されない化合物(例えば、ADPとフッ化ベリリウムの付加物等)を用いることで、さらに長時間にわたって被内包物が内包されたシャペロニン複合体を維持することができる。
本発明のシャペロニン複合体の製造方法で得られるシャペロニン複合体においては、任意のタイミングで被内包物を放出させることができる。具体的にはシャペロニン複合体を構成する金属イオン(好ましくは、マグネシウムイオン)の濃度を、通常用いられる方法(例えば、金属キレート化合物を用いる方法)で低下させることでシャペロニン複合体から被内包物を放出することができる。
また、本発明のシャペロニン複合体の製造方法で得られるシャペロニン複合体においては、シャペロニン複合体を構成するATPの加水分解に伴って、徐々に(例えば、半減期5日以上)被内包物を放出することもできる。
このようなシャペロニン複合体の徐放性は、例えば、被内包物の構造解析、フォールディングされたタンパク質の製造方法、ドラッグデリバリーシステム等に応用することができる。
本発明の目的タンパク質の構造解析方法は、本発明のシャペロニン変異体と、タンパク質とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記目的タンパク質を内包することを含む。
本発明のシャペロニン変異体内に目的タンパク質を内包することで、目的タンパク質の構造を正しいフォールディング状態で構造解析を行うことができる。また、目的タンパク質の内包状態を長時間維持可能であることから、通常用いられる種々の構造解析方法を適用することが可能となる。
本発明の目的タンパク質の構造解析方法は、シャペロニン変異体と前記シャペロニン変異体に内包された目的タンパク質とを含むシャペロニン複合体を用いるものであれば特に制限はなく、通常用いられるタンパク質の構造解析方法を適用することができる。具体的には例えば、X線等を用いる結晶構造解析方法、電子顕微鏡法、NMR等を挙げることができる。
本発明におけるシャペロニン複合体は、長時間安定な状態で存在できるため、シャペロニン複合体として結晶化させることが可能である。かかるシャペロニン複合体結晶の構造と目的タンパク質を含まないシャペロニン変異体結晶の構造の差異から、目的タンパク質の正しいフォールディング状態での構造を解析することが可能となる(例えば、Nat. Struc. Mol. Biol., 2008 Jul; 15(7): 754-60)。
また本発明におけるシャペロニン複合体は、通常は凝集体を形成しやすい目的タンパク質を正しいフォールディング状態で長時間にわたって徐放することが可能であるため、例えば、NMRを用いた溶液状態での目的タンパク質の構造解析や結晶構造解析のための目的タンパク質の結晶成長が可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。また、本実施例で市販のキットを用いる場合は、そのキットの取扱説明書に従って操作を行った。
1.GroELサブユニット変異体DNAの調製
出発遺伝子材料として、Escherichia coliのシャペロニンGroELをコードする遺伝子断片を含有するプラスミドpET−EL(Biochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000))を用いた。pET−ELプラスミドの1本鎖DNAは、大腸菌CJ236にヘルパーファージM13KO7(Amersham Pharmacia Biotech)を感染させることで調製した。
次いで、下記表1に示した合成DNA1(配列番号3)を用いて、kunkel法(Methods Enzymol. 154, 367-382)により、野生型GroELのアミノ酸配列のうち、398番のアスパラギン酸がアラニンに変異した変異体GroEL(D398A)をコードするDNAを持つプラスミドpET−EL(D398A)を作製した。
次に、下記表1に示した合成DNA2(配列番号4)および合成DNA3(配列番号5)を用い、Quick Change site-directed mutagenesis法 (Stratagene社製)により、野生型GroELのアミノ酸配列のうち、52番のアスパラギン酸がアラニンに変異した変異体GroEL(D52A)をコードする遺伝子を持つプラスミドpET−EL(D52A)を作製した。
得られたpET−EL(D52A)のCla I−Hind III断片を切り出し、上記で得られたpET−EL(D398A)のCla I−Hind III断片と入れ替えることで、野生型GroELのアミノ酸配列の52番と398番のアスパラギン酸がそれぞれアラニンに変異した変異体GroEL(D52,398A)をコードするDNAを持つプラスミドpET−EL(D52,398A)を作製した。
2.シャペロニン変異体の調製
上記で得られたプラスミドpET−EL(D52,398A)を保有する大腸菌BL21(DE3)をLB培地中、37℃の温度条件で、600nmにおける吸光度が0.8になるまで培養し、1mMのisopropyl-β-D-thiogalactopyranosideを加えてさらに2時間培養した。
遠心により集菌し、超音波破砕用緩衝液(25mM Tris(pH 7.5)、1mM EDTA、1mM dithiothreitol(DTT)、1mM 4-(2-aminoethyl)-benzene-sulfonyl fluoride hydrochloride)で懸濁した後、超音波破砕した。遠心分離した上清をBiochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000)に記載された方法で精製し、野生型GroELのアミノ酸配列の52番と398番のアスパラギン酸がそれぞれアラニンに変異したシャペロニンGroEL(D52,398A)変異体を得た。
また、補因子であるGroESタンパク質は、GroES発現用プラスミドpET−ES2を用いてBiochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000)に記載された方法で調製した。
3.ATP加水分解活性の測定
シャペロニンGroEL変異体からのADPの解離を、ATP再生法(Mol. Cell 114,423-434(2004))を用いて測定することで、シャペロニンGroEL変異体のATP加水分解活性を測定した。
反応溶液はHKM緩衝液(20mM HEPES-KOH (pH 7.4)、100mM KCl、5mM MgCl2)中に0.2mM NADH、5mM phosphoenolpyruvate、100μg/ml pyruvate kinase、100μg/ml lactate dehydrogenase、5mM dithiothreitol(DTT)、20μM lactalbumin、および、0.2μM GroELと0.6μM GroES(図1)または2.5μM GroELと5μM GroES(図2)を含む。
反応液に1mMのATPを加えることで反応を開始し、NADHの酸化に由来する340nmの吸光度の減少を連続的に計測した。
結果を図1および図2に示した。なお、図1はGroEL変異体の濃度が0.2μMおよびGroESの濃度が0.6μMの結果を示し、図2はGroEL変異体の濃度が2.5μMおよびGroESの濃度が5μMの結果を示す。
図1および図2から、GroEL(D52A)変異体のATP加水分解活性は、野生型GroELの25%であり、GroEL(D398A)変異体のATP加水分解活性は野生型GroELの7.0%であることが分かる。これに対して、本発明のGroEL(D52,398A)変異体のATP加水分解活性は野生型GroELの3.6%にまで低下していることが分かる。
4.基質タンパク質のフォールディング活性の測定
自発的にフォールディングできないタンパク質であるRhodaneseを用いて、以下のようにしてGroEL(D52,398A)変異体のフォールディング活性を測定した。
6M 塩酸グアニジンと1mM DTTを含む溶液中で変性したRhodaneseを、1μM GroEL変異体、2μM GroES、20mM Na、1mM DTT、4mM ATPを含むHKM緩衝液中で40倍に希釈して反応液とした。
それぞれの時間で反応液5μLをサンプリングし、750μLのアッセイ溶液(100mM KHPO、150mM Na、1mM EDTA)に添加して、反応を停止した。
Rhodanese活性の測定は、チオ硫酸イオンに由来するチオシアン酸イオンと硝酸鉄とによるチオシアン酸鉄の生成を460nmの吸光度で計測する方法で行った(Acta Chem. Scand.7,1129-1136(1953))。天然型Rhodaneseは、チオ硫酸イオンとシアン化物からチオシアン酸イオンを生成する反応を触媒するが、変性Rhodaneseはこの反応を触媒することができない。従って生成したチオシアン酸鉄の濃度を測定することで、シャペロニン変異体における変性Rhodaneseから天然型Rhodaneseへのフォールディング活性を測定できる。
結果を図3に示した。図3より、GroEL(D52,398A)変異体は、野生型GroELと全く変わらないRhodaneseフォールディング活性を示したことがわかる。
5.シャペロニン複合体の解析
上記で得られたGroEL(D52,398A)変異体が形成するシャペロニン複合体の構造を以下のようにしてゲルろ過クロマトグラフィーを用いて解析した。
(1)GroEL(D52,398A)とGroESの結合比率の評価
1mM DTTと1mM ATPとを含むHKM緩衝液中で、0.3μM GroEL(D52,398A)と0.3μM GroES(常法によりCy3にて蛍光ラベルしたGroES、以下、「Cy3−GroES」という)と混合し、HPLCゲルろ過クロマトグラフィー(G3000SWXL、Tosoh社製)で分離した。結果を図4Aに示した。
図4Aから、GroEL(D52,398A)変異体は、GroESと1:1の弾丸型複合体を形成していることがわかる。
次に、1mM DTTを含むHKM緩衝液中で、0.3μM GroEL(D52,398A)変異体と0.6μM Cy3−GroESと混合し、1mM ADPまたは1mM ATPを加えて、HPLCゲルろ過クロマトグラフィー(G3000SWXL、Tosoh社製)でそれぞれ分離した。結果を図4Bに示した。
図4Bから、GroEL(D52,398A)変異体とGroESとは、ADP存在下では弾丸型複合体を形成するが、ATP存在下ではGroEL(D52,398A):GroES=1:2のフットボール型複合体を形成することがわかる。
このようなフットボール型複合体は基質タンパク質を閉じ込めてフォールディングするチャンバー(空洞)が2つとも活性化された高効率の複合体である(J. Biol. Chem. 283, 23774-23781(2008))。
(2)シャペロニン複合体への新たなGroESの結合性の評価
次に、シャペロニン複合体への新たなGroESまたは基質タンパク質の結合に要する時間を以下のようにして測定した。
1mM DTTと1mM ATPを含むHKM緩衝液中で1.5μM GroEL(D52,398A)と3μMのGroES(非蛍光ラベル体)と混合することでフットボール型複合体を形成した(t=0とする)。30秒のインキュベーションの後、複合体をゲルろ過クロマトグラフィー(PD−10カラム、GE Healthcare社製)で精製した。
複合体濃度を0.5μMに調製し、1μM Cy3−GroESと1mM ATPを加えた後、所定時間ごとにHPLCゲルろ過クロマトグラフィー(G3000SWXL、Tosoh社製)で分離し、新たなGroES(Cy3−GroES)の結合をCy3の蛍光を測定して観察した(励起波長550nm、蛍光波長570nm)。結果を図5に示した。
上記において、GroEL(D52,398A)の代わりにGroEL(D398A)を用いた以外は、上記と同様にして新たなGroES(Cy3−GroES)の結合をCy3の蛍光を測定して観察した(励起波長550nm、蛍光波長570nm)。さらに同様にしてCy3−Rhodanese(常法によりCy3で蛍光ラベルしたRhodanese、基質タンパク質)との結合を測定した。結果を図6Aおよび図6Bに示した。
図5、図6A、および図6Bから、GroEL(398A)の場合には、30分後から基質タンパク質または新たなGroESの結合が確認できるのに対して、GroEL(D52,398A)の場合には、5日後から新たなGroESとの結合が観察されたことがわかる。
新たなGroESとの結合は、フットボール型複合体の2つのチャンバー(空洞)の少なくとも一方の反応サイクルが一巡して、GroESが解離することにより起こることがわかっている(J. Biol. Chem. 283, 23774-23781(2008))。したがって、GroEL(D52,398A)変異体では、反応開始5日後から最初に結合したGroESが解離し始めることが示された。
(3)シャペロニン複合体におけるATP加水分解活性の評価
2μM GroEL(D52,398A)、4μM GroES(Cy3−GroES)、1mM DTT、1mM ATP、20mM HEPES−KOH(pH 7.4)、50mM KCl、5mM MgSOを混合し、5分後にTSK-GEL guard column(Tosoh社製)でシャペロニン複合体を単離した。
所定時間経過ごとに、1.0%過塩素酸で処理して上清をKCOで中和し、逆相HPLCカラム(ODS−80Ts、Tosoh社製)でADPとATPを分離して、260nmにおける吸光度から、ATPとADPとをそれぞれ定量し、全ヌクレオチド中のATPおよびADPの割合を計算し、結果を図7に示した。
また、「(2)シャペロニン複合体への新たなGroESの結合性の評価」と同様にしてGroESの結合量の相対値を計算した。結果を図7に示した。
上記において、GroEL(D52,398A)の代わりに、GroEL(D398A)を用いた以外は、上記と同様にしてGroEL(398A)複合体におけるATPの加水分解活性を評価した。GroEL(398A)1分子あたりのATPおよびADPの結合量を計算し、結果を図8に示した。
また、「(2)シャペロニン複合体への新たなGroESの結合性の評価」と同様にして、GroESおよび基質タンパク質(Cy3−Rhodanese)の結合量を計算した。結果を図8に示した。尚、空のGroEL(D398A)へのGroESまたは基質タンパク質の結合量をそれぞれ200%、100%とした。
図7および図8から、GroEL(398A)シャペロニン複合体においては、シャペロニン複合体に結合した14のATPのうち、半分が加水分解してADPになるのに要する時間が30分であるのに対して、GroEL(D52,398A)シャペロニン複合体では結合したATPのうち半分が加水分解するのに5日以上を要することが示された。さらにATPの加水分解と同じくして最初のGroESが解離し、次のGroESの結合が可能となることが示された。
以上の結果から、本発明のGroELサブユニット変異体を含むシャペロニン変異体においては、ATPの加水分解活性が低下してシャペロニン複合体の状態を長時間にわたって維持できたことがわかった。また、本発明のGroELサブユニット変異体を含むシャペロニン変異体においては、基質タンパク質のフォールディング活性が低下していなかったことがわかった。
本発明の実施例にかかるシャペロニン変異体のATP加水分解活性を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン変異体のATP加水分解活性を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン変異体の基質タンパク質のフォールディング活性を示す図である。 本発明の実施例にかかるGroEL変異体とGroESの結合状態を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン複合体の経時変化を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン複合体の経時変化を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン複合体のATPの加水分解活性を示す図である。 本発明の実施例にかかるシャペロニン複合体のATPの加水分解活性を示す図である。

Claims (8)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、
    配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体。
  2. 請求項1に記載のGroELサブユニット変異体を少なくとも1つ含むシャペロニン変異体。
  3. 請求項1に記載のGroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNA。
  4. 配列番号2の塩基配列からなるDNA、または、
    配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAである請求項3に記載のDNA。
  5. 請求項3または請求項4に記載のDNAを含む組換えベクター。
  6. 請求項5に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
  7. 請求項2に記載のシャペロニン変異体および被内包物を接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記被内包物を内包すること、を含むシャペロニン複合体の製造方法。
  8. 請求項2に記載のシャペロニン変異体と目的タンパク質とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記目的タンパク質を内包することと、前記目的タンパク質の構造を解析することと、を含む目的タンパク質の構造解析方法。
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